説明

高輝度高彩度虹彩顔料およびその製造方法

【課題】高輝度かつ高彩度を発揮する虹彩顔料、特に平均粒子径の小さな薄片状基質を用いつつ高輝度かつ高彩度を実現した虹彩顔料を提供する。
【解決手段】薄片状基質表面がCe、Sn、Ti、Fe、ZnおよびZrからなる群から選択される1種または2種以上の金属を含む金属酸化物層を少なくとも2層以上有する多層被覆層で被覆された虹彩顔料。多層被覆層の最下層が、Ce、Sn、およびFeからなる群から選択される金属を含む金属酸化物層であり、該多層被覆層はSnを含む金属酸化物層とその上面に接するTiを含む金属酸化物層とからなる積層単位を1または2以上含む虹彩顔料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高輝度かつ高彩度を有する虹彩顔料に関する。特に小粒径の薄片状基質を用いた場合において、従来にない輝度および彩度に優れた効果を発揮する虹彩顔料に関する。更には、その製造方法並びにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、雲母等を薄片状基質として用い、その表面に酸化チタン・酸化鉄等の高屈折率の金属酸化物被覆層を形成した真珠光沢を発する虹彩顔料(パール顔料)が知られており、プラスチック、塗料、インク、化粧料等に広く用いられてきた。このような虹彩顔料は、高屈折率の金属酸化物被覆層表面からの反射光およびその被覆層と薄片状基質との界面からの反射光の干渉作用により発色せしめたものである(特許文献1および特許文献2参照)。
【0003】
しかしながら、従来の虹彩顔料は、典型的には、平均粒子径が2〜100μmの雲母等の薄片状基質を用い、これに酸化チタンおよび/または酸化鉄等の金属酸化物被覆したものであるが、これは輝度および彩度において、満足すべきものではなかった。この原因は、(1)粒子径が小さくなるにつれて粒子周縁(エッジ)部増加による光散乱の割合が増加し、相対的に薄片状粒子平面からの平行光反射の割合が低下し、結果として光沢が低下するという形状からくる必然的な原因と、(2)被覆金属酸化物の前駆体である金属水和物を被覆する際に薄片状基質の粒子同士が凝集し、その重なり合った部分に金属水和物の未被覆部分を生じ、また、その金属酸化物被覆層の密度が十分でなく(疎な部分を有する為に光学的屈折率が小さくなり)、そして光反射表面である被覆層表面の平滑性が不十分であるという被覆条件・方法に基づく技術的な原因の2つに分けられる。
そして、当然に薄片状基質の粒子が小さくなる程、界面エネルギーが増加して、凝集性が増大し、個々の薄片状基質粒子表面上に均質な金属酸化物被覆層が得難くなる。その為、得られたパール顔料は輝度、彩度を十分発揮することができなかった。
【0004】
これまでに、輝度を上げ干渉色の彩度を向上させるために種々の研究開発がなされ、開示されている。例えば、被覆される金属酸化物の屈折率を向上させるため、製造工程において焼結助剤を添加するもの(特許文献3参照)、あるいは光学的屈折率を上げるために被覆される金属酸化物粒子の結晶を改変するもの(被覆TiO結晶のルチル化;特許文献4、特許文献5および特許文献6参照)、更には、被覆層界面の数を増して光反射面を増やし、それらの干渉の重なりにより彩度の向上を図るため異種金属酸化物により多層被覆としたもの(特許文献7、特許文献8、特許文献9)などが開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの技術によっても、薄片状基質の粒子径が小さくなればなる程、輝度・彩度において満足すべき十分な効果は得られなかった。
一方、現実的には市場において、特に塗料分野からの、パーティクル(粒子)感がなく、深みのある発色を有する虹彩顔料への要求、またオフセット印刷や筆記用具用インク分野などの粒子の大きさの制限される分野から、高輝度、高彩度を発揮する小粒径虹彩顔料への要求が高まってきている。
【0006】
【特許文献1】特公昭43−25644号公報
【特許文献2】特公昭49−3824号公報
【特許文献3】特開平10−279828号公報
【特許文献4】特公昭54−34010号公報
【特許文献5】特公昭56−43068号公報
【特許文献6】特開昭62−34963号公報
【特許文献7】特表2000−501774号公報
【特許文献8】特表2000−517374号公報
【特許文献9】特表2001−5210296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の課題は、上記従来の問題点を解決し、高輝度かつ高彩度を発揮する虹彩顔料、特に平均粒子径の小さな薄片状基質を用いる場合であっても高輝度かつ高彩度を実現した虹彩顔料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題に対し、鋭意検討する中で、薄片状基質上に主として特定の金属からなる金属水和物層を複数層形成させる際に薄片状基質の凝集を少なくすることにより薄片状基質表面上の金属水和物被覆層を均一なものにできること、また被覆層の細孔容量を低下させることにより屈折率の向上を図ることができることに着目し、さらに研究を進めた結果、高輝度かつ高彩度の虹彩顔料に係る本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、薄片状基質表面がCe、Sn、Ti、Fe、ZnおよびZrからなる群から選択される1種または2種以上の金属を含む金属酸化物層を少なくとも2層以上有する多層被覆層で被覆された虹彩顔料に関する。
さらに、本発明は、多層被覆層の最下層が、Ce、Sn、およびFeからなる群から選択される金属を含む金属酸化物層であり、該多層被覆層はSnを含む金属酸化物層とその上面に接するTiを含む金属酸化物層とからなる積層単位を1または2以上含む、前記虹彩顔料に関する。
また、本発明は、最下層がSnを含む金属酸化物層およびその上面に接する層がTiを含む金属酸化物層である、前記虹彩顔料に関する。
さらに、本発明は、多層被覆層が、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む金属酸化物層を有する、前記虹彩顔料に関する。
また、本発明は、アルカリ土類金属が、Mgおよび/またはCaである、前記虹彩顔料に関する。
さらに、本発明は、比表面積が10m/g以下であり、薄片状基質の表面積1m当りの細孔容量が0.006ml以下である、前記虹彩顔料に関する。
また、本発明は、薄片状基質が、雲母、合成雲母、シリカフレーク、アルミナフレーク、ガラスフレーク、薄片状酸化鉄および金属フレークからなる群から選択される、前記虹彩顔料に関する。
【0010】
さらに、本発明は、薄片状基質の懸濁液に、水溶性高分子および/または水溶性窒素化合物を添加することにより、前記基質を処理し高分散性懸濁液とし、次いで当該懸濁液に、金属塩類および塩基性水溶液を添加することにより処理された基質表面に金属水和物層を被覆することを含む、虹彩顔料の製造方法に関する。
また、本発明は、金属塩類および塩基性水溶液の添加と同時または添加直後にアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の水溶液を付加的に添加することを含む、前記製造方法に関する。
さらに、本発明は、水溶性高分子が、ポリエチレングリコールである、前記製造方法に関する。
また、本発明は、前記製造方法によって得られる虹彩顔料に関する。
さらに、本発明は、前記虹彩顔料の塗料、印刷用インキ、プラスチック、レーザーマーキング用ドーパント、非飛散性顔料調製物、非飛散性顔料顆粒または化粧料への使用に関する。
【0011】
本発明の虹彩顔料は、薄片状基質表面に特定の金属を含む金属酸化物層を複数層被覆する特定の構成を採用することにより、薄片状基質を被覆する被覆層が均一なものとなり、従来にない高輝度・高彩度虹彩顔料、特に平均粒子径の小さな薄片状基質を用いる場合であっても高輝度かつ高彩度を実現した虹彩顔料を提供することができる。本発明の虹彩顔料は、細孔容量の低下されたものであり、nmオーダーの小さな金属酸化物粒子が基質表面上に緻密に均一に被覆されていることを特徴とし、表面が平滑なため、高輝度・高彩度が実現されたものである。
