説明

高透明性マレイミド・オレフィン共重合体およびその製造方法

【課題】透明性に悪影響をおよぼすマレイミド単独重合体の含有量の少ない高透明性マレイミド・オレフィン共重合体及びその製造方法を提供する。
【解決手段】炭素数2〜4個のオレフィン残基単位及びマレイミド単量体残基単位よりなるマレイミド・オレフィン共重合体であって、該マレイミド単量体残基単位よりなるマレイミド単独重合体の含有量が500ppm以下である高透明性マレイミド・オレフィン共重合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れたマレイミド・オレフィン共重合体に関するものであり、さらに詳しくは、透明性に悪影響をおよぼすマレイミド単独重合体の含有量の少ない高透明性マレイミド・オレフィン共重合体及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マレイミド共重合体は、透明性、耐熱性及び機械特性に優れた樹脂として、光学材料、電子部品等幅広い用途での展開に期待されており、一般的にラジカル共重合することにより製造され、その製造方法として多くの方法が提案されている(例えば特許文献1、2参照。)。
【0003】
【特許文献1】米国特許第2971939号公報
【特許文献2】特開2006−036914号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者の検討によれば特許文献1〜2において提案された方法により得られるマレイミド・オレフィン共重合体には、特に光学用途用とした場合に透明性に関しまだ課題を有することが判明した。そこで、更に検討を進めた結果、従来の方法により得られるマレイミド・オレフィン共重合体の透明性には、重合反応中に副生するマレイミド単独重合体が悪影響をおよぼす事が判明した。
【0005】
特許文献1に提案された方法においては、重合溶剤及びマレイミド単量体を反応器に仕込んだ後、オレフィン及びラジカル重合開始剤を同時に添加して重合を実施しており、該方法によればマレイミド単量体とオレフィン単量体が均一混合されていない状態でラジカル重合反応が進行する結果、重合初期にマレイミド単独重合体を生成するものであった。
【0006】
また、特許文献2に提案された方法においては、マレイミド単量体とオレフィンの重合中にマレイミド単量体を追加することでマレイミド・オレフィン共重合体の共重合組成を制御しているが、追加したマレイミド単量体が不均一に存在する状態で重合が進行するため、マレイミド単独重合体を生成するものであった。
【0007】
そこで、本発明は、マレイミド単独重合体の含有量が少ない高透明性マレイミド・オレフィン共重合体及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、マレイミド単独重合体の含有量が特定量以下であるマレイミド・オレフィン共重合体が極めて優れた透明性を有することを見出し、本発明を完成させるに到った。
【0009】
即ち、本発明の第1の発明は、炭素数2〜4個のオレフィン残基単位及び下記一般式(1)で示されるマレイミド単量体残基単位よりなるマレイミド・オレフィン共重合体であって、該マレイミド単量体残基単位よりなるマレイミド単独重合体の含有量が500ppm以下であることを特徴とする高透明性マレイミド・オレフィン共重合体に関するものであり、
【0010】
【化1】

(1)
(ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基を示す。)
さらに、第2の発明は、炭素数2〜4個のオレフィン、下記一般式(2)で示されるマレイミド単量体及び重合溶剤を予め反応器に仕込み、均一混合を行い均一溶液とした後にラジカル重合開始剤を添加して重合反応を行うことを特徴とする高透明性マレイミド・オレフィン共重合体の製造方法に関するものである。
【0011】
【化2】

(2)
(ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基を示す。)
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体は、上記一般式(1)で示されるマレイミド単量体残基単位からなるマレイミド単独重合体の含有量が500ppm以下である炭素数2〜4個のオレフィン残基単位及び該マレイミド単量体残基からなるマレイミド・オレフィン共重合体である。
【0013】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体を構成する炭素数2〜4個のオレフィン残基単位としては、例えばエチレン残基単位、プロピレン残基単位、1−ブテン残基単位、2−ブテン残基単位、イソブテン残基単位等が挙げられ、その中でも容易に高分子量を有し、耐熱性及び機械特性に優れる高透明性マレイミド・オレフィン共重合体が得られることからイソブテン残基単位が好ましい。また、該オレフィン残基単位は、1種または2種以上組み合わせたものであってもよい。
【0014】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体を構成する該マレイミド単量体残基単位のRは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基を示し、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等を挙げることができ、シクロアルキル基としては、例えばシクロブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。そして、炭素数が6を越えるアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基である場合、排除体積効果が大きく共重合反応が進行し難く共重合体を得ることが困難となる。該マレイミド単量体残基単位としては、例えばマレイミド単量体残基単位、N−メチルマレイミド単量体残基単位、N−エチルマレイミド単量体残基単位、N−プロピルマレイミド単量体残基単位、N−ブチルマレイミド単量体残基単位、N−ヘキシルマレイミド単量体残基単位、N−シクロプロピルマレイミド単量体残基単位、N−シクロブチルマレイミド単量体残基単位、N−シクロヘキシルマレイミド単量体残基単位、N−フェニルマレイミド単量体残基単位等が挙げられ、その中でも、容易に耐熱性、機械特性に優れた高透明性マレイミド・オレフィン共重合体が得られることからN−フェニルマレイミド単量体残基単位が好ましい。また、該マレイミド単量体残基単位は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0015】
