説明

高電圧インバータ装置

【課題】出力側に異常電圧が発生したときにそれを直ちに検出して確実に保護動作を行なえるようにする。」
【解決手段】直流もしくは直流成分に脈流が重畳された電圧を入力電圧Vinとし、その入力電圧Vinをスイッチング素子Qswによってスイッチングして共振トランス10の励磁巻線NPに励磁電流を流し、その共振トランス10の出力巻線NSから交流高電圧Voutを出力する高電圧インバータ装置であり、共振トランス10の励磁巻線NPに発生する異常電圧を、バリスタ12を含む異常電圧検出回路7によって検出し、異常電圧検出回路7が異常電圧を検出しとき、その信号をフォトカプラ11によって制御回路20に伝達し、それによって制御回路20が発振動作を停止してスイッチング素子Qswのスイッチング動作を停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高電圧電源装置や放電用電源装置等に用いられるスイッチングレギュレータ、インバータ等の高電圧インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直流もしくは直流成分に脈流が重畳された電圧を入力電圧とし、その入力電圧をスイッチングしてトランスの一次側の励磁巻線に励磁電流を流し、二次側の出力巻線から高電圧を出力する高電圧インバータ装置が、高電圧電源装置として多用されている。
例えば、大気圧プラズマは、表面処理の一つの手段として、表面の改質や汚染物の除去等、様々な工業製品に応用されている。樹脂等に接着や印刷、コーティング等を施す場合に、大気圧プラズマにより前処理を行うと、濡れ性を向上させることが可能になる。
【0003】
その大気圧プラズマを発生させるためには高電圧が必要であり、インバータ装置によって安全に高電圧を得る必要がある。
大気圧プラズマが発生し易い数KV、もしくは二十〜十数KVの高電圧を発生させる交流のインバータ装置において、この電圧範囲の高電圧は感電やスパークによる発火・発煙等が発生する恐れがあり、人体に極めて危険である。
【0004】
一方、国際規格IEC60950(J60950)の安全規格によると、入力電圧はSELV(Safety Extra Low Voltage :安全特別低電圧)である60VDC以内、もしくは電圧尖頭値が42.4V)を超えなければ安全とされている。そのため、そのSELV以内の電圧をインバータの入力電圧とし、何らかの原因でインバータ回路の構成部品が絶縁破壊されても、入力側で供給電力が制限される構成が必須である。
【0005】
そのため、このような高電圧インバータ装置においては、負荷の影響をいち早く検出する必要があり、高電圧を供給する負荷又はその給電回路等において、過負荷、絶縁劣化、短絡や地絡、異常放電などが発生した場合には、入力側の電力を制限あるいは遮断することが急務であり、そのまま放置するとトランスが絶縁破壊し、それによって感電やそれ以上の危険を人体に与えてしまう恐れがある。
【0006】
トランスのインダクタンスによる逆起電力は電流に応じて増大する。そのため、出力が突然無負荷になったりすると、電源投入時に無負荷電圧が異常に発生してしまい、その異常電圧で絶縁体の絶縁が破壊したりリークしたりして、トランスなどの部品が破損してしまう。
【0007】
従来、出力電力が数mW〜数Wのインバータ装置においては、入力電源回路にヒューズを介挿して電力制限をかけるだけで、トランスの絶縁破壊等が起らないようにすることができた。
【0008】
また、従来の高圧電源装置の異常検出装置として、例えば特許文献1に記載されているような技術がある。これは、高圧変圧器(トランス)の二次出力電圧を直接又は分圧して検出し、その検出値を所定の異常判断基準値と比較し、検出値が所定時間以上連続して基準値以下になったときに異常発生と判断して、高圧変圧器への入力を遮断するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平5−199650号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、保護しようとする高圧電源装置が、出力電圧が10KVを超える交流高電圧である高電圧インバータ装置である場合、その二次出力電圧を直接又は分圧して検出しようとしても、出力端子間の高電圧に耐える抵抗がなく、複数の抵抗を直列に繋いで使用するにしても数十本以上必要になってしまう。また、容易に電圧がリークしてしまい、回路が誤動作もしくは破壊してしまう。そのため、二次出力電圧を検出することは簡単に出来ず、その検出値に依存する保護回路を設けることは容易でなかった。
【0011】