【0012】
また本発明の方法は、簡便な湿式法により薄片状基質表面に金属酸化物層を被覆するものであり、上述の高輝度・高彩度の虹彩顔料を製造することができる。本発明の方法によれば、薄片状基質の凝集を少なくすることで、粒径の小さい薄片状基質であっても、表面上の被覆層を驚くほどに均一なものにできる。すなわち、従来の虹彩顔料の製造方法では、雲母等の平均粒子径30μm以下の小粒子薄片状基質を水に懸濁させ、pH1.5〜pH3.0の酸性下で金属塩水溶液と塩基性水溶液とから金属の水和物を薄片状基質上に被覆させるが、この際、雲母が凝集する等電点(白雲母の等電点:pH=0.95)に近似しているため、雲母が凝集し、金属水和物を雲母表面に均一に被覆させることが困難であった。また、被覆させる金属の水和物の等電点にも近く(TiO(ルチル)の等電点:pH=4.7)、金属水和物も凝集により雲母表面に薄膜状に被覆できないこと等の問題があった。
一方、本発明の方法によれば、界面活性剤や水溶性高分子を薄片状基質表面へ吸着させることにより、薄片状基質の懸濁液の分散安定性を驚くほどに高めることができる。また、被覆させる金属の水和物も界面活性剤や水溶性高分子化合物と金属イオンのキレート作用により、薄膜状基質表面に緻密な一次粒子の金属水和物を被覆することができ、高輝度・高彩度の虹彩顔料を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.本発明を、本発明で採用する製造方法に沿って以下に詳細に述べる。
(1)A工程:薄片状基質の懸濁液に、水溶性高分子又は水溶性窒素化合物を添加して、加熱する工程(薄片状基質の表面処理工程)
この工程では、薄片状基質を水へ懸濁し、この懸濁液に水溶性高分子および/または水溶性窒素化合物を添加して、薄片状基質を表面処理する。本工程により薄片状基質を水溶液に高分散化できる。
【0014】
本発明で用いられる薄片状基質としては、雲母、合成雲母、シリカフレーク、アルミナフレーク、ガラスフレーク、薄片状酸化鉄(MIO(マイカ状酸化鉄))、各種金属フレーク、不動態化処理された金属フレーク、例えば不動態化アルミニウムフレーク、不動態化チタニウムフレーク、さらにはステンレスフレーク、グラファイト等が挙げられる。シリカフレークとしては特表平7−500366が、アルミナフレークとしては特開平7−260959、不動態化処理アルミニウムフレークとしては特願2001−234461が挙げられる。好適には入手のし易さ、汎用性の点から、雲母が用いられる。隠蔽力を必要とする分野へ使用する場合は、不透明な薄片状基質の例として、各種金属フレーク、不動態化処理された金属フレーク(特願平2001−234461)、グラファイトなどが好適である。
【0015】
使用する薄片状基質の粒子径の大きさは、従来の虹彩顔料として採用されている範囲で任意に選ぶことができるが、汎用性の面から平均粒子径2〜100μm、アスペクト比(平均径/平均厚さ)が5〜200の、好ましくは10〜100のものが適当である。特に本発明の効果を発揮するのは従来の虹彩顔料との比較において、平均粒子径が30μm以下、好ましくは20μm以下、より好ましくは10μm以下のような小さな粒子径のものを用いた場合である。粒子径が小さくなればなるほど、薄片状基質同士の凝集が起こり易い傾向にあり、本発明を採用することによりその凝集が防止され、本発明の効果がより顕著に発揮できる。
【0016】
上記で選ばれた薄片状基質を水に懸濁させ、水溶性高分子および/または水溶性窒素化合物を添加する。これは、本発明の主たる解決課題である懸濁液中の薄片状基質粒子間の凝集を防ぐ表面処理のためである。これにより後の被覆工程において、薄片状基質表面への金属水和物の未被覆部分を少なくすることができる。
本発明で用いられる水溶性高分子としては、水溶性の非イオン性界面活性剤、例えば各種アルコール類にアルキレンオキサイドを重合したものが挙げられる。例えばエチレングリコールやプロピレングリコールなどの2官能性アルコールを用いた場合のポリアルキレングリコール類が挙げられる。具体的にはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、それらのランダム重合体、ブロック重合体いずれも用いられる。水溶性の点からポリエチレングリコールのランダム・ブロック重合体では、できるだけオキシエチレン基構成部分の多いもの(親水性の高い化合物)が選ばれる。水溶性であれば、何れも問わない。特に分子量が5000以下のポリエチレングリコールが好ましい。用いられる水溶性高分子は別に前もって水溶液としておいて用いても、また水溶解性が高い場合は、そのまま懸濁液に直接添加しても良い。水への溶解処理操作に容易な点から、常温で液状のものがより好ましい。
【0017】
水溶性高分子の使用量は懸濁液中の薄片状基質の濃度、並びにその粒子の大きさにより変化するが、平均粒子径が2〜100μmの薄片状基質を用いた場合、薄片状基質100重量部に対し0.1〜5重量部が好ましい。当然に粒子径が小さい場合、単位表面積が増加するため、この使用量はこの範囲で増やす必要がある。本発明おいては、水溶性高分子の代わりに、または併用して水溶性窒素化合物を用いることができる。
水溶性窒素化合物としては、例えば、尿素、ビュレット、グアニジン、水溶性アミン類が挙げられる。水溶性アミン類としては一級、二級、三級アミン類、ジアミン類、さらにはそれらの塩類および四級アミン塩類が含まれる。水溶性アミン塩としては、例えば(ポリ)ヒドロキシアルキルアミン塩類、ポリオキシエチレンアミン塩類、ヒドロキシアミン、その塩、ポリオキシエチレンアミン、エチレンジアミン、その塩類などが挙げられる。その使用量は上述の場合と同量の範囲が選ばれる。また、水溶性高分子と水溶性窒素化合物と併用して使用することもできる。
【0018】
次いで後工程(以下に記載の「B工程」または「D工程」をいう)で採用される各種金属塩水溶液を添加する所定のpHに、塩酸、硫酸、硝酸等の鉱酸類、または苛性ソーダや苛性カリ等の塩基性化合物を用いて調整し、次いで約85℃に昇温する。例えば、Ce塩を用いる場合はpHを7〜9に、Ti塩やSn塩の場合はpHを1.5〜2.0に、Fe塩の場合はpHを2.5〜3.5に調整する。これらのpHはいずれも、本発明においてそれらの金属塩水和物を以後の工程において薄片状基質上に被覆するための好適な範囲である。
【0019】
(2)B工程:懸濁液に、薄片状基質に被覆する金属塩類および塩基性水溶液を攪拌しながら所定pHに保ちつつ同時に添加し、さらにこれを積層する各金属塩類についてそれぞれ繰り返す工程
この工程は、A工程で得た薄片状基質懸濁液に、別に前もって調製しておいた所望の各種金属塩水溶液と塩基性水溶液とを同時に用いて、それらを所望により順次および/又は繰り返し添加・加水分解して、金属酸化物層の前駆体となるそれらの金属水和物の複数の被覆層を析出させる工程である。本工程により、多層被覆層となる金属水和物層が薄片状基質に積層される。
【0020】
本発明で用いる金属塩としては、Ce塩、Sn塩、Ti塩、Fe塩、Zn塩、Zr塩が挙げられる。ここでCe塩、Sn塩、Fe塩は好ましくは薄片状基質上表面に直接被覆する層(本明細書において、「最下層」という)として用いる。これは、その上層に被覆する他の金属水和物層の緻密性を向上させるためであり、本発明の重要なポイントである。Ti塩、Zr塩、Zn塩はそれらによって最終的に得られる金属酸化物の屈折率は高く、可視域の特定波長での吸収が無いため、専ら干渉による発色の目的で最下層以外の被覆層として用いる。Ce塩は、緻密性向上のための最下層に用いるだけでなく、その酸化物の有する青色の固有色(マストーン)を発色させる目的で最下層以外の被覆層にも用いることができる。Sn塩は最下層に用いるだけでなく、その酸化物の屈折率が高いため干渉色の発色のため最下層以外の被覆層としても用いることができる。Fe塩についても、緻密性向上の為に最下層に用いるだけでなく、屈折率が高いため干渉色の発色の目的で最下層以外の被覆層として、さらにはその酸化物が赤色系の固有色(マストーン)を有するため、赤色系で且つ干渉色を得る目的でも用いることができる。
