説明

高連泡率シリコーンゴムスポンジ

【課題】ゴムの架橋速度の制御や発泡ガスの生成速度のデリケートなバランスを考慮することなく、常圧熱気加硫(HAV)によって作製することができ、生産性に優れ、均一で微細なセル構造を有する高連泡率シリコーンスポンジを提供する。
【解決手段】(A)下記平均組成式(I):R1aSiO(4-a)/2(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、aは1.95〜2.04の正数である。)で表され、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンと補強性シリカとを混合後、熱処理することにより得られる基材:100質量部、(B)有機発泡剤:0.5〜50質量部、(C)硬化剤:有効量、および(D)湿式シリカ:0.1〜20質量部を含有するシリコーンゴム組成物を発泡、硬化させることにより得られる連泡率20%以上の高連泡率シリコーンゴムスポンジ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築ガスケット、各種スポンジシート、吸水用スポンジ、断熱シート、工業用ロール、複写機、ファクシミリ、プリンター等の画像形成装置を初めとする事務機用スポンジロール、特にトナー溶融定着ロール、給紙ロール、トナー搬送ロールおよびクリーニングロールなどに使用される高連泡率シリコーンゴムスポンジに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムスポンジは、シリコーンゴム特有の物理特性をもっており、耐熱性、耐寒性、電気絶縁性、難燃性、耐圧縮永久ひずみ性等に優れる。シリコーンゴムスポンジは、基本的に、熱硬化性シリコーンゴム組成物と、硬化剤と、発泡剤とを組み合わせ、加熱により発泡、硬化させて形成させることができる。その場合、発泡性に優れ、均一で微細なセル構造を有し、しかもシリコーンゴム特有の物理特性を損なわないスポンジを得ることが重要である。
【0003】
また、加工成形方法としては、連続成形が可能となる常圧熱気中で硬化、発泡させることが多く行われている。常圧熱気中の成型で均一かつ微細なセル構造を有するスポンジを作るためには、発泡剤が分解するときに発生するガスをゴム内部に細かい泡の状態で押さえ込まなければならない。よって、通常は、発泡剤が分解する以前にすでに、ゴム組成物が、発泡圧力に打ち勝って気泡をその内部に押さえ込めるように、増粘、硬化している必要がある。
【0004】
したがって、スポンジを成型する場合にゴム内でおきる反応順序としては以下の順序が一般的である。
1)硬化剤による、ベースポリマーであるオルガノポリシロキサンの増粘(硬化)、ゴムの表面硬化。
2)発泡剤の分解によるガスの発生、スポンジセル形成。
3)ベースポリマーであるオルガノポリシロキサンの完全硬化。
実際には上記の順番で反応が起こるように付加架橋反応触媒の量を調整して反応制御したり、有機過酸化物の分解温度を発泡剤の分解温度と同じか低いように選択したりして、上記のような反応順序を設定する。
【0005】
このように、通常のスポンジは発泡圧力を架橋で押さえ込む方法で作成されるため、スポンジセルは、通常、独立泡であり、連泡率が10%以下であり、空気がその中にとじこめられた状態となっている。スポンジセルが独立泡になっているスポンジ成型物を加熱すると、閉じこめられた空気がボイルシャルルの法則によって熱膨張してしまう。その結果、ガスケット材のような閉じられた空間を満たすスポンジは、空気バネ成分が強くなりスポンジ硬度が高くなってしまう。定着スポンジロール等のロール材料の場合、熱膨張によりスポンジ径が大きくなってしまうため、定着圧力が変わってしまう。逆にスポンジロールが冷えた状態では、ヒーターロールとバックアップロールの設定間隔が広くなってしまうため、ロールががたついて異音の発生源となる。特に定着スポンジロールを備えた最近の事務機等では、省電力の観点からスタンバイ状態において定着スポンジロールが通常の定着温度よりも冷えた状態となる機種が増加しているため、定着スポンジロール用途としては、加熱温度によらずスポンジセル径が一定となりやすい連泡率の高いスポンジが望まれている。
【0006】
特許文献1には、非アシル系の有機過酸化物架橋と有機アゾ化合物とを併用する発泡系として、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン(パーオキシエステル系、分解温度:163℃)及び発泡剤としてAIBN(アゾイソブチロニトリル)を用いたスポンジが提案されている。カーボンは有機過酸化物による架橋を阻害するため、カーボンを含む導電性シリコーンゴム組成物は、通常、アシル系の有機過酸化物によっては常圧熱気加硫することができない。特許文献1は、カーボンを含む導電性シリコーンゴム組成物を常圧熱気加硫することができ、かつ、表面硬化性にもすぐれる有機過酸化物を使用することで、良好なスポンジを得る技術を開示しているが、得られるスポンジのセルは独立泡であり、また、特にスポンジ連泡率を高める技術ではなく、連泡率の記載はない。
【0007】
特許文献2には、無機塩類が有する結晶水で発泡させるシリコーンゴムスポンジ組成物が記載されているが、連泡型スポンジは記載されていない。
