説明

高遊離脂肪酸原料からのバイオディーゼル及びグリセリンの生成

【課題】安価な高遊離脂肪酸(FFA)原料を、石油由来のディーゼル燃料に匹敵する市場価格で、バイオディーゼル及び高品質グリセリンに変換するプロセスを提供する。
【解決手段】グリセリドからバイオディーゼル18を生産するプロセスであって、(A)少なくとも1種のアルコールとグリセリドを反応させて、脂肪酸アルキルエステル及びグリセリンのエステル交換排出ストリームを生成するステップと、(B)エステル交換排出ストリームを、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームとグリセリンリッチなストリームとに分離するステップと、(C)(i)エステル交換排出ストリーム、及び(ii)グリセリンリッチなストリームの中の少なくとも1つに有機酸を投入するステップと、(D)それらからバイオディーゼル18を回収するステップと、を含むプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオディーゼル生産のためのプロセス及びシステムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
石油系化学物質の代わりとして再生可能資源(renewable resources)を使用することへの関心は、継続且つ増大している。油脂(fats and oils)から生成された脂肪酸アルキルエステル(FAAEs)は、このような石油系物質、特にディーゼル燃料の代替品として研究されてきた。
【0003】
油脂からのトリグリセリドが、ディーゼルエンジン用燃料として使用できることは、昔から知られている。しかしながら、その使用は、エンジンの故障を招きやすい。このようなエンジン故障の改善策として、脂質(lipids)中に見られる脂肪酸を、シンプルなエステル、例えばメチルエステル及びエチルエステルに変換することが提案されてきた。例えば、米国特許第6,398,707号に記載のプロセスを参照されたい。増加している多数の証拠は、これらのようなエステルは、基本的に改良されていないディーゼルエンジンでうまく機能することと、これらエステルは、石油−ディーゼルエンジンに関連する微粒子及び汚染炭化水素(hydrocarbon pollutants)の排出を効果的に低減できることとを示している。用語「バイオディーゼル」は、これらのようなエステルに適用される。
【0004】
バイオディーゼル生産のプロセスは、長年にわたって知られている。例えば、米国特許第4,164,806号は、脂肪酸に酸触媒作用が施されるバイオディーゼル合成を開示している。トリグリセリドを塩基触媒作用で変換することは、米国特許第2,383,601号及び第2,494,366号に記載されている。高遊離脂肪酸及びトリグリセリドの療法を酵素触媒作用で変換することは、米国特許第4,956,286号、第5,697,986号及び第5,713,965号に開示されている。しかしながら、これらプロセスの何れも、低値の高遊離脂肪酸原料からのバイオディーゼルの生産には完全に対応していない。
【0005】
バイオディーゼル生産のためのあらゆるプロセスの経済的な分析は、原料コストが、バイオディーゼルの生産コストの大部分であることを示している。遊離脂肪酸(FFA)が15重量パーセントの原料は、現代のあらゆる商業プロセスが処理することを目標とした最高含有量であるが、生産者は、(コストを節約するために)FFA含有量が最高で100重量パーセントの原料を使用することを好むだろう。
【0006】
さらに、従来技術の殆どのプロセスは魅力に欠けている。それは、それらプロセスが、酸触媒による脂肪酸のエステル化に依存しているからである。酸触媒は、2つの主たる理由で、FFA濃度を含むこのような原料を処理するのに適していない。第1に、FFA含有量が高い原料を完全に変換するためには、過度な量の酸触媒が必要である。酸触媒は、グリセリドを処理する前に中性化されなくてはならないので、触媒の装填量の増加は、過度な量の塩が生成される結果を招く。第2に、そのようなプロセスは、米国特許第4,303,590号、第5,399,731号及び第6,399,800号に開示されているように、大量の廃水を生成する。
【0007】
酵素触媒作用は、遊離脂肪酸のエステル化に関する文献で報告されているが、原料中の遊離脂肪酸が酵素でエステル化される際に水が生じて、反応生成物を阻害するので、不利である。酵素処理で明らかな別の問題は、酵素触媒のコスト高である。さらに、酵素触媒の寿命は限られている。
【0008】
充てん層及びその他の反応環境における2相工程(two-phase operation)を防止するために、バイオディーゼル生産のための幾つかの従来のプロセスは、揮発性の有毒なコソルベント(cosolvent)を使用する。そのようなプロセスは、米国特許第6,642,399B2号に開示されている。揮発性の有毒なコソルベントの使用は、環境的に受容できない。
【0009】
さらに、バイオディーゼルを生産する従来技術のプロセスの幾つかは、水を利用して、FAAEsから残留グリセリン及び塩を洗浄する。しかしながら、これは、大量の廃水を生成し、米国特許第5,399,731号に開示されるように、FAAEエマルジョンを形成する危険性を増す。
【0010】
燃料業界において市場シェアを得るためには、バイオディーゼルは、一般的な炭化水素ディーゼルに対して価格競争力を有する必要がある。価格競争力を有するためには、バイオディーゼルの生産は、経済的に採算が取れなければならない。収益性の向上には、バイオディーゼル産業が低コストの原料を活用することが必要である。加えて、油脂からのバイオディーゼルの全収率(overall yields)は、高くなければならない。収率の増加は、原料コストがバイオディーゼル生産の総コストの3分の2に近づくにつれ、極めて重要な基準となる。
【0011】
それ故に、バイオディーゼル生産のプロセスにおける改善が進展して、原料からのバイオディーゼルの収率の向上をもたらし、好ましくない副生成物を最小限にする必要がある。さらに、高圧力又は酸触媒を必要としない代替プロセスを開発する必要がある。そのようなプロセスは、有毒なコソルベント又は水を、不純物の抽出に利用してはならない。さらに、そのようなプロセスは、安価な原料を利用することに加えて、高収率のバイオディーゼルを生産することが必要である。さらに、そのような原料は、石油ディーゼルに対する競争力を高めるために、高含有量のFFAを含むことが必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
開示されるプロセスは、グリセリドへの遊離脂肪酸の変換と、それに続くグリセリン及びFAAEへのグリセリドの変換とを行う経済的でユニークなプロセスにおいて、幾つかの単位操作を組み合わせている。本発明に従って生成される本発明の脂肪酸アルキルエステルは、通常は脂肪酸メチルエステルであるが、その他の脂肪酸アルキルエステルが生成されてもよい。
【0013】
本発明は、安価な高遊離脂肪酸(FFA)原料を、石油由来のディーゼル燃料に匹敵する市場価格で、バイオディーゼル及び高品質グリセリンに変換するプロセスに関する。故に、本発明のプロセスは、背景技術における従来の概念及び設計から大幅に逸脱している。そうすることで、本発明のプロセスは、主として、安価な高遊離脂肪酸原料から脂肪酸アルキルエステル及び高品質グリセリンを生成する目的で開発されたプロセス及び装置を提供する。
【0014】
本発明の好ましい特徴において、脂肪酸アルキルエステルに富んだストリーム(streams enriched in fatty acid alkyl esters)は、蒸留及び/又は非蒸発性分離(non-evaporative separation)の連続的処理ステージを受けて、純化されたバイオディーゼルの回収率が大きくなる。
【0015】
本発明の別の特徴は、バイオディーゼル生産の主な副生成物の分離及び純化に関連しており、純度水準が95又は99.7パーセントより大きく、アルコールが検出不能なレベルであり、0.5重量/重量(w/w)未満の塩を含むグリセリンを提供する。
【0016】
本発明のさらなる特徴は、副生成物ストリーム(これからバイオディーゼルが分離される)の処理に関連しており、純化されたバイオディーゼルの回収収率を大きくする。
【0017】
本発明はさらに、通常運転時の廃棄ストリームを小さくすることと、その他の商業用バイオディーゼルプロセスより低い運転条件(例えば圧力)の採用と、有毒なコソルベントの不使用と、高品質グリセリン副生成物の生成に関連する。
【0018】
好ましい実施例において、プロセスは連続プロセスである。
【0019】
プロセスの主要ステップは、好ましくは塩基触媒がある状態下で、グリセリドのストリームをアルコールでエステル交換することを含み、グリセリドを脂肪酸アルキルエステルとグリセリンに変換する。
【0020】
脂肪酸アルキルエステルは、その後グリセリドと分離され、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームを含む第1液体相と、グリセリンリッチなストリームを含む第2液体相が生成される。
【0021】
脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームは、その後、第1の蒸留又は非蒸発性分離プロセスを施される。好ましくは、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームは、反応蒸留を施されて、そこで該ストリームは、分離と化学反応の両方を受ける。反応蒸留手段によって、(i)複数種の脂肪酸アルキルエステルを含む底部のフラクション、即ちバイオディーゼルストリームと、(ii)頂部のフラクション(主としてアルコールで構成されており、第1のウェットアルコールストリーム)とに分離されるが、それと同時に、1以上の出力ストリームにおける望まれない不純物を除去するように、2以上のストリームの成分を互いに化学的に反応させる。このような反応蒸留は、例えば、蒸留塔から流出するグリセリドの収率量を増す一方、蒸留塔から流出するバイオディーゼルの純度を増す。蒸留塔から流出するバイオディーゼルは、精製されたバイオディーゼルストリームと副生成物ストリームとに分離されてもよい。
【0022】
第1蒸留塔から流出するバイオディーゼルには、さらに、第2の蒸留又は非蒸発性分離が施されて、第2の副生成物燃料ストリームに加えて、純化された第2のバイオディーゼルストリームがもたらされてもよい。第2の蒸留は、撹拌膜式蒸発器若しくは流下膜式蒸発器、又は、その他のそのような蒸発器内で起こるのが好ましい。非蒸発性分離は、通常、凍結結晶化、水蒸気蒸留又は液液分離のような物理的分離手法である。遊離脂肪酸ストリーム及び/又はグリセリドリッチなストリームは、さらに、第2の副生成物燃料ストリームから分離されて、その後、脂肪酸アルキルエステル生成のプロセスに再投入されてもよい。
【0023】
第2液相のグリセリンリッチなストリームは、さらに純化され、純化されたグリセリン生成物及び(第2の)ウェットアルコールストリームが生成されてもよい。純化されたグリセリン生成物の一部は、その後、遊離脂肪酸と反応させるために、(以下でより詳細に説明するグリセロール分解プロセスにて)グリセロール分解反応器に再循環してもよい。
【0024】
さらに、ウェットアルコールストリームは、好ましくは連続的に純化されて、純化されたアルコール生成物が生成されてもよい。さらに、純化されたアルコール生成物の少なくとも一部は、その後、グリセリドと反応させるために、エステル交換反応器に再循環してもよい。
【0025】
アルカリ触媒によるエステル交換プロセス中になされるアルカリ性ストリームの中和は無機酸又はより好ましくは有機酸を、そのストリームに加えることによって行われてよい。エステル交換排出ストリームに酸を直接加えることによって、又は、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリーム及び/又はグリセリンリッチなストリームに、それらストリームがエステル交換排出ストリームから分離された後に酸を添加することによって、中和が起こってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明の特徴は、本発明に関する現在好ましい実施例を例示する添付の図面を参照することによって、良く理解されるであろう。
【図1】本発明のプロセスの概略的なフロー図である。
【図2】本発明に基づいたバイオディーゼル生産システムの概略的なブロック図である。
【図3】本発明のプロセスに基づくバイオディーゼル生産の基本的なステップを示す概略的なブロック図である。
【図4】本発明のプロセスの概略的なフロー図であって、無機酸は、エステル交換中に使用されたアルカリ触媒の中和に使用される。
【図5】本発明のプロセスの概略的なフロー図であって、有機酸は、エステル交換中に使用されたアルカリ触媒の中和に使用される。
【図6】第6具体例で開示されるような、エステル交換の廃水ストリームからの分離における、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームの反応蒸留を説明する概略的なブロック図である。
【図7】副生成物ストリームからのストリームを再循環させて、脂肪酸アルキルエステルを回収することを説明する概略的なブロック図である。
【図8】本発明のプロセスの概略的なブロック図であって、非蒸発性分離器を使用し、脂肪酸アルキルエステル、グリセリド及び遊離脂肪酸がリッチなストリームを生成することを説明しており、該ストリームから精製されたバイオディーゼルが回収されてもよい。
【図9】バイオディーゼルの精製に関する概略図であって、バイオディーゼルストリームは、例えば撹拌膜式蒸発器又は流下膜式蒸発器のような蒸発器で処理されて、脂肪酸アルキルエステルがさらに回収される。
【図10】本発明の一実施例を例示する概略図であって、バイオディーゼルストリームから分離された副生成物(燃料)は、例えば撹拌膜式蒸発器又は流下膜式蒸発器のような蒸発器にさらに再循環されて、脂肪酸アルキルエステルがさらに回収される。
【図11】本発明の別の実施例を示す図であって、精製されたバイオディーゼルから分離された副生成物(燃料)ストリームは、さらに分離されて、脂肪酸アルキルエステルがさらに回収される。
