高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物
本発明は高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物を提供する。本組成物は、インビトロおよびインビボで細胞をトランスフェクトするのに用いられてもよく、特に粘膜上皮の細胞をトランスフェクトするのに有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する相互参照
本出願は、2009年3月31日に出願された米国特許出願第61/165,442号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本発明は、高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物、ならびにその生成方法と使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
キトサンはN−アセチル−D−グルコサミンおよびD−グルコサミンの非毒性のカチオン性コポリマーである。キトサンは核酸と複合体を形成することができ、細胞をトランスフェクトするためのDNA送達ビヒクルとして使われている。
【0004】
キトサンの多くの生物学的用途は、大きなキトサンポリマーの使用に関連している。およそ数百キロダルトンから数千キロダルトンの大きなキトサンポリマーは、酸性溶液だけに溶解する。稀酢酸は、この大きなキトサン用の溶媒として使用されることが多い。
【0005】
およそ数十キロダルトン以下の低分子量のキトサンは、当初、効果的にパッケージングし、DNAを保護して、DNA送達ビヒクルとして役立たせるにはあまりに小さいと考えられた。しかし、最近になっていくつかのグループは、低分子量のキトサンを用いて、効果的にパッケージングし、DNAを保護して、DNA送達ビヒクルとして役立たせることができることを確立した。低分子キトサンはDNA送達ビヒクルとしての使用に望ましいと見なされてきた。低分子キトサンが生理的pHで高い溶解度を示し、かつ低いpH環境では核酸の分解を促進すると理解されているからである。
【0006】
高濃度の核酸は多くの目的にとって望ましいが、高濃度の均一に分散した、安定のキトサン−核酸複合体を生成することは困難である。混合液中のキトサンおよび核酸の濃度が増加すると、凝集、不安定性、粒子の大きさの変動、および沈殿の原因となる。
【0007】
DNAおよび縮合剤(たとえばポリカオチン性炭化水素)を含む粒子を生成するために同時流動混合を使用することが記載されている(米国特許第6,537,813号)。このような粒子を生成するために、DNA溶液および縮合剤溶液は、同時にかつ別々に、ミキシングおよび粒子形成を備える静的ミキサーまたは動的ミキサーを含む流入ミキサーに導入され得る。導入および濃縮の全プロセスを通してDNAおよび縮合剤の適当なモル比を維持することが重要であり、かつ電荷的中性からの有意な逸脱は、プロセスにおいて不完全な縮合または粒子凝集のいずれかをもたらし得ることを当業者は教示する。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、キトサンを可溶化するのに通常に用いられよりはるかに下回るpHを有する、高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物が、生理的pHにより近いポリプレックス組成物よりも高い粘膜上皮のインビボトランスフェクション効率を示すことを見出した。本組成物は、4.5未満のpHを有するが、核酸の完全性の安定性と維持、および粘膜上皮送達の適合性の両方を示す。逆説的に、高分子量キトサンより酸性度に低いpHでのその溶解性のために一つには開発された低分子量のキトサンは、本発明での使用に特に適切である。
【0009】
本発明者らは、安定した濃縮した高酸性キトサン−ポリプレックスを生成するために、ポリプレックス凝集および沈殿の問題も克服した。さらに、本発明者らは、等張である濃縮製剤を生成することができた。これは医薬用途および治療用途にとって極めて望ましい。
【0010】
したがって、一態様では、本発明はキトサン−核酸ポリプレックスを含む高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物を提供する。
【0011】
好ましい実施形態では、主題の組成物は、4.5未満のpH、より好ましくは4.2未満、さらに好ましくは4.0未満、さらに好ましくは3.8未満のpHを有する。
【0012】
好ましい実施形態では、対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、治療用核酸を含む。一実施形態では、治療用核酸は、治療用RNAである。別の実施形態では、治療用核酸は、治療用タンパク質をコードする治療用核酸コンストラクトである。
【0013】
好ましい実施形態では、対象組成物は等張性である。
【0014】
好ましい実施形態では、対象組成物は安定している。
【0015】
好ましい実施形態では、対象組成物は均一である。好ましい実施形態では、対象組成物は、0.5未満、より好ましくは0.4未満、さらに好ましくは0.3未満、最も好ましくは0.2未満の平均多分散指数(「PDI」)を有する。
【0016】
好ましい実施形態では、対象組成物は、沈降したポリプレックスを含まない。
【0017】
好ましい実施形態では、対象組成物は0.5mg/mLを超える核酸濃度を有し、かつ沈殿したポリプレックスを含まない。より好ましくは、対象組成物は少なくとも0.6mg/mL、より好ましくは少なくとも0.75mg/mL、さらに好ましくは少なくとも1.0mg/mL、さらに好ましくは少なくとも1.2mg/mL、最も好ましくは少なくとも1.5mg/mLの核酸濃度を有し、かつ沈殿したポリプレックスを含まない。
【0018】
好ましい実施形態では、対象組成物は、凝集阻害剤をさらに含む。好ましい実施形態において、凝集阻害剤は、糖(好ましくはショ糖)である。
【0019】
好ましい実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、平均3000未満。より好ましくは2000未満、さらに好ましくは1500未満、さらに好ましくは1000未満、さらに好ましくは500未満、さらに好ましくは300未満、さらに好ましくは150未満、さらに好ましくは100未満、さらに好ましくは50未満、最も好ましくは30未満のグルコサミン単量体ユニットを有するキトサン分子を含む。
【0020】
好ましい実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、少なくとも2:1、より好ましくは少なくとも5:1、さらに好ましくは少なくとも10:1、さらに好ましくは15:1、最も好ましくは20:1のN:S比を有する。
【0021】
好ましい実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、500kDa未満、より好ましくは300kDa未満、さらに好ましくは250kDa未満、さらに好ましくは150kDa未満、さらに好ましくは100kDa未満、さらに好ましくは50kDa未満、さらに好ましくは25kDa未満、さらに好ましくは16kDa未満、さらに好ましくは8kDa未満、最も好ましくは5kDa未満の平均分子量を有するキトサンを含む。
【0022】
好ましい実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、750nm未満、より好ましくは500nm未満、さらに好ましくは250nm未満、さらに好ましくは200nm未満、最も好ましくは150nm未満の平均径を有する。
【0023】
好ましい実施形態では、対象組成物は、基本的にキトサン−核酸ポリプレックスおよび凝集阻害剤からなる。
【0024】
別の好ましい実施形態では、対象組成物は、基本的にキトサン−核酸ポリプレックスからなる。
【0025】
一態様では、本発明は、本発明の高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物を含む医薬組成物を提供する。
【0026】
好ましい実施形態では、医薬組成物は等張である。別の実施形態では、医薬組成物は高張、または低張であり得る。
【0027】
一態様では、本発明は、粘膜上皮細胞を本発明の高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物と接触させることを含む、粘膜上皮細胞をトランスフェクトする方法を提供する。
【0028】
好ましい実施形態では、粘膜上皮は、消化管組織、気道組織、肺組織、副鼻腔組織、口腔組織、尿路組織、膀胱組織、膣組織、子宮組織、頸部組織、眼組織、食道組織、唾液腺組織、鼻喉頭組織、腎臓組織、および喉頭/咽頭組織からなる群から選択される組織内に存在する。
【0029】
一態様では、本発明は、粘膜上皮の炎症を伴う疾患の患者に本発明の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、粘膜上皮の炎症を伴う疾患を処置する方法を提供する。対象医薬組成物は、好ましくは粘膜上皮に局所投与される。
【0030】
好ましい実施形態では、対象医薬組成物は、抗炎症性タンパク質をコードする治療用核酸コンストラクトを含む。一実施形態では、抗炎症性タンパク質は、TNFα阻害剤である。別の実施形態では、抗炎症性タンパク質は、IL−1阻害剤である。別の好ましい実施形態では、抗炎症性タンパク質は、IL−10である。
【0031】
好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、炎症性腸疾患(IBD)である。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、間質性膀胱炎である。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、喘息である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】gWIZ−SEAPプラスミドDNAを含むc150キトサン−核酸粒子の投与に応答して検出されたブタ血漿SEAPのグラフである。pH4の場合の製剤処方は、C(24,98)−N20−c150−Ac25−Suc9−pH4.0であった。pH4.8の場合の製剤処方は、C(24,98)−N20−c150−Ac25−Suc9−pH4.8であった。
【図2】1Lのインライン混合バッチおよびTFF濃縮>ダイアフィルトレーション>濃縮の代表的なプロセスブロック図である。
【図3】小規模のインライン混合模式図である。シリンジは、ラテックスフリーポリプロピレン(PP)であり、それぞれ最高60mLまでスケールアップされ得る。2台の高精度のシリンジポンプが、シリンジを駆動する。チューブは、1/16”のPt硬化シリコーンである。示される混合ジャンクションは、Y字形である。構造体の混合ジャンクションの材料は、PPである。
【図4】10L用の中規模インライン混合の模式図である。表示された模式図は、10Lバッチ用である。すべての容器は、より少ないまたはより大きいバッチの大きさによって、縮小、拡大される。Pt硬化チューブの径は、0.48cm(3/16”)である。ポンンプの流速は、2:1のDNA:キトサンの量の混合比で示される。
【図5】TTFF濃縮およびダイアフィルトレ−ションの模式図。TFFダイアフィルトレーションの模式図を示す。TFF濃縮の間、透析バッファラインは保持液容器から分離されて、大気ベントフィルターと交換される。
【図6】TFF濃縮間のpHの推移のモデル化グラフである。各点は、ポリプレックスの相対的な量の倍減少(=DNA濃度の増加)を示す。たとえば、2×標識の点は、ほぼc1200である。
【図7】第2のTFF濃縮ステップ後のポリプレックスの安定性を示すグラフである。無希釈のTFF後の試料を、25℃でインキュベートし、2時間ごとに粒径をモニターした。
【図8】インプロセスpHデータのグラフである。X軸の上のTFF画分コードは、次の通りである:C1:TFF濃縮第1のステップ;D;TFFダイアフィルトレーション(洗浄量(W/V)の回数で示される);C2:TFF濃縮第2のステップ。
【図9】マウス膀胱のインビボトランスフェクションに関するグラフである。ナイーブC57BL/6マウスに、EF1a−SEAPまたは対照ビヒクルを担持するキトサン−DNAポリプレックスC(24,98)−c1000−pH4を送達した。2日後に、マウスを屠殺して、組織を収集した。ナイーブマウス(非形質移入)を超える、処置されたマウスの膀胱組織におけるSEAP mRNAの相対的な増加を示す。
【図10】EG−10(hIL−10)高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物の慢性IBDマウスの体重への効果に関するグラフである。高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物の各投与を、7日間隔で投与した。これらのマウスの体重を、実験全期間を通して毎週モニターした。各毎週の処置後、EG−10処置された群に関連して体重増加の有意な改善が観察された。
【図11】EG−10(hIL−10)高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物の3種類の炎症性サイトカインへの効果に関するグラフである。最後の処置から5日後に、両群からのマウスを屠殺して、結腸を摘出し、炎症性サイトカインのレベルを測定した。SEAP処置したマウスと比較すると、EG−10処置したマウスは、IL−6,IL−1βおよびTNF−α mRNAのレベルの減少がもたらされた。
【図12】−80℃で360日後の中規模製造からのポリプレックス最終生成物の2つのバッチ(DP0−0089およびDP−0090)に対するアガロースゲル電気泳動を示す画像である。ポリプレックスおよびDNA(高次コイルおよびニックの入った)の位置を示す。製剤処方は、C(24,98)−N10−c1000−Ac70−Suc9−pH4.0であった。
【発明を実施するための形態】
【0033】
「キトサン−核酸ポリプレックス」、「キトサン−核酸ポリプレックス粒子」、「キトサン−核酸複合体」、「ポリプレックス」または文法的に同様ななものによって、複数のキトサン分子および複数の核酸分子を含む複合体を意味する。キトサン単量体には、リガンドが付着したキトサンを含む誘導体が含まれる。「誘導体」とは、共有結合的に修飾されたN−アセチル−D−グルコサミンおよび/またはD−グルコサミユニット、ならびに他のユニットを組み込んでいる、または他の残基に付着したキトサン系ポリマー類を含む、キトサン系ポリマーの幅広いカテゴリーが挙げられると理解される。誘導体は、ヒドロキシル基またはグルコサミンのアミン基の修飾に基づくことが多い。キトサン誘導体の例としては、トリメチル化キトサン、ペグ化キトサン、チオラート化キトサン、ガラクトシル化キトサン、アルキル化キトサン、PEIを組み込んだキトサン、アルギニン修飾されたキトサン、ウロン酸修飾されたキトサン等が挙げられるがこれらに限定されない。キトサン誘導体についての更なる教示としては、たとえば、”Non−viral Gene Therapy”, K Taira, K Kataoka, T Niidome (editors), pp.63−74, Springer−Verlag Tokyo, 2005, ISBN 4−431−25122−7;Zhu et al.,Chinese Science Bulletin, December 2007, vol 52 (23), pp 3207−3215, 国際公開第2008/082282号、およびVarma et al., Carbohydrate Polymers 55(2004) 77−93を参照されたい。これらのそれぞれはその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0034】
分散系は、分散相として知られており、連続培地全体にわたり分布された粒子状物質からなる。キトサン−核酸ポリプレックスの「分散」は、水和キトサン−核酸ポリプレックスを含む組成物であり、ポリプレックスが培地全体にわたり分布されている。
【0035】
本明細書で使用するとき、キトサンポリマーの「平均重量」は、平均分子量の重量をいう。
【0036】
「対アニオン」とは、その位置で荷電したキトサンアミンまたは他カチオンと静電相互作用ができるアニオンを意味する。好ましい対アニオンは、酢酸塩イオンおよび塩化物イオンを含む。
【0037】
本明細書で使用するとき、「予備濃縮」分散は、本明細書に記載するように濃縮分散液を形成するための濃縮プロセスをまだ受けていないものをいう。
【0038】
本明細書で使用するとき、ポリプレックス沈殿物を「含まない」とは、目視検査で観察され得る粒子が組成物には基本的ないことを意味する。
【0039】
2007年3月30日に出願された米国特許出願第11/694,852号に開示されるように、キトサンは調製されてもよい。この出願はその全体を参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0040】
高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物。
【0041】
一態様では、本発明は、キトサン−核酸ポリプレックスを含む高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物を提供する。キトサン−核酸ポリプレックスの核酸成分は、キトサン−核酸ポリプレックスにカプセル封入される。好ましい実施形態では、対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、組成物中で均一で安定である。
【0042】
「均一である」複数のキトサン−核酸ポリプレックスを含む組成物は、ポリプレックスサイズの分布が狭い組成物をいう。ポリプレックスサイズのこの狭い分布は、たとえば、組成物の「多分散指数」(PDI)によって測定されることができる。対象組成物のための好ましいPDIは、0.5未満、より好ましくは0.4未満、さらに好ましくは0.3未満、最も好ましくは0.2未満である。
【0043】
「安定な」複数のキトサン−核酸ポリプレックスを含む組成物は、ポリプレックスが安定したサイズを保つ、すなわち、時間とともにサイズまたは凝集体が増加する傾向がない組成物をいう。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、室温で少なくとも6時間、より好ましくは少なくとも12時間、さらに好ましくは少なくとも24時間、最も好ましくは少なくとも48時間の間に、平均径が100%未満、より好ましくは50%未満、最も好ましくは25%未満増加するポリプレックスを含む。
【0044】
対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、冷却条件下で安定であるのが好ましい。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、2〜8℃で少なくとも6時間、より好ましくは少なくとも12時間、さらに好ましくは少なくとも24時間、最も好ましくは少なくとも48時間の間に、平均径が100%未満、より好ましくは50%未満、最も好ましくは25%未満増加するポリプレックスを含む。
【0045】
対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、凍結融解条件下で安定であることが好ましい。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、−20〜−80℃での凍結から融解の後に、室温で少なくとも6時間、より好ましくは少なくとも12時間、さらに好ましくは少なくとも24時間、最も好ましくは少なくとも48時間の間に、平均径が100%未満、より好ましくは50%未満、最も好ましくは25%未満増加するポリプレックスを含む。
【0046】
本発明のキトサン−核酸ポリプレックス内の核酸のカプセル封入は、たとえば、ゲル電気泳動での核酸の遅滞によって示されることができる。
【0047】
好ましい実施形態では、対象組成物は、4.5以下のpH、より好ましくは4.2以下、さらに好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.8以下のpH値を有する。
【0048】
一実施形態では、対象組成物は、3.5〜4.5の範囲のpHを有する。一実施形態では、対象組成物は、3.6〜4.2の範囲のpHを有する。一実施形態では、対象組成物は、3.8〜4.2の範囲のpHを有する。
【0049】
好ましい実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、3000未満、より好ましくは2000未満、さらに好ましくは1500未満、さらに好ましくは1000未満、さらに好ましくは500、さらに好ましくは300未満、さらに好ましくは150、さらに好ましくは100未満、さらに好ましくは50、最も好ましくは30未満のグルコサミン単量体ユニットを有するキトサン分子を含む。
【0050】
好ましい実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、500kDa未満、より好ましくは300kDa未満、さらに好ましくは250kDa、さらに好ましくは150kDa、さらに好ましくは100kDa、さらに好ましくは50kDa、さらに好ましくは25kDa、さらに好ましくは16kDa、さらに好ましくは8kDa、最も好ましくは5kDaの平均分子量を有するキトサンを含む。
【0051】
好ましい実施形態では、対象組成物のキトサン成分は、3kDa〜250kDaの平均分子量を有する。
【0052】
一実施形態では、対象組成物のキトサン成分は、250kDa以上の平均分子量を有する。
【0053】
一実施形態では、対象組成物のキトサン成分は、3kDa以下の平均分子量を持つ。
【0054】
好ましい実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、750nm未満、より好ましくは500nm未満、さらに好ましくは250nm未満、さらに好ましくは200nm未満、最も好ましくは150nm未満の平均径を有する。
【0055】
一実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、100nmを超える平均径を有する。
【0056】
一実施例では、対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、2:1〜100:1、より好ましくは5:1〜90:1、さらに好ましくは10:1〜90:1、最も好ましくは20:1〜90:1でN:P比を有する。
【0057】
好ましい実施形態では、対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、+20mVと+60mVの間の平均ゼータ電位を有する。
【0058】
一実施形態では、対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、+20mV以下の平均ゼータ電位を有する。
【0059】
一実施形態では、対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、+60mV以上の平均ゼータ電位を有する。
【0060】
好ましい実施形態では、ポリプレックスのキトサン分子は、70%を超える、より好ましくは75%を超える、より好ましくは80%を超える、さらに好ましくは85%を超える、さらに好ましくは90%を超える、さらに好ましくは95%を超える、最も好ましくは98%を超える程度の脱アセチル化を有する。
【0061】
一実施形態では、ポリプレックスのキトサン分子は、70%以下の程度の脱アセチル化を有する。
【0062】
好ましい実施形態では、対象組成物は、基本的にキトサン−核酸ポリプレックスおよび凝集阻害剤からなる。対象ポリプレックスおよび凝集阻害剤に加えて、このような組成物は、対アニオンと他の賦形剤とを含み得るが、対象組成物の活性に実質的に影響を及ぼす他の物質を除外する。
【0063】
好ましい実施形態では、対象組成物は、基本的にキトサン−核酸ポリプレックスからなる。対象ポリプレックスに加えて、このような組成物は、対アニオンと他の賦形剤とを含み得るが、対象組成物の活性に実質的に影響を及ぼす他の物質を除外する。
【0064】
好ましい実施形態では、対象組成物は、パラベンを含まない。これは、組成物が0.5mg/mLを超える核酸濃度を有する場合に特に望ましい。
【0065】
好ましい実施形態では、対象組成物は、10mM〜200mMの対アニオン濃度、極めて好まれる60〜100mMの対アニオン濃度を有する。好ましい実施形態では、対アニオンは、アセテートである。
【0066】
好ましい実施形態では、対象組成物は0.5mg/mLを超える核酸濃度を有し、かつ沈殿したポリプレックスを含まない。より好ましくは、組成物は少なくとも0.6mg/mL、より好ましくは少なくとも0.75mg/mL、より好ましくは少なくとも1.0mg/mL、より好ましくは少なくとも1.2mg/mL、最も好ましくは少なくとも1.5mg/mLの核酸濃度を有し、かつ沈殿したポリプレックスを含まない。好ましい実施形態では、組成は水和物である。好ましい実施形態では、組成物は非複合型の核酸を実質的に含まない。
【0067】
好ましい実施形態では、キトサン−核酸ポリプレックス組成物は、さらに凝集阻害剤を含む。凝集阻害剤は、ポリプレックス凝集体および/または沈殿物を部分的にまたは完全に減少させ、かつ、好ましくはタンジェンシャルフロー濾過(「TFF」)を用いる濃縮方法によってキトサン−核酸ポリプレックスを濃縮することを提供する薬剤である。極めて好ましい凝集阻害剤は、ショ糖であるが、他の凝集阻害剤、たとえば、ポリプレックス沈殿を減少させることができ、かつキトサン−核酸ポリプレックスを濃縮することを提供する他の糖質類を用いてもよい。他の凝集阻害剤の例としては、トレハロース、グリセロール、フルクトース、グルコースおよび他の還元糖類および非還元糖類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
好ましい実施形態では、使用される凝集阻害剤は、ショ糖である。キトサン−核酸ポリプレックス分散におけるショ糖の濃度は、好ましくは約3重量%〜20重量%である。最も好ましくは、ショ糖の濃縮は、等張性組成物を与える。
【0069】
好ましい実施形態では、高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物は、等張である。ポリプレックス安定性を維持しつつ、等張性を達成することは医薬組成物を製剤化する際に極めて望ましく、かつこれらの好ましい組成物は医薬製剤応用および治療応用に適切である。
【0070】
別の実施形態では、組成物は高張性または低張性であり得る。
【0071】
核酸
【0072】
高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物は、核酸成分およびキトサン成分を含む。本発明の核酸は通常、ホスホジエステル結合を含むが、しかし一部の場合、種々の目的のいずれか、たとえば安定性および保護等のために組み込んだ交互骨格または他の修飾または残基を有し得る核酸類似体が含まれる。考えられる他の類似体核酸は、非リボース骨格を持つものを含む。核酸は一本鎖もしくは二本鎖であることもあり得、または二本鎖および一本鎖の両配列の部分を含むこともある。核酸にはDNAと、RNAと、デオキシリボ−およびリボ−ヌクレオチドのいずれかの組み合わせ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニン等を含むいずれかの塩基の組み合わせを核酸が含有するハイブリッドが挙げられるがこれらに限定されない。核酸には、三本鎖、二本鎖または一本鎖、アンチセンス、siRNA、リボザイム、デオキシリボザム、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、キメラ、microRNA、およびそれらの誘導体を含む、いずれかの形のDNA、いずれかの形のRNAが含まれる。
【0073】
実施形態では、核酸成分およびキトサン成分を治療用核酸を含む。治療用核酸は、治療用RNAを含む。これは、哺乳類細胞において治療効果を及ぼすことができるRNA分子である。治療用RNAには、アンチセンスRNA、siRNA、低分子ヘアピン型RNA、microRNA、および酵素的RNAが含まれる。治療用核酸には、三重鎖分子、タンパク質結合核酸、リボザイム、デオキシリボザイム、およびヌクレオチド低分子を形成する核酸が含まれる。
【0074】
治療用核酸も、治療用タンパク質をコードする核酸を含む。
【0075】
好ましい実施形態では、核酸成分は、治療用核酸コンストラクトを含む。治療用核酸コンストラクトは、治療効果を及ぼすことができる核酸コンストラクトである。治療用核酸コンストラクトは、好ましくは治療用タンパク質をコードする核酸を含むが、治療用RNAである転写物を代わりに生成することができる。治療用核酸を用いて、治療目的の生成物をコードすることによって、欠陥遺伝子の代替もしくは増強として使用することによる遺伝子療法を行う、または特定の遺伝子生成物の欠如を代償することも可能である。治療用核酸は、内在性遺伝子の発現を阻害することも可能である。治療用核酸は、翻訳生成物のすべてまたは一部をコードすることも可能であり、かつ細胞内にすでに存在するDNAと組み合わせ、それによって欠陥遺伝子もしくはその部分を置き換えることによって機能することも可能である。治療用核酸は、タンパク質の一部をコードし得る。治療用タンパク質は、遺伝子生成物を阻害することによって、その効果を及ぼし得る。好ましい実施形態では、治療用核酸は米国特許出願第11/694,852号に開示されるものから選択される。この出願は参照によりその全体を本明細書に明示的に組み込まれる。また、国際公開第2008020318号を参照されたい。この公開は参照によりその全体を本明細書に明示的に組み込まれる。
【0076】
本発明での使用が考えられる治療用タンパク質としては、ホルモン類、酵素、サイトカイン、ケモカイン、抗体、増殖因子、分化因子、血塊形成に影響する因子、血糖値に影響する因子、糖代謝に影響する因子、脂質代謝に影響づる因子、血液コレステロール値に影響する因子、血液LDL値またはHDL値に影響する因子、細胞アポトーシスに影響する因子、食物摂取に影響する因子、エネルギー消費に影響する因子、食欲に影響する因子、栄養の吸収に影響する因子、炎症に影響する因子、および骨形成に影響する因子が挙げられるがこれらに限定されない。特に好ましいのは、インスリン、レプチン、グルカゴン拮抗剤、GLP−1、GLP−2、GLP−2、Ghrehn、コレシストキニン、成長ホルモン、凝固因子、PYYエリスロポイエチン、炎症の阻害剤、IL−10拮抗剤、IL−17拮抗剤、TNFα拮抗剤、IL−1拮抗剤、成長ホルモン放出ホルモン、または副甲状腺ホルモンをコードする治療用核酸である。
【0077】
本発明で考えられる特に好ましい治療用タンパク質は、抗炎症性タンパク質である。本発明での使用が考えられる抗炎症性タンパク質には、抗炎症性サイトカイン、ならびにたとえば炎症誘発性サイトカイン等の炎症誘発性分子が挙げられるがこれらに限定されない。
代表的な抗炎症性タンパク質としては、IL−10(たとえば、Fedorak et al., 2000, Gastroenterology. 2000 Dec;119(6):1473−82.; Whalen et al., 1999, J Immunol. 1999 Mar 15;62(6):3625−32);IL−IRa(たとえば、Arend et al., 1998, Annu Rev Immunol. 1998;16:27−55; Makarov et al., 1996, Proc Natl Acad Sci U S A. 1996 Jan 9;93(1):402−6);IL−ITa−Ig(たとえば、Ghivizzani et al., 1998, Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Apr 14;95(8):4613−8);IL−4(たとえば、Hogaboam et al., 1997, J Clin Invest. 1997 Dec 1;100(11):2766−76);IL−17可溶性受容体(たとえば、Zhang et al., 2006, lnflamm Bowel Dis. 2006 May;12(5):382−8; Ye et al., 2001, The Journal of Experimental Medicine, Volume 194, Number 4, August 20, 2001 519−528);IL−6(たとえば、Xing et al., 1998, J Clin Invest. 1998 Jan 15;101(2):311−20);IL−11(たとえば、Trepicchio et al., 1997, J Immunol. 1997 Dec 1;159(11):5661−70);IL−13(たとえば、Mulligan et al., 1997, J Immunol. 1997 Oct 1;159(7):3483−9; Muchamuel et al., 1997, J Immunol. 1997 Mar 15;158(6):2898−903);IL−18可溶性受容体(たとえば、Aizawa et al., 1999, FEBS Lett. 1999 Feb 26;445(2−3):338−42);TNF−α可溶性受容体(たとえば、Watts et al., 1999, J Leukoc Biol. 1999 Dec;66(6):1005−13);TNF−α受容体Ig(たとえば、Ghivizzani et al., 1998, Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Apr 14;95(8):4613−8);TGF−β(たとえば、Song et al., 1998, J Clin Invest. 1998 Jun 15;101(12):2615−21; Giladi et al., 1994);IL−12(たとえば、Hogan et al., 1998, Eur J Immunol. 1998 Feb;28(2):413−23);IFN−α(たとえば、Dow et al., 1999, Hum Gene Ther. 1999 Aug 10;10(12):1905−14);IL−4可溶性受容体(たとえば、Steinke et al., 2001 , Respir Res. 2001 ;2(2):66−70. Epub 2001 Feb 19)が挙げられる。
