説明

高連泡率シリコーンゴムスポンジ、その製造方法、及び該シリコーンゴムスポンジを用いた定着ロール

【課題】 ゴムの架橋速度の制御や発泡ガス速度のデリケートなバランスを考慮することなく常温熱気加硫によってスポンジが作成可能で、生産性に優れ、均一で微細なセル構造を形成でき、かつ毒性の少ない高連泡率シリコーンスポンジ組成物を提供する。
【解決手段】
(A)下記平均組成式(I):
R1aSiO4-a/2 (I)
(R1は同一又は異種の非置換又は置換の1価炭化水素基、aは1.95〜2.04の正数である。)
で表されるオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B) 90℃以上の温度領域でガスを発生する発泡剤:0.5〜50質量部、及び
(C)1分間半減期温度が150℃以上の非アシル系有機過酸化物: (A)成分を硬化し得る有効量
を含有する高連泡率シリコーンゴムスポンジ組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築ガスケット、各種スポンジシート、吸水用スポンジ、断熱シート、工業用ロール、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置を初めとする事務機用スポンジロール、特にトナー溶融定着ロール、給紙ロール、トナー搬送ロールおよびクリーニングロールなどに使用される高連泡率シリコーンゴムゴムスポンジに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンスポンジは、シリコーンゴム特有の物理特性をもっており、耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、難燃性、圧縮永久ひずみ等に優れた性質を有している。このシリコーンゴムスポンジは、基本的に熱硬化性シリコーンゴム組成物と硬化剤、発泡剤とを組み合わせ、加熱により発泡、硬化させてスポンジを形成させるものであるが、その場合、発泡性に優れ、均一で微細なセル構造を有ししかも、シリコーンゴム特有の物理特性を損なわないことが重要である。
【0003】
また、加工成形方法としては、連続成形が可能となる常圧熱気中で硬化、発泡させることが多く行われている。このような常圧熱気中の成型で均一かつ微細なセル構造のスポンジを作るためには発泡剤が分解するときに発生するガスをゴム内部に細かい泡の状態で押さえ込まなければならないため通常の場合は発泡剤が分解する以前にすでにゴム組成物が発泡圧力を押さえ込むために増粘、硬化している必要がある。
【0004】
したがって、スポンジを成型させる場合にゴム内でおきる反応順序としては以下の順序が一般的である。
1)硬化剤によるベースポリマーであるオルガノポリシロキサンの増粘(硬化)、ゴムの表面硬化。
2)発泡剤の分解によるガスの発生、スポンジセル形成。
3) ベースポリマーであるオルガノポリシロキサンの完全硬化。
実際には上記の順番で反応が起こるように付加架橋の触媒量を調整して反応制御したり、有機過酸化物の分解温度を発泡剤の分解温度と同じか低いように選択して上記のような反応順序を設定する。
【0005】
このように通常のスポンジ組成物は発泡圧力を架橋で押さえ込む方法で作成されるためにスポンジセルは通常独立泡であり通常連泡率は10%以下で空気がスポンジセルにとじこめられた状態となっている。このようにスポンジセルが独立泡になっているスポンジ成型物を加熱すると閉じこめられた空気がボイルシャルルの法則によって熱膨張してしまいガスケット材のような閉じられた空間を満たすスポンジは空気バネ成分が強くなりスポンジ硬度が高くなったり、定着スポンジロール等のロール材料では熱膨張によりスポンジ径が大きくなってしまい定着圧力が変わってしまったり、逆にスポンジロールが冷えた状態ではヒーターロールとバックアップロールの設定間隔が広くなりロールががたついて異音の発生源となったりする。特に定着スポンジロール用途としては省電力の観点からスタンバイ状態では定着スポンジロールが通常の定着温度よりも冷えた状態の機種が増加しており加熱温度によらずスポンジ径が一定となりやすい連泡率の高いスポンジが望まれていた。
特許文献1には、非アシル系の有機過酸化物架橋と有機アゾ化合物とを併用する発泡系として1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン(パーオキシエステル系、163℃)及び発泡剤としてAIBN(アゾイソブチロニトリル)を用いたスポンジが提案されているが、本特許は通常アシル系の有機過酸化物がカーボンによる架橋阻害によって使用不可能な導電材料を常圧熱気加硫を可能とする表面硬化性にすぐれる有機過酸化物を使用することで良好なスポンジを得る技術であり、スポンジのセルは独立泡であり、また特にスポンジ連泡率を高める技術ではなく連泡率の記載はない。
特許文献2には、結晶水をもつ無機塩類の結晶水で発泡させるシリコーンゴムスポンジ組成物が記載されているが、連泡型スポンジは記載されていない。
【0006】
【特許文献1】特開平5−43802号公報
【特許文献2】特開平5−156061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記問題を克服するためになされるものでゴムの架橋速度の制御や発泡ガス速度のデリケートなバランスを考慮することなくHAVによってスポンジが作成可能で生産性に優れ、均一で微細なセル構造を有し、かつ発泡剤を選ばずスポンジ成形が可能で特に炭酸水素ナトリウム系発泡剤をもちいることで毒性の少ない高連泡率シリコーンスポンジ組成物を安易に提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、上記目的を達成する手段として、
(A)下記平均組成式(I):
R1aSiO4-a/2 (I)
(R1は同一又は異種の非置換又は置換の1価炭化水素基、aは1.95〜2.04の正数である。)
で表され、一分子中にアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B) 90℃以上の温度領域でガスを発生する発泡剤:0.5〜50質量部、及び
(C)1分間半減期温度が150℃以上の非アシル系有機過酸化物: (A)成分を硬化し得る有効量
を含有するスポンジ組成物を発泡、硬化させることにより得られる連泡率15%以上である高連泡率シリコーンゴムスポンジを提供する。
【0009】
また、本発明は、上記スポンジ組成物を常圧熱気加硫(HAV)により発泡、硬化させることを含む連泡率が15%以上である高連泡率シリコーンゴムスポンジの製造方法を提供する。
【0010】
