説明

高電圧制御機器ユニットの搭載構造

【課題】車両駆動用のバッテリ及び高電圧電装部品を適切な温度環境下に置き、かつ、車室内のスペ−スの有効利用を図ると共に、車両衝突時の影響を最小限に抑える。
【解決手段】高電圧制御機器ユニット(20)は、車両(1)の車幅方向に並設された2個の車両駆動用のバッテリ(50−1,50−2)と、バッテリ(50−1,50−2)の電力授受を制御するための高電圧電装部品(56,57)と、バッテリ(50−1,50−2)の起動装置(58)とを含むユニットであり、2個のバッテリ(50−1,50−2)は、フロアパネル(9)上の前方シート(5−1,5−2)の下側に搭載されており、高電圧電装部品(56,57)は、車幅方向における前方シート(5−1,5−2)の間に配置されており、起動装置(58)は、車幅方向における2個バッテリ(50−1,50−2)の間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のフロアパネル上に搭載した車両駆動用のバッテリを有する高電圧制御機器ユニットの搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンとモータを併用して走行する自動車(以下、「ハイブリッド自動車」と称す。)、又はモータのみを用いて走行する自動車(以下、「電気自動車」と称す。)には、電力を蓄えると共に電動装置に電力を供給するためのバッテリ(バッテリモジュール)が搭載されている。バッテリは、高電圧制御機器ユニットの一部として、インバータ装置などを含む高電圧電装部品と共にケース(バッテリケース)に収容されている場合が多い。
【0003】
このようなバッテリは、その性能を十分に発揮させるために、使用可能な温度環境が限定されている。したがって、バッテリの車室内への配置においては、日射の影響で高温となる車室内の高所を避けて、比較的低温である車室内の低所(下方)に配置することが望ましい。また、車室内の乗員用の空間を十分に確保するため、バッテリは、車室内のデッドスペ−スである座席シートの下側などに配置する必要がある。特許文献1,2には、車室内の座席シートの下側にバッテリを配置した構造が開示されている。
【0004】
この場合、ケース内に収容されたバッテリ、ジャンクションボックスなどの配電部品、バッテリのメインスイッチ(起動装置)、インバータ装置などの高電圧デバイスは、車両衝突時に乗員が高電圧の電気から安全に守られるように配置する必要がある。また、ケース内のバッテリやメインスイッチは、車両の側面衝突の際にできるだけ損傷を受けないように、その点を考慮した適切な配置とすることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−354039号公報
【特許文献2】特開2011−57191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものであり、その目的は、車両駆動用のバッテリ及びそれに付帯する高電圧電装部品などを含む高電圧制御機器ユニットの車室内での配置構成を工夫することで、バッテリ及び高電圧電装部品を適切な温度環境下に置くことができ、かつ、車室内のスペ−スの有効利用を図ることができると共に、車両衝突時の影響を最小限に抑えることができる高電圧制御機器ユニットの搭載構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、車両(1)のフロアパネル(9)上に搭載した車両駆動用のバッテリ(50)を有する高電圧制御機器ユニット(20)の搭載構造であって、高電圧制御機器ユニット(20)は、車両(1)の車幅方向に並設された少なくとも2個の車両駆動用のバッテリ(50−1,50−2)と、バッテリ(50)の電力授受を制御するための高電圧電装部品(56,57)と、バッテリ(50)の起動装置(58)とを含むユニットであり、少なくとも2個のバッテリ(50−1,50−2)は、車両(1)の車幅方向に並設された複数の前方シート(5−1,5−2)の下側に搭載されており、高電圧電装部品(56,57)は、車幅方向における複数の前方シート(5−1,5−2)の間に挟まれた位置に搭載されており、起動装置(58)は、車幅方向における2個のバッテリ(50−1,50−2)の間に挟まれた位置に搭載されていることを特徴とする。
【0008】