【0021】
上述金属塩は水溶性のものであればいずれでも良いが、主に、それらの塩化物、硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩などが用いられる。また、本発明においてはこれらの金属塩は、それ自体が水溶性でなくとも鉱酸類を用いてpHを下げて水溶液にして用いることができる。
【0022】
本工程で用いる金属塩は、Ce塩としては塩化セリウム、硫酸セリウム、硝酸セリウム、Sn塩としては二塩化錫、四塩化錫、硫酸第一・第二錫、硝酸第一・第二錫が挙げられる。Ti塩類としては、例えば四塩化チタン、硫酸チタニル、硫酸チタン、三塩化チタンなどが挙げられる。Fe塩としては、塩化第一・第二鉄、硫酸第一・第二鉄、硝酸第二鉄、Zn塩としては塩化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、Zr塩としてはオキシ塩化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム等が挙げられる。
【0023】
本発明で採用される金属水和物をA工程で得た表面処理された薄片状基質上へ被覆する方法としては、別に前もって調製した上述の各種金属塩水溶液と塩基性水溶液とを同時に用いて、所定のpHに維持しながらその懸濁液に添加する。この際に用いる塩基性化合物としては、入手容易な点から水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適である。適宜アンモニウム水溶液、他の水溶性アミン類なども用いることができる。ここで、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムを用いた場合は、それらは本発明で、後から述べる(「D工程」において)焼結剤としてのアルカリ金属化合物の役割を兼ね備え、好ましい。即ち、塩基性化合物としてアルカリ金属水酸化物を用いる場合、それは単にpH調整の為のだけでなく、同時に焼結作用を兼ね備えることになる。
【0024】
本発明で好適に採用される複数の金属酸化物被覆層とするその組合わせとしては、上記の条件に従う範囲内で任意に選ぶことができるが、特に以下のケースが挙げられる。
即ち、本発明における複数の金属酸化物層が最下層をSnOとし、次いでTiOの順で積層し、かつ、その2層(SnO−TiO)から成る積層単位が少なくとも一回以上繰り返された被覆層としたものは、本発明の目的とする高輝度かつ高彩度の虹彩顔料を得るに好適なものである。
【0025】
この組み合わせの積層からなる虹彩顔料を得るには、前駆体であるそれらのSn塩水溶液とTi塩の水溶液を交互に、順次、目的とする色相を得るための所定の量をA工程を経た懸濁液に添加する。これらSn塩、Ti塩の金属塩水溶液を添加するときのpHは1.5〜2.0の範囲が適当である。Ti水和物被覆層を形成する際に、その下層に存在するSn水和物により、Ti水和物の粒子径が微細なものとなり、またTi水和物層はルチル化される。従って、これらが順次交互に積層されることによりTi水和物層が上下からSn塩が接触するため従来よりも有効にルチル化され、結果的に高屈折率のTiO被覆層が得られる。先の従来技術にて引例に記載の特公昭56−43068(特許文献5)では、被覆層の順がルチル/SnO/ルチルであり、そのSnOは第一錫塩と酸化剤を用いて被覆するのに対して、本発明では最下層をSnOとし、酸化剤を用いず直接第二錫塩を使用することが異なっており、その上層に緻密な層を形成するのに効果があり、同時にルチル化の作用も有する点で有利である。
【0026】
また、最下層をCeOまたはFeとし、その上層に、SnO層、次いでTiO層(SnO−TiO)を少なくとも一回繰り返した金属酸化物被覆層としたものが挙げられる。そのためには最下層としてCe塩水溶液またはFe塩水溶液を添加し、次いでSn塩水溶液、次いでTi塩水溶液の順で添加する。その際のpHは上述の条件に設定する。
【0027】
Ce塩を使用して青色のマストーンを生じさせる場合、Ce塩水溶液の添加は最下層に限らず、それより上層の他の金属酸水和物層の中間に用いることもできる。
【0028】
さらに本発明において、干渉色を発色させる虹彩顔料としては、最下層をFe層とし、その上層にSnO層、さらには、TiO層(SnO−TiO)を組み合わせて多層被覆としたものが含まれる。当該虹彩顔料を得るには、Fe塩水溶液を用いてその金属水和物を最下層として生成させ、さらにその上層にそれら2種の金属塩水溶液を任意の順に被覆する。好適には、最下層をFe塩とし、次いでSn塩、Ti塩の順で少なくとも一回のSn塩−Ti塩の組み合わせ順序で上述のそれぞれの金属水和物生成に適するpHに維持しながら添加する。また、Fe塩を多く用いることにより赤色系のマストーンを有しつつ干渉色を発する虹彩顔料を得ることもできる。当該マストーンを得る目的でのFe塩の使用は最下層だけでなく、その上層に用いるSnOとTiO層の中間層にも用いることができる。
【0029】
複合金属酸化物被覆層を有するケースとしては、最下層をFe塩とし、次いでSn塩、次いでFe/Ti塩を添加する場合が挙げられる。ここで「Fe/Ti塩」とはFe塩とTi塩の混合水溶液を示す。当該ケースの場合、最外層はTiとFeの複合金属酸化物となり、高彩度の黄色の色相のマストーンを有する干渉色を発揮する虹彩顔料となる。
本発明で採用され金属塩水溶液の添加量は所望の干渉色を発揮せしめるに最大となるような金属酸化物被覆層の厚さとする為の量である。即ち具体的には光の干渉原理に従って(目指す色相の波長における光の表面反射と(各)界面反射との位相が合うことにより干渉が増強されるように)、電子計算機処理(例えばSoftware Spectra Inc製「TF−Calc」)により、各種色相の色彩強度(赤−緑の指標であるa値および、黄−青の指標であるb値とから、彩度Cが
【数1】

の計算式により算出される)をシミュレーションする。そして、所望の色相の最大の彩度となる条件を見出し、そして目的とする色相の厚みとなるように、被覆されるベースの表面積を基に目指す所定の金属塩水溶液の量を懸濁液に添加する。このようにして、上述の各種金属塩水溶液を添加し、その実際に得られた彩度の結果を基に、金属塩水溶液の使用量を決定する。
【0030】
例えば、薄片状基質が雲母で平均粒子径が5μmで、例えば、酸化チタン層を被覆する場合、チタン塩水溶液を用いて黄色の干渉色を発現させるためには200〜220nmの厚さになるような量を懸濁液に添加する。また複合金属酸化物層を被覆する場合は、これらの金属塩の混合した水溶液を予め調製しておいて、それを用いて同様にして添加する。本発明において、複数の上述の金属水和物層を形成するために、それらの予め調製した各種金属塩水溶液を用いて、それらを懸濁液に順次および繰り返し添加する。
【0031】
(3)D工程:B工程中の各種金属塩類と同時にまたは添加後にアルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物の水和物層を被覆する工程。
本工程は乾燥・焼成(以下に記載の「C工程」に含まれる操作)により、焼結作用を促進させる為の金属化合物(本明細書全般に渡って、「焼結剤」という。)の水溶液を添加するB工程において付加的に含む工程である。