【特許文献1】特開平5−43802号公報
【特許文献2】特開平5−156061号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題を克服するためになされたもので、ゴムの架橋速度の制御や発泡ガスの生成速度のデリケートなバランスを考慮することなく、常圧熱気加硫(HAV)によって作製することができ、生産性に優れ、均一で微細なセル構造を有する高連泡率シリコーンスポンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成する手段として、
(A)下記平均組成式(I):
R1aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、aは1.95〜2.04の正数である。)
で表され、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンと補強性シリカとを混合後、熱処理することにより得られる基材: 100質量部、
(B)有機発泡剤: 0.5〜50質量部、
(C)硬化剤: 有効量、および
(D)湿式シリカ: 0.1〜20質量部
を含有するシリコーンゴム組成物を発泡、硬化させることにより得られる連泡率20%以上の高連泡率シリコーンゴムスポンジを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱処理後のシリコーンゴムベース((A)成分)に湿式シリカを配合し、硬化剤、有機発泡剤を用いて常圧熱気加硫を行うことにより、連泡率の高いシリコーンゴムスポンジを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
−(A)成分−
(A)成分は、上記平均組成式(I)で表され、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンと補強性シリカとを混合後、熱処理することにより得られる基材(以下、「(A)成分のシリコーンゴム基材」という場合がある。)である。(A)成分は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0013】
オルガノポリシロキサン
平均組成式(I)において、R1としては、例えば、同一又は異種の非置換もしくは置換の好ましくは炭素原子数1〜12の、より好ましくは炭素原子数1〜8の1価炭化水素基が挙げられる。R1の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などのシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;β−フェニルプロピル基などのアラルキル基;又はこれらの炭化水素基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換したクロロメチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基などが挙げられる。中でも、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、特に、全R1に対してメチル基の割合が80〜99.999モル%であることが好ましく、95〜99.99モル%であることが更に好ましい。
【0014】
平均組成式(I)において、aは1.95〜2.04の正数である。このオルガノポリシロキサンは実質的に直鎖状であり、具体的には主鎖が主にジオルガノシロキサン単位からなる直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、硬化後のシリコーンゴムスポンジのゴム弾性が損なわれない範囲で分岐していてもよい。
【0015】
このオルガノポリシロキサンは、分子鎖末端がトリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、ジメチルヒドロキシシリル基、トリビニルシリル基などで封鎖されたものとすることができる。
【0016】
このオルガノポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有し、具体的には、R1のうち0.001〜5モル%、特に0.01〜0.5モル%がアルケニル基、とりわけビニル基であることが好ましい。
【0017】
このオルガノポリシロキサンは、通常、その構造中に含まれるシロキサン単位の割合に応じて、相当するオルガノハロシランの1種又は2種以上を加水分解縮合することによって、あるいは環状オルガノポリシロキサン(オルガノシロキサンの3量体あるいは4量体など)をアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。
【0018】
このオルガノポリシロキサンの平均重合度は、質量平均重合度であり、200〜20,000であることが好ましく、より好ましくは2,000〜10,000、更に好ましくは3,000〜8,000である。該平均重合度がこの範囲内にあると、(A)成分のシリコーンゴム基材を本発明組成物に配合させやすく、配合後の該組成物の粘度を適切な高さに保ちやすく、該組成物の硬化物において十分なゴム感を得やすい。なお、平均重合度は、ポリスチレンを分子量マーカーとしてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により数平均分子量を測定し、式:
