説明

高電圧直流ケーブル絶縁体および半導電性遮蔽体

【課題】ポリマー性誘電絶縁材料類、特に改質していないポリエチレンは、高電圧直流ケーブル絶縁体に用いることはできない。改善した高電圧直流ケーブル絶縁体を提供する。
【解決手段】高電圧直流ケーブル絶縁体は、低結晶化度を有し物理的な空間電荷トラップ箇所を減少させる、エチレン−αオレフィンコポリマーのようなエチレンコポリマー、局所的導電性を促進し、局所的負荷が促進した場合に空間電荷を迅速に漏洩するために有効な量の極性ポリマー改質剤、および、空間電荷を安定化または中和するイオンスカベンジャーを含み、効果的な高電圧DCケーブル絶縁体の組成物を提供するブレンドから製造される。高電圧直流ケーブル半導電性遮蔽体は、エチレンコポリマー、低レベルのイオン性化学種を有するカーボンブラック、極性ポリマー改質剤、および、イオンスカベンジャーを含む混合物から製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電力ケーブル類の絶縁体および半導電性遮蔽体に関する。さらに詳細には、本
発明は高電圧直流電気ケーブル類の絶縁体および半導電性遮蔽に関する。
【背景技術】
【0002】
直流(DC)送電は交流(AC)送電より多くの利点がある。DC送電は、送電距離に
制限が無く、長距離海底ケーブル類(>50キロメートル)が使用可能であり、異なるネ
ットワーク/電源(風車タービンのような)間において良好な連結性を有し、導体損失が
低く電力損失が皆無であるため運転費用がより低く、電力の質およびシステムの信頼性/
安定性のためのフロー制御により優れ、ならびに、より高い電圧定格を有する。オイル/
紙絶縁体によって絶縁されたケーブル類は1954年から高圧直流(HVDC)用途で有
効に用いられてきた。架橋ポリエチレンによって絶縁されたケーブル類は、オイル/紙に
よって絶縁されたHVDC用途のケーブル類に対して、いくつかの利点を持つ可能性があ
る。
架橋ポリエチレンの利点には、より低い製造コスト、より低い運転費用、より簡便な設備
維持、より高い設備の温度定格(例えば、90℃対60℃〜70℃)、およびオイル漏れ
が無いことによる環境適合性が挙げられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、ポリマー性誘電絶縁材料類、特に改質していないポリエチレンは、HVDC用
途に用いることはできない。これらの素材は、局所的に空間電荷が蓄積され、これによっ
てサージまたは雷インパルス発生時に局所電界を著しく増加させる可能性があり、極性逆
転の間に電荷中和を起こし、これによって局所的DC絶縁破壊強度が低減する恐れがあり
、温度依存性の導電性に起因するストレス反転(stress inversion)を有し、局所的電界
促進が逆転する恐れがある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
HVDCのポリマー性ケーブル絶縁製品への既知の取り組みは、低くかつ良好に分散し
た空間電荷トラップを持たせることである。空間電荷は、結晶とアモルファス間の境界に
形成された物理的トラップ、または物質の化学構造による化学的トラップによって捕捉す
ることができる。しかし、本発明は、低結晶化度を有するエチレン−αオレフィンコポリ
マーのような、エチレンコポリマーを含む混合物から製造されたケーブル絶縁体であり、
物理的な空間電荷トラップ箇所を減少させる。本発明は、局所的負荷が増加した場合に空
間電荷を迅速に漏洩させるため、少なくとも1つの極性ポリマー改質剤を、局所的導電性
を促進するために有効な量用い、および、少なくとも1つのイオンスカベンジャーを空間
電荷の安定または中和のために用い、効果的な高電圧DCケーブル絶縁体である組成物を
提供する。本発明はまた、エチレンコポリマー、低レベルのイオン性化学種を有するカー
ボンブラック、極性ポリマー改質剤、および、イオンスカベンジャーを含む混合物から製
造される半導電性遮蔽体にも関する。
【0005】
本発明は(1)高電圧直流へさらされた場合に、絶縁破壊および劣化に対する抵抗力を
有する絶縁体を含む直流ケーブル、(2)高電圧直流へさらされた場合に、絶縁破壊およ
び劣化に対する抵抗力を有する絶縁体組成物、ならびに、(3)このような絶縁体の劣化
を減少させる方法に関する。本発明はまた、絶縁破壊および劣化に対し同様の抵抗力を有
する、半導電性遮蔽体にも関する。
【0006】
ケーブル絶縁体組成物は、密度が900グラム/立方センチメートルよりも低い、少な