【0078】
特に本発明で用いる好ましい抗炎症性タンパク質としては、IL−10,TNFαタンパク質拮抗剤、およびIL−1のタンパク質拮抗剤が挙げられる。
【0079】
発現調節領域
【0080】
好ましい実施形態では、本発明のポリプレックスは治療用核酸を含む。これはコード領域に作用可能に連結される発現調節領域を含む、治療用コンストラクトである。治療用コンストラクトは、治療用核酸を生成する。これはそのままで治療用であり得、または治療用タンパク質をコードし得る。
【0081】
一部の実施形態では、治療用コンストラクトの発現調節領域には、恒常的活性がある。いくつかの好ましい実施形態では、治療用コンストラクトの発現調節領域には、恒常的活性がない。このため、治療用核酸の動的な発現もたらす。「動的な」発現とは、時間とともに変化する発現を意味する。動的な発現には、検出可能な発現の期間によって分離される低発現期間もしくは発現の非存在の期間等いくつかの期間を含むことがある。いくつかの好ましい実施形態では、治療用核酸は、調節可能なプロモーターに作用可能に連結される。このため、治療用核酸の調節可能な発現をもたらす。
【0082】
発現調節領域は、調節ポリヌクレオチド(本明細書では要素と呼ぶこともある)、たとえば、作用可能に連結された治療用核酸に影響するプロモーターおよびエンハンサーを含む。
【0083】
本明細書に含まれる発現制御要素は、細菌、酵母、植物、または動物(哺乳類もしくは非哺乳類)に由来することが可能である。発現調節領域は、たとえば天然のプロモーター等の完全長プロモーター配列およびエンハンサー要素、ならびに完全長のすべてもしくは部分、または非変異機能を保持する(たとえば、一部の栄養調節または細胞/組織−特異的発現を保持する)サブシークエンスまたはポリヌクレオチド変異体を含む。本明細書で使用するとき、用語「機能の」およびその文法的変異体とは、核酸配列、配列もしくは断片を参照で用いる場合、配列が天然の核酸の配列(たとえば非変異配列もしくは未修飾配列)のうちの1つまたは複数の機能を有することを意味する。本明細書で使用するとき、用語「変異体」とは、配列置換、欠失、もしくは付加、または他の修飾(たとえば、ヌクレアーゼに耐性である修飾形態等の化学誘導体)を意味する。
【0084】
本明細書で使用するとき、用語「作用可能な連結」とは、構成成分がそれらの意図された方法で機能することができるように記載されている、構成成分の物理的並列をいう。核酸との作用可能な連結での発現制御要素の例では、この関係は、制御要素が核酸の発現を調節することである。一般的に、転写を調節する発現調節領域は、転写された核酸の5’末端(すなわち「上流の」)近くに並置される。発現調節領域は、転写された配列の3’末端(すなわち、「下流の」)で、または、転写物内(たとえば、イントロン内に)に位置することもできる。発現制御要素は、転写された配列から離れた距離(たとえば核酸からの100〜500、500〜1000、2000〜5000またはそれ以上のヌクレオチド)に位置することもあり得る。発現制御要素の具体的な例はプロモーターであり、これは通常、転写された配列の5’末端に位置する。発現制御要素の別の例は、エンハンサーであり、これは転写された配列の5’もしくは3’末端、または転写された配列内に位置することもあり得る。
【0085】
一部の発現調節領域は、作用可能に連結された治療用核酸に、調節可能な発現を与える。シグナル(刺激と呼ばれることもある)は、この発現調節領域に作用可能に連結された治療用核酸の発現を増減させることができる。シグナルに応答して発現を増加させるこの発現調節領域は、誘導性と呼ばれることが多い。シグナルに応答して発現を減少させるこの発現調節領域は、抑制性と呼ばれることが多い。一般的に、そのような要素で与えられる増加量または減少量は、シグナルが示す量と比例し、シグナル量が大きくなればなるほど、発現の増加または減少もより大きくなる。
【0086】
多数の調節可能なプロモーターが当該技術分野で既知である。好ましい誘導性発現調節領域は、小分子化学物質で刺激される誘導性プロモーターを有するものを含む。一実施形態では、発現調節領域は経口的に送達可能である化学物質に応答するが、食物では通常見つからない。特定の例は、たとえば、米国特許第5,989,910号;第5,935,934号;第6,015,709号;および第6,004,941号に見出すことができる。
【0087】
一実施形態では、治療用コンストラクトは、組込み配列をさら含む。一実施形態では、治療用コンストラクトは、単一の組込み配列を含む。別の実施例では、治療用コンストラクトは、治療用核酸またはその一部を標的細胞のゲノムに組み込むための第1のおよび第2の組込み配列を含む。好ましい実施形態では、1つまたは複数の組込み配列は、マリナー、スリーピングビューティー、FLP、Cre、φC31、R,λからなる群から選択される組込み手段、ならびにAAV、レトロウイルス、および抗ウイルス等の組込みウイルスからの組込み手段と組み合わせて機能する。
【0088】
一実施例では、対象組成物は、治療用コンストラクトに加えて非治療用コンストラクトをさらに含む。ここで非治療用コンストラクトは、第2の発現調節領域に作用可能に連結した組込みのための手段をコードする核酸配列を含む。この第2の発現調節領域および治療用核酸に作用可能に連結した発現調節領域は、同一であっても、または別であってもよい。組込みのためのコードした手段は、好ましくは、マリナー、スリーピングビューティー、FLP、Cre、φC31、R,λからなる群から選択され、かつAAV、レトロウイルス、および抗ウイルス等の組込みウイルスからの組込み手段から選択される。
【0089】
さらなる教示のために、国際公開第2008020318号を参照されたい。その全体は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0090】
高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物を調製する方法
【0091】
高酸性キトサン−核酸ポリプレックスの組成物は、他の方法、たとえば核酸溶液またはキトサン溶液をもう一方の溶液に滴下することによって混合溶液を形成する等の他の方法も用いることも可能であるが、好ましくはインライン混合によって調製される。しかし、インライン混合は、好ましくは0.5未満の、より好ましくは0.4未満の、より好ましくは0.3未満の、最も好ましくは0.2未満の平均PDIを有するキトサン−核酸ポリプレックスを大容量で均一に調製することをもたらす。好ましい実施形態では、分散液は3.5〜5.5のpH値を有する。
【0092】
インライン混合は、周知のプロセスであり、それによって2種類の(またはそれ以上の)流体ストリームが1つのストリームにまとめられる。インライン混合の付加的な説明およびキトサン−核酸ポリプレックスの濃縮については、2008年9月26日に出願された国際出願第PCT/CA2008/001714号、国際公開第2009/039657号として公開される)に見出される。公開は参照によりその全体を本明細書に明示的に組み込まれる。インライン混合についてのさらなる開示については、たとえば米国特許第6,261,599号および同第6,537,813号を参照されたい。これらのそれぞれは参照によりその全体を本明細書に明示的に組み込まれる。
【0093】
この組成物は、所望の低pH値で複合体に形成され得る、またはより高いpH値で複合体に形成され、複合体形成後にpHを調整して、所望の高酸性分散液を形成してもよい。
【0094】
静的ミキサーおよび動的なミキサー等のミキサーを使用してもよい。この装置は、本方法によって形成される複合体のPDIの増加をもたらす。したがって、本発明の好ましい実施形態では、インライン混合は、このようなミキサーを用いずに行われる。
【0095】
好ましい実施形態では、本発明の高酸性高濃度キトサン−核酸ポリプレックス組成物は、キトサン−核酸ポリプレックスの予備濃縮分散液を濃縮することによって生成される。一実施形態では、予備濃縮分散液は、4.8以下のpH値、好ましくは3.5〜4.5のpH値を有する。別の実施形態では、予備濃縮分散液は、4.5を超えるpH値を有する。濃縮生成物は、4.5以下のpH値にpHを調整されてもよい。予備濃縮分散液は、好ましくは0.5mg/mL未満の濃度を有する。
【0096】
本発明では、タンジェンシャルフローろ過(「TFF」)は、キトサン−核酸ポリプレックスの予備濃縮分散液を濃縮するための好ましい方法である。TFF操作において、一部の液体を膜を通させるために膜に向かって加圧される間に、キトサン−核酸ポリプレックス分散液は、半透性膜の表面を越えてポンピングされる。膜孔より小さい分子は、膜孔を通って輸送され、透過するにつれて、収集される。透過溶質には、塩類、イオン類、糖類、および微生物防腐剤が挙げられるがこれらに限定されない。キトサン−核酸ポリプレックスを含む、膜孔を通過するには大きすぎる分子実体は、ストリーム内に保持されて、保持液として再循環する。TFF濃縮操作において、透過液は取り出され、他方保持液は気圧に開放され、保持液量が減少することになる。TFFを用いることで、ポリプレックス濃度は数倍も増加し、高濃縮ポリプレックス分散液がもたらされ得る。好ましい実施形態では、高濃縮ポリプレックス分散液は等張性である。
【0097】
好ましい実施形態では、この濃縮プロセスは、1つまたは複数のダイアフィルトレーション操作をさらに含む。4.8より高いpH値を有する組成物を用いることもあり得るが、4.8以下のpH値を有する予備濃縮キトサン−核酸ポリプレックス組成物を用いる場合、ダイアフィルトレーションは特に好まれる。
【0098】
TFFダイアフィルトレーション操作では、新しいバッファを保持液に加えることによって透過液は常に補充され、保持液中のバッファの交換をもたらす。TFFダイアフィルトレーションを用いることで、ポリプレックス濃度を維持しつつ、ポリプレックスはバッファ交換されることが可能であり、新しいバッファを有するポリプレックス分散液がもたらされる。
【0099】
一実施例では、濃縮ポリプレックス分散液へのTFF濃縮を行う前に、TFFダイアフィルトレーション操作は、キトサン−核酸ポリプレックスの予備濃縮分散液で行われる。好ましい実施形態では、濃縮ポリプレックス分散液へのTFF濃縮を行ってから、TFFダイアフィルトレーション操作は、キトサン−核酸ポリプレックスの濃縮分散液で行われる。極めて好ましい実施形態では、TFFダイアフィルトレーション操作は、TFF濃縮操作の間に行われる。この操作中に、キトサン−核酸ポリプレックスの予備濃縮分散液は、TFF濃縮によって一部濃縮され、次いでTFFダイアフィルトレーションに掛けられ、次いでTFF濃縮によってさらに濃縮される。これにより、新しいバッファを有する濃縮ポリプレックス分散液がもたらされ、キトサン−核酸ポリプレックスの安定性がさらに促進される。
【0100】
一実施例では、TFFダイアフィルトレーションのための洗浄量の数は、好ましくは40未満である。好ましい実施形態では、TFFダイアフィルトレーションのための洗浄量の数は、好ましくは20未満である。より好ましい実施形態では、TFFダイアフィルトレーションのための洗浄量の数は、好ましくは10未満である。きわめて好ましい実施形態では、TFFダイアフィルトレーションのための洗浄量の数は、好ましくは6未満である。
【0101】
一実施形態では、濃縮操作中に行われるTFFダイアフィルトレーション操作の回数は5未満であり、かつ1を超える。好ましい実施形態では、行われるTFFダイアフィルトレーション操作の回数は、1である。
【0102】
好ましい実施形態では、TFFダイアフィルトレーションバッファは、キトサンを含む。
【0103】
好ましい実施形態では、TFFダイアフィルトレーションバッファは、キトサンおよび対アニオン(好ましくはアセテート)を含む。
【0104】
好ましい実施形態では、TFFダイアフィルトレーションバッファは、キトサン、対アニオン(好ましくはアセテート)、および凝集阻害剤(好ましくはショ糖)を含む。
【0105】
好ましい実施形態では、濃縮キトサン−核酸ポリプレックス分散液のpHは、pH調整バッファを追加することによって、より低いpH値に調整される。
【0106】
好ましい実施形態では、pH調整バッファは、キトサンを含む。
【0107】
好ましい実施形態では、pH調整バッファは、キトサンおよび対アニオン(好ましくはアセテート)を含む。
【0108】
好ましい実施形態では、pH調整バッファは、濃縮キトサン−核酸ポリプレックスをわずかに(好ましくは5%未満)希釈する。
【0109】
好ましい実施形態では、TFF濃縮操作の完了後1時間以内に、pH調整バッファは、濃縮キトサン−核酸ポリプレックスに加えられる。
【0110】
好ましい実施形態では、予備濃縮キトサン−核酸ポリプレックス分散液は、糖(好ましくはショ糖)を含む。後述のとおり、ショ糖が濃縮プロセスの間に粒子の凝集を防止する凝集阻害剤であることが判明した。
【0111】
使用方法
【0112】
一態様では、本発明は粘膜上皮の細胞をトランスフェクトする方法を提供する。これらの方法は、粘膜上皮の細胞を本発明の高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物と接触させることを含む。一実施形態では、トランスフェクションはインビトロで行われる。別の実施形態では、トランスフェクションはインビボで行われる。対象組成物は、組成物の高酸性にもかかわらず、粘膜上皮の投与に適しており、かつ粘膜上皮細胞の高いトランスフェクション効率を示す。
【0113】
好ましい実施形態では、粘膜上皮は、消化管組織、気道組織、肺組織、副鼻腔組織、口腔組織、尿路組織、膀胱組織、膣組織、子宮組織、頸部組織、眼組織、食道組織、唾液腺組織、鼻喉頭組織、腎臓組織、および喉頭/咽頭組織からなる群から選択される組織内に存在する。
【0114】
一態様では、本発明は粘膜上皮の炎症を伴う疾患を処置する方法を提供する。これらの方法は、粘膜上皮の炎症を伴う疾患の患者に本発明の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。対象医薬組成物は、好ましくは粘膜上皮に局所投与される。対象医薬組成物は、抗炎症性活性がある治療用核酸を含む。
【0115】
好ましい実施形態では、対象医薬組成物は、抗炎症性タンパク質をコードする治療用核酸コンストラクトを含む。一実施形態では、抗炎症性タンパク質は、TNFα阻害剤である。別の実施形態では、抗炎症性タンパク質はIL−1阻害剤である。別の好ましい実施形態では、抗炎症性タンパク質はIL−10である。
【0116】
一実施例では、治療用核酸は、炎症性サイトカインに向けられる治療用RNAである炎症性サイトカインに向けられるsiRNAが特に好まれる。
【0117】
好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、IBDである。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、間質性膀胱炎である。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、喘息である。
【0118】
対象組成物は、粘膜上皮細胞のトランスフェクションによって処置可能である疾患または状態の処置に用いるのに適切である。この疾患には、粘膜上皮組織に関わる疾患が含まれるがこれらに限定されない。対象組成物を用いて、組成物が投与され得る、粘膜上皮組織に関わらない疾患および状態を処置することもできる。このような状態および疾患は、それにもかかわらず、粘膜上皮組織のこのようなトランスフェクションを介して治療的に到達可能である。たとえば、国際公開第2008020318号を参照されたい。この公開は参照によりその全体を本明細書に明示的に組み込まれる。たとえば、対象組成物を腸の粘膜上皮に投与することで、コードした治療用タンパク質を全身に送達し得る。
【0119】
治療用核酸を用いて、治療目的の生成物をコードすることによって、欠陥遺伝子の代替もしくは増強として使用することによる遺伝子療法を行う、または特定の遺伝子生成物の欠如を代償することも可能である。治療用核酸も、内在性遺伝子の発現を阻害し得る。治療用核酸は、翻訳生成物のすべてまたは一部をコードすることも可能であり、かつ細胞内にすでに存在するDNAと組み合わせ、それによって欠陥遺伝子もしくはその部分を置き換えることによって機能することも可能である。治療用核酸も、タンパク質の一部ををコードし得る。治療用タンパク質は遺伝子生成物を阻害することによってその効果を及ぼし得る。
【0120】
処置され得る疾患または状態としては、糖尿病、肥満症、ホルモン欠乏症、炎症性大腸疾患、下痢、過敏性腸症候群、消化管感染症、消化性潰瘍、胃食道逆流症、胃不全麻痺、痔核、栄養吸収障害、膵臓炎、ヘモクロマトーシス、小児脂肪便病、黄斑変性症、加齢性黄斑変性、ブドウ膜炎、網膜色素変性症、虹彩炎、強膜炎、緑内障、角膜炎、網膜症、眼感染症(たとえば、角膜真菌症)、感染症、子宮内膜症、子宮頸管炎、泌尿器疼痛、ポリープ、フィブロイド、子宮内膜増殖症、尿失禁、膀胱および尿路感染症、過活動膀胱、勃起障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、膜性腎症、高血圧、食物アレルギー、喘息、多発性嚢胞腎疾患、糸球体腎炎、異脂肪血症/高コレステロール血症、メタボリックシンドローム、乾癬、ざ瘡、酒さ、肉芽腫性皮膚炎、しわ、色素脱失、慢性閉塞性肺疾患、気道感染症、嚢胞性線維症、肺血管疾患、線維症、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、神経障害、自己免疫疾患、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症および炎症が挙げられるがこれらに限定されない。方法は、本発明の医薬組成物の治療有効量を患者に投与することを含む。
【0121】
本発明の治療用タンパク質は、このような治療用タンパク質をコードする治療用核酸を含む対象組成物によって生成され得る。後述する治療用タンパク質の使用は、このような治療用タンパク質の使用を達成するために、対象組成物の使用をいう。
【0122】
本発明で用いるために考えられる治療用タンパク質は、種々の活性を有し、かつ種々の障害の処置での使用が見出される。治療用タンパク質、および本発明の治療用タンパク質で処置可能な徴候についての以下の説明は、例示的であって、網羅的であることを意図するものではない。用語「被験者」とは、好ましい哺乳類および特に好ましいヒトを含む動物をいう。治療用タンパク質が標的タンパク質の拮抗剤である実施形態において、代替治療実施形態は、同じ標的タンパク質を標的とする治療用RNAを使用することもある。
【0123】
治療用タンパク質および標的疾患の一部のリストを以下の表に示す。
【表1】
【0124】
炎症性疾患
【0125】
好ましい実施形態では、本発明の治療用ポリペプチドを用いて、炎症を調節する。たとえば、治療用ポリペプチドは、炎症反応に関与する細胞の増殖および分化を抑制し得る。れらの分子を用いて、炎症性状態(慢性および急性の両状態)を処置することがでる。かかる炎症性状態には、感染症(たとえば、敗血症性ショック、敗血症または全身性炎症反応症候群(SIRS))に関連する炎症、虚血再灌流障害、致死性内毒素、関節炎、膵炎、補体媒介性超急性拒絶反応、腎炎、サイトカインもしくはケモカイン誘発肺損傷、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性膀胱炎、クローン病、または炎症性サイトカイン(たとえばTNFαおよびIL−1)の過剰産生に起因する他の疾患が含まれる。
【0126】
特に好ましい実施形態では、本発明は粘膜上皮の炎症を伴う疾患を処置するための方法を提供する。方法は、粘膜上皮の炎症を伴う疾患の患者に治療有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む。対象医薬組成物は、粘膜上皮に好ましくは局所投与される。一実施形態では、対象医薬組成物は、抗炎症性タンパク質をコードする治療用核酸コンストラクトを含む。本発明で用いることが考えられる抗炎症性タンパク質としては、抗炎症性サイトカインならびにたとえば炎症性サイトカイン等の炎症性分子のタンパク質拮抗剤が挙げられるが、これらに限定されない。
代表的な抗炎症性タンパク質としては、IL−10(たとえば、Fedorak et al., 2000, Gastroenterology. 2000 Dec; 119(6):1473−82.; Whalen et al., 1999, J Immunol. 1999 Mar 15;162(6):3625−32)をはじめとして、IL−1Ra(たとえば、Arend et al., 1998, Annu Rev Immunol. 1998; 16:27−55; Makarov et al., 1996, Proc Natl Acad Sci U S A. 1996 Jan 9;93(1):402−6);IL−1Ra−Ig(たとえば、Ghivizzani et al., 1998, Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Apr 14;95(8):4613−8);IL−4(たとえば、Hogaboam et al., 1997, J Clin Invest. 1997 Dec 1 ;100(11):2766−76);IL−17可溶性受容体(たとえば、Zhang et al., 2006, lnflamm Bowel Dis. 2006 May;12(5):382−8; Ye et al., 2001, The Journal of Experimental Medicine, Volume 194, Number 4, August 20, 2001 519−528);IL−6(たとえば、Xing et al., 1998, J Clin Invest. 1998 Jan 15;101(2):311−20);IL−11(たとえば、Trepicchio et al., 1997, J Immunol. 1997 Dec 1 ;159(11):5661−70);IL−13(たとえば、Mulligan et al., 1997, J Immunol. 1997 Oct 1 ;159(7):3483−9; Muchamuel et al., 1997, J Immunol. 1997 Mar 15;158(6):2898−903);IL−18可溶性受容体(たとえば、Aizawa et al., 1999, FEBS Lett. 1999 Feb 26;445(2−3):338−42);TNF−α可溶性受容体(たとえば、Watts et al., 1999, J Leukoc Biol. 1999 Dec;66(6):1005−13);TNF−α受容体Ig(たとえば、Ghivizzani et al., 1998, Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Apr 14;95(8):4613−8);TGF−β(たとえば、Song et al., 1998, J Clin Invest. 1998 Jun 15;101 (12):2615−21; Giladi et al., 1994);IL−12(たとえば、Hogan et al., 1998, Eur J Immunol. 1998 Feb;28(2):413−23);IFN−γ(たとえば、Dow et al., 1999, Hum Gene Ther. 1999 Aug 10;10(12):1905−14);IL−4可溶性受容体(たとえば、Steinke et al., 2001 , Respir Res. 2001 ;2(2):66−70. Epub 2001 Feb 19)がある。
【0127】
好ましい実施形態では、抗炎症性タンパク質は、TNFα阻害剤である。別の好ましい実施形態では、抗炎症性タンパク質は、IL−1阻害剤である。別の好ましい実施形態では、抗炎症性タンパク質は、IL−10である。
【0128】
好ましい実施形態において、粘膜上皮の炎症を含んでいる疾患は、IBDである。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、間質性膀胱炎である。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、喘息である。
【0129】
高血糖症と体重
【0130】
治療用タンパク質はインスリンおよびインスリン類似体を含む。糖尿病は、膵臓β−細胞からのインスリン産生が存在しない(1型)または不十分な(2型)ことに起因する消耗性の代謝疾患である(Unger R H et al., Williams Textbook of Endocrinology Saunders, Philadelphia (1998)に基づく)。β細胞は、食後のインスリン放出に備えて産生し貯蔵する専門の内分泌細胞である(Rhodes,らJ Cell Biol 105 145(1987))。インスリンは、それを必要とする組織に血液からグルコースの移動を促進するホルモンである。糖尿病患者は血糖値をしばしばモニターしなければならなく、多くの患者は生存するために毎日複数回のインスリン注射を必要とする。しかし、かかる患者が、インスリン注射によって理想的なグルコースレベルに達成するのはまれである(Turner, R C et al., JAMA 281 2005(1999))。その上、インスリンレベルの上昇が長期間にわたると、有害な副作用、たとえば低血糖ショックおよびインスリンに対する身体反応の低下等をもたらすこともあり得る。したがって、糖尿病患者は、長期的合併症、たとえば心血管疾患、腎臓疾患、失明、神経損傷および創傷治癒障害等を依然として発症する(UK Prospective Diabetes Study(UKPDS) Group, Lancet 352, 837(1998))。
【0131】
本発明の方法によって処置可能な障害としては、高血糖状態、たとえば、インスリン依存性(1型)糖尿病またはインスリン非依存性(2型)糖尿病、ならびに高血糖状態と関連するまたは高血糖状態に起因する生理的状態もしくは障害がある。このように、本発明の方法によって処置可能な高血糖状態は、慢性または急性の高血糖症(たとえば糖尿病)と関連する病理組織学的変化を含む。特定の例としては、膵臓の変性(β−細胞崩壊)、腎尿細管石灰化、眼損傷(糖尿病性網膜症)、糖尿病性足病変、口および歯茎等の粘膜潰瘍、過度の出血、血液凝固または創傷治癒の遅延、ならびに冠動脈心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、脂質異常症、高血圧症および肥満症のリスクの増加が挙げられる。
【0132】
対象組成物は、グルコースの低下、グルコース耐性の改善、高血糖状態(たとえば糖尿病)の処置、または高血糖状態と関連するまたは高血糖状態に起因する生理障害の処置にとって有用である。かかる障害としては、たとえば、糖尿病性神経障害(自律神経性)、腎症(腎障害)、皮膚感染症および他の皮膚疾患、損傷もしくは創傷の治癒の低下または遅延(たとえば糖尿病性のカルブンケルをもたらす)、失明にいたる眼損傷(網膜症、白内障)、糖尿病性足病変、および歯周炎の加速化が挙げられる。このような障害には、冠動脈心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、脂質異常症、高血圧症および肥満症のリスクの増加も挙げられる
【0133】
本明細書で使用するとき、被験者の状態に関して使われるとき、用語「高血糖性」または「高血糖症」とは、被験者の血液中に存在する一過性または慢性的に異常に高いレベルのグルコースを意味する。この状態は、グルコース代謝または吸収の遅延によって引き起こされ得る。その結果被験者がグルコース不耐性または健常被験者において通常は見られないグルコースが上昇した状態を示す(たとえば、糖尿病を発症するリスクがあるグルコース不耐性のサブ糖尿病被験者において、または糖尿病被験者において)。空腹時血糖値(FPG)レベルは、正常血糖の場合は約110mg/dL未満であり、グルコース代謝障害の場合は約110〜126mg/dLであり、糖尿病の場合は、約126mg/dLを超える。
【0134】
腸粘膜組織でのタンパク質産生による処置可能な障害には、肥満または望ましくない体重も含まれる。レプチン、コレシストキニン、PYYおよびGLP−1は、空腹感を減少させ、エネルギー消費を増加させ、体重減少を誘発し、または正常なグルコース恒常性を維持する。このように、種々の実施形態では、肥満もしくは望ましくない体重、または高血糖症を処置する本発明の方法は、レプチン、コレシストキニン、PYYまたはGLP−1をコードする治療用核酸の使用を含む。処置可能な障害としては、通常肥満と関連するもの、たとえば異常に高い血清/血漿LDL、VLDL、トリグリセリド、コレステロール、血管の狭窄もしくは閉塞を引き起こすプラーク形成、高血圧症/脳卒中、冠動脈心疾患等のリスク増加も挙げられる。グレリンは食欲および空腹感を増加させる。このように、種々の実施形態では、肥満もしくは望ましくない体重、または高血糖症を処置する本発明の方法は、グレリンの拮抗剤の使用を含む。一実施形態では、拮抗剤はグレリンを目標とする治療用RNAである。
【0135】
本明細書で使用するとき、用語「肥満の」または「肥満」とは、年齢および性別が対応した健常被験者と比較すると、少なくとも30%の体重増加を有する被験者をいう。「望ましくない体重」とは、対応する健常な被験者よりも1%〜29%多い体重を有する被験者、ならびに体重に関しては正常であるが、その体重を減少させたい、または増加を防止したいと願う被験者をいう。
【0136】
一実施例では、本発明の治療用タンパク質は、グルカゴン拮抗剤である。グルカゴンは、膵島のα細胞によって産生されるペプチドホルモンであり、かつグルコース代謝の主要な制御因子である(R H & Orci L N Eng J Med 304 1518(1981), Unger R H Diabetes 25 136 (1976)に基づく)。インスンと同様に、血中グルコース濃度は、グルカゴン分泌を媒介する。しかし、インスリンと対照的に、グルカゴンは血中グルコースの低下に応答して分泌される。したがって、グルカゴンの循環する濃度は、絶食期間に最も高く、食事の間に最も低い。グルカゴンレベルは増加して、グルコース貯蔵を促進することからインスリンを抑え、かつ肝臓を刺激してグリコースを血中に放出させる。グルカゴン拮抗剤の具体的な例は、[des−His1、des−Phe6、Glu9]グルカゴン−NH2である。ストレプトゾトシン糖尿病ラットにおいて、血中グルコースは、このグルカゴン拮抗剤の静脈内ボーラス(0.75μg/g体重)から15分以内に37%低下した(Van Tine B.A.ら Endocrinology 137:3316(1996))。さらに、種々の実施形態では、糖尿病すなわち高血糖症を処置するための本発明の方法は、膵臓からのグルカゴン産生のレベルを低下させるために、治療用RNAの使用を含む。
【0137】
別の実施形態では、高血糖状態または望ましくない体重(たとえば肥満)を処置することに有用な本発明の治療用タンパク質または、グカゴン様ペプチド−1(GLP−1)である。GLP−1は、食事中、腸内のL−細胞から放出されるホルモンであり、膵臓β細胞を刺激してインスリン分泌を増加させる。GLP−1は、さらなる活性を有し、そのため肥満および糖尿病を処置する治療薬として興味あるものになる。たとえば、GLP−1は胃内容排出を減少させ、食欲を抑制し、グルカゴン濃度を低下させ、β細胞質量を増加させ、グルコース依存様式でインスリンの生合成および分泌を刺激し、インスリンに対する組織感受性をおそらく高める(Kieffer T.J., Habener J.F.Endocrin Rev 20 876(2000))。したがって、食事と同時起こる腸内でのGLP−1の調節放出は、高血糖状態または望ましくない体重に対して治療効果をもたらすことができる。ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)に耐性があるGLP−1類似体は、より長い作用時間および治療効果をもたらす。したがって、GLP−1類似体は好ましい治療用ポリペプチドである。さらに、種々の実施形態では、糖尿病すなわち高血糖症を処置するための本発明の方法は、DPP IV拮抗剤の使用を含む。一実施形態では、拮抗剤は、DPP IVをを標的とする治療用RNAである。
【0138】
別の実施形態では、高血糖状態を処置することに有用な本発明の治療用タンパク質は、ホルモンレジスチンに対する拮抗剤である。レジスチンは、食事性肥満および遺伝型肥満においてその発現が上昇する脂肪細胞由来因子である。循環するレジスチンを中和することで、肥満マウスにおいて血中グルコースおよびインスリン作用が改善される。逆に、正常なマウスにレジスチンを投与すると、グルコース耐性およびインスリン作用が損なわれる(Steppan CM et al.,Nature 409;307(2001))。したがって、腸でレジスチンの生物学的効果を拮抗するタンパク質が産生されると、肥満に連結したインスリン耐性および高血糖状態に対する有効な治療をもたらすことができる。さらに、種々の実施形態では、糖尿病すなわち高血糖を処置するための本発明の方法は、治療用RNAを用いて、脂肪組織でレジスチン発現のレベルを低下させることを含む。
【0139】
別の実施形態では、高血糖状態または望ましくない体重(たとえば肥満)を処置することに有用な本発明の治療用ポリペプチドは、レプチンである。主として脂肪細胞によって産生されるが、レプチンは胃でも食事依存様式でより少ない量でに産生される。レプチンは、脂肪細胞代謝および体重についての情報を脳内の食欲中枢にリレーし、脳は食物摂取を減少させるシグナルを送って(満腹感を促進する)、身体エネルギー消費を増加させる。
【0140】
別の実施形態では、高血糖状態または望ましくない体重(たとえば肥満)を処置するのに有用な本発明の治療用ポリペプチドは、脂肪細胞の補体関連のタンパク質(Acrp30)のC末端の球状ヘッドドメインである。Acrp30は、分化した脂肪細胞によって産生されるタンパク質である。マウスに対する球状ヘッドドメインからなるAcrp30のタンパク質分解切断生成物をマウスに投与すると、有意な体重減少がもたらされる(Fruebis J らProc NatL Acad Sci USA 98 2005 (2001))。
【0141】
別の実施形態では、高血糖状態または望ましくない体重(たとえば肥満)を処置することに有用な本発明の治療用ポリペプチドは、コレシストキニン(CCK)である。CCKは、腸内で特定の栄養分に応答して腸から分泌される消化管ペプチドである。CCK放出は、消費される食物の量と比例し、脳に食事を終了するシグナルを送ると考えられている(Schwartz M.W. et al.,Nature 404;661−71(2000))。したがって、CCKno上昇は食事量を減らすことができ、体重減少または体重安定化を促進することができる(すなわち、体重増加の上昇を防止する、または阻害する)。
