説明

高誘電率被膜形成用組成物、該高誘電率被膜形成用組成物の製造方法、高誘電率被膜、および該高誘電率被膜を備えた電子部品

【課題】高誘電率被膜形成用組成物、該高誘電率被膜形成用組成物の製造方法、高誘電率被膜、および該高誘電率被膜を備える電子部品、特に、クラック耐性に優れた高誘電率被膜、該高誘電率被膜の製造に用いる高誘電率被膜形成用組成物、該高誘電率被膜形成用組成物の製造方法、および該高誘電率被膜備えた電子部品を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明の高誘電率被膜形成用組成物を、(A)少なくとも、
(a−1)下記一般式(1)および(2)
【化1】


(式中、nは1〜5の整数を表し、R1は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
2Si(OR33 ・・・(2)
(式中、R2は炭素数3以上のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で示されるトリアルコキシシラン化合物から選択される少なくとも1種と、
(a−2)チタンテトラアルコキシドとを含む混合物の加水分解反応による生成物と、
(B)溶剤とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高誘電率被膜形成用組成物、該高誘電率被膜形成用組成物の製造方法、高誘電率被膜、および該高誘電率被膜を備える電子部品に関し、特に、クラック耐性に優れた高誘電率被膜、該高誘電率被膜の製造に用いる高誘電率被膜形成用組成物、該高誘電率被膜形成用組成物の製造方法、および該高誘電率被膜備えた電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ゲート絶縁膜などとして使用されている高誘電率被膜は、例えば、熱硬化性樹脂からなる有機溶剤に高誘電率の無機粉末を添加したものを繊維強化材に含浸させ、次に溶剤を揮発除去して硬化させる方法、高誘電率の無機粉末を高温で加熱焼成して誘電体を形成する方法などにより製造されていた。しかしながら、前者においては、高誘電率を有する誘電体層を得ることが難しく、後者においては、焼成温度が高いため汎用性が低い、という問題があった。
【0003】
そこで、これらの問題点を考慮し、特定の無機粒子または無機粒子表面の一部に誘電性金属等を付着させた誘電体用複合粒子と、特定のシラン化合物とを含有した誘電体形成用組成物が開示されていた(下記特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2003−007135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、以上のような誘電体形成用組成物に用いられるTi−Si系の材料では、テトラアルコキシシランを使用しているため、クラック限界が低く0.2μm程度のクラックが発生し、ゲート絶縁膜に求められるクラック耐性という点で問題があった。また、ゲート絶縁膜として必要な耐電圧性においても問題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、高誘電率被膜形成用組成物、該高誘電率被膜形成用組成物の製造方法、高誘電率被膜、および該高誘電率被膜を備える電子部品、特に、クラック耐性に優れた高誘電率被膜、該高誘電率被膜の製造に用いる高誘電率被膜形成用組成物、該高誘電率被膜形成用組成物の製造方法、および該高誘電率被膜備えた電子部品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために高誘電率被膜形成用組成物の有機シラン成分およびチタンテトラアルコキシド成分などについて鋭意研究を進めたところ、特定の有機シラン成分およびチタンテトラアルコキシド成分を含む組成物を用いて形成した高誘電率被膜が優れたクラック耐性を有することを見いだし、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0008】
すなわち、本発明の高誘電率被膜形成用組成物は、(A)少なくとも、
(a−1)下記一般式(1)および(2)
【化1】

(式中、nは1〜5の整数を表し、R1は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
2Si(OR33 ・・・(2)
(式中、R2は炭素数3以上のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で示されるトリアルコキシシラン化合物から選択される少なくとも1種と、
(a−2)下記一般式(3)
Ti(OR44 ・・・(3)
