説明

高麗人参の実抽出物を含有する血行促進、血管新生促進及び虚血性心疾患治療用、皮膚美容増進用並びに男性性機能改善用組成物

高麗人参の実抽出物を有効成分として含有する血行促進用組成物、血管老化防止用組成物、血管炎症治療用組成物、血管生成促進用組成物、虚血性心疾患治療用組成物、局所の血流不足改善及び治療用組成物、皮膚美容増進用組成物及び男性の性機能改善用組成物を開示する。より詳しくは、高麗人参の実抽出物を有効成分として含有し、血管内皮細胞において一酸化窒素(NO)の生成を促進させ、血管内皮細胞の生存を増進させ、血管内皮細胞の移動性増加と血管チューブ生成による血管新生を促進させ;抗酸化効果、コラーゲン生合成の促進、MMP−Iの抑制による皮膚老化防止及びしわ改善効果を示し、メラニン合成の阻害による皮膚美白効果を示し且つ皮膚保湿効果を示し;陰茎海綿体平滑筋を弛緩させるとともに陰茎の勃起を増進させ、この結果、男性性機能を改善させることができ、また一酸化窒素生成酵素の基質であるL−アルギニンを高麗人参の実抽出物と併用することにより一酸化窒素生成効果をより向上させることができる組成物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高麗人参の実抽出物を有効成分として含有する血行促進用組成物、血管老化防止用組成物、血管炎症治療用組成物、血管生成促進用組成物、虚血性心疾患治療用組成物、局所の血流不足の改善及び治療用組成物、皮膚美容増進用組成物、及び男性性機能改善用組成物に関する発明である。より詳しくは、本発明は、高麗人参の実抽出物を有効成分として含有し、血管内皮細胞での一酸化窒素(NO)の生成を促進させ、血管内皮細胞の生存を改善させ、血管内皮細胞の移動性を増加させて血管形成による血管新生を促進させ;また、内皮細胞での一酸化窒素(NO)の生成を促進させることで陰茎海綿体を弛緩させるとともに陰茎の勃起を増進させ、この結果、男性性機能を改善させ;抗酸化効果を与え、コラーゲン生合成の促進及びMMP−1の抑制により皮膚老化を防止し、しわを改善し、メラニン合成の阻害による皮膚美白効果を示し、皮膚保湿効果を示す組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高麗人参(Panax ginseng C.A.Meyer)は、ウコギ科の高麗人参属に属する植物であって、韓国や中国、日本等において約2、000年前から使われてきた生薬で、経験的に疾病を予防し寿命をのばす目的で使われている。今までに、高麗人参は次の効能及び効果:中枢神経系に対する陽性作用、抗発癌作用、抗癌活性、免疫機能調節作用、抗糖尿作用、肝機能亢進効能、心血管障害の改善、抗動脈硬化作用、血圧調節作用、更年期障害の改善、骨粗鬆症の改善、抗ストレス及び抗疲労作用、抗酸化活性及び老化抑制効能などを有することが分かっている(最新高麗人参「成分及び効能編」、韓国人参煙草研究院、56−112, 1996)。
【0003】
高麗人参の代表的な有効成分であるジンセノサイド(Ginsenoside)は、高麗人参の地上及び地下部に均一に分布しており、特に高麗人参の根、高麗人参の葉及び高麗人参の実などの部位に応じてジンセノサイドの含量が異なり、また組成も異なることが知られている(Attele AS et al, Biochem Pharmacol., 58; 1685-1693, 1999)。その中でも高麗人参の実は、ジンセノサイドの特有の含量と組成を有するため、高麗人参の根より優れた抗糖尿効能を示すと報告された(Dey L. et al., Phytomedicine, 10; 600-605, 2003)。
【0004】
高麗人参の実は、昔から高麗人参の他の部位よりも貴重なものと取り扱われ、種子の獲得を目的として選別され収獲されてきた。高麗人参の実は、栽培4年目の4年根から1回だけ採種する。3年根のものから採種すると、種子が小さすぎて良い苗を生産しにくくなる。5年根以上のものから採種すると、種子は丈夫であるがその根は十分に成長しないであろうし、また組織が緻密でないため高品質の紅参を製造することが難しい。また栽培期間中に2回以上採種すると、紅参の数量及び品質が大きく低下する(最新高麗人参「栽培編」、韓国人参煙草研究院、130-131、 1996)。
【0005】
血液循環については、特に末梢血液循環については、毛細血管の拡張が必須であるといえる。すなわち、血管での血流増加は、必ず血管の拡張を必要とする機序であり、血管を拡張させるためには、eNOS(内皮一酸化窒素合成酵素)の作用によるNOが関与するようになる。したがって、高血圧の場合には、NOの生成が低減する(Forete, P. et al., Basal nitric acid synthesis in essential hypertension. Lancet. 1997; 349:837-842)。そして、老化、喫煙、高脂血症、糖尿などの他の要因は、血管中のNOを低減させる(Crossman, DC. More problems with endothelium. Q J Med. 1997; 90:157-160)。
【0006】
血管新生は、既存の血管から新たな血管を成長させる過程であって、血管を構成している内皮細胞の移動、細胞間障壁である細胞外マトリクス(ECM)を通過する浸潤、増殖、及び血管への分化(管形成)といった幾つかの段階を通じて起こる(Folkman, J. et al., Angiogenesis. The Journal of Biological Chemistry, 1992, 267(16), 10931-10934)。
【0007】
生理的には、血管新生は、胎児の発生又は女性の月経中に発生し、局所の酸素不足によって一時的に起こることがあり、虚血性疾患や骨折などの血流が不十分な場合には、治療性血管新生が活用されている。また、動脈硬化による虚血性心血管疾患により死亡する死亡率が全世界で一位を占めており、近年、韓国内でもその死亡率が急速にのびてきている(ジョン・ジンオク他、血管新生治療法。大韓血管外科学会誌。2000.16(2), 265-269)。
【0008】
L−アルギニンは、化学式C61442で表される塩基性アミノ酸で分子量174.21であり、最初はルピヌス(豆の一種)の芽抽出物から単離された。L−アルギニンは、タンパク質を構成するアミノ酸の一種として存在し、魚類の精子に存在するタンパク質プロタミンが豊富であり、植物種子中で遊離状態で存在する。また、これは、尿酸生成経路(オルニチン回路)の主要成分であり、アルギナーゼ酵素の作用によって尿素とオルニチンとに分解される。それは、シトルリンとアスパラギン酸から合成され、大人には必須でないアミノ酸であるが、乳児には栄養的に必須のアミノ酸である。