くとも1つの架橋非極性低結晶性樹脂を含み、最低でも90℃のケーブル絶縁体温度定格
で電荷をトラップしない、または電荷トラップ箇所を作らない傾向がある。他の態様にお
いて、この樹脂は架橋されていないか、または、架橋されていてもほんの少量であり(以
下非架橋ポリマーとする)、これは75℃以上の温度定格を有するケーブル絶縁体を提供
するために有効である。どちらの態様においても、ケーブル絶縁体は強電界下で電荷を素
早く放散または漏洩させる少なくとも1つの極性ポリマー改質剤、(2)空間電荷を安定
または中和させる少なくとも1つのイオンスカベンジャー、および(3)必要に応じ、絶
縁体が稼働中に熱劣化する間に、内部電荷の発生を最小化する少なくとも1つの熱安定剤
を含む。
【0007】
架橋非極性の低結晶性樹脂、極性ポリマー性改質剤、イオンスカベンジャーおよび熱安
定剤は、温度定格が90℃以上であり、および、正または負のどちらかの20kV/mm
を適用した24時間後に、パルス電気音響(pulsed electro acoustic、PEA)法によって
測定された電荷密度が2クーロン/mm3よりも低いことを達成するために有効な量であ
る。温度定格が75℃を超えないケーブル絶縁体においては、このような樹脂の架橋の量
および程度、極性ポリマー性改質剤、イオンスカベンジャーおよび熱安定剤の量の全てが
、温度定格が75℃以上であり、および、正または負のどちらかの20kV/mmを適用
した24時間後に、パルス電気音響(pulsed electro acoustic、PEA)法によって測定さ
れた電荷密度が2クーロン/mm3よりも低いことを達成するために有効な量である。
【0008】
他の態様において、本発明は、密度が0.900グラム/立方センチメートルより低く
、メルトインデックスが0.5から10グラム/10分であり、結晶化度が約10パーセ
ントよりも小さい、エチレン/αオレフィンコポリマーのような、少なくとも1つの架橋
エチレンコポリマーと;高電界でのみ、電界の導電性を与え、そして空間電荷を漏洩させ
るのに有効な量の、少なくとも1つの極性ポリマー改質剤;イオンスカベンジャーを含ま
ないブレンドと比較して、電荷の蓄積を減少させるのに有効な量の、少なくとも1つのイ
オンスカベンジャー;ならびに、必要に応じ、熱により誘発される劣化および内部電荷の
発生を防ぐために有効な量の、少なくとも1つの熱安定剤を含む、高電圧直流ケーブル絶
縁体組成物である。極性ポリマー性改質剤、イオンスカベンジャー、および任意の熱安定
剤の量と比率は、架橋した樹脂と組み合わせた場合に、正または負の20kV/mmを適
用した24時間後に、PEA法によって測定された電荷密度が2クーロン/mm3よりも
低い絶縁体を与える量である。
【0009】
他の態様において、75℃以上の温度定格を持つケーブル絶縁体において、ケーブル絶
縁体の組成物は、密度が0.900グラム/立方センチメートルであり、メルトインデッ
クスが0.5から10グラム/10分であり、結晶化度が約10パーセントより低い、エ
チレン/αーオレフィンコポリマーのような、非極性、非架橋のエチレンコポリマー;高
電界でのみ、電界の導電性を与え、そして空間電荷を漏洩させるのに有効な量の、少なく
とも1つの極性ポリマー性改質剤;イオンスカベンジャーを含まないブレンドと比較して
、電荷の蓄積を減少させるのに有効な量の、少なくとも1つのイオンスカベンジャー;な
らびに、必要に応じ、熱により誘発される劣化および内部電荷の発生を防ぐために有効な
量の、少なくとも1つの熱安定剤を含む。極性ポリマー性改質剤、イオンスカベンジャー
、および任意の熱安定剤の量と比率は、樹脂と組み合わせた場合に、正または負のどちら
かの20kV/mmを適用した24時間後に、PEA法によって測定された電荷密度が2
クーロン/mm3よりも低い絶縁体を与える量である。
【0010】
さらに他の態様において、本発明は、密度が0.900グラム/立方センチメートルよ
りも低く、メルトインデックスが0.5から10グラム/10分の、少なくとも1つの架
橋エチレン/ブテン、またはエチレン/へキセンオレフィンポリマー;0.1から15重
量パーセントの少なくとも1つの極性ポリマー性改質剤;電荷の蓄積を減少させるための
、0.05から0.5重量パーセントの少なくとも1つの電荷スカベンジャー、ならびに
、必要に応じ、熱により誘発される劣化および内部電荷の発生を防ぐために有効な量の、
0.1から5重量パーセントの、少なくとも1つの熱安定剤のブレンドを含む、または、
