高透明性非金属カソード
【課題】有機発光デバイス(OLED)を提供する。
【解決手段】アノード、カソード、及び発光層を有し、前記発光層は前記アノードと前記カソードの間に配置され、前記発光層が燐光材料と電荷キャリアーホスト材料とを含み、前記有機発光デバイスに電圧を印加した場合には三重項励起状態から燐光放射線を発光するように有機発光デバイスを構成する。本有機発光デバイスは、ディスプレイデバイス、車両、コンピューター、テレビジョン、プリンター、大面積壁スクリーン、劇場スクリーン、スタジアムスクリーン、掲示板、及び標識からなる群のものに使用できる。さらに燐光材料が、固体状態で室温において50%より大きな光ルミネッセンス量子収率を有することが好ましい。
【解決手段】アノード、カソード、及び発光層を有し、前記発光層は前記アノードと前記カソードの間に配置され、前記発光層が燐光材料と電荷キャリアーホスト材料とを含み、前記有機発光デバイスに電圧を印加した場合には三重項励起状態から燐光放射線を発光するように有機発光デバイスを構成する。本有機発光デバイスは、ディスプレイデバイス、車両、コンピューター、テレビジョン、プリンター、大面積壁スクリーン、劇場スクリーン、スタジアムスクリーン、掲示板、及び標識からなる群のものに使用できる。さらに燐光材料が、固体状態で室温において50%より大きな光ルミネッセンス量子収率を有することが好ましい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電子デバイス(装置,devices)、特に高度に透明な非金属カソードに用いられる非金属カソードに関する。詳しくは、本発明は、高度に透明な非金属カソードを有する有機発光デバイス(装置)(OLED)に関する。本発明は、更に少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を含む化合物を含む電荷キャリヤー層を有する新規なOLED、アズラクトン関連ドーパントを含む発光層を有するOLED、燐光ドーパント化合物を含む発光層を有するOLED、又は対称性分子構造を有する化合物からなるガラス状有機ホール輸送材料を含むホール輸送層を有するOLEDに関する。
【背景技術】
【0002】
光電子デバイスには、電気エネルギーを光エネルギーに変換するか、又はその逆を行うデバイスの外、電気的方法によって光信号を検出するデバイスが含まれる。そのようなデバイスには、光検出器、光トランジスタ、太陽電池、発光ダイオード、及びレーザーが含まれる。そのようなデバイスには、典型的には電極の間に少なくとも一つの電荷キャリヤー層を有する一対の電極が含まれる。デバイスの機能により、電荷キャリヤー層(単数又は複数)は、デバイスを通って電圧を印加すると、エレクトロルミネッセンスを与える材料(単数又は複数)からなるか、又は層(単数又は複数)は光放射線に曝すと光電池効果を発生することができるヘテロ接合を形成する。
【0003】
特に、OLEDは幾つかの有機層からなり、それら層の一つが、装置を通って電圧を印加することによりエレクトロルミネッセンスを起こすことができるようにされる有機材料からなる。C.W.タング(Tang)その他、Appl.Phys.Lett.51,913(1987)。或るOLEDは、LCD系天然色平面パネル表示器に対する実際的な新しい技術として用いられるのに充分な輝度、色の範囲、及び作動寿命を有することが示されている。S.R.フォレスト(Forrest)、P.E.バローズ(Burrows)、及びM.E.トムプソン(Thompson)、Laser Focus World,Feb.1995。そのような装置で用いられる有機薄膜の多くは可視スペクトル範囲で透明であるが、それらは垂直に積み重ねられた幾何学的形態で赤(R)、緑(G)、及び青(B)発光OLEDが配置されている完全に新しい型の表示ピクセルの実現を可能にし、簡単な製法、小さなR−G−Bピクセルサイズ、及び大きな密度因子を与える。米国特許第5,707,745号。この特許には、色調節可能な表示装置で、強度及び色の両方を独立に変えることができ、外部電源によって調節することができる積層OLED(SOLED)が記載されている。集積SOLEDの各々の層は、独立にアドレスすることができ、それ自身の特性色を発光する。この着色発光は、隣接して積層された透明な独立にアドレスされる有機層(単数又は複数)、透明接点、及びガラス基板を通って伝達され、これによって装置が、発光層の相対的出力を変えることによって生じさせることができるどのような色でも発光することができる。米国特許第5,707,745号は、このように小さなピクセルサイズによって可能になる大きな解像力を与える集積天然色ピクセルを達成する原理を例示している。更に、従来の方法と比較して比較的低いコストの製法をそのような装置を製造するために用いることができる。
【0004】
透明OLED(TOLED)〔V.バロビック(Bulovic)、G.グ(Gu)、P.E.バローズ、M.E.トムプソン、及びS.R.フォレスト、Nature 380,29(1996)〕は、大きな解像力、独立にアドレス可能な積層R−G−Bピクセルを実現するための更に重要な工程を示しているが、これは米国特許第5,703,436号明細書に報告されており、この場合TOLEDはスイッチを切った時に71%より大きな透明性を有し、装置のスイッチを入れた時、大きな効率(1%に近い量子効率)を持ってデバイスの上面及び底面の両方から光を発する。このTOLEDは、ホール注入電極としてインジウム錫酸化物(ITO)を用い、電子注入のためにMg−Ag−ITO電極層を用いている。 Mg−Ag−ITO電極層のITO側を、TOLEDの一番上に重ねられた第二の異なった色を発光するOLEDのためのホール注入接点として用いたデバイスが記載されている。
【0005】
有機光電材料の層を用いることに基づいた構造を有するそのようなデバイスは、一般に発光を与える共通の機構に依存している。典型的には、この機構は、注入された電子及びホールの発光再結合に基づいている。特に、OLEDはデバイスのアノード及びカソードを分離する少なくとも二つの薄い有機層を有する。これら層の一つの材料は、ホールを注入及び輸送する「ホール輸送層」(HTL)に役立つ材料の能力に基づいて特別に選択され、他方の層の材料は、特に電子を注入及び輸送する「電子輸送層」(ETL)に役立つその能力に従って選択される。そのような構造では、デバイスはアノードに印加した電位がカソードに電位した電位よりも正である場合、そのデバイスは順方向のバイアスを持つダイオードとして見ることができる。このようなバイアス条件では、アノードはホール(正電荷キャリヤー)をホール輸送層中に注入し、一方カソードは電子を電子輸送層中に注入する。このようにしてアノードに隣接したルミネッセンス媒体部分は、ホール注入部分及び輸送領域を形成し、一方カソードに隣接するルミネッセンス媒体部分は電子注入及び輸送領域を形成する。注入されたホール及び電子は、夫々反対に帯電した電極の方へ移動する。例えば、電子及びホールが同じ分子に局在している場合、フレンケル励起子が形成される。これらの励起子は一番低いエネルギーを有する材料中に捕捉される。これら短命状態の再結合は、その伝導ポテンシャルから価電帯へ落ちる電子として見ることができ、或る条件下では、好ましくは光発光機構によって起きる緩和を伴う。この典型的な薄層有機デバイスの作動機構を考慮に入れて、エレクトロルミネッセンス層は各電極から易動性電荷キャリヤー(電子及びホール)を受けるルミネッセンス領域を有する。
【0006】
OLEDの電子輸送層又はホール輸送層として働く材料は、屡々エレクトロルミネッセンス発光を生じさせるためにOLED中へ配合する材料と同じものである。電子輸送層又はホール輸送層が発光層として働くそのようなデバイスは、「単一ヘテロ構造」(SH)を有するものとして言及されている。別法として、エレクトロルミネッセンス材料はホール輸送層と電子輸送層との間の別の発光層中に存在していてもよく、この場合「二重ヘテロ構造」(DH)と呼ばれる。
【0007】
単一ヘテロ構造OLEDでは、ホールはHTLからETLへ注入され、それらが電子と結合して励起子を形成するか、又は電子がETLからHTLへ注入されて、それらがホールと結合して励起子を形成する。励起子は最も低いエネルギーギャップを有する材料中に捕捉され、通常用いられるETL材料は通常用いられるHTL材料よりも一般に小さなエネルギーギャップを有するので、単一ヘテロ構造デバイスの発光層は典型的にはETLである。そのようなOLEDでは、ETL及びHTLのために用いられる材料は、ホールをHTLからETL中へ効果的に注入することができるように、ETL及びHTLのために用いられる材料を選択すべきである。また、最もよいOLEDは、HTL及びETL材料の最大占有分子軌道(HOMO)レベルの間で良好なエネルギーレベルの一致を与えるものと考えられる。二重ヘテロ構造OLEDでは、ホールはHTLから注入され、電子はHTLから別の発光層へ注入され、そこでホールと電子が結合して励起子を形成する。
【0008】
OLEDのカソード層として用いられる材料は、今まで低い仕事関数を有する金属、例えば、Mg:Agからなっていた。そのような金属カソード層は、電流のための電気伝導路のみならず、隣接電子輸送層中へ電子を注入する手段を与える。しかし、そのような金属層は、スペクトルの可視領域に極めて反射性で吸収性である。
【0009】
このことは、天然色SOLEDの積層された層、又は単色TOLEDの単一のOLEDのような透明OLEDが望まれるならば、カソードとして機能するのに充分な厚さを持つが、実質的な光透過又は反射損失を起こす程厚くないようにすると言う金属層についてのバランスが確立される必要がある。従って、従来のTOLEDでは、スパッター蒸着したITOの厚い層で覆った75〜100ÅのMg:Agを用いており、そのMg:Ag層は、Alq3中へ電子を注入することと、ITOスパッタリングからそれを保護することの両方の働きをする。従って、約70%の透過率を有するデバイスが得られているが、化合物カソードからの大きな反射が依然として存在している。更に、発光層の少なくとも一つが隣接する発光OLEDの金属カソードの間に挟まれているSOLEDデバイスでは、色調節問題を起こすことがあるミクロ空洞効果が存在する。Z.シェン(Shen)、P.E.バローズ、V.バロビック(Bulovic)、S.R.フォレスト、及びM.E.トムプソン、Science 276,2009(1997)。そのようなミクロ空洞効果は、発光した光の望ましくない角度依存性をもたらすことがある。更に、薄いMg:Ag層は雰囲気劣化に敏感であり、従って、OLEDのカソードとして働くそれらの効果性を維持させるように、特別な設計及び処理工程を必要とする。
【0010】
或る環境下では高度に透明なITO層カソードとしての機能を果たす太陽電池が報告されているが、そのようなITOカソードは電荷キャリヤー有機層をITO層の上に堆積することにより製造されていることが記載されている。N.カール(Karl)、A.バウエル(Bauer)、J.ホルゼーフェル(Holzaeofel)、J.マークタンネル(Marktanner)、M.メーブス(Moebus)、及びF.ステルツェレ(Sstoelzle)、「効率的有機光電池:励起子光収集の役割、界面への励起子拡散、電荷分離のための内部電場、及び高電荷キャリヤー易動度」(Efficient Organic Photovoltaic Cells:The Role of Exitonic Light Collection,Exciton Diffusion to Interfaces,Internal Fields for Charge Separation,and High Charg Carrier Mobilities)、Molecular Crystals and Liquid Crystals,Vol.252,pp.243−258,(1994)(Karl et al)及びホワイトロック(Whitlock)J.B.、パナヨタトス(Panayotatos)P.、シャーマ(Sharma)G.D.、コックス(Cox)M.D.、シェーバー(Savers)R.R.、及びバード(Bird)G.R.、「有機半導体太陽電池のための材料及びデバイス構造の研究」(Investigations of Materials and Device Structures for Organic Semiconductor Solar Cells)Optical Eng.,Vol.32,No.8,1921−1934(August 1993)(Whitlock et al)。有機層が上に堆積されているITO層は、隣接有機層と低抵抗電気接触を形成するとは予想されてはおらず、従って、下でOLEDについて確認するように、効果的なカソードとして機能を果たすとは予想されていなかったであろう。
【0011】
高度に透明なITOアノードと同様に高度に透明なカソードを用いて光電子装置を作ることができることが望ましいであろう。更に、そのような高度に透明なカソードが、例えば、OLEDで、カソード層として典型的に用いられているMg:Agのような薄い半透明低仕事関数金属層に匹敵する電子注入特性を依然として有することが望ましいであろう。種々の化合物がHTL材料又はETL材料として用いられてきている。HTL材料は、殆ど種々の形のトリアリールアミンからなり、それは大きなホール易動度(10−3cm2/Vs)を示す。OLEDに用いられるETLには幾らか更に変えたものが存在する。アルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノレート)(Alq3)は、最も一般的なETL材料であり、他のものにはオキシジアゾール、トリアゾール、及びトリアジンが含まれる。
【0012】
例えば、典型的な単一ヘテロ構造デバイスは、ITO/TPD/Alq3/Mg:Agから作られている。ITOはアノードとして働き、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−1,1′ビフェニル−4,4′ジアミン(TPD)はHTLとして働き、Alq3はETLとして働き、Mg:Agはカソードとして働く。デバイスにバイアスを印加すると、ホールはITOからTPD中へ注入され、TPDとAlq3との間の界面へ移動し、電子はMg:Ag合金からAlq3へ注入され、同じ界面へ移動する。ホールはTPDからAlq3へ注入され、そこでそれらは電子と結合して励起子を形成する。励起子はAlq3層を通ってランダムに拡散し、最後にそれらは、優先的に発光機構により再結合する。そのようなデバイスのAlq3層中での励起子の最大移動距離は、Alq3中、約300Åであると推定される。
【0013】
OLEDで用いられる殆どの発光材料は、低いホール易動度又は低い電子易動度しか持たない。その結果、励起子の形成は、典型的には低い易動度を有する電荷キャリヤーが発光層中へ注入される界面に非常に近い所で起きる。例えば、殆どのETL材料は非常に貧弱なホール伝導性を有し、そのため励起子は発光ETLを有する単一ヘテロ構造OLEDのHTL/ETL界面に非常に近い所で優先的に形成されることになる。励起子は非常に短命なので、それらは再結合する前に余り遠くまで移動できない。その結果、ETLの僅かな堆積部分しか励起子の形成及び再結合に利用されない。励起子形成及び再結合のために発光層の僅かな堆積部分しか利用されないことは、OLEDの寿命を短くすることになる。従って、大きな電子易動度及び大きなホール易動度を有し、その結果励起子形成が装置の合理的な堆積部分で起きるようになる発光層が必要である。例えば、大きなホール易動度を有し、その結果励起子形成及び発光が、発光ETLを有する単一ヘテロ構造OLEDのETLの合理的な堆積部分で起きるようになるETLに対する必要性が存在する。
【0014】
HTLとETLの材料を一緒に混合することにより、空間拡散分離を減少し、ETL材料中へのホールの拡散を増大することが先ず考えられる。この考えは、最初ホール輸送部分及び電子輸送部分の両方を重合体マトリックス中に混合した種々の重合体系で例示された。最も一般に用いられる組合せは、PVK(ポリビニルカルバゾール)がホール輸送体として働き、PBD〔2−(4−t−ブチルフェニル)−5−(4−フェニル−1−フェニレン)オキシダゾール〕は電子輸送体として働くPVK/PBD系である。数多くの異なった色素が、青から赤の色を発生する発光中心としてこの系にドープされている。
【0015】
米国特許第5,294,870号明細書には、2つの8−ヒドロキシキナルジンリガンド及びフェノレートリガンド輸送体、Alq′2(OAr)を有する一連のアルミニウム(III)錯体が記載されている。これらの物質の全てが青色エミッターであり、合理的な電子ビーム輸送体である。それらのデバイスは、TPDとAlq3との間に挟んだAlq′2(OAr)を用いて製造されてきた。この形態は、Mg−Ag電極からの電子注入がよくないために必要である。それにも拘わらずこれらの装置はそれらのエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルで青緑色発光を示し、それらの光ルミネッセンス(PL)スペクトルと殆ど同様である。これらの化合物は、青色発光を与えるペリレンのような他の蛍光色素をドープするためのホスト材料として良好な性質も示している。しかし、ETL材料はホール輸送体としてはよくない。
【0016】
分子レベルで電子輸送体としてオキサジアゾール基、ホール輸送体としてトリフェニルアミンを有する一連の新しい発光材料が設計されてきた。タモト(Tamoto)、その他、「1,3,4−オキサジアゾールのエレクトロルミネッセンス及び有機多層発光ダイオード中のエミッターとしてのトリフェニルアミン−含有分子」(Electroluminescence of 1,3,4−Oxadiazole and Triphenylamine−Containing Molecules as an Emitter in Organic Multilayer Light Emitting Diodes)、Chem.Mater.9,1077−1085(1997)。これらの発光材料から形成された層は、低いイオン化電位を有するホール輸送体で励起状態複合体を形成する蛍光がある。励起状態複合体が形成されない場合、高い外部量子効率及びエネルギー変換効率が観察されている。しかし、これらの材料からなるデバイスは、ルミネッセンス寿命が低い欠点を有する。これらの発光材料はホールよりも電子を移動させる蛍光が大きいことも発見されている。
【0017】
電子輸送層中の主たる成分として存在し、電子輸送材料及び発光材料の両方としての機能を持つ発光材料の外に、発光材料自身が電子輸送層中のドーパントとして比較的低い濃度で存在していてもよい。ドーパントが存在する場合、電子輸送層中の主たる材料は、ホスト材料と呼ばれている。ホスト及びドーパントとして存在する材料は、ホストからドーパント材料へ高レベルのエネルギー移動を与えるように選択する。更に、これらの材料はOLEDとして許容可能な電気的性質を生ずることができる必要がある。更に、そのようなホスト及びドーパント材料は、従来の製法を用いて、特に真空蒸着法を用いて、OLED中へ容易に組み込むことができる出発材料を用いてOLED中へ配合することができることが好ましい。
【0018】
三原色、赤、緑及び青の一つに相当する選択されたスペクトル範囲近くに中心を持つ比較的狭い帯域のエレクトロルミネッセンス発光を与え、従って、OLED又はSOLED中の着色層として用いることができる材料を用いてOLEDを製造することが望ましい。特に、電荷移動遷移から発光を生ずる基本的化合物を置換基を選択的に変化させるか、又はその構造を変えることにより発光を変えることができる種類の化合物からこれらの化合物を選択することができることが望ましい。更に、そのような化合物は、真空蒸着された有機材料から完全に製造されるOLED中へ容易に配合されるように、真空蒸着法を用いて薄層として容易に蒸着できることも望ましい。
【0019】
最近の文献には、非常に狭い緑色蛍光を与えるクラゲ(Aequorea victoria)が記載されている。R.ハイム(Heim)、A.B.クビット(Cubitt)、及びR.Y.チエン(Tsien)、Nature 373,663−664(1995)。報告されているスペクトルは、大略510nmの所に中心があり、40nmの半値幅を有し、この発光の原因になっているのは次の活性活性発色団であることが示されている。
【0020】
【化1】
【0021】
このp−ヒドロキシベンジリデン−イミダゾリジノン発色団が、プロティン自身のSer−Tyr−Gly配列の環化及び酸化により発生することが報告されており、「prot」として標識付けされた蛋白質に二か所で結合されている。著しく青色に移行した発光を生ずるその蛋白質の突然変異体が報告されている。青色への移行は、色素自身の変化によるものではなく、色素が結合している蛋白質マトリックス中の変化によるものであることが報告されている。R.ハイム、D.C.プラシャー(Prasher)、及びR.Y.チエン、Proc.Nat.Acad.Sci.,91,12501−12504(1994)。これらの色素中の蛍光は、フェノキシド イオン供与体及びカルボニル受容体を含めた供与体/受容体網状組織から生ずる。ハイムの文献は、蛋白質の試験管内及び完全細胞内の両方でそれらの位置又は適応変化を検出するために蛍光タッグで標識付けするために発色団を使用することを述べている。しかし、これらの文献は分離された発色団分子そのものを製造又は使用することについてはなにも述べていない。
【特許文献1】米国特許第5,294,870号明細書
【非特許文献1】V.バロビック(Bulovic)、G.グ(Gu)、P.E.バローズ、M.E.トムプソン、及びS.R.フォレスト、Nature 380,29(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、更にOLEDの発光層中のドーパントとして用いることができる或る種類のアズラクトン関連化合物に関し、この場合ドーパントの発光が、その発光を生ずる基本化合物の構造を変えるか、又は成分を選択的に変化することにより変化させることができる。そのような化合物は、真空蒸着法を用いて薄層として容易に堆積することができ、その結果それは真空蒸着有機材料から完全に製造されるOLED中へ容易に配合することができる。アズラクトンを要約した概説論文には、蛍光性についてはなにも記載しておらず、これらの化合物についての用途についてもなにも述べていない。Y.S.ラオ(Rao)及びR.フィラー(Filler)、Synthesis 749−764(1975)。
【課題を解決するための手段】
【0023】
1996年12月23日に出願された同時係属中の米国特許出願08/774,333は、飽和赤色発光を生ずる発光化合物を含むOLEDに関する。発光層は、式I:
【0024】
【化2】
【0025】
(式中、Xは、C又はNであり、 R8、R9及びR10は、夫々独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールからなる群から選択され、 R9及びR10は、一緒になって融合環を形成していてもよく、 M1は、二価、三価、又は四価の金属であり、 a、b及びcは、夫々0又は1であり、然も、XがCである場合、aは1であり;XがNである場合、aは0であり;cが1である場合、bは0であり;bが1である場合cは0である。)により表される化学構造を有する発光化合物からなる。
【0026】
米国特許出願Serial No.08/774,087に記載されている例は、X=C;R8=フェニル;R9=R10=H;c=0;及びb=1の場合の式Iの発光化合物を含んでいる。この化合物は、化学名5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン(TPP)を有する。TPP含有発光層を有するOLEDは、二つの狭い帯域からなる発光スペクトルを生じ、それは図1に示すように、約650及び約713nmの所に中心を有する。このデバイスからの発光は、TPPドーパントからの蛍光を含んでいる。TPPドープデバイスについての問題の一つは、発光の約40%を占める713nmでの狭い帯域が、表示用途に有用な範囲内に入っていないことである。第二の問題は、TPPドープOLEDは非常に不安定であり、そのためそのようなデバイスの保存寿命が非常に短いのが典型的である。TPPドープ装置のこれらの二つの特徴が改善されることが望ましいであろう。本発明は、従来のデバイスのこれらの問題に対処することを目的としている。
【0027】
本発明の別の特徴は、スピン統計議論に基づき、OLED中に生じた励起子の大部分が非発光三重項電子状態になっていることが一般に理解されている。そのような三重項状態の形成は、OLEDの励起エネルギーの基底状態への無放射遷移による実質的な損失を与える結果になる。この励起子三重項状態を通るエネルギー遷移経路を利用することにより、例えば、励起子三重項状態エネルギーを発光物質へ移行させることにより、全OLED量子効率を向上させることができれば望ましいであろう。残念ながら励起三項重状態からのエネルギーは或る環境下で燐光発光分子の三重項状態へ効果的に転移させることができることは知られているが、燐光消滅速度が、表示デバイスで用いるのに適切になる程充分速いものとは考えられていない。本発明は、更に従来のデバイスのそのような問題にも対処したOLEDにも関する。
【0028】
よく報告されているOLED失敗の原因は、有機層の熱的に誘発された変形である(例えば、溶融、結晶形成、熱膨張等)。この失敗状態は、ホール輸送材料を用いて行われた研究に見ることができる。K.ナイトウ(Naito)及びA.ミウラ(Miura)、J.Phys.Chem.97,6240−6248(1993);S.トキト(Tokito)、H.タナカ(Tanaka)、A.オカダ(Okada)、及びY.タガ(Taga)、Appl.Phys.Lett.69,(7),878−880(1996);Y.シロタ(Shirota)、T.コバタ(Kobata)、及びN.ノマ(Noma)、Chem.Lett.1145−1148(1989);T.ノダ(Noda)、I.イマエ(Imae)、N.ノマ、及びY.シロタ、Adv.Mater.9,No.3(1997);E.ハン(Han)、L.ド(Do)、M.フジヒラ(Fujihira)、H.イナダ(Inada)、及びY.シロタ、J.Appl.Phys.80,(6)3297−701(1996);T.ノダ、H.オガワ(Ojawa)、N.ノマ、及びY.シロタ、Appl.Phys.Lett.70,(6)699−701(1997);S.バン・スライケ(Van Slyke)、C.チェン(Chen)、及びC.タング(Tang)、Appl.Phys.Lett.69,15,2160−2162(1996);及び米国特許第5,061,569号。
【0029】
結晶又は多結晶形のものに対してガラスとして存在する有機材料は、OLEDの有機層に用いるのに望ましい。なぜなら、ガラスは一層大きな透明性を与えると共に、材料の結晶形の薄膜を製造する場合に典型的に生ずる多結晶材料と比較して、優れた全電荷キャリヤー特性を生ずることができるからである。しかし、有機層の熱誘発変形により、もしガラス有機層がそのTgより高く加熱されると、OLEDの壊滅的な不可逆的失敗をもたらすことがある。更に、ガラス有機層の熱誘発変形は、Tgよりも低い温度で起きることがあり、そのような変形の速度は、変形が起きる温度とTgとの差に依存する。結局、OLEDの寿命は、装置がTgより高く加熱されていない場合でも、有機層のTgに依存する。その結果、OLEDの有機層に用いることができる高いTgを有する有機材料が必要である。
【0030】
OLEDのHTLに用いられる最も一般的なホール輸送材料は、ビフェニル架橋ジアミンである、化学構造:
【0031】
【化3】
【0032】
を有するN,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−1,1′ビフェニル−4,4′−ジアミン(TPD)である。この物質は、良好なホール易動度を有し、簡単な単一ヘテロ構造OLED中でアルミニウム トリス(8−ヒドロキシキノリン)へ効果的にホールを移動させる。しかし、TPDは167℃の融点を有し、65℃のガラス転移温度を有する。もしTPDを用いて製造した装置を65℃のガラス転移温度より高く加熱すると、壊滅的な不可逆的破壊が起きる。HTLのガラス転移温度を高くするために、幾つかのグループがTPDの基本的構造に対する異なった修正構造を開発した。ナイトウ(Naito)等;トキトウ(Tokito)等;シロタ等;ノダ等(Adv.Mater.);ハン(Han)等;ノダ等(Appl.Phys.Lett.);バン・スライケ等;及び米国特許第5,061,569号。これらの研究は150℃位いの高いTg値を有する材料をもたらしているが、彼らは、或る構造変更がTgを上昇させるのに、他の変更は全くTgに影響を与えないか、又はTgを低くすることさえあるのか理解するに至っていない。更に別の変更は、ガラス転移温度を全く持たない材料、又はHTLで用いるのに適した性質の組合せを持たない材料を生ずることがある。例えば、TPDのアミン基をカルバゾール基で置き換えて、化学構造:
【0033】
【化4】
【0034】
を有する4,4′−ジ(N−カルバゾール)ジフェニル(CBP)を生じさせると、融点が285℃まで上昇する。しかし、この材料はガラス転移を示さない。TPDの基本的構造を更に変化させると、Tg値が一層高く上昇するが、それら材料は屡々TPDよりも劣ったホール輸送特性を有し、即ち、これらの高温材料を用いて作ったOLEDは、TPDに比較してOLEDに貧弱なデバイス特性を与える。
【0035】
米国特許第5,061,569号明細書には、少なくとも二つの第三級アミン部分を有し、更にその第三級アミン窒素原子に結合した少なくとも二つの融合芳香族環を有する芳香族部分を含むホール輸送材料が記載されている。そこに記載されている広範な種類の化合物によって包含される多数の化合物の中で、米国特許第5,061,569号は、高いガラス転移温度を有する化合物の選択の仕方を記載していない。例えば、ナフチル誘導体は安定なガラスを作らない。一つのそのような分子は、化学構造:
【0036】
【化5】
【0037】
を有する4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)である。本発明者の測定ではα−NPDは100〜105℃のTgをもち、それはTPDの65℃のTgよりも実質的に高い。この材料は優れたホール伝導特性を有し、100〜105℃のTgは約65℃のTPDのTgよりも高い。NPDを用いて作ったOLEDは、TPDを用いて作ったものに非常に似た電気的性質を有する。しかし、構造:
【0038】
【化6】
【0039】
を有する4,4′−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(β−NPD)は、一般にα−誘導体よりも実質的に低いTgを有すると理解されてきた。明らかにこのα−誘導体とβ−誘導体との意図的に低い異常な差のために、OLEDのホール輸送材料としてβ−誘導体を用いる報告は知られていなかった。
【0040】
もしOLEDが従来法の化合物に匹敵するルミネッセンス特性を依然として与えながら、改良された温度安定性を有するガラス状電荷キャリヤー材料から製造することができることが望ましいであろう。ここで用いられている用語「電荷キャリヤー層」とは、二重ヘテロ構造を有するOLEDのホール輸送層、電子輸送層、又は別の発光層を指す。更に、特に、高いガラス転移温度を有するガラス状電荷キャリヤー材料を特徴とする、改良された温度安定性を有するそのようなガラス状電荷キャリヤー材料を選択し、製造するための方法を有することは有用であろう。
【0041】
更に、材料のTgとホール輸送特性との間には一般に逆の関係にあり、即ち高いTgを有する材料は、一般にホール輸送特性が良くない。良好なホール輸送特性を有するHTLを用いることにより、一層高い量子効率、一層低いOLEDを通る抵抗、一層高い電力量子効率、及び一層大きなルミネッセンスのような望ましい性質を有するOLEDが得られる。従って、大きいホール易動度及び高いガラス転移温度を有するHTLが要求されている。
【0042】
(本発明の利点及び要約) 本発明は、半導体有機層と低抵抗接触した電気伝導性非金属層からなるカソードに関する。
【0043】
本発明は、実質的にどんな型の光電子装置にでも用いることができる高度に透明な非金属カソードに関する。
【0044】
特に、本発明は、例えば、OLEDに用いることができる高度に透明な非金属カソードに関し、それらは半透明な金属カソードに匹敵する電子注入特性を有し、然も、少なくとも約85%まで、或は更にそれより高い光透過率を有する。
【0045】
更に特に、本発明は、非金属カソードを有する高度に透明な有機発光装置(OLED)に関する。
【0046】
別の態様として、本発明は、非金属カソードとしての機能を果たすITOのような無機半導体材料を有するOLEDに関する。
【0047】
更に別の態様として、本発明は、非金属カソードを有する有機半導体レーザーに関する。
【0048】
本発明の更に別の態様として、OLEDは、OLEDのカソードからルミネッセンス領域への電子の注入及び移動を促進することができ、更にカソード層の堆積中に下の有機層を損傷しないように保護することができる有機保護層と接触した非金属カソードを有する。この有機保護層は、装置のルミネッセンス領域中の電子輸送層と直接接触していてもよく、或はこれら二つの層の間に、OLEDのルミネッセンス領域への電子の輸送を更に促進する付加的電子輸送層が存在していてもよい。
【0049】
本発明の更に別な態様として、本発明は、半導体有機層と低抵抗電気接触した電気伝導性非金属層を有するカソードを形成することを含むカソード製造方法に関し、この場合その形成には、電気伝導性非金属層と半導体有機層との間に、その電気伝導性非金属物質を半導体有機層と低抵抗電気接触させる領域を形成する工程を有する。
【0050】
更に、本発明は、非金属カソードを有する有機発光装置を製造する方法に関する。
【0051】
本発明は、更にエレクトロルミネッセンスを発生させるためのヘテロ構造を有する有機発光装置(OLED)に関し、この場合そのヘテロ構造は、少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を持つ化合物を含む電荷キャリヤー層を有し、その電子輸送部分は、Al、Ga、又はInのような第III族金属に配位した2−メチル−8−キノリノラト リガンドである。ホール輸送部分はホール輸送アミン部分である。そのようなホール輸送アミン部分の一つの例はトリアリールアミン誘導フェノキシドである。従って、その化合物は、例えば、電子輸送部分としてAlに配位した二つの2−メチル−8−キノリノラト リガンド及びホール輸送部分として一つのトリアリールアミン誘導フェノキシドを有する。
【0052】
少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を有する化合物を含む電荷キャリヤー層は、単一ヘテロ構造のETLのような発光層でもよく、又は二重ヘテロ構造の別の発光層でもよい。この化合物は、OLEDのETLとカソードとの間に配置された電子注入促進層のような、カソードからETLへの電子の注入を促進するか、又はOLEDのHTLとアノードとの間に配置された、アノードからHTLへのホールの注入を促進するホール注入促進層のような、注入促進層として用いることもできる。
【0053】
本発明は、更に大きなホール易動度を有するETLを与え、それによりホールを単一ヘテロ構造のHTL/ETL界面から遠く移動させ、最終的にETLの大きな体積に亙って電子と再結合させることができる。この特徴はOLEDの寿命を増大すると考えられる。
【0054】
本発明は、更にOLEDの発光層中のドーパントとして用いることができる或る種類のアズラクトン関連化合物に関する。
【0055】
特に本発明は、原色の一つの波長領域中に中心を持つ帯域中でエレクトロルミネッセンスを生ずる種類のアズラクトン関連化合物から選択されたドーパント化合物に関する。
【0056】
更に、本発明は、エレクトロルミネッセンスを生ずるヘテロ構造を有する有機発光デバイス及びその有機発光デバイスを製造する方法に関し、この場合そのヘテロ構造はアズラクトン関連化合物を含む発光層を有する。
【0057】
本発明は、更にデバイスからの発光が燐光減衰過程によって得られるOLED及びそのOLED製法に関し、この場合燐光減衰速度は、表示デバイスの必要条件を満たすのに充分な速さを持っている。
【0058】
特に、本発明は、更に励起子一重項又は三重項状態からのエネルギーを受けて、そのエネルギーを燐光放射線として発光することができる材料を有するOLEDに関する。
【0059】
本発明の利点の一つは、燐光減衰過程が励起子三重項状態のエネルギーを利用していることであり、そのエネルギーは無発光エネルギー転移及び緩和過程によりOLED内で浪費されるのが典型的なものである。本発明は、更に高度に飽和した赤色発光を生ずることができる材料から構成されてOLEDに関する。特に本発明のOLEDは、トリス−8−ヒドロキシキノリン−アルミニウム(Alq3)からなる電子輸送層中でPtOEPをドープした場合に、640nm近くにピークを有する狭い発光帯域を生ずる化合物である白金オクタエチルポルフィン(PtOEP)から構成することもできる。そのような発光は高度に飽和した赤色発光として認められる。
【0060】
PtOEPドープOLEDの別の利点は、そのようなOLEDが、装置を数日間周囲の環境条件に曝した場合、従来の装置に匹敵する安定性、特にTPPドープデバイスと比較して確実に一層長い保存寿命安定性を有することである。
【0061】
本発明は、更に燐光ドーパント化合物がスペクトル範囲で高度に飽和した赤色発光を生じ、そのため人間の目の視感反応機能が、PtOEPドープOLEDと比較して著しく増大した材料及びOLEDの製法に関する。
【0062】
特に、本発明は、更にOLEDで用いられる燐光ドーパント化合物を選択する方法に関し、この場合その燐光化合物はPtOEPのような化合物の四重対称性と比較して減少した対称性を有する白金ポルフィン化合物になるように選択することができ、その結果、飽和赤色として認められるスペクトル範囲中に依然として入りながら、目の感度曲線のピークの方へ移行した発光ピークを有する化合物を得ることができる。
【0063】
更に、本発明は、ガラス構造を有するホール輸送層を持つエレクトロルミネッセンスを発生するためのヘテロ構造を有する有機発光デバイスに関する。ホール輸送層は、対称性分子構造を有する化合物から構成することができる。対称性分子の末端基は、二つのアレンの間の飽和結合を有するホール輸送アミン部分である。
【0064】
本発明の目的及び利点は、開示する本発明の詳細な説明から当業者には更に明らかになるであろう。
【0065】
(好ましい態様についての詳細な説明) 本発明を、本発明の特別な好ましい態様について次に詳細に記述するが、これらの態様は例示のための例としてのみ与えられており、本発明がそれらに限定されるものではないことを理解すべきである。
【0066】
本発明は、就中、半導体有機層と低抵抗電気接触を形成する電気伝導性非金属層からなる新規なカソードに関する。そのようなカソードは、広範な範囲の電気デバイスで用いることができる。特に、本発明のカソードは高度に透明な材料から作られており、そのようなカソードはOLED、太陽電池、光検出器、レーザー及び光トランジスタのような有機光電子デバイスで用いるのに特別な利点を有する。S.R.フォレスト(Forrest)、Chem.Rev.97,1793(1997)。電子輸送材料からなる少なくとも一つの電子輸送層(ETL)及びホール輸送材料からなる少なくとも一つのホール輸送層(HTL)を有する光電子デバイスでは、カソードはデバイスのETL側上の電極として同定され、アノードはそのデバイスのHTL側上の電極として同定される。OLEDでは、例えば、カソードはETL中へ電子を注入する電極として言及され、アノードはHTL中へホールを注入する電極として言及されている。ホールをHTL中へ注入するのは、HTLから電子を取り出すのと同等である。
【0067】
OLEDの各電極は、電極がアノード又はカソードとしての機能を夫々果たすことにより、隣接するHTL又はETLと直接接触した層として存在するのが典型的である。別法として、付加的有機層をアノードと有機HTLとの間に存在させてもよいことが同時出願の米国特許出願Serial No.08/865,491に記載されている。保護層又はホール注入促進層として言及されているそのような付加的層は、電極層の堆積中に下にある有機層を保護するための保護層として且つ(又は)アノードのホール注入効率を増大するための促進層としての機能を果たすことが開示されている。例えば、Serial No.08/865,791には、例えば、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、又は銅フタロシアニン(CuPc)のようなフタロシアニン化合物、又はPTCDAの保護層は、有機HTLの上に堆積することができ、後のITOアノード層のスパッタリング蒸着中の有機層を保護することができることが開示されている。Serial No.08/865,491には、更にその保護層が、或る場合にはホール注入アノードのホール注入効率を向上することが記載されている。
【0068】
或る金属によって与えられる大きな電気伝導度及び低い仕事関数のために、カソード/有機層界面を有するOLEDのような特に有用な光電子デバイスは、現在まで、そのような光電子デバイスの性能が金属カソード層の大きな反射性によって悪影響を受ける傾向があるにも拘わらず、光放射線の適度な吸収と同様、本来大きな反射性を有する金属カソード材料から構成されてきた。高度の透明性が望まれるOLEDのような光電子デバイスでは、半透明の金属カソード層は非常に薄い金属層を用いて製造されるのが典型的である。それにも拘わらず、金属カソード材料の大きな電気伝導度に本来関係している金属の大きな反射性は、依然としてデバイスの全性能、例えば全デバイスについての量子効率を減少させる重要な損失を起こしている。
【0069】
本発明の驚くべき態様の一つは、電気伝導性非金属材料が、有機層と低抵抗電気接触を形成することができることが発見されたことであり、この場合、今後「カソード/有機層界面」と呼ぶ電気伝導性非金属層/半導体有機層界面が、非金属カソード層からカソード/有機層界面の半導体有機層を通って、実際上有用な有機光電子デバイスの隣接するETL中へ電子を効果的に注入することができる。従って、カソード/有機層界面の半導体有機層は、ここでは別の言い方で、電子注入界面層と呼ぶ。
【0070】
特に有用な有機光電子デバイスで用いることができる低抵抗電気接触と言う言葉によりここで意味されることを具体的に述べると、そのような接触とは、カソード/有機層界面を通る電圧降下が、デバイスの残りの部分を通る全電圧降下よりも大きくならないこと、即ち、カソード/有機層界面を通る電圧降下が、全デバイスを通る全電圧降下の約50%より小さいような接触である。カソード/有機層界面を通る電圧降下は、全電圧降下の約30%より小さいのが好ましい。
【0071】
電気伝導性非金属層は、広い反射性の非金属材料から選択することができ、ここで用語「非金属」とは、材料が化学的に結合していない形の金属を含まないことを条件として、広い範囲の材料を包含することを意味している。金属がその化学的に結合していない形で存在する場合、単独又は合金のように一種以上の他の金属との組合せになっている場合、その金属は、別の言い方として金属状態で存在しているものとして、又は「遊離金属」として言及することができる。本発明の非金属カソードは、時々本発明の一人以上の発明者により「金属を含まないカソード」として呼ばれることがあるが、この場合その用語「金属を含まない」とは、明らかに化学的に結合していない形で金属を含まない材料を包含することを意味するものである。そのような「非金属」又は「金属を含まない」材料は、「金属代替物」と呼ぶこともできる。ここで用いられる用語「金属代替物」とは、通常の定義内で、金属ではないが、適当な前後の関係で金属に似た性質を有する材料を指す。電極のための一般に用いられている金属代替物は、広いバンドギャップの半導体、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)錫酸化物(TO)及びガリウム・インジウム・錫酸化物(GITO)のような透明伝導性酸化物が含まれる。特にITOは、約320nmより大きな波長に対しそれを透明にする約3.2eVの光学的バンドギャップを有する高度にドープした縮退n+半導体である。他の電極材料は、透明伝導性重合体ポリアナリン(PANI)及びその化学的関連物である。