さらに、本発明は、該高連泡率シリコーンゴムスポンジからなる層を少なくとも1層有することを特徴とする定着ロール、並びに該定着ロールを備える電子写真式画像形成装置を提供する。このような定着ロールとしては、例えば、連泡スポンジを定着ロール単層あるいはPFAチューブ等の表層離形材を接着させた2層以上の複層定着ロール、あるいはソリッドゴムとスポンジゴム層及びトナー離形層を複合した多層構造定着ロール構造をもつトナー溶融定着用途の定着ロールが挙げられる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスポンジ組成物は1分間半減期温度が150℃以上の非アシル系有機過酸化物を用いて常圧熱気加硫を行う事で従来不可能であった連泡率の高い、即ち連泡率15%以上、要すれば20%以上、さらには30〜100%のシリコーンスポンジを得る事ができる。また、(B)成分として炭酸水素ナトリウム系発泡剤に使用するとより高い連泡率のスポンジが得られる。また熱分解により(A)成分を架橋、増粘させる事のできる有機発泡剤を造核剤として併用する事で連泡スポンジセルを微細化、均一化することが可能である。その他の効果は以下の説明において説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
−(A)成分−
(A)成分のオルガノポリシロキサンは下記平均組成式(I)
R1aSiO4-a/2 (I)
(R1は同一又は異種の非置換又は置換の1価炭化水素基、aは1.95〜2.04の正数である。)
で表されるオルガノポリシロキサンである。
【0013】
平均組成式(I)においてR1としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル機、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基、フェニル基、トリル基などのアリール基、β-フェニルプロピル基等のアラルキル基、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが選択される、同一又は異種の好ましくは炭素原子数1〜12、より好ましくは炭素原子数1〜8の非置換または置換の1価炭化水素基が挙げられる。具体的には、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、特にメチル基が80モル%以上、さらに95モル%以上であることが好ましい。また、aは1.95〜2.04の正数であり、このオルガノポリシロキサンは実質的に直鎖状であるが、硬化後のシリコーンゴムスポンジのゴム弾性が損なわれない範囲で分岐していてもよい。このオルガノポリシロキサンは分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基などで封鎖されたものとすることができるが、本発明において、このオルガノポリシロキサンは分子中に少なくとも2個のアルケニル基を有することが必要で、具体的には、R1のうち0.001〜5モル%、特に0.01〜0.5モル%がアルケニル基、特にビニル基であることが好ましい。
【0014】
この種のオルガノポリシロキサンは、通常選択されたオルガノハロシランの1種又は2種以上を加水分解縮合することによって、あるいは環状ポリシロキサン(シロキサンの3量体あるいは4量体など)をアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができるもので、このものは基本的には直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、一部分岐していてもよい。また、分子構造の異なる2種又はそれ以上の混合物であってもよい。また、このオルガノポリシロキサンの粘度は、25℃における粘度が100mm2/s以上のものが好ましい。より好ましくは100,000〜10,000,000mm2/sである。重合度では100以上、特に3,000以上が好ましく、その上限は好ましくは100,000であり、さらに好ましくは10,000である。
【0015】
−(B)成分−
本発明においては、(B)成分として、90℃以上、好ましくは100〜180℃の温度領域でガスを発生する発泡剤を使用する。熱分解(あるいは蒸発)によってガスさせ得るものであれば特に限定されるものではないが、シリコーンに非相溶のゴム用発泡剤として公知の有機発泡剤や無機発泡剤が使用できる。
【0016】
有機発泡剤としては、例えば、N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミド、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロへキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビズ-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート等の有機アゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、P,P'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'−ジスルホニルヒドラジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、パラトルエンスルホニルヒドラジン等のスルホニルヒドラジド化合物; カルシウムアジド、4,4−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。中でも例えばアゾビスイソブチロニトリルや2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビズ-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス〔N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド〕等の分子内にシリコーンゴムの硬化を阻害する硫黄化合物、リン酸塩類、強いアミン類などを持たないアゾ系有機発泡剤が好ましい。
【0017】
また、無機発泡剤として、具体的には、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等があげられる。好ましくは、炭酸水素ナトリウムである。これらは結晶水を有しないものが好ましい。炭酸水素ナトリウムは他の炭酸アンモニウム系や亜硝酸アンモニウム、アジド化合物などの無機発泡剤と異なって、分解によって強い酸やアルカリを発生することが無く、無臭で、シリコーンの有機過酸化物架橋や白金系触媒を使用する付加架橋の架橋阻害を起こさないので、スポンジを得るために多量に添加できるというメリットがあり、また毒性もなく、本発明で特に好適に使用される。
【0018】