【図12】本発明の一実施例を例示する概略図であって、バイオディーゼルストリームは、非蒸発性分離器に向けられ、脂肪酸リッチなストリームに分離され、その後、純化用の第2の蒸発器に向けられてもよい。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明のプロセスにおいて、バイオディーゼルは、エステル交換反応器内でグリセリドとアルコールを反応させて、脂肪酸アルキルエステルを生成することで作製される。この反応は、通常、アルカリ触媒の存在下で起こる。アルコールは、一般的に、C1〜C5アルコール、好ましくはメタノールである。
【0028】
その結果生じたエステル交換排出ストリームは、次に、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームとグリセリンリッチなストリームとに分離されてよい。これらのストリームの各々は、バイオディーゼル、グリセリン及びアルコールの回収効率を高めるために、純化され、又はさらなる分離プロセスを施されてよい。副生成物(燃料)ストリームが、純化されたバイオディーゼルから分離されて、バイオディーゼルの回収効率を高めるために、さらなる処理がさらに施されてよい。
【0029】
アルカリ触媒によるエステル交換プロセス中に生じたアルカリ性エステル交換排出ストリームは、中和剤、例えば、無機酸又は有機酸で直接処理されてよい。あるいは、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリーム及び/又はグリセリンリッチなストリームに、それらストリームがエステル交換排出ストリームから分離された後に、中和剤が加えられてもよい。脂肪酸アルキルエステルは、pH調整されたこのストリームから回収される。
【0030】
中和に続いて、中和されたストリームは、例えば蒸留又は分留によって、さらに純化されてよい。
【0031】
本発明のプロセスは、エステル化ステップをさらに含んでもよく、該ステップにおいて、遊離脂肪酸原料は、最初にグリセリドに変換される。その結果生じたグリセリドは、次に、エステル交換反応器に投入される。
【0032】
中和剤として酸を使用することで、エステル交換反応器内で生じた石鹸は、遊離脂肪酸に変換される。石鹸は、エステル交換反応器内のアルカリ(caustic)と脂肪酸の作用から生成される。石鹸の存在は、脂肪酸アルキルエステルと、グリセリン、水、アルコール及び塩の溶液との間の相分離を達成することを極めて困難にする。その結果、石鹸は、乳化して、脂肪酸アルキルエステルをグリセリンリッチな相に保持してしまう。故に、グリセリンリッチ相の純化は、石鹸の存在によって複雑になっており、アルキルエステルの収率が低減する。
【0033】
本発明のプロセスの概要は、図3に示されている。遊離脂肪酸を含む原料(1)は、グリセリンを有するグリセロール分解反応器(2)に投入される。そこで、遊離脂肪酸は、グリセリドに変換される。次に、グリセリドは、アルコールを含むエステル交換反応器(4)に投入される。そこで、グリセリドは、エステル交換されて、脂肪酸アルキルエステル及びグリセリンが生じる。アルコール/アルカリストリーム(3)は、アルカリ触媒とアルコールが混ざった混合物として、エステル交換反応器(4)に投入される。または、アルカリ触媒及びアルコールが、エステル交換反応器(4)に入る別々のストリームとして、エステル交換反応器(4)に投入されてもよい。次に、エステル交換排出ストリーム(4a)又はその一部は、中和/相分離ステップ(5)の間に中和される。この処理は、排出ストリーム(5a)が、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームとグリセリンリッチなストリームとに分離される前又は後に行われる。最終的に、アルコール、グリセリン及びバイオディーゼルは、アルコール精製ステップ(6)、グリセリン精製ステップ(7)、及びバイオディーゼル精製ステップ(8)で夫々精製されてよい。アルコールは、通常、廃棄ストリーム(9a)のほんの一部としてシステムから流出するか、フロー(11)を通じてエステル交換反応器(4)に戻されて、再循環する。精製されたグリセリンは、工業グレードグリセリンストリーム(13)に分離されるか、及び/又は、フロー(15)を通じてグリセロール分解反応器(2)に戻されて、再循環してもよい。廃棄ストリーム(9b)は、幾らかの未精製グリセリンを含んでいてもよい。アルキルエステルはさらに、バイオディーゼル精製ステップ(8)で精製されて、純化されたバイオディーゼルストリーム(18)と、例えばバーナー燃料として使用できる廃棄ストリーム(19)が生成されてもよい。
【0034】
図7に例示したように、廃棄ストリーム(19)の少なくとも一部は、ストリーム(351)として、従前のプロセスに再投入されてもよく、例えば、脂肪酸メチルエステルをさらに回収するためにバイオディーゼル精製ステージ(8)に再投入されてもよく、グリセリドを脂肪酸メチルエステルにエステル交換するためにエステル交換反応器(4)に再投入されてもよく、又は、脂肪酸をエステル化するためにエステル化反応器(2)に再投入されてもよい。
【0035】
または、図8に例示したように、廃棄ストリーム(358)の少なくとも一部(351)が、分離器(370)にて、(i)脂肪酸アルキルエステルに富んだ(fatty acid alkyl ester enriched)ストリーム(371)と、(ii)グリセリドに富んだストリーム(376)及び/又は遊離脂肪酸に富んだストリーム(374)とに分離されてもよい。脂肪酸アルキルエステルに富んだストリーム(371)は、次に、バイオディーゼル精製ステージ(8)に再投入されてよい。グリセリドに富んだストリーム(376)及び/又は遊離脂肪酸に富んだストリーム(374)は、次に、エステル交換反応器(4)及び/又はエステル化反応器(2)に再投入されてよい。
【0036】
本発明のプロセスは、連続プロセスであってよい。例えば、以下のステップの1つ以上が連続的に実行される連続プロセスは、本明細書の説明から明らかである。
(1) 加熱、混合及び濾過によって、脂肪酸を含有する原料をさらに調整するステップ。
(2) グリセロール分解又はエステル化反応器で、原料中の遊離脂肪酸とグリセリンを連続的に反応させて、グリセリドを生成するステップ。
(3) エステル交換反応器内でグリセリドとアルコールを反応させて、脂肪酸アルキルエステル及びグリセリンを生じさせるステップ。この反応は、アルカリ触媒の存在下で起こるのが好ましい。
(4) 脂肪酸アルキルエステル及びグリセリンを、(例えば、相対的に非混和な2相を重力分離することによって)エステル交換排出ストリームから分離し、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームと、グリセリンリッチなストリームとを生じるステップ。
(5) 蒸留及び/又は分留によって脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームを純化するステップ。好ましい実施例では、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームは、反応蒸留によって純化され、蒸留塔又は分留塔内の反応は、グリセリンなどの好ましくない不純物の低減を助ける。精製された脂肪酸アルキルエステルは、バイオディーゼルとしての使用に相応しい。
(6) 好ましくは有機酸、例えば酢酸、ギ酸又は プロピオン酸のような弱有機酸を使用して、グリセリンリッチなストリームを純化して、そのストリームからアルコールを回収するステップ。純化されたグリセリンは、その後、グリセロール分解反応器に投入されてよい。
(7) 上記のステップ(5)及び(6)で生じたウェットアルコールストリームを純化して、そのストリームから水を除去するステップ。
(8) 純化されたアルコールの少なくとも一部を、グリセリドと反応させるために、エステル交換反応器に再循環させるステップ。
【0037】
プロセスは、さらに、より純化されたバイオディーゼルストリーム(即ち、純化された第2のバイオディーゼルストリーム)及び第2の副生成物燃料ストリームをもたらすために、ステップ(5)のバイオディーゼルストリームを、第2の蒸留又は非蒸発性分離によってさらに分離するステップを含む。
【0038】
別の選択として、ステップ(5)のバイオディーゼルストリームが、非蒸発性分離器にて、(i)脂肪酸アルキルエステルに富んだストリームと、(ii)グリセリド及び/又は遊離脂肪酸に富んだストリームにさらに分離されてもよい。ここで使用する好ましい非蒸発性分離器は、凍結結晶化プロセス及び液液分離プロセスを含んでいる。
【0039】
この分離から生じる脂肪酸アルキルエステルに富んだストリームは、次に、ステップ(5)のバイオディーゼルストリームと混合され、その後、第2の蒸留又は非蒸発性分離を施されてよい。グリセリド及び遊離脂肪酸に富んだストリームは、次に、エステル交換又はエステル化反応器に再投入されてよい。
【0040】
バイオディーゼルを生産可能な原料は、通常、複数の遊離脂肪酸を含有する。原料は、通常、約3〜約100重量パーセントの遊離脂肪酸と、脂肪及び/又は油を随意的に含む。
【0041】
原料は、通常、脂質原料である。本発明で使用する遊離脂肪酸原料は、動物性脂肪及び植物性油に由来する低グレードの脂肪性物質であってよく、再利用される油脂を含んでいてもよい。例えば、バイオディーゼル燃料生産のための原料は、グリース原料(grease feedstock)、例えば廃棄グリース又は黄色グリースである。そのような低グレードの脂肪性物質は、極めて複雑であり、遊離脂肪酸の量が多いことから(数パーセント〜50パーセント以上)、現況の技術プロセスを使用して経済的に処理するのは、一般的に困難である。さらに、そのような物質は、処理不可能な物質と、生成物の処理前又は精製中に除去されるべき汚染物質とを含んでいる。
【0042】
原料は、最初に、調整容器(conditioning vessel)又は反応器に投入されてよい。調整容器又は反応器は、原料を加熱、混合及び/又は濾過するように機能し、調整済み原料を生成する。原料は、次に、例えば移動スクリーンを使用して、濾過されてよい。
【0043】
濾過に続いて、調整済み脂質原料中の遊離脂肪酸の濃度が測定されてよい。状況に応じて、調整済み脂質原料中の遊離脂肪酸の濃度は、プロセスを通じて連続的に測定されてもよい。測定は、インラインの遊離脂肪酸測定装置、例えば滴定装置又は近赤外線分光光度計を用いて行われてよい。測定装置は、調整済み原料中の遊離脂肪酸の濃度を定量化する。
【0044】
調整中、原料は、混合されながら、約35℃〜約65℃、好ましくは約55℃〜約65℃の範囲の温度に加熱されてよい。グリセリド、遊離脂肪酸及び不けん化物の均一混合物が、通常、調整済み原料中に存在する。
【0045】
グリセロール分解中、グリセリンが、反応物質として使用されてよく、原料中の遊離脂肪酸は、グリセリド(モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリド)に変換される。原料中の遊離脂肪酸の反応は、通常、触媒がない状態下で起こる。グリセロール分解反応器において、原料中の遊離脂肪酸は、適当な温度及び圧力にて、グリセリンと混合させられると共に連続的に反応させられて、概ね約0.5重量パーセント未満の遊離脂肪酸と複数種のグリセリドとを含むグリセロール分解反応器排出ストリームがもたらされる。グリセロール分解は、触媒及びコソルベントがない状態下で起こるのが好ましい。
【0046】
グリセリン、大抵は、純化されたグリセリン生成物が、グリセロール分解に必要とされるグリセリンの化学量論量(stoichiometric amount)よりも大きい割合で、グリセロール分解反応器に加えられるのが一般的である。グリセロール分解反応器に投入されるグリセリンの量は、グリセリドをもたらすために、概して、化学量論比(stoichiometric proportion)で、遊離脂肪酸に対して約35パーセント〜約400パーセントとされる。好ましい実施例では、グリセロール分解反応器に加えられるグリセリンの量は、原料中の遊離脂肪酸の化学量論量について約300パーセントの範囲の割合である。
【0047】
グリセロール分解は、約150℃〜約250℃の範囲の温度、典型的には約180℃〜約250℃の範囲の温度、より典型的には約180℃〜約230℃の範囲の温度で実施される。その反応は、通常、撹拌下で進行する。加えて、その反応は、典型的には、約0.1ポンド/平方インチ絶対圧力〜約15ポンド/平方インチ絶対圧力、さらに典型的には、約2ポンド/平方インチ絶対圧力の圧力で進行する。
【0048】
遊離脂肪酸とグリセリンの反応は、通常、ZnCl2のような触媒の存在下で起こるが、好ましい実施例では、触媒がない状態下で実行される。グリセロール分解反応器の排出ストリームは、0.5重量パーセント未満の遊離脂肪酸と、複数種のグリセリドとを含んでよい。
【0049】
グリセロール分解は、通常、連続反応である。原料中の遊離脂肪酸とグリセリンの連続反応は、グリセロール分解反応器内にグリセリドを生成するものであり、インライン脂肪酸測定装置又は分光光度計からの信号に応答して行われてよい。
【0050】
グリセロール分解中、水は除去される。生成されたグリセリドは、基本的に水を含んでいない。水は、通常、分留塔を通り抜ける水蒸気、又は、反応器のヘッドスペースの排出口を通り抜ける水蒸気として、グリセロール分解反応器から連続的に取り出される。好ましくは、グリセロール分解反応器から排出された水蒸気は、3つのストリームを生じるように分留される。第1のフラクションは、原料から蒸発して、液体のストリームとして凝縮された高濃度の不けん化物を有しており、第2のフラクションは、高濃度のグリセリンを有する液体フラクションと、水蒸気フラクションとを有しており、第3の液体のフラク
ションは、高濃度の水を有している。グリセリンを含有する液体フラクションは、その後、グリセロール分解反応器に戻されてよい。
【0051】
グリセロール分解反応器は、直列にして運転される2以上の連続攪拌槽型反応器(continuous stirred tank reactor)で構成されてもよい。それら反応器の滞留時間は、通常、約30分から約500分未満であって、好ましくは約200分未満である。