(式中、R4は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で示されるチタンテトラアルコキシドとを含む混合物の加水分解反応による生成物と、
(B)溶剤とを含むことを特徴とする。
【0009】
本発明の高誘電率被膜形成用組成物において、前記(A)成分の加水分解反応による生成物は、前記トリアルコキシシラン化合物とチタンテトラアルコキシドとを含む混合物の縮合重合物および/または加水分解物、または前記トリアルコキシシラン化合物と前記チタンテトラアルコキシドとを含む混合物の縮合重合物および/または加水分解物との混合物を含有することを特徴とする。
【0010】
前記(A)成分のトリアルコキシシラン化合物としては、上記一般式(1)で示される化合物が好ましい。
【0011】
前記(A)成分は、さらに(a−3)下記一般式(4)
5Si(OR63 ・・・(4)
(R5は水素または炭素数1〜2のアルキル基を表し、R6は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で示される化合物を含む混合物の加水分解反応による生成物であることを特徴とする。
【0012】
前記(A)成分において、前記(a−1)成分と(a−3)成分との割合が重量比で1:9〜10:0であることが好ましく、前記(a−1)成分および(a−3)成分の合計と、(a−2)成分との割合が重量比で1:1〜9:1であることが好ましい。
【0013】
前記(A)成分における加水分解反応を、水と硝酸とを含有する溶媒中で行うことが好ましい。
前記硝酸濃度は、SiO2およびTiO2の換算量に対して1〜10重量%であることが好ましい。また、トリアルコキシシラン及びテトラアルコキシチタンのアルコキシシラン基総数に対して50%〜100%加水分解する水の量が好ましい。
【0014】
本発明の高誘電率被膜形成用組成物において、前記(B)成分としては、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、および3−メトキシ−1−ブタノールから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
【0015】
本発明の高誘電率被膜形成用組成物の製造方法は、少なくとも前記(a−1)成分のトリアルコキシシラン化合物と、(a−2)成分のチタンテトラアルコキシドとの混合物を加水分解反応に付す工程と、
前記加水分解反応による生成物をプロピレングリコールモノプロピルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、および3−メトキシ−1−ブタノールから選択される少なくとも1種を含む溶剤に溶剤置換し安定化させる工程とを含むことを特徴とする。
前記混合物は、さらに前記(a−3)成分を含有することもできる。
【0016】
本発明は、上記高誘電率被膜形成用組成物を基板に塗布し、前記塗布後の高誘電率被膜形成用組成物膜を加熱乾燥(焼成)して形成される高誘電率被膜、および前記高誘電率被膜を備える電子部品にも関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の高誘電率被膜形成用組成物により、クラック耐性に優れた高誘電率被膜を形成することができ、該高誘電率被膜を備えた電子部品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態について説明する。
本発明の高誘電率被膜形成用組成物は、(A)少なくとも、(a−1)下記一般式(1)および(2)
【化2】

2Si(OR33 ・・・(2)
(式中、R2は炭素数3以上のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で示されるトリアルコキシシラン化合物から選択される少なくとも1種と、
(a−2)下記一般式(3)
Ti(OR44 ・・・(3)
(上記式中、R4は炭素数1〜5のアルキル基を表す。なお、Tiに結合している(OR4)基は、同じでも異なっていてもよい。)のチタンテトラアルコキシドとを含む混合物の加水分解反応による生成物と、(B)溶剤とを含むことを特徴とする。
特定のトリアルコキシシラン化合物である上記一般式(1)〜(3)で示される成分を用いることにより、クラックの発生を防止することができる。これらの化合物の中でも、クラック耐性に加えて、さらに耐電圧特性を向上させることができる点から、上記一般式(1)で示される化合物が好ましい。なお、チタンに代えてジルコニウムあるいはタンタルを用いた場合には、製造された高誘電率被膜形成用組成物において沈殿物が発生してしまう。
なお、本発明における高誘電率被膜とは、10以上の高誘電率を有する被膜のことをいう。
【0019】
