説明

高速シリアル伝送システム及びその制御方法

【課題】伝送システムの使用環境に応じて伝送帯域や伝送品質を柔軟に適用制御する。
【解決手段】高速シリアル伝送システム200が、無線通信に適した所要の伝送帯域に基づいて、所要の伝送帯域に適応するよう伝送レートの設定を適応制御する伝送レート設定制御部105を有しており、伝送レート設定制御部105が、適応制御を行うか否かの指定及び伝送レートの制御範囲の指定を行い得る。また、無線通信に適した所要の伝送品質、及び受信される信号の伝送品質状況に基づいて、所要の伝送品質に適応するよう送信振幅及び送信プリエンファシスの設定を適応制御する送信振幅プリエンファシス設定制御部108を有しており、適応制御を行うか否かの指定及び送信振幅及び送信プリエンファシスの制御範囲の指定を行い得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速シリアル伝送システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話向けインタフェース技術として、高速シリアル伝送を使ったシステムが開発されている。高速シリアル伝送については、例えば、特許文献1に記載がある。図7に、従来の高速シリアル伝送システムの一例を示す。図7に示すように、従来の高速シリアル伝送システム300は、高速シリアル送信部100b及び高速シリアル受信部110bを有している。高速シリアル送信部100bは、初期伝送レート設定部102bと、初期送信振幅プリエンファシス設定部103bと、高速シリアル信号送信部101bとを有している。また、高速シリアル受信部110bは、高速シリアル信号受信部111bと、伝送品質状況算出部112bとを有している。
【0003】
初期伝送レート設定部102bは、システム300の起動時に送信部101b及び受信部111b間の伝送レートを設定する。初期送信振幅プリエンファシス設定部103bは、システム300の起動時に信号の送信振幅及び送信プリエンファシスを設定する。高周波の信号は伝送される途中で品質が落ちるが、送信プリエンファシスによりデータ信号を増幅することで、受信部111bに達するまでに品質を維持することが可能となる。高速シリアル信号送信部101bは、初期伝送レート設定部102bで設定された伝送レートと、初期送信振幅プリエンファシス設定部103bで設定された送信振幅及びプリエンファシスとにより、高速シリアル信号受信部111bに向けて信号を送信する。
【0004】
ここで、従来の伝送システム300では、初期伝送レート設定部102bにおいてシステム300が可能とする最大の伝送レートが設定され、伝送レートを常にこの設定値に固定してシステム300を運用する。また、高速シリアル信号受信部111bで受信した信号に基づいて、伝送品質状況算出部112bが、システム300が運用される特定の環境下の評価で最適と思われる送信振幅及び送信プリエンファシスを算出する。そして、初期送信振幅プリエンファシス設定部103bに、算出された最適と思われる送信振幅及び送信プリエンファシスが設定され、それらを常にこの設定値に固定してシステム300を運用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−223204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
高速シリアル伝送システムは、システムを構成する送信部や受信部といった装置の製品としてのばらつきや、これらの装置を使用する温度等といった使用環境のような外的要因の影響を受け易い。このため、従来のような、伝送レート、送信振幅、及び送信プリエンファシスを常に固定して運用する構成の場合には、システムにとって長期間の運用にわたって最適な伝送品質を維持するのが困難である。したがって、システムを長期間運用しても常に最適な伝送品質を維持し得ることが必要とされる。すなわち、伝送システムの使用環境に応じて必要とされる伝送帯域や伝送品質が異なるため、伝送帯域や伝送品質を柔軟に適応制御させなければならない。さらに、伝送レートや送信振幅を大きくすると使用環境によっては必要以上に消費電力が増加してしまうため、これを抑えることが必要であり、さらには送信プリエンファシスを必要以上に強くすると場合によっては信号の高周波成分の放射ノイズが大きくなってしまうため、これを所定のレベル以下に抑えることが必要である。
【0007】