【0072】
本発明は、金属又は化学的に結合していない形で存在している金属又は金属合金を含まない、即ち、遊離金属を含まないことを特徴とする非金属カソード材料に関するが、カソード材料は低い含有量で遊離金属をその金属状態で含んでいることがあっても依然として本発明の範囲及び本質内に入ることは理解されるべきである。即ち、好ましいカソード材料は金属状態の遊離金属を含まないことが現在目的とされたり或は予想されたりすることはないが、本発明の範囲を単に回避しようとして、或は現在未だ知られていない利点を与えるためでも、わざと低レベルの金属を添加することは、依然として本発明の範囲及び本質内に完全に入るものである。従って、本発明の非金属カソード材料は、効果的に遊離金属を含まない材料を包含することを特徴とし、この場合遊離金属を効果的に含まない材料は、それに対応して温度が絶対0°の方へ低下するにつれて減少する比抵抗を有する。非金属材料の同時に存在する性質は、遊離金属中に存在する部分的に占められた電子伝導帯域が欠如されているために、実際上検出可能な光学的反射を殆ど示さないことである。
【0073】
本発明の別の驚くべき特徴は、特許請求したカソードの代表的具体例を、例えば、OLEDに用いると、非金属カソード材料が、典型的には低仕事関数の金属によって与えられるフェルミエネルギー準位を持たないにも拘わらず、カソードは電子を隣接する有機層中に効果的に注入することができることである。そのような効果的な電子注入は、電気伝導性非金属層と半導体有機層との間のカソード/有機層界面では電子注入に対する大きな障壁が予想される事実にも拘わらず起きる。従って、本発明は、更に電子注入に対するそのような障壁を効果的に減少させる方法にも関する。
【0074】
特に、ここに開示するように本発明の代表的態様では、カソード/有機層界面を通る電子流のために低抵抗電気接触を生成するための本発明の方法は、カソード/有機界面の半導体有機層の表面又はその近くに、従って、非金属カソード材料と半導体有機材料本体との間に損傷領域を与えることを含む。この損傷領域は、電子輸送のための高密度表面状態、即ち欠陥状態を生じさせるようなやり方で形成する。これらの表面状態、即ち欠陥状態は、直接には検出されておらず、実際に容易には直接観察することはできないが、これらの表面状態の存在は、カソード/有機層界面を通る低抵抗電気接触により間接的に証明されるように、電子輸送に対する実質的に低下した障壁を説明するのに必要であると考えられる。
【0075】
特に、非金属カソード材料中の伝導電子のエネルギーレベルと、カソード/有機層界面の半導体有機層の本体中の伝導電子のエネルギーレベルとの間の中間のエネルギーレベルで表面状態は存在するものと考えられる。更に、表面状態の分布は、半導体有機材料と非金属材料との間に通常存在する電子流に対する大きな障壁にも拘わらず、カソード/有機層界面領域を通って効率的な電子輸送を行うことができるエネルギー及び物理的空間の両方で充分緻密になっていると考えられる。そのようなカソード/有機層界面を有する非金属カソードは、従って例えば、OLEDの隣接ETL中へ電子を注入するための大きな効率を有することが見出されている。
【0076】
更に、電気伝導性非金属層としてITOが用いられ、電子注入界面層としてZnPc又はCuPcのようなフタロシアニン化合物が用いられている本発明の代表的な態様では、有機層の上にITOを堆積した場合だけ低抵抗電気接点が形成され、有機層をITO層の上に堆積した場合には形成されない。従って、本発明の更に別な特徴は、カソード/有機層界面を形成するのに好ましいITO及びZnPc又はCuPc化合物を用いた場合、本発明は、特に低抵抗電気接触をもたらすITO堆積速度及びフタロシアニン厚さを用いてフタロシアニン層上に非金属ITO層を堆積したカソードに関することである。表面で起きる損傷の程度を制御するようにITOスパッター蒸着工程を適切に制御することにより、希望の低い抵抗を有するカソード/有機層界面を生成させることができる。本文中別の所で述べたように、低抵抗電気接点により証明されるような電子輸送に対する低下した障壁は、有機層の表面又は表面近くに高密度の表面状態により与えられるものと考えられる。電気伝導性非金属層と半導体有機層との間の低抵抗接触を有するカソードを形成するために高密度の表面状態を導入する工程を含む更に別の方法も、本発明の範囲及び本質内に完全に入る。
【0077】
本発明のこの特徴、即ち、低仕事関数金属材料に匹敵するが、金属材料の高反射性を持たない極めて効率的な電子輸送カソード/有機層界面を形成することができることは、有機光電子デバイスで用いられていた従来既知のカソード材料では持つことのできない独特の有利な性質の組合せであると考えられる。従って、本発明は、ここではその特に代表的な態様に関連して記述されているが、本発明の範囲及び本質は、半導体有機層と低抵抗電気接触を形成する電気伝導性非金属層からなるどのようなカソードでも包含するものと考えられる。更に、電気伝導性非金属材料と半導体有機層との間の電子流に対する障壁を実質的に減少させる充分高い密度を有する表面状態を形成することを含むどのような方法でも、本発明の範囲及び本質内に完全に入るものと考えられる。電子流に対する障壁の実質的減少は、ここで定義するように、カソード/有機層界面の電気伝導性非金属層と、半導体有機層との間の低抵抗電気接触界面の形成をもたらす減少としてここでは特定化する。従って、本発明は、界面の一方の側に電気伝導性非金属材料、その界面の反対側に半導体有機材料を有する界面を形成することを含むカソード製造方法において、その形成工程が、電気伝導性非金属材料が半導体有機材料と低抵抗電気接触を形成するカソードとしての働きをすることができるように、電気伝導性非金属材料と半導体有機材料との間に中間領域を形成する工程を含む製造方法に関する。
【0078】
金属材料に固有の極めて反射性の性質を持たない電気伝導性非金属カソード材料を用いることにより、一般に、大きな光透過性が望まれるデバイス、特にOLEDのような光電子デバイスでのカソードとして用いるための高度に透明な材料を選択することができる特別な利点を与える。従って、本発明の更に別な特徴の一つは、OLEDのような光電子デバイスを、半透明金属カソードに匹敵する電子注入特性を持つ高度に透明な非金属カソードを用いて作ることができることである。全装置の最大透過率が約60〜70%になるのが典型的な最も薄い実際的半透明金属カソードと比較して、本発明の非金属カソードを用いて少なくとも約85%の光透過率を有するデバイスを製造することができる。
【0079】
本発明のカソードを製造するのに用いることができる電気伝導性非金属材料は、例えば、透明広バンドギャップ半導体、例えば、少なくとも1eVのバンドギャップ及び入射及び照射放射線について少なくとも50%の透過率を有する広バンドギャップ半導体であるように選択することができる。好ましい広バンドギャップ半導体には、ITO、酸化錫、又はガリウム・インジウム・錫酸化物(GITO)のような伝導性酸化物が含まれる。
【0080】
効率的な電子注入を生ずるようにITO層と組合せて効果的に用いることができる半導体有機材料は、次の性質を持つのが好ましい。
【0081】
1.後に記載するように、ITO層の堆積中のスパッタリングにより僅かに限定された損傷だけを与えるのに充分な化学的及び構造体安定性。フタロシアニン、ナフタロシアニン及びペリレンのような大きな平面状分子が代表的な例である。更に広がった共役二重結合(例えば、付加的に融合したベンゾ−、ナフタ−、アントラ−、フェナントレン−、ポリアセン等の基)を有するこれらの化合物の誘導体も用いることができる。重合体材料は或る環境下で存在していてもよい。
【0082】
2.層が、電子輸送層としての機能を果たすことができるようにするのに充分な電子易動度;少なくとも10−6cm2/V秒の値を有するキャリヤー易動度を有する電気輸送材料は、一般に材料が電子輸送層としての機能を果たすのに充分であると考えられているが、実質的に一層高い値が一般に好ましい。この場合も、フタロシアニン及び或るペリレンのような大きな平面状分子が代表的な例である。
【0083】
3.イオン化電位(IP)とHOMO/LUMOギャップエネルギー(最高占有分子軌道と最低非占有分子軌道との間のエネルギーギャップ)との間の差、即ち、電子注入界面層に用いられる材料の「IP−HOMO/LUMOギャップエネルギー」は、電子が注入されるフイルムのIP−HOMO/LUMOギャップエネルギーに等しいか又は好ましくはそれより小さいようなものである。このガイドラインは、厳密に従わなければならないような制約と考えられるものではなく、大略従うように意図されたものである。例えば、このガイドラインからの約0.5eVの僅かな偏倚は、材料の或る組合せについては許容することができる。このガイドラインの使用は、接触フイルム(例えば、Alq3)中への電子流に対するエネルギー障壁が形成されるのを防ぐのに役立つ。
【0084】
更に一層特別には、本方法は電気伝導性非金属層としてITOを、電子注入界面層としてCuPc又はZnPcのようなフタロシアニンを用いることを含んでいる。この場合、電気伝導性非金属ITO層は、CuPc又はZnPcの電子注入界面層を構成する有機保護層にスパッタリング蒸着される。損傷の程度を制御するように、約100Å〜約300Åの厚さに蒸着されるまで、約1〜約10Å/分の比較的低い初期蒸着速度でITOを有機層の上にスパッターする。後で更に詳細に記述するように、そのような電気伝導性非金属層/半導体有機層界面は、光電子デバイスの他の種類のものに対するのと同様、OLEDで用いるための低抵抗電気接点を与えることができる。
【0085】
従って、本発明は、特に非金属カソードを用いた新しい種類の高度に透明な有機発光デバイス(OLED)に関する。非金属カソードを利用したOLEDは、非常に低い反射性をもち、多層有機構造体について達成される理論的最大値に近い大きな透明性を有する。そのようなOLEDの低反射性は、特に高コントラスト表示用途で用いるのみならず、積層有機発光デバイス(SOLED)で微細空洞効果を除去するのに用いられる特別な利点を有する。これらの低抵抗非金属カソードを用いたOLEDは、信頼性のある高解像力天然色平面パネル表示器、「ヘッドアップ(heads up)」表示器、及び有機系レーザーに特に有用であると予想される。
【0086】
図1A2aに示したように、本発明の代表的なの態様として、透明ホール注入アノードとして働くインジウム錫酸化物(ITO)フイルムで予め被覆したガラス基板の上にTOLEDを堆積する。例えば、TOLEDは、非金属カソード1、電子注入界面層6、電子輸送層2、ホール輸送層3、アノード層4、及び基板5を有する。ホール輸送層及び電子輸送層を堆積した後、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)の薄膜を堆積することにより電子注入界面層を付加し、次に低電力無線周波スパッターしたITOをかぶせる。この第二のITO層は、この装置のカソードとして働く。或る場合には、ITOスパッタリング工程中、下の有機層に対する損傷を防ぐ保護層としての機能を果たす外、CuPc層はITO層と一緒になって、隣接する電子輸送層へ電子を送るための電子注入領域としての働きもする。例えば、4,4′−ジ(N−カルバゾロ)ジフェニル(CBP)の付加物中間電子輸送層を、図1A2bに示したように、第一電子輸送層とCuPc層の間に存在させてもよい。中間的電子輸送層は、非金属カソード層と低抵抗電気接触している電子注入界面層と、ホール輸送層と接触している電子輸送層との間に横たわる。特に、図1A2bのOLEDは、非金属層1、電子注入界面層6、中間電子輸送層7、電子輸送層2、ホール輸送層3、アノード層4、及び基板5を有する。
【0087】
金属カソード層が存在しないため、ここに記載する代表的Alq3系TOLEDは、前方及び後方散乱方向にほぼ同じレベルで光を発し、全外部量子効率は約0.3%になる。これらのデバイスは可視域で80%以上の透過率を有する。本発明により製造されたOLEDの反射及び吸収特性、電流・電圧、輝度・電流、及びエレクトロルミネッセンススペクトルは、ITOをかぶせたMg:Agの薄膜からなる一層反射性のカソードを用いた従来のTOLEDに少なくと匹敵するか、或る点ではそれより優れた性能特性を示している。
【0088】
例えば、図1A3に示したTOLEDの結果と、図1A4に示した結果とを比較することにより分かるように、本発明によるTOLEDは、180時間で光出力の僅か約2倍の低下を示しているのに対し、従来のTOLEDは同じ時間間隔で光出力の約4倍の低下を起こしている。図1A5の結果は、Cu(CuPc)及びZn(ZnPc)の両方のフタロシアニンを電子注入界面層として用いることができることを示しているが、図1A6の結果は、CuPcデバイスが著しく一層大きな量子効率を有することを示している。図1A8の結果と図1A9の結果とを比較すると、本発明により作られたOLEDのI−V特性の安定性は従来のデバイスに匹敵するものであることを示している。図1A7に示した結果は、本発明により作られたOLEDの全光透過率は、CuPcのQ−バンド吸収構造特性を示すスペクトル部分を除き、OLEDで達成される透過率の理論的最大値に近いことを示している。このデバイスの反射スペクトルは、ガラス/空気及びITO/空気界面によって限定される理論的最小値に近い。反射防止層は、この反射を更に無視できる値にまで減少することができる。
【0089】
ITO層と接触した電子注入界面層は、約15〜120Åの範囲の厚さを有する。例えば、図1A10及び1A11は、CuPcが電子注入界面層として用いられる場合には、約30Å〜約120ÅのCuPc注入層厚さを有するデバイスは、匹敵する性能特性を生じたことを示している。図1A10及び1A11に示したデータを集めるように製造したデバイスも、ITOアノード層とホール輸送層との間に50Åの厚さを持つCuPc層を含んでいた。ITOアノード層と接触したこのCuPc層は、1997年5月29日に出願された係属中の米国特許出願Serial No.08/865,491号に記載されているように、ホール注入促進層として働く。
【0090】
本発明の範囲を代表する更に別の例として、非金属カソード及び同じ実験で成長させた慣用的TOLEDを有する別の典型的な透明有機発光デバイスの電流・電圧(I−V)特性を図1A12に示す。図1A12に示した結果を得るように用いたTOLEDは、図1A13に示されており、この場合非金属カソード1はITOであり、電子注入界面層6はCuPcであり、電子輸送層2はAlq3であり、ホール輸送層3はα−NPDであり、アノード層4はITO及び基板5であった。このデバイスはITOアノードとHTLとの間に付加的CuPc層8を持っていた。「スイッチオン電圧」、VT、の上及び下に二つの明確な作動領域が観察される。VTより下のトラップのない空間電荷限定輸送は、I∝Vm−1に従う。VTの上では、電流はI∝Vm−1に従いトラップされた電荷限定されている。P.E.バローズ、S.R.フォレスト、Appl.Phys.Lett.64,2285(1994)、P.E.バローズ、Z.シェン、V.バルビック、D.M.マッカーティー(McCarty)、S.R.フォレスト、J.A.コロニン(Cronin)、及びM.E.トンプソン、J.Appl.Phys.79,7991(1996)。ITO/Mg:Ag接点のものと比較してITO/CuPcが僅かに効率の低い注入特性は、TOLED(4.2V)及び非金属カソードを有するTOLED(5.2V)についてVTの名目上の差に反映されている。カソードのCuPcをZnPcで置き換えた場合に同様なI−V特性が得られることは、良好な電子注入接触を形成するのにそれらの同等性を示している。しかし、CuPcをPTCDAで置き換えると、VTの20Vまでの著しい増大が起きる。
【0091】
電流の関数としてデバイスの表面及び底面の両方から発する光学的出力の合計が、図1A12の場合と同じデバイスについて図1A14に示されている。デバイスの全外部量子効率は、η=(0.38±0.05)%で同様である。それらの10mA/cm2でのそれらの輝度は〜200cd/m2であり、図1A14に示した最大駆動電流に相当して、10mA/cm2で2000cd/m2まで増大する。非金属カソードを有するTOLEDの表面から発する出力対基板底面から発する出力の比は、r=1.0±0.05である。
【0092】
非金属カソードを有するTOLED中のCuPcと他の有機材料の複素屈折率の間に比較的大きな差があるため、図1A15に示すように、デバイス底面に対し、表面からの測定エレクトロルミネッセンススペクトル出力には幾らかの広がりがある。デバイスの各層について知られている複素屈折率を用い、放射二局性cm6分子が発光層中に均一に分布していると仮定して、rを波長(λ)の関数として計算した。基板からの発光をr(λ)をかけることにより頂部表面スペクトルに対する適合が得られた。その適合は、標準化した測定出力スペクトル(図1A14)によく一致し、計算と実験との間の残余の不一致は、CuPcの分散を無視したことによる。
【0093】
CuPc又はZnPcカソードを用いたデバイスのI−V特性は同様であるが、ZnPcデバイスのηは、CuPcデバイスのものよりも30%低い。しかし、CuPcとZnPcカソードとは明確に異なって、カソードにPTCDAを有するデバイスは、CuPcのそれの僅か1%の量子効率しか持たない。このことは、PTCDAカソードを用いたETL中への電子注入は極めて低いことを示しており、I−Vデータと一致している。
【0094】
TOLEDから半透明金属フイルムを除外すると、全光透過率が著しく増大する結果になる。このことは、図1A17に示したように、TOLED配列及び従来のTOLED配列を有する非金属カソードを用いたデジタル再生写真から容易に分かる。それら配列は、コントラストのため黒色ドットのグリッドを有する白色バックグラウンドの上に配置されている。これらの装置は下から照らされ、従来のTOLEDについては約0.2〜0.4cmの矢印により、非金属カソードを有するTOLED配列については約1.3〜1.6cmの矢印で夫々示されている。図1A17の写真は、本発明の非金属カソードが電極に金属が存在していないため無性であるのに対し、従来のTOLEDは金属カソードのため淡い灰色の外観を有することを示している。非金属カソードを有するTOLED配列は、図1A7に示された反射防止被覆のないデバイスの光学的透明性のデジタル測定が、従来のOLEDよりも35%の増大に相当する0.85±0.05の透過率を示す場合にのみ、検出することができる。非金属カソードを有するTOLEDの反射及び吸収も図1A7にプロットされており、この場合吸収の主な原因はCuPcのQバンドによる〔B.H.シェチマン(Schechtman)及びW.E.スパイサー(Spicer)、J.of Mol.Spec.33,28(1970)〕それはλ=620nm及び665nmの所にピークを有する。
【0095】
本発明がどのような作動するかについての理論に束縛されるものではないが、ITO堆積の初期段階中、ここでカソード/有機フイルム界面の損傷層として言及している所の損傷誘発状態が生ずるものと考えられる。仕事関数の低い金属のフェルミエネルギーを有するETLの最低非占有分子軌道(LUMO)のエネルギー帯の一致を必要とする高効率電子注入電極についての従来の理解〔C.W.タング(Tang)及びS.A.バンスライケ(Van Slyke)、Appl.Phys.Lett.51,913(1987)〕とは対照的に、ここではその損傷層は、典型的には低仕事関数金属によって与えられる一致するフェルミエネルギー準位を持たない材料からなる非金属カソードについて改良された電子注入特性を与える原因になっていると考えられる。
【0096】
高度に透明な非金属カソードの改良された電子注入特性は、図1A16の提案されたエネルギーバンドの図を参照して理解することができる。HOMO距離への真空レーバーとして定義されているイオン化電位(IP)、及び光学的エネルギーギャップ(Eg)は、A.ラジャゴパル(Rajagopal)、C.I.ウー(Wu)、及びA.カーン(Kahn)、Mat.Res.Soc.の1997年秋季会議、論文J1.9;及びK.セキ(Seki)、Mol.Cryst.Liq.Cryst.171,255(1989)からとった。CuPcのイオン化電位(IP)は、ITOの仕事関数とα−NPDのIPとの間に存在するので、CuPcはHELへのホール注入に対する障壁を低下する。これとは対照的、ITO/CuPc界面では、この電極が本発明に従って製造される限り、ここで効率的に電子を注入すると記載されているにも拘わらず、電子注入に対し大きな障壁(1.6eV)が存在する。この明らかな矛盾は、ITOをかぶせたPTCDAからなるアノードを用いた効率的ホール注入についての前の報告と一致しているS.R.フォレスト、L.Y.リュー(Leu)、F.F.ソー(So)、及びW.Y.ヨーン(Yoon)、J.Appl.Phys.66,5908(1989)。この場合、ホール注入はITOからPTCDAへの障壁が2.1eVであるにも拘わらず達成される。イオン化エネルギー(HOMO距離への真空レベルとして定義されている)の値は、A.ラジャゴパル、C.I.ウー、及びA.カーン、J.Appl.Phys.83,2649(1998)及びK.セキ、Mol.Cryst.Liq.Cryst.171,255(1989)からとった。これらの著者は、図1A4に示したように、真空レベルは有機ヘテロ接合の間では平らになっていないであろうと言うことを示唆しているが、このことは我々の結論を変えるものではなく、従って簡単にするため省略した。
【0097】
大きなエネルギー障壁が存在する中での効率的エネルギー注入は、その障壁が電極堆積/形成工程により効果的に減少することを示唆している。ITOをCuPc表面上にスパッターすると、発熱反応によりCuはCu−O結合を形成し〔F.F.ソー及びS.R.フォレスト、J.Appl.Phys.63,442(1988)〕、それにより図1A16に示したように、高密度の中間ギャップ又は表面状態を生ずる。これらの状態は、ITO界面から遠ざかると密度が減少するが、注入された電子により容易に乗り越えられる小さなエネルギー「ステップ」を与える。これらのデータ及び得られるモデルは、低仕事関数金属が効率的電子注入には必要であると言う従来の示唆に対照的なものである。残留エネルギー障壁が、本発明の非金属カソードを持たないTOLEDと比較して、非金属カソードを有するTOLEDの場合VTに僅かな増大がある一つの原因になっているであろう。
【0098】
損傷がCuPc層に限定されている場合にのみ、本発明の非金属カソードを生ずるのにそのような障壁が有効であると言う証拠は、60Åから30ÅへCuPc層の厚さを減少させることにより得られる。この厚さの減少は、非金属カソードを有するTOLEDの製造収率を約90%から40%へ同時に減少させる結果になる。製造収率は、製造及び試験された全デバイス数に対するショートしていない有効デバイスの比として定義されている。そのような収率は、10〜20の試験装置の試験母集団に基づいていた。これらの結果は、ITO/PTCDAの場合に示したように、CuPcの最初の数単分子層だけが低抵抗カソード/有機層界面で損傷されることを示唆している。CuPcが余りにも薄く作られると、スパッターされたITOが「突き抜け」て下のAlq3を損傷すると考えられる。実際、ITOはα−NPD又はAlq3に直接スパッターされ、この場合ITO層は夫々アノード又はカソードとして働くが、得られる収率は0に近くなる。
【0099】
ここでは、CuPc及びPTCDAに対する限定された損傷は、これら大きな平面状分子中の広がった共役電子軌道によるものと考えられる。スパッタリング中、活発な金属又は酸素原子がこれら表面分子の一つに衝突すると、衝突のエネルギーが分子π電子系の数多くの結合に亙って効果的に分布する。これとは対照的にAlq3又はα−NPDにはそれに匹敵するような大きなπ系は存在しない。そのような分子では、衝撃エネルギーは僅か数個の原子部位の中に局在し、それによって分子結合を切断する確率を増大する。CuPc及びPTCDAのような結晶分子系の平面状又は殆ど平面的な積層配列も、格子中の幾つかの隣接分子の間にエネルギーを消散させる働きもする。
【0100】
キャリヤー注入を促進する、活発な原子によって引き起こされた欠陥により演じられる役割に基づくこの仮説は、Alq3及びα−NPD層の順序を逆にした点を除き、図1A12に示したような透明非金属カソードを有するTOLEDを製造することにより試験した。ETLとHELの層を逆にしたこれらのデバイスでは、VTは二桁(〜10V)増大することが観察され、約10−3%の外部量子効率ηが、ITO/CuPc界面がホールをα−NPDに注入するのに優れていることが知られているけれども、測定された。従って、このデバイスの低い効率は、損傷層を持たないCuPc/ITO界面が電子をAlq3へ注入するのに効果的でないことの明確な証拠を与えている。従って、ITOの上にCuPcを低エネルギー堆積することは、電子注入に必要な界面中間ギャップ状態を生じないことが結論される。従って、カール(Karl)その他及びホワイトロック(Whitlock)等により製造されたITO層は、損傷層を生成させるように有機層上にITO層を堆積するのではなく、ITOの上に有機層を堆積することにより製造されているので、カールその他及びホワイトロックその他によるITO層は、それらカールその他又はホワイトロックその他の電極が太陽電池のカソードとして働く場合でも、本発明の向上した電子注入特性は生じないものと予想される。
【0101】
デバイス特性の非対称性は、非金属カソードを有するTOLEDに逆バイアスをかけた場合の非常に低い電流及びエレクトロルミネッセンスの欠如と一致している。この場合、電子は、ITOからアノードの損傷されていないCuPcへ行くのに1.6eVのエネルギー障壁を越えることができない。電子がCuPcへ一度び注入されると、それらは、その方向への電子輸送に対するエネルギー障壁が欠如しているためAlq3中へ輸送される。これとは対照的に、PTCDAからAlq3へは0.9eVの電子に対する大きなエネルギー障壁が存在する。この障壁は、PTCDAの電子易動度の低さと相俟って、PTCDAと接触しているITOカソードを用いたAlq3を基にしたデバイスの大きなVT及び低いηが観察される結果になる。しかし、この低い効率は、PTCDAを良好な低抵抗カソード/有機界面を作るのに用いることができないことを示唆するものではない。特に、これらの結果は、0.9eVの障壁がPTCDAとAlq3の間では高過ぎることを示しているだけである。LOMO/HOMOレベルを一致させるためのここに与えたガイドラインに従って、PTCDAを適当な隣接電荷キャリヤー層と適切に合致させることにより、効率的なITO/PTCDA界面を作ることができる。
【0102】
本発明の他の代表的OLEDの態様の一例として、非金属カソードは、電子輸送層とホール輸送層との間に薄いルミネッセンス層が存在する二重ヘテロ構造で用いることができる。
【0103】
電子輸送層が発光層である別の代表的OLEDの態様として、ITO層は電子注入界面層と接触しており、その界面層がエレクトロルミネッセンスを発生し、更にホール輸送層と直接接触している。この場合には、電子注入界面層で用いられている材料のIP−HOMO/LUMOギャップエネルギーは、隣接するホール輸送層の材料のIP−HOMO/LUMOギャップエネルギーにほぼ等しいか又はそれより小さいのが好ましく、更にホール輸送層の材料のイオン化電位が、電子注入界面層に用いられている材料のイオン化電位よりも大きいようなものになっている。
【0104】
ホール輸送層が発光層である本発明の代表的な態様として、ITO層が電子注入界面層と接触しており、その界面層がエレクトロルミネッセンスを生ずるホール輸送層と直接接触している。この場合、電子注入界面層で用いられている材料のIP−HOMO/LUMOギャップエネルギーも、隣接するホール輸送層の材料のIP−HOMO/LUMOギャップエネルギーにほぼ等しいか又はそれより小さいのが好ましいようなものになっている。しかし、この場合、ホール輸送層の材料のイオン化電位は、電子注入界面層に用いられている材料のイオン化電位よりも低い。
【0105】
このように、本発明を、ITO層が、Alq3のような電子輸送層と接触した電子注入界面層と接触している単一ヘテロ構造の場合について例示してきたが、本発明は、就中、ヘテロ構造が非金属カソードを持たない場合のエレクトロルミネッセンスを発生するためのヘテロ構造を有するOLEDにも関する。
【0106】
特に、本発明のOLEDは、単一ヘテロ構造として又は二重ヘテロ構造として製造することができるエレクトロルミネッセンス発生ヘテロ構造を有する。単一又は二重ヘテロ構造の有機薄膜の製造するための材料、方法及びデバイスは、例えば、米国特許第5,554,220号明細書(これは言及することによりその全てを本明細書に取り入れる)に記載されている。ここで用いられる用語「エレクトロルミネッセンスを発生するためのヘテロ構造」とは、順番にホール注入アノード層、ホール輸送層、電子輸送層、及びカソード層を有する単一ヘテロ構造を含むヘテロ構造を指す。付加的層(単数又は複数)が、これらの層の連続する対の一つ以上の間に存在していてもよい。例えば、二重ヘテロ構造の場合、別の発光層がホール輸送層と電子輸送層との間に含まれていてもよい。この別の発光層は、「薄いルミネッセンス」として特徴付けられるものでもよい。別法として、又は付加的に、アノード層とホール輸送層との間にホール注入促進層が存在していてもよい。
【0107】
ホール注入促進層は、或る場合には電子注入界面層で用いられているものと同じ材料、CuPcからなっている。夫々の場合、CuPc層はITO電極と直接接触しており、二つのCuPc層の間の区別は、或る場合にはそのCuPc層がアノードとして働くITO層と接触していることであり、別の場合には、ITO層がカソードとして働くことである。夫々の場合において、CuPc層は電荷キャリヤー及び界面層として働く。一方、ITOアノードと接触している場合、CuPc層はアノードからホール輸送層へホールを注入し、輸送するのを助け、他方ITOカソードと接触している場合、CuPc層はカソードから電子輸送層へ電子を注入し、輸送するのを助ける。どの場合でもCuPc層は、もし存在するならばITO堆積工程中の損傷から下の輸送層を保護する層としての機能も果たしている。ITO層がSOLED構造の電極として存在する場合には、ITOの両側の面は、夫々アノード及びカソードとして働く。
【0108】
アノード層又はカソード層が基板と接触していて、各電極が電気接点に接続されており、それら接点は装置を通って電圧を印加し、そのデバイスが電子輸送層又はホール輸送層からエレクトロルミネッセンスを発生するように作動させることができる。もしカソード層が基板上に堆積されているならば、デバイスは逆転、即ちIOLED構造を持つものとして言及することができる。エレクトロルミネッセンスを発生するヘテロ構造が、積層OLED(SOLED)の一部分として含まれているならば、個々のヘテロ構造の電極の一方又は両方が隣接するヘテロ構造の電極と接触している。別法として、SOLEDを駆動するのに用いられる回路により、積層OLEDの二つの隣接する電極の間に絶縁層が与えられてもよい。
【0109】
本発明は、金属カソード層ではなく非金属カソードを有するOLEDに関するが、本発明のOLEDは或る状況下では、例えば、SOLEDの一番上又は一番下のOLEDとして金属層を有するOLEDと組合せて用いてもよい。そのような場合、もしカソード層がMg:Agの金属カソード層であるならば、例えば、そのMg:Agカソード層を雰囲気による酸化から保護するためにAgの層からなる金属保護層が存在していてもよい。
【0110】
ここで言及する単一又は二重ヘテロ構造は、本発明を具体化したOLEDを、示した層を製造するために特定の材料又は順序に本発明を何等限定することなく、どのようにして製造するかを示すための単なる例として与えるものである。例えば、典型的にはヘテロ構造は不透明又は透明、堅いか又は可撓性、且つ(又は)プラスチック、金属又はガラス、特にポリエステルのような透明重合体、ガラス、サファイヤー、又は石英、又はOLEDの基板として用いることができる実質的にどのような他の材料からなっていてもよい基板を有する。
【0111】
本発明は、更にエレクトロルミネッセンス発生ヘテロ構造を有する有機発光デバイス(OLED)において、特にそのヘテロ構造が、少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を持つ化合物を含む電荷キャリヤー層を有し、その電子輸送層がAl、Ga、又はInのような第III族金属を配位した2−メチル−8−キノリノラト リガンドである場合のデバイスに関する。
【0112】
ここで用いる用語「電荷キャリヤー層」は、「ホール輸送層」(HTL)、「電子輸送層」(ETL)、又は二重ヘテロ構造(DH)を有するOLEDの場合には「別の発光層」を指す。少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を含む化合物を含む電荷キャリヤー層は、単一ヘテロ構造(SH)のETLのような発光層でもよく、或は二重ヘテロ構造の別の発光層でもよい。少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を含む化合物を含む電荷キャリヤー層は、OLEDのカソードとETLの間に配置された電子注入促進層のような非発光層でもよい。
【0113】
ここで用いられる用語「ホール輸送部分」とは、OLEDの層中に含まれている材料中に存在する場合、電圧を印加した時、ホールの伝導によりその材料が層を通る電気伝導を与えるようにする基を指す。ここで用いられる用語「電子輸送部分」とは、OLEDの層中に含まれる材料中に存在する場合、電圧を印加すると、電子の伝導によりその材料が層を通る電子伝導を与えるようにする基を指す。ここで用いられる用語「ホール輸送アミン部分」とは、ホール輸送部分であるアミン基を指す。そのようなホール輸送アミン部分は、二つのフェニル基(第III族金属とリガンド結合を形成するフェニル基の外に)に直接結合した窒素原子を有するのが典型的であり、この場合それら二つのフェニル基は一緒になって窒素を含む複素環、例えば、カルバゾール基を形成していてもよく、或はそれら二つのフェニル基は、互いに離れていてもよい。各フェニル基自身が更に別のフェニル基と融合し、窒素原子に結合していてもよく、例えば、1−ナフチル基又は2−ナフチル基として結合していてもよい。
【0114】
特に、本発明は、化学構造:
【0115】
【化7】
【0116】
(式中、A1及びA2は、夫々全ホール輸送官能基を生ずる一つ以上のフェニル基からなり、−R−はアルキル又はアリール基、好ましくはアリール基であり、第III族金属とリガンド結合を形成することができる基である。)を有する化合物に関する。A1及びA2のフェニル基は、一緒になって窒素原子を含む複素環を形成していてもよく、例えば、カルバゾール基を構成していてもよく、或はA1及びA2のフェニル基は互いに離れていてもよい。各フェニル基自身は、更に別のフェニル基と融合していてもよく、窒素原子、例えば1−ナフチル基又は2−ナフチル基として窒素原子に結合していてもよい。−R−基は、ホール輸送置換アルコキシド、チオレート、安息香酸、又はキレート酸素又は窒素基(例えば、置換アセチルアセトネート)でもよい。R−基はp−アミノ置換フェノキシド基であるのが好ましい。Ga又はInのような別の第III族金属を、Alの変わりに用いてもよい。
【0117】
Alのような第III族金属を配位した2−メチル−8−キノリノラト リガンドは、電子輸送部分として働く。アミン基はホール輸送部分として働く。その分子は電子及びホールの両方の輸送部分を有するので、その分子から作られた電荷キャリヤー層は、大きな電子易動度及び大きなホール易動度を有する。例えば、単一ヘテロ構造のETLとしてそのような電荷キャリヤー層を用いると、ホールが、電子と再結合して励起子を形成する前に、ETL中へ実質的な距離を移動することを可能にする。その結果、そのようなETLのルミネッセンス領域は、低いホール易動度を有するETLのルミネッセンス領域よりも大きい。この一層大きなエレクトロルミネッセンス領域は、一層長いエレクトロルミネッセンス寿命を与える結果になる。同様に、二重ヘテロ構造の別の発光層としてそのような電荷キャリヤー層を用いると、一層低いホール又は電子易動度を有する別の発光層の領域よりも大きなルミネッセンス領域及び一層長いエレクトロルミネッセンス寿命を与えることになる。
【0118】
特に、少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を含む化合物は、Al−pNPとして言及するビス(2−メチル−8−キノリノラト)[p−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)フェノラト]アルミニウム(III)、Al−pCbとして言及するビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−カルバゾールフェノラト)アルミニウム(III)、Al−mCbとして言及するビス(2−メチル−8−キノリノラト)(m−カルバゾールフェノラト)アルミニウム(III)でもよい:
【0119】
【化8】
【0120】
【化9】
【0121】
【化10】
【0122】
実験結果は、Al−pCbの固体膜(フイルム)がAl−pNPよりも約100倍効率の高い光ルミネッセンス発光を与えることを示している。この差はこれら二つの分子を異なった構造によって説明することができる。特に、Al−pCbはそのカルバゾール部分のために一層堅い組織を有し、その部分は固体状態の分子が非発光自己クエンチするのを防ぎ、Al−pNPと比較してAl−pCbの光ルミネッセンス発光の100倍大きい効率の原因になる。
【0123】
本発明は、更に、式F−I:
【0124】
【化11】
【0125】
〔式中、Rは、水素、又は水素に対して供与体又は受容体基である基であり、
R′=アルキル又は置換又は非置換アリール、
R1及びR2は、水素であるか、又は一緒になって融合アリール環を形成し、
Xは、O、NR5(ここでR5は、水素、又は置換又は非置換アルキル、アルキル、又は置換又は非置換アリールであり、
Z1及びZ2は、独立に炭素又は窒素原子であり、
Yは、Z1及びZ2が両方共窒素原子である場合、M、金属原子であり、又は、
Yは、Z1又はZ2が炭素原子である場合、O、NR6(ここでR6は、水素、又は置換又は非置換アルキルであり)、又はSであり、又は Yは存在しない。〕の化学構造を有する種類のアズラクトン関連化合物から選択されたドーパント化合物からなる発光層を有するOLEDに関する。代表的供与体基には、−OR、−BR、−NR3R4(ここでR3及びR4は、夫々独立に水素、又は置換又は非置換アルキルである)のようなπ電子供与体基が含まれる。代表的な受容体基には、−CN、−NO2又はカルボニル含有基のようなπ電子供与体が含まれる。
【0126】
一層特別な代表的な態様として、本発明は、式C−II:
【0127】
【化12】
【0128】
(式中、R、R′、R1及びR2は、上と同じ意味を有する。)の化学構造を有するドーパント アズラクトン系化合物からなる発光層を有するOLEDに関する。
【0129】
更に一層特別な代表的態様として、本発明は、式C−III:
【0130】
【化13】
【0131】
(式中、R及びR′は上と同じ意味を有する。)の化学構造を有するドーパント アズラクトン系化合物を含む発光層を有するOLEDに関する。
【0132】
更に特別には、ドーパント アズラクトン系化合物は、R=H及びR′=C6H5(化合物1);R=OOCCH3及びR′=C6H5(化合物2);R=N(CH3)2及びR′=C6H5(化合物3);及びR=C(CH3)3及びR′=C6H5(化合物4)である場合の式C−IIIの化学構造を有する。
【0133】
本発明の更に別の特定の態様として、ドーパント アズラクトン系化合物は、式C−IV:
【0134】
【化14】
【0135】
〔式中、R′=C6H5(化合物5)〕の化学構造を有する。
【0136】
本発明の更に別の特定の態様として、ドーパント アズラクトン系化合物は、式C−V(化合物6)の化学構造:
【0137】
【化15】
【0138】
又は式C−VI(化合物7)の化学構造:
【0139】
【化16】
【0140】
を有する。これらのアズラクトン系化合物は、p−置換ベンズアルデヒド及び馬尿酸誘導体から製造することができる。p−置換供与体基を変えることにより、下の表C1の結果によって例示されるように、発光はスペクトルの緑から青部分へ調整することができる。
【0141】
【表1】
【0142】
表C1に示した材料からの蛍光の色は、電荷移動遷移からの発光の場合に予想されるように、溶媒に強く依存する。
【0143】
ドーパント アズラクトン系化合物の更に別の特別な例には、R=OH及びR′=C6H5である場合の式C−IIIの化学構造、及びR=C(CH3)3及びR′=CH3である場合の式C−IIIの化学構造を有する化合物が含まれる。
【0144】
化合物6は、化合物1の誘導体のものとは異なった電荷移動網状組織を有する化合物の例である。この場合の発光は、アミン供与体及びニトロ基受容体から来る。この色素は、CH2Cl2中の化合物6について示されているように、青又は緑でポンプされ、赤色発光を得ることができる。化合物6は、これらの色素が赤色発光へ導く異なった励起波長を有することができることを例示している。この色素のためのPL効率は非常に低いが、他の受容体を有する誘導体はこの効率を増大することができると予想されている。
【0145】
式C−II又はC−IIIの代表的化合物、化合物3のためのドープしたOLEDで観察される線幅は、Alq3単独の場合について見られるものよりも狭いが、溶液中で観察されるものよりは広い。この理由は、溶液中ではその分子が自由になって、式C−IIで示されている構造によって示唆される平面構造を取るのに対し、固体状態ではジメチルアミノ基を有するフェニル環をカルボニル部分へ接続する結合の周りに二平面角度の分布が存在する傾向がある。この分散は、吸収及び蛍光の両方のためのエネルギー範囲を与え、観察される線幅を増大する。この分散は全蛍光量子効率も減少する。
【0146】
固体状態の拡張を防ぐため、式C−Iに示したような堅い又は固定された分子からなる化学的固定形状を有する材料を用いることができる。これらの化合物の中では環式基がY基によって同一底面状に保持されている。従って、本発明は、式C−II又はC−IIIのアズラクトン系化合物の代表的な具体例に関して示されているが、式C−Iのアズラクトン関連化合物も、本発明の範囲及び本質の中に完全に入る。式C−Iによって包含されるアズラクトン関連化合物には、式C−II及びC−IIIのアズラクトン系化合物が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0147】
本発明は、更に、式C−I:
【0148】
【化17】
【0149】
〔式中、Rは、水素、又は水素に対して供与体又は受容体基である基であり、
R′=アルキル又は置換又は非置換アリール、
R1及びR2は、水素であるか、又は一緒になって融合アリール環を形成し、
Xは、O、NR5(ここでR5は、水素、又は置換又は非置換アルキル、アルキル、又は置換又は非置換アリールであり)、
Z1及びZ2は、独立に炭素又は窒素原子であり、
Yは、Z1及びZ2が両方共窒素原子である場合、M、金属原子であり又は、
Yは、Z1又はZ2が炭素原子である場合、O、NR6(ここでR6は、水素、又は置換又は非置換アルキルであり)、又はSであり、又は
Yは存在せず、但しYが存在しない場合、Z1は炭素原子であり、Z2は窒素原子であり、その時Rは水素に対する供与体又は受容体基である。〕
のアズラクトン関連化合物に関する。
【0150】
本発明の化合物の更に特に代表的な態様として、本発明は、式C−II:
【0151】
【化18】
【0152】
(式中、Rは、水素に対し供与体又は受容体基であり、
R′=アルキル又は置換又は非置換アリール、
R1及びR2は水素であるか、又は一緒になって融合アリール環を形成している。)
の化学構造を有するアズラクトン系化合物に関する。
【0153】
本発明の化合物の更に一層特別な代表的態様として、本発明は、式C−III:
【0154】
【化19】
【0155】
(式中、Rは水素に対し供与体又は受容体基であり、 R′=アルキル又は置換又は非置換アリール。)
の化学構造を有するアズラクトン系化合物に関する。
【0156】
