説明

高電圧電気絶縁部品用液状シリコーンゴム組成物

【課題】引張り永久歪みが小さく、かつ引張り強度等の機械的強度にも優れ、さらに良好な耐トラッキング性を有する高電圧電気絶縁硬化物を与える耐トラッキング性シリコーンゴム組成物を提供する。
【解決手段】
(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100重量部に対し、(B)ビニル基含有有機ケイ素化合物で処理された、比表面積が50m2/g以上の乾式シリカ5〜100重量部、(C)ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体5〜100重量部、(D)硬化剤として白金又は白金化合物:(A)成分及び(C)成分の合計に対して白金原子として1〜1000ppm、(E)トリアゾールまたはその誘導体:(A)成分及び(C)成分の合計に対して1〜10000ppmを含み、(B)成分由来のビニル基量が組成物の総ビニル基量のうち40モル%以上であり、組成物中のケイ素原子に結合する水素原子のモル数とケイ素原子に結合するアルケニル基のモル数の比が3.0〜10.0の範囲であることを特徴とするシリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力ケーブルなどの電力用途部品に用いられる液状シリコーンゴム組成物に係わり、さらには、電力ケーブル同士が接続された中間接続部や、電力ケーブル端末と端子金具が接続された終端接続部などの電力ケーブルの接続部に用いられる高電圧電気絶縁部品用の液状シリコーンゴム組成物及びこれを用いた電力ケーブルなどの電力用途部品に関するものである。
特に、電力ケーブルのコールドシュリンク接続工法で重要となる引張り永久歪み特性に極めて優れ、かつ、高い耐トラッキング特性を有して高電圧電気絶縁性に優れ、さらに、電力用途部品として要求される機械的特性に優れたシリコーンゴム硬化物を与える液状シリコーンゴム組成物及びこれを用いた電力ケーブルなどの電力用途部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコーンゴムは耐熱性、電気特性、耐候性等が非常に優れているために電力ケーブルの接続部に電線被覆用ケーブルアクセサリーなどの電力用途部品として使用されている。
特に高電圧で使用されるHVI(High Voltage Insulator)被覆材料には絶縁性の高いシリコーンゴムが使用され、この高電圧ケーブルの分岐・接続を施工する際、あらかじめ拡径したシリコーンゴム絶縁材料に分岐・接続する導体を挿入し,セパレータを引き抜いて収縮させるコールドシュリンク接続工法が頻繁に使われている。
【0003】
この時、シリコーンゴムを絶縁材料としてケーブルアクセサリーに使用するためには、高電圧に耐えうる耐トラッキング性を有して高電圧電気絶縁性に優れることが必要であり、さらに、コールドシュリンク接続工法に適用させるためには、拡径させたゴムがセパレータを引き抜いた時に拡径する前の元の大きさ近くまで縮んで導体にしっかり密着し続けることが重要である。
すなわち、耐トラッキング性を有して高電圧電気絶縁性に優れるとともに、良好な引張り永久歪み特性を有することが求められていた。加えて、これらの特性を両立するにあたり、電力用途部品として必要な機械的特性を損なわないことも重要である。
【0004】
従来、高電圧用耐久材料という観点から耐トラッキング性を向上させるために、硬化物表面へブリードするような低粘度のジメチルポリシロキサンやジメチルポリシロキサンの両末端のケイ素原子に直接結合する水酸基やアルコキシル基などを持つものを配合したものがある(特許文献1、特許文献2、特許文献3)。
また、炭酸亜鉛や水酸化アルミニウム等の無機質充填剤を加えたもの(特許文献4、特許文献5)などがあり、また無機充填剤を含まないものとしてシリコーンレジンを含有させたものがある(特許文献6)。
さらにはトリアゾール系化合物などの含窒素有機化合物を白金触媒や無機充填剤と併用して耐トラッキング性の向上を狙ったもの(特許文献7)がある。
確かにこれらの技術を用いることで耐トラッキング性を向上させることができるが、引張永久ひずみ特性に対しては何れの方法もネガティブな結果をもたらし、良好な耐トラッキング性と優れた低引張永久ひずみ特性を両立させるものではない。
【0005】
優れた耐トラッキング性と低引張り永久歪みを両立させた従来技術としては含窒素有機化合物を配合し、低引張り永久歪み特性を持たせつつ、3.5KVの耐トラッキング試験に適合させているものがあり、さらにはフェニル基含有シリコーンオイルを配合することで4.5KVの耐トラッキング試験に適合させることが提案されているものの、電力部品を構成する部材としての厳しい品質要求を満たすものではない(特許文献8)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−57574号公報
【特許文献2】特開平9−324123号公報
【特許文献3】特開平11−111087号公報
【特許文献4】特開平9−320342号公報
【特許文献5】特開平4−209655号公報
【特許文献6】特開平11−12470号公報
【特許文献7】特開平9−316336号公報