当該焼結剤としてはNa、Kなどのアルカリ金属水酸化物(前述)、Ca、Mgなどのアルカリ土類金属塩が挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、それらの塩化物、塩酸塩、硝酸塩が挙げられるが、添加時に水溶性であれば何れのもでも良い。好ましくは、アルカリ土類金属においては、Mg塩、Ca塩を用いる。本発明においては、複数の金属水和物層の少なくとも最外層に焼結剤による水和物層を被覆することを必須とし、B工程中の各種金属塩類の水溶液の添加と同時にまたはそれらの個々の金属塩水溶液を添加した直後に焼結剤を添加する方法も含まれる。この工程を経て、焼結剤は後の「C工程」の乾燥・焼成において、焼結効果を発揮し、複数の金属酸化物層の細孔容量を減少させ屈折率の向上に寄与する。
【0032】
本発明で採用されるアルカリ金属塩を用いる場合は、B工程において各種金属塩水溶液の添加時にpH調整に必然的に用いられる水酸化Na、水酸化Kの塩基性化合物も含まれる。これらの水酸化アルカリ金属は混合系でも用いることができる。最外層に焼結作用被覆層を必須とするのは、気孔率を低下させて屈折率の向上に寄与するのみでなく、最外層表面の平滑性を向上させ、結果的に輝度を上げるためである。
【0033】
(4)C工程:B工程またはD工程を経た懸濁液を、ろ過・分離、洗浄、乾燥し、所望により焼成する工程
この工程は、金属水和物、焼成用金属水和物を析出させた懸濁液中の固形分をろ過・分離、洗浄、乾燥、焼成する工程である。
本工程において、B工程、またはD工程を経た懸濁液をろ過・分離、水洗、乾燥し、更に焼成して本発明の虹彩顔料を得ることができる。乾燥は遊離水を除去するために行うものであり、焼成は被覆層の金属水和物をできるだけ多くの比率で金属酸化物とするためである。また、D工程で付加した焼結剤の水和物層による焼結作用(シンターリング)を有効に発揮させるためである。
焼成温度は用いた薄片状基質の耐熱性に応じてその限度内で行う。例えば、雲母を用いた場合、焼成は約800℃付近が、反対に耐熱性の低い金属フレークなどの場合それに応じてその限度内の温度を適宜選択し適用する。
【0034】
このようにして、本発明で得られた虹彩顔料の細孔容量(ml/m)は、0.006ml/m以下であることを特徴とし、また得られた虹彩顔料の比表面積は10m/g以下(BET法)である。そのため被覆された被覆層の表面が平滑均一であり、小さな金属酸化物粒子が被覆されたものである。金属酸化物粒子の粒子径は、SEM観察によれば、50nm以下であることを特徴とする。なお、本明細書において「細孔容量」とは、「Autosorb-6」(ユアサアイオニックス社製)により測定した全細孔容積(ml/g)を薄片状基質の比表面積(m/g)(BET法)で除した値をいう。
さらに、全細孔容積から気孔率(%)Pを算出し{気孔率=100×全細孔容積/(全細孔容積+(被覆金属酸化物量(wt%)/密度(g/ml)))}、さらにYoldus(B. E. Yoldus, Appl. Opt., 19, P1425, (1980);および河原著、日本化学会編、学会出版センター、化学総説「表面の改質」No. 44、1984、P139−146)の気孔率と屈折率の関係式{n=(n−1)(1−P/100)+1、ここでnは、算出される見掛けの屈折率、nは真屈折率、Pは気孔率(%)を指す。}による屈折率が算出できる。本発明によって得られる虹彩顔料の屈折率を、被覆金属酸化物の主要成分であるTiO(真密度d:4.27、真屈折率n:2.7として)を被覆金属酸化物の全構成成分と近似して当該算出式により計算すると2.33以上と高いものであった。
【0035】
こうして得られた虹彩顔料は、各種装飾分野、塗料、プラスチック、インキ、印刷、化粧料、偽造防止用の塗料・インク・プラスチック練りこみ、レーザーマーキング用ドーパント、非飛散性顔料調製物、非飛散性顔料顆粒などの各種用途に使用される。
とりわけ、本発明で得られる虹彩顔料は、小粒径の薄片状基質に応用した場合、塗膜中で粒子感が生じなく、かつ高彩度・高輝度であるために塗装での粒子感を好まない塗料分野に好適に、また粒子径の大きさの制限される分野、例えばオフセット印刷、筆記用具用のインクに好適に用いられる。本発明によって得られたパール顔料は深み感があり、偽造防止分野(印刷、プラスチックへの練りこみ)などに応用される。本発明によって得られた虹彩顔料は、更に公知の(例えば下記に示す)有機顔料、染料、レーキ化染料、無機顔料を用いて、メカノケミカル法によってその表面に被覆し、新たな色材(例えば、特開平5−214257)とすることができる。それらの吸収による固有色と干渉作用による干渉色を兼ね備えた鮮やかな発色が得られる。
【0036】
また、本発明によって得られた虹彩顔料は、各種付加的な表面処理を施すことによりそれらの用途に応じた要求品質に合った顔料とすることができる。例えば、屋外塗料、自動車塗料用途などで要求される耐光性、耐水性、耐候性の処理(例えば特開昭63−130673、特開平1−292067等)や、例えば塗料分野、印刷分野で要求される高配向性(リーフィング効果)処理(例えば特開2001−106937、特開2001−164150、特開2001−220522等)、水系塗料または水系印刷インク用の水系処理(例えば特開平8−283604等)、化粧品用途でのシリコーンによる分散性改良やハイドロジェンポリシロキサンによる撥水撥油処理などや、また樹脂へ使用する場合のウエルドライン防止表面処理(例えば特開平3−100068)、また、分散性向上(例えば特開平8−283604)などの各種処理等を施すことができる。
【0037】
本発明によって得られた虹彩顔料の使用例
以下に本発明によって得られる虹彩顔料および上述のそれらの各種処理された顔料の使用方法を具体的に述べる。本発明によって得られる虹彩顔料は、塗料、印刷インキ、樹脂組成物、化粧料、レーザーマーキング用ドーパント、非飛散性顔料調製物、非飛散性顔料顆粒等、様々な用途に使用される。特に、小粒径での、発色性(彩度、輝度)が高いことから、粒子感が生じるのが好ましくない分野、粒子の大きさが制限される分野に好適に用いることができる。特に記載はしていないが、下記例において本発明による虹彩顔料とは、上述の各種処理を施したものも含む意である。
【0038】
(1)塗料への使用
塗料としては、有機溶剤型塗料及び、NAD系、水系塗料、エマルション塗料、コロイダル塗料、粉体塗料が例示できる。本発明による虹彩顔料は、小粒径での発色(彩度)が高いことから、粒子感を望まない自動車塗料などに好適に用いられる。屋外、自動車用の塗料用途では上述の耐光性、耐水性、耐候性処理した顔料の使用が好ましい。
【0039】
本発明による虹彩顔料は、塗料樹脂固形分100重量部に対して1〜100重量%配合することができる。1〜70重量%が好ましい。特に、1〜20重量%が好ましい。なお、本発明における顔料は、分散性向上のため、顔料表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤にて処理することができる。本発明における塗料の樹脂成分としては、例えば、アクリル樹脂、アルキド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アミノ樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、セルロース樹脂、ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が上げられる。これらは1種、または2種以上を組合せて用いることもできる。また水系塗料においてはアクリル−メラミン樹脂等による架橋性樹脂を含有するエマルション性樹脂等が挙げられる。
【0040】