ホスト化合物だけからなる発光層の発光波長を移行させることができるドーパントを、発光波長を移行させるのに有効な量ホスト化合物に添加し、人間の目によって三原色の一つに近いように認められる光をLED装置が発するようにするのが好ましい。色近くの特性化は主観的な問題であることは認められているが、国際照明委員会によって定量的色度が開発され、CIE標準としても知られている。この標準によれば、飽和色は色度座標の規定された軸に従う特別な定量的座標を有する単一の点によって表すことができる。そのようなCIE座標の単一の点は標準又は目的を表すことは当業者によって認められるであろうが、それは実際には困難であり、幸いにそれを得る必要はない。
【0157】
OLEDが主に一つの原色を生ずる本発明の好ましい態様では、人間の目によって一つの飽和原色に近いと認められる光をOLEDが発するように、ドーパントをホスト化合物中に配合する。本発明の実施によって、CIE尺度によって規定されるものとして、絶対的(又は飽和した)色度値に近い発光を特徴とすることができるOLEDを製造することが考えられている。更に、本発明の材料を用いたLEDは、100cd/m2を越えることができる表示輝度を与えることができると考えられているが、幾らか低い値、恐らく10cd/m2位に低い値でも或る場合には許容できるであろう。
【0158】
ここで定義するホスト化合物は、希望のスペクトル特性を持つ光を発するドーパントをドープすることができる化合物である。そのような化合物には、1996年8月6日に出願された米国特許出願Serial No.08/693,359(これは言及することにより本明細書に組み入れる)に記載されているような発光化合物及びホスト化合物が含まれるが、それらに限定されない。ここで用いられる用語「ホスト」とは、ホール/電子再結合エネルギーを受け、次に発光/吸収エネルギー転移過程によりその励起エネルギーをドーパント化合物(典型的には、遥かに低い濃度で存在する)へ移行させる成分としての機能を果たす発光層中の化合物を指すのに用いられている。次にドーパントは僅かに低いエネルギーレベルを有する励起状態へ緩和し、それが希望のスペクトル範囲内のルミネッセンス発光としてそのエネルギーの全てを優先的に放射する。ドーパントの励起状態の励起エネルギーの100%を放射するドーパントは、100%の量子効率を持つと言われる。色調節可能なSOLEDに用いることができるホスト/ドーパント濃度については、ホスト励起エネルギーの全てではないが、好ましくはその殆どをドーパントへ移行され、それが今度は、恐らく一層低いエネルギーレベルから大きな量子効率を持って放射され、希望の色度を持つ可視放射線を生ずる。本発明は、これらの要求エネルギー移動条件を満足するドーパントとして働くものと考えられる種類のアズラクトン関連化合物に関する。
【0159】
ホスト化合物と言う言葉がここでは用いられているので、そのような化合物は、単一ヘテロ構造OLEDデバイスの電子輸送/発光層か、又は二重ヘテロ構造の別の発光層中に見出すことができる。ここに開示するようなドーパント物質を使用することにより、OLEDによって発光される色の範囲を広げることができるのみならず、ホスト及び(又は)ドーパント化合物として予定することができる物質の範囲を広げることもできることは、当業者によって認められるであろう。従って、効果的なホスト/ドーパント系について、ホスト化合物はドーパント物質が光を強く吸収するスペクトルの領域内に強い発光を有することができるが、ホスト物質は、ドーパントも強く発光する領域内に発光帯域を持たないのが好ましい。ホスト化合物が電荷キャリヤーとして働く構造では、それら物質の酸化還元電位のような付加的条件も考慮することになる。しかし、一般にホスト及びドーパント物質のスペクトル特性は最も重要な条件である。
【0160】
存在するドーパントの量は、ホスト材料の発光波長を、CIEスケールに従って定義されるような標準原色にできるだけ近く移行させるのに充分な量である。効果的な量は、発光層に基づき約0.01〜10.0モル%であるのが典型的である。好ましい量は約0.1〜1.0モル%である。適当なドーピング量を決定する主な条件は、適当なスペクトル特性を持つ発光を達成するのに有効な量である。例として、もしドーパント物質の量が低過ぎる量であると、装置からの発光はホスト化合物自身からの色の成分も含むようになり、それはドーパント物質からの希望の発光よりも短い波長の所にある。これらは対照的に、ドーパントの量が高過ぎると、自己クエンチング、正味発光のない機構によって発光効率が悪影響を受ける。或はまた、ドーパント物質の量が高過ぎるとホスト材料のホール又は電子輸送特性に悪影響を与えることもある。
【0161】
本発明は、更にデバイスからの発光が燐光減衰過程によって得られるOLEDにも関し、この場合燐光減衰速度は表示デバイスの要件に合うように充分速いものとする。本発明の代表的な態様として、発光層は式D−I:
【0162】
【化20】
【0163】
〔(式中、M=Pt;a=1;b=0;c=1;X=C;R8=H;及びR9=R10=Et(エチル)。〕によって表される構造を有する発光化合物からなる。特に、この化合物、白金オクタエチルポルフィン(PtOEP)は、式D−II:
【0164】
【化21】
【0165】
の化学構造を有する。OLEDの発光材料としてPtOEPのようなドーパント化合物を選択する利点は、就中、二つの特別な事実に基づく。第一はこの分子の光ルミネッセンス量子収量がTPPよりもかなり大きく、PtOEPは50%より大きな光ルミネッセンス量子収量を有し、固体状態では90%位の高さであるのに対し、TPPは僅か約10%の光ルミネッセンス量子収量しか持たない。光ルミネッセンス量子収量の増大は、増大した効率を持つOLEDの製造を可能にする。PtOEPのような燐光化合物を選択することによって与えられる第二の利点は、そのような分子からの発光が三重項状態から来ることである。三重項状態へ励起することができる分子は、非放射性励起子三重項状態から燐光放射線としてこのエネルギーを放射発光することができる三重項状態へエネルギーを移行させる可能性を与える。三重項状態からくる放射線と呼ぶ燐光は、典型的には、一重項状態からの放射線と呼ばれている蛍光よりも遥かに低い速度で起きるが、それにも拘わらずPtOEPのような化合物からの燐光は、或る表示装置の要件を満足するのに充分な位速い。特にAlq3層中のドーパントとして用いた場合、約7μsecの寿命を有するPtOEPのような化合物を、約10μsec以下の速さのスイッチング時間を必要とする受動マトリックス表示器に用いるか、又はスイッチング時間が約10msecでありさえすればよい活性マトリックス表示器に用いることができる。
【0166】
本発明の代表的な態様として、PtOEPは、ITO/TPD/Alq3/Mg−AgOLEDのAlq3層中へドープすることができる。そのようなPtOEPドープOLEDの挙動は、TPPドーパントを用いて製造したOLEDとは非常に異なっている。TPPを0.5モル%より大きな量でドーピングすると、OLEDからの発光は排他的にTPPからのものになる。これに対し、中程度から低いドーピング量のPtOEPのAlq3中に入れると、発光は低電圧では主にPtOEP発光によるが、電圧を増大すると、Alq3発光が現れる。中程度に高い電圧(例えば、15V)では、発光の大部分はAlq3からくる。0.6モル%のPtOEPをドープしたOLEDについてのELスペクトルを図4D2に示す。1.3モル%のPtOEPについてのスペクトルは、0.6モル%の装置について示したものとほぼ同じ形を有する。6モル%のPtOEPを用いて製造したOLEDのスペクトルの形は、図4D3に示してある。電圧を増大するにつれて、赤色発光の強度は著しく増大するが、Alq3からの発光寄与は高電圧でも観察されていない。
【0167】
本発明は、それがどのように作動するかについての理論には限定されるものではないが、電圧を増大するについてAlq3の発光が増大することについての説明は、Alq3及びPtOEPについての光ルミネッセンスの寿命の差に関係していると考えられる。Alq3についてのPL寿命は、固体状態及び溶液状態の両方で約13nsec(ナノ秒)であるのに対し、PtOEPのPL寿命は、媒体により約10〜約100μsec(マイクロ秒)の範囲にある。もしPtOEPドープ装置に印加する電圧を低く維持すると、PtOEPへ移行する励起子の数は充分少なく、励起したPtOEP分子がAlq3励起子発生速度に対し充分な速度で緩和することができ、Alq3からのエネルギー移動のために充分なドーパント分子が常に存在する結果を与える。電圧を増大すると、有効PtOEPドーパント分子が飽和し、励起子がAlq3中で生成していくような速度を保って行くのに充分な速さで緩和することができなくなる。この高い電圧範囲では、励起エネルギーがPtOEP分子へ移動される前に、Alq3励起子の幾らかが放射線発光により緩和する。6モル%のPtOEPでは、励起子の全てを捕捉するのに充分なドーパントが存在するが、一層多くのドーピング量は全効率を減少させることになる。
【0168】
この説明は、PtOEPをドープしたAlq3デバイスについて異なったドーピング量での波長の関数としてPLスペクトルを示した図4D4に示されている結果によっても更に支持されている。0.6モル%の最も低いドーピング量では、Alq3大きな発光帯特性観察されているが、高い6モル%のPtOEPドーピング量では、Alq3からの全ての励起子エネルギーを捕捉するのに充分なPtOEPが存在すると思われる。
【0169】
PtOEP系OLEDからの発光は非常に狭く、645nmの所に中心を有する。飽和赤色発光に相当するこの狭い帯域は、約30nmの半値幅を有する。図4D5に示した溶液中のPtOEPについての異なった励起波長で、波長の関数としてのPLスペクトルを、PtOEPドープAlq3OLEDのELスペクトルと比較すると、PtOEPドープOLEDは、約645nmの所にピークの中心を有するPtOEPからの狭い発光帯域を選択的に生ずることを示している。この狭い高度に飽和した赤色発光は、PtOEPのPL励起スペクトルと、Alq3からの広帯域発光との比較により溶液中のPtOEPのPLスペクトルについて観察されているように、約620及び約685nmの所に中心を有する更に別の帯域を予想させるにも拘わらず、他のPtOEPピークが殆ど全く存在することなく発生する。
【0170】
正味の結果は、PtOEPドープデバイスからの発光が、飽和赤色発光に関して、TPPドープデバイスのものよりも著しく良いことである。なぜなら、700nmより高い所では長い波長テイル又はピークは存在しないからである。外部量子収率であるこれらのデバイスについての量子効率を表D1に列挙する。夫々の場合について、ドープしたデバイスと平行に製造した基準デバイス(ITO/TPD/Alq3/Mg:Ag)のものと一緒に効率が列挙されている。低い駆動電圧では、ドープしたデバイスの効率が優れているが、高い電圧ではドープしてないデバイスが大きな効率を有する。これらの結果は、PtOEPドープデバイスが、従来のAlq3ドープデバイスに匹敵する効率を持って作動することができることを示している。
【0171】
数日間室温条件に曝したPtOEPデバイスの保存寿命は、ドープしていないAlq3デバイスに匹敵し、ドーパントとしてTPPを用いて製造したデバイスよりも決定的に優れていることが観察された。
【0172】
【表2】
【0173】
そのようなOLEDは、例えば、約10μsec以下のスイッチング時間を有する受動マトリックス平面パネル表示器、スイッチング時間が約10msecでありさえすればよい活性マトリックス表示器、又は低解像力表示器用途に用いることができる。燐光化合物は、一般に式D−I:
【0174】
【化22】
【0175】
(式中、Xは、C又はNであり、
R8、R9及びR10は、夫々独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールからなる群から選択され、
R9及びR10は、一緒になって融合環を形成していてもよく、
M1は、二価、三価、又は四価の金属であり、
a、b及びcは、夫々0又は1であり、然も、XがCである場合、aは1であり;XがNである場合、aは0であり;cが1である場合、bは0であり;bが1である場合cは0である。)
の化学構造を有する燐光化合物から選択される。
【0176】
燐光化合物は、別の例として、部分的又は完全に水素化された燐光ポルフィリン化合物から選択することもできる。
【0177】
燐光寿命に従って燐光化合物を選択することに加えて、或る用途では約10μ秒以下の燐光寿命を有する化合物を選択することを意味するが、燐光化合物は、電荷キャリヤー物質から励起子三重項エネルギーを選択的に捕捉し、次にその励起エネルギーを、Alq3系OLEDのPtOEPにより示されるような高度に飽和した色に相当する狭い発光帯域中の燐光として発するように選択される。
【0178】
PtOEP自身は、OLED中の燐光化合物として用いられる最も望ましい性質の組合せを有することが証明されているが、そのような化合物は人間の目の標準CIE明所視反応機能が約550nmの所に中心を持つ視感透過率の縁近くの飽和赤色発光を生ずる利点を有する。特に、スペクトルの青色及び赤色端部では、波長の関数として視感度に急激な減少が存在する。
【0179】
もし大きな外部量子効率を持つが、視感度が実質的に一層高くなる所の幾らか短い波長の所に狭いピークを有する飽和赤色発光であると認められるものを生ずる蛍光化合物が見出されるならば、望ましいであろう。例えば、もし発光帯域幅が実質的に一定に保たれ、発光ピークが同じ数のホトン(photon)を生ずるOLED、例えば、同じ電流及び量子収量を有するOLEDについて約20nm短波長側へ移行することができるならば、デバイスの知覚される輝度は約2倍増大するであろう。即ち、二つのデバイスから来るホトン数が同じでも、標準の観察者は、短波長にピークを有するデバイスについては輝度が2倍増大したと知覚するであろう。しかし、発光は依然として飽和赤色として知覚される範囲内にあり、従って、OLEDとして有用であろう。
【0180】
従って、本発明は、更に燐光減衰過程によりデバイスからの発光が得られるOLEDに関し、この場合燐光減衰速度は、表示デバイスの要件に合うように充分速く、特に燐光ドーパント化合物は、例えば、PtOEPの四重対称を持つ場合と比較して少ない対称性を持つ白金ポルフィリンからなる。
【0181】
OLEDの発光物質として白金ポルフィリン化合物のような燐光ドーパント化合物を選択する利点は、就中、二つの特別な事実に基づいている。第一はこの化合物の光ルミネッセンス量子収量がTPPのような従来化合物より大きいことである。例えば、PtOEPは50%より大きな光ルミネッセンス量子収量を有し、固体状態では90%位の高さであるのに対し、TPPは僅か約10%の光ルミネッセンス量子収量しか持たない。光ルミネッセンス量子収量の改良は、増大した効率を持つOLEDの製造を可能にする。
【0182】
白金ポルフィリン化合物のような燐光化合物を選択することによって与えられる第二の利点は、そのような化合物からの発光が典型的には三重項状態から来ることである。三重項状態へ励起することができる分子は、非放射性励起子三重項状態から燐光放射線としてこのエネルギーを放射発光することができる三重項状態へエネルギーを移行させる可能性を与える。三重項状態からくる放射線と呼ぶ燐光は、典型的には、一重項状態からの放射線と呼ばれている蛍光よりも遥かに低い速度で起きるが、白金ポルフィリン化合物のような化合物からの燐光は、或る表示デバイスの要件を満足するのに充分な位速い。特にAlq3層中のドーパントとして用いた場合、約7μsecの寿命を有するPtOEPのような化合物を、約10μsec以下の速さのスイッチング時間を必要とする受動マトリックス表示器に用いるか、又はスイッチング時間が約10msecでありさえすればよい活性マトリックス表示器に用いることができる。
【0183】
本発明の特別の利点は、視感曲線のピークの方へ発光ピークを移行するが、依然として飽和赤色として知覚されるスペクトル範囲内に入っているように、燐光白金ポルフィリン化合物を選択することである。特に、PtOEPのような化合物を、ポルフィリンリガンドの四重対称性を壊すことにより化学的に変化させることにより、発光ピークが、PtOEPと比較して約15〜30nm短波長側へ移行させることができることが見出された。
【0184】
本発明は、特に式E−II:
【0185】
【化23】
【0186】
(式中、R基、R1、R2、R3及びR4は独立にアルキル、アリール又は水素であり、但しR基の少なくとも一つは少なくとも他のR基の一つと異なっている。)の構造を有する燐光ドーパント化合物を含むOLEDに関する。
【0187】
更に特に、本発明のOLEDは、式E−III:
【0188】
【化24】
【0189】
(式中、R5及びR6は、電子供与体又は電子受容体基であり、例えば、−F、−CN、又は−OCH3であり、R5及びR6は同じでも異なっていてもよい。)の構造を有する燐光化合物を有する。
【0190】
OLEDで用いられる代表的化合物として、ポルフィリンの5、15位置にあるフェニル基を、図5E1に示されているような白金(II) 5,15−メモ−ジフェニルポルフィリン化合物(PtDPP)に到達するように選択的に置換することにより燐光白金化合物を選択することができる。別法として、白金化合物は、図5E1に示したような残りの5,15−置換ポルフィリン化合物のどの一つからでも製造することができる。特に、本発明の代表的な態様として、燐光白金ポルフィリン化合物は、5,15−メモ−ジフェニルポルフィリン(H2DPP);5,15−メモ−ビス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(H2BPFPP);5,15−メモ−ビス(4−シアノフェニル)ポルフィリン(H2BCPP);又は5,15−メモ−ビス(4−アニシル)ポルフィリン(H2BAP)から製造することができる。そのような化合物は、後に記載するような方法により製造することができる。
【0191】
本発明の代表的な態様として、燐光白金ポルフィリン化合物としてPtDPPをドープしたOLEDが製造された。図5E2に示すように、ポリビニルカルバゾールの重合体マトリックス中にPtDPPをドープしたOLED(PtDPPドープ重合体OLEDと呼ぶ)のエレクトロルミネッセンススペクトルは、ポリスチレン中のPtDPPの光ルミネッセンスピークに近い所に発光ピークを生じた。これらのピークは、PtDPPドープAlq3層を有するOLEDのエレクトロルミネッセンススペクトルと比較して短波長側へ約20nm移行していた。
【0192】
図5E3aに示したように、ITO/NPD/Alq3−PtDPP/MgAg(PtDPPがAlq3層中にドープされている)の層からなるOLEDの場合、9V、15V、又は24Vで作動させたOLEDの場合、約630nmの所に発光ピークを有する狭い帯域のエレクトロルミネッセンススペクトルを生じた。Alq3系装置は、電圧を増大するに従って僅かに青へ移行するが、これは明らかに500〜550nmのスペクトル範囲内のAlq3発光の増大によるものである。図5E3bに示したように、PtDPPをドープしたAlq3層を有するOLEDの場合、PtOEPをドープしたAlq3層を有するOLEDにより生じた発光ピークと比較して、発光ピークは約15nm短波長側へ移行していた。これらの結果は、同じ量子収量を有するOLEDについて、PtDPPドープAlq3層を有するOLEDは、PtOEPドープAlq3層を有するOLEDよりも1.4倍の輝度を持つことを示している。
【0193】
発光ピークに15〜20nmの青色移行を起こしたOLEDを製造する実質的重要性は、図5E4に示したCIE色度座標の右端に示されているデータにより例示することができる。この図には、CIE色度曲線が示されており、600、650及び700nmの所の飽和単色線の(x,y)座標が夫々含まれている。PtDPPをドープしたAlq3層を有するOLEDにより生じた発光の(x,y)座標を、DCM2、インジゴ及びPtOEPのような他の赤色発光ドーパントを含むOLEDと比較する。
【0194】
図5E5に破線で示した人間の目の感度についてのCIE標準明所視反応曲線を用いることにより、与えられた明所視発光レベルでの相対的輝度を、次の式によって示されるような明所視反応曲線を用いて標準化した発光スペクトルの重なりを計算することにより決定することができる。
【0195】
I(ルーメン)∝∫(明所視反応)(ELスペクトル)dλ 〔式中、I(ルーメン)は、知覚された強度(ルーメン)である。この関数は視感重なり積分として言及されている。図E5に示した代表的データにより例示されているように、PtDPP発光OLEDの視感重なり積分は0.17(相対的単位)であり、PtOEP発光OLED0.13よりもかなり大きい。正味の結果は、PtDPP発光OLEDについては、CIE座標が色度座標の飽和赤色領域内に留まっているが、知覚された輝度は、PtOEP発光OLEDの場合よりも40%以上大きい。
【0196】
DCM2発光OLEDの視感重なり積分は、PtDPP又はPtOEPの場合よりもかなり大きい(夫々0.17又は0.13に対し0.19)が、即ち、もし同じ明所視出力レベルが実現されるならば、DCM2発光OLEDは実際明るいと言えるものではない。なぜなら、DCM2発光OLEDの量子効率は燐光Pt含有化合物を用いて作ったOLEDによって実現されるものよりも実質的に小さいからである。
【0197】
DCM2は、式:
【0198】
【化25】
【0199】
によって表される構造を有するが、OLED用途で有用な赤色発光発色団として記載されている。C.W.タング(Tang)等、「ドープした有機薄膜のエレクトロルミネッセンス」(Electroluminescence of doped organic thin films)、J.Appl.Phys.65,3610(1989)。
【0200】
本発明は、更にガラス構造を有するホール輸送層を有するエレクトロルミネッセンスを発生するためのヘテロ構造を有する有機発光装置に関する。ホール輸送層は、対称性分子構造を有する化合物からなる。対称性分子の末端基は、二つのアレンの間の不飽和結合を有するホール輸送アミン部分である。
【0201】
ここで用いる用語「不飽和結合」とは、少なくとも一つの二重結合が存在する結合を指す。ここで用いる用語「アレン」とは、少なくとも一つの芳香族を有する炭化水素を指す。ここで用いる用語「対称性」とは、一点の周りに分子が対称性になるそのような点を有する分子を指す。ここで用いる用語「電荷キャリヤー層」とは、「ホール輸送層」(HEL)、「電子輸送層」(ETL)、又は二重ヘテロ構造(DH)を有するOLEDについては「別の発光層」を指す。
【0202】
ここで用いる用語「ホール輸送部分」とは、OLEDの層中に含まれている材料中に存在する場合、電圧を印加した時、主にホールの伝導によりその材料が層を通る電気伝導を与えるようにする基を指す。ここで用いられる用語「電子輸送部分」とは、OLEDの層中に含まれる材料中に存在する場合、電圧を印加すると、主に電子の伝導によりその材料が層を通る電子伝導を与えるようにする基を指す。ここで用いられる用語「ホール輸送アミン部分」とは、ホール輸送部分であるアミン基を指す。そのようなホール輸送アミン部分は、少なくとも二つのフェニル基に直接結合した窒素原子を有するのが典型的であり、この場合それら二つのフェニル基は一緒になって窒素を含む複素環、例えば、カルバゾール基を形成していてもよく、或はそれら二つのフェニル基は、互いに離れていてもよい。各フェニル基自身が更に別のフェニル基と融合し、窒素原子に結合していてもよく、例えば、1−ナフチル基又は2−ナフチル基として結合していてもよい。
【0203】
そのような材料が良好なホール伝導性をいかに又は何故有するかを正確に説明する特別理論又は機構により限定されるものではないが、半経験的理論的方法により本発明者等の電子構造の検査により、二つのアレンの間に不飽和結合を有するホール輸送部分である末端基を有する分子は、末端基に非局在化したホールを有する。そのような分子の一つは4,4′−(N,N′−ビスイミノスチルベン)ビフェニル(ISB)である。これとは対照的にTPD及びNPDのようなアミン中の正常な状態は、窒素孤立対がビフェニル基を通して共役しており、ホールが主にそのビフェニル基に非局在化している。不飽和結合の重要性は、ISBと同じ構造を有する4,4′−(2,N′−イミノジベンジル)ビフェニル(IDB)を調べることによりと示すことができる。但しIDBはアミノフェニル基の間の飽和結合を有するがISBのそれは不飽和である。本発明者の分析では、IDBはビフェニル基を通して共役した窒素孤立対を有するが、ISBは、ビフェニルではなくスチルベンに結合した窒素孤立対を有することが示されている。ホールが非局在化している程度まで、それはスチルベン基に広がっている。この非局在化は、ビフェニルではなく、ISB分子の外側にホールを維持するのに役立ち、そこでそれは隣接する分子から遮蔽される。分子の外側にホールを維持することは、それを一層隣接する分子に接触させ、ホールの隣接分子への移動速度を増大し、それが良好なホール伝導性を与える結果になる。
【0204】
更に、本発明の分析では、二つのアレンの間に不飽和結合を有する末端基を有する分子に置換を行なってもよく、ホールが依然として中心よりもむしろ分子の末端又は周辺に依然として非局在化されることを示している。
【0205】
特に、本発明は、式F−I:
【0206】
【化26】
【0207】
(式中、Rは二つのアレンの間の不飽和結合を有するホール移動アミン部分である。)により表されるビフェニル架橋を有する対称性化合物を包含する。式F−Iによって表される分子は、二つのR基の間のビフェニル架橋の中心に分子が対称になる点が存在するため、対称的である。ここで用いられる用語「対称的」とは、対称点の両側にある原子が、それら原子の間を結合する同じ順序を有することを必要とし、即ち、R基が同じ順序で結合された同じ原子を有し、同じ原子を持たなければならないが、結合の捩れにより原子の位置には差があってもよい。
【0208】
本発明は、式F−II:
【0209】
【化27】
【0210】
(式中、Rは上と同じ意味を有する。)によって表されるような、フェニル架橋を有する対称性化合物も包含する。
【0211】
二つのアレンの間に不飽和結合を有するホール移動アミン部分であるR基の例は、式F−III:
【0212】
【化28】
【0213】
(式中、二つのフェニル基はアレンであり、エテニル基は、二つのアレンの間の不飽和結合である。)により表される。
【0214】
式F−Iの分子中にF−IIIのR基を用いることにより、本発明の方法は、従って式F−IV:
【0215】
【化29】
【0216】
によって表されるISBを包含する。
【0217】
ISBのエチル基は、二つのアレンの間の飽和結合を依然として維持しながら、置換することができる。例えば、飽和結合は、実際フェニレン基によって与えることができ、式F−V:
【0218】
【化30】
【0219】
によって表される構造を有する分子を与える結果になる。
【0220】
別法として、ISBのエチル基は、式F−VI:
【0221】
【化31】
【0222】
(式中、R1及びR2は、アルキル、フェニル、置換アルキル、及び置換フェニル基からなる群から選択され、R1はR2と同じか又は異なっていてもよい。)によって表される構造を有する分子を与えるように置換することができる。
【0223】
式F−V及びF−VIの分子を導く置換は、ホール非局在化を分子の端部へ移行させるのに役立つと思われる。更に、置換基は、分子の分子量を増大し、一層高いTgを与える。
【0224】
従来の単一のヘテロ構造OLEDでは、発光材料はETLであり、HELはETLの吸収エネルギーよりも大きな吸収エネルギーを持たなければならない。その結果、ISBに与えられた置換は、もし得られる分子が発光ETLを有する単一ヘテロ構造OLEDで用いられても、電子スペクトルに対した移行はもたらさないことが好ましい。
【0225】
ISBに対する対照を与えるため、アレンの間に飽和結合を有するホール輸送アミン部分であるR基を有する分子を用いる。そのようなR基は、次の式F−VIIによって表される:
【0226】
【化32】
【0227】
式F−Iの分子中に式F−VIIのR基を用いると、式F−VIII:
【0228】
【化33】
【0229】
によって表されるような、4,4′−(N,N′−アミノジベンジル)ビフェニル(IDB)を与える結果になる。
【0230】
ISB及びIDBの熱的及び他の物理的性質を、それらのフェニレン架橋類似体のものと共に表1に与える。
【0231】
【表3】
【0232】
ISB(110℃)及びIDB(117℃)の両方のTgは、従来OLEDで用いられている材料であるTPD(65℃)及びNPD(105℃)のようなOLEDで従来用いられていたHTL材料のそれよりもかなり高い。その結果、HTLとしてISB又はIDBを用いたOLEDは、TPD又はNPDを用いたOLEDよりも高い温度で作動することができ、同じ温度で作動させた時、一層長い寿命を持つものと予想される。
【0233】
一層詳細に下で論ずるように、HTL材料としてISB及びIDBを用いて二つの異なった種類のOLEDを製造した。二つの型のOLEDは、アノードとしてITO被覆基板を用いて出発し、Mg−Agカソードを用いた。実験した最も簡単なOLEDの構造は、ITO/HTL/Alq3/Mg−Agであった。それより少し複雑な構造では、銅フタロシアニン、CuPC、ホール注入体、即ち、ITO/CuPc/HTL/Alq3/Mg−Agを用いた。係属中の米国特許出願Serial No.08/865,491号明細書に記載されているようなCuPcホール注入体を使用することにより改良された量子収量を与えることができる。表F2に例示されているように、HTLとしてISBを用いたOLEDは、IDBを用いたものよりも優れた性能をもち、ISBを用いたOLEDは、NPDを用いたOLEDの性能に匹敵する性能を有することが両方の種類のOLEDについて観察されている。
【0234】
【表4】
【0235】
ISB系デバイスの量子収量、スイッチオン電圧及び電力効率は、非常によく、Tgが一層高いことは、ISB系OLEDが著しく改良された寿命を有し、NPD及びTPD系OLEDよりも高い温度で作動することができる。TPD、NPD及びISB OLEDデバイス特性の類似性は、図2B1及び2B2に見ることができる。TPD、NPD及びISBを用いたOLEDの電流・電圧プロットは、殆ど区別できないが、IDBは良くない。
【0236】
表2も、HTLとしてISBを用いたOLEDが、幾つかの点でHTLとしてIDBを用いたOLEDよりもかなりよい性質を有することを示している。ISB系OLEDは、同じ電流を得るのに一層高い量子効率、必要な低い電圧を有し、同じ電流で一層大きな輝度を有する。ISB及びIDBは、両方共高いTgを有する対称性分子である。ISBとIDBの唯一の構造的差は、ISBがアミノフェニル基の間に不飽和結合を有するのに対し、IDBのそれは飽和結合である。IDBに対してISBを用いたOLEDの性質の差は、ISBがIDBよりも一層良いホール伝導性を有することと一致している。IDBのTgは、ISBのものよりも僅かに高いが、この一層高いTg単独では、ここで観察される量によってOLEDの性質を変えるとは考えられない。
【0237】
本発明の代表的具体例でホール注入アノード層として用いることができる代表的材料には、特にITO、Zn−In−SnO2又はSbO2、又はOLEDのホール注入アノード層として用いることができる実質的にどのような他の材料でも含まれる。
【0238】
ガラスとして存在する代表的材料は、結晶又は多結晶質材料よりもOLEDのHTLに用いるのに望ましい。なぜなら、ガラスは、結晶状の材料の薄膜を製造する場合に典型的に生ずる多結晶質材料と比較して、優れた全体的電荷キャリヤー特性と同様、一層大きな透明性を与えることができるからである。本発明の代表的態様でホール輸送層として用いることができる代表的材料には、特にN,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)1−1′ビフェニル−4,4′ジアミン(TPD)、 4,4′−ビス[N−(1ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、 4,4′−ビス[N−(2ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(β−NPD)、が含まれる。
【0239】
電子輸送層として用いられる代表的材料には、特にトリス−(8−ヒドロキシキノリン)−アルミニウム(Alq3)又は4,4′−ジ(N−カルバゾロ)ジフェニル(CBP)が含まれる。
【0240】
もし存在するならば、別の発光層として用いられる代表的材料には、特に色素ドープAlq3、又はOLEDの別の発光層として用いることができる実質的にどのような他の材料でも含まれる。
【0241】
本発明のOLEDを別のOLEDと組合せて用いて、金属カソード層を有するSOLED構造を形成する場合には、電子注入、金属カソード層として用いることができる材料には、特にMg−Ag、Li−Ag、又はCa、又はOLEDの金属カソードとして用いることができる実質的にどのような他の材料でも含まれる。
【0242】
もし存在するならば、絶縁層は、SiO2、SiNx又はAlO2のような絶縁材料、又はOLEDの絶縁材料として用いることができる実質的にどのような他の材料からなっていてもよく、それらはプラズマ促進化学蒸着(PECVD)、電子ビーム等のような種々の方法により堆積することができる。
【0243】
本発明のOLEDは、それらが真空蒸着した分子状有機材料から完全に製造することができる利点を有する。真空蒸着材料は、真空蒸着のためには1気圧より低く、好ましくは約10−5〜約10−11トール、蒸着のためには約50トール〜約10−5トールのバックグラウンド圧力を有するのが典型的な真空中で堆積することができるものである。
【0244】
ここに言及した厚さ範囲に限定されるものではないが、基板は、アルミニウム箔のような可撓性プラスチック又は金属箔基体として存在するならば、10μ程の薄さでもよく、堅い透明に、又は半透明の基体として存在するならば、又は基体が珪素系表示器駆動体からなるならば、実質的に一層厚くてもよい。ITOアノード層は、約500Å(1Å=10−8cm)から約4000Åよりも大きな厚さでもよい。ホール輸送層は、約50Åから、約1000Åの厚さよりも大きくてもよい。もし存在するならば、二重ヘテロ構造の別の発光層は約50Å〜約200Åの厚さでよく、電子輸送層は、約50Å〜約1000Åの厚さでよく、非金属カソード層は、約400Åから、約1500Åの厚さより大きく、約400〜1000Åが好ましく、約500Åであるのが一層好ましい。
【0245】
従って、デバイスが単一ヘテロ構造又は二重ヘテロ構造を有するかいなか、装置がSOLEDか、又は単一OLEDであるかいなか、デバイスがTOLEDか、又はIOLEDであるか、OLEDが好ましいスペクトル範囲中の発光を生ずるように考えられているか、又は更に別の設計変更が用いられているかいなかにより、存在する層の種類、数、厚さ、及び順序に実質的な変化がある場合でも、本発明は、エレクトロルミネッセンスを発光するためのヘテロ構造をOLEDが有するそれらデバイスに関し、この場合ヘテロ構造が、半導体有機層が低抵抗電気接触している電気伝導性非金属層からなるカソードを有する。
【0246】
本発明の種々の態様は、乗り物、コンピューター、テレビジョン、プリンター、大面積壁、劇場、又はスタジアムスクリーン、掲示板、又は標識に含まれる光電デバイス中に組み込むことができる。
【0247】
更に、本発明の高度に透明な非金属カソードは、高度に透明な非金属カソードをOLED中に組み込んだ態様を用いて例示されているが、アノード及びカソードを有する実質的にどのような型の光電子デバイスでも、本発明に従い製造された高度に透明な非金属カソードを持つことができる。特に、本発明の非金属カソードは、OLED、太陽電池、光トランジスタ、レーザー、又は光検出器に組み込むことができる。
【0248】
次に本発明をその特別な或る代表的な態様がどのように製造できるかを示すことに関し詳細に記述するが、材料、デバイス及び処理工程は、単に例示することを目的物とした例として理解されるべきである。特に、本発明は、ここに特別に言及する方法、材料、条件、処理パラメータ、デバイス等に限定されるものではない。
【0249】
(発明の諸例) A.非金属カソードを有するOLEDの例 例A1 OLEDが金属カソード層ではなく非金属ITOカソード層を有する点を除き、既知の方法を用いてOLEDを製造した。更に、電子注入界面層を、ITOカソードとAlq3電子輸送層との間に存在させた。商業的に得られたITO/硼珪酸塩基体は、約1500ÅのITO厚さを持っていた。有機層は、1×10−6トールの圧力で、標準的ベルジャー蒸発器中で熱蒸着した。α−NPDは約350Åの厚さに蒸着し、Alq3電子輸送層は、約450Åの厚さに蒸着し、銅フタロシアニン(CuPc)又は亜鉛フタロシアニン(ZnPc)は約60Åの厚さに蒸着した。一番上のITOカソード層は低電力でRFスパッター蒸着し、約650Åの厚さを持っていた。CuPc層とAlq3層との間にCBP層を有するOLEDも製造した。そのようなOLEDは、CBP層が存在しないOLEDに匹敵する性能特性を示していた。
【0250】
デバイスは、電流−電圧、輝度−電流、エレクトロルミネッセンススペクトル、及び透過率、反射、及び吸収スペクトルを測定することにより特徴付けた。代表的データを図1A3〜1A11に示す。
【0251】
結果を、例えば、図1A1に示したような、金属Mg:Agカソード層1、電子輸送層2、ホール輸送層3、アノード層4、及び基板5を有する標準OLEDと比較した。α−NPDホール輸送層は約350Åの厚さを有し、Alq3電子輸送層は約450Åの厚さを有し、Mg:Agカソード層は約1500Åの厚さを持っていた。
【0252】
例A2 本発明の非金属カソードを有するTOLEDの例を図1A13に概略的に示す。デバイスは、例えば、G.グ、V.バロビック、P.E.バローズ、S.R.フォレスト、及びM.E.トンプソン、Appl.Phys.Lett.68,2606(1996)に示されているように、20Ω/□の面積抵抗を有するITOで被覆した予め清浄にしたガラス基板上に10−7トール未満の基底圧力で真空装置中で成長させた。ホール注入を改良するためITO上に30Å〜60Å厚の銅フタロシアニン(CuPc)の膜を蒸着し、次に350Å〜400Å厚のHTL:4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)の膜を蒸着した。次に400Å〜500Å厚の発光ETL、トリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)の膜を成長させ、次に第二の30Å〜60Å厚のCuPcフイルムを蒸着した。S.A.バンスライケ、C.H.チェン、及びC.W.タング、Appl.Phys.Lett.69,2166(1996)。第一の200ÅのAlq3に、クマリン6(cm6)で1%(質量)までドープした。次に基板をITOスパッタリング室内へ移し、そこでAr(200sccm)及びO2(0.10sccm)雰囲気中で、5mトールの圧力及び5Wの電力でCuPcの上に400Å〜600ÅのITOを無線周波スパッターした。比較として、高透明性非金属かそを持たない従来のTOLEDをその試験デバイスと共に製造した。特にこの従来のTOLEDは、同様な構造を持っていたが、ITO/CuPc頂部電極をAlq3表面上に蒸着した100Å厚の半透明性Mg:Ag(質量比30:1)のフイルムを蒸着し、スパッターしたITOをかぶせたもので置き換えた点が異なる。頂部ITO層の下のCuPcの代わりに亜鉛フタロシアニン(ZnPc)を用いて第二一連の非金属カソードを有するTOLEDを製造した。最後に、第三の一連のデバイスとして、電子注入CuPc層を、60Å厚の3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)により置き換え、それは既に下の有機フイルムを、それがないとスパッタリング中に起きることがある損傷から保護するのに有効であることが示されている。Vバロビック、P.チアン、P.E.バローズ、M.R.ゴクハーレ(Gokhale)、及びS.R.フォレスト、Appl.Phys.Lett.70,2954(1997)。
【0253】
B.少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を有する化合物を含む電荷キャリヤー層を有するOLEDの例 実験: UV−可視スペクトルを、アビブ(Aviv)分光光度計、型14DSにより測定した。H NMRスペクトルを、ブルッカー(Bruker)250分光計で記録した。光ルミネッセンス及びエレクトロルミネッセンススペクトルを、ホトン・テクノロジー・インターナショナルフルオリメーター(fluorimeter)を用いて測定した。電流−電圧特性の測定値を、EG&Gインストルーメンツ・ポテンショスタット(Instruments Potentiostat)、型283による記録した。融点はメルテンム(Mel−Temp)II装置により公正せずに測定した。元素分析をアトランティック・ミクロラブ社(Atlantic Microlab,Inc.)により行なった。質量分光分析を、5973質量選択検出器を具えたヒューレット・パッカード(Hewlett−Packard)GC/MC分光計の固体プローブで行なった。10−3トールの基底真空度でリンドバーグ(Lindbrg)3領域炉で傾斜昇華を行なった。
【0254】
化学物質: 良好なホール輸送性を有することが知られているトリアリールアミン部分を有する一連のフェノール誘導体を含む化合物を、更に2当量の8−ヒドロキシキナルジンの存在下でAl(OPr)3と反応させ、電子輸送部分とホール輸送部分の両方を有する化合物を生成させた。そのようにして作った化合物を、Al−pNP、Al−pCb、及びAl−mCbとして言及する。
【0255】
文献の手順に従い、TPD及びAlq3を合成し、両方を使用する前に昇華した。リガンド4−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)フェノール、3−カルバゾールフェノール、4−カルバゾールフェノール、及び4−イミノスチルベンフェノールを、対応するアミンとヨードアニソールとのウルマンカップリングを用い、「オールズ含有熱安定性非対称性電荷キャリヤー物質」(Oleds Containing Themally Stable Asymmetric Charge Carrier Materials)と題する1997年9月8日に出願された米国特許出願Serial No.08/929,029号明細書(これは言及することにより本明細書に組み入れる)に記載されているように、メトキシ基の脱保護をBBr3を用いて行うことにより合成した。8−ヒドロキシキナルジンはアルドリッチ(Aldrich)から購入し、そのまま用いた。
【0256】
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)[p−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)フェノラト]アルミニウム(III)、Al−pNP: Al(OPr)3(0.63g、3.1mM及び8−ヒドロキシキナルジン(0.51g、3.2mM)の混合物に、アルゴン中で40mlのEtOHを添加した。混合物を3時間還流し、緑黄色溶液を与えた。次に、8−ヒドロキシキナルジン(0.51g、3.2mM)と、p−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)フェノール(1.45g、4.68mM)を40mlのEtOH中に入れた橙黄色の溶液を、空気中で添加した。混合物を一晩中還流した。次にその黄色溶液から溶媒を除去し、黄色ガラス状物質を300℃以上で次に昇華した。最後に昇華した黄色結晶物質を収集し、再昇華した。得られた物質の分析により次の結果が得られた: 収率:60% 融点:136〜142℃ 元素組成(計算値):C、77.2;H、4.93;N、6.43 元素組成(実測値):C、77.0;H、5.00;N、6.31 質量分光分析:653(p)、342〔p−p−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)フェノール〕、259〔p−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)フェノール〕、159(8−ヒドロキシキナルジン)。
【0257】
