説明

高電圧プラズマ発生装置

【課題】NOの処理効率が高い高電圧プラズマ発生装置を提供する。
【解決手段】大気圧中、ガス流として供給されるガスに対して10〜10Vの高電圧を与えてプラズマを発生させる高電圧プラズマ発生装置であって、プラズマを生成するための電力が給電される第1の電極と、第1の電極の周りを覆う金属製の筐体と、第1の電極との間でプラズマを生成するために、第1の電極から離間して設けられ、アースされた第2の電極と、第1の電極が電磁波を放射する際の共振周波数と同じ周波数の交流信号を間欠的に、第1の電極に給電する電力供給装置と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波帯域、例えば、100MHz〜10GHz周波数帯域で10〜10Vの高電圧を用いてプラズマを発生させる高電圧プラズマ発生装置に関し、例えば、船舶や自動車に用いられるディーゼルエンジン等から排気される排気ガス中のNOx(窒素酸化ガス)の処理装置等の分野に好適に用いることのできる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、ディーゼルエンジン等から排気される排気ガス中のNOを酸化処理するために、大気圧中で生成するプラズマを利用する処理装置が提案されている。
【0003】
従来、電極間に数kVの高電圧を印加してプラズマを生成し、このプラズマを利用して、供給されたNOの酸化処理を行うプラズマリアクターが提案されている(非特許文献1)。図7には、このプラズマリアクターの装置構成が示されている。図7に示されるように、プラズマリアクター10は、筒状の誘電体ガラス管12と、誘電体ガラス管12の外周面に巻かれた電極16と、誘電体ガラス管12内の多孔性の誘電体板18,20で両側が隔離された空間に配置された誘電体結晶からなる球形ペレット22と、放電電極14と電極16との間に60Hzの交流電圧を印加する交流電源24と、を有する。
【0004】
放電電極14と電極16との間に電圧を印加することにより、球形ペレット22間で高電界が形成され、ナノ秒オーダーの短い周期のマイクロ放電が発生して非平衡プラズマを生成する。一方、誘電体ガラス管12には、NOを含む窒素酸化ガスがガス流体として球形ペレット22の隙間を流れる。このため、NOを含む窒素酸化ガスは、球形ペレット22間の狭い隙間で生成されるプラズマを用いて酸化され、誘電体ガラス管12から排出される。これにより、NOの酸化処理を効率よく行うことができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「非平衡プラズマと化学反応プロセスを併用した窒素酸化ガスの完全除去技術(従来型およびバリア型プラズマリアクターの性能比較),山本俊昭他,日本機械学会論文集,66−646B(2000),1501−1506
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したプラズマリアクター10では、球形ペレット22を、ガスを流す流路に配置するので、流路抵抗等によって十分な流量を確保することが難しい。また、ナノ秒オーダーの短い周期のマイクロ放電を用いるので、NOの酸化処理の効率が低い。また、上述したプラズマリアクター10では、NOを分解することはできない。
排気ガス中のNOは、大気中で水と反応することにより硝酸となり、これが酸性雨の原因となることが知られている。そのため、NOを分解することができるプラズマ発生装置が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、NOxの処理効率が高い高電圧プラズマ発生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の高電圧プラズマ発生装置は、大気圧中、ガス流として供給されるガスに対して10〜10Vの高電圧を与えてプラズマを発生させる高電圧プラズマ発生装置であって、プラズマを生成するための電力が給電される第1の電極と、第1の電極の周りを覆う金属製の筐体と、第1の電極との間でプラズマを生成するために、第1の電極から離間して設けられ、アースされた第2の電極と、第1の電極が電磁波を放射する際の共振周波数と同じ周波数の交流信号を間欠的に、第1の電極に給電する電力供給装置と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の高電圧プラズマ発生装置は、前記筐体の内部にガスを供給する供給管と、前記筐体の内部のガスを排出する排出管と、前記排出管に排出されたガスの一部を分岐して前記供給管に供給する分岐管と、を備えることが好ましい。