以上のような課題に鑑みて、本発明は、システムを構成する装置の使用環境に応じて伝送帯域や伝送品質を柔軟に適用制御可能な高速シリアル伝送システム及びその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明に係る高速シリアル伝送システムは、無線通信により送信手段(例えば、実施形態における高速シリアル送信部100)から受信手段(例えば、実施形態における高速シリアル受信部110)へデータをシリアル伝送する高速シリアル伝送システムであって、送信手段が、送信手段及び受信手段間の無線通信に適した所要の伝送帯域に基づいて、データの伝送レートが所要の伝送帯域に適応するよう伝送レートの設定を適応制御する伝送レート設定制御手段(例えば、実施形態における伝送レート設定制御部105)を有しており、伝送レート設定制御手段が、適応制御を行うか否かの指定、及び適応制御によって設定可能な伝送レートの制御範囲の指定を行い得る。
【0009】
また、前記課題を解決するために本発明に係る高速シリアル伝送システムは、無線通信により送信手段(例えば、実施形態における高速シリアル送信部100)から受信手段(例えば、実施形態における高速シリアル受信部110)へデータをシリアル伝送する高速シリアル伝送システムであって、送信手段が、送信手段及び受信手段間の無線通信に適した所要の伝送品質、及び受信手段で受信される信号の伝送品質状況に基づいて、伝送品質状況が所要の伝送品質を満たすよう信号の送信振幅の設定を適応制御する送信振幅設定制御手段(例えば、実施形態における送信振幅プリエンファシス設定制御部108)を有しており、送信振幅設定制御手段が、適応制御を行うか否かの指定、及び適応制御によって設定可能な送信振幅の制御範囲の指定を行い得る。
【0010】
また、前記課題を解決するために本発明に係る高速シリアル伝送システムは、無線通信により送信手段(例えば、実施形態における高速シリアル送信部100)から受信手段(例えば、実施形態における高速シリアル受信部110)へデータをシリアル伝送する高速シリアル伝送システムであって、送信手段が、送信手段及び受信手段間の無線通信に適した所要の伝送品質、及び受信手段で受信される信号の伝送品質状況に基づいて、伝送品質状況が所要の伝送品質を満たすよう信号の送信プリエンファシスの設定を適応制御する送信プリエンファシス設定制御手段(例えば、実施形態における送信振幅プリエンファシス設定制御部108)を有しており、送信プリエンファシス設定制御手段が、適応制御を行うか否かの指定、及び適応制御によって設定可能な送信プリエンファシスの制御範囲の指定を行い得る。
【0011】
さらに、上記構成の高速シリアル伝送システムは、伝送レート設定制御手段、送信振幅設定制御手段、及び送信プリエンファシス設定制御手段を具えるのが好ましい。
【0012】
また、上記構成の高速シリアル伝送システムにおいて、送信振幅設定制御手段が、所要の伝送品質を所定の分だけ高くした場合に、伝送品質状況が高くした所要の伝送品質を満足しているか否かを判断するのが好ましい。
【0013】
さらに、上記構成の高速シリアル伝送システムにおいて、送信プリエンファシス設定制御手段が、所要の伝送品質を所定の分だけ高くした場合に、伝送品質状況が高くした所要の伝送品質を満足しているか否かを判断するのが好ましい。
【0014】
一方、前記課題を解決するために本発明に係る高速シリアル伝送システムの制御方法は、無線通信により送信手段から受信手段へデータをシリアル伝送する高速シリアル伝送システムにおけるデータの伝送レート、送信振幅、及び送信プリエンファシスの適応制御方法であって、当該方法が、送信手段及び受信手段間の無線通信に適した所要の伝送帯域に基づいて、データの伝送レートが所要の伝送帯域に適応するよう伝送レートの設定を制御するステップと、所要の伝送品質、及び受信手段で受信される信号の伝送品質状況に基づいて、伝送品質状況が所要の伝送品質に適応するよう送信振幅の設定を制御するステップと、所要の伝送品質、及び受信手段で受信される信号の伝送品質状況に基づいて、伝送品質状況が所要の伝送品質に適応するよう送信プリエンファシスの設定を制御するステップと、を有している。
【0015】
