高電圧インバータ装置
【課題】高出力の高電圧を連続的に、安定的にしかも安全に得られるようにする。
【解決手段】直流電圧若しくは直流成分に脈流が重畳された安全特別低電圧(SELV)以内の電圧を入力電圧とし、その入力電圧をスイッチング素子Qswによってスイッチングして、同一の特性を持つ個別の第一、第二のトランスT1,T2の一次側の励磁巻線Np1,Np2を同時並列に励磁電流を流して励磁させ、その複数の第一、第二のトランスT1,T2の各出力巻線Nout,Nout(sub)を互いに直列に接続し、かつその各出力巻線Nout,Nout(sub)の出力電圧の波形の時間軸が同期している。
【解決手段】直流電圧若しくは直流成分に脈流が重畳された安全特別低電圧(SELV)以内の電圧を入力電圧とし、その入力電圧をスイッチング素子Qswによってスイッチングして、同一の特性を持つ個別の第一、第二のトランスT1,T2の一次側の励磁巻線Np1,Np2を同時並列に励磁電流を流して励磁させ、その複数の第一、第二のトランスT1,T2の各出力巻線Nout,Nout(sub)を互いに直列に接続し、かつその各出力巻線Nout,Nout(sub)の出力電圧の波形の時間軸が同期している。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高電圧電源装置や放電用電源装置等に用いられるスイッチングレギュレータ、インバータ等の高電圧インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気圧プラズマは、表面処理の一つの手段として、表面の改質や汚染物の除去等、様々な工業製品に応用されている。樹脂等に接着や印刷、コーティング等を施す場合に、大気圧プラズマにより前処理を行うと、濡れ性を向上させることが可能になる。
例えば、電子写真方式による画像形成装置により樹脂トナーが印刷された印刷物に、紫外線硬化型のニスをコーティングしようとすると、樹脂トナーに含まれるワックス成分により、樹脂トナー印刷部分のニスを弾いてしまう場合がある。しかし、大気圧プラズマによる表面処理を行うと、濡れ性が向上するため、ニスコーティングが可能になり、印刷物の付加価値が向上する。その大気圧プラズマを発生させるためには高電圧が必要となり、インバータ装置によって安全に高電圧を得る必要がある。
【0003】
大気圧プラズマが発生し易い数KV、もしくは10数KV〜20KVの高電圧を発生させる交流のインバータ装置において、この電圧範囲の高電圧は感電やスパークによる発火・発煙等が発生する恐れがあり、人体に極めて危険である。一方、国際規格IEC60950(J60950)の安全規格によると、入力電圧はSELV(Safety Extra Low Voltage :安全特別低電圧)である60VDC以内もしくは電圧尖頭値が42.4Vを超えなければ安全とされている。そのため、そのSELV以内の電圧をインバータの入力電圧とし、何らかの原因でインバータ回路の構成部品が絶縁破壊されても、入力側で供給電力が制限される構成が必須である。
【0004】
そこで、電源装置全体の構成としては商用入力電源を使用し、その電源回路の出力電圧範囲をSELV以内の電圧として、それを入力とする高圧インバータによって高電圧を発生させる装置がある。
入力電圧がSELV以内であると、所定の出力Voutを得るためには、その数10倍から数100倍の昇圧比(倍率)nが必要となる。ここで、
n=Vout/SELV
とすれば、Vout=15KVで、SELV=48Vのときは、n=312.5倍の昇圧が必要になる。
【0005】
これを実現するためには、トランスやコッククロフトウオルトン回路(Cockcroft-Walton circuit)等のN倍整流回路等があげられる。しかし、コッククロフトウオルトン回路等のN倍整流回路は、コンデンサによる充放電で行うものであるため、瞬間的な単発出力は引き出せるが連続的に出力電力を取り出すことは困難である。したがって、安定な出力を得るには大型のトランスに頼らざるを得ない。
物に例えると、軽いものを高いところまで移動させるのは比較的容易であるが、重いものを高いところまで持ち上げるのには大変な労力が要る。高電圧インバータ装置においても、負荷(重さ)×移動距離×高さの総和に相当する出力電力が、数mWとごく小さなものではなく、数10Wないし数100Wを得る必要がある。
【0006】
トランスを決定する一般定義は次式のように表記される。すなわち、励磁巻線の巻数Np、励磁巻線に流れる電流Ip、および出力巻線の巻数Noutは、次式で求められる。
Np= Vin・Ton/Ae・B
Ip=Nout・Iout/Np
Nout =Vout・Np・Ton/Vin
ここで、Ton:時比率(sec) Ae:コアの実効断面積(cm2)
B:磁束密度(gauss) Vin:入力電圧
Vout:出力電圧(V) Iout:出力電流(A)
【0007】
これらの定義から分かるように、トランスの持つコアの磁束密度Bもしくは実効断面積Aeと、励磁巻線の巻数Npとの関係が反比例となっているため制約されてしまう。出力巻線の巻数Noutはなるべく少ない正の整数であることが必要になってくる。しかし、巻数が少ないとコアの磁束密度Bが大きくなり、損失が増大すると共に磁気飽和の方向に進み、トランスとしての機能がなくなってしまう。また、逆に巻数が多すぎると巻線長さが増えるため、そこに流れる電流による損失が増加してしまう。
【0008】
図13にフェライトコアのB−Hカーブを示すように、コアの磁束密度Bは、ΔBで示す特定の範囲のみで磁界の強さHに略比例して変化し、磁界の強さHがΔHで示す範囲を超えると磁気飽和になる。したがって、この範囲でのみトランスとして機能することになる。図13に示したB−Hカーブにおいて、磁界の強さHが増加する時と減少する時の経路に囲まれた部分の面積(斜線部)が、一般的にはヒステリシス損(鉄損)といわれる。このような理由で、励磁巻線の巻数Npは特定の範囲のみとなり、トランスから引き出せる出力は、この励磁巻線の巻数Npとコアの磁束密度Bとの兼ね合いにかかっているが、結果的には特定の範囲に限定される。
磁束Bが必要十分に取り出せれば、次に述べるトランスの特性低下が生じない。しかし現実的にはコアの材料(例えばフェライト0.2〜0.3tesla、珪素鋼板1tesla:ただし使用したい周波数による、アモルファス1tesla、パーマロイ等がある)により磁束が不足する。
【0009】
さらに、励磁巻線の巻数Npと出力巻線の巻数Noutは比例関係にある。ここで技術課題になるのが、NpとNoutの大きさが、ごく一般的には出力電圧でほぼ決まるため、入力電圧Vinが低く昇圧比nが非常に大きな場合には、出力巻線の巻数Noutが必然的に多くなり、巻線間容量の増大と層間容量の増大等が起こってしまう。そのため、次のような問題が生じる。
・使用したい動作周波数でトランスとして必要なインダクタンスが得られない。
・トランスの周波数の範囲が狭い。
・誘電損失が増大する。
・高電圧による近接効果による損失が増大する。
これらによって、トランスの性能を低下させてしまう。
【0010】
そこで、従来のスイッチングコンバータとして、例えば特許文献1に記載されたものがあり、このスイッチングコンバータは、直流の入力電源を持ち、一つのトランスにて1次巻線(励磁巻線)が分割された巻線であり、その出力側に2つの出力巻線をもつ他励型ON−OFF方式の直流電源である。
【0011】