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−カルバゾールフェノラト)アルミニウム(III)、Al−pCb: Al(OPr)3(0.63g、3.1mM及び8−ヒドロキシキナルジン(0.51g、3.2mM)の混合物に、アルゴン中で40mlのEtOHを添加した。混合物を3時間還流し、緑黄色溶液を与えた。次に、8−ヒドロキシキナルジン(0.51g、3.2mM)と、p−カルバゾールフェノール(1.2g、4.6mM)を40mlのEtOH中に入れた橙黄色の溶液を、空気中で添加した。混合物を一晩中還流した。次にその黄色溶液から溶媒を除去し、黄色ガラス状物質を300℃以上で次に昇華した。最後に昇華した黄色結晶物質を収集し、再昇華した。得られた物質の分析により次の結果が得られた: 収率:63% 融点:283℃ 元素組成(計算値):C、75.9;H、4.69;N、6.98 元素組成(実測値):C、75.6;H、4.79;N、6.96 質量分光分析:601(p)、343(p−p−カルバゾールフェノラト)、259(p−カルバゾールフェノール)、159(8−ヒドロキシキナルジン)。
【0258】
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(m−カルバゾールフェノラト)アルミニウム(III)、Al−mCb: Al(OPr)3(0.28g、1.37mMを8−ヒドロキシキナルジン(0.22g、1.38mM)と、アルゴン中でエタノール(65ml)中で混合した。混合物を2時間Ar中で還流し、得られた黄緑色溶液を空気中でセライトを通して濾過し、透明な溶液を与えた。2−メチル−8−キノリン(0.22g、1.38mM)及びm−カルバゾールフェノール(0.54g、2.1mM)のエタノール溶液(30ml)を添加し、一緒にした黄緑色溶液を3時間還流した。次に揮発性物質を真空中で除去し、ガラス状物質を3領域昇華器の通して280℃で2回昇華し、明るい黄色の微結晶質固体を与えた。得られた物質の分析により次の結果が得られた: 収率:0.29g(35%) 融点:280℃ 元素組成(計算値):C、75.9;H、4.69;N、6.98 元素組成(実測値):C、75.1;H、4.72;N、6.90 質量分光分析:601(p)、343(p−m−カルバゾールフェノラト)、259(m−カルバゾールフェノール)、159(8−ヒドロキシキナルジン)。
【0259】
デバイス製造及び特性化: ITO(100Ω/□)で被覆した硼珪酸塩物質を、洗浄剤と共に5分間超音波にかけ、次に脱イオン水で濯くことにより清浄にした。それらを、2分間、沸騰する1,1,1−トリクロロエタン中で2回処理した。それら物質をアセトンと共に2分間2回超音波にかけ、メタノールで2分間2回超音波にかけ、N2流中で乾燥した。
【0260】
デバイス製造の前に蒸着装置中のバックグラウンド圧力を通常7×10−7トール以下にし、フイルム蒸着中の圧力を5×10−7〜2×10−6トールにした。OLEDの製造に用いられる化合物を、室温に近く保持された基板上に、固定加熱したタンタルボートから蒸発させた。先ずTPDを1〜4Å/秒の速度で蒸着し、300Åのフイルムを与え、次に電子輸送層(Alq3、Ab3)の層を1〜40Å/秒の速度で450Åの厚さまで蒸着した。色素ドープOLEDについては、電子輸送材料及び色素を希望の比率で同時蒸着した。
【0261】
室を空気中へ通気し、基体上に直接遮蔽マスクを置いた。次にマグネシウム及び銀を通常3Å/秒の速度で同時蒸着した。Mg:Agの比率は7:1〜12:1の範囲にあった。この層の厚さは500Åであるのが典型的であった。最後にそれら装置を1〜4Å/秒の蒸着速度で、1000ÅのAgで覆った。
【0262】
少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を含む三つの型のOLEDを製造した: 型SH−A: ITO\TPD(300Å)\HET\Mg−Ag(500Å)\Ag(1000Å) 型SH−B: ITO\HET\Alq3(450Å)\Mg−Ag(500Å)\Ag(1000Å) 型DH: ITO\TPD(300Å)\HET\Alq3\Mg−Ag(500Å)\Ag(1000Å) ここで、HETは、Al−pNP又はAl−pCbのような少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を有する化合物を含む電荷キャリヤー層を表す。更に、TPD/Alq3OLEDを、基準として用いるために、典型的には型SH−A、SH−B及びDHのOLEDとして同時に製造した。これらデバイスを、製造してから5時間以内に空気中で特性化した。
【0263】
実験結果: 製造したOLEDの各々は、やはり発光材料である、少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を有する化合物を含む電荷キャリヤー層を有するヘテロ構造を持っていた。
【0264】
CH2Cl2中に溶解したAl−pNP、Al−pCb、及びAl−mCbの吸収及び光ルミネッセンス(PL)スペクトルを図B1に示す。三つの化合物は全て280〜380nmで吸収を示している。カルバゾール誘導体Al−pCb及びAl−mCbは、約360nmで強い青色発光を示し、Al−pCbは480nmで低いエネルギー発光を持っている。Al−pNPは、約440nmの所で単一の強い青色発光を示し、それはこの物質が青色エミッターとして有力な用途を持つことを示している。
【0265】
これらの新しい材料の諸性質を調べるため、Al−pNP及びAl−pCbを持つ異なった型のOLEDを製造した。上で記載したように、三つの型、型SH−A、SH−B及びDHのOLEDを各材料について製造した。TPD及びAl−pCbの膜も基板上に蒸着した。これらの膜は紫外線を用いてポンピングし、吸収及びPL発光を測定した。
【0266】
図2B2は、Al−pNPを用いて製造した型SH−A、SH−B、及びDHのOLEDのエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトル、及びCH2Cl2中に型SH−A、Al−pNPのOLED及びTPDフイルムのPLスペクトルを示している。図2B3は、Al−pNPを用いて作った型SH−A、SH−B及びDHのOLEDの外、TPD HTL及びAlq3ETLを有する基準OLEDのI−V特性を示している。表B1は、Al−pNPを用いて製造したOLEDについての収量、PL、及びELデータを要約したものである。図2B2及び2B3及び表B1では、「SH−A」は、TPD HTL及びAl−pNP ETL(300ÅのTPD/1000ÅのAl−pNP)を有する単一ヘテロ構造OLEDを指す。「SH−B」は、Al−pNP HTL及びAlq3 ETL(300ÅのAl−pNP/450ÅのAlq3)を有する単一ヘテロ構造OLEDを指す。「DH」は、TPD HTL、Al−pNPの別の発光層、及びAlq3 ETL(300ÅのTPD/200ÅのAl−pNP/450ÅのAlq3)を有する二重ヘテロ構造OLEDを指す。表B1の「基準収量」の列は、その欄の一番上のOLEDと同時に製造したTPD HTL及びAlq3ETL(300ÅTPD/450℃CAlq3)を有する基準SH OLEDの収量を示している。表B1に報告した最大値は、可視範囲の最大値であり、図2B2の最高ピークには相当しない幅の広い最大値でもよい。
【0267】
表B1に示したように、Al−pNPを有するSH−A OLEDは効率が低く、0.0005%の低い収量を有するが、この低い収量は、基準OLEDの低く基準収量によって示されている汚染によって説明することができるであろう。Al−pNPを用いたSH−A OLEDは白色光を発する。Al−pNPを有するSH−B OLEDは、0.02%の一層よい収量を有する。Al−pNPを有するDH OLEDは、更に一層よい0.05%の収量を示し、図2B3に例示するように、改良されたI−V特性を有する。これらの結果は、Al−pNPが或るホール輸送特性を有するが、固体中ではよくないエミッターであることを示している。
【0268】
【表5】
【0269】
図2B4は、Al−pCbを用いて製造したSH−A、SH−B、及びDH(2)のOLEDの外、TPD HTL及びAlq3ETLを有する基準OLEDのI−V特性を示している。図2B5は、型DH(2)のOLED及び基準OLEDのELスペクトル、及び型DH(2)のOLED及びAl−pCbのフイルムのPLスペクトルを示している。表B2は、Al−pCbを用いて製造したOLEDについての収量、PL、及びELデータを要約したものである。図2B4及びB5及び表B2では、「SH−A」は、TPD HTL及びAl−pCb ETL(300ÅのTPD/500ÅのAl−pCb)を有する単一ヘテロ構造OLEDを指す。「SH−B」は、Al−pCb HTL及びAlq3 ETL(300ÅのAl−pCb/450ÅのAlq3)を有する単一ヘテロ構造OLEDを指す。「DH(1)」は、TPD HTL、Al−pCbの別の発光層、及びAlq3 ETL(300ÅのTPD/450ÅのAl−pCb/450ÅのAlq3)を有する二重ヘテロ構造OLEDを指す。「DH(2)」は、DH(1)と同じ材料を有するが、異なった厚さ(300ÅのTPD/410ÅのAl−pCb/40ÅのAlq3)に蒸着した二重ヘテロ構造OLEDを指す。表B2の「基準収量」の列は、その欄の一番上のOLEDと同時に製造したTPD HTL及びAlq3ETL(300ÅのTPD/450ÅのAlq3)を有する基準SH OLEDの収量を示している。
【0270】
型SH−A、SH−B及びDHのOLED中にAl−pCbを適用することにより、色及び効率の両方に関してAl−pNPの場合のものよりも一層よい結果を与えることになる。図2B5に示したように、Al−pCb膜のPLスペクトルは、図2B1に示したように、CH2Cl2溶液中に入れたAl−pCbのものと同様であり、同じ青色発光を示し、Alq3のものに匹敵する強度を有する。図2B5及び表2に示したように、Al−pCbを有するDH(2)OLEDは、約500nmの所にピークを有する青色発光を示す。
【0271】
【表6】
【0272】
Al−pCbを用いたDH(2)OLEDの効率及び色純度は、色素ドーピング法により更に改良された。図2B6は、CH2Cl2溶液中に入れたペリレン及び1%のペリレンを均一にドープしたAl−pCbを用いたDH(2)OLEDのPLスペクトル、及び同じOLEDのELスペクトルを示す。図2B7は、1%のペリレンを均一にドープしたAl−pCbを用いたDH(2)OLED、及びAlq3に1%のペリレンをドープしたTPD/Alq3OLEDのI−V特性を示している。表B3は、Al−pCbを用いて製造したOLEDについての収量、PL、及びELデータを示している。図2B6及び2B7及び表B3では、「DH(2)」は、TPD HTL、別の発光層として1%のペリレンを均一にドープしたAl−pCb層、及びAlq3 ETL(300ÅのTPD/400Å 1%ペリレン−Al−pCb/50ÅのAlq3)を有する二重ヘテロ構造OLEDを指す。表B3の「基準収量」の列は、その欄の一番上のOLEDと同時に製造したTPD HTL及びAlq3ETL(300ÅのTPD/450ÅのAlq3)を有する基準SH OLEDの収量を示している。
【0273】
【表7】
【0274】
Al−pCb層に1重量%のペリレンを均一にドープした場合、Al−pCb層をドープしない場合よりも、OLEDはそのELスペクトルに一層強い青色色調を持っていた。ドープしたデバイスのELスペクトルのλmax(最大強度を有する波長)は、図2B6に示すように、溶液中のペリレンのPLスペクトルのλmaxに特徴的なものである。
【0275】
ドープしたデバイスの量子効率は、ドープしていないものの(0.05%)2.5倍大きかった。ドープしたデバイスのELスペクトルは、ホスト発光の不完全なクエンチによりスペクトルの緑色部分まで依然として幾らか残光を持っていた。このことは、ホストからドーパント分子へのエネルギー転移過程に幾らかの非効率的なものがあることを示している。
【0276】
本発明は、クマリン1のような他の青色ドーパント、又は緑(即ちクマリン6)又は赤〔即ち1,3−ビス[4−(ジメチルアミノ)−2−ヒドロキシフェニル]−2,4−ジヒドロキシシクロブテネジイリウムジヒドロキシド〕のような他の色を発するドーパントと一緒に用いることもできる。
【0277】
C.アズラクトン関連ドーパントを含有する発光層を有するOLEDの例 オレンジ色発光デバイス(OLED)の製造のために用いた手順は次の通りであった: ホール輸送材料TPD及び電子輸送材料Alq3を、既知の方法に従い合成し、使用する前に昇華した。
【0278】
化合物1:馬尿酸(40.0g、0.22モル)、ベンズアルデヒド(25.0g、0.24モル)、酢酸ナトリウム(16.0g、0.24モル)及び無水酢酸(120ml、1.2モル)を混合し、3日間よく撹拌した。得られた黄色の混合物を冷脱イオン水(1リットル)に添加し、黄色の固体を濾過により収集した。アセトン(2リットル)から結晶化した後、黄色針状結晶(48g)を収集した。収率:88%。mp.:162〜163℃。分析計算値:C、77.1;H、4.45;N、5.62。実測値:C、76.2;H、4.47;N、5.55。M.S.:249(P)、105(PhCO)、77(Ph)。NMR(25℃、CDCl3):8.15−8.30(m)、7.47−7.65(m)。
【0279】
化合物2:馬尿酸(5.0g、27.9mM)、p−ヒドロキシベンズアルデヒド(3.70g、30.3mM)、酢酸ナトリウム(2.0g、30mM)及び無水酢酸(20ml、212mM)を混合し、1日間よく撹拌した。得られた黄色の混合物を冷脱イオン水(0.2リットル)に添加し、黄色の固体を濾過により収集した。アセトンから結晶化した後、黄色結晶を収集した。M.S.:307(P)、265(P−CH3COO+H)、105(PhCO)、77(Ph)。NMR(25℃、CDCl3):8.25(d、8.8Hz)、8.18(d、8.0Hz)、7.50−7.66(m)、7.20−7.26(m)、2.34(s、Me)。
【0280】
化合物3:馬尿酸(5.00g、27.9mM)、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド(4.38g、29.4mM)、酢酸ナトリウム(2.0g、30mM)及び無水酢酸(20ml、212mM)を混合し、1日間よく撹拌した。得られた深赤色混合物を冷脱イオン水(200ml)に添加し、赤色固体を濾過により収集した。アセトンから結晶化し、昇華(200℃)した後、赤色結晶(1.0g)を収集した。収率:12%。mp.:211〜213℃。分析計算値:C、74.0;H、5.52;N、9.58。実測値:C、73.9;H、5.51;N、9.54。M.S.:292(P)、159(P−PhCOCO)、105(PhCO)、77(Ph)。NMR(25℃、CDCl3):8.15(dd、8.3Hz、1.8Hz)、7.46−7.56(m)、7.22(s)、6.82(d、8.75Hz)、3.12(s、Me)。
【0281】
化合物4:馬尿酸(3.57g、47.8mM)、p−t−ブチルベンズアルデヒド(8.0ml、47.8mM)、酢酸ナトリウム(3.2g、48.5mM)及び無水酢酸(35ml、317mM)を混合し、2日間よく撹拌した。得られた黄色混合物を冷脱イオン水(150ml)に添加し、黄色固体を濾過により収集し、アセトンから結晶化し、昇華(160℃)することにより精製した。収率:88%。mp.:142℃。分析計算値:C、78.7;H、6.27;N、4.58。実測値:C、78.7;H、6.25;N、4.58。M.S.:305(P)、105(PhCO)、77(Ph)。NMR(25℃、CDCl3):8.13−8.20(m)、7.50−7.64(m)、1.36(s、Me)。
【0282】
化合物5:馬尿酸(0.45g、2.5mM)、4−ジメチルアミノ−1−ナフトアルデヒド(0.50g、2.5mM)、酢酸ナトリウム(0.26g、3.9mM)及び無水酢酸(10ml、106mM)を混合し、2日間よく撹拌した。得られた赤色混合物を冷脱イオン水(100ml)に添加し、赤色油を形成した。ジエチルエーテル(30ml)を用いて赤色生成物を抽出した。次に溶媒を除去し、赤色液体を、トルエンを用いてシリカゲルカラムに通した。深赤色溶離物を収集し、溶媒を除去した後赤色液体を得た(0.52g)。
【0283】
化合物6:4−ニトロ馬尿酸(2.25g、10.0mM)、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド(1.53ml、10.2mM)、酢酸ナトリウム(0.75g、11.4mM)及び無水酢酸(40ml、424mM)を混合し、2日間よく撹拌した。得られた深赤色混合物を冷脱イオン水(150ml)に添加し黒色固体を濾過により収集し、アセトンから結晶化し、昇華(190℃)により精製した。M.S.:337(P)、159(P−NO2PhCOCO)。NMR(25℃、CDCl3):8.29(q、8.5Hz)、8.12(d、8.0Hz)、7.26(d、11Hz)、6.74(d、8.5Hz)、3.12(s、Me)。
【0284】
化合物7:N−アセチルグリシン(2.02g、17.3mM)、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド(2.49g、16.7mM)、酢酸ナトリウム(0.91g、13.8mM)及び無水酢酸(10ml、106mM)を混合し、2日間よく撹拌した。得た深赤色混合物を冷脱イオン水(150ml)に添加し、赤みがかった固体を濾過により収集し、アセトンから結晶化により精製した。
【0285】
OLEDは次の手順を用いて製造した: ITO/硼珪酸塩基板(100Ω/□)を、洗浄剤を用いて5分間超音波にかけ、次に脱イオン水で濯くことにより清浄にした。それらを、次に2分間、沸騰する1,1,1−トリクロロエタン中で2回処理した。それら基板をアセトンと共に2分間2回超音波にかけ、メタノールで2分間2回超音波にかけた。
【0286】
蒸着する前にバックグラウンド圧力を通常7×10−7トール以下にし、蒸着中の圧力を約5×10−7〜1.1×10−6トールにした。
【0287】
全ての化学物質を、種々のタンタルボート中で抵抗加熱した。先ずTPDを1〜4Å/秒の速度で蒸着した。その厚さは典型的には300Åに調節した。
【0288】
電子輸送層Alq3に化合物3をドープした。典型的には、基板を覆ったままドーパントを先ず気化した。ドーパントの速度が安定化した後、ホスト材料を或る速度まで気化した。次に基板上の覆いを開け、ホスト及びゲストを希望の濃度で蒸着した。ドーパントの速度は通常0.1〜0.2Å/秒であった。この層の全厚さは450Åに調節した。
【0289】
次に基板を空気中に開放し、基板上にマスクを直接置いた。マスクはステンレス鋼シートから作られており、0.25、0.5、0.75、及び1.0mmの直径を持つ孔が開いていた。次にそれら基板を真空へ戻し、更に被覆した。
【0290】
マグネシウム及び銀を、通常2.6Å/秒の速度で同時に蒸着した。Mg:Agの比率は7:1〜12:1の範囲にあった。この層の厚さは、典型的には500Åであった。最後に1000ÅのAgを1〜4Å/秒の速度で蒸着した。
【0291】
デバイスの特徴は、製造してから5時間以内に決定した。典型的には、エレクトロルミネッセンススペクトル、I−V曲線、及び量子収量を直接全面から測定した。
【0292】
ドーパントとして化合物3を含むドープしたデバイス、及びドープしていないAlq3デバイスのスペクトルを、図3C1に示す。このデバイスからの発光は化合物3ドーパントからくるものであった。
【0293】
図3C2に示したデバイスのI−V特性は、その化合物をOLEDに用いることができることを示すのみならず、そのような化合物は与えられた電圧に対し増大した電流レベルを与えることができることも示している。
【0294】
D.燐光ドーパント化合物を含む発光層を有するOLEDの例 有機発光デバイス(OLED)の製造に用いた手順は次の通りであった。 ホール輸送材料TPD及び電子輸送材料Alq3を、文献の手順に従って合成し、使用する前に昇華した。ドーパントPtOEPはユタ州ローガンのポルフィリン・プロダクツ社から購入し、受け取ったまま用いた。
【0295】
OLEDは次の手順を用いて製造した: ITO/硼珪酸塩基板(100Ω/□)を、洗浄剤を用いて5分間超音波にかけ、次に脱イオン水で濯くことにより清浄にした。それらを、次に2分間、沸騰する1,1,1−トリクロロエタン中で2回処理した。それら基板をアセトンと共に2分間2回超音波にかけ、メタノールで2分間2回超音波にかけた。
【0296】
蒸着する前にバックグラウンド圧力を通常7×10−7トール以下にし、蒸着中の圧力を約5×10−7〜1.1×10−6トールにした。
【0297】
全ての化学物質を、種々のタンタルボート中で抵抗加熱した。先ずTPDを1〜4Å/秒の速度で蒸着した。その厚さは典型的には300Åに調節した。
【0298】
電子輸送層Alq3にPtOEPをドープした。典型的には、基板を覆ったままドーパントを先ず気化した。ドーパントの速度が安定化した後、ホスト材料を或る速度まで気化した。次に基板上の覆いを開け、ホスト及びゲストを希望の濃度で蒸着した。ドーパントの速度は通常0.1〜0.2Å/秒であった。この層の全厚さは約450Åに調節した。
【0299】
次に基板を蒸着装置から取り出し、基板上にマスクを直接置いた。マスクはステンレス鋼シートから作られており、0.25、0.5、0.75、及び1.0mmの直径を持つ孔が開いていた。次にそれら基板を真空中へ戻し、更に被覆した。
【0300】
マグネシウム及び銀を、通常2.6Å/秒の速度で同時に蒸着した。Mg:Agの比率は7:1〜12:1の範囲にあった。この層の厚さは、典型的には500Åであった。最後に1000ÅのAgを1〜4Å/秒の速度で蒸着した。
【0301】
デバイスの特徴は、製造してから5時間以内に決定した。典型的には、エレクトロルミネッセンススペクトル、I−V曲線、及び量子収量を直接前面から測定した。
【0302】
E.対称性の少ない燐光ドーパント化合物を含む発光層を有するOLEDの例 ホール輸送材料TPD及び電子輸送材料Alq3を、文献の手順に従って合成し、使用する前に昇華した。ドーパントPtDPP化合物、及び同じく白金化されていてもよい付加的ポルフィリン化合物を、下に記載するように合成した。
【0303】
OLEDは次の手順を用いて製造した: ITO/硼珪酸塩基板(100Ω/□)を、5分間、洗浄剤と共に超音波にかけ、次に脱イオン水で濯くことにより清浄にした。それらを、次に2分間、沸騰する1,1,1−トリクロロエタン中で2回処理した。それら基板をアセトンと共に2分間2回超音波にかけ、メタノールで2分間2回超音波にかけた。
【0304】
蒸着する前にバックグラウンド圧力を通常7×10−7トール以下にし、蒸着中の圧力を約5×10−7〜1.1×10−6トールにした。
【0305】
全ての化学物質を、種々のタンタルボート中で抵抗加熱した。先ずTPDを1〜4Å/秒の速度で蒸着した。その厚さは典型的には300Åに調節した。
【0306】
電子輸送層Alq3にドーパント化合物、例えばPtDPPをドープした。典型的には、基板を覆ったままドーパントを先ず気化した。ドーパントの速度が安定化した後、ホスト材料を或る速度まで気化した。次に基板上の覆いを開け、ホスト及びゲストを希望の濃度で蒸着した。ドーパントの速度は通常0.1〜0.2Å/秒であった。この層の全厚さは約450Åに調節した。
【0307】
基板を蒸着装置から取り出し、基板上にマスクを直接置いた。マスクはステンレス鋼シートから作られており、0.25、0.5、0.75、及び1.0mmの直径を持つ孔が開いていた。次にそれら基板を真空中へ戻し、更に被覆した。
【0308】
マグネシウム及び銀を、通常2.6Å/秒の速度で同時に蒸着した。Mg:Agの比率は7:1〜12:1の範囲にあった。この層の厚さは、典型的には500Åであった。最後に1000ÅのAgを1〜4Å/秒の速度で蒸着した。
【0309】
デバイスの特徴は、製造してから5時間以内に決定した。典型的には、エレクトロルミネッセンススペクトル、I−V曲線、及び量子収量を直接前面から測定した。
【0310】
化合物の合成及びそれらの特性 2,2’−ジピリルメタンを、文献の手順〔Aust.J.Chem.,22,229−249(1969)〕を修正して製造した。
【0311】
2,2’−ジピリルチオン。150mlの乾燥THF中にチオホスゲン7.0ml(90mM)を入れた激しく撹拌した溶液に、12.5g(186mM)のピロールを滴下した。30分後、メタノール(20ml)を添加し、混合物を室温で30分間更に撹拌した。次に、得られた混合物を乾燥するまで蒸発した。この粗製材料を、更に精製することなく次の段階で用いた。
【0312】
2,2’−ジピリルケトン。前述の粗製チオンを10gのKOHを含有する200mlの95%EtOHの中に入れたものへ、0℃で17mlのH2O2(30%)をゆっくり添加した。その混合物を、0℃で2時間撹拌し、次に60℃で30分間撹拌し、然る後、その最初の体積の1/5まで濃縮した。100mlのH2Oを添加し、沈澱物を濾過し、冷EtOHで洗浄し、乾燥した生成物(5.6g,チオホスゲンから39%)を得、それは次の段階で用いるのに充分純粋であった。
【0313】
2,2’−ジピリルメタン。3.3mlのモルホリンを含有する200mlの95%のエタノール中に3.3g(20.1mM)の2,2’−ジピリルケトンを入れた溶液に、N2中で還流させながらNaBH4を数回にわけて(1.7g×6)添加した。各添加後10分して3mlのH2Oを添加した。最後の添加後、混合物を更に2時間還流させた。次に300mlのH2Oを添加し、その混合物をEt2Oで数回抽出した。抽出物を一緒にし、MgSO4で乾燥し、濃縮して濃い油を得、それをヘキサンで、抽出物がTLCにより認め得る程の量の生成物を示さなくなるまで、抽出した。一緒にしたヘキサン部分を濃縮し、生成物として2.3g(78%)の淡黄色の結晶を得た。
【0314】
5,15−メソ−ジフェニルポルフィリンの一般的合成: 2,2’−ジピリルメタン(0.5g、3.42mM)及び等モル量のアルデヒドを500mlの乾燥CH2Cl2中に溶解した。その溶液をN2で15分間パージした。次にトリフルオロ酢酸(154μl、2.6mM)を注射器で添加し、混合物を3時間N2中で光を当てないようにして撹拌した。2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノキノン(1.04g、4.6mM)を添加し、撹拌を30分間続けた。得られた暗い溶液をその最初の体積の1/3まで濃縮し、ヘキサンでシリカゲルを詰めたカラムに注いだ。CH2Cl2で溶離することにより紫の帯域を与え、それを濃縮して紫の固体を得、それを濾過し、エタノールで洗浄し、次にヘキサンで洗浄した。それら固体は、光ルミネッセンスの測定を行なうのに充分純粋であった。
【0315】
5,15−メモ−ジフェニルポルフィリン(H2DPP):収率:0.63g、80%、MS(El)m/z(相対強度)462(M+、100)、386(50)、368(30)、313(25)、231(50)。 5,15−メモ−ビス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(H2BPFPP):収率:0.05g、5%、MS(El)、m/z(相対強度)642(M+、100)、632(8)、602(8)、368(45)、321(35)、236(40)。 5,15−メモ−ビス(4−シクロフェニル)ポルフィリン(H2BCPP):収率:0.09g、10%、MS(El)、m/z(相対強度)512(M+、100)、411(50)、368(35)、355(40)、294(45)、281(50)。 5,15−メモ−ビス(4−アニシル)ポルフィリン(H2BAP):収率:0.09g、10%、MS(El)m/z(相対強度)522(M+、8)、416(100)、401(20)、372(23)。
【0316】
白金(II)5,15−メモ−ジフェニルポルフィリン(PtDPP)。10mlの乾燥トルエン中にH2DPP(0.05g、0.11mM)及びPt(PhCN)2Cl2(0.1g、0.22mM)を入れた混合物を、N2中で24時間還流した。得られた溶液を真空中で完全に乾燥し、微量のPhCNを除去した。暗い固体をCH2Cl2中に溶解し、ヘキサン:CH2Cl2(1:1v/v)を用いてクロマトグラフにかけ、生成物として赤色固体(0.04g、56%)を得た。1H NMR:δ10.15(s、2H)、9.207(dd、4H、J1=12Hz、J2=7.5Hz)、8.93(dd、4H、J1=12Hz、J2=7.5Hz)8.18(m、4H)、7.77(m、6H)。%、MS(El)m/z(相対強度)655(M+、100)、577(30)、326(50)、288(35)。
【0317】
F.対称性分子構造を有する化合物からなるガラス状有機ホール輸送材料を含むホール輸送層を有するOLEDの例 有機発光デバイス(OLED)の製法: 化学物質: IBSを、次の手順により製造した:丸底フラスコに、Na−t−ブトキシド(4.25g)、Pd2dba3(0.22g)、DPPF(ジフェニルホスフィノフェロセン、0.33g)、及び50mlの無水トルエンを入れた。反応混合物をアルゴン中、90℃で15分間撹拌した。次に、ジブロモビフェニル(3.12g)及びイミノスチルベン(4.25g)を添加し、質量分光計によってアミンが検出されなくなるまで、反応を8時間撹拌した。次に溶媒を反応混合物からストリップし、粗製残渣を真空中で乾燥した。次に乾燥した残渣を、減圧下(10−4トール)で勾配昇華にかけた。昇華により純粋な物質2.06g、理論的反応収率36%を得た。
【0318】
IDBを次の手順により製造した:51mM(10.000g)のイミノジスチルベンを、17mM(6.94g)の4,4′−ジヨードビフェニルと反応させた。反応生成物を凝縮器を取り付けた丸底フラスコに、34mM(2.16g)の銅粉末、68mM(9.398g)の炭酸カリウム、2mM(0.530g)の18−クラウン−6エーテル、及び20mlのo−ジクロロベンゼンと共に入れた。フラスコを185℃に加熱し、次にアルゴン中、24時間還流した。反応混合物を熱いまま濾過し、濾液を真空中に入れ、溶媒を除去した。次に残渣をシリカゲルの短いカラムにトルエンにより通過させた。次に溶媒をカラム濾液から除去し、後に残った固体を0.01トールの真空中220℃で昇華し、精製した。
【0319】
TPD及びNPDと同様、電子輸送材料Alq3を、文献の手順に従って合成した。全ての有機材料を、使用する前に昇華した。
【0320】
手順: ITO/硼珪酸塩基板(100Ω/□)を、5分間、洗浄剤と共に超音波にかけ、次に脱イオン水で濯くことにより清浄にした。それらを、次に2分間、沸騰する1,1,1−トリクロロエタン中で2回処理した。それら基板をアセトンと共に2分間2回超音波にかけ、メタノールで2分間2回超音波にかけた。
【0321】
蒸着する前にバックグラウンド圧力を8×10−7トールにし、蒸着中の圧力を約5×10−7〜2×10−6トールにした。
【0322】
化学物質を、抵抗加熱したタンタルボートから昇華させ、次に1〜3.6Å/秒の速度で蒸着した。その厚さは300Åに調節した。
【0323】
電子輸送層(Alq3)を1〜3.3Å/秒の速度で蒸着した。その層の全厚さは450Åに調節した。
【0324】
基板を空気中に解放し、基板上にマスクを直接置いた。マスクはステンレス鋼シートから作られており、0.25、0.5、0.75、及び1.0mmの直径を持つ孔が開いていた。次にそれら基板を真空中へ戻し、更に被覆した。
【0325】
マグネシウム及び銀を、2Å/秒の速度で同時に蒸着した。Mg:Agの比率は9:1であった。この層の厚さは500Åであった。最後に1000ÅのAgを2.7Å/秒の速度で蒸着した。
【0326】
デバイスの特徴: デバイスの特徴は、製造してから1日以内に決定した。I−V曲線、量子収量、及び輝度を測定した。これらの測定した量から導いたOLEDデータを表F2に記載する。デバイスの電流・電圧(I−V)特性は、表F1及びF2に示す。
【0327】
図6F1は、上で述べたように、基板上に順次ITOアノード、HTL、Alq3ETL、及びMg−Agカソードを蒸着したものからなる単一ヘテロ構造を有するOLEDの電流・電圧特性を示している。四つの異なったHTL材料:TPD、NPD、ISB、及びIDBについて四つの異なったプロットが示されている。TPD、NPD、及びISBについての電流・電圧プロットは非常に似ており、OLEDの電流・電圧特性は、HTLがTPDか、NPDか、又はISBであるかに拘わらず大して変化しない。IDBの場合の電流・電圧プロットは、TPD、NPD、及びISBについてのプロットよりも低い電流を示し、電流・電圧特性の見通しから、IDBは余り望ましくないHTLであることを示す。
【0328】
図6F2は、上で述べたように、基板上に順次ITOアノード、CuPcホール注入促進層、HTL、Alq3ETL、及びMg−Agカソードを蒸着したものからなる、ホール注入促進層を有する単一ヘテロ構造を有するOLEDの電流・電圧特性を示している。四つの異なったHTL材料:TPD、NPD、ISB、及びIDBについて四つの異なったプロットが示されている。TPD、NPD、及びISBについての電流・電圧プロットは非常に似ており、OLEDの電流・電圧特性は、HTLがTPDか、NPDか、又はISBであるかに拘わらず大して変化しない。IDBの場合の電流・電圧プロットは、TPD、NPD、及びISBについてのプロットよりも低い電流を示し、電流・電圧特性の見通しから、IDBは余り望ましくないHTLであることを示している。
【0329】
図6F1及び6F2は、二つの異なったOLED形状について、HTLとしてISBを用いたOLEDは、HTLとしてTPD又はNPDを用いたOLEDのものと同様な電流・電圧特性を持つことができることを示している。ISBのTgが高いこと及びISBを用いたOLEDの予想寿命が長いことに関連して、この類似性は、ISBは優れたHTLであることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0330】
【図1A1】標準的従来のOLEDの概略的例示図である。
【図1A2a】本発明の代表的OLEDを示す図である。
【図1A2b】本発明の別の代表的OLEDを示す図である。
【図1A3】ITOカソード層及びCuPc電子注入界面層を有する、図1A2aに示したOLEDの光出力対電流を示す図であり、この図に示した一番下の組の値は180時間で得られたものである。
【図1A4】Mg:Agカソード層を有する標準的従来のTOLED装置の光出力対電流を示す図であり、この図の一番下の組の値は180時間で測定された。
【図1A5】ZnPc電子注入界面層及びCuPc電子注入界面層についてのI−V曲線を示す図である。
【図1A6】CuPc電子注入界面層と比較して、ZnPc電子注入界面層について光出力対電流を示す図であり、CuPcデバイスの効率ηは0.23%、ZnPc装置は0.15%である。
【図1A7】ITOカソード及びCuPc電子注入界面層を有するOLEDの波長の関数として、透過率(T)、反射率(R)及び吸収率(A)を示す図である。
【図1A8】金属Mg:Agカソード層を有する標準的従来のOLEDのI−V特性を示す図であり、高い組の値は0時間で測定され、下の組の値は180時間で測定されたものである。
【図1A9】ITOカソード及びCuPc電子注入界面層を有するOLEDのI−V特性を示す図であり、高い組の値は0時間で測定され、下の組の値は60時間及び180時間で測定されたものである。
【図1A10】約30Åから約120Åまでの厚さのCuPc電子注入層を有するデバイスの光出力対電流を示す図であり、これらの装置は約0.1%の効率ηを示す。
【図1A11】図1A10のデバイスのI−V特性を示す図である。
【図1A12】0.4mmの直径の非金属カソードを有するTOLED(MF−TOLED)及び同じ真空サイクルで成長させた基準TOLEDの電流・電圧特性を示す図である。
【図1A13】非金属カソードを有するTOLED構造の概略的例示図である。
【図1A14】図1A12の非金属カソードを有するTOLED(MF−TOLED)及び基準TOLEDの駆動電流に対する表面及び底面からの合計光出力を示す図であり、測定された最大電流での輝度は2000cd/m2に相当する。
【図1A15】頂部及び底部の両方のデバイス表面からのエレクトロルミネッセンススペクトルを示す図であり、適合値(実線)は、本文に記載した計算方法を用い得た頂部からの発光スペクトルに相当する。
【図1A16】非金属カソードを有するTOLED提案された簡単にしたエネルギーレベル図であり、Dssは表面状態の密度を示す。
【図1A17】非金属カソードを有するTOLED及び従来のTOLEDについて撮ったデジタル再現写真を示し、従来のTOLEDは小さな灰色の領域として現れているのに対し、非金属カソードを有するTOLEDはデジタル再現写真では見えない。
【図2B1】CH2Cl2溶液中のAl−pNP、Al−pCb、Al−mCbの吸収及び蛍光スペクトルを示す図である。
【図2B2】Al−pNP層を有するOLEDのエレクトロルミネッセンス(EL)及び光ルミネッセンス(PL)スペクトルを示す図である。
【図2B3】Al−pNP層を有するOLEDのI−V特性を示す図である。
【図2B4】Al−pCb層を有するOLEDのI−V特性を示す図である。
【図2B5】Al−pCb層を有するOLEDのEL及びPLスペクトルを示す図である。
【図2B6】Al−pCb/ペリレン層を有するOLEDのEL及びPLスペクトルを示す図である。
【図2B7】Al−pCb/ペリレン層を有するOLEDのI−V特性を示す図である。
【図3C1】ドーパントとして0.8%の化合物3をドープしたデバイス及び非ドープAlq3デバイス(0%)のエレクトロルミネッセンススペクトルを、CH2Cl2中に存在させた時のドーパントの光ルミネッセンスと比較して示す図である。
【図3C2】ドープしたデバイス及び非ドープデバイスのI−V特性を示す図である。
【図4D1】TPPドープOLEDのエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す図である。
【図4D2】0.6モル%のPtOEPをドープしたAlq3層を有するOLEDの異なった電圧(6、9、12及び15V)での波長の関数としてELスペクトルを、TPPドープデバイスのEL(TPP EL)と比較して示す図である。
【図4D3】約6モル%のPtOEPをドープしたOLEDについて異なった電圧での波長の関数として示すELスペクトルの図である。
【図4D4】PtOEPをドープしたAlq3デバイスについて異なったPtOEP濃度での波長の関数として示す光ルミネッセンス(PL)スペクトルの図である。
【図4D5】PtOEPの溶液についての異なった波長での波長の関数としてPLスペクトルを、約0.6モル%のPtOEPをドープしたAlq3層を有するOLEDのELスペクトルと比較して示す図である。
【図5E1】OLED中の白金置換燐光ドーパント化合物として用いる白金ポルフィリンを製造するのに用いられる代表的ポルフィリン及び四種類の別のポルフィリンを示す図である。
【図5E2】PtDPPドープ重合体OLEDのエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを、ポリスチレン中のPtDDPの光ルミネッセンス(PL)及びAlq3デバイス中にドープしたPtOEPのELスペクトルと比較して示す図である。
【図5E3a】(ITO/NPD/Alq3/MgAg)からなるOLEDのAlq3層中にドープしたPtDPPについての印加電圧の関数としてのELスペクトルを示す図である。
【図5E3b】PtDPPドープAlq3OLEDのELスペクトルを、PtOEPドープAlq3OLEDと比較して示す図である。
【図5E4】PtDPPドープOLEDからのCIE座標及び輝度出力を、他の赤色発光OLEDと比較して示す図である。
【図5E5】人間の視感度についてのCIE標準明所視反応曲線と、飽和赤色発光を生ずる化合物についての標準化発光スペクトルとの重なりを示す図である。
【図6F1】図6F1は、本発明の一つの態様についての電流対電圧プロットを示す図である。図6F2は、CuPcホール注入促進層を有する本発明の一つの態様についての電流対電圧プロットを示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電子デバイス(装置,devices)、特に高度に透明な非金属カソードに用いられる非金属カソードに関する。詳しくは、本発明は、高度に透明な非金属カソードを有する有機発光デバイス(装置)(OLED)に関する。本発明は、更に少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を含む化合物を含む電荷キャリヤー層を有する新規なOLED、アズラクトン関連ドーパントを含む発光層を有するOLED、燐光ドーパント化合物を含む発光層を有するOLED、又は対称性分子構造を有する化合物からなるガラス状有機ホール輸送材料を含むホール輸送層を有するOLEDに関する。
【背景技術】
【0002】
光電子デバイスには、電気エネルギーを光エネルギーに変換するか、又はその逆を行うデバイスの外、電気的方法によって光信号を検出するデバイスが含まれる。そのようなデバイスには、光検出器、光トランジスタ、太陽電池、発光ダイオード、及びレーザーが含まれる。そのようなデバイスには、典型的には電極の間に少なくとも一つの電荷キャリヤー層を有する一対の電極が含まれる。デバイスの機能により、電荷キャリヤー層(単数又は複数)は、デバイスを通って電圧を印加すると、エレクトロルミネッセンスを与える材料(単数又は複数)からなるか、又は層(単数又は複数)は光放射線に曝すと光電池効果を発生することができるヘテロ接合を形成する。
【0003】
特に、OLEDは幾つかの有機層からなり、それら層の一つが、装置を通って電圧を印加することによりエレクトロルミネッセンスを起こすことができるようにされる有機材料からなる。C.W.タング(Tang)その他、Appl.Phys.Lett.51,913(1987)。或るOLEDは、LCD系天然色平面パネル表示器に対する実際的な新しい技術として用いられるのに充分な輝度、色の範囲、及び作動寿命を有することが示されている。S.R.フォレスト(Forrest)、P.E.バローズ(Burrows)、及びM.E.トムプソン(Thompson)、Laser Focus World,Feb.1995。そのような装置で用いられる有機薄膜の多くは可視スペクトル範囲で透明であるが、それらは垂直に積み重ねられた幾何学的形態で赤(R)、緑(G)、及び青(B)発光OLEDが配置されている完全に新しい型の表示ピクセルの実現を可能にし、簡単な製法、小さなR−G−Bピクセルサイズ、及び大きな密度因子を与える。米国特許第5,707,745号。この特許には、色調節可能な表示装置で、強度及び色の両方を独立に変えることができ、外部電源によって調節することができる積層OLED(SOLED)が記載されている。集積SOLEDの各々の層は、独立にアドレスすることができ、それ自身の特性色を発光する。この着色発光は、隣接して積層された透明な独立にアドレスされる有機層(単数又は複数)、透明接点、及びガラス基板を通って伝達され、これによって装置が、発光層の相対的出力を変えることによって生じさせることができるどのような色でも発光することができる。米国特許第5,707,745号は、このように小さなピクセルサイズによって可能になる大きな解像力を与える集積天然色ピクセルを達成する原理を例示している。更に、従来の方法と比較して比較的低いコストの製法をそのような装置を製造するために用いることができる。
【0004】
透明OLED(TOLED)〔V.バロビック(Bulovic)、G.グ(Gu)、P.E.バローズ、M.E.トムプソン、及びS.R.フォレスト、Nature 380,29(1996)〕は、大きな解像力、独立にアドレス可能な積層R−G−Bピクセルを実現するための更に重要な工程を示しているが、これは米国特許第5,703,436号明細書に報告されており、この場合TOLEDはスイッチを切った時に71%より大きな透明性を有し、装置のスイッチを入れた時、大きな効率(1%に近い量子効率)を持ってデバイスの上面及び底面の両方から光を発する。このTOLEDは、ホール注入電極としてインジウム錫酸化物(ITO)を用い、電子注入のためにMg−Ag−ITO電極層を用いている。 Mg−Ag−ITO電極層のITO側を、TOLEDの一番上に重ねられた第二の異なった色を発光するOLEDのためのホール注入接点として用いたデバイスが記載されている。
【0005】
