説明

高麗人参からなる健康食品の製造方法及び高麗人参からなる健康食品

【課題】紅参に含有される薬効成分を損なうことなくサポニン成分を最大限に抽出させることができ、短時間に製造することができる高麗人参からなる健康食品の製造方法を提供する。
【解決手段】採れたての水参から加工した紅参を切断して洗浄し、乾燥させる工程と、乾燥した前記紅参を所定の大きさに裁断し、所定の大きさごとに分別する工程と、分別した前記紅参を110℃以上、120℃未満に加熱した状態で、3.3〜3.8kg重/cmまで加圧する工程と、加圧した前記圧力を常圧まで一気に減圧させる工程と、を含むことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高麗人参からなる健康食品の製造方法に関し、さらに詳しくは、優れた薬効成分を有する紅参を含む高麗人参からなる健康食品の製造方法、及び、それを用いた高麗人参からなる健康食品に関する。
【背景技術】
【0002】
高麗人参は、ウコギ科に属する多年生の宿根草で、朝鮮半島や中国東北部の山中に自生し、その根部の乾燥物は生薬又は健康食品として広く使用されている。高麗人参の薬効としては、虚弱体質の改善、疲労回復、食欲不振や胃腸障害の改善、免疫力の向上、滋養強壮などが広く知られている。
【0003】
高麗人参には、主成分であるサポニン配糖体のジンセノサイドをはじめとして、有機ゲルマニウム、ビタミンB1/B2、亜鉛、マグネシウム、カリウムなどのミネラル、必須アミノ酸などの有効成分が多く含まれている。高麗人参の主成分であるサポニン配糖体は、体内の細胞や臓器の働きを活発にし、血管を広げ、血流をよくし、血液中のコレステロール値を下げることによって、高脂血症や動脈硬化なども予防するといわれている。
【0004】
高麗人参は、畑から採った新鮮な根を水参といい、70〜80%の水分が含まれている。このため、この水参を乾燥させることにより、酵素の分解によって薬効成分が分解される。このときの加工方法により白参と紅参とに加工され使用される。白参はコルク層を剥がして乾かす方法を用い、紅参は水参を蒸して乾燥させたもので、皮も中身もアメ色をしている。紅参は加工方法の違いだけではなく、白参には含まれていないジンセノサイドの成分が多く含まれており優れた薬効を奏することが広く知られている。
【0005】
従来、高麗人参茶は、乾燥高麗人参の粉砕したもの、或いは、乾燥高麗人参より抽出したエキスに糖分を加えて顆粒状にしたものをティーバッグ等にパックして人参茶として用いられている。
【0006】
ところが、昔ながら高麗人参及び紅参は健康食品として、通常は煎じてその溶けた成分を服用している。これは、その組織が非常に固いために、水では組織に十分浸透し、薬効成分を最大限に抽出させることが難しく、また、必要とする時間も長い。そこで、特許文献1には、最大圧力15kg/cm及び熱120〜150℃を加えることにより、人参の有効成分の抽出量を高めた技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国特許登録番号第10−0325778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来技術では、最大圧力が15kg/cm、印加する熱が120〜150℃と非常に高いため、製造に時間を要し、さらには、高麗人参が有する薬効成分の効能に影響を与えることが考えられる。
【0009】
上記問題点に鑑み、本発明は、高麗人参の中でも紅参に含有される薬効成分を損なうことなくサポニン成分を最大限に抽出させることができ、短時間に製造することができる高麗人参からなる健康食品の製造方法を提供することを課題とする。さらに、それを用いた高麗人参からなる健康食品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下のことを特徴とする。
請求項1に記載の発明は、紅参を含む高麗人参からなる健康食品の製造方法であって、 採れたての水参から加工した紅参を切断して洗浄し、乾燥させる第一の工程と、乾燥した前記紅参を所定の大きさに裁断し、所定の大きさごとに分別する第二の工程と、分別した前記紅参を温度110℃以上、120℃未満に加熱した状態で、圧力3.3〜3.8kg重/cmまで加圧する工程と、加圧した前記圧力を常圧まで一気に減圧させる工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