【0052】
グリセロール分解排出ストリームに含まれる複数種のグリセリドは、エステル交換反応器、例えば連続攪拌槽型反応器でアルコールと反応する。この反応では、グリセロール分解排出ストリーム中のグリセリドは、脂肪酸アルキルエステルとグリセリンに変換される。エステル交換は、適切な温度及び圧力で行われて、エステル交換反応器の所望の排出ストリームが生成される。
【0053】
エステル交換は、連続プロセスであることが好ましく、塩基触媒の存在下で起こる。適切な塩基触媒としては、例えば、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムなどのアルカリ触媒が挙げられる。アルカリ触媒が、反応を触媒するのに十分な割合で、エステル交換反応器に加えられてもよい。通常、エステル交換反応器に加えられるアルコールの量は、エステル交換反応器注入口のストリーム中に存在するグリセリドの脂肪酸部分の各モル数に対して、約1モルから5モルとされる。より具体的に述べると、その割合は、エステル交換反応器に投入されるグリセリドに存在する脂肪酸部分の各モルに対し、アルコールは約2モルとされる。触媒、典型的には、水酸化カリウムは、グリセリド重量に対する触媒重量で約0.5%〜3%、より典型的には、約1%の割合で加えられる。
【0054】
代わりに、アルコキシド、例えばカリウムメチレートが、塩基触媒を促進するためにエステル交換反応器に加えられてもよい。または、グリセリドからアルキルエステルへの急速な変換が、苛性アルコキシド、例えば苛性メトキシド触媒の存在下で生じてもよい。
【0055】
エステル交換反応は、通常、約25℃〜約65℃、好ましくは約50℃〜約60℃の範囲の温度、約14.5psia〜約3,625psiaの圧力で起こる。
【0056】
アルコールは、普段は、アルカリ触媒によるエステル交換反応に必要とされるアルコールの化学量論量より大きい割合で、エステル交換反応器に加えられる。例えば、アルコールは、触媒反応に必要とされるアルコールの化学量論量の約200パーセントに等しい割合で、エステル交換反応器に加えられてよい。
【0057】
アルコール又は触媒を加えることが、エステル交換反応器に対して複数回行われるのが好ましい。
【0058】
エステル交換反応器は、通常、直列に運転される少なくとも2つの連続攪拌槽型反応器を含んでいる。それぞれの槽型反応器の滞留時間は、通常、約5分〜約90分、好ましくは約60分である。
【0059】
その結果生じたエステル交換反応器の排出ストリームは、脂肪酸アルキルエステルとグリセリンを含んでいる。グリセリンの少なくとも一部は、複数種のグリセリドをアルコールと反応させる前に、エステル交換反応器から除去されるのが好ましい。
【0060】
その結果生じた複数種の脂肪酸アルキルエステルは、その後、エステル交換排出ストリームにおいて、グリセリンと分離されてよい。2つの異なった非混和性の相、即ち、複数の脂肪酸アルキルエステルが高濃度である第1液相と、グリセリンが高濃度である第2液相の分離は、通常、その2相の密度の差異に依存しており、重力及び/又は遠心力を使用する。
【0061】
通常、それら2つの相は、約25℃〜約65℃の温度で分離され、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームと、グリセリンリッチなストリームとが生成される。この分離プロセスは、連続操作であってよく、浄化器又は膜濾過手段で実行される。
【0062】
好ましい実施例において、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームは、バイオディーゼル精製ステップ(8)において反応蒸留を施されて、底部のフラクション、(主として過剰なアルコールを含む)頂部のフラクション、及び脂肪酸アルキルエステル生成物のストリームに分離される。この分離は、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームの成分における蒸気圧の差異とグリセリンの反応損失とを利用する。蒸留又は分留塔の状態、例えば温度及び圧力の状態は、その分離が起こる同じ容器と連動して、その同じ容器の中で、生じる化学反応を促進する。図6に描かれている実施例の反応蒸留は、グリセリンの濃度を低減し、塔から流出するグリセリドの量を増加させる。したがって、反応蒸留は、生成プロセスの効率を増大する。
【0063】
反応蒸留の最終的な結果は、エステル交換排出ストリーム又は第1液体相に見られるグリセリンの量は、蒸留又は分留塔から出るグリセリンの総量より大きいということである。これは、反応蒸留塔内で、グリセリンと、遊離脂肪酸及び/又は脂肪酸アルキルエステルとが反応して、グリセリドが形成されることに起因している。
【0064】
脂肪酸アルキルエステル蒸留塔によって生成される頂部のフラクションは、基本的にアルコールを含む(第1の)アルコールストリームであるのが好ましい。底部のフラクションは、沸点が高い不純物、不けん化物、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及び脂肪酸を含むのが好ましい。
【0065】
脂肪酸アルキルエステル蒸留塔又は分留塔は、約15ポンド/平方インチ絶対圧力以下の圧力で運転されるのが好ましい。より好ましくは、脂肪酸アルキルエステル蒸留塔又は分留塔は、約0.1ポンド/平方インチ絶対圧力から約3ポンド/平方インチ絶対圧力の圧力で運転される。脂肪酸アルキルエステル蒸留塔又は分留塔は、約180℃〜約290℃の範囲の温度で運転されるのが好ましく、より好ましくは約230℃〜約270℃の範囲の温度で運転される。脂肪酸アルキルエステル蒸留塔又は分留塔は、充填材料(packing material)を含んでいるのが好ましい。
【0066】
グリセリンリッチな第2の液相ストリームは、さらに純化されて、それからアルコールが回収されてよい。回収されたアルコールは、純化されたグリセリン生成物と(第2の)ウェットアルコールストリームを生成する働きをする。好ましい実施例では、このステップは、1以上のグリセリン分留(グリセリンリッチなストリーム中のフラクションは、蒸留によって分離される)と、相分離(グリセリンと共に分留する(co-fractionate)不純物は、非混和性及び密度差によって除去される)と、グリセリンポリッシング(glycerin polishing)(その他の不純物はグリセリンから除去される)とを使用する。
【0067】
グリセリンリッチなストリームは、さらに相分離を施されてよい。脂肪酸アルキルエステルリッチな液相とグリセリンリッチな液相とが分離されて、2つの液相は、その後、上記段落で説明したように純化されてよい。
【0068】
グリセリンリッチなストリームは、さらに、グリセリン蒸留又は分留塔で純化されてよく、底の物質(bottoms material)、側部ストリーム及び頂部ストリームが生成される。好ましくは、底の物質は、基本的に廃棄物を含んでおり、側部ストリームは、基本的にグリセリン及び微量の不純物を含んでおり、頂部ストリームは、基本的にアルコール及び水を含んでいる。頂部ストリームは、さらなる純化のために回収されて、再循環する。
【0069】
グリセリン蒸留塔は、好ましくは約180℃〜約280℃、より好ましくは約180℃〜約230℃に昇温されて運転される。蒸留塔は、通常、約2ポンド/平方インチ絶対圧力以下に減圧されて運転される。圧力は、通常、約0.1ポンド/平方インチ絶対圧力から約2ポンド/平方インチ絶対圧力の範囲である。
【0070】
グリセリンリッチなストリームは、さらに、脱色塔で処理されてよい。そこで、色付きの不純物及び臭気は、グリセリンから除去、即ち「グリセリンポリッシング」される。脱色塔は、通常、約35℃〜約200℃の範囲、より好ましくは約40℃から約100℃の間の温度で動作する活性炭素の充てん層を含んでいる。接触時間は、概して4時間未満である。充てん層を通って運ばれた活性炭素微粒子は、濾過によって除去される。
【0071】
さらに、約60℃〜約110℃の範囲の温度で、約14ポンド/平方インチ絶対圧力〜約20ポンド/平方インチ絶対圧力の範囲の圧力のアルコール蒸留又は分留塔で、ウェットアルコールストリームを処理することで、ウェットアルコールストリームから水が除去されてよい。これによって、純化されたアルコールがもたらされる。この純化は、後に乾燥及び再利用可能なモレキュラーシーブへの吸収と、主として水からなる底部の生成物を生じる蒸留とを含むのが好ましい。
【0072】
純化されたグリセリン生成物の少なくとも一部は、その後、原料中の遊離脂肪酸と反応させるためにグリセロール分解反応器に戻されてよい。純化されたアルコールの少なくとも一部は、グリセリドと反応させるために、エステル交換反応器に再循環してもよい。
【0073】
エステル交換反応器で生成された脂肪酸アルキルエステル及びグリセリンを中和することが通常好ましい。多くの場合、中和は、エステル交換を特徴付ける苛性状態を踏まえて必要とされる。この中和は、エステル交換排出ストリームに酸を加えることによって、又は、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリーム若しくはグリセリンリッチなストリームがエステル交換排出ストリームから分離された後、それらストリームに酸を加えることによって起こる。好適な酸処理として、無機酸処理、より好ましくは有機酸処理がある。
【0074】
好適な無機酸には、硫酸及びリン酸がある。アルカリ触媒と無機酸の反応は、不溶性塩をもたらし、それは、固体分離操作中にグリセリンから除去される。
【0075】
図4は、無機酸、例えばリン酸が使用されるプロセスを例示している。特に、図4は、遊離脂肪酸を含む原料(1)を、グリセロール分解反応器(2)に投入することを示している。この反応器(2)において、遊離脂肪酸は、エステル化によってグリセリドに変換される。グリセリドは、次に、(図7に示される)(317)において、アルコール(3)及びアルカリ触媒(318)と共にエステル交換反応器(4)に投入される。この反応器(4)において、グリセリドは、エステル交換され、脂肪酸アルキルエステル及びグリセリンが生じる。
【0076】
エステル交換排出ストリーム(4a)は、最初に、第1の相分離(320)で、典型的には重力分離手法によって、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームとグリセリンリッチなストリームとに分離される。次に、各々のストリームは、ここで説明したプロセスに従って第2の相分離(322)で純化されてよい。
【0077】
中和酸、リン酸(324)は、第1の相分離(320)の前に加えられるか、又は、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームとグリセリンリッチなストリームが分離された後に、エステル交換排出ストリームの第1の相分離(320)に続いて加えられる。そのようなプロセスに酸の投入する選択的な又は組み合わせポートは、図4にて点線で示されている。
【0078】
残念ながら、リン酸の使用によって、不溶性沈殿物が生じてしまう。不溶性沈殿物の生成は、濾過ステップ(326)のフィルタ及び/又は濾過ステップ(328)のフィルタの使用を義務付ける。好適なフィルタとして、回転式真空ドラムフィルタ、プレート式プレス及びフレーム式プレスに加えて、ベルト式プレスがある。
【0079】
濾過ユニットの使用に加えて、無機酸の使用は、さらに、不溶性の副生成物塩から残渣の有機物質を洗浄するために、不溶性の副生成物塩の洗浄を必要とする。好適な溶媒には、C1〜C5アルコール、例えばメタノールがある。図4には、アルコールリンス(330)として使用するアルコール溶媒(329)の投入が示されており、それは、濾過ケーキから有機残渣を除去する。次に、真空乾燥(332)が用いられて、濾過ケーキからアルコールを除去し、精製された塩を乾燥する。その後、その塩は、廃棄ストリーム(334)としてプロセスから流出する。溶媒は、その後、プロセスで再利用するために、ストリーム(364)として回収されてよい。
【0080】
プロセスは、乾燥機の温度が、乾燥機の作動圧において溶媒の沸点を超えるという条件下で、不溶性塩を乾燥機で乾燥することを含むのが好ましい。乾燥機は、乾燥を改善するために、状況に応じて真空下で行われてよい。乾燥機は、再使用する溶媒を回収するコンデンサをさらに含んでもよい。
【0081】
図4は、アルコール、グリセリン及びバイオディーゼルを、アルコール精製容器(6)、グリセリン精製容器(7)及びバイオディーゼル精製容器(8)で夫々精製することをさらに示している。アルコールは、通常、副生成物ストリーム(9a)としてストリームから流出し、或いは、(11)を介してエステル交換反応器(4)に再循環する。精製されたグリセリンは、精製されたグリセリン(13)として分離される。グリセリンストリームの一部は、ストリーム(15)としてグリセロール分解反応器(2)に戻されて、再循環してもよい。アルキルエステルは、さらに、精製されたバイオディーゼル(18)を生産するために純化され、又は、例えばバーナー燃料のような副生成物(19)としてシステムから流出してもよい。
【0082】
また、無機酸に対して有機酸を使用することがより好ましい。エステル交換されたストリームで中和する際に、沈殿する塩を生成しない無機酸が存在するとは言え、全てが、深刻な不利益を被る。例えば、塩化水素酸及び過塩素酸は、プロセスの流れにおいて塩化物を生成し、次に塩化物は、特に昇温時に、鋼鉄及びステンレス鋼の好ましくない腐食を引き起こす。硫酸、亜硫酸及び硫化水素は、硫黄の存在によって深刻な不利益をもたらし、それは、最終的なバイオディーゼル製品と共に硫黄が流出する傾向を増大する。このことは、次に、硫黄レベルの制限を損なう可能性と、バイオディーゼル燃焼エンジンの排気における不要な硫黄酸化物の形成とを引き起こす。ヒ酸、クロム酸、シアン化水素酸及びフッ化水素酸は、有害で好ましくなく、望まない副生成物を除去するための望まれていない処理方法を、さらに使用及び/又は必要とする。最後に、ヨウ素酸は、望まない沈殿物を生成しないが、採算的に合わない。
【0083】