また、特許文献2に記載された高圧電源回路は、オンデューティが50%に固定され、プッシュプルモードで動作する1対のスイッチング素子によって、絶縁高圧トランスの2つの1次巻線(励磁巻線)の励磁電流をスイッチングし、1つの2次巻線(出力巻線)の出力を整流平滑して直流高電圧を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−144544号公報
【特許文献2】特許第3152298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたスイッチングコンバータや特許文献2に記載された高圧電源回路は、いずれも1個のトランスに複数の励磁巻線と出力巻線を設けて、その各出力を出力巻線の中点をとって整流平滑したり、2次側の交流出力を単に整流平滑して直流出力とするものである。そのため、出力巻線の巻数を多く巻けず、昇圧比が高い高電圧(数十W乃至数百W)を連続して出力させることはできなかった。
また、これらはトランスの持つ磁束密度を最大限有効に活用しようとするものであるが、更に昇圧しようとすると磁束密度が飽和してしまい、それ以上昇圧することができないという不具合があった。
【0014】
この発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、高電圧インバータ装置によって、高出力の交流高電圧を連続的に、安定的にしかも安全に得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は上記の目的を達成するため、直流電圧若しくは直流成分に脈流が重畳された安全特別低電圧(SELV)以内の電圧を入力電圧とし、その入力電圧をスイッチングしてトランスの一次側の励磁巻線に励磁電流を流し、そのトランスの二次側の出力巻線から高電圧を出力する高電圧インバータ装置において、上記トランスを、同一の特性を持つ個別の複数のトランスによって構成し、その複数のトランスの各励磁巻線を並列に接続して同時並列に励磁させるようにし、その複数のトランスの各出力巻線を互いに並列又は直列に接続し、かつ各出力巻線の出力電圧波形の時間軸が同期していることを特徴とする。
また、上記同一の特性を持つ個別の複数のトランスの各励磁巻線を直列に接続して同時に励磁させるようにしてもよい。
上記複数の各トランスは共振トランスであるとよい。
【発明の効果】
【0016】
この発明の高電圧インバータ装置によれば、上記の構成によって、高出力の高電圧を連続的に、安定的にしかも安全に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明による高電圧インバータ装置の第1実施例の回路図である。
【図2】スナバ回路の異なる例を示す回路図である。
【図3】図1に示した第1実施例のターンON時の等価回路図である。
【図4】同じくON時の等価回路図である。
【図5】同じくターンOFF時の等価回路図である。
【図6】同じくOFF時の等価回路図である。
【0018】
【図7】図1に示した第1実施例の動作中の各部の電圧波形の変化を示すタイミングチャートである。
【図8】この発明による高電圧インバータ装置の第2実施例の回路図である。
【図9】この発明による高電圧インバータ装置の第3実施例の回路図である。
【図10】この発明による高電圧インバータ装置の第4実施例の回路図である。
【図11】この発明による高電圧インバータ装置の第5実施例の回路図である。
【図12】この発明による高電圧インバータ装置におけるトランスの数とスイッチング素子のドレイン・ソース間電圧の波高値との関係を示す曲線図である。
【図13】一般的なトランスのコアのB−Hカーブの例を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
〔第1実施例:図1〜図7〕
この発明による高電圧インバータ装置の第1実施例(併列励磁+電圧加算の例)について図1によって説明する。図1はその構成を示す回路図であり、INが入力端子であり、OUTが出力端子である(以後の実施例も同じ)。
この高電圧インバータ装置は、入力端子INから供給される直流電圧(60V以下)若しくは直流成分に脈流が重畳されたSELV(安全特別低電圧)以内の電圧を入力電圧Vinとし、その入力電圧Vinをスイッチング素子Qswによってスイッチングして、第一のトランスT1と第二のトランスT2の一次側の励磁巻線NP1、NP2に励磁電流を流し、そのトランスT1,T2の二次側の出力巻線Nout,Nout(sub)から高電圧を出力し、交流高電圧の出力電圧Vout を出力端子OUTから負荷に対して出力する。
【0020】
第一のトランスT1と第二のトランスT2は同一の特性を持つ別個のトランスであり、その励磁巻線Np1,Np2が、入力電源の正極側のa点とFET(電界効果トランジスタ)によるスイッチング素子Qswの正極側のb点との間に並列に接続されている。
そのa点とb点との間に、a点に一端を接続したコンデンサCとアノードをb点に接続したダイオードDとを直列に接続してスナバ回路を構成している。このスナバ回路は第一、第二のトランスT1、T2のリセット用およびスイッチング素子Qswの電圧抑圧用に設けられている。そのスナバ回路は、上記のダイオードDとコンデンサCの直列回路以外にも、図示していないが、コンデンサCに並列に抵抗Rを接続したいわゆるRCスナバ回路もある。
【0021】
さらに、図2に示すように、スイッチング素子Qswの正極側のb点から入力電源の正極側のa点にコンデンサC1とダイオードD1とを、図1におけるダイオードDとコンデンサCとは順序を入れ替えて接続し、そのコンデンサC1とダイオードD1のアノードとの接続点eに別のダイオードD2のカソードを接続し、そのダイオードD2のアノードとスイッチング素子Qswの負極側のd点との間に、インダクタ(チョークコイル)Lと抵抗R2との並列回路を接続したスナバ回路も考えられる。
【0022】
ICは発振回路を含む制御回路であり、抵抗R1を介してスイッチング素子Qswのゲートにスイッチングパルスを印加してスイッチング素子Qswをオン・オフさせる。それによって、第一、第二のトランスT1、T2の励磁巻線Np1,Np2に断続的に電流を流し、各出力巻線Nout,Nout(sub)に交流高電圧を発生させる。
【0023】
同一の特性を持つ別個の第一、第二のトランスT1、T2にはそれぞれ出力巻線Nout,Nout(sub)があり、第二のトランスT2の出力巻線Nout(sub)の上に第一のトランスT1の出力巻線Noutが積み上げられるように、出力巻線Noutと出力巻線Nout(sub)が直列に接続され、各出力巻線Nout,Nout(sub)の接続されていない方の各端子が出力端子OUT側へ繋がる。
【0024】
ここで、出力巻線Nout,Nout(sub)からの出力は交流であるが、直流部分が少しあったときにその直流分をカットしたい等の理由で交流のみを出力端子へ通過させたい場合が生じる。その場合は出力の正極側ラインにコンデンサC0を配置するとよい。ただし、この発明は、数KV〜20KVでの電圧範囲が対象であるため、このコンデンサC0の耐圧は出力電圧と同じ電圧以上の耐圧が必要になる。
【0025】
この高電圧インバータ装置において、スイッチング素子QswがターンONした時(Turn
ON時)には、図3に等価回路で示すようになり、入力電源の正極側から破線矢印で示すようにスナバ回路のコンデンサCとダイオードD(この時は接合間容量によりコンデンサとして機能する)を通してスイッチング素子Qswに電流が流れるが、第一、第二のトランスT1、T2の励磁巻線Np1,Np2には殆ど電流が流れず、出力巻線Nout,Nout(sub)にも誘起電流は殆ど流れない。
【0026】
