説明

高速屈曲試験装置

【課題】所要のストロークで高速振動する可動板の摺動抵抗を低減してブレをなくし、試験装置自体の耐久性を向上させるとともに、試験片であるフレキシブルプリント配線板の取付姿勢と取付位置を正確かつ簡単に調整可能な高速屈曲試験装置を提供する。
【解決手段】屈曲されたフレキシブルプリント配線板11の一端部を固定板12に固定し、固定板12に対して所定間隔で平行に配置された可動板13にフレキシブルプリント配線板11の他端部を固定するとともに、可動板13を固定板12に対して平行に高速振動させる高速屈曲試験装置10において、可動板13の一端部をエアベアリング14にて摺動可能に支持し、可動板13の他端部に保持具15を取り付けて振動体17に接続するとともに、保持具15をエアベアリング16にて摺動可能に支持した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフレキシブルプリント配線板のIPC屈曲試験を行なうための高速屈曲試験装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板の屈曲試験としては、屈曲箇所をずらしながら行なうIPC屈曲試験が知られている。光ピックアップなどに使用されるフレキシブルプリント配線板は、一定のストロークで108回以上の屈曲回数で試験を行なう必要がある。しかし、これにはあまりにも長時間を要し、しかも試験装置自体における作動系の摩耗などによる寿命があり、屈曲回数の増加すなわち高速化に反比例して寿命が短縮するという問題がある。
【0003】
このため、所要のストロークで高速に稼動(振動)し、しかも試験装置自体の耐久性をも考慮した高速屈曲試験装置が必要とされ、従来から種々の提案がなされている。例えば特許文献1では、可動体(可動板)の上下にそれぞれスプリングを介装して振動子に結合させることにより、振動子の振幅を増幅して屈曲試験を高速で行なうことが可能となっている。
【0004】
また、例えば特許文献2では、フレームに振動体(可動板)を同振動体の軸線方向に間隔がおかれた二カ所をそれぞれダンパーで支承し、電流が磁界中のコイルに流れるのに伴い、その電流の強さに応じた機械的な力がコイルに働いて運動を起こすように構成してある。これにより、振動体は振動軸線のブレが抑制されて高速振動し、振動体の固定部に接続される試験片(フレキシブルプリント配線板)も同速度で屈曲あるいは振動されるものである。
【特許文献1】実開昭57−205049号公報
【特許文献2】特公平6−63955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1記載の発明は、上下のスプリングで可動体を挟持固定するので支持力が弱く、可動体が振動方向以外に大きくブレるおそれがある。また、特許文献2記載の発明は、コイルの電磁力にて振動体を支持するので、振動体が振動方向以外に大きくブレるおそれがある。
【0006】
特に、特許文献2では、振動体を軽量化する必要があることから、振動体および固定部を薄くせざるをえず、固定部の両側にまったく同一の試験片をセットしなければ、固定部が反ってしまう。振動する固定部が1mm以上反れば試験結果にも大きく影響する。さらに、屈曲半径を小さくすれば、試験片の曲げ応力によって固定部のブレがより大きくなり、21mm以上のストロークで振動させることに制約が出てくる。特に、3000cpmといった高速域において長ストロークで振動させることは困難である。
【0007】
また、従来の屈曲試験装置では、可動板の軸を摺動支持するために、モリブデンなどの耐摩耗材や機械式のベアリングを用いる方法がある。しかし、高速で振動しているときに摩擦による摩耗が発生し、さらに、摩擦熱による熱膨張で摩耗が大きくなるため、10回以上の屈曲回数までに至らないか、あるいは、軸支持部の交換が必要となって、メンテナンスに手間がかかり、ランニングコストも上昇する。
【0008】
そこで、本発明は、所要のストロークで高速振動する可動板の摺動抵抗を低減してブレをなくし、試験装置自体の耐久性を向上させるとともに、試験片であるフレキシブルプリント配線板の取付姿勢と取付位置を正確かつ簡単に調整可能な高速屈曲試験装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、屈曲されたフレキシブルプリント配線板の一端部を固定板に固定し、該固定板に対して所定間隔で平行に配置された可動板に前記フレキシブルプリント配線板の他端部を固定するとともに、該可動板を前記固定板に対して平行に高速振動させる高速屈曲試験装置において、前記可動板の一端部を流体ベアリングにて摺動可能に支持し、前記可動板の他端部に保持具を取り付けて振動体に接続するとともに、該保持具を流体ベアリングにて摺動可能に支持したことを特徴とする高速屈曲試験装置を提供する。
