説明

高電子移動度トランジスタ(HEMT)

【課題】高周波特性を改善する。
【解決手段】III族窒化物系高電子移動度トランジスタ(HEMT)20は、GaNバッファ層26を備えており、Ganバッファ層26上にAlGa1−yN(y=1又は≒1)層28がある。AlGa1−xN(0≦x≦0.5)バリア層30が、GaNバッファ層26の反対側でAlGa1−yN層28上にあり、該層28のAl濃度は、バリア層30よりも高い。GaNバッファ層26とAlGa1−yN層28との間の界面に2DEG38が形成されている。バリア層30上に、ソース、ドレイン、及びゲート・コンタクト32、34、36が形成されている。また、AlGa1−yN層28の反対側において、バッファ層26に隣接する基板22も含み、GaNバッファ層26と基板22との間に、核生成層24を含むことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波ソリッド・ステート・トランジスタに関し、更に特定すれば、III
族窒化物系の高電子移動度トランジスタ(HEMT)に関する。
【背景技術】
【0002】
HEMTは、通常、シリコン(Si)又はガリウム砒素(GaAs)のような半導体材
料で製作される、一般的なソリッド・ステート・トランジスタの一種である。Siの欠点
の1つに、電子移動度が低く(約1450cm/V−s)、ソース抵抗が高くなること
があげられる。この抵抗は、Si系HEMTの高性能利得を低下させる虞れがある。[CR
C Press, The Electrical Engineering Handbook(電気設計ハンドブック, 第2版、Dorf
, p.994 (1997)]
GaAsを基礎とするHEMTは、民生用及び軍需用レーダ、セルラ用送受機、及び衛
星通信における信号増幅の標準となっている。GaAsは、Siよりも高い電子移動度(
約6000cm/V−s)及び低いソース抵抗を有するので、GaAs系デバイスは、
より高い周波数で機能することができる。しかしながら、GaAsのバンドギャップは比
較的小さく(常温において1.42eV)、降伏電圧も比較的低いため、GaAs系HE
MTは高周波数において高い電力を発生することができない。
【0003】
AlGaN/GaN半導体材料の製造における改良は、高周波、高温及び高電力用途用
のAlGaN/GaNの開発に関心が集中している。AlGaN/GaNは、大きなバン
ドギャップ、高いピーク及び飽和電子速度値を有する[B. Belmont, K. Kim及びM. Shur,
J.Appl.Phys. 74, 1818 (1993)]。AlGaN/GaN HEMTは、1013/cm
超において2DEGの面密度、及び比較的高い電子移動度(2018cm/Vsまで
)を有することができる[R. Gaska, J.W. Yang, A. Osinsky, Q. Chen, M.A. Khan, A.O
. Orlov, G.L. Snider 及びM.S. Shur, Appl. Phys.Lett., 72, 707 (1998)]。これらの
特性により、AlGaN/GaN HEMTは、高周波数において高い電力を得ることが
できる。
【0004】
AlGaN/GaN HEMTは、サファイア基板上に成長され、4.6W/mmの電
力密度、及び7.6Wの総電力を示している[Y.F. Wu et al., IEICE Trans.Electrons.