【0009】
NO−ニトロ−L−アルギニンは一酸化窒素合成酵素の阻害剤として知られており、また、NO−ニトロ−L−アルギニンが血管の弛緩を妨害し得ることを示す研究がある。しかし、NO−ニトロ−L−アルギニンの阻害効果は、L−アルギニン(3×10-3moL/L)の存在下で逆転され得ることを示す他の研究がある(Simonsen et al., Nitric oxide is involved in the inhibitory neurotransmission and endothelium-dependent relaxations of human small penile arteries, Clin Sci. 92:3, 265-75.)。この研究は、L−アルギニンが一酸化窒素合成酵素のための有効な基質になり得、血管での一酸化窒素(NO)の遊離を促進し得ることを提案している。
【0010】
男性の性機能の様態は、性的欲求、陰茎の勃起、射精及びオルガスムからなり、これは、神経系、内分泌系及び血管系の複合的な生理反応によって決められ、このうち一つでも異常があれば性機能障害の原因になることがある。このような性機能障害は、約10年前までもその大半の原因が心因性であると思われていた。しかし、患者の約50%以上において性機能障害は血管系、神経系及び内分泌系疾患、糖尿病、高血圧、薬物服用などの様々な原因によることが明らかになってきている。近年、ホスホジエステラーゼV抑制剤であるシルデナフィル(sildenafil)が、性機能障害の治療について多くの関心を集めているが、このような治療法は化学薬品を用いて一時的な勃起を誘発させる方法であって、高価であり且つ頭痛、血圧上昇、心臓麻痺などの副作用が多い。特に心臓病による死亡のケースが少なくないと報告されている。したがって、人体の本能的な勃起機能を増強させる安全且つ有効な治療が必要とされており、最近の傾向は、陰茎海綿体平滑筋の強い弛緩作用を示す信号伝達物質である一酸化窒素及びcGMPの生成を増大させる性機能改善治療の開発に向かっている。
【0011】
陰茎の勃起中に起こる変化は複雑であって、末梢及び中枢神経系、内分泌系を関与させる高度な協調制御を必要とする。海綿体平滑筋の収縮は、シナプス後α1アドレナリン性受容体の活性化によるノルアドレナリン性神経刺激によって調節され、勃起不全症は、海綿体の内因性平滑筋緊張の増大と関連性があるとされている。しかし、陰茎平滑筋の弛緩は、非アドレナリン性、非コリン性(NANC)神経伝達によって部分的に媒介され、陰茎海綿体平滑筋の緊張の低減は一酸化窒素が海綿体の弛緩を誘導するためである。性的興奮中に一酸化窒素がニューロン及び内皮から放出され、平滑筋細胞及び内皮細胞に存在する可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)に結合してそれを活性化させることにより、細胞内の環状グアノシン3'−、5'−一リン酸塩(cGMP)のレベルを増大させる。未知の機序を通じて、タンパク質キナーゼG活性化が関与すると考えられるが、このcGMPレベルの増大は、細胞内カルシウム濃度の低減による海綿体の弛緩を誘導する(Ca2+−活性化K+−チャンネルの活性化に起因する可能性がある)(Chuang et al., cGMP mediates corpus cavernosum smooth muscle relaxation with altered cross-bridge function. Life Sci. 1998; 63(3):185-94)。
【0012】
一方、現代社会の生活レベルの向上と、人々の外貌に対する多大な関心の増加に伴い、皮膚に塗る化粧品の他、食用製品により皮膚美容を改善しようとする要求が強くなりつつある。すなわち、皮膚老化を抑制し且つしわを改善し、皮膚美白及び皮膚保湿を増進するのに有効な皮膚美容食品に対する関心と期待が高くなっている。
【0013】
皮膚は、身体の表面を覆っている組職であって、表皮、真皮及び下皮の3層から構成されており、その他、汗腺、皮脂腺、乳腺及び毛根などの副器官がある。さらに、表皮は、角質層、透明層、顆粒層、有棘層、及び基底層に分けられる。表皮を形成する細胞の主な種類は、角質形成細胞とメラニン細胞である。真皮は、上部の乳頭層と下部の網状層の2つの部分に分けられ、粘弾性組職からなるとともに無定形の基質、膠原線維(コラーゲン)及び弾力線維(エラスチン)などの線維状タンパク質から構成されている。乳頭層は、コラーゲン細線維と線維間の空隙から構成され、細胞成分と基質成分が多い。一方、網状層は、太くて凝集したコラーゲン線維と線維間の空隙から構成されている。これらの膠原線維がエラスチンによって繋がっている。
【0014】
皮膚老化は、その老化の原因によって内因性老化と外因性老化とに区分することができ、内因性老化は、環境変化とは無関係に年をとるにつれて皮膚の構造と生理機能が減退することをいい、外因性老化は、太陽光線などの外部環境への持続的な露出に起因する。特に、光による皮膚老化を光老化といい、紫外線は皮膚老化の生理学的及び形態学的変化の主な原因になる。また、内因性及び外因性老化の影響とともに現代社会の環境的影響及び季節的要因によって、表皮と真皮において糖タンパク質の主要成分であるヒアルロン酸の生合成が減少し、この結果、皮膚が荒れたり乾燥したりするようになる。
【0015】
内因性皮膚老化が進行すると、皮膚が乾燥し、小じわが増えるとともに深くなる。また、表皮、真皮などの構造及び機能的な変化によって皮膚が弾力性をほとんど失い、弛んで見えるようになる。真皮の厚みは減少するのに対し、コラーゲンの総量は毎年1%ずつ消失し、また残っているコラーゲン線維は、徐々に厚くなりながら架橋し易くなり、溶解度や膨張力などが減少する。同時に弾力線維もより厚くなり、また架橋し易くなる。さらに、真皮内では線維芽細胞の増殖が低下し、コラーゲンの合成及び分解の能力も低減する。
【0016】
コラーゲンは、皮膚老化に関連した主な皮膚組職成分で、脂肪を除く皮膚の全乾燥重量の77%、真皮の線維成分の90%を占めているタンパク質であって、皮膚強度、弾力性及び柔軟性を保持できるようにする機能を果たす。したがって、コラーゲンの合成増進及び分解抑制は、皮膚美容及び皮膚老化抑制に関連する重要な問題になった。