数平均重合度=数平均分子量/(A)成分の繰り返し単位の分子量
により計算して求めることができる。(A)成分中に複数種の繰り返し単位が含まれる場合、上記式中の「(A)成分の繰り返し単位の分子量」はこれら複数種の繰り返し単位の数平均分子量である。
【0019】
このオルガノポリシロキサンは1種単独で用いてもよいし、分子構造、平均重合度等の異なる2種又はそれ以上を混合して用いてもよい。
【0020】
補強性シリカ
補強性シリカは、機械的強度の優れたシリコーンゴムスポンジを得るために使用される。この目的のためには、補強性シリカの比表面積は、50m2/g以上であることが好ましく、100〜400m2/gであることがより好ましい。補強性シリカとしては、例えば、煙霧質シリカ(乾式シリカ)、沈殿シリカ(湿式シリカ)が挙げられ、煙霧質シリカ(乾式シリカ)が好ましい。また、これらの表面をオルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等で疎水化処理してもよい。補強性シリカは一種単独でも2種以上併用してもよい。なお、補強性シリカの添加量は、上記オルガノポリシロキサン100質量部当り好ましくは5〜100質量部、より好ましくは10〜90質量部、特に好ましくは30〜80質量部である。該添加量がこの範囲内にあると、補強性シリカによる補強効果が十分となりやすく、得られる組成物の加工性および得られるシリコーンゴムスポンジの物理特性が良好となりやすい。
【0021】
前記オルガノポリシロキサン中に補強性シリカを分散させるために、例えば、トリメチルシラノール、ジフェニルシランジオール、ヘキサメチルシラザン、分子鎖末端にヒドロキシル基を有するポリジメチルシロキサン等の分散剤を添加することが好ましい。分散剤の配合量は、上記補強性シリカ100質量部あたり、0.5〜30質量部が好ましく、1〜20質量部がより好ましい。
【0022】
前記オルガノポリシロキサン、前記補強性シリカ、好ましくは前記分散剤を従来公知のロールミルやニーダー等を用いる方法により混合した後、得られた混合物を従来公知のニーダーや乾燥機を用いる方法により熱処理することにより、(A)成分のシリコーンゴム基材が得られる。熱処理は、揮発成分を除去する目的や、補強性シリカと分散剤との反応を促進させる目的で行われる。熱処理は、例えば、100℃〜250℃、好ましくは150〜220℃の範囲の温度で1〜6時間、前記混合物を加熱することにより行われる。
【0023】
−(B)成分−
(B)成分の有機発泡剤としては、例えば、N,N'−ジメチル−N,N'−ジニトロソテレフタルアミド、N,N'−ジニトロソペンタメチレンテトラミン等のニトロソ化合物;ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、アゾジカルボンアミド、アゾビスイソブチロニトリル、アゾシクロへキシルニトリル、アゾジアミノベンゼン、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、アゾジカルボンアミド、バリウムアゾジカルボキシレート、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス〔N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド〕等の有機アゾ化合物;ベンゼンスルホニルヒドラジド、トルエンスルホニルヒドラジド、p,p'−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、ジフェニルスルホン-3,3'−ジスルホニルヒドラジド、4,4'-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、p−トルエンスルホニルヒドラジン等のスルホニルヒドラジド化合物;カルシウムアジド、4,4−ジフェニルジスルホニルアジド、p−トルエンスルホルニルアジド等のアジド化合物などが挙げられる。中でも、分子内にシリコーンゴムの硬化を阻害する硫黄化合物、リン酸塩類、強いアミン類などを持たない有機アゾ化合物、例えば、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2'-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、1,1'-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-メチルカルボキシレート)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス〔N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド〕等が好ましい。(B)成分は一種単独で使用しても二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0024】
