説明

高電界殺菌装置

【課題】低価格で品質を変化させることなく安全に様々な物質の殺菌処理を行うことが可能な高電界殺菌装置を提供する。
【解決手段】本発明の高電界殺菌装置は、マイナス電極となる第1金属板と、プラス電極となる第2金属板とを所定の間隔で配置し、前記第1金属板と前記第2金属板に接続したパルス電源装置によって前記第1金属板と前記第2金属板との間に形成された通路に高電界を発生させ、前記高電界が発生した前記通路の中を細菌を含んだ物質を通過させて、前記物質に含まれる細菌の細胞膜に電位差を生じさせて前記細胞膜を破壊することで殺菌を行う高電界殺菌装置であって、前記第1金属板の前記第2金属板と対向する表面に、焼成によって誘電材からなる誘電層を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電界を用いて物質を殺菌する高電界殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の殺菌装置として、高温度、薬剤、紫外線、オゾン、プラズマ、電解等、様々な方法を用いたものが存在する。例えば、薬剤として塩素等を使用した化学殺菌処理は、浄水場で水道水の処理等として幅広く用いられている。また高電界殺菌装置としては、プラズマを用いたものが存在する(特許文献1参照)。プラズマを用いたこうでんかい殺菌装置は、細菌の細胞膜を破壊して殺菌する方法を用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−340454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
塩素等を使用した化学殺菌処理では、装置の濃度管理や安定効果に問題があった。また、プラズマを用いた殺菌装置は、7.0〜50KVという高電圧でプラズマを発生させるために、数百W以上の高電力装置が必要となり、大規模で高価になると言う問題があった。また、殺菌の際にオゾンが発生すると言う問題もある。
【0005】
その他にも、従来の殺菌装置では、生果汁等の食品に使用するには品質が変化する等の様々な問題があった。また、殺菌装置によっては液体あるいは気体のどちらかにしか使用できないと言う問題もあった。
【0006】
そこで、本発明は、低価格で品質を変化させることなく安全に気体と液体の両方に使用することができる、物質を殺菌する高電界殺菌装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の高電界殺菌装置は、マイナス電極となる第1金属板と、プラス電極となる第2金属板とを所定の間隔で配置し、前記第1金属板と前記第2金属板に接続したパルス電源装置によって前記第1金属板と前記第2金属板との間に形成された通路に高電界を発生させ、前記高電界が発生した前記通路の中を細菌を含んだ物質を通過させて、前記物質に含まれる細菌の細胞膜に電位差を生じさせて前記細胞膜を破壊することで殺菌を行う高電界殺菌装置であって、前記第1金属板の前記第2金属板と対向する表面に、焼成によって誘電材からなる誘電層を形成したことを特徴とする。
【0008】
さらに、前記パルス電源装置によって供給されるパルスは、パルスの立下りから立ち上がりの間で、パルスの供給が一時的に遮断されており、前記高電界は、直流電源あるいはバイポーラパルス電源による高電界であることが好ましい。
【0009】
そして、マイナス電極となる前記第1金属板の両面に前記誘電層を形成し、前記第1金属板の両面に所定の間隔で、プラス電極となる2枚の第2金属板を配置し、前記第1金属板と2枚の前記第2金属板との間に、前記物質が通過する2つの通路を形成し、前記パルス電源装置によって2つの前記通路にそれぞれ高電界を発生させて前記物質を通過させて殺菌処理を行うことも可能である。
【0010】
また、前記第1金属板と前記第2金属板との間に、前記第1金属板および前記第2金属板と平行に仕切り板を配置して複数の通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記第1金属板と前記第2金属板との間に高電界を発生させ、前記複数の通路に前記物質を通過させて殺菌処理を行うことも可能である。
【0011】
別の形態として、マイナス電極となる前記第1金属板の両面に前記誘電層を形成し、前記第1金属板と所定の間隔で、プラス電極となる第2金属板を配置し、複数の前記第1金属板と複数の前記第2金属板を交互に配置して、前記第1金属板と2枚の前記第2金属板との間に、前記物質が通過する通路を形成し、前記パルス電源装置によって2つの前記通路にそれぞれ高電界を発生させて前記物質を通過させて殺菌処理を行う。
【0012】
さらに別の形態として、前記第1金属板を円柱形または円筒形に形成し、前記円柱形または前記円筒形の表面に前記誘電層を形成し、前記第2金属を前記第1金属板を取り囲むように円筒形に形成することで環状の通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記環状の通路に高電界を発生させて前記物質を通過させて殺菌処理を行う。
【0013】
その他の形態として、前記第1金属板の両面に前記誘電層を形成し、所定の間隔で配置された前記第1金属板と前記第2金属板とを、所定の間隔を保った状態で巻いて渦巻状にし、断面が渦巻状の通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記環状の通路に高電界を発生させて液体または気体を通過させて殺菌処理を行う。
【0014】