【特許文献8】特開2004−18701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜7に示した従来技術には次のような課題がある。すなわち、ゴム硬化物の表面にブリードするようなオイルを含むものはそれだけでも機械的特性が落ちる傾向があり、炭酸亜鉛や水酸化アルミニウムなどの無機充填剤を配合する場合も同様にコールドシュリンク工法で求められるような強度が得られない。さらに、無機充填剤を高充填すると粘度が高くなり、射出成型用材料や注入成型用材料といった流動性を求める用途には使用できないという問題点がある。
【0008】
また、シリコーンレジンを含むものも機械的強度に劣り、コールドシュリンク法には用いることができない。
【0009】
さらにフェニル基含有シリコーンオイルを含むと機械的強度が落ちる上、シリコーン生ゴムをベースとしているので、射出成型用材料や注入成型用材料といった流動性を求める用途には使用できない。加えて、すべての実施例において酸化金属化合物を配合しているため、結局はコールドシュリンク工法に必要な機械特性を得ることができていない。
またフェニル基を含有しないものは4.5kVのトラッキング試験をパスすることができないなどの問題点があるだけでなく、引張永久ひずみ特性においても昨今の厳しい品質要求を満たすものではない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであり、引張り永久歪みが極めて小さいため、電力ケーブルのコールドシュリンク接続工法に適しており、同時に電力用途部品として必要な引張強度等の機械的特性や、良好な耐トラッキング性を有して高電圧電気絶縁性に優れる硬化物を与える液状シリコーンゴム組成物及びこれを用いた電力用途部品を提供することを目的とする。
【0011】
即ち本発明は、
(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100重量部に対し、
(B)ビニル基含有有機ケイ素化合物で処理された、比表面積が50m2/g以上の乾式シリカ5〜100重量部
(C)ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体5〜100重量部
(D)硬化剤として白金又は白金化合物:(A)成分及び(C)成分の合計に対して白金原子として1〜1000ppm
(E)トリアゾールまたはその誘導体:(A)成分及び(C)成分の合計に対して1〜10000ppm
を含み、(B)成分由来のビニル基量が組成物の総ビニル基量のうち40モル%以上であり、組成物中のケイ素原子に結合する水素原子のモル数とケイ素原子に結合するアルケニル基のモル数の比が3.0〜10.0の範囲であることを特徴とするシリコーンゴム組成物である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
(A)成分に使用される分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサンは粘度100〜1000000cStの範囲であるものが好ましく、より好ましくは1000〜100000cStのものである。このとき指定範囲の粘度のものを単独、もしくはブレンドして使用しても良い。また、ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体を併用添加してもよい。
【0014】
(B)成分に使用される乾式シリカは比表面積が50m2/g以上の乾式シリカであり、好ましくは200m2/g以上の乾式シリカである。乾式シリカはヘキサメチルシラザンやトリメチルクロロシランなどにより表面処理されたものでも良い。
【0015】
本発明の特徴は、かかる比表面積が50m2/g以上の乾式シリカをビニル基含有有機ケイ素化合物で処理することにより、乾式シリカにビニル基を担持させたものを使用することにある。
【0016】
ここで、ビニル基含有有機ケイ素化合物などによる乾式シリカの表面処理は適度な硬さと機械的な強度を向上させる方法(特開2010−13495号公報)として一般的に知られている。
【0017】
ビニル基含有有機ケイ素化合物としては、ジビニルテトラメチルジシラザンの他、ビニル基含有クロロシラン、ビニル基含有オルガノシロキサンオリゴマー、ビニル基含有分岐状オルガノポリシロキサン等があり、乾式シリカ表面のシラノールと反応するビニル基含有表面処理剤であれば良い。
【0018】
(B)成分の調製法としては、予めビニル基含有有機ケイ素化合物にて乾式シリカを表面処理しても良く、材料調製の際、即ちシリコーンコンパウンド調製の際に(A)成分と共にビニル基含有有機ケイ素化合物及び乾式シリカを混合することにより調製しても良い。
【0019】
このときの乾式シリカへのビニル基の付与率はビニル基含有有機ケイ素化合物原料に含有されているビニル基と同等のビニル基が付与されており、29Si NMRなどで確認できる。
【0020】
ここで、(B)成分の配合量は、(A)成分100重量部に対して5〜100重量部であり、また、本発明の目的を達成するためには、(B)成分由来のビニル基量が組成物の総ビニル基量のうち40モル%以上となることが必要となる。