, E-82-C, 1895 (1999)]。更に最近になって、SiC上に成長させたAlGaN/Ga
N HEMTが、8GHzにおいて9.8W/mmの電力密度を示しており[Y.F. Wu, D
. Kaplnek, J.P.Ibbetson, P.Parikh, B.P. Keller及びU.K. Mishra, IEEE TransElectro
n.Dev., 48, 586 (2001)]、更に9GHzにおいて22.9の総出力電力を示している[
M. Micovic, A Kurdoghlian, P. Janke, P. Hashimoto, D.W.S. Wong, J.S. Moon, L. Mc
Cray 及びC. Nguyen, IEEE Trans. Electron.Dev., 48, 591 (2001)]。
【0005】
Khan他の米国特許第5,192,987号は、バッファ及び基板上に成長させたGaN
/AlGaN系HEMTを開示している。その他のAlGaN/GaN HEMT及び電
界効果トランジスタ(FET)も、Gaska et al. "High-Temperature Performance of Al
GaN/GaN HFET's on SiC Substrate" (SiC基板上のAlGaN/GaN HFETの
高温特性)IEEE Electron Device Lettters, Vol. 18, No, 10, 1997年10月、49
2頁、"DC and Microwave Performance of High Current AlGaN Heterostructure Field
Effect Transistors Grown on P-type SiC Substrates"(P型SiC基板上に成長させた
高電流AlGaNヘテロ構造電界効果トランジスタのDC及びマイクロ波特性)IEEE Ele
ctron Devices Letters, Vol. 19, No. 2、1998年2月、54頁に開示されている。
これらのデバイスの一部は、78ギガヘルツもの高さの利得帯域幅生成物(gain-bandwidt
h product)(f)[K. Chu et al. WOSCEMMAD, Monterey, CA (1998年2月)]、
及び10GHzにおいて2.84W/mmまでの高い電力密度を示している[G Sullivan
et al., "High Power 10-GHz Operation of AlGaN HFET's in Insulating SiC" (絶縁
性SiCにおけるAlGaN HFETの高電力10−GHz動作)IEEE Electron Devi
ce Letters, Vol. 19, No. 6, Page 198 (1998年6月)、及びWu et al., IEEE Ele
ctron Device Letters Volume 19, No. 2, 50頁(1998年2月)]。
【0006】
図1は、サファイア又は炭化珪素基板12に隣接するGaNバッファ層11と、基板1
2の反対側でGaNバッファ層11に隣接するAlGa1−xN(x≒0.1〜0.5
)層13を備えている典型的なAlGaN/GaN HEMT10を示す。核生成層14
を、基板12及びGaNバッファ層11の間に含ませると、これら2つの層間の格子不整
合を低減することができる。また、HEMT10は、ソース、ゲート、及びドレイン・コ
ンタクト15、16、17も含む。AlGa1−xNにおけるAl含有量が、圧電電荷
(piezoelectric charge)を生じ、GaN層との界面に蓄積して、二次元電子ガス(2DE
G)を形成する。AlGa1−xN層におけるAl含有量が増大すると、圧電電荷も増
大し、その結果HEMTの2DEG及びトランスコンダクタンスも増大するという効果が
ある。
【0007】
しかしながら、2DEGの移動度は一般に、界面の粗さ、ならびにGaN及びAl
1−xN層11、13間の界面における圧電散乱によって限定される。これは、界面付
近のAlGa1−xN層13における局在化ランダム性の結果である。
【0008】
AlGa1−yN(y=1又は≒1)層をAlGa1−xN層(x≒0.1〜0.
5)層13の代わりに用いることによって、ある種の利点を得ることができる。AlN(
y=1とした場合AlGa1−yN)とGaNとの間の2.4%の格子不整合の結果、
2つの層間の界面において最大可能圧電電荷が得られる。また、AlN層を用いると、2
DEG移動度を限定する可能性がある、これらの層間の圧電散乱が低減する。
【0009】
しかしながら、AlN及びGaN間に大きな格子不整合があると、AlN層の厚さを5
0Å未満にしなければならない。これよりも層が厚いと、デバイスには、そのオーミック
・コンタクトに伴う問題が生じる可能性があり、層における材料品質が低下し始め、デバ
イスの信頼性が低下し、物質の成長が一層困難となる。しかしながら、50Å以下のAl