前記第1金属板を円柱形または円筒形に成形して回転ローラを形成し、前記第1金属板からなる回転ローラの表面に前記誘電層を形成し、前記第2金属板を曲面に形成して、前記回転ローラと所定の間隔を有するように配置することで、前記回転ローラと前記第2金属板との間に通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記通路に高電界を発生させて、前記回転ローラを回転させることにより前記通路に前記物質を通過させて殺菌処理を行う。前記第1金属板と前記第2金属板を逆にして、前記第2金属板からなる回転ローラとしてもよい。
【0015】
前記第1金属板を円柱形または円筒形に成形して第1回転ローラを形成し、前記第1金属板からなる第1回転ローラの表面に前記誘電層を形成し、前記第2金属板を円柱形または円筒形に成形して第2回転ローラを形成し、前記第1回転ローラと前記第2回転ローラを所定の間隔で配置することで、前記第1回転ローラと前記第2回転ローラとの間に通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記通路に高電界を発生させて、前記第1回転ローラおよび前記第2回転ローラを回転させることにより前記通路に前記物質を通過させて殺菌処理を行う
【0016】
複数の前記高電界殺菌装置を組み合わせることも可能であり、この場合、複数の殺菌処理装置を直列に接続して、液体または気体を繰り返し殺菌処理することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の高電界殺菌装置は、マイナス電極となる第1金属板と、プラス電極となる第2金属板とを所定の間隔で配置し、前記第1金属板と前記第2金属板に接続したパルス電源装置によって前記第1金属板と前記第2金属板との間に形成された通路に高電界を発生させ、前記高電界が発生した前記通路の中を細菌を含んだ物質を通過させて、前記物質に含まれる細菌の細胞膜に電位差を生じさせて前記細胞膜を破壊することで殺菌を行う高電界殺菌装置であって、前記第1金属板の前記第2金属板と対向する表面に、焼成によって誘電材からなる誘電層を形成したことにより、常温下において品質不変で安全な殺菌処理を、低エネルギーの安価な装置で実現することが可能となり、さらに、前記パルス電源装置によって供給されるパルスは、パルスの立下りから立ち上がりの間で、パルスの供給が一時的に遮断されていることで、より効率良く殺菌処理を行うことが可能となる。
【0018】
そして、マイナス電極となる前記第1金属板の両面に前記誘電層を形成し、前記第1金属板の両面に所定の間隔で、プラス電極となる2枚の第2金属板を配置し、前記第1金属板と2枚の前記第2金属板との間に、前記物質が通過する2つの通路を形成し、前記パルス電源装置によって2つの前記通路にそれぞれ高電界を発生させて前記物質を通過させて殺菌処理を行うこと、あるいは、マイナス電極となる前記第1金属板の両面に前記誘電層を形成し、前記第1金属板と所定の間隔で、プラス電極となる第2金属板を配置し、複数の前記第1金属板と複数の前記第2金属板を交互に配置して、前記第1金属板と2枚の前記第2金属板との間に、前記物質が通過する通路を形成し、前記パルス電源装置によって2つの前記通路にそれぞれ高電界を発生させて前記物質を通過させて殺菌処理を行うにより、一度に殺菌処理できる前記物質の量を増加させることができる。
【0019】
また、前記第1金属板と前記第2金属板との間に、前記第1金属板および前記第2金属板と平行に仕切り板を配置して複数の通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記第1金属板と前記第2金属板との間に高電界を発生させ、前記複数の通路に前記物質を通過させて殺菌処理を行うことにより、高電界を分散させることなく効率良く殺菌処理することができるようになる。
【0020】
あるいは、前記第1金属板を円柱形または円筒形に形成し、前記円柱形または前記円筒形の表面に前記誘電層を形成し、前記第2金属を前記第1金属板を取り囲むように円筒形に形成することで環状の通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記環状の通路に高電界を発生させて液体または気体を通過させて殺菌処理を行うこと、または、前記第1金属板の両面に前記誘電層を形成し、所定の間隔で配置された前記第1金属板と前記第2金属板とを、所定の間隔を保った状態で巻いて渦巻状にし、断面が渦巻状の通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記環状の通路に高電界を発生させて液体または気体を通過させて殺菌処理を行うことにより、高電界殺菌装置の外形をパイプ状とすることができるので、液体および気体を効率良く通路を通過させて、効果的に殺菌処理を行うことができる。
【0021】
前記第1金属板を円柱形または円筒形に成形して回転ローラを形成し、前記第1金属板からなる回転ローラの表面に前記誘電層を形成し、前記第2金属板を曲面に形成して、前記回転ローラと所定の間隔を有するように配置することで、前記回転ローラと前記第2金属板との間に通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記通路に高電界を発生させて、前記回転ローラを回転させることにより前記通路に前記物質を通過させて殺菌処理を行う、あるいは、前記第1金属板を円柱形または円筒形に成形して第1回転ローラを形成し、前記第1金属板からなる第1回転ローラの表面に前記誘電層を形成し、前記第2金属板を円柱形または円筒形に成形して第2回転ローラを形成し、前記第1回転ローラと前記第2回転ローラを所定の間隔で配置することで、前記第1回転ローラと前記第2回転ローラとの間に通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記通路に高電界を発生させて、前記第1回転ローラおよび前記第2回転ローラを回転させることにより前記通路に前記物質を通過させて殺菌処理を行うことにより、殺菌処理を行う物資として、粘度の高い液体、固体を含む液体、または固体を前記回転ローラによって通過させながら殺菌処理を行うことが可能となる。