【0142】
PYYに関しては、たとえばIe Roux et al., Proc Nutr Soc 2005 May,64(2)213−6を参照されたい。
【0143】
免疫障害
【0144】
一実施例では、本発明の治療用タンパク質は、免疫調節性活性を備えている。たとえば、本発明の治療用ポリペプチドは、免疫細胞の増殖、分化または動員(化学走性)を活性化する、または阻害することによって、免疫系の不全および障害を処置するのに有用であり得る。免疫細胞は血球新生のプロセスを通じて発現し、多能性幹細胞から骨髄系細胞(血小板、赤血球、好中球、およびマクロファージ)ならびにリンパ球系細胞(Bリンパ球細胞およびTリンパ球細胞)を産生する。これらの免疫不全または障害の病因は、遺伝子性、体細胞性、感染性、またはその他であり得る。
【0145】
本発明の治療用ポリペプチドは、造血細胞の不全または障害を処置することに有用であり得る。本発明の治療用ポリペプチドを用いて、いくつかの(または多く)の造血細胞の種類の減少に係る造血細胞障害を処置する目的で、多能性幹細胞を含む造血細胞の分化または増殖を増加させることが可能である。、免疫不全症候群の例としては、血液タンパク質質障害(たとえば、無ガンマグロブリン血症、異常ガンマグロブリン血症)、毛細血管拡張性運動失調症、分類不能型免疫不全症、ディジョージ症候群、HIV感染症、HTLV−BLV感染症、白血球粘着不全症候群、リンパ球減少症、貪食殺菌機能障害、重症複合免疫不全症(SCID)、Wiskott−Aldrich障害、貧血症、血小板減少症、またはヘモグロビン尿症が挙げられるがこれらに限定されない。
【0146】
本発明の治療用ポリペプチドは、自己免疫障害を処置することにも有用であり得る。多くの自己免疫不全は、免疫細胞が自己を異物として不適当に認識することから生じる。この不適当な認識は、宿主組織の破壊をもたらすことになる免疫応答に起因する。したがって、免疫応答、特にT細胞の増殖、分化または化学走性を阻害する本発明の治療用ポリペプチドを投与することは、自己免疫障害を防止する有効な治療になり得る。
【0147】
本発明によって治療されることができる自己免疫不全の例としては、Addison病、溶血性貧血、抗リン脂質抗体症候群、関節リウマチ、皮膚炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎、Goodpasture症候群、Graves病、多発性硬化症、神経炎、眼炎、水疱性類天疱瘡 、天疱瘡、多腺性内分泌障害 、紫斑病、Reiter病、全身硬直症候群、自己免疫性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、自己免疫肺炎症、Guillain−Barre症候群、インシュリン依存性糖尿病、Crohn病、潰瘍性大腸炎、および自己免疫性炎症性眼病が挙げられるがこれらに限定されない。
【0148】
同様に、アレルギー性反応および状態、たとえば喘息(特にアレルギー性喘息)または他の呼吸障害は、本発明の治療用ポリペプチドによって処置され得る。さらに、これらの分子を用いて、アナフィラキシ、抗原分子に対する過敏症または血液型不適合を処置することができる。
【0149】
本発明の治療用ポリペプチドは、臓器拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)を処置するおよび/または阻止することもある。臓器拒絶反応は、免疫応答を通して移植組織の宿主免疫細胞破壊によって起こる。同様に、免疫応答はGVHDにも関与しているが、この場合は、異質移植された免疫細胞が宿主組織を破壊する。免疫応答を阻害する、特にT細胞の増殖、分化または化学走性を阻害する本発明の治療用ポリペプチドを投与することで、臓器拒絶反応またはGVHDを阻止するのに有効な治療になり得る。
【0150】
凝固障害
【0151】
一部の実施形態では、本発明の治療用ポリペプチドを用いて、止血活性(出血の阻止)または血栓溶解活性(凝固形成)を調節することも可能である。たとえば、止血活性または血栓溶解活性を増加させることによって、本発明の治療用ポリペプチドを用いて、血液凝固障害(たとえば、無フィブリノゲン血症、因子欠乏)、血液血小板障害(たとえば、血小板減少症)、または外傷、手術、もしくは他の原因から生じる創傷を処置し得る。あるいは、止血活性または血栓溶解活性を減少させることができる、本発明の治療用ポリペプチドを用いて、凝固を阻害するまたは溶解し得る。これらの分子は、心臓発作(梗塞)、脳卒中または瘢痕の処置において重要であり得る。一実施例では、本発明の治療用ポリペプチドは凝固因子であり、血友病または他の凝固/凝固障害(たとえば、第VIII因子、第IX因子または第X因子)の処置に有用である。
【0152】
感染症
【0153】
一実施例では、本発明の治療用ポリペプチドを用いて、感染症を処置することができる。たとえば、特にB細胞および/またはT細胞の増殖および分化を増加させて、免疫応答を増加させることによって、感染症は処置され得る。免疫応答は、既存の免疫応答を強化するか、または新しい免疫応答を開始することによって増加し得る。あるいは、必ずしも免疫応答を誘発することなく、本発明の治療用ポリペプチドは、感染病原体を直接阻害することも可能である。
【0154】
本発明の治療用ポリペプチドによって処置され得る疾患または症状を引き起こし得る感染病原体の一例はウイルスである。ウイルスの例としては、以下のDNAおよびRNAのウイルス系統群が挙げられるがこれらに限定されない:アルボウイルス、アデノウイルス科、アレナウイルス科、アルテリウイルス、ビマウイルス科、ビニヤウイルス科、カリチウイルス科、サーコウイルス科、コロナウイルス科、フラビウイルス科、ヘルペスウイルス科(たとえば、サイトメガロウイルス属、単純ヘルペス、帯状ヘルペス)、モノネガウイルス(たとえば、パラミクソウイルス科、麻疹ウイルス属、ラプドウイルス科)、オルソミクソウイルス科(たとえば、インフルエンザ)、パポバウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、ポックスウイルス科(たとえば、天然痘またはワクシニア)、レオウイルス科(たとえば、ロタウイルス)、レトロウイルス科(HTLV−I、HTLV−II、レンチウイルス)、およびトガウイルス科(たとえば、ルビウイルス属)。これらの系統群に含まれるウイルスは、関節炎、細気管支炎、脳炎、眼感染症(たとえば、結膜炎、角膜炎)、慢性疲労症候群、髄膜炎、日和見感染(たとえば、AIDS)、肺炎、水痘、出血熱、麻疹、流行性耳下腺炎、パラインフルエンザ 、狂犬病、感冒、小児麻痺、風疹、性感染病、皮膚病(たとえば、カポジ、いぼ)、およびウイルス血症が挙げられる。本発明の治療用ポリペプチドを用いて、これらの症状または疾患のいずれかを処置することができる。
【0155】
同様に、疾患または症状を引き起す可能性があり、かつ本発明の治療用ポリペプチドによって処置され得る、または検出され得る、細菌病原体または真菌病原体としては、以下のグラム陰性菌およびグラム陽性菌の系統群ならびに真菌類が挙げられるがこれらに限定されない:放線菌目(たとえば、コリネバクテリウム、マイコバクテリア、放射菌)、アスペルギルス、バチルス科(たとえば、炭疽菌、クロストリジウム)、バクテロイド科、ブラストミセス、ボルデテラ属、ボレリア属、ブルセラ、カンジダ、カンピロバクター、コクシジオイデス症、クリプトコッカス、皮膚真菌症、腸内細菌科(クレブシエラ属、サルモネラ菌、セラチア属、エルシニア属)、エリジペロスリックス属、ヘリコバクター属、レジオネラ、レプトスピラ、リステリア属、マイコプラズマ目、ナイセリア科(たとえば、アシネトバクター属、ゴノレア、髄膜炎菌)、パスツレラ科感染症(たとえば、アクチノバシラス属、ヘモフィルス属、パスツレラ属)、シュードモナス属、リケッチア科、クラミジア科、梅毒、およびブドウ球菌。これらの細菌または真菌の系統群は、以下の疾患または症状の原因になり得る:菌血症、心内膜炎、眼感染症(結膜炎、結核症、ブドウ膜炎)、歯肉炎、日和見感染(たとえば、AIDS関連の感染症)、爪周囲炎、人工器官関連の感染症、Reiter病、気道感染症(たとえば、百日咳または膿胸)、敗血症、ライム病、ネコ引っかき病、赤痢、パラチフス、食中毒、腸チフス、肺炎、淋病、髄膜炎、クラミジア、梅毒、ジフテリア、らい、パラ結核、結核、ループス、ボツリヌス症、壊疽、破傷風、膿痂疹、リウマチ熱、猩紅熱、性感染病、皮膚病(たとえば、蜂巣炎、皮膚真菌症)、毒素血症、尿路感染症、創傷感染。本発明の治療用ポリペプチドを用いて、これらの症状または疾患のいずれかを処置し得る。
【0156】
さらに、本発明の治療用ポリペプチドによって処置され得る疾患または症状を引き起こす寄生虫病原体としては以下の系統群が挙げられるが、これらに限定されない:アメーバ症、バベシア症、コクシジウム症、クリプトスポリジウム症、二核アメーバ症、媾疫、外寄生生物、ジアルジア症、蠕虫病、リーシュマニア症、タイレリア症、トキソプラズマ症、トリバノソーマ症、およびトリコモナス。これらの寄生虫は、疥癬、ツツガムシ病、眼感染症、腸疾患(たとえば、赤痢、ジアルジア症)、肺疾患、日和見感染(たとえば、AIDS関連感染症)、マラリア、妊娠合併症、およびトキソプラスマ症を含む種々の疾患または症状を引き起こし得る。本発明の治療用ポリペプチドを用いて、これらの症状または疾患のいずれかを処置し得る。
【0157】
再生
【0158】
本発明の治療用ポリペプチドを用いて、組織の再生を育成する細胞を分化、増殖、誘引させることができる(Science 276;59−87(1997)を参照されたい)。組織の再生を用いて、先天欠損、外傷(創傷、火傷、切開、もしくは潰瘍)、加齢、疾患(たとえば、骨粗鬆症、骨関節炎、歯周疾患)、美容形成術を含む外科手術、線維症、再灌流障害、または全身性サイトカイン損傷によって損傷をうけた組織の修復、置換、または保護することができる。
【0159】
本発明の治療用タンパク質の寄与により再生し得る組織としては、器官(たとえば、膵臓、腸、腎臓、皮膚、内皮)、血管(血管内皮を含む)、神経、造血、および骨格(骨、軟骨、腱、および靭帯)組織を含む。再生は、わずかな瘢痕を伴う、または瘢痕を伴わずに生じることが好ましい。再生は血管形成を含んでもよい。
【0160】
さらに、本発明の治療用ポリペプチドは、治癒しにくい組織の再生を増大させることができる。たとえば、腱/靭帯の再生が増大すると、損傷の後の回復時間を速める。本発明の治療用ポリペプチドは損傷を回避する目的で、予防的にも使用され得る。処置され得る具体的な疾患としては、腱炎、(手根管症候群、および他の腱欠損または靭帯欠損を含む。難治性創傷の組織再生のさらなる例としては褥瘡、血行不全、手術創、および外傷に付随した潰瘍を含む。
【0161】
同様に、神経および脳組織も、本発明の治療用ポリペプチドを用いて、神経細胞を増殖、分化させることによって、再生され得る。本方法を用いて処置され得る疾患としては、中枢および末梢神経系疾患、神経障害、または機械性障害および外傷性障害(たとえば、脊髄障害、頭部外傷、脳血管疾患、および脳卒中)が挙げられる。具体的には、末梢神経損傷に付随する疾患、末梢神経障害、限局性神経障害、および中枢神経系疾患(たとえば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、およびシャイドレーガー症候群)はすべて、本発明の治療用タンパク質を用いて処置され得る。CNS障害に関して、当該技術分野では脳組織へ治療アクセスを容易にするための方法、たとえば、血液脳関門を破壊するための方法と、CNSへの輸送を提供する部分に治療薬を結合させる方法とを含むいくつがが知られている。一実施形態では、治療用核酸は、融合タンパク質をコードするように設計され、融合タンパク質は輸送部分および治療用タンパク質を含む。
【0162】
走化性
【0163】
一実施例では、本発明の治療用ポリペプチドは、走化活性を有する。走化性分子は、体内の特定の部位、たとえば炎症または感染の部位に、細胞(たとえば単球、線維芽細胞、好中球、T細胞、マスト細胞、好酸球、上皮細胞および/または内皮細胞)を誘引するまたは動員する。次いで、動員された細胞は、特定の外傷または異常を移動性を持つ細胞は、それから特定の外傷または異常物を撃退する、および/または治癒する。
【0164】
本発明の治療用ポリペプチドは、特定の細胞の走化活性を増大させ得る。次いで、これらの走化性分子を用いて、体内の特定の部位を標的とする細胞の数を増加させることによって、炎症、感染症、またはいずれかの免疫系障害を処置することができる。たとえば、走化性分子を用いて、免疫細胞を損傷部位へ誘引することによって、組織への創傷および他の外傷を処置することができる。本発明の走化性分子は、線維芽細胞も誘引することができ、この線維芽細胞を用いて創傷を処置することができる。
【0165】
本発明の治療用ポリペプチドが走化活性を阻害し得ることも考えられる。これらの分子を用いて、様々な障害を処置することもできる。このように、本発明の治療用ポリペプチドは、走化性の阻害剤として使用し得る。
【0166】
標的組織の近傍で活性化されるプロ治療用タンパク質の使用が特に好まれる。
【0167】
使用が考えられるさらなる治療用ポリペプチドとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:成長障害または消耗症症候群を処置するための成長因子(たとえば、成長ホルモン、インスリン様成長因子1、血小板由来成長因子、上皮増殖因子、酸性および塩基性の線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子−β等);および外来抗原もしくは外来病原体(たとえばピロリ菌)から被験者を保護する、もしくは受動免疫を与えるため、または関節炎もしくは循環器疾患の処置を提供するための抗体(たとえばヒトまたはヒト化抗体);サイトカイン、インターフェロン(たとえば、インターフェロン(INF)、INF−α2bおよびINF−α2a、INF−αN1、INF−β1b、INF−γ)、インターロイキン(たとえば、IL−1〜IL−10)、腫瘍壊死因子(TNF−α、TNF−β)、ケモカイン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ポリペプチドホルモン、抗菌ポリペプチド(たとえば抗菌の、抗真菌の、抗ウイルスの、および/または、抗寄生虫のポリペプチド)、酵素(たとえば、アデノシンデアミナーゼ)、ゴナドトロピン、ケモタクチン、脂質結合タンパク質、フィルグラスチム(Neupogen)、ヘモグロビン、エリスロポイエチン、インシュリノトロピン、イミグルセラーゼ、サルグラモスチム、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、トロンボポエチン(TPO)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、アデノシンデアミダーゼ、カタラーゼカルシトニン、エンドセリン、L−アスパラギナーゼペプシン、ウリカーゼトリプシン、キモトリプシンエラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、ラクターゼ、スクラーゼ内因子、カルシトニン副甲状腺ホルモン(PTH)様ホルモン、可溶性CD4、ならびに抗体および/またはその抗原結合性フラグメント(たとえばFAb)(たとえば、オルソクローンOKT−e(抗CD3)、GPIIb/IIaモノクローナル抗体)。
【0168】
ワクチン接種
【0169】
一実施形態では、本発明は患者にワクチン接種をするための方法を提供する。方法は、所望のエピトープを生成することができる本発明の組成物を投与することを含む。好ましい実施形態では、組成物は、エピトープを含むタンパク質を発現することができる治療用核酸コンストラクトを含む。
【0170】
化粧品応用
【0171】
一実施形態では、本発明は、化粧品使用のための組成物を提供する。化粧品は、化粧品使用に適した製剤中に、本発明のキトサン−核酸ポリプレックス組成物を含む。
【0172】
粉末製剤
【0173】
本発明のキトサン−核酸ポリプレックス組成物は散剤を含む。好ましい実施形態では、本発明は乾燥散剤キトサン−核酸ポリプレックス組成物を提供する。好ましい実施形態では、乾燥散剤キトサン−核酸ポリプレックス組成物は、本発明のキトサン−核酸ポリプレックス分散液を脱水させることで生成される。凍結乾燥方法には、凍結乾燥および噴霧乾燥が含まれるがこれらに限定されない。
【0174】
一実施形態では、濃縮分散液は脱水され、次いで続いて、必要に応じて再水和した後、pHが調整される。たとえば、一実施形態では、最初に、4.5を超えるpH値を有する濃縮分散液が脱水され、次いで再水和後、pH値は3.5〜4.5で調整される。別の実施形態では、pH調整は必要とされず、再水和された組成物は4.5未満のpH値を有する。
【0175】
医薬製剤
【0176】
本発明も、本発明の高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物を含む「薬学的に許容される」または「生理学的に許容される」製剤を提供する。この製剤は、治療法を施すために、被験者にインビボで投与され得る。
【0177】
本明細書で使用するとき、用語「薬学的に許容される」および「生理学的に許容される」とは、好ましくは過剰な有害副作用(たとえば、嘔気、腹痛、頭痛等)を引き起こすことなく、被験者に投与されることができる担体、希釈剤、賦形剤をいう。投与のためのこの製剤は、無菌の水溶液剤または非水溶液剤、懸濁液剤、および乳濁液剤を含む。
【0178】
医薬製剤は、被験者への投与に適合した、担体、希釈剤、賦形剤、溶媒、分散媒体、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含むことができる。かかる製剤は、錠剤(被覆型もしくは非被覆型)、カプセル(ハードタイプもしくはソフトタイプ)、ミクロビーズ、乳剤、粉末、顆粒、結晶、懸濁液、シロップまたはエリキシル剤に含有され得る。他の添加剤のなかで、補助活性化合物および剤防腐剤も、たとえば抗菌物質、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガス等で含まれてもよい。
【0179】
医薬製剤は、その意図される投与経路に適合するように製剤化され得る。対象組成物は、粘膜上皮組織のトランスフェクションに適切である。好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、粘膜上皮組織への投与に適した製剤である。
【0180】
経口投与の場合、組成物を賦形剤と組み合わせて、錠剤、トローチ、またはカプセル(たとえばゼラチンカプセル)の形状で用いることができる。薬学的に適合する結合剤および/またはアジュバンド材を経口製剤に含有させることもできる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤等は、以下の成分、または類似の自然の化合物のいずれかを含有することができる:結合剤、たとえば結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチン;賦形剤、たとえばデンプンもしくはラクトース;崩壊剤、たとえばアルギン酸、プリモゲル、またはコーンスターチ;潤滑剤、たとえばステアリン酸マグネシウムもしくはステロート;滑剤、たとえばコロイド状二酸化珪素;甘味剤、たとえばショ糖もしくはサッカリン;または香味剤、たとえばペパーミント、サリチル酸メチル、もしくは調味料。
【0181】
製剤は、体内から組成物を急速に分解または除去することから保護する担体、たとえばインプラントおよびマイクロカプセル型送達系を含む徐放製剤も含むことができる。たとえば、モノステアリン酸グリセリンもしくは単体のステアリン酸グリセリル等、またはワックスと組み合わせて時間遅延材料を用いてもよい。
【0182】
坐薬および他の直腸投与型製剤(たとえば、浣腸で投与可能なもの)も考えられる。さらに直腸送達に関しては、たとえば以下を参照されたい:Song et al., Mucosal drug delivery membranes, methodologies, and applications, Crit Rev Ther Drug Carrier Syst., 21:195−256, 2004, Wearley, Recent progress in protein and peptide delivery by noninvasive routes, Crit Rev Ther Drug Carrier Syst., 8:331−394, 1991。
【0183】
投与に適したさらなるな医薬製剤は、当該技術分野で知られており、本発明の方法および組成物に適用できる(たとえば、Remington‘s Pharmaceutical Sciences (1990) 18th ed , Mack Publishing Co., Easton, Pa.; The Merck Index (1996) 12th ed , Merck Pubishing Group, Whitehouse, N.J.,およびPharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms, Technonic Publishing Co., lnc., Lancaster, Pa.,(1993)を参照されたい)。
【0184】
投与
【0185】
いくつかの投与経路のうちのいずれかが可能であり、特定の経路を選択することは、標的組織に一部依存することになる。上皮組織への投与が好まれる。特に好ましい投与は、消化管、気道、肺、副鼻洞空洞、口腔、尿路、膀胱、膣、子宮、頸部、眼、食道、唾液腺、鼻喉頭組織、腎臓、喉頭/咽頭、および皮膚からなる群から選択される上皮組織への投与のである。
【0186】
シリンジ、内視鏡、カニューレ、挿管チューブ、浣腸キット、カテーテル、ネブライザー、吸入器および他の物品が、投与のために使用され得る。
【0187】
被験者を処置するための「有効量」の用量は、障害もしくは状態、または症状の進行もしくは悪化を防止するまたは阻害することが満足のいく結果であるが、好ましくは、状態の症状のうちの1つ、いくつかもしくはすべてを、測定可能な程度または検出可能な程度まで、回復させるのに十分な量である。このように、標的組織において治療用核酸を発現させることによって処置可能な状態または障害の場合、本発明の方法によて処置可能な状態を回復させるために生成される治療用タンパク質の量は、状態および所望の結果に依存し、当業者によって容易に確認され得る適切な量は、治療される上体、所望の治療効果、ならびに個々の被験者(たとえば、被験者内のビオアベイラビリティ、性別、年齢等)に依存することになる。有効量は、関連する生理的効果を測定することによって確認されることができる。
【0188】
獣医臨床への応用は、本発明によっても考えられる。したがって、一実施形態では、本発明は非ヒト哺乳類を処置する方法を提供する。方法は、処置を必要とする非ヒト哺乳類に本発明の組成物を投与することを含む。
【0189】
経口投与
【0190】
本発明の化合物は、経口投与されてもよい。経口投与は嚥下を含むこともあり、そのため化合物は消化管に入る。本発明の組成物は、直接消化管に投与されることもある。
【0191】
経口投与に適した製剤としては、錠剤などの固形剤、微粒子剤を含有するカプセル剤、液剤、または散剤、トローチ剤(液剤を充填したものを含む)、咀嚼剤、多微粒子剤およびナノ微粒子剤、ゲル剤、フィルム剤、オビュール剤、および噴霧剤が挙げられる。
【0192】
液剤は、懸濁剤、溶液剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。液剤は、固形剤の再構成によって調製され得る。
【0193】
錠剤は、通常、崩壊剤を含む。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、線維素グリコール酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、結晶セルロース、低アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファ化デンプンおよびアルギン酸ナトリウムを含む。通常、崩壊剤は、剤形の1重量%〜25重量%、好ましくは5重量%〜20重量%で含まれる。
【0194】
結合剤は、凝集性品質を錠剤に与えるのに通常用いられる。適切な結合剤としては、結晶セルロース、ゼラチン、糖類、ポリエチレングリコール、天然および合成のゴム、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。錠剤は、希釈剤、たとえばラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物等)、マンニトール、キシリトール、ブドウ糖、ショ糖、ソルビトール、結晶セルロース、デンプンおよびリン酸水素カルシウム二水和物を含み得る。
【0195】
錠剤は、また、界面活性剤(たとえば、硫酸ラウリルナトリウムおよびポリソルベート80)と、滑剤(たとえば、二酸化ケイ素およびタルク)とを任意に含み得る。存在する場合、界面活性剤は、錠剤の0.2重量%〜5重量%、および滑剤は、錠剤の0.2重量%〜1重量%を含み得る。
【0196】
錠剤は通常、潤滑剤、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物も含む。潤滑剤は通常、錠剤の0.25重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜3重量%を含む。
【0197】
他の可能な成分としては、抗酸化剤、着色剤、香味料および調味料、防腐剤、唾液刺激剤、冷却剤、共溶媒(油を含む)、皮膚軟化剤、増量剤、消泡剤、表面活性物質および矯味剤が挙げられる。
【0198】
錠剤混合物を、直接、またはローラーで圧縮して、錠剤を形成し得る。あるいは錠剤混合物または混合物の部分は、錠剤化の前に、湿式顆粒化、乾式顆粒化、もしくは溶融顆粒化、溶融凝固、または押出しを行われ得る。最終的な製剤は1層または複数層を含こともあり、かつコーティングまたは非コーティングされることもある。最終的な製剤は、カプセル化されることさえあり得る。
【0199】
錠剤の剤形は、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Vol. 1, by H. Lieberman and L. Lachman (Marcel Dekker, New York, 1980)に記載されている。
【0200】
ヒトまたは動物での使用のための消滅する経口フィルム剤は、通常は、成形しやすい水溶性もしくは水膨張性の薄膜剤形であり、急速に溶けるか、または粘膜付着性であり得、かつ通常は、フィルム形成ポリマー、結合剤、溶媒、湿潤剤、可塑剤、安定剤または乳化剤、粘度調節剤および溶媒を含む。製剤の一部の構成要素は、複数の機能を実行し得る。
【0201】
本発明では、本発明の組成物を含む多微粒子ビーズも含まれる。
【0202】
本発明によるフィルム剤は、通常、剥離可能な裏打ち支持体または紙上に被覆された薄い水性フィルム剤の蒸発乾燥によって調製される。これは、乾燥オーブンもしくはトンネル、通常は複合型コータードライヤー、または凍結乾燥もしくは真空化によって行われ得る
【0203】
経口投与のための固形剤は、即放性および/または放出調節性になるよう製剤化され得る。放出調節製剤には、遅延放出、徐放、パルス放出、制御放出、標的放出、および計画放出型の製剤が含まれる。
【0204】
高エネルギー分散ならびに浸透粒子および被覆粒子等の他の適切な放出技術が知られている。
【0205】
非経口投与
【0206】
非経口投与のための適切な方法としては、静脈、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、皮下への投与挙げられる。非経口投与の適切な装置は、針(マイクロニードルを含む)注射器、針のない注射器、および注入技法を含む。
【0207】
非経口製剤は通常、塩類、炭化水素および緩衝剤等の賦形剤を含み得る水溶液剤である。しかし、一部の適用では、非経口製剤は、無菌の非水溶液剤として、または発熱物質を含まない無菌の水等の適切な溶媒と組み合わせて使用される乾燥形状として、より適切に製剤化され得る。
【0208】
無菌条件下での、たとえば、濾過除菌法による非経口製剤の調製は、当業者にとって周知の標準的な製薬技法を用いて、容易に達成され得る。
【0209】
点滴製剤の調製で用いられる化合物の溶解性は、適当な製剤技法、たとえば溶解性増強剤を組み入れることで増大させてもよい。
【0210】
非経口投与のための製剤は、即放性および/または放出調節性になるよう製剤化され得る。放出調節性製剤としては、遅延放出、徐放、パルス放出、制御放出、標的放出、および計画放出型が含まれる。このように、本発明の化合物は、活性化合物の調節放出を提供する埋め込み型デポーとして投与のための固形剤、半固形剤、またはチキソトロピー液剤として製剤化され得る。
【0211】
局所投与
【0212】
本発明の化合物は、皮膚または粘膜に局所的に、すなわち真皮的に、または経皮的に投与されてもよい。この目的のための典型的製剤は、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、溶液、クリーム剤、軟膏、散布剤、包帯剤、フォーム剤、フィルム剤、皮膚パッチ、ウエハー、インプラント、スポンジ、繊維、包帯およびマイクロエマルジョン剤を含む。
【0213】
局所投与の他の方法は、電気穿孔法、イオントフォレーシス、フォノフォレシス、ソノフォレーシスおよびマイクロニードルまたは無針注射(たとえば、Powderject(商標)、Bioject(商標)等)による送達を含む。
【0214】
局所投与のための製剤は、即放性および/または放出調節性になるよう製剤化され得る。放出調節性製剤としては、遅延放出、徐放、パルス放出、制御放出、標的放出、および計画放出型が含まれる。
【0215】
吸入投与/鼻腔内投与
【0216】
また、本発明の化合物は、通常、乾燥散剤(単体、または混合剤(たとえば、ラクトースとの乾性混合で、または混合成分粒子として)のいずれか)の形状で、適切な噴霧剤を使用した、または使用しない、乾燥散剤吸入器から、または加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザ、もしくはネブライザーからのエアゾールスプレーとして、鼻腔内にまたは吸入によって投与され得る。
【0217】
吸入器または散布器に使用するカプセル、ブリスターおよびカートリッジは、本発明の化合物の混合粉末、適切な散剤基剤(たとえばラクトースまたはデンプン)、および性能修飾因子(たとえばl−ロイシン、マンニトール、またはステアリン酸マグネシウム)を含有するように製剤化され得る。
【0218】
吸入投与/鼻腔内投与のための製剤は、即放性および/または放出調節性になるよう製剤化され得る。放出調節性製剤としては、遅延放出、徐放、パルス放出、制御放出、標的放出、および計画放出型が含まれる。
【0219】
直腸投与/膣内投与
【0220】
本発明の化合物は直腸に、または、膣内に、たとえば坐薬、ペッサリー、または浣腸の形で投与され得る。カカオバターは従来からの座薬基剤であるが、必要に応じて種々の代替物が使われ得る。
【0221】
直投与/膣内投与のための製剤は、即放性および/または放出調節性になるよう製剤化され得る。放出調節性製剤としては、遅延放出、徐放、パルス放出、制御放出、標的放出、および計画放出型が含まれる。
【0222】
眼内投与/耳内投与
【0223】
本発明の化合物は、通常は、滴下剤の形で、直接、眼または耳にも投与され得る。眼内および耳内の投与に適した他の製剤としては、軟膏、生分解性の(たとえば、吸収されるゲルスポンジ、コラーゲン)および非生分解性の(たとえばシリコーン)インプラント系、ウエハー系、レンズ系、および微粒子系が挙げられる。製剤は、イオントフォレーシスによって届けられる可能性もある。
【0224】
眼内投与/耳内投与のための製剤は、即放性および/または放出調節性になるよう製剤化され得る。放出調節性製剤としては、遅延放出、徐放、パルス放出、制御放出、標的放出、または計画放出型が含まれる。
【0225】
実験
【表2】
【0226】
ポリプレックス組成物のインライン混合および濃縮のための材料および方法についてのさらなる記載は、国際公開第2009/039657号を参照されたい。公開は参照によりその全体を本明細書に明示的に組み込まれる。
【0227】
ポリプレックス製剤の命名規則
【表3】
【0228】
1Lバッチの製造、それに続くTFF濃縮の一般的なプロセスブロック図を図2に示す。
【0229】
小規模のインライン混合
【0230】
簡単な小規模のインライン混合装置を、シリンジポンプ、内径1/16インチのシリコーンチューブ;および内径3/32インチのY字構造体のポリプロピレンジャンクションを用いてテストした。3mL容量のシリンジおよびY字ジャンクションを用いる配置の模式図を図3に示す。この配置の場合、シリンジの最大容量が60mLであることに留意されたい。このプロセスを使用して、24mer/98%DDAキトサンを用いて、NP比20で150μg/mLの最終DNA濃度のポリプレックスを作製した。DNAおよびキトサンの原料を、体積比2:1で混合して、均一なポリプレックス製剤を生成した。
【0231】
中規模のインライン混合
【0232】
簡単な中規模のインライン混合装置を、蠕動ポンプ、内径3/16インチのシリコーンチューブ;および内径3/16インチのY字構造体のポリプロピレンジャンクションを用いてテストした。Y字ジャンクションを用いる配置の模式図を図4に示す。この配置の場合、最大生成量は原料容器の容量によってのみ限定されることに留意されたい。このプロセスを使用して、24mer/98%DDAキトサンを用いて、NP比20で、150μg/mLの最終DNA濃度のポリプレックスを作製した。DNAおよびキトサンの原料を、体積比2:1で混合して、均一なポリプレックス製剤を生成した。
【0233】
TFFプロセス(濃縮)
【0234】
TFF試験を行う前に、製造業者の説明書に従ってホローファイバーフィルターを洗浄して、清浄した。
【0235】
TFF濃縮#1
【0236】