本発明にかかる高電圧制御機器ユニットの搭載構造によれば、車幅方向に並設した少なくとも2個のバッテリを前方シートの下側に搭載し、かつ、バッテリの起動装置(メインスイッチ)をそれら2個のバッテリの間に挟まれた位置に配置したことで、車両の両側面から最も離れた車幅方向の中央またはその近傍にバッテリの起動装置が配置される。これにより、車両の側面衝突時の衝撃がバッテリの起動装置に及ぶことを抑止できる。また、バッテリ及び起動装置を前方シートの下側に配置したことによっても、これらバッテリや起動装置に車両衝突時の衝撃が及び難くなる。これらにより、車両の側面衝突の衝撃で起動装置が誤作動あるいは故障することを防止でき、バッテリを有する高電圧制御機器ユニットに不具合が生じることを回避できる。
【0009】
また、本発明にかかる搭載構造では、車両駆動用のバッテリを複数の前方シート(5−1,5−2)の下側に搭載し、高電圧電装部品を車幅方向における複数の前方シート(5−1,5−2)の間に挟まれた位置に配置したことで、車両駆動用のバッテリを比較的に温度が低い前方シートの下側に搭載し、かつ、高電圧電装部品を比較的に温度が高い複数の前方シートの間に配置することができる。したがって、バッテリと高電圧電装部品を互いに隣接配置しながら、各々の温度環境の最適化を図ることができる。
【0010】
また、上記の搭載構造では、高電圧電装部品(56,57)には、バッテリ(50)への配電経路を構成してなる配電部品(ジャンクションボックス)(57)が含まれており、当該配電部品(57)は、起動装置(58)と共に、複数の前方シート(5−1,5−2)間に設けたセンターコンソール部(21)に配置されているとよい。
【0011】
上記の配電部品は、多数の配線が分岐する複雑な構造であり、かつ、高電圧がかかる部品であるため、安全性の確保及び車両の機能維持のために車両の側面衝突時の衝撃から保護する必要がある。そこで、当該配電部品は、バッテリの起動装置と共に、車両の両側面から最も離れた位置にあるセンターコンソール部に配置することで、車両の側面衝突時の衝撃が及び難くなるようにすることが望ましい。
【0012】
また、上記の搭載構造では、起動装置(58)及び高電圧電装部品(56,57)の少なくとも車幅方向の両側を囲んで複数の前方シート(5−1,5−2)との間に介在する補強部材(59)を設けるとよい。
【0013】
このような補強部材を設けることで、車両の側面衝突時に両側のシートが起動装置及び高電圧電装部品側(車幅方向の中央側)へ移動する(倒れ込む)ことを抑止できる。したがって、車両の側面衝突時に前方シートによって起動装置や高電圧電装部品が潰れることを防止でき、それらを保護することができる。
【0014】
また、上記の搭載構造では、高電圧電装部品(56,57)には、インバータを有するインバータ装置(56a)とDC/DCコンバータを有するコンバータ装置(56b)とが含まれており、インバータ装置(56a)及びコンバータ装置(56b)は、車幅方向における複数の前方シート(5−1,5−2)の間に配置されているとよい。
【0015】
インバータを有するインバータ装置やDC−DCコンバータを有するコンバータ装置は、外形寸法が比較的大型の部品であるため、それらを含む高電圧電装部品は、スペースの確保が比較的に容易である前方シートの間に挟まれた位置に配置することが望ましい。これにより、車室内のスペ−スを有効に利用して外形寸法が比較的大きな高電圧電装部品を効率的に搭載することが可能となる。
【0016】
また、高電圧電装部品(56,57)に含まれるインバータ装置(56a)とコンバータ装置(56b)は、車両(1)の車幅方向において互いを背合わせ状態で設置するとよい。
【0017】
このような配置構成を採用することで、外形寸法が比較的大型であるインバータ装置とコンバータ装置を含む高電圧電装部品の省スペ−ス化を図ることができる。また、前方シートの間に配置したインバータ装置とコンバータ装置を背合わせ状態で設置することで、それらを冷却するための冷却ダクトなど冷却用の構造を設ける場合、当該冷却用構造の共用化を図ることができるので、部品点数の削減、省スペース化などに寄与できる。また、インバータ装置及びコンバータ装置から延びる配線をそれらの下面側から引き出すことができるので、前方シートの下側に配置したバッテリからインバータ装置及びコンバータ装置に繋がれた配線の長さ寸法を短く抑えることが可能となる。
【0018】
また、上記の搭載構造では、フロアパネル(9)上には、車両(1)の前後方向に所定間隔で配置されて車幅方向に延びる一対の補強材(11,12)と、車両(1)の車幅方向に所定間隔で配置されて前後方向に延びる他の一対の補強材(26,27)とが設置されており、高電圧制御機器ユニット(20)は、前後方向及び車幅方向が上記一対の補強材(11,12)及び他の一対の補強材(26,27)で囲まれた位置に配置されているとよい。