このように、熱及び圧力を印加して減圧する工程を含むことにより、高麗人参の硬い組織を緩めることができ、ジンセノサイドRe及びRg1の抽出率を向上させることができる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、紅参を含む高麗人参からなる健康食品であって、温度110℃以上、120℃未満、及び、圧力3.3〜3.8kg重/cmを印加して得られた前記高麗人参1gからジンセノサイドRe及びRg1が45〜52mg抽出されることを特徴とする。
【0013】
上記製造方法を用いて製造した高麗人参からなる健康食品は、ジンセノサイドRe及びRg1の抽出量を向上させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加熱・加圧した後、一気に減圧することにより、紅参に含まれる水分が急激に膨張し、紅参の組織が膨化して非常に硬い組織を緩めることができるので、高麗人参の中でも紅参に含有される薬効成分を損なうことなく、サポニン成分のうちジンセノサイドRe及びRg1を最大限に抽出させることができ、短時間に製造することができる高麗人参からなる健康食品の製造方法を提供することができる。
また、上記製造方法を用いた高麗人参からなる健康食品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る高麗人参茶からなる健康食品の製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明はこの発明の形態の例であって、いわゆる当業者は特許請求の範囲内で、変更・修正をして他の実施形態をなすことは容易であり、以下の説明が特許請求の範囲を限定するものではない。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る高麗人参からなる健康食品の製造方法を示す工程図である。健康食品に用いる高麗人参は、畑から採った新鮮な根である水参を従来の方法により加工した白参及び紅参である。白参は、採ったばかりの新鮮な水参のひげ根及び外皮を除いてそのまま日干しにして乾燥させたものである。紅参は、採ったばかりの新鮮な水参をそのまま蒸して乾燥させたものである。本実施の形態では上述の方法により加工した紅参を用いる(S10)。
【0018】
まず、紅参を加工しやすい所望の大きさに切断する(S20)。切断は、例えば、紅参を数cm程度の幅で輪切りにする。その他、ブロック状又はスライス状等、後の裁断工程で加工しやすい形状に応じて切断してもよい。そして、切断した紅参を水で洗浄する。
【0019】
次に、乾燥工程において、洗浄した紅参を満遍なく乾燥させる(S30)。乾燥は、70〜80℃で水分の含有量が15〜18重量%になるまで行う。15〜18重量%に限定したのは、後述する圧力と熱を印加したときに、水分の含有量が15%未満では、紅参に十分な膨張力が得られずにサポニンの抽出量に影響を及ぼし、18重量%を超える場合は、紅参が膨張しすぎて製品としての紅参の形状に影響を及ぼすからである。
【0020】
次に、裁断工程において、乾燥した紅参を所望の大きさの粒子状に裁断機で裁断する(S40)。大きさは、製品として出荷する加工品の大きさに応じて、例えば、一片又は直径が約0.5〜3mmの大きさに略立方体形状又は略球形状に裁断される。このように裁断することにより、紅参をティーバッグ等に詰めることができ、飲料の素や調理用の食材等に用いる消費者にとって都合がよい。ここで、形状を略立方体形状又は略球形状としたが、同程度の容積を有するものであれば、これら以外の形状、例えば直方体又は多面体でもよい。また、調理用に都合のよい形状として、スライス状に裁断してもよい。この場合は、上記のティーバッグ等に詰める形状のものより、容積は大きくなる。
【0021】
次に、裁断した紅参を、大きさ別に分別する(S50)。例えば、一片が0.5〜3mmの大きさに裁断されたものを、一片が約0.5〜1.5mmのものと約1.5〜3mmのものとに分別する。分別を行うのは、最終的に消費者が飲料用や調理用に用いる製品毎の大きさに包装するためである。
