説明

高酢酸含有食品の保存方法

【課題】 高酢酸含有食品の金属探知器による異物検出が可能な長期の脱酸素保存法を提供する。
【解決手段】 酢酸高含有食品をプラスチックス製のガスバリア袋に脱酸素剤ととも密封保存する保存方法において、該脱酸素剤がアスコルビン酸を主剤とする脱酸素剤であり、該ガスバリア袋が、ガスバリア層がポリアミド樹脂を含まないものであることを特徴とする長期間のガスバリア性を有し、金属探知器による異物検査可能な酢酸高含有食品の保存方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、とろろ昆布等の酢酸高含有食品の保存方法であり、保存にあたり金属探知器による異物検査が可能で長期間安定して保存可能な保存方法に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の保存の際には、通常、酸素透過度20cm/(m・day・atm)以下(25℃・50%RH)のフィルムを用いて脱酸素剤と共に密封する脱酸素包装が用いられ、生育に酸素を必要とする様々なカビや好気性菌の増殖を防止し、食品の変色や成分の酸化を抑制するなど、食品の腐敗や変質を防止する効果が認められている。
とろろ昆布等の酢酸高含有食品に対しても同様に脱酸素剤による保存が広く利用され、食品の腐敗や酸化による変色、風味の劣化を抑制する等、品質保持に貢献してきた。
【0003】
一方、とろろ昆布等の酢酸高含有食品の包装体について金属を含む異物の排除に金属探知器を利用することが必要とされる場合、鉄を主剤とする脱酸素剤を用いることは困難なため、有機系脱酸素剤を利用することが勧められ、例えば、特許文献1に記載のアスコルビン酸を特定の担体に担持したものなど好適に使用される。
また、一般に広く普及している延伸もしくは無延伸ナイロンを包装体に使用した場合は、酢酸による外装袋の劣化による酸素透過度の上昇がある。また、脱酸素剤の種類によっては、酢酸によって、酸素吸収能力の低下が起こる場合があり、長期間の品質保持が難しい場合があった。
【0004】
そのため、有機系脱酸素剤を酢酸高含有食品に適用する場合には、通常の袋内含気量に対する脱酸素剤よりもサイズが大きめの脱酸素剤を利用するか、窒素置換を併用して酸素量を低減する等により、外装袋の劣化による酸素透過度の上昇や脱酸素剤の酸素吸収能力の低下を補う必要があった。
【0005】
しかし、脱酸素剤のサイズを通常の袋内含気量で使用するサイズより大きくすること、窒素置換を併用し袋内酸素量を減少させて適用することはいずれもコストが大きくなる。そこで、酢酸による外装袋の酸素透過度の上昇が実質的になく、また、脱酸素剤の酸素吸収能力の低下が起こらず、さらに、金属探知器に検出されない脱酸素保存方法が必要とされた。
【0006】
【特許文献1】WO2004/033088
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、とろろ昆布等の酢酸高含有食品を保存する方法を提供することを目的とするものである。そのため、酢酸による酸素透過度の上昇が起こりにくい外装袋の選択、酢酸の存在により酸素吸収能力が低下しない脱酸素剤の選択を行うこと、さらに、製品の金属探知器による異物検出が可能な保存方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明は、酢酸高含有食品をプラスチックス製のガスバリア袋に脱酸素剤ととも密封保存する保存方法において、該脱酸素剤がアスコルビン酸を主剤とする脱酸素剤であり、該ガスバリア袋が、ガスバリア層がポリアミド樹脂を含まないものであることを特徴とする長期間のガスバリア性を有し、金属探知器による異物検査可能な酢酸高含有食品の保存方法であり、特に、とろろ昆布、おぼろ昆布、酢昆布、酢蛸または梅干しの保存に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