N層を有するHEMTは、ゲート漏れを生ずる虞れが大きい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、AlN及びGaN間に大きな格子不整合があると、AlN層の厚さを5
0Å未満にしなければならない。これよりも層が厚いと、デバイスには、そのオーミック
・コンタクトに伴う問題が生じる可能性があり、層における材料品質が低下し初め、デバ
イスの信頼性が低下し、物質の成長が一層困難となる。しかしながら、50Å以下のAl
N層を有するHEMTは、ゲート漏れを生ずる虞れが大きいという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、好ましくはAlGaN/GaNで形成し、2DEGを改善したIII族窒化
物系HEMTの改良型を提供する。本発明にしたがって構成されたHEMTは、GaNバ
ッファ層を備えており、GaNバッファ層上にAlGa1−yN層がある。GaNバッ
ファ層の反対側において、AlGa1−xNバリア層がAlGa1−yN層内に含ま
れており、AlGa1−yN層のAl含有量は、AlGa1−xNバリア層よりも多
い。GaNバッファ層とAlGa1−yN層との間の界面に2DEGが形成されている
。好適なAlGa1−yN層では、y=1又はy≒1であり、好適なAlGa1−x
Nバリア層では、0≦x≦0.5である。
【0012】
また、HEMTは、AlGa1−xNバリア層に接触するソース、ドレイン、及びゲ
ート・コンタクトも有する。更に、HEMTは、サファイア、炭化珪素、窒化ガリウム、
及びシリコンからなる群からの材料で作られた基板上に形成することができる。この基板
は、AlGa1−yN層の反対側において、バッファ層に隣接して配置される。また、
HEMTは、そのGaN層と基板との間に核形成層も有することができる。
【0013】
GaN層上のHEMTのAlGa1−yN層は、2つの層の間の界面において、高い
圧電電荷を生成し、圧電散乱を低減する。AlGa1−yN層は、AlN及びGaN間
の高い格子不整合性のために、比較的薄くしなければならない。この薄いAlGa1−
N層上のAlGa1−xN層が、HEMTのゲート漏れを少なく抑える。
【0014】
本発明のこれらならびにその他の更なる特徴及び利点は、添付図面と共に以下の詳細な
説明を読むことによって、当業者には明白となるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図2は、本発明にしたがって構成したHEMT20の一実施形態を示す。これは、サフ
ァイア(Al)、炭化珪素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)、又はシリコン(
Si)のような、異なる材料で作ることができる基板22を備えている。好適な基板は、
炭化珪素の4Hプロトタイプである。3C、6H及び15Rプロトタイプを含むその他の
炭化珪素プロトタイプも仕様可能である。
【0016】
炭化珪素は、サファイアよりも、III族に対して結晶格子整合が遥かに密接であり、
その結果、III族窒化物膜の方が高品質である。また、炭化珪素の熱電導率は非常に高
いので、炭化珪素上のIII族窒化物デバイスの総出力電力は、基板の熱消散によって制
限されない(サファイア上に形成されるデバイスでは、場合によっては生ずることもある
)。また、炭化珪素基板が使用可能であると、デバイス分離及び寄生容量の低減がもたら
され、デバイスの製品化が可能となる。SiC基板は、ノースカロライナ、DurhamのCree
Research, Inc.,から入手可能であり、これらの生産方法は、米国特許第Re34,86
1号、第4,946,547号、及び第5,200,022号のような科学的文献に明記
されている。
【0017】
新規なHEMT20は、多くの異なる材料系を用いて製作することができるが、III
族窒化物系の材料系を用いて製作することが好ましい。III族窒化物とは、窒素と周期
表のIII族にある元素、多くの場合、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、及び
インディウム(In)との間で形成される半導体化合物のことを言う。この用語は、Al
GaNやAlInGaNのような三元化合物や三元性化合物も意味する。ウルツ鉱III
族窒化物における圧電分極(piezoelectric polarization)は、従来のIII−V族よびI
I−VI半導体化合物におけるよりも約10倍大きいことがわかっている。
【0018】
核生成層24を基板22上に含ませれば、基板22とHEMT20における次の層との
間の格子不整合を低減することができる。核生成層24の厚さは、約1000オングスト
ローム(Å)とするとよいが、他の厚さも用いることができる。これは、異なる半導体材
料で作ることができ、相応しい材料の1つにAlGa1−zN(0≦z≦1)がある。