有機酸が使用される場合、不溶性塩は生成されず、従って、任意の固体を分離する操作をストリームに施す必要はない。好適な有機酸には、弱有機酸、例えば ギ酸、酢酸及びプロピオン酸がある。そのような場合、エステル交換により生じるグリセリンリッチなストリームのpHは、最初に、8.0以下、好ましくは約6.5〜約7.0に調整されてよい。
【0084】
図5は、無機酸ではなく、アルカリ触媒の中和に有機酸(325)が使用されている本発明のプロセスを示している。ある実施例において、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームをグリセリンリッチなストリームから分離する前に、有機酸は、重量比約0.1%〜約5%で、より典型的には約0.9%で、エステル交換排出ストリームに加えられる。別の実施例では、有機酸は、重量比約1%〜約7%で、より一般的には約4%で、グリセリンリッチなストリームに加えられる。有機酸の使用は、濾過ステップ、濾過ケーキのリンスステップ及び真空乾燥ステップを不要とし、したがって、無機酸の使用を超える利点をもたらす。
【0085】
図7には、副生成物(燃料)ストリーム(351)の一部が、(351A)を通じてバイオディーゼル精製ステージに、(351C)を通じてエステル交換反応器に、又は(351D)を通じてエステル化反応器に直接戻ることが示されている。ストリーム(351)の組成は、ストリーム(351A)、(351C)及び(351D)に分離される前に変化しない。
【0086】
対照的に、図8では、副生成物(燃料)ストリーム(351)の一部は、分離器(370)で、脂肪酸アルキルエステルに富んだストリーム(371)、及び/又は遊離脂肪酸に富んだ第2ストリーム(374)、及び/又はグリセリドに富んだ第3ストリーム(376)に分離される。遊離脂肪酸の含有量が低い第2ストリームの部分は、次に、エステル交換反応器(4)に投入され、遊離脂肪酸の含有量が高いストリームの部分は、エステル化反応器(2)に投入される。
【0087】
図9は、バイオディーゼル精製ステップ(8)の一実施例を示している。バイオディーゼルの収率の増加は、第2蒸留反応器又は非蒸発性分離器の使用によって起こってもよい。好ましい実施例では、この第2蒸留反応器は、1以上の蒸発装置、例えば当該分野で知られている撹拌膜式蒸発器又は流下膜式蒸発器である。通常、この第2蒸留反応器は、バイオディーゼル精製ユニット内に存在する。さらに、分離器ユニットは、バイオディーゼルの純化によって生じる副生成物(燃料)ストリームを処理するためにも使用されてよい。
【0088】
システムは、ここで開示した内容に従って、原料、例えば遊離脂肪酸を含有する脂肪性原料からバイオディーゼルを生産するように構成されてもよい。そのシステムは、以下のものを含み得る。
(1) 原料を調整済み原料に連続的に変換するオプション的な調整反応器。その調整反応器は、原料を加熱、混合及び濾過することによって、調整済み原料を生成する。
(2) 調整済み原料中の遊離脂肪酸の濃度を連続的に測定するオプション的なシステム。
好適なシステムは、インラインの遊離脂肪酸測定装置を含んでおり、該測定装置は、調整済み原料中の遊離脂肪酸の濃度を定量化する。
(3) 原料中の遊離脂肪酸が連続的にグリセリンと反応してグリセリドを生成するグリセロール分解反応器。この反応器は、インラインの遊離脂肪酸測定装置からの信号に応答してよい。
(4) グリセリドとアルコールを連続的に反応させるエステル交換反応器。そのエステル交換反応器は、好ましくはアルカリ触媒反応によって、グリセリドを脂肪酸アルキルエステル及びグリセリンに転換する。この反応は、インラインの遊離脂肪酸測定装置からの信号に応答して起こってもよい。
(5) 脂肪酸アルキルエステルをグリセリンから連続的に分離する分離器。その分離器は、脂肪酸エステルリッチなストリームとグリセリンリッチなストリームとを生成する。好適な分離器は、浄化器(clarifier)又は相分離用遠心分離器を含んでおり、浄化器又は相分離用遠心分離器は、脂肪酸アルキルエステルが高濃度である濃縮(第1)液相、及びグリセリンが高濃度である(第2)液相を生成する。
(6) 脂肪酸エステルリッチなストリームを連続的に純化して、脂肪酸エステルリッチなストリームからアルコールを回収する純化器。純化器は、純化されたバイオディーゼル生産物と、第1のウエットアルコールストリームとを生成する。好適な純化器は、分留塔及び蒸留塔を含んでいる。好ましい実施例では、脂肪酸エステルリッチなストリームが反応蒸留によって純化されて、バイオディーゼルが得られる。
(7) バイオディーゼルをさらに、脂肪酸アルキルエステルに富んだストリームと副生成物(燃料)ストリームとに分離するためのオプション的な蒸発分離器。例えば撹拌膜式蒸発器又は流下膜式蒸発器。
(8) 副生成物(燃料)ストリームを、脂肪酸アルキルエステルに富んだストリームと遊離脂肪酸/グリセリドに富んだストリームとにさらに分離するオプション的な非蒸発性分離器。
(9) グリセリンリッチなストリームを連続的に純化し、グリセリンリッチなストリームからアルコールを回収するための純化器。純化器は、純化されたグリセリン生成物及び第2のウェットアルコールストリームを生成する。好適な純化器は、分留塔及び蒸留塔を含んでおり、反応蒸留をする。
(10) ウェットアルコールストリームを連続的に純化し、純化されたアルコール生成物を生成する純化器。好適な純化器は、アルコールストリームを処理するアルコール分留塔を含む。
(11) 純化されたグリセリン生成物の少なくとも一部を、グリセロール分解反応器に再循環し、純化されたアルコールの少なくとも一部を、グリセリドと連続的に反応させるためのエステル交換反応器に再循環させるための経路。
【0089】
図1を参照すると、高遊離脂肪酸原料をバイオディーゼルに変換するバイオディーゼル生産プロセス(10)の好ましい実施例が示されている。
【0090】
原料投入ステップ(12)にて、原料がプロセス(10)に投入される。投入された原料は、好ましくは原料調整工程(14)で調整される。ここで、原料は、調整反応器(16)で加熱及び混合される。高遊離脂肪酸原料は、確実に均一な混合物となるように加熱及び混合される。遊離脂肪酸は、例えばインラインの遊離脂肪酸測定装置(18)で定量化される。そこでは、原料中の遊離脂肪酸の濃度が、分光法、滴定又はその他の好適な手段によって決定される。第1の分離において、固体(不溶性)物質は、フィルタ(24)で除去される。
【0091】
原料は、濃度が約3〜約97重量パーセントの範囲の少なくとも1種の遊離脂肪酸と、5重量パーセントまでの濃度の水分、不純物及び不けん化物と、モノグリセリド、ジグリセリド及び/又はトリグリセリドを含有する残部とを含んでもよい。原料は、さらにトラップグリース(trap grease)を含んでもよい。
【0092】
調整ステップは、好ましくは約35℃〜約250℃の範囲、より好ましくは約45℃〜約65℃の範囲の温度で実施され、調整済み原料を生成する。好ましい実施例では、原料は、約55℃〜約65℃の範囲の温度まで加熱される。結果として生じた調整済み原料は、不溶性固体をほとんど含まないのが好ましい。
【0093】
調整済み原料は、(26)におけるグリセロール分解反応又はエステル化反応に投入され、該反応は、グリセリン添加ステップ(28)と、加熱ステップ(32)と、遊離脂肪酸がグリセリドに変換されるグリセロール分解ステップ(34)と、グリセロール分解排出ストリーム冷却ステップ(38)とを含んでいるのが好ましい。
【0094】
グリセロール分解反応ステップ(26)はさらに、約150℃〜約250℃の範囲の温度でグリセロール分解反応を実施することと、グリセロール分解反応環境から水を除去することとを含んでいるのが好ましい。グリセロール分解反応ステップ(26)は、直列に設けられた2以上の連続攪拌槽型反応器をさらに含んでいるのが好ましい。
【0095】
好ましい実施例では、遊離脂肪酸及びグリセリンは、エステル反応において、通常は触媒がない状態下で、約220℃の温度で、約2ポンド/平方インチ絶対圧力のグリセロール分解反応器内で連続的に反応させられて、0.5重量パーセント未満の遊離脂肪酸と複数種のグリセリドとを含む排出ストリームが生成される。好ましくは、純化されたグリセリン生成物が、遊離脂肪酸の化学量論量の約35パーセント〜約400パーセントの範囲の割合で、グリセロール分解反応器に連続的に加えられる。水は、凝縮したグリセリンをグリセロール分解反応器に戻す分留塔を通じて、水排出ステップ(35)の蒸気として、グリセロール分解反応器から連続的に除去される。
【0096】
好ましくは、グリセロール分解ステップ(34)用の反応器は、直列で運転される少なくとも2つの連続攪拌槽型反応器を含み、それら連続攪拌槽型反応器の滞留時間は、遊離脂肪酸の濃度が約20重量パーセントの原料について、合わせて約400分以下である。
【0097】
水は、好ましくは、凝縮したグリセリンをグリセロール分解反応器に戻す分留塔又は蒸留塔を通る蒸気として除去される。
【0098】
グリセロール分解反応ステップ(26)の排出ストリームは、(42)のアルカリ触媒によるエステル交換反応に投入される。該反応は、アルコール計測ステップ(44)と、触媒計測ステップ(46)と、アルコキシド添加ステップ(48)と、グリセリドがエステル交換反応器内でエステル交換されるエステル交換ステップ(50)とを含むのが好ましい。
【0099】
エステル交換ステップ(50)では、グリセリド、アルコール及びアルカリ触媒がほぼ緊密に接触する条件下で、グリセリドが、有効量のアルコール及び有効量のアルカリ触媒と接触する。アルカリ触媒は、水酸化ナトリウムと水酸化カリウムからなる群から選択されるのが好ましい。
【0100】
エステル交換反応ステップ(42)は、約20℃〜約65℃の範囲の温度及び約14.5psiaの絶対圧力で実施されるのが好ましい。より好ましくは、エステル交換反応ステップ(42)は、約20℃〜約65℃の範囲の温度及び大気に近い絶対圧力で、エステル交換を実施することを含んでいる。好ましい実施例において、アルコール及びアルカリ触媒は、それらをエステル交換反応ステップ(42)に加える前に、所定の割合で混合される。
【0101】
好ましい実施例において、エステル交換反応ステップ(42)は、グリセロール分解排出ストリームに含まれる複数種のグリセリドを、エステル交換反応器内のアルコールと反応させることを含んでいる。エステル交換反応器において、複数種のグリセリドが、攪拌機によってアルコール及びアルカリ触媒と混合されて、アルコールと連続的に反応させられるのが好ましい。
【0102】
好ましくはアルコール、最も好ましくはメタノールが、触媒反応に必要とされるアルコールの化学量論量の約200パーセントに等しい割合で、エステル交換反応器に加えられる。アルカリ触媒は、グリセロール分解排出ストリーム中に存在するグリセリドの約0.5重量パーセント〜2.0重量パーセントの割合で、エステル交換反応器に加えられる。アルカリ触媒は、それらがエステル交換反応器に投入される前に、アルコールに溶解させられるのが好ましい。
【0103】
エステル交換反応器は、直列に運転される2以上の連続攪拌槽型反応器をさらに含み、それら連続攪拌槽型反応器の滞留時間は、合わせて約90分以下である。
【0104】
エステル交換反応器排出ストリームは、複数種の脂肪酸アルキルエステル及びグリセリンを含む。エステル交換反応ステップ(42)からのその排出ストリームは、第2の分離(52)に投入されるのが好ましい。そこで、軽い相(例えば比重0.79〜0.88)が、重い相(例えば比重0.90〜1.20)から分離される。(図3では(8)として示された)バイオディーゼル純化ステップ(操作)(58)において、過剰メタノール及び高沸点不純物は、軽い相の脂肪酸アルキルエステルから分離されて、アルコールは再使用のために回収されるのが好ましい。グリセリンから脂肪酸アルキルエステルを分離するステップは、第1の軽い液相と第2の重い液相との間の密度差を使用し、それらを分離するステップを含むのが好ましい。
【0105】
バイオディーゼル純化ステップ(56)において、成分の蒸気圧の差が利用されて、軽い相の脂肪酸アルキルエステルから過剰メタノール及び高沸点不純物が分離される。アルコールは再使用のために回収される。
【0106】
好ましい実施例では、第2の分離ステップ(52)は、相分離ステップ(54)において、連続浄化器内のエステル交換排出ストリームのグリセリンから脂肪酸アルキルエステルを分離することを含んでいる。連続浄化器において、複数の脂肪酸アルキルエステルが高密度である第1の軽い液相と、グリセリンが高密度である第2の重い液相は、約25℃〜約65℃の温度にて連続的に分離されて、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリーム及びグリセリンリッチなストリームが生成されるのが好ましい。
【0107】
また、分離ステップは、反応蒸留塔又は分留塔であって、そこで、脂肪酸アルキルエステルとグリセリンが分離されてもよい。反応塔に入るエステル交換排出ストリームは、脂肪酸アルキルエステルに加えて、グリセリンと、グリセリドと、未処理又は変換できない脂肪性原料とをある程度含有している。反応塔では、グリセリンの幾らかは、未反応の脂肪酸及び/又は脂肪酸アルキルエステルと反応し、グリセリドを形成する。
【0108】
好ましい実施例では、軽い相は、脂肪酸アルキルエステル純化ステップ(56)で分離される。ステップ(56)では、成分の蒸気圧の差異が、第1の液相の脂肪酸アルキルエステルから過剰アルコール及び高沸点不純物を分離するために使用される。アルコールは再使用のために回収される。
【0109】
好ましくは、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームを純化するステップ(58)は、蒸留塔を使用して、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームを、底部のフラクションと、主としてアルコールを含む頂部のフラクションと、脂肪酸アルキルエステル生成物を含むサイドストリームのフラクションとに分離するステップとをさらに含んでいる。蒸留塔によって生成された底部のフラクションは、不純物、不けん化物、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド及び遊離脂肪酸を含んでいるのが好ましい。蒸留塔によって生成された脂肪酸アルキルエステル生成物は、ASTM規格D6751に合致しているのが好ましい。好ましくは、蒸留塔によって生成された頂部のフラクションは、基本的にアルコールを含んでいるのが好ましい。