【0010】
また、第1の電極は、前記交流信号の給電により共振を発生させることにより高電圧を発生させる長尺状の電極であって、第1の電極の長手方向の略中間部分に、前記交流信号の給電点が設けられることが好ましい。
【0011】
また、前記筐体はアースされており、第2の電極は、前記筐体にガスが供給される供給口に設けられ、前記筐体と電気的に接続された網状電極であることが好ましい。
【0012】
また、前記供給管は、窒素酸化ガスを含むガスを前記筐体の内部に供給し、生成されたプラズマが、前記窒素酸化ガスのうち二酸化窒素ガスを分解することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高電圧プラズマ発生装置によれば、高い効率でNOxを処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の高電圧プラズマ発生装置の一実施形態であるプラズマリアクターの構成を示す図である。
【図2】図1に示すプラズマリアクターの電力供給ユニットの構成を示す図である。
【図3】(a)は、CW発振器が生成するRF信号を示す図であり、(b)は、変調発振器が生成する矩形パルス信号を示す図であり、(c)は、RFバースト生成器が出力する信号を示す図である。
【図4】図1に示すプラズマリアクターの共振状態を示す図である。
【図5】(a)は、ガス供給がない状態で発生するプラズマの領域を示す図であり、(b)は、ガスが供給される状態で発生するプラズマの領域を示す図である。
【図6】本発明の高電圧プラズマ発生装置の一実施形態であるプラズマリアクターの構成を示す図である。
【図7】従来のプラズマリアクターの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施形態>
以下、本発明の高電圧プラズマ発生装置の一実施形態であるプラズマリアクターについて説明する。
図1は、本実施形態のプラズマリアクターの概略構成図である。プラズマリアクターは、窒素酸化ガス(NOx)をプラズマリアクター内に導入し、プラズマリアクター内のガスの供給口近傍で連続的にプラズマを生成し、このプラズマを用いてNOxを処理し、排出する。
具体的には、プラズマリアクターは、棒状電極100と、筐体110と、網状電極112と、電力供給ユニット140と、を主に備える。
【0016】
棒状電極100(「第1の電極」に相当)は、長尺状の棒形状を成した電極である。棒状電極100は、高周波信号の給電を受け、棒状電極100内での共振が発生することにより高電圧を発生させる。本実施形態の棒状電極100は、銅で形成されるが、銀、アルミニウムなども好適に用いられる。
【0017】
棒状電極100の長手方向の中間部分には、高周波信号の給電点102が設けられている。給電点102には、給電線118から高周波信号が電力として印加される。棒状電極100の長手方向の長さを2lとすると、棒状電極100の長手方向の中心位置からわずかにずれた位置に給電点102は位置する。棒状電極100の長手方向の中心位置から給電点102が設けられる位置までの距離をxとすると、xは以下の式(1)で表される関係式を満たす。
【数1】


ここで、Z00は給電点に給電する給電線の特性インピーダンスであり、Zは線状電極100を伝送線路としたときの特性インピーダンスである。また、高電圧プラズマ発生装置におけるプラズマ発生時の等価キャパシタンスCのエネルギー損失を示す係数をχとすると、Q=1/χである。
【0018】
給電点102が、棒状電極100の長手方向の中心位置からわずかにずれた位置に設けられるのは、プラズマリアクターへ給電する時のインピーダンス整合を取るためである。交流ダイポールアンテナと同様、棒状電極100中を伝送する伝送信号の波長λの半分の長さが棒状電極100の長さ2lとなるとき、棒状電極100には最低次モードの共振が生じ、効率よく高電圧が生成される。そのため、棒状電極100の長さ2lは、プラズマリアクターにおいて共振周波数を定める重要な要素となる。
本実施形態では、100MHz〜10GHzの周波数帯域において有効に高電圧を発生するように、棒状電極100の長さ2lは設定されている。