この発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、出力電圧が10KVを超える交流高電圧である高電圧インバータ装置であっても、出力側に異常電圧が発生したときにそれを直ちに検出して、確実に保護動作を行なえるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は上記の目的を達成するため、直流もしくは直流成分に脈流が重畳された電圧を入力電圧とし、該入力電圧をスイッチング素子によってスイッチングして共振トランスの励磁巻線に励磁電流を流し、その共振トランスの出力巻線から交流高電圧を出力する高電圧インバータ装置において、
上記共振トランスの励磁巻線に発生する異常電圧を検出する異常電圧検出回路と、上前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御し、上記異常電圧検出回路が上記異常電圧を検出した信号によって上記スイッチング素子のスイッチング動作を停止させる制御回路とを備えたことを特徴とする。
【0013】
上記異常電圧検出回路に代えて、上記スイッチング素子がオフの期間にそのスイッチング素子の端子間に発生する異常電圧を検出する異常電圧検出回路を設け、異常電圧検出回路が上記異常電圧を検出した信号によって、制御回路が上記スイッチング素子のスイッチング動作を停止させるようにしてもよい。
上記異常電圧検出回路は、バリスタによって上記異常電圧を検出する回路であるとよい。
【0014】
上記異常電圧検出回路による上記異常電圧を検出した信号を、フォトカプラ又はフォトトライアックカプラによって上記制御回路へ伝達するようにし、その発光素子を上記異常電圧検出回路側に、受光素子を上記制御回路側にそれぞれ設けるとよい。
上記異常電圧検出回路は、ダイオードとバリスタと上前記フォトカプラ又はフォトトライアックカプラの発光素子とが直列に接続された直列回路からなるとよい。。
上記直列回路中に電流制限用の抵抗とコンデンサとの並列回路を介挿してもよい。
【0015】
上記共振トランスが、同一の特性を持つ個別の複数の共振トランスによって構成され、その複数の共振トランスの各励磁巻線が並列又は直列に接続されて同時に励磁され、その複数のトランスの各出力巻線が互いに並列又は直列に接続され、かつ該各出力巻線の出力電圧波形の時間軸が同期しているようにすることができる。
【0016】
また、この発明による高電圧インバータ装置は、上記異常電圧検出回路に代えて、共振トランスの出力巻線に並列に接続したアレスタと、上記共振トランスの励磁巻線に流れる励磁電流を検出する励磁電流検出回路と、上記スイッチング素子のスイッチング動作を制御し、上記励磁電流検出回路によって検出される励磁電流の値が予め設定した値を超えたときに上記スイッチング素子のスイッチング動作を停止させる制御回路とを備えるようにしてもよい。
【0017】
上記励磁電流検出回路を、上記励磁巻線及びスイッチング素子と直列に接続された抵抗によって構成することができる。
【0018】
上記共振トランスが、同一の特性を持つ個別の複数の共振トランスによって構成され、その複数の共振トランスの各励磁巻線が並列又は直列に接続されて同時に励磁され、その複数のトランスの各出力巻線が互いに並列又は直列に接続され、かつその各出力巻線の出力電圧波形の時間軸が同期しているようにするとよい。
その場合、上記複数のトランスの各出力巻線を直列に接続し、その各出力巻線に個々に並列にアレスタを接続するのが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
この発明の高電圧インバータ装置によれば、上記の構成によって、出力電圧が10KVを超える交流高電圧である高電圧インバータ装置であっても、出力側に異常が発生したときにそれを直ちに検出して制御乖離の動作を停止させ、確実に保護動作を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明による高電圧インバータ装置の第1実施例を示す回路図である。
【図2】図1に示した実施例の動作を説明するための出力端子間の電圧波形図である。
【図3】この発明による高電圧インバータ装置の第2実施例を示す回路図である。
【図4】この発明による高電圧インバータ装置の第3実施例を示す回路図である。
【図5】この発明による高電圧インバータ装置の第4実施例を示す回路図である。
【図6】この発明による高電圧インバータ装置の第5実施例を示す回路図である。
【図7】この発明による高電圧インバータ装置の第6実施例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明を実施するための形態を図面に基づいて具体的に説明する。
〔第1実施例:図1、図2〕
図1は、この発明による高電圧インバータ装置の第1実施例を示す回路図である。