【0110】
好ましい実施例では、第2の分離ステップ(52)からの重い相は、触媒分離ステップ(62)で処理される。触媒分離ステップ(62)は、無機酸添加ステップ(64)と、アルカリ触媒を無機酸と反応させて、固体沈殿物を生成する触媒沈殿ステップ(66)と、アルカリ塩沈殿物が塩回収ステップ(71)で除去される前に、アルコール洗浄ステップ(68)がなされる触媒沈殿反応器排出濾過ステップ(70)と、沈殿物の無い濾液は2つの液相に分離され、脂肪酸及び脂肪酸アルキルエステルは頂部に浮遊し、グリセリン及び殆どのアルコールは底部に沈む濾液分離ステップ(72)と、グリセリンのpHを増加させるpH中和ステップ(74)と、遊離
脂肪酸再循環ステップ(76)とを含んでいる。
【0111】
精製していないグリセリンは、グリセリン純化ステップ(80)で処理されてよい。そこで、グリセリンは、成分の蒸気圧の差異によって純化される。好ましい実施例は、蒸留又は分留ステップ(84)を含んでいる。そこで、アルコール及び高沸点不純物は、グリセリンから分離される。グリセリン脱色ステップ(86)は、活性炭素の充てん層を使用し、蒸留されたグリセリンから色及び臭いを除去するステップを含んでいる。
【0112】
グリセリンリッチなストリームを純化し、それからアルコールを回収し、純化されたグリセリン生成物と、ウェットアルコールストリームとを生成する際に、グリセリンリッチなストリーム中のアルカリ触媒は、無機酸、例えばリン酸又は硫酸と反応して、肥料価値を有する不溶性塩が生成されるのが好ましい。不溶性塩は、固体分離操作においてグリセリンリッチなストリームから除去されて、その後、濾過及びアルコール洗浄される。
【0113】
グリセリンリッチなストリームのpHは、苛性アルカリ溶液を加えることで、約中性に調整され、その後さらに、約180℃〜約230℃の範囲の温度、約1ポンド/平方インチ絶対圧力以下の圧力で動作するグリセリン蒸留塔と、約40℃〜約200℃の範囲の温度で動作する活性炭素の充てん層を含む脱色塔とにおいて純化される。
【0114】
より好ましい実施例では、グリセリンリッチなストリームのpHは、酸の添加によって約6.5〜8.0に調整される。次に、弱有機酸のような有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸又はギ酸が、グリセリンリッチなストリームに投入される。グリセリンリッチなストリーム中に存在する塩は、可溶性のままである。故に、濾過及び洗浄ステップは、有機酸の使用によって不要になる。
【0115】
ウェットアルコールは、アルコール純化ステップ(88)で処理されるのが好ましく、水がウェットアルコールから除去される。水は、蒸気圧の差異又は吸収によって除去されるのが好ましい。好ましい実施例では、アルコールは、アルコール蒸留又は分留ステップ(90)における蒸留又は分留によって純化される。好ましい実施例では、ウェットアルコールストリームの純化ステップは、それから水を除去し、精製されたアルコール製品を生成するステップを含んでいる。ウェットアルコールストリームは、約60℃〜約110℃の範囲の温度、約14ポンド/平方インチ絶対圧力〜約20ポンド/平方インチ絶対圧力の範囲の圧力で動作するアルコール蒸留塔において純化されるのが好ましい。
【0116】
グリセリン再循環ステップ(92)において、グリセリンは、ステップ(28)に再循環されるのが好ましい。アルコール再循環ステップ(94)において、アルコールは、ステップ(44)に再循環されるのが好ましい。グリセリン再循環ステップ(92)は、純化されたグリセリン生成物の少なくとも一部を、原料中の遊離脂肪酸と反応させるために、グリセロール分解反応器に再循環することを含んでいる。好ましくは、アルコール再循環ステップは、複数種のグリセリドと反応させるために、純化されたアルコール生成物の少なくとも一部を、エステル交換反応器に再循環するステップを含んでいる。エステル交換反応に必要な追加のアルコールは、アルコキシド槽に供給される。バイオディーゼルは、バイオディーゼル輸送ステップ(96)にてその市場へ輸送され、グリセリンは、グリセリン輸送ステップ(98)にてその市場へ輸送される。
【0117】
図2を参照すると、高遊離脂肪酸原料をバイオディーゼルに変換するシステム(110)の好ましい実施例が示されている。バイオディーゼル生産システム(110)は、以下で説明するサブシステム及び反応器を含んでいるのが好ましく、そこで使用されるアルコールは、メタノールである。
【0118】
原料は、原料投入サブシステム(112)にてシステム(110)に投入される。好ましい実施例において、供給される原料は、含有量が0〜100パーセントである遊離脂肪酸と、モノグリセリド、ジグリセリド、及びトリグリセリド、水分、不純物及び不けん化物(MIU)を含む残部とからなる。
【0119】
投入された原料は、原料加熱・混合容器(16)を含む原料調整サブシステム(14)で、任意で調整されてもよい。そこでは、高遊離脂肪酸原料は、加熱及び混合されて、粘度が均一であり、均質で一様な混合物にされる。原料中の遊離脂肪酸の濃度は、インラインの測定装置(18)で定量化されてよい。濃度が連続して測定されて、下流プロセスのステップの連続的な制御が可能となる。
【0120】
供給された原料は、原料加熱・混合容器(16)で加熱されて、利用できる脂質の全てが液体であって、固体が懸濁していることが確実にされるのが好ましい。少なくとも35℃であって200℃以下の範囲の温度が適切であって、脂質を溶かし、粘度を低下させ、原料の徹底的な混合を可能とする。ジャケット付き撹拌槽が使用されて、上昇した温度で原料を撹拌し、維持する。
【0121】
その後、調整済み原料は、グリセロール分解反応サブシステム(26)に投入されてよい。サブシステム(26)は、グリセリン添加装置(28)と、インプットヒーター(input heater)(32)と、第1グリセロール分解反応器(134)と、第2グリセロール分解反応器(136)と、グリセロール分解排出冷却器(38)とを含んでいる。ステップ(24)の濾過された生成物は、グリセリンと混ぜ合わされて、グリセロール分解反応サブシステム(126)においてグリセロール分解を促進する条件に曝される。好ましい実施例では、これらの条件に、約150℃〜約250℃の間の反応温度と、約0.1ポンド/平方インチ絶対圧力(psia)〜約30psiaの間の圧力が含まれる。より好ましい条件は、約220℃の温度と約2psiaの圧力である。
【0122】
グリセリンは、グリース原料における遊離脂肪酸のモル量を超えて、濾過されたグリース原料に加えられる。この超過分は、過剰グリセリン10%〜300%の範囲(化学量論量で110パーセント〜400パーセント)である。この実施例において、要素(134)及び(136)として使用されるグリセロール分解反応器は、直列した2以上の連続攪拌槽型反応器として構成される。これらの容器において、グリセリンと(遊離脂肪酸を含有する)グリースの混合物は撹拌されて、2つの非混和流体の緊密な接触が保たれる。
【0123】
好ましい実施例では、攪拌機によって混合が行われる。これらの条件下で、遊離脂肪酸は、グリセリド(モノグリセリド、ジグリセリド又はトリグリセリド)に変換されると共に、水が生成される。水は蒸気として排出され、最初に原料に存在していた水蒸気排出口(35)内の水と併せて、システムから除去される。本発明のこの好ましい実施例における反応器排出ストリームの遊離脂肪酸含有量は、0.5パーセントw/w未満に常に維持できる。
【0124】
遊離脂肪酸の腐食性のために、グリセロール分解反応器は、有機酸に耐性がある物質で作られることが好ましい。
【0125】
グリセロール分解反応サブシステム(126)からの排出ストリームは、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドと、未処理の(residual)脂肪酸とを含む。グリセロール分解反応排出ストリームは、アルカリ触媒によるエステル交換サブシステム(142)に投入される。サブシステム(142)は、メタノール計測装置(144)と、水酸化カリウム計測装置(146)と、メトキシド添加装置(148)と、グリセリドがエステル交換される第1のエステル交換反応器(150)及び第2のエステル交換反応器(151)とを含んでいるのが好ましい。
【0126】
エステル交換反応サブシステム(142)において、グリセリドは、アルカリ触媒と、1〜5個の炭素を有する単純なアルコールとを用いてエステル交換される。好ましい実施例では、アルカリ触媒は水酸化カリウムで、アルコールはメタノールである。未処理の遊離脂肪酸は、鹸化されて、存在する遊離脂肪酸のモル数とほぼ等しいモル量のアルカリ触媒を消費する。
【0127】
エステル交換反応には、カリウムメトキシド(potassium methoxide)による触媒作用が施されるのが好ましい。それは、メタノールに水酸化カリウムを加えることで生じる。加えられる水酸化カリウムの量は、供給される溶液中に存在するグリセリドの0.5パーセント乃至2.0パーセントw/wに等しいのが好ましい。メタノールと触媒は混合されて、メトキシド添加装置(148)によって、グリセロール分解反応器から生じたグリセリド溶液に加えられる。
【0128】
グリセリドで利用可能な脂肪酸のモル数に基づいて、化学量論量が200パーセント過剰なメタノールが、反応混合物に加えられる。エステル交換反応器(150)及び(151)の各々に入る際に、その2相系は、激しく混合させられる。
【0129】
反応温度は、約25℃〜約65℃の間に保たれるのが好ましい。この温度では、相の混和性は制限されており、高変換率を実現するためには混合が必要とされる。要求される滞留時間は、供給物の(モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドの間での)グリセリド組成、温度、触媒濃度及び物質移動速度に依存している。
【0130】
したがって、攪拌強度が、滞留時間の選択において考慮されることが好ましい。典型的には、グリセリドからアルキルエステルへの99パーセントを超える(>)変換に必要な滞留時間は、20〜30分である。
【0131】
エステル交換反応器では、水酸化カリウム、メタノール及び脂肪酸エステルがあることで、腐食が起こり得る。好ましい実施例では、直列の少なくとも2以上の連続攪拌槽型反応器が使用される。好適な耐食性材料が、反応器のために選択されるのが好ましい。
【0132】
エステル交換サブシステム(142)の排出ストリームは、相分離槽(54)を含む相分離サブシステム(52)に投入されてよい。このシステム(52)において、軽い相(例えば比重0.79〜0.88)は、重い相(例えば比重0.90〜1.2)から分離される。相分離器の排出ストリームは、メタノール及びアルキルエステル(バイオディーゼル)から成る軽い相の脂肪酸アルキルエステルと、過剰アルコール及び幾つかの不純物のフラクションと、グリセリン、アルコール、FAAEs、石鹸、アルカリ触媒、僅かな水及び幾つかの不純物を含む重い相(未精製グリセリン)とからなる。
【0133】
相分離ユニット(54)は、一般的な液体/液体分離器であるのが好ましく、軽い相から重い相を分離できる。好適な相分離ユニットには、市販の装置、例えば連続浄化器(54)が含まれる。
【0134】
バイオディーゼル純化サブシステム(56)において、過剰メタノール及び高沸点不純物は、分留塔(58)の軽い相の脂肪酸メチルエステル、及び再使用のために回収されたメタノールから分離されるのが好ましい。脂肪酸メチルエステルリッチなストリームを純化するサブシステム(56)は、さらに、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームを、底部のフラクションと、主としてメタノールを含む頂部のフラクションと、脂肪酸アルキルエステル生成物を含むサイドストリームフラクションとに分離するための脂肪酸アルキルエステル蒸留塔(58)を含んでいるのが好ましい。
【0135】
蒸留塔(58)で生成される底部のフラクションは、不純物と、不けん化物と、モノグリセリドと、ジグリセリドと、トリグリセリドと、脂肪酸とを含んでいるのが好ましい。図2の蒸留塔(58)で生成される脂肪酸メチルエステル生成物は、ASTM規格D6751に合致しているのが好ましい。
【0136】
蒸留塔(58)で生成される頂部のフラクションは、基本的にメタノールを含んでいる。蒸留塔(58)は、約2ポンド/平方インチ絶対圧力以下の圧力下で、約180℃〜約280℃の範囲の温度で動作するのが好ましい。より好ましくは、蒸留塔(58)は、約0.1ポンド/平方インチ絶対圧力〜約2ポンド/平方インチ絶対圧力の範囲の圧力下で、約180℃〜約230℃の範囲の温度で運転される。蒸留塔(58)は、高性能に構造化された充填材を含んでいるのが好ましい。
【0137】
相分離槽(54)で分離された重い相は、無機酸(例えばリン酸)添加装置(64)と、触媒沈殿反応器(66)と、触媒沈殿反応器排出フィルタ(70)とを含む触媒分離サブシステム(62)で処理されるのが好ましい。そのサブシステム(62)では、フィルタと、濾液分離槽(72)と、pH中和槽と、遊離脂肪酸再循環装置(76)とからリン酸カリウム沈殿物(171)が除去される前に、メタノール(68)を用いた洗浄が行われる。
【0138】
触媒分離サブシステム(62)では、未精製のグリセリン相は、触媒沈殿反応器へポンプで送り込まれる。触媒沈殿反応器にて、無機酸(64)が加えられる。加えられる酸の量は、エステル交換反応で使用されるアルカリ触媒のモル量と等しいモル量であるのが好ましい。反応の産物は、固体として分離できる不溶性塩である。不溶性塩の生成に加えて、酸は、エステル交換サブシステム(142)で生じた石鹸を遊離脂肪酸に変換する。
【0139】
好ましい実施例では、水酸化カリウムが、エステル交換触媒として使用される。沈殿反応は、リン酸を使用しており、リン酸2水素カリウムを生成する。この塩は、このシステムでは溶解されず、簡単な濾過によって除去される。リン酸カリウム塩が触媒反応器排出ィルタ(70)で濾過される際に、メタノール(68)が使用されて、グリセリンと、沈殿物からのその他のプロセス薬品とが洗浄される。