炭酸水素ナトリウムを主剤とする炭酸水素ナトリウム系発泡剤は、他の発泡剤に比べ特に連泡率が高いスポンジを得ることが可能である。炭酸水素ナトリウムの分解挙動は120℃前後から徐々に分解し、主に150℃にて分解し発ガス温度範囲が広いことが知られている。このために炭酸水素ナトリウム系発泡剤を高温分解型の有機過酸化物を使用してHAV硬化、発泡させると架橋温度範囲の前後で発泡することとなり、いわゆるガス抜けが発生し連泡率の高いスポンジになると考えられる。ジアルキルの有機過酸化物と炭酸水素ナトリウム発泡剤の組み合わせでは連泡率が50%を超えるスポンジを得る事が可能である。炭酸水素ナトリウム系の発泡剤は発泡剤の主剤が炭酸水素ナトリウムであれば特に指定されるものではなく粒子径や製品純度、炭酸水素ナトリウムへのシリコーン系疎水化処理等については任意であるが望ましくは純度50〜100%、平均粒子径50μm以下が望ましい。また発泡剤へのスポンジの造核処理や造核剤の添加、分解促進剤として酸の少量添加や他の無機発泡剤の微量添加などは任意である。
【0019】
(B)成分の発泡剤の添加量としては通常(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.5〜50質量部、好ましくは1.0〜20質量部である。0.5質量部未満であると発生ガスが不十分でスポンジ状態となりにくく連泡率も上がらず、50質量部を超えると物理的に添加困難となる場合があり、またスポンジ成型時に発生ガスが多くなるためにセルが不均一となったりスポンジが内部より割れてしまったりしてしまう。
−(C)成分−
本発明の(C)成分の有機過酸化物加硫剤は(A)成分を硬化させるために使用するものであり、1分間半減期温度が150℃以上の非アシル系有機過酸化物を使用する。具体的にはパーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドのような常圧熱気加硫(HAV)時に酸素阻害によりゴム表面が架橋阻害される(固まりにくい)有機過酸化物が望ましい。
【0020】
通常の独立泡スポンジをHAV加硫する場合には発泡ガスをゴムに閉じこめる必要から使用される有機過酸化物には酸素による架橋阻害の少ないジアシル系パーオキサイド(2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド等)やパーオキシエステル系で特異的に酸素阻害に強い有機過酸化物である1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン、あるいは酸素架橋阻害のない付加架橋を選択する必要がある。そのため一般的に常圧熱気加硫では酸素阻害によりゴム表面が架橋しない(発泡体とならない)ジアルキルパーオキサイド系単独で常圧熱気加硫にて使用されることはなく、また単独で使用した場合スポンジセルが均一で高発泡倍率をもつスポンジとはならない。
【0021】
本発明で有機過酸化物は(B)成分の発泡剤の分解温度よりも高い温度で分解するものを選択すると、スポンジ連泡率が高くなるために好ましい。一例をあげると、炭酸水素ナトリウム系発泡剤を使用する場合、主な分解温度である150℃よりもほぼ同じか遅く設定されたものでありシリコーンゴムの表層(スキン層)があまり架橋しないため炭酸水素ナトリウム系の発泡剤の分解によって発生した炭酸ガスがスポンジセルを突き破りスポンジ外へ出やすくする役割をもっている。
【0022】
有機過酸化物の具体例を以下に挙げるが、各化合物の1分間半減期温度を括弧内に示す。t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーオキシエステル系、155℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキサン(ジアルキル系、180℃)、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキシン(ジアルキル系、194℃)、ジt-ブチルパーオキサイド(ジアルキル系、186℃)、ジクミルパーオキサイド(ジアルキル系、175℃)、クミル-t-ブチルパーオキサイド(ジアルキル系、173℃)、p-メンタンハイドロパーオキサイド(ハイドロパーオキサイド系、200℃)等が好適に用いられるが、その中でも特に1分間半減期温度が170℃以上のジアルキルパーオキサイド系が有機過酸化物の安定性などから好ましく利用される。これらの有機過酸化物は、1種単独でも2種以上の混合物としても利用することができる。
【0023】
上記の架橋システムは発泡ガスの通り道がないと連泡とならないことから、圧縮成型ではなく常圧熱気加硫が好適である。常圧熱気加硫にはビーズ成分をガラスビーズとするパウダーキュアリングメソッドも含まれる。
【0024】
(C)成分の配合量は有効量でよく、具体的には、通常、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01〜50質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。多すぎても硬化速度のそれ向上はなく、未反応物や分解残査の除去にそれだけ長時間必要となる。
【0025】
また、硬化剤として付加反応型硬化剤、即ち、ヒドロシリル化反応触媒(付加反応触媒)と架橋剤として働くオルガノハイドロジェンシロキサンとの組合せからなる硬化剤(以下、「付加硬化剤」という)を用いる付加反応による架橋反応を併用することが好ましい。その際は前述の通り有機過酸化物の硬化後に付加架橋が開始されないと発泡ガスの通り道をふさぐ形となってしまうために付加架橋を併用する場合は(A)成分を完全架橋するための補助的な付加架橋システムであることが望ましい。具体的には、付加硬化剤としては、架橋開始温度が160℃以上、好ましくは170〜190℃に設定された付加硬化剤を併用する。160℃以上の架橋開始温度は(A)成分と付加硬化剤を混合して160℃に設定されたトルクメータにて測定直後に増粘が検出されない事で確認することが可能である。
【0026】