【0010】
この構成によれば、可動板の一端部が流体ベアリングにて支持され、可動板の他端部も保持具を介して流体ベアリングにて支持されているので、可動板が高速で振動しているときの摺動抵抗が極めて少なく、摺動による発熱も低く抑えられる。また、可動板の振動方向に対するブレも殆どなくなる。
【0011】
請求項2記載の発明は、上記固定板は、差動ねじ機構によって上記可動板に対して間隔調整可能に設けられたことを特徴とする請求項1記載の高速屈曲試験装置を提供する。
【0012】
この構成によれば、差動ねじ機構は、マイクロメータに設けられているように、外ねじの回転角に対して軸方向の変位が微小であるため、差動ねじ機構によって固定板が可動板に対して微小寸法単位で移動する。したがって、固定板と可動板の間隔を極めて正確に調整することができる。
【0013】
請求項3記載の発明は、複数枚のフレキシブルプリント配線板を平行に取付治具に装着し、該取付治具にて前記固定板へ前記フレキシブルプリント配線板を所定の取付姿勢で固定するとともに、前記固定板と可動板との間隔をレーザ変位計にて測定しつつ、差動ねじ機構によって固定板の位置を調整することを特徴とする請求項1または2記載の高速屈曲試験装置を使用した高速屈曲試験方法を提供する。
【0014】
この構成によれば、試験片であるフレキシブルプリント配線板を取付治具にて固定板へ固定するので、フレキシブルプリント配線板が正確な取付姿勢で固定される。また、差動ねじ機構により固定板と可動板の間隔は微小寸法単位で調整することができ、レーザ変位計にて測定することにより、屈曲試験半径を容易かつ高精度に調整することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、上述したように、高速振動する可動板を流体ベアリングで摺動可能に支持しているので、摺動抵抗が極めて少なく、可動板の振動方向に対するブレが殆どない。したがって、高速振動でもストロークの制約なく振動を続けることができ、10回以上の屈曲回数まで部品交換の必要がない耐久性の高い試験装置となった。そして、摺動による発熱も低く抑えられるため、試験室の恒温雰囲気が可能となる。
【0016】
また、試験片であるフレキシブルプリント配線板は、取付治具を介して可動板の振動方向に正確かつ容易に固定できるとともに、差動ねじ機構により固定板と可動板の間隔を正確に調整して屈曲試験半径容易に調整できるなど、屈曲試験の精度向上ならびに試験の容易化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る高速屈曲試験装置および該装置を使用した高速屈曲試験方法について、好適な実施例をあげて説明する。所要のストロークで高速振動する可動板の摺動抵抗を低減してブレをなくし、試験装置自体の耐久性を向上させるとともに、試験片であるフレキシブルプリント配線板の取付姿勢と取付位置を正確かつ簡単に調整可能な高速屈曲試験装置を提供するという目的を達成するために、本発明は可動板の一端部を流体ベアリングにて摺動可能に支持し、前記可動板の他端部に保持具を取り付けて振動体に接続するとともに、該保持具を流体ベアリングにて摺動可能に支持したことにより実現した。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明に係る高速屈曲試験装置の全体構成図である。高速屈曲試験装置(以下、単に試験装置という)10は、屈曲されたフレキシブルプリント配線板11の一端部を固定した左右一対の固定板12と、左右の固定板12の間で固定板12に対して所定間隔で平行に配置され、かつ前記フレキシブルプリント配線板11の他端部を固定した可動板13と、可動板13の一端部(同図では上端部)13aを摺動可能に支持するエアベアリング14と、前記可動板13の他端部(同図では下端部)13bに取り付けられた保持具15と、この保持具15を摺動可能に支持するエアベアリング16と、保持具15に接続された振動体17などから構成されている。
【0019】
前記固定板12と可動板13との間に屈曲して固定されたフレキシブルプリント配線板11は恒温槽18の中に収容されており、恒温槽18の上部に前記可動板13の一端部13aを摺動可能に支持しているエアベアリング14が固定されている。また、恒温槽18は下部フレーム19の上に固定され、下部フレーム19の内部に前記振動体17が取り付けられている。そして、下部フレーム19は防振ゴム20を介して台座21に固定されている。前記振動体17は、電動モータ(図示せず)で駆動されるクランク機構22にて構成されている。
【0020】
図2はクランク機構22の要部を示し、該クランク機構22は、駆動軸23に取り付けられたクランクプーリ22aと、クランクプーリ22aから上方へ突出して連結されたロッド22bとからなり、ロッド22bの両端部はそれぞれメタルベアリング24を介してクランクプーリ22aと保持具15にピン結合にて接続されている。