【0140】
触媒沈殿反応器排出フィルタ(70)からの排出ストリームは、もう1つの相分離操作へ送られる。そこでは、2つの液相が形成され、濾液分離槽(72)にて、これら相の相対的な比重に基づいて分離される。グリセリン、水、不純物、及びメタノールの大半は、底部の相、即ち重い相に集まる一方で、脂肪酸アルキルエステル、幾つかのアルコール及び脂肪酸は、頂部の相、即ち軽い相に集まる。軽い相は、先の相分離サブシステム(サブシステム(52))からの軽い相と組み合わされて、分留塔(58)に送られる。重い相は、反応工程に送られる。そこで、残っているあらゆる酸は、少量のアルカリ(caustic)の添加によって、pH中和反応器(74)内で中和される。好ましい実施例では、これは、連続攪拌槽型反応器で実行される。
【0141】
pH中和反応器(74)に続いて、未精製のグリセリン相は、グリセリン精製サブシステム(80)に送られる。そこで、メタノールと水は分離され、さらなる純化のために回収される。また、グリセリンは、高沸点不純物から分離される。好ましい実施例では、グリセリン分離は、グリセリンのサイドドロー(side draw)を伴ったグリセリン蒸留塔又は分留塔(84)で実行される。蒸留されたグリセリンは、さらに、グリセリン脱色塔(86)で処理されてよい。そこでは、活性炭素が使用されて、蒸留されたグリセリンから色及び臭いが除去される。
【0142】
蒸留塔から回収されたメタノールは、微量の水を含み、それ故に、「ウエット(wet)」メタノールストリームと見なされる。それは、メタノール純化サブシステム(88)のプロセスでの再使用の前に純化される必要がある。この「ウエット」メタノールストリームは、ポンプで在庫保存槽に戻される前に、メタノール純化塔(90)にて蒸留されて、回収及び純化される。
【0143】
蒸留されたグリセリンストリームは、次に、活性炭素層(86)を通じて脱色及び脱臭される。その供給物は、底部から塔に入って、活性炭素層を通って上方に流れることが可能であって、その結果、95パーセントを超える純度の無色、無触媒及び無塩のグリセリンが生じる。
【0144】
グリセリン再循環ポンプ(92)が使用されて、グリセリンがグリセリン添加装置(28)に再循環されてよい。メタノール再循環装置(94)が使用されて、メタノールがメタノール計測装置(144)に再循環されるのが好ましい。
【0145】
バイオディーゼルは、その後、バイオディーゼル輸送車(96)でその市場へ輸送される。グリセリンは、グリセリン輸送車(98)でその市場へ輸送される。
【0146】
本発明のプロセスは、バイオディーゼルの生産の収率を増大する改良をさらに含んでもよい。図7は、副生成物ストリーム(358)をさらに処理することによって、バイオディーゼルの生産の収率を増大させるオプションを例示しており、それは、副生成物ストリーム(358)中の脂肪酸アルキルエステル、グリセリド及び遊離脂肪酸の相対濃度に大きく依存している。例示の如く、副生成物ストリーム(358)の一部は、バイオディーゼル精製ステップ(8)で処理されてよい。図7に示すように、副生成物燃料ストリーム(351)の脂肪酸アルキルエステルリッチなストリーム(351A)は、脂肪酸アルキルエステルをさらに回収するために、バイオディーゼル精製ステップ(8)に向けられる。ストリーム(358)は、グリセリドの大部分を含む場合、エステル交換反応器(4)又はエステル化反応器(2)にさらに投入されてよい。例示の如く、副生成物ストリーム(358)のフラクションは、ストリーム(351C)としてエステル交換反応器(4)に投入される。また、ストリーム(351D)は、遊離脂肪酸含有量が高い場合、エステル交換反応器(2)に投入されることが好ましい。
【0147】
図8において、副生成物ストリーム(358)の一部は、ストリーム(351)として示されている。それは、まず、好ましくは非蒸発性分離器(370)にて、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリーム(371)、及び/又はグリセリドに富んだストリーム(376)、及び/又は遊離脂肪酸に富んだストリーム(374)に分離される。遊離脂肪酸含有量が低いフラクションは、次に、ストリーム(376)としてエステル交換反応器(4)に投入されてよく、遊離脂肪酸含有量が高いストリーム(374)は、エステル化反応器(2)に投入されてよい。使用可能であり、好適な非蒸発性分離技術は、凍結結晶化、水蒸気蒸留又は液液分離である。
【0148】
バイオディーゼルの収率の増加が、さらに、バイオディーゼル精製ステップ(8)における第2の蒸留反応器又は非蒸発性分離器の使用によって起こってもよい。図9に示すように、脂肪酸リッチなストリーム、例えば第1の相分離(320)におけるエステル交換排出ストリームから分離された富化された(enriched)ストリーム(323)が、熱交換器(405)に投入されて、ポンプ(406)を介してフラッシュドラム(flash drum)(410)に投入される。フラッシュドラム(410)の典型的な運転温度は、約60℃〜約205℃、より典型的には約140℃であり、典型的な運転圧力は、約1ポンド/平方インチ絶対圧力〜約15ポンド/平方インチ絶対圧力、より典型的には約5ポンド/平方インチ絶対圧力である。蒸気(412)は除去されて、液体ストリーム(411)は、次に、ポンプ(415)を介して蒸留塔(420)に送り込まれる。好ましい実施例では、上述の如く、蒸留塔(420)は反応蒸留塔である。頂部のフラクション(422)は、熱交換器(440)に入り、主として過剰アルコールとして、蒸気の状態でストリーム(442)としてシステムから流出する。熱交換器(440)から流出する凝縮物(441A)はシステムを出て、液体ストリーム(441B)は、蒸留塔に再度流入する。蒸留塔(420)の底部のフラクション(421)は、主として脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームであって、次に、リボイラ(430)に投入されてよい。そこで、そのストリームは、蒸留塔(420)の蒸気ストリーム(432)としてさらに分離され、又は、バイオディーゼルストリーム(431A)として流出する。バイオディーゼルストリーム(431A)は、主として脂肪酸アルキルエステルと、グリセリドと、微量のグリセリンと、酸性のアップストリームに応じて、幾つかの脂肪酸とからなる。このストリームは、さらに、貯蔵槽(440)を通った後、蒸留塔(450)において第2の蒸留を施されて、純化されたバイオディーゼルストリーム(350C)と副生成物(燃料)ストリーム(350A)とを生じてよい。好ましい実施例では、蒸留塔(450)は、当該分野で知られている1以上の撹拌膜式蒸発器か流下膜式蒸発器の何れかである。第2の蒸留塔(450)内の温度は、蒸留塔(420)内の温度とほぼ同じである。別の実施例では、図10に示すように、副生成物(燃料)ストリーム(350A)は、貯蔵槽(440)を通って蒸留塔(450)に再投入されてよい。
【0149】
第2の蒸留工程は、1以上の蒸留塔で起こってよい。例えば、1つの撹拌膜式蒸発器又は流下膜式蒸発器が使用されてよい。さらに、並列又は直列の複数の撹拌膜式蒸発器又は流下膜式蒸発器が使用されてもよい。撹拌膜式蒸発器及び流下膜式蒸発器内のバイオディーゼルストリームの滞留時間は、概ね短い。
【0150】
撹拌膜式蒸発器は、内部の回転ディストリビュータプレート(distributor plate)を含んでおり、それらは、蒸発器の加熱された板の上部から、加熱された円筒シェルの内面までバイオディーゼルを均一に分散させる役割を果たす。ワイパーブレードは、バイオディーゼルを分散し、攪拌する。また、ワイパーブレードは、脂肪酸アルキルエステルが急速に蒸発して、通常は蒸発器の中央にある冷却面で凝縮する際に、バイオディーゼルを迅速に、加熱されたシェルに沿って下方へ移動させる。この特定の構成では、純化されたバイオディーゼルストリームは、その後、蒸発器の外周の底部から流出する。
【0151】
流下膜式蒸発器は、ストリームで満たされた外側シェル又はその他の加熱媒体と、バイオディーゼルが流れる垂直で平行な管とを含む。バイオディーゼルのフローは、バイオディーゼルが内管壁に沿って薄膜を形成するように制御され、バイオディーゼルが液体から選択的に蒸発する間、下方へ進む。残余の流体は、グリセリド、脂肪酸及び脂肪酸アルキルエステルの混合物からなっており、残余の流体とバイオディーゼル蒸気の間の分離が、管内で起こる。バイオディーゼル蒸気は、冷却されたコンデンサ内で液化され、回収される。
【0152】
蒸留塔(420)において見られるように、これらの第2の蒸留塔(450)は、約250トール(torr)絶対圧力以下の圧力、約150℃〜約320℃の範囲の温度で操作される。より好ましくは、蒸留塔(450)は、約0.1トール絶対圧力〜約2トール絶対圧力の範囲の圧力、約180℃〜約230℃の範囲の温度で操作される。
【0153】
図11は、本発明のさらなる実施例を示しており、そこでは、副生成物(燃料)ストリーム(350A)は分離器(370)に投入される。分離器(370)は、非蒸発性分離器であるのが好ましい。脂肪酸アルキルエステルに富んだストリーム(371)は、分離器(370)において、グリセリド及び/又は遊離脂肪酸に富んだストリーム(372)から分離されてよい。その後、脂肪酸アルキルエステルに富んだストリーム(371)は、精製されたバイオディーゼルにさら分離するために、貯蔵槽(440)を介して第2の蒸留塔(450)に再投入されてよい。グリセリド及び/又は遊離脂肪酸に富んだストリーム(372)は、エステル交換反応器(4)及びエステル化反応器(2)に再投入されてよい。
【0154】
図12は、別の実施例を示しており、そこでは、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリーム(371)は、分岐されて、ストリーム(371A)として、純化されたバイオディーゼルストリーム(350C)と共に投入されてよい。さらに、ストリーム(371)の一部は、第2の蒸留塔(450)に再投入されてよい。加えて、図12は、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームと、グリセリド及び/又は遊離脂肪酸リッチなストリーム(372)とに分離するために、バイオディーゼルストリーム(431A)の一部又は全てを、(452)として、第1の蒸留塔(420)から分離器(370)に投入するオプションを示している。グリセリド及び/又は遊離脂肪酸リッチなストリーム(372)は、その後、エステル交換反応器(4)及び/又はエステル化反応
器(2)に再投入されてよい。
【0155】
上記の説明に関して、本発明の部分についての最適な寸法関係は、サイズ、材料、形状、形態、動作の機能、動作の方法、アセンブリ、及び使用法の変更を含めて、当該分野の専門家には、容易に理解できて、明らかであると見なされること、さらに、図面に例示し、明細書で説明した構成と均等な関係である全てのものは、本発明に含まれることが意図されていることは当然のことである。
【0156】
従って、上記の説明は、本発明の原理のみの説明と考えられる。さらに、多くの変形及び変更は、当該分野の専門家であれば容易に考えられるものであって、図示及び説明した詳細な構造及び動作に本発明を限定するものではなく、したがって、好適な変形及び均等物の全てが発明の範囲に含まれる。
【0157】
<具体例>
第1具体例
濃度が20重量パーセントである遊離脂肪酸と、2パーセントの水分、不純物及び不けん化物(MIU)とを含んでおり、採取された(rendered)黄色グリースが、毎分100ポンド(lbs/分)で連続攪拌槽型グリセロール分解反応器に供給された。グリースは、グリセロール分解反応器に供給される際に、間欠的に濾過及び滴定された。グリセリンは、13lbs/分のレートで加えられた。グリース及びグリセリン混合物の温度は、第1のグリセロール分解の連続攪拌槽型反応器に供給される際に、210℃まで上げられた。反応器において、圧力は2psiaまで下げられて、温度は210℃に維持された。非混和液体の接触を維持するために、容器には、強力な攪拌機が装着された。反応によって生成された水蒸気は、反応器のヘッドスペースの排出口から除去された。グリセロール分解反応器の各々における滞留時間は、2.5時間であった。第1容器における脂肪酸からグリセリドへの変換は、85パーセントであった。第2反応器を出る脂肪酸の濃度は、0.5パーセントw/wに維持された。
【0158】
グリセロール反応器からの生成物は、50℃に冷却され、連続的にエステル交換反応器に供給された。そこで、水酸化カリウムのメタノール溶液が加えられた。水酸化カリウムは、1.1lbs/分のレートで加えられて、22lbs/分のメタノールと混合された。エステル交換は、直列の2つの連続攪拌槽型反応器内で行われ、各反応器の滞留時間は2時間であった。
【0159】
エステル交換された生成物は、その後、相分離槽に供給された。そこでは、脂肪酸メチルエステルの大部分と、少量の未反応グリセリンと、少濃度の未反応メタノールとが、頂部に浮かんだ。グリセリンと、未反応メタノールの大部分と、幾らかの脂肪酸メチルエステルと、水酸化カリウムと、石鹸とは、底部に沈んだ。
【0160】
底部の相、即ち重い相は、酸性化反応器へ送られた。そこで、エステル交換工程で加えた水酸化カリウム触媒は、1.96lbs/分のリン酸と反応させられた。石鹸は遊離脂肪酸に変換されて、水酸化カリウムは、中性化された。この酸性化の生成物は、このシステムでは溶けないリン酸2水素カリウムであった。
【0161】
リン酸2水素カリウム沈殿物は、濾過で取り除かれて、濾液は、第2の相分離槽に供給された。そこで、濾液にある脂肪酸メチルエステル及び遊離脂肪酸は、頂部に浮遊し、グリセリン及びメタノールは底部に沈んだ。頂部の相、即ち軽い相は、第1の相分離槽からの軽い相と混合されて、脂肪酸メチルエステル分留塔に供給された。重い相のpHは、水酸化カリウムで調整されて、7.5に戻され、グリセリン分留塔に供給された。
【0162】