スイッチング素子Qswが完全にオンになると、図4に等価回路で示すようになり、入力電源の正極側から破線矢印で示すように、第一、第二のトランスT1、T2の並列に接続された励磁巻線Np1,Np2とスイッチング素子Qswを通して電流が流れ、その第一、第二のトランスT1、T2の出力巻線Nout,Nout(sub)にも破線矢印で示すように誘起電流が流れ、出力電圧が得られる。
スイッチング素子QswがターンOFFした時(Turn OFF時)には、図5に等価回路で示すようになり、スナバ回路のコンデンサCの充電電荷が放電する。このときダイオードDは、順方向電圧が閾値になるまでの順方向回復時間の間は接合容量によりコンデンサとして機能する。
【0027】
スイッチング素子Qswが完全にオフになると、図6に等価回路で示すようになり、第一、第二のトランスT1、T2の並列に接続された励磁巻線Np1,Np2に逆起電圧が発生し、それが破線矢印で示すようにスナバ回路のダイオードD(このときは導通状態になる)とコンデンサCを通して流れるとともに、開放したスイッチング素子Qswのソース・ドレイン間(この時はコンデンサとして機能する)を通して入力電源側へも流れる。各出力巻線Nout,Nout(sub)にも逆起電圧が発生し、それにより出力端子OUTに接続された負荷に電流を流す。
【0028】
スイッチング素子Qswが周期的にオン・オフすることによって、上述した各状態を繰り返すことになる。そのときの各部の電圧波形の変化を図7のタイミングチャートに示す。この図における各波形の大小の比率、絶対値、時間軸の比率及び大小の相関は正確なものではない。
【0029】
この図7において、Vgsはスイッチング素子Qswのドライブ電圧(ゲート・ソース間電圧)、VNp1、VNp2は励磁巻線Np1、Np2の電圧、Idsはスイッチング素子Qswに流れる電流、Vdsはスイッチング素子Qswのドレイン・ソース間電圧、VNoutは第一のトランスT1の出力巻線Noutの出力間電圧、VNout(sub)は第二のトランスT2の出力巻線Nout(sub)の出力間電圧、Voutは出力端子OUTからの出力電圧である。そして、この図7から明らかなように、各出力巻線NoutとNout(sub)の出力電圧VNoutとVNout(sub)の波形の時間軸が同期している。
【0030】
このように、この発明による高電圧インバータ装置は、磁路が全く違う別個のコアを持つ同じ特性を持つトランスを少なくとも2個以上設け、その各励磁巻線を同時に励磁し、出力側において各出力巻線の出力電圧波形の時間軸を同期させ、その各出力を電圧加算あるいは電流加算する。上述した第1実施例では、2個のトランスT1、T2の出力巻線Nout,Nout(sub)の各出力を電圧加算によって積み上げ昇圧している。したがって、複数の励磁巻線に偏磁が生じることがなく、トランス全体として出力巻線の巻数を多くすることができるので、昇圧比が高い高電圧を連続して、安定にしかも安全に得ることができる。
【0031】
〔第2実施例:図8〕
次に、この発明による高電圧インバータ装置の第2実施例(併列励磁+電流加算の例)について図8によって説明する。図8はその構成を示す回路図である。
この第2実施例では、同一の特性を持つ別個の第一、第二のトランスT1、T2の出力巻線Nout,Nout(sub)は、各出力が電流加算されるように並列に接続されて、出力端子OUT側へつながる。この実施例によれば、出力電圧はトランスが1個の場合と略同等であるが、出力直電流を倍増できるので出力電力も倍増する。
【0032】
この各トランスT1、T2の励磁巻線Np1,Np2が入力電源の正極とスイッチング素子Qswの正極間に並列に接続されていることは第1実施例と同じである。その他の構成及び作用も前述した第1実施例と同様である。この第2実施例では出力線にコンデンサC0を設けていないが、出力の直流成分をカットしたい場合には、第1実施例と同様に出力線にコンデンサC0を設けるとよい。
【0033】
〔第3実施例:図9〕
次に、この発明による高電圧インバータ装置の第3実施例(分割励磁+電流加算の例)について図9によって説明する。図9はその構成を示す回路図である。
この第3実施例3においては、別個に設けた同一の特性を持つ第一、第二のトランスT1、T2の励磁巻線Np1とNp2は、入力電源の正極とスイッチング素子Qswの正極との間に直列に接続されている。そして、その入力電源の正極とスイッチング素子Qswの正極との間にスナバ回路を構成するダイオードDとコンデンサCの直列回路も接続されている。
第一、第二のトランスT1、T2の出力巻線Nout,Nout(sub)は、第2実施例と同様に出力が電流加算されるように並列に接続されて、出力端子OUT側へ繋がっている。
その他の構成及び作用は、出力線にコンデンサC0を設けていない点を除いて前述した第1実施例と同様である。
【0034】
〔第4実施例:図10〕
次に、この発明による高電圧インバータ装置の第4実施例(分割励磁+電圧加算の例)について図10によって説明する。図10はその構成を示す回路図である。
この実施例4においては、別個に設けた同一の特性を持つ第一、第二のトランスT1、T2の励磁巻線Np1とNp2は、第3実施例と同様に入力電源の正極とスイッチング素子Qswの正極との間に直列に接続されている。また、その入力電源の正極とスイッチング素子Qswの正極との間にスナバ回路を構成するダイオードDとコンデンサCの直列回路も接続されている。
【0035】
そして、第一のトランスT1の出力巻線Noutと第二のトランスT2の出力巻線Nout(sub)とが、出力巻線Noutの上に出力巻線Nout(sub)が積み上げられるように直列に接続され、それぞれ接続されていない各端子が出力端子OUT側へ繋がっている。
その他の構成及び作用は出力線にコンデンサC0を設けていない点を除いて第1実施例と同様である。
【0036】
〔第5実施例:図11〕
次に、この発明による高電圧インバータ装置の第5実施例(トランス3個による併合励磁+電圧加算の例)について図11によって説明する。図11はその構成を示す回路図である。
【0037】
この第5実施例5においては、別個に設けた同一の特性を持つ3個のトランスを使用しており、その第一のトランスT1、第二のトランスT2、第三のトランスT3の各励磁巻線Np1,Np2、Np3が、入力電源の正極とスイッチング素子Qswの正極との間に並列に接続されている。その各トランスT1、T2、T3の出力巻線Nout,Nout(sub),Nout(subc)は全て直列に接続され、その出力巻線NoutとNout(subc)のそれぞれ接続されていない方の端子が出力端子OUT側へ繋がっている。
その他の構成及び作用は、出力線にコンデンサC0を設けていない点を除いて前述した第1実施例と同様である。
この第5実施例によれば、3個のトランスT1、T2、T3の出力巻線Nout,Nout(sub),Nout(subc)の各出力を電圧加算によって積み上げ昇圧しているので、一層高い高電圧出力を得ることができる。
【0038】
なお、同一の特性を持つ3個のトランスT1、T2、T3の各励磁巻線Np1,Np2、Np3を第3、第4実施例と同様に全て直列に接続してもよい。また、その各トランスT1、T2、T3の出力巻線Nout,Nout(sub),Nout(subc)を全て並列に接続してもよい。また、それぞれ別個に設けた同一の特性を持つトランスは4個以上でもかまわない。
しかし、現実的には、そのトランスの数は、配置やパターン等が数とともに大きくなるため、不要輻射等のEMIに課題を残すことになるため、4個位までがよいと思われる。
【0039】