塗料へ配合するもとのとしては、併用顔料、タレ防止剤、粘度調整剤、沈降防止剤、架橋促進剤、硬化剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線安定剤等を含有することができる。併用顔料としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、酸化クロム、亜鉛華、硫化亜鉛、亜鉛粉末、金属粉顔料、金属フレーク顔料(例えば、アルミニウムフレーク、着色アルミニウムフレーク、ステンレスフレーク、チタンフレーク等)、耐腐食性金属フレーク(例えばアルミニウムフレークを基質とするもの)、金属酸化物被覆金属フレーク(例えば酸化チタン−、酸化鉄−被覆アルミニウムフレーク)、鉄黒、黄色酸化鉄、ベンガラ、黄鉛、カーボンブラック、モリブデートオレンジ、紺青、群青、カドミウム系顔料、蛍光顔料、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合型アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、複合酸化物系顔料、グラファイト、雲母(例えば、白雲母、金雲母、合成雲母、フッ化四ケイ素雲母等)、金属酸化物被覆雲母(例えば、酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆雲母、(水和)酸化鉄被覆雲母、酸化鉄及び酸化チタン被覆雲母、低次酸化チタン被覆雲母等)、金属酸化物被覆グラファイト(例えば、二酸化チタン被覆グラファイト等)、薄片状アルミナ、金属酸化物被覆薄片状アルミナ(例えば、二酸化チタン被覆薄片状アルミナ、酸化鉄被覆薄片状アルミナ、三酸化二鉄被覆薄片状アルミナ、四酸化三鉄被覆薄片状アルミナ、干渉色金属酸化物被覆薄片状アルミナ等)、金属フレーク顔料(例えば、アルミニウムフレーク、着色アルミニウムフレーク、ステンレスフレーク、チタンフレーク等)、耐腐食性金属フレーク(例えばアルミニウムフレークを基質とするもの)、金属酸化物被覆金属フレーク(例えば酸化チタン−、酸化鉄−被覆アルミニウムフレーク)、MIO、金属酸化物被覆MIO、光学効果顔料(エフェクトピグメント)と称される金属酸化物被覆シリカフレーク、金属酸化物被覆ガラスフレーク等が挙げられる。機能性顔料と称されるフォトクロミック顔料、サーモクロミック顔料、ホログラフィック顔料が挙げられる。これらの顔料等を相互に組合せることにより、新たな色調や発色性が改善される。この塗料は、木材、プラスチック、金属鋼板、ガラス、セラミック、紙、フィルム、シート、LCディスプレイ用反射板の半透明膜等に塗装することができる。塗料の用途としては、自動車用、建築用、船舶用、家電製品用、缶用、産業機器用、路面表示用、プラスチック用、家庭用等が例示される。
【0041】
塗膜構造は、例えば下地層、中塗り層、本発明の顔料含有層及びクリア層の順、又は、下地層、本発明顔料含有中塗り層及びクリア層の順序等が例示されるが限定されない。
塗膜形成方法としては1コート1ベーク、2コート1べーク、2コート2ベーク、3コート1ベーク、3コート2べーク、3コート3ベーク等が挙げられる。塗装方法は、静電塗装、エアスプレー塗装、エアレス塗装、ロールコータ塗装、浸漬塗装等が挙げられる。このようにして得られた塗膜は輝度、彩度の高いものである。
【0042】
(2)印刷用インキへの使用
本発明による虹彩顔料は、印刷用インキとして使用される。印刷用インキとしては、凸版インキ、平板インキ、凹版インキ、金属板用インキ、放射線硬化型インキ、UVインキ、EBインキ、フレキソインキ、スクリーンインキ、オフセットインキ、グラビアインキ等、およびそれらの水性インキ等が挙げられる。本発明による虹彩顔料は、特に小粒径での発色性(彩度、輝度)が高いことから、オフセットインキに好適に用いられる。更には、小粒径での発色性が高いため、筆記用具のインクに好適に用いられる。本発明による虹彩顔料は、インク中の樹脂固形分100重量部に対して1〜100重量%配合することができる。1〜70重量%が好ましい。特に、1〜20重量%が好ましい。なお、本発明の顔料は、顔料表面をシランカップリング剤、チタンカップリング剤等で処理することが可能である。樹脂成分としては、例えば、ロジンマレイン樹脂、マレイン樹脂、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂、石油樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル、塩化ビニリデン、セルロース樹脂、ビニル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、セルロース樹脂等が挙げられる。これらは1種、または2種以上を組合せて用いることもできる。
【0043】
インクへ配合するものとしては、併用顔料、助剤として、ワニス、レジューザー、コンパウンド、号外ワニス、ゲル化剤、乾燥促進剤、酸化防止剤、裏移り防止剤、滑剤、活性剤等が挙げられる。更に、タレ防止剤、粘度調整剤、沈降防止剤、架橋促進剤、硬化剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、防腐剤、防カビ剤、紫外線安定剤等を挙げられる。
【0044】
ここで、併用顔料としては、体質顔料、沈降性硫酸バリウム、沈降性炭酸カルシウム、アルミナホワイト、炭酸マグネシウム、ホワイトカーボン、白色顔料として酸化チタン、亜鉛華等、黒色顔料としてカーボンブラック、黄色顔料として黄色鉛、ジスアゾイエロー、ハンザイエロー、赤色顔料として、ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッドF5R、ローダミンレーキ等、青色顔料としてフタロシアニンブルー、ビクトリアブルーレーキ、紺青等、橙色顔料としては、クロムバーミリオン、ジスアゾオレンジ、緑色顔料として、フタロシアニングリーン等、紫色顔料としては、メチルバイオレッドレーキ、ジオキサジンバイオレッド等、その他、顔料として、イソインドリノン系、ベンズイミダゾリン系、縮合アゾ系、キナクドリン系等、複合酸化物系顔料、グラファイト、雲母(例えば、白雲母、金雲母、合成雲母、フッ化四ケイ素雲母等)、金属酸化物被覆雲母(例えば、酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆雲母、(水和)酸化鉄被覆雲母、酸化鉄及び酸化チタン被覆雲母、低次酸化チタン被覆雲母等)、金属酸化物被覆グラファイト(例えば、二酸化チタン被覆グラファイト等)、薄片状アルミナ、金属酸化物被覆薄片状アルミナ(例えば、二酸化チタン被覆薄片状アルミナ、酸化鉄被覆薄片状アルミナ、三酸化二鉄被覆薄片状アルミナ、四酸化三鉄被覆薄片状アルミナ、干渉色性金属酸化物被覆薄片状アルミナ等)、金属フレーク顔料(例えば、アルミニウムフレーク、着色アルミニウムフレーク、ステンレスフレーク、チタンフレーク等)、耐腐食性金属フレーク(例えばアルミニウムフレークを基質とするもの)、金属酸化物被覆金属フレーク(例えば酸化チタン−、酸化鉄−被覆アルミニウムフレーク)、MIO、金属酸化物被覆MIO、光学効果顔料(エフェクトピグメント)と称される金属酸化物被覆シリカフレーク、金属酸化物被覆ガラスフレーク等が挙げられる。機能性顔料と称されるフォトクロミック顔料、サーモクロミック顔料、ホログラフィック顔料が挙げられる。これらのインキは、木材、プラスチック、金属鋼板、ガラス、セラミック、紙、ダンボール、フィルム、シート、缶、LCディスプレイ用反射板の半透明膜等に印刷することができる。本発明による顔料はこれらの顔料等と組合せることによりその効果として、新たな色調や機能が見出される。特に、本発明による虹彩顔料は、有価証券、チケット、旅行券、乗車券等への偽造防止インキとして好適に利用される。
【0045】
また本発明において、本発明による虹彩顔料を印刷用インクに用いる場合は、特に本発明で得られた金属光沢を有する干渉顔料に高配向性処理を施したもの(上述済)が好ましい。このように表面処理された顔料を各種印刷用インクに混合し、オフセット印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、UV硬化印刷、凸凹版印刷に用いることができる。高配向性処理を施した本虹彩顔料をインクに用いることは、特に印刷表面の干渉色の発色向上を図ることができ、偽造防止印刷に好ましい。
更に、本発明による顔料のインク用途としては、筆記用具分野が挙げられる。特に、粒子の大きさの制限されるサインペンなどに用いることができる。このようにして得られる印刷物は輝度、彩度の高いものである。