付加反応による架橋反応を用いる場合は、(A)成分に用いられるオルガノポリシロキサンとしては、1分子中のケイ素原子に結合した有機基のうち少なくとも1個がビニル基であるオルガノポリシロキサンが用いられる。付加反応触媒としては、従来知られたいずれのものでもよく、具体的には白金族の金属単体及びその化合物を用いることができる。例えば、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体上に吸着された微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水塩とオレフィン又はジビニルジメチルポリシロキサンとの錯体、塩化白金酸6水塩のアルコール溶液、パラジウム触媒、ロジウム触媒などが挙げられる。これら触媒の添加量は触媒量であり、通常、白金系金属量に換算して1〜1,000ppmの範囲で使用されるが、好ましくは10〜100ppmの範囲が適当である。1ppmより少ないと架橋反応が十分促進されず、硬化が不十分であり、一方、1,000ppmより多く加えても反応性に対する影響も少なく、また不経済である。付加反応用架橋剤としては、一分子中に2個以上のSiH基を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが用いられ、このオルガノハイドロジェンポリシロキサン、直鎖状、環状、分枝状のいずれであってもよく、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の硬化剤として公知なオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用することができるが、通常、下記平均組成式(II):
【0027】
R2HySiO(4-x-y)/2 (II)
(式中、R2は非置換又は置換の1価炭化水素基であり、x及びyは、それぞれ、1≦x≦2.2、0.002≦y≦1であって、1.002≦x+y≦3を満たす正数である。)で示されるものを用いることができる。式(II)中のR2で表される非置換又は置換の1価炭化水素基としては、前記R1と同様に、炭素原子数1〜12、特に1〜8のものが好ましく、R1について例示したものを挙げることができる。上記SiH基を一分子中に2個以上、好ましくは3個以上有するが、これは分子鎖末端にあっても、非末端にあってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、25℃における粘度が300mm2/s以下であることが好ましい。
【0028】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、具体的に下記構造式の化合物を例示することができる。

【0029】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01〜10質量部配合される。好ましくは、(A)成分中のアルケニル基1個に対し、ケイ素原子に結合した水素原子の割合が0.5〜10の範囲が適当であり、好ましくは1〜4となるような範囲が適当である。少なすぎると、架橋を高める作用が十分に得られず、機械的強度も向上しない。しかし、多すぎると、硬化後の物理特性が低下し、特に耐熱性と圧縮永久ひずみが著しく劣化することがある。さらに、このシリコーンゴム組成物には、ポリメチルビニルシロキサン環状化合物、アセチレン基含有アルコール、過酸化物等の公知の白金触媒抑制剤を添加して架橋開始温度を調整するのが好ましい。
【0030】
−(D)成分−
本発明では、必要に応じて、(D)成分として、”ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、重合度が平均8,000であるオルガノポリシロキサン(以下、標準オルガノポリシロキサンという。)100質量部、BET比表面積195m/gの湿式シリカ40質量部、両末端にシラノール基を有し粘度29mm2/s(23℃)のジメチルポリシロキサン4部をニーダーで配合した後180℃で2時間熱処理してなるベースゴムコンパウンド100質量部に対して0.7〜10.0質量部添加して調製したコンパウンドを150℃で熱分解させながら測定したムーニー粘度ML(1+4)が、前記ベースゴムコンパウンド単独で同温度で測定したムーニー粘度よりも5%以上、特に10-300%高い値を示す有機発泡剤を本発明の組成物に添加することが好ましい。かかる(D)成分の有機発泡剤を含むことにより、本発明の組成物は、HAV加硫により発泡させた平均スポンジセル径を2mm以下とすることができる。
【0031】
上記において、標準オルガノポリシロキサンは、その分子組成に応じた原料シラン化合物混合物の加水分解縮合により、又は分子組成に応じた原料オリゴシロキサン混合物の平衡化反応により、当業者には容易に製造することができる。
【0032】
(D)成分の有機発泡剤は、熱分解によって本発明の組成物を増粘あるいは硬化させることのできる特性をもち、このような有機発泡剤を併用するとより、スポンジセルがより緻密でより均一となる。この特徴をもった有機発泡剤は具体的には発泡剤の分解によってガスを発生させるだけでなく(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子中に存在するメチル基、アルケニル基をラジカル反応によって架橋反応させポリマー粘度を上昇させることができる。したがって、このような粘度上昇を示す有機発泡剤を併用することで炭酸水素ナトリウム系の発泡剤の分解前にスポンジ成型時にゴム内で有機発泡剤の分解による「(A)成分の増粘、及び場合により硬化」と「有機発泡剤の分解によるガスの発生」がほぼ同時に起こるためにスポンジの造核作用として働くことで連泡スポンジセルが均一で微細となる。
【0033】
ところで、一般には有機発泡剤の一種であるアゾ化合物等はビニル化合物のラジカル重合剤として多用されているが、オルガノポリシロキサンの分子中のアルケニル基に対してはそのような重合剤として機能しないし、通常の発泡剤で用いられる添加量では粘度を増加させるような強いラジカルを発生させたり、また発泡剤の分解と時を同じにして粘度上昇を引き起こすような発泡剤はほとんど無い。現在シリコーンゴムでラジカル重合剤として多用されるアゾビスイソブチロニトリルや2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビズ-2、4-ジメチルバレロニトリル、1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)などでも分解により短時間での粘度上昇は観測できない。これらは、本発明の(D)成分としては利用することはできない。
【0034】
(D)成分の有機発泡剤は、より好ましくは(B)成分の炭酸水素ナトリウム発泡剤が150℃前後で吸熱分解し炭酸ガスを発生することから、150℃以下で分解する物が望ましい。
【0035】
具体的には、(D)成分の有機発泡剤は、前記の該発泡剤を添加したコンパウンドを150℃において熱分解させながら測定したムーニー粘度ML(1+4)が、前記ベースゴムコンパウンド単独で同温度で測定したムーニー粘度よりも10-300%、より好ましくは20〜200%の範囲で高い値を示すアゾ系有機発泡剤であることが好ましい。さらに、該有機発泡剤は、150℃以下の分解点をもつアゾ系有機発泡剤であることが好ましい。かかる有機発泡剤を使用することにより、本発明で用いられる組成物を常圧熱気加硫させて発泡させたときに、得られるスポンジの平均スポンジセル径を2mm以下とすることが可能である。このような特性を有するアゾ系有機発泡剤としては、例えば、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス〔N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド〕等が挙げられ、これらは一種単独でも二種以上組み合せても使用することができる。