【0022】
次に、分別した紅参を膨化機の容器内に入れ、圧力を加えて焙煎する(Puff and roasting)。膨化機の容器内部の温度を110℃以上、120℃未満にした状態で、膨化機の容器内部の圧力(以下「膨化圧力」ともいう)が3.3〜3.8kg/cm、になるまで加圧する(S60)。上記温度及び圧力に達した状態で所定時間焙煎する。
膨化機は、密閉可能な容器を有し、上記圧力及び熱を容器内に発生させることが可能な加工装置である。
【0023】
次に、上記圧力に達して焙煎した後、圧力調整を行う。圧力調整は、紅参が入っている容器内の圧力を一気に常圧まで減圧することにより行う(S70)。ここで、常圧とは大気圧をいう。そして、膨化機の容器内部の温度を常温まで冷却する。
【0024】
膨化機は、例えば、容器の部分を回転式のドラム形状とし、ドラム内で攪拌しながら焙煎してもよい。この焙煎における熱及び圧力は上記の範囲内で紅参の加工する大きさに応じて適宜変更してもよい。例えば、一辺又は直径が0.5〜1.5mmの紅参と、一辺又は直径が1.5〜3.0mmの紅参とで異なる圧力又は熱で印加してもよい。
【0025】
この処理(S60、S70)により、紅参に含まれる水分が急激に膨張し、紅参の組織が膨化して非常に硬い組織を緩めることができ、サポニン等の抽出率を向上することができる。水分の含有率を15〜18重量%とした理由は上述したとおりである。このような圧力及び熱を印加して食品を加工する技術自体は従来から知られている。
【0026】
しかし、これを高麗人参にそのまま応用することは、高麗人参が優れた薬効成分を有するため、熱によりこれらの薬効成分が破壊される場合も考えられ、そのまま適用することは難しかった。特許文献1に記載の従来技術では、最大圧力が15kg/cmまで必要とするため装置が大掛かりになり、印加する熱も120〜150℃と非常に高いため、サポニン等の薬効成分に影響を与えることが考えられる。
【0027】
次に、膨化機の容器内部から紅参、即ち、高麗人参顆粒を取り出し、製品別に包装する(S80)。例えば、紅参を飲料として用いる場合は、ティーバッグ用に加工した袋に所望の量を詰める。そして、高麗人参からなる健康食品として製品毎に出荷する。
【0028】
次に、下記実施例において上記製造方法を用いて製造した高麗人参顆粒における各々のサポニンの含有量及びジンセノサイドRe及びRg1の抽出量を測定する。測定方法は、HPLC(High Performance Liquid Chromatography)法を用いる。
【0029】
(実施例1)
上記製造工程において、洗浄し乾燥させた紅参を、膨化圧力3.3kg/cm、温度110℃で焙煎した紅参顆粒1gをビーカーに入れ、80℃のお湯を100ml注いで浸す。浸す時間は1回につき30分間で、3回繰り返す。次に、抽出液をろ過した後、濾過液を脱色樹脂で濾過して樹脂を吸着させ、水で洗浄して、糖やたんぱく質等の水溶性の雑物を除去する。
【0030】
次に、この樹脂をエチルアルコールでサポニン反応が無くなるまで洗浄する。サポニン反応は、試験管に洗浄液を0.5ml入れ、1mlの氷酢酸を加え、試験管を45度傾け、管壁に沿って1mlの希硫酸を入れて反応の有無を調べる。そして、サポニン反応があるときは、氷酢酸と希硫酸との間に紫色の輪が現れて陽性反応を示す。
【0031】
次に、洗浄したエチルアルコールを回収し、回収液を二つに分け、一つは弱アルカリ性陰イオン交換樹脂を吸着させ、他の一つは強酸性イオン交換樹脂を吸着させて、再び、エチルアルコールで洗浄する。上記洗浄は、サポニン反応が出なくなるまで繰り返す。
【0032】
次に、上記洗浄液を回収して乾燥させることにより、高麗人参顆粒が完成する。そして、サポニン成分のうち、ジンセノサイドRe及びRg1の総量を計測する。
【0033】
(実施例2)
実施例1における膨化圧力のみを変更して3.5kg/cmとし、以下、実施例1と同様に処理して高麗人参顆粒を得て、ジンセノサイドRe及びRg1の総量を計測する。
【0034】
(実施例3)
実施例1における膨化圧力のみを変更して3.8kg/cmとし、以下、実施例1と同様に処理して高麗人参顆粒を得て、ジンセノサイドRe及びRg1の総量を計測する。
【0035】