【0019】
この構成によれば、高電圧制御機器ユニットは、補強材で前後方向及び車幅方向の四方が囲まれていることで、側面からの衝撃に対して保護された状態になっている。したがって、車両の衝突時の衝撃で高電圧制御機器ユニットが潰れることを抑止できる。
【0020】
また、上記の高電圧制御機器ユニット(20)は、バッテリ(50)と高電圧電装部品(56,57)と起動装置(58)とを一体に収容してなるケース(30)と、ケース(30)内のバッテリ(50)を覆う断熱材(60)と、ケース(30)内でバッテリ(50)を支持するフレーム部材(55)とをさらに備えるとよい。この構成によれば、車両駆動用のバッテリ及びそれに付帯する高電圧電装部品及び起動装置などを車両の衝突時の衝撃からより効果的に保護することが可能となる。また、ケース内に設置した断熱材による断熱効果でバッテリの温度管理が容易となる。
【0021】
また、上記の搭載構造では、バッテリ(50)及び起動装置(58)は、フロアパネル(9)上で複数の前方シート(5−1,5−2)それぞれを車両(1)の前後方向へ移動可能に支持してなるシートレール(18,19)よりも下方に配置されているとよい。車両の側面衝突時に、高電圧制御機器ユニットより車幅方向で外側の位置に配置されている前方シートに過大な衝突荷重が加わることで、当該前方シートに変形や倒れが生じる場合がある。このような場合でも、上記のようにバッテリ及び起動装置をシートレールよりも下方に配置しておけば、前方シートの変形や倒れの影響がバッテリ及び起動装置に及ぶ確率を低く抑えることが可能となる。
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における構成要素の符号を本発明の一例として示したものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明にかかる高電圧制御機器ユニットの搭載構造によれば、バッテリ及び高電圧電装部品を適切な温度環境下に置くことができ、かつ、車室内のスペ−スの有効利用を図ることができると共に、車両衝突時の影響を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態にかかる高電圧制御機器ユニットを備えたハイブリッド自動車の車両を示す概略図である。
【図2】高電圧制御機器ユニットの構成部品を示す概略の分解斜視図である。
【図3】フロアパネル上に設置した高電圧制御機器ユニットの概略平面図である。
【図4】高電圧制御機器ユニットを車両の後側から見た側断面図(図3のY矢視に対応する側断面図)である。
【図5】運転席シート及び助手席シートに対する高電圧制御機器ユニットの配置構成を示す概略の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明において、上下及び前後左右などの向きを示す場合はいずれも、後述する車両1における向きを示すものとする。また、図中の矢印FRは、車両1の前側(前進方向)の向きを示す。また、下記で横方向、左右方向、車幅方向というときは、いずれも車両の進行方向(前後方向)に対する幅方向を指すものとする。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態にかかる高電圧制御機器ユニットを搭載したハイブリッド自動車の車両を示す概略図である。同図に示す車両1は、板金製の車体10を備え、該車体10の前部に配置されたエンジンルーム2には、エンジン3a及びモータジェネレータ3bが直列に設置されたパワーユニット3が搭載されている。モータジェネレータ3bは、例えば三相交流モータである。車両1は、内燃機関であるエンジン3aをモータジェネレータ3bにより駆動補助すると共に、車両減速時などには、モータジェネレータ3bからの電力を回収可能なハイブリッド自動車の車両である。
【0026】
すなわち、車両1では、エンジン3a及びモータジェネレータ3bの駆動力が駆動輪である前輪16に伝達される。また、車両1の減速時などに前輪16からモータジェネレータ3bに駆動力が伝達されると、モータジェネレータ3bが発電機として機能していわゆる回生制動力を発生し、車両1の運動エネルギ−が電気エネルギ−として回収される。回収された電気エネルギ−は、後述する高電圧デバイス56に含まれるインバータ装置56aなどの電力変換器を介してバッテリモジュール50のバッテリ(蓄電池)に充電される。