(B)成分の発泡剤の添加量としては、(A)成分のシリコーンゴム基材100質量部に対して、通常、0.5〜50質量部、好ましくは1.0〜20質量部である。該添加量が0.5質量部未満であると、発生ガスの量が不十分となりやすいので、得られる硬化物がスポンジ状態となりにくく、連泡率が上がりにくい。該添加量が50質量部を超えると、(B)成分を他の成分と混合することが物理的に困難となる場合があり、またスポンジ成型時に発生ガスが多くなるために、セルが不均一となったり、得られるスポンジが内部より割れたりする場合がある。
【0025】
−(C)成分−
(C)成分の硬化剤としては、本発明のゴム組成物を硬化させ得るものであれば特に限定されず、その好ましい例としては、ゴム用硬化剤として公知の(i)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒との組み合わせ、(ii)有機過酸化物、および(i)と(ii)との併用系が挙げられる。
【0026】
(i)オルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒との組み合わせ
・ヒドロシリル化触媒
上記(i)の硬化剤は、付加反応による架橋を利用した硬化剤である。この付加反応に用いられるヒドロシリル化触媒は、(A)成分中の脂肪族不飽和基(アルケニル基、ジエン基等)と(i)の硬化剤中のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子(即ち、SiH基)とを付加反応させる触媒である。ヒドロシリル化触媒は一種単独で使用しても二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
ヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金族の金属単体やその化合物などの白金族金属系触媒が挙げられる。白金族金属系触媒としては、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の触媒として従来公知のものが使用できる。その具体例としては、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体上に吸着させた微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水塩のアルコール溶液、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられるが、白金族金属として白金を含むものが好ましい。
【0028】
ヒドロシリル化触媒の添加量は、上記付加反応を促進できる有効量であればよく、通常、白金族金属量に換算して(A)成分に対して1ppm(質量基準。以下、同様)〜1質量%の範囲であり、好ましくは10〜500ppmの範囲である。該添加量がこの範囲内にあると、付加反応が十分に促進されやすく、また、硬化、発泡が十分となりやすく、更に、該添加量の増加に応じて付加反応の速度が向上しやすいので、経済的にも有利となりやすい。
【0029】
また、上記の触媒のほかに硬化速度を調整する目的で、付加架橋制御剤を使用してもよい。その具体例としては、エチニルシクロヘキサノールやテトラシクロメチルビニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0030】
・オルガノハイドロジェンポリシロキサン
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上のSiH基を含有する限り、直鎖状および環状のいずれであってもよく、分枝していてもよい。オルガノハイドロジェンポリシロキサンは一種単独で使用しても二種以上を組み合わせて使用してもよい。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができ、例えば、下記平均組成式(V):
pqSiO(4-p-q)/2 (V)
(式中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、pおよびqは、0≦p<3、0<q≦3、および0<p+q≦3、好ましくは1≦p≦2.2、0.002≦q≦1、および1.002≦p+q≦3を満たす正数である。)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができる。
【0031】
上記平均組成式(V)中、Rは同一または異種の非置換もしくは置換の、好ましくは炭素原子数1〜12、特に好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基を示し、脂肪族不飽和結合を含まないことが好ましい。Rの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基;およびこれらの炭化水素基の水素原子の一部または全部をフッ素原子等のハロゲン原子等で置換した基、例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0032】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンが直鎖状の場合、SiH基は、分子鎖末端および分子鎖末端でない部分のどちらか一方にのみ存在していても、その両方に存在していてもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は0.5〜10,000mm/sであることが好ましく、1〜300mm/sであることが特に好ましい。
