説明

高速カオス光信号生成光回路および高速カオス光信号生成方法

【課題】システム全体の簡素化が可能で、高速の乱数生成要求にも対応できる乱雑性の高い乱数を生成する。
【解決手段】高速カオス光信号生成光回路は、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossから出力される信号光を位相変調駆動用信号光として、変調部MZ−1の2つの干渉アーム中を伝搬している信号光に位相差を生じさせ、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから出力される信号光を位相変調駆動用信号光として、変調部MZ−2の2つの干渉アーム中を伝搬している信号光に位相差を生じさせ、さらに、変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから出力される信号光を位相変調駆動用信号光として、変調部MZ−1の2つの干渉アーム中を伝搬しているクロック信号光に位相差を生じさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスモデリング、金融デリバティブ計算、気象シミュレーション等の計算を行う計算器に用いられる乱数や、秘密鍵共有の暗号システムに用いられる乱数、あるいは量子暗号通信に用いられる乱数などを生成するための高速カオス光信号生成光回路および高速カオス光信号生成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、乱数を生成する方法としては、大まかに言って3つの方法が提案されている。第1の乱数生成方法は、乱数発生プログラムに基づき計算により乱数を生成するものである。第2の乱数生成方法は、電子回路に内在する物理的な雑音を基に乱数を生成するものである。
【0003】
第3の乱数生成方法は、(1)カオス・レーザー(非特許文献1参照)や、(2)レーザー光をE/O(Electrical/Optical)変調器を用いて一定時間前の出力パワーに応じて強度変調するO/E(Optical/Electrical)変換遅延フィードバック電気回路を持つ光カオス信号源(特許文献1参照)や、(3)熱光学効果により2つの干渉アームの光路長差を制御してその光路長差に一定の関係性を持たせるように制御した複数のマッハツェンダー干渉器を用いて、それぞれのマッハツェンダー干渉器からの出力パワーにカオス写像関係性を実現する装置(特許文献2参照)などからの出力カオス信号を基に乱数を生成するものである。
【0004】
上記の第1、第2の乱数生成方法には、実用の電子デバイスの動作周波数(非特許文献2参照)に基づく生成速度限界があり、10Gb/sを超える高速信号生成には十分に対応することができない状況にある。
【0005】
非特許文献1に開示されたカオス・レーザーによる乱数生成においては、格段に高速な乱数生成が可能であるとの報告があるが、カオス・レーザーシステムの複雑さのために再現性を確保することが難しく、また、光ファイバ部等を含むシステム構成で有るためにシステム全体を集積化、小型化することも難しい。
【0006】
加えて、カオス・レーザーによって生成される乱数は、光共振器を用いることに起因した周期性や従来よく知られたカオス生成メカニズムに基づき生成された信号であるため、出力信号光にカオス性が認められるものの、乱雑性の上では不完全さがあり、熱雑音等と同様な「ランダムな」信号となっている訳ではない。
【0007】
このため、非特許文献1の例では、まず2系統のカオス的出力光信号を用意し、この2系統のカオス的出力光信号に対して1ビットAD変換を施した後にXOR論理演算処理を施す、という論理演算等の後処理で信号の乱雑性を高めることが必要とされる。このため、後処理の論理演算部を含む複雑で大きなシステムとなることが避けられない。
【0008】
特許文献1に開示された光カオス信号源による乱数生成においても、光ファイバ部や高周波電気増幅器等を含むシステム構成が必要なために、システム全体を集積化することが難しい。
特許文献2に開示された光カオス乱数発生装置においては、熱光学効果に基づく制御速度(数ms)に基づく乱数生成速度の限界があり、加えて温度制御部、デジタルデータ処理部、記憶装置等々から構成されるため、装置全体を集積化することが難しいといった課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第2960406号公報
【特許文献2】特許第3396883号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】A.Uchida,et al.,“Fast physical random bit generation with chaotic semiconductor lasers”,Nature Photonics,vol.2,p.728-732,2008
【非特許文献2】「Tビット/秒に入るスイッチ光技術の取り組み」,日経エレクトロニクス,No.719,p.107-113,1998.6.29
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように、第1、第2の乱数生成方法では、10Gb/sを超える高速信号生成に対応することができないという問題点があった。
非特許文献1に開示されたカオス・レーザーによる乱数生成方法では、システムを集積化、小型化することが難しく、信号の乱雑性を高めるためにシステムが複雑になるという問題点があった。
【0012】
特許文献1に開示された光カオス信号源による乱数生成方法では、システムを集積化、小型化することが難しいという問題点があった。
特許文献2に開示された光カオス乱数発生装置では、高速信号生成に対応することが難しく、加えてシステム全体を集積化することが難しいという問題点があった。
【0013】
本発明の目的は、デバイスモデリング、金融デリバティブ計算、気象シミュレーション等の計算を行う計算器に用いられる乱数や、秘密鍵共有の暗号システムに用いられる乱数、あるいは量子暗号通信に用いられる乱数などを生成するための高速カオス光信号生成光回路および高速カオス光信号生成方法において、システム全体の簡素化・集積化が可能で、且つ高速化に適した光カオス方式の特性を活かした超高速の光乱数生成要求にも対応することができる乱雑性の高い乱数を生成可能な高速カオス光信号生成光回路および高速カオス光信号生成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の高速カオス光信号生成光回路は、RZ型クロック信号光を入力する第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1と、前記RZ型クロック信号光を入力する第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2と、前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から出力されたRZ型クロック信号光を2系統に分波する第1の光分波手段SP−1と、前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2の2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barの内のいずれか一方から出力されたRZ型クロック信号光を4系統に分波する第2の光分波手段SP−2と、前記第1の光分波手段SP−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第1のクロック信号光として前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1内の第1の位相変調手段へと導く第1の光導波路と、前記第2の光分波手段SP−2で分波された4系統のRZ型クロック信号光の内の2系統を位相変調駆動用の第2のクロック信号光として前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2内の第2の位相変調手段へと導く第2の光導波路と、前記第2の光分波手段SP−2で分波された4系統のRZ型クロック信号光の内の残りの2系統を位相変調駆動用の第3のクロック信号光として前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1内の第3の位相変調手段へと導く第3の光導波路とを備え、前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1は、前記RZ型クロック信号光を受ける第1の光入力ポートP−MZ−1−1と、この第1の光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたRZ型クロック信号光を伝送する2つの第1の干渉アームと、この2つの第1の干渉アームの端部に設けられた前記2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barと、前記2つの第1の干渉アームに1つずつ設けられ、前記第1の干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、前記第1の光導波路から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1と、この第1の位相変調手段R1−1,L1−1よりも後ろの前記2つの第1の干渉アームに1つずつ設けられ、前記第1の干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、前記第3の光導波路から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2とから構成され、前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2は、前記RZ型クロック信号光を受ける第2の光入力ポートP−MZ−2−1と、この第2の光入力ポートP−MZ−2−1に入力されたRZ型クロック信号光を伝送する2つの第2の干渉アームと、この2つの第2の干渉アームの端部に設けられた前記2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barと、前記2つの第2の干渉アームに1つずつ設けられ、前記第2の干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