【0027】
エンジンルーム2の後方には、フロントシート5とリアシート6とが配置された車室7が設けられている。また、車室7の後方(後輪17の上方)には、車室7とリアシート6のシートバック6aなどを介して仕切られた荷室(トランク)8が設けられている。
【0028】
そして、車室7内のフロントシート5(運転席シート5−1及び助手席シート5−2)の下側には、電力ケーブル15を介してパワーユニット3と接続された高電圧制御機器ユニット20が配置されている。図2は、高電圧制御機器ユニット20の構成部品を示す概略の分解斜視図である。また、図3乃至図5は、高電圧制御機器ユニット20の配置構成を示す図で、図3は、フロアパネル9上に設置した高電圧制御機器ユニット20の概略平面図、図4は、高電圧制御機器ユニット20を車両1の後側から見た側断面図(図3のY矢視に対応する側断面図)、図5は、運転席シート及び助手席シートに対する高電圧制御機器ユニットの配置構成を示す概略の平面図である。なお、図3では、高電圧制御機器ユニット20から後述する上カバー41を取り外した状態を図示している。また、各図では、高電圧制御機器ユニット20の内部の構成部品(バッテリモジュール50、高電圧デバイス56、配電部品57、メインスイッチ58など)は、いずれも図示を簡略化している。
【0029】
図3に示すように、車室7内のフロアパネル9上には、車両1の車幅方向に延びる一対のクロスメンバー(一対の補強材)11,12が設置されている。クロスメンバー11,12は、両側の一対のサイドフレーム(他の一対の補強材)26,27の間に架け渡されており、互いが前後に間隔を有して並設されている。また、サイドフレーム26,27は、フロアパネル9の面をその断面が上方に凸となるように折曲形成した部分で、高電圧制御機器ユニット20の両側で車両の前後方向へ直線状に延びている。フロアパネル9およびクロスメンバー11,12、サイドフレーム26,27は、いずれも車体10の一部を構成する部材である。
【0030】
図4に示すように、フロアパネル9の上側には、運転席シート5−1および助手席シート5−2が設置されている。運転席シート5−1及び助手席シート5−2は、それぞれ座部5−1a,5−2a及び背もたれ部5−1b,5−2bを備えており、フロアパネル9の上方で前後方向に延びるシートレール18,19に取り付けられて同方向にスライド移動可能に支持されている。
【0031】
そして、本実施形態では、フロアパネル9と運転席シート5−1及び助手席シート5−2との間に高電圧制御機器ユニット20が搭載されている。高電圧制御機器ユニット20は、バッテリモジュール50と、バッテリモジュール50の電力授受を制御するための高電圧デバイス56及び配電部品57と、バッテリモジュール50用のメインスイッチ58とを含むユニットである。この高電圧制御機器ユニット20は、横方向の全体が運転席シート5−1及び助手席シート5−2の下側に設置されている。そして、車幅方向の中央部には、上方へ突出する突起状のセンターコンソール部21が設けられている。センターコンソール部21は、車幅方向における運転席シート5−1と助手席シート5−2の間に配置されており、座部5−1a,5−1bよりも高い位置まで突出して、車両1の前後方向に延びている。
【0032】
図2などに示すように、高電圧制御機器ユニット20は、下ケース31及び上カバー41からなるバッテリケース30を備えると共に、バッテリケース30内に収容されたバッテリモジュール50、バッテリモジュール50を覆う断熱材60、高電圧デバイス56、配電部品(高電圧配電部品)57、バッテリモジュール50用のメインスイッチ(起動装置)58を備えている。バッテリケース30は、例えば鋼板製の容器である。下ケース31は、車両1の上側を向く開口部32を有する有底容器型である。一方、上カバー(蓋体)41は、下ケース31の開口部32を塞ぐ略板状の部材であって、横方向の両側は、平板状の本体部41aになっており、横方向の中央には、前後方向に延びて上方に突出する突出部41bが設けられている。突出部41bは、運転席シート5−1と助手席シート5−2の間に配置された上記のセンターコンソール部21を構成している。突出部41bは、断面が台形状に形成されて上方に突出しており、その内部には、高電圧デバイス56及び配電部品57が収容されている。高電圧デバイス56及び配電部品57には、後述する補強部材59が被せられている。
【0033】