各トランスの励磁巻線は直列に接続しても並列に接続しても、ほぼ均一な分割された個々の磁界の強さが必要な強さになればよい。
また、第3〜第5実施例においても、出力の直流成分をカットしたい場合には、第1実施例と同様に出力線にコンデンサC0を設けるとよい。
【0040】
〔共振トランスとその使用個数〕
この発明による高電圧インバータ装置における各トランスT1〜T3は共振トランスを用いるのが望ましい。共振トランスではフライバック方式で高電圧を得るため、エネルギーが一次側からトランスに注入される期間と二次側から取り出される期間とが交互になる。すなわち、一次側のスイッチング素子QswがONの期間にエネルギーが励磁エネルギーとして各トランスに蓄えられ、そのスイッチング素子QswがOFFの期間にそれを二次側に吐き出すような動作をする。そのため、各トランスは、スイッチング素子Qswのスイッチング周波数fsw以上の自己共振周波数fo(fsw ≦fo)で共振する。
【0041】
励磁巻線への電圧印加のON期間(時間)とOFF期間(時間)の割合である時比率が50%:50%の場合はfsw=f0 である。しかし、高電圧高電流を出力するためには、トランスに励磁エネルギーを蓄えるON期間をなるべく長くする必要がある。ON期間の割合が50%を超えるようにするのはそのためであり、有効な出力を得るためにはON期間の割合が55%以上あることが望ましい。
【0042】
スイッチング周波数fswは可聴音周波数を充分に超える周波数、例えば20KHzの一定周波数に固定する。そして、スイッチング素子QswのONデューティが上記時比率のON期間に相当する割合になるように、図1等に示した制御回路ICから出力するスイッチングパルスの周期(1/fsw)とONデューティを予め設定する。
【0043】
このような共振トランスを使用した高圧インバータ装置において、実験を積み重ねた結果、入力電圧:Vin、共振の鋭さ:Qe、スイッチング素子Qswのドレイン・ソース間電圧:Vds、出力電圧:Vout 、巻線比(出力巻線のターン数/励磁巻線のターン数):Nps、およびトランスの数:Nの間に、次の理論式が成り立つことが分かった。
・Vds=Vout/(N・Nps)
・Vout=Qe・Vin
【0044】
したがって、出力電圧Voutは共振の鋭さQeに比例し、Qeを大きくすれば巻線比をあまり大きくしなくても充分な昇圧を達成することができる。
ここで、共振の鋭さQeについて説明する。周波数に対する共振電流の特性をとると、共振周波数foで共振電流が最大値になるが、その前後の周波数で共振電流が最大値の1/√2になる周波数の幅(半値幅という)をΔfとすると、Qe=fo/Δfで表される無次元数である。
【0045】
そして、図1及び図11に示した実施例のように、複数個のトランス(共振トランス)の各励磁巻線を並列に接続し、各出力巻線を直列に接続した場合、そのトランスの数N(個数)とスイッチング素子Qswのドレイン・ソース間電圧の波高値Vds(Vp-0)との関係は、Qeを一定とした場合、図12に示す曲線のように変化した。
すなわち、接続するトランスの数Nが多くなるほど、ドレイン・ソース間電圧の波高値Vds(Vp-0)の低下が認められた。図12に示す例では、トランスが2個の場合にはVds(Vp-0)が560Vであるが、トランスが3個の場合はVds(Vp-0)が384Vである。
【0046】
このことは、接続するトランスの数をが多くするほど、スイッチング素子Qswの耐圧が低くて済み、MOS−FETであればON抵抗の低い素子を使えることになる。例えば、MOS−FETを3個並列駆動する必要があるところを2個並列駆動でもよいことになる。
実例として、入力電圧Vinが56V、出力電圧Vout が10.5KV、平均出力が20W〜800Wの場合、トランス2個では耐圧が900Vのところ、トランス3個にすると耐圧が600Vになる。それによって、スイッチング素子QswのON抵抗が著しく低下し、効率(出力電力/入力電力)が大幅に向上する。図11に示した実施例の場合、79.4%の効率を得ることができた。
【0047】
トランス配置のループ長や面積を考慮しなければ、トランスの数を多くした方が効率が向上し、不要輻射などのノイズの低減にも寄与する。しかし、実際にはトランスの数に応じてループ長や設置面積が大きくなってしまうため、不要輻射の発生や装置サイズの問題も生じるので、トランスの数は4個位までが実用的な範囲であると考えられる。
【0048】
以上、この発明による高電圧インバータ装置の各実施例について説明してきたが、この発明はこれらに限るものではなく、種々の変形が可能であり、各実施例は矛盾しない範囲で、適宜組み合わせて実施することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明は、スイッチングレギュレータ、インバータ、高電圧電源、放電用電源等の高電圧発生装置に利用することができる。特に、印刷物の表面処理等を行うための大気圧プラズマを発生させるための高出力の高電圧を、連続的に安定して、しかも安全に得られるようにするのに適している。
【符号の説明】
【0050】
IN:入力端子 OUT:出力端子 T1:第一のトランス
T2:第二のトランス T3:第三のトランス
Qsw:スイッチング素子 D,D1,D2 :ダイオード
C,C0,C1:コンデンサ R1,R2:抵抗 IC:制御回路
Np1:第一のトランスの励磁巻線 Nout:第一のトランスの出力巻線
Np2:第二のトランスの励磁巻線 Nout(sub):第二のトランスの出力巻線
Np3:第三のトランスの励磁巻線 Nout(subc):第三のトランスの出力巻線
Vgs:スイッチング素子のドライブ電圧
VNp1:第一のトランスの励磁巻線Np1の電圧
VNp2:第二のトランスの励磁巻線Np2の電圧
Ids:スイッチング素子に流れる電流
Vds:スイッチング素子のソース・ドレイン間電圧
VNout:第一のトランスの出力巻線間電圧
VNout(sub):第二のトランスの出力巻線間電圧 Vout:出力電圧
【技術分野】
【0001】
この発明は、高電圧電源装置や放電用電源装置等に用いられるスイッチングレギュレータ、インバータ等の高電圧インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大気圧プラズマは、表面処理の一つの手段として、表面の改質や汚染物の除去等、様々な工業製品に応用されている。樹脂等に接着や印刷、コーティング等を施す場合に、大気圧プラズマにより前処理を行うと、濡れ性を向上させることが可能になる。
例えば、電子写真方式による画像形成装置により樹脂トナーが印刷された印刷物に、紫外線硬化型のニスをコーティングしようとすると、樹脂トナーに含まれるワックス成分により、樹脂トナー印刷部分のニスを弾いてしまう場合がある。しかし、大気圧プラズマによる表面処理を行うと、濡れ性が向上するため、ニスコーティングが可能になり、印刷物の付加価値が向上する。その大気圧プラズマを発生させるためには高電圧が必要となり、インバータ装置によって安全に高電圧を得る必要がある。
【0003】
大気圧プラズマが発生し易い数KV、もしくは10数KV〜20KVの高電圧を発生させる交流のインバータ装置において、この電圧範囲の高電圧は感電やスパークによる発火・発煙等が発生する恐れがあり、人体に極めて危険である。一方、国際規格IEC60950(J60950)の安全規格によると、入力電圧はSELV(Safety Extra Low Voltage :安全特別低電圧)である60VDC以内もしくは電圧尖頭値が42.4Vを超えなければ安全とされている。そのため、そのSELV以内の電圧をインバータの入力電圧とし、何らかの原因でインバータ回路の構成部品が絶縁破壊されても、入力側で供給電力が制限される構成が必須である。