また、上記構成の高速シリアル伝送システムの制御方法において、送信振幅の設定を制御するステップが、さらに、所要の伝送品質を所定の分だけ高くした場合に、伝送品質状況が高くした所要の伝送品質を満足しているか否かを判断するステップを有しており、送信プリエンファシスの設定を制御するステップが、さらに、所要の伝送品質を所定の分だけ高くした場合に、伝送品質状況が高くした所要の伝送品質を満足しているか否かを判断するステップを有しているのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の高速シリアル伝送システム及びその制御方法によれば、伝送レート設定制御手段、送信振幅設定制御手段、及び送信プリエンファシス設定制御手段が、それぞれ、所要の伝送帯域又は伝送品質に適応するよう、伝送レート、送信振幅、及び送信プリエンファシスの設定を適応制御し得る。このため、システムを長期間にわたって運用する場合であっても、システムを構成する装置の製品としてのばらつき、又はシステムの装置が設置される周囲の温度等その周囲環境といった外的要因に拘わらず、システムにとって最適な伝送品質を常に維持するよう制御できる。これは、例えば図1に示す所要伝送品質通知部109及び伝送品質状況算出部112からの情報により、送信振幅設定制御手段及び送信プリエンファシス設定制御手段が、それぞれ送信振幅及び送信プリエンファシスの適応制御を行うことにより、最適な伝送品質が維持されるためである。
【0017】
また、伝送システムの運用環境に拘わらず、その運用中に必要以上に消費電力が増加するのを抑えることができる。これは、伝送レート設定制御手段が、伝送レート適用制御を行うことによって、伝送レートを所要の伝送帯域に最小限必要な分の伝送レートに小さくすることで、システムの消費電力を抑えることができるためである。
【0018】
また、送信振幅適応制御では、伝送品質の状況が所要の伝送品質を満たしていない場合には送信振幅の制御範囲の上限を超えない範囲で送信振幅の設定を大きくすることで、所要の伝送品質を満たすよう制御される。一方、伝送品質の状況が所要の伝送品質を満たす場合には、送信振幅の制御範囲を下限を超えない範囲で送信振幅の設定を小さくすることで、必要以上に送信振幅が大きくならずシステムの消費電力を抑えることが可能となる。
【0019】
さらに、送信プリエンファシス適応制御では、伝送品質の状況が所要の伝送品質を満たしていない場合には送信プリエンファシスの制御範囲の上限を超えない範囲で送信プリエンファシスの設定を大きくすることで、所要の伝送品質を満たすよう制御される。また、伝送品質が所要の伝送品質を満たす場合には、送信プリエンファシスの制御範囲の下限を超えない範囲で送信プリエンファシスの設定を小さくすることで、必要以上に送信プリエンファシスが強くならず、プリエンファシスによる高周波成分の放射ノイズを抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係る高速シリアル伝送システムを示す図である。
【図2】図2は、本発明に係る高速シリアル伝送システムによって伝送レート並びに送信振幅及び送信プリエンファシスを適応制御する構成図である。
【図3】図3は、適応制御の有効/無効の設定及び各設定値の制御範囲を具体的に指定した適応制御の構成例である。
【図4】図4は、本発明に係る伝送レート適応制御を示すフローチャートである。
【図5】図5は、本発明に係る送信振幅適応制御を示すフローチャートである。
【図6】図6は、本発明に係る送信プリエンファシス適応制御を示すフローチャートである。
【図7】図7は、従来の高速シリアル伝送システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る高速シリアル伝送システム及びその制御方法の好ましい実施形態について図1から図6を参照しながら説明する。
【0022】
図1に、本発明に係る高速シリアル伝送システムの全体構成図を示す。図1に示すように、高速シリアル伝送システム200は、高速シリアル送信部100、高速シリアル受信部110、所要伝送帯域通知部106、及び所要伝送品質通知部109で構成される。高速シリアル送信部100は、高速シリアル信号送信部101と、初期伝送レート設定部102と、初期送信振幅プリエンファシス設定部103と、伝送レート変更部104と、伝送レート設定制御部105と、送信振幅プリエンファシス変更部107と、送信振幅プリエンファシス設定制御部108と、を有して構成される。
【0023】
初期伝送レート設定部102は、システム200起動時の伝送レート設定値(初期値)を保存する。伝送レート設定制御部105は、所要伝送帯域通知部106からの通知に基づいてシステム200の運用中に伝送レートを適応制御する。伝送レート変更部104には、初期伝送レート設定部102によって初期設定される伝送レート又は伝送レート設定制御部105によって適応制御される伝送レートが通知され、通知された伝送レートは、高速シリアル信号送信部101及び高速シリアル信号受信部111に設定される。
【0024】