下ケース31の開口部32の外周縁には、上カバー41を接合させる接合面35が設けられている。また、下ケース31と上カバー41は、下ケース31における接合面35の近傍に設けた締結穴36と、それに対応する上カバー41の締結穴37とに取り付けたボルト38a及びナット38bからなる締結具38によって互いが締結固定されている。
【0034】
下ケース31は、横長の略直方体状に形成された有底容器状で、その内部がバッテリモジュール50などを収容するための収容部31cになっている。また、収容部31cの前側に立設された前側壁31aにおける幅方向の中央には、前方に向かって略水平に突出する略板状の突出部31dが一体形成されており、収容部31cの後側に立設された後側壁31bにおける幅方向の中央部には、後方に向かって略水平に突出する略板状の突出部31eが一体形成されている。
【0035】
収容部31c内のバッテリモジュール50は、車幅方向に並設された2個のバッテリ50−1,50−2を備えており、両方で収容部31cの内形に沿う薄型の略直方体状の外形を成している。バッテリモジュール50の上面側には、バッテリケース30を補強すると共に収容部31c内でバッテリモジュール50を支持するための金属板からなるフレーム部材55が設置されている。バッテリモジュール50は、フレーム部材55の下面側に固定されている。バッテリモジュール50は、その側面及び下面が断熱材60で覆われている。また、下ケース31における後側の突出部31eには、高電圧デバイス56が収容されている。また、高電圧デバイス56の前側に隣接する位置には、配電部品57が配置されており、配電部品57のさらに前側に隣接する位置には、メインスイッチ58が配置されている。
【0036】
図4及び図5に示すように、高電圧デバイス56及び配電部品57は、車幅方向における運転席シート5−1と助手席シート5−2との間に搭載されている。また、メインスイッチ58は、車幅方向における2個のバッテリ50−1,50−2の間に挟まれた位置に搭載されている。
【0037】
また、高電圧デバイス56及び配電部品57には、前後方向から見た断面が略台形状の補強部材59が被せられており、該補強部材59に上カバー41の突出部41bが被せて取り付けられている。補強部材59は、鋼鉄製の板材で形成した部材で、車両1の側面衝突などの衝撃から高電圧デバイス56及び配電部品57を保護するための部材である。すなわち、高電圧デバイス56及び配電部品57は、フレーム部材55よりも上側に突出して配置されており、その両側の側面及び上面が補強部材59で囲まれている。
【0038】
バッテリ50−1,50−2は、詳細な図示は省略するが、多数の電池セルが一体に束ねられた状態で設置されている。また、高電圧デバイス56は、インバータを有するインバータ装置56a及びDC/DCコンバータを有するコンバータ装置56bを備えてなる電子機器である。高電圧デバイス56には、図示は省略するが、ECUなどの電子機器も設けられている。高電圧デバイス56の機能によって、バッテリモジュール50から直流電流を得ると共に該直流電流を三相交流電流に変換し、この電流をモータジェネレータ3bに供給してこれを駆動させると共に、モータジェネレータ3bからの回生電流を直流電流に変換することで、バッテリモジュール50への充電を可能としている。
【0039】
配電部品57は、バッテリモジュール50や高電圧デバイス56に繋がれた多数の配線及び該配線を接続する多数のコネクタを一体的に設けた部品である。この配電部品57は、コネクタを介して多数の配線が分岐する複雑な構造である。上記の高電圧デバイス56及び配電部品57で、本発明にかかる高電圧電装部品が構成されている。また、メインスイッチ58はバッテリモジュール50の通電のオンオフを切り替えるスイッチであって、各バッテリ50−1,50−2が備える電池セルに接続されている。
【0040】
一方、図2及び図3に示すように、下ケース31の前後側壁31a,31bには、下ケース31をクロスメンバー11(車体10の一部)に締結固定するための車体側ステ−43と、収容部31c内のバッテリモジュール50を支持固定するためのバッテリステ−45とが取り付けられている。車体側ステ−43とバッテリステ−45は、前後側壁31a,31bの内外面で互いに対向する位置に固定されている。図2及び図3に示すように、上記の車体側ステ−43とバッテリステ−45の組は、下ケース31における前後側壁31a、31bの左右それぞれの合計4箇所に設けられている。
【0041】