有機光電材料の層を用いることに基づいた構造を有するそのようなデバイスは、一般に発光を与える共通の機構に依存している。典型的には、この機構は、注入された電子及びホールの発光再結合に基づいている。特に、OLEDはデバイスのアノード及びカソードを分離する少なくとも二つの薄い有機層を有する。これら層の一つの材料は、ホールを注入及び輸送する「ホール輸送層」(HTL)に役立つ材料の能力に基づいて特別に選択され、他方の層の材料は、特に電子を注入及び輸送する「電子輸送層」(ETL)に役立つその能力に従って選択される。そのような構造では、デバイスはアノードに印加した電位がカソードに電位した電位よりも正である場合、そのデバイスは順方向のバイアスを持つダイオードとして見ることができる。このようなバイアス条件では、アノードはホール(正電荷キャリヤー)をホール輸送層中に注入し、一方カソードは電子を電子輸送層中に注入する。このようにしてアノードに隣接したルミネッセンス媒体部分は、ホール注入部分及び輸送領域を形成し、一方カソードに隣接するルミネッセンス媒体部分は電子注入及び輸送領域を形成する。注入されたホール及び電子は、夫々反対に帯電した電極の方へ移動する。例えば、電子及びホールが同じ分子に局在している場合、フレンケル励起子が形成される。これらの励起子は一番低いエネルギーを有する材料中に捕捉される。これら短命状態の再結合は、その伝導ポテンシャルから価電帯へ落ちる電子として見ることができ、或る条件下では、好ましくは光発光機構によって起きる緩和を伴う。この典型的な薄層有機デバイスの作動機構を考慮に入れて、エレクトロルミネッセンス層は各電極から易動性電荷キャリヤー(電子及びホール)を受けるルミネッセンス領域を有する。
【0006】
OLEDの電子輸送層又はホール輸送層として働く材料は、屡々エレクトロルミネッセンス発光を生じさせるためにOLED中へ配合する材料と同じものである。電子輸送層又はホール輸送層が発光層として働くそのようなデバイスは、「単一ヘテロ構造」(SH)を有するものとして言及されている。別法として、エレクトロルミネッセンス材料はホール輸送層と電子輸送層との間の別の発光層中に存在していてもよく、この場合「二重ヘテロ構造」(DH)と呼ばれる。
【0007】
単一ヘテロ構造OLEDでは、ホールはHTLからETLへ注入され、それらが電子と結合して励起子を形成するか、又は電子がETLからHTLへ注入されて、それらがホールと結合して励起子を形成する。励起子は最も低いエネルギーギャップを有する材料中に捕捉され、通常用いられるETL材料は通常用いられるHTL材料よりも一般に小さなエネルギーギャップを有するので、単一ヘテロ構造デバイスの発光層は典型的にはETLである。そのようなOLEDでは、ETL及びHTLのために用いられる材料は、ホールをHTLからETL中へ効果的に注入することができるように、ETL及びHTLのために用いられる材料を選択すべきである。また、最もよいOLEDは、HTL及びETL材料の最大占有分子軌道(HOMO)レベルの間で良好なエネルギーレベルの一致を与えるものと考えられる。二重ヘテロ構造OLEDでは、ホールはHTLから注入され、電子はHTLから別の発光層へ注入され、そこでホールと電子が結合して励起子を形成する。
【0008】
OLEDのカソード層として用いられる材料は、今まで低い仕事関数を有する金属、例えば、Mg:Agからなっていた。そのような金属カソード層は、電流のための電気伝導路のみならず、隣接電子輸送層中へ電子を注入する手段を与える。しかし、そのような金属層は、スペクトルの可視領域に極めて反射性で吸収性である。
【0009】
このことは、天然色SOLEDの積層された層、又は単色TOLEDの単一のOLEDのような透明OLEDが望まれるならば、カソードとして機能するのに充分な厚さを持つが、実質的な光透過又は反射損失を起こす程厚くないようにすると言う金属層についてのバランスが確立される必要がある。従って、従来のTOLEDでは、スパッター蒸着したITOの厚い層で覆った75〜100ÅのMg:Agを用いており、そのMg:Ag層は、Alq3中へ電子を注入することと、ITOスパッタリングからそれを保護することの両方の働きをする。従って、約70%の透過率を有するデバイスが得られているが、化合物カソードからの大きな反射が依然として存在している。更に、発光層の少なくとも一つが隣接する発光OLEDの金属カソードの間に挟まれているSOLEDデバイスでは、色調節問題を起こすことがあるミクロ空洞効果が存在する。Z.シェン(Shen)、P.E.バローズ、V.バロビック(Bulovic)、S.R.フォレスト、及びM.E.トムプソン、Science 276,2009(1997)。そのようなミクロ空洞効果は、発光した光の望ましくない角度依存性をもたらすことがある。更に、薄いMg:Ag層は雰囲気劣化に敏感であり、従って、OLEDのカソードとして働くそれらの効果性を維持させるように、特別な設計及び処理工程を必要とする。
【0010】
或る環境下では高度に透明なITO層カソードとしての機能を果たす太陽電池が報告されているが、そのようなITOカソードは電荷キャリヤー有機層をITO層の上に堆積することにより製造されていることが記載されている。N.カール(Karl)、A.バウエル(Bauer)、J.ホルゼーフェル(Holzaeofel)、J.マークタンネル(Marktanner)、M.メーブス(Moebus)、及びF.ステルツェレ(Sstoelzle)、「効率的有機光電池:励起子光収集の役割、界面への励起子拡散、電荷分離のための内部電場、及び高電荷キャリヤー易動度」(Efficient Organic Photovoltaic Cells:The Role of Exitonic Light Collection,Exciton Diffusion to Interfaces,Internal Fields for Charge Separation,and High Charg Carrier Mobilities)、Molecular Crystals and Liquid Crystals,Vol.252,pp.243−258,(1994)(Karl et al)及びホワイトロック(Whitlock)J.B.、パナヨタトス(Panayotatos)P.、シャーマ(Sharma)G.D.、コックス(Cox)M.D.、シェーバー(Savers)R.R.、及びバード(Bird)G.R.、「有機半導体太陽電池のための材料及びデバイス構造の研究」(Investigations of Materials and Device Structures for Organic Semiconductor Solar Cells)Optical Eng.,Vol.32,No.8,1921−1934(August 1993)(Whitlock et al)。有機層が上に堆積されているITO層は、隣接有機層と低抵抗電気接触を形成するとは予想されてはおらず、従って、下でOLEDについて確認するように、効果的なカソードとして機能を果たすとは予想されていなかったであろう。
【0011】
高度に透明なITOアノードと同様に高度に透明なカソードを用いて光電子装置を作ることができることが望ましいであろう。更に、そのような高度に透明なカソードが、例えば、OLEDで、カソード層として典型的に用いられているMg:Agのような薄い半透明低仕事関数金属層に匹敵する電子注入特性を依然として有することが望ましいであろう。種々の化合物がHTL材料又はETL材料として用いられてきている。HTL材料は、殆ど種々の形のトリアリールアミンからなり、それは大きなホール易動度(10−3cm2/Vs)を示す。OLEDに用いられるETLには幾らか更に変えたものが存在する。アルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノレート)(Alq3)は、最も一般的なETL材料であり、他のものにはオキシジアゾール、トリアゾール、及びトリアジンが含まれる。
【0012】
例えば、典型的な単一ヘテロ構造デバイスは、ITO/TPD/Alq3/Mg:Agから作られている。ITOはアノードとして働き、N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−1,1′ビフェニル−4,4′ジアミン(TPD)はHTLとして働き、Alq3はETLとして働き、Mg:Agはカソードとして働く。デバイスにバイアスを印加すると、ホールはITOからTPD中へ注入され、TPDとAlq3との間の界面へ移動し、電子はMg:Ag合金からAlq3へ注入され、同じ界面へ移動する。ホールはTPDからAlq3へ注入され、そこでそれらは電子と結合して励起子を形成する。励起子はAlq3層を通ってランダムに拡散し、最後にそれらは、優先的に発光機構により再結合する。そのようなデバイスのAlq3層中での励起子の最大移動距離は、Alq3中、約300Åであると推定される。
【0013】
OLEDで用いられる殆どの発光材料は、低いホール易動度又は低い電子易動度しか持たない。その結果、励起子の形成は、典型的には低い易動度を有する電荷キャリヤーが発光層中へ注入される界面に非常に近い所で起きる。例えば、殆どのETL材料は非常に貧弱なホール伝導性を有し、そのため励起子は発光ETLを有する単一ヘテロ構造OLEDのHTL/ETL界面に非常に近い所で優先的に形成されることになる。励起子は非常に短命なので、それらは再結合する前に余り遠くまで移動できない。その結果、ETLの僅かな堆積部分しか励起子の形成及び再結合に利用されない。励起子形成及び再結合のために発光層の僅かな堆積部分しか利用されないことは、OLEDの寿命を短くすることになる。従って、大きな電子易動度及び大きなホール易動度を有し、その結果励起子形成が装置の合理的な堆積部分で起きるようになる発光層が必要である。例えば、大きなホール易動度を有し、その結果励起子形成及び発光が、発光ETLを有する単一ヘテロ構造OLEDのETLの合理的な堆積部分で起きるようになるETLに対する必要性が存在する。
【0014】
HTLとETLの材料を一緒に混合することにより、空間拡散分離を減少し、ETL材料中へのホールの拡散を増大することが先ず考えられる。この考えは、最初ホール輸送部分及び電子輸送部分の両方を重合体マトリックス中に混合した種々の重合体系で例示された。最も一般に用いられる組合せは、PVK(ポリビニルカルバゾール)がホール輸送体として働き、PBD〔2−(4−t−ブチルフェニル)−5−(4−フェニル−1−フェニレン)オキシダゾール〕は電子輸送体として働くPVK/PBD系である。数多くの異なった色素が、青から赤の色を発生する発光中心としてこの系にドープされている。
【0015】
米国特許第5,294,870号明細書には、2つの8−ヒドロキシキナルジンリガンド及びフェノレートリガンド輸送体、Alq′2(OAr)を有する一連のアルミニウム(III)錯体が記載されている。これらの物質の全てが青色エミッターであり、合理的な電子ビーム輸送体である。それらのデバイスは、TPDとAlq3との間に挟んだAlq′2(OAr)を用いて製造されてきた。この形態は、Mg−Ag電極からの電子注入がよくないために必要である。それにも拘わらずこれらの装置はそれらのエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルで青緑色発光を示し、それらの光ルミネッセンス(PL)スペクトルと殆ど同様である。これらの化合物は、青色発光を与えるペリレンのような他の蛍光色素をドープするためのホスト材料として良好な性質も示している。しかし、ETL材料はホール輸送体としてはよくない。
【0016】
分子レベルで電子輸送体としてオキサジアゾール基、ホール輸送体としてトリフェニルアミンを有する一連の新しい発光材料が設計されてきた。タモト(Tamoto)、その他、「1,3,4−オキサジアゾールのエレクトロルミネッセンス及び有機多層発光ダイオード中のエミッターとしてのトリフェニルアミン−含有分子」(Electroluminescence of 1,3,4−Oxadiazole and Triphenylamine−Containing Molecules as an Emitter in Organic Multilayer Light Emitting Diodes)、Chem.Mater.9,1077−1085(1997)。これらの発光材料から形成された層は、低いイオン化電位を有するホール輸送体で励起状態複合体を形成する蛍光がある。励起状態複合体が形成されない場合、高い外部量子効率及びエネルギー変換効率が観察されている。しかし、これらの材料からなるデバイスは、ルミネッセンス寿命が低い欠点を有する。これらの発光材料はホールよりも電子を移動させる蛍光が大きいことも発見されている。
【0017】
電子輸送層中の主たる成分として存在し、電子輸送材料及び発光材料の両方としての機能を持つ発光材料の外に、発光材料自身が電子輸送層中のドーパントとして比較的低い濃度で存在していてもよい。ドーパントが存在する場合、電子輸送層中の主たる材料は、ホスト材料と呼ばれている。ホスト及びドーパントとして存在する材料は、ホストからドーパント材料へ高レベルのエネルギー移動を与えるように選択する。更に、これらの材料はOLEDとして許容可能な電気的性質を生ずることができる必要がある。更に、そのようなホスト及びドーパント材料は、従来の製法を用いて、特に真空蒸着法を用いて、OLED中へ容易に組み込むことができる出発材料を用いてOLED中へ配合することができることが好ましい。
【0018】
三原色、赤、緑及び青の一つに相当する選択されたスペクトル範囲近くに中心を持つ比較的狭い帯域のエレクトロルミネッセンス発光を与え、従って、OLED又はSOLED中の着色層として用いることができる材料を用いてOLEDを製造することが望ましい。特に、電荷移動遷移から発光を生ずる基本的化合物を置換基を選択的に変化させるか、又はその構造を変えることにより発光を変えることができる種類の化合物からこれらの化合物を選択することができることが望ましい。更に、そのような化合物は、真空蒸着された有機材料から完全に製造されるOLED中へ容易に配合されるように、真空蒸着法を用いて薄層として容易に蒸着できることも望ましい。
【0019】
最近の文献には、非常に狭い緑色蛍光を与えるクラゲ(Aequorea victoria)が記載されている。R.ハイム(Heim)、A.B.クビット(Cubitt)、及びR.Y.チエン(Tsien)、Nature 373,663−664(1995)。報告されているスペクトルは、大略510nmの所に中心があり、40nmの半値幅を有し、この発光の原因になっているのは次の活性活性発色団であることが示されている。
【0020】
【化1】
【0021】
このp−ヒドロキシベンジリデン−イミダゾリジノン発色団が、プロティン自身のSer−Tyr−Gly配列の環化及び酸化により発生することが報告されており、「prot」として標識付けされた蛋白質に二か所で結合されている。著しく青色に移行した発光を生ずるその蛋白質の突然変異体が報告されている。青色への移行は、色素自身の変化によるものではなく、色素が結合している蛋白質マトリックス中の変化によるものであることが報告されている。R.ハイム、D.C.プラシャー(Prasher)、及びR.Y.チエン、Proc.Nat.Acad.Sci.,91,12501−12504(1994)。これらの色素中の蛍光は、フェノキシド イオン供与体及びカルボニル受容体を含めた供与体/受容体網状組織から生ずる。ハイムの文献は、蛋白質の試験管内及び完全細胞内の両方でそれらの位置又は適応変化を検出するために蛍光タッグで標識付けするために発色団を使用することを述べている。しかし、これらの文献は分離された発色団分子そのものを製造又は使用することについてはなにも述べていない。
【特許文献1】米国特許第5,294,870号明細書
【非特許文献1】V.バロビック(Bulovic)、G.グ(Gu)、P.E.バローズ、M.E.トムプソン、及びS.R.フォレスト、Nature 380,29(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、更にOLEDの発光層中のドーパントとして用いることができる或る種類のアズラクトン関連化合物に関し、この場合ドーパントの発光が、その発光を生ずる基本化合物の構造を変えるか、又は成分を選択的に変化することにより変化させることができる。そのような化合物は、真空蒸着法を用いて薄層として容易に堆積することができ、その結果それは真空蒸着有機材料から完全に製造されるOLED中へ容易に配合することができる。アズラクトンを要約した概説論文には、蛍光性についてはなにも記載しておらず、これらの化合物についての用途についてもなにも述べていない。Y.S.ラオ(Rao)及びR.フィラー(Filler)、Synthesis 749−764(1975)。
【課題を解決するための手段】
【0023】
1996年12月23日に出願された同時係属中の米国特許出願08/774,333は、飽和赤色発光を生ずる発光化合物を含むOLEDに関する。発光層は、式I:
【0024】
【化2】
【0025】
(式中、Xは、C又はNであり、 R8、R9及びR10は、夫々独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールからなる群から選択され、 R9及びR10は、一緒になって融合環を形成していてもよく、 M1は、二価、三価、又は四価の金属であり、 a、b及びcは、夫々0又は1であり、然も、XがCである場合、aは1であり;XがNである場合、aは0であり;cが1である場合、bは0であり;bが1である場合cは0である。)により表される化学構造を有する発光化合物からなる。
【0026】
米国特許出願Serial No.08/774,087に記載されている例は、X=C;R8=フェニル;R9=R10=H;c=0;及びb=1の場合の式Iの発光化合物を含んでいる。この化合物は、化学名5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィン(TPP)を有する。TPP含有発光層を有するOLEDは、二つの狭い帯域からなる発光スペクトルを生じ、それは図1に示すように、約650及び約713nmの所に中心を有する。このデバイスからの発光は、TPPドーパントからの蛍光を含んでいる。TPPドープデバイスについての問題の一つは、発光の約40%を占める713nmでの狭い帯域が、表示用途に有用な範囲内に入っていないことである。第二の問題は、TPPドープOLEDは非常に不安定であり、そのためそのようなデバイスの保存寿命が非常に短いのが典型的である。TPPドープ装置のこれらの二つの特徴が改善されることが望ましいであろう。本発明は、従来のデバイスのこれらの問題に対処することを目的としている。
【0027】
本発明の別の特徴は、スピン統計議論に基づき、OLED中に生じた励起子の大部分が非発光三重項電子状態になっていることが一般に理解されている。そのような三重項状態の形成は、OLEDの励起エネルギーの基底状態への無放射遷移による実質的な損失を与える結果になる。この励起子三重項状態を通るエネルギー遷移経路を利用することにより、例えば、励起子三重項状態エネルギーを発光物質へ移行させることにより、全OLED量子効率を向上させることができれば望ましいであろう。残念ながら励起三項重状態からのエネルギーは或る環境下で燐光発光分子の三重項状態へ効果的に転移させることができることは知られているが、燐光消滅速度が、表示デバイスで用いるのに適切になる程充分速いものとは考えられていない。本発明は、更に従来のデバイスのそのような問題にも対処したOLEDにも関する。
【0028】
よく報告されているOLED失敗の原因は、有機層の熱的に誘発された変形である(例えば、溶融、結晶形成、熱膨張等)。この失敗状態は、ホール輸送材料を用いて行われた研究に見ることができる。K.ナイトウ(Naito)及びA.ミウラ(Miura)、J.Phys.Chem.97,6240−6248(1993);S.トキト(Tokito)、H.タナカ(Tanaka)、A.オカダ(Okada)、及びY.タガ(Taga)、Appl.Phys.Lett.69,(7),878−880(1996);Y.シロタ(Shirota)、T.コバタ(Kobata)、及びN.ノマ(Noma)、Chem.Lett.1145−1148(1989);T.ノダ(Noda)、I.イマエ(Imae)、N.ノマ、及びY.シロタ、Adv.Mater.9,No.3(1997);E.ハン(Han)、L.ド(Do)、M.フジヒラ(Fujihira)、H.イナダ(Inada)、及びY.シロタ、J.Appl.Phys.80,(6)3297−701(1996);T.ノダ、H.オガワ(Ojawa)、N.ノマ、及びY.シロタ、Appl.Phys.Lett.70,(6)699−701(1997);S.バン・スライケ(Van Slyke)、C.チェン(Chen)、及びC.タング(Tang)、Appl.Phys.Lett.69,15,2160−2162(1996);及び米国特許第5,061,569号。
【0029】
結晶又は多結晶形のものに対してガラスとして存在する有機材料は、OLEDの有機層に用いるのに望ましい。なぜなら、ガラスは一層大きな透明性を与えると共に、材料の結晶形の薄膜を製造する場合に典型的に生ずる多結晶材料と比較して、優れた全電荷キャリヤー特性を生ずることができるからである。しかし、有機層の熱誘発変形により、もしガラス有機層がそのTgより高く加熱されると、OLEDの壊滅的な不可逆的失敗をもたらすことがある。更に、ガラス有機層の熱誘発変形は、Tgよりも低い温度で起きることがあり、そのような変形の速度は、変形が起きる温度とTgとの差に依存する。結局、OLEDの寿命は、装置がTgより高く加熱されていない場合でも、有機層のTgに依存する。その結果、OLEDの有機層に用いることができる高いTgを有する有機材料が必要である。
【0030】
OLEDのHTLに用いられる最も一般的なホール輸送材料は、ビフェニル架橋ジアミンである、化学構造:
【0031】
【化3】
【0032】
を有するN,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−1,1′ビフェニル−4,4′−ジアミン(TPD)である。この物質は、良好なホール易動度を有し、簡単な単一ヘテロ構造OLED中でアルミニウム トリス(8−ヒドロキシキノリン)へ効果的にホールを移動させる。しかし、TPDは167℃の融点を有し、65℃のガラス転移温度を有する。もしTPDを用いて製造した装置を65℃のガラス転移温度より高く加熱すると、壊滅的な不可逆的破壊が起きる。HTLのガラス転移温度を高くするために、幾つかのグループがTPDの基本的構造に対する異なった修正構造を開発した。ナイトウ(Naito)等;トキトウ(Tokito)等;シロタ等;ノダ等(Adv.Mater.);ハン(Han)等;ノダ等(Appl.Phys.Lett.);バン・スライケ等;及び米国特許第5,061,569号。これらの研究は150℃位いの高いTg値を有する材料をもたらしているが、彼らは、或る構造変更がTgを上昇させるのに、他の変更は全くTgに影響を与えないか、又はTgを低くすることさえあるのか理解するに至っていない。更に別の変更は、ガラス転移温度を全く持たない材料、又はHTLで用いるのに適した性質の組合せを持たない材料を生ずることがある。例えば、TPDのアミン基をカルバゾール基で置き換えて、化学構造:
【0033】
【化4】
【0034】
を有する4,4′−ジ(N−カルバゾール)ジフェニル(CBP)を生じさせると、融点が285℃まで上昇する。しかし、この材料はガラス転移を示さない。TPDの基本的構造を更に変化させると、Tg値が一層高く上昇するが、それら材料は屡々TPDよりも劣ったホール輸送特性を有し、即ち、これらの高温材料を用いて作ったOLEDは、TPDに比較してOLEDに貧弱なデバイス特性を与える。
【0035】
米国特許第5,061,569号明細書には、少なくとも二つの第三級アミン部分を有し、更にその第三級アミン窒素原子に結合した少なくとも二つの融合芳香族環を有する芳香族部分を含むホール輸送材料が記載されている。そこに記載されている広範な種類の化合物によって包含される多数の化合物の中で、米国特許第5,061,569号は、高いガラス転移温度を有する化合物の選択の仕方を記載していない。例えば、ナフチル誘導体は安定なガラスを作らない。一つのそのような分子は、化学構造:
【0036】
【化5】
【0037】
を有する4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)である。本発明者の測定ではα−NPDは100〜105℃のTgをもち、それはTPDの65℃のTgよりも実質的に高い。この材料は優れたホール伝導特性を有し、100〜105℃のTgは約65℃のTPDのTgよりも高い。NPDを用いて作ったOLEDは、TPDを用いて作ったものに非常に似た電気的性質を有する。しかし、構造:
【0038】
【化6】
【0039】
を有する4,4′−ビス[N−(2−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(β−NPD)は、一般にα−誘導体よりも実質的に低いTgを有すると理解されてきた。明らかにこのα−誘導体とβ−誘導体との意図的に低い異常な差のために、OLEDのホール輸送材料としてβ−誘導体を用いる報告は知られていなかった。
【0040】
もしOLEDが従来法の化合物に匹敵するルミネッセンス特性を依然として与えながら、改良された温度安定性を有するガラス状電荷キャリヤー材料から製造することができることが望ましいであろう。ここで用いられている用語「電荷キャリヤー層」とは、二重ヘテロ構造を有するOLEDのホール輸送層、電子輸送層、又は別の発光層を指す。更に、特に、高いガラス転移温度を有するガラス状電荷キャリヤー材料を特徴とする、改良された温度安定性を有するそのようなガラス状電荷キャリヤー材料を選択し、製造するための方法を有することは有用であろう。
【0041】
更に、材料のTgとホール輸送特性との間には一般に逆の関係にあり、即ち高いTgを有する材料は、一般にホール輸送特性が良くない。良好なホール輸送特性を有するHTLを用いることにより、一層高い量子効率、一層低いOLEDを通る抵抗、一層高い電力量子効率、及び一層大きなルミネッセンスのような望ましい性質を有するOLEDが得られる。従って、大きいホール易動度及び高いガラス転移温度を有するHTLが要求されている。
【0042】
(本発明の利点及び要約) 本発明は、半導体有機層と低抵抗接触した電気伝導性非金属層からなるカソードに関する。
【0043】
本発明は、実質的にどんな型の光電子装置にでも用いることができる高度に透明な非金属カソードに関する。
【0044】
特に、本発明は、例えば、OLEDに用いることができる高度に透明な非金属カソードに関し、それらは半透明な金属カソードに匹敵する電子注入特性を有し、然も、少なくとも約85%まで、或は更にそれより高い光透過率を有する。
【0045】
更に特に、本発明は、非金属カソードを有する高度に透明な有機発光装置(OLED)に関する。
【0046】
別の態様として、本発明は、非金属カソードとしての機能を果たすITOのような無機半導体材料を有するOLEDに関する。
【0047】
更に別の態様として、本発明は、非金属カソードを有する有機半導体レーザーに関する。
【0048】
本発明の更に別の態様として、OLEDは、OLEDのカソードからルミネッセンス領域への電子の注入及び移動を促進することができ、更にカソード層の堆積中に下の有機層を損傷しないように保護することができる有機保護層と接触した非金属カソードを有する。この有機保護層は、装置のルミネッセンス領域中の電子輸送層と直接接触していてもよく、或はこれら二つの層の間に、OLEDのルミネッセンス領域への電子の輸送を更に促進する付加的電子輸送層が存在していてもよい。
【0049】
本発明の更に別な態様として、本発明は、半導体有機層と低抵抗電気接触した電気伝導性非金属層を有するカソードを形成することを含むカソード製造方法に関し、この場合その形成には、電気伝導性非金属層と半導体有機層との間に、その電気伝導性非金属物質を半導体有機層と低抵抗電気接触させる領域を形成する工程を有する。
【0050】
更に、本発明は、非金属カソードを有する有機発光装置を製造する方法に関する。
【0051】
本発明は、更にエレクトロルミネッセンスを発生させるためのヘテロ構造を有する有機発光装置(OLED)に関し、この場合そのヘテロ構造は、少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を持つ化合物を含む電荷キャリヤー層を有し、その電子輸送部分は、Al、Ga、又はInのような第III族金属に配位した2−メチル−8−キノリノラト リガンドである。ホール輸送部分はホール輸送アミン部分である。そのようなホール輸送アミン部分の一つの例はトリアリールアミン誘導フェノキシドである。従って、その化合物は、例えば、電子輸送部分としてAlに配位した二つの2−メチル−8−キノリノラト リガンド及びホール輸送部分として一つのトリアリールアミン誘導フェノキシドを有する。
【0052】
少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を有する化合物を含む電荷キャリヤー層は、単一ヘテロ構造のETLのような発光層でもよく、又は二重ヘテロ構造の別の発光層でもよい。この化合物は、OLEDのETLとカソードとの間に配置された電子注入促進層のような、カソードからETLへの電子の注入を促進するか、又はOLEDのHTLとアノードとの間に配置された、アノードからHTLへのホールの注入を促進するホール注入促進層のような、注入促進層として用いることもできる。
【0053】
本発明は、更に大きなホール易動度を有するETLを与え、それによりホールを単一ヘテロ構造のHTL/ETL界面から遠く移動させ、最終的にETLの大きな体積に亙って電子と再結合させることができる。この特徴はOLEDの寿命を増大すると考えられる。
【0054】
本発明は、更にOLEDの発光層中のドーパントとして用いることができる或る種類のアズラクトン関連化合物に関する。
【0055】
特に本発明は、原色の一つの波長領域中に中心を持つ帯域中でエレクトロルミネッセンスを生ずる種類のアズラクトン関連化合物から選択されたドーパント化合物に関する。
【0056】
更に、本発明は、エレクトロルミネッセンスを生ずるヘテロ構造を有する有機発光デバイス及びその有機発光デバイスを製造する方法に関し、この場合そのヘテロ構造はアズラクトン関連化合物を含む発光層を有する。
【0057】
本発明は、更にデバイスからの発光が燐光減衰過程によって得られるOLED及びそのOLED製法に関し、この場合燐光減衰速度は、表示デバイスの必要条件を満たすのに充分な速さを持っている。
【0058】
特に、本発明は、更に励起子一重項又は三重項状態からのエネルギーを受けて、そのエネルギーを燐光放射線として発光することができる材料を有するOLEDに関する。
【0059】
本発明の利点の一つは、燐光減衰過程が励起子三重項状態のエネルギーを利用していることであり、そのエネルギーは無発光エネルギー転移及び緩和過程によりOLED内で浪費されるのが典型的なものである。本発明は、更に高度に飽和した赤色発光を生ずることができる材料から構成されてOLEDに関する。特に本発明のOLEDは、トリス−8−ヒドロキシキノリン−アルミニウム(Alq3)からなる電子輸送層中でPtOEPをドープした場合に、640nm近くにピークを有する狭い発光帯域を生ずる化合物である白金オクタエチルポルフィン(PtOEP)から構成することもできる。そのような発光は高度に飽和した赤色発光として認められる。
【0060】
PtOEPドープOLEDの別の利点は、そのようなOLEDが、装置を数日間周囲の環境条件に曝した場合、従来の装置に匹敵する安定性、特にTPPドープデバイスと比較して確実に一層長い保存寿命安定性を有することである。
【0061】
本発明は、更に燐光ドーパント化合物がスペクトル範囲で高度に飽和した赤色発光を生じ、そのため人間の目の視感反応機能が、PtOEPドープOLEDと比較して著しく増大した材料及びOLEDの製法に関する。
【0062】
特に、本発明は、更にOLEDで用いられる燐光ドーパント化合物を選択する方法に関し、この場合その燐光化合物はPtOEPのような化合物の四重対称性と比較して減少した対称性を有する白金ポルフィン化合物になるように選択することができ、その結果、飽和赤色として認められるスペクトル範囲中に依然として入りながら、目の感度曲線のピークの方へ移行した発光ピークを有する化合物を得ることができる。
【0063】
更に、本発明は、ガラス構造を有するホール輸送層を持つエレクトロルミネッセンスを発生するためのヘテロ構造を有する有機発光デバイスに関する。ホール輸送層は、対称性分子構造を有する化合物から構成することができる。対称性分子の末端基は、二つのアレンの間の飽和結合を有するホール輸送アミン部分である。
【0064】
本発明の目的及び利点は、開示する本発明の詳細な説明から当業者には更に明らかになるであろう。
【0065】
(好ましい態様についての詳細な説明) 本発明を、本発明の特別な好ましい態様について次に詳細に記述するが、これらの態様は例示のための例としてのみ与えられており、本発明がそれらに限定されるものではないことを理解すべきである。
【0066】
本発明は、就中、半導体有機層と低抵抗電気接触を形成する電気伝導性非金属層からなる新規なカソードに関する。そのようなカソードは、広範な範囲の電気デバイスで用いることができる。特に、本発明のカソードは高度に透明な材料から作られており、そのようなカソードはOLED、太陽電池、光検出器、レーザー及び光トランジスタのような有機光電子デバイスで用いるのに特別な利点を有する。S.R.フォレスト(Forrest)、Chem.Rev.97,1793(1997)。電子輸送材料からなる少なくとも一つの電子輸送層(ETL)及びホール輸送材料からなる少なくとも一つのホール輸送層(HTL)を有する光電子デバイスでは、カソードはデバイスのETL側上の電極として同定され、アノードはそのデバイスのHTL側上の電極として同定される。OLEDでは、例えば、カソードはETL中へ電子を注入する電極として言及され、アノードはHTL中へホールを注入する電極として言及されている。ホールをHTL中へ注入するのは、HTLから電子を取り出すのと同等である。
【0067】
OLEDの各電極は、電極がアノード又はカソードとしての機能を夫々果たすことにより、隣接するHTL又はETLと直接接触した層として存在するのが典型的である。別法として、付加的有機層をアノードと有機HTLとの間に存在させてもよいことが同時出願の米国特許出願Serial No.08/865,491に記載されている。保護層又はホール注入促進層として言及されているそのような付加的層は、電極層の堆積中に下にある有機層を保護するための保護層として且つ(又は)アノードのホール注入効率を増大するための促進層としての機能を果たすことが開示されている。例えば、Serial No.08/865,791には、例えば、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)、又は銅フタロシアニン(CuPc)のようなフタロシアニン化合物、又はPTCDAの保護層は、有機HTLの上に堆積することができ、後のITOアノード層のスパッタリング蒸着中の有機層を保護することができることが開示されている。Serial No.08/865,491には、更にその保護層が、或る場合にはホール注入アノードのホール注入効率を向上することが記載されている。
【0068】
或る金属によって与えられる大きな電気伝導度及び低い仕事関数のために、カソード/有機層界面を有するOLEDのような特に有用な光電子デバイスは、現在まで、そのような光電子デバイスの性能が金属カソード層の大きな反射性によって悪影響を受ける傾向があるにも拘わらず、光放射線の適度な吸収と同様、本来大きな反射性を有する金属カソード材料から構成されてきた。高度の透明性が望まれるOLEDのような光電子デバイスでは、半透明の金属カソード層は非常に薄い金属層を用いて製造されるのが典型的である。それにも拘わらず、金属カソード材料の大きな電気伝導度に本来関係している金属の大きな反射性は、依然としてデバイスの全性能、例えば全デバイスについての量子効率を減少させる重要な損失を起こしている。
【0069】
本発明の驚くべき態様の一つは、電気伝導性非金属材料が、有機層と低抵抗電気接触を形成することができることが発見されたことであり、この場合、今後「カソード/有機層界面」と呼ぶ電気伝導性非金属層/半導体有機層界面が、非金属カソード層からカソード/有機層界面の半導体有機層を通って、実際上有用な有機光電子デバイスの隣接するETL中へ電子を効果的に注入することができる。従って、カソード/有機層界面の半導体有機層は、ここでは別の言い方で、電子注入界面層と呼ぶ。
【0070】
特に有用な有機光電子デバイスで用いることができる低抵抗電気接触と言う言葉によりここで意味されることを具体的に述べると、そのような接触とは、カソード/有機層界面を通る電圧降下が、デバイスの残りの部分を通る全電圧降下よりも大きくならないこと、即ち、カソード/有機層界面を通る電圧降下が、全デバイスを通る全電圧降下の約50%より小さいような接触である。カソード/有機層界面を通る電圧降下は、全電圧降下の約30%より小さいのが好ましい。
【0071】
電気伝導性非金属層は、広い反射性の非金属材料から選択することができ、ここで用語「非金属」とは、材料が化学的に結合していない形の金属を含まないことを条件として、広い範囲の材料を包含することを意味している。金属がその化学的に結合していない形で存在する場合、単独又は合金のように一種以上の他の金属との組合せになっている場合、その金属は、別の言い方として金属状態で存在しているものとして、又は「遊離金属」として言及することができる。本発明の非金属カソードは、時々本発明の一人以上の発明者により「金属を含まないカソード」として呼ばれることがあるが、この場合その用語「金属を含まない」とは、明らかに化学的に結合していない形で金属を含まない材料を包含することを意味するものである。そのような「非金属」又は「金属を含まない」材料は、「金属代替物」と呼ぶこともできる。ここで用いられる用語「金属代替物」とは、通常の定義内で、金属ではないが、適当な前後の関係で金属に似た性質を有する材料を指す。電極のための一般に用いられている金属代替物は、広いバンドギャップの半導体、例えば、インジウム錫酸化物(ITO)錫酸化物(TO)及びガリウム・インジウム・錫酸化物(GITO)のような透明伝導性酸化物が含まれる。特にITOは、約320nmより大きな波長に対しそれを透明にする約3.2eVの光学的バンドギャップを有する高度にドープした縮退n+半導体である。他の電極材料は、透明伝導性重合体ポリアナリン(PANI)及びその化学的関連物である。
【0072】
本発明は、金属又は化学的に結合していない形で存在している金属又は金属合金を含まない、即ち、遊離金属を含まないことを特徴とする非金属カソード材料に関するが、カソード材料は低い含有量で遊離金属をその金属状態で含んでいることがあっても依然として本発明の範囲及び本質内に入ることは理解されるべきである。即ち、好ましいカソード材料は金属状態の遊離金属を含まないことが現在目的とされたり或は予想されたりすることはないが、本発明の範囲を単に回避しようとして、或は現在未だ知られていない利点を与えるためでも、わざと低レベルの金属を添加することは、依然として本発明の範囲及び本質内に完全に入るものである。従って、本発明の非金属カソード材料は、効果的に遊離金属を含まない材料を包含することを特徴とし、この場合遊離金属を効果的に含まない材料は、それに対応して温度が絶対0°の方へ低下するにつれて減少する比抵抗を有する。非金属材料の同時に存在する性質は、遊離金属中に存在する部分的に占められた電子伝導帯域が欠如されているために、実際上検出可能な光学的反射を殆ど示さないことである。
【0073】
本発明の別の驚くべき特徴は、特許請求したカソードの代表的具体例を、例えば、OLEDに用いると、非金属カソード材料が、典型的には低仕事関数の金属によって与えられるフェルミエネルギー準位を持たないにも拘わらず、カソードは電子を隣接する有機層中に効果的に注入することができることである。そのような効果的な電子注入は、電気伝導性非金属層と半導体有機層との間のカソード/有機層界面では電子注入に対する大きな障壁が予想される事実にも拘わらず起きる。従って、本発明は、更に電子注入に対するそのような障壁を効果的に減少させる方法にも関する。
【0074】
特に、ここに開示するように本発明の代表的態様では、カソード/有機層界面を通る電子流のために低抵抗電気接触を生成するための本発明の方法は、カソード/有機界面の半導体有機層の表面又はその近くに、従って、非金属カソード材料と半導体有機材料本体との間に損傷領域を与えることを含む。この損傷領域は、電子輸送のための高密度表面状態、即ち欠陥状態を生じさせるようなやり方で形成する。これらの表面状態、即ち欠陥状態は、直接には検出されておらず、実際に容易には直接観察することはできないが、これらの表面状態の存在は、カソード/有機層界面を通る低抵抗電気接触により間接的に証明されるように、電子輸送に対する実質的に低下した障壁を説明するのに必要であると考えられる。
【0075】
特に、非金属カソード材料中の伝導電子のエネルギーレベルと、カソード/有機層界面の半導体有機層の本体中の伝導電子のエネルギーレベルとの間の中間のエネルギーレベルで表面状態は存在するものと考えられる。更に、表面状態の分布は、半導体有機材料と非金属材料との間に通常存在する電子流に対する大きな障壁にも拘わらず、カソード/有機層界面領域を通って効率的な電子輸送を行うことができるエネルギー及び物理的空間の両方で充分緻密になっていると考えられる。そのようなカソード/有機層界面を有する非金属カソードは、従って例えば、OLEDの隣接ETL中へ電子を注入するための大きな効率を有することが見出されている。
【0076】
更に、電気伝導性非金属層としてITOが用いられ、電子注入界面層としてZnPc又はCuPcのようなフタロシアニン化合物が用いられている本発明の代表的な態様では、有機層の上にITOを堆積した場合だけ低抵抗電気接点が形成され、有機層をITO層の上に堆積した場合には形成されない。従って、本発明の更に別な特徴は、カソード/有機層界面を形成するのに好ましいITO及びZnPc又はCuPc化合物を用いた場合、本発明は、特に低抵抗電気接触をもたらすITO堆積速度及びフタロシアニン厚さを用いてフタロシアニン層上に非金属ITO層を堆積したカソードに関することである。表面で起きる損傷の程度を制御するようにITOスパッター蒸着工程を適切に制御することにより、希望の低い抵抗を有するカソード/有機層界面を生成させることができる。本文中別の所で述べたように、低抵抗電気接点により証明されるような電子輸送に対する低下した障壁は、有機層の表面又は表面近くに高密度の表面状態により与えられるものと考えられる。電気伝導性非金属層と半導体有機層との間の低抵抗接触を有するカソードを形成するために高密度の表面状態を導入する工程を含む更に別の方法も、本発明の範囲及び本質内に完全に入る。
【0077】
本発明のこの特徴、即ち、低仕事関数金属材料に匹敵するが、金属材料の高反射性を持たない極めて効率的な電子輸送カソード/有機層界面を形成することができることは、有機光電子デバイスで用いられていた従来既知のカソード材料では持つことのできない独特の有利な性質の組合せであると考えられる。従って、本発明は、ここではその特に代表的な態様に関連して記述されているが、本発明の範囲及び本質は、半導体有機層と低抵抗電気接触を形成する電気伝導性非金属層からなるどのようなカソードでも包含するものと考えられる。更に、電気伝導性非金属材料と半導体有機層との間の電子流に対する障壁を実質的に減少させる充分高い密度を有する表面状態を形成することを含むどのような方法でも、本発明の範囲及び本質内に完全に入るものと考えられる。電子流に対する障壁の実質的減少は、ここで定義するように、カソード/有機層界面の電気伝導性非金属層と、半導体有機層との間の低抵抗電気接触界面の形成をもたらす減少としてここでは特定化する。従って、本発明は、界面の一方の側に電気伝導性非金属材料、その界面の反対側に半導体有機材料を有する界面を形成することを含むカソード製造方法において、その形成工程が、電気伝導性非金属材料が半導体有機材料と低抵抗電気接触を形成するカソードとしての働きをすることができるように、電気伝導性非金属材料と半導体有機材料との間に中間領域を形成する工程を含む製造方法に関する。
【0078】