【0017】
光老化は、内因性老化とは見掛け上の変化は似ているが、組職学的には、角質形成細胞の増殖により表皮が厚くなること、メラニン細胞の増加、及び光による損傷部位における色素沈着に関係する。
【0018】
清浄で透明な白い肌の持ち主になりたいこともまた、現代人の強い欲望の一つである。ヒトの肌の色は、皮膚中のメラニン濃度と分布によって決められ、遺伝的な要因の他、紫外線、疲れ、ストレスなどの環境的または生理的条件にも関連する。メラニンは、アミノ酸の一種であるチロシンが、チロシナーゼという酵素の作用によりドーパ(DOPA)に変わり、次にドーパキノンに変わった後、非酵素的な酸化反応を経ることによって合成される。メラニンの合成が皮膚中で過度に起こると、肌の色合いを暗くし、肝斑、そばかすなどを発生させたりする。したがって、皮膚中のメラニン色素の合成を阻害すれば、皮膚美白効果を得ることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、前記問題点を解決することを目的とする。本発明者らは、高麗人参の地上部である高麗人参の実抽出物が、高麗人参の根や紅参根などの他の部分とは異なる組成及び効能を有することを見出した。
【0020】
したがって、本発明の目的は、高麗人参の実抽出物を用いて、血行を促進させ、血管内皮細胞の生存を増進し、血管内皮細胞の移動性を促進させ、血管内皮細胞の管形成を促進させることによって血管新生を促進させる組成物と、皮膚老化を抑制し、しわを改善し、皮膚美白と皮膚保湿効果を提供する皮膚美容増進用組成物と、陰茎海綿体平滑筋の強い弛緩作用を誘発する信号伝達物質である一酸化窒素(NO)の生成を増加させることによって陰茎の勃起を増進し、この結果、男性性機能を改善させる組成物とを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために、本発明は、高麗人参の実抽出物を有効成分として含有する血行促進用組成物、血管老化防止用組成物、血管炎症治療用組成物、血管生成促進用組成物、虚血性心疾患治療用組成物、及び局所の血流不足改善及び治療用組成物を提供する。
【0022】
本発明の実施形態の虚血性心疾患治療用組成物において、前記虚血性心疾患は、動脈硬化、狭心症、または心筋梗塞であることを特徴とする。
【0023】
本発明の実施形態の組成物において、前記高麗人参の実抽出物は、乾燥された高麗人参の実にエタノールを加えて還流抽出し、ろ過し、濃縮し、油溶性構成物を除去した後にブタノールを加えて抽出し、濃縮して得ることを特徴とする。
【0024】
また別の態様では、本発明は、有効成分として高麗人参の実抽出物を含有する皮膚美容増進用組成物を提供する。
【0025】
また別の態様では、本発明は、高麗人参の実抽出物を有効成分として含有する男性性機能改善用組成物を提供する。また、別の態様では、前記有効成分としてさらにL−アルギニンを含有する男性性機能改善用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明による高麗人参の実抽出物含有組成物は、血管を拡張させることで血行を促進し、血管老化を抑制し、血管炎症を治療し、血管新成を促進することで動脈硬化、狭心症、及び心筋梗塞のような虚血性心疾患治療に有用であり、また関節炎または骨折による局所の血流不足改善及び治療に有用である。また、皮膚老化抑制効果、皮膚しわ改善効果、皮膚美白効果及び皮膚保湿効果などに優れ、これを有効成分として含有する皮膚美容増進用健康機能補助食品を製造することができる。また、本発明による高麗人参の実抽出物は、血管内皮細胞において一酸化窒素(NO)の生成を増加させることにより、一酸化窒素(NO)の生成によって陰茎の勃起を増進する可能性を提示する。また、このような効果は、一酸化窒素生成酵素の基質であるL−アルギニンと併用したときにさらに高められ得る。したがって、高麗人参の実抽出物及びL−アルギニンを有効成分として含有する組成物は、男性性機能を効果的に改善する。
本発明の上記及び他の目的、性質、並びに他の利点は、特許請求の範囲とともに、下記の詳細な説明からより明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】図1aは血管内皮細胞を共焦点レーザー顕微鏡で撮った写真であり、図1bは蛍光強度を無処理群の蛍光強度と比較して示すグラフである。
【図2】図2aは生存した血管内皮細胞の増殖を示す写真であり、図2bは染色された血管内皮細胞の吸光度を比較して示す図である。
【図3】図3aは染色された血管内皮細胞の移動性を示す写真であり、図3bは細胞の移動性を無処理群の移動性と比較して示すグラフである。
【図4】図4aは固定染色された血管内皮細胞の写真であり、図4bは形成された管の長さを無処理群の管の長さと比較して示すグラフである。
【図5】図5aは大動脈血管の周辺に毛細管形態の新しい血管が伸びていくことを光学顕微鏡を利用して観察した写真であり、図5bは新しく発芽、形成された血管の長さと本数で血管発芽の促進効果を評価した後、点数にて表した結果を示すグラフである。
【図6】図6aはマウス内での血管新生を生体蛍光顕微鏡で観察してリアルタイムで撮った写真であり、図6bはコンピュータープログラムを用いて分析した血管の変化を点数にて示すグラフである(0:変化が一番小さい;5:変化が一番大きい)。
【図7】LPSで誘導させたNO生成の阻害効果を比較するグラフである。
【図8】マウス血液からNO生成量、炎症因子であるPGE2、TNF−α、IL1−βの生成量を比較するグラフである。
【図9】試験物質の活性酸素除去活性を示すグラフである。
【図10】実施例1による高麗人参の実抽出物のコラーゲン生成量を示すグラフである。
【図11】実施例1による高麗人参の実抽出物のMMP−1生合成阻害効果を示すグラフである。
【図12】実施例1による高麗人参の実抽出物のしわ発生の抑制率を示すグラフである。
【図13】実施例1による高麗人参の実抽出物のしわ減少率を示すグラフである。
【図14】L−アルギニン、紅参抽出物及び高麗人参の実抽出物の血管内皮細胞での一酸化窒素(NO)生成促進効果を示す、共焦点レーザー顕微鏡で撮った写真である。
【図15】L−アルギニン、紅参抽出物及び高麗人参の実抽出物の血管内皮細胞での一酸化窒素(NO)生成促進効果を相対的蛍光強度として示すグラフである。