【0021】
(B)成分由来のビニル基量が組成物の総ビニル基量のうち40モル%未満であると、引張り永久歪み、耐トラッキング性ともに良好なものが得られない。
【0022】
(C)成分として配合されるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体はアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとの付加反応により、これを架橋し組成物をゴム弾性体とするため、1分子当たり2個以上、好ましくは3個以上のケイ素原子に直接結合した水素原子を有するものである。水素原子以外のケイ素原子に結合する有機基は、アルキル基、フェニル基及び3,3,3 −トリフルオロプロピル基からなる群から選ばれる基であるが、合成が容易である点から、メチル基が最も好ましい。
このジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体としては、シロキサン骨格が直鎖状、分岐状もしくは環状のいずれかであってもよい。また、このジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体は、25℃における粘度が10〜1000センチポイズ、特に20〜500センチポイズであることが好ましい。
【0023】
(C)成分の配合量は(A)成分100重量部に対して5〜100重量部である。特に好ましくは5〜50重量部である。このとき、(A)成分および(B)成分が含有するケイ素原子に結合するアルケニル基に対し(C)成分が含有するケイ素原子に結合する水素原子のモル数の比が3.0〜10.0、好ましくは3.0〜8.0、より好ましくは3.0〜6.0である。
これは(C)成分を(A),(B)成分由来のアルケニル基に対し過剰量配合(モル比)することで、シリカの表面にあらかじめ担持させていたビニル基と絶縁体であるジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体とを不足なく結合させる意図がある。
これは通電の原因となるシリカ表面を絶縁体材料で保護することによって耐トラッキング性の向上を図っている。(C)成分の配合量が5重量部に満たなかったり、このモル比が3.0未満であると耐トラッキング性が満足できなく、また(C)成分の配合量が100重量部よりも多かったり、このモル比が10.0より大きいと機械特性に悪影響が出る。
【0024】
また、総ビニル基量については特に規定はしないが、ゴム硬度などの特性により、適宜選択できるが、少なくともゴムとしての機能を持たせるように調整する。
【0025】
(D)成分として配合される白金系触媒は、ヒドロシリル化触媒であり、ここで用いる白金系触媒としてラモローの触媒(白金−オクタノール錯体、米国特許第473377号明細書)、アシュピーの触媒(白金−ビニル基含有環状シロキサン錯体、米国特許第4288345号明細書)、カールステットの触媒(白金−ビニル基含有ジシロキサン錯体、米国特許第3814730 号明細書)などが例示される。
本発明における白金系触媒の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計に対して白金として1〜1000ppm、好ましくは5〜100ppmの範囲で使用される。必要に応じて1−エチニル−1−シクロヘキサノールなどの付加反応抑制剤を適宜加えることができる。
【0026】
(E)成分としてトリアゾールまたはその誘導体が用いられる。
シリコーンゴム組成物へのトリアゾールまたはその誘導体の添加は低圧縮歪み効果(特開平2−242854)、難燃性付与の効果(特開平4−33961)、防カビ性の効果(特開平9−25410)などが知られている。
また、トリアゾールまたはその誘導体の耐トラッキング性への効果も公知(特開平8−152977号公報、特開2004−18701号公報)である。
しかしながら、このように付加反応硬化型の液状シリコーンゴムにトリアゾールまたはその誘導体を含有させた時、コールドシュリンク接続工法で重要な特性となる引張永久歪み特性が極めて悪化することはあまり知られておらず、優れた耐トラッキング性と低引張り永久歪みを両立させることは大きな課題となっていた。
ここで、トリアゾールまたはその誘導体の具体例としては、ベンゾトリアゾール、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾールおよびこれらの誘導体がある。
具体的には、ベンゾトリアゾール、1−メチルベンゾトリアゾール、5,6−ジメチルベンゾトリアゾール、2−フェニルベンゾトリアゾール、1−メチル−1,2,3−トリアゾール、1−フェニル−1,2,3−トリアゾール、4−メチル−2−フェニル−1,2,3−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1,3−ジフェニル−1,2,4−トリアゾールが例示される。トリアゾールまたはその誘導体は、1種を単独で使用してもよく2種以上を混合して使用してもよい。
本発明においては、トリアゾールまたはその誘導体のなかでも、1,2,4−トリアゾールの使用が好ましい。
【0027】
