説明

高誘電性エラストマー成形体および高周波用電子部品材料

【課題】安価で誘電特性、耐衝撃性、柔軟性および加工性に優れ、800〜960 MHz であるUHF帯で使用可能な高誘電性エラストマー成形体および高周波用電子部品材料を提供する。
【解決手段】高誘電性エラストマー成形体は、エラストマーに誘電性セラミックス粉末を配合した高誘電性エラストマー組成物を成形してなる高誘電性エラストマー成形体であって、該成形体の引張り伸びが 250%以上、硬さが 70 以下で、周波数 950 MHz の測定において比誘電率が 4〜10、誘電正接が 0.02 以下であり、高周波用電子部品材料は上記高誘電性エラストマー成形体を用いてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高誘電性エラストマー成形体および高周波用電子部品材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話、コードレスフォン、RFID等に用いるパッチアンテナ、電波望遠鏡やミリ波レーダ等のレンズアンテナ等の目覚しい普及、衛星通信機器の著しい発達に伴い、通信信号の周波数の高周波化および通信機器の一層の小型化が望まれている。通信機器は、通信機器内部に組み込まれたアンテナ材料の比誘電率が高くなると、より一層の高周波化および小型化が図れる。また、アンテナ材料の誘電正接が低くなると通信時の消費電力を抑制できる。比誘電率は、誘電体内部の分極の程度を、また誘電正接は誘電体内部の分極や導電性の付与によって生じるエネルギー損失を、それぞれ示すパラメータである。
アンテナ用のエラストマー系誘電材料として、比誘電率 15 以上を有するエチレンプロピレンゴム系材料が知られている(特許文献1参照)。既存の誘電材料は、アンテナの小型化のため、誘電性セラミックス粉末を高配合していた。近年、950 MHz 帯のRFID用途の増加に伴い、比誘電率 4〜10 程度、誘電正接 0.02 以下の誘電材料が所望されている。比誘電率が 10 より大きい場合、アンテナが小さくなり、それに伴って利得も小さくなるので好ましくない。利得が小さくなると、通信可能な距離も低下するためである。
【0003】
比誘電率 4〜10、誘電正接 0.02 以下の誘電材料としては、セラミックス製もしくは樹脂製が市販されているが、エラストマー製と比べて耐衝撃性、柔軟性および加工性が劣るので好ましくない。
また、エラストマー系複合材で比誘電率 4〜10 程度、誘電正接 0.02 以下の組成物としてエチレン系、スチレン系エラストマーに繊維状誘電性セラミックスを配合したものが知られている(特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献2における上記各誘電特性のデータは 1 MHz もしくは 3 GHz の測定値であり、950 MHz での測定は行なわれていない。また、硬度に関する記載がなく、耐衝撃性、柔軟性および加工性等を考慮した最適化が十分とはいえない。
また、比誘電率 4〜10 の誘電材料で 950 MHz 用にパッチアンテナを作製する場合、100 mm 以上の寸法が必要であるが、セラミックスもしくは樹脂で 100 mm 以上のシートを作製する場合、高コストとなる。
【特許文献1】特開2005−89686号公報
【特許文献2】特開平9−31244号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、安価で誘電特性、耐衝撃性、柔軟性および加工性に優れ、800〜960 MHz であるUHF帯で使用可能な高誘電性エラストマー成形体および高周波用電子部品材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の高誘電性エラストマー成形体は、エラストマーに誘電性セラミックス粉末を配合した高誘電性エラストマー組成物を成形してなる高誘電性エラストマー成形体であって、該成形体の引張り伸びが 250%以上、硬さが 70 以下であることを特徴とする。また、上記成形体は、周波数 950 MHz の測定において、比誘電率が 4〜10、誘電正接が 0.02 以下であることを特徴とする。
なお、成形体の引張り伸びはJIS K6251の引張試験、硬さはJIS K6253、JIS−Aの硬さ試験によってそれぞれ測定される数値である。
【0007】
上記高誘電性エラストマー組成物において、上記エラストマー 100 重量部に対してカーボンブラックを 5 重量部〜40 重量部配合したことを特徴とする。
また、配合する誘電性セラミックス粉末の焼結体の比誘電率が、周波数 950 MHz の測定において 50 以上であることを特徴とする。
【0008】
上記エラストマー単体の比重が 0.8〜1.1 であることを特徴とする。また、上記エラストマーが、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーからなる群より選ばれる1種または2種以上のエラストマーであることを特徴とする。特に、エラストマーがエチレンプロピレンゴムであることを特徴とする。