【図16】高麗人参の実抽出物とL−アルギニンの一酸化窒素生成相乗効果を相対的蛍光強度にて示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明についてより詳細に説明する。
本発明は、有効成分として高麗人参の実抽出物を含有し、血管内皮細胞でのNO生成を促進させることによって、血液循環を円滑にし、血管内皮細胞の生存を増進させ、血管内皮細胞の分化と移動を促進させ、血管新生を促進させる組成物を提供する。本発明の前記組成物は、血管内皮細胞での一酸化窒素(NO)生成を増加させることで陰茎の勃起を増進させ、この結果、男性性機能を改善するために、有効成分として高麗人参の実抽出物を含有してよく、また、さらにL−アルギニンを含有してもよい。
【0029】
男性の性機能を改善するためには、陰茎海綿体の強い弛緩作用により陰茎勃起を促進させる必要がある。それは、一酸化窒素(NO)の生成を増加させることに関する。これに関連して、酸化窒素が陰茎勃起に重要な役割をすることが動物実験から明かにされた。血管内皮細胞内の一酸化窒素の生成が、性的刺激下で陰茎の副交感神経末梢においてさらに増加する。一酸化窒素がグアニル酸シクラーゼを活性化させ、グアノシン三リン酸(GTP)を環状グアノシン一リン酸(cGMP)に転換させる。その結果物のcGMPは、海綿体平滑筋及び陰茎動脈の弛緩を生じさせる信号を提供して陰茎勃起を誘導するようになる。よって、陰茎勃起が持続するためには一酸化窒素の生成が重要であるといえる。したがって、一酸化窒素生成酵素の基質であるL−アルギニンと血管において一酸化窒素(NO)の生成を促進させる物質との併用は、海綿体内で一酸化窒素の十分な遊離を刺激し、この結果、平滑筋の弛緩を惹起し且つ持続させて血液を流入し、勃起不全を軽減できるようにする。
【0030】
本発明による男性性機能改善用組成物は、該組成物の種類に応じて高麗人参の実抽出物を、組成物の総重量に対して0.01〜100重量%の範囲で含有することを特徴とする。また、L−アルギニンとの併用時に、L−アルギニンは、該組成物の総重量に対して0.01〜99.9重量%の割合で用いられてよい。
【0031】
また、皮膚老化を抑制し且つしわを改善し、美白効果及び皮膚保湿効果を示すためには、内的/外的要因によって生成される活性酸素(oxygen free radical)を除去する抗酸化効果、コラーゲン生成促進効果、MMP−1抑制効果、チロシナーゼ抑制効果、メラニン生成抑制効果及びヒアルロン酸生成促進効果を必要とする。本発明による高麗人参の実抽出物を含有する皮膚美容増進用組成物は、皮膚老化抑制用、皮膚しわ改善用、皮膚美白用及び皮膚保湿用健康機能補助食品に製剤化することもできる。
【0032】
本発明による健康機能補助食品組成物は、その組成の種類に応じて高麗人参の実抽出物を、該組成物の総重量に対して0.01〜100重量%の範囲で含有することを特徴とする。
【0033】
本発明の高麗人参の実抽出物含有組成物は、食品、医薬品などの添加剤として用いることもできる。
【0034】
医薬品用の場合には、本発明による高麗人参の実抽出物を有効成分として含有する組成物を、常用される無機または有機の担体を加えて固形、半固形または液状の経口投与剤あるいは非経口投与剤に製剤化することもできる。
【0035】
経口投与のための製剤としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、軟・硬カプセル剤、散剤、細粒剤、粉剤、乳濁剤、シロップ剤、ペレット剤などが挙げられる。非経口投与のための製剤としては、注射剤、点滴剤、軟膏、ローション、スプレー、懸濁化剤、乳剤、坐剤などが挙げられる。本発明の有効成分は、常法によって容易に製剤化することができ、界面活性剤、賦形剤、着色料、香辛料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁化剤、その他、常用される補助剤を適当に用いてよい。
【0036】
本発明の組成物を通常の方法によって薬学剤形に調製してもよい。剤形の調製の際、活性成分を担体とともに混合しまたは担体にて希釈し、あるいは容器形態の担体内に封入させることが好ましい。担体が希釈剤として用いられる場合には、活性成分に対する担体、賦形剤または媒質として作用する固形、半固形または液状の物質であればよい。
【0037】
好適な担体、賦形剤及び希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、水、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油が挙げられる。剤形は、充填剤、抗凝集剤、滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含んでよい。本発明の組成物を、哺乳動物に投与された後に活性成分が迅速に、持続して、または、遅延して放出できるように当業界によく知られた方法を用いて剤形化してもよい。
【0038】
本発明の医薬組成物は、経口、経皮、皮下、静脈、腹腔、筋肉、局所適用、貼付及びイオントフォレーゼ(iontophoresis)を含む多様な経路から投与すればよく、この中でも局所適用及び経口投与が好ましい。
【0039】
ヒトの場合、活性化合物の1日の投与量は、1〜100mg/kg体重、好ましくは、5〜70mg/kg体重の範囲であればよく、1回または数回に分けて投与してもよい。しかし、活性成分の実投与量は、治療する疾患、投与経路、患者の年齢、性別及び体重、及び疾患の重症度などの多くの関連因子に基づいて決めるべきであり、よって、前記投与量は、如何なる方法によっても本発明の範囲を限定するものではない。
【0040】
機能性食品に適用する場合には、本発明による高麗人参の実抽出物を有効成分とし、当該分野において通常用いられる成分を適宜選定して、錠剤、カプセル剤、軟カプセル剤、丸剤、顆粒剤、ドリンク剤、ダイエットバー、チョコレート、カラメルまたはお菓子類の剤形などに製剤化することができる。また、健康食品用に適合した機能性原料を付加的に適宜添加してもよい。
【0041】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の技術的範囲がこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
[実施例1]高麗人参の実抽出物の調製
1)高麗人参の実の前処理:収穫した生高麗人参の実から種子を分離し除去した後、高麗人参の実の果肉と果皮を日光乾燥または熱風乾燥し、乾燥された高麗人参の実を得た。