【0022】
複数の前記高電界殺菌装置を組み合わせることも可能であり、この場合、複数の殺菌処理装置を直列に接続して、液体または気体を繰り返し殺菌処理することにより、より確実な殺菌処理を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の第1の実施形態の高電界殺菌装置の全体を示す斜視図図である。
【図2】第1の実施形態の高電界殺菌装置の概略断面図である。
【図3】第1の実施形態の高電界殺菌装置における殺菌処理を示す概略図である。
【図4】パルス波の波形を示す図であり、(a)、(b)が一般的なパルス波、(c)、(d)が一般的なパルス波を一時的に遮断しながら供給した場合の波形を示す。
【図5】第2の実施形態の高電界殺菌装置の概略断面図である。
【図6】第3の実施形態の高電界殺菌装置の概略断面図である。
【図7】第4の実施形態の高電界殺菌装置を途中で切断した概略斜視図である。
【図8】第5の実施形態の高電界殺菌装置を途中で切断した概略斜視図である。
【図9】第6の実施形態の高電界殺菌装置の概略断面図である。
【図10】第7の実施形態の高電界殺菌装置の概略断面図である。
【図11】第8の実施形態の高電界殺菌装置の概略断面図である。
【図12】図11の高電界殺菌装置において第1金属板と第2金属板を入れ方場合の概略断面図である。
【図13】第9の実施形態の高電界殺菌装置の全体を示す斜視図図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を、図を用いて以下に詳細に説明する。図1が本発明の第1の実施形態の高電界殺菌装置の全体を示す斜視図であり、図2が第1の実施形態の高電界殺菌装置1の構造を示す概略断面図、図3が殺菌処理の仕組みを示す概略図である。
【0025】
まず初めに、第1の実施形態の高電界殺菌装置1の構造を説明する。図1,2に示すように、本発明の高電界殺菌装置1は、ケース2の中に、マイナス電極となる第1金属板3と、プラス電極となる第2金属板4とを所定の間隔で配置し、前記第1金属板3と前記第2金属板4に接続したパルス電源装置8を用いて前記第1金属板3と前記第2金属板4との間に高電界を発生させるものであり、前記第1金属板3と前記第2金属板4との間に形成された空間が、殺菌処理を行う液体または気体の通路6となる。
【0026】
前記第1金属板3の前記第2金属板4と対向する表面には、焼成によって誘電材を焼き付けて誘電層5を形成している。ここでは前記第1金属板3および前記第2金属板4としてはステンレス等を用いている。また、前記誘電層5の形成方法は、例えば、誘電材としてセラミックを用いる場合、セラミックコンデンサの製造の際にセラミックを焼成する方法を用いることができる。誘電材の種類や焼成方法は、特にこれらに限定するものではなく、その他の誘電材や焼成方法を用いることもできる。
【0027】
前記誘電層5の形成方法としては、焼結以外にも、塗装、例えばメラミンの塗装、あるいは、ホーロー加工を用いることにより、前記セラミック等の焼結により形成された誘電層と同じ効果をもたらすことができる。いずれの方法を用いた場合でも、本発明で用いる誘電層5は、形成途中でバインダー材を用いたとしても、最終的に形成された誘電層5にはバインダー材が残らないで誘電材が均一に金属板の表面に配置されていることを特徴とする。
【0028】
このようにして前記ケース2内に前記第1金属板3と前記第2金属板4によって形成した通路6に前記パルス電源装置8によってパルスを供給することにより、前記高電界殺菌装置1は殺菌処理可能な状態となる。パルスを供給する際に、図4(a)、(b)に示すような波形を有する一般的なパルスを供給し、前記通路6に繰り返し高電界を発生させて、ポンプ等を用いて液体または気体である物質を前記通路6を通過させることで、液体または気体に含まれる細菌を殺菌する。前記パルス電源8によって供給するパルスとしては、例えば、出力周波数が500Hz、パルス幅が20μsのパルスを用いる。
【0029】
前記パルス電源装置8から供給されるパルスによって前記通路6に生じる電位差は、パルスの条件等、様々な要因によって、パルス波の立下りの際に十分に下がりきらないで蓄積されることにより、十分な殺菌効果をもたらさない恐れがある。そこで、殺菌効果を高めるために、前記パルス電源装置8によって、図4(c)、(d)に示すような、パルスの立下りから立ち上がりの間で、一度パルスの供給を遮断し、放電したものを連続して供給することが好ましい。これにより、前記第1金属板3と前記第2金属板4の間に生じている電位差をある程度下げることにより高電界を発生させたときに細菌の細胞膜を破壊するための電位差を確実に生じることができ、殺菌効果を高めることが可能となる。
【0030】
本発明の高電界殺菌装置における高電界は、直流電源を用いた直流高電界、およびバイポーラパルス電源を用いた高電界のどちらでも可能である。パルスの立下りから立ち上がりの間で、一度パルスの供給を遮断し、放電したものを連続して供給することが好ましい。
【0031】