、前記第2の光導波路から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する前記第2の位相変調手段R2,L2とから構成され、前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から出力信号光を得ることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の高速カオス光信号生成光回路は、RZ型クロック信号光を入力する第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1と、前記RZ型クロック信号光を入力する第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2と、前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から出力されたRZ型クロック信号光を2系統に分波する第1の光分波手段SP−1と、前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2の2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barの内のいずれか一方から出力されたRZ型クロック信号光を2系統に分波する第2の光分波手段SP−2−1と、前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2の2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barの内、前記第2の光分波手段SP−2−1と接続されていない方から出力されたRZ型クロック信号光を2系統に分波する第3の光分波手段SP−2−2と、前記第1の光分波手段SP−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第1のクロック信号光として前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1内の第1の位相変調手段へと導く第1の光導波路と、前記第2の光分波手段SP−2−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第2のクロック信号光として前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2内の第2の位相変調手段へと導く第2の光導波路と、前記第3の光分波手段SP−2−2で分波された2系統のRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第3のクロック信号光として前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1内の第3の位相変調手段へと導く第3の光導波路とを備え、前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1は、前記RZ型クロック信号光を受ける第1の光入力ポートP−MZ−1−1と、この第1の光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたRZ型クロック信号光を伝送する2つの第1の干渉アームと、この2つの第1の干渉アームの端部に設けられた前記2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barと、前記2つの第1の干渉アームに1つずつ設けられ、前記第1の干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、前記第1の光導波路から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1と、この第1の位相変調手段R1−1,L1−1よりも後ろの前記2つの第1の干渉アームに1つずつ設けられ、前記第1の干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、前記第3の光導波路から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2とから構成され、前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2は、前記RZ型クロック信号光を受ける第2の光入力ポートP−MZ−2−1と、この第2の光入力ポートP−MZ−2−1に入力されたRZ型クロック信号光を伝送する2つの第2の干渉アームと、この2つの第2の干渉アームの端部に設けられた前記2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barと、前記2つの第2の干渉アームに1つずつ設けられ、前記第2の干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、前記第2の光導波路から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する前記第2の位相変調手段R2,L2とから構成され、前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から出力信号光を得ることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の高速カオス光信号生成光回路の1構成例は、さらに、前記第1の光導波路に設けられ、前記第1の光分波手段SP−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光が前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する第1の光伝搬遅延差付与手段D−D−1と、前記第2の光導波路に設けられ、前記第2の光分波手段SP−2で分波された4系統のRZ型クロック信号光の内の2系統が前記第2の位相変調手段R2,L2に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、前記第2の位相変調手段R2,L2に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、前記第2の位相変調手段R2,L2に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する第2の光伝搬遅延差付与手段D−D−2と、前記第3の光導波路に設けられ、前記第2の光分波手段SP−2で分波された4系統のRZ型クロック信号光の内の2系統が前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する第3の光伝搬遅延差付与手段D−D−2−1とを備えることを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の高速カオス光信号生成光回路の1構成例は、さらに、前記第1の光導波路に設けられ、前記第1の光分波手段SP−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光が前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する第1の光伝搬遅延差付与手段D−D−1と、前記第2の光導波路に設けられ、前記第2の光分波手段SP−2−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光が前記第2の位相変調手段R2,L2に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、前記第2の位相変調手段R2,L2に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、前記第2の位相変調手段R2,L2に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する第2の光伝搬遅延差付与手段D−D−2と、前記第3の光導波路に設けられ、前記第3の光分波手段SP−2−2で分波された2系統のRZ型クロック信号光が前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する第3の光伝搬遅延差付与手段D−D−2−1とを備えることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の高速カオス光信号生成方法は、RZ型クロック信号光を第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の第1の光入力ポートP−MZ−1−1と第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2の第2の光入力ポートP−MZ−2−1とに入力し、前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から出力されるRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第1のクロック信号光として、前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1内の2つの第1の干渉アームに1つずつ設けられた第1の位相変調手段R1−1,L1−1に入力することにより、前記第1の光入力ポートP−MZ−1−1から入力され前記2つの第1の干渉アーム中を伝搬しているRZ型クロック信号光に位相差を生じさせ、同時に、前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2の2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barの内のいずれか一方から出力されるRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第2のクロック信号光として、前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2内の2つの第2の干渉アームに1つずつ設けられた第2の位相変調手段R2,L2に入力することにより、前記第2の光入力ポートP−MZ−2−1から入力され前記2つの第2の干渉アーム中を伝搬しているRZ型クロック信号光に位相差を生じさせ、さらに、前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2の2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barの内のいずれか一方から出力されるRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第3のクロック信号光として、前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1よりも後ろの前記2つの第1の干渉アームに1つずつ設けられた第3の位相変調手段R1−2,L1−2に入力することにより、前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1によって位相変調され前記2つの第1の干渉アーム中を伝搬しているRZ型クロック信号光に位相差を生じさせ、前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から出力信号光を得ることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の高速カオス光信号生成方法の1構成例において、前記位相変調駆動用の第1のクロック信号光として用いられるRZ型クロック信号光は、前記出力信号光と同一の光出力ポートから出力されたRZ型クロック信号光である。