そして、本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体の具体的例示としては、例えばマレイミド・エチレン共重合体、マレイミド・1−ブテン共重合体、マレイミド・イソブテン共重合体、N−メチルマレイミド・エチレン共重合体、N−メチルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−メチルマレイミド・イソブテン共重合体、N−エチルマレイミド・エチレン共重合体、N−エチルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−エチレンマレイミド・イソブテン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・エチレン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−シクロヘキシルマレイミド・イソブテン共重合体、N−フェニルマレイミド・エチレン共重合体、N−フェニルマレイミド・1−ブテン共重合体、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体等を挙げることができ、その中でも容易に高分子量を有し、耐熱性及び機械特性に優れる高透明性マレイミド・オレフィン共重合体となることからN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体であることが好ましい。
【0016】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体は、該マレイミド単量体残基単位からなるマレイミド単独重合体の含有量が500ppm以下となることから優れた透明性を達成するものであり、特にマレイミド単独重合体を含有しないものであることが好ましい。マレイミド単独重合体の含有量が500ppmを越える場合、本発明の目的を達成することができない。該マレイミド単独重合体としては、例えばマレイミド単独重合体、N−メチルマレイミド単独重合体、N−エチルマレイミド単独重合体、N−プロピルマレイミド単独重合体、N−ブチルマレイミド単独重合体、N−ヘキシルマレイミド単独重合体、N−シクロプロピルマレイミド単独重合体、N−シクロブチルマレイミド単独重合体、N−シクロヘキシルマレイミド単独重合体、N−フェニルマレイミド単独重合体を挙げることができる。
【0017】
また、本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体は、特に優れた透明性を示すものとなることから、15重量%の塩化メチレン溶液とし、可視紫外分光光度計により測定した波長589nmの吸光度が0.3以下であるマレイミド・オレフィン共重合体であることが好ましい。
【0018】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体は、耐熱性及び機械特性にも優れるマレイミド・オレフィン共重合体となることから、該マレイミド単量体残基単位量55〜65モル%を含有するマレイミド・オレフィン共重合体であることが好ましい。また、成形性、機械特性、色相等に優れるものとなることから、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、GPCという)を用い、N−メチルピロリドンを溶媒とし40℃の温度で測定した際の標準ポリスチレン換算値の重量平均分子量(Mw)が、1×10〜3×10であることが好ましい。
【0019】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体の製造方法としては、該マレイミド単独重合体の含有量が500ppm以下であるマレイミド・オレフィン共重合体を製造することが可能であれば如何なる製造方法を用いてもよく、その中でも特に効率よく本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体を製造することが可能となる製造方法の具体的例示を以下に説明する。
【0020】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体は、炭素数2〜4個のオレフィン、上記一般式(2)で示されるマレイミド単量体及び重合溶剤を予め反応器に仕込み、均一混合を行い均一溶液とした後にラジカル重合開始剤を添加して重合反応を行うことにより効率的に製造することが可能となる。本製造方法によりマレイミド単独重合体の生成が抑制される原因は定かではないが、マレイミド単量体、オレフィン及び重合溶剤の混合液が不均一である場合、重合反応系の局部的濃度むらにより単独重合が進行しやすくなる反面、均一溶液とすることにより局部的な濃度むらが抑制され、共重合反応が効率よく進行するためであると考えられる。
【0021】
ここで、炭素数2〜4個のオレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン等が挙げられ、その中でも容易に高分子量を有し、耐熱性及び機械特性に優れる高透明性マレイミド・オレフィン共重合体が得られることからイソブテンが好ましい。また、該オレフィンは、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