【0021】
図3および図4は可動板13の支持部分を示し、前記可動板の一端部13aは前後左右の4方向から挟持するように、エアベアリング14にて上下方向へ摺動可能に支持されている。
【0022】
一方、前記可動板の他端部13bは前記保持具15に取り付けられている。該保持具15は中空円筒形であり、その上端部に前記可動板の他端部13bを差し込んで固定できるようにスリット15aとプレート15bが設けられている。また、該保持具15の下端部にはピン25が突設され、前述したように、メタルベアリング24を介してクランク機構のロッド22bが枢着されている。
【0023】
そして、前記下部フレーム19の上部に取り付けられたエアベアリング16により、前記保持具15の円筒部分が上下方向へ摺動可能に支持されている。
【0024】
図5は固定板12と可動板13の間隔調整機構を示し、図1の全体構成図を参照しながら説明する。恒温槽18の内部には下部フレーム19に固定された支持部26と、該支持部26に差動ねじ機構27を介してスライド部28が水平方向へ移動可能に設けられ、このスライド部28の上に固定板12が取り付けられている。
【0025】
前記差動ねじ機構27は、マイクロメータに設けられているように、外ねじの回転角に対して軸方向の変位が微小であるため、差動ねじ機構27のつまみを回転させると、固定板12がごく僅かずつ移動する。したがって、固定板12と可動板13の間隔を微小寸法単位で調整でき、フレキシブルプリント配線板11の屈曲試験半径の微調整が可能となる。
【0026】
また、前記固定板12の側方(可動板13に対して離間する方向)には、固定板12と一体にブラケット29が設けられており、固定板12と可動板13の間隔を調整する際には、このブラケット29にレーザ変位計30を装着する。該レーザ変位計30は固定板12の表面から所定の寸法位置に正確に装着される。
【0027】
レーザ変位計30は、レーザ光31の照射によって可動板13までの距離を測定するものであり、前記固定板12が移動すると、ブラケット29に装着したレーザ変位計30も固定板12と一体に移動する。したがって、該レーザ変位計30から照射するレーザ光31により、可動板13までの距離の変化を測定すれば、固定板12の相対的な移動量が分かり、固定板12と可動板13との間隔を測定できる。
【0028】
このように、前記差動ねじ機構27による微小寸法単位での調整と、レーザ変位計30による正確な寸法測定とにより、固定板12と可動板13との間隔を極めて正確に調整することができ、屈曲試験半径を容易かつ正確に調整することができる。
【0029】
なお、図5には、ブラケット29の上部位置にレーザ変位計30を取り付けた場合と、ブラケット29の下部位置にレーザ変位計30を取り付けた場合の双方の状態を図示してある。また、符号32は検査用の接点端子取付部であり、本実施例では、複数枚のフレキシブルプリント配線板11を同時に検査できるように、複数個の接点端子取付部32が並設されている。
【0030】
図6は、フレキシブルプリント配線板11を固定板12へ装着するための取付治具35である。本実施例では複数の試験片を同時に検査できるように、3枚のフレキシブルプリント配線板11を所定位置に並列させて、それぞれの端部(同図で上端部)を試験片セット金具36へ両面テープにて仮固定する。次に、図示しないチャックホルダにて、3枚のフレキシブルプリント配線板11の試験片セット金具36側の端部から任意に定められた寸法の場所にチャック37を位置決めし、該チャック37をフレキシブルプリント配線板11に両面テープで貼り付ける。そして、チャックホルダを移動して、チャック37と試験片セット金具36に貼り付けられた3枚のフレキシブルプリント配線板11を取付治具35から取り外す。
【0031】
この状態で、図5に示すように、フレキシブルプリント配線板11を固定板12へ装着するのであるが、その際に、接点端子取付部32が邪魔にならないように、ブラケット29側へ倒回された状態となっている。先ず、可動板13の反対側から試験片ガイド金具38のピンを差し込んで固定板12側へ突出させ、前記試験片セット金具36の穴に試験片ガイド金具38のピンを差し込んで正確に位置決めし、フレキシブルプリント配線板11の端部(試験片セット金具36側の端部)を可動板13に貼り付ける。フレキシブルプリント配線板11を可動板13に貼り付けた後は、試験片ガイド金具38を取り外す。
【0032】
次に、チャック37を固定板12側に装着し、チャック固定ねじ39にて固定する。チャック37を固定板12に固定した後は、試験片セット金具36を取り外す。そして、前記接点端子取付部32を起立させてつまみねじ33で固定する。かくして、複数枚のフレキシブルプリント配線板11の一端部が正確に固定板12に固定されるとともに、フレキシブルプリント配線板11の他端部が正確に可動板13に固定され、試験片の固定方向を容易かつ正確に調整して検査の精度を向上させることができる。