また、初期送信振幅プリエンファシス設定部103は、システム200起動時の送信振幅及び送信プリエンファシスの設定値(初期値)を保存する。送信振幅プリエンファシス設定制御部108は、所要伝送品質通知部109及び伝送品質状況算出部112からの通知に基づいてシステム200の運用中において送信振幅及びプリエンファシスを適応制御する。送信振幅プリエンファシス変更部107には、初期送信振幅プリエンファシス設定部103によって初期設定される送信振幅及び送信プリエンファシス、又は送信振幅プリエンファシス設定制御部108によって適応制御される送信振幅及び送信プリエンファシスが通知され、高速シリアル信号送信部101に設定する。そして、高速シリアル信号送信部101は、伝送レート変更部104から通知された伝送レートと、送信振幅プリエンファシス変更部107から通知された送信振幅及びプリエンファシスとにより、物理インタフェースの信号を送信する。本発明の送信プリエンファシスでは、信号送信部101から信号受信部111に信号を伝送する途中で信号の高周波側の伝送品質が落ちるのを防止するために、信号の高周波側の特定の周波数成分を強調して変調するものである。
【0025】
高速シリアル受信部101は、高速シリアル信号受信部111と、伝送品質状況算出部112と、を有して構成される。高速シリアル信号受信部111は、物理インタフェースの信号を高速シリアル信号送信部101から受信する。伝送品質状況算出部112は、高速シリアル信号受信部111から得られた受信データを用いて、BER(Bit Error Rate)及びBLER(Block Error Rate)の伝送品質を算出し、その結果を送信振幅プリエンファシス設定制御部108に通知する。
【0026】
また、所要伝送帯域通知部106は、システム200の運用時に必要な伝送帯域を伝送レート設定制御部105に通知する。所要伝送品質通知部109は、システム200の運用時に高速シリアル受信部110で必要な伝送品質を通知する。
【0027】
なお、システム200を構成する送信部100及び受信部110は、上記のようなそれぞれが1個で構成される場合に限られず、送信部及び受信部をそれぞれ2以上で構成してもよい。例えば、無線基地局装置のような高速シリアル伝送システムでは、それぞれ複数個で構成されている場合が多く、本発明により個別に制御し得る。
【0028】
次に、図2及び図3を用いて、伝送レート並びに送信振幅及び送信プリエンファシスの適応制御について説明する。
【0029】
図2は、本発明に係る伝送レート並びに送信振幅及び送信プリエンファシスを適応制御するための構成図である。図2において2つの丸囲みAは繋がっており、システム200が運用を開始すると、伝送レート適応制御、送信振幅適応制御、送信プリエンファシス適応制御の順に適応制御され、送信プリエンファシス適応制御の適応制御が終わると再び伝送レート適応制御が開始される。このようにして3つの適応制御が順次繰り返される。伝送レート変更部104では、システム200の運用時に変更可能な伝送レートのパラメータとして、0.5Gps乃至4.0Gpsの計8のパラメータが設定可能である。伝送レート設定制御部105内で実行される伝送レート適応制御105−1による伝送レートの設定値は、伝送レート変更部104に通知される。
【0030】
送信振幅プリエンファシス変更部107では、システム200の運用時に変更可能な送信振幅設定のパラメータとして、振幅レベル1乃至8の計8のパラメータが設定可能である。送信振幅プリエンファシス設定制御部108内で実行される送信振幅適応制御108−1による振幅レベルの設定値は、送信振幅プリエンファシス変更部107に通知される。
【0031】
また、送信振幅プリエンファシス変更部107では、システム200の運用時に変更可能なプリエンファシスのパラメータとして、0%乃至52.5%の計8のパラメータが設定可能である。送信振幅プリエンファシス設定制御部108内で実行される送信プリエンファシス適応制御108−2によるプリエンファシスの設定値は、送信振幅プリエンファシス変更部107に通知される。
【0032】
なお上記の説明では、伝送レート、送信振幅、及び送信プリエンファシスは、計8のパラメータが設定可能であったが、これらは各々8のパラメータに限られず、伝送システム200を設置する環境に合わせて8のパラメータ以外のn個のパラメータとすることが可能である。
【0033】
伝送レート適応制御105−1、送信振幅適応制御108−1、及び送信プリエンファシス適応制御108−2は、それぞれの適応制御を有効又は無効にするON/OFF切替と、それぞれの設定値の制御範囲とを指定可能にする。
【0034】