また、本発明の高速カオス光信号生成方法の1構成例において、前記位相変調駆動用の第1のクロック信号光として用いられるRZ型クロック信号光は、前記出力信号光と異なる光出力ポートから出力されたRZ型クロック信号光である。
また、本発明の高速カオス光信号生成方法の1構成例において、前記位相変調駆動用の第2のクロック信号光として用いられるRZ型クロック信号光と前記位相変調駆動用の第3のクロック信号光として用いられるRZ型クロック信号光とは、同一の光出力ポートから出力されたRZ型クロック信号光である。
また、本発明の高速カオス光信号生成方法の1構成例において、前記位相変調駆動用の第2のクロック信号光として用いられるRZ型クロック信号光と前記位相変調駆動用の第3のクロック信号光として用いられるRZ型クロック信号光とは、異なる光出力ポートから出力されたRZ型クロック信号光である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から出力されるRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第1のクロック信号光として、第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1内の2つの第1の干渉アームに1つずつ設けられた第1の位相変調手段R1−1,L1−1に入力することにより、第1の光入力ポートP−MZ−1−1から入力され2つの第1の干渉アーム中を伝搬しているRZ型クロック信号光に位相差を生じさせ、同時に、第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2の2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barの内のいずれか一方から出力されるRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第2のクロック信号光として、第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2内の2つの第2の干渉アームに1つずつ設けられた第2の位相変調手段R2,L2に入力することにより、第2の光入力ポートP−MZ−2−1から入力され2つの第2の干渉アーム中を伝搬しているRZ型クロック信号光に位相差を生じさせ、さらに、第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2の2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barの内のいずれか一方から出力されるRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第3のクロック信号光として、第1の位相変調手段R1−1,L1−1よりも後ろの2つの第1の干渉アームに1つずつ設けられた第3の位相変調手段R1−2,L1−2に入力することにより、第1の位相変調手段R1−1,L1−1によって位相変調され2つの第1の干渉アーム中を伝搬しているRZ型クロック信号光に位相差を生じさせるので、基本的にはカオス力学に基づき工学的に応用・実現可能な低次元カオス系を応用しつつ、カオス力学に従う系からの出力信号を応用する方式で問題となる連続する時系列の隣合う信号間の規則性を抑えてより乱雑性の高い出力信号を得ることができ、システム全体の簡素化・集積化が可能で、且つ高速化に適した光カオス方式の特性を活かした10Gb/sを超える超高速の光乱数生成要求にも対応することができる乱雑性の高い乱数を生成可能となる。本発明では、従来の乱数発生プログラムまたは電子回路による乱数生成方法では実現不可能であった10Gb/sを超える高速な乱数データ生成を実現することができる。また、本発明では、カオス・レーザーによる乱数生成方法のような複雑なシステム構成では困難であった、工学応用上必須となる再現性と制御性とを実現することができ、さらに高精度性とシステムの集積化を実現することができる。また、本発明では、光カオス信号源による乱数生成方法では実現不可能であったシステムの集積化を実現することができる。また、本発明では、カオス・レーザーによる乱数生成方法や光カオス信号源による乱数生成方法のように、単独では信号の乱雑性が不十分であるために、後段の論理処理回路や論理処理システムを必要とし、システム全体が大きくなってしまうという問題点を解消することができる。また、本発明では、熱光学効果により2つの干渉アームの光路長差を制御してその光路長差に一定の関係性を持たせるように制御した複数のマッハツェンダー干渉器を用いて、それぞれのマッハツェンダー干渉器からの出力パワーにカオス写像関係性を実現する装置のように、光路長差情報記憶装置や温度による光路長差制御部等を持つ必要がなくなり、システムの高速化および集積化を実現することができる。また、本発明では、光ファイバの非線形屈折率効果に基づく全光の光カオス現象を用いる装置で困難であった、工学応用上必須となる再現性と制御性とを実現することができ、さらにシステムの集積化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る高速カオス光信号生成光回路の構成例を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態におけるクロック信号光の光パワー変化の模式図である。
【図3】光入力ポートへの入力クロック信号光の入力タイミングおよび位相変調部への入力信号光の入力タイミングを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における光出力ポートから出力されるクロック光パルスの規格化光出力強度の例を示す図である。
【図5】通常のカオスダイナミクスに従う光信号の時系列のリターンマップを示す図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る高速カオス光信号生成方法に従う光信号の時系列のリターンマップを示す図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る高速カオス光信号生成光回路の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本実施の形態に係る高速カオス光信号生成光回路の構成例を示すブロック図である。
本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路は、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1,MZ−2と、第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の後述する光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されたRZ(Return to Zero)型クロック信号光を2系統に分波する光分波部SP−1と、第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の後述する光出力ポートP−MZ−2−crossから出力されたRZ型クロック信号光を4系統に分波する光分波部SP−2と、光分波部SP−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1内の後述する位相変調部R1−1,L1−1に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、位相変調部R1−1,L1−1に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、位相変調部R1−1,L1−1に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する光伝搬遅延差付与部D−D−1と、光分波部SP−2で分波された4系統のRZ型クロック信号光の内の2系統がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2内の後述する位相変調部R2,L2に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、位相変調部R2,L2に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、位相変調部R2,L2に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する光伝搬遅延差付与部D−D−2と、光分波部SP−2で分波された4系統のRZ型クロック信号光の内の2系統がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1内の後述する位相変調部R1−2,L1−2に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、位相変調部R1−2,L1−2に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、位相変調部R1−2,L1−2に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する光伝搬遅延差付与部D−D−2−1とから構成される。