【0036】
(D)成分の有機発泡剤の添加量は、(A)成分のポリオルガノシロキサン100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。(A)成分のポリオルガノシロキサンが増粘現象は見られるが完全に硬化しない添加量であることが望まれる。(D)成分の添加量が0.1質量部未満であると粘度上昇がすくなくスポンジセルの微細化や均一化に効果がなく、20質量部より多いと増粘が進みすぎてしまい発泡圧力が抑えられてしまい連泡スポンジとなりにくい。また(D)成分の分解後の分解残渣もより多く残ってしまい高温、長時間の熱処理をおこなって分解残渣をさらに低分子量の炭化水素化合物等に分解または揮発させないとスポンジ表面へブリード物の発生や結晶の析出等の問題が発生する。上記の理由から(B)成分の添加量のより好ましい範囲は0.2-10.0質量部であり、より好ましくは0.2-5.0質量部である。
【0037】
−その他の成分−
本発明で使用されるシリコーンスポンジ組成物には補強性シリカ微粉末が添加されていることが望ましい。補強性シリカ微粉末は機械的強度の優れたシリコーンゴムスポンジを得るために必要とされるものであるが、この目的のためには比表面積が50m2/g以上、好ましくは100〜400m2/gである。このシリカ微粉末としては煙霧質シリカ(乾式シリカ)、沈殿シリカ(湿式シリカ)が例示され、煙霧質シリカ(乾式シリカ)が好ましい。また、これらの表面をオルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等で疎水化処理してもよい。これらのシリカは一種単独でも2種以上併用してもよい。なお、このシリカ微粉末の添加量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部当り5〜100質量部、好ましくは10〜90質量部、特に好ましくは30〜80質量部であることが望ましい。100質量部に対し5質量部未満では少なすぎて十分な補強効果が得られず、100質量部より多くすると加工性が悪くなり、また、得られるシリコーンゴムの物理特性が低下することがある。
【0038】
また本発明は導電性物質を添加することにより導電スポンジとすることも出来る。
導電性材料としてはその種類、配合量は制限されないが、導電性カーボンブラック、導電性酸化金属系粒子たとえば、導電性亜鉛華、導電性酸化チタンなどが使用でき、また導電材料は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。その場合カーボンは有機過酸化物の架橋阻害物質となるために有機過酸化物の増量、あるいは前述の高温型付加硬化剤の併用が望ましい。
【0039】
前記カーボンブラックとしては、通常導電性ゴム組成物に常用されているものが使用することができ、例えばアセチレンブラック、コンダクティブファーネスブラック(CF)、スーパーコンダクティブファーネスブラック(SCF)、エクストラコンダクティブファーネスブラック(XCF)、コンダクティブチャンネルブラック(CC)、1500〜3000℃程度の高温で熱処理されたファーネスブラックやチャンネルブラック等を挙げることができる。具体的な市販の商品名としては、アセチレンブラックとしてはデンカブラック(電気化学社製)、シャウニガンアセチレンブラック(シャウニガンケミカル社製)等が、コンダクティブファーネスブラックとしてはコンチネックスCF(コンチネンタルカーボン社製)、バルカンC(キャボット社製)等が、スーパーコンダクティブファーネスブラックとしてはコンチネックスSCF(コンチネンタルカーボン社製)、パルカンSC(キャボット社製)等が、エクストラコンダクティブファーネスブラックとしては旭HS-500(旭カーボン社製)、パルカンXC-72(キャボット社製)等が、コンダクティブチャンネルブラックとしてはコウラックスL(デグッサ社製)等が例示され、また、ファーネスブラックの一種であるケッチェンブラックEC及びケッチェンブラックEC-600JD(ケッチェンブラックインターナショナル社製)を用いることもできる。ファーネスブラックは不純物、特に硫黄や硫黄化合物の量が硫黄元素の濃度で6000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下が望ましい。なお、これらのうちでは、アセチレンブラックは不純物含有率が少ない上、発達した2次ストラクチャー構造を有することから導電性に優れており、本発明において特に好適に用いられる。なおまた、その卓越して大きい比表面積から低充填量でも優れた導電性を示すケッチェンブラックECやケッチェンブラックEC-600JD等も好ましく使用できる。
【0040】
上記導電性カーボンブラックの添加量は、上述した(A)成分のゴム成分100質量部に対して1〜100質量部、特に5〜50質量部とすることが好ましい。添加量が1質量部未満では所望の導電性を得ることができない場合があり、100質量部を超えると物理的混合がむずかしくなったり機械的強度が低下したりする可能性があり、目的とするゴム弾性を得られないことがある。
【0041】
また、導電性金属酸化物微粒子としては導電性亜鉛華、酸化チタン、スズアンチモン系微粒子等が挙げられ、具体的には導電性酸化亜鉛としてはハクスイテック(株)製の酸化亜鉛23-K(商品名)や本庄ケミカル株式会社製の導電性亜鉛化FX(商品名)が、白色導電性酸化チタンとしては、例えばET-500W(商品名、石原産業(株)製)を挙げることができる。これらの微粒子は一種単独あるいはカーボンと併用で1〜300質量部添加することにより目的の電気抵抗を得ることができる。
【0042】
本発明のシリコーンスポンジ組成物には、必要に応じてさらに熱伝導性付与材として粉砕石英、酸化亜鉛、アルミナ、酸化アルミや非補強性シリカとして珪藻土のほか、炭酸カルシウム等の充填剤、着色剤、耐熱向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導向上剤等の添加剤や離型剤、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール封鎖低分子シロキサン等の分散剤などを添加してもよい。
【0043】
本発明のゴム組成物の製造方法は、特に限定されないが、上述した成分の所定量を2本ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練りすることによって得ることができる。また、必要により熱処理(加熱下での混練り)してもよい。具体的には(A)成分と補強性シリカ、その他添加剤を混練・熱処理してから次いで冷却後に(B)、(C)、(D)を添加する方法等が挙げられる。