これは、AlN(z=1とした場合のAlGa1−zN)が好ましい。
【0019】
GaN層26が、基板22の反対側において、核生成層24上に含まれている。GaN
層26の厚さは、約0〜5μmの範囲とするとよいが、他の厚さも用いることができる。
HEMT20の好適な実施形態の1つでは、GaN層26の厚さは2μmである。あるい
は、GaN層26をAlGa1−wN(0≦w≦1)で作ることもできる。
【0020】
AlGa1−yN(y=1又はy≒1)層28が、核生成層24の反対側において、
GaN層26上に含まれている。層28の厚さは50Å未満とするとよいが、異なる構成
では、他の厚さも用いることができる。好適な厚さは約20Åである。(y=1とした場
合のAlGa1−yN)層28は、多数のAlN単一層で形成することができ、各単一
層の厚さは、約5から20Åの範囲である。例えば、4層の厚さ5Åの単一層で形成され
る層28の場合、厚さは20Åとなる。
【0021】
AlGa1−xNバリア層30が、GaN層26の反対側において、AlGa1−
N層28上に形成されている。層30の好適な組成は、0≦x≦0.5であるが、組成
は変更可能であり、xは0及び1の間である。層30の厚さは、約100〜1000Åの
範囲とするとよいが、他の厚さも用いることができる。層30の厚さは、層のAl配合量
(composition)によって異なり、Al配合量が多い程、層30を薄くすることができる。
HEMT20の一実施形態では、層30の厚さは約300Åであり、AlGa1−x
(x≒0.33)の組成を有する。バリア層が薄すぎると(約100Å未満)、層30は
HEMT20において有効な2DEGを生成しない。
【0022】
HEMT20は、ソース、ドレイン、及びゲート・コンタクト32、34、26を含む
。ソース・コンタクト32及びドレイン・コンタクト34は、異なる材料で作ることがで
き、タンタル、アルミニウム、又はニッケルの合金を含み、なおもこれらに限定される訳
ではない。ゲート・コンタクト36も異なる材料で作ることができ、タンタル、プラチナ
、クローム、タンタル及びタングステンの合金、又は珪化プラチナを含み、なおもこれら
に限定される訳ではない。
【0023】
2DEG28は、AlGa1−yN層28とGaN層26との間の接合部に形成する
。前述のように、AlN(y=1とした場合のAlGa1−yN)層28とGaN層2
6との間に2.4%の格子不整合があると、これら2つの層の間の界面において、最大可
能圧電電荷が得られる。また、AlN(y=1とした場合のAlGa1−yN)層28
は、2DEGの移動度を制限する可能性がある、これらの層間の圧電散乱を低減すること
ができる。
【0024】
GaN層26上にAlN(y=1とした場合のAlGa1−yN)層28を有するこ
とによって、HEMTの2DEG38は、その移動度が増大する。AlN(y=1とした
場合のAlGa1−yN)層28上のAlGa1−xN層30を厚くすることによっ
て、HEMT20には大きなゲート漏れが生ずることがなくなる。これは、Aln(y=
1とした場合のAlGa1−yN)層28のみを有する場合には、生ずる可能性がある

【0025】
本発明によるHEMT20は、20ÅのAlGa1−yN層(y=1)と、その上に
ある200ÅのAlGa1−xN(x=0.25)層を有する場合、7.45×10
/cmの2DEG密度、及び2195cm/Vsの移動度を得ることができる。H
EMT20が、20ÅのAlGa1−yN層(y=1)と、その上にある230ÅのA
Ga1−xN(x=0.33)層を有する場合、1.10×1013/cmの2D
EG密度、及び2082cm/Vsの移動度を得ることができる。2DEG面密度は、
AlGa1−xNバリア層のアルミニウム配合量が増加するに連れて高くなる。
【0026】
図3は、図2のHEMTについて、AlGa1−xNバリア層30、AlGa1−
N層28、2DEG32、及びGaN層26全体にわたって、点42において調べたバ
ンド図40を示す。層26、28及び30の各々は、同じ方向に向いたそれぞれの非ゼロ
の全分極(non-zero total polarization)P、P及びPを有する。AlGa1−
N層28はAl含有量が多くなっているので、その中における全分極の大きさは、周囲
の層26及び30よりも大きい。この分極の傾斜により、3つの層間の界面A及びBにお
いて、分極によって面電荷が誘発される。正の分極面電荷は、GaN層26及びAl
1−yN層28の間の界面Aに位置する。負の分極面電荷は、AlGa1−xNバリ
ア層30及びAlGa1−yN層28の間の界面に位置する。この結果、AlGa
−yN層28には、非ゼロ電界が得られる。その結果、AlGa1−yN層28との界
面BにおけるAlGa1−xNバリア層30の伝導帯縁部は、GaN層26の導電帯縁
部よりも上に位置する。中央の層28は、比較的薄く、前述の層間の伝導帯不連続が比較