図3は、適応制御の有効/無効の設定及び各設定値の制御範囲を具体的に指定した適応制御の構成例である。図3に示すように、本構成例では伝送レート適応制御105−1は無効(OFF)となっており、伝送レートは2.5Gpsのみ指定可能である(2.5Gpsに固定される)。また、送信振幅適応制御108−1は有効(ON)となっており、振幅レベルはレベル4乃至レベル8の範囲の5段階のいずれかのレベルに指定可能である。さらに、送信プリエンファシス適応制御108−2が有効(ON)となっており、送信プリエンファシスは0%乃至37.5%の範囲の6段階のいずれかに指定可能である。このようにして本発明では、各適応制御105−1、108−1、108−2で適応制御のON/OFF切替及び制御範囲が指定可能となり、伝送品質状況算出部112等による評価によって予め得られた内容やシステム200の運用状況に応じて、伝送レート、送信振幅、送信プリエンファシスが制御可能となる。
【0035】
図4乃至図6に、各適応制御に関するフローチャートを示す。ここで、図4は、伝送レート適応制御105−1のフローチャートを示し、図5は、送信振幅適応制御108−1のフローチャートを示し、図6は、送信プリエンファシス適応制御108−2のフローチャートを示す。
【0036】
ここで、図4を用いて、伝送レート適応制御の方法を説明する。まず、ステップ120で、伝送レート適応制御がON(有効)かであるか否かを判定する。ここで、無効(OFF)であると判定された場合、図4に従った伝送レート適応制御は行われず、図5のフローチャートに示す送信振幅適応制御に移行する。一方、ステップ120で伝送レート適応制御が有効であると判断された場合、ステップ121において、伝送レートの設定が、所要伝送帯域通知部106から通知される所要伝送帯域を満たしているか否かの判定をする。ここで、伝送レートの設定が、所要伝送帯域を満たしていないと判断された場合には、ステップ122で伝送レートの設定を1段階大きくしても制御範囲の上限を超えているか否かの判定を行う。ここで、伝送レートの設定が制御範囲の上限を超えている場合には、ステップ126で伝送レートの設定値を1段階大きくせずに保持し、送信振幅適応制御(図5)に移行する。一方、ステップ122で伝送レートの設定が制御範囲の上限を超えていないと判断された場合には、ステップ127で伝送レートの設定値を1段階大きくして、送信振幅適応制御に移行する。
【0037】
また、ステップ121において、伝送レートの設定が所要伝送帯域を満たしていると判断された場合には、続くステップ123で伝送レートの設定を小さくしても所要伝送帯域を満たしているか否かの判定を行う。ここで、伝送レートの設定を1段階小さくした場合に伝送レートが所要伝送帯域を満たしていない場合には、伝送レートの設定を小さくせずに保持し(ステップ126)、送信振幅適応制御に移行する。一方、伝送レートの設定を1段階小さくしても伝送レートが所要伝送帯域を満たしている場合には、続くステップ124で伝送レートの設定を1段階小さくしても伝送レートが制御範囲の下限を超えているか否かの判定を行う。ここで、伝送レートの設定を1段階小さくした場合に伝送レートが所要伝送帯域の制御範囲の下限を超えている場合には、ステップ126で伝送レートの設定を小さくせずに保持する。一方、伝送レートの設定を1段階小さくしても伝送レートが所要伝送帯域の制御範囲の下限を超えていない場合には、ステップ125で伝送レートの設定を1段階小さくして送信振幅適応制御に移行する。
【0038】
以上のように、伝送レート適応制御では、伝送レートが所要伝送帯域を満たしていない場合には満たすように制御範囲を上限を超えない範囲で伝送レートの設定を大きくする。また、伝送レートが所要伝送帯域を満たす場合には、システムの消費電力をなるべく抑えるために、制御範囲を下限を超えない範囲で伝送レートの設定を小さくする。
【0039】
次に、図5を用いて、送信振幅適応制御の方法を説明する。まず、ステップ130で、送信振幅適応制御がON(有効)かであるか否かを判定する。ここで、無効(OFF)であると判定された場合、図5に従った送信振幅適応制御は行われず、図6のフローチャートに示す送信プリエンファシス適応制御に移行する。一方、送信振幅適応制御が有効であると判断された場合、ステップ131において、伝送品質状況算出部112から通知される伝送品質状況が、所要伝送品質通知部109から通知される所要伝送品質を満たしているか否かの判定をする。ここで、伝送品質状況が、所要伝送品質を満たしていないと判断された場合には、ステップ132で送信振幅の設定を1段階大きくしても送信振幅の制御範囲の上限を超えているか否かの判定を行う。ここで、送信振幅の設定を1段階大きくした場合に送信振幅が制御範囲の上限を超える場合には、ステップ136で送信振幅の設定を大きくせずに保持し、送信プリエンファシス適応制御(図6)に移行する。一方、ステップ132で送信振幅の設定が制御範囲の上限を超えていないと判定された場合には、ステップ137で送信振幅の設定を1段階大きくして、送信プリエンファシス適応制御に移行する。