図4(c)に示すような矩形波でパルス電源装置8からパルスが供給される場合には、パルスが低下した状態のところで一度パルスの供給を切断し、直ぐにパルスの供給を再開する。これにより、前記第1金属板3と前記第2金属板4の間の電位差は完全とまではいかなくても一時的に下がった状態となる。また、図4(d)に示すような正弦波でパルスが供給される場合にはマイナスの部分をカットすることで、パルスの立下りから立ち上がりの間でパルスの供給を遮断した状態を作り出すことができる。このようにしてパルスの供給と遮断を繰り返すことにより、前記第1金属板3と前記第2金属板4の間の電位差を保ち、効果的に殺菌処理を行うことが可能になる。
【0032】
前記高電界殺菌装置1による殺菌処理について説明する。殺菌処理を行う物質である液体または気体を、貯蔵槽からポンプ等を使用して前記高電界殺菌装置1へと供給し、前記高電界殺菌装置1の通路6に液体または気体を通過させる。この時、前記第1金属板3と前記第2金属板4に接続した前記パルス電源装置8によって前記通路6に生じた高電界を通過する液体または気体に含まれる細菌30は、細菌30を構成する細胞膜31の内外の膜厚と細菌30の直径と電界強度に比例した大きさの電位差が生じ、前記電位差によって、図3に示すように、細菌30の細胞膜31が破壊されて中から細菌30を構成する細胞質内液32が外へ放出され、細菌30が殺菌処理される。前記細胞膜31が破壊されて内部の前記細胞質内液32が漏出する率を示す漏出率が今の段階で、0.5近くまで実現できており、ほぼ細胞膜破壊は出来ているが、更なる実験を重ねれば漏出率を高めることが可能である。
【0033】
前記細胞膜31を破壊するには、前記細胞膜31の内外に1μm当たり1V以上の電位差を生じさせる必要がある。また、前記パルス電源装置8によって供給される電圧は1.0〜5.0KVの低電圧であることから、前記第1金属板3と前記第2金属板4との間隔は、例えば、0.3〜5mm程度の間隔とするが、電圧の大きさや殺菌処理量に応じて適切に設定すればよく、特にこれに限定するものではない。このような低電圧で殺菌処理を行うことが可能であることにより、従来であれば高電圧のために高温下で行われていた殺菌処理が、常温下での殺菌処理を実現可能とする。
【0034】
前記高電界殺菌装置1による細菌の生存率は、今のところ数パーセント程度まで下げることを実現しており、さらに実験を重ねることにより、生存率をさらに0に近付けることができると考えている。このように、本発明の高電界殺菌装置1によって、液体および気体を常温下で安全・確実にそして安価な装置で殺菌処理することが可能となる。
【0035】
高電界殺菌装置1による殺菌処理の際に時間当たりの処理量を増やすためには、通路6を通過する液体または気体の量を増やすことが考えられる。そこで、複数の通路6,6’を設けた第2,3の実施形態の高電界殺菌装置1’、1’’について説明する。
【0036】
第2の実施形態の高電界殺菌装置1’は、図5に示すように、ケース2の中に、マイナス電極となる、両面に誘電層5,5’が形成された第1金属板3と、前記第1金属板3の両面に所定の間隔で、プラス電極となる2枚の第2金属板4,4’を配置することにより、前記第1金属板3の両面に、液体または気体が通過する2つの通路6,6’を形成したものである。前記第1金属板3と2枚の前記第2金属板4,4’に、パルス電源装置(図示せず)を接続し、2つの通路6,6’にそれぞれ高電界を発生させて殺菌処理を行う。前記誘電層5,5’の形成方法は、第1の実施形態と同様に誘電材を焼結することにより形成されている。
【0037】
前記第1金属板3と2枚の第2金属板4,4’との間に形成された2つの通路6,6'にパルス電源装置(図示せず)を用いてそれぞれ高電界を発生させて電位差を生じさせることにより、2つの通路6,6’を通過する液体または気体を同時に殺菌処理することができる。これにより、前記通路6,6’を通過する液体または気体の量が増加するので、第1の実施形態の高電界殺菌装置1に比べて、単位時間当たりの処理量を増加させることができる。第2の実施形態において前記パルス電源装置によって供給されるパルスは、図4に示すパルス波を有するものを用いることができる。
【0038】
また、通路を増加させる別の方法として、前記第1金属板3と前記第2金属板4との間に、前記第1金属板3と前記第2金属板4に平行な仕切り板を配置する方法がある。これを第3の実施形態の高電界殺菌装置1’’とする。図6に示すように、第3の実施形態の高電界殺菌装置1’’は、第1の実施形態の高電界殺菌装置1に2枚の仕切り板7を設けたものであり、マイナス電極となる、表面に導電層5が形成された第1金属板3と、プラス電極となる第2金属板4との間に2枚の仕切り板を等間隔で配置することで、前記第1金属板3と前記第2金属板4との間に3つの同じ大きさの通路6’’を形成したものである。前記仕切り板7以外の構造は第1の実施形態と同じものを用いる。
【0039】
前記第1金属板3と前記第2金属板4にパルス電源装置(図示せず)を接続し、前記第1金属板3と前記第2金属板4との間に高電界を発生させる。前記仕切り板7はパルス電源装置(図示せず)と接続されておらず、導電層も形成されていない単なる板状の部材である。この時、第1の実施形態のように1つの通路6しか存在しなければ、板状の電極を用いていることから通路6には高電界が不均一に発生する(例えば、板状の電極の両端に高電界が偏って発生する)が、本実施形態のように記第1金属板3と前記第2金属板4との間に仕切板7を配置していると、前記仕切り板7を介して高電界が発生することにより高電界の偏りが緩和されるので、その結果、殺菌効率を高めることが可能となる。
【0040】
ここまでは、断面が矩形の通路が形成された高電界殺菌装置について説明してきたが、次に通路の断面形状が環状あるいは渦巻状の高電界殺菌装置について説明する。図7に示すのが、第4の実施形態の高電界殺菌装置10である。
【0041】