【0033】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、下記構造式の化合物が挙げられる。
【0034】
【化1】


(式中、kは2〜10の整数、s及びtは0〜10の整数である。)
【0035】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分中の脂肪族不飽和結合(アルケニル基及びジエン基等)1個に対し、該オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基の個数が好ましくは0.5〜10個、より好ましくは0.7〜5個となる量である。該配合量がこの範囲内にあると、架橋が十分となりやすく、硬化後には、機械的強度が十分となりやすく、他の物理特性、特に耐熱性と耐圧縮永久歪み性を維持しやすい。このような配合量は、例えば、(A)成分100質量部に対して該オルガノハイドロジェンポリシロキサンを好ましくは0.1〜40質量部、より好ましくは0.2〜10質量部添加することにより実現できる。
【0036】
(ii)有機過酸化物
有機過酸化物は(A)成分を硬化させるために使用する加硫剤である。有機過酸化物は一種単独で使用しても二種以上を組み合わせて使用してもよい。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−t−ブチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0037】
有機過酸化物の添加量は加硫剤としての有効量でよく、具体的には、(A)成分100質量部に対して好ましくは0.1〜15質量部、特に好ましくは0.2〜10質量部である。該添加量がこの範囲内にあると、該添加量の増加に応じて硬化速度が向上しやすいので、経済的に有利となりやすく、また、得られる硬化物から未反応物や分解残査を短時間で除去しやすい。
【0038】
−(D)成分−
(D)成分の湿式シリカは、高連泡率のシリコーンゴムスポンジを得るために使用される。この目的のためには、(D)成分の湿式シリカの比表面積は、50m2/g以上であることが好ましく、100〜400m2/gであることがより好ましい。(D)成分としては、例えば、NIPSIL(登録商標)−LP(商品名、東ソーシリカ株式会社製)、トクシール(登録商標)USA(商品名、株式会社トクヤマ製)、Zeosil(登録商標)132(商品名、ローディアジャパン製)等が挙げられる。また、これらの表面をオルガノポリシロキサン、オルガノポリシラザン、クロロシラン、アルコキシシラン等で疎水化処理してもよいが、疎水化処理を行っていない未処理状態の湿式シリカが好ましい。(D)成分は一種単独で使用しても2種以上併用してもよい。
【0039】
(D)成分の添加量は、(A)成分100質量部当たり0.1〜20質量部、好ましくは1〜10質量部、特に好ましくは1〜5質量部である。該添加量が0.1質量部未満であると、十分な連泡率のシリコーンゴムスポンジを得にくい。該添加量が20質量部より多いと、得られる組成物の加工性が悪くなりやすく、また、得られるシリコーンゴムの物理特性が低下することがある
【0040】
−その他の成分−
本発明のシリコーンゴムスポンジは、導電性物質を添加することにより導電性スポンジとすることもできる。導電性物質の種類、配合量は制限されないが、導電性物質としては導電性カーボンブラック、導電性金属酸化物微粒子、例えば、導電性亜鉛華、導電性酸化チタンなどが好適に使用できる。導電性物質は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。カーボンは有機過酸化物による架橋の阻害物質となるため、有機過酸化物を含むシリコーンゴム組成物に導電性カーボンブラックを添加する場合、有機過酸化物を増量すること、あるいは前述の高温型付加硬化剤、即ち、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒との組み合わせを有機過酸化物と併用することが望ましい。
【0041】