該マレイミド単量体のRは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基を示し、炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等を挙げることができ、シクロアルキル基としては、例えばシクロブチル基、シクロプロピル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。該マレイミド単量体としては、例えばマレイミド単量体、N−メチルマレイミド単量体、N−エチルマレイミド単量体、N−プロピルマレイミド単量体、N−ブチルマレイミド単量体、N−ヘキシルマレイミド単量体、N−シクロプロピルマレイミド単量体、N−シクロブチルマレイミド単量体、N−シクロヘキシルマレイミド単量体、N−フェニルマレイミド単量体等が挙げられ、その中でも、容易に耐熱性、機械特性に優れた高透明性マレイミド・オレフィン共重合体が得られることからN−フェニルマレイミド単量体が好ましい。また、該マレイミド単量体は、1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0023】
この際のマレイミド単量体とオレフィンの共重合反応を行う際のオレフィンの使用量としては、高透明性マレイミド・オレフィン共重合体が得られる限りにおいて制限はないが、生産効率よく高分子量の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体の製造が可能となることから、マレイミド単量体:オレフィン=1:0.7〜1:2(モル比)であることが好ましい。
【0024】
重合溶剤としては、ラジカル重合反応が可能な重合溶剤でよく、公知の重合溶剤を用いることができ、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、シクロヘキセンオキシド等の環状エーテル類;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒;酢酸エステル類又は芳香族溶媒とアルコ−ルの混合溶媒等が挙げられ、その中でも特にマレイミド単量体、オレフィンの溶解性に優れ、均一溶液が容易に得られ、特に優れる高透明性マレイミド・オレフィン共重合体の製造が可能となることからメチルエチルケトンであることが好ましい。また、重合溶剤量としては、該オレフィン及び該マレイミド単量体の総単量体量に対して2〜5倍の重量であることが好ましい。
【0025】
そして、本製造方法は、重合反応に先立ってマレイミド単量体、オレフィン及び重合溶剤を反応器に仕込み、均一混合を行い均一溶液とした後にラジカル重合開始剤を添加し、重合反応を開始することを特徴とする。その際の反応器としては、例えばフルゾーン翼、マックスブレンド翼、ファウドラー翼、パドル翼、ブルマージン翼等の攪拌翼を有する反応器を用いて行うことができ、特にマレイミド単量体、オレフィン及び重合溶剤からなる均一溶液を効率よく得ることができ、その結果高透明性マレイミド・オレフィン共重合体を特に効率よく製造することが可能となることから撹拌翼径/反応器内径が0.4以上である反応容器が好ましい。また、均一混合性を上げるため、反応器には邪魔板を取り付けてもよい。さらにマレイミド単量体、オレフィン及び重合溶剤の均一混合溶液を効率よく調製する際には、マレイミド単量体の溶解度が高い25℃以上の温度で攪拌混合することが好ましい。
【0026】
ラジカル重合開始剤としては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の有機過酸化物;2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−(2−ブチロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレ−ト、1,1’−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)等のアゾ系開始剤が挙げられる。また、該ラジカル重合開始剤の添加時期としては、マレイミド単量体、オレフィン及び重合溶剤からなる均一溶液を調整した後であれば、昇温前、昇温中、反応中に適宜添加すればよい。また、ラジカル共重合反応を行う際の重合温度は、該ラジカル重合開始剤の分解温度に応じて適宜設定すればよく、一般的には40℃〜120℃の範囲で行うことが好ましい。
【0027】
また、製造される高透明性マレイミド・オレフィン共重合体の分子量を調節する際には、単量体濃度、ラジカル重合開始剤濃度、重合温度等の条件設定により調整することが可能である。また、連鎖移動剤の添加により調整してもよく、そのような連鎖移動剤としては、例えばラウリルメルカプタン、硫黄等の硫黄化合物;アミン、尿素等の窒素化合物;ベンズアルデヒド等のアルデヒド類;α−メチルスチレンのダイマー等が例示できる。
【0028】
本発明の高透明性マレイミド共重合体は、本発明の目的を逸脱しない範囲内で他の樹脂とブレンドしても良く、そのような樹脂としては、例えばアクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−メチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレート樹脂、メチルメタクリレート−スチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等が挙げられる。
【発明の効果】
【0029】
本発明の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体は優れた透明性を有することから、光学部材用樹脂材料として適したものである。
【実施例】