【0023】
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1は、図示しないクロック信号光源から出力される、ピーク光パワーが一定のRZ型のクロック信号光を受ける光入力ポートP−MZ−1−1と、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたRZ型クロック信号光を伝送する2つの干渉アームと、この2つの干渉アームの端部に設けられた2つの光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barと、光分波部SP−1で分波された2つの光信号をマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの干渉アーム内の後述する位相変調部R1−1,L1−1へ入力するための位相変調駆動用の光入力ポートP−R1−1,P−L1−1と、光分波部SP−2で分波された4つの光信号の内の2つの光信号をマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの干渉アーム内の後述する位相変調部R1−2,L1−2へ入力するための位相変調駆動用の光入力ポートP−R1−2,P−L1−2と、2つの干渉アームに1つずつ設けられ、干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、光入力ポートP−R1−1,P−L1−1から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する位相変調部R1−1,L1−1と、位相変調部R1−1,L1−1よりも後ろの2つの干渉アームに1つずつ設けられ、干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、光入力ポートP−R1−2,P−L1−2から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する位相変調部R1−2,L1−2とから構成される。
【0024】
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2は、図示しないクロック信号光源から出力される、ピーク光パワーが一定のRZ型のクロック信号光を受ける光入力ポートP−MZ−2−1と、この光入力ポートP−MZ−2−1に入力されたRZ型クロック信号光を伝送する2つの干渉アームと、この2つの干渉アームの端部に設けられた2つの光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barと、光分波部SP−2で分波された4つの光信号の内の2つの光信号をマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の2つの干渉アーム内の後述する位相変調部R2,L2へ入力するための位相変調駆動用の光入力ポートP−R2,P−L2と、2つの干渉アームに1つずつ設けられ、干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、光入力ポートP−R2,P−L2から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する位相変調部R2,L2とから構成される。
【0025】
図1における100は一端が光入力ポートP−MZ−1−1に接続され他端が位相変調部L1−1の入力に接続された光導波路、101は一端が光導波路100に近接して配置され他端が位相変調部R1−1の入力に接続された光導波路、102は一端が位相変調部L1−1の出力に接続され他端が位相変調部L1−2の入力に接続された光導波路、103は一端が位相変調部R1−1の出力に接続され他端が位相変調部R1−2の入力に接続された光導波路、104は一端が位相変調部L1−2の出力に接続され他端が光出力ポートP−MZ−1−barに接続された光導波路、105は一端が位相変調部R1−2の出力に接続され他端が光出力ポートP−MZ−1−crossに接続され、一部が光導波路104と近接して配置された光導波路である。
【0026】
光導波路100,102,104がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の一方の干渉アームを構成し、光導波路101,103,105がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の他方の干渉アームを構成している。光導波路100と光導波路101との間では、光信号の漏洩が発生し、光導波路100に入力された光信号は光導波路101にも入力される。光導波路104と光導波路105との間では、相互に光信号の漏洩が発生する。
【0027】
また、106は一端が光入力ポートP−MZ−2−1に接続され他端が位相変調部L2の入力に接続された光導波路、107は一端が光導波路106に近接して配置され他端が位相変調部R2の入力に接続された光導波路、108は一端が位相変調部L2の出力に接続され他端が光出力ポートP−MZ−2−barに接続された光導波路、109は一端が位相変調部R2の出力に接続され他端が光出力ポートP−MZ−2−crossに接続され、一部が光導波路108と近接して配置された光導波路である。
【0028】
光導波路106,108がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の一方の干渉アームを構成し、光導波路107,109がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の他方の干渉アームを構成している。光導波路106と光導波路107との間では、光信号の漏洩が発生し、光導波路106に入力された光信号は光導波路107にも入力される。光導波路108と光導波路109との間では、相互に光信号の漏洩が発生する。
【0029】
また、110は一端が光出力ポートP−MZ−1−crossに接続され他端が光分波部SP−1の入力に接続された光導波路、111は一端が光分波部SP−1の第1の出力に接続され他端が光伝搬遅延差付与部D−D−1の入力に接続された光導波路、112は一端が光伝搬遅延差付与部D−D−1の出力に接続され他端が光入力ポートP−L1−1に接続された光導波路、113は一端が光分波部SP−1の第2の出力に接続され他端が光入力ポートP−R1−1に接続された光導波路である。
【0030】
また、114は一端が光出力ポートP−MZ−2−crossに接続され他端が光分波部SP−2の入力に接続された光導波路、115は一端が光分波部SP−2の第1の出力に接続され他端が光伝搬遅延差付与部D−D−2の入力に接続された光導波路、116は一端が光伝搬遅延差付与部D−D−2の出力に接続され他端が光入力ポートP−L2に接続された光導波路、117は一端が光分波部SP−2の第2の出力に接続され他端が光入力ポートP−R2に接続された光導波路、118は一端が光分波部SP−2の第3の出力に接続され他端が光伝搬遅延差付与部D−D−2−1の入力に接続された光導波路、119は一端が光伝搬遅延差付与部D−D−2−1の出力に接続され他端が光入力ポートP−R1−2に接続された光導波路、120は一端が光分波部SP−2の第4の出力に接続され他端が光入力ポートP−L1−2に接続された光導波路である。
【0031】
光入力ポートP−MZ−1−1,P−MZ−2−1に入力されるクロック信号光の光パワー変化を図2に示す。このように、図示しないクロック信号光源から光入力ポートP−MZ−1−1,P−MZ−2−1に入力されるクロック信号光は、ピーク光パワーが一定のRZ型の信号光である。
【0032】
ここで、本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路は、光導波路部分を低損失な半導体導波路で構成し、位相変調部として半導体光増幅器(SOA)若しくは量子ドット型SOA(QD−SOA)を用いるか、或いは位相変調部として半導体EA(Electro-absorption)変調器を定電圧駆動で用いる構成を用い、全体を光半導体で集積化して製作すればよい。
【0033】
また、本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路は、光導波路部分をPLC(Planar Lightwave Circuit)で構成し、位相変調部としてSOA若しくはQD−SOAを用いるか、或いは位相変調部として半導体EA変調器を定電圧駆動で用いる構成を用い、全体をPLCと光半導体のハイブリッドで製作してもよい。このような光回路は、文献「T.Ito,et al.,“Bit-rate and format conversion from 10-Gbit/s WDM channels to a 40-Gbit/s channel using a monolithic Sagnac interferometer integrated with parallelamplifier structure”,IEE Proc.-Optoelectron.,Vol.151,No.1,p.41-45,February 2004」に開示されている。
【0034】
また、本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路は、光導波路部分にフォトニック結晶導波路を用い、位相変調部として量子ドット群をコア層に埋め込んだ構成を用い、全体を一体集積化して製作してもよい。このような光回路は、文献「H.Nakamura,Y.Sugimoto,K.Kanamoto,N.Ikeda,Y.Tanaka,Y.Nakamura,S.Ohkouchi,Y.Watanabe,K.Inoue,H.Ishikawa and K.Asakawa,“Ultra-fast photonic crystal/quantum dot all-optical switch for future photonic networks”,Optics Express,vol.12,no.26,p.6606-6614,2004」に開示されている。