【0033】
次に、図1〜図6に従って、本発明に係る高速屈曲試験装置10を使用した高速屈曲試験方法について説明する。
【0034】
先ず、複数枚のフレキシブルプリント配線板11を平行に取付治具35に装着し、試験片セット金具36とチャック37をフレキシブルプリント配線板11の所定位置に貼り付ける。そして、試験片セット金具36とチャック37に貼り付けられたフレキシブルプリント配線板11を取付治具35から取り外して、前述した手順にて、フレキシブルプリント配線板11の一端部をチャック37とともに固定板12に固定する。また、フレキシブルプリント配線板11の他端部を可動板13に固定する。
【0035】
続いて、レーザ変位計30により固定板12と可動板13との間隔を正確に測定しながら、差動ねじ機構27のつまみを回転させて固定板12を移動し、固定板12と可動板13の間隔を予め設定した寸法に調整して固定板12を固定する。この状態で、試験片である複数枚のフレキシブルプリント配線板11は、設定された所定の取付姿勢で試験装置10へ正確にセットされる。
【0036】
試験装置10へフレキシブルプリント配線板11をセットしたら、電動モータを回転してクランク機構22を駆動し、振動体17の稼動を開始する。振動体17が稼動されると、保持具15に取り付けられている可動板13が上下方向へ高速で振動する。
【0037】
前述したように、可動板13の一端部(上端部)がエアベアリング14にて支持され、可動板20の他端部(下端部)は保持具15を介してエアベアリング16にて支持されているため、可動板13が高速で振動しているときの摺動抵抗が極めて少なく、摺動による発熱も低く抑えられるとともに、可動板13の振動方向に対するブレも殆どなくなる。また、振動体17がクランク機構22で構成されているので、大きなストロークで高速振動させることができる。
【0038】
このように、ロングストロークでの高速振動が可能となり、かつ、耐久性に優れた高速屈曲試験機および試験方法を提供することができた。
【0039】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る高速屈曲試験装置の全体構成図。
【図2】図1に示すクランク装置の要部の説明図。
【図3】図1に示す可動板と保持具の支持部分の説明図。
【図4】(a)図3のA−A矢視図。(b)図4(a)のB−B矢視図。
【図5】図1に示す固定板11と可動板13の間隔調整機構の説明図。
【図6】フレキシブルプリント配線板の取付治具を示す説明図。
【符号の説明】
【0041】
10 高速屈曲試験装置
11 フレキシブルプリント配線板
12 固定板
13 可動板
14 エアベアリング
15 保持具
16 エアベアリング
17 振動体
22 クランク機構
27 差動ねじ機構
30 レーザ変位計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈曲されたフレキシブルプリント配線板の一端部を固定板に固定し、該固定板に対して所定間隔で平行に配置された可動板に前記フレキシブルプリント配線板の他端部を固定するとともに、該可動板を前記固定板に対して平行に高速振動させる高速屈曲試験装置において、
前記可動板の一端部を流体ベアリングにて摺動可能に支持し、前記可動板の他端部に保持具を取り付けて振動体に接続するとともに、該保持具を流体ベアリングにて摺動可能に支持したことを特徴とする高速屈曲試験装置。
【請求項2】
上記固定板は、差動ねじ機構によって上記可動板に対して間隔調整可能に設けられたことを特徴とする請求項1記載の高速屈曲試験装置。
【請求項3】
複数枚のフレキシブルプリント配線板を平行に取付治具に装着し、該取付治具にて上記固定板へ前記フレキシブルプリント配線板を所定の取付姿勢で固定するとともに、前記固定板と可動板との間隔をレーザ変位計にて測定しつつ、差動ねじ機構によって固定板の位置を調整することを特徴とする請求項1または2記載の高速屈曲試験装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−102022(P2008−102022A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284944(P2006−284944)
【出願日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【出願人】(000230249)日本メクトロン株式会社 (216)
【出願人】(392001955)株式会社日本アプライドテクノロジ (4)
【Fターム(参考)】