【0030】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0031】
〜マレイミド・オレフィン共重合体の構造確認〜
核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JSX)によりH−NMR測定を行い、その構造確認を行った。
【0032】
〜重量平均分子量(Mw)の測定〜
N−メチル−2−ピロリドン(NMP)を溶媒としてGPC(東ソー株式会社製、商品名HLC−8020GPC)を用いて40℃で測定し、得られた溶出曲線により標準ポリスチレン換算値として測定した。
【0033】
〜透明性評価〜
マレイミド・オレフィン共重合体3gを塩化メチレン17gに溶解させ、可視紫外分光光度計(日本分光工業株式会社製、商品名UVIDEC−650)により波長589nmの吸光度を測定し、透明性の評価とした。
【0034】
〜マレイミド単独重合体の含有量及びその構造確認〜
マレイミド・オレフィン共重合体100gを塩化メチレン900gに溶解させ、遠心分離機(コクサン製、商品名H−103N)により塩化メチレン可溶部と不溶部に分離した。100℃減圧乾燥後に重量を測定し、塩化メチレン不溶部(マレイミド単独重合体は塩化メチレンに不溶である。)の含有量を算出した。得られた塩化メチレン不溶部の構造確認は、核磁気共鳴測定装置(日本電子製、商品名JSX)のH−NMR測定により行った。
【0035】
実施例1
マックスブレンド型撹拌機、邪魔板、窒素導入管、オレフィン導入管、開始剤導入管、温度計、および脱気管を装着したオートクレーブ(撹拌翼径/反応器内径=0.5)中にN−フェニルマレイミド359g(2.07モル)および重合溶剤としてメチルエチルケトン595gを仕込み、30℃で10分間攪拌溶解した。30℃で20分間窒素置換した後、オレフィン導入管から液化イソブテン116g(2.07モル)を導入し、5分間攪拌を行い均一溶液を調整した。その後、開始剤導入管からラジカル重合開始剤として97重量%t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.6gを添加した後、80℃まで昇温して5時間反応を行った。表1に重合条件を示す。
【0036】
重合反応終了後、該重合溶液を大量のメタノールに加えてN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体を沈澱させ、100℃減圧乾燥によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体パウダー432gを回収した。
【0037】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造確認及び重量平均分子量の測定を行ったところ、N−フェニルマレイミド残基単位60.0モル%を含有し、Mw127000を有するものであった。
【0038】
さらに、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体100gを塩化メチレン900gに溶解させ、塩化メチレン不溶部の測定を試みたが不溶部の含有量は0ppmでありN−フェニルマレイミド単独重合体は含有されていないことを確認した。また、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体3gを塩化メチレン17gに溶解させ、可視紫外分光光度計により波長589nmの吸光度を測定したところ吸光度は0.0であり、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の透明性は優れたものであった。該N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。
【0039】
比較例1
邪魔板が無く、プロペラ型撹拌機が付いた以外は実施例1と同様のオートクレーブ(ただし、撹拌翼径/反応器内径=0.3)中にt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート1.6g、N−フェニルマレイミド359g(2.07モル)及びメチルエチルケトン595gを同時に仕込んだ。この際の混合系は不均一であった。そして、15℃で窒素置換した後にイソブテン116g(2.07モル)を添加し、80℃まで昇温して5時間反応を行った。表1に重合条件を示す。
【0040】
実施例1と同様の方法によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の回収を行い、共重合体組成及び重量平均分子量の測定を行った。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体は、N−フェニルマレイミド残基単位60.4モル%を含有し、Mw120000を有するものであった。
【0041】
さらに、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体100gを塩化メチレン900gに溶解させ、塩化メチレン不溶部の測定を試みたが不溶部の含有量は5000ppmであり、該不溶分はN−フェニルマレイミド単独重合体であることを確認した。また、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体3gを塩化メチレン17gに溶解させ、可視紫外分光光度計により波長589nmの吸光度を測定した測定した結果、吸光度は1.4であり、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体は透明性に劣るものであった。該N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。
【0042】
実施例2