【0019】
網状電極112側の棒状電極100の端(図1中の左端)には、誘電体バリア104が設けられている。誘電体バリア104は、生成されるプラズマを維持するために設けられる。誘電体バリア104は、数mm程度の厚さのアルミナ等で構成される。
【0020】
筐体110は、棒状電極100の周りを覆うように設けられる。筐体110には、棒状電極100の少なくとも一方の端(図1中の左端)から、棒状電極100の延長上の側に離間した位置に、ガスを供給する供給口114が形成されている。また、筐体110には、棒状電極100の他方の端(図1中の右端)から、棒状電極100の延長上の離間した位置に、ガスを排出する排出口116が形成されている。すなわち、供給口114と排出口116は、棒状電極100の延長上に位置し、棒状電極100の長手方向と平行にガスが供給され、排出される。筐体110は、棒状電極100が放射する電磁波を内部空間に閉じ込める金属製の部材で構成される。また、筐体110はアースされている。
また、筐体110には、生成されるプラズマを観測することが可能なように、アクリル板からなる観測窓124が設けられている。
【0021】
網状電極112(「第2の電極」に相当)は、棒状電極100の一方の端(図1中の左端)の近傍に、この端から離間して設けられている。網状電極112は、金属製の筐体110の端部に設けられた開口部である供給口114を覆うように設けられる。また、網状電極112は筐体110と電気的に接続されている。上述したように、筐体110はアースされているため、網状電極112の電位は0となっている。網状電極112には、導電性の高い導体材料、例えば、銀、銅、アルミニウムなどが好適に用いられる。
【0022】
筐体110の供給口114には、窒素酸化ガス(NOx)を供給する供給管130が接続されている。例えば、供給管130は、ディーゼルエンジン等の排気口と接続されている。また、筐体110の排出口116には、ガスを排出する排出管132が接続されている。排出管132には不図示のブロワーが接続されており、筐体110の内部のガスは大気中に排出される。
【0023】
電力供給ユニット140は、棒状電極100の共振周波数と同じ周波数の交流信号を間欠的に、給電点102に給電する。電力供給ユニット140が給電する信号の概略の周波数の範囲は、棒状電極100中を伝送する伝送信号の波長λの半分の長さが棒状電極100の長さ2lとなり、最低次モードの共振が生じるように定められている。電力供給ユニット140は、筐体110に設けられた電界プローブ122から得られる計測信号を用いて、高周波信号の周波数を調整しながら、共振周波数に対応する周波数の信号を給電する。
【0024】
ここで、図2を参照して、電力供給ユニット140の概略構成を説明する。図2に示されるように、電力供給ユニット140は、CW発振器142と、変調発振器144と、RFバースト生成器146と、増幅器148と、を備える。
CW発振器142は、100MHz〜10GHzの周波数の連続波(Continuous Wave)を発振し、RF信号を生成する。以下の説明では、CW発振器142が発振する周波数をf[Hz]とする。CW発振器142が発振する周波数fは、電界プローブ122の計測結果に基づいて調整される。CW発振器142により生成されたRF信号は、RFバースト生成器146へ出力される。
なお、電力供給ユニット140は、接続端子120で反射された信号の強度に基づいて、共振周波数に対応する周波数の信号を給電することもできる。
【0025】
変調発振器144は、矩形パルス信号を所定の周波数で生成する。以下の説明では、変調発振器144が生成する矩形パルス信号のパルス幅をW[s]、矩形パルス信号を生成する周波数をf[Hz]とする。ここで、1/f<W<1/fである。変調発振器144が生成する矩形パルス信号のパルス幅Wは、棒状電極100の共振周波数と同じ周波数の高周波信号を給電点102に給電した場合に、給電により増大する棒状電極100の電圧が絶縁電圧を超えてプラズマが生成されるまでの期間よりも長くなるように設定される。
一般に、パルス幅Wが長すぎると後述する熱プラズマが発生することがある。熱プラズマが発生すると、棒状電極100に熱が発生し、これに起因してNOやNOが発生することがある。そのため、パルス幅Wは、熱プラズマが発生しない程度の長さとすることが好ましい。