そのブレンドより製造された、高電圧直流ケーブル絶縁体である。
【0011】
本発明の半導電遮蔽体組成物は、(a)密度が0.900グラム/立方センチメートル
よりも低い、少なくとも1つの非極性、低結晶性樹脂、(b)低量のイオン性化学種を有
するカーボンブラック、(c)少なくとも1つの極性ポリマー性改質剤、および(d)少
なくとも1つのイオンスカベンジャーを含む。必要に応じ、この組成物は、少なくとも1
つの熱安定剤を含むことができる。樹脂は架橋していても架橋していなくてもよい。極性
ポリマー性改質剤は、強電界下で電荷を素早く放散または漏洩させる。イオンスカベンジ
ャーは、空間電荷を安定または中和させる。任意の熱安定剤は、絶縁体が稼働中に熱劣化
する間に、内部電荷の発生を最小化する。得られるケーブルは、(a)90℃以上、また
は(b)75℃以上のいずれかの温度定格を達成するべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に使用可能な非極性エチレンコポリマーには、エチレン/プロピレンコポリマーの
ようなエチレン/αオレフィンインターポリマー類が含まれる。この樹脂は低い結晶化度
を有し、0.90グラム/立方センチメートルより低い密度を有する。非常に重要な態様
においては、本発明に用いる樹脂は、C2〜C6αオレフィンコポリマーである。低結晶化
度とは、示差走査熱量計によって決定された結晶化度が、20パーセントよりも低いこと
を意味する。本発明に使用可能なαーオレフィン樹脂類には、シングルサイト触媒(SS
C)によって製造されたエチレン−へキセンコポリマー、チーグラー・ナッタ(Z/N)
触媒によって製造されたエチレン−ブテンコポリマー、および、SSC触媒によって製造
されたエチレン−オクテンコポリマーが含まれる。非極性エチレンコポリマーは、多少の
極性成分を有してもよいが、そのような極性成分は樹脂結晶を形成し、アモルファス特性
を失わせるほどの量であるべきではない。よって、非極性樹脂は、少量のエチレン/スチ
レンコポリマー、エチレン酢酸ビニルコポリマー、またはエチレン/アクリル酸エチルコ
ポリマーを含んでいてもよい。架橋樹脂を含む本発明の態様においては、過酸化物、放射
線照射、または湿分硬化を用いて樹脂を架橋してもよい。
【0013】
極性ポリマー改質剤類は、少なくとも1つの極性成分を有するポリマー性物質である。
これらの極性成分は、側基としてポリマー構造の一部であってもよく、この側基は無水マ
レイン酸、酢酸ビニル、およびアクリル酸ビニルの残基であってもよく、これらの化合物
は、グラフティングによって、またはポリマーのモノマー前駆体の一部として、ポリマー
に組み込まれたものである。極性成分はまた、水酸基、スチレニック基、およびカルボキ
シル基を含んでもよい。極性ポリマー性改質剤は、(極性成分が水酸基の場合)ポリエチ
レングリコール、(極性成分がアクリル酸ビニル残基の場合)エチレンアクリル酸エチル
、(極性成分がスチレン基の場合)エチレンスチレンコポリマー、または(極性成分がカ
ルボキシル基の場合)酸価を持つポリエステルであってもよい。極性ポリマー改質剤は、
上述のような、密度が約0.900グラム/平方立法センチメートルであり、約0.3パ
ーセントの無水マレイン酸を有する、無水マレイン酸グラフト化超低密度エチレン/αオ
レフィンコポリマー類、ポリカプロラクトン樹脂類(カルボキシル基を主鎖中に有し、末
端がジオール基である)、およびそれらの混合物を含んでいてもよい。
【0014】
イオンスカベンジャー類は、ヒドロキシルおよびカルボキシルのようなキレート基を有
する化合物である。イオンスカベンジャー類としては、1,2−ビス(3,5−ジ−te
rt−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジン、ポリ[[6−[1,1
,3,3−テトラメチルブチル)アミノ]−s−トリアジン−2,4−ジイル][2,2
,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6
−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]、N,N’−ビス(o−ヒドロキシルベンザ
ル)オキサリジヒドリド、バルビツール酸、チオビスフェノールの第三亜リン酸エステル
、および、N,N’−ジフェニルオキサミド、ならびに、それらの混合物が挙げられる。
【0015】
酸化防止剤類もまた、絶縁体または半導電遮蔽体組成物類中に用いてもよい。使用可能