金属材料に固有の極めて反射性の性質を持たない電気伝導性非金属カソード材料を用いることにより、一般に、大きな光透過性が望まれるデバイス、特にOLEDのような光電子デバイスでのカソードとして用いるための高度に透明な材料を選択することができる特別な利点を与える。従って、本発明の更に別な特徴の一つは、OLEDのような光電子デバイスを、半透明金属カソードに匹敵する電子注入特性を持つ高度に透明な非金属カソードを用いて作ることができることである。全装置の最大透過率が約60〜70%になるのが典型的な最も薄い実際的半透明金属カソードと比較して、本発明の非金属カソードを用いて少なくとも約85%の光透過率を有するデバイスを製造することができる。
【0079】
本発明のカソードを製造するのに用いることができる電気伝導性非金属材料は、例えば、透明広バンドギャップ半導体、例えば、少なくとも1eVのバンドギャップ及び入射及び照射放射線について少なくとも50%の透過率を有する広バンドギャップ半導体であるように選択することができる。好ましい広バンドギャップ半導体には、ITO、酸化錫、又はガリウム・インジウム・錫酸化物(GITO)のような伝導性酸化物が含まれる。
【0080】
効率的な電子注入を生ずるようにITO層と組合せて効果的に用いることができる半導体有機材料は、次の性質を持つのが好ましい。
【0081】
1.後に記載するように、ITO層の堆積中のスパッタリングにより僅かに限定された損傷だけを与えるのに充分な化学的及び構造体安定性。フタロシアニン、ナフタロシアニン及びペリレンのような大きな平面状分子が代表的な例である。更に広がった共役二重結合(例えば、付加的に融合したベンゾ−、ナフタ−、アントラ−、フェナントレン−、ポリアセン等の基)を有するこれらの化合物の誘導体も用いることができる。重合体材料は或る環境下で存在していてもよい。
【0082】
2.層が、電子輸送層としての機能を果たすことができるようにするのに充分な電子易動度;少なくとも10−6cm2/V秒の値を有するキャリヤー易動度を有する電気輸送材料は、一般に材料が電子輸送層としての機能を果たすのに充分であると考えられているが、実質的に一層高い値が一般に好ましい。この場合も、フタロシアニン及び或るペリレンのような大きな平面状分子が代表的な例である。
【0083】
3.イオン化電位(IP)とHOMO/LUMOギャップエネルギー(最高占有分子軌道と最低非占有分子軌道との間のエネルギーギャップ)との間の差、即ち、電子注入界面層に用いられる材料の「IP−HOMO/LUMOギャップエネルギー」は、電子が注入されるフイルムのIP−HOMO/LUMOギャップエネルギーに等しいか又は好ましくはそれより小さいようなものである。このガイドラインは、厳密に従わなければならないような制約と考えられるものではなく、大略従うように意図されたものである。例えば、このガイドラインからの約0.5eVの僅かな偏倚は、材料の或る組合せについては許容することができる。このガイドラインの使用は、接触フイルム(例えば、Alq3)中への電子流に対するエネルギー障壁が形成されるのを防ぐのに役立つ。
【0084】
更に一層特別には、本方法は電気伝導性非金属層としてITOを、電子注入界面層としてCuPc又はZnPcのようなフタロシアニンを用いることを含んでいる。この場合、電気伝導性非金属ITO層は、CuPc又はZnPcの電子注入界面層を構成する有機保護層にスパッタリング蒸着される。損傷の程度を制御するように、約100Å〜約300Åの厚さに蒸着されるまで、約1〜約10Å/分の比較的低い初期蒸着速度でITOを有機層の上にスパッターする。後で更に詳細に記述するように、そのような電気伝導性非金属層/半導体有機層界面は、光電子デバイスの他の種類のものに対するのと同様、OLEDで用いるための低抵抗電気接点を与えることができる。
【0085】
従って、本発明は、特に非金属カソードを用いた新しい種類の高度に透明な有機発光デバイス(OLED)に関する。非金属カソードを利用したOLEDは、非常に低い反射性をもち、多層有機構造体について達成される理論的最大値に近い大きな透明性を有する。そのようなOLEDの低反射性は、特に高コントラスト表示用途で用いるのみならず、積層有機発光デバイス(SOLED)で微細空洞効果を除去するのに用いられる特別な利点を有する。これらの低抵抗非金属カソードを用いたOLEDは、信頼性のある高解像力天然色平面パネル表示器、「ヘッドアップ(heads up)」表示器、及び有機系レーザーに特に有用であると予想される。
【0086】
図1A2aに示したように、本発明の代表的なの態様として、透明ホール注入アノードとして働くインジウム錫酸化物(ITO)フイルムで予め被覆したガラス基板の上にTOLEDを堆積する。例えば、TOLEDは、非金属カソード1、電子注入界面層6、電子輸送層2、ホール輸送層3、アノード層4、及び基板5を有する。ホール輸送層及び電子輸送層を堆積した後、例えば、銅フタロシアニン(CuPc)の薄膜を堆積することにより電子注入界面層を付加し、次に低電力無線周波スパッターしたITOをかぶせる。この第二のITO層は、この装置のカソードとして働く。或る場合には、ITOスパッタリング工程中、下の有機層に対する損傷を防ぐ保護層としての機能を果たす外、CuPc層はITO層と一緒になって、隣接する電子輸送層へ電子を送るための電子注入領域としての働きもする。例えば、4,4′−ジ(N−カルバゾロ)ジフェニル(CBP)の付加物中間電子輸送層を、図1A2bに示したように、第一電子輸送層とCuPc層の間に存在させてもよい。中間的電子輸送層は、非金属カソード層と低抵抗電気接触している電子注入界面層と、ホール輸送層と接触している電子輸送層との間に横たわる。特に、図1A2bのOLEDは、非金属層1、電子注入界面層6、中間電子輸送層7、電子輸送層2、ホール輸送層3、アノード層4、及び基板5を有する。
【0087】
金属カソード層が存在しないため、ここに記載する代表的Alq3系TOLEDは、前方及び後方散乱方向にほぼ同じレベルで光を発し、全外部量子効率は約0.3%になる。これらのデバイスは可視域で80%以上の透過率を有する。本発明により製造されたOLEDの反射及び吸収特性、電流・電圧、輝度・電流、及びエレクトロルミネッセンススペクトルは、ITOをかぶせたMg:Agの薄膜からなる一層反射性のカソードを用いた従来のTOLEDに少なくと匹敵するか、或る点ではそれより優れた性能特性を示している。
【0088】
例えば、図1A3に示したTOLEDの結果と、図1A4に示した結果とを比較することにより分かるように、本発明によるTOLEDは、180時間で光出力の僅か約2倍の低下を示しているのに対し、従来のTOLEDは同じ時間間隔で光出力の約4倍の低下を起こしている。図1A5の結果は、Cu(CuPc)及びZn(ZnPc)の両方のフタロシアニンを電子注入界面層として用いることができることを示しているが、図1A6の結果は、CuPcデバイスが著しく一層大きな量子効率を有することを示している。図1A8の結果と図1A9の結果とを比較すると、本発明により作られたOLEDのI−V特性の安定性は従来のデバイスに匹敵するものであることを示している。図1A7に示した結果は、本発明により作られたOLEDの全光透過率は、CuPcのQ−バンド吸収構造特性を示すスペクトル部分を除き、OLEDで達成される透過率の理論的最大値に近いことを示している。このデバイスの反射スペクトルは、ガラス/空気及びITO/空気界面によって限定される理論的最小値に近い。反射防止層は、この反射を更に無視できる値にまで減少することができる。
【0089】
ITO層と接触した電子注入界面層は、約15〜120Åの範囲の厚さを有する。例えば、図1A10及び1A11は、CuPcが電子注入界面層として用いられる場合には、約30Å〜約120ÅのCuPc注入層厚さを有するデバイスは、匹敵する性能特性を生じたことを示している。図1A10及び1A11に示したデータを集めるように製造したデバイスも、ITOアノード層とホール輸送層との間に50Åの厚さを持つCuPc層を含んでいた。ITOアノード層と接触したこのCuPc層は、1997年5月29日に出願された係属中の米国特許出願Serial No.08/865,491号に記載されているように、ホール注入促進層として働く。
【0090】
本発明の範囲を代表する更に別の例として、非金属カソード及び同じ実験で成長させた慣用的TOLEDを有する別の典型的な透明有機発光デバイスの電流・電圧(I−V)特性を図1A12に示す。図1A12に示した結果を得るように用いたTOLEDは、図1A13に示されており、この場合非金属カソード1はITOであり、電子注入界面層6はCuPcであり、電子輸送層2はAlq3であり、ホール輸送層3はα−NPDであり、アノード層4はITO及び基板5であった。このデバイスはITOアノードとHTLとの間に付加的CuPc層8を持っていた。「スイッチオン電圧」、VT、の上及び下に二つの明確な作動領域が観察される。VTより下のトラップのない空間電荷限定輸送は、I∝Vm−1に従う。VTの上では、電流はI∝Vm−1に従いトラップされた電荷限定されている。P.E.バローズ、S.R.フォレスト、Appl.Phys.Lett.64,2285(1994)、P.E.バローズ、Z.シェン、V.バルビック、D.M.マッカーティー(McCarty)、S.R.フォレスト、J.A.コロニン(Cronin)、及びM.E.トンプソン、J.Appl.Phys.79,7991(1996)。ITO/Mg:Ag接点のものと比較してITO/CuPcが僅かに効率の低い注入特性は、TOLED(4.2V)及び非金属カソードを有するTOLED(5.2V)についてVTの名目上の差に反映されている。カソードのCuPcをZnPcで置き換えた場合に同様なI−V特性が得られることは、良好な電子注入接触を形成するのにそれらの同等性を示している。しかし、CuPcをPTCDAで置き換えると、VTの20Vまでの著しい増大が起きる。
【0091】
電流の関数としてデバイスの表面及び底面の両方から発する光学的出力の合計が、図1A12の場合と同じデバイスについて図1A14に示されている。デバイスの全外部量子効率は、η=(0.38±0.05)%で同様である。それらの10mA/cm2でのそれらの輝度は〜200cd/m2であり、図1A14に示した最大駆動電流に相当して、10mA/cm2で2000cd/m2まで増大する。非金属カソードを有するTOLEDの表面から発する出力対基板底面から発する出力の比は、r=1.0±0.05である。
【0092】
非金属カソードを有するTOLED中のCuPcと他の有機材料の複素屈折率の間に比較的大きな差があるため、図1A15に示すように、デバイス底面に対し、表面からの測定エレクトロルミネッセンススペクトル出力には幾らかの広がりがある。デバイスの各層について知られている複素屈折率を用い、放射二局性cm6分子が発光層中に均一に分布していると仮定して、rを波長(λ)の関数として計算した。基板からの発光をr(λ)をかけることにより頂部表面スペクトルに対する適合が得られた。その適合は、標準化した測定出力スペクトル(図1A14)によく一致し、計算と実験との間の残余の不一致は、CuPcの分散を無視したことによる。
【0093】
CuPc又はZnPcカソードを用いたデバイスのI−V特性は同様であるが、ZnPcデバイスのηは、CuPcデバイスのものよりも30%低い。しかし、CuPcとZnPcカソードとは明確に異なって、カソードにPTCDAを有するデバイスは、CuPcのそれの僅か1%の量子効率しか持たない。このことは、PTCDAカソードを用いたETL中への電子注入は極めて低いことを示しており、I−Vデータと一致している。
【0094】
TOLEDから半透明金属フイルムを除外すると、全光透過率が著しく増大する結果になる。このことは、図1A17に示したように、TOLED配列及び従来のTOLED配列を有する非金属カソードを用いたデジタル再生写真から容易に分かる。それら配列は、コントラストのため黒色ドットのグリッドを有する白色バックグラウンドの上に配置されている。これらの装置は下から照らされ、従来のTOLEDについては約0.2〜0.4cmの矢印により、非金属カソードを有するTOLED配列については約1.3〜1.6cmの矢印で夫々示されている。図1A17の写真は、本発明の非金属カソードが電極に金属が存在していないため無性であるのに対し、従来のTOLEDは金属カソードのため淡い灰色の外観を有することを示している。非金属カソードを有するTOLED配列は、図1A7に示された反射防止被覆のないデバイスの光学的透明性のデジタル測定が、従来のOLEDよりも35%の増大に相当する0.85±0.05の透過率を示す場合にのみ、検出することができる。非金属カソードを有するTOLEDの反射及び吸収も図1A7にプロットされており、この場合吸収の主な原因はCuPcのQバンドによる〔B.H.シェチマン(Schechtman)及びW.E.スパイサー(Spicer)、J.of Mol.Spec.33,28(1970)〕それはλ=620nm及び665nmの所にピークを有する。
【0095】
本発明がどのような作動するかについての理論に束縛されるものではないが、ITO堆積の初期段階中、ここでカソード/有機フイルム界面の損傷層として言及している所の損傷誘発状態が生ずるものと考えられる。仕事関数の低い金属のフェルミエネルギーを有するETLの最低非占有分子軌道(LUMO)のエネルギー帯の一致を必要とする高効率電子注入電極についての従来の理解〔C.W.タング(Tang)及びS.A.バンスライケ(Van Slyke)、Appl.Phys.Lett.51,913(1987)〕とは対照的に、ここではその損傷層は、典型的には低仕事関数金属によって与えられる一致するフェルミエネルギー準位を持たない材料からなる非金属カソードについて改良された電子注入特性を与える原因になっていると考えられる。
【0096】
高度に透明な非金属カソードの改良された電子注入特性は、図1A16の提案されたエネルギーバンドの図を参照して理解することができる。HOMO距離への真空レーバーとして定義されているイオン化電位(IP)、及び光学的エネルギーギャップ(Eg)は、A.ラジャゴパル(Rajagopal)、C.I.ウー(Wu)、及びA.カーン(Kahn)、Mat.Res.Soc.の1997年秋季会議、論文J1.9;及びK.セキ(Seki)、Mol.Cryst.Liq.Cryst.171,255(1989)からとった。CuPcのイオン化電位(IP)は、ITOの仕事関数とα−NPDのIPとの間に存在するので、CuPcはHELへのホール注入に対する障壁を低下する。これとは対照的、ITO/CuPc界面では、この電極が本発明に従って製造される限り、ここで効率的に電子を注入すると記載されているにも拘わらず、電子注入に対し大きな障壁(1.6eV)が存在する。この明らかな矛盾は、ITOをかぶせたPTCDAからなるアノードを用いた効率的ホール注入についての前の報告と一致しているS.R.フォレスト、L.Y.リュー(Leu)、F.F.ソー(So)、及びW.Y.ヨーン(Yoon)、J.Appl.Phys.66,5908(1989)。この場合、ホール注入はITOからPTCDAへの障壁が2.1eVであるにも拘わらず達成される。イオン化エネルギー(HOMO距離への真空レベルとして定義されている)の値は、A.ラジャゴパル、C.I.ウー、及びA.カーン、J.Appl.Phys.83,2649(1998)及びK.セキ、Mol.Cryst.Liq.Cryst.171,255(1989)からとった。これらの著者は、図1A4に示したように、真空レベルは有機ヘテロ接合の間では平らになっていないであろうと言うことを示唆しているが、このことは我々の結論を変えるものではなく、従って簡単にするため省略した。
【0097】
大きなエネルギー障壁が存在する中での効率的エネルギー注入は、その障壁が電極堆積/形成工程により効果的に減少することを示唆している。ITOをCuPc表面上にスパッターすると、発熱反応によりCuはCu−O結合を形成し〔F.F.ソー及びS.R.フォレスト、J.Appl.Phys.63,442(1988)〕、それにより図1A16に示したように、高密度の中間ギャップ又は表面状態を生ずる。これらの状態は、ITO界面から遠ざかると密度が減少するが、注入された電子により容易に乗り越えられる小さなエネルギー「ステップ」を与える。これらのデータ及び得られるモデルは、低仕事関数金属が効率的電子注入には必要であると言う従来の示唆に対照的なものである。残留エネルギー障壁が、本発明の非金属カソードを持たないTOLEDと比較して、非金属カソードを有するTOLEDの場合VTに僅かな増大がある一つの原因になっているであろう。
【0098】
損傷がCuPc層に限定されている場合にのみ、本発明の非金属カソードを生ずるのにそのような障壁が有効であると言う証拠は、60Åから30ÅへCuPc層の厚さを減少させることにより得られる。この厚さの減少は、非金属カソードを有するTOLEDの製造収率を約90%から40%へ同時に減少させる結果になる。製造収率は、製造及び試験された全デバイス数に対するショートしていない有効デバイスの比として定義されている。そのような収率は、10〜20の試験装置の試験母集団に基づいていた。これらの結果は、ITO/PTCDAの場合に示したように、CuPcの最初の数単分子層だけが低抵抗カソード/有機層界面で損傷されることを示唆している。CuPcが余りにも薄く作られると、スパッターされたITOが「突き抜け」て下のAlq3を損傷すると考えられる。実際、ITOはα−NPD又はAlq3に直接スパッターされ、この場合ITO層は夫々アノード又はカソードとして働くが、得られる収率は0に近くなる。
【0099】
ここでは、CuPc及びPTCDAに対する限定された損傷は、これら大きな平面状分子中の広がった共役電子軌道によるものと考えられる。スパッタリング中、活発な金属又は酸素原子がこれら表面分子の一つに衝突すると、衝突のエネルギーが分子π電子系の数多くの結合に亙って効果的に分布する。これとは対照的にAlq3又はα−NPDにはそれに匹敵するような大きなπ系は存在しない。そのような分子では、衝撃エネルギーは僅か数個の原子部位の中に局在し、それによって分子結合を切断する確率を増大する。CuPc及びPTCDAのような結晶分子系の平面状又は殆ど平面的な積層配列も、格子中の幾つかの隣接分子の間にエネルギーを消散させる働きもする。
【0100】
キャリヤー注入を促進する、活発な原子によって引き起こされた欠陥により演じられる役割に基づくこの仮説は、Alq3及びα−NPD層の順序を逆にした点を除き、図1A12に示したような透明非金属カソードを有するTOLEDを製造することにより試験した。ETLとHELの層を逆にしたこれらのデバイスでは、VTは二桁(〜10V)増大することが観察され、約10−3%の外部量子効率ηが、ITO/CuPc界面がホールをα−NPDに注入するのに優れていることが知られているけれども、測定された。従って、このデバイスの低い効率は、損傷層を持たないCuPc/ITO界面が電子をAlq3へ注入するのに効果的でないことの明確な証拠を与えている。従って、ITOの上にCuPcを低エネルギー堆積することは、電子注入に必要な界面中間ギャップ状態を生じないことが結論される。従って、カール(Karl)その他及びホワイトロック(Whitlock)等により製造されたITO層は、損傷層を生成させるように有機層上にITO層を堆積するのではなく、ITOの上に有機層を堆積することにより製造されているので、カールその他及びホワイトロックその他によるITO層は、それらカールその他又はホワイトロックその他の電極が太陽電池のカソードとして働く場合でも、本発明の向上した電子注入特性は生じないものと予想される。
【0101】
デバイス特性の非対称性は、非金属カソードを有するTOLEDに逆バイアスをかけた場合の非常に低い電流及びエレクトロルミネッセンスの欠如と一致している。この場合、電子は、ITOからアノードの損傷されていないCuPcへ行くのに1.6eVのエネルギー障壁を越えることができない。電子がCuPcへ一度び注入されると、それらは、その方向への電子輸送に対するエネルギー障壁が欠如しているためAlq3中へ輸送される。これとは対照的に、PTCDAからAlq3へは0.9eVの電子に対する大きなエネルギー障壁が存在する。この障壁は、PTCDAの電子易動度の低さと相俟って、PTCDAと接触しているITOカソードを用いたAlq3を基にしたデバイスの大きなVT及び低いηが観察される結果になる。しかし、この低い効率は、PTCDAを良好な低抵抗カソード/有機界面を作るのに用いることができないことを示唆するものではない。特に、これらの結果は、0.9eVの障壁がPTCDAとAlq3の間では高過ぎることを示しているだけである。LOMO/HOMOレベルを一致させるためのここに与えたガイドラインに従って、PTCDAを適当な隣接電荷キャリヤー層と適切に合致させることにより、効率的なITO/PTCDA界面を作ることができる。
【0102】
本発明の他の代表的OLEDの態様の一例として、非金属カソードは、電子輸送層とホール輸送層との間に薄いルミネッセンス層が存在する二重ヘテロ構造で用いることができる。
【0103】
電子輸送層が発光層である別の代表的OLEDの態様として、ITO層は電子注入界面層と接触しており、その界面層がエレクトロルミネッセンスを発生し、更にホール輸送層と直接接触している。この場合には、電子注入界面層で用いられている材料のIP−HOMO/LUMOギャップエネルギーは、隣接するホール輸送層の材料のIP−HOMO/LUMOギャップエネルギーにほぼ等しいか又はそれより小さいのが好ましく、更にホール輸送層の材料のイオン化電位が、電子注入界面層に用いられている材料のイオン化電位よりも大きいようなものになっている。
【0104】
ホール輸送層が発光層である本発明の代表的な態様として、ITO層が電子注入界面層と接触しており、その界面層がエレクトロルミネッセンスを生ずるホール輸送層と直接接触している。この場合、電子注入界面層で用いられている材料のIP−HOMO/LUMOギャップエネルギーも、隣接するホール輸送層の材料のIP−HOMO/LUMOギャップエネルギーにほぼ等しいか又はそれより小さいのが好ましいようなものになっている。しかし、この場合、ホール輸送層の材料のイオン化電位は、電子注入界面層に用いられている材料のイオン化電位よりも低い。
【0105】
このように、本発明を、ITO層が、Alq3のような電子輸送層と接触した電子注入界面層と接触している単一ヘテロ構造の場合について例示してきたが、本発明は、就中、ヘテロ構造が非金属カソードを持たない場合のエレクトロルミネッセンスを発生するためのヘテロ構造を有するOLEDにも関する。
【0106】
特に、本発明のOLEDは、単一ヘテロ構造として又は二重ヘテロ構造として製造することができるエレクトロルミネッセンス発生ヘテロ構造を有する。単一又は二重ヘテロ構造の有機薄膜の製造するための材料、方法及びデバイスは、例えば、米国特許第5,554,220号明細書(これは言及することによりその全てを本明細書に取り入れる)に記載されている。ここで用いられる用語「エレクトロルミネッセンスを発生するためのヘテロ構造」とは、順番にホール注入アノード層、ホール輸送層、電子輸送層、及びカソード層を有する単一ヘテロ構造を含むヘテロ構造を指す。付加的層(単数又は複数)が、これらの層の連続する対の一つ以上の間に存在していてもよい。例えば、二重ヘテロ構造の場合、別の発光層がホール輸送層と電子輸送層との間に含まれていてもよい。この別の発光層は、「薄いルミネッセンス」として特徴付けられるものでもよい。別法として、又は付加的に、アノード層とホール輸送層との間にホール注入促進層が存在していてもよい。
【0107】
ホール注入促進層は、或る場合には電子注入界面層で用いられているものと同じ材料、CuPcからなっている。夫々の場合、CuPc層はITO電極と直接接触しており、二つのCuPc層の間の区別は、或る場合にはそのCuPc層がアノードとして働くITO層と接触していることであり、別の場合には、ITO層がカソードとして働くことである。夫々の場合において、CuPc層は電荷キャリヤー及び界面層として働く。一方、ITOアノードと接触している場合、CuPc層はアノードからホール輸送層へホールを注入し、輸送するのを助け、他方ITOカソードと接触している場合、CuPc層はカソードから電子輸送層へ電子を注入し、輸送するのを助ける。どの場合でもCuPc層は、もし存在するならばITO堆積工程中の損傷から下の輸送層を保護する層としての機能も果たしている。ITO層がSOLED構造の電極として存在する場合には、ITOの両側の面は、夫々アノード及びカソードとして働く。
【0108】
アノード層又はカソード層が基板と接触していて、各電極が電気接点に接続されており、それら接点は装置を通って電圧を印加し、そのデバイスが電子輸送層又はホール輸送層からエレクトロルミネッセンスを発生するように作動させることができる。もしカソード層が基板上に堆積されているならば、デバイスは逆転、即ちIOLED構造を持つものとして言及することができる。エレクトロルミネッセンスを発生するヘテロ構造が、積層OLED(SOLED)の一部分として含まれているならば、個々のヘテロ構造の電極の一方又は両方が隣接するヘテロ構造の電極と接触している。別法として、SOLEDを駆動するのに用いられる回路により、積層OLEDの二つの隣接する電極の間に絶縁層が与えられてもよい。
【0109】
本発明は、金属カソード層ではなく非金属カソードを有するOLEDに関するが、本発明のOLEDは或る状況下では、例えば、SOLEDの一番上又は一番下のOLEDとして金属層を有するOLEDと組合せて用いてもよい。そのような場合、もしカソード層がMg:Agの金属カソード層であるならば、例えば、そのMg:Agカソード層を雰囲気による酸化から保護するためにAgの層からなる金属保護層が存在していてもよい。
【0110】
ここで言及する単一又は二重ヘテロ構造は、本発明を具体化したOLEDを、示した層を製造するために特定の材料又は順序に本発明を何等限定することなく、どのようにして製造するかを示すための単なる例として与えるものである。例えば、典型的にはヘテロ構造は不透明又は透明、堅いか又は可撓性、且つ(又は)プラスチック、金属又はガラス、特にポリエステルのような透明重合体、ガラス、サファイヤー、又は石英、又はOLEDの基板として用いることができる実質的にどのような他の材料からなっていてもよい基板を有する。
【0111】
本発明は、更にエレクトロルミネッセンス発生ヘテロ構造を有する有機発光デバイス(OLED)において、特にそのヘテロ構造が、少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を持つ化合物を含む電荷キャリヤー層を有し、その電子輸送層がAl、Ga、又はInのような第III族金属を配位した2−メチル−8−キノリノラト リガンドである場合のデバイスに関する。
【0112】
ここで用いる用語「電荷キャリヤー層」は、「ホール輸送層」(HTL)、「電子輸送層」(ETL)、又は二重ヘテロ構造(DH)を有するOLEDの場合には「別の発光層」を指す。少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を含む化合物を含む電荷キャリヤー層は、単一ヘテロ構造(SH)のETLのような発光層でもよく、或は二重ヘテロ構造の別の発光層でもよい。少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を含む化合物を含む電荷キャリヤー層は、OLEDのカソードとETLの間に配置された電子注入促進層のような非発光層でもよい。
【0113】
ここで用いられる用語「ホール輸送部分」とは、OLEDの層中に含まれている材料中に存在する場合、電圧を印加した時、ホールの伝導によりその材料が層を通る電気伝導を与えるようにする基を指す。ここで用いられる用語「電子輸送部分」とは、OLEDの層中に含まれる材料中に存在する場合、電圧を印加すると、電子の伝導によりその材料が層を通る電子伝導を与えるようにする基を指す。ここで用いられる用語「ホール輸送アミン部分」とは、ホール輸送部分であるアミン基を指す。そのようなホール輸送アミン部分は、二つのフェニル基(第III族金属とリガンド結合を形成するフェニル基の外に)に直接結合した窒素原子を有するのが典型的であり、この場合それら二つのフェニル基は一緒になって窒素を含む複素環、例えば、カルバゾール基を形成していてもよく、或はそれら二つのフェニル基は、互いに離れていてもよい。各フェニル基自身が更に別のフェニル基と融合し、窒素原子に結合していてもよく、例えば、1−ナフチル基又は2−ナフチル基として結合していてもよい。
【0114】
特に、本発明は、化学構造:
【0115】
【化7】
【0116】
(式中、A1及びA2は、夫々全ホール輸送官能基を生ずる一つ以上のフェニル基からなり、−R−はアルキル又はアリール基、好ましくはアリール基であり、第III族金属とリガンド結合を形成することができる基である。)を有する化合物に関する。A1及びA2のフェニル基は、一緒になって窒素原子を含む複素環を形成していてもよく、例えば、カルバゾール基を構成していてもよく、或はA1及びA2のフェニル基は互いに離れていてもよい。各フェニル基自身は、更に別のフェニル基と融合していてもよく、窒素原子、例えば1−ナフチル基又は2−ナフチル基として窒素原子に結合していてもよい。−R−基は、ホール輸送置換アルコキシド、チオレート、安息香酸、又はキレート酸素又は窒素基(例えば、置換アセチルアセトネート)でもよい。R−基はp−アミノ置換フェノキシド基であるのが好ましい。Ga又はInのような別の第III族金属を、Alの変わりに用いてもよい。
【0117】
Alのような第III族金属を配位した2−メチル−8−キノリノラト リガンドは、電子輸送部分として働く。アミン基はホール輸送部分として働く。その分子は電子及びホールの両方の輸送部分を有するので、その分子から作られた電荷キャリヤー層は、大きな電子易動度及び大きなホール易動度を有する。例えば、単一ヘテロ構造のETLとしてそのような電荷キャリヤー層を用いると、ホールが、電子と再結合して励起子を形成する前に、ETL中へ実質的な距離を移動することを可能にする。その結果、そのようなETLのルミネッセンス領域は、低いホール易動度を有するETLのルミネッセンス領域よりも大きい。この一層大きなエレクトロルミネッセンス領域は、一層長いエレクトロルミネッセンス寿命を与える結果になる。同様に、二重ヘテロ構造の別の発光層としてそのような電荷キャリヤー層を用いると、一層低いホール又は電子易動度を有する別の発光層の領域よりも大きなルミネッセンス領域及び一層長いエレクトロルミネッセンス寿命を与えることになる。
【0118】
特に、少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を含む化合物は、Al−pNPとして言及するビス(2−メチル−8−キノリノラト)[p−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)フェノラト]アルミニウム(III)、Al−pCbとして言及するビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−カルバゾールフェノラト)アルミニウム(III)、Al−mCbとして言及するビス(2−メチル−8−キノリノラト)(m−カルバゾールフェノラト)アルミニウム(III)でもよい:
【0119】
【化8】
【0120】
【化9】
【0121】
【化10】
【0122】
実験結果は、Al−pCbの固体膜(フイルム)がAl−pNPよりも約100倍効率の高い光ルミネッセンス発光を与えることを示している。この差はこれら二つの分子を異なった構造によって説明することができる。特に、Al−pCbはそのカルバゾール部分のために一層堅い組織を有し、その部分は固体状態の分子が非発光自己クエンチするのを防ぎ、Al−pNPと比較してAl−pCbの光ルミネッセンス発光の100倍大きい効率の原因になる。
【0123】
本発明は、更に、式F−I:
【0124】
【化11】
【0125】
〔式中、Rは、水素、又は水素に対して供与体又は受容体基である基であり、
R′=アルキル又は置換又は非置換アリール、
R1及びR2は、水素であるか、又は一緒になって融合アリール環を形成し、
Xは、O、NR5(ここでR5は、水素、又は置換又は非置換アルキル、アルキル、又は置換又は非置換アリールであり、
Z1及びZ2は、独立に炭素又は窒素原子であり、
Yは、Z1及びZ2が両方共窒素原子である場合、M、金属原子であり、又は、
Yは、Z1又はZ2が炭素原子である場合、O、NR6(ここでR6は、水素、又は置換又は非置換アルキルであり)、又はSであり、又は Yは存在しない。〕の化学構造を有する種類のアズラクトン関連化合物から選択されたドーパント化合物からなる発光層を有するOLEDに関する。代表的供与体基には、−OR、−BR、−NR3R4(ここでR3及びR4は、夫々独立に水素、又は置換又は非置換アルキルである)のようなπ電子供与体基が含まれる。代表的な受容体基には、−CN、−NO2又はカルボニル含有基のようなπ電子供与体が含まれる。
【0126】
一層特別な代表的な態様として、本発明は、式C−II:
【0127】
【化12】
【0128】
(式中、R、R′、R1及びR2は、上と同じ意味を有する。)の化学構造を有するドーパント アズラクトン系化合物からなる発光層を有するOLEDに関する。
【0129】
更に一層特別な代表的態様として、本発明は、式C−III:
【0130】
【化13】
【0131】
(式中、R及びR′は上と同じ意味を有する。)の化学構造を有するドーパント アズラクトン系化合物を含む発光層を有するOLEDに関する。
【0132】
更に特別には、ドーパント アズラクトン系化合物は、R=H及びR′=C6H5(化合物1);R=OOCCH3及びR′=C6H5(化合物2);R=N(CH3)2及びR′=C6H5(化合物3);及びR=C(CH3)3及びR′=C6H5(化合物4)である場合の式C−IIIの化学構造を有する。
【0133】
本発明の更に別の特定の態様として、ドーパント アズラクトン系化合物は、式C−IV:
【0134】
【化14】
【0135】
〔式中、R′=C6H5(化合物5)〕の化学構造を有する。
【0136】
本発明の更に別の特定の態様として、ドーパント アズラクトン系化合物は、式C−V(化合物6)の化学構造:
【0137】
【化15】
【0138】
又は式C−VI(化合物7)の化学構造:
【0139】
【化16】
【0140】
を有する。これらのアズラクトン系化合物は、p−置換ベンズアルデヒド及び馬尿酸誘導体から製造することができる。p−置換供与体基を変えることにより、下の表C1の結果によって例示されるように、発光はスペクトルの緑から青部分へ調整することができる。
【0141】
【表1】
【0142】
表C1に示した材料からの蛍光の色は、電荷移動遷移からの発光の場合に予想されるように、溶媒に強く依存する。
【0143】
ドーパント アズラクトン系化合物の更に別の特別な例には、R=OH及びR′=C6H5である場合の式C−IIIの化学構造、及びR=C(CH3)3及びR′=CH3である場合の式C−IIIの化学構造を有する化合物が含まれる。
【0144】
化合物6は、化合物1の誘導体のものとは異なった電荷移動網状組織を有する化合物の例である。この場合の発光は、アミン供与体及びニトロ基受容体から来る。この色素は、CH2Cl2中の化合物6について示されているように、青又は緑でポンプされ、赤色発光を得ることができる。化合物6は、これらの色素が赤色発光へ導く異なった励起波長を有することができることを例示している。この色素のためのPL効率は非常に低いが、他の受容体を有する誘導体はこの効率を増大することができると予想されている。
【0145】
式C−II又はC−IIIの代表的化合物、化合物3のためのドープしたOLEDで観察される線幅は、Alq3単独の場合について見られるものよりも狭いが、溶液中で観察されるものよりは広い。この理由は、溶液中ではその分子が自由になって、式C−IIで示されている構造によって示唆される平面構造を取るのに対し、固体状態ではジメチルアミノ基を有するフェニル環をカルボニル部分へ接続する結合の周りに二平面角度の分布が存在する傾向がある。この分散は、吸収及び蛍光の両方のためのエネルギー範囲を与え、観察される線幅を増大する。この分散は全蛍光量子効率も減少する。
【0146】
固体状態の拡張を防ぐため、式C−Iに示したような堅い又は固定された分子からなる化学的固定形状を有する材料を用いることができる。これらの化合物の中では環式基がY基によって同一底面状に保持されている。従って、本発明は、式C−II又はC−IIIのアズラクトン系化合物の代表的な具体例に関して示されているが、式C−Iのアズラクトン関連化合物も、本発明の範囲及び本質の中に完全に入る。式C−Iによって包含されるアズラクトン関連化合物には、式C−II及びC−IIIのアズラクトン系化合物が含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0147】
本発明は、更に、式C−I:
【0148】
【化17】
【0149】
〔式中、Rは、水素、又は水素に対して供与体又は受容体基である基であり、
R′=アルキル又は置換又は非置換アリール、
R1及びR2は、水素であるか、又は一緒になって融合アリール環を形成し、
Xは、O、NR5(ここでR5は、水素、又は置換又は非置換アルキル、アルキル、又は置換又は非置換アリールであり)、
Z1及びZ2は、独立に炭素又は窒素原子であり、
Yは、Z1及びZ2が両方共窒素原子である場合、M、金属原子であり又は、
Yは、Z1又はZ2が炭素原子である場合、O、NR6(ここでR6は、水素、又は置換又は非置換アルキルであり)、又はSであり、又は
Yは存在せず、但しYが存在しない場合、Z1は炭素原子であり、Z2は窒素原子であり、その時Rは水素に対する供与体又は受容体基である。〕
のアズラクトン関連化合物に関する。
【0150】
本発明の化合物の更に特に代表的な態様として、本発明は、式C−II:
【0151】
【化18】
【0152】
(式中、Rは、水素に対し供与体又は受容体基であり、
R′=アルキル又は置換又は非置換アリール、
R1及びR2は水素であるか、又は一緒になって融合アリール環を形成している。)
の化学構造を有するアズラクトン系化合物に関する。
【0153】
本発明の化合物の更に一層特別な代表的態様として、本発明は、式C−III:
【0154】
【化19】
【0155】
(式中、Rは水素に対し供与体又は受容体基であり、 R′=アルキル又は置換又は非置換アリール。)
の化学構造を有するアズラクトン系化合物に関する。
【0156】
ホスト化合物だけからなる発光層の発光波長を移行させることができるドーパントを、発光波長を移行させるのに有効な量ホスト化合物に添加し、人間の目によって三原色の一つに近いように認められる光をLED装置が発するようにするのが好ましい。色近くの特性化は主観的な問題であることは認められているが、国際照明委員会によって定量的色度が開発され、CIE標準としても知られている。この標準によれば、飽和色は色度座標の規定された軸に従う特別な定量的座標を有する単一の点によって表すことができる。そのようなCIE座標の単一の点は標準又は目的を表すことは当業者によって認められるであろうが、それは実際には困難であり、幸いにそれを得る必要はない。
【0157】
OLEDが主に一つの原色を生ずる本発明の好ましい態様では、人間の目によって一つの飽和原色に近いと認められる光をOLEDが発するように、ドーパントをホスト化合物中に配合する。本発明の実施によって、CIE尺度によって規定されるものとして、絶対的(又は飽和した)色度値に近い発光を特徴とすることができるOLEDを製造することが考えられている。更に、本発明の材料を用いたLEDは、100cd/m2を越えることができる表示輝度を与えることができると考えられているが、幾らか低い値、恐らく10cd/m2位に低い値でも或る場合には許容できるであろう。
【0158】
ここで定義するホスト化合物は、希望のスペクトル特性を持つ光を発するドーパントをドープすることができる化合物である。そのような化合物には、1996年8月6日に出願された米国特許出願Serial No.08/693,359(これは言及することにより本明細書に組み入れる)に記載されているような発光化合物及びホスト化合物が含まれるが、それらに限定されない。ここで用いられる用語「ホスト」とは、ホール/電子再結合エネルギーを受け、次に発光/吸収エネルギー転移過程によりその励起エネルギーをドーパント化合物(典型的には、遥かに低い濃度で存在する)へ移行させる成分としての機能を果たす発光層中の化合物を指すのに用いられている。次にドーパントは僅かに低いエネルギーレベルを有する励起状態へ緩和し、それが希望のスペクトル範囲内のルミネッセンス発光としてそのエネルギーの全てを優先的に放射する。ドーパントの励起状態の励起エネルギーの100%を放射するドーパントは、100%の量子効率を持つと言われる。色調節可能なSOLEDに用いることができるホスト/ドーパント濃度については、ホスト励起エネルギーの全てではないが、好ましくはその殆どをドーパントへ移行され、それが今度は、恐らく一層低いエネルギーレベルから大きな量子効率を持って放射され、希望の色度を持つ可視放射線を生ずる。本発明は、これらの要求エネルギー移動条件を満足するドーパントとして働くものと考えられる種類のアズラクトン関連化合物に関する。
【0159】
ホスト化合物と言う言葉がここでは用いられているので、そのような化合物は、単一ヘテロ構造OLEDデバイスの電子輸送/発光層か、又は二重ヘテロ構造の別の発光層中に見出すことができる。ここに開示するようなドーパント物質を使用することにより、OLEDによって発光される色の範囲を広げることができるのみならず、ホスト及び(又は)ドーパント化合物として予定することができる物質の範囲を広げることもできることは、当業者によって認められるであろう。従って、効果的なホスト/ドーパント系について、ホスト化合物はドーパント物質が光を強く吸収するスペクトルの領域内に強い発光を有することができるが、ホスト物質は、ドーパントも強く発光する領域内に発光帯域を持たないのが好ましい。ホスト化合物が電荷キャリヤーとして働く構造では、それら物質の酸化還元電位のような付加的条件も考慮することになる。しかし、一般にホスト及びドーパント物質のスペクトル特性は最も重要な条件である。
【0160】
存在するドーパントの量は、ホスト材料の発光波長を、CIEスケールに従って定義されるような標準原色にできるだけ近く移行させるのに充分な量である。効果的な量は、発光層に基づき約0.01〜10.0モル%であるのが典型的である。好ましい量は約0.1〜1.0モル%である。適当なドーピング量を決定する主な条件は、適当なスペクトル特性を持つ発光を達成するのに有効な量である。例として、もしドーパント物質の量が低過ぎる量であると、装置からの発光はホスト化合物自身からの色の成分も含むようになり、それはドーパント物質からの希望の発光よりも短い波長の所にある。これらは対照的に、ドーパントの量が高過ぎると、自己クエンチング、正味発光のない機構によって発光効率が悪影響を受ける。或はまた、ドーパント物質の量が高過ぎるとホスト材料のホール又は電子輸送特性に悪影響を与えることもある。
【0161】
本発明は、更にデバイスからの発光が燐光減衰過程によって得られるOLEDにも関し、この場合燐光減衰速度は表示デバイスの要件に合うように充分速いものとする。本発明の代表的な態様として、発光層は式D−I:
【0162】
【化20】
【0163】
〔(式中、M=Pt;a=1;b=0;c=1;X=C;R8=H;及びR9=R10=Et(エチル)。〕によって表される構造を有する発光化合物からなる。特に、この化合物、白金オクタエチルポルフィン(PtOEP)は、式D−II:
【0164】
【化21】
【0165】
の化学構造を有する。OLEDの発光材料としてPtOEPのようなドーパント化合物を選択する利点は、就中、二つの特別な事実に基づく。第一はこの分子の光ルミネッセンス量子収量がTPPよりもかなり大きく、PtOEPは50%より大きな光ルミネッセンス量子収量を有し、固体状態では90%位の高さであるのに対し、TPPは僅か約10%の光ルミネッセンス量子収量しか持たない。光ルミネッセンス量子収量の増大は、増大した効率を持つOLEDの製造を可能にする。PtOEPのような燐光化合物を選択することによって与えられる第二の利点は、そのような分子からの発光が三重項状態から来ることである。三重項状態へ励起することができる分子は、非放射性励起子三重項状態から燐光放射線としてこのエネルギーを放射発光することができる三重項状態へエネルギーを移行させる可能性を与える。三重項状態からくる放射線と呼ぶ燐光は、典型的には、一重項状態からの放射線と呼ばれている蛍光よりも遥かに低い速度で起きるが、それにも拘わらずPtOEPのような化合物からの燐光は、或る表示装置の要件を満足するのに充分な位速い。特にAlq3層中のドーパントとして用いた場合、約7μsecの寿命を有するPtOEPのような化合物を、約10μsec以下の速さのスイッチング時間を必要とする受動マトリックス表示器に用いるか、又はスイッチング時間が約10msecでありさえすればよい活性マトリックス表示器に用いることができる。