2)高麗人参の実抽出物の調製:乾燥された高麗人参の実1kgにエタノール3Lを加えて還流抽出し、ろ過した後、40〜45℃で減圧濃縮して高麗人参の実抽出物300gを得た。
【0043】
[実施例2]高麗人参の実抽出物の調製
1)実施例1で得た高麗人参の実抽出物100gを水1Lに溶解させ、ジエチルエーテル500mlを加え、分液漏斗を用いて脂溶性成分を除去した。しかる後、残った水層に水飽和ブタノール500mlを加えた。この処理を3回繰り返し行った。その結果物のブタノール層を減圧濃縮して高麗人参の実抽出物(天然サポニン)60gを得た。
【0044】
[比較例1]高麗人参の根抽出物の調製
前記実施例1において高麗人参の実の代りに紅参の根を用いたことを除いては、実施例1と同じ方法で調製した。
【0045】
[試験例1]高麗人参の実抽出物と高麗人参の根の成分の比較
1.ジンセノサイド(高麗人参サポニン)成分の分析
実施例1及び比較例1においてそれぞれ高麗人参の実と高麗人参の根抽出物を調製した後、これら抽出物にエーテル処理を施して脂溶性成分を除去した。その後、ブタノール(BuOH)により天然サポニン(crude saponin)を抽出し、濃縮した。HPLCを用いて抽出された天然サポニン中のジンセノサイド(高麗人参サポニン)の成分分析を実施し、その結果を下記表1に表した。
【0046】
【表1】

【0047】
実施例1において調製した高麗人参の実抽出物は、比較例1において調製した高麗人参の根抽出物よりも約2倍の天然サポニン含量を有する。ジンセノサイドをPD(Protopanaxadiol)系(ジンセノサイド Rb1、Rb2、Rc及びRd)とPT(Protopanaxatriol)系(ジンセノサイドRe、Rg1及びRg2)の割合で表すとそれぞれ0.73と3.23であって、このことから分かるように、高麗人参の実抽出物と高麗人参の根抽出物とは、その組成において明らかに異なっている。
【0048】
2.高麗人参の実抽出物のミネラル成分の分析
実施例1において調製した高麗人参の実抽出物は、高麗人参の根とは異なる「果実」であって、高麗人参の根にはほとんど含有されていないビタミン及びミネラル成分を含有しているものと考えられ、その成分分析を実施し、その結果を下記表2に表した。
【表2】

【0049】
以上のように、本発明において用いる高麗人参の実は、高麗人参の根よりも多くの高麗人参サポニンを含有するとともに、そのサポニン組成が高麗人参の根のサポニン組成とは相当に異なっておる。また高麗人参の実抽出物は、高麗人参の根とは異なり、16種のビタミンとミネラルを多量含むことを確認することができた。これに基づき、血管での効能に関する下記実験を実施した。
【0050】
[試験例2]高麗人参の実抽出物のHUVEC(ヒト臍帯静脈内皮細胞)でのNO生成
ヒトの血管内皮細胞にはeNOS(内皮一酸化窒素合成酵素)が存在し、その活性が増加することでNO(酸化窒素)を生成させ、その結果、血管を拡張させ、血行を促進する役割を果たすようになる。ヒトの血管内皮細胞を培養した後、高麗人参の実抽出物(実施例1、2)と一般の紅参の根抽出物(比較例1)を培地に処理して生成されるNOの量を比較した。
【0051】
血管内皮細胞をゼラチンコーティングされた24ウェルプレートに2.5×104cell/ウェルの密度で付着する。該細胞を成長培地で12時間培養する。血管内皮細胞を、高麗人参の実抽出物または一般の紅参の根抽出物処理群(実施例1、2、比較例1)、無処理群を用いて12時間前処理する。その後、FBSのないM199培地においてDAF−FMジアセテート(Molecular Probe、OR)10μmol/Lを用いて37℃で30分間処理する。しかる後、血管内皮細胞をFBSのないM199培地において3回洗浄した後、平行板型フローチャンバ(parallel plate flow chamber)に入れて水銀灯から分離された光で刺激する。励起波長は488nmで、DAFにNOが結合されると、515nmで蛍光を発する。図1aは、共焦点レーザー顕微鏡(Atto Bioscience、USA)で撮った写真であり、図1bは、Image−Pro Plus v4.5ソフトウェア(Media Cybernetics、San Diego、CA、USA)で分析した蛍光強度を無処理群の蛍光強度と比較して示すグラフである。
【0052】
図1に示すように、本発明による実施例1、実施例2の高麗人参の実抽出物は、100μg/ml濃度において無処理群と比べて1300%〜2000%のNO生成を示し、比較例1の一般の紅参の根抽出物は、同じ100μg/ml濃度において約100〜200%のNO生成を示した。特に、実施例2の抽出物はより多くのNOを生成した。このことから、高麗人参の実抽出物は、一般の紅参の根抽出物と比べて血管内皮細胞でのNO生成能が遥かに優れていることが分かる。実施例1、実施例2の高麗人参の実抽出物の上記のような優れたNO(酸化窒素)生成能は、結局、血管を拡張させ且つ血液循環を促進させる効果を奏する。
【0053】
[試験例3]血管内皮細胞の生存率調節効果(cell viability)
血管の老化を抑制し、血管を新生させるうえで最も基本的な段階が血管内皮細胞の活性を促進させることであると言える。陽性対照群(VEGF;Vascular endothelial growth factor)と高麗人参の実抽出物(実施例1、2)の処理群おいて、血管内皮細胞の生存率を比較した。
【0054】
血管内皮細胞の生存率をクリスタルバイオレット染色により測定した。先ず、血管内皮細胞を24ウェルプレート上に5×104の細胞数で付着させた後、成長培地で12時間培養した。次いで、1%血清が入っているM199培養液で6時間処理して細胞分裂期を等しく誘導し、実施例1、2をそれぞれ25、50、100μg/mLで処理し、陽性対照群を処理した。そして、18〜24時間後に培養液を取り除き、生きている血管内皮細胞のみを染色させるためにクリスタルバイオレット染色剤300μlを入れ、約30分間常温で放置した。しかる後、生理活性緩衝液(PBS)で2〜3回洗浄した後に1%SDS溶液で細胞を粉砕し、550nmの吸光値で陽性対照群と実施例1、2を処理した群とを比較することにより細胞の生存率を測定した。
【0055】