の保存方法は、とろろ昆布等の酢酸高含有食品を長期間脱酸素保存することが可能であり、異物検査も容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の酢酸高含有食品とは、酢酸を0.1%以上含む食品であって、具体的には、とろろ昆布、おぼろ昆布、酢昆布、酢だこ、各種梅干し、梅菓子、梅肉エキス、酢漬け(千枚漬け・赤カブ漬け・ピクルス・らっきょう・生姜・ワケギ・アジ・サンマ・イワシ・ニシン・イカ・ピーナッツ・黒豆・スモモ)、寿司、プルーン、マヨネーズ、マヨネーズ入り食品(かまぼこ・ハンバーグ・たこ焼き)及び、これらを含む食品が例示される。
これらの中で、特に、とろろ昆布、おぼろ昆布、酢昆布、酢蛸または梅干しの保存に好適に用いられる。
【0011】
本発明の脱酸素剤は、金属探知器による異物検査可能な成分からなる脱酸素剤組成物であって、有機系脱酸素剤を選択する。本発明では、特に、アスコルビン酸及び/又はその塩を含有する組成物が好適である。
又、脱酸素剤成分として、他成分を併用することにより、炭酸ガス発生・酸素吸収型、アルコール発生・酸素吸収型としても用いることが可能である。
【0012】
本発明における脱酸素剤の脱酸素時間は通常25℃で3日、10℃で3〜5日、0℃で5〜10日以内に酸素濃度が0.1%以下になることが好ましい。
また、用いるガスバリア袋とも関係するが、必要な保存期間中、この酸素濃度が0.1%以下を保つことが不可欠であり、保存期間中に浸入する全酸素を吸収する能力を有する脱酸素剤を選択する。
【0013】
本発明のガスバリア袋は、20cm/(m・day・atm)以下(25℃・50%RH)であるフィルムを用いた袋を用いる。ガスバリア袋はバリアフィルムを用いて、四方シール、ガゼット、ピロー等の公知方法にて密封包装することによる。
【0014】
具体的には、たとえば、ガラス製、プラスチックス製または陶磁器製等の各種瓶類、金属製またはプラスチックス製等の各種缶類などの容器の他、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、PET/PE、KOP(ポリ塩化ビニリデンコート延伸ポリプロピレン)/PE、KOP/CP(未延伸ポリプロピレン)、KON(ポリ塩化ビニリデンコートナイロン)/PE、KON/CP、PET/PE、KPET(ポリ塩化ビニリデンコートポリエチレンテレフタレート)/PE、KPET/CP、PET/Al蒸着/PE、PET/SiO蒸着/PE、PET/Al蒸着/PE、Al箔/PE、ON(延伸ナイロン)/Al箔/PE、PET/Al箔/PE、BOVLON(商品名、日本合成化学(株)製)/PE、OV(商品名、ユニチカ(株)製)/PEなどで例示される単層材料または二層以上の多層材料から製造された袋、ボルト又はボックス等が、容器又は包材として挙げられる。
【0015】
また、バリア層にポリアミド樹脂を含むものは本発明では好ましくない。
しかし、上記に例示したバリア層を有する多層フィルムのバリア層以外の一つとしてポリアミドが含まれる事は差し支えない。
これらの中でバリア層として、KOP、シリカ蒸着PET、アルミナ蒸着PETを含む包装材用フィルムが好適であり、上記例示中では、KOP(ポリ塩化ビニリデンコート延伸ポリプロピレン)/PE、KOP/CP(未延伸ポリプロピレン)、PET/Al蒸着/PE、PET/SiO蒸着/PEが挙げられる。
【実施例】
【0016】
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
(A).とろろ昆布保存に模した保存試験