この(E)成分の配合量は、(A)成分及び(C)成分の合計に対して1〜10000ppm、好ましくは1〜1000ppmである。さらに好ましくは10〜500ppmである。
(E)成分が1ppm以下であると、耐トラッキング性が低下し、10000ppm以上であると本発明の目的とする低引張り永久歪みに悪影響が出るばかりか、硬化阻害を起こして十分に硬化しないことがある。
【0028】
この(E)成分は、一般に融点が高く(例えば、1,2,4−トリアゾールの融点は120〜121℃である。)、常温で固体であるため、水;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールのようなアルコール類、アセトンのようなケトン類等の溶媒に溶解させて使用することが好ましい。溶媒に溶解させて使用することにより、硬化物中に均一に分散させることが可能となり、より大きな効果を得ることができる。溶媒としては、なかでも、水、メタノール、エタノールが好ましい。
なお、これらの溶媒は、組成物を硬化させる前に、加熱および/または減圧により除去することが好ましい。この場合の加熱温度としては100〜200℃が好ましい。また、加熱減圧する場合は50kPa以下が好ましく、30kPa以下がより好ましい。
【0029】
このように、(B)成分由来のビニル基量が組成物の総ビニル基量のうち40%以上であり、ケイ素原子に結合する水素原子のモル数とケイ素原子に結合するアルケニル基のモル数、即ちSiH/アルケニル基(モル比)が3.0〜10.0までの範囲とすることで耐トラッキング性に優れた低引張永久ひずみを有する高電圧電気絶縁部品用の液状シリコーンゴムを得ることができ、さらに(E)成分のトリアゾールまたはその誘導体を併用しても引張永久ひずみ特性を悪化させることなく、高い耐トラッキング性を持つことが可能となる。
【0030】
なお、本発明の高電圧電気絶縁部品用液状シリコーンゴムにおいては、必要に応じて、従来からシリコーンゴム組成物に用いられている加工助剤、耐熱添加剤、金型離型剤、着色剤、無機および有機充填剤などを本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。
【実施例】
【0031】
実施例1
(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度50,000cStのジメチルポリシロキサン100重量部に対して、(B)比表面積300m2/gのヒュームドシリカを36重量部、(E)1,2,4−トリアゾール0.0088重量部を水2.5重量部に溶解した水溶液、ヒュームドシリカの表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン7.6重量部とジビニルテトラメチルジシラザン0.44重量部を室温で1時間混合し、150℃に加熱して1時間加熱混合し、その後、加熱減圧にて1.5時間ディゾルバーで混合し、室温まで冷却してコンパウンド1を得た。
そして、(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度50,000cStのジメチルポリシロキサン100重量部を含むこのコンパウンド1に、(CH32SiO単位86.21mol%と(CH3)(CH2=CH)SiO単位13.79mol%とからなり、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体((A)成分)1.3重量部、(CH32SiH1/2単位50mol%およびSiO2単位50mol%からなり分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体((C)成分)8.5重量部、白金触媒として白金−オクタノール錯体溶液((D)成分)(白金含有量4.0%)を白金原子として20ppm、硬化抑制剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.01重量部加えて混合した。
混合した組成物を2mm厚の金型に組成物を流し込み、温度170℃で10分プレス硬化させ(1次加硫)、2mm厚のゴムシートを得た。その後、オーブンにて200℃、4時間の条件で2次加硫を行った。
【0032】
実施例2
実施例1で調製した(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度50,000cStのジメチルポリシロキサン100重量部を含むコンパウンド1に、(CH32SiH1/2単位50mol%およびSiO2単位50mol%からなり分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体((C)成分)10.2重量部、白金触媒として白金−オクタノール錯体溶液((D)成分)(白金含有量4.0%)を白金原子として20ppm、硬化抑制剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.01重量部加えて混合した。
混合した組成物を2mm厚の金型に組成物を流し込み、温度170℃で10分プレス硬化させ(1次加硫)、2mm厚のゴムシートを得た。その後、オーブンにて200℃、4時間の条件で2次加硫を行った。