図7に示すように、第4の実施形態の高電界殺菌装置10は、円筒形のケース12内に、マイナス電極として円筒形にした第1金属板13を前記ケース12の中心に配置し、プラス電極として円筒形にした第2金属板14を、円筒形の前記第1金属板13を取り囲むように配置したものであり、これにより、前記第1金属板13と前記第2金属板14との間には、液体または気体を通過させる環状の通路16が形成される。
【0042】
マイナス電極となる円筒形の第1金属板13の表面には、焼結により導電層15を形成する。そして、マイナス電極となる第1金属板13とプラス電極となる第2金属板14とにパルス電源装置(図示せず)を接続してパルスを供給し、前記環状の通路16に高電界を発生させて電位差を生じさせることにより、環状の通路16を通過する液体または気体を殺菌処理する。
【0043】
本実施形態のように、マイナス電極として円筒形に形成した第1金属板13を用いると、前記通路16において高電界が均一に発生することにより集電効果が高くなり、前記通路16の通過する液体または気体の全てを均一に殺菌処理することができ、殺菌処理の効果を高めることができる。
【0044】
また、本実施形態では前記ケース12を円筒形とすることにより、殺菌処理する液体または気体を貯留する貯蔵槽と、殺菌処理された液体または気体を容器等に充填する充填装置との間に配置する高電界殺菌装置10(パルス電源装置を除く)をパイプ状に形成することができるので、小スペースに効率良く高電界殺菌装置10を配置することができるようになる
【0045】
マイナス電極に円筒形の第1金属板13を用いる場合について説明してきたが、マイナス電極として内部が空度となる円筒形だけではなく、円柱形を用いることも可能であり、円柱形とした場合でも同じ効果をもたらすことが可能である。
【0046】
次に、第4の実施形態の高電界殺菌装置10と同様に外観をパイプ状とすることができる第5の実施形態の高電界殺菌装置10’について説明する。図8に示すのが第5の実施形態の高電界殺菌装置10'の斜視図である。
【0047】
第5の実施形態の高電界殺菌装置10’は、マイナス電極となる、両面に導電層15,15’が焼結により形成された第1金属板13’と、プラス電極となる第2金属板14’とを所定の間隔で配置し、図8に示すように、前記第1金属板13’と前記第2金属板14’とを、所定の間隔を保った状態で巻いて渦巻状にして、ケース12内に配置したものであり、前記第1金属板13’と前記第2金属板14’との間に形成される通路16’は、断面がケース2内で2つの渦巻形状に形成されている。
【0048】
このような渦巻状に形成したマイナス電極となる前記第1金属板13’と、プラス電極となる前記第2金属板14’にパルス電源装置を接続し、前記第1金属板13’と前記第2金属板14’との間に高電界を発生させて前記通路16’を通過する液体または気体に含まれる細菌の細胞膜を電位差によって破壊して殺菌処理を行う。
【0049】
この時、前記通路16’は第4の実施形態の通路16のように幅が大きいのではなく、幅が狭いのが重なった状態となっているので、細胞膜を破壊するには、1μm当たり1V以上の電位差を生じさせることが必要なことを考えると、第4の実施形態の高電界殺菌装置10’よりも少ない電位差で同じ効果をもたらすことが可能となる。つまり、外観を同じパイプ状とした場合でも、第5の実施形態の高電界殺菌装置10’は、より低電圧で殺菌処理を行うことができる。しかしながら、前記第1金属板13’と前記第2金属板14’とを、所定の間隔を保った状態で巻いて渦巻状に形成する際に、間隔を均一に保つのは難しいために、製造コストは増加する恐れがある。
【0050】
次に、第6の実施形態の高電界殺菌装置1aについて説明する。図9に示すのは、前記高電界殺菌装置1aの横断方向の断面図である。図9に示すように、前記高段階殺菌装置1aは、マイナス電極となる複数の第1金属板3aおよびプラス電極となる複数の第2金属板4aを交互に配置することにより、殺菌処理を行う物質が通過する通路6aを複数形成したものである。
【0051】
マイナス電極となる前記第1金属板3aの両面に誘電層5aを形成し、プラス電極となる前記第2金属板4aをスペーサー9を用いて前記第1金属板3aと所定の間隔で、前記第1金属板3aと交互に、そして前記第1金属板3aよりも数が1つ多くなるように、ケース2a内に配置する。これにより、複数の通路6a、本実施形態では10個の通路6aが形成される。マイナス電極となる前記第1金属板3aとプラス電極となる前記第2金属板4aに、パルス電源装置(図示せず)を接続し、全ての通路6aにそれぞれ高電界を発生させて殺菌処理を行う。前記誘電層5aの形成方法は、第1の実施形態と同様に誘電材を焼結することにより形成されている。本実施形態において前記パルス電源装置によって供給されるパルスは、図4に示すパルス波を有するものを用いることができる。
【0052】
このように、第6の実施形態の高電界殺菌装置1aは、マイナス電極となる複数の第1金属板3aとプラス電極となる第2金属板4aを交互に配置することによって、複数の通路6aを形成することで、一度に大量の物質を殺菌することが可能となる。また処理量に応じて前記第1金属板3aと前記第2金属板4aの数や大きさを自由に変更することができる。
【0053】
次に、第7の実施形態の高電界殺菌装置10aについて、図10を用いて説明する。図10に示すのが第7の実施形態の高電界殺菌装置10aの概略断面図である。第7の実施形態の高電界殺菌装置10aは、マイナス電極となる第1金属板13aを円柱形または円筒形に成形して回転ローラ17を形成し、前記回転ローラ17を利用して殺菌処理する物質を移動させる構造である。
【0054】