150×200mmのアルミ箔PETフィルム(PET/Al箔/PE)外装袋(四方シール)に、酢酸0.5mlと1.0ml(該袋と同サイズの袋にとろろ昆布を入れた場合に想定されるとろろ昆布重量約50gに含まれる酢酸の平均量および最大量に相当)を含浸させた濾紙(厚み0.22mm、150mmφ、品名:No.5A、東洋濾紙(株)製)と、70%RH調湿剤(グリセリン 6.3g、蒸留水 3.7g;とろろ昆布の水分活性に近似)を10ml含浸させた脱脂綿とアスコルビン酸系脱酸素剤(公称酸素吸収量50ml、商品名:エージレスGT−50、三菱ガス化学(株)製)を空気250mlと共に密封し、30℃・80%RH下に1ヶ月保存した。
【0017】
保存後の残存酸素吸収量測定
1ヶ月保存後に袋内ガスをガスクロマトグラフィー(GC)にて測定し、酸素濃度が0.1%以下であることを確認後に開封し、エージレスGT−50を取り出して150×200mmのKON/PE外装袋に空気250mlと共に密封し、25℃下で7日間保存して酸素濃度・炭酸ガス濃度をGCにて測定し、残存酸素吸収量を算出した。
【0018】
(B)酢酸を袋内に封入しないこと以外は、(A)と同様に試験を行い、残存酸素吸収量を算出した。
(A)で求めた酸素吸収量を(B)で求めた酸素吸収量で割り、計算結果を表1に示した。
この結果から、実施例で用いたアスコルビン酸系脱酸素剤では、酸が存在するほうが酸素吸収量が大きくなることが分かる。
【0019】
実施例2
<とろろ昆布保存に模した保存試験>
保存期間を1ヶ月ではなく、3ヶ月とした以外が、実施例1と同様な実験を実施し、同様に評価した結果を表2に示した。
実施例3
外装袋をシリカ蒸着PETフィルム(PET/SiO2蒸着/PE)を用いた以外は実施例2と同様とした。結果を表2に示した。
【0020】
比較例1〜3
エ−ジレスGT−50にかえて、グリセリン系脱酸素剤(公称酸素吸収量50ml、商品名:エージレスGL−50、三菱ガス化学(株)製)を用いた以外はそれぞれ実施例1〜3と同様な実験を実施した。結果を表2に示した。
【0021】
比較例4
Al箔/PE外装袋を用いずにバリアナイロンフィルム(=OPP/PE/Ny/PE/LLDPE)を用いた以外は実施例2と同様な実験を実施した。結果を表2に示した。
比較例5
エ−ジレスGTを用いずにエージレスGL−50を用いた以外は比較例4と同様な実験を実施した。結果を表2に示した。
【0022】
[表1]
外装袋 エージ 1ヶ月保存後の残存酸素吸収量比
レス 0.5ml/0ml 1.0ml/0ml
アルミ箔PET GT-50 実施例1 1.18 1.21
GL-50 比較例1 0.77 0.77
【0023】
[表2]
外装袋 エージ 1ヶ月保存後の残存酸素吸収量比
レス 0.5ml/0ml 1.0ml/0ml
アルミ箔PET GT-50 実施例2 1.47 1.93
GL-50 比較例2 0.86 0.74
シリカ蒸着PET GT-50 実施例3 1.51 1.88
GL-50 比較例3 0.74 0.72
バリアナイロン GT-50 比較例4 0.51 0.21
GL-50 比較例5 0.27 0.15

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸高含有食品をプラスチックス製のガスバリア袋に脱酸素剤ととも密封保存する保存方法において、該脱酸素剤がアスコルビン酸を主剤とする脱酸素剤であり、該ガスバリア袋が、ガスバリア層がポリアミド樹脂を含まないものであることを特徴とする長期間のガスバリア性を有し、金属探知器による異物検査可能な酢酸高含有食品の保存方法。
【請求項2】
該酢酸高含有食品が、とろろ昆布、おぼろ昆布、酢昆布、酢蛸または梅干しである請求項1の酢酸高含有食品の保存方法。

【公開番号】特開2008−220203(P2008−220203A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−59692(P2007−59692)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【Fターム(参考)】