【0040】
また、ステップ131において、伝送品質状況が所要伝送品質を満たしていると判断された場合には、続くステップ133で、所要伝送品質を、所要伝送品質通知部109から通知される所要伝送品質に対して例えば30%良くした場合でも、伝送品質状況が30%良くした所要伝送品質を満たしているか否かの判定を行う。ここで、所要伝送品質を30%良くした場合に、伝送品質状況が30%良くした所要伝送品質を満たしていない場合には、送信振幅の設定を変えずに保持して(ステップ136)、送信プリエンファシス適応制御に移行する。一方、所要伝送品質を30%良くしても、伝送品質状況が30%良くした所要伝送品質を満たしている場合には、続くステップ134で送信振幅の設定を1段階小さくしても送信振幅が送信振幅の制御範囲の下限を超えているか否かの判定を行う。ここで、送信振幅の設定を1段階小さくした場合に送信振幅の制御範囲の下限を超えている場合には、送信振幅の設定を1段階小さくせずに保持する(ステップ136)。一方、送信振幅の設定を1段階小さくしても送信振幅が送信振幅の制御範囲の下限を超えていない場合には、ステップ135で送信振幅の設定を1段階小さくして送信プリエンファシス適応制御に移行する。
【0041】
以上のように、送信振幅適応制御では、伝送品質が所要伝送品質を満たしていない場合には満たすように制御範囲を上限を超えない範囲で送信振幅の設定を大きくする。また、伝送品質が所要伝送品質を満たす場合には、必要以上に送信振幅を大きくしないでシステムの消費電力をなるべく抑えるために、制御範囲を下限を超えない範囲で送信振幅の設定を小さくする。
【0042】
また、所要伝送品質を例えば30%良くした場合の判定をさらに加えることで、伝送品質状況が所要伝送品質の臨界付近にある状況では、送信振幅の設定を小さくせずに保持する。これにより、その後、所要伝送品質が高くなる方向に変化した場合でも伝送品質状況は依然として所要伝送品質を依然として満たしている可能性が高く、送信振幅の設定を頻繁に上げ下げさせるような適応制御の必要性がなくなる。すなわち、伝送品質の臨界付近での送信振幅制御のばらつきを抑えることが可能となる。
【0043】
次に、図6を用いて、送信プリエンファシス適応制御の方法を説明する。まず、ステップ140で、送信プリエンファシス適応制御がON(有効)かであるか否かを判定する。ここで、無効(OFF)であると判定された場合、送信プリエンファシス制御を行わずに、図4のフローチャートに示す伝送レート適応制御に移行する。一方、送信プリエンファシス適応制御が有効であると判断された場合、ステップ141において、伝送品質状況算出部112から通知される伝送品質状況が、所要伝送品質通知部109から通知される所要伝送品質を満たしているか否かの判定をする。ここで、伝送品質状況が、所要伝送品質を満たしていないと判断された場合には、ステップ142で送信プリエンファシスの設定を1段階強くしても送信プリエンファシスの制御範囲の上限を超えているか否かの判定を行う。ここで、送信プリエンファシスの設定を1段階強くした場合に送信プリエンファシスが制御範囲の上限を超える場合には、ステップ146で送信プリエンファシスの設定を1段階強くせずに保持し、伝送レート適応制御(図4)に移行する。一方、ステップ142で送信プリエンファシスが制御範囲の上限を超えていると判断された場合には、ステップ147で送信プリエンファシスの設定値を1段階強くして、再びステップ140に戻る。
【0044】
また、ステップ141において、伝送品質状況が所要伝送品質を満たしていると判断された場合には、続くステップ143で、所要伝送品質を例えば所要伝送品質通知部109から通知される所要伝送品質に対して10%良くした場合でも、伝送品質状況が所要伝送品質を満たしているか否かの判定を行う。ここで、所要伝送品質を10%良くした場合に、伝送品質状況が10%良くした所要伝送品質を満たしていない場合には、送信プリエンファシスの設定を変えずに保持し(ステップ146)、伝送レート適応制御(図4)に移行する。一方、所要伝送品質を10%良くしても伝送品質状況が10%良くした所要伝送品質を満たしている場合には、続くステップ144で、送信プリエンファシスの設定を1段階弱くしても送信プリエンファシスが送信プリエンファシスの制御範囲の下限を超えているか否かの判定を行う。ここで、送信プリエンファシスの設定を1段階弱くした場合に送信プリエンファシスの制御範囲の下限を超えている場合には、送信プリエンファシスの設定を1段階弱くせずに保持(ステップ146)し、伝送レート適応制御(図4)に移行する。一方、送信プリエンファシスの設定を1段階弱くしても送信プリエンファシスが送信振幅の制御範囲の下限を超えていない場合には、ステップ145で送信振幅の設定を1段階弱くしてステップ140に戻る。