【0004】
そこで、電源装置全体の構成としては商用入力電源を使用し、その電源回路の出力電圧範囲をSELV以内の電圧として、それを入力とする高圧インバータによって高電圧を発生させる装置がある。
入力電圧がSELV以内であると、所定の出力Voutを得るためには、その数10倍から数100倍の昇圧比(倍率)nが必要となる。ここで、
n=Vout/SELV
とすれば、Vout=15KVで、SELV=48Vのときは、n=312.5倍の昇圧が必要になる。
【0005】
これを実現するためには、トランスやコッククロフトウオルトン回路(Cockcroft-Walton circuit)等のN倍整流回路等があげられる。しかし、コッククロフトウオルトン回路等のN倍整流回路は、コンデンサによる充放電で行うものであるため、瞬間的な単発出力は引き出せるが連続的に出力電力を取り出すことは困難である。したがって、安定な出力を得るには大型のトランスに頼らざるを得ない。
物に例えると、軽いものを高いところまで移動させるのは比較的容易であるが、重いものを高いところまで持ち上げるのには大変な労力が要る。高電圧インバータ装置においても、負荷(重さ)×移動距離×高さの総和に相当する出力電力が、数mWとごく小さなものではなく、数10Wないし数100Wを得る必要がある。
【0006】
トランスを決定する一般定義は次式のように表記される。すなわち、励磁巻線の巻数Np、励磁巻線に流れる電流Ip、および出力巻線の巻数Noutは、次式で求められる。
Np= Vin・Ton/Ae・B
Ip=Nout・Iout/Np
Nout =Vout・Np・Ton/Vin
ここで、Ton:時比率(sec) Ae:コアの実効断面積(cm2)
B:磁束密度(gauss) Vin:入力電圧
Vout:出力電圧(V) Iout:出力電流(A)
【0007】
これらの定義から分かるように、トランスの持つコアの磁束密度Bもしくは実効断面積Aeと、励磁巻線の巻数Npとの関係が反比例となっているため制約されてしまう。出力巻線の巻数Noutはなるべく少ない正の整数であることが必要になってくる。しかし、巻数が少ないとコアの磁束密度Bが大きくなり、損失が増大すると共に磁気飽和の方向に進み、トランスとしての機能がなくなってしまう。また、逆に巻数が多すぎると巻線長さが増えるため、そこに流れる電流による損失が増加してしまう。
【0008】
図13にフェライトコアのB−Hカーブを示すように、コアの磁束密度Bは、ΔBで示す特定の範囲のみで磁界の強さHに略比例して変化し、磁界の強さHがΔHで示す範囲を超えると磁気飽和になる。したがって、この範囲でのみトランスとして機能することになる。図13に示したB−Hカーブにおいて、磁界の強さHが増加する時と減少する時の経路に囲まれた部分の面積(斜線部)が、一般的にはヒステリシス損(鉄損)といわれる。このような理由で、励磁巻線の巻数Npは特定の範囲のみとなり、トランスから引き出せる出力は、この励磁巻線の巻数Npとコアの磁束密度Bとの兼ね合いにかかっているが、結果的には特定の範囲に限定される。
磁束Bが必要十分に取り出せれば、次に述べるトランスの特性低下が生じない。しかし現実的にはコアの材料(例えばフェライト0.2〜0.3tesla、珪素鋼板1tesla:ただし使用したい周波数による、アモルファス1tesla、パーマロイ等がある)により磁束が不足する。
【0009】
さらに、励磁巻線の巻数Npと出力巻線の巻数Noutは比例関係にある。ここで技術課題になるのが、NpとNoutの大きさが、ごく一般的には出力電圧でほぼ決まるため、入力電圧Vinが低く昇圧比nが非常に大きな場合には、出力巻線の巻数Noutが必然的に多くなり、巻線間容量の増大と層間容量の増大等が起こってしまう。そのため、次のような問題が生じる。
・使用したい動作周波数でトランスとして必要なインダクタンスが得られない。
・トランスの周波数の範囲が狭い。
・誘電損失が増大する。
・高電圧による近接効果による損失が増大する。
これらによって、トランスの性能を低下させてしまう。
【0010】
そこで、従来のスイッチングコンバータとして、例えば特許文献1に記載されたものがあり、このスイッチングコンバータは、直流の入力電源を持ち、一つのトランスにて1次巻線(励磁巻線)が分割された巻線であり、その出力側に2つの出力巻線をもつ他励型ON−OFF方式の直流電源である。
【0011】
また、特許文献2に記載された高圧電源回路は、オンデューティが50%に固定され、プッシュプルモードで動作する1対のスイッチング素子によって、絶縁高圧トランスの2つの1次巻線(励磁巻線)の励磁電流をスイッチングし、1つの2次巻線(出力巻線)の出力を整流平滑して直流高電圧を得るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10−144544号公報
【特許文献2】特許第3152298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたスイッチングコンバータや特許文献2に記載された高圧電源回路は、いずれも1個のトランスに複数の励磁巻線と出力巻線を設けて、その各出力を出力巻線の中点をとって整流平滑したり、2次側の交流出力を単に整流平滑して直流出力とするものである。そのため、出力巻線の巻数を多く巻けず、昇圧比が高い高電圧(数十W乃至数百W)を連続して出力させることはできなかった。
また、これらはトランスの持つ磁束密度を最大限有効に活用しようとするものであるが、更に昇圧しようとすると磁束密度が飽和してしまい、それ以上昇圧することができないという不具合があった。
【0014】
この発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、高電圧インバータ装置によって、高出力の交流高電圧を連続的に、安定的にしかも安全に得られるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は上記の目的を達成するため、直流電圧若しくは直流成分に脈流が重畳された安全特別低電圧(SELV)以内の電圧を入力電圧とし、その入力電圧をスイッチングしてトランスの一次側の励磁巻線に励磁電流を流し、そのトランスの二次側の出力巻線から高電圧を出力する高電圧インバータ装置において、上記トランスを、同一の特性を持つ個別の複数のトランスによって構成し、その複数のトランスの各励磁巻線を並列に接続して同時並列に励磁させるようにし、その複数のトランスの各出力巻線を互いに並列又は直列に接続し、かつ各出力巻線の出力電圧波形の時間軸が同期していることを特徴とする。
また、上記同一の特性を持つ個別の複数のトランスの各励磁巻線を直列に接続して同時に励磁させるようにしてもよい。
上記複数の各トランスは共振トランスであるとよい。
【発明の効果】
【0016】
この発明の高電圧インバータ装置によれば、上記の構成によって、高出力の高電圧を連続的に、安定的にしかも安全に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】この発明による高電圧インバータ装置の第1実施例の回路図である。
【図2】スナバ回路の異なる例を示す回路図である。
【図3】図1に示した第1実施例のターンON時の等価回路図である。
【図4】同じくON時の等価回路図である。
【図5】同じくターンOFF時の等価回路図である。
【図6】同じくOFF時の等価回路図である。
【0018】