図2aは生存した血管内皮細胞を撮影したものであり、図2bは染色された血管内皮細胞の吸光度を測定して比較したものである。図2aの写真結果及び図2bの吸光度によれば、高麗人参の実抽出物(実施例1、2)処理群は、無処理群に比べて血管内皮細胞の生存率を増進させ、生きている細胞の増殖を促進させる効果を示し、特に実施例2の場合、陽性対照群であるVEGFよりも血管内皮細胞の生存を増進させ、増殖を促進させることと示された。したがって、高麗人参の実抽出物は、血管内皮細胞の生存率を増進させ、増殖を促進させることにより血管の老化を抑制し、血管新生を促進するということが分かる。
【0056】
[試験例4]血管内皮細胞移動性の促進効果(HUVECの移動)
血管新生を測定する一般的な方法の一つである細胞移動性を測定し分析した。細胞の移動性分析は、Boyden's chamber(トランスウェル)を用いた。24ウェルプレートにそれぞれ血清のないM199培養液600μlを入れ、培養液に高麗人参の実抽出物(実施例1、2をそれぞれ25、50、100μg/mL)及び陽性対照群を処理した後、トランスウェルの下面にゼラチン(1mg/ml)を塗抹し、上面に2×104個の細胞を付着させた。約4時間経過した後に上面の細胞を綿棒を利用して除去し、下面へ移動した細胞をヘマトキシリンとエオシンで染色し、染色された総細胞数を数えた。図3aは染色された血管内皮細胞の移動性を撮影した写真であり、図3bは細胞の移動性を無処理群の移動性と比較して示すグラフである。
【0057】
図3に示すように、実施例1、2は、血管内皮細胞の移動性を促進させる効果を示し、特に実施例2は、陽性対照群であるVEGFよりも優れた結果を示した。したがって、高麗人参の実抽出物は、血管新生の主な機序である血管細胞の移動性を促進させるといえる。
【0058】
[試験例5]血管内皮細胞の管形成の促進効果
血管新生調節能の測定により細胞による管形成度合いを測定した。一般に、細胞の管形成能力はマトリゲルを用いて実験する。24ウェルプレートにマトリゲル250μlを塗抹した後、2.5×104個の細胞をマトリゲル上に付着させる。所定の時間間隔をおいて無処理群、陽性対照群(VEGF)、高麗人参の実抽出物処理群(実施例1、2)の管形成が生じることを観察し、適正な時点で細胞を固定染色して管形成が生じた度合いをコンピュータープログラムを用いて分析した。図4aは固定染色された細胞の写真であり、図4bは形成された管の長さを無処理群の管の長さと比較して示すグラフである。
【0059】
図4に示すように、実施例1、2は、血管新生の主な機序である細胞の管形成を促進させる結果を示し、特に実施例2は、陽性対照群よりも優れた効果を示した。
【0060】
[試験例6]血管発芽(Vessel Sprouting)の促進効果
血管新生調節能の測定により血管から周辺に発芽することを確認した。SDラットを使用し、実験群を無処理群、VEGF処理群、高麗人参の実抽出物(実施例1、実施例2)処理群に区分した。ラットの胸部位を切開して大動脈環(Aortic ring)を得、無血清DMEM培地に保管した後、各大動脈血管に対して培地にVEGFと高麗人参の実抽出物(実施例1、2)をそれぞれ処理し、37℃で約7日間培養して血管が周辺に発芽することを観察した。図5aは、大動脈血管の周辺に毛細血管形態の新しい血管が伸びていくことを光学顕微鏡を用いて観察した写真であり、図5bは、新しく発芽、形成された血管の長さと個数で血管発芽(Vessel Sprouting)の促進効果を評価した後、点数にて示したものである。
【0061】
図5に示すように、高麗人参の実抽出物(実施例1、2)は、血管の発芽を促進させる効能を示し、特に実施例2は、陽性対照群よりも優れた効果を示した。これは、血管新生に対する効能を裏付ける結果であるといえる。
【0062】
[試験例7]血管新生の促進効果
1.5%イソフルラン溶液とO2/N2Oとを混合したものを用いて約6〜8週齢の雄BALB/cマウスを麻酔させる。マウスの腹部にチタン材質のウィンドウ(直径19mm、内径14mm、厚さ0.7mm)をインプラントする。対照群としてVEGF 20ng、高麗人参の実抽出物(実施例1、2)をそれぞれマトリゲルに混ぜてからウィンドウ内側の組職中に挿入し、カバースリップを覆ってスナップリングで固定する。血管新生度合いを生体蛍光顕微鏡(intravital fluorescence microscopy)を用いてリアルタイムで目視する。4日が経過した後に血管新生度合いを確認するために、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate、FITC)で標識されたデキストラン(MW 250,000 Sigma Chemical, St. Louis、Missouri)を、25mg/mlの濃度で50μlずつ、尾静脈に注入する。図6aは、ブルーライト(440〜475nm、励起波長530〜550nm、放出波長)を用いる電子倍増CCDカメラ(Photon Max 512;Princeton Instruments, Trenton, NJ)を利用して生体蛍光顕微鏡像(Zeiss Axiovert 200M microscopy、Oberkocchen、Germany)をリアルタイムで撮った写真であり、図6bは、MetaMorph(Universal Imaging Corp., Downingtown, PA)というプログラムを用いて分析した血管の変化を点数にて示すグラフである(0:変化が一番小さい;5:変化が一番大きい)。
【0063】
図6に示すように、高麗人参の実抽出物(実施例1、2)は、動物において血管新生効能を示し、特に実施例2の場合、陽性対照群よりも優れた血管新生効能を示した。したがって、高麗人参の実抽出物は、血管新生を促進させ、結局、虚血性心血管疾患、局所の血流改善、慢性血管炎症の早期治癒に有効であることが分かる。
【0064】
[試験例8]血管炎症の調節
1.マクロファージに対してLPSで誘導させたNO(酸化窒素)を抑制する効果(in vitro)
高麗人参の実抽出物の抗血管炎症効果を調べるために、大食細胞に対してLPSで誘導させたNO(酸化窒素)を抑制する実験を実施した。
【0065】
10%濃度の血清を添加した培地において、5%CO2条件下でマクロファージ(Raw 264.7 cell)を培養した。96ウェルプレート培養器に2×105個/ウェルの濃度で培養した後、LPS(1μg/ml)で刺激し、実施例1、実施例2の高麗人参の実抽出物、及び比較例1の紅参の根抽出物をそれぞれ処理した。37℃で1時間保管した後、NO生成度合いを測定してLPSで誘導されたNO生成の阻害効果を比較した。NO生成量の測定は、Griess反応法(Minghetti, L. et al., 1991, Glia 19. 152-160)を用い、その結果を図7に示している。