本実施形態の高電圧制御機器ユニット20では、メインスイッチ58を車幅方向に並設した2個バッテリ50−1,50−2の間に挟まれた位置に配置したことで、車両1の側面衝突の際にメインスイッチ58が受ける衝撃を両側のバッテリ50−1,50−2で吸収することができる。したがって、車両1の側面衝突の衝撃でメインスイッチ58が誤作動あるいは故障することを防止でき、高電圧制御機器ユニット20に不具合が発生することを回避できる。
【0042】
また、バッテリモジュール50を運転席シート5−1及び助手席シート5−2の下側に搭載し、高電圧デバイス56及び配電部品57を車幅方向における運転席シート5−1と助手席シート5−2の間に配置したことで、バッテリモジュール50を比較的に温度が低い車室7内の低位置に搭載し、かつ、高電圧デバイス56及び配電部品57を比較的に温度が高い運転席シート5−1と助手席シート5−2の間に配置することができる。したがって、バッテリモジュール50と高電圧デバイス56及び配電部品57とを互いに隣接配置しながら、各々の温度環境の最適化を図ることができる。
【0043】
また、配電部品57は、多数の配線が分岐する複雑な構造であり、かつ、高電圧がかかる部品である。そのため、安全性の確保及び車両の機能維持のために、車両の側面衝突時の衝撃から保護する必要がある。そこで、配電部品57は、メインスイッチ58と共に、車両1の両側面から最も離れた位置にあるセンターコンソール部21に配置している。
【0044】
また、車両1の側面衝突時に、高電圧制御機器ユニット20よりも車幅方向で外側の位置に配置されている運転席シート5−1又は助手席シート5−2に過大な衝突荷重が加わることで、運転席シート5−1又は助手席シート5−2に変形や倒れが生じる場合がある。これに対して、本実施形態では、バッテリ50及びメインスイッチ58をシートレール18,19よりも下方に配置していることで、運転席シート5−1又は助手席シート5−2の変形及び倒れの影響がバッテリ50やメインスイッチ58に及ぶ確率を低く抑えることを可能としている。
【0045】
また、図4に示すように、高電圧デバイス56及び配電部品57の車幅方向の両側を囲む補強部材59を設けており、該補強部材59を高電圧デバイス56及び配電部品57と運転席シート5−1及び助手席シート5−2それぞれとの間に介在させている。このような補強部材59を設けたことで、車両1の側面衝突時に両側の運転席シート5−1又は助手席シート5−2が高電圧デバイス56及び配電部品57側(車幅方向の中央側、センタ−コンソ−21側)へ移動する(倒れ込む)ことを防止できる。したがって、車両1の側面衝突時に高電圧デバイス56や配電部品57が潰れることを抑止できる。
【0046】
また、図5に示すように、高電圧デバイス56のインバータ装置56a及びコンバータ装置56bは、車幅方向における運転席シート5−1と助手席シート5−2の間に配置されている。
【0047】
インバータを有するインバータ装置56aやDC−DCコンバータを有するコンバータ装置56bは、外形寸法が比較的に大型の部品であるため、それらを含む高電圧デバイス56は、スペースの確保が比較的に容易である運転席シート5−1と助手席シート5−2の間に配置することが望ましい。これにより、車室7内のスペ−スを有効に利用して、外形寸法が比較的大きなインバータ装置56a及びコンバータ装置56bを効率的に搭載することが可能となる。
【0048】
また、図3乃至図5に示すように、高電圧デバイス56のインバータ装置56aとコンバータ装置56bは、車両1の車幅方向において互いが背合わせ状態(車幅方向の中心側の面同士を突き合わせた状態)で設置されている。これにより、外形寸法が比較的大型であるインバータ装置56aとコンバータ装置56bを含む高電圧デバイス56の省スペ−ス化を図ることができる。
【0049】
また、シート5−1,5−2間に配置したインバータ装置56aとコンバータ装置56bを背合わせ状態で設置したことで、詳細な図示は省略するが、それらを冷却するための冷却ダクトなど冷却用の構造を設ける場合、当該冷却用の構造の共用化を図ることができる。したがって、部品点数の削減、省スペース化を図ることができる。また、インバータ装置56a及びコンバータ装置56bから延びる配線をそれらの下面側から引き出すことができるので、バッテリモジュール50からインバータ装置56a及びコンバータ装置56bに繋がれた配線の長さ寸法を短く抑えることが可能となる。すなわち、高電圧の配線は、その配線経路の全長に渡って漏電対策及び高電圧保護対策が必要となるため、配線経路を可能な限り短くすることが望ましいこところ、上記の配置構成を採用したことで、高電圧デバイス56に接続された配線の経路長を短く抑えた効率的な配置が可能となる。