【図7】図1に示した第1実施例の動作中の各部の電圧波形の変化を示すタイミングチャートである。
【図8】この発明による高電圧インバータ装置の第2実施例の回路図である。
【図9】この発明による高電圧インバータ装置の第3実施例の回路図である。
【図10】この発明による高電圧インバータ装置の第4実施例の回路図である。
【図11】この発明による高電圧インバータ装置の第5実施例の回路図である。
【図12】この発明による高電圧インバータ装置におけるトランスの数とスイッチング素子のドレイン・ソース間電圧の波高値との関係を示す曲線図である。
【図13】一般的なトランスのコアのB−Hカーブの例を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
〔第1実施例:図1〜図7〕
この発明による高電圧インバータ装置の第1実施例(併列励磁+電圧加算の例)について図1によって説明する。図1はその構成を示す回路図であり、INが入力端子であり、OUTが出力端子である(以後の実施例も同じ)。
この高電圧インバータ装置は、入力端子INから供給される直流電圧(60V以下)若しくは直流成分に脈流が重畳されたSELV(安全特別低電圧)以内の電圧を入力電圧Vinとし、その入力電圧Vinをスイッチング素子Qswによってスイッチングして、第一のトランスT1と第二のトランスT2の一次側の励磁巻線NP1、NP2に励磁電流を流し、そのトランスT1,T2の二次側の出力巻線Nout,Nout(sub)から高電圧を出力し、交流高電圧の出力電圧Vout を出力端子OUTから負荷に対して出力する。
【0020】
第一のトランスT1と第二のトランスT2は同一の特性を持つ別個のトランスであり、その励磁巻線Np1,Np2が、入力電源の正極側のa点とFET(電界効果トランジスタ)によるスイッチング素子Qswの正極側のb点との間に並列に接続されている。
そのa点とb点との間に、a点に一端を接続したコンデンサCとアノードをb点に接続したダイオードDとを直列に接続してスナバ回路を構成している。このスナバ回路は第一、第二のトランスT1、T2のリセット用およびスイッチング素子Qswの電圧抑圧用に設けられている。そのスナバ回路は、上記のダイオードDとコンデンサCの直列回路以外にも、図示していないが、コンデンサCに並列に抵抗Rを接続したいわゆるRCスナバ回路もある。
【0021】
さらに、図2に示すように、スイッチング素子Qswの正極側のb点から入力電源の正極側のa点にコンデンサC1とダイオードD1とを、図1におけるダイオードDとコンデンサCとは順序を入れ替えて接続し、そのコンデンサC1とダイオードD1のアノードとの接続点eに別のダイオードD2のカソードを接続し、そのダイオードD2のアノードとスイッチング素子Qswの負極側のd点との間に、インダクタ(チョークコイル)Lと抵抗R2との並列回路を接続したスナバ回路も考えられる。
【0022】
ICは発振回路を含む制御回路であり、抵抗R1を介してスイッチング素子Qswのゲートにスイッチングパルスを印加してスイッチング素子Qswをオン・オフさせる。それによって、第一、第二のトランスT1、T2の励磁巻線Np1,Np2に断続的に電流を流し、各出力巻線Nout,Nout(sub)に交流高電圧を発生させる。
【0023】
同一の特性を持つ別個の第一、第二のトランスT1、T2にはそれぞれ出力巻線Nout,Nout(sub)があり、第二のトランスT2の出力巻線Nout(sub)の上に第一のトランスT1の出力巻線Noutが積み上げられるように、出力巻線Noutと出力巻線Nout(sub)が直列に接続され、各出力巻線Nout,Nout(sub)の接続されていない方の各端子が出力端子OUT側へ繋がる。
【0024】
ここで、出力巻線Nout,Nout(sub)からの出力は交流であるが、直流部分が少しあったときにその直流分をカットしたい等の理由で交流のみを出力端子へ通過させたい場合が生じる。その場合は出力の正極側ラインにコンデンサC0を配置するとよい。ただし、この発明は、数KV〜20KVでの電圧範囲が対象であるため、このコンデンサC0の耐圧は出力電圧と同じ電圧以上の耐圧が必要になる。
【0025】
この高電圧インバータ装置において、スイッチング素子QswがターンONした時(Turn
ON時)には、図3に等価回路で示すようになり、入力電源の正極側から破線矢印で示すようにスナバ回路のコンデンサCとダイオードD(この時は接合間容量によりコンデンサとして機能する)を通してスイッチング素子Qswに電流が流れるが、第一、第二のトランスT1、T2の励磁巻線Np1,Np2には殆ど電流が流れず、出力巻線Nout,Nout(sub)にも誘起電流は殆ど流れない。
【0026】
スイッチング素子Qswが完全にオンになると、図4に等価回路で示すようになり、入力電源の正極側から破線矢印で示すように、第一、第二のトランスT1、T2の並列に接続された励磁巻線Np1,Np2とスイッチング素子Qswを通して電流が流れ、その第一、第二のトランスT1、T2の出力巻線Nout,Nout(sub)にも破線矢印で示すように誘起電流が流れ、出力電圧が得られる。
スイッチング素子QswがターンOFFした時(Turn OFF時)には、図5に等価回路で示すようになり、スナバ回路のコンデンサCの充電電荷が放電する。このときダイオードDは、順方向電圧が閾値になるまでの順方向回復時間の間は接合容量によりコンデンサとして機能する。
【0027】
スイッチング素子Qswが完全にオフになると、図6に等価回路で示すようになり、第一、第二のトランスT1、T2の並列に接続された励磁巻線Np1,Np2に逆起電圧が発生し、それが破線矢印で示すようにスナバ回路のダイオードD(このときは導通状態になる)とコンデンサCを通して流れるとともに、開放したスイッチング素子Qswのソース・ドレイン間(この時はコンデンサとして機能する)を通して入力電源側へも流れる。各出力巻線Nout,Nout(sub)にも逆起電圧が発生し、それにより出力端子OUTに接続された負荷に電流を流す。
【0028】
スイッチング素子Qswが周期的にオン・オフすることによって、上述した各状態を繰り返すことになる。そのときの各部の電圧波形の変化を図7のタイミングチャートに示す。この図における各波形の大小の比率、絶対値、時間軸の比率及び大小の相関は正確なものではない。
【0029】
この図7において、Vgsはスイッチング素子Qswのドライブ電圧(ゲート・ソース間電圧)、VNp1、VNp2は励磁巻線Np1、Np2の電圧、Idsはスイッチング素子Qswに流れる電流、Vdsはスイッチング素子Qswのドレイン・ソース間電圧、VNoutは第一のトランスT1の出力巻線Noutの出力間電圧、VNout(sub)は第二のトランスT2の出力巻線Nout(sub)の出力間電圧、Voutは出力端子OUTからの出力電圧である。そして、この図7から明らかなように、各出力巻線NoutとNout(sub)の出力電圧VNoutとVNout(sub)の波形の時間軸が同期している。
【0030】
このように、この発明による高電圧インバータ装置は、磁路が全く違う別個のコアを持つ同じ特性を持つトランスを少なくとも2個以上設け、その各励磁巻線を同時に励磁し、出力側において各出力巻線の出力電圧波形の時間軸を同期させ、その各出力を電圧加算あるいは電流加算する。上述した第1実施例では、2個のトランスT1、T2の出力巻線Nout,Nout(sub)の各出力を電圧加算によって積み上げ昇圧している。したがって、複数の励磁巻線に偏磁が生じることがなく、トランス全体として出力巻線の巻数を多くすることができるので、昇圧比が高い高電圧を連続して、安定にしかも安全に得ることができる。