【0046】
(3)プラスチックへの使用
本発明において、本発明による虹彩顔料をプラスチックに組み込む場合は、直接樹脂と、または予めペレットとしてから、それを樹脂と混合し、押し出し成形や、カレンダーリング、ブロウイング等により各種成形体とすることができる。樹脂成分としてはポリオレフィン系の熱可塑性樹脂、エポキシ系、ポリエステル系やポリアミド(ナイロン)系の樹脂の何れも用いることができる。本発明の虹彩顔料を有効に発色させる為には、例えばプラスチックボトルにおいて多層成形する場合は、外層の樹脂に組み込むことによりボトル外観を有効に効率よく発現することができ、少ない使用量で十分に発色効果を発揮することができる。特に本発明によって得られるものを更に配向処理されたもの(上述)が、発色性を高める点で好ましい。当然に、本発明に係る虹彩顔料のウエルドライン防止表面処理(例えば、カプセル化処理など)を施したものを用いることができる。
【0047】
本発明による虹彩顔料は、他の顔料と併用して用いることができる。その併用する他の顔料としては、二酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、酸化クロム、亜鉛華、硫化亜鉛、亜鉛粉末、金属粉顔料、鉄黒、黄色酸化鉄、ベンガラ、黄鉛、カーボンブラック、モリブデートオレンジ、紺青、群青、カドミウム系顔料、蛍光顔料、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合型アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、複合酸化物系顔料、グラファイト、金属粉顔料、雲母(例えば、白雲母、金雲母、合成雲母、フッ化四ケイ素雲母等)、金属酸化物被覆雲母(例えば、酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆雲母、(水和)酸化鉄被覆雲母、酸化鉄及び酸化チタン被覆雲母、低次酸化チタン被覆雲母等)、金属酸化物被覆グラファイト(例えば、二酸化チタン被覆グラファイト等)、薄片状アルミナ、金属酸化物被覆薄片状アルミナ(例えば、二酸化チタン被覆薄片状アルミナ、酸化鉄被覆薄片状アルミナ、三酸化二鉄被覆薄片状アルミナ、四酸化三鉄被覆薄片状アルミナ、干渉色性金属酸化物被覆薄片状アルミナ等)、金属フレーク顔料(例えば、アルミニウムフレーク、着色アルミニウムフレーク、ステンレスフレーク、チタンフレーク等)、耐腐食性金属フレーク(例えばアルミニウムフレークを基質とするもの)、金属酸化物被覆金属フレーク(例えば酸化チタン−、酸化鉄−被覆アルミニウムフレーク)、MIO、金属酸化物被覆MIO、光学効果顔料(エフェクトピグメント)と称される金属酸化物被覆シリカフレーク、金属酸化物被覆ガラスフレーク等が挙げられる。機能性顔料と称されるフォトクロミック顔料、サーモクロミック顔料、ホログラフィック顔料が挙げられる。
このようにして、得られる樹脂製品は輝度、彩度が高いものである。
【0048】
(4)化粧料への使用
本発明による虹彩顔料は、化粧料として使用され、メーキャップ化粧料、毛髪用化粧料用等が挙げられる。例えば、ジェル、口紅、ファンデーション(乳化タイプ、リキッドタイプ、油性タイプ等)、ほお紅、マスカラ、ネイルエナメル、まゆずみ、アイシャドー、アイライナー、毛髪剤等に用いることができる。配合量としては、本発明による虹彩顔料を、例えば、ファンデーションでは1〜50重量%、シャドウでは1〜80重量%、口紅では1〜40重量%、ネイルエナメルでは、0.1〜20重量%等が例示される。
【0049】
他の配合成分としては、以下が例示される。併用顔料等として、二酸化チタン、炭酸カルシウム、クレー、タルク、硫酸バリウム、ホワイトカーボン、酸化クロム、亜鉛華、硫化亜鉛、亜鉛粉末、金属粉顔料、鉄黒、黄色酸化鉄、ベンガラ、黄鉛、カーボンブラック、モリブデートオレンジ、紺青、群青、カドミウム系顔料、蛍光顔料、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、縮合型アゾ顔料、フタロシアニン顔料、縮合多環顔料、複合酸化物系顔料、グラファイト、金属粉顔料、雲母(例えば、白雲母、金雲母、合成雲母、フッ化素四ケイ素雲母等)、金属酸化物被覆雲母(例えば、酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆雲母、(水和)酸化鉄被覆雲母、酸化鉄及び酸化チタン被覆雲母、低次酸化チタン被覆雲母等)、金属酸化物被覆グラファイト(例えば、二酸化チタン被覆グラファイト等)、薄片状アルミナ、金属酸化物被覆薄片状アルミナ(例えば、二酸化チタン被覆薄片状アルミナ、酸化鉄被覆薄片状アルミナ、三酸化二鉄被覆薄片状アルミナ、四酸化三鉄被覆薄片状アルミナ、干渉色性金属酸化物被覆薄片状アルミナ等)、金属フレーク顔料(例えば、アルミニウムフレーク、着色アルミニウムフレーク、ステンレスフレーク、チタンフレーク等)、耐腐食性金属フレーク(例えばアルミニウムフレークを基質とするもの)、金属酸化物被覆金属フレーク(例えば酸化チタン−、酸化鉄−被覆アルミニウムフレーク)、MIO、金属酸化物被覆MIO、光学効果顔料(エフェクトピグメント)と称される金属酸化物被覆シリカフレーク、金属酸化物被覆ガラスフレーク等が挙げられる。機能性顔料と称されるフォトクロミック顔料、サーモクロミック顔料、ホログラフィック顔料が挙げられる。更には、セリサイト、炭酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、ヒドロキシアパタイト、酸化クロム、チタン酸コバルト、ガラスビーズ、ナイロンビーズ、シリコーンビーズ等が例示される。
【0050】
併用顔料としての有機顔料には、赤色2、3、102、104、105、106、201、202、203、204、205、206、207、208、213、214、215、218、219、220、221、223、225、226、227、228、230の(1)、230の(2)、231、232、405の各号、黄色4、5、201、202の1、202の2、203、204、205、401、402、403、404、405、406、407、緑色3、201、202、204、205、401、402の各号、青色1、2、201、202、203、204、205、403、404の各号、橙201、203、204、205、206、207、401、402、403の各号、褐色201号、紫色201、401の各号、黒色401号等が例示される。天然色素では、サロールイエロー、カーミン、β−カロチン、ハイビスカス色素、カプサインチン、カルミン酸、ラッカイ酸、グルクミン、リボフラビン、シコニン等が例示される。
【0051】
また、他の成分として油脂、ろう類、界面活性剤、抗酸化剤、紫外線吸収剤、ビタミン、ホルモン、スクワラン、流動パラフィン、パルミチン酸、ステアリン酸、ミツロウ、ミリスチン酸ミリスチル等のエステル類、アセトン、トルエン、酢酸ブチル、酢酸エステル等の溶剤、酸化防止剤、防腐剤、多価アルコール、香料等が挙げられる。これらの顔料等と組合せることによりその効果として、新たな色調や機能が見出される。
【0052】
本発明による虹彩顔料を化粧料に使用する場合は、例えばコンパクトケーキ、クリーム、リップスティックなど何れにも用いることができるが、特にカラーポイントとなるメイクアップ用化粧に用いるのが有効である。当然に本発明に係る虹彩顔料は、前もって表面処理(前述参照)等して用いることができる。
このようにして得られる化粧料は輝度、彩度の高いものである。
【0053】
(5)その他の使用
本発明による虹彩顔料は、複写機用カラートナー等に配合して使用することができる。当分野では、小粒径で発色が高いことが要求され、好ましい。
更には、レーザーマーキング用ドーパント、非飛散性顔料調製物、非飛散性顔料顆粒として用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下に本発明による実施例を示すが、これらの限定されるものではない。