この高電圧インバータ装置5は、入力端子1a,1b、共振トランス10、出力端子2a,2b、およびその共振トランス10を制御する制御回路20とスイッチング素子Qsw等を備えている。
【0022】
そして、入力端子1a,1bから供給される直流電圧若しくは直流成分に脈流が重畳された入力電圧Vinを、スイッチング素子Qswによってスイッチングして共振トランス10の一次側の励磁巻線NPに励磁電流を流し、その共振トランス10の二次側の出力巻線NSから十数KVの交流高電圧を出力し、出力端子2a,2bからその高電圧の出力電圧Vout を図示していない負荷に対して出力する。入力電圧Vinは安全特別低電圧(SELV)以内の電圧にするとよい。
【0023】
共振トランス10の励磁巻線NPの一端が正極側の入力端子1aに接続され、他端がFETによるスイッチング素子Qswのドレイン・ソース間および制御回路20を通して負極側の入力端子1bに接続されている。出力巻線NSの一方の端部cは出力端子2aに接続され、他方の端部dは出力端子2bに接続されている。負極側の入力端子1bは出力端子2bとも接続され、図示していないフレームグラウンドにも接続されている。そのフレームグラウンドはアース(接地)するのが安全上望ましい。さらに、入力端子1a,1bから制御回路20にも電源電圧を供給している。
【0024】
制御回路20は発振回路を含み、IC(集積回路)として作られている。この制御回路20は入力端子1a,1bから供給される入力電圧Vinによって動作し、抵抗R1を介してスイッチング素子QswのゲートにスイッチングパルスSpを印加して、そのスイッチング素子Qswをオン・オフさせる。それによって、共振トランス10の励磁巻線NPに断続的に電流を流し、出力巻線NSに十数KVの交流高電圧を発生させる。
【0025】
このような共振トランスを使用した高圧インバータ装置においては、入力電圧:Vin、共振の鋭さ:Qe、スイッチング素子Qswのドレイン・ソース間電圧:Vds、出力電圧:Vout 、巻線比(出力巻線のターン数/励磁巻線のターン数):Npsの間に、次の理論式が成り立つことが分かった。
・Vds=Vout/Nps ……(式1)
・Vout=Qe・Vin ……(式2)
【0026】
したがって、式2から出力電圧Voutは共振の鋭さQeに比例し、Qeを大きくすれば巻線比をあまり大きくしなくても充分な昇圧を達成することができる。
ここで、共振の鋭さQeについて説明する。周波数に対する共振電流の特性をとると、共振周波数foで共振電流が最大値になるが、その前後の周波数で共振電流が最大値の1/√2になる周波数の幅(半値幅という)をΔfとすると、Qe=fo/Δfで表される無次元数である。
【0027】
また、入力電源の正極側のa点とスイッチング素子Qswの正極側のb点との間(共振トランス10の励磁巻線NPの両端子間)に、a点に一端を接続したコンデンサC1とアノードをb点に接続したダイオードD1とを直列に接続してスナバ回路を構成している。このスナバ回路は、トランス10のリセット用及びスイッチング素子Qswの電圧抑圧用に設けられている。
【0028】
さらに、この発明の特徴とする保護動作を行うための異常検出回路として、上記コンデンサC1に並列に、抵抗R2とバリスタ12とフォトカプラ11の発光素子である発光ダイオード(LED)11aとの直列回路を接続している。この直列回路を構成する各素子の接続順序は任意であり、ダイオードD1を通してLED11aに電流が流れる向きであればよい。抵抗R2はLED11aに流れる電流の制限用抵抗であるが、単発のみの保護の場合はこの抵抗R2が無くてもよい。この実施例では、抵抗R2に並列にコンデンサC2を接続して、交流のみを抵抗R2をバイパスさせていち早く流すようにしている。
これらによって、負荷側の異常を検出する異常検出回路7を構成している。
【0029】
一方、制御回路20にフォトカプラ11の受光素子であるフォトトランジスタ11bを接続している。発光素子であるLED11aと受光素子であるフォトトランジスタ11bとは、図1では図示の都合上分かれているが、実際には同一の容器内に対向して配置されており、1個のフォトカプラ11を構成している。フォトカプラは入出力間が完全に絶縁された無接点リレーである。
バリスタ12は、両端子間の電圧が低い場合には電気抵抗が高いが、両端子間の電圧がある程度以上に高くなると電気抵抗が急激に低下する性質を持つ非直線性抵抗素子である。
【0030】
この実施例の高電圧インバータ装置5では、共振トランス10の出力電圧Voutを直接検出するのではなく、励磁巻線NP間の電圧を検出するようにしている。無負荷状態等の異常発生時に、スイッチング素子Qswがオフの期間に励磁巻線NPの端子間に発生する電圧(Vnpとする)は、出力巻線間に発生する電圧に対して共振トランス10の巻数比(出力巻線NSとのターン数/励磁巻線NPのターン数)に略逆比例した負電圧であるから、前述した異常検出回路7によって容易に検出することができる。