【0009】
本発明の高周波用電子部品材料は周波数 800 MHz〜960 MHz であるUHF帯の電気信号を取り扱うための高周波用電子部品材料であって、上記高誘電性エラストマー成形体を用いてなることを特徴とする。
上記高誘電性エラストマー成形体の表面に電極を張合わせ加工、または、上記成形体の内部に電極をインサート成形することにより得られることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の高誘電性エラストマー成形体は、エラストマーに誘電性セラミックス粉末を配合した高誘電性エラストマー組成物を成形してなる高誘電性エラストマー成形体であって、該成形体の引張り伸びが 250%以上、硬さが 70 以下であるので、耐衝撃性、柔軟性および加工性に優れるため、950 MHz 帯のRFID用アンテナ材料に好適である。
【0011】
上記高誘電性エラストマー組成物において、上記エラストマー 100 重量部に対してカーボンブラックを 5〜40 重量部配合したので、成形体表面へのプロセスオイルのブリードがなく電極との密着性が低下しないため、高誘電性エラストマー成形体の誘電特性の変化を抑制することができる。
【0012】
また、この成形体は周波数 950 MHz の測定において、比誘電率が 4〜10、誘電正接が 0.02 以下であるので、この成形体を用いて高周波用電子部品材料である 950 MHz 用にパッチアンテナを作製する場合、セラミックスもしくは樹脂で 100 mm 以上のシートを作製する場合よりも低コストとなる。また、上記エラストマー単体の比重が 0.8〜1.1 であるので軽量化が図れる。
【0013】
本発明の高周波用電子部品材料は、上記高誘電性エラストマー成形体を用いてなるので、高周波域(周波数 800〜960 MHz )で使用できる。また、上記高誘電性エラストマー成形体の表面に電極を張合わせ加工、または、上記成形体の内部に電極をインサート成形することにより得られるので、安価に製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の高誘電性エラストマー成形体は、該成形体の引張り伸びが 250%以上、硬さが 70 以下であれば特に制限されるものではない。使用できるエラストマーとしては、常温でゴム状の弾性を有する物質であれば、有機物、無機物を問わず、また天然のものであっても合成されたものであってもよい。
例えば、成形体の引張り伸びが 250%未満であると曲面への貼り付け時に材料の変形が追従せず、破断、永久変形が発生する場合がある。また、硬さが 70 をこえると衝撃によるクラック、割れが発生し易いので好ましくない。
【0015】
本発明において使用するエラストマーとしては、高誘電性エラストマー成形体を軽量化する観点からは、エラストマー単体の比重は小さい方が好ましい。一般的にゴム単体の比重は 0.8〜2.0 程度であるが、このゴムをこの実施形態の高誘電性エラストマー組成物のベースとなるエラストマーとして用いる場合、その単体の比重は 0.8〜1.1 であることが好ましい。より好ましくは 0.8〜1.0 の範囲とする。比重が 0.8 未満であると、低分子量のため強度が弱く、成形体の空孔が多くなるので好ましくない。また、比重が 1.1 をこえると製品重量が重くなるので好ましくない。
【0016】
天然ゴム系エラストマーとしては、塩化ゴム、塩酸ゴム、環化ゴム、マレイン酸化ゴム、水素化ゴム、天然ゴムの二重結合にポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリアクリロニトリル(PAN)、メタクリル酸エステル等のビニルモノマーをグラフトさせてなるグラフト変性ゴム、窒素気流中でモノマー存在下に天然ゴムを粗練してなるブロックコポリマー等を用いることができる。これらエラストマーは天然ゴムを原料とするものの他に、合成 cis-1,4-ポリイソプレンを原料としたものを含む。
【0017】
合成ゴム系エラストマーとしては、イソブチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、エチレンプロピレンターポリマー、クロロスルホン化ポリエチレンゴム等のポリオレフィン系エラストマーや、スチレン−イソプレン−スチレンブロックコポリマー(SIS)、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロックコポリマー(SEBS)等のスチレン系エラストマー、またイソプレンゴム、ウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、シリコーンゴム、ナイロン12、ブチルゴム、ブタジエンゴム、ポリノルボルネンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム等を用いることができる。これらの中で電気特性からスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーを用いることが好ましい。