な酸化防止剤類には以下が含まれる。Cyanox 1790として市販されている、1
,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル
)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、およびジ
ステアリルチオジプロピオナート(DSTDP)。
【0016】
半導電遮蔽体組成物において、カーボンブラックは少量のイオン性化学種を有するべき
であり、好適にはその量は約200ppmよりも低い。さらに好適には、イオン性化学種
の量は約100ppmよりも低い。カーボンブラックのイオン性化学種の量は、誘導結合
プラズマ分析法、またはJ. Tanaka, "Interfacial Aging Phenomena In Power Cable Ins
ulation systems", Institute of Materials Science, University of Connecticut, Pro
gress Report No. 8 and 9, September 13, 1988に記載の方法によって決定することがで
きる。
【0017】
温度定格が90℃の架橋絶縁組成物においては、ICEAT−28−562試験法によ
る温度150℃における伸張および永久歪みは、それぞれ175パーセントおよび10パ
ーセントを超えるべきではない。代替的な判定方法は、ASTM D2765による溶剤
抽出試験である。架橋絶縁体組成物が一般的に有する、20時間乾燥後の最大抽出量は、
30パーセントを超えない。温度定格が75℃の絶縁体では、UL−1581標準による
空気循環オーブン中で、113℃において7日間エージングした後の引張強度および破断
点伸びのパーセント保持率が、70パーセントより低くないことが一般的に要求される。
【実施例】
【0018】
実施例1〜7
実施例1、2、3、4、および6は本発明を説明する。実施例5および7は比較実施例
である。
【0019】
各実施例において、主成分となるエチレンポリマーは低結晶化度および低メルトインデ
ックスを有することで特徴づけられ、超低密度ポリエチレンである。(a)Exact
4033(商標)エチレン/へキセンコポリマー、(b)DGH−8480(商標)エチ
レン/ブテンコポリマー、または(c)Engage 8003(商標)エチレン/オク
テンコポリマー。図1に示されていない限り、例示した組成物は、Exact 4033
(商標)エチレン/へキセンコポリマーを主成分のポリマーとして含む。
【0020】
Exact 4033(商標)エチレン/へキセンコポリマーは、0.880グラム/
立方センチメートルの密度および0.8グラム/10分のメルトインデックスを有し、Ex
xon Chemical Co.より入手可能なシングルサイト触媒のポリエチレンである。DGH−8
480(商標)エチレン/ブテンコポリマーは、0.884グラム/立方センチメートル
の密度および0.8グラム/10分のメルトインデックスを有し、The Dow Chemical Com
panyより入手可能である。Engage 8003(商標)エチレン/オクテンコポリマ
ーは、0.885グラム/立方センチメートルの密度および1.0グラム/10分のメル
トインデックスを有するシングルサイト触媒ポリエチレンであり、DuPont Dow Elastomer
s LLCより入手可能である。
【0021】
列挙した全ての成分はまた、0.25重量パーセントのChimassorb 944
ポリ[[6−[1,1,3,3−テトラメチル‐ブチル)アミノ]−s−トリアジン−
2,4−ジイル][2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメ
チレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピぺリジル)イミノ]]をイオンスカベ
ンジャーとして、0.14重量パーセントのCyanox 1790 1,3,5−トリ
ス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5
−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオンを一次酸化防止剤として、
0.23重量パーセントのDSTDPを第2酸化防止剤として含む。Chimassor
b 994はCiba Specialty Chemicals Corporationより入手可能である。Cyanox