【0033】
実施例3
実施例1で調製した(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度50,000cStのジメチルポリシロキサン100重量部を含むコンパウンド1に、(CH32SiO単位86.21mol%と(CH3)(CH2=CH)SiO単位13.79mol%とからなり、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体((A)成分)1.3重量部、(CH32SiH1/2単位50mol%およびSiO2単位50mol%からなり分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体((C)成分)10.2重量部、白金触媒として白金−オクタノール錯体溶液((D)成分)(白金含有量4.0%)を白金原子として20ppm、硬化抑制剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.01重量部加えて混合した。
混合した組成物を2mm厚の金型に組成物を流し込み、温度170℃で10分プレス硬化させ(1次加硫)、2mm厚のゴムシートを得た。その後、オーブンにて200℃、4時間の条件で2次加硫を行った。
【0034】
実施例4
実施例1で調製した(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度50,000cStのジメチルポリシロキサン100重量部を含むコンパウンド1に、(CH32SiH1/2単位50mol%およびSiO2単位50mol%からなり分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体((C)成分)8.5重量部、白金触媒として白金−オクタノール錯体溶液((D)成分)(白金含有量4.0%)を白金原子として20ppm、硬化抑制剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.01重量部加えて混合した。
混合した組成物を2mm厚の金型に組成物を流し込み、温度170℃で10分プレス硬化させ(1次加硫)、2mm厚のゴムシートを得た。その後、オーブンにて200℃、4時間の条件で2次加硫を行った。
【0035】
比較例1(総ビニル基量のうち、フィラーが保持するビニル基量の割合が満たされていない例)
(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度50,000cStのジメチルポリシロキサン100重量部、(B)比表面積300m2/gのヒュームドシリカを36重量部、(E)1,2,4−トリアゾール0.0088重量部を水2.5重量部に溶解した水溶液、ヒュームドシリカの表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン7.6重量部とジビニルテトラメチルジシラザン0.17重量部を室温で1時間混合し、150℃に加熱して1時間加熱混合し、その後、加熱減圧にて1.5時間ディゾルバーで混合し、室温まで冷却してコンパウンド2を得た。
この(A)成分100重量部を含むコンパウンド2に、(CH32SiO単位86.21mol%と(CH3)(CH2=CH)SiO単位13.79mol%とからなり、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体((A)成分)2.8重量部、((CH32SiH1/2単位50mol%およびSiO2単位50mol%からなり分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体((C)成分)4.2重量部、白金触媒として白金−オクタノール錯体溶液((D)成分)(白金含有量4.0%)を白金原子として20ppm、硬化抑制剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.01重量部加えて混合した。
混合した組成物を2mm厚の金型に組成物を流し込み、温度170℃で10分プレス硬化させ(1次加硫)、2mm厚のゴムシートを得た。その後、オーブンにて200℃、4時間の条件で2次加硫を行った。
【0036】
比較例2(モル比が満たされていない例)
実施例1と同様に調製した(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度50,000cStのジメチルポリシロキサン100重量部を含むコンパウンド1に、(CH32SiO単位86.21mol%と(CH3)(CH2=CH)SiO単位13.79mol%とからなり、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体((A)成分)1.3重量部、((CH32SiH1/2単位50mol%およびSiO2単位50mol%からなり分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体((C)成分)4.2重量部、白金触媒として白金−オクタノール錯体溶液((D)成分)(白金含有量4.0%)を白金原子として20ppm、硬化抑制剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.01重量部加えて混合した。