(参考例1)
上記製造工程において、乾燥させた後、裁断した紅参1g、即ち、加圧・加熱前の状態にある紅参1gをビーカーに入れ、80℃のお湯を100ml注いで浸す。浸す時間は1回につき30分間で、3回繰り返す。次に、抽出液を濾過した後、濾過液を脱色樹脂で濾過して樹脂を吸着させ、水で洗浄して、糖やたんぱく質等の水溶性の雑物を除去する。
【0036】
次に、実施例1と同様に、エチルアルコールでサポニン反応が無くなるまで洗浄して洗浄液を回収し、乾燥させて高麗人参顆粒を得て、ジンセノサイドRe及びRg1の総量を計測する。
【0037】
(参考例2)
参考例1で用いたものと同一の紅参1gをビーカーに入れ、水を100ml注いで煎じる。煎じる回数は3回で、煎じる時間は1回目が2時間、2回目が1.5時間、3度目が1時間である。その後、各々の時間で煎じた液を合わせて濾過する。次に濾過した液を二つに分けて、各々を弱アルカリ性陰イオン交換樹塔と強酸性イオン交換樹脂塔とに透過させる。そして、透過させた後の溶液を回収し、乾燥させて高麗人参顆粒を得て、ジンセノサイドRe及びRg1の総量を計測する。
【0038】
以下、表1において、上記実施例1〜3及び参考例1、2により得られたジンセノサイドRe及びRg1の総量を比較検討する。
【0039】
【表1】

表1に示すように、実施例1〜3により得られた高麗人参顆粒のサポニン抽出量は、0.61〜0.64gであり、従来技術による参考例1及び2で得られた0.05g及び0.42gに比べて多く、サポニンの抽出量に高い改善が見られた。
【0040】
ジンセノサイドRe及びRg1に関しては、実施例1〜3により得られた抽出量が45.50〜51.93mgであり、従来技術による参考例1及び2で得られた抽出量3.94mg及び33.59mgに比べて多く、ジンセノサイドRe及びRg1の抽出量に高い改善が見られた。
【0041】
さらに、サポニンに対するジンセノサイドRe及びRg1の抽出率は、実施例1〜3が7.44〜8.46%であり、参考例1及び2が7.87%及び7.97%であり、実施例1〜3と参考例1、2とで略同程度であった。これは、ジンセノサイドRe及びRg1が、実施例1〜3における圧力及び熱により何ら破壊されることがないことを示し、ジンセノサイドRe及びRg1の抽出量に影響を及ぼさないことを示している。
【0042】
以上により、実施例1〜3に示すように、適度な水分を含んで裁断した紅参に圧力及び熱を印加して一気に減圧することにより、サポニン及びジンセノサイドRe及びRg1の抽出量を著しく向上させることができた。
【符号の説明】
【0043】
S10 紅参加工工程
S20 切断・洗浄工程
S30 乾燥工程
S40 裁断工程
S50 分別工程
S60 加圧・加熱工程
S70 圧力調整工程
S80 包装工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紅参を含む高麗人参からなる健康食品の製造方法であって、
採れたての水参から加工した紅参を切断して洗浄し、乾燥させる工程と、
乾燥した前記紅参を所定の大きさに裁断し、所定の大きさごとに分別する工程と、
分別した前記紅参を温度110℃以上、120℃未満に加熱した状態で、圧力3.3〜3.8kg重/cmまで加圧する工程と、
加圧した前記圧力を常圧まで一気に減圧させる工程と、を含む
ことを特徴とする高麗人参からなる健康食品の製造方法。
【請求項2】
紅参を含む高麗人参からなる健康食品であって、
温度110℃以上、120℃未満、及び、圧力3.3〜3.8kg重/cmを印加して得られた前記紅参1gからジンセノサイドRe及びRg1が45〜52mg抽出される
ことを特徴とする高麗人参からなる健康食品。

【図1】
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【公開番号】特開2010−246470(P2010−246470A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99676(P2009−99676)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(509109383)有限会社ケイ・ジー・イージャパン (1)
【Fターム(参考)】