前記(A)成分における(a−1)成分の一般式(1)において、nは1〜5の整数を表し、R1は炭素数1〜5のアルキル基を表す。上記一般式(1)で示される成分を用いていると、クラック耐性に加えて、さらに耐電圧特性を向上させることができる。なお、Siに結合している3つの(OR1)基は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0020】
前記アルキル基R1としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基などを挙げることができる。また、前記nとしては、3個であることが好ましい。
【0021】
前記(A)成分における前記(a−1)成分の上記一般式(2)において、R2としては炭素数3以上のアルキル基を表す。上記R2は、炭素数3〜20のアルキル基が好ましく、炭素数3〜18のアルキル基がさらに好ましい。上記一般式(2)で示される成分を用いていると、クラック耐性を向上させることができる。
また、上記一般式(2)において、R3としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基を挙げることができる。これらの中でも、加水分解速度の点からメチル基またはエチル基が好ましい。なお、Siに結合している3つの(OR3)基は、同じであっても、異なっていてもよい。
【0022】
上記一般式(1)の化合物としては、例えば、信越化学株式会社製のLS−3380等を挙げることができる。また、上記一般式(2)の化合物としては、例えば信越化学株式会社製のLS−4230、LS−3120等を挙げることができる。
【0023】
前記(A)成分における前記(a−2)成分の上記一般式(3)において、前記アルキル基R2としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基などを挙げることができる。
【0024】
本発明の高誘電率被膜形成用組成物において、前記(A)成分の加水分解反応による生成物は、前記トリアルコキシシラン化合物およびチタンテトラアルコキシドとを含む混合物の縮合重合物および/または加水分解物を含有することを特徴とする。
前記トリアルコキシシラン化合物およびチタンテトラアルコキシドとを含む混合物を加水分解により処理すると、前記トリアルコキシシラン化合物の加水分解反応および部分縮合反応がチタンテトラアルコキシドも関与して起こり、本発明の高誘電率被膜形成用組成物に好適なシラン化合物の部分縮合物および/または加水分解物が生成されるものと考えられる。
【0025】
本発明の高誘電率被膜形成用組成物において、前記(A)成分は、さらに(a−3)成分である下記一般式(4)
5Si(OR63 ・・・(4)
で示される化合物を含む混合物の加水分解反応による生成物であることが好ましい。上記一般式(4)中、R5は水素または炭素数1〜2のアルキル基を表し、R6は炭素数1〜5のアルキル基を表す。さらに(a−3)成分を含有する混合物を用いることにより、本発明の高誘電率被膜形成用組成物により形成される高誘電率被膜中の水分を少なくすることができる。これにより、この高誘電率被膜を用いた電子部品の腐食を抑制することができる。
なお、Siに結合している(OR6)基は、同じでも異なっていてもよい。
【0026】
前記アルキル基R6としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基などを挙げることができる。これらのアルキル基の中でも、加水分解速度の点からメチル基またはエチル基が好ましい。
【0027】
前記(A)成分における、前記(a−1)成分と(a−3)成分との割合が重量比で1:9〜10:0であることが好ましく、前記(a−1)成分および(a−3)成分の合計と、(a−2)成分との割合が重量比で1:1〜9:1であることが好ましい。高誘電率被膜形成用組成物中におけるチタンの含有率が少なすぎると高誘電率を達成することができなくなる。
【0028】
前記(A)成分における加水分解反応は、水と硝酸等の酸触媒とを含有する溶媒中で行うことを特徴とする。一般に、前記(a−1)成分と(a−2)成分、または前記(a−1)成分と(a−2)成分と(a−3)成分の混合物をエタノールなどの有機溶媒中で混合し、水および硝酸などの酸を加えて、例えば20〜25℃の室温で1〜3日撹拌する。上記酸触媒としては、従来より一般的に使用されている有機酸、無機酸いずれも使用できる。有機酸の具体例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸等の有機カルボン酸が挙げられる。無機酸の具体例としては、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸等が挙げられる。酸触媒の添加量は、添加後のアルコキシシラン化合物溶液における酸の濃度が、1〜1000ppm、好ましくは、5〜500ppmの範囲内となるように設定することが好ましい。酸触媒の使用量が少なすぎると加水分解反応が十分に進行せず、逆に多すぎると反応液の経時変化が大きくなりやすく、やはり好ましくない。