上記熱処理温度、時間は特に限定されないが、100〜250℃、30分〜5時間熱処理が行われる。
【0044】
本発明のゴム組成物の硬化発泡方法は、炭酸ガスによってスポンジセルの連泡率を高める必要があるために常圧熱気加硫が望ましく、押出成形を用いた加熱炉による連続加硫、バッチ式乾燥器による熱気架橋などが好適に採用される。ただし金型架橋でも内部に十分に空間が確保されている場合はそのかぎりではない。一般的には、80〜400℃、特に100〜300℃で5秒〜1時間程度常圧熱気加熱発泡硬化させることにより高連泡率スポンジを得ることができる。また、100〜230℃で10分〜10時間程度ポストキュアーしてもよい。
【0045】
本発明に係る、上記スポンジ組成物を常圧熱気加硫により発泡及び硬化することにより得られた連泡率が15%以上である高連泡率シリコーンゴムスポンジは、該スポンジからなる層を少なくとも1層有することを特徴とする定着ロールを製造に有用である。このような定着ロールとしては、連泡スポンジからなる単層を有する定着ロール、該スポンジからなる二層以上の層をPFAチューブ等の表層離形材を接着させた2層以上の複層定着ロール、ソリッドゴムとスポンジゴム層及びトナー離形層を複合した多層構造定着ロール構造をもつトナー溶融定着用途の定着ロールが挙げられる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例で部は質量部を示す。また、(D)成分のムーニー粘度特性は表5にまとめて示した。
【0047】
〔実施例1〕
ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン100部、BET表面積200m/gの乾式シリカ Arosil200(日本エアロジル(株)製)40部、両末端にシラノール基を有し、粘度29mm2/s(23℃)のジメチルポリシロキサン5部をニーダーで配合し、180℃で2時間熱処理しベースゴムコンパウンドを作成した。
【0048】
得られたベースゴムコンパウンド100部に対し、発泡剤として炭酸水素ナトリウム(試薬グレードの純度99%以上、粒子径40μm) 4.0部及び2,5−ジメチル−2,5−ジt−ブチルパーオキシヘキサン0.6部を2本ロールミルにて添加混合し9mm厚のゴムコンパウンドシートを作成した。次にこの9mm厚シートを230℃の熱風乾燥器で30分間常圧熱気加硫させてシリコーンスポンジを得た。その後、200℃/4時間の2次加硫を行った。得られたスポンジからスキン層をとり除いた後に、スポンジ硬さ、発泡倍率、スポンジセルの状態、スポンジの平均セル径、連泡率を下記のようにして調べた。評価結果を表1〜4に示す。
【0049】
・スポンジ硬さ:JIS S 6050規定のアスカーC硬度。
・セルの状態:目視にて観察。
・平均セル径:スポンジ切断面にあるセル径の平均値。
・連泡率の測定方法
1)スポンジ試料の比重と重量を測定する。2)スポンジを真空容器に置いた容器中の水に沈め、その状態で真空容器内を10mmHg以下に減圧する。3)真空容器内を常圧に戻した後に5分間放置してスポンジに吸水させる。4)吸水した状態でスポンジの重量を計量する。次に、次の計算に従って連泡率を求める。
【0050】
[(減圧下吸水後のスポンジ試料の重量−当初スポンジ試料の重量)/水の比重(1.00)]
/[(1-(スポンジ比重/未発泡のゴム材料比重))×(スポンジ試料重量/スポンジ比重)]×100(%)
【0051】
〔実施例2〕
セル微細化及び造核剤として有機発泡剤の1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)1.0部を追加した以外は実施例1と同様にしてスポンジを成形した。
【0052】
〔実施例3〕
有機発泡剤の1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)を2.0部へ変更した以外は実施例2と同様にしてスポンジを成形した。
【0053】
〔実施例4〕
発泡剤の炭酸水素ナトリウムの代わりにアゾビスイソブチロニトリル4.0部を使用した以外は実施例2と同様にしてスポンジを成形した。
【0054】
〔実施例5〕
発泡剤の炭酸水素ナトリウムの代わりにアゾビスイソブチロニトリル4.0部を使用し、また有機過酸化物硬化剤を2,5−ジメチル−2,5−ジt−ブチルパーオキシヘキサンからジクミルパーオキサイドに変更した以外は実施例2と同様にしてスポンジを成形した。
【0055】
〔実施例6〕
発泡剤である炭酸水素ナトリウムを2.0部に減量した以外は実施例2と同様にしてスポンジを成形した。
【0056】
〔実施例7〕
発泡剤である炭酸水素ナトリウムを8.0部に増量した以外は実施例2と同様にしてスポンジを成形した。
【0057】
〔実施例8〕
硬化剤の有機過酸化物である2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキサン0.6部の代わりにジクミルパーオキサイド0.6部を使用した以外は実施例2と同様にしてスポンジを成形した。
【0058】
〔実施例9〕
硬化剤の有機過酸化物である2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキサン0.6部の代わりにt-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート0.6部を使用した以外は実施例2と同様にしてスポンジを成形した。
【0059】
〔実施例10〕
セル微細化及び造核剤として添加した有機発泡剤1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)を、別の有機発泡剤2,2'-アゾビス〔N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド〕に変更した以外は実施例2と同様にしてスポンジを成形した。
【0060】
〔実施例11〕
有機発泡剤を実施例2に使用した1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)を、有機発泡剤アゾビスイソブチロニトリルに変更した以外は実施例2と同様にしてスポンジを成形した。
【0061】
〔実施例12〕
有機発泡剤を実施例2に使用した1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)から、別の有機発泡剤1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)に変更した以外は実施例2と同様にしてスポンジを成形した。
【0062】
〔実施例13〕