【0035】
標準的なマッハツェンダー干渉型光強度変調部においては、干渉器を構成する2つの干渉アームを光が伝搬する際に位相差が生じない状態が変調駆動が行われていない状態であり、このとき入力側の干渉アームに対して異なる側の干渉アームの光出力ポートから光信号が100%出力される。また、2つの干渉アームを光が伝搬する際に位相差がπとなる状態においては、光入力ポートと同じ側の干渉アームの光出力ポートから光信号が100%出力される。
【0036】
したがって、図1に示した高速カオス光信号生成光回路にクロック信号光が光入力ポートP−MZ−1−1から入力される場合、最初のクロック光パルスp0は、光入力ポートP−MZ−1−1と異なる側の干渉アームの光出力ポートP−MZ−1−crossから100%出力され、光分波部SP−1によりクロック光パルスp0−1,p0−2の2つに分波され、引き続き光伝搬遅延差付与手段D−D−1により遅延差を付与された後、それぞれ光入力ポートP−R1−1,P−L1−1から位相変調部R1−1,L1−1へと入力される。
【0037】
図3(A)は光入力ポートP−MZ−1−1への入力クロック信号光の入力タイミングを示す図、図3(B)は位相変調部R1−1への入力信号光の入力タイミングを示す図、図3(C)は位相変調部L1−1への入力信号光の入力タイミングを示す図である。
図3(B)に示すように、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたクロック光パルスp0と次の時間ステップのクロック光パルスp1との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与されていない方のクロック光パルスp0−1が位相変調部R1−1に入力される。一方、図3(C)に示すように、クロック光パルスp1と次の時間ステップのクロック光パルスp2との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与された方のクロック光パルスp0−2が位相変調部L1−1に入力される。
【0038】
位相変調部R1−1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路100,101を介してクロック光パルスp1が入力される直前に、光入力ポートP−R1−1から入力されるクロック光パルスp0−1の光強度に応じて、クロック光パルスp1の位相を変調する。
【0039】
一方、位相変調部L1−1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路100を介してクロック光パルスp1が入力された直後に、光入力ポートP−L1−1から入力されるクロック光パルスp0−2の光強度に応じて、クロック光パルスp1の位相を変調する。
【0040】
結果として、クロック光パルスp0−1が位相変調部R1−1に入力されてから、クロック光パルスp0−2が位相変調部L1−1に入力されるまでの間、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの干渉アームで位相差が生じることとなり、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスp1の光出力強度が変調されることとなる。
【0041】
同様に、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたクロック光パルスp1と次の時間ステップのクロック光パルスp2との間のタイミングで、光分波部SP−1によって分波されたクロック光パルスp1−1,p1−2のうち光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与されていない方のクロック光パルスp1−1が位相変調部R1−1に入力される。一方、クロック光パルスp2と次の時間ステップのクロック光パルスp3との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−1による光伝搬遅延が付与された方のクロック光パルスp1−2が位相変調部L1−1に入力される。
【0042】
位相変調部R1−1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路100,101を介してクロック光パルスp2が入力される直前に、クロック光パルスp1の分波光であるクロック光パルスp1−1が光入力ポートP−R1−1から入力されると、このクロック光パルスp1−1の光強度に応じて、クロック光パルスp2の位相を変調する。
【0043】
位相変調部L1−1は、光入力ポートP−MZ−1−1から光導波路100を介してクロック光パルスp2が入力された直後に、クロック光パルスp1の分波光であるクロック光パルスp1−2が光入力ポートP−L1−1から入力されると、このクロック光パルスp1−2の光強度に応じて、クロック光パルスp2の位相を変調する。結果として、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスp2の光出力強度が変調されることとなる。
【0044】
以上のようにして、クロック光パルスp(t)(t=0,1,2,3,・・・・)と次の時間ステップのクロック光パルスp(t+1)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力され光分波部SP−1によって分波された一方のクロック光パルスp(t)が位相変調部R1−1に入力され、クロック光パルスp(t+1)と次の時間ステップのクロック光パルスp(t+2)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力され光分波部SP−1によって分波された他方のクロック光パルスp(t)が位相変調部L1−1に入力される。その結果、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスp(t+1)の光出力強度が変調される。こうして、クロック光パルスp1,p2,p3,・・・・の変調が連続して行われる。
【0045】
図4はマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスの光強度を規格化した規格化光出力強度を示す図であり、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されたクロック光パルスが次の時間ステップのクロック光パルスに生じさせる位相変調の量が1.8261πである場合を示している。
【0046】
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossから100%出力される状態にある条件下で、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されたクロック光パルスが次の時間ステップのクロック光パルスに生じさせる位相変調の量が十分且つ適当な大きさとなるように位相変調部R1−1,L1−1を設定することにより、例えば図4に示した場合のように光出力ポートP−MZ−1−crossから出力されるクロック光パルスの強度が時系列でカオス状態となり、同時に、光出力ポートP−MZ−1−barから出力されるクロック光パルスの強度も時系列でカオス状態となる。
【0047】
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−barから出力されるクロック光パルスの強度も時系列でカオス状態となる理由は、クロック光パルスの全光強度から、光出力ポートP−MZ−1−crossから出力される同じクロック光パルスの光強度を引いた残りの光強度のクロック光パルスが光出力ポートP−MZ−1−barから出力されるからである。
【0048】
但し、このように光出力強度が時系列でカオス状態となっている出力クロック信号光は、物理乱数源として用いられる物理雑音のように完全に乱雑な特性を有していることを求められる応用分野には適さない。その理由は、一般的にカオス的な振る舞いをする力学系に従っている系は長期的には予測不能で乱雑な振る舞いをするが、時間ステップ上で隣接するパルス間の光強度には、例えば図5のリターンマップで示されるような明確な関係性・相関があり、ある時間ステップの光強度から次の時間ステップの光強度を予測することが容易となってしまうため、即ち、短期的にみて乱雑な振る舞いとなっていないためである。図5の例では、時間ステップiでの規格化光出力強度と次の時間ステップi+1での規格化光出力強度との間に相関性があることが示されている。
【0049】
そこで、本実施の形態においては、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の出力クロック信号光パルス列が時系列で短期的に見ると乱雑でないという問題を、付加的な論理演算処理を施すことなく解決している。本実施の形態では、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1とは別にマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2を設け、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから100%出力される状態にある条件下で、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力されたクロック光パルスが位相変調部R2,L2において次の時間ステップのクロック光パルスに生じさせる位相変調の量が十分且つ適当な大きさとなるように設定し、光入力ポートP−MZ−1−1に入力されるクロック信号光と同期のとれたクロック信号光を光入力ポートP−MZ−2−1にも入力させる。
【0050】
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1と同様に、クロック信号光がマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光入力ポートP−MZ−2−1から入力される場合、最初のクロック光パルスp0は、光入力ポートP−MZ−2−1と異なる側の干渉アームの光出力ポートP−MZ−2−crossから100%出力され、光分波部SP−2によりクロック光パルスp0−1,p0−2の2つに分波され、引き続き光伝搬遅延差付与手段D−D−2により遅延差を付与された後、それぞれ光入力ポートP−R2,P−L2から位相変調部R2,L2へと入力される。