濃縮を実行するために、TFF系を概略図(図5)に示すように設定して、残留水を取り除いた。透過バルブを閉め、次いで背圧バルブを完全に開けた後、DNA−キトサンポリプレックスを生成物リザーバへ加えた。ポンプの電源をオンにして濃縮を開始し、完全に透過バルブを開け、その後、目標のフィルタ入口側圧力へと背圧バルブを調節した。濃縮工程中、回収された透過液の質量を秤で測定し、そして目標DNA濃度が達成された時点を決定するために使用した。ポンプの電源を入れて、濃縮を開始し、透過バルブを全開し(次いで任意のポンプを作動させ)てから、背圧バルブを対象フィルタの入口圧力に調節した。濃縮プロセスの間に、収集した透過液の量を秤の上でモニターして、それを用いて、目標のDNA濃度が達成された時点を決定した。目標の体積減少が達成された後、透過バルブを閉じて、背圧バルブを完全に開いて、この濃縮プロセスを停止した。下記の式を参照されたい:
【数1】
【0237】
TFFダイアフィルトレーション
【0238】
一部のバッチでは、ダイアフィルトレーションステップ(緩衝交換)を、濃縮プロセスに挿入した。たとえば、0.15mg/mLのDNAから開始し、ポリプレックスを0.60mg/mLまで濃縮し、次いで0.60mg/mL濃度を維持しながら、ある程度の洗浄量をダイアフィルタで濾過し、次いでさらに1.20mg/mLまで濃縮した。
【0239】
ダイアフィルトレーションを実行するために、透過液出口ラインを、新しいタールを塗った収集溶液に変え、次いでバッファラインをベントポートを経て保持液容器に接続させた。これにより、大気の通気がない、密封された系を作製する。次に、透過バルブを開き、および/または透過ポンプを始動させた(上記と同じ流速)。これにより、透過液が引き出されにつれて、入れ替わりに透析バッファが保持液容器に引き入れて、保持液容器内が真空状態になる。このように、透過液が放出されるにつれて、保持液は連続的に補充されることによって一定のレベルに維持される。これは、透析プロセスである。場合によっては(系内の大気の漏れが原因で真空が不十分になったとき)、透析バッファを透過液と同じ速度で、保持液にポンプで注入した。ダイアフィルトレーションを、洗浄量(1洗浄量=保持液の量)の目標数に対して実行した。透析を停止するために、透過液を閉じ(バルブを閉じて透過ポンプを停止させる)、次いで保持液容器を大気に開放し、バッファラインを閉じた。
【0240】
第2のTFF濃縮
【0241】
ダイアフィルトレーションの後、TFF濃縮を再開した。目標の減少量が達成された後、透過バルブを閉じ、次いで背圧バルブを完全に開いて、濃縮プロセスを停止させた。保持液の流体ラインを一掃してから、最終生成物を収集し、このTFF後の生成物を、PicoGreenアッセイによる分析試験およびDNA濃度決定にかけた。残りを、直ちに−80℃で貯蔵し、あるいは分析試験が完了するまで4℃で貯蔵し、その後速やかに使用するか、あるは貯蔵のために凍結させた。
【0242】
TFF後のpH調整
【0243】
別段の記載がなければ、最終TFF後の生成物のpHは、pH調整バッファを加えることによって速やかにpH値を調整した。バッファ組成物は、通常、ショ糖の溶液中に、酢酸および/またはキトサンを含んだ。この溶液を、4.5:95.5の体積比でそれぞれ最終TFF生成物に加えた。この追加の量は、TFF後の生成物の濃度を4.5%低下させた。
【0244】
分析試験
【0245】
粒子サイズ測定
【0246】
粒子サイズ測定は、Zetasizerのナノ光散乱機器を使用して行われる。記載した場合を除いて、試料は10mMのNaCl(最低0.4mL)で20倍に希釈して、ディスポーザブルキュベットに充填した。3連での3分間の測定に先立ち、Zetasizerをプログラムして、試料を25℃で3分間インキュベートした。Z−平均および多分散(PDI)を標準偏差(n=3)を用いて報告した。希釈した試料に対しては、Zetasizerをプログラムして、10mMのNaClの粘性および屈折率を用いた。
【0247】
ゼータ電位
【0248】
ゼータ電位測定を、Zetasizerナノ光散乱機器を用いて行った。通常、無希釈の試料は、折り返しキャピラリーセルZetasizer(最低0.8mL)に充填した。複製測定(複製の回数はZetasizerソフトウェアによって自動的に決定された)に先立ち、試料を25℃で3分間インキュベートetasizerをプログラムして、試料を25℃で3分間インキュベートした。ゼータ電位値は、標準偏差(n=3)を用いて報告した。また、Zetasizerは、粘性および誘電率に関して試料の最終組成物を説明するようにプログラムされた。
【0249】
凍結による短期間の安定性
【0250】
短期安定性試験のため、ポリプレックスの最終生成物を、適当な温度(−20℃、−30℃または−80℃)で一晩冷凍、貯蔵された。場合によっては、試料はドライアイス/エタノール浴槽で急速に冷凍させ、次いで適当な温度で貯蔵された。記載するように、適当な時間で試料を室温まで解凍して、分析した。
【0251】
キトサナーゼ消化
【0252】
50μLのポリプレックスを、50μLの4.44U/mLキトサナーゼを用いて37℃で2時間消化させた。(ストックのキトサナーゼの濃度は、62U/mLであり、37℃で、冷たい50mM NaOAc、pH5.5で希釈した。)C(24,98)−N40−c75粒子の場合、0.909〜1.818mMのキトサンを消化させて、すべてのDNAを放出させることが最善であり、そのため粒子を150mMのNaOAc、pH5.5中、37℃で1:10および1:5に希釈した。
【0253】
PicoGreenによるDNAの定量化
【0254】
PicoGreenアッセイを用いてのDNA測定に先立ち、キトサナーゼによってポリプレックスから全DNAを放出しなければならない。放出に続いて、スーパーコイルDNAプラスミドを線形化するために、DNAを適切な制限酵素によるDNA消化にかける。
【0255】
EcoR1消化
【0256】
インキュベーション後、キトサナーゼで消化した試料のうちのXuLを5uLのEcoR1と、5uLのEcoR1バッファにに加え、次いでMiIIiQ水で最終50uL最終的な量にした。(最終的なDNA濃度が4ng/μLになるように、試料の量、XμLを調節した。)次いで、EcoR1試料を37℃で30分間、インキュベートした。
【0257】
PicoGreenアッセイ
【0258】
PicoGreen Qiant−iT ds DNA HS Assayキットに、2つのバッファ(AおよびB)ならびに2つの標準(1および2)を供給した。バッファAを1:20でバッファBに希釈して、溶液「A/B」を作製した。標準1および2を溶液A/Bで20倍に希釈した(10μLを200μLに)。標準1および2の最終濃度は、それぞれ0および10ng/μLであった。
【0259】
10〜20μLのEcoR1消化試料を溶液A/Bを用いて200μLの最終的な量にして、短時間ボルテックスを行い、室温で2分間インキュベートし、次いでQubit Fluorometer上で、製造者の説明書によって測定した。
【0260】
ゲル電気泳動
【0261】
ポリプレックスへのDNA捕獲の確認のために、試料をゲル電気泳動にかけた。
1〜5μL(800ng DNAの目標)の試料アリコートと、2μLのTrackit添加バッファとを組み合わせて、水を加えて最終10μLの量にした。標準レーンをSupercoiled DNAラダーにロードした。臭化エチジウム(50μg/mL)を含有する0.8%アガロースゲル上で、120Vで45分間、試料を分解させた。
Fluorchem Imaging Systemを用いてゲルを撮像した。
【0262】
SEAPアッセイ
【0263】
SEAP Chemiluminescent Assayキットを用いてSEAPアッセイを行った。使用に先立ち、アッセイ用のすべての試薬を25℃で30分間、平衡化した。アッセイ用の標準は、0.1%ウシ血清アルブミンおよび50%のグリセロールを添加したキットからの1×希釈バッファに胎盤性アルカリフォスファターゼを1mg/mLまで溶解させ、次いでDMEMを用いて10倍段階希釈によっ0.01pg/μLまで希釈することによって、調製した。次いで、標準および解凍した試料を、希釈バッファで1:4に希釈し、65℃で30分間、熱失活させて、氷上で2分間インキュベートしてから、遠心(16100×rcf、室温で2分間)させて、その上清を新しい管に移した。25℃で5分間,平衡化してから、50μLの試料および標準を、2連のMicrolite−1プレートの各ウェルに加えた。次いで、失活バッファ(50μL)を各ウェルに加えてから、静かに上下にピペッティングすることにより、気泡を作らぬように混合させて、5分間インキュベートした。基質とエンハンサーを1:19の比で5分間インキュベートして、基質/エンハンサー試薬を調製した。次いで、この基質/エンハンサーを各ウェルに加えて、20分間インキュベートして、プレートをルミノメータで1秒間の積分時間で読み込んだ。
【0264】
ニンヒドリンアッセイ(全キトサン)
【0265】
ポリプレックス中の全キトサン濃度を、ニンヒドリンアッセイを使用して決定した。簡単に言えば、ポリプレックスを、1〜2mMグルコサミンを含有するよう、酢酸ソーダで希釈し、150mM、pH5.5の最終濃度にした。同じ鎖長のキトサンから調製される標準曲線は、70mMの酢酸ソーダ、pH5.5を用いて0.5〜7.5mMのグルコサミン濃度に希釈する。次いで、希釈したポリプレックスおよび標準を、50mM酢酸ソーダ、pH5.5、中の等量の5μ/mLキトサナーゼ(pH 5)を用いて37℃で2時間消化さでる。2時間のインキュベーションの後、次いで消化した100μLのポリプレックスおよび標準を、400μLの70mM酢酸ソーダが入っているガラス管に加える。次いで、ニンヒドリン試薬(250μL)を、各試料に加えて、ガラス管を短時間ボルテックスして10分間沸騰させる。室温で15分間冷却した後、エタノールを25mL加えて、550nmで吸光度値を測定する。ポリプレックス中のキトサン濃度を、線形標準曲線の勾配とy切片から算出して、最初の希釈係数で調節する。
【0266】
実施例1:ダイフィルトレーションの第1の小規模試験
【0267】
ダイアフィルトレーション試験のバッチパラメータを表2に記載する。出発原料としてc150−pH4.0製剤を用いた。充填および終了の前に最終ステップとして、pH/アセテート調節ステップを追加した。
【0268】
表2.パラメータおよび結果
【表4】
【0269】
実施例2:ダイアフィルトレーションの第2の小規模試験
【0270】
ダイアフィルトレーションの2回目の試験(表3)では、バッチの大きさが3倍大きく、出発原料としてc150−pH4.0製剤を使用した。充填および終了の前に最終ステップとして、pH/アセテート調節ステップを追加した。
【0271】
表3.パラメータおよび結果
【表5】
【0272】
実施例3:小規模のバッチ
【0273】
ダイアフィルトレーションの第3試験(表4.)を実施した。このバッチも、出発原料としてc150−pH4.0製剤を用いた。
【0274】
表4.パラメータおよび結果
【表6】
【0275】
実施例4:中規模バッチ
【0276】
表5.パラメータおよび結果
【表7】
【0277】
TFF濃縮ステップ間のpH推移
【0278】
TFF濃縮プロセスを使用したいくつかのバッチでは、pHが通常、0.2から0.5単位上昇することに注目した。これは、TFFが進行するにつれて、製剤中の全アセテート対全キトサンの相対濃度の変化による、すなわち、pHが[キトサン]:[アセテート]の関数である。これをモデル化した。DNAが0.60mg/mLから2.0mg/mLに増加したので、ダイアフィルトレーションのステップの後、pHを念入りにモニターした。このモデルに関して、以下の仮定がなされた:
【0279】
透析の後、[アセテート]が10mMで一定であると仮定する
【0280】
濃縮ステップのスタート時、任意の[キトサン]を1mMと仮定する
【0281】
[キトサン]が減少量とともに比例して増大すると仮定する
【0282】
製剤のpHがヘンダーソン・ハッセルバッハ緩衝作用の理論を基づくと仮定する
【0283】
このpH推移をモデル化するため、pH対Log([キトサン]/[アセテート]をプトットして、得られた曲線を決定した:
【0284】
pH=0.6664×Log([キトサン]/[アセテート])+4.7208
【0285】
図6.TFF濃縮の間のpH推移のモデル化。各点は、ポリプレックスの相対的量−倍減少(=DNA濃度の増大)を示す。たとえば、2×の標識の付いた点は、およそc1200である。
【0286】
c1200製剤にアセテートを添加して80mMにした後、このモデルを用いて、c1200のpHを予想することができる。c1200中のキトサンは2×(すなわち、2×1mM=2mM)であると推定する。
全アセテートが80mMであると推定すると、pH=0.6664×Log(2/80)+4.7208=3.65。この結果は、実験による結果の3.7に極めて近い。
【0287】
80mMの最終的な所望のキトサン濃度で4.0のpH値を達成するために、キトサン濃度はこのバッチの出発量よりも6.6倍多いはずであることもこのモデルは示している。したがって、キトサンを含まないバッファでダイアフィルトレーションを実行する場合、これは遊離キトサンのほぼ全てを取り除くことになり、その上pH(4.0)およびアセテート(80mM)の同時目標を達成することができない。したがって、ダイアフィルトレーションは、キトサンを含むバッファで行われることが好ましい。
【0288】
TFF後の安定性
【0289】
重要なプロセスパラメータは、第2のTFF濃縮ステップの完了後である。他の前のステップと異なり、ポリプレックスはc1100への濃縮後は安定でなく、かつTFF停止から1時間以内に低いpH値に調節しなけれなばらない。一旦pHを調節すると、粒子は室温で安定になる。
【0290】
図7.第2のTFF濃縮ステップ後のポリプレックスの安定性。無希釈のTFF後の試料を、25℃でインキュベートし、2時間ごとに、粒子径をモニターした。
【0291】
実施例5:キトサン含有バッファを用いるダイアフィルトレーションのための中規模試験
【0292】
表6.パラメータ
【表8】
【0293】
表7.分析結果
【表9】
【0294】
図8.インプロセスpHデータ。X軸の上のTFF画分コードは、以下の通りである:C1:TFF濃縮ステップ#1;D:(洗浄量(WV)の#で示したTFFダイアフィルトレーション;C2:TFF濃縮ステップ#2。
【0295】
実施例6:pH4透析バッファによる小規模バッチ
【0296】
TFFの間、生成物のpHをより良く制御するために、ダイアフィルトレーションバッファを低いpHに修正した。以下の表に実験および結果の概略を述べる。
【0297】
表8.パラメータ
【表10】
【0298】
表9.分析結果
【表11】
【0299】
実施例7:pH4透析バッファによる中規模バッチ
【0300】
中規模バッチを3タイプ生成した。以下の表に、実験および結果の概略を述べる。
【0301】
表10.パラメータ
【表12】
【0302】
表11.分析結果
【表13】
結果は、3タイプのバッチの平均である。
【0303】
4.0の最終pH値を有するc1000ポリプレックスを製造するために、DNAとキトサンのインライン混合、TFF濃縮、TFFダイアフィルトレーションおよびpH調節を行った。最終製剤も、70〜80mMアセテートの緩衝能を有し、かつ生理的に等張であった。加えて、ナノ粒子分散は、−80℃凍結の間、室温解凍、解凍後少なくとも8時間の間安定であった。
【0304】
実施例8:−80℃での長期安定性
【0305】
−80℃での1年の貯蔵後、中規模製造からの最終生成物は光学的に半透明であり、かつ可視微粒子が含まれていなかった(データ図示せず)。
【0306】
中規模バッチに由来するキトサン−DNAナノ粒子は、−80℃で最高1年の間物理的に安定であった。粒子径、多分散および由来する計数率の変化は、ごくわずであった(表12)。小規模のバッチも、4ヵ月までの短期間試験の間は安定であった。
【0307】
表12.−80℃での安定性:粒径、PDI、およびDCR
【表14】
【0308】
中規模バッチに由来するキトサン−DNAナノ粒子は、−80℃で1年の間は、電気的に安定であった。導電率およびpHの変化は、ごくわずかであり分析誤差内であった(表13)。
ゼータ電位は1年間にわたり15〜30%増加したように思われるが、10%の変動はこのアッセイの場合正常と思われる(Malvern Instruments Technical Note MRK1031−01)。それにもかかわらず、1年後の電気特性は、依然として製品リリース仕様の範囲内であった。小規模のバッチは、4ヵ月のた短期間試験の間は安定であった。
【0309】
表13.−80℃での安定性: 導電率およびpH
【表15】
【0310】
DNAプラスミドの被包が維持されたことは、アガロースゲル電気泳動法によって示された。−80℃での1年間の貯蔵後のポリプレックスの2つの中規模バッチを、アガロースゲル電気泳動法によって分析した。DNAはポリプレックス中で被包された状態のままであり、かつ試料ウエル中に保持されており、カソードの方へ移動してなかった(図12)。
【0311】
実施例9:ブタの十二指腸への製剤送達
【0312】
製剤は、終夜絶食させたブタの十二指腸に内視鏡を介して送達された。簡単に言えば、内視鏡の先端が十二指腸への幽門括約筋を過ぎて入口に到達するまで、大腸内視鏡は麻酔下のブタの口に挿入した。0.3mg/kgのBuscopan(ぜん動を低下させるために)のIV投与の後、内視鏡を総胆管を越えてさらに20cm挿入した。この時点で、特注の二重バルーンカテーテルを内視鏡の送達チャネルを介して十二指腸内に進め、次いで、遠位および近位のバルーンを15〜20mLの生理食塩水で膨らませつつ、近位バルーンが総胆管の少なくとも5cm遠位にあることを確実にした。次いで、両バルーン間の中間組織にカテーテル内の送達ポートを介して後から送達した流体を満たして、排出させることによって十二指腸を洗浄した。流体洗浄の順は、45mLの生理食塩水での洗浄を3回、続いて生理食塩水中0.5%のMucomystでの洗浄を1回、続いて7.5%ショ糖中の25mM酢酸ソーダバッファ、pH5.5、での洗浄を1回であった。中間の十二指腸部が完全に空になったことを確実にしてから、製剤(高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物)をカテーテル送達ポートを介して十二指腸部に送達して、60分間インキュベートした。インキュベーションの後、遠位および近位のバルーンを収縮させ、次いで内視鏡とカテーテルを取り除いた。
【0313】
ブタ血漿収集
【0314】
ブタ血漿を、以下の手順で収集した。鎮静状態にある動物の耳静脈、伏在静脈または頚静脈から約5mLの血液を、50μLのアプロチニン(4.7単位/mgタンパク質、6.6単位/mL)を前もって添加したバキュテナーに採取して、直ちに氷上に配置し、試験のために研究室に送った。この血液試料を1000×gで10分間回転させて、その上清を収集することで血漿を収集した。分析準備が整うまで、収集した血漿を−80℃で保存した。
【0315】
結果
【0316】
ブタ血漿SEAPは、gWIZ−SEAPプラスミドDNAを含有するc150キトサン−核酸粒子の投与に応答させて検出した。pH4の製剤処方は、C(24,98)−N20−c150−Ac25−Suc9−pH4.0であった。pH4.8の製剤処方は、C(24,98)−N20−c150−Ac25−Suc9−pH4.8であった。
【0317】
血漿中での高レベルのSEAPによって証明されたように、4.0のpH値の高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物は、インビボでpH4.8組成物よりも実質的に高いトランスフェクション効率を示した。(図1)。
【0318】
実施例10:マウス膀胱のインビボトランスフェクション
【0319】
ナイーブC57BL/6マウスに、EFIa−SEAPまたは対照ビヒクルを担持するキトサン−DNAポリプレックスC(24,98)−c1000−pH4を投与した。2日後に、マウスを屠殺して、組織を収集した。ナイーブマウス(非形質移入)を超える、処置されたマウスの膀胱組織内のSEAP mRNAでの相対的な増加を図9に示す。
【0320】
方法
【0321】
開腹術による外科的切開をC57BL/6雌マウスの腹部において行い、膀胱を露出させて、分離した。EF1a−SEAPまたは対照ビヒクルを担持する、pH4のc1000C(24,98)キトサンポリプレックスを100μL送達した後に、尿を取り出した。送達から2日後に、RNA抽出続いてSEAP mRNA発現分析のためのRT−qPCRのために、膀胱組織を採取した。
【0322】
結果
【0323】
高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物は、インビボで膀胱の細胞に効率的にトランスフェクトすることができた。
【0324】
実施例11:慢性IBDモデルにおける繰り返し投与の有効性
【0325】
自然に慢性大腸炎を発症したIL−10欠損マウスを用いて、繰り返し投与試験を開始した。これらのマウスについて、大腸炎の発症の症状を毎週モニターした。大腸炎の発症を確認した(たとえば、軟便および血便)後、これらのマウスにEG−10またはSEAP(対照)ナノ粒子の3投与を浣腸を介して投与した。ナノ粒子の各投与を7日間隔で投与した。実験期間中これらのマウスの体重を毎週モニターして、毎週の処置の後に、EG−10処置群と関連して体重増加において有意な改善が観察された(図10)最後の処置から5日後に、両群からのマウスを屠殺して、それらの結腸を摘出して、炎症性サイトカインのレベルを測定した。SEAP処置したマウスと比較すると、EG−10処置したマウスは、IL−6、IL−1β、およびTNF−α mRNAのレベルの減少が生じた(図11)。これらのデータを組み合わせると、複数回の投与の可能性を明瞭に示し、慢性マウスIBDモデルにおいてEG−10の治療効果が改善した。
【0326】
図10:慢性IBDマウスの体重へのEG−10(hlL−10)の効果。自然に発症した大腸炎(およそ30週齢で)を有するIL−10欠損マウスに、EG−10またはSEAPナノ粒子(対照)を浣腸によって、7日間隔で3回投与することで処置した。各マウスの体重を毎週測定して、初回処置前のそれ自体の体重と比較した(%重量変化で表した)。両方のナノ粒子の製剤処方は、C(24,98)−N10c1000−Ac70−Suc9−ph4.0であった。EG−10ナノ粒子は、伸長因子1−αプロモータ(EF1a)の制御下で、ヒトインターロイキン−10遺伝子(hlL−10)とともにDNAプラスミドを含んだ。SEAP(対照)ナノ粒子は、伸長因1−αプロモータ(EF1a)の制御下で、分泌型胎盤アルカリホスファターゼ遺伝子(SEAP)とともにDNAプラスミドを含んだ。
【0327】
図11:EG−10(hlL−10)ナノ粒子の3種類の炎症性サイトカインへの効果。自然に発症した大腸炎(およそ30週齢で)を有するIL−10欠損マウスに、EG−10またはSEAP(対照)ナノ粒子を浣腸によって、7日間隔で3回投与することで処置した。最後の処置から5日後に、炎症性サイトカインレベルを、屠殺したマウスの結腸内のIL−6、TNF−αおよびIL−1βで測定した。両方のナノ粒子の製剤処方は、C(24,98)−N1−c1000−Ac70−Suc9−ph4.0であった。EG−10ナノ粒子は、伸長因子1−αプロモータ(EF1a)の制御下で、ヒトインターロイキン−10遺伝子(hlL−10)とともにDNAプラスミドを含んだ。SEAP(対照)ナノ粒子は、伸長因1−αプロモータ(EF1a)の制御下で、分泌型胎盤アルカリホスファターゼ遺伝子(SEAP)とともにDNAプラスミドを含んだ。
【0328】
実施例12:COPDまたは喘息を処置するためのインビボマウストランスフェクション:肺へのポリプレックスの送達
【0329】
マウスCOPDを確立するために、マウスをたばこの煙に4〜5日間曝して亜急性曝露を、または6ヵ月間曝して慢性曝露を確立する。曝露は以前に記載されているように鼻のみの曝露システムを通してまたは煙チャンバーを介してのいずれかで行う。(たとえば、Fortin et al., 2009, A multi−target antisense approach against PDE4 and PDE7 reduces smoke−induced lung inflammation in mice. Respir Res 2009 May 20;10:39; Miller et al., 2009, Adiponectin and functional adiponectin receptor 1 are expressed by airway epithelial cells in chronic obstructive pulmonary disease. J Immunol 2009 Jan 1;182(1)684−91;Bonneau et al., 2006, Effect of adenosine A2A receptor activation in murine models of respiratory disorders. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2006 May,290(5);L1036−43. Epub 2005 Dec 9; Brusselle et al., Murine models of COPD. Pulm Pharmacol Ther 2006,19(3);155−65 Epub 2005 Aug 3;および D’hulst et al.,2005, Time course of cigarette smoke−induced pulmonary inflammation in mice. Eur Respir J 2005 Aug;26(2):204−1)。
マウスCOPDも、以前に記載されているように、ブタ脾臓エラスターゼに気道を4〜5週間曝すことによって確立し得る(たとえば、Cheng et al.,2009, Prevention of elastase−induced emphysema in placenta growth factor knock−out mice. Respir Res. 2009 Nov 23;10:115.;およびPang et al.,2008, Diminished ICAM−1 expression and impaired pulmonary clearance of nontypeable Haemophilus influenzae in a mouse model of chronic obstructive pulmonary disease/emphysema. Infect Immun. 2008 Nov;76(11): 4959−67. Epub 2008 Sep 15,を参照されたい)。
【0330】
マウス喘息モデルを確立するために、マウスに水酸化アルミニウムを混合したトリ卵白アルブミンを腹腔内注射する。最初の注射から数日後、前述のようにマウスに卵白アルブミンを鼻腔内投与する(Bonneau et al., 2006, 上記を参照;およびBoulares et al., 2003, Gene Knockout or Pharmacological Inhibition of Poly(ADP−Ribose) Polymerase−1 Prevents Lung Inflammation in a Murine Model of Asthma. American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology. Vol. 28, pp.322−329)。
【0331】
COPDまたは喘息モデルを処置するために、抗炎症性タンパク質をコードする治療用核酸を含む高酸性キトサン−DNAポリプレックス組成物を用いる。抗炎症性タンパク質は当該技術分野で周知である。代表的な抗炎症性タンパク質は、表14の参考文献に記載する。すべての参考文献は、その全てが参照により本明細書に明示的に組み込まれる。高酸性キトサン−DNAポリプレックス組成物を肺に、鼻腔内にまたは麻酔下で気管内に投与する(たとえば、Dow et al.,1999, infra;およびHogan et al., 1998,後述、を参照されたい)。
々の時点で、マウスを屠殺し、それらの肺組織を収集して、導入遺伝子mRNA発現および種々のサイトカインの発現のために処理する(たとえば、Dow et al., 1999, infra;およびHogan et al., 1998,後述、を参照されたい)。DNA単体を対照として単体で注射する。高酸性キトサン−DNAポリプレックス組成物の鼻腔内/気管内送達は、インビボで肺細胞での抗炎症性遺伝子mRNAの発現の有意な増大をもたらし、かつ炎症性サイトカインプロフィールの減少を媒介する。
【0332】
実施例13:インビボマウストランスフェクション:膀胱炎を処置するための膀胱へのポリプレックス送達
【0333】
膀胱炎モデルを確立するために、マウスまたはラットを用いることもある。たとえば、マウスを麻酔下で配置して、尿道にポリエチレンカテーテルでカニューレ処置する。尿の吸引の後で、前述のように膀胱に酸を滴下注入して膀胱炎を誘発させる(たとえば、KifImoto et al.,2007, Beneficial effects of suplatast tosilate (IPD−1151T) in a rat cystitis model induced by intravesical hydrochloric acid BJU lnt 2007 Oct, 100(4) 935−9 Epub 2007 Aug 20;および、Chuang et al., 2003, Gene therapy for bladder pain with gene gun particle encoding proopiomelanocortin cDNA J Urol 2003 Nov, 170(5) 2044−8)。
【0334】
膀胱炎を処置するために、マウスを麻酔して、抗炎症性タンパク質をコードする治療用核酸を含む高酸性キトサン−DNAポリプレックス組成物を尿道カテーテルを介して膀胱に小胞内投与する(たとえば、Kirimoto et al.,2007,前述、およびChuang et al., 2003、前述、を参照されたい)。代表的な抗炎症性タンパク質は、表14の参考文献に記載する。すべての参考文献は、その全てが参照により本明細書に明示的に組み込まれる。種々の時点で、マウスを屠殺し、それらの膀胱組織を収集して、組織学的検査および導入遺伝子mRNA発現ために処理する。加えて、種々のサイトカインの発現を調べる。DNA単体を対照として単体で注射する。高酸性キトサン−DNAポリプレックス組成物の小胞内送達は、インビボで膀胱細胞での抗炎症性遺伝子mRNAの発現の有意な増大をもたらし、かつ炎症性サイトカインプロフィールの減少を媒介する。
【0335】
表14:代表的な抗炎症性タンパク質
【表16】
【表17】
【表18】
【0336】
すべての引用は、その全てが、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【技術分野】
【0001】
関連出願に関する相互参照
本出願は、2009年3月31日に出願された米国特許出願第61/165,442号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
本発明は、高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物、ならびにその生成方法と使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
キトサンはN−アセチル−D−グルコサミンおよびD−グルコサミンの非毒性のカチオン性コポリマーである。キトサンは核酸と複合体を形成することができ、細胞をトランスフェクトするためのDNA送達ビヒクルとして使われている。
【0004】
キトサンの多くの生物学的用途は、大きなキトサンポリマーの使用に関連している。およそ数百キロダルトンから数千キロダルトンの大きなキトサンポリマーは、酸性溶液だけに溶解する。稀酢酸は、この大きなキトサン用の溶媒として使用されることが多い。
【0005】
およそ数十キロダルトン以下の低分子量のキトサンは、当初、効果的にパッケージングし、DNAを保護して、DNA送達ビヒクルとして役立たせるにはあまりに小さいと考えられた。しかし、最近になっていくつかのグループは、低分子量のキトサンを用いて、効果的にパッケージングし、DNAを保護して、DNA送達ビヒクルとして役立たせることができることを確立した。低分子キトサンはDNA送達ビヒクルとしての使用に望ましいと見なされてきた。低分子キトサンが生理的pHで高い溶解度を示し、かつ低いpH環境では核酸の分解を促進すると理解されているからである。
【0006】
高濃度の核酸は多くの目的にとって望ましいが、高濃度の均一に分散した、安定のキトサン−核酸複合体を生成することは困難である。混合液中のキトサンおよび核酸の濃度が増加すると、凝集、不安定性、粒子の大きさの変動、および沈殿の原因となる。
【0007】
DNAおよび縮合剤(たとえばポリカオチン性炭化水素)を含む粒子を生成するために同時流動混合を使用することが記載されている(米国特許第6,537,813号)。このような粒子を生成するために、DNA溶液および縮合剤溶液は、同時にかつ別々に、ミキシングおよび粒子形成を備える静的ミキサーまたは動的ミキサーを含む流入ミキサーに導入され得る。導入および濃縮の全プロセスを通してDNAおよび縮合剤の適当なモル比を維持することが重要であり、かつ電荷的中性からの有意な逸脱は、プロセスにおいて不完全な縮合または粒子凝集のいずれかをもたらし得ることを当業者は教示する。
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、キトサンを可溶化するのに通常に用いられよりはるかに下回るpHを有する、高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物が、生理的pHにより近いポリプレックス組成物よりも高い粘膜上皮のインビボトランスフェクション効率を示すことを見出した。本組成物は、4.5未満のpHを有するが、核酸の完全性の安定性と維持、および粘膜上皮送達の適合性の両方を示す。逆説的に、高分子量キトサンより酸性度に低いpHでのその溶解性のために一つには開発された低分子量のキトサンは、本発明での使用に特に適切である。
【0009】
本発明者らは、安定した濃縮した高酸性キトサン−ポリプレックスを生成するために、ポリプレックス凝集および沈殿の問題も克服した。さらに、本発明者らは、等張である濃縮製剤を生成することができた。これは医薬用途および治療用途にとって極めて望ましい。
【0010】
したがって、一態様では、本発明はキトサン−核酸ポリプレックスを含む高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物を提供する。