【0031】
この実施例による保護動作について図2も参照して説明する。図2は、図1に示した実施例の動作を説明するための出力端子2a,2b間の電圧の波形図である。
この高電圧インバータ装置5は、出力端子2a,2b間に負荷が接続されて、正常に動作しているときには、共振トランス10の出力巻線NSには図2の(a)に示すように、スイッチング素子Qswのスイッチング周期でオフの期間に正弦波に近い半波で、波高値が十数KVの交流高電圧を発生しており、それが出力電圧Voutとなっている。
このとき、励磁巻線NPの端子間には、出力電圧Voutの波形を反転したような波形で、その波高値が共振トランス10の巻数比Nps分の一(Vnp=Vout/Nps)の正弦波に近い半波の負電圧Vnpが発生している。
【0032】
この状態では、共振トランス10の励磁巻線NPの両端子間(接続点a−b間)に接続された異常検出回路7のバリスタ12に印加される電圧が所定値以下であり、その抵抗値が高いため、異常検出回路7を構成するダイオードD1、抵抗R2、バリスタ12、およびフォトカプラ11のLED11aの直列回路には殆ど電流が流れない。したがって、LED11aは発光せず、フォトカプラ11のフォトトランジスタ11bは光が入射しないのでOFF状態になっている。そのため、制御回路は発振動作をしてスイッチングパルスSpを出力しており、スイッチング素子Qswをオン・オフさせている。
すなわち、この高電圧インバータ装置5は正常に動作している。
【0033】
出力側が急に無負荷になったような場合には、負荷で出力電圧が固定されなくなるので、共振トランス10の出力巻線NS側には、例えば図2の(b)に示すような波形で波高値が20KVにもなる異常な高電圧が発生し、それに対応して励磁巻線NP側にも、その波形を反転したような波形で、波高値が1/Npsの異常な負電圧が発生する。
その電圧が異常検出回路7のダイオードD1等を通してバリスタ12に印加され、バリスタ12は印加電圧が所定値を超えてその抵抗値が急激に低下するため、上記直列回路に急峻に電流が流れ始め、フォトカプラ11のLED11aに電流が流れて発光する。これが異常検出信号に相当する。異常電圧は瞬時にスナバ回路のコンデンサC1に流れるが、その後すぐにバリスタ12を含む異常検出回路7に流れる。
【0034】
その光をフォトカプラ11のフォトトランジスタ11bが受光してONになり、制御回路20の動作を停止させる信号となる。それによって、制御回路20が発振を停止し、スイッチングパルスSpを出力しなくなり、スイッチング素子Qswがオフのままになる。
すなわち、高電圧インバータ装置5は動作を停止し、出力電圧Voutは図2の(c)に示すように0Vになって変化しなくなる。
【0035】
なお、異常検出回路7の電流制限用の抵抗R2に並列にコンデンサC2を接続しているので、異常電圧の交流成分はそのコンデンサC2を通して直ちにバリスタ12に印加されるので、抵抗R2による電圧降下分による検出タイミングのずれがなくなる。
【0036】
このようにして、急に無負荷になった場合のように異常電圧が発生したとき、直ちにそれを検出して、高電圧インバータ装置5の動作を停止する保護動作を行うことができ、異常な高電圧によって共振トランス10などが絶縁破壊してしまうようなことを、確実に防止できる。しかも、異常検出回路の構成が簡単で安価に実施でき、検出信号の伝達が完全に絶縁した行なわれるので、電圧がリークや誤動作の恐れもない。
【0037】
ここで、励磁巻線NP側の電圧Vnpにおける異常電圧の検出にバリスタを使用する理由を説明する。印加電圧が所定値(ツェナー電圧)を超えると導通状態になる半導体素子としてツェナーダイオードがあるが、それはツェナー電圧が低いため、このような高い電圧の検出かいろに使用しようとすると、直列に何本も接続しなければならないが、実装配置が長くなり、そのインダクタンス分が大きくなるため保護をかけたい電圧でかけられなくなってしまう。また流せる電流もmAオーダで少ない。そのため、抵抗値が急減する電圧が比較的高く、流せる電流も多いバリスタを使用する。
【0038】
〔第2実施例:図3〕
図3はこの発明による高電圧インバータ装置の第2実施例を示す回路図である。
この図3および以降の図4〜図7においても、図1と同じ部分には同一の符号を付してあり、それらの説明は省略する。また、図3〜図5に示す高電圧インバータ装置5は、図1に示した高電圧インバータ装置5とは、保護回路の構成が異なるが、高電圧インバータ装置としての基本的な構成及び機能は同じであるから、便宜上同一の符号を使用する。