【0051】
そして、光入力ポートP−MZ−2−1に入力されたクロック光パルスp0と次の時間ステップのクロック光パルスp1との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−2による光伝搬遅延が付与されていない方のクロック光パルスp0−1が位相変調部R2に入力される。一方、クロック光パルスp1と次の時間ステップのクロック光パルスp2との間のタイミングで、光伝搬遅延差付与部D−D−2による光伝搬遅延が付与された方のクロック光パルスp0−2が位相変調部L2に入力される。
【0052】
位相変調部R2は、光入力ポートP−MZ−2−1から光導波路106,107を介してクロック光パルスp1が入力される直前に、光入力ポートP−R2から入力されるクロック光パルスp0−1の光強度に応じて、クロック光パルスp1の位相を変調する。位相変調部L2は、光入力ポートP−MZ−2−1から光導波路106を介してクロック光パルスp1が入力された直後に、光入力ポートP−L2から入力されるクロック光パルスp0−2の光強度に応じて、クロック光パルスp1の位相を変調する。
【0053】
結果として、クロック光パルスp0−1が位相変調部R2に入力されてから、クロック光パルスp0−2が位相変調部L2に入力されるまでの間、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の2つの干渉アームで位相差が生じることとなり、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力されるクロック光パルスp1の光出力強度が変調されることとなる。
【0054】
以上のようにして、クロック光パルスp(t)(t=0,1,2,3,・・・・)と次の時間ステップのクロック光パルスp(t+1)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力され光分波部SP−2によって分波された一方のクロック光パルスp(t)が位相変調部R2に入力され、クロック光パルスp(t+1)と次の時間ステップのクロック光パルスp(t+2)との間のタイミングで、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力され光分波部SP−2によって分波された他方のクロック光パルスp(t)が位相変調部L2に入力される。その結果、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力されるクロック光パルスp(t+1)の光出力強度が変調される。こうして、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1と同様に、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2においても、クロック光パルスp1,p2,p3,・・・・の変調が連続して行われる。
【0055】
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから出力される出力クロック信号光のパルス列は、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光出力ポートP−MZ−1−crossから出力される出力クロック信号光のパルス列とクロック・タイミングが合い、且つ光出力強度が時系列でカオス状態となる。加えて、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから出力される出力クロック信号光のパルス列に生じているカオス状態は、カオス力学的な観点で、光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光のパルス列には全く影響を受けていない。
【0056】
このため、カオスの特徴の1つであるバタフライ効果により、光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光パルス列に含まれる、ある時間ステップiでのパルスの光出力強度を、光出力ポートP−MZ−2−crossからの出力クロック信号光パルス列に含まれる、時間ステップiの直前の時間ステップi−1でのパルスの光出力強度に基づいて予測することができない状態、即ち光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光と光出力ポートP−MZ−2−crossからの出力クロック信号光とが互いに乱雑な状態となっている。
【0057】
次に、光出力ポートP−MZ−2−crossから出力された出力クロック信号光を光分波部SP−2で4つに分波し、位相変調部R2,L2へと導かれる2つの出力クロック信号光を除く残り2つの出力クロック信号光に対して光伝搬遅延差付与部D−D−2−1により伝搬遅延差を付与し、伝搬遅延差を付与した2つの出力クロック信号光をマッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の光入力ポートP−R1−2,P−L1−2から位相変調部R1−2,L1−2へと入力する。
【0058】
位相変調部R1−2,L1−2は、位相変調部R1−1,L1−1とは独立に設けられ、位相変調部R1−1,L1−1から光導波路103,102を介して入力される入力クロック信号光の強度の最大値に対する位相変調量が十分且つ適当な大きさとなるように設定されている。このため、位相変調部R1−2,L1−2により、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの干渉アームで位相差が生じることとなる。
【0059】
こうして、本実施の形態では、光出力ポートP−MZ−2−crossからの出力クロック信号光パルス列に生じているカオス状態を、光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光パルス列に生じているカオス状態に対して畳み込むことにより、光出力ポートP−MZ−1−crossからの出力クロック信号光の光出力強度の振る舞いを乱雑なものとすることができる。本実施の形態では、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1と光分波部SP−1と光伝搬遅延差付与部D−D−1とからなる光回路部を単独で駆動させた場合に見られた、時間ステップ上で隣接するパルス間の光強度の関係性を、図6に示すように失わせることができ、乱雑性が増した乱数列を生成することが可能となる。
【0060】
本実施の形態では、従来の乱数発生プログラムまたは電子回路による乱数生成方法では実現不可能であった10Gb/sを超える高速な乱数データ生成を実現することができる。また、本実施の形態では、非特許文献1に開示されたカオス・レーザーによる乱数生成方法のような複雑なシステム構成では困難であった、工学応用上必須となる再現性と制御性とを実現することができ、さらに高精度性とシステムの集積化とを実現することができる。
【0061】
また、本実施の形態では、特許文献1に開示された光カオス信号源による乱数生成方法では実現不可能であったシステムの集積化を実現することができる。また、本実施の形態では、非特許文献1に開示されたカオス・レーザーによる乱数生成方法や特許文献1に開示された光カオス信号源による乱数生成方法のように、単独では信号の乱雑性が不十分であるために、後段の論理処理回路や論理処理システムを必要とし、システム全体が大きくなってしまうという問題点を解消することができる。
【0062】
また、本実施の形態では、熱光学効果により2つの干渉アームの光路長差を制御してその光路長差に一定の関係性を持たせるように制御した複数のマッハツェンダー干渉器を用いて、それぞれのマッハツェンダー干渉器からの出力パワーにカオス写像関係性を実現する装置のように、光路長差情報記憶装置や温度による光路長差制御部等を持つ必要がなくなり、システムの高速化および集積化を実現することができる。
【0063】
また、本実施の形態では、光ファイバの非線形屈折率効果に基づく全光の光カオス現象を用いる装置で困難であった、工学応用上必須となる再現性と制御性とを実現することができ、さらにシステムの集積化を実現することができる。
【0064】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。図7は本実施の形態に係る高速カオス光信号生成光回路の構成例を示すブロック図であり、図1と同一の構成には同一の符号を付してある。
本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路は、第1の実施の形態の高速カオス光信号生成光回路における光分波部SP−2の代わりに、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから出力される光信号を2つに分波する光分波部SP−2−1と、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−barから出力される光信号を2つに分波する光分波部SP−2−2とを設けたものである。
【0065】
図7における121は一端が光出力ポートP−MZ−2−crossに接続され他端が光分波部SP−2−1の入力に接続された光導波路、122は一端が光分波部SP−2−1の第1の出力に接続され他端が光伝搬遅延差付与部D−D−2の入力に接続された光導波路、123は一端が光分波部SP−2−1の第2の出力に接続され他端が光入力ポートP−R2に接続された光導波路、124は一端が光出力ポートP−MZ−2−barに接続され他端が光分波部SP−2−2の入力に接続された光導波路、125は一端が光分波部SP−2−2の第1の出力に接続され他端が光伝搬遅延差付与部D−D−2−1の入力に接続された光導波路、126は一端が光分波部SP−2−2の第2の出力に接続され他端が光入力ポートP−L1−2に接続された光導波路である。
【0066】
マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−crossから出力され光分波部SP−2−1によって2つに分波された出力クロック信号光は、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2における位相変調駆動用のクロック信号光として位相変調部R2,L2に入力される。一方、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−2の光出力ポートP−MZ−2−barから出力され光分波部SP−2−2によって2つに分波された出力クロック信号光は、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1における位相変調駆動用のクロック信号光として位相変調部R1−2,L1−2に入力される。
【0067】
本実施の形態の高速カオス光信号生成光回路の動作は第1の実施の形態と同様であるので、詳細な説明は省略する。こうして、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
なお、第1、第2の実施の形態では、光出力ポートP−MZ−1−crossと光分波部SP−1の入力とを接続しているが、光出力ポートP−MZ−1−barと光分波部SP−1の入力とを接続するようにしてもよい。また、光出力ポートP−MZ−2−barと光分波部SP−2,SP−2−1の入力とを接続し、光出力ポートP−MZ−2−crossと光分波部SP−2−2の入力とを接続するようにしてもよい。
【0069】
また、第1、第2の実施の形態では、光伝搬遅延差付与部D−D−2−1の出力を光入力ポートP−R1−2と接続しているが、光伝搬遅延差付与部D−D−2−1の出力を光入力ポートP−L1−2と接続し、光分波部SP−2,SP2−2の出力のうち光伝搬遅延差付与部D−D−2−1による光伝搬遅延が付与されていない方の出力を光入力ポートP−R1−2と接続するようにしてもよい。
【0070】
なお、第1、第2の実施の形態において、同一のクロック信号光源から出力されたRZ型のクロック信号光をあらかじめ分波して光入力ポートP−MZ−1−1,P−MZ−2−1に入力するようにしてもよいし、第1のクロック信号光源から出力されたRZ型のクロック信号光を光入力ポートP−MZ−1−1に入力すると共に第1のクロック信号光源と同期している第2のクロック信号光源から出力されたRZ型のクロック信号光を光入力ポートP−MZ−2−1に入力するようにしてもよい。
【0071】
また、第1、第2の実施の形態において、高速カオス光信号生成光回路の出力信号光は、マッハツェンダー干渉型光強度変調部MZ−1の2つの光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から得るようにすればよい。このとき、100%出力時の光強度を1として、閾値を0.5として設定し、出力信号光の光強度が閾値よりも大きい場合は2値化信号の値を1とし、出力信号光の光強度が閾値以下であれば2値化信号の値を0とする2値化処理を行うと、2値の乱数列が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、デバイスモデリング、金融デリバティブ計算、気象シミュレーション等の計算を行う計算器に用いられる乱数や、秘密鍵共有の暗号システムに用いられる乱数、あるいは量子暗号通信に用いられる乱数などを生成する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0073】
MZ−1,MZ−2…マッハツェンダー干渉型光強度変調部、SP−1,SP−2,SP−2−1,SP−2−2…光分波部、D−D−1,D−D−2,D−D−2−1…光伝搬遅延差付与部、P−MZ−1−1,P−R1−1,P−L1−1,P−R1−2,P−L1−2,P−MZ−2−1,P−R2,P−L2…光入力ポート、R1−1,R1−2,L1−1,L1−2,R2,L2…位相変調部、P−MZ−1−cross,P−MZ−1−bar,P−MZ−2−cross,P−MZ−2−bar…光出力ポート、100〜126…光導波路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RZ型クロック信号光を入力する第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1と、
前記RZ型クロック信号光を入力する第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2と、
前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から出力されたRZ型クロック信号光を2系統に分波する第1の光分波手段SP−1と、
前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2の2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barの内のいずれか一方から出力されたRZ型クロック信号光を4系統に分波する第2の光分波手段SP−2と、
前記第1の光分波手段SP−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第1のクロック信号光として前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1内の第1の位相変調手段へと導く第1の光導波路と、
前記第2の光分波手段SP−2で分波された4系統のRZ型クロック信号光の内の2系統を位相変調駆動用の第2のクロック信号光として前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2内の第2の位相変調手段へと導く第2の光導波路と、
前記第2の光分波手段SP−2で分波された4系統のRZ型クロック信号光の内の残りの2系統を位相変調駆動用の第3のクロック信号光として前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1内の第3の位相変調手段へと導く第3の光導波路とを備え、
前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1は、
前記RZ型クロック信号光を受ける第1の光入力ポートP−MZ−1−1と、
この第1の光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたRZ型クロック信号光を伝送する2つの第1の干渉アームと、
この2つの第1の干渉アームの端部に設けられた前記2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barと、
前記2つの第1の干渉アームに1つずつ設けられ、前記第1の干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、前記第1の光導波路から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1と、
この第1の位相変調手段R1−1,L1−1よりも後ろの前記2つの第1の干渉アームに1つずつ設けられ、前記第1の干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、前記第3の光導波路から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2とから構成され、
前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2は、
前記RZ型クロック信号光を受ける第2の光入力ポートP−MZ−2−1と、
この第2の光入力ポートP−MZ−2−1に入力されたRZ型クロック信号光を伝送する2つの第2の干渉アームと、
この2つの第2の干渉アームの端部に設けられた前記2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barと、
前記2つの第2の干渉アームに1つずつ設けられ、前記第2の干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、前記第2の光導波路から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する前記第2の位相変調手段R2,L2とから構成され、
前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から出力信号光を得ることを特徴とする高速カオス光信号生成光回路。
【請求項2】
RZ型クロック信号光を入力する第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1と、
前記RZ型クロック信号光を入力する第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2と、
前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から出力されたRZ型クロック信号光を2系統に分波する第1の光分波手段SP−1と、
前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2の2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barの内のいずれか一方から出力されたRZ型クロック信号光を2系統に分波する第2の光分波手段SP−2−1と、
前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2の2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barの内、前記第2の光分波手段SP−2−1と接続されていない方から出力されたRZ型クロック信号光を2系統に分波する第3の光分波手段SP−2−2と、
前記第1の光分波手段SP−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第1のクロック信号光として前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1内の第1の位相変調手段へと導く第1の光導波路と、
前記第2の光分波手段SP−2−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第2のクロック信号光として前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2内の第2の位相変調手段へと導く第2の光導波路と、