【0018】
これらのエラストマーは、1種類または2種類以上を混合して用いることができる。また、エラストマーの持つ弾力性を損なわない範囲内で、熱可塑性樹脂の1種または2種以上を配合して用いることもできる。この実施形態の高誘電性エラストマー組成物において、エラストマーとして、天然ゴム系エラストマーおよび/または合成非極性エラストマーのうちから選ばれる1種または2種以上を用いた場合には、電気絶縁性に優れた高誘電性エラストマー組成物とすることができるので、特に絶縁性の要求される用途に好ましく用いることができる。合成非極性のエラストマーとしては、上述した中でエチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、イソブチレンゴム、イソプレンゴム、シリコーンゴム等を挙げることができる。特に、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムは誘電正接が極めて低いので、アンテナ等の電子部品やセンサーの用途に好ましく用いることができる。
【0019】
本発明の高誘電性エラストマー成形体は、周波数 950 MHz の測定において、比誘電率が 4〜10、誘電正接が 0.02 以下であることが好ましい。これらの範囲内とすることで、該成形体を周波数 950 MHz 帯のRFID用途に好適に利用することができる。
比誘電率が 4 未満の場合、誘電体による波長短縮効果が少ないため、必要な電極寸法が大きくなり、それに伴ってアンテナが大型化するので好ましくない。また、比誘電率が 10 より大きい場合、アンテナの小型化に伴い利得が小さくなり、通信可能な距離が低下する。また、誘電正接が 0.02 より高くなると電気的なロスが大きく、消費電力が増すので好ましくない。
【0020】
本発明に使用できるカーボンブラックは、ハードカーボン、ソフトカーボン等の顔料、耐摩耗性向上等に使用されるカーボンブラックを挙げることができる。ただし、導電性の良いアセチレン系のカーボンブラックは、誘電正接の増加量が多いので好ましくない。カーボンブラックの市販品としては、例えば東海カーボン社製:シーストS等を挙げることができる。
上記カーボンブラックの配合割合はエラストマー 100 重量部に対して 5〜40 重量部である。5 重量部未満の場合、カーボンブラックの保油効果が少ないため成形体表面へのプロセスオイルのブリードが発生し、電極との密着性が低下し、誘電特性が大きく変化するので好ましくない。また、40 重量部をこえる場合、誘電正接が大きくなるため、好ましくない。高誘電率かつ低誘電正接化のための最適な配合量は、10〜35 重量部である。
【0021】
本発明において高誘電性エラストマー組成物に用いられる誘電性セラミックスは、実質的にエラストマー成形体の誘電率を決定するものであり、セラミックス粉末の焼結体の比誘電率が 50 以上である誘電性セラミックスを用いることが好ましい。焼結体の比誘電率が 50 未満の誘電性セラミックスを用いると、成形体の比誘電率を 4〜10 に維持するために配合しなければならないセラミックス配合量が多くなり、必要な引張り伸び( 250%以上)を確保することが困難となる。
【0022】
本発明において用いることができる誘電性セラミックス粉末としては、IIa、IVa、III b、IVb族の酸化物、炭酸塩、リン酸塩、珪酸塩、またはIIa、IVa、III b、IVb族を含む複合酸化物から選ばれる少なくとも1種類であることが好ましい。具体的には、TiO2 、CaTiO3 、MgTiO3 、Al23 、BaTiO3 、SrTiO3 、Ca227 、SiO2 、Mg2 SiO4 、Ca2 MgSi27 等が挙げられる。セラミックス粉末の粒子径は 0.01〜100μm 程度が好ましい。0.01μm より小さい場合、取扱いが困難であり好ましくない。100μm より大きい場合、成形体内での誘電特性のばらつきを引き起こすおそれがあるので好ましくない。より実用的な粒子径の範囲は、0.1〜20μm 程度である。
【0023】
誘電性セラミックス粉末の配合割合は、高誘電性エラストマー成形体の比誘電率を 4〜10、誘電正接を 0.02 以下に維持でき、かつ、成形体の引張り伸びを 250%以上、硬さを 70 以下とできる割合とする。
例えば、比誘電率が 180 程度である誘電性セラミックス粉末を用いる場合では、エラストマー 100 重量部に対して、該誘電性セラミックス粉末を 50〜300 重量部配合し、比誘電率が 120 程度である誘電性セラミックス粉末を用いる場合では、エラストマー 100 重量部に対して、該誘電性セラミックス粉末を 150〜450 重量部配合する。