混合した組成物を2mm厚の金型に組成物を流し込み、温度170℃で10分プレス硬化させ(1次加硫)、2mm厚のゴムシートを得た。その後、オーブンにて200℃、4時間の条件で2次加硫を行った。
【0037】
比較例3 (フィラーが保持するビニル基量及びモル比が共に満たされていない例)
比較例1と同様に調製した(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度50,000cStのジメチルポリシロキサン100重量部を含むコンパウンド2に、(CH32SiO単位86.21mol%と(CH3)(CH2=CH)SiO単位13.79mol%とからなり、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体((A)成分)2.8重量部、((CH32SiH1/2単位50mol%およびSiO2単位50mol%からなり分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体((C)成分)8.5重量部、白金触媒として白金−オクタノール錯体溶液((D)成分)(白金含有量4.0%)を白金原子として20ppm、硬化抑制剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.01重量部加えて混合した。
混合した組成物を2mm厚の金型に組成物を流し込み、温度170℃で10分プレス硬化させ(1次加硫)、2mm厚のゴムシートを得た。その後、オーブンにて200℃、4時間の条件で2次加硫を行った。
【0038】
比較例4(フィラーに全くビニル基を保持させていない例)
(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度50,000cStのジメチルポリシロキサン100重量部、(B)比表面積300m2/gのヒュームドシリカを36重量部、(E)1,2,4−トリアゾール0.0088重量部を水2.5重量部に溶解した水溶液、ヒュームドシリカの表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン7.6重量部を室温で1時間混合し、150℃に加熱して1時間加熱混合し、その後、加熱減圧にて1.5時間ディゾルバーで混合し、室温まで冷却してコンパウンド3を得た。
この(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度50,000cStのジメチルポリシロキサン100重量部を含むコンパウンド3に、(CH32SiO単位86.21mol%と(CH3)(CH2=CH)SiO単位13.79mol%とからなり、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体((A)成分)5.6重量部、((CH32SiH1/2単位50mol%およびSiO2単位50mol%からなり分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体((C)成分)8.5重量部、白金触媒として白金−オクタノール錯体溶液((D)成分)(白金含有量4.0%)を白金原子として20ppm、硬化抑制剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.01重量部加えて混合した。
混合した組成物を2mm厚の金型に組成物を流し込み、温度170℃で10分プレス硬化させ(1次加硫)、2mm厚のゴムシートを得た。その後、オーブンにて200℃、4時間の条件で2次加硫を行った。
【0039】
比較例5(1,2,4−トリアゾールを多量に含んでいる例)
(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度50,000cStのジメチルポリシロキサン100重量部、(B)比表面積300m2/gのヒュームドシリカを36重量部、(E)1,2,4−トリアゾール2.24重量部を水2.5重量部に溶解した水溶液、ヒュームドシリカの表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン7.6重量部とジビニルテトラメチルジシラザン0.44重量部を室温で1時間混合し、150℃に加熱して1時間加熱混合し、その後、加熱減圧にて1.5時間ディゾルバーで混合し、室温まで冷却してコンパウンド4を得た。
そして、(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度50,000cStのジメチルポリシロキサン100重量部を含むコンパウンド4に、(CH32SiO単位86.21mol%と(CH3)(CH2=CH)SiO単位13.79mol%とからなり、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体((A)成分)1.3重量部、(CH32SiH1/2単位50mol%およびSiO2単位50mol%からなり分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体((C)成分)8.5重量部、白金触媒として白金−オクタノール錯体溶液((D)成分)(白金含有量4.0%)を白金原子として20ppm、硬化抑制剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.01重量部加えて混合した。