変調発振器144により生成された矩形パルス信号は、RFバースト生成器146へ出力される。
【0026】
RFバースト生成器146は、CW発振器142により生成されたRF信号の入力を受ける。また、RFバースト生成器146は、変調発振器144により生成された矩形パルス信号の入力を受ける。RFバースト生成器146は、矩形パルス信号の入力を受けているW[s]の期間だけ、CW発振器142が生成したRF信号を出力する。すなわち、RFバースト生成器146は、1/f[s]周期でW[s]の間、周波数f[Hz]の交流信号を間欠的に出力する。
増幅器148は、RFバースト生成器146から出力された信号を増幅する。増幅器148により増幅された信号は、接続端子120へ出力される。
【0027】
ここで、図3を参照して、電力供給ユニット140で生成される信号の一例を説明する。図3(a)は、CW発振器142が生成するRF信号の一例を示す図である。図3(b)は、変調発振器144が生成する矩形パルス信号の一例を示す図である。図3(c)は、RFバースト生成器146が出力する信号の一例を示す図である。
本実施形態の電力供給ユニット140は、棒状電極100が電磁波を放射する際の共振周波数と同じ周波数の交流信号を間欠的に、給電点102に給電する。これにより、NOxを効率的に処理することかできる。すなわち、W[s]の間、棒状電極100にRF信号を出力することにより、熱プラズマに移行することなく、プラズマリアクターは、NOxを処理することができる。特に、本実施形態の電力供給ユニット140は、棒状電極100が電磁波を放射する際の共振周波数と同じ周波数の交流信号を間欠的に、給電点102に給電することにより、従来は分解することが難しかったNOを分解することが可能となる。
【0028】
次に、給電点102に棒状電極100の共振周波数と同じ周波数の高周波信号が給電された場合の共振状態について、図4を参照して説明する。図4は、図1に示すプラズマリアクターの共振状態を示す図である。図4に示されるように、給電点102に共振周波数と同じ周波数の高周波信号が給電されると、棒状電極100の両端で電圧が最大となる共振が発生する。棒状電極100の両端には、数kVの電圧Voutが生成される。
また、上述したように、給電点102は、棒状電極100の中心位置に対して式(1)で示される距離xだけずれている。給電点102における電圧Vinに対する棒状電極100の両端の電圧Voutの比は、式(1)で定まるx/(2l)を用いて、1/sin{x/(2l)}と表される。
【0029】
次に、プラズマリアクターで生成されるプラズマについて、図5を参照して説明する。図5(a)は、窒素酸化ガス等のガスが供給されていない状態における、大気圧中の空気で生成されるプラズマPを示す。図5(a)に示されるように、窒素酸化ガス等のガスが供給されていない場合、網状電極112と棒状電極100の端との間の領域に、プラズマPは生成される。図5(b)は、窒素酸化ガス等のガスが供給されている状態における、大気圧中の空気で生成されるプラズマPを示す。図5(b)に示されるように、窒素酸化ガス等のガスが供給されている場合、供給されたガスは棒状電極100の上下に分かれて流れる。これにより、生成されるプラズマPは、ガスの流れに沿って、棒状電極100の上下に広がる。このように、プラズマリアクターにガスを供給することにより、プラズマPが生成される領域は広くなる。その結果、窒素酸化ガスの処理効率は向上する。
【0030】
一般に、棒状電極100が電磁波を放射する際の共振周波数と同じ周波数の連続波を給電点102に給電すると、絶縁電圧を超えてプラズマが生成された後に給電点102に給電される連続波の電力は、NOxを処理するプラズマの生成に寄与しない。これに対し、本実施形態のプラズマリアクターは、絶縁電圧を超えてプラズマが生成された後に給電点102への給電が停止するように、給電点102に間欠的に給電するため、電力効率を高めることができる。このため、投入電力に対するNOxの処理効率は向上する。
【0031】
また、本実施形態のプラズマリアクターは、電力供給ユニット140が、棒状電極100が電磁波を放射する際の共振周波数と同じ周波数の交流信号を間欠的に、給電点102に給電することにより、NOを分解することができる。
【0032】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態のプラズマリアクターについて説明する。