【0166】
本発明の代表的な態様として、PtOEPは、ITO/TPD/Alq3/Mg−AgOLEDのAlq3層中へドープすることができる。そのようなPtOEPドープOLEDの挙動は、TPPドーパントを用いて製造したOLEDとは非常に異なっている。TPPを0.5モル%より大きな量でドーピングすると、OLEDからの発光は排他的にTPPからのものになる。これに対し、中程度から低いドーピング量のPtOEPのAlq3中に入れると、発光は低電圧では主にPtOEP発光によるが、電圧を増大すると、Alq3発光が現れる。中程度に高い電圧(例えば、15V)では、発光の大部分はAlq3からくる。0.6モル%のPtOEPをドープしたOLEDについてのELスペクトルを図4D2に示す。1.3モル%のPtOEPについてのスペクトルは、0.6モル%の装置について示したものとほぼ同じ形を有する。6モル%のPtOEPを用いて製造したOLEDのスペクトルの形は、図4D3に示してある。電圧を増大するにつれて、赤色発光の強度は著しく増大するが、Alq3からの発光寄与は高電圧でも観察されていない。
【0167】
本発明は、それがどのように作動するかについての理論には限定されるものではないが、電圧を増大するについてAlq3の発光が増大することについての説明は、Alq3及びPtOEPについての光ルミネッセンスの寿命の差に関係していると考えられる。Alq3についてのPL寿命は、固体状態及び溶液状態の両方で約13nsec(ナノ秒)であるのに対し、PtOEPのPL寿命は、媒体により約10〜約100μsec(マイクロ秒)の範囲にある。もしPtOEPドープ装置に印加する電圧を低く維持すると、PtOEPへ移行する励起子の数は充分少なく、励起したPtOEP分子がAlq3励起子発生速度に対し充分な速度で緩和することができ、Alq3からのエネルギー移動のために充分なドーパント分子が常に存在する結果を与える。電圧を増大すると、有効PtOEPドーパント分子が飽和し、励起子がAlq3中で生成していくような速度を保って行くのに充分な速さで緩和することができなくなる。この高い電圧範囲では、励起エネルギーがPtOEP分子へ移動される前に、Alq3励起子の幾らかが放射線発光により緩和する。6モル%のPtOEPでは、励起子の全てを捕捉するのに充分なドーパントが存在するが、一層多くのドーピング量は全効率を減少させることになる。
【0168】
この説明は、PtOEPをドープしたAlq3デバイスについて異なったドーピング量での波長の関数としてPLスペクトルを示した図4D4に示されている結果によっても更に支持されている。0.6モル%の最も低いドーピング量では、Alq3大きな発光帯特性観察されているが、高い6モル%のPtOEPドーピング量では、Alq3からの全ての励起子エネルギーを捕捉するのに充分なPtOEPが存在すると思われる。
【0169】
PtOEP系OLEDからの発光は非常に狭く、645nmの所に中心を有する。飽和赤色発光に相当するこの狭い帯域は、約30nmの半値幅を有する。図4D5に示した溶液中のPtOEPについての異なった励起波長で、波長の関数としてのPLスペクトルを、PtOEPドープAlq3OLEDのELスペクトルと比較すると、PtOEPドープOLEDは、約645nmの所にピークの中心を有するPtOEPからの狭い発光帯域を選択的に生ずることを示している。この狭い高度に飽和した赤色発光は、PtOEPのPL励起スペクトルと、Alq3からの広帯域発光との比較により溶液中のPtOEPのPLスペクトルについて観察されているように、約620及び約685nmの所に中心を有する更に別の帯域を予想させるにも拘わらず、他のPtOEPピークが殆ど全く存在することなく発生する。
【0170】
正味の結果は、PtOEPドープデバイスからの発光が、飽和赤色発光に関して、TPPドープデバイスのものよりも著しく良いことである。なぜなら、700nmより高い所では長い波長テイル又はピークは存在しないからである。外部量子収率であるこれらのデバイスについての量子効率を表D1に列挙する。夫々の場合について、ドープしたデバイスと平行に製造した基準デバイス(ITO/TPD/Alq3/Mg:Ag)のものと一緒に効率が列挙されている。低い駆動電圧では、ドープしたデバイスの効率が優れているが、高い電圧ではドープしてないデバイスが大きな効率を有する。これらの結果は、PtOEPドープデバイスが、従来のAlq3ドープデバイスに匹敵する効率を持って作動することができることを示している。
【0171】
数日間室温条件に曝したPtOEPデバイスの保存寿命は、ドープしていないAlq3デバイスに匹敵し、ドーパントとしてTPPを用いて製造したデバイスよりも決定的に優れていることが観察された。
【0172】
【表2】
【0173】
そのようなOLEDは、例えば、約10μsec以下のスイッチング時間を有する受動マトリックス平面パネル表示器、スイッチング時間が約10msecでありさえすればよい活性マトリックス表示器、又は低解像力表示器用途に用いることができる。燐光化合物は、一般に式D−I:
【0174】
【化22】
【0175】
(式中、Xは、C又はNであり、
R8、R9及びR10は、夫々独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールからなる群から選択され、
R9及びR10は、一緒になって融合環を形成していてもよく、
M1は、二価、三価、又は四価の金属であり、
a、b及びcは、夫々0又は1であり、然も、XがCである場合、aは1であり;XがNである場合、aは0であり;cが1である場合、bは0であり;bが1である場合cは0である。)
の化学構造を有する燐光化合物から選択される。
【0176】
燐光化合物は、別の例として、部分的又は完全に水素化された燐光ポルフィリン化合物から選択することもできる。
【0177】
燐光寿命に従って燐光化合物を選択することに加えて、或る用途では約10μ秒以下の燐光寿命を有する化合物を選択することを意味するが、燐光化合物は、電荷キャリヤー物質から励起子三重項エネルギーを選択的に捕捉し、次にその励起エネルギーを、Alq3系OLEDのPtOEPにより示されるような高度に飽和した色に相当する狭い発光帯域中の燐光として発するように選択される。
【0178】
PtOEP自身は、OLED中の燐光化合物として用いられる最も望ましい性質の組合せを有することが証明されているが、そのような化合物は人間の目の標準CIE明所視反応機能が約550nmの所に中心を持つ視感透過率の縁近くの飽和赤色発光を生ずる利点を有する。特に、スペクトルの青色及び赤色端部では、波長の関数として視感度に急激な減少が存在する。
【0179】
もし大きな外部量子効率を持つが、視感度が実質的に一層高くなる所の幾らか短い波長の所に狭いピークを有する飽和赤色発光であると認められるものを生ずる蛍光化合物が見出されるならば、望ましいであろう。例えば、もし発光帯域幅が実質的に一定に保たれ、発光ピークが同じ数のホトン(photon)を生ずるOLED、例えば、同じ電流及び量子収量を有するOLEDについて約20nm短波長側へ移行することができるならば、デバイスの知覚される輝度は約2倍増大するであろう。即ち、二つのデバイスから来るホトン数が同じでも、標準の観察者は、短波長にピークを有するデバイスについては輝度が2倍増大したと知覚するであろう。しかし、発光は依然として飽和赤色として知覚される範囲内にあり、従って、OLEDとして有用であろう。
【0180】
従って、本発明は、更に燐光減衰過程によりデバイスからの発光が得られるOLEDに関し、この場合燐光減衰速度は、表示デバイスの要件に合うように充分速く、特に燐光ドーパント化合物は、例えば、PtOEPの四重対称を持つ場合と比較して少ない対称性を持つ白金ポルフィリンからなる。
【0181】
OLEDの発光物質として白金ポルフィリン化合物のような燐光ドーパント化合物を選択する利点は、就中、二つの特別な事実に基づいている。第一はこの化合物の光ルミネッセンス量子収量がTPPのような従来化合物より大きいことである。例えば、PtOEPは50%より大きな光ルミネッセンス量子収量を有し、固体状態では90%位の高さであるのに対し、TPPは僅か約10%の光ルミネッセンス量子収量しか持たない。光ルミネッセンス量子収量の改良は、増大した効率を持つOLEDの製造を可能にする。
【0182】
白金ポルフィリン化合物のような燐光化合物を選択することによって与えられる第二の利点は、そのような化合物からの発光が典型的には三重項状態から来ることである。三重項状態へ励起することができる分子は、非放射性励起子三重項状態から燐光放射線としてこのエネルギーを放射発光することができる三重項状態へエネルギーを移行させる可能性を与える。三重項状態からくる放射線と呼ぶ燐光は、典型的には、一重項状態からの放射線と呼ばれている蛍光よりも遥かに低い速度で起きるが、白金ポルフィリン化合物のような化合物からの燐光は、或る表示デバイスの要件を満足するのに充分な位速い。特にAlq3層中のドーパントとして用いた場合、約7μsecの寿命を有するPtOEPのような化合物を、約10μsec以下の速さのスイッチング時間を必要とする受動マトリックス表示器に用いるか、又はスイッチング時間が約10msecでありさえすればよい活性マトリックス表示器に用いることができる。
【0183】
本発明の特別の利点は、視感曲線のピークの方へ発光ピークを移行するが、依然として飽和赤色として知覚されるスペクトル範囲内に入っているように、燐光白金ポルフィリン化合物を選択することである。特に、PtOEPのような化合物を、ポルフィリンリガンドの四重対称性を壊すことにより化学的に変化させることにより、発光ピークが、PtOEPと比較して約15〜30nm短波長側へ移行させることができることが見出された。
【0184】
本発明は、特に式E−II:
【0185】
【化23】
【0186】
(式中、R基、R1、R2、R3及びR4は独立にアルキル、アリール又は水素であり、但しR基の少なくとも一つは少なくとも他のR基の一つと異なっている。)の構造を有する燐光ドーパント化合物を含むOLEDに関する。
【0187】
更に特に、本発明のOLEDは、式E−III:
【0188】
【化24】
【0189】
(式中、R5及びR6は、電子供与体又は電子受容体基であり、例えば、−F、−CN、又は−OCH3であり、R5及びR6は同じでも異なっていてもよい。)の構造を有する燐光化合物を有する。
【0190】
OLEDで用いられる代表的化合物として、ポルフィリンの5、15位置にあるフェニル基を、図5E1に示されているような白金(II) 5,15−メモ−ジフェニルポルフィリン化合物(PtDPP)に到達するように選択的に置換することにより燐光白金化合物を選択することができる。別法として、白金化合物は、図5E1に示したような残りの5,15−置換ポルフィリン化合物のどの一つからでも製造することができる。特に、本発明の代表的な態様として、燐光白金ポルフィリン化合物は、5,15−メモ−ジフェニルポルフィリン(H2DPP);5,15−メモ−ビス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(H2BPFPP);5,15−メモ−ビス(4−シアノフェニル)ポルフィリン(H2BCPP);又は5,15−メモ−ビス(4−アニシル)ポルフィリン(H2BAP)から製造することができる。そのような化合物は、後に記載するような方法により製造することができる。
【0191】
本発明の代表的な態様として、燐光白金ポルフィリン化合物としてPtDPPをドープしたOLEDが製造された。図5E2に示すように、ポリビニルカルバゾールの重合体マトリックス中にPtDPPをドープしたOLED(PtDPPドープ重合体OLEDと呼ぶ)のエレクトロルミネッセンススペクトルは、ポリスチレン中のPtDPPの光ルミネッセンスピークに近い所に発光ピークを生じた。これらのピークは、PtDPPドープAlq3層を有するOLEDのエレクトロルミネッセンススペクトルと比較して短波長側へ約20nm移行していた。
【0192】
図5E3aに示したように、ITO/NPD/Alq3−PtDPP/MgAg(PtDPPがAlq3層中にドープされている)の層からなるOLEDの場合、9V、15V、又は24Vで作動させたOLEDの場合、約630nmの所に発光ピークを有する狭い帯域のエレクトロルミネッセンススペクトルを生じた。Alq3系装置は、電圧を増大するに従って僅かに青へ移行するが、これは明らかに500〜550nmのスペクトル範囲内のAlq3発光の増大によるものである。図5E3bに示したように、PtDPPをドープしたAlq3層を有するOLEDの場合、PtOEPをドープしたAlq3層を有するOLEDにより生じた発光ピークと比較して、発光ピークは約15nm短波長側へ移行していた。これらの結果は、同じ量子収量を有するOLEDについて、PtDPPドープAlq3層を有するOLEDは、PtOEPドープAlq3層を有するOLEDよりも1.4倍の輝度を持つことを示している。
【0193】
発光ピークに15〜20nmの青色移行を起こしたOLEDを製造する実質的重要性は、図5E4に示したCIE色度座標の右端に示されているデータにより例示することができる。この図には、CIE色度曲線が示されており、600、650及び700nmの所の飽和単色線の(x,y)座標が夫々含まれている。PtDPPをドープしたAlq3層を有するOLEDにより生じた発光の(x,y)座標を、DCM2、インジゴ及びPtOEPのような他の赤色発光ドーパントを含むOLEDと比較する。
【0194】
図5E5に破線で示した人間の目の感度についてのCIE標準明所視反応曲線を用いることにより、与えられた明所視発光レベルでの相対的輝度を、次の式によって示されるような明所視反応曲線を用いて標準化した発光スペクトルの重なりを計算することにより決定することができる。
【0195】
I(ルーメン)∝∫(明所視反応)(ELスペクトル)dλ 〔式中、I(ルーメン)は、知覚された強度(ルーメン)である。この関数は視感重なり積分として言及されている。図E5に示した代表的データにより例示されているように、PtDPP発光OLEDの視感重なり積分は0.17(相対的単位)であり、PtOEP発光OLED0.13よりもかなり大きい。正味の結果は、PtDPP発光OLEDについては、CIE座標が色度座標の飽和赤色領域内に留まっているが、知覚された輝度は、PtOEP発光OLEDの場合よりも40%以上大きい。
【0196】
DCM2発光OLEDの視感重なり積分は、PtDPP又はPtOEPの場合よりもかなり大きい(夫々0.17又は0.13に対し0.19)が、即ち、もし同じ明所視出力レベルが実現されるならば、DCM2発光OLEDは実際明るいと言えるものではない。なぜなら、DCM2発光OLEDの量子効率は燐光Pt含有化合物を用いて作ったOLEDによって実現されるものよりも実質的に小さいからである。
【0197】
DCM2は、式:
【0198】
【化25】
【0199】
によって表される構造を有するが、OLED用途で有用な赤色発光発色団として記載されている。C.W.タング(Tang)等、「ドープした有機薄膜のエレクトロルミネッセンス」(Electroluminescence of doped organic thin films)、J.Appl.Phys.65,3610(1989)。
【0200】
本発明は、更にガラス構造を有するホール輸送層を有するエレクトロルミネッセンスを発生するためのヘテロ構造を有する有機発光装置に関する。ホール輸送層は、対称性分子構造を有する化合物からなる。対称性分子の末端基は、二つのアレンの間の不飽和結合を有するホール輸送アミン部分である。
【0201】
ここで用いる用語「不飽和結合」とは、少なくとも一つの二重結合が存在する結合を指す。ここで用いる用語「アレン」とは、少なくとも一つの芳香族を有する炭化水素を指す。ここで用いる用語「対称性」とは、一点の周りに分子が対称性になるそのような点を有する分子を指す。ここで用いる用語「電荷キャリヤー層」とは、「ホール輸送層」(HEL)、「電子輸送層」(ETL)、又は二重ヘテロ構造(DH)を有するOLEDについては「別の発光層」を指す。
【0202】
ここで用いる用語「ホール輸送部分」とは、OLEDの層中に含まれている材料中に存在する場合、電圧を印加した時、主にホールの伝導によりその材料が層を通る電気伝導を与えるようにする基を指す。ここで用いられる用語「電子輸送部分」とは、OLEDの層中に含まれる材料中に存在する場合、電圧を印加すると、主に電子の伝導によりその材料が層を通る電子伝導を与えるようにする基を指す。ここで用いられる用語「ホール輸送アミン部分」とは、ホール輸送部分であるアミン基を指す。そのようなホール輸送アミン部分は、少なくとも二つのフェニル基に直接結合した窒素原子を有するのが典型的であり、この場合それら二つのフェニル基は一緒になって窒素を含む複素環、例えば、カルバゾール基を形成していてもよく、或はそれら二つのフェニル基は、互いに離れていてもよい。各フェニル基自身が更に別のフェニル基と融合し、窒素原子に結合していてもよく、例えば、1−ナフチル基又は2−ナフチル基として結合していてもよい。
【0203】
そのような材料が良好なホール伝導性をいかに又は何故有するかを正確に説明する特別理論又は機構により限定されるものではないが、半経験的理論的方法により本発明者等の電子構造の検査により、二つのアレンの間に不飽和結合を有するホール輸送部分である末端基を有する分子は、末端基に非局在化したホールを有する。そのような分子の一つは4,4′−(N,N′−ビスイミノスチルベン)ビフェニル(ISB)である。これとは対照的にTPD及びNPDのようなアミン中の正常な状態は、窒素孤立対がビフェニル基を通して共役しており、ホールが主にそのビフェニル基に非局在化している。不飽和結合の重要性は、ISBと同じ構造を有する4,4′−(2,N′−イミノジベンジル)ビフェニル(IDB)を調べることによりと示すことができる。但しIDBはアミノフェニル基の間の飽和結合を有するがISBのそれは不飽和である。本発明者の分析では、IDBはビフェニル基を通して共役した窒素孤立対を有するが、ISBは、ビフェニルではなくスチルベンに結合した窒素孤立対を有することが示されている。ホールが非局在化している程度まで、それはスチルベン基に広がっている。この非局在化は、ビフェニルではなく、ISB分子の外側にホールを維持するのに役立ち、そこでそれは隣接する分子から遮蔽される。分子の外側にホールを維持することは、それを一層隣接する分子に接触させ、ホールの隣接分子への移動速度を増大し、それが良好なホール伝導性を与える結果になる。
【0204】
更に、本発明の分析では、二つのアレンの間に不飽和結合を有する末端基を有する分子に置換を行なってもよく、ホールが依然として中心よりもむしろ分子の末端又は周辺に依然として非局在化されることを示している。
【0205】
特に、本発明は、式F−I:
【0206】
【化26】
【0207】
(式中、Rは二つのアレンの間の不飽和結合を有するホール移動アミン部分である。)により表されるビフェニル架橋を有する対称性化合物を包含する。式F−Iによって表される分子は、二つのR基の間のビフェニル架橋の中心に分子が対称になる点が存在するため、対称的である。ここで用いられる用語「対称的」とは、対称点の両側にある原子が、それら原子の間を結合する同じ順序を有することを必要とし、即ち、R基が同じ順序で結合された同じ原子を有し、同じ原子を持たなければならないが、結合の捩れにより原子の位置には差があってもよい。
【0208】
本発明は、式F−II:
【0209】
【化27】
【0210】
(式中、Rは上と同じ意味を有する。)によって表されるような、フェニル架橋を有する対称性化合物も包含する。
【0211】
二つのアレンの間に不飽和結合を有するホール移動アミン部分であるR基の例は、式F−III:
【0212】
【化28】
【0213】
(式中、二つのフェニル基はアレンであり、エテニル基は、二つのアレンの間の不飽和結合である。)により表される。
【0214】
式F−Iの分子中にF−IIIのR基を用いることにより、本発明の方法は、従って式F−IV:
【0215】
【化29】
【0216】
によって表されるISBを包含する。
【0217】
ISBのエチル基は、二つのアレンの間の飽和結合を依然として維持しながら、置換することができる。例えば、飽和結合は、実際フェニレン基によって与えることができ、式F−V:
【0218】
【化30】
【0219】
によって表される構造を有する分子を与える結果になる。
【0220】
別法として、ISBのエチル基は、式F−VI:
【0221】
【化31】
【0222】
(式中、R1及びR2は、アルキル、フェニル、置換アルキル、及び置換フェニル基からなる群から選択され、R1はR2と同じか又は異なっていてもよい。)によって表される構造を有する分子を与えるように置換することができる。
【0223】
式F−V及びF−VIの分子を導く置換は、ホール非局在化を分子の端部へ移行させるのに役立つと思われる。更に、置換基は、分子の分子量を増大し、一層高いTgを与える。
【0224】
従来の単一のヘテロ構造OLEDでは、発光材料はETLであり、HELはETLの吸収エネルギーよりも大きな吸収エネルギーを持たなければならない。その結果、ISBに与えられた置換は、もし得られる分子が発光ETLを有する単一ヘテロ構造OLEDで用いられても、電子スペクトルに対した移行はもたらさないことが好ましい。
【0225】
ISBに対する対照を与えるため、アレンの間に飽和結合を有するホール輸送アミン部分であるR基を有する分子を用いる。そのようなR基は、次の式F−VIIによって表される:
【0226】
【化32】
【0227】
式F−Iの分子中に式F−VIIのR基を用いると、式F−VIII:
【0228】
【化33】
【0229】
によって表されるような、4,4′−(N,N′−アミノジベンジル)ビフェニル(IDB)を与える結果になる。
【0230】
ISB及びIDBの熱的及び他の物理的性質を、それらのフェニレン架橋類似体のものと共に表1に与える。
【0231】
【表3】
【0232】
ISB(110℃)及びIDB(117℃)の両方のTgは、従来OLEDで用いられている材料であるTPD(65℃)及びNPD(105℃)のようなOLEDで従来用いられていたHTL材料のそれよりもかなり高い。その結果、HTLとしてISB又はIDBを用いたOLEDは、TPD又はNPDを用いたOLEDよりも高い温度で作動することができ、同じ温度で作動させた時、一層長い寿命を持つものと予想される。
【0233】
一層詳細に下で論ずるように、HTL材料としてISB及びIDBを用いて二つの異なった種類のOLEDを製造した。二つの型のOLEDは、アノードとしてITO被覆基板を用いて出発し、Mg−Agカソードを用いた。実験した最も簡単なOLEDの構造は、ITO/HTL/Alq3/Mg−Agであった。それより少し複雑な構造では、銅フタロシアニン、CuPC、ホール注入体、即ち、ITO/CuPc/HTL/Alq3/Mg−Agを用いた。係属中の米国特許出願Serial No.08/865,491号明細書に記載されているようなCuPcホール注入体を使用することにより改良された量子収量を与えることができる。表F2に例示されているように、HTLとしてISBを用いたOLEDは、IDBを用いたものよりも優れた性能をもち、ISBを用いたOLEDは、NPDを用いたOLEDの性能に匹敵する性能を有することが両方の種類のOLEDについて観察されている。
【0234】
【表4】
【0235】
ISB系デバイスの量子収量、スイッチオン電圧及び電力効率は、非常によく、Tgが一層高いことは、ISB系OLEDが著しく改良された寿命を有し、NPD及びTPD系OLEDよりも高い温度で作動することができる。TPD、NPD及びISB OLEDデバイス特性の類似性は、図2B1及び2B2に見ることができる。TPD、NPD及びISBを用いたOLEDの電流・電圧プロットは、殆ど区別できないが、IDBは良くない。
【0236】
表2も、HTLとしてISBを用いたOLEDが、幾つかの点でHTLとしてIDBを用いたOLEDよりもかなりよい性質を有することを示している。ISB系OLEDは、同じ電流を得るのに一層高い量子効率、必要な低い電圧を有し、同じ電流で一層大きな輝度を有する。ISB及びIDBは、両方共高いTgを有する対称性分子である。ISBとIDBの唯一の構造的差は、ISBがアミノフェニル基の間に不飽和結合を有するのに対し、IDBのそれは飽和結合である。IDBに対してISBを用いたOLEDの性質の差は、ISBがIDBよりも一層良いホール伝導性を有することと一致している。IDBのTgは、ISBのものよりも僅かに高いが、この一層高いTg単独では、ここで観察される量によってOLEDの性質を変えるとは考えられない。
【0237】
本発明の代表的具体例でホール注入アノード層として用いることができる代表的材料には、特にITO、Zn−In−SnO2又はSbO2、又はOLEDのホール注入アノード層として用いることができる実質的にどのような他の材料でも含まれる。
【0238】
ガラスとして存在する代表的材料は、結晶又は多結晶質材料よりもOLEDのHTLに用いるのに望ましい。なぜなら、ガラスは、結晶状の材料の薄膜を製造する場合に典型的に生ずる多結晶質材料と比較して、優れた全体的電荷キャリヤー特性と同様、一層大きな透明性を与えることができるからである。本発明の代表的態様でホール輸送層として用いることができる代表的材料には、特にN,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)1−1′ビフェニル−4,4′ジアミン(TPD)、 4,4′−ビス[N−(1ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)、 4,4′−ビス[N−(2ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(β−NPD)、が含まれる。
【0239】
電子輸送層として用いられる代表的材料には、特にトリス−(8−ヒドロキシキノリン)−アルミニウム(Alq3)又は4,4′−ジ(N−カルバゾロ)ジフェニル(CBP)が含まれる。
【0240】
もし存在するならば、別の発光層として用いられる代表的材料には、特に色素ドープAlq3、又はOLEDの別の発光層として用いることができる実質的にどのような他の材料でも含まれる。
【0241】
本発明のOLEDを別のOLEDと組合せて用いて、金属カソード層を有するSOLED構造を形成する場合には、電子注入、金属カソード層として用いることができる材料には、特にMg−Ag、Li−Ag、又はCa、又はOLEDの金属カソードとして用いることができる実質的にどのような他の材料でも含まれる。
【0242】
もし存在するならば、絶縁層は、SiO2、SiNx又はAlO2のような絶縁材料、又はOLEDの絶縁材料として用いることができる実質的にどのような他の材料からなっていてもよく、それらはプラズマ促進化学蒸着(PECVD)、電子ビーム等のような種々の方法により堆積することができる。
【0243】
本発明のOLEDは、それらが真空蒸着した分子状有機材料から完全に製造することができる利点を有する。真空蒸着材料は、真空蒸着のためには1気圧より低く、好ましくは約10−5〜約10−11トール、蒸着のためには約50トール〜約10−5トールのバックグラウンド圧力を有するのが典型的な真空中で堆積することができるものである。
【0244】
ここに言及した厚さ範囲に限定されるものではないが、基板は、アルミニウム箔のような可撓性プラスチック又は金属箔基体として存在するならば、10μ程の薄さでもよく、堅い透明に、又は半透明の基体として存在するならば、又は基体が珪素系表示器駆動体からなるならば、実質的に一層厚くてもよい。ITOアノード層は、約500Å(1Å=10−8cm)から約4000Åよりも大きな厚さでもよい。ホール輸送層は、約50Åから、約1000Åの厚さよりも大きくてもよい。もし存在するならば、二重ヘテロ構造の別の発光層は約50Å〜約200Åの厚さでよく、電子輸送層は、約50Å〜約1000Åの厚さでよく、非金属カソード層は、約400Åから、約1500Åの厚さより大きく、約400〜1000Åが好ましく、約500Åであるのが一層好ましい。
【0245】
従って、デバイスが単一ヘテロ構造又は二重ヘテロ構造を有するかいなか、装置がSOLEDか、又は単一OLEDであるかいなか、デバイスがTOLEDか、又はIOLEDであるか、OLEDが好ましいスペクトル範囲中の発光を生ずるように考えられているか、又は更に別の設計変更が用いられているかいなかにより、存在する層の種類、数、厚さ、及び順序に実質的な変化がある場合でも、本発明は、エレクトロルミネッセンスを発光するためのヘテロ構造をOLEDが有するそれらデバイスに関し、この場合ヘテロ構造が、半導体有機層が低抵抗電気接触している電気伝導性非金属層からなるカソードを有する。
【0246】
本発明の種々の態様は、乗り物、コンピューター、テレビジョン、プリンター、大面積壁、劇場、又はスタジアムスクリーン、掲示板、又は標識に含まれる光電デバイス中に組み込むことができる。
【0247】
更に、本発明の高度に透明な非金属カソードは、高度に透明な非金属カソードをOLED中に組み込んだ態様を用いて例示されているが、アノード及びカソードを有する実質的にどのような型の光電子デバイスでも、本発明に従い製造された高度に透明な非金属カソードを持つことができる。特に、本発明の非金属カソードは、OLED、太陽電池、光トランジスタ、レーザー、又は光検出器に組み込むことができる。
【0248】
次に本発明をその特別な或る代表的な態様がどのように製造できるかを示すことに関し詳細に記述するが、材料、デバイス及び処理工程は、単に例示することを目的物とした例として理解されるべきである。特に、本発明は、ここに特別に言及する方法、材料、条件、処理パラメータ、デバイス等に限定されるものではない。
【0249】
(発明の諸例) A.非金属カソードを有するOLEDの例 例A1 OLEDが金属カソード層ではなく非金属ITOカソード層を有する点を除き、既知の方法を用いてOLEDを製造した。更に、電子注入界面層を、ITOカソードとAlq3電子輸送層との間に存在させた。商業的に得られたITO/硼珪酸塩基体は、約1500ÅのITO厚さを持っていた。有機層は、1×10−6トールの圧力で、標準的ベルジャー蒸発器中で熱蒸着した。α−NPDは約350Åの厚さに蒸着し、Alq3電子輸送層は、約450Åの厚さに蒸着し、銅フタロシアニン(CuPc)又は亜鉛フタロシアニン(ZnPc)は約60Åの厚さに蒸着した。一番上のITOカソード層は低電力でRFスパッター蒸着し、約650Åの厚さを持っていた。CuPc層とAlq3層との間にCBP層を有するOLEDも製造した。そのようなOLEDは、CBP層が存在しないOLEDに匹敵する性能特性を示していた。
【0250】
デバイスは、電流−電圧、輝度−電流、エレクトロルミネッセンススペクトル、及び透過率、反射、及び吸収スペクトルを測定することにより特徴付けた。代表的データを図1A3〜1A11に示す。
【0251】
結果を、例えば、図1A1に示したような、金属Mg:Agカソード層1、電子輸送層2、ホール輸送層3、アノード層4、及び基板5を有する標準OLEDと比較した。α−NPDホール輸送層は約350Åの厚さを有し、Alq3電子輸送層は約450Åの厚さを有し、Mg:Agカソード層は約1500Åの厚さを持っていた。
【0252】
例A2 本発明の非金属カソードを有するTOLEDの例を図1A13に概略的に示す。デバイスは、例えば、G.グ、V.バロビック、P.E.バローズ、S.R.フォレスト、及びM.E.トンプソン、Appl.Phys.Lett.68,2606(1996)に示されているように、20Ω/□の面積抵抗を有するITOで被覆した予め清浄にしたガラス基板上に10−7トール未満の基底圧力で真空装置中で成長させた。ホール注入を改良するためITO上に30Å〜60Å厚の銅フタロシアニン(CuPc)の膜を蒸着し、次に350Å〜400Å厚のHTL:4,4′−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)の膜を蒸着した。次に400Å〜500Å厚の発光ETL、トリス−(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム(Alq3)の膜を成長させ、次に第二の30Å〜60Å厚のCuPcフイルムを蒸着した。S.A.バンスライケ、C.H.チェン、及びC.W.タング、Appl.Phys.Lett.69,2166(1996)。第一の200ÅのAlq3に、クマリン6(cm6)で1%(質量)までドープした。次に基板をITOスパッタリング室内へ移し、そこでAr(200sccm)及びO2(0.10sccm)雰囲気中で、5mトールの圧力及び5Wの電力でCuPcの上に400Å〜600ÅのITOを無線周波スパッターした。比較として、高透明性非金属かそを持たない従来のTOLEDをその試験デバイスと共に製造した。特にこの従来のTOLEDは、同様な構造を持っていたが、ITO/CuPc頂部電極をAlq3表面上に蒸着した100Å厚の半透明性Mg:Ag(質量比30:1)のフイルムを蒸着し、スパッターしたITOをかぶせたもので置き換えた点が異なる。頂部ITO層の下のCuPcの代わりに亜鉛フタロシアニン(ZnPc)を用いて第二一連の非金属カソードを有するTOLEDを製造した。最後に、第三の一連のデバイスとして、電子注入CuPc層を、60Å厚の3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(PTCDA)により置き換え、それは既に下の有機フイルムを、それがないとスパッタリング中に起きることがある損傷から保護するのに有効であることが示されている。Vバロビック、P.チアン、P.E.バローズ、M.R.ゴクハーレ(Gokhale)、及びS.R.フォレスト、Appl.Phys.Lett.70,2954(1997)。
【0253】
B.少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を有する化合物を含む電荷キャリヤー層を有するOLEDの例 実験: UV−可視スペクトルを、アビブ(Aviv)分光光度計、型14DSにより測定した。H NMRスペクトルを、ブルッカー(Bruker)250分光計で記録した。光ルミネッセンス及びエレクトロルミネッセンススペクトルを、ホトン・テクノロジー・インターナショナルフルオリメーター(fluorimeter)を用いて測定した。電流−電圧特性の測定値を、EG&Gインストルーメンツ・ポテンショスタット(Instruments Potentiostat)、型283による記録した。融点はメルテンム(Mel−Temp)II装置により公正せずに測定した。元素分析をアトランティック・ミクロラブ社(Atlantic Microlab,Inc.)により行なった。質量分光分析を、5973質量選択検出器を具えたヒューレット・パッカード(Hewlett−Packard)GC/MC分光計の固体プローブで行なった。10−3トールの基底真空度でリンドバーグ(Lindbrg)3領域炉で傾斜昇華を行なった。
【0254】
化学物質: 良好なホール輸送性を有することが知られているトリアリールアミン部分を有する一連のフェノール誘導体を含む化合物を、更に2当量の8−ヒドロキシキナルジンの存在下でAl(OPr)3と反応させ、電子輸送部分とホール輸送部分の両方を有する化合物を生成させた。そのようにして作った化合物を、Al−pNP、Al−pCb、及びAl−mCbとして言及する。
【0255】
文献の手順に従い、TPD及びAlq3を合成し、両方を使用する前に昇華した。リガンド4−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)フェノール、3−カルバゾールフェノール、4−カルバゾールフェノール、及び4−イミノスチルベンフェノールを、対応するアミンとヨードアニソールとのウルマンカップリングを用い、「オールズ含有熱安定性非対称性電荷キャリヤー物質」(Oleds Containing Themally Stable Asymmetric Charge Carrier Materials)と題する1997年9月8日に出願された米国特許出願Serial No.08/929,029号明細書(これは言及することにより本明細書に組み入れる)に記載されているように、メトキシ基の脱保護をBBr3を用いて行うことにより合成した。8−ヒドロキシキナルジンはアルドリッチ(Aldrich)から購入し、そのまま用いた。
【0256】
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)[p−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)フェノラト]アルミニウム(III)、Al−pNP: Al(OPr)3(0.63g、3.1mM及び8−ヒドロキシキナルジン(0.51g、3.2mM)の混合物に、アルゴン中で40mlのEtOHを添加した。混合物を3時間還流し、緑黄色溶液を与えた。次に、8−ヒドロキシキナルジン(0.51g、3.2mM)と、p−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)フェノール(1.45g、4.68mM)を40mlのEtOH中に入れた橙黄色の溶液を、空気中で添加した。混合物を一晩中還流した。次にその黄色溶液から溶媒を除去し、黄色ガラス状物質を300℃以上で次に昇華した。最後に昇華した黄色結晶物質を収集し、再昇華した。得られた物質の分析により次の結果が得られた: 収率:60% 融点:136〜142℃ 元素組成(計算値):C、77.2;H、4.93;N、6.43 元素組成(実測値):C、77.0;H、5.00;N、6.31 質量分光分析:653(p)、342〔p−p−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)フェノール〕、259〔p−(N−フェニル−2−ナフチルアミノ)フェノール〕、159(8−ヒドロキシキナルジン)。
【0257】
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(p−カルバゾールフェノラト)アルミニウム(III)、Al−pCb: Al(OPr)3(0.63g、3.1mM及び8−ヒドロキシキナルジン(0.51g、3.2mM)の混合物に、アルゴン中で40mlのEtOHを添加した。混合物を3時間還流し、緑黄色溶液を与えた。次に、8−ヒドロキシキナルジン(0.51g、3.2mM)と、p−カルバゾールフェノール(1.2g、4.6mM)を40mlのEtOH中に入れた橙黄色の溶液を、空気中で添加した。混合物を一晩中還流した。次にその黄色溶液から溶媒を除去し、黄色ガラス状物質を300℃以上で次に昇華した。最後に昇華した黄色結晶物質を収集し、再昇華した。得られた物質の分析により次の結果が得られた: 収率:63% 融点:283℃ 元素組成(計算値):C、75.9;H、4.69;N、6.98 元素組成(実測値):C、75.6;H、4.79;N、6.96 質量分光分析:601(p)、343(p−p−カルバゾールフェノラト)、259(p−カルバゾールフェノール)、159(8−ヒドロキシキナルジン)。
【0258】
ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(m−カルバゾールフェノラト)アルミニウム(III)、Al−mCb: Al(OPr)3(0.28g、1.37mMを8−ヒドロキシキナルジン(0.22g、1.38mM)と、アルゴン中でエタノール(65ml)中で混合した。混合物を2時間Ar中で還流し、得られた黄緑色溶液を空気中でセライトを通して濾過し、透明な溶液を与えた。2−メチル−8−キノリン(0.22g、1.38mM)及びm−カルバゾールフェノール(0.54g、2.1mM)のエタノール溶液(30ml)を添加し、一緒にした黄緑色溶液を3時間還流した。次に揮発性物質を真空中で除去し、ガラス状物質を3領域昇華器の通して280℃で2回昇華し、明るい黄色の微結晶質固体を与えた。得られた物質の分析により次の結果が得られた: 収率:0.29g(35%) 融点:280℃ 元素組成(計算値):C、75.9;H、4.69;N、6.98 元素組成(実測値):C、75.1;H、4.72;N、6.90 質量分光分析:601(p)、343(p−m−カルバゾールフェノラト)、259(m−カルバゾールフェノール)、159(8−ヒドロキシキナルジン)。
【0259】
デバイス製造及び特性化: ITO(100Ω/□)で被覆した硼珪酸塩物質を、洗浄剤と共に5分間超音波にかけ、次に脱イオン水で濯くことにより清浄にした。それらを、2分間、沸騰する1,1,1−トリクロロエタン中で2回処理した。それら物質をアセトンと共に2分間2回超音波にかけ、メタノールで2分間2回超音波にかけ、N2流中で乾燥した。
【0260】
デバイス製造の前に蒸着装置中のバックグラウンド圧力を通常7×10−7トール以下にし、フイルム蒸着中の圧力を5×10−7〜2×10−6トールにした。OLEDの製造に用いられる化合物を、室温に近く保持された基板上に、固定加熱したタンタルボートから蒸発させた。先ずTPDを1〜4Å/秒の速度で蒸着し、300Åのフイルムを与え、次に電子輸送層(Alq3、Ab3)の層を1〜40Å/秒の速度で450Åの厚さまで蒸着した。色素ドープOLEDについては、電子輸送材料及び色素を希望の比率で同時蒸着した。
【0261】
室を空気中へ通気し、基体上に直接遮蔽マスクを置いた。次にマグネシウム及び銀を通常3Å/秒の速度で同時蒸着した。Mg:Agの比率は7:1〜12:1の範囲にあった。この層の厚さは500Åであるのが典型的であった。最後にそれら装置を1〜4Å/秒の蒸着速度で、1000ÅのAgで覆った。
【0262】
少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を含む三つの型のOLEDを製造した: 型SH−A: ITO\TPD(300Å)\HET\Mg−Ag(500Å)\Ag(1000Å) 型SH−B: ITO\HET\Alq3(450Å)\Mg−Ag(500Å)\Ag(1000Å) 型DH: ITO\TPD(300Å)\HET\Alq3\Mg−Ag(500Å)\Ag(1000Å) ここで、HETは、Al−pNP又はAl−pCbのような少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を有する化合物を含む電荷キャリヤー層を表す。更に、TPD/Alq3OLEDを、基準として用いるために、典型的には型SH−A、SH−B及びDHのOLEDとして同時に製造した。これらデバイスを、製造してから5時間以内に空気中で特性化した。
【0263】
実験結果: 製造したOLEDの各々は、やはり発光材料である、少なくとも一つの電子輸送部分及び少なくとも一つのホール輸送部分を有する分子を有する化合物を含む電荷キャリヤー層を有するヘテロ構造を持っていた。
【0264】
CH2Cl2中に溶解したAl−pNP、Al−pCb、及びAl−mCbの吸収及び光ルミネッセンス(PL)スペクトルを図B1に示す。三つの化合物は全て280〜380nmで吸収を示している。カルバゾール誘導体Al−pCb及びAl−mCbは、約360nmで強い青色発光を示し、Al−pCbは480nmで低いエネルギー発光を持っている。Al−pNPは、約440nmの所で単一の強い青色発光を示し、それはこの物質が青色エミッターとして有力な用途を持つことを示している。
【0265】
これらの新しい材料の諸性質を調べるため、Al−pNP及びAl−pCbを持つ異なった型のOLEDを製造した。上で記載したように、三つの型、型SH−A、SH−B及びDHのOLEDを各材料について製造した。TPD及びAl−pCbの膜も基板上に蒸着した。これらの膜は紫外線を用いてポンピングし、吸収及びPL発光を測定した。
【0266】