【0039】
図3に示す第2実施例は、図1によって説明した第1実施例と殆ど同じである。相違するのは、異常検出回路7′の検出信号伝達手段として、異常検出回路7のフォトカプラ11に代えてフォトトライアックカプラ13を使用した点だけである。
フォトトライアックカプラ13は、発光素子である発光ダイオード(LED)13aと受光素子であるフォトトライアック13bとを同一の容器内に対向させて配置し、入出力間を完全に絶縁した無接点リレーである。そして、LED13aに電流が流れて発光すると、その光をフォトトライアック13bが受光して両方向に導通し、完全な導通状態になるので、フォトトランジスタ11bより多くの電流を流せる。
【0040】
このフォトトライアックカプラ13のLED13aを異常検出回路7′のバリスタ12と直列に接続し、フォトトライアック13bを制御回路20に接続している。
この異常検出回路7′による異常検出動作と、その検出信号をフォトトライアックカプラ13によって制御回路20に伝達してその発振動作を停止させる機能は、前述の第1実施例と同様である。
【0041】
〔第3実施例:図4〕
図4はこの発明による高電圧インバータ装置の第3実施例を示す回路図である。
この第3実施例の高電圧インバータ装置5は、異常検出回路17をFETによるスイッチング素子Qswのドレイン・ソース間に並列に接続している。その異常検出回路17は、
バリスタ12と抵抗R3とダイオードD2と、フォトカプラの発光素子であるLED21aとを直列に接続し、抵抗R3に並列にコンデンサC3を接続して構成している。
【0042】
この異常検出回路17の直列回路を構成する各素子の接続順序は任意であり、スイッチング素子Qswのドレイン・ソース間に発生する電圧がダイオードD2を通してLED21aに電流が流れる向きであればよい。
そして、フォトカプラ21の受光素子であるフォトトランジスタ21bを制御回路20に接続している。また、スナバ回路のコンデンサC1に並列に抵抗Rを接続している。
【0043】
この実施例3では、出力電圧を直接検出する代わりに、スイッチング素子Qswのドレイン・ソース間の電圧Vdsを検出するようにしている。この電圧Vdsはスイッチング素子Qswのスイッチング周期でオフの期間に発生するが、前述した式1に示したように、Vds=Vout/Npsであり、図2に示したような交流高電圧の出力電圧Voutに対して、その電圧(波高値)が共振トランス10の巻数比分の一になるので、異常検出回路17によって容易に検出できる。
【0044】
異常検出回路17に印加される電圧Vdsが正電圧である以外は、第1実施例の場合と同様に動作し、出力側が急に無負荷になったような場合には、電圧Vdsが異常に大きくなる。それによって、異常検出回路17のバリスタ22に印加される電圧が所定値を超えてその抵抗値が急激に低下し、その直列回路に急峻に電流が流れ始め、フォトカプラ21のLED21aに電流が流れて発光する。。
【0045】
その光をフォトカプラ21のフォトトランジスタ21bが受光してONになり、制御回路20の発振動作を停止させる。それによって、制御回路20がスイッチングパルスSpを出力しなくなり、スイッチング素子Qswがオフのままになる。したがって、高電圧インバータ装置5は動作を停止する。
抵抗R3とコンデンサC3の役目は、図1における抵抗R2とコンデンサC2の役目と同じである。また、フォトカプラ21に代えて、図3に示した第2実施例のようにフォトトライアックカプラを用いてもよい。
【0046】
さらに、スナバ回路の抵抗Rに代えて、第1実施例の異常検出回路7又は第2実施例の異常検出回路7′も設け、そのフォトカプラ11のフォトトランジスタ11b又はフォトトライアックカプラ13のフォトトライアック13bも制御回路20に接続して、その導通信号とフォトカプラ21のフォトダトランジスタ21bの導通信号とのORをとって、いずれの導通信号によっても制御回路20の発振動作を停止させるようにしてもよい。
【0047】
〔第4実施例:図5〕
図5は、この発明による高電圧インバータ装置の第4実施例を示す回路図である。
この第4実施例の高電圧インバータ5は、共振トランス10の出力巻線NSと並列に(出力巻線NSの両端から出力端子2a,2bへの出力線間)にアレスタ(避雷器)15を接続する。また、前記共振トランス10の励磁巻線NPに流れる励磁電流を検出する励磁電流検出回路として、スイッチング素子Qswのソースを制御回路20を通してフレームグラウンドに接続するラインに電流検出用の抵抗R4を介挿し、その両端の電圧を励磁電流検出信号として制御回路20に入力させる。
【0048】