的大きくても、電子にとってはほぼ透過的である。その結果、電子は、最上層から最下層
まで転移し、層26及び28間の界面Aにおいて2DEGチャネルを形成する。この食い
違いバンドギャップ(staggered bandgap)は、これらの層内における元素組成を変化させ
ることによって、同じ半導体材料の層の間で得ることができる。
【0027】
図4は、本発明にしたがって製作したHEMT50の第2実施形態を示し、同様にII
I族窒化物からなる半導体材料で作られている。サファイア基板54上に、無作為にドー
プした、即ち、半絶縁性のGaNバッファ層52を形成する。比較的薄い(〜1nm)A
lN層56をGaNバッファ層52の上面上に形成し、次いでSiドープGaN層58で
覆う。AlN層56の表面は、GaN60で終端されているので、全ての層における自発
的分極は、基板54に向かう。加えて、これらの層における圧電分極は、自発的分極と同
じ方向に向かう。自発的及び圧電分極の大きさは、層のAl濃度と共に増大し、AlN層
56のAl濃度は最も高く、全分極も最も高い。図3に示した食い違いバンドギャップ形
状は、HEMTの層間に得られ、AlN層及びGaN層の間の界面に2DEG59が形成
される。また、HEMT50は、ソース、ドレイン、及びゲート・コンタクト62、64
、66も含む。
【0028】
本発明によるHEMT構造は、あらゆるIII族窒化物を用いて製作することができ、
それらのP、As及びSbとの合金も用いることができる。一連の層は、分極の傾斜によ
って中央の非常に薄い層に強い電界が生ずるようになっていなければならない。HEMT
は、金属有機化学蒸着(MOCVD)、分子ビーム・エピタキシ(MBE)、又は気相エ
ピタキシ(VPE)を含み、これらには限定されない異なるプロセスを用いても製作可能
である。AlGa1−xNバリア層30及びAlYGa1−yN層28は、水素、窒素
、又はアンモニア・キャリア・ガス内で成長させることができる。
【0029】
図5は、AlGa1−xNバリア層78及びAlGa1−yN層79を備えたHE
MT70を示し、これらは、図2のHEMTにおける同じ層30及び28と同様である。
しかしながら、この実施形態では、バリア層78は、ディジタル的に製作され、所望のA
l及びGaの濃度が得られる。バリア層78は、1組当たり4層からなる、多数の層の組
を有することができ、その内の1つはAlN層75であり、3つはGaN層76a〜76
cである。4組の層群を備えたバリア層72は、4つのAl層75と、12のGaN層7
6a〜76cを有する。その結果、バリア層全体では、Alの濃度は25%、GaNの濃
度は75%となる。同様に、1つのAl層と2つのGaN層からなる3層を有する各層を
用いると、Alの濃度を33%、GaNの濃度を67%とすることができる。
【0030】
この方法を用いてバリア層72を製作することによって、所望のAl及びGaN濃度を
得るために、異なるガスの流量を精細に調節する必要がなくなる。また、このプロセスに
よって、バリア層72の材料の濃度が一層正確となり、バリア層71全体にわたって材料
の濃度の均一性が得られる。バリア層72は、GaN又はAlN層のいずれかによって終
端することができる。また、このプロセスは、他のHEMT層を製作する際にも用いるこ
とができる。
【0031】
図6は、本発明にしたがって構成したHEMT80の別の実施形態を示す。これは、基
板82、GaNバッファ層84、AlGa1−yN(x=1、又はx≒1)層86、2
DEG88、ソース・コンタクト90、ドレイン・コンタクト92、及びゲート・コンタ
クト94を有し、これらは全て、図2に示したHEMT20におけるものと同様である。
しかしながら、この実施形態では、バリア層96は、GaN(x=0とした場合のAl
Ga1−xN)からなる。バリア層96は、均一又はデルタ・ドープ方式のいずれかのn
型とすることができる。この組成では、バリア層96を厚く(500〜1000Å)作る
ことができ、これによって、凹陥ゲート構造が可能となる。標準的な平面(プレナ)HE
MT構造では、ゲート、ドレイン、及びソース・コンタクトの下では、抵抗は同等である
。バリア層96をより厚くすることによって、それぞれの下における抵抗は減少する。し
かしながら、ゲート・コンタクト94の下では抵抗を増大させつつも、ソース及びドレイ
ン・コンタクト90及び92の下では低い抵抗を維持することが望ましい。厚いバリア層
96をエッチングして、ゲート・コンタクト94の下では薄くすることができる。これに
よって、ゲート・コンタクト94の下における抵抗を増大させながらも、ソース及びドレ
イン・コンタクト90及び92の下における抵抗を最小に維持する。
【0032】
以上、好適な構成を参照しながら詳細に本発明について説明したが、その他の変形も可
能である。HEMTの他の層も、ディジタル積層方法を用いて製作することができる。し