【0045】
以上のように、送信プリエンファシス適応制御では、伝送品質が所要伝送品質を満たしていない場合には満たすように制御範囲を上限を超えない範囲で送信プリエンファシスの設定を大きくする。また、伝送品質が所要伝送品質を満たす場合には、必要以上に送信プリエンファシスを強くさせないで過度のプリエンファシスによる高周波成分の放射ノイズをなるべく抑えるために、制御範囲を下限を超えない範囲で送信プリエンファシスの設定を小さくする。
【0046】
また、所要伝送品質を例えば10%良くした場合の判定をさらに加えることで、伝送品質状況が所要伝送品質の臨界付近にある状況では、送信プリエンファシスの設定を小さくせずに保持する。これにより、上記の送信振幅適応制御の場合と同じように、その後、所要伝送品質が高くなる方向に変化した場合でも伝送品質状況は依然として所要伝送品質を依然として満たしている可能性が高く、送信プリエンファシスの設定を頻繁に上げ下げさせるような適応制御の必要性がなくなる。すなわち、伝送品質の臨界付近での送信プリエンファシス制御のばらつきを抑えることが可能となる。
【0047】
以上、本発明の高速シリアル伝送システム及びその制御方法に関する好適な実施例を説明したが、本発明によれば、伝送レート設定制御手段、送信振幅設定制御手段、及び送信プリエンファシス設定制御手段が、それぞれ、所要の伝送帯域又は伝送品質に適応するよう、伝送レート、送信振幅、及び送信プリエンファシスの設定を適応制御し得る。このため、システムを長期間にわたって運用する場合であっても、システムを構成する装置の製品としてのばらつき、又はシステムの装置が設置される周囲の温度等その周囲環境といった外的要因に拘わらず、システムにとって最適な伝送品質を常に維持するよう制御できる。これは、例えば図1に示す所要伝送品質通知部109及び伝送品質状況算出部112からの情報により、送信振幅設定制御手段及び送信プリエンファシス設定制御手段が、それぞれ送信振幅及び送信プリエンファシスの適応制御を行うことにより、最適な伝送品質が維持されるためである。
【0048】
また、伝送システムの運用環境に拘わらず、その運用中に必要以上に消費電力が増加するのを抑えることができる。これは、伝送レート設定制御手段が、伝送レート適用制御を行うことによって、伝送レートを所要の伝送帯域に最小限必要な分の伝送レートに小さくすることで、システムの消費電力を抑えることができるためである。
【0049】
また、送信振幅適応制御では、伝送品質の状況が所要の伝送品質を満たしていない場合には送信振幅の制御範囲の上限を超えない範囲で送信振幅の設定を大きくすることで、所要の伝送品質を満たすよう制御される。一方、伝送品質の状況が所要の伝送品質を満たす場合には、送信振幅の制御範囲を下限を超えない範囲で送信振幅の設定を小さくすることで、必要以上に送信振幅が大きくならずシステムの消費電力を抑えることが可能となる。
【0050】
また、送信プリエンファシス適応制御では、伝送品質の状況が所要の伝送品質を満たしていない場合には送信プリエンファシスの制御範囲の上限を超えない範囲で送信プリエンファシスの設定を大きくすることで、所要の伝送品質を満たすよう制御される。また、伝送品質が所要の伝送品質を満たす場合には、送信プリエンファシスの制御範囲の下限を超えない範囲で送信プリエンファシスの設定を小さくすることで、必要以上に送信プリエンファシスが強くならず、プリエンファシスによる高周波成分の放射ノイズを抑えることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明に係る高速シリアル送信システム及びその制御方法は、大容量無線基地局装置等のネットワーク装置全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0052】
100 高速シリアル送信部(送信手段)
101 高速シリアル信号送信部
102 初期伝送レート設定部
103 初期送信振幅プリエンファシス設定部
104 伝送レート変更部
105 伝送レート設定制御部(伝送レート設定制御手段)
106 所要伝送帯域通知部
107 送信振幅プリエンファシス変更部
108 送信振幅プリエンファシス設定制御部(送信振幅プリエンファシス設定制御手段)
109 所要伝送品質通知部
110 高速シリアル受信部(受信手段)