図6は、本実施形態のプラズマリアクターの概略構成図である。本実施形態のプラズマリアクターの基本的な構成は、上述した第1の実施形態のプラズマリアクターと同様である。本実施形態のプラズマリアクターは、第1の実施形態のプラズマリアクターにおいて、更に、分岐管134と、ブロワー136と、を備える。
【0033】
図6に示されるように、分岐管134は、一端が排出管134に接続されており、他端が供給管130に接続されている。分岐管134にはブロワー136が接続されている。排出口116を通って排出管132に排出されたガスは、ブロワー136により分岐管134に吸引され、供給管130に供給される。
【0034】
本実施形態のプラズマリアクターによれば、供給管130から供給された窒素酸化ガスは、プラズマによって処理された後、分岐管134を通って再度、供給管130に供給される。これにより、筐体110を一度流れるだけでは窒素酸化ガスが十分に処理されない場合であっても、窒素酸化ガスを繰り返し筐体110に流すことにより、窒素酸化ガスの処理効率を高めることができる。
【0035】
また、分岐管134が排出管132に排出されたガスを循環することにより、供給口114を流れるガスの流量を増加させることができる。そのため、図5を参照して説明したように、プラズマPが生成される領域が広くなり、NOxの処理効率は向上する。
【0036】
また、一般に、プラズマが生成される場合、発生したイオンは電子に比べて速度が遅いため、プラズマが生成される領域にイオンガスが残りやすい。これに対し、本実施形態によれば、分岐管134が排出管132に排出されたガスを循環することにより、供給口114を流れるガスの流量を増加させることができ、プラズマが生成される領域に残りやすいイオンガスを拡散させることができる。その結果、プラズマリアクターの安定性が増加する。
【実施例】
【0037】
(実施例1)
以下、本発明の効果を確認するために行った実施例1について説明する。
本実施例では、図1を参照して説明した第1の実施形態のプラズマリアクターを用いて、NOが分解されることを確認した。棒状電極100の寸法は、長手方向の長さを344mm、高さ(図1において上下方向の長さ)を4mm、奥行き(図1において紙面垂直方向の長さ)を6mmとした。また、筐体110の寸法は、長手方向の長さを428mm、高さを72mm、奥行きを60mmとした。また、誘電体バリア104の厚さを3mmとした。また、網状電極114と誘電体バリア104との距離を3mmとした。
【0038】
電界プローブ122の計測信号により、380〜420MHzの範囲で共振周波数を掃引し、インピーダンス整合を行った結果、共振周波数は396.1MHzであった。また、Q値は略3000であり、棒状電極100の両端における電圧Voutは略30kVであった。
そこで、CW発振器142が発振する周波数fを396.1MHzとした。また、変調発振器144が生成する矩形パルス信号のパルス幅Wを0.7μsとした。また、変調発振器144が矩形パルス信号を生成する周波数fを2.5kHzとした。
【0039】
NOガスを窒素ガス(Nガス)で希釈して202.8ppmとしたガスを供給管130に供給した。供給管130に供給されるガスの酸素濃度は10.72%であった。供給管130に供給されたガスの流量は、毎分2.0リットルである。このとき、排出管132から排出されたガスに含まれるNOの濃度を測定すると、70.2ppmであった。
これより、本実施例のプラズマリアクターによれば、供給管130から供給されたNOが分解されることが確認された。
【0040】
なお、本実施例では、NOガスを窒素ガスで希釈したガスを供給管130に供給し、NOが分解されることを確認したが、NOガスを窒素ガスで希釈したガスを供給管130に供給した場合も、同様にして、処理中に生成されるNOも分解される。すなわち、NOガスを窒素ガスで希釈したガスを供給管130に供給すると、まず、プラズマによりNOガスは酸化されNOガスとなる。その後、NOガスが上述したように分解される。
【0041】
(実施例2)
次に、本発明の効果を確認するために行った実施例2について説明する。