たがって、特許請求の範囲では、その技術的思想及び範囲は、明細書に記載した好適な形
態に限定される訳ではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来技術によるAlGaN/GaN HEMTの断面図である。
【図2】本発明によるAlGaN/GaN HEMTの一実施形態の断面図である。
【図3】AlGaN/GaN HEMTのバンド図である。
【図4】本発明によるAlGaN/GaN HEMTの第2実施形態の断面図である。
【図5】ディジタル方法を用いて製作した、図2のHEMTにおけるバリア層の断面図である。
【図6】凹陥ゲート構造を有するバリア層を備えた、本発明によるHEMTの第3実施形態の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)(20)であって、
GaNバッファ層(26)と、
GaNバッファ層(26)上のAlGa1−yN層(28)と、
GaNバッファ層(26)の反対側で、AlGa1−yN層(28)上にあるAl
Ga1−xNバリア層(30)であって、AlGa1−yN層(28)のAl含有量が
、AlGa1−xNバリア層(30)のAl含有量よりも多い、AlGa1−xNバ
リア層(30)と、
GaNバッファ層(26)とAlGa1−yN層(28)との間のインターフェース
にある2DEGと、
からなることを特徴とする高電子移動度トランジスタ。
【請求項2】
請求項1記載のHEMTにおいて、AlGa1−yN層(28)は、AlGa1−y
N(y=1又は≒1)からなることを特徴とするHEMT。
【請求項3】
請求項1記載のHEMTにおいて、AlGa1−xNバリア層(30)は、AlGa
1−xN(0≦x≦0.5)からなることを特徴とするHEMT。
【請求項4】
請求項1記載のHEMTにおいて、該HEMTは更に、AlGa1−xNバリア層(3
0)上に、ソース、ドレイン、及びゲート・コンタクト(32、34、36)を備えてい
ることを特徴とするHEMT。
【請求項5】
請求項1記載のHEMTにおいて、該HEMTは更に、バッファ層(26)に隣接して、
AlGa1−yN層(28)の反対側に基板(22)を備えており、該基板(22)が
、サファイア、炭化珪素、窒化ガリウム、及びシリコンからなる群からの材料で作られて
いることを特徴とするHEMT。
【請求項6】
請求項1記載のHEMTにおいて、該HEMTは更に、GaNバッファ層(26)と基板
(22)との間に、核生成層(24)を備えていることを特徴とするHEMT。
【請求項7】
請求項4記載のHEMTにおいて、ソース及びドレイン・コンタクト(32、34、36
)は、チタン、アルミニウム、及びニッケルからなる群からの合金で作られていることを
特徴とするHEMT。
【請求項8】
請求項4記載のHEMTにおいて、ゲート(36)は、チタン、プラチナ、クローム、チ
タン及びタングステンの合金、並びに珪化プラチナからなる群からの材料で作られている
ことを特徴とするHEMT。
【請求項9】
請求項1記載のHEMTにおいて、GaNバッファ層(26)の厚さは、約5μm未満で
あることを特徴とするHEMT。
【請求項10】
請求項1記載のHEMTにおいて、AlGa1−yN層(28)の厚さは、約50Å未
満であることを特徴とするHEMT。
【請求項11】
請求項1記載のHEMTにおいて、AlGa1−xNバリア層(30)の厚さは、約1
00〜1000Åであることを特徴とするHEMT。
【請求項12】
請求項4記載のHEMTにおいて、ゲート・コンタクト(36)の下の抵抗は、ソース及
びドレイン・コンタクト(32、34)の下の抵抗よりも大きいことを特徴とするHEM
T。
【請求項13】
請求項4記載のHEMTにおいて、バリア層(26)は、ゲート・コンタクト(36)の
下では薄くなっていることを特徴とするHEMT。
【請求項14】
請求項1記載のHEMTにおいて、AlGa1−xNバリア層(30)及びAlGa
1−yN層(28)は、ディジタル的に製作されることを特徴とするHEMT。
【請求項15】
III族窒化物系の高電子移動度トランジスタ(HEMT)(10)であって、
半導体バッファ層(26)と、
半導体バッファ層(26)上の高分極半導体層(28)と、
高分極半導体層(28)上にある半導体バリア層(30)であって、半導体バッファ層
(26)との間で高分極半導体層を挟持するようにしており、層の各々が、同じ方向を向
いた全体としてゼロではない分極を有し、高分極半導体層(28)における分極の大きさ
が、半導体バッファ及び半導体バリア層(26、30)の分極よりも大きい、半導体バリ
ア層(30)と、
半導体バッファ層(26)と高分極半導体層(28)との間の界面にある二次元電子ガ
ス(38)と
からなることを特徴とするHEMT。
【請求項16】
請求項15記載のHEMTにおいて、該HEMTは更に、半導体バリア層(30)と接触
する、ソース、ドレイン、及びゲート・コンタクト(32、34、36)を備えているこ