200 高速シリアル伝送システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信により送信手段から受信手段へデータをシリアル伝送する高速シリアル伝送システムであって、
前記送信手段が、前記送信手段及び受信手段間の無線通信に適した所要の伝送帯域に基づいて、前記データの伝送レートが前記所要の伝送帯域に適応するよう前記伝送レートの設定を適応制御する伝送レート設定制御手段を有しており、
前記伝送レート設定制御手段が、前記適応制御を行うか否かの指定、及び前記適応制御によって設定可能な前記伝送レートの制御範囲の指定を行い得ることを特徴とする高速シリアル伝送システム。
【請求項2】
無線通信により送信手段から受信手段へデータをシリアル伝送する高速シリアル伝送システムであって、
前記送信手段が、前記送信手段及び受信手段間の無線通信に適した所要の伝送品質、及び前記受信手段で受信される信号の伝送品質状況に基づいて、前記伝送品質状況が前記所要の伝送品質を満たすよう信号の送信振幅の設定を適応制御する送信振幅設定制御手段を有しており、
前記送信振幅設定制御手段が、前記適応制御を行うか否かの指定、及び前記適応制御によって設定可能な前記送信振幅の制御範囲の指定を行い得ることを特徴とする高速シリアル伝送システム。
【請求項3】
無線通信により送信手段から受信手段へデータをシリアル伝送する高速シリアル伝送システムであって、
前記送信手段が、前記送信手段及び受信手段間の無線通信に適した所要の伝送品質、及び前記受信手段で受信される信号の伝送品質状況に基づいて、前記伝送品質状況が前記所要の伝送品質を満たすよう信号の送信プリエンファシスの設定を適応制御する送信プリエンファシス設定制御手段を有しており、
前記送信プリエンファシス設定制御手段が、前記適応制御を行うか否かの指定、及び前記適応制御によって設定可能な前記送信プリエンファシスの制御範囲の指定を行い得ることを特徴とする高速シリアル伝送システム。
【請求項4】
無線通信により送信手段から受信手段へデータをシリアル伝送する高速シリアル伝送システムであって、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の前記伝送レート設定制御手段、前記前記送信振幅設定制御手段、及び前記送信プリエンファシス設定制御手段を具えることを特徴とする高速シリアル伝送システム。
【請求項5】
さらに、前記送信振幅設定制御手段が、前記所要の伝送品質を所定の分だけ高くした場合に、前記伝送品質状況が高くした前記所要の伝送品質を満足しているか否かを判断することを特徴とする請求項2又は4に記載の高速シリアル伝送システム。
【請求項6】
さらに、前記送信プリエンファシス設定制御手段が、前記所要の伝送品質を所定の分だけ高くした場合に、前記伝送品質状況が高くした前記所要の伝送品質を満足しているか否かを判断することを特徴とする請求項3又は4に記載の高速シリアル伝送システム。
【請求項7】
無線通信により送信手段から受信手段へデータをシリアル伝送する高速シリアル伝送システムにおけるデータの伝送レート、送信振幅、及び送信プリエンファシスの適応制御方法であって、当該方法が、
前記送信手段及び受信手段間の無線通信に適した所要の伝送帯域に基づいて、前記データの伝送レートが前記所要の伝送帯域に適応するよう前記伝送レートの設定を制御するステップと、
前記所要の伝送品質、及び前記受信手段で受信される信号の伝送品質状況に基づいて、前記伝送品質状況が前記所要の伝送品質に適応するよう前記送信振幅の設定を制御するステップと、
前記所要の伝送品質、及び前記受信手段で受信される信号の伝送品質状況に基づいて、前記伝送品質状況が前記所要の伝送品質に適応するよう前記送信プリエンファシスの設定を制御するステップと、
を有していることを特徴とする方法。
【請求項8】
前記送信振幅の設定を制御するステップが、さらに、前記所要の伝送品質を所定の分だけ高くした場合に、前記伝送品質状況が高くした前記所要の伝送品質を満足しているか否かを判断するステップを有しており、
前記送信プリエンファシスの設定を制御するステップが、さらに、前記所要の伝送品質を所定の分だけ高くした場合に、前記伝送品質状況が高くした前記所要の伝送品質を満足しているか否かを判断するステップを有していることを特徴とする請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−278647(P2010−278647A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−127854(P2009−127854)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】