グリセリン分留塔は、10lbs/分のメタノールと、18lbs/分のグリセリンとを回収した。生成されたグリセリンは、塩及びメタノールの濃度が検出不能であって、純度が95パーセントを超えていた。このグリセリンストリームは、2つのストリームに分けられた。13lbs/分のストリームは、グリセロール分解反応用に、グリセリン供給槽に戻して再循環された。5lbs/分のストリームは、脱色塔を介してポンプで送り出されて、市場用に集めされた。
【0163】
2つの軽い相のストリームは、脂肪酸メチルエステル分留塔に供給された。そこで、2lbs/分のメタノールが回収され、ASTMD6751−02(留出燃料に関するバイオディーゼル燃料(B100)ブレンドストックの標準規格)に合致する92lbs/分の脂肪酸メチルエステルが生成された。
【0164】
第2具体例
高級で漂白可能で食用ではない獣脂(fancy bleachable inedible tallow)は、遊離脂肪酸の濃度が4重量パーセントであり、MIU(水分、不純物及び不けん化物)が0.5パーセントであって、100lbs/分で連続攪拌槽型反応器に供給された。そのグリースは、グリセロール分解反応器に供給される際に、連続的に濾過及び滴定された。グリセリンは、2.6lbs/分のレートで添加された。グリース及びグリセリン混合物の温度は、その混合物が、第1のグリセロール分解反応器に供給される際に、210℃まで上げられた。該反応器において、圧力は2psiaまで下げられて、温度は維持された。その容器には、非混和液体を接触状態に維持する攪拌機が装着された。反応によって生成された水蒸気は、反応器のヘッドスペースの排気口から除去された。各グリセロール分解反応器の滞留時間は、2.5時間であった。第1容器における脂肪酸からグリセリドへの変換は、92パーセントであった。第2反応器を出る脂肪酸濃度は、0.5重量パーセントに維持された。
【0165】
グリセロール分解反応器からの生成物は、50℃に冷却されて、エステル交換反応器に供給された。そこで、水酸化カリウムのメタノール溶液が加えられた。水酸化カリウムは、1.0lbs/分のレートで添加され、22lbs/分のメタノールと混合された。エステル交換は、直列の2つの連続攪拌槽型反応器内で行われて、各反応器の滞留時間は2時間であった。
【0166】
エステル交換された生成物は、その後相分離槽に供給された。そこでは、脂肪酸メチルエステルの大部分と少濃度の未反応メタノールとが、頂部に浮かんだ。グリセリンと、未反応メタノールの大部分と、幾らかの脂肪酸メチルエステルと、水酸化カリウムと、石鹸とが、底部に沈んだ。
【0167】
底部の相、即ち重い相は、酸性化反応器へ送られた。そこで、エステル交換工程で加えられた水酸化カリウム触媒は、1.79lbs/分のリン酸と反応させられた。石鹸は、遊離脂肪酸に戻されて、水酸化カリウムは中性化された。この酸性化の生成物は、このシステムでは溶けないリン酸2水素カリウムであった。
【0168】
リン酸2水素カリウム沈殿物は濾過により取り除かれて、濾液は、第2の相分離槽に供給された。そこで、脂肪酸メチルエステル及び遊離脂肪酸は、頂部に浮かび、グリセリン及びメタノールは底部に沈んだ。頂部の相、即ち軽い相は、第1の相分離槽からの軽い相と混合されて、脂肪酸メチルエステル分留塔に供給された。重い相のpHは、0.1lbs/分の水酸化カリウムで調整して7.8に戻され、グリセリン分留塔に供給された。
【0169】
グリセリン分留塔は、10lbs/分のメタノールと、10.2lbs/分のグリセリンとを回収した。生成されたグリセリンは、塩及びメタノールの濃度が検出不能であって、純度が95パーセントを超えていた。このグリセリンストリームは、2つのストリームに分けられた。2.6lbs/分のストリームは、グリセロール分解反応用に、グリセリン供給槽に戻して再循環され、7.6lbs/分のストリームは、市場用に集められた。
【0170】
2つの軽い相のストリームは、脂肪酸メチルエステル分留塔に供給された。そこで、2.1lbs/分のメタノールが回収され、ASTMD6751−02(留出燃料に関するバイオディーゼル燃料(B100)ブレンドストックの標準規格)に合致している93lbs/分の脂肪酸メチルエステルが生成された。
【0171】
第3具体例
脱ガムされた食品用大豆油(degummed, food-grade soybean oil)は、遊離脂肪酸の濃度が0.5重量パーセントであって、0.5パーセントのMIU(水分、不純物及び不けん化物)を含んでおり、100lbs/分で調整チャンバーに供給された。そのグリースは、原料調整器から移される際に、連続的に濾過及び滴定された。遊離脂肪酸の濃度が低いので、プロセスのグリセロール分解セクションは、この原料を使用する際には回避された。
【0172】
エステル交換反応器に入る脂肪酸濃度は、0.5重量パーセントであった。水酸化カリウムが、1.0lbs/分のレートで加えられて、22lbs/分のメタノールと混合された。エステル交換は、直列の2つの連続攪拌槽型反応器内で行われて、各反応器の滞留時間は2時間であった。
【0173】
エステル交換された生成物は、その後、相分離槽に供給された。そこでは、脂肪酸メチルエステルの大部分と、少濃度の未反応メタノールとが、頂部に浮かんだ。グリセリンと、未反応メタノールの大部分と、幾らかの脂肪酸メチルエステルと、水酸化カリウムと、石鹸は、底部に沈んだ。
【0174】
底部の相、即ち重い相は、酸性化反応器に送られた。そこで、エステル交換工程で加えられた水酸化カリウム触媒は、1.76lbs/分のリン酸と反応させられた。その溶液のpHは低減されて、この酸性化の生成物は、このシステムでは溶けないリン酸2水素カリウムであった。
【0175】
沈殿物は、2.2lbs/分で濾過により取り除かれて、濾液は、相分離槽に供給された。そこで、脂肪酸メチルエステル及び遊離脂肪酸は頂部に浮かび、グリセリン及びメタノールは底部に沈んだ。頂部の相又は軽い相は、第1の相分離槽からの軽い相と混合され、脂肪酸メチルエステル分留塔に供給された。重い相は、別の槽に送されて、そのpHは、0.1lbs/分の水酸化カリウムで7.4に調整された。グリセリンは、分留塔に供給された。そして、グリセリン/メタノール混合物は、グリセリン分留塔に供給された。
【0176】
グリセリン分留塔は、10lbs/分のメタノールと、8.5lbs/分のグリセリンとを回収した。生成されたグリセリンは、塩及びメタノールの濃度が検出不能であって、純度が95パーセントを超えていた。グリセリンは、市場用に集められた。
【0177】
2つの軽い相のストリームは、脂肪酸メチルエステル分留塔に供給された。そこで、2.1lbs/分のメタノールが回収され、ASTMD6751−02(留出燃料に関するバイオディーゼル燃料(B100)ブレンドストックの標準規格)に合致している93lbs/分の脂肪酸メチルエステルが生成された。
【0178】
第4具体例
採取されたトラップ油脂は、遊離脂肪酸の濃度が68重量パーセントであって、5パーセントのMIU(水分、不純物及び不けん化物)を含有しており、100lbs/分で本発明のシステムに供給された。グリースは、グリセロール分解反応器に供給される際に、連続的に濾過及び滴定された。グリセリンは、44lbs/分のレートで添加された。グリース及びグリセリン混合物の温度は、その混合物が、第1のグリセロール分解連続攪拌槽型反応器に供給される際に、210℃まで上げられた。該反応器において、圧力は2psiaまで下げられて、温度は維持された。反応によって生成された水蒸気は、反応器のヘッドスペースの排気口から除去された。各グリセロール分解反応器の滞留時間は、3.5時間であった。第1容器における脂肪酸からグリセリドへの変換は、87パーセントであった。第2反応器を出る脂肪酸濃度は、0.5重量パーセントに維持された。
【0179】
グリセロール反応器からの生成物は、50℃に冷却され、連続的にエステル交換反応器に供給された。そこで、水酸化カリウムのメタノール溶液が加えられた。水酸化カリウムは、1.4lbs/分のレートで加えられて、21lbs/分のメタノールと混合された。エステル交換は、直列の2つの連続攪拌槽型反応器内で行われ、各反応器の滞留時間は2時間であった。
【0180】
エステル交換された生成物は、その後、相分離槽に供給された。そこでは、脂肪酸メチルエステルの大部分と10パーセントの未反応メタノールとが、頂部に浮かび、グリセリンと、未反応メタノールの大部分と、幾らかの脂肪酸メチルエステルと、水酸化カリウムと、石鹸とが、底部に沈んだ。
【0181】
底部の相、即ち重い相は、酸性化反応器へ送られた。そこで、エステル交換ステップで加えられた水酸化カリウム触媒は、2.45lbs/分のリン酸と反応させられた。石鹸は遊離脂肪酸に戻されて、水酸化カリウムは、中性化された。この酸性化の生成物は、このシステムでは溶けないリン酸2水素カリウムであった。
【0182】
リン酸2水素カリウム沈殿物は、3.1lbs/分で濾過で取り除かれて、濾液は、第2の相分離槽に供給された。そこで、脂肪酸メチルエステル及び遊離脂肪酸は、頂部に浮かび、グリセリン及びメタノールは、底部に沈んだ。頂部の相、即ち軽い相は、第1の相分離槽からの軽い相と混合され、脂肪酸メチルエステル分留塔に供給された。重い相のpHは、0.14lbs/分の水酸化カリウムで調整して7.3に戻され、重い相は、グリセリン分留塔に供給された。
【0183】
グリセリン分留塔は、10lbs/分のメタノールと、40lbs/分のグリセリンとを回収した。生成されたグリセリンは、塩及びメタノールの濃度が検出不能であって、純度が95パーセントを超えていた。このグリセリンストリームは、グリセロール分解反応のためにグリセリン供給槽に戻して再循環された。4lbs/分の未使用のグリセリンが、グリセリン供給槽にさらに加えられて、グリセロール分解反応に十分なグリセリンが供給された。
【0184】
2つの軽い相のストリームは、脂肪酸メチルエステル分留塔に供給された。そこで、2.1lbs/分のメタノールが回収され、ASTMD6751−02(留出燃料に関するバイオディーゼル燃料(B100)ブレンドストックの標準規格)に合致している91lbs/分の脂肪酸メチルエステル脂肪酸メチルエステルが生成された。
【0185】
第5具体例
採取されたブラウングリース(brown grease)は、遊離脂肪酸の濃度が37重量パーセントであって、5パーセントのMIU(水分、不純物及び不けん化物)を含んでおり、100lbs/分で本発明のシステムに供給された。グリースは、グリセロール分解反応器に供給される際に、連続的に濾過及び滴定された。グリセリンは、24lbs/分のレートで加えられた。グリース及びグリセリン混合物の温度は、その混合物が、第1のグリセロール分解連続攪拌槽型反応器に供給される際に、210℃まで上げられた。該反応器において、圧力は2psiaまで下げられて、温度は維持された。容器には、非混和液体の接触を維持するために、攪拌機が装着された。反応によって生成された水蒸気は、反応器のヘッドスペースの排気口から除去された。各グリセロール分解反応器の滞留時間は、3.0時間であった。第1容器における脂肪酸からグリセリドへの変換は、90パーセントであった。第2反応器を出る脂肪酸濃度は、0.5重量パーセントに維持された。
【0186】
グリセロール反応器からの生成物は、50℃に冷却され、エステル交換反応器に供給された。そこで、水酸化カリウムのメタノール溶液が加えられた。水酸化カリウムは、1.2lbs/分のレートで加えられて、21lbs/分のメタノールと混合させられた。エステル交換は、直列の2つの連続攪拌槽型反応器内で行われて、各反応器の滞留時間は2時間であった。
【0187】
エステル交換された生成物は、その後、相分離槽に供給された。そこでは、脂肪酸メチルエステルの大部分と、10パーセントの未反応メタノールとが、頂部に浮かんだ。グリセリンと、未反応メタノールの大部分と、幾らかの脂肪酸メチルエステルと、水酸化カリウムと、石鹸とが、底部に沈んだ。
【0188】
底部の相、即ち重い相は、酸性化反応器へ送られた。そこで、エステル交換ステップで加えられた水酸化カリウム触媒が、2.13lbs/分のリン酸と反応させられた。石鹸は遊離脂肪酸に戻されて、水酸化カリウムは、中性化された。この酸性化の生成物は、このシステムでは溶けないリン酸2水素カリウムであった。
【0189】
リン酸2水素カリウム沈殿物は、2.7lbs/分で濾過で取り除かれて、濾液は、第2の相分離槽に供給された。そこで、脂肪酸メチルエステル及び遊離脂肪酸は、頂部に浮かび、グリセリン及びメタノールは、底部に沈んだ。頂部の相、即ち軽い相は、第1の相分離槽からの軽い相と混合され、脂肪酸メチルエステル分留塔に供給された。重い相のpHは、0.12lbs/分の水酸化カリウムで7.5に調整されて、グリセリン分留塔に供給された。
【0190】
グリセリン分留塔は、10lbs/分のメタノールと、25.2lbs/分のグリセリンを回収した。生成されたグリセリンは、塩及びメタノールの濃度が検出不能であって、純度が95パーセントを超えていた。このグリセリンストリームは、2つのストリームに分けられた。24lbs/分のストリームは、グリセロール分解反応用に、グリセリン供給槽に戻して再循環されて、1.2lbs/分のストリームは、市場用に集められた。
【0191】
2つの軽い相のストリームは、脂肪酸メチルエステル分留塔に供給された。そこで、2.0lbs/分のメタノールが回収され、ASTMD6751−02(留出燃料に関するバイオディーゼル燃料(B100)ブレンドストックの標準規格)に合致している89.8lbs/分の脂肪酸メチルエステルが生成された。
【0192】
第6具体例
約40.9ポンド/時の流量の原料は、0.3重量パーセントの遊離脂肪酸と、99.3重量パーセントのグリセリドとを含んでおり(残分は、水、不溶性固体及び不けん化固体である)、50℃に加熱されて、水酸化カリウム(重量ベースで、原料ストリームの1パーセント)のメタノール溶液に加えられた(メタノールとグリセリド中の結合脂肪酸の化学量論的比率は2:1)。エステル交換は、単一の連続攪拌槽型反応器内で行われ、滞留時間は10時間であった。
【0193】
エステル交換排出ストリームの流量は、およそ50.3ポンド/時であって、約79重量パーセントの脂肪酸メチルエステルと、8重量パーセントのグリセリンと、9重量パーセントのメタノールと、1.6重量パーセントのグリセリドと、残分とからなり、残分は、水、不溶性固体、不けん化固体、及び石鹸であった。
【0194】