実施例1
1〜15μm(平均粒子径5.5μm)の微粒子雲母粉180gを1.5Lの脱イオン水に懸濁させた。攪拌しながらポリエチレングリコール400(PEG400)2gを添加した。懸濁液を攪拌しながら85℃まで加熱した。塩酸を含む70g/L濃度のSnCl水溶液440mLを3.2mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを1.9に保ちながら添加した。更に403g/L濃度のTiCl水溶液700mLを3.4mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを1.6に保ちながら添加する。その後、水酸化ナトリウムを加えてpHを9.0とした。金属水和物で被覆された雲母を懸濁液からろ過・水洗し、得られたろ過物を105℃で乾燥し、850℃で焼成し、シルバー色の虹彩顔料を得た。SEM観察では50nm以下の被覆粒子が認められた。
【0055】
実施例2
1〜15μm(平均粒子径6.4μm)の微粒子雲母粉120gを1.5Lの脱イオン水に懸濁させた。攪拌しながらポリエチレングリコール200(PEG200)1gを添加した。懸濁液を攪拌しながら85℃まで加熱した。塩酸を含む70g/L濃度のSnCl水溶液100mLを2.5mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを2.0に保ちながら添加した。更に403g/L濃度のTiCl水溶液450mLを2.0mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを1.6に保ちながら添加する。塩酸を含む70g/L濃度のSnCl水溶液100mLを2.5mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを1.6に保ちながら添加した。更に420g/L濃度のTiCl水溶液2.7mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを1.6に保ちながら添加する。このTiCl水溶液の添加量をシルバー色となるエンドポイントで止めた。その後、4.0gのMgCl・6HOと8gのCaCl・2HOを添加した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9.0とした。その後、金属水和物で被覆された雲母を懸濁液からろ過・水洗し、得られたろ過物を105℃で乾燥し、800(850)℃で焼成し虹彩顔料を得た。SEM観察では50nm以下の被覆粒子が認められた。
【0056】
実施例3
5〜25μmの微粒子雲母粉(平均粒子径8.5μm)120gを1.5Lの脱イオン水に懸濁させた。攪拌しながらポリエチレングリコール200(PEG200)1g及びポリエチレングリコール400(PEG400)0.5gを添加した懸濁液を攪拌しながら85℃まで加熱した。塩酸を含む70g/L濃度のSnCl水溶液200mLを2.0mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを2.0に保ちながら添加した。更に408g/L濃度のTiCl水溶液350mLを1.3mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを1.6に保ちながら添加する。その後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9.0とした。金属水和物で被覆された雲母を懸濁液からろ過・水洗し、得られたろ過物を105℃で乾燥し、850℃で焼成し、シルバー色虹彩顔料を得た。SEM観察では50nm以下の被覆粒子が認められた。
【0057】
実施例4
5〜25μmの微粒子雲母粉(平均粒子径8.5μm)120gを1.5Lの脱イオン水に懸濁させた。攪拌しながらポリエチレングリコール200(PEG200)1g及びポリエチレングリコール400(PEG400)0.5gを添加した。懸濁液を攪拌しながら85℃まで加熱した。塩化セリウム7水和物5gを水200mLに溶解させた溶液を、32%水酸化ナトリウム水溶液でpH7.0に調整しながら、3mL/minで滴下する。塩酸を含む70g/L濃度のSnCl水溶液100mLに塩化カルシウム2水和物4g及び塩化マグネシウム6水和物2gを溶解させた溶液を2.5mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを2.0に保ちながら添加した。更に408g/L濃度のTiCl水溶液200mLを1.3mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを1.6に保ちながら添加する。次いで塩酸を含む70g/L濃度のSnCl水溶液100mLに塩化カルシウム2水和物4g及び塩化マグネシウム6水和物2gとを溶解させた溶液を2.0mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを2.0に保ちながら添加する。更に408g/L濃度のTiCl水溶液1.2mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを1.6に保ちながら添加する。このTiCl水溶液の添加量をシルバー色となるエンドポイントで止めた。その後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9.0とした。金属水和物で被覆された雲母を懸濁液からろ過・水洗し、得られたろ過物を105℃で乾燥し、870℃で焼成し虹彩顔料を得た。SEM観察では50nm以下の被覆粒子が認められた。
【0058】
実施例5
1〜15μm(平均粒子径6.4μm)の微粒子雲母粉122gを1.75Lの脱イオン水に懸濁させた。攪拌しながらポリエチレングリコール200(PEG200)1gを添加した。懸濁液を攪拌しながら85℃まで加熱した。塩酸を含む70g/L濃度のSnCl水溶液200mLを2.8mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを2.0に保ちながら添加する。更に388g/L濃度のTiCl水溶液650mLを2.7mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを1.6に保ちながら添加する。塩酸を含む70g/L濃度のSnCl水溶液200mLを2.8mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを1.6に保ちながら添加した。更に420g/L濃度のTiCl水溶液2.5mL/minの速度で、水酸化ナトリウム水溶液を同時に用いてpHを1.6に保ちながら添加する。このTiCl水溶液の添加量を干渉ブルーとなるエンドポイントで止めた。その後、2.5gのMgCl・6HOと5gのCaCl・2HOを添加した。その後、水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH9.0とした。その後、金属水和物で被覆された雲母を懸濁液からろ過・水洗し、得られたろ過物を105℃で乾燥し、800℃で焼成し、虹彩顔料を得た。SEM観察では50nm以下の被覆粒子が認められた。
【0059】
比較例1
実施例1と同様の条件で微粒子雲母懸濁液にポリエチレングリコール400(PEG400)を添加せずに調整した。
【0060】
(A)平均粒子径の測定
マスターサイザー2000で測定した。
(B)比表面積及び全細孔容積の測定
ユアサオイオニクス社製 Autosorb-6でB.E.T法により測定した。
細孔容量は全細孔容積を薄片状基質比表面積で除した値([0034]参照)である。
【0061】
(C)気孔率は全細孔容積と酸化チタンの真密度4.27およびその被覆金属酸化物重量比率により、下記の式で算出した。
【数2】

(D)輝度の測定