【0029】
特に、酸触媒として硝酸を用いる場合には、前記硝酸濃度は、SiO2およびTiO2の換算量に対して1〜10重量%であることが製造された高誘電率被膜形成用組成物の経時安定性の点から好ましい。硝酸濃度が最適でない場合には、析出・経時変化の悪化等が起こる。
また、ここでの加水分解処理は、溶液中のアルコキシシラン化合物を完全に加水分解させてもよく、部分的に加水分解させてもよい。加水分解の程度、すなわち加水分解度は水の添加量により調整することができる。水の添加量は、反応系中の原料のアルコキシ基(Si(Ti)−OR基)の総モル数に対して、水が0.5〜1.5倍モルの範囲になるようにすることが好ましい。水の量が少なすぎると最終的に製造された高誘電率被膜形成用組成物の経時での保存安定性は高いが、加水分解度が低く、加水分解物中に多くの有機基が残存することになる。このため、この組成物を用いて被膜を形成すると、分解した有機成分に起因するガス発生が顕著になり好ましくない。逆に、製造時の水の使用量が多量であると製造された組成物の保存安定性が低下し、やはり好ましくない。
【0030】
本発明の高誘電率被膜形成用組成物において、前記(B)成分としては、従来より一般的に使用されている有機溶剤が使用できる。具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−1−ブタノールのような一価アルコール;メチル−3−メトキシプロピオネート、エチル−3−エトキシプロピオネートのようなアルキルカルボン酸エステル;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコールのような多価アルコール;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートのような多価アルコール誘導体;酢酸、プロピオン酸のような脂肪酸;アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘプタノンのようなケトンなどを挙げることができる。これらの有機溶剤は、単独で用いてもよいし2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、保存安定性の点から、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、および3−メトキシ−1−ブタノールから選択される少なくとも1種を含むことが、高誘電率被膜形成用組成物の安定性が向上するため好ましい。
【0031】
本発明の高誘電率被膜形成用組成物の製造方法は、少なくとも前記(a−1)成分のトリアルコキシシラン化合物と、(a−2)成分のチタンテトラアルコキシドとの混合物を加水分解反応に付す工程と、前記加水分解反応による生成物をプロピレングリコールモノプロピルエーテル(以下、「PGP」ともいう。)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、および3−メトキシ−1−ブタノールから選択される少なくとも1種を含む溶剤に溶剤置換し安定化させる工程とを含むことを特徴とする。
前記混合物は、さらに前記(a−3)成分を含有することもできる。
【0032】
この製造方法としては、一般に、前述のように、前記(a−1)成分と(a−2)成分、または前記(a−1)成分と(a−2)成分と(a−3)成分の混合物をエタノールなどの有機溶媒中で混合し、水および硝酸などの酸を加えて、例えば20〜25℃の室温で1〜3日撹拌することにより、前記シラン化合物の部分縮合物および/または加水分解物が生成する。次に、PGPなどの溶媒を用いて溶剤置換を行うことにより、本発明の高誘電率被膜形成用組成物を製造することができる。
【0033】
本発明の高誘電率被膜は、以上のような高誘電率被膜形成用組成物を基板に塗布し、前記塗布後の高誘電率被膜形成用組成物膜を加熱乾燥して形成することができる。例えば、まず、シリコンウェーハ等の基板上などに本発明の高誘電率被膜形成用組成物をスピンナー法などにより塗布し高誘電率被膜形成用組成物膜を形成した後、次いで加熱焼成処理し、高誘電率被膜を形成させる。上記基板上には、金属層、SiN層が形成されていてもよい。
【0034】
本発明の電子部品は前記高誘電率被膜を備えることを特徴とする。このような電子部品としては、薄層トランジスタ、半導体メモリ等の半導体装置などを挙げることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づき、本発明についてさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン66.3g、メチルトリメトキシシラン36.3g、イソプロポキシチタン56.8gを混合後、エタノール1100gを添加混合した。そこに、水37.8g、硝酸2.4gを添加し撹拌した。3日後PGP350gを加えて溶剤置換を行い、400gの本発明の高誘電率被膜形成用組成物である塗布液を得た。