前記第3の光分波手段SP−2−2で分波された2系統のRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第3のクロック信号光として前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1内の第3の位相変調手段へと導く第3の光導波路とを備え、
前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1は、
前記RZ型クロック信号光を受ける第1の光入力ポートP−MZ−1−1と、
この第1の光入力ポートP−MZ−1−1に入力されたRZ型クロック信号光を伝送する2つの第1の干渉アームと、
この2つの第1の干渉アームの端部に設けられた前記2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barと、
前記2つの第1の干渉アームに1つずつ設けられ、前記第1の干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、前記第1の光導波路から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1と、
この第1の位相変調手段R1−1,L1−1よりも後ろの前記2つの第1の干渉アームに1つずつ設けられ、前記第1の干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、前記第3の光導波路から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2とから構成され、
前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2は、
前記RZ型クロック信号光を受ける第2の光入力ポートP−MZ−2−1と、
この第2の光入力ポートP−MZ−2−1に入力されたRZ型クロック信号光を伝送する2つの第2の干渉アームと、
この2つの第2の干渉アームの端部に設けられた前記2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barと、
前記2つの第2の干渉アームに1つずつ設けられ、前記第2の干渉アームにより伝送されるRZ型クロック信号光を、前記第2の光導波路から入力されるRZ型クロック信号光の光強度に応じて位相変調する前記第2の位相変調手段R2,L2とから構成され、
前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から出力信号光を得ることを特徴とする高速カオス光信号生成光回路。
【請求項3】
請求項1記載の高速カオス光信号生成光回路において、
さらに、前記第1の光導波路に設けられ、前記第1の光分波手段SP−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光が前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する第1の光伝搬遅延差付与手段D−D−1と、
前記第2の光導波路に設けられ、前記第2の光分波手段SP−2で分波された4系統のRZ型クロック信号光の内の2系統が前記第2の位相変調手段R2,L2に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、前記第2の位相変調手段R2,L2に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、前記第2の位相変調手段R2,L2に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する第2の光伝搬遅延差付与手段D−D−2と、
前記第3の光導波路に設けられ、前記第2の光分波手段SP−2で分波された4系統のRZ型クロック信号光の内の2系統が前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する第3の光伝搬遅延差付与手段D−D−2−1とを備えることを特徴とする高速カオス光信号生成光回路。
【請求項4】
請求項2記載の高速カオス光信号生成光回路において、
さらに、前記第1の光導波路に設けられ、前記第1の光分波手段SP−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光が前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する第1の光伝搬遅延差付与手段D−D−1と、
前記第2の光導波路に設けられ、前記第2の光分波手段SP−2−1で分波された2系統のRZ型クロック信号光が前記第2の位相変調手段R2,L2に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、前記第2の位相変調手段R2,L2に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、前記第2の位相変調手段R2,L2に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する第2の光伝搬遅延差付与手段D−D−2と、
前記第3の光導波路に設けられ、前記第3の光分波手段SP−2−2で分波された2系統のRZ型クロック信号光が前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2に到達するまでの光伝搬遅延差に相当する遅延を、前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2に入力される2系統のRZ型クロック信号光の内、前記第3の位相変調手段R1−2,L1−2に到達するまでの光伝搬遅延が長い方のRZ型クロック信号光に付与する第3の光伝搬遅延差付与手段D−D−2−1とを備えることを特徴とする高速カオス光信号生成光回路。
【請求項5】
RZ型クロック信号光を第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の第1の光入力ポートP−MZ−1−1と第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2の第2の光入力ポートP−MZ−2−1とに入力し、
前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から出力されるRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第1のクロック信号光として、前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1内の2つの第1の干渉アームに1つずつ設けられた第1の位相変調手段R1−1,L1−1に入力することにより、前記第1の光入力ポートP−MZ−1−1から入力され前記2つの第1の干渉アーム中を伝搬しているRZ型クロック信号光に位相差を生じさせ、
同時に、前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2の2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barの内のいずれか一方から出力されるRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第2のクロック信号光として、前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2内の2つの第2の干渉アームに1つずつ設けられた第2の位相変調手段R2,L2に入力することにより、前記第2の光入力ポートP−MZ−2−1から入力され前記2つの第2の干渉アーム中を伝搬しているRZ型クロック信号光に位相差を生じさせ、
さらに、前記第2のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−2の2つの第2の光出力ポートP−MZ−2−cross,P−MZ−2−barの内のいずれか一方から出力されるRZ型クロック信号光を位相変調駆動用の第3のクロック信号光として、前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1よりも後ろの前記2つの第1の干渉アームに1つずつ設けられた第3の位相変調手段R1−2,L1−2に入力することにより、前記第1の位相変調手段R1−1,L1−1によって位相変調され前記2つの第1の干渉アーム中を伝搬しているRZ型クロック信号光に位相差を生じさせ、
前記第1のマッハツェンダー干渉型光強度変調手段MZ−1の2つの第1の光出力ポートP−MZ−1−cross,P−MZ−1−barの内のいずれか一方から出力信号光を得ることを特徴とする高速カオス光信号生成方法。
【請求項6】
請求項5記載の高速カオス光信号生成方法において、
前記位相変調駆動用の第1のクロック信号光として用いられるRZ型クロック信号光は、前記出力信号光と同一の光出力ポートから出力されたRZ型クロック信号光であることを特徴とする高速カオス光信号生成方法。
【請求項7】
請求項5記載の高速カオス光信号生成方法において、
前記位相変調駆動用の第1のクロック信号光として用いられるRZ型クロック信号光は、前記出力信号光と異なる光出力ポートから出力されたRZ型クロック信号光であることを特徴とする高速カオス光信号生成方法。
【請求項8】
請求項5記載の高速カオス光信号生成方法において、
前記位相変調駆動用の第2のクロック信号光として用いられるRZ型クロック信号光と前記位相変調駆動用の第3のクロック信号光として用いられるRZ型クロック信号光とは、同一の光出力ポートから出力されたRZ型クロック信号光であることを特徴とする高速カオス光信号生成方法。
【請求項9】
請求項5記載の高速カオス光信号生成方法において、
前記位相変調駆動用の第2のクロック信号光として用いられるRZ型クロック信号光と前記位相変調駆動用の第3のクロック信号光として用いられるRZ型クロック信号光とは、異なる光出力ポートから出力されたRZ型クロック信号光であることを特徴とする高速カオス光信号生成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−242604(P2012−242604A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112526(P2011−112526)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】