顔料の反射率(Y値;この値が大きいほど高輝度である)を測定し、輝度を比較した。測定は次のように行なった。即ち、顔料をNCラッカーを用いて3重量%となるようにして分散させ、ドローダウンカードを作成し、村上色材(株)の変角光沢計GCMS−3を用いて、入射角45°、測定角45°でのY値を測定した。
(E)隠蔽率比
ミノルタの色差計(モデルCR300)にて測定した黒地のY値を白地のY値で除した値の100分率をいう。
【0062】
結果を表1に示す。
【表1】

【0063】
本発明によって得られたパール顔料は、小粒径(特に、実施例1および2)であっても従来のものに比較して高いY値(高いY値ほど輝度が高いことを示す)、および隠蔽率比を有するものであった。隠蔽率比の高いことからも輝度の高いことが裏付けされるものであった。
シルバー色での比較では、実施例1〜4で得られた顔料のY値が平均粒子径同等のレベルで比較していずれも従来の顔料イリオジンよりも高く、輝度の高いことが確認された。
【0064】
(F)彩度の測定
本発明の顔料および市販の顔料の彩度の測定を次の通り行なった。
顔料を5重量%になるようにニトロセルロースラッカーに分散させてドローダウンカードを作成し、ミノルタの色度計(モデルCR300)を用いて彩度を測定した。
結果を表2に示す。
【表2】

表2の結果から、色相が青色の領域での従来の顔料と比較して、錫酸化物および酸化チタンそれぞれの2層構造からなる本発明顔料(実施例5)は彩度が高いものであった。
【0065】
(処方例)
以下に具体的使用処方例を示す。
【0066】
使用例1(塗料への使用例)
パールベース塗料:
(組成A)
アクリディック47−712 70重量部
スーパーベッカミンG821−60 30重量部
(組成B)
本発明の虹彩顔料 10重量部
パール顔料 10重量部
(組成C)
酢酸エチル 50重量部
トルエン 30重量部
n−ブタノール 10重量部
ソルベッソ#150 40重量部
組成A100重量部、組成B20重量部を混合し、組成Cによりスプレー塗装に適した粘度(フォードカップ#4で12〜15秒)に稀釈し、スプレー塗装にてベースコート層を形成する。
【0067】
クリア塗料:
アクリディック44−179 14重量部
スーパーベッカミンL117−60 6重量部
トルエン 4重量部
MIBK 4重量部
ブチルセロソルブ 3重量部
この組成によるコートを上記のパールベース塗装した後、40℃で30分間、更に室温で風乾し、焼き付け(130℃、30分間)を行なった。得られた塗膜は高輝度・高彩度の塗膜であった。
【0068】
使用例2(プラスチックへの使用例)
高密度ポリエチレン(ペレット) 100重量部
本発明の虹彩顔料 1重量部
マグネシウムステアレート 0.1重量部
ジンクステレアレート 0.1重量部
これらをドライブレンドし、射出成形を行なう。
当該成形品は光輝性および彩度が高いものであった。
【0069】
使用例3(インキへの使用例)
CCSTメジウム(ニトロセルロース系樹脂) 10重量部
本発明の虹彩顔料 8重量部
上記配合によるインキ組成物にNC102溶剤を加え、ザンカップNo.3で粘度20秒に調製、印刷インキとした。当該インキによって得られた印刷物は、光輝性および彩度が高いものであった。
【0070】
使用例4(化粧品への使用例)
(1)コンパクトパウダーへの使用例:
タルク 50重量部
本発明の虹彩顔料 25重量部
着色顔料 5重量部
ミリスチン酸イソプロピル 適量
ステアリン酸マグネシウム 2重量部
【0071】
(2)ファンデーション処方:
タルク 38重量部
本発明の虹彩顔料 25重量部
雲母 (8μm) 10重量部
ステアリン酸マグネシウム 3重量部
ナイロンパウダー12 8重量部
黄色酸化鉄 1.9重量部
赤色酸化鉄 0.8重量部
酸化チタン 1.0重量部
ミネラルオイル 適量
(カプリル酸、カプリン酸)トリグリセリド 3.3重量部
ブチルパラベン 0.1重量部
得られた化粧品は、高輝度で高彩度のものであった。
【0072】
〔発明の効果〕
本発明による虹彩顔料は、従来の虹彩顔料よりも、高輝度、高彩度を有するものであり、その効果が特に小粒径の虹彩顔料に発揮されることが認められた。さらに、この本発明による虹彩顔料を塗料、印刷、筆記用インク、プラスチックへの練りこみ、化粧料などの各種用途に使用でき、しかもそれらの使用において、高輝度、高彩度が認められ、高い意匠性が求められる分野に好適に用いることができる。また、小粒径の虹彩顔料としても、従来の虹彩顔料と比較して高輝度、高彩度なものであり、粒子径により、使用の制限のある分野、例えば粒子感を好まない塗装分野、粒子の大きさに制限のあるオフセット印刷用インク、筆記用具用インクなどに用いることが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄片状基質表面がCe、Sn、Ti、Fe、ZnおよびZrからなる群から選択される1種または2種以上の金属を含む金属酸化物層を少なくとも2層以上有する多層被覆層で被覆された虹彩顔料。
【請求項2】
多層被覆層の最下層が、Ce、Sn、およびFeからなる群から選択される金属を含む金属酸化物層であり、該多層被覆層はSnを含む金属酸化物層とその上面に接するTiを含む金属酸化物層とからなる積層単位を1または2以上含む、請求項1に記載の虹彩顔料。
【請求項3】
最下層がSnを含む金属酸化物層およびその上面に接する層がTiを含む金属酸化物層である、請求項1または2に記載の虹彩顔料。
【請求項4】
多層被覆層が、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属を含む金属酸化物層を有する、請求項1〜3のいずれかに記載の虹彩顔料。
【請求項5】
アルカリ土類金属が、Mgおよび/またはCaである、請求項4に記載の虹彩顔料。
【請求項6】
比表面積が10m/g以下であり、薄片状基質の表面積1m当りの細孔容量が0.006ml以下である、請求項1〜5のいずれかに記載の虹彩顔料。
【請求項7】
薄片状基質が、雲母、合成雲母、シリカフレーク、アルミナフレーク、ガラスフレーク、薄片状酸化鉄および金属フレークからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれかに記載の虹彩顔料。
【請求項8】
薄片状基質の懸濁液に、水溶性高分子および/または水溶性窒素化合物を添加することにより、前記基質を処理し高分散性懸濁液とし、次いで当該懸濁液に、金属塩類および塩基性水溶液を添加することにより処理された基質表面に金属水和物層を被覆することを含む、虹彩顔料の製造方法。
【請求項9】
金属塩類および塩基性水溶液の添加と同時または添加直後にアルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物の水溶液を付加的に添加することを含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
水溶性高分子が、ポリエチレングリコールである、請求項8または9に記載の製造方法。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれかに記載の製造方法によって得られる虹彩顔料。
【請求項12】
請求項1〜7および請求項11のいずれかに記載の虹彩顔料の塗料、印刷用インキ、プラスチック、レーザーマーキング用ドーパント、非飛散性顔料調製物、非飛散性顔料顆粒または化粧料への使用。

【公開番号】特開2009−173934(P2009−173934A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15954(P2009−15954)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【分割の表示】特願2002−338344(P2002−338344)の分割
【原出願日】平成14年11月21日(2002.11.21)
【出願人】(000114536)メルク株式会社 (4)
【Fターム(参考)】