導電性カーボンブラックとしては、通常、導電性ゴム組成物に常用されているものを使用することができ、例えば、アセチレンブラック、コンダクティブファーネスブラック(CF)、スーパーコンダクティブファーネスブラック(SCF)、エクストラコンダクティブファーネスブラック(XCF)、コンダクティブチャンネルブラック(CC)、および、1500〜3000℃程度の高温で熱処理されたファーネスブラックまたはチャンネルブラック等を挙げることができる。アセチレンブラックの具体例としては、デンカブラック(商品名、電気化学工業株式会社製)、シャウニガンアセチレンブラック(商品名、シャウニガンケミカル社製)等が挙げられる。コンダクティブファーネスブラックの具体例としては、コンチネックスCF(商品名、コンチネンタルカーボン社製)、バルカンC(商品名、キャボット社製)等が挙げられる。スーパーコンダクティブファーネスブラックの具体例としては、コンチネックスSCF(商品名、コンチネンタルカーボン社製)、パルカンSC(商品名、キャボット社製)等が挙げられる。エクストラコンダクティブファーネスブラックの具体例としては、旭HS-500(商品名、旭カーボン株式会社製)、バルカンXC-72(商品名、キャボット社製)等が挙げられる。コンダクティブチャンネルブラックの具体例としては、コウラックスL(商品名、デグッサ社製)等が挙げられる。また、ファーネスブラックの一種であるケッチェンブラック(登録商標)EC及びケッチェンブラックEC-600JD(ともに、商品名、ケッチェンブラックインターナショナル株式会社製)を用いることもできる。ファーネスブラックは、その不純物量、特に硫黄や硫黄化合物の量が硫黄元素に換算して質量基準で6000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下であることが望ましい。なお、これらのうちで、アセチレンブラックは、不純物含有率が低い上、発達した2次ストラクチャー構造を有することから導電性に優れており、本発明において特に好適に用いられる。また、卓越して大きい比表面積を有することから、低充填量でも優れた導電性を示すケッチェンブラックECやケッチェンブラックEC-600JD等も好ましく使用できる。
【0042】
上記導電性カーボンブラックの添加量は、上述した(A)成分のシリコーンゴム基材100質量部に対して好ましくは1〜100質量部、特に好ましくは5〜50質量部である。該添加量がこの範囲内にあると、所望の導電性を得やすく、得られる組成物への物理的混合が容易となりやすく、十分な機械的強度および目的とするゴム弾性を有する硬化物を得やすい。
【0043】
導電性金属酸化物微粒子としては、例えば、導電性亜鉛華(導電性酸化亜鉛)、酸化チタン(例えば、白色導電性酸化チタン)、スズアンチモン系酸化物微粒子等が挙げられる。導電性酸化亜鉛の具体例としては、ハクスイテック(株)製の酸化亜鉛23-K(商品名)や本庄ケミカル株式会社製の導電性亜鉛華FX(商品名)が挙げられる。白色導電性酸化チタンとしては、例えば、ET-500W(商品名、石原産業(株)製)が挙げられる。導電性金属酸化物微粒子は一種単独でも2種以上併用してもよい。また、導電性金属酸化物微粒子を導電性カーボンブラックと併用してもよい。導電性金属酸化物微粒子の添加量は、上述した(A)成分のシリコーンゴム基材100質量部に対して1〜300質量部であることが好ましく、1〜100質量部であることがより好ましい。該添加量がこの範囲内にあると、所望の導電性を得やすい。
【0044】
本発明のシリコーンゴム組成物には、必要に応じてさらに、熱伝導性付与剤として粉砕石英、酸化亜鉛、アルミナ、酸化アルミを、非補強性シリカとして珪藻土を添加してもよいほか、炭酸カルシウム等の充填剤、着色剤、耐熱向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導向上剤等の添加剤や離型剤、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール封鎖低分子シロキサン等の分散剤などを添加してもよい。
【0045】
−製造方法−
本発明のゴム組成物の製造方法は、特に限定されないが、上述した成分の所定量を2本ロールミル、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練りすることによって得ることができる。また、必要により熱処理(加熱下での混練り)をしてもよい。具体的には(A)成分とその他の成分を混練・熱処理してベースゴムコンパウンド((A)成分のシリコーンゴム基材)を得、次いで冷却後に該ベースゴムコンパウンドに(B)、(C)および(D)成分を添加する方法等が挙げられる。上記熱処理の温度、時間は特に限定されないが、例えば、100〜250℃、好ましくは150〜200℃で30分〜5時間熱処理が行われる。
【0046】
−発泡硬化方法−
スポンジセルの連泡率を高めるために、本発明のゴム組成物の硬化発泡方法は、常圧熱気加硫が望ましく、押出成形を用いた加熱炉による連続加硫、バッチ式乾燥器による熱気架橋などが好適に採用される。金型内部に十分な空間が確保されている場合には、金型加硫も好適に用いることができる。一般的には、80〜400℃、特に100〜300℃の温度で5秒〜1時間程度、常圧熱気加硫により発泡硬化させることにより、高連泡率スポンジを得ることができる。また、100〜230℃、好ましくは150〜230℃で10分〜10時間程度ポストキュアーしてもよい。
【実施例】
【0047】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例で部は質量部を示し、粘度は回転粘度計により測定した値を示す。
【0048】
〔実施例1〕
ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン100部、