マイナス電極となる前記第1金属板13aからなる回転ローラ17の表面に誘電層15aを形成する。そして、プラス電極となる第2金属板14aを前記回転ローラ17の表面に合わせた曲面形状を有するように形成する。図10に示すように、複数の回転ローラ17を配置する場合には、1枚の第2金属板14aを波型に形成し、各回転ローラ17と所定の間隔を有するように配置する。そして、隣接する回転ローラ17の間には、前記第2金属板17aと所定の間隔を有するように壁18を形成する。
【0055】
これにより、前記第2金属板14aと、前記第1金属板13aからなる前記回転ローラ17および前記壁18との間に、殺菌処理を行う物質を通過させる通路16aが形成される。前記回転ローラ17は駆動装置によって回転する構造とし、前記通路16aを通過させる物質が、高粘度の液体、固体を含む液体、または固体と言ったポンプ等を使用して前記通路16aを通過させることが難しい場合に、前記回転ローラ17の回転によって殺菌処理を行う物質を前記通路16aを通過させることができる。
【0056】
そして、前記回転ローラ17を図10に矢印で示す方向に回転させながら、マイナス電極となる前記第1金属板13aとプラス電極となる前記第2金属板14aに、パルス電源装置(図示せず)を接続し、前記通路16aに高電界を発生させた状態で、前記回転ローラ17の回転によって物質が移動されて前記通路16aを通過することによって、固体等の物質の殺菌処理を行うことができる。
【0057】
本実施形態では、上述のように、回転ローラ17を用いることによって、高粘度の液体、固体を含む液体、または固体等の物質を殺菌処理することが可能となる。これにより、高電界殺菌装置10aによって、液体および気体以外の様々な物質を殺菌処理することが可能となる。また、前記壁18をマイナス電極となる第1金属板13aによって形成し、その表面に誘電層15aを形成することによって、隣接する回転ローラ17の間でも殺菌処理する構造とすることも可能である。
【0058】
第8の実施形態として、回転ローラ17をマイナス電極となる前記第1金属板13aによって形成しているが、図11に示すように、回転ローラ17をプラス電極となる第2金属板14aによって形成し、マイナス電極となる第1金属板13aを前記回転ローラ17の表面に合わせた曲面形状を有するように形成して、その表面に誘電層15aを形成してもよい。この場合、前記第1金属板13aと、前記第2金属板14aからなる前記回転ローラ17および壁18との間に、殺菌処理を行う物質を通過させる通路16aを形成する。
【0059】
そして、前記回転ローラ17を図11に矢印で示す方向に回転させながら、マイナス電極となる前記第1金属板13aとプラス電極となる前記第2金属板14aに、パルス電源装置(図示せず)を接続し、前記通路16aに高電界を発生させた状態で、殺菌処理を行う物質を通過させることによって、固体等の物質の殺菌処理を行うことができる。このような場合、前記壁18をプラス電極となる前記第2金属板14aによって形成することによって、隣接する回転ローラ17の間でも殺菌処理する構造とすることも可能である。
【0060】
次に、第7の実施形態と同様に、回転ローラを用いた第8の実施形態の高電界殺菌装置10bについて、図12を用いて説明する。図12に示すのが第8の実施形態の高電界殺菌装置10aの概略断面図である。
【0061】
第8の実施形態の高電界殺菌装置10bは、マイナス電極となる第1金属板13bを円柱形または円筒形に成形して第1回転ローラ17bを形成し、さらに、プラス電極となる第2金属板14bを円柱形または円筒形に成形して第2回転ローラ19を形成したものであり、前記第1回転ローラ17bおよび前記第2回転ローラ19を利用して殺菌処理する物質を移動させる構造である。
【0062】
マイナス電極となる前記第1金属板13bからなる第1回転ローラ17bの表面に誘電層15bを形成する。そして、前記第1回転ローラ17bと対向するようにプラス電極となる前記第2回転ローラ19を所定の間隔で配置する。このように、対になった前記第1回転ローラ17bと前記第2回転ローラ19を、図12に示すように、複数配置する。この時、各第1回転ローラ17bは、対になった第2回転ローラ19だけでなく、隣に配置された第2回転ローラ19に対しても同じ間隔を有するように配置する。
【0063】
そして隣接する第1回転ローラ17bの間に、前記第2回転ローラ19の曲面に合わせた曲面状の壁25を前記第2回転ローラ19と対向するように配置し、隣接する第2回転ローラ19の間に、前記第1回転ローラ17bの曲面に合わせた曲面状の壁26を前記第1回転ローラ17bと対向するように配置する。これにより、前記第1回転ローラ17bおよび前記壁25と、前記第2回転ローラ19と前記壁26との間に、殺菌処理が行われる物質が通過する通路16bが形成される。
【0064】
そして、前記第1回転ローラ17bおよび前記第2回転ローラ19を回転させる駆動装置を設けて、前記第1回転ローラ17bおよび前記第2回転ローラ19を互いに反対方向(図12に矢印で示す方向)に回転させながら、マイナス電極となる前記第1金属板13bとプラス電極となる前記第2金属板14bに、パルス電源装置(図示せず)を接続し、前記通路16bの前記第1回転ローラ17bと前記第2回転ローラ19との間に高電界を発生させた状態で、前記第1回転ローラ17および前記第2回転ローラ19の回転によって物質を前記通路16bを通過させると、前記第1回転ローラ17bと前記第2回転ローラ19との間で、物質を殺菌処理することができる。
【0065】
このように、前記第1回転ローラ17bと前記第2回転ローラ19を配置することで、1つの第1回転ローラ17bにおいて2箇所で殺菌処理を行うことが可能となる。そして、本実施形態の高電界殺菌装置10bは、対向する第1回転ローラ17bおよび第2回転ローラ19を共に回転させることによって、通路16bを通過する物質をより確実に移動させることができるので、より高粘度の液体、固体を含む液体および固体をスムーズに移動させて、効率良く物質の殺菌処理を行うことが可能となる。