【0066】
図7に示すように、本発明による高麗人参の実抽出物(実施例1、2)は、サイトカインとしてのNO生成を効果的に抑制し、その効果が紅参の根抽出物(比較例1)よりも優れていた。特に実施例1が最も優れた効果を示した。したがって、本発明による実施例1、実施例2の高麗人参の実抽出物は、炎症反応の調節による血管炎症緩和と血管炎症による狭心症のような虚血性疾患に有効であるといえる。
【0067】
2.血管炎症の調節効果(in vivo)
細胞レベルでの結果を基に、動物モデルにおける高麗人参の実抽出物の血管炎症調節効能について実験を実施した。実験群を、無処理群とLPS誘導群と実施例1、実施例2の高麗人参の実抽出物処理群とに群分けし、マウスを各実験群当たり5匹ずつ割り当てした。
【0068】
実施例1と実施例2の高麗人参の実抽出物に対し、マウス体重1kg当たり100mg(1.5mg/15gマウス)を食塩水(0.9% NaCl)1mlに希釈したものを第1日目から第3日目まで3回腹腔内注射した。第3日目に注射してから2時間後、LPSに対してマウス体重1kg当たり約4mgレベルで食塩水1mlに希釈したものを腹腔内注射して炎症因子を誘発させた。約12時間後にマウスの腹を切開し心臓の動脈を切断して血液を採取し、−40℃で保管した。血液をさらに30分間常温で放置した後、4℃、3,000rpmで10分間遠心分離を施した後、その上澄液を−20℃で保管した。血液からNO生成量を測定し、炎症因子であるPGE2、TNF−α、IL1−βは電気泳動してウェスタンブロッティングにより確認し、その結果を図8に示した。
図8に示すように、高麗人参の実抽出物(実施例1、実施例2)は、LPSで誘導される炎症因子の生成を抑制する効果を示し、特に実施例1が最も優れた効果を示した。これは、高麗人参の実抽出物が血管炎症を抑制し且つ虚血性疾患での血管炎症を調節するのに有効であることを示す。
【0069】
[試験例9]皮膚老化抑制及びしわ改善
1)抗酸化効果
紫外線(UV)照射によって細胞から生成される活性酸素(ROS;Reactive oxygen species)を除去する能力を比較する実験により抗酸化効果を調査した。陽性対照群として一般に抗酸化効果を比較するのに用いられるトロロックス(trolox)を用い、これを紅参抽出物とも比較した(図9)。また、試験物質で処理していない群を対照群として用いた。
図9に示すように、本発明(実施例1)による高麗人参の実抽出物は、ヒトHaCaT角質形成細胞単層培養システム(human HaCaT keratinocytes monolayer culture system)において対照群に比べてUVによって生成された活性酸素を有意的に消去する効果を示した。これは、抗酸化物質の活性指標として用いられるトロロックスの活性と同程度の優れた活性であり、有意的な消去活性のない紅参抽出物と対照される結果である。すなわち、本発明の実施例1による高麗人参の実抽出物は、皮膚老化の原因になる活性酸素を有意的に消去することによりしわ生成、弾力低下及び色素沈着などを予防する効果を奏することを確認した。
【0070】
2)I型プロコラーゲン分析
ヒト線維芽細胞を105個/ウェルの濃度で12ウェルプレート培養器において培養した後、実施例1の高麗人参の実抽出物1ppm及び10ppmを含む培地に取り替えた。培養3日目に細胞を採取し、ELISA法を用いて生成されたI型プロコラーゲンの量を定量した。その結果は、試験物質を含まない対照群を100として測定した値との比較値で算出し、陽性対照群としてTGF−b(transforming growth factor-b)を用いた。
【0071】
正常ヒト線維芽細胞単層培養システム(Normal human fibroblast monolayer culture system)において、実施例1の高麗人参の実抽出物は対照群に比べてI型プロコラーゲン生成を明らかに促進させる効果を示した。すなわち、実施例1の高麗人参の実抽出物は、人間の皮膚の老化によって発生するコラーゲン生成量の減少現象を抑制することができ、且つしわ改善効果を示した(図10)。
【0072】
3)MMP−1発現の抑制
ヒト線維芽細胞を105個/ウェルの濃度で12ウェルプレート培養器において培養した。次いで、紫外線B(UVB)を40mJ/cm2で照射した後、実施例1の高麗人参の実抽出物1ppm及び10ppmを含む培地に取り替えた。培養2日目に細胞を採取し、ELISA方法を用いて生成されたMMP−1(マトリックス・メタロプロティナーゼ I)の量を定量した。その結果は、試験物質を含まない紫外線対照群を100として測定した値との比較値で算出し、陽性対照群としてはTGF−b(形質転換増殖因子−b)を用いた。
【0073】
正常ヒト線維芽細胞単層培養システムにおいて、本発明による実施例1の高麗人参の実抽出物はUVB 40mJ/cm2照射によって誘導されるMMP−1の発現を有意的に抑制した。したがって、本発明による実施例1の高麗人参の実抽出物は、内的老化または外的環境要因によって生成される皮膚組職分解酵素であるMMP−1の生合成を阻害することにより、皮膚老化を抑制し且つしわの改善に有効であることを確認した(図11)。
【0074】
4)紫外線によるシクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)の生合成抑制
ヒト線維芽細胞を105個/ウェルの濃度で12ウェルプレート培養器において培養した。次いで、紫外線A(UVA)を15J/cm2で照射した後、実施例1及び比較例1の高麗人参の実抽出物0.1ppm、1ppm及び10ppmを含む培地に取り替えた。培養2日目に細胞を採取し、ウェスタンブロッティングを用いて生成されたシクロオキシゲナーゼ−2(cyclooxygenase-2、COX-2)の量を定量した。試験物質で処理していない紫外線対照群を100として濃度計で測定した値との比較値を下記表3に表した。
【0075】
【表3】

【0076】
前記表3の結果から、実施例1の高麗人参の実抽出物は、紫外線によるシクロオキシゲナーゼ−2の生合成を濃度依存的に低減させ、COX−2の産物であるプロスタグランジンE2(PGE2)による皮膚組職分解を防止できることを確認することができた。
【0077】