【0050】
また、本実施形態の搭載構造では、図3に示すように、フロアパネル9上には、車両1の前後方向に所定間隔で配置されて車幅方向に延びる一対の補強材であるクロスメンバー11,12と、車両1の車幅方向に所定間隔で配置されて前後方向に延びる他の一対の補強材であるサイドフレーム26,27とが設置されている。そして、高電圧制御機器ユニット20は、前後方向及び車幅方向がクロスメンバー11,12及びサイドフレーム26,27で囲まれた位置に配置されている。
【0051】
このように、高電圧制御機器ユニット20の四方がクロスメンバー11,12及びサイドフレーム26,27で囲まれていることで、車両1の衝突時の衝撃で高電圧制御機器ユニット20が潰れることを効果的に防止できる。
【0052】
また、高電圧制御機器ユニット20は、図2に示すように、バッテリモジュール50と高電圧デバイス56及び配電部品57とメインスイッチ58とを一体に収容してなるバッテリケース30と、該バッテリケース30内のバッテリモジュール50を覆う断熱材60と、バッテリケース30内でバッテリモジュール50を支持するフレーム部材55と備えている。この構成によって、車両駆動用のバッテリモジュール50及びそれに付帯する高電圧デバイス56及び配電部品57やメインスイッチ58などを、車両1の衝突時の衝撃から効果的に保護することが可能となる。また、バッテリケース30内に設置した断熱材60で、バッテリモジュール50の環境温度を適切な温度に管理することが可能となる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態の高電圧制御機器ユニット20によれば、管理温度が比較的低いバッテリモジュール50を車室7内におけるシートレール18,19の下側に配置し、管理温度が比較的高い高電圧デバイス56(インバータ装置56a、コンバータ装置56b)を左右シート5−1,5−2の間に配置したことで、バッテリモジュール50と高電圧デバイス56を隣接させて配置しながら、それらを適切な温度環境下に置くことを可能としている。
【0054】
すなわち、車両駆動用のバッテリモジュール50を備えた車両1において、車室7内にバッテリモジュール50およびその制御装置をレイアウトすることで、フロントノ−ズを短く抑えて車両1を小型化しているが、その際に上記の搭載構造を採用したことでバッテリモジュール50と高電圧デバイス56などの配置の最適化を図っている。
【0055】
また、センターコンソール部21にメインスイッチ58及び配電部品57を配置したことで、車室7内のスペ−スを有効活用していると共に、バッテリモジュール50を制御するための入力側端子(バッテリモジュール50に対する出力側端子)を構成しているメインスイッチ58と、車両駆動を制御するための出力側端子(バッテリモジュール50に対する出力側端子)を構成している配電部品57との両方をセンターコンソール部21に集中的に配置している。
【0056】
上記のように、バッテリモジュール50と高電圧デバイス56とを隣接させて配置したことで、電気安全構造及びバッテリや高電圧デバイスの冷却構造を集約させて配置した構造の高電圧制御機器ユニット20を構成できる。これにより、車両駆動用のバッテリを備えた車両の部品点数の削減及びコスト低減の効果が得られる。
【0057】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、本発明にかかる高電圧制御機器ユニットを備えた車両として、ハイブリッド自動車の車両1を例に挙げて説明したが、本発明にかかる車両は、車両駆動用のバッテリと、当該バッテリの電力授受を制御するための高電圧電装部品と、バッテリの起動装置とを含む高電圧制御機器ユニットを備えた車両であれば、上記のようなハイブリッド自動車の車両1には限定されず、電機自動車など他の種類の自動車の車両にも適用が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 車両
2 エンジンルーム
3 パワーユニット
3a エンジン
3b モータジェネレータ
5 フロントシート(前方シート)
5−1 運転席シート
5−1a 座部
5−1b 背もたれ部
5−2 助手席シート
5−2a 座部
5−2b 背もたれ部
6 リアシート
6a シートバック
7 車室
9 フロアパネル
10 車体
11,12 クロスメンバー(一対の補強材)
15 電力ケーブル