実施例1と同様のオートクレーブにN−フェニルマレイミド327g(1.86モル)および重合溶媒としてメチルエチルケトン606gを仕込み、30℃で10分間攪拌溶解した。30℃で20分間窒素置換した後、オレフィン導入管から液化イソブテン84g(1.49モル)を導入し、5分間攪拌を行い均一溶液を調整した。その後、開始剤導入管からラジカル重合開始剤として71重量%t−ブチルパーオキシピバレート2.0gを添加した後、60℃まで昇温して5時間反応を行った。表1に重合条件を示す。
【0043】
重合反応終了後、該重合溶液を大量のメタノールに加えてN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体を沈澱させ、100℃減圧乾燥によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体パウダー387gを回収した。
【0044】
得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の構造確認及び重量平均分子量の測定を行ったところ、N−フェニルマレイミド残基単位61.9モル%を含有し、Mw118000を有するものであった。
【0045】
さらに、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体100gを塩化メチレン900gに溶解させ、塩化メチレン不溶部の測定を試みたが不溶部の含有量は0ppmでありN−フェニルマレイミド単独重合体は含有されていないことを確認した。また、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体3gを塩化メチレン17gに溶解させ、可視紫外分光光度計により波長589nmの吸光度を測定した結果、吸光度は0.0であり、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の透明性は優れたものであった。該N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。
【0046】
比較例2
邪魔板が無く、プロペラ型撹拌機が付いた以外は実施例2と同様のオートクレーブ(ただし、撹拌翼径/反応器内径=0.3)中にN−フェニルマレイミド327g(1.86モル)及びメチルエチルケトン606gを仕込み、20℃で窒素置換後にイソブテン84g(1.49モル)及びt−ブチルパーオキシピバレート2.0gを同時に添加した。この際の混合系は不均一であった。その後、60℃まで昇温して5時間反応を行った。表1に重合条件を示す。
【0047】
実施例2と同様の方法によりN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の回収を行い、共重合体組成及び重量平均分子量の測定を行った。得られたN−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体は、N−フェニルマレイミド残基単位62.0モル%を含有し、Mw116000を有するものであった。
【0048】
さらに、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体100gを塩化メチレン900gに溶解させ、塩化メチレン不溶部の測定を試みたが不溶部の含有量は900ppmであり、該不溶分はN−フェニルマレイミド単独重合体であることを確認した。また、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体3gを塩化メチレン17gに溶解させ、可視紫外分光光度計により波長589nmの吸光度を測定した測定した結果、吸光度は0.4であり、N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体は透明性に劣るものであった。該N−フェニルマレイミド・イソブテン共重合体の評価結果を表2に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数2〜4個のオレフィン残基単位及び下記一般式(1)で示されるマレイミド単量体残基単位よりなるマレイミド・オレフィン共重合体であって、該マレイミド単量体残基単位よりなるマレイミド単独重合体の含有量が500ppm以下であることを特徴とする高透明性マレイミド・オレフィン共重合体。
【化1】

(1)
(ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基を示す。)
【請求項2】
15重量%の塩化メチレン溶液とし、可視紫外分光光度計により測定した波長589nmの吸光度が0.3以下であることを特徴とする請求項1に記載の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体。
【請求項3】
オレフィン残基単位がイソブテン残基単位であり、マレイミド単量体残基単位がN−フェニルマレイミド残基単位であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体。
【請求項4】
炭素数2〜4個のオレフィン、下記一般式(2)で示されるマレイミド単量体及び重合溶剤を予め反応器に仕込み、均一混合を行い均一溶液とした後にラジカル重合開始剤を添加して重合反応を行うことを特徴とする高透明性マレイミド・オレフィン共重合体の製造方法。
【化2】

(2)
(ここで、Rは水素、炭素数1〜6のアルキル基、シクロアルキル基またはフェニル基を示す。)
【請求項5】
反応器として、撹拌翼径/反応器内径が0.4以上の反応器を用いることを特徴とする請求項4に記載の高透明性マレイミド・オレフィン共重合体の製造方法。

【公開番号】特開2008−156400(P2008−156400A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−343998(P2006−343998)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】