【0011】
好ましい実施形態では、主題の組成物は、4.5未満のpH、より好ましくは4.2未満、さらに好ましくは4.0未満、さらに好ましくは3.8未満のpHを有する。
【0012】
好ましい実施形態では、対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、治療用核酸を含む。一実施形態では、治療用核酸は、治療用RNAである。別の実施形態では、治療用核酸は、治療用タンパク質をコードする治療用核酸コンストラクトである。
【0013】
好ましい実施形態では、対象組成物は等張性である。
【0014】
好ましい実施形態では、対象組成物は安定している。
【0015】
好ましい実施形態では、対象組成物は均一である。好ましい実施形態では、対象組成物は、0.5未満、より好ましくは0.4未満、さらに好ましくは0.3未満、最も好ましくは0.2未満の平均多分散指数(「PDI」)を有する。
【0016】
好ましい実施形態では、対象組成物は、沈降したポリプレックスを含まない。
【0017】
好ましい実施形態では、対象組成物は0.5mg/mLを超える核酸濃度を有し、かつ沈殿したポリプレックスを含まない。より好ましくは、対象組成物は少なくとも0.6mg/mL、より好ましくは少なくとも0.75mg/mL、さらに好ましくは少なくとも1.0mg/mL、さらに好ましくは少なくとも1.2mg/mL、最も好ましくは少なくとも1.5mg/mLの核酸濃度を有し、かつ沈殿したポリプレックスを含まない。
【0018】
好ましい実施形態では、対象組成物は、凝集阻害剤をさらに含む。好ましい実施形態において、凝集阻害剤は、糖(好ましくはショ糖)である。
【0019】
好ましい実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、平均3000未満。より好ましくは2000未満、さらに好ましくは1500未満、さらに好ましくは1000未満、さらに好ましくは500未満、さらに好ましくは300未満、さらに好ましくは150未満、さらに好ましくは100未満、さらに好ましくは50未満、最も好ましくは30未満のグルコサミン単量体ユニットを有するキトサン分子を含む。
【0020】
好ましい実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、少なくとも2:1、より好ましくは少なくとも5:1、さらに好ましくは少なくとも10:1、さらに好ましくは15:1、最も好ましくは20:1のN:S比を有する。
【0021】
好ましい実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、500kDa未満、より好ましくは300kDa未満、さらに好ましくは250kDa未満、さらに好ましくは150kDa未満、さらに好ましくは100kDa未満、さらに好ましくは50kDa未満、さらに好ましくは25kDa未満、さらに好ましくは16kDa未満、さらに好ましくは8kDa未満、最も好ましくは5kDa未満の平均分子量を有するキトサンを含む。
【0022】
好ましい実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、750nm未満、より好ましくは500nm未満、さらに好ましくは250nm未満、さらに好ましくは200nm未満、最も好ましくは150nm未満の平均径を有する。
【0023】
好ましい実施形態では、対象組成物は、基本的にキトサン−核酸ポリプレックスおよび凝集阻害剤からなる。
【0024】
別の好ましい実施形態では、対象組成物は、基本的にキトサン−核酸ポリプレックスからなる。
【0025】
一態様では、本発明は、本発明の高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物を含む医薬組成物を提供する。
【0026】
好ましい実施形態では、医薬組成物は等張である。別の実施形態では、医薬組成物は高張、または低張であり得る。
【0027】
一態様では、本発明は、粘膜上皮細胞を本発明の高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物と接触させることを含む、粘膜上皮細胞をトランスフェクトする方法を提供する。
【0028】
好ましい実施形態では、粘膜上皮は、消化管組織、気道組織、肺組織、副鼻腔組織、口腔組織、尿路組織、膀胱組織、膣組織、子宮組織、頸部組織、眼組織、食道組織、唾液腺組織、鼻喉頭組織、腎臓組織、および喉頭/咽頭組織からなる群から選択される組織内に存在する。
【0029】
一態様では、本発明は、粘膜上皮の炎症を伴う疾患の患者に本発明の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む、粘膜上皮の炎症を伴う疾患を処置する方法を提供する。対象医薬組成物は、好ましくは粘膜上皮に局所投与される。
【0030】
好ましい実施形態では、対象医薬組成物は、抗炎症性タンパク質をコードする治療用核酸コンストラクトを含む。一実施形態では、抗炎症性タンパク質は、TNFα阻害剤である。別の実施形態では、抗炎症性タンパク質は、IL−1阻害剤である。別の好ましい実施形態では、抗炎症性タンパク質は、IL−10である。
【0031】
好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、炎症性腸疾患(IBD)である。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、間質性膀胱炎である。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、喘息である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】gWIZ−SEAPプラスミドDNAを含むc150キトサン−核酸粒子の投与に応答して検出されたブタ血漿SEAPのグラフである。pH4の場合の製剤処方は、C(24,98)−N20−c150−Ac25−Suc9−pH4.0であった。pH4.8の場合の製剤処方は、C(24,98)−N20−c150−Ac25−Suc9−pH4.8であった。
【図2】1Lのインライン混合バッチおよびTFF濃縮>ダイアフィルトレーション>濃縮の代表的なプロセスブロック図である。
【図3】小規模のインライン混合模式図である。シリンジは、ラテックスフリーポリプロピレン(PP)であり、それぞれ最高60mLまでスケールアップされ得る。2台の高精度のシリンジポンプが、シリンジを駆動する。チューブは、1/16”のPt硬化シリコーンである。示される混合ジャンクションは、Y字形である。構造体の混合ジャンクションの材料は、PPである。
【図4】10L用の中規模インライン混合の模式図である。表示された模式図は、10Lバッチ用である。すべての容器は、より少ないまたはより大きいバッチの大きさによって、縮小、拡大される。Pt硬化チューブの径は、0.48cm(3/16”)である。ポンンプの流速は、2:1のDNA:キトサンの量の混合比で示される。
【図5】TTFF濃縮およびダイアフィルトレ−ションの模式図。TFFダイアフィルトレーションの模式図を示す。TFF濃縮の間、透析バッファラインは保持液容器から分離されて、大気ベントフィルターと交換される。
【図6】TFF濃縮間のpHの推移のモデル化グラフである。各点は、ポリプレックスの相対的な量の倍減少(=DNA濃度の増加)を示す。たとえば、2×標識の点は、ほぼc1200である。
【図7】第2のTFF濃縮ステップ後のポリプレックスの安定性を示すグラフである。無希釈のTFF後の試料を、25℃でインキュベートし、2時間ごとに粒径をモニターした。
【図8】インプロセスpHデータのグラフである。X軸の上のTFF画分コードは、次の通りである:C1:TFF濃縮第1のステップ;D;TFFダイアフィルトレーション(洗浄量(W/V)の回数で示される);C2:TFF濃縮第2のステップ。
【図9】マウス膀胱のインビボトランスフェクションに関するグラフである。ナイーブC57BL/6マウスに、EF1a−SEAPまたは対照ビヒクルを担持するキトサン−DNAポリプレックスC(24,98)−c1000−pH4を送達した。2日後に、マウスを屠殺して、組織を収集した。ナイーブマウス(非形質移入)を超える、処置されたマウスの膀胱組織におけるSEAP mRNAの相対的な増加を示す。
【図10】EG−10(hIL−10)高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物の慢性IBDマウスの体重への効果に関するグラフである。高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物の各投与を、7日間隔で投与した。これらのマウスの体重を、実験全期間を通して毎週モニターした。各毎週の処置後、EG−10処置された群に関連して体重増加の有意な改善が観察された。
【図11】EG−10(hIL−10)高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物の3種類の炎症性サイトカインへの効果に関するグラフである。最後の処置から5日後に、両群からのマウスを屠殺して、結腸を摘出し、炎症性サイトカインのレベルを測定した。SEAP処置したマウスと比較すると、EG−10処置したマウスは、IL−6,IL−1βおよびTNF−α mRNAのレベルの減少がもたらされた。
【図12】−80℃で360日後の中規模製造からのポリプレックス最終生成物の2つのバッチ(DP0−0089およびDP−0090)に対するアガロースゲル電気泳動を示す画像である。ポリプレックスおよびDNA(高次コイルおよびニックの入った)の位置を示す。製剤処方は、C(24,98)−N10−c1000−Ac70−Suc9−pH4.0であった。
【発明を実施するための形態】
【0033】
「キトサン−核酸ポリプレックス」、「キトサン−核酸ポリプレックス粒子」、「キトサン−核酸複合体」、「ポリプレックス」または文法的に同様ななものによって、複数のキトサン分子および複数の核酸分子を含む複合体を意味する。キトサン単量体には、リガンドが付着したキトサンを含む誘導体が含まれる。「誘導体」とは、共有結合的に修飾されたN−アセチル−D−グルコサミンおよび/またはD−グルコサミユニット、ならびに他のユニットを組み込んでいる、または他の残基に付着したキトサン系ポリマー類を含む、キトサン系ポリマーの幅広いカテゴリーが挙げられると理解される。誘導体は、ヒドロキシル基またはグルコサミンのアミン基の修飾に基づくことが多い。キトサン誘導体の例としては、トリメチル化キトサン、ペグ化キトサン、チオラート化キトサン、ガラクトシル化キトサン、アルキル化キトサン、PEIを組み込んだキトサン、アルギニン修飾されたキトサン、ウロン酸修飾されたキトサン等が挙げられるがこれらに限定されない。キトサン誘導体についての更なる教示としては、たとえば、”Non−viral Gene Therapy”, K Taira, K Kataoka, T Niidome (editors), pp.63−74, Springer−Verlag Tokyo, 2005, ISBN 4−431−25122−7;Zhu et al.,Chinese Science Bulletin, December 2007, vol 52 (23), pp 3207−3215, 国際公開第2008/082282号、およびVarma et al., Carbohydrate Polymers 55(2004) 77−93を参照されたい。これらのそれぞれはその全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0034】
分散系は、分散相として知られており、連続培地全体にわたり分布された粒子状物質からなる。キトサン−核酸ポリプレックスの「分散」は、水和キトサン−核酸ポリプレックスを含む組成物であり、ポリプレックスが培地全体にわたり分布されている。
【0035】
本明細書で使用するとき、キトサンポリマーの「平均重量」は、平均分子量の重量をいう。
【0036】
「対アニオン」とは、その位置で荷電したキトサンアミンまたは他カチオンと静電相互作用ができるアニオンを意味する。好ましい対アニオンは、酢酸塩イオンおよび塩化物イオンを含む。
【0037】
本明細書で使用するとき、「予備濃縮」分散は、本明細書に記載するように濃縮分散液を形成するための濃縮プロセスをまだ受けていないものをいう。
【0038】
本明細書で使用するとき、ポリプレックス沈殿物を「含まない」とは、目視検査で観察され得る粒子が組成物には基本的ないことを意味する。
【0039】
2007年3月30日に出願された米国特許出願第11/694,852号に開示されるように、キトサンは調製されてもよい。この出願はその全体を参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0040】
高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物。
【0041】
一態様では、本発明は、キトサン−核酸ポリプレックスを含む高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物を提供する。キトサン−核酸ポリプレックスの核酸成分は、キトサン−核酸ポリプレックスにカプセル封入される。好ましい実施形態では、対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、組成物中で均一で安定である。
【0042】
「均一である」複数のキトサン−核酸ポリプレックスを含む組成物は、ポリプレックスサイズの分布が狭い組成物をいう。ポリプレックスサイズのこの狭い分布は、たとえば、組成物の「多分散指数」(PDI)によって測定されることができる。対象組成物のための好ましいPDIは、0.5未満、より好ましくは0.4未満、さらに好ましくは0.3未満、最も好ましくは0.2未満である。
【0043】
「安定な」複数のキトサン−核酸ポリプレックスを含む組成物は、ポリプレックスが安定したサイズを保つ、すなわち、時間とともにサイズまたは凝集体が増加する傾向がない組成物をいう。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、室温で少なくとも6時間、より好ましくは少なくとも12時間、さらに好ましくは少なくとも24時間、最も好ましくは少なくとも48時間の間に、平均径が100%未満、より好ましくは50%未満、最も好ましくは25%未満増加するポリプレックスを含む。
【0044】
対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、冷却条件下で安定であるのが好ましい。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、2〜8℃で少なくとも6時間、より好ましくは少なくとも12時間、さらに好ましくは少なくとも24時間、最も好ましくは少なくとも48時間の間に、平均径が100%未満、より好ましくは50%未満、最も好ましくは25%未満増加するポリプレックスを含む。
【0045】
対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、凍結融解条件下で安定であることが好ましい。好ましい実施形態では、本発明の組成物は、−20〜−80℃での凍結から融解の後に、室温で少なくとも6時間、より好ましくは少なくとも12時間、さらに好ましくは少なくとも24時間、最も好ましくは少なくとも48時間の間に、平均径が100%未満、より好ましくは50%未満、最も好ましくは25%未満増加するポリプレックスを含む。
【0046】
本発明のキトサン−核酸ポリプレックス内の核酸のカプセル封入は、たとえば、ゲル電気泳動での核酸の遅滞によって示されることができる。
【0047】
好ましい実施形態では、対象組成物は、4.5以下のpH、より好ましくは4.2以下、さらに好ましくは4.0以下、さらに好ましくは3.8以下のpH値を有する。
【0048】
一実施形態では、対象組成物は、3.5〜4.5の範囲のpHを有する。一実施形態では、対象組成物は、3.6〜4.2の範囲のpHを有する。一実施形態では、対象組成物は、3.8〜4.2の範囲のpHを有する。
【0049】
好ましい実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、3000未満、より好ましくは2000未満、さらに好ましくは1500未満、さらに好ましくは1000未満、さらに好ましくは500、さらに好ましくは300未満、さらに好ましくは150、さらに好ましくは100未満、さらに好ましくは50、最も好ましくは30未満のグルコサミン単量体ユニットを有するキトサン分子を含む。
【0050】
好ましい実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、500kDa未満、より好ましくは300kDa未満、さらに好ましくは250kDa、さらに好ましくは150kDa、さらに好ましくは100kDa、さらに好ましくは50kDa、さらに好ましくは25kDa、さらに好ましくは16kDa、さらに好ましくは8kDa、最も好ましくは5kDaの平均分子量を有するキトサンを含む。
【0051】
好ましい実施形態では、対象組成物のキトサン成分は、3kDa〜250kDaの平均分子量を有する。
【0052】
一実施形態では、対象組成物のキトサン成分は、250kDa以上の平均分子量を有する。
【0053】
一実施形態では、対象組成物のキトサン成分は、3kDa以下の平均分子量を持つ。
【0054】
好ましい実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、750nm未満、より好ましくは500nm未満、さらに好ましくは250nm未満、さらに好ましくは200nm未満、最も好ましくは150nm未満の平均径を有する。
【0055】
一実施形態では、対象組成物のポリプレックスは、100nmを超える平均径を有する。
【0056】
一実施例では、対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、2:1〜100:1、より好ましくは5:1〜90:1、さらに好ましくは10:1〜90:1、最も好ましくは20:1〜90:1でN:P比を有する。
【0057】
好ましい実施形態では、対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、+20mVと+60mVの間の平均ゼータ電位を有する。
【0058】
一実施形態では、対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、+20mV以下の平均ゼータ電位を有する。
【0059】
一実施形態では、対象組成物のキトサン−核酸ポリプレックスは、+60mV以上の平均ゼータ電位を有する。
【0060】
好ましい実施形態では、ポリプレックスのキトサン分子は、70%を超える、より好ましくは75%を超える、より好ましくは80%を超える、さらに好ましくは85%を超える、さらに好ましくは90%を超える、さらに好ましくは95%を超える、最も好ましくは98%を超える程度の脱アセチル化を有する。
【0061】
一実施形態では、ポリプレックスのキトサン分子は、70%以下の程度の脱アセチル化を有する。
【0062】
好ましい実施形態では、対象組成物は、基本的にキトサン−核酸ポリプレックスおよび凝集阻害剤からなる。対象ポリプレックスおよび凝集阻害剤に加えて、このような組成物は、対アニオンと他の賦形剤とを含み得るが、対象組成物の活性に実質的に影響を及ぼす他の物質を除外する。
【0063】
好ましい実施形態では、対象組成物は、基本的にキトサン−核酸ポリプレックスからなる。対象ポリプレックスに加えて、このような組成物は、対アニオンと他の賦形剤とを含み得るが、対象組成物の活性に実質的に影響を及ぼす他の物質を除外する。
【0064】
好ましい実施形態では、対象組成物は、パラベンを含まない。これは、組成物が0.5mg/mLを超える核酸濃度を有する場合に特に望ましい。
【0065】
好ましい実施形態では、対象組成物は、10mM〜200mMの対アニオン濃度、極めて好まれる60〜100mMの対アニオン濃度を有する。好ましい実施形態では、対アニオンは、アセテートである。
【0066】
好ましい実施形態では、対象組成物は0.5mg/mLを超える核酸濃度を有し、かつ沈殿したポリプレックスを含まない。より好ましくは、組成物は少なくとも0.6mg/mL、より好ましくは少なくとも0.75mg/mL、より好ましくは少なくとも1.0mg/mL、より好ましくは少なくとも1.2mg/mL、最も好ましくは少なくとも1.5mg/mLの核酸濃度を有し、かつ沈殿したポリプレックスを含まない。好ましい実施形態では、組成は水和物である。好ましい実施形態では、組成物は非複合型の核酸を実質的に含まない。
【0067】
好ましい実施形態では、キトサン−核酸ポリプレックス組成物は、さらに凝集阻害剤を含む。凝集阻害剤は、ポリプレックス凝集体および/または沈殿物を部分的にまたは完全に減少させ、かつ、好ましくはタンジェンシャルフロー濾過(「TFF」)を用いる濃縮方法によってキトサン−核酸ポリプレックスを濃縮することを提供する薬剤である。極めて好ましい凝集阻害剤は、ショ糖であるが、他の凝集阻害剤、たとえば、ポリプレックス沈殿を減少させることができ、かつキトサン−核酸ポリプレックスを濃縮することを提供する他の糖質類を用いてもよい。他の凝集阻害剤の例としては、トレハロース、グリセロール、フルクトース、グルコースおよび他の還元糖類および非還元糖類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0068】
好ましい実施形態では、使用される凝集阻害剤は、ショ糖である。キトサン−核酸ポリプレックス分散におけるショ糖の濃度は、好ましくは約3重量%〜20重量%である。最も好ましくは、ショ糖の濃縮は、等張性組成物を与える。
【0069】
好ましい実施形態では、高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物は、等張である。ポリプレックス安定性を維持しつつ、等張性を達成することは医薬組成物を製剤化する際に極めて望ましく、かつこれらの好ましい組成物は医薬製剤応用および治療応用に適切である。
【0070】
別の実施形態では、組成物は高張性または低張性であり得る。
【0071】
核酸
【0072】
高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物は、核酸成分およびキトサン成分を含む。本発明の核酸は通常、ホスホジエステル結合を含むが、しかし一部の場合、種々の目的のいずれか、たとえば安定性および保護等のために組み込んだ交互骨格または他の修飾または残基を有し得る核酸類似体が含まれる。考えられる他の類似体核酸は、非リボース骨格を持つものを含む。核酸は一本鎖もしくは二本鎖であることもあり得、または二本鎖および一本鎖の両配列の部分を含むこともある。核酸にはDNAと、RNAと、デオキシリボ−およびリボ−ヌクレオチドのいずれかの組み合わせ、ならびにウラシル、アデニン、チミン、シトシン、グアニン、イノシン、キサンチン、ヒポキサンチン、イソシトシン、イソグアニン等を含むいずれかの塩基の組み合わせを核酸が含有するハイブリッドが挙げられるがこれらに限定されない。核酸には、三本鎖、二本鎖または一本鎖、アンチセンス、siRNA、リボザイム、デオキシリボザム、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、キメラ、microRNA、およびそれらの誘導体を含む、いずれかの形のDNA、いずれかの形のRNAが含まれる。
【0073】
実施形態では、核酸成分およびキトサン成分を治療用核酸を含む。治療用核酸は、治療用RNAを含む。これは、哺乳類細胞において治療効果を及ぼすことができるRNA分子である。治療用RNAには、アンチセンスRNA、siRNA、低分子ヘアピン型RNA、microRNA、および酵素的RNAが含まれる。治療用核酸には、三重鎖分子、タンパク質結合核酸、リボザイム、デオキシリボザイム、およびヌクレオチド低分子を形成する核酸が含まれる。
【0074】
治療用核酸も、治療用タンパク質をコードする核酸を含む。
【0075】
好ましい実施形態では、核酸成分は、治療用核酸コンストラクトを含む。治療用核酸コンストラクトは、治療効果を及ぼすことができる核酸コンストラクトである。治療用核酸コンストラクトは、好ましくは治療用タンパク質をコードする核酸を含むが、治療用RNAである転写物を代わりに生成することができる。治療用核酸を用いて、治療目的の生成物をコードすることによって、欠陥遺伝子の代替もしくは増強として使用することによる遺伝子療法を行う、または特定の遺伝子生成物の欠如を代償することも可能である。治療用核酸は、内在性遺伝子の発現を阻害することも可能である。治療用核酸は、翻訳生成物のすべてまたは一部をコードすることも可能であり、かつ細胞内にすでに存在するDNAと組み合わせ、それによって欠陥遺伝子もしくはその部分を置き換えることによって機能することも可能である。治療用核酸は、タンパク質の一部をコードし得る。治療用タンパク質は、遺伝子生成物を阻害することによって、その効果を及ぼし得る。好ましい実施形態では、治療用核酸は米国特許出願第11/694,852号に開示されるものから選択される。この出願は参照によりその全体を本明細書に明示的に組み込まれる。また、国際公開第2008020318号を参照されたい。この公開は参照によりその全体を本明細書に明示的に組み込まれる。
【0076】
本発明での使用が考えられる治療用タンパク質としては、ホルモン類、酵素、サイトカイン、ケモカイン、抗体、増殖因子、分化因子、血塊形成に影響する因子、血糖値に影響する因子、糖代謝に影響する因子、脂質代謝に影響づる因子、血液コレステロール値に影響する因子、血液LDL値またはHDL値に影響する因子、細胞アポトーシスに影響する因子、食物摂取に影響する因子、エネルギー消費に影響する因子、食欲に影響する因子、栄養の吸収に影響する因子、炎症に影響する因子、および骨形成に影響する因子が挙げられるがこれらに限定されない。特に好ましいのは、インスリン、レプチン、グルカゴン拮抗剤、GLP−1、GLP−2、GLP−2、Ghrehn、コレシストキニン、成長ホルモン、凝固因子、PYYエリスロポイエチン、炎症の阻害剤、IL−10拮抗剤、IL−17拮抗剤、TNFα拮抗剤、IL−1拮抗剤、成長ホルモン放出ホルモン、または副甲状腺ホルモンをコードする治療用核酸である。
【0077】
本発明で考えられる特に好ましい治療用タンパク質は、抗炎症性タンパク質である。本発明での使用が考えられる抗炎症性タンパク質には、抗炎症性サイトカイン、ならびにたとえば炎症誘発性サイトカイン等の炎症誘発性分子が挙げられるがこれらに限定されない。
代表的な抗炎症性タンパク質としては、IL−10(たとえば、Fedorak et al., 2000, Gastroenterology. 2000 Dec;119(6):1473−82.; Whalen et al., 1999, J Immunol. 1999 Mar 15;62(6):3625−32);IL−IRa(たとえば、Arend et al., 1998, Annu Rev Immunol. 1998;16:27−55; Makarov et al., 1996, Proc Natl Acad Sci U S A. 1996 Jan 9;93(1):402−6);IL−ITa−Ig(たとえば、Ghivizzani et al., 1998, Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Apr 14;95(8):4613−8);IL−4(たとえば、Hogaboam et al., 1997, J Clin Invest. 1997 Dec 1;100(11):2766−76);IL−17可溶性受容体(たとえば、Zhang et al., 2006, lnflamm Bowel Dis. 2006 May;12(5):382−8; Ye et al., 2001, The Journal of Experimental Medicine, Volume 194, Number 4, August 20, 2001 519−528);IL−6(たとえば、Xing et al., 1998, J Clin Invest. 1998 Jan 15;101(2):311−20);IL−11(たとえば、Trepicchio et al., 1997, J Immunol. 1997 Dec 1;159(11):5661−70);IL−13(たとえば、Mulligan et al., 1997, J Immunol. 1997 Oct 1;159(7):3483−9; Muchamuel et al., 1997, J Immunol. 1997 Mar 15;158(6):2898−903);IL−18可溶性受容体(たとえば、Aizawa et al., 1999, FEBS Lett. 1999 Feb 26;445(2−3):338−42);TNF−α可溶性受容体(たとえば、Watts et al., 1999, J Leukoc Biol. 1999 Dec;66(6):1005−13);TNF−α受容体Ig(たとえば、Ghivizzani et al., 1998, Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Apr 14;95(8):4613−8);TGF−β(たとえば、Song et al., 1998, J Clin Invest. 1998 Jun 15;101(12):2615−21; Giladi et al., 1994);IL−12(たとえば、Hogan et al., 1998, Eur J Immunol. 1998 Feb;28(2):413−23);IFN−α(たとえば、Dow et al., 1999, Hum Gene Ther. 1999 Aug 10;10(12):1905−14);IL−4可溶性受容体(たとえば、Steinke et al., 2001 , Respir Res. 2001 ;2(2):66−70. Epub 2001 Feb 19)が挙げられる。
【0078】
特に本発明で用いる好ましい抗炎症性タンパク質としては、IL−10,TNFαタンパク質拮抗剤、およびIL−1のタンパク質拮抗剤が挙げられる。
【0079】
発現調節領域
【0080】
好ましい実施形態では、本発明のポリプレックスは治療用核酸を含む。これはコード領域に作用可能に連結される発現調節領域を含む、治療用コンストラクトである。治療用コンストラクトは、治療用核酸を生成する。これはそのままで治療用であり得、または治療用タンパク質をコードし得る。
【0081】
一部の実施形態では、治療用コンストラクトの発現調節領域には、恒常的活性がある。いくつかの好ましい実施形態では、治療用コンストラクトの発現調節領域には、恒常的活性がない。このため、治療用核酸の動的な発現もたらす。「動的な」発現とは、時間とともに変化する発現を意味する。動的な発現には、検出可能な発現の期間によって分離される低発現期間もしくは発現の非存在の期間等いくつかの期間を含むことがある。いくつかの好ましい実施形態では、治療用核酸は、調節可能なプロモーターに作用可能に連結される。このため、治療用核酸の調節可能な発現をもたらす。
【0082】
発現調節領域は、調節ポリヌクレオチド(本明細書では要素と呼ぶこともある)、たとえば、作用可能に連結された治療用核酸に影響するプロモーターおよびエンハンサーを含む。
【0083】
本明細書に含まれる発現制御要素は、細菌、酵母、植物、または動物(哺乳類もしくは非哺乳類)に由来することが可能である。発現調節領域は、たとえば天然のプロモーター等の完全長プロモーター配列およびエンハンサー要素、ならびに完全長のすべてもしくは部分、または非変異機能を保持する(たとえば、一部の栄養調節または細胞/組織−特異的発現を保持する)サブシークエンスまたはポリヌクレオチド変異体を含む。本明細書で使用するとき、用語「機能の」およびその文法的変異体とは、核酸配列、配列もしくは断片を参照で用いる場合、配列が天然の核酸の配列(たとえば非変異配列もしくは未修飾配列)のうちの1つまたは複数の機能を有することを意味する。本明細書で使用するとき、用語「変異体」とは、配列置換、欠失、もしくは付加、または他の修飾(たとえば、ヌクレアーゼに耐性である修飾形態等の化学誘導体)を意味する。
【0084】
本明細書で使用するとき、用語「作用可能な連結」とは、構成成分がそれらの意図された方法で機能することができるように記載されている、構成成分の物理的並列をいう。核酸との作用可能な連結での発現制御要素の例では、この関係は、制御要素が核酸の発現を調節することである。一般的に、転写を調節する発現調節領域は、転写された核酸の5’末端(すなわち「上流の」)近くに並置される。発現調節領域は、転写された配列の3’末端(すなわち、「下流の」)で、または、転写物内(たとえば、イントロン内に)に位置することもできる。発現制御要素は、転写された配列から離れた距離(たとえば核酸からの100〜500、500〜1000、2000〜5000またはそれ以上のヌクレオチド)に位置することもあり得る。発現制御要素の具体的な例はプロモーターであり、これは通常、転写された配列の5’末端に位置する。発現制御要素の別の例は、エンハンサーであり、これは転写された配列の5’もしくは3’末端、または転写された配列内に位置することもあり得る。
【0085】
一部の発現調節領域は、作用可能に連結された治療用核酸に、調節可能な発現を与える。シグナル(刺激と呼ばれることもある)は、この発現調節領域に作用可能に連結された治療用核酸の発現を増減させることができる。シグナルに応答して発現を増加させるこの発現調節領域は、誘導性と呼ばれることが多い。シグナルに応答して発現を減少させるこの発現調節領域は、抑制性と呼ばれることが多い。一般的に、そのような要素で与えられる増加量または減少量は、シグナルが示す量と比例し、シグナル量が大きくなればなるほど、発現の増加または減少もより大きくなる。
【0086】
多数の調節可能なプロモーターが当該技術分野で既知である。好ましい誘導性発現調節領域は、小分子化学物質で刺激される誘導性プロモーターを有するものを含む。一実施形態では、発現調節領域は経口的に送達可能である化学物質に応答するが、食物では通常見つからない。特定の例は、たとえば、米国特許第5,989,910号;第5,935,934号;第6,015,709号;および第6,004,941号に見出すことができる。
【0087】