図2B2は、Al−pNPを用いて製造した型SH−A、SH−B、及びDHのOLEDのエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトル、及びCH2Cl2中に型SH−A、Al−pNPのOLED及びTPDフイルムのPLスペクトルを示している。図2B3は、Al−pNPを用いて作った型SH−A、SH−B及びDHのOLEDの外、TPD HTL及びAlq3ETLを有する基準OLEDのI−V特性を示している。表B1は、Al−pNPを用いて製造したOLEDについての収量、PL、及びELデータを要約したものである。図2B2及び2B3及び表B1では、「SH−A」は、TPD HTL及びAl−pNP ETL(300ÅのTPD/1000ÅのAl−pNP)を有する単一ヘテロ構造OLEDを指す。「SH−B」は、Al−pNP HTL及びAlq3 ETL(300ÅのAl−pNP/450ÅのAlq3)を有する単一ヘテロ構造OLEDを指す。「DH」は、TPD HTL、Al−pNPの別の発光層、及びAlq3 ETL(300ÅのTPD/200ÅのAl−pNP/450ÅのAlq3)を有する二重ヘテロ構造OLEDを指す。表B1の「基準収量」の列は、その欄の一番上のOLEDと同時に製造したTPD HTL及びAlq3ETL(300ÅTPD/450℃CAlq3)を有する基準SH OLEDの収量を示している。表B1に報告した最大値は、可視範囲の最大値であり、図2B2の最高ピークには相当しない幅の広い最大値でもよい。
【0267】
表B1に示したように、Al−pNPを有するSH−A OLEDは効率が低く、0.0005%の低い収量を有するが、この低い収量は、基準OLEDの低く基準収量によって示されている汚染によって説明することができるであろう。Al−pNPを用いたSH−A OLEDは白色光を発する。Al−pNPを有するSH−B OLEDは、0.02%の一層よい収量を有する。Al−pNPを有するDH OLEDは、更に一層よい0.05%の収量を示し、図2B3に例示するように、改良されたI−V特性を有する。これらの結果は、Al−pNPが或るホール輸送特性を有するが、固体中ではよくないエミッターであることを示している。
【0268】
【表5】
【0269】
図2B4は、Al−pCbを用いて製造したSH−A、SH−B、及びDH(2)のOLEDの外、TPD HTL及びAlq3ETLを有する基準OLEDのI−V特性を示している。図2B5は、型DH(2)のOLED及び基準OLEDのELスペクトル、及び型DH(2)のOLED及びAl−pCbのフイルムのPLスペクトルを示している。表B2は、Al−pCbを用いて製造したOLEDについての収量、PL、及びELデータを要約したものである。図2B4及びB5及び表B2では、「SH−A」は、TPD HTL及びAl−pCb ETL(300ÅのTPD/500ÅのAl−pCb)を有する単一ヘテロ構造OLEDを指す。「SH−B」は、Al−pCb HTL及びAlq3 ETL(300ÅのAl−pCb/450ÅのAlq3)を有する単一ヘテロ構造OLEDを指す。「DH(1)」は、TPD HTL、Al−pCbの別の発光層、及びAlq3 ETL(300ÅのTPD/450ÅのAl−pCb/450ÅのAlq3)を有する二重ヘテロ構造OLEDを指す。「DH(2)」は、DH(1)と同じ材料を有するが、異なった厚さ(300ÅのTPD/410ÅのAl−pCb/40ÅのAlq3)に蒸着した二重ヘテロ構造OLEDを指す。表B2の「基準収量」の列は、その欄の一番上のOLEDと同時に製造したTPD HTL及びAlq3ETL(300ÅのTPD/450ÅのAlq3)を有する基準SH OLEDの収量を示している。
【0270】
型SH−A、SH−B及びDHのOLED中にAl−pCbを適用することにより、色及び効率の両方に関してAl−pNPの場合のものよりも一層よい結果を与えることになる。図2B5に示したように、Al−pCb膜のPLスペクトルは、図2B1に示したように、CH2Cl2溶液中に入れたAl−pCbのものと同様であり、同じ青色発光を示し、Alq3のものに匹敵する強度を有する。図2B5及び表2に示したように、Al−pCbを有するDH(2)OLEDは、約500nmの所にピークを有する青色発光を示す。
【0271】
【表6】
【0272】
Al−pCbを用いたDH(2)OLEDの効率及び色純度は、色素ドーピング法により更に改良された。図2B6は、CH2Cl2溶液中に入れたペリレン及び1%のペリレンを均一にドープしたAl−pCbを用いたDH(2)OLEDのPLスペクトル、及び同じOLEDのELスペクトルを示す。図2B7は、1%のペリレンを均一にドープしたAl−pCbを用いたDH(2)OLED、及びAlq3に1%のペリレンをドープしたTPD/Alq3OLEDのI−V特性を示している。表B3は、Al−pCbを用いて製造したOLEDについての収量、PL、及びELデータを示している。図2B6及び2B7及び表B3では、「DH(2)」は、TPD HTL、別の発光層として1%のペリレンを均一にドープしたAl−pCb層、及びAlq3 ETL(300ÅのTPD/400Å 1%ペリレン−Al−pCb/50ÅのAlq3)を有する二重ヘテロ構造OLEDを指す。表B3の「基準収量」の列は、その欄の一番上のOLEDと同時に製造したTPD HTL及びAlq3ETL(300ÅのTPD/450ÅのAlq3)を有する基準SH OLEDの収量を示している。
【0273】
【表7】
【0274】
Al−pCb層に1重量%のペリレンを均一にドープした場合、Al−pCb層をドープしない場合よりも、OLEDはそのELスペクトルに一層強い青色色調を持っていた。ドープしたデバイスのELスペクトルのλmax(最大強度を有する波長)は、図2B6に示すように、溶液中のペリレンのPLスペクトルのλmaxに特徴的なものである。
【0275】
ドープしたデバイスの量子効率は、ドープしていないものの(0.05%)2.5倍大きかった。ドープしたデバイスのELスペクトルは、ホスト発光の不完全なクエンチによりスペクトルの緑色部分まで依然として幾らか残光を持っていた。このことは、ホストからドーパント分子へのエネルギー転移過程に幾らかの非効率的なものがあることを示している。
【0276】
本発明は、クマリン1のような他の青色ドーパント、又は緑(即ちクマリン6)又は赤〔即ち1,3−ビス[4−(ジメチルアミノ)−2−ヒドロキシフェニル]−2,4−ジヒドロキシシクロブテネジイリウムジヒドロキシド〕のような他の色を発するドーパントと一緒に用いることもできる。
【0277】
C.アズラクトン関連ドーパントを含有する発光層を有するOLEDの例 オレンジ色発光デバイス(OLED)の製造のために用いた手順は次の通りであった: ホール輸送材料TPD及び電子輸送材料Alq3を、既知の方法に従い合成し、使用する前に昇華した。
【0278】
化合物1:馬尿酸(40.0g、0.22モル)、ベンズアルデヒド(25.0g、0.24モル)、酢酸ナトリウム(16.0g、0.24モル)及び無水酢酸(120ml、1.2モル)を混合し、3日間よく撹拌した。得られた黄色の混合物を冷脱イオン水(1リットル)に添加し、黄色の固体を濾過により収集した。アセトン(2リットル)から結晶化した後、黄色針状結晶(48g)を収集した。収率:88%。mp.:162〜163℃。分析計算値:C、77.1;H、4.45;N、5.62。実測値:C、76.2;H、4.47;N、5.55。M.S.:249(P)、105(PhCO)、77(Ph)。NMR(25℃、CDCl3):8.15−8.30(m)、7.47−7.65(m)。
【0279】
化合物2:馬尿酸(5.0g、27.9mM)、p−ヒドロキシベンズアルデヒド(3.70g、30.3mM)、酢酸ナトリウム(2.0g、30mM)及び無水酢酸(20ml、212mM)を混合し、1日間よく撹拌した。得られた黄色の混合物を冷脱イオン水(0.2リットル)に添加し、黄色の固体を濾過により収集した。アセトンから結晶化した後、黄色結晶を収集した。M.S.:307(P)、265(P−CH3COO+H)、105(PhCO)、77(Ph)。NMR(25℃、CDCl3):8.25(d、8.8Hz)、8.18(d、8.0Hz)、7.50−7.66(m)、7.20−7.26(m)、2.34(s、Me)。
【0280】
化合物3:馬尿酸(5.00g、27.9mM)、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド(4.38g、29.4mM)、酢酸ナトリウム(2.0g、30mM)及び無水酢酸(20ml、212mM)を混合し、1日間よく撹拌した。得られた深赤色混合物を冷脱イオン水(200ml)に添加し、赤色固体を濾過により収集した。アセトンから結晶化し、昇華(200℃)した後、赤色結晶(1.0g)を収集した。収率:12%。mp.:211〜213℃。分析計算値:C、74.0;H、5.52;N、9.58。実測値:C、73.9;H、5.51;N、9.54。M.S.:292(P)、159(P−PhCOCO)、105(PhCO)、77(Ph)。NMR(25℃、CDCl3):8.15(dd、8.3Hz、1.8Hz)、7.46−7.56(m)、7.22(s)、6.82(d、8.75Hz)、3.12(s、Me)。
【0281】
化合物4:馬尿酸(3.57g、47.8mM)、p−t−ブチルベンズアルデヒド(8.0ml、47.8mM)、酢酸ナトリウム(3.2g、48.5mM)及び無水酢酸(35ml、317mM)を混合し、2日間よく撹拌した。得られた黄色混合物を冷脱イオン水(150ml)に添加し、黄色固体を濾過により収集し、アセトンから結晶化し、昇華(160℃)することにより精製した。収率:88%。mp.:142℃。分析計算値:C、78.7;H、6.27;N、4.58。実測値:C、78.7;H、6.25;N、4.58。M.S.:305(P)、105(PhCO)、77(Ph)。NMR(25℃、CDCl3):8.13−8.20(m)、7.50−7.64(m)、1.36(s、Me)。
【0282】
化合物5:馬尿酸(0.45g、2.5mM)、4−ジメチルアミノ−1−ナフトアルデヒド(0.50g、2.5mM)、酢酸ナトリウム(0.26g、3.9mM)及び無水酢酸(10ml、106mM)を混合し、2日間よく撹拌した。得られた赤色混合物を冷脱イオン水(100ml)に添加し、赤色油を形成した。ジエチルエーテル(30ml)を用いて赤色生成物を抽出した。次に溶媒を除去し、赤色液体を、トルエンを用いてシリカゲルカラムに通した。深赤色溶離物を収集し、溶媒を除去した後赤色液体を得た(0.52g)。
【0283】
化合物6:4−ニトロ馬尿酸(2.25g、10.0mM)、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド(1.53ml、10.2mM)、酢酸ナトリウム(0.75g、11.4mM)及び無水酢酸(40ml、424mM)を混合し、2日間よく撹拌した。得られた深赤色混合物を冷脱イオン水(150ml)に添加し黒色固体を濾過により収集し、アセトンから結晶化し、昇華(190℃)により精製した。M.S.:337(P)、159(P−NO2PhCOCO)。NMR(25℃、CDCl3):8.29(q、8.5Hz)、8.12(d、8.0Hz)、7.26(d、11Hz)、6.74(d、8.5Hz)、3.12(s、Me)。
【0284】
化合物7:N−アセチルグリシン(2.02g、17.3mM)、p−ジメチルアミノベンズアルデヒド(2.49g、16.7mM)、酢酸ナトリウム(0.91g、13.8mM)及び無水酢酸(10ml、106mM)を混合し、2日間よく撹拌した。得た深赤色混合物を冷脱イオン水(150ml)に添加し、赤みがかった固体を濾過により収集し、アセトンから結晶化により精製した。
【0285】
OLEDは次の手順を用いて製造した: ITO/硼珪酸塩基板(100Ω/□)を、洗浄剤を用いて5分間超音波にかけ、次に脱イオン水で濯くことにより清浄にした。それらを、次に2分間、沸騰する1,1,1−トリクロロエタン中で2回処理した。それら基板をアセトンと共に2分間2回超音波にかけ、メタノールで2分間2回超音波にかけた。
【0286】
蒸着する前にバックグラウンド圧力を通常7×10−7トール以下にし、蒸着中の圧力を約5×10−7〜1.1×10−6トールにした。
【0287】
全ての化学物質を、種々のタンタルボート中で抵抗加熱した。先ずTPDを1〜4Å/秒の速度で蒸着した。その厚さは典型的には300Åに調節した。
【0288】
電子輸送層Alq3に化合物3をドープした。典型的には、基板を覆ったままドーパントを先ず気化した。ドーパントの速度が安定化した後、ホスト材料を或る速度まで気化した。次に基板上の覆いを開け、ホスト及びゲストを希望の濃度で蒸着した。ドーパントの速度は通常0.1〜0.2Å/秒であった。この層の全厚さは450Åに調節した。
【0289】
次に基板を空気中に開放し、基板上にマスクを直接置いた。マスクはステンレス鋼シートから作られており、0.25、0.5、0.75、及び1.0mmの直径を持つ孔が開いていた。次にそれら基板を真空へ戻し、更に被覆した。
【0290】
マグネシウム及び銀を、通常2.6Å/秒の速度で同時に蒸着した。Mg:Agの比率は7:1〜12:1の範囲にあった。この層の厚さは、典型的には500Åであった。最後に1000ÅのAgを1〜4Å/秒の速度で蒸着した。
【0291】
デバイスの特徴は、製造してから5時間以内に決定した。典型的には、エレクトロルミネッセンススペクトル、I−V曲線、及び量子収量を直接全面から測定した。
【0292】
ドーパントとして化合物3を含むドープしたデバイス、及びドープしていないAlq3デバイスのスペクトルを、図3C1に示す。このデバイスからの発光は化合物3ドーパントからくるものであった。
【0293】
図3C2に示したデバイスのI−V特性は、その化合物をOLEDに用いることができることを示すのみならず、そのような化合物は与えられた電圧に対し増大した電流レベルを与えることができることも示している。
【0294】
D.燐光ドーパント化合物を含む発光層を有するOLEDの例 有機発光デバイス(OLED)の製造に用いた手順は次の通りであった。 ホール輸送材料TPD及び電子輸送材料Alq3を、文献の手順に従って合成し、使用する前に昇華した。ドーパントPtOEPはユタ州ローガンのポルフィリン・プロダクツ社から購入し、受け取ったまま用いた。
【0295】
OLEDは次の手順を用いて製造した: ITO/硼珪酸塩基板(100Ω/□)を、洗浄剤を用いて5分間超音波にかけ、次に脱イオン水で濯くことにより清浄にした。それらを、次に2分間、沸騰する1,1,1−トリクロロエタン中で2回処理した。それら基板をアセトンと共に2分間2回超音波にかけ、メタノールで2分間2回超音波にかけた。
【0296】
蒸着する前にバックグラウンド圧力を通常7×10−7トール以下にし、蒸着中の圧力を約5×10−7〜1.1×10−6トールにした。
【0297】
全ての化学物質を、種々のタンタルボート中で抵抗加熱した。先ずTPDを1〜4Å/秒の速度で蒸着した。その厚さは典型的には300Åに調節した。
【0298】
電子輸送層Alq3にPtOEPをドープした。典型的には、基板を覆ったままドーパントを先ず気化した。ドーパントの速度が安定化した後、ホスト材料を或る速度まで気化した。次に基板上の覆いを開け、ホスト及びゲストを希望の濃度で蒸着した。ドーパントの速度は通常0.1〜0.2Å/秒であった。この層の全厚さは約450Åに調節した。
【0299】
次に基板を蒸着装置から取り出し、基板上にマスクを直接置いた。マスクはステンレス鋼シートから作られており、0.25、0.5、0.75、及び1.0mmの直径を持つ孔が開いていた。次にそれら基板を真空中へ戻し、更に被覆した。
【0300】
マグネシウム及び銀を、通常2.6Å/秒の速度で同時に蒸着した。Mg:Agの比率は7:1〜12:1の範囲にあった。この層の厚さは、典型的には500Åであった。最後に1000ÅのAgを1〜4Å/秒の速度で蒸着した。
【0301】
デバイスの特徴は、製造してから5時間以内に決定した。典型的には、エレクトロルミネッセンススペクトル、I−V曲線、及び量子収量を直接前面から測定した。
【0302】
E.対称性の少ない燐光ドーパント化合物を含む発光層を有するOLEDの例 ホール輸送材料TPD及び電子輸送材料Alq3を、文献の手順に従って合成し、使用する前に昇華した。ドーパントPtDPP化合物、及び同じく白金化されていてもよい付加的ポルフィリン化合物を、下に記載するように合成した。
【0303】
OLEDは次の手順を用いて製造した: ITO/硼珪酸塩基板(100Ω/□)を、5分間、洗浄剤と共に超音波にかけ、次に脱イオン水で濯くことにより清浄にした。それらを、次に2分間、沸騰する1,1,1−トリクロロエタン中で2回処理した。それら基板をアセトンと共に2分間2回超音波にかけ、メタノールで2分間2回超音波にかけた。
【0304】
蒸着する前にバックグラウンド圧力を通常7×10−7トール以下にし、蒸着中の圧力を約5×10−7〜1.1×10−6トールにした。
【0305】
全ての化学物質を、種々のタンタルボート中で抵抗加熱した。先ずTPDを1〜4Å/秒の速度で蒸着した。その厚さは典型的には300Åに調節した。
【0306】
電子輸送層Alq3にドーパント化合物、例えばPtDPPをドープした。典型的には、基板を覆ったままドーパントを先ず気化した。ドーパントの速度が安定化した後、ホスト材料を或る速度まで気化した。次に基板上の覆いを開け、ホスト及びゲストを希望の濃度で蒸着した。ドーパントの速度は通常0.1〜0.2Å/秒であった。この層の全厚さは約450Åに調節した。
【0307】
基板を蒸着装置から取り出し、基板上にマスクを直接置いた。マスクはステンレス鋼シートから作られており、0.25、0.5、0.75、及び1.0mmの直径を持つ孔が開いていた。次にそれら基板を真空中へ戻し、更に被覆した。
【0308】
マグネシウム及び銀を、通常2.6Å/秒の速度で同時に蒸着した。Mg:Agの比率は7:1〜12:1の範囲にあった。この層の厚さは、典型的には500Åであった。最後に1000ÅのAgを1〜4Å/秒の速度で蒸着した。
【0309】
デバイスの特徴は、製造してから5時間以内に決定した。典型的には、エレクトロルミネッセンススペクトル、I−V曲線、及び量子収量を直接前面から測定した。
【0310】
化合物の合成及びそれらの特性 2,2’−ジピリルメタンを、文献の手順〔Aust.J.Chem.,22,229−249(1969)〕を修正して製造した。
【0311】
2,2’−ジピリルチオン。150mlの乾燥THF中にチオホスゲン7.0ml(90mM)を入れた激しく撹拌した溶液に、12.5g(186mM)のピロールを滴下した。30分後、メタノール(20ml)を添加し、混合物を室温で30分間更に撹拌した。次に、得られた混合物を乾燥するまで蒸発した。この粗製材料を、更に精製することなく次の段階で用いた。
【0312】
2,2’−ジピリルケトン。前述の粗製チオンを10gのKOHを含有する200mlの95%EtOHの中に入れたものへ、0℃で17mlのH2O2(30%)をゆっくり添加した。その混合物を、0℃で2時間撹拌し、次に60℃で30分間撹拌し、然る後、その最初の体積の1/5まで濃縮した。100mlのH2Oを添加し、沈澱物を濾過し、冷EtOHで洗浄し、乾燥した生成物(5.6g,チオホスゲンから39%)を得、それは次の段階で用いるのに充分純粋であった。
【0313】
2,2’−ジピリルメタン。3.3mlのモルホリンを含有する200mlの95%のエタノール中に3.3g(20.1mM)の2,2’−ジピリルケトンを入れた溶液に、N2中で還流させながらNaBH4を数回にわけて(1.7g×6)添加した。各添加後10分して3mlのH2Oを添加した。最後の添加後、混合物を更に2時間還流させた。次に300mlのH2Oを添加し、その混合物をEt2Oで数回抽出した。抽出物を一緒にし、MgSO4で乾燥し、濃縮して濃い油を得、それをヘキサンで、抽出物がTLCにより認め得る程の量の生成物を示さなくなるまで、抽出した。一緒にしたヘキサン部分を濃縮し、生成物として2.3g(78%)の淡黄色の結晶を得た。
【0314】
5,15−メソ−ジフェニルポルフィリンの一般的合成: 2,2’−ジピリルメタン(0.5g、3.42mM)及び等モル量のアルデヒドを500mlの乾燥CH2Cl2中に溶解した。その溶液をN2で15分間パージした。次にトリフルオロ酢酸(154μl、2.6mM)を注射器で添加し、混合物を3時間N2中で光を当てないようにして撹拌した。2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノキノン(1.04g、4.6mM)を添加し、撹拌を30分間続けた。得られた暗い溶液をその最初の体積の1/3まで濃縮し、ヘキサンでシリカゲルを詰めたカラムに注いだ。CH2Cl2で溶離することにより紫の帯域を与え、それを濃縮して紫の固体を得、それを濾過し、エタノールで洗浄し、次にヘキサンで洗浄した。それら固体は、光ルミネッセンスの測定を行なうのに充分純粋であった。
【0315】
5,15−メモ−ジフェニルポルフィリン(H2DPP):収率:0.63g、80%、MS(El)m/z(相対強度)462(M+、100)、386(50)、368(30)、313(25)、231(50)。 5,15−メモ−ビス(ペンタフルオロフェニル)ポルフィリン(H2BPFPP):収率:0.05g、5%、MS(El)、m/z(相対強度)642(M+、100)、632(8)、602(8)、368(45)、321(35)、236(40)。 5,15−メモ−ビス(4−シクロフェニル)ポルフィリン(H2BCPP):収率:0.09g、10%、MS(El)、m/z(相対強度)512(M+、100)、411(50)、368(35)、355(40)、294(45)、281(50)。 5,15−メモ−ビス(4−アニシル)ポルフィリン(H2BAP):収率:0.09g、10%、MS(El)m/z(相対強度)522(M+、8)、416(100)、401(20)、372(23)。
【0316】
白金(II)5,15−メモ−ジフェニルポルフィリン(PtDPP)。10mlの乾燥トルエン中にH2DPP(0.05g、0.11mM)及びPt(PhCN)2Cl2(0.1g、0.22mM)を入れた混合物を、N2中で24時間還流した。得られた溶液を真空中で完全に乾燥し、微量のPhCNを除去した。暗い固体をCH2Cl2中に溶解し、ヘキサン:CH2Cl2(1:1v/v)を用いてクロマトグラフにかけ、生成物として赤色固体(0.04g、56%)を得た。1H NMR:δ10.15(s、2H)、9.207(dd、4H、J1=12Hz、J2=7.5Hz)、8.93(dd、4H、J1=12Hz、J2=7.5Hz)8.18(m、4H)、7.77(m、6H)。%、MS(El)m/z(相対強度)655(M+、100)、577(30)、326(50)、288(35)。
【0317】
F.対称性分子構造を有する化合物からなるガラス状有機ホール輸送材料を含むホール輸送層を有するOLEDの例 有機発光デバイス(OLED)の製法: 化学物質: IBSを、次の手順により製造した:丸底フラスコに、Na−t−ブトキシド(4.25g)、Pd2dba3(0.22g)、DPPF(ジフェニルホスフィノフェロセン、0.33g)、及び50mlの無水トルエンを入れた。反応混合物をアルゴン中、90℃で15分間撹拌した。次に、ジブロモビフェニル(3.12g)及びイミノスチルベン(4.25g)を添加し、質量分光計によってアミンが検出されなくなるまで、反応を8時間撹拌した。次に溶媒を反応混合物からストリップし、粗製残渣を真空中で乾燥した。次に乾燥した残渣を、減圧下(10−4トール)で勾配昇華にかけた。昇華により純粋な物質2.06g、理論的反応収率36%を得た。
【0318】
IDBを次の手順により製造した:51mM(10.000g)のイミノジスチルベンを、17mM(6.94g)の4,4′−ジヨードビフェニルと反応させた。反応生成物を凝縮器を取り付けた丸底フラスコに、34mM(2.16g)の銅粉末、68mM(9.398g)の炭酸カリウム、2mM(0.530g)の18−クラウン−6エーテル、及び20mlのo−ジクロロベンゼンと共に入れた。フラスコを185℃に加熱し、次にアルゴン中、24時間還流した。反応混合物を熱いまま濾過し、濾液を真空中に入れ、溶媒を除去した。次に残渣をシリカゲルの短いカラムにトルエンにより通過させた。次に溶媒をカラム濾液から除去し、後に残った固体を0.01トールの真空中220℃で昇華し、精製した。
【0319】
TPD及びNPDと同様、電子輸送材料Alq3を、文献の手順に従って合成した。全ての有機材料を、使用する前に昇華した。
【0320】
手順: ITO/硼珪酸塩基板(100Ω/□)を、5分間、洗浄剤と共に超音波にかけ、次に脱イオン水で濯くことにより清浄にした。それらを、次に2分間、沸騰する1,1,1−トリクロロエタン中で2回処理した。それら基板をアセトンと共に2分間2回超音波にかけ、メタノールで2分間2回超音波にかけた。
【0321】
蒸着する前にバックグラウンド圧力を8×10−7トールにし、蒸着中の圧力を約5×10−7〜2×10−6トールにした。
【0322】
化学物質を、抵抗加熱したタンタルボートから昇華させ、次に1〜3.6Å/秒の速度で蒸着した。その厚さは300Åに調節した。
【0323】
電子輸送層(Alq3)を1〜3.3Å/秒の速度で蒸着した。その層の全厚さは450Åに調節した。
【0324】
基板を空気中に解放し、基板上にマスクを直接置いた。マスクはステンレス鋼シートから作られており、0.25、0.5、0.75、及び1.0mmの直径を持つ孔が開いていた。次にそれら基板を真空中へ戻し、更に被覆した。
【0325】
マグネシウム及び銀を、2Å/秒の速度で同時に蒸着した。Mg:Agの比率は9:1であった。この層の厚さは500Åであった。最後に1000ÅのAgを2.7Å/秒の速度で蒸着した。
【0326】
デバイスの特徴: デバイスの特徴は、製造してから1日以内に決定した。I−V曲線、量子収量、及び輝度を測定した。これらの測定した量から導いたOLEDデータを表F2に記載する。デバイスの電流・電圧(I−V)特性は、表F1及びF2に示す。
【0327】
図6F1は、上で述べたように、基板上に順次ITOアノード、HTL、Alq3ETL、及びMg−Agカソードを蒸着したものからなる単一ヘテロ構造を有するOLEDの電流・電圧特性を示している。四つの異なったHTL材料:TPD、NPD、ISB、及びIDBについて四つの異なったプロットが示されている。TPD、NPD、及びISBについての電流・電圧プロットは非常に似ており、OLEDの電流・電圧特性は、HTLがTPDか、NPDか、又はISBであるかに拘わらず大して変化しない。IDBの場合の電流・電圧プロットは、TPD、NPD、及びISBについてのプロットよりも低い電流を示し、電流・電圧特性の見通しから、IDBは余り望ましくないHTLであることを示す。
【0328】
図6F2は、上で述べたように、基板上に順次ITOアノード、CuPcホール注入促進層、HTL、Alq3ETL、及びMg−Agカソードを蒸着したものからなる、ホール注入促進層を有する単一ヘテロ構造を有するOLEDの電流・電圧特性を示している。四つの異なったHTL材料:TPD、NPD、ISB、及びIDBについて四つの異なったプロットが示されている。TPD、NPD、及びISBについての電流・電圧プロットは非常に似ており、OLEDの電流・電圧特性は、HTLがTPDか、NPDか、又はISBであるかに拘わらず大して変化しない。IDBの場合の電流・電圧プロットは、TPD、NPD、及びISBについてのプロットよりも低い電流を示し、電流・電圧特性の見通しから、IDBは余り望ましくないHTLであることを示している。
【0329】
図6F1及び6F2は、二つの異なったOLED形状について、HTLとしてISBを用いたOLEDは、HTLとしてTPD又はNPDを用いたOLEDのものと同様な電流・電圧特性を持つことができることを示している。ISBのTgが高いこと及びISBを用いたOLEDの予想寿命が長いことに関連して、この類似性は、ISBは優れたHTLであることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0330】
【図1A1】標準的従来のOLEDの概略的例示図である。
【図1A2a】本発明の代表的OLEDを示す図である。
【図1A2b】本発明の別の代表的OLEDを示す図である。
【図1A3】ITOカソード層及びCuPc電子注入界面層を有する、図1A2aに示したOLEDの光出力対電流を示す図であり、この図に示した一番下の組の値は180時間で得られたものである。
【図1A4】Mg:Agカソード層を有する標準的従来のTOLED装置の光出力対電流を示す図であり、この図の一番下の組の値は180時間で測定された。
【図1A5】ZnPc電子注入界面層及びCuPc電子注入界面層についてのI−V曲線を示す図である。
【図1A6】CuPc電子注入界面層と比較して、ZnPc電子注入界面層について光出力対電流を示す図であり、CuPcデバイスの効率ηは0.23%、ZnPc装置は0.15%である。
【図1A7】ITOカソード及びCuPc電子注入界面層を有するOLEDの波長の関数として、透過率(T)、反射率(R)及び吸収率(A)を示す図である。
【図1A8】金属Mg:Agカソード層を有する標準的従来のOLEDのI−V特性を示す図であり、高い組の値は0時間で測定され、下の組の値は180時間で測定されたものである。
【図1A9】ITOカソード及びCuPc電子注入界面層を有するOLEDのI−V特性を示す図であり、高い組の値は0時間で測定され、下の組の値は60時間及び180時間で測定されたものである。
【図1A10】約30Åから約120Åまでの厚さのCuPc電子注入層を有するデバイスの光出力対電流を示す図であり、これらの装置は約0.1%の効率ηを示す。
【図1A11】図1A10のデバイスのI−V特性を示す図である。
【図1A12】0.4mmの直径の非金属カソードを有するTOLED(MF−TOLED)及び同じ真空サイクルで成長させた基準TOLEDの電流・電圧特性を示す図である。
【図1A13】非金属カソードを有するTOLED構造の概略的例示図である。
【図1A14】図1A12の非金属カソードを有するTOLED(MF−TOLED)及び基準TOLEDの駆動電流に対する表面及び底面からの合計光出力を示す図であり、測定された最大電流での輝度は2000cd/m2に相当する。
【図1A15】頂部及び底部の両方のデバイス表面からのエレクトロルミネッセンススペクトルを示す図であり、適合値(実線)は、本文に記載した計算方法を用い得た頂部からの発光スペクトルに相当する。
【図1A16】非金属カソードを有するTOLED提案された簡単にしたエネルギーレベル図であり、Dssは表面状態の密度を示す。
【図1A17】非金属カソードを有するTOLED及び従来のTOLEDについて撮ったデジタル再現写真を示し、従来のTOLEDは小さな灰色の領域として現れているのに対し、非金属カソードを有するTOLEDはデジタル再現写真では見えない。
【図2B1】CH2Cl2溶液中のAl−pNP、Al−pCb、Al−mCbの吸収及び蛍光スペクトルを示す図である。
【図2B2】Al−pNP層を有するOLEDのエレクトロルミネッセンス(EL)及び光ルミネッセンス(PL)スペクトルを示す図である。
【図2B3】Al−pNP層を有するOLEDのI−V特性を示す図である。
【図2B4】Al−pCb層を有するOLEDのI−V特性を示す図である。
【図2B5】Al−pCb層を有するOLEDのEL及びPLスペクトルを示す図である。
【図2B6】Al−pCb/ペリレン層を有するOLEDのEL及びPLスペクトルを示す図である。
【図2B7】Al−pCb/ペリレン層を有するOLEDのI−V特性を示す図である。
【図3C1】ドーパントとして0.8%の化合物3をドープしたデバイス及び非ドープAlq3デバイス(0%)のエレクトロルミネッセンススペクトルを、CH2Cl2中に存在させた時のドーパントの光ルミネッセンスと比較して示す図である。
【図3C2】ドープしたデバイス及び非ドープデバイスのI−V特性を示す図である。
【図4D1】TPPドープOLEDのエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを示す図である。
【図4D2】0.6モル%のPtOEPをドープしたAlq3層を有するOLEDの異なった電圧(6、9、12及び15V)での波長の関数としてELスペクトルを、TPPドープデバイスのEL(TPP EL)と比較して示す図である。
【図4D3】約6モル%のPtOEPをドープしたOLEDについて異なった電圧での波長の関数として示すELスペクトルの図である。
【図4D4】PtOEPをドープしたAlq3デバイスについて異なったPtOEP濃度での波長の関数として示す光ルミネッセンス(PL)スペクトルの図である。
【図4D5】PtOEPの溶液についての異なった波長での波長の関数としてPLスペクトルを、約0.6モル%のPtOEPをドープしたAlq3層を有するOLEDのELスペクトルと比較して示す図である。
【図5E1】OLED中の白金置換燐光ドーパント化合物として用いる白金ポルフィリンを製造するのに用いられる代表的ポルフィリン及び四種類の別のポルフィリンを示す図である。
【図5E2】PtDPPドープ重合体OLEDのエレクトロルミネッセンス(EL)スペクトルを、ポリスチレン中のPtDDPの光ルミネッセンス(PL)及びAlq3デバイス中にドープしたPtOEPのELスペクトルと比較して示す図である。
【図5E3a】(ITO/NPD/Alq3/MgAg)からなるOLEDのAlq3層中にドープしたPtDPPについての印加電圧の関数としてのELスペクトルを示す図である。
【図5E3b】PtDPPドープAlq3OLEDのELスペクトルを、PtOEPドープAlq3OLEDと比較して示す図である。
【図5E4】PtDPPドープOLEDからのCIE座標及び輝度出力を、他の赤色発光OLEDと比較して示す図である。
【図5E5】人間の視感度についてのCIE標準明所視反応曲線と、飽和赤色発光を生ずる化合物についての標準化発光スペクトルとの重なりを示す図である。
【図6F1】図6F1は、本発明の一つの態様についての電流対電圧プロットを示す図である。図6F2は、CuPcホール注入促進層を有する本発明の一つの態様についての電流対電圧プロットを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード、カソード、及び発光層を有する有機発光デバイスであって、前記発光層は前記アノードと前記カソードの間に配置され、前記発光層が燐光材料と電荷キャリアーホスト材料とを含み、前記有機発光デバイスに電圧を印加した場合には三重項励起状態から燐光放射線を発光するものであり、且つ、ディスプレイデバイス、車両、コンピューター、テレビジョン、プリンター、大面積壁スクリーン、劇場スクリーン、スタジアムスクリーン、掲示板、及び標識からなる群のものに使用できる、有機発光デバイス。
【請求項2】
前記燐光材料が、固体状態で室温において50%より大きな光ルミネッセンス量子収率を有する、請求項1記載の有機発光デバイス。
【請求項3】
10cd/m2を超える表示輝度である、請求項1または2に記載の有機発光デバイス。
【請求項4】
前記電荷キャリアーホスト材料が正孔輸送材料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項5】
前記電荷キャリアーホスト材料が電子輸送材料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項6】
前記燐光材料が10μ秒以下の燐光寿命を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項7】
前記燐光材料が10μ秒〜100μ秒の燐光寿命を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項8】
前記燐光材料が式I:
【化1】
(式中、Xは、CまたはNであり;
R8、R9及びR10は、それぞれ独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールからなる群から選択され;
R9及びR10は、一緒になって融合環を形成していてもよく;
M1は、2価、3価、または4価の金属であり;
a、b、及びcはそれぞれ0または1であり;
XがCである場合は、aは1であり;XがNである場合は、aは0であり;cが1である場合は、bは0であり;bが1である場合は、cは0である。)
の化学構造を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記燐光材料が、白金オクタエチルポルフィンであり、式:
【化2】
の化学構造を有し、Etはエチル基である、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
XがCであり、M1がPtである、請求項8記載のデバイス。
【請求項11】
ディスプレイデバイスに組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
車両に組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
コンピューターに組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
テレビジョンに組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
プリンターに組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
大面積壁スクリーンに組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
劇場スクリーンに組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
スタジアムスクリーンに組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
掲示板に組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
標識に組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項1】
アノード、カソード、及び発光層を有する有機発光デバイスであって、前記発光層は前記アノードと前記カソードの間に配置され、前記発光層が燐光材料と電荷キャリアーホスト材料とを含み、前記有機発光デバイスに電圧を印加した場合には三重項励起状態から燐光放射線を発光するものであり、且つ、ディスプレイデバイス、車両、コンピューター、テレビジョン、プリンター、大面積壁スクリーン、劇場スクリーン、スタジアムスクリーン、掲示板、及び標識からなる群のものに使用できる、有機発光デバイス。
【請求項2】
前記燐光材料が、固体状態で室温において50%より大きな光ルミネッセンス量子収率を有する、請求項1記載の有機発光デバイス。
【請求項3】
10cd/m2を超える表示輝度である、請求項1または2に記載の有機発光デバイス。
【請求項4】
前記電荷キャリアーホスト材料が正孔輸送材料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項5】
前記電荷キャリアーホスト材料が電子輸送材料である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項6】
前記燐光材料が10μ秒以下の燐光寿命を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項7】
前記燐光材料が10μ秒〜100μ秒の燐光寿命を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の有機発光デバイス。
【請求項8】
前記燐光材料が式I:
【化1】
(式中、Xは、CまたはNであり;
R8、R9及びR10は、それぞれ独立に、水素、アルキル、置換アルキル、アリール、及び置換アリールからなる群から選択され;
R9及びR10は、一緒になって融合環を形成していてもよく;
M1は、2価、3価、または4価の金属であり;
a、b、及びcはそれぞれ0または1であり;
XがCである場合は、aは1であり;XがNである場合は、aは0であり;cが1である場合は、bは0であり;bが1である場合は、cは0である。)
の化学構造を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記燐光材料が、白金オクタエチルポルフィンであり、式:
【化2】
の化学構造を有し、Etはエチル基である、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
XがCであり、M1がPtである、請求項8記載のデバイス。
【請求項11】
ディスプレイデバイスに組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
車両に組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
コンピューターに組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
テレビジョンに組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
プリンターに組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
大面積壁スクリーンに組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
劇場スクリーンに組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項18】
スタジアムスクリーンに組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項19】
掲示板に組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項20】
標識に組み込まれている、請求項1〜10のいずれか一項に記載のデバイス。
【図1A1】
【図1A2a】
【図1A2b】
【図1A3】
【図1A4】
【図1A5】
【図1A6】
【図1A7】
【図1A8】
【図1A9】
【図1A10】
【図1A11】
【図1A12】
【図1A13】
【図1A14】
【図1A15】
【図1A16】
【図1A17】
【図2B1】
【図2B2】
【図2B3】
【図2B4】
【図2B5】
【図2B6】
【図2B7】
【図3C1】
【図3C2】
【図4D1】
【図4D2】
【図4D3】
【図4D4】
【図4D5】
【図5E1】
【図5E2】
【図5E3a】
【図5E3b】
【図5E4】
【図5E5】
【図6F1】
【図1A2a】
【図1A2b】
【図1A3】
【図1A4】
【図1A5】
【図1A6】
【図1A7】
【図1A8】
【図1A9】
【図1A10】
【図1A11】
【図1A12】
【図1A13】
【図1A14】
【図1A15】
【図1A16】
【図1A17】
【図2B1】
【図2B2】
【図2B3】
【図2B4】
【図2B5】
【図2B6】
【図2B7】
【図3C1】
【図3C2】
【図4D1】
【図4D2】
【図4D3】
【図4D4】
【図4D5】
【図5E1】
【図5E2】
【図5E3a】
【図5E3b】
【図5E4】
【図5E5】
【図6F1】
【公開番号】特開2006−303527(P2006−303527A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−165287(P2006−165287)
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【分割の表示】特願2000−516507(P2000−516507)の分割
【原出願日】平成10年10月8日(1998.10.8)
【出願人】(591003552)ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ (68)
【出願人】(500223316)ザ ユニバーシティー オブ サザン カリフォルニア (3)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月14日(2006.6.14)
【分割の表示】特願2000−516507(P2000−516507)の分割
【原出願日】平成10年10月8日(1998.10.8)
【出願人】(591003552)ザ、トラスティーズ オブ プリンストン ユニバーシティ (68)
【出願人】(500223316)ザ ユニバーシティー オブ サザン カリフォルニア (3)
【Fターム(参考)】
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