【0024】
この実施形態においては、上記した各成分に加えて、高誘電性エラストマー組成物の成分として、この発明の効果を妨げない範囲で、次の各成分を配合することができる。
(1)エラストマー(ゴム)とセラミックス粉末の界面の親和性や接合性を向上させ、機械的強度を改良するために、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、ジルコニアアルミネート系カップリング剤等のカップリング剤を配合する。(2)メッキ性を改良するために、タルク、ピロリン酸カルシウム等の微粒子性充填剤を配合する。(3)熱安定性を改善するために、酸化防止剤を配合する。(4)耐光性を改良するために、紫外線吸収剤等の光安定剤を配合する。(5)難燃性を改善するために、ハロゲン系もしくはリン系化合物等の難燃剤、およびアンチモン系化合物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、酸化ジルコニウム、水酸化物等の難燃助剤を配合する。(6)耐衝撃性を改良するために、耐衝撃性付与剤を配合する。(7)潤滑性を改良するために、滑剤、摺動性改良剤(固体潤滑剤、液体潤滑剤)を配合する。(8)着色するために、染料、顔料などの着色剤を配合する。(9)物性を調整するために、可塑剤、架橋剤を配合する。(10)加硫を進めるために、加硫促進剤を配合する。
【0025】
この実施形態では、高誘電性エラストマー組成物の成分として、上記した各成分のほかに、本来の目的を損なわない範囲内で、以下に挙げる各種有機または無機の充填剤を併用してもよい。ガラスファイバー、チタン酸カリウムウィスカー等のチタン酸アルカリ金属繊維、酸化チタン繊維、ホウ酸マグネシウムウィスカーやホウ酸アルミニウムウィスカー等のホウ酸金属塩系繊維、ケイ酸亜鉛ウィスカーやケイ酸マグネシウムウィスカー等のケイ酸金属塩系繊維、カーボンファイバ、アルミナ繊維、アラミド繊維などが併用できる。
【0026】
本発明において高誘電性エラストマー成形体の製造方法としては、特に制限がなく、各種の混合成形方法を用いることができる。例えば、上述した誘電性セラミックス粉末、カーボンブラック、各種添加剤、加硫剤等をエラストマーに配合して高誘電性エラストマー組成物とし、これをバンバリーミキサー、ローラー、2軸押し出し機等で混錬して製造する方法などが好適に用いられる。その後、射出成形や押し出し成形、加熱圧縮成形等により高誘電性エラストマー成形体を得ることができる。
【0027】
本発明の高周波用電子部品材料は上述の高誘電性エラストマー成形体の表面に電極を張合わせ加工、または、電極の両面に高誘電性エラストマーを張合わせ加工、あるいは高誘電性エラストマー成形体内部に電極をインサート成形することにより容易に得ることができる。
張合わせ加工に用いる接着手段として、例えば京セラケミカル社製:TFA−880CC、TFA−890EA、信越化学工業社製:E56、ニッカン工業社製:SAFV、SAFD、SAFW等の接着フィルムを利用することができる。その他、接着剤を塗布して張合わせることも可能である。
また、インサート成形については所定の位置に電極を装着した成形用金型に誘電性エラストマー組成物を充填し成形することができる。
【実施例】
【0028】
実施例1〜実施例10および比較例5〜比較例9
エチレンプロピレンゴム(JSR社製:EP35)と、比重 4.8、比誘電率 180、誘電正接 0.0003 を有するセラミックス粉末(共立マテリアル社製:ST−NAS)または比重 5.9、比誘電率 120、誘電正接 0.0002 を有するセラミックス粉末(共立マテリアル社製:HF−120)と、カーボンブラック(東海カーボン社製:シーストS)と、その他プロセスオイル(出光興産社製:PW380)を含む助剤とを表1に示す配合割合で混合し、加圧ニーダで混練り後、加熱圧縮成形にて、100 mm×80 mm×2.0 mm の成形体を得た。なお、加硫条件は、それぞれ 170℃×20分である。
各実施例および比較例にて得られた高誘電性エラストマー組成物の成形体について、比誘電率、誘電正接、引張り伸び、硬さ、柔軟性およびブリードの有無の測定を以下の方法により行なった。測定結果を表1に併記する。
【0029】
比較例1
セラミックス粉末およびカーボンブラックを配合しなかったこと以外は実施例1と同様に処理および測定を実施した。測定結果を表1に併記する。
【0030】
比較例2および比較例3
セラミックス粉末を配合しなかったこと以外は実施例1と同様に処理および測定を実施した。測定結果を表1に併記する。
【0031】
比較例4
カーボンブラックを配合しなかったこと以外は実施例1と同様に処理および測定を実施した。測定結果を表1に併記する。
【0032】
<比誘電率および誘電正接の測定>
得られた成形体を容量法により 950 MHz の周波数帯において、25℃を基準とする比誘電率および誘電正接を測定した。容量法に用いた測定装置はインピーダンスアナライザー:E4991A(アジレント・テクノロジー社製)、電極は16453A(アジレント・テクノロジー社製)をそれぞれ用いた。