すなわち、この抵抗R4は励磁巻線NP及びスイッチング素子Qswと直列に接続されており、スイッチング素子Qswがオンの期間に、共振トランス10の励磁巻線NPに流れる励磁電流が流れる。したがて、この抵抗R4によってその励磁電流の大きさを電圧に変換して、制御回路20へ入力することができる。
【0049】
この実施例によれば、出力側が急に無負荷になったような場合に、前述したように共振トランス10の出力巻線NSに異常な波高値の高電圧が発生すると、直ちにアレスタが放電してその電圧を降下させ、それによって励磁巻線NPに流れる励磁電流が増大する。それを抵抗R4で検出して制御回路20に入力する。制御回路20は、抵抗R4の端子間電圧(励磁電流の大きさに比例する)すなわち励磁電流の値が予め設定した値を超えたときに発振動作を停止して、スイッチングパルスSpを出力しなくなり、スイッチング素子Qswがオフのままになる。したがって、高電圧インバータ装置5は動作を停止する。
【0050】
このように二次側の異常出力電圧を抑圧するばかりでなく、動作を停止することにより確実に高電圧インバータ装置5の負荷での異常過大電圧を抑制する。アレスタ15に降伏電流が流れるとアレスタ間の電圧は数十V程度に一旦は落ちるが、制御回路20が発振を続けると、共振トランス10が異常に発熱したり、回路部品にストレスが加わって故障したりする。
【0051】
この実施例では、アレスタ15に降伏電流が流れたとき、制御回路20が発振動作を停止することによって、異常状態が回避されるまで確実に停止される。もしくは、電源が再投入された際に再度異常であった場合も、制御回路20が動作を停止する。
【0052】
また、この実施例によれば、負荷側で絶縁劣化や短絡、地絡などが発生した場合にも、負荷回路に過電流が流れて共振トランス10の出力巻線間の電圧が急降下し、それによって励磁巻線NPに流れる励磁電流が増大するので、それを抵抗R4の端子間電圧によって検出して、制御回路20が発振動作を停止する。そのため、負荷や給電回路あるいはトランスの出力巻線などが焼損したり、発火するようなことを回避することができる。
【0053】
〔第5実施例:図6〕
図6は、この発明による高電圧インバータ装置の第5実施例を示す回路図である。
この第5実施例の高電圧インバータ装置5′では、高電圧を発生させるトランス30を、同じ構成で同一の特性を持つ3個の共振トランスT1,T2,T3によって構成している。
【0054】
そして、その3個の共振トランスT1,T2,T3の各励磁巻線NP1,NP2,NP3を入力電源の正極側のa点とスイッチング素子Qswの正極側のb点との間に並列に接続している。その各共振トランスT1,T2,T3の出力巻線NS1,NS2,NS3を全て直列に接続し、その出力巻線NS1とNS3のそれぞれ接続されていない方の端子を出力端子2a,2bに接続している。
【0055】
この実施例の高電圧インバータ装置5′は、トランス30を構成する磁路が全く違う別個のコアで同じ特性を持つ3個の共振トランスT1,T2,T3の各励磁巻線NP1,NP2,NP3を同時に励磁し、出力側において各出力巻線NS1,NS2,NS3の出力電圧波形の時間軸を同期させ、その各出力電圧を加算あるいは乗算する。したがって、より高い高電圧出力および大きな出力電力を安定してしかも安全に供給することができる。
この場合、スイッチング素子Qswのドレイン端子と各励磁巻線NP1,NP2,NP3の負極側端子との配線距離が均等になるようにスイッチング素子Qswを配置するとよい。
【0056】
そして、この実施例では、3個の共振トランスT1,T2,T3の各励磁巻線NP1,NP2,NP3を並列に接続した接続点aとbとの間に、図1に示した第1実施例と同様にスナバ回路のダイオードD1とコンデンサC1を接続し、そのコンデンサC1に並列に、異常検出回路7を構成する抵抗R2とバリスタ12とフォトカプラ11の発光素子であるLED11aとの直列回路を接続し、その抵抗R2に並列のコンデンサC2を接続している。さらに、制御回路20にフォトカプラ11の受光素子であるフォトトランジスタ11bを接続している。
【0057】
トランス30の出力側に異常な高電圧が発生したときに、異常検出回路7のバリスタ12によってそれを直ちに検出して、その検出信号をフォトカプラ11によって制御回路20へ伝達して、その発振動作を停止させる作用は、第1実施例と同じである。
但し、この実施例の場合には、出力電圧に対して各共振トランスT1,T2,T3の励磁巻線に発生する電圧(接続点a−b間の電圧)は、その共振トランスの巻線比とトランス個数の積に逆比例して小さくなる。
【0058】
なお、フォトカプラ11に代えて、図3に示した第2実施例のようにフォトトライアックカプラを用いてもよい。
また、異常検出回路7に代えて、図4に示した第3実施例のように、スイッチング素子Qswのドレイン・ソース間に並列に異常検出回路17を接続し、そのフォトカプラ21のフォトトランジスタ21bを制御回路20に接続してもよい。。