このストリームは、貫流式分離器(flow-through separator)で、軽い相のストリームと重い相のストリームとに分離された。軽い相のストリームの流量は、41.5ポンド/時であり、それは、約94.26重量パーセントの脂肪酸メチルエステルと、5.6重量パーセントのメタノールと、0.09重量パーセントのグリセリドと、0.05重量パーセントの遊離グリセリンとからなる組成を有していた。
【0195】
この具体例におけるこのサンプル及びその他のサンプル中の遊離グリセリン濃度は、ミズーリ州セントルイスのシグマアルドリッチ(Sigma-Aldrich)社によって提供された、製品コードがBQP−02であるキット中の酵素測定溶液を使用して決定された。このキットでは、遊離グリセリンは、結合酵素反応(coupled, enzymatic reactions)によって測定された。その反応は、最終的に、最大540nmの吸光度を示すキノンイミン(quinoneimine)色素を生成した。吸光度ピークは、ボシュロム社のスペクトロニック(Spectronic)20分光光度計を使用して測定された。
【0196】
軽い相のストリームは、グリセリンについて分析され、重量で約490ppmのグリセリンを含むことが分かった。軽い相のストリームは、250℃、圧力150mmHgに維持された反応蒸留塔に投入された。その蒸留塔からの頂部の蒸気ストリームは凝縮され、流量が約2.1ポンド/時であって、主としてメタノールからなり、135ppmのグリセリンを含む液体ストリームが生成された。底部の液体ストリームの流量は、約39.3ポンド/時であって、そのストリームは、約98.5重量パーセントの脂肪酸メチルエステルと、1.5重量パーセントのグリセリドと、僅か3ppmのグリセリンとからなっていた。この段落で言及した反応蒸留は、図6に模式的に示されている。
【0197】
頂部及び底部のストリーム内の遊離グリセリンに対する塔への供給物中の遊離グリセリンに関するこれらの分析を用いて計算された重量分析流量(gravimetric flow rate)は、グリセリンの約98%は、ただ単に頂部又は底部の何れかのストリームに流れ込むのではなく、蒸留塔内にてその他の部分(moieteties)と反応することを示した。
【0198】
この底部の液体ストリームは、さらに精製されて、ASTMD6751−06S15(留出燃料に関するバイオディーゼル燃料(B100)ブレンドストックの標準規格)に合致する脂肪酸メチルエステルが生成された。
【0199】
以上から、本発明の新規な概念の真の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの変更及び変形が行われることが認められるであろう。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
グリセリドからバイオディーゼルを生産するプロセスであって、
(A)少なくとも1種のアルコールとグリセリドを反応させて、脂肪酸エステル及びグリセリンのエステル交換排出ストリームを生成するステップと、
(B)エステル交換排出ストリームを、脂肪酸エステルリッチなストリームとグリセリンリッチなストリームとに分離するステップと、
(C)(i)エステル交換排出ストリーム、(ii)脂肪酸エステルリッチなストリーム、及び(iii)グリセリンリッチなストリームの中の少なくとも1つに有機酸を投入するステップと、
(D)それらからバイオディーゼルを回収するステップと、
を含むプロセス。
【請求項2】
ステップ(A)のグリセリドは、遊離脂肪酸を含む原料をグリセリンと反応させて得られる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
ステップ(A)のグリセリドは、アルカリ触媒がある状態下で、少なくとも1種のアルコールと反応させられる、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
アルカリ触媒は、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムからなる群から選択される、請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
グリセリドからバイオディーゼルを生産するプロセスであって、
(A)少なくとも1種のアルコールとグリセリドを反応させて、脂肪酸アルキルエステルとグリセリンを生成するステップと、
(B)脂肪酸アルキルエステルを純化するステップと、
(C)それからバイオディーゼルを生成するステップと、
を含んでおり、以下の(i)乃至(iii)の少なくとも1つの条件:
(i)ステップ(B)において、脂肪酸アルキルエステルは、約3ポンド/平方インチ絶対圧力以下の圧力で、及び/又は約180℃〜約290℃の範囲の温度で運転される塔での蒸留又は分留で純化されること、
(ii)ステップ(B)における脂肪酸アルキルエステルの蒸発による純化の前に、脂肪酸アルキルエステル及びグリセリンは、脂肪酸アルキルエステルを含む第1液相と、グリセリンを含む第2液相とに分離されること、
(iii)ステップ(A)における脂肪酸アルキルエステル及びグリセリンは、エステル交換反応器内で少なくとも1種のアルコールとグリセリンを反応させて生成され、少なくとも1種のアルコールは、エステル交換に必要とされるアルコールの化学量論量より大きい割合で、エステル交換反応器に加えられること、
が使われているプロセス。
【請求項6】
ウェットアルコールストリームが、脂肪酸アルキルエステルの純化中に回収される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
純化されたバイオディーゼルをグリセリドから生産するプロセスであって、
(A)エステル交換反応器内で少なくとも1種のアルコールとグリセリドを反応させて、脂肪酸アルキルエステルストリームを生成するステップと、
(B)第1の蒸留又は非蒸発性分離によって、脂肪酸アルキルエステルストリームから第1のバイオディーゼルストリームを分離するステップと、
(C)第1のバイオディーゼルストリームの少なくとも一部に、第2の蒸留又は非蒸発性分離を施して、純化された第2のバイオディーゼルストリームと副生成物燃料ストリームとが生じるステップと、
(D)ステップ(C)で分離された副生成物燃料ストリームの少なくとも一部を、第2の蒸留又は非蒸発性分離に再投入するステップと、
を含むプロセス。
【請求項8】
純化された第2のバイオディーゼルストリームと副生成物燃料ストリームとは、少なくとも1つの撹拌膜式蒸発器又は流下膜式蒸発器において、第1のバイオディーゼルストリームから分離される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
第1のバイオディーゼルストリームの第2部分から、遊離脂肪酸及び/又はグリセリドに富んだストリームを分離するステップをさらに含んでいる、請求項7乃至8の何れかに記載のプロセス。
【請求項10】
遊離脂肪酸及び/又はグリセリドに富んだストリームの遊離脂肪酸は、グリセリドに変換される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項11】
グリセリドは、ステップ(A)のエステル交換反応器に投入される、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
遊離脂肪酸及び/又はグリセリドに富んだストリームは、凍結結晶化によって第1のバイオディーゼルストリームから分離される、請求項9に記載のプロセス。
【請求項13】
さらに、脂肪酸エステルに富んだストリームが、第1のバイオディーゼルストリームの第2部分から分離される、請求項9乃至12の何れかに記載のプロセス。
【請求項14】
第1のバイオディーゼルストリームの第2部分から分離された脂肪酸エステルに富んだストリームに、第2の蒸留又は非蒸発性分離が施される、請求項12に記載のプロセス。
【請求項15】
少なくとも1つの撹拌膜式蒸発器は、少なくとも2つの撹拌膜式蒸発器であり、又は、少なくとも1つの流下膜式蒸発器は、少なくとも2つの流下膜式蒸発器である、請求項7に記載のプロセス。
【請求項16】
さらに、副生成物燃料ストリームが、遊離脂肪酸及び/又はグリセリドに富んだストリームに分離される、請求項7乃至15の何れかに記載のプロセス。
【請求項17】
遊離脂肪酸及び/又はグリセリドリッチなストリームは、凍結結晶化によって副生成物燃料ストリームから分離される、請求項16に記載のプロセス。
【請求項18】
純化されたバイオディーゼルをグリセリドから生産するプロセスであって、
(A)少なくとも1種のアルコールとグリセリドを反応させて、脂肪酸アルキルエステルストリームを生成するステップと、
(B)脂肪酸アルキルエステルストリームから、蒸留又は非蒸発性分離によって、バイオディーゼルストリームと副生成物燃料ストリームとを分離するステップと、
(C)副生成物燃料ストリームから、第2のバイオディーゼルストリームと、脂肪酸及び/又はグリセリドに富んだストリームとを分離するステップと、
を含むプロセス。
【請求項19】
第2のバイオディーゼルストリームと、脂肪酸及び/又はグリセリドに富んだストリームとは、凍結結晶化によって副生成物燃料ストリームから分離される、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
純化されたバイオディーゼルをグリセリドから生産するプロセスであって、
(A)エステル交換反応器内で少なくとも1種のアルコールと反応させて、脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームと、グリセリンリッチなストリームとを生成するステップと、
(B)脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームから、バイオディーゼルストリーム及び副生成物燃料ストリームを分離するステップと、
(C)副生成物燃料ストリームからのグリセリドを、エステル交換反応器に投入するステップと、
(D)それからバイオディーゼルを回収するステップと、
を含むプロセス。
【請求項21】
ステップ(B)は、少なくとも1つの撹拌膜式蒸発器又は流下膜式蒸発器内で行われる、請求項20に記載のプロセス。
【請求項22】
純化されたバイオディーゼルをグリセリドから生産するプロセスであって、
(A)エステル交換反応器内で、少なくとも1種のアルコールとグリセリドを反応させて、脂肪酸アルキルエステルストリームを生成するステップと、
(B)蒸留又は非蒸発性分離によって、脂肪酸アルキルエステルストリームを純化して、それから第1のバイオディーゼルストリームを分離するステップと、
(C)第1のバイオディーゼルストリームの少なくとも一部から、遊離脂肪酸及び/又はグリセリドに富んだストリームを分離するステップと、
(D)ステップ(C)のグリセリドを、エステル交換反応器に投入するステップと、
(E)それからバイオディーゼルを回収するステップと、
を含むプロセス。
【請求項23】
純化されたバイオディーゼルを生産するプロセスであって、
(A)第1のバイオディーゼルストリームを、脂肪酸アルキルエステルに富んだストリームから分離するステップと、
(B)第1のバイオディーゼルストリームの少なくとも一部を、少なくとも1つの撹拌膜式蒸発器、又は少なくとも1つの流下膜式蒸発器に投入し、それから、第2のバイオディーゼルストリーム及び副生成物燃料ストリームを分離するステップと、
(C)副生成物燃料ストリームから、脂肪酸アルキルエステルに富んだストリームと、遊離脂肪酸/グリセリドに富んだストリームとを分離するステップと、
(D)脂肪酸アルキルエステルに富んだストリームから、純化されたバイオディーゼルを回収するステップと、
(E)ステップ(C)の遊離脂肪酸/グリセリドに富んだストリームから、脂肪酸アルキルエステルに富んだストリームを生成するステップと、
(F)ステップ(E)のストリームから、純化されたバイオディーゼルを回収するステップと、
を含むプロセス。
【請求項24】
脂肪酸アルキルエステルに富んだステップ(C)のストリームの少なくとも一部は、少なくとも1つの撹拌膜式蒸発器、又は流下膜式蒸発器に投入される、請求項23に記載のプロセス。
【請求項25】
少なくとも1つの流下膜式蒸発器は、少なくとも2つの流下膜式蒸発器であり、又は、少なくとも1つの撹拌膜式蒸発器は、少なくとも2つの撹拌膜式蒸発器である、請求項24に記載のプロセス。
【請求項26】
グリセリドからバイオディーゼルを生産するプロセスであって、
(A)少なくとも1種のアルコールとグリセリドを反応させて、脂肪酸アルキルエステル及びグリセリドを含む液体ストリームを生成するステップと、
(B)脂肪酸アルキルエステルリッチなストリームと、グリセリンリッチなストリームとを、液体ストリームから分離するステップと、
(C)グリセリンリッチなストリームのpHを、中性に調整するステップと、
(D)それからバイオディーゼル回収するステップと、
を含むプロセス。
【請求項27】
ステップ(C)のpHは、グリセリンリッチなストリームに有機酸を加えることで調整される、請求項26に記載のプロセス。
【請求項28】
有機酸は酢酸である請求項27に記載のプロセス。
【請求項29】
少なくとも1種のアルコールはC1〜C5アルコールである、請求項1乃至28の何れかに記載のプロセス。
【請求項30】
1〜C5アルコールはメタノールである、請求項29に記載のプロセス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−67299(P2012−67299A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−206885(P2011−206885)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2007−211210(P2007−211210)の分割
【原出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【出願人】(510156860)セネカ ランドロード,エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】