【0033】
<引張り伸びおよび硬さの測定>
引張り伸びについてはJIS K 6251に、硬さについてはJIS K 6253に、それぞれ準じて測定した。
【0034】
<柔軟性試験>
得られた成形体から、100 mm×10 mm×t2.0 mm の短冊状試験片に加工し、試験片の中心部を直径 8 mm の円弧で 180°屈曲(金属円柱:長さ 50 mm を利用)させる。屈曲させた結果、容易に円形を形成した場合を柔軟性に優れると判定して「○」と、変形したが白濁(変色)した場合を柔軟性不良と判定して「△」と、変形に耐えられずにクラックが進展した場合を柔軟性に劣ると判定して「×」と、それぞれ記録する。
【0035】
<ブリードの有無確認試験>
加熱圧縮成形にて得られた 100 mm×80 mm×2.0 mm の成形体の表面を目視し、プロセスオイルのブリードの有無を観察した。
【0036】
【表1】

【0037】
実施例1〜実施例10のすべてにおいて、成形体の伸び 250%以上、硬さ 70 以下、柔軟性に優れ、プロセスオイルのブリード無であり、誘電体材料として好適である。
一方、カーボンブラックを配合していない比較例1および比較例4は成形体表面にブリードが発生しており、好ましくない。カーボンブラックの配合量が 60 重量部と多い比較例3および比較例5は誘電正接が 0.02 以上であり、好ましくない。セラミックス粉末の配合量が多い比較例6〜比較例9は比誘電率が 10 以上あり、成形体伸びが少なく、かつ硬くて柔軟性がないので好ましくない。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の高誘電性エラストマー成形体は、安価で誘電特性、柔軟性などに優れ、800〜960 MHz であるUHF帯で使用可能な高誘電性エラストマー成形体であるので高周波用電子部品材料として好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマーに誘電性セラミックス粉末を配合した高誘電性エラストマー組成物を成形してなる高誘電性エラストマー成形体であって、該成形体の引張り伸びが 250%以上、硬さが 70 以下であることを特徴とする高誘電性エラストマー成形体。
【請求項2】
周波数 950 MHz の測定において、比誘電率が 4〜10、誘電正接が 0.02 以下であることを特徴とする請求項1記載の高誘電性エラストマー成形体。
【請求項3】
前記高誘電性エラストマー組成物において、前記エラストマー 100 重量部に対してカーボンブラックを 5〜40 重量部配合したことを特徴とする請求項1または請求項2記載の高誘電性エラストマー成形体。
【請求項4】
前記エラストマー単体の比重が 0.8〜1.1 であることを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の高誘電性エラストマー成形体。
【請求項5】
前記エラストマーが、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマーからなる群より選ばれる1種または2種以上のエラストマーであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項記載の高誘電性エラストマー成形体。
【請求項6】
前記エラストマーが、エチレンプロピレンゴムであることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の高誘電性エラストマー成形体。
【請求項7】
周波数 950 MHz の測定において、配合する誘電性セラミックス粉末の焼結体の比誘電率が 50 以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか一項記載の高誘電性エラストマー成形体。
【請求項8】
周波数 800〜960 MHz であるUHF帯の電気信号を取り扱うための高周波用電子部品材料であって、
請求項1ないし請求項7のいずれか一項記載の高誘電性エラストマー成形体を用いてなることを特徴とする高周波用電子部品材料。
【請求項9】
前記高誘電性エラストマー成形体の表面に電極を張合わせ加工、または、前記成形体の内部に電極をインサート成形することにより得られることを特徴とする請求項8記載の高周波用電子部品材料。

【公開番号】特開2008−291206(P2008−291206A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309122(P2007−309122)
【出願日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(000102692)NTN株式会社 (9,006)
【Fターム(参考)】