1790は、Cytec Corporationより入手可能である。DSTDPはGreat Lakes Corpo
rationより入手可能である。
【0022】
また、各組成物は、Hercules Corporationより入手可能な、ビス(1‐メチル‐1‐フ
ェニルエチル)ペルオキシドによって硬化された。
【0023】
様々なその他の成分を、列挙された組成物に用いた。DEFA−1373(商標)超低
密度エチレン/ブテンコポリマーは0.3重量パーセントの無水マレイン酸グラフトを有
し、The Dow Chemical Companyより入手可能であり、極性ポリマー改質剤として特徴付け
られる。DEFA−1373は、0.903グラム/立方センチメートルの密度および2
.0グラム/10分のメルトインデックスを有する。Tone Polymer P−767(商標)
ポリラクトン樹脂は、1.145グラム/立方センチメートルの密度、30.0グラム/
10分のメルトインデックス、および60℃の融点を有する。P−767ポリラクトン樹
脂はThe Dow Chemical Companyより入手可能であり、極性ポリマー改質剤として特徴付け
られる。熱安定剤/フォノン放散剤(phonon dissipatior)として添加された酸化亜鉛は
、Kadox 911PとしてZinc Corporation of Americaより入手可能である。イオ
ンスカベンジャーとして添加されたIrganox 1024 1,2‐ビス(3,5−
ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナモイル)ヒドラジンは、Ciba Speci
alty Chemicals Corporationより入手可能である。
【0024】
空間電荷の測定はパルス電気音響法によって行われた。この方法の詳細は、Y. Li, M.Y
asudaおよびT. Takadによる"Pulsed Electro-acoustic Method for Measurement of Char
ge Accumulation in Solid Dielectrics," IEEE Transaction EI, Vol. 1, 188〜195頁,
1994の記載として、文献から得ることができる。
【0025】
各サンプルは1.6ミリメートルの厚みと135mmの直径を持ち、直径が30mmの
、0.1mmの半伝導電極の間に配置された。32kV DC(20kV/mm)を24
時間適用した後、図1に示すように電圧を適用することなく、PEAによって空間電荷を
測定した。サンプルを電圧を適用することなく12時間接地した後、24時間−32kV
DC(20kV/mm)を適用した。図2に示すように電圧を適用することなく、PE
Aによって空間電界を再度測定した。全ての測定を、約20℃の周囲温度において実施し
た。
【0026】
空間電荷の測定を電荷密度(クーロン/立方ミリメートル)として、時間(ナノ秒)の
関数としてプロットした。図1および2に示す各領域は2クーロン/mm3の値と同じで
ある。
【0027】
HVDCケーブル用途においては、時間の測定の間を通じ、HVDCケーブルの絶縁は
空間電荷を可能な限り低く、できる限り一定に維持するべきである。優れたHVDCケー
ブル絶縁体の空間電荷の値は、正と負のDC負荷両方において2クーロン/mm3より高
くなるべきではない。
【0028】
【表1】

【0029】
添加剤の効果
一般的な酸化防止剤および紫外線安定剤を含む比較実施例5は、20kV/mmの正の
DC負荷の適用時に、要求される空間電荷値を満たさなかった。しかし、Irganox
1024および2種の異なる極性ポリマー改質剤をそれぞれ用いた実施例1および2は
、望ましい要求値を正および負の両方のDC負荷において満たした。実施例2は実施例1
より低い空間電荷分布を示した。実施例3は、追加の熱安定剤として酸化亜鉛を含み、実
施例2と比較してさらに改善した空間電荷を示した。実施例3および1の添加剤パッケー
ジの組み合わせを含む実施例4は、許容可能な空間電荷性能を示した。
【0030】
樹脂の効果
実施例2および6、ならびに比較実施例7は、数種類のVLDPE樹脂の空間電荷分布
への影響を示した。オクテンコモノマーで製造された比較実施例7は、示されたポリマー
改質剤およびイオンスカベンジャーのレベルでは、空間電荷分布の評価基準を満たさなか
った。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】図1は、+20kV/mmにおける24時間後の、PEA空間電荷測定を記載する。