【0031】
〔第2実施例:図8〕
次に、この発明による高電圧インバータ装置の第2実施例(併列励磁+電流加算の例)について図8によって説明する。図8はその構成を示す回路図である。
この第2実施例では、同一の特性を持つ別個の第一、第二のトランスT1、T2の出力巻線Nout,Nout(sub)は、各出力が電流加算されるように並列に接続されて、出力端子OUT側へつながる。この実施例によれば、出力電圧はトランスが1個の場合と略同等であるが、出力直電流を倍増できるので出力電力も倍増する。
【0032】
この各トランスT1、T2の励磁巻線Np1,Np2が入力電源の正極とスイッチング素子Qswの正極間に並列に接続されていることは第1実施例と同じである。その他の構成及び作用も前述した第1実施例と同様である。この第2実施例では出力線にコンデンサC0を設けていないが、出力の直流成分をカットしたい場合には、第1実施例と同様に出力線にコンデンサC0を設けるとよい。
【0033】
〔第3実施例:図9〕
次に、この発明による高電圧インバータ装置の第3実施例(分割励磁+電流加算の例)について図9によって説明する。図9はその構成を示す回路図である。
この第3実施例3においては、別個に設けた同一の特性を持つ第一、第二のトランスT1、T2の励磁巻線Np1とNp2は、入力電源の正極とスイッチング素子Qswの正極との間に直列に接続されている。そして、その入力電源の正極とスイッチング素子Qswの正極との間にスナバ回路を構成するダイオードDとコンデンサCの直列回路も接続されている。
第一、第二のトランスT1、T2の出力巻線Nout,Nout(sub)は、第2実施例と同様に出力が電流加算されるように並列に接続されて、出力端子OUT側へ繋がっている。
その他の構成及び作用は、出力線にコンデンサC0を設けていない点を除いて前述した第1実施例と同様である。
【0034】
〔第4実施例:図10〕
次に、この発明による高電圧インバータ装置の第4実施例(分割励磁+電圧加算の例)について図10によって説明する。図10はその構成を示す回路図である。
この実施例4においては、別個に設けた同一の特性を持つ第一、第二のトランスT1、T2の励磁巻線Np1とNp2は、第3実施例と同様に入力電源の正極とスイッチング素子Qswの正極との間に直列に接続されている。また、その入力電源の正極とスイッチング素子Qswの正極との間にスナバ回路を構成するダイオードDとコンデンサCの直列回路も接続されている。
【0035】
そして、第一のトランスT1の出力巻線Noutと第二のトランスT2の出力巻線Nout(sub)とが、出力巻線Noutの上に出力巻線Nout(sub)が積み上げられるように直列に接続され、それぞれ接続されていない各端子が出力端子OUT側へ繋がっている。
その他の構成及び作用は出力線にコンデンサC0を設けていない点を除いて第1実施例と同様である。
【0036】
〔第5実施例:図11〕
次に、この発明による高電圧インバータ装置の第5実施例(トランス3個による併合励磁+電圧加算の例)について図11によって説明する。図11はその構成を示す回路図である。
【0037】
この第5実施例5においては、別個に設けた同一の特性を持つ3個のトランスを使用しており、その第一のトランスT1、第二のトランスT2、第三のトランスT3の各励磁巻線Np1,Np2、Np3が、入力電源の正極とスイッチング素子Qswの正極との間に並列に接続されている。その各トランスT1、T2、T3の出力巻線Nout,Nout(sub),Nout(subc)は全て直列に接続され、その出力巻線NoutとNout(subc)のそれぞれ接続されていない方の端子が出力端子OUT側へ繋がっている。
その他の構成及び作用は、出力線にコンデンサC0を設けていない点を除いて前述した第1実施例と同様である。
この第5実施例によれば、3個のトランスT1、T2、T3の出力巻線Nout,Nout(sub),Nout(subc)の各出力を電圧加算によって積み上げ昇圧しているので、一層高い高電圧出力を得ることができる。
【0038】
なお、同一の特性を持つ3個のトランスT1、T2、T3の各励磁巻線Np1,Np2、Np3を第3、第4実施例と同様に全て直列に接続してもよい。また、その各トランスT1、T2、T3の出力巻線Nout,Nout(sub),Nout(subc)を全て並列に接続してもよい。また、それぞれ別個に設けた同一の特性を持つトランスは4個以上でもかまわない。
しかし、現実的には、そのトランスの数は、配置やパターン等が数とともに大きくなるため、不要輻射等のEMIに課題を残すことになるため、4個位までがよいと思われる。
【0039】
各トランスの励磁巻線は直列に接続しても並列に接続しても、ほぼ均一な分割された個々の磁界の強さが必要な強さになればよい。
また、第3〜第5実施例においても、出力の直流成分をカットしたい場合には、第1実施例と同様に出力線にコンデンサC0を設けるとよい。
【0040】
〔共振トランスとその使用個数〕
この発明による高電圧インバータ装置における各トランスT1〜T3は共振トランスを用いるのが望ましい。共振トランスではフライバック方式で高電圧を得るため、エネルギーが一次側からトランスに注入される期間と二次側から取り出される期間とが交互になる。すなわち、一次側のスイッチング素子QswがONの期間にエネルギーが励磁エネルギーとして各トランスに蓄えられ、そのスイッチング素子QswがOFFの期間にそれを二次側に吐き出すような動作をする。そのため、各トランスは、スイッチング素子Qswのスイッチング周波数fsw以上の自己共振周波数fo(fsw ≦fo)で共振する。
【0041】
励磁巻線への電圧印加のON期間(時間)とOFF期間(時間)の割合である時比率が50%:50%の場合はfsw=f0 である。しかし、高電圧高電流を出力するためには、トランスに励磁エネルギーを蓄えるON期間をなるべく長くする必要がある。ON期間の割合が50%を超えるようにするのはそのためであり、有効な出力を得るためにはON期間の割合が55%以上あることが望ましい。
【0042】
スイッチング周波数fswは可聴音周波数を充分に超える周波数、例えば20KHzの一定周波数に固定する。そして、スイッチング素子QswのONデューティが上記時比率のON期間に相当する割合になるように、図1等に示した制御回路ICから出力するスイッチングパルスの周期(1/fsw)とONデューティを予め設定する。
【0043】
このような共振トランスを使用した高圧インバータ装置において、実験を積み重ねた結果、入力電圧:Vin、共振の鋭さ:Qe、スイッチング素子Qswのドレイン・ソース間電圧:Vds、出力電圧:Vout 、巻線比(出力巻線のターン数/励磁巻線のターン数):Nps、およびトランスの数:Nの間に、次の理論式が成り立つことが分かった。
・Vds=Vout/(N・Nps)
・Vout=Qe・Vin
【0044】
したがって、出力電圧Voutは共振の鋭さQeに比例し、Qeを大きくすれば巻線比をあまり大きくしなくても充分な昇圧を達成することができる。
ここで、共振の鋭さQeについて説明する。周波数に対する共振電流の特性をとると、共振周波数foで共振電流が最大値になるが、その前後の周波数で共振電流が最大値の1/√2になる周波数の幅(半値幅という)をΔfとすると、Qe=fo/Δfで表される無次元数である。
【0045】
そして、図1及び図11に示した実施例のように、複数個のトランス(共振トランス)の各励磁巻線を並列に接続し、各出力巻線を直列に接続した場合、そのトランスの数N(個数)とスイッチング素子Qswのドレイン・ソース間電圧の波高値Vds(Vp-0)との関係は、Qeを一定とした場合、図12に示す曲線のように変化した。