【0059】
あるいは、異常検出回路7と異常検出回路17の両方を設け、そのフォトカプラ11のフォトトランジスタ11bとフォトカプラ21のフォトトランジスタ21bとを制御回路20に接続して、その各フォトトランジスタ11bと21bの導通信号のORをとって、いずれの導通信号によっても制御回路20の発振動作を停止させるようにしてもよい。
【0060】
なお、トランス30を構成する同一の特性を持つ3個の共振トランスT1,T2,T3の各励磁巻線NP1,NP2,NP3を、全て直列に接続してもよい。また、その出力巻線NS1,NS2,NS3を全て並列に接続してもよい。また、使用するに共振トランスの数は2個でも4個以上でもかまわない。しかし、現実的には、共振トランスの数は、配置やパターン等が数とともに大きくなるため、不要輻射等のEMIに課題を残すことになるため、4個位までがよいと思われる。
【0061】
〔第6実施例:図7〕
図7は、この発明による高電圧インバータ装置の第6実施例を示す回路図である。
この第6実施例の高電圧インバータ装置は、前述した第5実施例と同じ構成のトランス30を備えており、その3個の共振トランスT1,T2,T3の直列に接続された出力巻線NS1,NS2,NS3に、それぞれ個別に並列にアレスタ15a,15b,15cを接続している。
【0062】
また、スイッチング素子Qswのソースを制御回路20を通してフレームグラウンドに接続するラインに電流検出用の抵抗R4を介挿し、その両端の電圧を制御回路20に入力させる。この抵抗R4によって、共振トランスT1,T2,T3の並列接続された励磁巻線NP1,NP2,NP3に流れる励磁電流の値を検出する。
【0063】
この実施例によれば、トランス30を構成する共振トランスT1,T2,T3の各出力巻線NS1,NS2,NS3のいずれかに異常に高い電圧が発生すると、直ちにそこに接続されているアレスタ(15a,15b,15cのいずれか)が放電し、降伏電流が流れて電圧を降下させ、それによってその共振トランスの励磁巻線(NP1,NP2,NP3のいずれか)に流れる励磁電流が増大する。それを抵抗R4で検出して制御回路20に入力する。
【0064】
制御回路20は、抵抗R4の端子間電圧(励磁電流の大きさに比例する)が所定値以上になると、発振動作を停止してスイッチングパルスSpを出力しなくなり、スイッチング素子Qswがオフのままになる。したがって、高電圧インバータ装置は動作を停止する。
トランス30の構成に関しては、前述した第5実施例で述べたのと同様に種々に変更することができる。
アレスタ15a,15b,15cに代えて、共振トランスT1,T2,T3の各出力巻線NS1,NS2,NS3が直列に接続された出力端子2a,2b間に1個のアレスタを接続してもよい。
【0065】
このように、いずれの実施例によっても、負荷の影響による異常な高電圧の発生をいち早く検出して、インバータ動作を停止することができ、トランスの絶縁破壊や人体への危険を回避することができる。
また、上述した各実施例は最良の形態を説明したが、そのすべての構成が必須なわけではないので、適宜省略することができる。さらに、各実施例に記載した素子は適宜変更でき、それら以外のものを追加することもできることは勿論である。
さらに、各実施例の異常検出回路等は、矛盾しない範囲で適宜組み合わせて使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
この発明は、スイッチングレギュレータ、インバータ、高電圧電源、放電用電源等の各種の高電圧発生装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1a,1b:入力端子 2a,2b:出力端子
5,5′:高電圧インバータ装置 7,7′,17:異常検出回路
10:共振トランス 11,21:フォトカプラ
11a,21a:発光素子である発光ダイオード(LED)
11b,21b:受光素子であるフォトトランジスタ
12,22:バリスタ 13:フォトトライアックカプラ
13a:発光素子である発光ダイオード(LED)
13b:受光素子であるフォトトライアック
15,15a,15b,15c:アレスタ 20:制御回路
30:トランス
Qsw:スイッチング素子 T1,T2,T3:共振トランス
NP,NP1,NP2,NP3:励磁巻線
NS,NS1,NS2,NS3:出力巻線
C1,C2,C3:コンデンサ R,R1,R2,R3,R4:抵抗
D1,D2:ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流もしくは直流成分に脈流が重畳された電圧を入力電圧とし、該入力電圧をスイッチング素子によってスイッチングして共振トランスの励磁巻線に励磁電流を流し、該共振トランスの出力巻線から交流高電圧を出力する高電圧インバータ装置において、