硬化剤として付加架橋を併用するために架橋開始温度を約170℃に制御した付加架橋系であるC−25A(白金触媒)/C−25B(オルガノハイドロジェンシロキサン系架橋剤)/アセチレン基含有アルコール(それぞれ0.3部/2.0部/0.7部)からなるもの(なお、C−25A/C−25Bは信越化学工業製)を追加添加し付加架橋を併用させた架橋系とした以外は実施例2と同様にしてスポンジを成形した。
【0063】
〔実施例14〕
実施例2と同様にして9mm厚のゴムコンパウンドシートを作成した後、このシートを230℃/30分、PCM(パウダーキュアリングメソッド)に供し、シリコーンゴムスポンジを得た。
【0064】
〔比較例1〕
ベースゴムコンパウンド100部に対し、発泡剤として炭酸水素ナトリウム(試薬グレードの純度99%、粒子径40μm) 4.0部及び有機過酸化物の硬化剤としてジアシル系有機過酸化物であるp-メチルベンゾイルパーオキサイド0.6部を添加した以外は実施例1同様としたスポンジを成形した。
【0065】
〔比較例2〕
有機発泡剤として1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)1.0部を追加添加した以外は比較例1と同様にしてスポンジを成形した。
【0066】
〔比較例3〕
有機過酸化物の硬化剤として2,5−ジメチル−2,5−ジt−ブチルパーオキシヘキサン0.6部の他にジアシル系の有機過酸化物であるp-メチルベンゾイルパーオキサイド0.2部を添加し、ジアルキル系/ジアシル系の併用架橋系とした以外は実施例2と同様にしてスポンジを成形した。
【0067】
〔比較例4〕
硬化剤を、p-メチルベンゾイルパーオキサイド0.6部から架橋開始温度を約120℃に制御した付加架橋系であるC−25A(白金触媒)/C−25B(オルガノハイドロジェンシロキサン系架橋剤)/アセチレン基含有アルコール(それぞれ0.5部/2.0部/0.1部)からなるものに変えた以外は比較例1と同様にしてスポンジを成形した。
【0068】
〔比較例5〕
有機発泡剤として1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)1.0部を追加添加した以外は比較例4と同様にしてスポンジを成形した。
【0069】
〔比較例6〕
有機過酸化物である2,5−ジメチル−2,5−ジt−ブチルパーオキシヘキサン0.6部を追加して有機過酸化物架橋と架橋開始温度が約120℃の付加架橋の併用系とした以外は比較例5と同様にしてスポンジを成形した。
【0070】
〔比較例7〕
硬化剤を、有機過酸化物である2,5−ジメチル−2,5−ジt−ブチルパーオキシヘキサン0.6部の代わりに架橋開始温度が約160℃になるように制御した付加架橋系であるC−25A(白金触媒)/C−25B(オルガノハイドロジェンシロキサン系架橋剤)/アセチレン基含有アルコール(それぞれ0.5部/2.0部/0.7部)に変更し付加架橋単独系とした以外は実施例2と同様にしてスポンジを成形した。
【0071】
〔比較例8〕
ベースゴムコンパウンド100部に対し、発泡剤として有機発泡剤アゾビスイソブチロニトリル1.0部、硬化剤として有機過酸化物のp-メチルベンゾイルパーオキサイド0.6部及びジクミルパーオキサイド0.6部を添加した以外は実施例1と同様にしてスポンジを成形した。
【0072】
〔比較例9〕
発泡剤として炭酸水素ナトリウム4.0部を追加し、有機発泡剤アゾビスイソブチロニトリルと併用した以外は比較例7と同様にしてスポンジを成形した。
【0073】
〔比較例10〕
ベースゴムコンパウンド100部に対し、発泡剤として炭酸水素ナトリウム2.0部と有機発泡剤1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)1.0部を、硬化剤として架橋開始温度が約120℃になるように制御した、C−25A(白金触媒)/C−25B(オルガノハイドロジェンシロキサン系架橋剤)/アセチレン基含有アルコール(それぞれ0.5部/2.0部/0.1部)からなる付加架橋系のみを用い、比較例1と同様の成型方法にてスポンジを成形した。
【0074】
〔比較例11〕
ベースゴムコンパウンド100部に、発泡剤として有機発泡剤アゾビスイソブチロニトリル1.0部、硬化剤として有機過酸化物である1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン(パーオキシエステル系、163℃)0.6部を添加した以外は、実施例1と同様にしてスポンジを成形した。
【0075】
実施例2〜比較例11で得られたスポンジを実施例と同様にして評価した。結果を表1〜4に示す。
【0076】
【表1】

【0077】
【表2】

【0078】
【表3】

【0079】
【表4】

【0080】
〔表1〜4への注1〕
*1:ソリッド状態でほとんど発泡していない状態(一部に数ミリの泡がはいっている)
*2:内部にガスだまり(巨大な空洞)や割れが発生しておりスポンジ外観が不均一な状態
*3:スポンジ外側の発泡ガスがぬけておりスポンジセルが均一でない。スポンジ中央部は独立泡。
【0081】
〔表1〜4への注2〕
・NaHCO3発泡剤:炭酸水素ナトリウム(平均粒子径20μm)(ガス発生温度:約150℃)
・有機発泡剤A):1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)(表5参照)
・有機発泡剤B):2,2'-アゾビス〔N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド〕表5参照)
・有機発泡剤C):アゾビスイソブチロニトリル(ガス発生温度:約106℃)
・有機発泡剤D):1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)(ガス発生温度:約107℃)
・PO硬化剤A :2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキサン(ジアルキル系、1分間半減期温度:180℃)
・PO硬化剤B :ジクミルパーオキサイド(ジアルキル系、1分間半減期温度:175℃)
・PO硬化剤C :t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーオキシエステル系、1分間半減期温度:155℃)
・PO硬化剤D :p-メチルベンゾイルパーオキサイド(ジアシル系、1分間半減期温度:128℃)
・PO硬化剤E :1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン(パーオキシエステル系、1分間半減期温度:163℃)
・付加硬化剤A :架橋開始温度が約170℃に設定された付加硬化剤
(C-25A/C-25B=0.3部/2.0部の配合物にアセチレン基含有アルコール0.7部追加したもの)