すなわち、接続するトランスの数Nが多くなるほど、ドレイン・ソース間電圧の波高値Vds(Vp-0)の低下が認められた。図12に示す例では、トランスが2個の場合にはVds(Vp-0)が560Vであるが、トランスが3個の場合はVds(Vp-0)が384Vである。
【0046】
このことは、接続するトランスの数をが多くするほど、スイッチング素子Qswの耐圧が低くて済み、MOS−FETであればON抵抗の低い素子を使えることになる。例えば、MOS−FETを3個並列駆動する必要があるところを2個並列駆動でもよいことになる。
実例として、入力電圧Vinが56V、出力電圧Vout が10.5KV、平均出力が20W〜800Wの場合、トランス2個では耐圧が900Vのところ、トランス3個にすると耐圧が600Vになる。それによって、スイッチング素子QswのON抵抗が著しく低下し、効率(出力電力/入力電力)が大幅に向上する。図11に示した実施例の場合、79.4%の効率を得ることができた。
【0047】
トランス配置のループ長や面積を考慮しなければ、トランスの数を多くした方が効率が向上し、不要輻射などのノイズの低減にも寄与する。しかし、実際にはトランスの数に応じてループ長や設置面積が大きくなってしまうため、不要輻射の発生や装置サイズの問題も生じるので、トランスの数は4個位までが実用的な範囲であると考えられる。
【0048】
以上、この発明による高電圧インバータ装置の各実施例について説明してきたが、この発明はこれらに限るものではなく、種々の変形が可能であり、各実施例は矛盾しない範囲で、適宜組み合わせて実施することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
この発明は、スイッチングレギュレータ、インバータ、高電圧電源、放電用電源等の高電圧発生装置に利用することができる。特に、印刷物の表面処理等を行うための大気圧プラズマを発生させるための高出力の高電圧を、連続的に安定して、しかも安全に得られるようにするのに適している。
【符号の説明】
【0050】
IN:入力端子 OUT:出力端子 T1:第一のトランス
T2:第二のトランス T3:第三のトランス
Qsw:スイッチング素子 D,D1,D2 :ダイオード
C,C0,C1:コンデンサ R1,R2:抵抗 IC:制御回路
Np1:第一のトランスの励磁巻線 Nout:第一のトランスの出力巻線
Np2:第二のトランスの励磁巻線 Nout(sub):第二のトランスの出力巻線
Np3:第三のトランスの励磁巻線 Nout(subc):第三のトランスの出力巻線
Vgs:スイッチング素子のドライブ電圧
VNp1:第一のトランスの励磁巻線Np1の電圧
VNp2:第二のトランスの励磁巻線Np2の電圧
Ids:スイッチング素子に流れる電流
Vds:スイッチング素子のソース・ドレイン間電圧
VNout:第一のトランスの出力巻線間電圧
VNout(sub):第二のトランスの出力巻線間電圧 Vout:出力電圧
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧若しくは直流成分に脈流が重畳された安全特別低電圧(SELV)以内の電圧を入力電圧とし、該入力電圧をスイッチングしてトランスの一次側の励磁巻線に励磁電流を流し、該トランスの二次側の出力巻線から高電圧を出力する高電圧インバータ装置において、
前記トランスを、同一の特性を持つ個別の複数のトランスによって構成し、該複数のトランスの各励磁巻線を並列に接続して同時に励磁させるようにし、該複数のトランスの各出力巻線を互いに並列又は直列に接続し、かつ該各出力巻線の出力電圧波形の時間軸が同期していることを特徴とする高電圧インバータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高電圧インバータ装置であって、前記トランスを、同一の特性を持つ3個のトランスによって構成し、該3個のトランスの各励磁巻線を並列に接続して同時に励磁させるようにし、該3個のトランスの各出力巻線を互いに直列に接続したことを特徴とする高電圧インバータ装置。
【請求項3】
直流電圧若しくは直流成分に脈流が重畳された安全特別低電圧(SELV)以内の電圧を入力電圧とし、該入力電圧をスイッチングしてトランスの一次側の励磁巻線に励磁電流を流し、該トランスの二次側の出力巻線から高電圧を出力する高電圧インバータ装置において、
前記トランスを、同一の特性を持つ個別の複数のトランスによって構成し、該複数のトランスの各励磁巻線を直列に接続して同時に励磁させるようにし、該複数のトランスの各出力巻線を互いに並列又は直列に接続し、かつ該各出力巻線の出力電圧波形の時間軸が同期していることを特徴とする高電圧インバータ装置。
【請求項4】
前記複数の各トランスは、出力電圧が共振の鋭さに比例する共振トランスであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の高電圧インバータ装置。
【請求項1】
直流電圧若しくは直流成分に脈流が重畳された安全特別低電圧(SELV)以内の電圧を入力電圧とし、該入力電圧をスイッチングしてトランスの一次側の励磁巻線に励磁電流を流し、該トランスの二次側の出力巻線から高電圧を出力する高電圧インバータ装置において、
前記トランスを、同一の特性を持つ個別の複数のトランスによって構成し、該複数のトランスの各励磁巻線を並列に接続して同時に励磁させるようにし、該複数のトランスの各出力巻線を互いに並列又は直列に接続し、かつ該各出力巻線の出力電圧波形の時間軸が同期していることを特徴とする高電圧インバータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高電圧インバータ装置であって、前記トランスを、同一の特性を持つ3個のトランスによって構成し、該3個のトランスの各励磁巻線を並列に接続して同時に励磁させるようにし、該3個のトランスの各出力巻線を互いに直列に接続したことを特徴とする高電圧インバータ装置。
【請求項3】
直流電圧若しくは直流成分に脈流が重畳された安全特別低電圧(SELV)以内の電圧を入力電圧とし、該入力電圧をスイッチングしてトランスの一次側の励磁巻線に励磁電流を流し、該トランスの二次側の出力巻線から高電圧を出力する高電圧インバータ装置において、
前記トランスを、同一の特性を持つ個別の複数のトランスによって構成し、該複数のトランスの各励磁巻線を直列に接続して同時に励磁させるようにし、該複数のトランスの各出力巻線を互いに並列又は直列に接続し、かつ該各出力巻線の出力電圧波形の時間軸が同期していることを特徴とする高電圧インバータ装置。
【請求項4】
前記複数の各トランスは、出力電圧が共振の鋭さに比例する共振トランスであることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の高電圧インバータ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−186984(P2012−186984A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67584(P2011−67584)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】
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