一実施形態では、治療用コンストラクトは、組込み配列をさら含む。一実施形態では、治療用コンストラクトは、単一の組込み配列を含む。別の実施例では、治療用コンストラクトは、治療用核酸またはその一部を標的細胞のゲノムに組み込むための第1のおよび第2の組込み配列を含む。好ましい実施形態では、1つまたは複数の組込み配列は、マリナー、スリーピングビューティー、FLP、Cre、φC31、R,λからなる群から選択される組込み手段、ならびにAAV、レトロウイルス、および抗ウイルス等の組込みウイルスからの組込み手段と組み合わせて機能する。
【0088】
一実施例では、対象組成物は、治療用コンストラクトに加えて非治療用コンストラクトをさらに含む。ここで非治療用コンストラクトは、第2の発現調節領域に作用可能に連結した組込みのための手段をコードする核酸配列を含む。この第2の発現調節領域および治療用核酸に作用可能に連結した発現調節領域は、同一であっても、または別であってもよい。組込みのためのコードした手段は、好ましくは、マリナー、スリーピングビューティー、FLP、Cre、φC31、R,λからなる群から選択され、かつAAV、レトロウイルス、および抗ウイルス等の組込みウイルスからの組込み手段から選択される。
【0089】
さらなる教示のために、国際公開第2008020318号を参照されたい。その全体は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0090】
高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物を調製する方法
【0091】
高酸性キトサン−核酸ポリプレックスの組成物は、他の方法、たとえば核酸溶液またはキトサン溶液をもう一方の溶液に滴下することによって混合溶液を形成する等の他の方法も用いることも可能であるが、好ましくはインライン混合によって調製される。しかし、インライン混合は、好ましくは0.5未満の、より好ましくは0.4未満の、より好ましくは0.3未満の、最も好ましくは0.2未満の平均PDIを有するキトサン−核酸ポリプレックスを大容量で均一に調製することをもたらす。好ましい実施形態では、分散液は3.5〜5.5のpH値を有する。
【0092】
インライン混合は、周知のプロセスであり、それによって2種類の(またはそれ以上の)流体ストリームが1つのストリームにまとめられる。インライン混合の付加的な説明およびキトサン−核酸ポリプレックスの濃縮については、2008年9月26日に出願された国際出願第PCT/CA2008/001714号、国際公開第2009/039657号として公開される)に見出される。公開は参照によりその全体を本明細書に明示的に組み込まれる。インライン混合についてのさらなる開示については、たとえば米国特許第6,261,599号および同第6,537,813号を参照されたい。これらのそれぞれは参照によりその全体を本明細書に明示的に組み込まれる。
【0093】
この組成物は、所望の低pH値で複合体に形成され得る、またはより高いpH値で複合体に形成され、複合体形成後にpHを調整して、所望の高酸性分散液を形成してもよい。
【0094】
静的ミキサーおよび動的なミキサー等のミキサーを使用してもよい。この装置は、本方法によって形成される複合体のPDIの増加をもたらす。したがって、本発明の好ましい実施形態では、インライン混合は、このようなミキサーを用いずに行われる。
【0095】
好ましい実施形態では、本発明の高酸性高濃度キトサン−核酸ポリプレックス組成物は、キトサン−核酸ポリプレックスの予備濃縮分散液を濃縮することによって生成される。一実施形態では、予備濃縮分散液は、4.8以下のpH値、好ましくは3.5〜4.5のpH値を有する。別の実施形態では、予備濃縮分散液は、4.5を超えるpH値を有する。濃縮生成物は、4.5以下のpH値にpHを調整されてもよい。予備濃縮分散液は、好ましくは0.5mg/mL未満の濃度を有する。
【0096】
本発明では、タンジェンシャルフローろ過(「TFF」)は、キトサン−核酸ポリプレックスの予備濃縮分散液を濃縮するための好ましい方法である。TFF操作において、一部の液体を膜を通させるために膜に向かって加圧される間に、キトサン−核酸ポリプレックス分散液は、半透性膜の表面を越えてポンピングされる。膜孔より小さい分子は、膜孔を通って輸送され、透過するにつれて、収集される。透過溶質には、塩類、イオン類、糖類、および微生物防腐剤が挙げられるがこれらに限定されない。キトサン−核酸ポリプレックスを含む、膜孔を通過するには大きすぎる分子実体は、ストリーム内に保持されて、保持液として再循環する。TFF濃縮操作において、透過液は取り出され、他方保持液は気圧に開放され、保持液量が減少することになる。TFFを用いることで、ポリプレックス濃度は数倍も増加し、高濃縮ポリプレックス分散液がもたらされ得る。好ましい実施形態では、高濃縮ポリプレックス分散液は等張性である。
【0097】
好ましい実施形態では、この濃縮プロセスは、1つまたは複数のダイアフィルトレーション操作をさらに含む。4.8より高いpH値を有する組成物を用いることもあり得るが、4.8以下のpH値を有する予備濃縮キトサン−核酸ポリプレックス組成物を用いる場合、ダイアフィルトレーションは特に好まれる。
【0098】
TFFダイアフィルトレーション操作では、新しいバッファを保持液に加えることによって透過液は常に補充され、保持液中のバッファの交換をもたらす。TFFダイアフィルトレーションを用いることで、ポリプレックス濃度を維持しつつ、ポリプレックスはバッファ交換されることが可能であり、新しいバッファを有するポリプレックス分散液がもたらされる。
【0099】
一実施例では、濃縮ポリプレックス分散液へのTFF濃縮を行う前に、TFFダイアフィルトレーション操作は、キトサン−核酸ポリプレックスの予備濃縮分散液で行われる。好ましい実施形態では、濃縮ポリプレックス分散液へのTFF濃縮を行ってから、TFFダイアフィルトレーション操作は、キトサン−核酸ポリプレックスの濃縮分散液で行われる。極めて好ましい実施形態では、TFFダイアフィルトレーション操作は、TFF濃縮操作の間に行われる。この操作中に、キトサン−核酸ポリプレックスの予備濃縮分散液は、TFF濃縮によって一部濃縮され、次いでTFFダイアフィルトレーションに掛けられ、次いでTFF濃縮によってさらに濃縮される。これにより、新しいバッファを有する濃縮ポリプレックス分散液がもたらされ、キトサン−核酸ポリプレックスの安定性がさらに促進される。
【0100】
一実施例では、TFFダイアフィルトレーションのための洗浄量の数は、好ましくは40未満である。好ましい実施形態では、TFFダイアフィルトレーションのための洗浄量の数は、好ましくは20未満である。より好ましい実施形態では、TFFダイアフィルトレーションのための洗浄量の数は、好ましくは10未満である。きわめて好ましい実施形態では、TFFダイアフィルトレーションのための洗浄量の数は、好ましくは6未満である。
【0101】
一実施形態では、濃縮操作中に行われるTFFダイアフィルトレーション操作の回数は5未満であり、かつ1を超える。好ましい実施形態では、行われるTFFダイアフィルトレーション操作の回数は、1である。
【0102】
好ましい実施形態では、TFFダイアフィルトレーションバッファは、キトサンを含む。
【0103】
好ましい実施形態では、TFFダイアフィルトレーションバッファは、キトサンおよび対アニオン(好ましくはアセテート)を含む。
【0104】
好ましい実施形態では、TFFダイアフィルトレーションバッファは、キトサン、対アニオン(好ましくはアセテート)、および凝集阻害剤(好ましくはショ糖)を含む。
【0105】
好ましい実施形態では、濃縮キトサン−核酸ポリプレックス分散液のpHは、pH調整バッファを追加することによって、より低いpH値に調整される。
【0106】
好ましい実施形態では、pH調整バッファは、キトサンを含む。
【0107】
好ましい実施形態では、pH調整バッファは、キトサンおよび対アニオン(好ましくはアセテート)を含む。
【0108】
好ましい実施形態では、pH調整バッファは、濃縮キトサン−核酸ポリプレックスをわずかに(好ましくは5%未満)希釈する。
【0109】
好ましい実施形態では、TFF濃縮操作の完了後1時間以内に、pH調整バッファは、濃縮キトサン−核酸ポリプレックスに加えられる。
【0110】
好ましい実施形態では、予備濃縮キトサン−核酸ポリプレックス分散液は、糖(好ましくはショ糖)を含む。後述のとおり、ショ糖が濃縮プロセスの間に粒子の凝集を防止する凝集阻害剤であることが判明した。
【0111】
使用方法
【0112】
一態様では、本発明は粘膜上皮の細胞をトランスフェクトする方法を提供する。これらの方法は、粘膜上皮の細胞を本発明の高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物と接触させることを含む。一実施形態では、トランスフェクションはインビトロで行われる。別の実施形態では、トランスフェクションはインビボで行われる。対象組成物は、組成物の高酸性にもかかわらず、粘膜上皮の投与に適しており、かつ粘膜上皮細胞の高いトランスフェクション効率を示す。
【0113】
好ましい実施形態では、粘膜上皮は、消化管組織、気道組織、肺組織、副鼻腔組織、口腔組織、尿路組織、膀胱組織、膣組織、子宮組織、頸部組織、眼組織、食道組織、唾液腺組織、鼻喉頭組織、腎臓組織、および喉頭/咽頭組織からなる群から選択される組織内に存在する。
【0114】
一態様では、本発明は粘膜上皮の炎症を伴う疾患を処置する方法を提供する。これらの方法は、粘膜上皮の炎症を伴う疾患の患者に本発明の医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。対象医薬組成物は、好ましくは粘膜上皮に局所投与される。対象医薬組成物は、抗炎症性活性がある治療用核酸を含む。
【0115】
好ましい実施形態では、対象医薬組成物は、抗炎症性タンパク質をコードする治療用核酸コンストラクトを含む。一実施形態では、抗炎症性タンパク質は、TNFα阻害剤である。別の実施形態では、抗炎症性タンパク質はIL−1阻害剤である。別の好ましい実施形態では、抗炎症性タンパク質はIL−10である。
【0116】
一実施例では、治療用核酸は、炎症性サイトカインに向けられる治療用RNAである炎症性サイトカインに向けられるsiRNAが特に好まれる。
【0117】
好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、IBDである。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、間質性膀胱炎である。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、喘息である。
【0118】
対象組成物は、粘膜上皮細胞のトランスフェクションによって処置可能である疾患または状態の処置に用いるのに適切である。この疾患には、粘膜上皮組織に関わる疾患が含まれるがこれらに限定されない。対象組成物を用いて、組成物が投与され得る、粘膜上皮組織に関わらない疾患および状態を処置することもできる。このような状態および疾患は、それにもかかわらず、粘膜上皮組織のこのようなトランスフェクションを介して治療的に到達可能である。たとえば、国際公開第2008020318号を参照されたい。この公開は参照によりその全体を本明細書に明示的に組み込まれる。たとえば、対象組成物を腸の粘膜上皮に投与することで、コードした治療用タンパク質を全身に送達し得る。
【0119】
治療用核酸を用いて、治療目的の生成物をコードすることによって、欠陥遺伝子の代替もしくは増強として使用することによる遺伝子療法を行う、または特定の遺伝子生成物の欠如を代償することも可能である。治療用核酸も、内在性遺伝子の発現を阻害し得る。治療用核酸は、翻訳生成物のすべてまたは一部をコードすることも可能であり、かつ細胞内にすでに存在するDNAと組み合わせ、それによって欠陥遺伝子もしくはその部分を置き換えることによって機能することも可能である。治療用核酸も、タンパク質の一部ををコードし得る。治療用タンパク質は遺伝子生成物を阻害することによってその効果を及ぼし得る。
【0120】
処置され得る疾患または状態としては、糖尿病、肥満症、ホルモン欠乏症、炎症性大腸疾患、下痢、過敏性腸症候群、消化管感染症、消化性潰瘍、胃食道逆流症、胃不全麻痺、痔核、栄養吸収障害、膵臓炎、ヘモクロマトーシス、小児脂肪便病、黄斑変性症、加齢性黄斑変性、ブドウ膜炎、網膜色素変性症、虹彩炎、強膜炎、緑内障、角膜炎、網膜症、眼感染症(たとえば、角膜真菌症)、感染症、子宮内膜症、子宮頸管炎、泌尿器疼痛、ポリープ、フィブロイド、子宮内膜増殖症、尿失禁、膀胱および尿路感染症、過活動膀胱、勃起障害、糖尿病性神経障害、糖尿病性腎症、膜性腎症、高血圧、食物アレルギー、喘息、多発性嚢胞腎疾患、糸球体腎炎、異脂肪血症/高コレステロール血症、メタボリックシンドローム、乾癬、ざ瘡、酒さ、肉芽腫性皮膚炎、しわ、色素脱失、慢性閉塞性肺疾患、気道感染症、嚢胞性線維症、肺血管疾患、線維症、ハンチントン病、アルツハイマー病、パーキンソン病、神経障害、自己免疫疾患、メタボリックシンドローム、アテローム性動脈硬化症および炎症が挙げられるがこれらに限定されない。方法は、本発明の医薬組成物の治療有効量を患者に投与することを含む。
【0121】
本発明の治療用タンパク質は、このような治療用タンパク質をコードする治療用核酸を含む対象組成物によって生成され得る。後述する治療用タンパク質の使用は、このような治療用タンパク質の使用を達成するために、対象組成物の使用をいう。
【0122】
本発明で用いるために考えられる治療用タンパク質は、種々の活性を有し、かつ種々の障害の処置での使用が見出される。治療用タンパク質、および本発明の治療用タンパク質で処置可能な徴候についての以下の説明は、例示的であって、網羅的であることを意図するものではない。用語「被験者」とは、好ましい哺乳類および特に好ましいヒトを含む動物をいう。治療用タンパク質が標的タンパク質の拮抗剤である実施形態において、代替治療実施形態は、同じ標的タンパク質を標的とする治療用RNAを使用することもある。
【0123】
治療用タンパク質および標的疾患の一部のリストを以下の表に示す。
【表1】
【0124】
炎症性疾患
【0125】
好ましい実施形態では、本発明の治療用ポリペプチドを用いて、炎症を調節する。たとえば、治療用ポリペプチドは、炎症反応に関与する細胞の増殖および分化を抑制し得る。れらの分子を用いて、炎症性状態(慢性および急性の両状態)を処置することがでる。かかる炎症性状態には、感染症(たとえば、敗血症性ショック、敗血症または全身性炎症反応症候群(SIRS))に関連する炎症、虚血再灌流障害、致死性内毒素、関節炎、膵炎、補体媒介性超急性拒絶反応、腎炎、サイトカインもしくはケモカイン誘発肺損傷、炎症性腸疾患、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性膀胱炎、クローン病、または炎症性サイトカイン(たとえばTNFαおよびIL−1)の過剰産生に起因する他の疾患が含まれる。
【0126】
特に好ましい実施形態では、本発明は粘膜上皮の炎症を伴う疾患を処置するための方法を提供する。方法は、粘膜上皮の炎症を伴う疾患の患者に治療有効量の本発明の医薬組成物を投与することを含む。対象医薬組成物は、粘膜上皮に好ましくは局所投与される。一実施形態では、対象医薬組成物は、抗炎症性タンパク質をコードする治療用核酸コンストラクトを含む。本発明で用いることが考えられる抗炎症性タンパク質としては、抗炎症性サイトカインならびにたとえば炎症性サイトカイン等の炎症性分子のタンパク質拮抗剤が挙げられるが、これらに限定されない。
代表的な抗炎症性タンパク質としては、IL−10(たとえば、Fedorak et al., 2000, Gastroenterology. 2000 Dec; 119(6):1473−82.; Whalen et al., 1999, J Immunol. 1999 Mar 15;162(6):3625−32)をはじめとして、IL−1Ra(たとえば、Arend et al., 1998, Annu Rev Immunol. 1998; 16:27−55; Makarov et al., 1996, Proc Natl Acad Sci U S A. 1996 Jan 9;93(1):402−6);IL−1Ra−Ig(たとえば、Ghivizzani et al., 1998, Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Apr 14;95(8):4613−8);IL−4(たとえば、Hogaboam et al., 1997, J Clin Invest. 1997 Dec 1 ;100(11):2766−76);IL−17可溶性受容体(たとえば、Zhang et al., 2006, lnflamm Bowel Dis. 2006 May;12(5):382−8; Ye et al., 2001, The Journal of Experimental Medicine, Volume 194, Number 4, August 20, 2001 519−528);IL−6(たとえば、Xing et al., 1998, J Clin Invest. 1998 Jan 15;101(2):311−20);IL−11(たとえば、Trepicchio et al., 1997, J Immunol. 1997 Dec 1 ;159(11):5661−70);IL−13(たとえば、Mulligan et al., 1997, J Immunol. 1997 Oct 1 ;159(7):3483−9; Muchamuel et al., 1997, J Immunol. 1997 Mar 15;158(6):2898−903);IL−18可溶性受容体(たとえば、Aizawa et al., 1999, FEBS Lett. 1999 Feb 26;445(2−3):338−42);TNF−α可溶性受容体(たとえば、Watts et al., 1999, J Leukoc Biol. 1999 Dec;66(6):1005−13);TNF−α受容体Ig(たとえば、Ghivizzani et al., 1998, Proc Natl Acad Sci U S A. 1998 Apr 14;95(8):4613−8);TGF−β(たとえば、Song et al., 1998, J Clin Invest. 1998 Jun 15;101 (12):2615−21; Giladi et al., 1994);IL−12(たとえば、Hogan et al., 1998, Eur J Immunol. 1998 Feb;28(2):413−23);IFN−γ(たとえば、Dow et al., 1999, Hum Gene Ther. 1999 Aug 10;10(12):1905−14);IL−4可溶性受容体(たとえば、Steinke et al., 2001 , Respir Res. 2001 ;2(2):66−70. Epub 2001 Feb 19)がある。
【0127】
好ましい実施形態では、抗炎症性タンパク質は、TNFα阻害剤である。別の好ましい実施形態では、抗炎症性タンパク質は、IL−1阻害剤である。別の好ましい実施形態では、抗炎症性タンパク質は、IL−10である。
【0128】
好ましい実施形態において、粘膜上皮の炎症を含んでいる疾患は、IBDである。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、間質性膀胱炎である。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)である。別の好ましい実施形態では、粘膜上皮の炎症を伴う疾患は、喘息である。
【0129】
高血糖症と体重
【0130】
治療用タンパク質はインスリンおよびインスリン類似体を含む。糖尿病は、膵臓β−細胞からのインスリン産生が存在しない(1型)または不十分な(2型)ことに起因する消耗性の代謝疾患である(Unger R H et al., Williams Textbook of Endocrinology Saunders, Philadelphia (1998)に基づく)。β細胞は、食後のインスリン放出に備えて産生し貯蔵する専門の内分泌細胞である(Rhodes,らJ Cell Biol 105 145(1987))。インスリンは、それを必要とする組織に血液からグルコースの移動を促進するホルモンである。糖尿病患者は血糖値をしばしばモニターしなければならなく、多くの患者は生存するために毎日複数回のインスリン注射を必要とする。しかし、かかる患者が、インスリン注射によって理想的なグルコースレベルに達成するのはまれである(Turner, R C et al., JAMA 281 2005(1999))。その上、インスリンレベルの上昇が長期間にわたると、有害な副作用、たとえば低血糖ショックおよびインスリンに対する身体反応の低下等をもたらすこともあり得る。したがって、糖尿病患者は、長期的合併症、たとえば心血管疾患、腎臓疾患、失明、神経損傷および創傷治癒障害等を依然として発症する(UK Prospective Diabetes Study(UKPDS) Group, Lancet 352, 837(1998))。
【0131】
本発明の方法によって処置可能な障害としては、高血糖状態、たとえば、インスリン依存性(1型)糖尿病またはインスリン非依存性(2型)糖尿病、ならびに高血糖状態と関連するまたは高血糖状態に起因する生理的状態もしくは障害がある。このように、本発明の方法によって処置可能な高血糖状態は、慢性または急性の高血糖症(たとえば糖尿病)と関連する病理組織学的変化を含む。特定の例としては、膵臓の変性(β−細胞崩壊)、腎尿細管石灰化、眼損傷(糖尿病性網膜症)、糖尿病性足病変、口および歯茎等の粘膜潰瘍、過度の出血、血液凝固または創傷治癒の遅延、ならびに冠動脈心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、脂質異常症、高血圧症および肥満症のリスクの増加が挙げられる。
【0132】
対象組成物は、グルコースの低下、グルコース耐性の改善、高血糖状態(たとえば糖尿病)の処置、または高血糖状態と関連するまたは高血糖状態に起因する生理障害の処置にとって有用である。かかる障害としては、たとえば、糖尿病性神経障害(自律神経性)、腎症(腎障害)、皮膚感染症および他の皮膚疾患、損傷もしくは創傷の治癒の低下または遅延(たとえば糖尿病性のカルブンケルをもたらす)、失明にいたる眼損傷(網膜症、白内障)、糖尿病性足病変、および歯周炎の加速化が挙げられる。このような障害には、冠動脈心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、脂質異常症、高血圧症および肥満症のリスクの増加も挙げられる
【0133】
本明細書で使用するとき、被験者の状態に関して使われるとき、用語「高血糖性」または「高血糖症」とは、被験者の血液中に存在する一過性または慢性的に異常に高いレベルのグルコースを意味する。この状態は、グルコース代謝または吸収の遅延によって引き起こされ得る。その結果被験者がグルコース不耐性または健常被験者において通常は見られないグルコースが上昇した状態を示す(たとえば、糖尿病を発症するリスクがあるグルコース不耐性のサブ糖尿病被験者において、または糖尿病被験者において)。空腹時血糖値(FPG)レベルは、正常血糖の場合は約110mg/dL未満であり、グルコース代謝障害の場合は約110〜126mg/dLであり、糖尿病の場合は、約126mg/dLを超える。
【0134】
腸粘膜組織でのタンパク質産生による処置可能な障害には、肥満または望ましくない体重も含まれる。レプチン、コレシストキニン、PYYおよびGLP−1は、空腹感を減少させ、エネルギー消費を増加させ、体重減少を誘発し、または正常なグルコース恒常性を維持する。このように、種々の実施形態では、肥満もしくは望ましくない体重、または高血糖症を処置する本発明の方法は、レプチン、コレシストキニン、PYYまたはGLP−1をコードする治療用核酸の使用を含む。処置可能な障害としては、通常肥満と関連するもの、たとえば異常に高い血清/血漿LDL、VLDL、トリグリセリド、コレステロール、血管の狭窄もしくは閉塞を引き起こすプラーク形成、高血圧症/脳卒中、冠動脈心疾患等のリスク増加も挙げられる。グレリンは食欲および空腹感を増加させる。このように、種々の実施形態では、肥満もしくは望ましくない体重、または高血糖症を処置する本発明の方法は、グレリンの拮抗剤の使用を含む。一実施形態では、拮抗剤はグレリンを目標とする治療用RNAである。
【0135】
本明細書で使用するとき、用語「肥満の」または「肥満」とは、年齢および性別が対応した健常被験者と比較すると、少なくとも30%の体重増加を有する被験者をいう。「望ましくない体重」とは、対応する健常な被験者よりも1%〜29%多い体重を有する被験者、ならびに体重に関しては正常であるが、その体重を減少させたい、または増加を防止したいと願う被験者をいう。
【0136】
一実施例では、本発明の治療用タンパク質は、グルカゴン拮抗剤である。グルカゴンは、膵島のα細胞によって産生されるペプチドホルモンであり、かつグルコース代謝の主要な制御因子である(R H & Orci L N Eng J Med 304 1518(1981), Unger R H Diabetes 25 136 (1976)に基づく)。インスンと同様に、血中グルコース濃度は、グルカゴン分泌を媒介する。しかし、インスリンと対照的に、グルカゴンは血中グルコースの低下に応答して分泌される。したがって、グルカゴンの循環する濃度は、絶食期間に最も高く、食事の間に最も低い。グルカゴンレベルは増加して、グルコース貯蔵を促進することからインスリンを抑え、かつ肝臓を刺激してグリコースを血中に放出させる。グルカゴン拮抗剤の具体的な例は、[des−His1、des−Phe6、Glu9]グルカゴン−NH2である。ストレプトゾトシン糖尿病ラットにおいて、血中グルコースは、このグルカゴン拮抗剤の静脈内ボーラス(0.75μg/g体重)から15分以内に37%低下した(Van Tine B.A.ら Endocrinology 137:3316(1996))。さらに、種々の実施形態では、糖尿病すなわち高血糖症を処置するための本発明の方法は、膵臓からのグルカゴン産生のレベルを低下させるために、治療用RNAの使用を含む。
【0137】
別の実施形態では、高血糖状態または望ましくない体重(たとえば肥満)を処置することに有用な本発明の治療用タンパク質または、グカゴン様ペプチド−1(GLP−1)である。GLP−1は、食事中、腸内のL−細胞から放出されるホルモンであり、膵臓β細胞を刺激してインスリン分泌を増加させる。GLP−1は、さらなる活性を有し、そのため肥満および糖尿病を処置する治療薬として興味あるものになる。たとえば、GLP−1は胃内容排出を減少させ、食欲を抑制し、グルカゴン濃度を低下させ、β細胞質量を増加させ、グルコース依存様式でインスリンの生合成および分泌を刺激し、インスリンに対する組織感受性をおそらく高める(Kieffer T.J., Habener J.F.Endocrin Rev 20 876(2000))。したがって、食事と同時起こる腸内でのGLP−1の調節放出は、高血糖状態または望ましくない体重に対して治療効果をもたらすことができる。ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP IV)に耐性があるGLP−1類似体は、より長い作用時間および治療効果をもたらす。したがって、GLP−1類似体は好ましい治療用ポリペプチドである。さらに、種々の実施形態では、糖尿病すなわち高血糖症を処置するための本発明の方法は、DPP IV拮抗剤の使用を含む。一実施形態では、拮抗剤は、DPP IVをを標的とする治療用RNAである。
【0138】
別の実施形態では、高血糖状態を処置することに有用な本発明の治療用タンパク質は、ホルモンレジスチンに対する拮抗剤である。レジスチンは、食事性肥満および遺伝型肥満においてその発現が上昇する脂肪細胞由来因子である。循環するレジスチンを中和することで、肥満マウスにおいて血中グルコースおよびインスリン作用が改善される。逆に、正常なマウスにレジスチンを投与すると、グルコース耐性およびインスリン作用が損なわれる(Steppan CM et al.,Nature 409;307(2001))。したがって、腸でレジスチンの生物学的効果を拮抗するタンパク質が産生されると、肥満に連結したインスリン耐性および高血糖状態に対する有効な治療をもたらすことができる。さらに、種々の実施形態では、糖尿病すなわち高血糖を処置するための本発明の方法は、治療用RNAを用いて、脂肪組織でレジスチン発現のレベルを低下させることを含む。
【0139】
別の実施形態では、高血糖状態または望ましくない体重(たとえば肥満)を処置することに有用な本発明の治療用ポリペプチドは、レプチンである。主として脂肪細胞によって産生されるが、レプチンは胃でも食事依存様式でより少ない量でに産生される。レプチンは、脂肪細胞代謝および体重についての情報を脳内の食欲中枢にリレーし、脳は食物摂取を減少させるシグナルを送って(満腹感を促進する)、身体エネルギー消費を増加させる。
【0140】
別の実施形態では、高血糖状態または望ましくない体重(たとえば肥満)を処置するのに有用な本発明の治療用ポリペプチドは、脂肪細胞の補体関連のタンパク質(Acrp30)のC末端の球状ヘッドドメインである。Acrp30は、分化した脂肪細胞によって産生されるタンパク質である。マウスに対する球状ヘッドドメインからなるAcrp30のタンパク質分解切断生成物をマウスに投与すると、有意な体重減少がもたらされる(Fruebis J らProc NatL Acad Sci USA 98 2005 (2001))。
【0141】
別の実施形態では、高血糖状態または望ましくない体重(たとえば肥満)を処置することに有用な本発明の治療用ポリペプチドは、コレシストキニン(CCK)である。CCKは、腸内で特定の栄養分に応答して腸から分泌される消化管ペプチドである。CCK放出は、消費される食物の量と比例し、脳に食事を終了するシグナルを送ると考えられている(Schwartz M.W. et al.,Nature 404;661−71(2000))。したがって、CCKno上昇は食事量を減らすことができ、体重減少または体重安定化を促進することができる(すなわち、体重増加の上昇を防止する、または阻害する)。
【0142】
PYYに関しては、たとえばIe Roux et al., Proc Nutr Soc 2005 May,64(2)213−6を参照されたい。
【0143】
免疫障害
【0144】
一実施例では、本発明の治療用タンパク質は、免疫調節性活性を備えている。たとえば、本発明の治療用ポリペプチドは、免疫細胞の増殖、分化または動員(化学走性)を活性化する、または阻害することによって、免疫系の不全および障害を処置するのに有用であり得る。免疫細胞は血球新生のプロセスを通じて発現し、多能性幹細胞から骨髄系細胞(血小板、赤血球、好中球、およびマクロファージ)ならびにリンパ球系細胞(Bリンパ球細胞およびTリンパ球細胞)を産生する。これらの免疫不全または障害の病因は、遺伝子性、体細胞性、感染性、またはその他であり得る。
【0145】
本発明の治療用ポリペプチドは、造血細胞の不全または障害を処置することに有用であり得る。本発明の治療用ポリペプチドを用いて、いくつかの(または多く)の造血細胞の種類の減少に係る造血細胞障害を処置する目的で、多能性幹細胞を含む造血細胞の分化または増殖を増加させることが可能である。、免疫不全症候群の例としては、血液タンパク質質障害(たとえば、無ガンマグロブリン血症、異常ガンマグロブリン血症)、毛細血管拡張性運動失調症、分類不能型免疫不全症、ディジョージ症候群、HIV感染症、HTLV−BLV感染症、白血球粘着不全症候群、リンパ球減少症、貪食殺菌機能障害、重症複合免疫不全症(SCID)、Wiskott−Aldrich障害、貧血症、血小板減少症、またはヘモグロビン尿症が挙げられるがこれらに限定されない。
【0146】
本発明の治療用ポリペプチドは、自己免疫障害を処置することにも有用であり得る。多くの自己免疫不全は、免疫細胞が自己を異物として不適当に認識することから生じる。この不適当な認識は、宿主組織の破壊をもたらすことになる免疫応答に起因する。したがって、免疫応答、特にT細胞の増殖、分化または化学走性を阻害する本発明の治療用ポリペプチドを投与することは、自己免疫障害を防止する有効な治療になり得る。
【0147】
本発明によって治療されることができる自己免疫不全の例としては、Addison病、溶血性貧血、抗リン脂質抗体症候群、関節リウマチ、皮膚炎、アレルギー性脳脊髄炎、糸球体腎炎、Goodpasture症候群、Graves病、多発性硬化症、神経炎、眼炎、水疱性類天疱瘡 、天疱瘡、多腺性内分泌障害 、紫斑病、Reiter病、全身硬直症候群、自己免疫性甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、自己免疫肺炎症、Guillain−Barre症候群、インシュリン依存性糖尿病、Crohn病、潰瘍性大腸炎、および自己免疫性炎症性眼病が挙げられるがこれらに限定されない。
【0148】
同様に、アレルギー性反応および状態、たとえば喘息(特にアレルギー性喘息)または他の呼吸障害は、本発明の治療用ポリペプチドによって処置され得る。さらに、これらの分子を用いて、アナフィラキシ、抗原分子に対する過敏症または血液型不適合を処置することができる。
【0149】
本発明の治療用ポリペプチドは、臓器拒絶反応または移植片対宿主病(GVHD)を処置するおよび/または阻止することもある。臓器拒絶反応は、免疫応答を通して移植組織の宿主免疫細胞破壊によって起こる。同様に、免疫応答はGVHDにも関与しているが、この場合は、異質移植された免疫細胞が宿主組織を破壊する。免疫応答を阻害する、特にT細胞の増殖、分化または化学走性を阻害する本発明の治療用ポリペプチドを投与することで、臓器拒絶反応またはGVHDを阻止するのに有効な治療になり得る。
【0150】
凝固障害
【0151】
一部の実施形態では、本発明の治療用ポリペプチドを用いて、止血活性(出血の阻止)または血栓溶解活性(凝固形成)を調節することも可能である。たとえば、止血活性または血栓溶解活性を増加させることによって、本発明の治療用ポリペプチドを用いて、血液凝固障害(たとえば、無フィブリノゲン血症、因子欠乏)、血液血小板障害(たとえば、血小板減少症)、または外傷、手術、もしくは他の原因から生じる創傷を処置し得る。あるいは、止血活性または血栓溶解活性を減少させることができる、本発明の治療用ポリペプチドを用いて、凝固を阻害するまたは溶解し得る。これらの分子は、心臓発作(梗塞)、脳卒中または瘢痕の処置において重要であり得る。一実施例では、本発明の治療用ポリペプチドは凝固因子であり、血友病または他の凝固/凝固障害(たとえば、第VIII因子、第IX因子または第X因子)の処置に有用である。
【0152】