上記塗布液を、1μmの段差を有する基板にスピンコートにより塗布し、ホットプレートにて80℃−150℃−200℃で各1分間の多段ベークを行い、450℃空気雰囲気下で60分間焼成し、本発明の高誘電率被膜を得た。
この形成された高誘電率被膜について、誘電率、耐電圧性、クラック耐性を、後述する方法により評価し、評価結果を表1に示した。
【0036】
<実施例2>
ペンチルトリエトキシシラン62.6g、メチルトリメトキシシラン36.3g、イソプロポキシチタン56.8gを混合後、エタノール1103.7gを添加混合した。そこに、水37.8g、硝酸2.4gを添加し撹拌した。3日後PGP350gを加えて溶剤置換を行い、400gの本発明の高誘電率被膜形成用組成物である塗布液を得た。
上記塗布液を、1μmの段差を有する基板にスピンコートにより塗布し、ホットプレートにて80℃−150℃−200℃で各1分間の多段ベークを行い、450℃空気雰囲気下で60分間焼成し、本発明の高誘電率被膜を得た。
この形成された高誘電率被膜について、誘電率、耐電圧性、クラック耐性を、後述する方法により評価し、評価結果を表1に示した。
【0037】
<実施例3>
プロピルトリエトキシシラン55.1g、メチルトリメトキシシラン36.3g、イソプロポキシチタン56.8gを混合後、エタノール1111.2gを添加混合した。そこに、水37.8g、硝酸2.4gを添加し撹拌した。3日後PGP350gを加えて溶剤置換を行い、400gの本発明の高誘電率被膜形成用組成物である塗布液を得た。
上記塗布液を、1μmの段差を有する基板にスピンコートにより塗布し、ホットプレートにて80℃−150℃−200℃で各1分間の多段ベークを行い、450℃空気雰囲気下で60分間焼成し、本発明の高誘電率被膜を得た。
この形成された高誘電率被膜について、誘電率、耐電圧性、クラック耐性を、後述する方法により評価し、評価結果を表1に示した。
【0038】
<実施例4>
オクタデシルトリエトキシシラン55.1g、メチルトリメトキシシラン36.3g、イソプロポキシチタン56.8gを混合後、エタノール1111.2gを添加混合した。そこに、水37.8g、硝酸2.4gを添加し撹拌した。3日後PGP350gを加えて溶剤置換を行い、400gの本発明の高誘電率被膜形成用組成物である塗布液を得た。
上記塗布液を、1μmの段差を有する基板にスピンコートにより塗布し、ホットプレートにて80℃−150℃−200℃で各1分間の多段ベークを行い、450℃空気雰囲気下で60分間焼成し、本発明の高誘電率被膜を得た。
この形成された高誘電率被膜について、誘電率、耐電圧性、クラック耐性を、後述する方法により評価し、評価結果を表1に示した。
【0039】
<比較例1>
オルト珪酸エチル55.5g、イソプロポキシチタンを混合反応後、エタノール710g添加混合した。そこに、水22.2g、硝酸1.2gを添加し撹拌を行った。5日後、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール300gを加えて溶剤置換を行い、240gの被膜形成用組成物である塗布液を得た。
上記塗布液を、1μmの段差を有する基板にスピンコートにより塗布し、450℃空気雰囲気下で60分間焼成し、被膜を得た。
この形成された被膜について、誘電率、耐電圧性、クラック耐性を、後述する方法により評価し、評価結果を表1に示した。
【0040】
<比較例2>
メチルトリメトキシシラン36.3g、イソプロポキシチタン28.4gを混合反応後、エタノール710g添加混合した。そこに、水19.4g、硝酸1.2gを添加し撹拌した。5日後にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」という。)300gを加えて溶剤置換を行い、240gの塗布液を得た。
しかしながら、この塗布液は、白色沈殿が発生し、使用することができなかった。
【0041】
<比較例3>
PGMEAを乳酸エチルに代えた以外は、比較例2と同様に被膜形成用組成物である塗布液を調製した。
しかしながら、この塗布液は、白色沈殿が発生し、使用することができなかった。
【0042】
以下のように、1.誘電率測定、2.クラック耐性評価、および3.耐電圧性測定を行った。
【0043】
<1.誘電率測定>
誘電率は、誘電率測定装置SSM495(日本SSM株式会社製)を用いて、被膜の膜厚方向の真空に対する比誘電率を測定した。
【0044】
<2.クラック耐性評価>