・付加硬化剤B :架橋開始温度が約120℃に設定された付加硬化剤(C-25A/B=0.5/2.0)
(C-25A/C-25B=0.5部/2.0部の配合物にアセチレン基含有アルコール0.1部追加したもの)
・C-25A:白金触媒
・C-25B:オルガノハイドロジェンシロキサン系架橋剤
【0082】
−(D)成分の増粘試験−
実施例、比較例に記載した(D)成分の有機発泡剤のムーニー粘度(ML1+4)の上昇特性を以下のようにして測定した。
ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、重合度が平均8,000であるオルガノポリシロキサン100部、BET比表面積195m/gの湿式シリカ(商品名:Nipsil LP(日本シリカ(株)製))40部、両末端にシラノール基を有し、粘度29cs(23℃)のジメチルポリシロキサン4部をニーダーで配合した後180℃で2時間熱処理してベースゴムコンパウンドを作成した。
【0083】
このベースゴムコンパウンドに表5に示す各有機発泡剤を表5に示す部数(前記ポリオルガノシロキサン100部に対する)添加して各コンパウンドを調製した。
こうして調製した各コンポウンド及びベースゴムコンパウンドについて、40℃において未発泡状態での粘度を測定した。さらに、150℃におけるベースゴムコンパウンドのムーニー粘度ML(1+4)を100として、同温度での各コンパウンドのムーニー粘度ML(1+4)の相対値を求めた。
これらの結果を表5に示す。なお、この表において、BCはベースゴムコンパウンドを意味する。
【0084】
【表5】

【0085】
〔備考〕
条件) ・使用機器はTOYOSEIKI RLM-1
発泡剤A)1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)
発泡剤B)2,2'-アゾビス〔N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド〕
発泡剤C)アゾビスイソブチルニトリル
発泡剤D)1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明の高連泡率シリコーンゴムスポンジ組成物は、建築ガスケット、各種スポンジシート、吸水用スポンジ、断熱シート、工業用ロール、複写機、ファクシミリ、プリンター等の電子写真式画像形成装置を初めとする事務機用スポンジロール、特にトナー溶融定着ロール、給紙ロール、トナー搬送ロールおよびクリーニングロールなどに使用される

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(I):
R1aSiO4-a/2 (I)
(R1は同一又は異種の非置換又は置換の1価炭化水素基、aは1.95〜2.04の正数である。)
で表される、一分子中にアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(B) 90℃以上の温度領域でガスを発生する発泡剤:0.5〜50質量部、及び
(C)1分間半減期温度が150℃以上の非アシル系有機過酸化物: (A)成分を硬化し得る有効量
を含有するスポンジ組成物を発泡、硬化させることにより得られる連泡率15%以上である高連泡率シリコーンゴムスポンジ。
【請求項2】
(B)成分が炭酸水素ナトリウムである請求項1記載の高連泡率シリコーンゴムスポンジ。
【請求項3】
(B)成分が有機アゾ発泡剤であり、かつ(C)成分の非アシル系有機過酸化物の1分間半減期温度が170℃以上である請求項1又は2記載の高連泡率シリコーンゴムスポンジ。
【請求項4】
(C)成分の非アシル系有機過酸化物が、1分間半減期温度が170℃以上であるジアルキルパーオキサイド系有機過酸化物である請求項1〜3のいずれか1項記載の高連泡率シリコーンスポンジ。
【請求項5】
さらに、(D)成分として、
ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、重合度が平均8,000であるオルガノポリシロキサン100質量部、BET比表面積195m/gの湿式シリカ40質量部、両末端にシラノール基を有し粘度29mm2/s(23℃)のジメチルポリシロキサン4部をニーダーで配合した後180℃で2時間熱処理してなるベースゴムコンパウンドに、0.7〜10.0質量部添加して調製したコンパウンドを150℃で熱分解させながら測定したムーニー粘度ML(1+4)が、前記ベースゴムコンパウンド単独で同温度で測定したムーニー粘度よりも5%以上高い値を示す有機発泡剤
を、(A)成分100質量部当り0.1〜20質量部含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の高連泡率シリコーンゴムスポンジ。
【請求項6】
(D)成分の有機発泡剤が、150℃以下の分解点をもつアゾ系有機発泡剤であって、前記の該発泡剤を添加したコンパウンドを150℃において熱分解させながら測定したムーニー粘度ML(1+4)が、前記ベースゴムコンパウンド単独で同温度で測定したムーニー粘度よりも10-300%の範囲で高い値を示すアゾ系有機発泡剤であり、前記組成物を常圧熱気加硫させて発泡させたときに平均スポンジセル径が2mm以下であることを特徴とする請求項5記載の高連泡率シリコーンゴムスポンジ。
【請求項7】
前記(D)成分の有機発泡剤が、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス〔N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド〕、又はこれらの二種以上の組合せであることを特徴とする請求項6記載の高連泡率シリコーンゴムスポンジ。
【請求項8】
さらに、(E)成分として、架橋開始温度が160℃以上の温度に設定された付加硬化剤を含むことを特徴とした請求項1〜7記載の高連泡率シリコーンゴムスポンジ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のスポンジ組成物を常圧熱気架橋により発泡、硬化させることを含む、連泡率が15%以上である高連泡率シリコーンゴムスポンジの製造方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか1項に係る高連泡率シリコーンゴムスポンジからなる層を少なくとも1層有することを特徴とする定着ロール。
【請求項11】
請求項9に係る定着ロールを備える電子写真式画像形成装置。

【公開番号】特開2006−77099(P2006−77099A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−261677(P2004−261677)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】