感染症
【0153】
一実施例では、本発明の治療用ポリペプチドを用いて、感染症を処置することができる。たとえば、特にB細胞および/またはT細胞の増殖および分化を増加させて、免疫応答を増加させることによって、感染症は処置され得る。免疫応答は、既存の免疫応答を強化するか、または新しい免疫応答を開始することによって増加し得る。あるいは、必ずしも免疫応答を誘発することなく、本発明の治療用ポリペプチドは、感染病原体を直接阻害することも可能である。
【0154】
本発明の治療用ポリペプチドによって処置され得る疾患または症状を引き起こし得る感染病原体の一例はウイルスである。ウイルスの例としては、以下のDNAおよびRNAのウイルス系統群が挙げられるがこれらに限定されない:アルボウイルス、アデノウイルス科、アレナウイルス科、アルテリウイルス、ビマウイルス科、ビニヤウイルス科、カリチウイルス科、サーコウイルス科、コロナウイルス科、フラビウイルス科、ヘルペスウイルス科(たとえば、サイトメガロウイルス属、単純ヘルペス、帯状ヘルペス)、モノネガウイルス(たとえば、パラミクソウイルス科、麻疹ウイルス属、ラプドウイルス科)、オルソミクソウイルス科(たとえば、インフルエンザ)、パポバウイルス科、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科、ポックスウイルス科(たとえば、天然痘またはワクシニア)、レオウイルス科(たとえば、ロタウイルス)、レトロウイルス科(HTLV−I、HTLV−II、レンチウイルス)、およびトガウイルス科(たとえば、ルビウイルス属)。これらの系統群に含まれるウイルスは、関節炎、細気管支炎、脳炎、眼感染症(たとえば、結膜炎、角膜炎)、慢性疲労症候群、髄膜炎、日和見感染(たとえば、AIDS)、肺炎、水痘、出血熱、麻疹、流行性耳下腺炎、パラインフルエンザ 、狂犬病、感冒、小児麻痺、風疹、性感染病、皮膚病(たとえば、カポジ、いぼ)、およびウイルス血症が挙げられる。本発明の治療用ポリペプチドを用いて、これらの症状または疾患のいずれかを処置することができる。
【0155】
同様に、疾患または症状を引き起す可能性があり、かつ本発明の治療用ポリペプチドによって処置され得る、または検出され得る、細菌病原体または真菌病原体としては、以下のグラム陰性菌およびグラム陽性菌の系統群ならびに真菌類が挙げられるがこれらに限定されない:放線菌目(たとえば、コリネバクテリウム、マイコバクテリア、放射菌)、アスペルギルス、バチルス科(たとえば、炭疽菌、クロストリジウム)、バクテロイド科、ブラストミセス、ボルデテラ属、ボレリア属、ブルセラ、カンジダ、カンピロバクター、コクシジオイデス症、クリプトコッカス、皮膚真菌症、腸内細菌科(クレブシエラ属、サルモネラ菌、セラチア属、エルシニア属)、エリジペロスリックス属、ヘリコバクター属、レジオネラ、レプトスピラ、リステリア属、マイコプラズマ目、ナイセリア科(たとえば、アシネトバクター属、ゴノレア、髄膜炎菌)、パスツレラ科感染症(たとえば、アクチノバシラス属、ヘモフィルス属、パスツレラ属)、シュードモナス属、リケッチア科、クラミジア科、梅毒、およびブドウ球菌。これらの細菌または真菌の系統群は、以下の疾患または症状の原因になり得る:菌血症、心内膜炎、眼感染症(結膜炎、結核症、ブドウ膜炎)、歯肉炎、日和見感染(たとえば、AIDS関連の感染症)、爪周囲炎、人工器官関連の感染症、Reiter病、気道感染症(たとえば、百日咳または膿胸)、敗血症、ライム病、ネコ引っかき病、赤痢、パラチフス、食中毒、腸チフス、肺炎、淋病、髄膜炎、クラミジア、梅毒、ジフテリア、らい、パラ結核、結核、ループス、ボツリヌス症、壊疽、破傷風、膿痂疹、リウマチ熱、猩紅熱、性感染病、皮膚病(たとえば、蜂巣炎、皮膚真菌症)、毒素血症、尿路感染症、創傷感染。本発明の治療用ポリペプチドを用いて、これらの症状または疾患のいずれかを処置し得る。
【0156】
さらに、本発明の治療用ポリペプチドによって処置され得る疾患または症状を引き起こす寄生虫病原体としては以下の系統群が挙げられるが、これらに限定されない:アメーバ症、バベシア症、コクシジウム症、クリプトスポリジウム症、二核アメーバ症、媾疫、外寄生生物、ジアルジア症、蠕虫病、リーシュマニア症、タイレリア症、トキソプラズマ症、トリバノソーマ症、およびトリコモナス。これらの寄生虫は、疥癬、ツツガムシ病、眼感染症、腸疾患(たとえば、赤痢、ジアルジア症)、肺疾患、日和見感染(たとえば、AIDS関連感染症)、マラリア、妊娠合併症、およびトキソプラスマ症を含む種々の疾患または症状を引き起こし得る。本発明の治療用ポリペプチドを用いて、これらの症状または疾患のいずれかを処置し得る。
【0157】
再生
【0158】
本発明の治療用ポリペプチドを用いて、組織の再生を育成する細胞を分化、増殖、誘引させることができる(Science 276;59−87(1997)を参照されたい)。組織の再生を用いて、先天欠損、外傷(創傷、火傷、切開、もしくは潰瘍)、加齢、疾患(たとえば、骨粗鬆症、骨関節炎、歯周疾患)、美容形成術を含む外科手術、線維症、再灌流障害、または全身性サイトカイン損傷によって損傷をうけた組織の修復、置換、または保護することができる。
【0159】
本発明の治療用タンパク質の寄与により再生し得る組織としては、器官(たとえば、膵臓、腸、腎臓、皮膚、内皮)、血管(血管内皮を含む)、神経、造血、および骨格(骨、軟骨、腱、および靭帯)組織を含む。再生は、わずかな瘢痕を伴う、または瘢痕を伴わずに生じることが好ましい。再生は血管形成を含んでもよい。
【0160】
さらに、本発明の治療用ポリペプチドは、治癒しにくい組織の再生を増大させることができる。たとえば、腱/靭帯の再生が増大すると、損傷の後の回復時間を速める。本発明の治療用ポリペプチドは損傷を回避する目的で、予防的にも使用され得る。処置され得る具体的な疾患としては、腱炎、(手根管症候群、および他の腱欠損または靭帯欠損を含む。難治性創傷の組織再生のさらなる例としては褥瘡、血行不全、手術創、および外傷に付随した潰瘍を含む。
【0161】
同様に、神経および脳組織も、本発明の治療用ポリペプチドを用いて、神経細胞を増殖、分化させることによって、再生され得る。本方法を用いて処置され得る疾患としては、中枢および末梢神経系疾患、神経障害、または機械性障害および外傷性障害(たとえば、脊髄障害、頭部外傷、脳血管疾患、および脳卒中)が挙げられる。具体的には、末梢神経損傷に付随する疾患、末梢神経障害、限局性神経障害、および中枢神経系疾患(たとえば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、およびシャイドレーガー症候群)はすべて、本発明の治療用タンパク質を用いて処置され得る。CNS障害に関して、当該技術分野では脳組織へ治療アクセスを容易にするための方法、たとえば、血液脳関門を破壊するための方法と、CNSへの輸送を提供する部分に治療薬を結合させる方法とを含むいくつがが知られている。一実施形態では、治療用核酸は、融合タンパク質をコードするように設計され、融合タンパク質は輸送部分および治療用タンパク質を含む。
【0162】
走化性
【0163】
一実施例では、本発明の治療用ポリペプチドは、走化活性を有する。走化性分子は、体内の特定の部位、たとえば炎症または感染の部位に、細胞(たとえば単球、線維芽細胞、好中球、T細胞、マスト細胞、好酸球、上皮細胞および/または内皮細胞)を誘引するまたは動員する。次いで、動員された細胞は、特定の外傷または異常を移動性を持つ細胞は、それから特定の外傷または異常物を撃退する、および/または治癒する。
【0164】
本発明の治療用ポリペプチドは、特定の細胞の走化活性を増大させ得る。次いで、これらの走化性分子を用いて、体内の特定の部位を標的とする細胞の数を増加させることによって、炎症、感染症、またはいずれかの免疫系障害を処置することができる。たとえば、走化性分子を用いて、免疫細胞を損傷部位へ誘引することによって、組織への創傷および他の外傷を処置することができる。本発明の走化性分子は、線維芽細胞も誘引することができ、この線維芽細胞を用いて創傷を処置することができる。
【0165】
本発明の治療用ポリペプチドが走化活性を阻害し得ることも考えられる。これらの分子を用いて、様々な障害を処置することもできる。このように、本発明の治療用ポリペプチドは、走化性の阻害剤として使用し得る。
【0166】
標的組織の近傍で活性化されるプロ治療用タンパク質の使用が特に好まれる。
【0167】
使用が考えられるさらなる治療用ポリペプチドとしては、以下が挙げられるがこれらに限定されない:成長障害または消耗症症候群を処置するための成長因子(たとえば、成長ホルモン、インスリン様成長因子1、血小板由来成長因子、上皮増殖因子、酸性および塩基性の線維芽細胞増殖因子、トランスフォーミング増殖因子−β等);および外来抗原もしくは外来病原体(たとえばピロリ菌)から被験者を保護する、もしくは受動免疫を与えるため、または関節炎もしくは循環器疾患の処置を提供するための抗体(たとえばヒトまたはヒト化抗体);サイトカイン、インターフェロン(たとえば、インターフェロン(INF)、INF−α2bおよびINF−α2a、INF−αN1、INF−β1b、INF−γ)、インターロイキン(たとえば、IL−1〜IL−10)、腫瘍壊死因子(TNF−α、TNF−β)、ケモカイン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、ポリペプチドホルモン、抗菌ポリペプチド(たとえば抗菌の、抗真菌の、抗ウイルスの、および/または、抗寄生虫のポリペプチド)、酵素(たとえば、アデノシンデアミナーゼ)、ゴナドトロピン、ケモタクチン、脂質結合タンパク質、フィルグラスチム(Neupogen)、ヘモグロビン、エリスロポイエチン、インシュリノトロピン、イミグルセラーゼ、サルグラモスチム、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、フェニルアラニンアンモニアリアーゼ、脳由来神経栄養因子(BDNF)、神経成長因子(NGF)、トロンボポエチン(TPO)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、アデノシンデアミダーゼ、カタラーゼカルシトニン、エンドセリン、L−アスパラギナーゼペプシン、ウリカーゼトリプシン、キモトリプシンエラスターゼ、カルボキシペプチダーゼ、ラクターゼ、スクラーゼ内因子、カルシトニン副甲状腺ホルモン(PTH)様ホルモン、可溶性CD4、ならびに抗体および/またはその抗原結合性フラグメント(たとえばFAb)(たとえば、オルソクローンOKT−e(抗CD3)、GPIIb/IIaモノクローナル抗体)。
【0168】
ワクチン接種
【0169】
一実施形態では、本発明は患者にワクチン接種をするための方法を提供する。方法は、所望のエピトープを生成することができる本発明の組成物を投与することを含む。好ましい実施形態では、組成物は、エピトープを含むタンパク質を発現することができる治療用核酸コンストラクトを含む。
【0170】
化粧品応用
【0171】
一実施形態では、本発明は、化粧品使用のための組成物を提供する。化粧品は、化粧品使用に適した製剤中に、本発明のキトサン−核酸ポリプレックス組成物を含む。
【0172】
粉末製剤
【0173】
本発明のキトサン−核酸ポリプレックス組成物は散剤を含む。好ましい実施形態では、本発明は乾燥散剤キトサン−核酸ポリプレックス組成物を提供する。好ましい実施形態では、乾燥散剤キトサン−核酸ポリプレックス組成物は、本発明のキトサン−核酸ポリプレックス分散液を脱水させることで生成される。凍結乾燥方法には、凍結乾燥および噴霧乾燥が含まれるがこれらに限定されない。
【0174】
一実施形態では、濃縮分散液は脱水され、次いで続いて、必要に応じて再水和した後、pHが調整される。たとえば、一実施形態では、最初に、4.5を超えるpH値を有する濃縮分散液が脱水され、次いで再水和後、pH値は3.5〜4.5で調整される。別の実施形態では、pH調整は必要とされず、再水和された組成物は4.5未満のpH値を有する。
【0175】
医薬製剤
【0176】
本発明も、本発明の高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物を含む「薬学的に許容される」または「生理学的に許容される」製剤を提供する。この製剤は、治療法を施すために、被験者にインビボで投与され得る。
【0177】
本明細書で使用するとき、用語「薬学的に許容される」および「生理学的に許容される」とは、好ましくは過剰な有害副作用(たとえば、嘔気、腹痛、頭痛等)を引き起こすことなく、被験者に投与されることができる担体、希釈剤、賦形剤をいう。投与のためのこの製剤は、無菌の水溶液剤または非水溶液剤、懸濁液剤、および乳濁液剤を含む。
【0178】
医薬製剤は、被験者への投与に適合した、担体、希釈剤、賦形剤、溶媒、分散媒体、被覆剤、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤等を含むことができる。かかる製剤は、錠剤(被覆型もしくは非被覆型)、カプセル(ハードタイプもしくはソフトタイプ)、ミクロビーズ、乳剤、粉末、顆粒、結晶、懸濁液、シロップまたはエリキシル剤に含有され得る。他の添加剤のなかで、補助活性化合物および剤防腐剤も、たとえば抗菌物質、抗酸化剤、キレート化剤、および不活性ガス等で含まれてもよい。
【0179】
医薬製剤は、その意図される投与経路に適合するように製剤化され得る。対象組成物は、粘膜上皮組織のトランスフェクションに適切である。好ましい実施形態では、本発明の医薬組成物は、粘膜上皮組織への投与に適した製剤である。
【0180】
経口投与の場合、組成物を賦形剤と組み合わせて、錠剤、トローチ、またはカプセル(たとえばゼラチンカプセル)の形状で用いることができる。薬学的に適合する結合剤および/またはアジュバンド材を経口製剤に含有させることもできる。錠剤、丸剤、カプセル剤、トローチ剤等は、以下の成分、または類似の自然の化合物のいずれかを含有することができる:結合剤、たとえば結晶セルロース、トラガカントゴムもしくはゼラチン;賦形剤、たとえばデンプンもしくはラクトース;崩壊剤、たとえばアルギン酸、プリモゲル、またはコーンスターチ;潤滑剤、たとえばステアリン酸マグネシウムもしくはステロート;滑剤、たとえばコロイド状二酸化珪素;甘味剤、たとえばショ糖もしくはサッカリン;または香味剤、たとえばペパーミント、サリチル酸メチル、もしくは調味料。
【0181】
製剤は、体内から組成物を急速に分解または除去することから保護する担体、たとえばインプラントおよびマイクロカプセル型送達系を含む徐放製剤も含むことができる。たとえば、モノステアリン酸グリセリンもしくは単体のステアリン酸グリセリル等、またはワックスと組み合わせて時間遅延材料を用いてもよい。
【0182】
坐薬および他の直腸投与型製剤(たとえば、浣腸で投与可能なもの)も考えられる。さらに直腸送達に関しては、たとえば以下を参照されたい:Song et al., Mucosal drug delivery membranes, methodologies, and applications, Crit Rev Ther Drug Carrier Syst., 21:195−256, 2004, Wearley, Recent progress in protein and peptide delivery by noninvasive routes, Crit Rev Ther Drug Carrier Syst., 8:331−394, 1991。
【0183】
投与に適したさらなるな医薬製剤は、当該技術分野で知られており、本発明の方法および組成物に適用できる(たとえば、Remington‘s Pharmaceutical Sciences (1990) 18th ed , Mack Publishing Co., Easton, Pa.; The Merck Index (1996) 12th ed , Merck Pubishing Group, Whitehouse, N.J.,およびPharmaceutical Principles of Solid Dosage Forms, Technonic Publishing Co., lnc., Lancaster, Pa.,(1993)を参照されたい)。
【0184】
投与
【0185】
いくつかの投与経路のうちのいずれかが可能であり、特定の経路を選択することは、標的組織に一部依存することになる。上皮組織への投与が好まれる。特に好ましい投与は、消化管、気道、肺、副鼻洞空洞、口腔、尿路、膀胱、膣、子宮、頸部、眼、食道、唾液腺、鼻喉頭組織、腎臓、喉頭/咽頭、および皮膚からなる群から選択される上皮組織への投与のである。
【0186】
シリンジ、内視鏡、カニューレ、挿管チューブ、浣腸キット、カテーテル、ネブライザー、吸入器および他の物品が、投与のために使用され得る。
【0187】
被験者を処置するための「有効量」の用量は、障害もしくは状態、または症状の進行もしくは悪化を防止するまたは阻害することが満足のいく結果であるが、好ましくは、状態の症状のうちの1つ、いくつかもしくはすべてを、測定可能な程度または検出可能な程度まで、回復させるのに十分な量である。このように、標的組織において治療用核酸を発現させることによって処置可能な状態または障害の場合、本発明の方法によて処置可能な状態を回復させるために生成される治療用タンパク質の量は、状態および所望の結果に依存し、当業者によって容易に確認され得る適切な量は、治療される上体、所望の治療効果、ならびに個々の被験者(たとえば、被験者内のビオアベイラビリティ、性別、年齢等)に依存することになる。有効量は、関連する生理的効果を測定することによって確認されることができる。
【0188】
獣医臨床への応用は、本発明によっても考えられる。したがって、一実施形態では、本発明は非ヒト哺乳類を処置する方法を提供する。方法は、処置を必要とする非ヒト哺乳類に本発明の組成物を投与することを含む。
【0189】
経口投与
【0190】
本発明の化合物は、経口投与されてもよい。経口投与は嚥下を含むこともあり、そのため化合物は消化管に入る。本発明の組成物は、直接消化管に投与されることもある。
【0191】
経口投与に適した製剤としては、錠剤などの固形剤、微粒子剤を含有するカプセル剤、液剤、または散剤、トローチ剤(液剤を充填したものを含む)、咀嚼剤、多微粒子剤およびナノ微粒子剤、ゲル剤、フィルム剤、オビュール剤、および噴霧剤が挙げられる。
【0192】
液剤は、懸濁剤、溶液剤、シロップ剤およびエリキシル剤を含む。液剤は、固形剤の再構成によって調製され得る。
【0193】
錠剤は、通常、崩壊剤を含む。崩壊剤の例としては、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、線維素グリコール酸カルシウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、結晶セルロース、低アルキル置換ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アルファ化デンプンおよびアルギン酸ナトリウムを含む。通常、崩壊剤は、剤形の1重量%〜25重量%、好ましくは5重量%〜20重量%で含まれる。
【0194】
結合剤は、凝集性品質を錠剤に与えるのに通常用いられる。適切な結合剤としては、結晶セルロース、ゼラチン、糖類、ポリエチレングリコール、天然および合成のゴム、ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースが含まれる。錠剤は、希釈剤、たとえばラクトース(一水和物、噴霧乾燥一水和物、無水物等)、マンニトール、キシリトール、ブドウ糖、ショ糖、ソルビトール、結晶セルロース、デンプンおよびリン酸水素カルシウム二水和物を含み得る。
【0195】
錠剤は、また、界面活性剤(たとえば、硫酸ラウリルナトリウムおよびポリソルベート80)と、滑剤(たとえば、二酸化ケイ素およびタルク)とを任意に含み得る。存在する場合、界面活性剤は、錠剤の0.2重量%〜5重量%、および滑剤は、錠剤の0.2重量%〜1重量%を含み得る。
【0196】
錠剤は通常、潤滑剤、たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、フマル酸ステアリルナトリウム、およびステアリン酸マグネシウムとラウリル硫酸ナトリウムとの混合物も含む。潤滑剤は通常、錠剤の0.25重量%〜10重量%、好ましくは0.5重量%〜3重量%を含む。
【0197】
他の可能な成分としては、抗酸化剤、着色剤、香味料および調味料、防腐剤、唾液刺激剤、冷却剤、共溶媒(油を含む)、皮膚軟化剤、増量剤、消泡剤、表面活性物質および矯味剤が挙げられる。
【0198】
錠剤混合物を、直接、またはローラーで圧縮して、錠剤を形成し得る。あるいは錠剤混合物または混合物の部分は、錠剤化の前に、湿式顆粒化、乾式顆粒化、もしくは溶融顆粒化、溶融凝固、または押出しを行われ得る。最終的な製剤は1層または複数層を含こともあり、かつコーティングまたは非コーティングされることもある。最終的な製剤は、カプセル化されることさえあり得る。
【0199】
錠剤の剤形は、Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets, Vol. 1, by H. Lieberman and L. Lachman (Marcel Dekker, New York, 1980)に記載されている。
【0200】
ヒトまたは動物での使用のための消滅する経口フィルム剤は、通常は、成形しやすい水溶性もしくは水膨張性の薄膜剤形であり、急速に溶けるか、または粘膜付着性であり得、かつ通常は、フィルム形成ポリマー、結合剤、溶媒、湿潤剤、可塑剤、安定剤または乳化剤、粘度調節剤および溶媒を含む。製剤の一部の構成要素は、複数の機能を実行し得る。
【0201】
本発明では、本発明の組成物を含む多微粒子ビーズも含まれる。
【0202】
本発明によるフィルム剤は、通常、剥離可能な裏打ち支持体または紙上に被覆された薄い水性フィルム剤の蒸発乾燥によって調製される。これは、乾燥オーブンもしくはトンネル、通常は複合型コータードライヤー、または凍結乾燥もしくは真空化によって行われ得る
【0203】
経口投与のための固形剤は、即放性および/または放出調節性になるよう製剤化され得る。放出調節製剤には、遅延放出、徐放、パルス放出、制御放出、標的放出、および計画放出型の製剤が含まれる。
【0204】
高エネルギー分散ならびに浸透粒子および被覆粒子等の他の適切な放出技術が知られている。
【0205】
非経口投与
【0206】
非経口投与のための適切な方法としては、静脈、動脈内、腹腔内、くも膜下腔内、心室内、尿道内、胸骨内、頭蓋内、皮下への投与挙げられる。非経口投与の適切な装置は、針(マイクロニードルを含む)注射器、針のない注射器、および注入技法を含む。
【0207】
非経口製剤は通常、塩類、炭化水素および緩衝剤等の賦形剤を含み得る水溶液剤である。しかし、一部の適用では、非経口製剤は、無菌の非水溶液剤として、または発熱物質を含まない無菌の水等の適切な溶媒と組み合わせて使用される乾燥形状として、より適切に製剤化され得る。
【0208】
無菌条件下での、たとえば、濾過除菌法による非経口製剤の調製は、当業者にとって周知の標準的な製薬技法を用いて、容易に達成され得る。
【0209】
点滴製剤の調製で用いられる化合物の溶解性は、適当な製剤技法、たとえば溶解性増強剤を組み入れることで増大させてもよい。
【0210】
非経口投与のための製剤は、即放性および/または放出調節性になるよう製剤化され得る。放出調節性製剤としては、遅延放出、徐放、パルス放出、制御放出、標的放出、および計画放出型が含まれる。このように、本発明の化合物は、活性化合物の調節放出を提供する埋め込み型デポーとして投与のための固形剤、半固形剤、またはチキソトロピー液剤として製剤化され得る。
【0211】
局所投与
【0212】
本発明の化合物は、皮膚または粘膜に局所的に、すなわち真皮的に、または経皮的に投与されてもよい。この目的のための典型的製剤は、ゲル剤、ヒドロゲル剤、ローション剤、溶液、クリーム剤、軟膏、散布剤、包帯剤、フォーム剤、フィルム剤、皮膚パッチ、ウエハー、インプラント、スポンジ、繊維、包帯およびマイクロエマルジョン剤を含む。
【0213】
局所投与の他の方法は、電気穿孔法、イオントフォレーシス、フォノフォレシス、ソノフォレーシスおよびマイクロニードルまたは無針注射(たとえば、Powderject(商標)、Bioject(商標)等)による送達を含む。
【0214】
局所投与のための製剤は、即放性および/または放出調節性になるよう製剤化され得る。放出調節性製剤としては、遅延放出、徐放、パルス放出、制御放出、標的放出、および計画放出型が含まれる。
【0215】
吸入投与/鼻腔内投与
【0216】
また、本発明の化合物は、通常、乾燥散剤(単体、または混合剤(たとえば、ラクトースとの乾性混合で、または混合成分粒子として)のいずれか)の形状で、適切な噴霧剤を使用した、または使用しない、乾燥散剤吸入器から、または加圧容器、ポンプ、スプレー、アトマイザ、もしくはネブライザーからのエアゾールスプレーとして、鼻腔内にまたは吸入によって投与され得る。
【0217】
吸入器または散布器に使用するカプセル、ブリスターおよびカートリッジは、本発明の化合物の混合粉末、適切な散剤基剤(たとえばラクトースまたはデンプン)、および性能修飾因子(たとえばl−ロイシン、マンニトール、またはステアリン酸マグネシウム)を含有するように製剤化され得る。
【0218】
吸入投与/鼻腔内投与のための製剤は、即放性および/または放出調節性になるよう製剤化され得る。放出調節性製剤としては、遅延放出、徐放、パルス放出、制御放出、標的放出、および計画放出型が含まれる。
【0219】
直腸投与/膣内投与
【0220】
本発明の化合物は直腸に、または、膣内に、たとえば坐薬、ペッサリー、または浣腸の形で投与され得る。カカオバターは従来からの座薬基剤であるが、必要に応じて種々の代替物が使われ得る。
【0221】
直投与/膣内投与のための製剤は、即放性および/または放出調節性になるよう製剤化され得る。放出調節性製剤としては、遅延放出、徐放、パルス放出、制御放出、標的放出、および計画放出型が含まれる。
【0222】
眼内投与/耳内投与
【0223】
本発明の化合物は、通常は、滴下剤の形で、直接、眼または耳にも投与され得る。眼内および耳内の投与に適した他の製剤としては、軟膏、生分解性の(たとえば、吸収されるゲルスポンジ、コラーゲン)および非生分解性の(たとえばシリコーン)インプラント系、ウエハー系、レンズ系、および微粒子系が挙げられる。製剤は、イオントフォレーシスによって届けられる可能性もある。
【0224】
眼内投与/耳内投与のための製剤は、即放性および/または放出調節性になるよう製剤化され得る。放出調節性製剤としては、遅延放出、徐放、パルス放出、制御放出、標的放出、または計画放出型が含まれる。
【0225】
実験
【表2】
【0226】
ポリプレックス組成物のインライン混合および濃縮のための材料および方法についてのさらなる記載は、国際公開第2009/039657号を参照されたい。公開は参照によりその全体を本明細書に明示的に組み込まれる。
【0227】
ポリプレックス製剤の命名規則
【表3】
【0228】
1Lバッチの製造、それに続くTFF濃縮の一般的なプロセスブロック図を図2に示す。
【0229】
小規模のインライン混合
【0230】
簡単な小規模のインライン混合装置を、シリンジポンプ、内径1/16インチのシリコーンチューブ;および内径3/32インチのY字構造体のポリプロピレンジャンクションを用いてテストした。3mL容量のシリンジおよびY字ジャンクションを用いる配置の模式図を図3に示す。この配置の場合、シリンジの最大容量が60mLであることに留意されたい。このプロセスを使用して、24mer/98%DDAキトサンを用いて、NP比20で150μg/mLの最終DNA濃度のポリプレックスを作製した。DNAおよびキトサンの原料を、体積比2:1で混合して、均一なポリプレックス製剤を生成した。
【0231】
中規模のインライン混合
【0232】
簡単な中規模のインライン混合装置を、蠕動ポンプ、内径3/16インチのシリコーンチューブ;および内径3/16インチのY字構造体のポリプロピレンジャンクションを用いてテストした。Y字ジャンクションを用いる配置の模式図を図4に示す。この配置の場合、最大生成量は原料容器の容量によってのみ限定されることに留意されたい。このプロセスを使用して、24mer/98%DDAキトサンを用いて、NP比20で、150μg/mLの最終DNA濃度のポリプレックスを作製した。DNAおよびキトサンの原料を、体積比2:1で混合して、均一なポリプレックス製剤を生成した。
【0233】
TFFプロセス(濃縮)
【0234】
TFF試験を行う前に、製造業者の説明書に従ってホローファイバーフィルターを洗浄して、清浄した。
【0235】
TFF濃縮#1
【0236】
濃縮を実行するために、TFF系を概略図(図5)に示すように設定して、残留水を取り除いた。透過バルブを閉め、次いで背圧バルブを完全に開けた後、DNA−キトサンポリプレックスを生成物リザーバへ加えた。ポンプの電源をオンにして濃縮を開始し、完全に透過バルブを開け、その後、目標のフィルタ入口側圧力へと背圧バルブを調節した。濃縮工程中、回収された透過液の質量を秤で測定し、そして目標DNA濃度が達成された時点を決定するために使用した。ポンプの電源を入れて、濃縮を開始し、透過バルブを全開し(次いで任意のポンプを作動させ)てから、背圧バルブを対象フィルタの入口圧力に調節した。濃縮プロセスの間に、収集した透過液の量を秤の上でモニターして、それを用いて、目標のDNA濃度が達成された時点を決定した。目標の体積減少が達成された後、透過バルブを閉じて、背圧バルブを完全に開いて、この濃縮プロセスを停止した。下記の式を参照されたい:
【数1】
【0237】
TFFダイアフィルトレーション
【0238】
一部のバッチでは、ダイアフィルトレーションステップ(緩衝交換)を、濃縮プロセスに挿入した。たとえば、0.15mg/mLのDNAから開始し、ポリプレックスを0.60mg/mLまで濃縮し、次いで0.60mg/mL濃度を維持しながら、ある程度の洗浄量をダイアフィルタで濾過し、次いでさらに1.20mg/mLまで濃縮した。
【0239】
ダイアフィルトレーションを実行するために、透過液出口ラインを、新しいタールを塗った収集溶液に変え、次いでバッファラインをベントポートを経て保持液容器に接続させた。これにより、大気の通気がない、密封された系を作製する。次に、透過バルブを開き、および/または透過ポンプを始動させた(上記と同じ流速)。これにより、透過液が引き出されにつれて、入れ替わりに透析バッファが保持液容器に引き入れて、保持液容器内が真空状態になる。このように、透過液が放出されるにつれて、保持液は連続的に補充されることによって一定のレベルに維持される。これは、透析プロセスである。場合によっては(系内の大気の漏れが原因で真空が不十分になったとき)、透析バッファを透過液と同じ速度で、保持液にポンプで注入した。ダイアフィルトレーションを、洗浄量(1洗浄量=保持液の量)の目標数に対して実行した。透析を停止するために、透過液を閉じ(バルブを閉じて透過ポンプを停止させる)、次いで保持液容器を大気に開放し、バッファラインを閉じた。
【0240】
第2のTFF濃縮
【0241】
ダイアフィルトレーションの後、TFF濃縮を再開した。目標の減少量が達成された後、透過バルブを閉じ、次いで背圧バルブを完全に開いて、濃縮プロセスを停止させた。保持液の流体ラインを一掃してから、最終生成物を収集し、このTFF後の生成物を、PicoGreenアッセイによる分析試験およびDNA濃度決定にかけた。残りを、直ちに−80℃で貯蔵し、あるいは分析試験が完了するまで4℃で貯蔵し、その後速やかに使用するか、あるは貯蔵のために凍結させた。
【0242】
TFF後のpH調整
【0243】
別段の記載がなければ、最終TFF後の生成物のpHは、pH調整バッファを加えることによって速やかにpH値を調整した。バッファ組成物は、通常、ショ糖の溶液中に、酢酸および/またはキトサンを含んだ。この溶液を、4.5:95.5の体積比でそれぞれ最終TFF生成物に加えた。この追加の量は、TFF後の生成物の濃度を4.5%低下させた。
【0244】
分析試験
【0245】
粒子サイズ測定
【0246】
粒子サイズ測定は、Zetasizerのナノ光散乱機器を使用して行われる。記載した場合を除いて、試料は10mMのNaCl(最低0.4mL)で20倍に希釈して、ディスポーザブルキュベットに充填した。3連での3分間の測定に先立ち、Zetasizerをプログラムして、試料を25℃で3分間インキュベートした。Z−平均および多分散(PDI)を標準偏差(n=3)を用いて報告した。希釈した試料に対しては、Zetasizerをプログラムして、10mMのNaClの粘性および屈折率を用いた。
【0247】
ゼータ電位
【0248】
ゼータ電位測定を、Zetasizerナノ光散乱機器を用いて行った。通常、無希釈の試料は、折り返しキャピラリーセルZetasizer(最低0.8mL)に充填した。複製測定(複製の回数はZetasizerソフトウェアによって自動的に決定された)に先立ち、試料を25℃で3分間インキュベートetasizerをプログラムして、試料を25℃で3分間インキュベートした。ゼータ電位値は、標準偏差(n=3)を用いて報告した。また、Zetasizerは、粘性および誘電率に関して試料の最終組成物を説明するようにプログラムされた。
【0249】
凍結による短期間の安定性
【0250】
短期安定性試験のため、ポリプレックスの最終生成物を、適当な温度(−20℃、−30℃または−80℃)で一晩冷凍、貯蔵された。場合によっては、試料はドライアイス/エタノール浴槽で急速に冷凍させ、次いで適当な温度で貯蔵された。記載するように、適当な時間で試料を室温まで解凍して、分析した。
【0251】
キトサナーゼ消化
【0252】
50μLのポリプレックスを、50μLの4.44U/mLキトサナーゼを用いて37℃で2時間消化させた。(ストックのキトサナーゼの濃度は、62U/mLであり、37℃で、冷たい50mM NaOAc、pH5.5で希釈した。)C(24,98)−N40−c75粒子の場合、0.909〜1.818mMのキトサンを消化させて、すべてのDNAを放出させることが最善であり、そのため粒子を150mMのNaOAc、pH5.5中、37℃で1:10および1:5に希釈した。
【0253】
PicoGreenによるDNAの定量化
【0254】
PicoGreenアッセイを用いてのDNA測定に先立ち、キトサナーゼによってポリプレックスから全DNAを放出しなければならない。放出に続いて、スーパーコイルDNAプラスミドを線形化するために、DNAを適切な制限酵素によるDNA消化にかける。
【0255】
EcoR1消化
【0256】