前記共振トランスの励磁巻線に発生する異常電圧を検出する異常電圧検出回路と、前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御し、前記異常電圧検出回路が前記異常電圧を検出した信号によって前記スイッチング素子のスイッチング動作を停止させる制御回路とを備えたことを特徴とする高電圧インバータ装置。
【請求項2】
直流もしくは直流成分に脈流が重畳された電圧を入力電圧とし、該入力電圧をスイッチング素子によってスイッチングして共振トランスの励磁巻線に励磁電流を流し、該共振トランスの出力巻線から交流高電圧を出力する高電圧インバータ装置において、
前記スイッチング素子がオフの期間に該スイッチング素子の端子間に発生する異常電圧を検出する異常電圧検出回路と、前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御し、前記異常電圧検出回路が前記異常電圧を検出した信号によって前記スイッチング素子のスイッチング動作を停止させる制御回路とを備えたことを特徴とする高電圧インバータ装置。
【請求項3】
前記異常電圧検出回路は、バリスタによって前記異常電圧を検出する回路であることを特徴とする請求項1又は2に記載の高電圧インバータ装置。
【請求項4】
前記異常電圧検出回路による前記異常電圧を検出した信号を、フォトカプラ又はフォトトライアックカプラによって上記制御回路へ伝達するようにし、その発光素子を前記異常電圧検出回路側に、受光素子を前記制御回路側にそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の高電圧インバータ装置。
【請求項5】
前記異常電圧検出回路は、ダイオードとバリスタと前記フォトカプラ又はフォトトライアックカプラの発光素子とが直列に接続された直列回路からなることを特徴とする請求項4に記載の高電圧インバータ装置。
【請求項6】
前記直列回路中に電流制限用の抵抗とコンデンサとの並列回路を介挿したことを特徴とする請求項5に記載の高電圧インバータ装置
【請求項7】
前記共振トランスが、同一の特性を持つ個別の複数の共振トランスによって構成され、該複数の共振トランスの各励磁巻線が並列又は直列に接続されて同時に励磁され、該複数のトランスの各出力巻線が互いに並列又は直列に接続され、かつ該各出力巻線の出力電圧波形の時間軸が同期していることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の高電電圧インバータ装置。
【請求項8】
直流もしくは直流成分に脈流が重畳された電圧を入力電圧とし、該入力電圧をスイッチング素子によってスイッチングして共振トランスの励磁巻線に励磁電流を流し、該共振トランスの出力巻線から交流高電圧を出力する高電圧インバータ装置において、
前記共振トランスの出力巻線に並列に接続したアレスタと、前記共振トランスの励磁巻線に流れる励磁電流を検出する励磁電流検出回路と、前記スイッチング素子のスイッチング動作を制御し、前記励磁電流検出回路によって検出される励磁電流の値が予め設定した値を超えたときに前記スイッチング素子のスイッチング動作を停止させる制御回路とを備えたことを特徴とする高電圧インバータ装置。
【請求項9】
前記励磁電流検出回路が、前記励磁巻線及び前記スイッチング素子と直列に接続された抵抗からなることを特徴とする請求項8に記載の高電圧インバータ装置。
【請求項10】
前記共振トランスが、同一の特性を持つ個別の複数の共振トランスによって構成され、該複数の共振トランスの各励磁巻線が並列又は直列に接続されて同時に励磁され、該複数のトランスの各出力巻線が互いに並列又は直列に接続され、かつ該各出力巻線の出力電圧波形の時間軸が同期していることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の高電圧インバータ装置。
【請求項11】
前記複数のトランスの各出力巻線が直列に接続され、その各出力巻線に個々に並列にアレスタを接続したことを特徴とする請求項10に記載の高電圧インバータ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−191828(P2012−191828A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55778(P2011−55778)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000221937)東北リコー株式会社 (509)
【Fターム(参考)】