とを特徴とするHEMT。
【請求項17】
請求項15記載のHEMTにおいて、該HEMTは更に、半導体バッファ層(26)に隣
接して、高分極半導体層(28)の反対側に基板(22)を備えており、該基板(22)
が、サファイア、炭化珪素、窒化ガリウム、及びシリコンからなる群からの材料で作られ
ていることを特徴とするHEMT。
【請求項18】
請求項15記載のHEMTにおいて、該HEMTは更に、GaNバッファ層(26)と基
板(22)との間に、核生成層(24)を備えていることを特徴とするHEMT。
【請求項19】
請求項15記載のHEMTにおいて、半導体バッファ層(26)はGaNで作られている
ことを特徴とするHEMT。
【請求項20】
請求項15記載のHEMTにおいて、半導体バッファ層(26)の厚さは、5μm未満で
あることを特徴とするHEMT。
【請求項21】
請求項15記載のHEMTにおいて、高分極半導体層(28)は、AlGa1−yN(
y=1、又は≒1)で作られていることを特徴とするHEMT。
【請求項22】
請求項15記載のHEMTにおいて、高分極半導体層(28)の厚さは、50Å未満であ
ることを特徴とするHEMT。
【請求項23】
請求項15記載のHEMTにおいて、バリア層(30)は、AlGa1−xN(0≦x
≦0.5)で作られていることを特徴とするHEMT。
【請求項24】
請求項15記載のHEMTにおいて、バリア層(30)の厚さは、100〜1000Åで
あることを特徴とするHEMT。
【請求項25】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)(10)であって、
III族窒化物からなる半導体材料の最下層(26)と、
最下層(26)上にある、III族窒化物からなる半導体材料の中間層(28)と、
最下層(26)の反対側で、中間層(28)上にあるIII族窒化物からなる半導体材
料の最上層(30)であって、中間層(28)のIII族材料の濃度が、最下層及び最上
層(26、30)よりも高い、最上層(30)と、
中間及び最下層(28、26)間の界面にある2DEG(38)と
を備えていることを特徴とするHEMT。
【請求項26】
請求項25記載のHEMTにおいて、該HEMTは更に、最上層(30)と接触するソー
ス、ドレイン、及びゲート・コンタクト(32、34、36)を備えていることを特徴と
するHEMT。
【請求項27】
請求項25記載のHEMTにおいて、該HEMTは更に、中間層の反対側に、最下層(2
6)に隣接する基板(22)を備えていることを特徴とするHEMT。
【請求項28】
請求項25記載のHEMTにおいて、該HEMTは更に、最下層(26)と基板(22)
との間に核生成層(24)を備えていることを特徴とするHEMT。
【請求項29】
請求項25記載のHEMTにおいて、最下層(26)は、厚さが5μm未満のGaNで作
られていることを特徴とするHEMT。
【請求項30】
請求項25記載のHEMTにおいて、中間層(28)は、AlGa1−yN(y=1、
又は≒1)で作られており、厚さが50Å未満であることを特徴とするHEMT。
【請求項31】
請求項25記載のHEMTにおいて、最上層(30)は、AlGa1−xN(0≦x≦
0.5)で作られており、厚さが100〜1000Åであることを特徴とするHEMT。
【請求項32】
請求項26記載のHEMTにおいて、ゲート・コンタクト(36)の下の抵抗は、ソース
及びドレイン・コンタクト(32、34)の下の抵抗よりも大きいことを特徴とするHE
MT。
【請求項33】
請求項26記載のHEMTにおいて、最上層(30)は、ゲート・コンタクト(36)の
下では薄くなっていることを特徴とするHEMT。
【請求項34】
請求項25記載のHEMTにおいて、中間及び最上層(28、30)は、ディジタル的に
製作されていることを特徴とするHEMT。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−156538(P2012−156538A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−81708(P2012−81708)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2002−590421(P2002−590421)の分割
【原出願日】平成14年4月11日(2002.4.11)
【出願人】(592054856)クリー インコーポレイテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
【出願人】(592130699)ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア (364)
【氏名又は名称原語表記】The Regents of The University of California
【Fターム(参考)】