本実施例では、図6を参照して説明した第2の実施形態のプラズマリアクターを用いてNOが分解されることを確認した。棒状電極100の寸法は、長手方向の長さを344mm、高さ(図1において上下方向の長さ)を4mm、奥行き(図1において紙面垂直方向の長さ)を6mmとした。また、筐体110の寸法は、長手方向の長さを428mm、高さを72mm、奥行きを60mmとした。また、誘電体バリア104の厚さを3mmとした。また、網状電極114と誘電体バリア104との距離を3mmとした。
【0042】
電界プローブ122の計測信号により、380〜420MHzの範囲で共振周波数を探査し、インピーダンス整合を行った結果、共振周波数は395.3MHzであった。また、Q値は略3000であり、棒状電極100の両端における電圧Voutは略30kVであった。
そこで、CW発振器142が発振する周波数fを395.3MHzとした。また、変調発振器144が生成する矩形パルス信号のパルス幅Wを0.7μsとした。また、変調発振器144が矩形パルス信号を生成する周波数fを2.5kHzとした。
【0043】
NOガスを窒素ガス(Nガス)で希釈して202.8ppmとしたガスを供給管130に供給した。供給管130に供給されるガスの酸素濃度は10.72%であった。供給管130に供給されたガスの流量は、毎分2.0リットルである。また、ブロワー136により分岐管134に吸引され、供給管130に循環されるガスの流量は、毎分20リットルである。
供給管130に供給されるガスと分岐管134により供給管130に循環されるガスが平衡状態に達した後に、排出管132から排出されたガスに含まれるNOの濃度を測定すると、40ppm以下であった。
これにより、本実施例のプラズマリアクターによれば、分岐管134によりガスが循環されるため、より効率的にNOが分解されることが確認された。
【0044】
以上、本発明の高電圧プラズマ発生装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0045】
100 棒状電極
102 給電点
104 誘電体バリア
110 筐体
112 網状電極
114 供給口
116 排出口
118 給電線
120 接続端子
122 電界プローブ
124 観測窓
130 供給管
132 排出管
134 分岐管
136 ブロワー
140 電力供給ユニット
142 CW発振器
144 変調発振器
146 RFバースト生成器
148 増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧中、ガス流として供給されるガスに対して10〜10Vの高電圧を与えてプラズマを発生させる高電圧プラズマ発生装置であって、
プラズマを生成するための電力が給電される第1の電極と、
第1の電極の周りを覆う金属製の筐体と、
第1の電極との間でプラズマを生成するために、第1の電極から離間して設けられ、アースされた第2の電極と、
第1の電極が電磁波を放射する際の共振周波数と同じ周波数の交流信号を間欠的に、第1の電極に給電する電力供給装置と、
を備えることを特徴とする高電圧プラズマ発生装置。
【請求項2】
前記筐体の内部にガスを供給する供給管と、
前記筐体の内部のガスを排出する排出管と、
前記排出管に排出されたガスの一部を分岐して前記供給管に供給する分岐管と、
を備える、請求項1に記載の高電圧プラズマ発生装置。
【請求項3】
第1の電極は、前記交流信号の給電により共振を発生させることにより高電圧を発生させる長尺状の電極であって、第1の電極の長手方向の略中間部分に、前記交流信号の給電点が設けられる、請求項1又は2に記載の高電圧プラズマ発生装置。
【請求項4】
前記筐体はアースされており、
第2の電極は、前記筐体にガスが供給される供給口に設けられ、前記筐体と電気的に接続された網状電極である、請求項1乃至3のいずれかに記載の高電圧プラズマ発生装置。
【請求項5】
前記供給管は、窒素酸化ガスを含むガスを前記筐体の内部に供給し、
生成されたプラズマが、前記窒素酸化ガスのうち二酸化窒素ガスを分解する、請求項1乃至4のいずれかに記載の高電圧プラズマ発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−64173(P2011−64173A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217323(P2009−217323)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】