【図2】図2は、−20kV/mmにおける24時間後の、PEA空間電荷測定を記載する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)エチレン/αオレフィンコポリマー類、および、
(ii)エチレン/プロピレンコポリマーおよびエチレン/スチレンコポリマー、およ
びそれらの混合物からなる群より選択される、無極性、低結晶性エチレンコポリマー類、
からなる群より選択される、密度が約0.900グラム/立方センチメートルより低く
、メルトインデックスが約0.5から約10グラム/10分であり、結晶化度が約10パ
ーセントよりも低く、および、触媒残渣が約1000ppmより低い、少なくとも1つの
エチレンコポリマー、
(b)極性ポリマー改質剤を含まないブレンドから製造される絶縁体と比較して、高電
界において、促進された電界の導電性と、促進された空間電荷の漏洩を有するブレンドで
製造された絶縁体を提供するのに有効な量の、少なくとも1つの極性ポリマー改質剤、な
らびに、
(c)イオンスカベンジャーを含まないブレンドから製造された絶縁体と比較して、イ
オン移動度を減少させるのに有効な量の、少なくとも1つのイオンスカベンジャー、
のブレンドを含む、または、そのようなブレンドより製造された、高電圧直流ケーブル絶
縁体であり、
前記エチレンコポリマー、前記極性ポリマー改質剤、および前記イオンスカベンジャー
は、正または負どちらかの20kV/mmを適用した24時間後に、パルス電気音響法に
よって測定した電荷密度が2クーロン/mm3よりも低い前記ケーブル絶縁体を提供する
量である、高電圧直流ケーブル絶縁体。
【請求項2】
(a)密度が約0.900グラム/立方センチメートルより低く、メルトインデックス
が約0.5から約10グラム/10分であり、結晶化度が約10パーセントよりも低く、
および、触媒残渣が約1000ppmより低い、少なくとも1つのエチレン/αオレフィ
ンコポリマー、
(b)約0.1から約15重量パーセントの、少なくとも1つの極性成分を有する、少
なくとも1つの極性ポリマー改質剤、および、
(c)約0.05から約0.5重量パーセントの、少なくとも1つのキレート剤を有す
る、少なくとも1つのイオンスカベンジャー、
のブレンドを含む、または、そのようなブレンドより製造された、高電圧直流ケーブル
絶縁体であり、
前記エチレン/αオレフィンコポリマー、前記極性ポリマー改質剤、および前記イオン
スカベンジャーは、正または負どちらかの20kV/mmを適用した24時間後に、パル
ス電気音響法によって測定した電荷密度が2クーロン/mm3よりも低い前記ケーブル絶
縁体を提供する量である、高電圧直流ケーブル絶縁体。
【請求項3】
(a)前記極性ポリマー改質剤が、(i)ヒドロキシル、カルボキシル、スチレンから
なる群より選択される少なくとも1つの側基を有する、密度が0.900グラム/立方セ
ンチメートルより低いポリマー、(ii)密度が0.900グラム/立方センチメートル
より低く、無水マレイン酸、酢酸ビニルまたはアクリル酸ビニルの残基である、少なくと
も1つの側基を有するポリマー、(iii)ポリラクトン樹脂、および、(iv)これら
の混合物、からなる群より選択され、および、
(b)前記イオンスカベンジャーが少なくとも1つのキレート基を有する、請求項1ま
たは2の高電圧直流絶縁体。
【請求項4】
前記エチレンコポリマーが架橋されている、請求項1〜3のいずれかの、高電圧直流絶
縁体。
【請求項5】
(a)電気導体、ならびに、
(b)(i)エチレン/プロピレンコポリマーおよびエチレン/スチレンコポリマー、
およびそれらの混合物からなる群より選択される、少なくとも1つの無極性、低結晶性エ
チレンコポリマーであり、前記エチレンコポリマーは、密度が約0.900グラム/立方
センチメートルより低く、メルトインデックスが約0.5から約10グラム/10分であ
り、結晶化度が約10パーセントよりも低く、および、触媒残渣が約1000ppmより
低く、
(ii)極性ポリマー改質剤を含まないブレンドから製造される絶縁体と比較して、高
電界において、促進された電界の導電性と、促進された空間電荷の漏洩を有するブレンド
で製造された絶縁体を提供するのに有効な量の、少なくとも1つの極性成分を有する、少
なくとも1つの極性ポリマー改質剤、ならびに、
(iii)イオンスカベンジャーを含まないブレンドから製造された絶縁体と比較して
、イオン移動度を減少させるのに有効な量の、少なくとも1つのキレート剤を有する、少