16 前輪
17 後輪
18,19 シートレール
20 高電圧制御機器ユニット
21 センターコンソール部
26,27 サイドフレーム(他の一対の補強材)
30 バッテリケース
31 下ケース
41 上カバー
50 バッテリモジュール(バッテリ)
50−1 バッテリ
50−2 バッテリ
55 フレーム部材
56 高電圧デバイス(高電圧電装部品)
56a インバータ装置
56b コンバータ装置
57 配電部品(高電圧電装部品)
58 メインスイッチ(起動装置)
59 補強部材
60 断熱材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロアパネル上に搭載した車両駆動用のバッテリを有する高電圧制御機器ユニットの搭載構造であって、
前記高電圧制御機器ユニットは、前記車両の車幅方向に並設された少なくとも2個の車両駆動用のバッテリと、前記バッテリの電力授受を制御するための高電圧電装部品と、前記バッテリの起動装置とを含むユニットであり、
前記2個のバッテリは、前記車両の車幅方向に並設された複数の前方シートの下側に搭載されており、
前記高電圧電装部品は、車幅方向における前記複数の前方シートの間に挟まれた位置に搭載されており、
前記起動装置は、車幅方向における前記2個バッテリの間に挟まれた位置に搭載されている
ことを特徴とする高電圧制御機器ユニットの搭載構造。
【請求項2】
前記高電圧電装部品には、前記バッテリの配電経路を構成してなる配電部品が含まれており、
当該配電部品は、前記起動装置と共に、前記複数の前方シートの間に設けたセンターコンソール部に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の高電圧制御機器ユニットの搭載構造。
【請求項3】
前記起動装置及び前記高電圧電装部品の少なくとも前記車幅方向の両側には、それらと前記複数の前方シートそれぞれとの間に介在する補強部材が設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の高電圧制御機器ユニットの搭載構造。
【請求項4】
前記高電圧電装部品には、インバータを有するインバータ装置とDC/DCコンバータを有するコンバータ装置とが含まれており、
前記インバータ装置及びコンバータ装置は、前記車幅方向における前記複数の前方シートの間に挟まれた位置に搭載されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高電圧制御機器ユニットの搭載構造。
【請求項5】
前記インバータ装置と前記コンバータ装置は、前記車両の車幅方向において互いが背合わせ状態で設置されている
ことを特徴とする請求項4に記載の高電圧制御機器ユニットの搭載構造。
【請求項6】
前記フロアパネル上には、前記車両の前後方向に所定間隔で配置されて車幅方向に延びる一対の補強材と、前記車両の車幅方向に所定間隔で配置されて前後方向に延びる他の一対の補強材とが設置されており、
前記高電圧制御機器ユニットは、前後方向及び車幅方向が前記一対の補強材及び前記他の一対の補強材で囲まれた位置に配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の高電圧制御機器ユニットの搭載構造。
【請求項7】
前記高電圧制御機器ユニットは、
前記バッテリと前記高電圧電装部品と前記起動装置とを一体に収容してなるケースと、
前記ケース内で前記バッテリを覆う断熱材と、
前記ケース内で前記バッテリを支持するフレーム部材と、をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の高電圧制御機器ユニットの搭載構造。
【請求項8】
前記複数の前方シートそれぞれを前記フロアパネル上で前記車両の前後方向へ移動可能に支持してなるシートレールを備え、
前記バッテリ及び前記起動装置は、前記シートレールよりも下方に配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の高電圧制御機器ユニットの搭載構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−95182(P2013−95182A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237175(P2011−237175)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】