混合した組成物を2mm厚の金型に組成物を流し込み、温度170℃で10分プレス硬化させ(1次加硫)、2mm厚のゴムシートを得た。その後、オーブンにて200℃、4時間の条件で2次加硫を行った。
【0040】
比較例6(1,2,4−トリアゾールを含んでいない例)
(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度50,000cStのジメチルポリシロキサン100重量部、(B)比表面積300m2/gのヒュームドシリカを36重量部、水2.5重量部、表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン7.6重量部とジビニルテトラメチルジシラザン0.44重量部を室温で1時間混合し、150℃に加熱して1時間加熱混合し、その後、加熱減圧にて1.5時間ディゾルバーで混合し、室温まで冷却してコンパウンド5を得た。
そして、(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖された粘度50,000cStのジメチルポリシロキサン100重量部を含むコンパウンド5に、(CH32SiO単位86.21mol%と(CH3)(CH2=CH)SiO単位13.79mol%とからなり、分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体((A)成分)1.3重量部、(CH32SiH1/2単位50mol%およびSiO2単位50mol%からなり分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体((C)成分)8.5重量部、白金触媒として白金−オクタノール錯体溶液((D)成分)(白金含有量4.0%)を白金原子として20ppm、硬化抑制剤として1−エチニル−1−シクロヘキサノール0.01重量部加えて混合した。
混合した組成物を2mm厚の金型に組成物を流し込み、温度170℃で10分プレス硬化させ(1次加硫)、2mm厚のゴムシートを得た。その後、オーブンにて200℃、4時間の条件で2次加硫を行った。
【0041】
これらのゴムシートについて、以下の評価を行った。結果を表1に示す。
[機械特性]
JIS K6249に準じた。
【0042】
[トラッキング試験]
IEC Publ.587(1984)法に規定されている傾斜平板法耐トラッキング性試験方法(Method1)に準じて合否の判定を行った。
即ち、6mm厚のシリコーンゴムシートを用い、荷電圧4.5kV、試験時間6時間、試験液流量0.6 ml/minにて試験片にトラックが発生し、導通又は貫通(破壊)したものを不合格、トラックの発生しないものを合格とした。
【0043】
[引張り永久歪み試験]
厚さ2mm、幅10mm、長さ90mmの試験片に両端20mm空間をとり、中央に標線間距離50mmを取る。試験片に与える歪みは200%として、治具で固定し、それぞれ50℃−48時間、90℃−24時間の条件でオーブン加熱処理した。
加熱処理後、伸張したまま30分25℃で放置して、治具からはずし、30分放置後に標線間距離を測定した。引張り永久歪み(%)の計算方法は(引張り後標線間距離−引張り前標線間距離)/(伸張させた距離−引張り後標線間距離)とした。
【0044】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100重量部に対し、
(B)ビニル基含有有機ケイ素化合物で処理された、比表面積が50m2/g以上の乾式シリカ5〜100重量部
(C)ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体5〜100重量部
(D)硬化剤として白金又は白金化合物:(A)成分及び(C)成分の合計に対して白金原子として1〜1000ppm
(E)トリアゾールまたはその誘導体:(A)成分及び(C)成分の合計に対して1〜10000ppm
を含み、(B)成分由来のビニル基量が組成物の総ビニル基量のうち40モル%以上であり、組成物中のケイ素原子に結合する水素原子のモル数とケイ素原子に結合するアルケニル基のモル数の比が3.0〜10.0の範囲であることを特徴とするシリコーンゴム組成物。

【公開番号】特開2012−92305(P2012−92305A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202046(P2011−202046)
【出願日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【特許番号】特許第4917184号(P4917184)
【特許公報発行日】平成24年4月18日(2012.4.18)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】