形成した被膜をSEMで観察し、クラックの有無を確認した。
【0045】
<3.耐電圧性測定>
耐電圧性は、誘電率測定装置SSM495(日本SSM株式会社製)を用いて、膜が破壊された電圧値を測定した。この値は、1.0MV/cm以上が好ましく、1.5MV/cm以上がより好ましい。
【0046】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0047】
以上のように、本発明にかかる高誘電率被膜形成用組成物は、高誘電率被膜および該高誘電率被膜を、例えばゲート絶縁膜として備える電子部品に有用であり、特に、クラック耐性に優れた高誘電率被膜、および該高誘電率被膜を備えた電子部品に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)少なくとも、
(a−1)下記一般式(1)および(2)
【化1】

(式中、nは1〜5の整数を表し、R1は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)
2Si(OR33 ・・・(2)
(式中、R2は炭素数3以上のアルキル基を表し、R3は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で示されるトリアルコキシシラン化合物から選択される少なくとも1種と、
(a−2)下記一般式(3)
Ti(OR44 ・・・(3)
(式中、R4は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で示されるチタンテトラアルコキシドとを含む混合物の加水分解および/または部分縮合物と、
(B)溶剤とを含むことを特徴とする高誘電率被膜形成用組成物。
【請求項2】
前記(A)成分のトリアルコキシシラン化合物が、上記一般式(1)で示される化合物である請求項1に記載の高誘電率被膜形成用組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が、さらに(a−3)下記一般式(4)
5Si(OR63 ・・・(4)
(R5は水素または炭素数1〜2のアルキル基を表し、R6は炭素数1〜5のアルキル基を表す。)で示される化合物を含む混合物の酸触媒反応による生成物であることを特徴とする請求項1または2に記載の高誘電率被膜形成用組成物。
【請求項4】
前記(a−1)成分と(a−3)成分との割合が重量比で1:9〜10:0であることを特徴とする請求項3に記載の高誘電率被膜形成用組成物。
【請求項5】
前記(a−1)成分および(a−3)成分の合計と、(a−2)成分との割合が重量比で1:1〜9:1であることを特徴とする請求項4に記載の高誘電率被膜形成用組成物。
【請求項6】
前記(A)成分を、水と硝酸とを含有する溶媒中で加水分解反応させることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の高誘電率被膜形成用組成物。
【請求項7】
前記硝酸濃度が、SiO2およびTiO2の換算量に対して1〜10重量%であることを特徴とする請求項6に記載の高誘電率被膜形成用組成物。
【請求項8】
前記(B)成分が、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、および3−メトキシ−1−ブタノールから選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の高誘電率被膜形成用組成物。
【請求項9】
少なくとも前記(a−1)成分のトリアルコキシシラン化合物と、(a−2)成分のチタンテトラアルコキシドとの混合物を加水分解反応に付す工程と、
前記加水分解反応による生成物をプロピレングリコールモノプロピルエーテル、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、および3−メトキシ−1−ブタノールから選択される少なくとも1種を含む溶剤に溶剤置換し安定化させる工程とを含むことを特徴とする高誘電率被膜形成用組成物の製造方法。
【請求項10】
前記混合物が、さらに前記(a−3)成分を含有することを特徴とする請求項9に記載の高誘電率被膜形成用組成物の製造方法。
【請求項11】
請求項1から8のいずれか1項に記載の高誘電率被膜形成用組成物を基板に塗布し、前記塗布後の高誘電率被膜形成用組成物膜を加熱焼成して形成される高誘電率被膜。
【請求項12】
請求項11に記載の高誘電率被膜を備える電子部品。

【公開番号】特開2006−45358(P2006−45358A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−228684(P2004−228684)
【出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】