BET表面積200m/gの乾式シリカ Arosil200(商品名、日本エアロジル(株)製)40部、
両末端にシラノール基を有し、粘度が29mm2/s(23℃)であるジメチルポリシロキサン5部
をニーダーに投入し、180℃で2時間、熱処理下での混練りを行って、ベースゴムコンパウンドを作製した。
【0049】
得られたベースゴムコンパウンド100部に対し、
有機発泡剤ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)(和光純薬(株)製、商品名:VE−073) 1.5部、
硬化剤2,5−ジメチル−2,5−ジt−ブチルパーオキシヘキサン(日本油脂(株)製) 0.8部、
湿式シリカNIPSIL(登録商標)-LP(商品名、東ソーシリカ株式会社製) 3部
を添加し、2本ロールミルにて混合してシリコーンゴム組成物を得た。得られた組成物を成形して、9mm厚のシートを作製した。
【0050】
この9mm厚シートを常圧下、230℃の熱風乾燥器で30分間常圧熱気加硫させてシリコーンゴムスポンジを得た。その後、200℃、4時間の2次加硫を行った。得られたスポンジからスキン層をとり除いた後に、スポンジ特性としてスポンジ硬さ、発泡倍率、平均セル径、連泡率を下記のようにして調べた。結果を表1に示す。
【0051】
・スポンジ硬さ:JIS S 6050に準拠してアスカーC型ゴム硬度計で測定。
・発泡倍率:発泡後の体積/発泡前の体積×100(%)
・平均セル径(μm):スポンジ切断面におけるセル径の平均値。
・連泡率:以下のとおりに測定。
1)スポンジの原料であるシリコーンゴム組成物、即ち、未発泡のゴム材料の比重を測定する。
2)スポンジの比重と重量を測定する。
3)スポンジを真空容器に置いた容器中の水に沈め、その状態で真空容器内を10mmHg以下に減圧する。
4)真空容器内を常圧に戻した後に5分間放置してスポンジに吸水させる。
5)吸水した状態でスポンジの重量を計量する。次に、次の計算に従って連泡率を求める。
[(減圧下吸水後のスポンジの重量−当初スポンジの重量)/水の比重(1.00)]
/[(1-(スポンジ比重/未発泡のゴム材料比重))×(スポンジ重量/スポンジ比重)]×100(%)
【0052】
〔実施例2〕
湿式シリカをZeosil(登録商標)132(商品名、ローディアジャパン(株)製)へ変更した以外は実施例1と同様にしてシリコーンゴムスポンジを成形し、上記スポンジ特性を調べた。結果を表1に示す。
【0053】
〔実施例3〕
湿式シリカをトクシール(登録商標)USA(商品名、株式会社トクヤマ製)へ変更した以外は実施例1と同様にしてシリコーンゴムスポンジを成形し、上記スポンジ特性を調べた。結果を表1に示す。
【0054】
〔実施例4〕
硬化剤(有機過酸化物)として、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルパーオキシヘキサン0.8部の代わりにジクミルパーオキサイド1.0部を使用した以外は実施例1と同様にしてシリコーンゴムスポンジを成形し、上記スポンジ特性を調べた。結果を表1に示す。
【0055】
〔比較例1〕
湿式シリカNIPSIL-LP(商品名、東ソーシリカ株式会社製)3部の代わりに、乾式シリカArosil200(商品名、日本エアロジル(株)製)3部を使用した以外は実施例1と同様にしてシリコーンゴムスポンジを成形し、上記スポンジ特性を調べた。結果を表1に示す。
【0056】
〔比較例2〕
湿式シリカNIPSIL-LP(商品名、東ソーシリカ株式会社製)を添加しない以外は実施例1と同様にしてシリコーンゴムスポンジを成形し、上記スポンジ特性を調べた。結果を表1に示す。
【0057】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(I):
R1aSiO(4-a)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換の1価炭化水素基、aは1.95〜2.04の正数である。)
で表され、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンと補強性シリカとを混合後、熱処理することにより得られる基材: 100質量部、
(B)有機発泡剤: 0.5〜50質量部、
(C)硬化剤: 有効量、および
(D)湿式シリカ: 0.1〜20質量部
を含有するシリコーンゴム組成物を発泡、硬化させることにより得られる連泡率20%以上の高連泡率シリコーンゴムスポンジ。
【請求項2】
(B)成分がジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)である請求項1に係る高連泡率シリコーンゴムスポンジ。

【公開番号】特開2007−302827(P2007−302827A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−134381(P2006−134381)
【出願日】平成18年5月12日(2006.5.12)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】