【0066】
前記壁25をマイナス電極となる第1金属板13bによって形成し、その表面に誘電層15bを形成し、さらに、前記壁26をプラス電極となる第2金属板14bによって形成することによって、前記第1回転ローラ17bと前記第2回転ローラ19の間だけでなく、前記第1回転ローラ17bと前記壁26との間、そして、前記第2回転ローラ19と前記壁25との間でも殺菌処理する構造とすることも可能である。
【0067】
ここまでは、1つの高電界殺菌装置によって液体または気体を処理する場合について説明してきたが,複数の高電界殺菌装置を組み合わせることでより殺菌処理の効果を高める方法について説明する。
【0068】
図13に示す第9の実施形態の高電界殺菌装置20は、第4の実施形態の高電界殺菌装置10を2つ組み合わせたものである。第4の実施形態の高電界殺菌装置10は、その説明で述べたように、外観をパイプ状とすることができるこの利点を利用したものが本実施形態の高電界殺菌装置20である。本実施形態で用いている2つの高電界殺菌装置10は、上述のように第4の実施形態の高電界殺菌装置10を用いていることから、構造についての説明は省略する。
【0069】
図13に示すように、前記高電界殺菌装置20は、殺菌処理する液体または気体を貯留する貯蔵槽21と、殺菌処理された液体または気体を容器等に充填する充填装置22との間に2つの高電界殺菌装置10を配置したものであり、1つ目の高電界殺菌装置10を、貯蔵槽21から水平方向に出ているパイプ23から上方へと液体または気体が流れるように配置され、2つ目の高電界殺菌装置10を、1つ目の高電界殺菌装置と平行に配置し、その下方に前記充填装置22を配置する。そして、1つ目の高電界殺菌装置10と2つ目の高電界殺菌装置10とを逆U字型のパイプ24で接続する。
【0070】
これにより、前記貯蔵槽21からポンプによって送り出される液体または気体は、1つ目の高電界殺菌装置10を下から上へと通過しながら1度目の殺菌処理が行われ、逆U字型のパイプ24を通過した後、2つ目の高電界殺菌装置10を上から下へと通過しながら2度目の殺菌処理が行われる。1つの高電界殺菌装置によって殺菌処理した液体または気体を再び高電界殺菌装置によって殺菌処理すると、細菌の数はさらに減少することから、本実施形態のように繰り返し殺菌処理することで細菌の生存率をさらに低下させることができる。また、2つの高電界殺菌装置10を直線ではなく平行に配置することで、より少ないスペースで納めることができるので、コンパクトな高電界殺菌装置20を実現できる。
【0071】
ここでは、第4の実施形態の高電界殺菌装置10を2つ用いた高電界殺菌装置20について説明したが、その他の第1〜3,5〜8の実施形態の高電界殺菌装置をそれぞれ2つ用いることも可能であり、異なる種類の高電界殺菌装置を組み合わせることも可能である。また、組み合わせる数も2つ以上とすることによりさらなる殺菌効果をもたらすことも可能である。
【0072】
いずれの場合にも、複数の高電界殺菌装置を組み合わせて1つの高電界殺菌装置とし、繰り返し殺菌処理することで細菌の生存率をさらに低下させることが可能となり、より効果的な殺菌処理を行うことができる。
【0073】
本発明の高電界殺菌装置は、ここまで説明してきたように、様々な形態を用いることで殺菌処理の対象物質を、液体、気体、固体、固体を含む液体等、様々な状態の物質を低電圧で効果的に殺菌処理することが可能であり、さらに、処理された物質の品質を変えることなく安全に殺菌処理することが可能である。また、その製造コストも安価であり、殺菌処理の費用も低コストで可能となる。このような利点により、流体飲料、食品加工、水処理、医療機器、室内環境、電子機器製造等、様々な分野で利用することが考えられる。
【符号の説明】
【0074】
1,1’,1’’,1a 高電界殺菌装置
2,2a ケース
3,3a 第1金属板
4,4’,4a 第2金属板
5,5’,5a 誘電層
6,6’,6’’,6a 通路
7 仕切り板
8 パルス電源装置
9 スペーサー
10,10’,10a,10b 高電界殺菌装置
12 ケース
13,13’,13a,13b 第1金属板
14,14’,14a,14b 第2金属板
15,15’,15a,15b 誘電層
16,16’,16a,16b 通路
17 回転ローラ
17b 第1回転ローラ
18 壁
19 第2回転ローラ
20 高電界殺菌装置
21 貯蔵槽
22 充填装置
23,24 パイプ
25,26 壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイナス電極となる第1金属板と、プラス電極となる第2金属板とを所定の間隔で配置し、前記第1金属板と前記第2金属板に接続したパルス電源装置によって前記第1金属板と前記第2金属板との間に形成された通路に高電界を発生させ、前記高電界が発生した前記通路の中を細菌を含んだ物質を通過させて、前記物質に含まれる細菌の細胞膜に電位差を生じさせて前記細胞膜を破壊することで殺菌を行う高電界殺菌装置であって、
前記第1金属板の前記第2金属板と対向する表面に、焼成によって誘電材からなる誘電層を形成したことを特徴とする高電界殺菌装置。
【請求項2】
前記パルス電源装置によって供給されるパルスは、パルスの立下りから立ち上がりの間で、パルスの供給が一時的に遮断されていることを特徴とする請求項1に記載の高電界殺菌装置。
【請求項3】
前記高電界は、直流による直流高電界であることを特徴とする請求項1または2に記載の高電界殺菌装置。