なくとも1つのイオンスカベンジャー、
のブレンドを含む、または、そのようなブレンドより製造された、ケーブル絶縁体を含
む、高電圧直流ケーブルであり、
前記エチレンコポリマー、前記極性ポリマー改質剤、および前記イオンスカベンジャー
は、正または負どちらかの20kV/mmを適用した24時間後に、パルス電気音響法に
よって測定した電荷密度が2クーロン/mm3 よりも低い前記ケーブル絶縁体を提供する
量である、高電圧直流ケーブル。
【請求項6】
前記エチレンコポリマーが架橋されている、請求項5に記載の高電圧直流ケーブル。
【請求項7】
正または負どちらかの20kV/mmを適用した24時間後に、パルス電気音響法によ
って測定した電荷密度が2クーロン/mm3よりも低いケーブル絶縁体を提供する方法で
あり、前記方法が、
(a)(i)密度が約0.900グラム/立方センチメートルより低く、メルトインデ
ックスが約0.5から約10グラム/10分であり、結晶化度が約10パーセントよりも
低く、および、触媒残渣が約1000ppmより低い、少なくとも1つのエチレン/αオ
レフィンコポリマー、
(ii)約0.1から約15重量パーセントの、少なくとも1つの極性成分を有する少
なくとも1つの極性ポリマー改質剤、および、
(iii)約0.05から約0.5重量パーセントの、少なくとも1つのキレート剤を
有する少なくとも1つのイオンスカベンジャー、を混合し、
前記エチレン/αオレフィンコポリマー、前記極性ポリマー改質剤、および前記イオン
スカベンジャーは、正または負どちらかの20kV/mmを適用した24時間後に、パル
ス電気音響法によって測定した電荷密度が2クーロン/mm3よりも低い前記ケーブル絶
縁体を提供する量である、方法。
【請求項8】
(a)(i)エチレン/αオレフィンコポリマー類、および、
(ii)エチレン/プロピレンコポリマーおよびエチレン/スチレンコポリマー、およ
びそれらの混合物からなる群より選択される、無極性、低結晶性エチレンコポリマー類、
からなる群より選択される、密度が約0.900グラム/立方センチメートルより低く
、メルトインデックスが約0.5から約10グラム/10分であり、結晶化度が約10パ
ーセントよりも低く、および、触媒残渣が約1000ppmより低い、少なくとも1つの
エチレンコポリマー、
(b)低レベルのイオン性化学種を有するカーボンブラック、
(c)極性ポリマー改質剤を含まないブレンドから製造される半導電性遮蔽体と比較し
て、高電界において、促進された電界の導電性と、促進された空間電荷の漏洩を有するブ
レンドで製造された半導電性遮蔽体を提供するのに有効な量の、少なくとも1つの極性ポ
リマー改質剤、ならびに、
(d)イオンスカベンジャーを含まないブレンドから製造された半導電性遮蔽体と比較
して、イオン移動度を減少させるのに有効な量の、少なくとも1つのイオンスカベンジャ
ー、
のブレンドを含む、または、そのようなブレンドより製造された、高電圧直流ケーブル
半導電性遮蔽体。
【請求項9】
(a)前記極性ポリマー改質剤が、(i)ヒドロキシル、カルボキシル、スチレニック
からなる群より選択される少なくとも1つの側基を有する、密度が0.900グラム/立
方センチメートルより低いポリマー、(ii)密度が0.900グラム/立方センチメー
トルより低く、無水マレイン酸、酢酸ビニルまたはアクリル酸ビニルの残基である、少な
くとも1つの側基を有するポリマー、(iii)ポリラクトン樹脂、および、(iv)こ
れらの混合物、からなる群より選択され、および、
(b)前記イオンスカベンジャーが少なくとも1つのキレート基を有する、請求項8の
高電圧直流半導電性遮蔽体。
【請求項10】
前記エチレンコポリマーが架橋されている、請求項8または9の高電圧直流半導電性遮
蔽体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−9436(P2012−9436A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137162(P2011−137162)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【分割の表示】特願2004−543302(P2004−543302)の分割
【原出願日】平成15年9月16日(2003.9.16)
【出願人】(591123001)ユニオン カーバイド ケミカルズ アンド プラスティックス テクノロジー エルエルシー (85)
【Fターム(参考)】