インキュベーション後、キトサナーゼで消化した試料のうちのXuLを5uLのEcoR1と、5uLのEcoR1バッファにに加え、次いでMiIIiQ水で最終50uL最終的な量にした。(最終的なDNA濃度が4ng/μLになるように、試料の量、XμLを調節した。)次いで、EcoR1試料を37℃で30分間、インキュベートした。
【0257】
PicoGreenアッセイ
【0258】
PicoGreen Qiant−iT ds DNA HS Assayキットに、2つのバッファ(AおよびB)ならびに2つの標準(1および2)を供給した。バッファAを1:20でバッファBに希釈して、溶液「A/B」を作製した。標準1および2を溶液A/Bで20倍に希釈した(10μLを200μLに)。標準1および2の最終濃度は、それぞれ0および10ng/μLであった。
【0259】
10〜20μLのEcoR1消化試料を溶液A/Bを用いて200μLの最終的な量にして、短時間ボルテックスを行い、室温で2分間インキュベートし、次いでQubit Fluorometer上で、製造者の説明書によって測定した。
【0260】
ゲル電気泳動
【0261】
ポリプレックスへのDNA捕獲の確認のために、試料をゲル電気泳動にかけた。
1〜5μL(800ng DNAの目標)の試料アリコートと、2μLのTrackit添加バッファとを組み合わせて、水を加えて最終10μLの量にした。標準レーンをSupercoiled DNAラダーにロードした。臭化エチジウム(50μg/mL)を含有する0.8%アガロースゲル上で、120Vで45分間、試料を分解させた。
Fluorchem Imaging Systemを用いてゲルを撮像した。
【0262】
SEAPアッセイ
【0263】
SEAP Chemiluminescent Assayキットを用いてSEAPアッセイを行った。使用に先立ち、アッセイ用のすべての試薬を25℃で30分間、平衡化した。アッセイ用の標準は、0.1%ウシ血清アルブミンおよび50%のグリセロールを添加したキットからの1×希釈バッファに胎盤性アルカリフォスファターゼを1mg/mLまで溶解させ、次いでDMEMを用いて10倍段階希釈によっ0.01pg/μLまで希釈することによって、調製した。次いで、標準および解凍した試料を、希釈バッファで1:4に希釈し、65℃で30分間、熱失活させて、氷上で2分間インキュベートしてから、遠心(16100×rcf、室温で2分間)させて、その上清を新しい管に移した。25℃で5分間,平衡化してから、50μLの試料および標準を、2連のMicrolite−1プレートの各ウェルに加えた。次いで、失活バッファ(50μL)を各ウェルに加えてから、静かに上下にピペッティングすることにより、気泡を作らぬように混合させて、5分間インキュベートした。基質とエンハンサーを1:19の比で5分間インキュベートして、基質/エンハンサー試薬を調製した。次いで、この基質/エンハンサーを各ウェルに加えて、20分間インキュベートして、プレートをルミノメータで1秒間の積分時間で読み込んだ。
【0264】
ニンヒドリンアッセイ(全キトサン)
【0265】
ポリプレックス中の全キトサン濃度を、ニンヒドリンアッセイを使用して決定した。簡単に言えば、ポリプレックスを、1〜2mMグルコサミンを含有するよう、酢酸ソーダで希釈し、150mM、pH5.5の最終濃度にした。同じ鎖長のキトサンから調製される標準曲線は、70mMの酢酸ソーダ、pH5.5を用いて0.5〜7.5mMのグルコサミン濃度に希釈する。次いで、希釈したポリプレックスおよび標準を、50mM酢酸ソーダ、pH5.5、中の等量の5μ/mLキトサナーゼ(pH 5)を用いて37℃で2時間消化さでる。2時間のインキュベーションの後、次いで消化した100μLのポリプレックスおよび標準を、400μLの70mM酢酸ソーダが入っているガラス管に加える。次いで、ニンヒドリン試薬(250μL)を、各試料に加えて、ガラス管を短時間ボルテックスして10分間沸騰させる。室温で15分間冷却した後、エタノールを25mL加えて、550nmで吸光度値を測定する。ポリプレックス中のキトサン濃度を、線形標準曲線の勾配とy切片から算出して、最初の希釈係数で調節する。
【0266】
実施例1:ダイフィルトレーションの第1の小規模試験
【0267】
ダイアフィルトレーション試験のバッチパラメータを表2に記載する。出発原料としてc150−pH4.0製剤を用いた。充填および終了の前に最終ステップとして、pH/アセテート調節ステップを追加した。
【0268】
表2.パラメータおよび結果
【表4】
【0269】
実施例2:ダイアフィルトレーションの第2の小規模試験
【0270】
ダイアフィルトレーションの2回目の試験(表3)では、バッチの大きさが3倍大きく、出発原料としてc150−pH4.0製剤を使用した。充填および終了の前に最終ステップとして、pH/アセテート調節ステップを追加した。
【0271】
表3.パラメータおよび結果
【表5】
【0272】
実施例3:小規模のバッチ
【0273】
ダイアフィルトレーションの第3試験(表4.)を実施した。このバッチも、出発原料としてc150−pH4.0製剤を用いた。
【0274】
表4.パラメータおよび結果
【表6】
【0275】
実施例4:中規模バッチ
【0276】
表5.パラメータおよび結果
【表7】
【0277】
TFF濃縮ステップ間のpH推移
【0278】
TFF濃縮プロセスを使用したいくつかのバッチでは、pHが通常、0.2から0.5単位上昇することに注目した。これは、TFFが進行するにつれて、製剤中の全アセテート対全キトサンの相対濃度の変化による、すなわち、pHが[キトサン]:[アセテート]の関数である。これをモデル化した。DNAが0.60mg/mLから2.0mg/mLに増加したので、ダイアフィルトレーションのステップの後、pHを念入りにモニターした。このモデルに関して、以下の仮定がなされた:
【0279】
透析の後、[アセテート]が10mMで一定であると仮定する
【0280】
濃縮ステップのスタート時、任意の[キトサン]を1mMと仮定する
【0281】
[キトサン]が減少量とともに比例して増大すると仮定する
【0282】
製剤のpHがヘンダーソン・ハッセルバッハ緩衝作用の理論を基づくと仮定する
【0283】
このpH推移をモデル化するため、pH対Log([キトサン]/[アセテート]をプトットして、得られた曲線を決定した:
【0284】
pH=0.6664×Log([キトサン]/[アセテート])+4.7208
【0285】
図6.TFF濃縮の間のpH推移のモデル化。各点は、ポリプレックスの相対的量−倍減少(=DNA濃度の増大)を示す。たとえば、2×の標識の付いた点は、およそc1200である。
【0286】
c1200製剤にアセテートを添加して80mMにした後、このモデルを用いて、c1200のpHを予想することができる。c1200中のキトサンは2×(すなわち、2×1mM=2mM)であると推定する。
全アセテートが80mMであると推定すると、pH=0.6664×Log(2/80)+4.7208=3.65。この結果は、実験による結果の3.7に極めて近い。
【0287】
80mMの最終的な所望のキトサン濃度で4.0のpH値を達成するために、キトサン濃度はこのバッチの出発量よりも6.6倍多いはずであることもこのモデルは示している。したがって、キトサンを含まないバッファでダイアフィルトレーションを実行する場合、これは遊離キトサンのほぼ全てを取り除くことになり、その上pH(4.0)およびアセテート(80mM)の同時目標を達成することができない。したがって、ダイアフィルトレーションは、キトサンを含むバッファで行われることが好ましい。
【0288】
TFF後の安定性
【0289】
重要なプロセスパラメータは、第2のTFF濃縮ステップの完了後である。他の前のステップと異なり、ポリプレックスはc1100への濃縮後は安定でなく、かつTFF停止から1時間以内に低いpH値に調節しなけれなばらない。一旦pHを調節すると、粒子は室温で安定になる。
【0290】
図7.第2のTFF濃縮ステップ後のポリプレックスの安定性。無希釈のTFF後の試料を、25℃でインキュベートし、2時間ごとに、粒子径をモニターした。
【0291】
実施例5:キトサン含有バッファを用いるダイアフィルトレーションのための中規模試験
【0292】
表6.パラメータ
【表8】
【0293】
表7.分析結果
【表9】
【0294】
図8.インプロセスpHデータ。X軸の上のTFF画分コードは、以下の通りである:C1:TFF濃縮ステップ#1;D:(洗浄量(WV)の#で示したTFFダイアフィルトレーション;C2:TFF濃縮ステップ#2。
【0295】
実施例6:pH4透析バッファによる小規模バッチ
【0296】
TFFの間、生成物のpHをより良く制御するために、ダイアフィルトレーションバッファを低いpHに修正した。以下の表に実験および結果の概略を述べる。
【0297】
表8.パラメータ
【表10】
【0298】
表9.分析結果
【表11】
【0299】
実施例7:pH4透析バッファによる中規模バッチ
【0300】
中規模バッチを3タイプ生成した。以下の表に、実験および結果の概略を述べる。
【0301】
表10.パラメータ
【表12】
【0302】
表11.分析結果
【表13】
結果は、3タイプのバッチの平均である。
【0303】
4.0の最終pH値を有するc1000ポリプレックスを製造するために、DNAとキトサンのインライン混合、TFF濃縮、TFFダイアフィルトレーションおよびpH調節を行った。最終製剤も、70〜80mMアセテートの緩衝能を有し、かつ生理的に等張であった。加えて、ナノ粒子分散は、−80℃凍結の間、室温解凍、解凍後少なくとも8時間の間安定であった。
【0304】
実施例8:−80℃での長期安定性
【0305】
−80℃での1年の貯蔵後、中規模製造からの最終生成物は光学的に半透明であり、かつ可視微粒子が含まれていなかった(データ図示せず)。
【0306】
中規模バッチに由来するキトサン−DNAナノ粒子は、−80℃で最高1年の間物理的に安定であった。粒子径、多分散および由来する計数率の変化は、ごくわずであった(表12)。小規模のバッチも、4ヵ月までの短期間試験の間は安定であった。
【0307】
表12.−80℃での安定性:粒径、PDI、およびDCR
【表14】
【0308】
中規模バッチに由来するキトサン−DNAナノ粒子は、−80℃で1年の間は、電気的に安定であった。導電率およびpHの変化は、ごくわずかであり分析誤差内であった(表13)。
ゼータ電位は1年間にわたり15〜30%増加したように思われるが、10%の変動はこのアッセイの場合正常と思われる(Malvern Instruments Technical Note MRK1031−01)。それにもかかわらず、1年後の電気特性は、依然として製品リリース仕様の範囲内であった。小規模のバッチは、4ヵ月のた短期間試験の間は安定であった。
【0309】
表13.−80℃での安定性: 導電率およびpH
【表15】
【0310】
DNAプラスミドの被包が維持されたことは、アガロースゲル電気泳動法によって示された。−80℃での1年間の貯蔵後のポリプレックスの2つの中規模バッチを、アガロースゲル電気泳動法によって分析した。DNAはポリプレックス中で被包された状態のままであり、かつ試料ウエル中に保持されており、カソードの方へ移動してなかった(図12)。
【0311】
実施例9:ブタの十二指腸への製剤送達
【0312】
製剤は、終夜絶食させたブタの十二指腸に内視鏡を介して送達された。簡単に言えば、内視鏡の先端が十二指腸への幽門括約筋を過ぎて入口に到達するまで、大腸内視鏡は麻酔下のブタの口に挿入した。0.3mg/kgのBuscopan(ぜん動を低下させるために)のIV投与の後、内視鏡を総胆管を越えてさらに20cm挿入した。この時点で、特注の二重バルーンカテーテルを内視鏡の送達チャネルを介して十二指腸内に進め、次いで、遠位および近位のバルーンを15〜20mLの生理食塩水で膨らませつつ、近位バルーンが総胆管の少なくとも5cm遠位にあることを確実にした。次いで、両バルーン間の中間組織にカテーテル内の送達ポートを介して後から送達した流体を満たして、排出させることによって十二指腸を洗浄した。流体洗浄の順は、45mLの生理食塩水での洗浄を3回、続いて生理食塩水中0.5%のMucomystでの洗浄を1回、続いて7.5%ショ糖中の25mM酢酸ソーダバッファ、pH5.5、での洗浄を1回であった。中間の十二指腸部が完全に空になったことを確実にしてから、製剤(高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物)をカテーテル送達ポートを介して十二指腸部に送達して、60分間インキュベートした。インキュベーションの後、遠位および近位のバルーンを収縮させ、次いで内視鏡とカテーテルを取り除いた。
【0313】
ブタ血漿収集
【0314】
ブタ血漿を、以下の手順で収集した。鎮静状態にある動物の耳静脈、伏在静脈または頚静脈から約5mLの血液を、50μLのアプロチニン(4.7単位/mgタンパク質、6.6単位/mL)を前もって添加したバキュテナーに採取して、直ちに氷上に配置し、試験のために研究室に送った。この血液試料を1000×gで10分間回転させて、その上清を収集することで血漿を収集した。分析準備が整うまで、収集した血漿を−80℃で保存した。
【0315】
結果
【0316】
ブタ血漿SEAPは、gWIZ−SEAPプラスミドDNAを含有するc150キトサン−核酸粒子の投与に応答させて検出した。pH4の製剤処方は、C(24,98)−N20−c150−Ac25−Suc9−pH4.0であった。pH4.8の製剤処方は、C(24,98)−N20−c150−Ac25−Suc9−pH4.8であった。
【0317】
血漿中での高レベルのSEAPによって証明されたように、4.0のpH値の高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物は、インビボでpH4.8組成物よりも実質的に高いトランスフェクション効率を示した。(図1)。
【0318】
実施例10:マウス膀胱のインビボトランスフェクション
【0319】
ナイーブC57BL/6マウスに、EFIa−SEAPまたは対照ビヒクルを担持するキトサン−DNAポリプレックスC(24,98)−c1000−pH4を投与した。2日後に、マウスを屠殺して、組織を収集した。ナイーブマウス(非形質移入)を超える、処置されたマウスの膀胱組織内のSEAP mRNAでの相対的な増加を図9に示す。
【0320】
方法
【0321】
開腹術による外科的切開をC57BL/6雌マウスの腹部において行い、膀胱を露出させて、分離した。EF1a−SEAPまたは対照ビヒクルを担持する、pH4のc1000C(24,98)キトサンポリプレックスを100μL送達した後に、尿を取り出した。送達から2日後に、RNA抽出続いてSEAP mRNA発現分析のためのRT−qPCRのために、膀胱組織を採取した。
【0322】
結果
【0323】
高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物は、インビボで膀胱の細胞に効率的にトランスフェクトすることができた。
【0324】
実施例11:慢性IBDモデルにおける繰り返し投与の有効性
【0325】
自然に慢性大腸炎を発症したIL−10欠損マウスを用いて、繰り返し投与試験を開始した。これらのマウスについて、大腸炎の発症の症状を毎週モニターした。大腸炎の発症を確認した(たとえば、軟便および血便)後、これらのマウスにEG−10またはSEAP(対照)ナノ粒子の3投与を浣腸を介して投与した。ナノ粒子の各投与を7日間隔で投与した。実験期間中これらのマウスの体重を毎週モニターして、毎週の処置の後に、EG−10処置群と関連して体重増加において有意な改善が観察された(図10)最後の処置から5日後に、両群からのマウスを屠殺して、それらの結腸を摘出して、炎症性サイトカインのレベルを測定した。SEAP処置したマウスと比較すると、EG−10処置したマウスは、IL−6、IL−1β、およびTNF−α mRNAのレベルの減少が生じた(図11)。これらのデータを組み合わせると、複数回の投与の可能性を明瞭に示し、慢性マウスIBDモデルにおいてEG−10の治療効果が改善した。
【0326】
図10:慢性IBDマウスの体重へのEG−10(hlL−10)の効果。自然に発症した大腸炎(およそ30週齢で)を有するIL−10欠損マウスに、EG−10またはSEAPナノ粒子(対照)を浣腸によって、7日間隔で3回投与することで処置した。各マウスの体重を毎週測定して、初回処置前のそれ自体の体重と比較した(%重量変化で表した)。両方のナノ粒子の製剤処方は、C(24,98)−N10c1000−Ac70−Suc9−ph4.0であった。EG−10ナノ粒子は、伸長因子1−αプロモータ(EF1a)の制御下で、ヒトインターロイキン−10遺伝子(hlL−10)とともにDNAプラスミドを含んだ。SEAP(対照)ナノ粒子は、伸長因1−αプロモータ(EF1a)の制御下で、分泌型胎盤アルカリホスファターゼ遺伝子(SEAP)とともにDNAプラスミドを含んだ。
【0327】
図11:EG−10(hlL−10)ナノ粒子の3種類の炎症性サイトカインへの効果。自然に発症した大腸炎(およそ30週齢で)を有するIL−10欠損マウスに、EG−10またはSEAP(対照)ナノ粒子を浣腸によって、7日間隔で3回投与することで処置した。最後の処置から5日後に、炎症性サイトカインレベルを、屠殺したマウスの結腸内のIL−6、TNF−αおよびIL−1βで測定した。両方のナノ粒子の製剤処方は、C(24,98)−N1−c1000−Ac70−Suc9−ph4.0であった。EG−10ナノ粒子は、伸長因子1−αプロモータ(EF1a)の制御下で、ヒトインターロイキン−10遺伝子(hlL−10)とともにDNAプラスミドを含んだ。SEAP(対照)ナノ粒子は、伸長因1−αプロモータ(EF1a)の制御下で、分泌型胎盤アルカリホスファターゼ遺伝子(SEAP)とともにDNAプラスミドを含んだ。
【0328】
実施例12:COPDまたは喘息を処置するためのインビボマウストランスフェクション:肺へのポリプレックスの送達
【0329】
マウスCOPDを確立するために、マウスをたばこの煙に4〜5日間曝して亜急性曝露を、または6ヵ月間曝して慢性曝露を確立する。曝露は以前に記載されているように鼻のみの曝露システムを通してまたは煙チャンバーを介してのいずれかで行う。(たとえば、Fortin et al., 2009, A multi−target antisense approach against PDE4 and PDE7 reduces smoke−induced lung inflammation in mice. Respir Res 2009 May 20;10:39; Miller et al., 2009, Adiponectin and functional adiponectin receptor 1 are expressed by airway epithelial cells in chronic obstructive pulmonary disease. J Immunol 2009 Jan 1;182(1)684−91;Bonneau et al., 2006, Effect of adenosine A2A receptor activation in murine models of respiratory disorders. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 2006 May,290(5);L1036−43. Epub 2005 Dec 9; Brusselle et al., Murine models of COPD. Pulm Pharmacol Ther 2006,19(3);155−65 Epub 2005 Aug 3;および D’hulst et al.,2005, Time course of cigarette smoke−induced pulmonary inflammation in mice. Eur Respir J 2005 Aug;26(2):204−1)。
マウスCOPDも、以前に記載されているように、ブタ脾臓エラスターゼに気道を4〜5週間曝すことによって確立し得る(たとえば、Cheng et al.,2009, Prevention of elastase−induced emphysema in placenta growth factor knock−out mice. Respir Res. 2009 Nov 23;10:115.;およびPang et al.,2008, Diminished ICAM−1 expression and impaired pulmonary clearance of nontypeable Haemophilus influenzae in a mouse model of chronic obstructive pulmonary disease/emphysema. Infect Immun. 2008 Nov;76(11): 4959−67. Epub 2008 Sep 15,を参照されたい)。
【0330】
マウス喘息モデルを確立するために、マウスに水酸化アルミニウムを混合したトリ卵白アルブミンを腹腔内注射する。最初の注射から数日後、前述のようにマウスに卵白アルブミンを鼻腔内投与する(Bonneau et al., 2006, 上記を参照;およびBoulares et al., 2003, Gene Knockout or Pharmacological Inhibition of Poly(ADP−Ribose) Polymerase−1 Prevents Lung Inflammation in a Murine Model of Asthma. American Journal of Respiratory Cell and Molecular Biology. Vol. 28, pp.322−329)。
【0331】
COPDまたは喘息モデルを処置するために、抗炎症性タンパク質をコードする治療用核酸を含む高酸性キトサン−DNAポリプレックス組成物を用いる。抗炎症性タンパク質は当該技術分野で周知である。代表的な抗炎症性タンパク質は、表14の参考文献に記載する。すべての参考文献は、その全てが参照により本明細書に明示的に組み込まれる。高酸性キトサン−DNAポリプレックス組成物を肺に、鼻腔内にまたは麻酔下で気管内に投与する(たとえば、Dow et al.,1999, infra;およびHogan et al., 1998,後述、を参照されたい)。
々の時点で、マウスを屠殺し、それらの肺組織を収集して、導入遺伝子mRNA発現および種々のサイトカインの発現のために処理する(たとえば、Dow et al., 1999, infra;およびHogan et al., 1998,後述、を参照されたい)。DNA単体を対照として単体で注射する。高酸性キトサン−DNAポリプレックス組成物の鼻腔内/気管内送達は、インビボで肺細胞での抗炎症性遺伝子mRNAの発現の有意な増大をもたらし、かつ炎症性サイトカインプロフィールの減少を媒介する。
【0332】
実施例13:インビボマウストランスフェクション:膀胱炎を処置するための膀胱へのポリプレックス送達
【0333】
膀胱炎モデルを確立するために、マウスまたはラットを用いることもある。たとえば、マウスを麻酔下で配置して、尿道にポリエチレンカテーテルでカニューレ処置する。尿の吸引の後で、前述のように膀胱に酸を滴下注入して膀胱炎を誘発させる(たとえば、KifImoto et al.,2007, Beneficial effects of suplatast tosilate (IPD−1151T) in a rat cystitis model induced by intravesical hydrochloric acid BJU lnt 2007 Oct, 100(4) 935−9 Epub 2007 Aug 20;および、Chuang et al., 2003, Gene therapy for bladder pain with gene gun particle encoding proopiomelanocortin cDNA J Urol 2003 Nov, 170(5) 2044−8)。
【0334】
膀胱炎を処置するために、マウスを麻酔して、抗炎症性タンパク質をコードする治療用核酸を含む高酸性キトサン−DNAポリプレックス組成物を尿道カテーテルを介して膀胱に小胞内投与する(たとえば、Kirimoto et al.,2007,前述、およびChuang et al., 2003、前述、を参照されたい)。代表的な抗炎症性タンパク質は、表14の参考文献に記載する。すべての参考文献は、その全てが参照により本明細書に明示的に組み込まれる。種々の時点で、マウスを屠殺し、それらの膀胱組織を収集して、組織学的検査および導入遺伝子mRNA発現ために処理する。加えて、種々のサイトカインの発現を調べる。DNA単体を対照として単体で注射する。高酸性キトサン−DNAポリプレックス組成物の小胞内送達は、インビボで膀胱細胞での抗炎症性遺伝子mRNAの発現の有意な増大をもたらし、かつ炎症性サイトカインプロフィールの減少を媒介する。
【0335】
表14:代表的な抗炎症性タンパク質
【表16】
【表17】
【表18】
【0336】
すべての引用は、その全てが、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物であって、安定なキトサン−核酸ポリプレックスを含み、前記組成物が4.5を下回るpH値を有する組成物。
【請求項2】
前記組成物が4.2を下回るpH値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が4.0を下回るpH値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が3.8を下回るpH値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
10mM〜200mMの対アニオン濃度を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記対アニオンがアセテートである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも0.5mg/mLの核酸濃度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1.0mg/mLの核酸濃度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1.5mg/mLの核酸濃度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物がポリプレックス沈殿物を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記キトサン−核酸ポリプレックスが治療用核酸コンストラクトを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
粘膜上皮の細胞をトランスフェクトする方法であって、粘膜上皮の前記細胞を請求項1による前記組成物と接触させることを含む方法。
【請求項13】
前記粘膜上皮が、消化管組織、気道組織、肺組織、副鼻腔組織、口腔組織、尿路組織、膀胱組織、膣組織、子宮組織、頸部組織、眼組織、食道組織、唾液腺組織、鼻喉頭組織、腎臓組織、および喉頭/咽頭組織からなる群から選択される組織に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記粘膜上皮が消化管組織に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記粘膜上皮が膀胱組織に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記粘膜上皮が肺組織に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
医薬組成物であって、請求項13による組成物を含み、前記医薬組成物が4.5未満のpH値を有する、医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物が等張である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
粘膜上皮の炎症を伴う疾患を処置するための方法であって、粘膜上皮の炎症を伴う疾患の患者に、請求項17に記載の治療有効量の医薬組成物を投与することを含み、前記治療用核酸コンストラクトが抗炎症性タンパク質をコードし、および前記医薬組成物が前記粘膜上皮に局所投与される、方法。
【請求項20】
前記抗炎症性タンパク質が、TFNα阻害剤、IL−1阻害剤、およびIL−10阻害剤からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗炎症性タンパク質がIL−10である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記疾患がIBDである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記疾患が間質性膀胱炎である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記疾患がCOPDである、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記疾患が喘息である、請求項19に記載の方法。
【請求項1】
高酸性キトサン−核酸ポリプレックス組成物であって、安定なキトサン−核酸ポリプレックスを含み、前記組成物が4.5を下回るpH値を有する組成物。
【請求項2】
前記組成物が4.2を下回るpH値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が4.0を下回るpH値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が3.8を下回るpH値を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
10mM〜200mMの対アニオン濃度を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記対アニオンがアセテートである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
少なくとも0.5mg/mLの核酸濃度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1.0mg/mLの核酸濃度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
少なくとも1.5mg/mLの核酸濃度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物がポリプレックス沈殿物を含まない、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記キトサン−核酸ポリプレックスが治療用核酸コンストラクトを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
粘膜上皮の細胞をトランスフェクトする方法であって、粘膜上皮の前記細胞を請求項1による前記組成物と接触させることを含む方法。
【請求項13】
前記粘膜上皮が、消化管組織、気道組織、肺組織、副鼻腔組織、口腔組織、尿路組織、膀胱組織、膣組織、子宮組織、頸部組織、眼組織、食道組織、唾液腺組織、鼻喉頭組織、腎臓組織、および喉頭/咽頭組織からなる群から選択される組織に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記粘膜上皮が消化管組織に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記粘膜上皮が膀胱組織に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記粘膜上皮が肺組織に存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
医薬組成物であって、請求項13による組成物を含み、前記医薬組成物が4.5未満のpH値を有する、医薬組成物。
【請求項18】
前記医薬組成物が等張である、請求項14に記載の医薬組成物。
【請求項19】
粘膜上皮の炎症を伴う疾患を処置するための方法であって、粘膜上皮の炎症を伴う疾患の患者に、請求項17に記載の治療有効量の医薬組成物を投与することを含み、前記治療用核酸コンストラクトが抗炎症性タンパク質をコードし、および前記医薬組成物が前記粘膜上皮に局所投与される、方法。
【請求項20】
前記抗炎症性タンパク質が、TFNα阻害剤、IL−1阻害剤、およびIL−10阻害剤からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記抗炎症性タンパク質がIL−10である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記疾患がIBDである、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記疾患が間質性膀胱炎である、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
前記疾患がCOPDである、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
前記疾患が喘息である、請求項19に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2012−522020(P2012−522020A)
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−502406(P2012−502406)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000503
【国際公開番号】WO2010/111787
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(510082868)エンジーン,インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000503
【国際公開番号】WO2010/111787
【国際公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【出願人】(510082868)エンジーン,インコーポレイティド (2)
【Fターム(参考)】
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