【請求項4】
前記高電界は、バイポーラパルス電源による高電界であることを特徴とする請求項2に記載の高電界殺菌装置。
【請求項5】
マイナス電極となる前記第1金属板の両面に前記誘電層を形成し、前記第1金属板の両面に所定の間隔で、プラス電極となる2枚の第2金属板を配置し、前記第1金属板と2枚の前記第2金属板との間に、前記物質が通過する2つの通路を形成し、前記パルス電源装置によって2つの前記通路にそれぞれ高電界を発生させて前記物質を通過させて殺菌処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高電界殺菌装置。
【請求項6】
前記第1金属板と前記第2金属板との間に、前記第1金属板および前記第2金属板と平行に仕切り板を配置して複数の通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記第1金属板と前記第2金属板との間に高電界を発生させ、前記複数の通路に前記物質を通過させて殺菌処理を行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の高電界殺菌装置。
【請求項7】
マイナス電極となる前記第1金属板の両面に前記誘電層を形成し、前記第1金属板と所定の間隔で、プラス電極となる第2金属板を配置し、複数の前記第1金属板と複数の前記第2金属板を交互に配置して、前記第1金属板と2枚の前記第2金属板との間に、前記物質が通過する通路を形成し、前記パルス電源装置によって2つの前記通路にそれぞれ高電界を発生させて前記物質を通過させて殺菌処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高電界殺菌装置。
【請求項8】
前記第1金属板を円柱形または円筒形に形成し、前記円柱形または前記円筒形の表面に前記誘電層を形成し、前記第2金属を前記第1金属板を取り囲むように円筒形に形成することで環状の通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記環状の通路に高電界を発生させて前記物質を通過させて殺菌処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高電界殺菌装置。
【請求項9】
前記第1金属板の両面に前記誘電層を形成し、所定の間隔で配置された前記第1金属板と前記第2金属板とを、所定の間隔を保った状態で巻いて渦巻状にし、断面が渦巻状の通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記環状の通路に高電界を発生させて前記物質を通過させて殺菌処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高電界殺菌装置。
【請求項10】
前記第1金属板を円柱形または円筒形に成形して回転ローラを形成し、前記第1金属板からなる回転ローラの表面に前記誘電層を形成し、前記第2金属板を曲面に形成して、前記回転ローラと所定の間隔を有するように配置することで、前記回転ローラと前記第2金属板との間に通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記通路に高電界を発生させて、前記回転ローラを回転させることにより前記通路に前記物質を通過させて殺菌処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高電界殺菌装置。
【請求項11】
前記第2金属板を円柱形または円筒形に成形して回転ローラを形成し、前記第1金属板を曲面に形成して、前記曲面の表面に前記誘電層を形成して、前記第1金属板を前記回転ローラと所定の間隔を有するように配置することで、前記回転ローラと前記第1金属板との間に通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記通路に高電界を発生させて、前記回転ローラを回転させることにより前記通路に前記物質を通過させて殺菌処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高電界殺菌装置。
【請求項12】
前記第1金属板を円柱形または円筒形に成形して第1回転ローラを形成し、前記第1金属板からなる第1回転ローラの表面に前記誘電層を形成し、前記第2金属板を円柱形または円筒形に成形して第2回転ローラを形成し、前記第1回転ローラと前記第2回転ローラを所定の間隔で配置することで、前記第1回転ローラと前記第2回転ローラとの間に通路を形成し、前記パルス電源装置によって前記通路に高電界を発生させて、前記第1回転ローラおよび前記第2回転ローラを回転させることにより前記通路に前記物質を通過させて殺菌処理を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高電界殺菌装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の高電界殺菌装置を複数組み合わせた高電界殺菌装置であって、複数の殺菌処理装置を直列に接続して、繰り返し殺菌処理することを特徴とする高電界殺菌装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−135614(P2012−135614A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−268741(P2011−268741)
【出願日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【出願人】(500197501)
【Fターム(参考)】