5)紫外線による腫瘍壊死因子−α(TNF−α)の生合成抑制
ヒト角質形成細胞を105/ウェル個の濃度で12ウェルプレート培養器において培養した。次いで、紫外線Bを30mJ/cm2で照射した後、実施例1の高麗人参の実抽出物及び比較例1の紅参抽出物をそれぞれ0.1ppm、1ppm及び10ppm含む培地に取り替えた。培養6〜24時間後に細胞を採取し、ELISA(Pharmingen 555212)方法を用いて生成された腫瘍壊死因子−α(TNF−α)の量を定量し、試験物質で処理していない紫外線対照群を100として測定した値との比較値を下記表4に表した。
【0078】
【表4】

【0079】
前記表4の結果から、本発明による実施例1の高麗人参の実抽出物が紫外線による腫瘍壊死因子−α(TNF−α)の生合成を濃度依存的に低減させることにより、腫瘍壊死因子−αの生合成によって生じ得る皮膚老化を予め防止できることを確認した。
【0080】
6)皮膚老化抑制
本発明の組成物に皮膚老化抑制効能があるか否かを研究するために無毛マウスを動物モデルとして選定した。実験群を、一般飼料群(対照群)と一般飼料+高麗人参の実抽出物群(実施例1)とに群分けし、6〜7週齢の雌無毛マウスを各群当たり10匹を割り当てした。12週間経口投与した後、マウスに対してUV(紫外線)を照射した。
【0081】
紫外線の照射前と後における同一部位に対する皮膚しわをビジオメーターシステム(Visiometer system;C+K社製)を用いて測定し比較した。皮膚しわの変化量は下記式1で求め、その結果を図12に示した。
【0082】
【数1】

【0083】
前記式中、「Tdi」は90日目における測定値であり、「Tdo」は0日目における測定値である。
【0084】
図12の結果、一般飼料を摂取した対照群の皮膚しわは230±49%(平均±標準偏差)の増加を示したのに対し、一般飼料と実施例1の高麗人参の実抽出物を摂取した実験群の皮膚しわは130±51%の増加を示し、優れた皮膚老化抑制効果を示した(図12)。
【0085】
7)しわ改善
本発明の組成物が既に生成されたしわに対する改善効能があるか否かを研究するために無毛マウスを動物モデルとして選定した。実験群を、一般飼料群(対照群)と一般飼料+高麗人参の実抽出物群(実施例1)とに群分けし、6〜7週齢の雌無毛マウスを各群当たり10匹を割り当てした。UV(紫外線)を照射してしわを誘発させた後、前記各群に一般飼料と一般飼料+高麗人参の実抽出物を12週間経口投与した。
投与前と後における同一部位に対する皮膚しわをビジオメーターシステム(C+K社製)を用いて測定し比較した。皮膚しわの変化量は下記式2で求め、その結果を図13に示した。
【0086】
【数2】

【0087】
前記式2中、「Tdi」は90日目における測定値であり、「Tdo」は0日目における測定値である。
【0088】
図13に示すように、一般飼料を摂取した対照群の皮膚しわは35±22%(平均±標準偏差)の減少を示したのに対し、一般飼料とともに実施例1の高麗人参の実抽出物を摂取した対照群の皮膚しわは98±17%の減少を示し、優れたしわ改善効果を示すことを確認することができた。
【0089】
[試験例10]皮膚美白効果
1)マウスのメラニン細胞を用いたメラニン生成抑制
実施例1の高麗人参の実抽出物のメラニン生成抑制効果を調べるために、マウスのメラニン細胞を用いてメラニン生成抑制効果を測定した。
【0090】
先ず、C57BL/6マウス由来のメラニン細胞(MeL-Ab cell)(Dooley, T.P. et al, Skin pharmacol, 7, pp 188-200)をDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)に10%ウシ胎仔血清FBS、100nM 2−O−テトラデカノイルホルボール−13−アセテート、1nMコレラ毒素を添加した培地において37℃、5%CO2の条件下で培養した。培養されたMeL−Ab細胞を0.25%トリプシン−EDTAを用いて分離し、24−ウェルプレートに105細胞/ウェル(cells/well)の濃度で細胞を培養した後、2日目から3日連続して実施例1の高麗人参の実抽出物10ppmを添加した。このとき、紅参抽出物及びハイドロキノンを陽性対照群として用いた。しかる後、培養液を除去し、PBSで洗浄してから1N水酸化ナトリウムで細胞を溶かした。それを400nmで吸光度を測定し、下記式3でメラニン生成抑制率を求めた。その結果を下記表5に表した(Dooleyの方法)。
【0091】
【数3】

【0092】
【表5】

【0093】
前記表5に表したように、実施例1による高麗人参の実抽出物は、対照群である紅参抽出物よりもメラニン生成抑制率が優れており、陽性対照群であるハイドロキノンと同程度のメラニン生成抑制率を示すことを確認した。
【0094】
2)経口投与による皮膚美白効果
本発明の組成物が健康機能補助食品として美白効果を奏するか否かを研究するために、茶色テンジクネズミ(guinea pig)を動物モデルとして選定した。全ての実験群の動物(各群当たり10匹)に紫外線を照射して最小紅斑量を測定した。全ての動物に最小紅斑量の紫外線を1日1回ずつ、3日間で照射した。実験群は、一般飼料群と一般飼料+紅参抽出物群と一般飼料+高麗人参の実抽出物群(実施例1)とに群分けした。各群の動物に対して5週間自由給食させた。色素沈着は色差計を用いてL値(明度)を測定した後、L値の変化量(各測定日のL値と紫外線照射前のL値との差)を比較し、その結果を下記表6に表した。
【0095】
【表6】

【0096】
表6の結果のように、本発明による実施例1の高麗人参の実抽出物を摂取した実験群のL値変化量の方が早く減少し、これは、本発明による実施例1の添加群が紅参抽出物を添加した群に比べて黒くなった皮膚が元の肌色に早く戻ることを意味する。したがって、本発明による実施例1の高麗人参の実抽出物が紅参抽出物よりも皮膚美白効果に優れていることを確認した。
【0097】
[試験例11]皮膚保湿効果
1)ヒアルロン酸生産能促進
ヒアルロン酸は細胞間隙内に水分を保持する機能をする成分であって、皮膚保湿効果と直接的に関連する皮膚結合タンパク質である。
【0098】
ヒト表皮細胞を用いて培養した後、その培地を、実施例1の高麗人参の実抽出物を含有させた表皮細胞用培地あるいは表皮細胞の培養用培地(対照群)に取り替えた。同じ条件下で48時間培養した。しかる後、ヒアルロン酸測定用キットを用いて各試験群に対するヒアルロン酸の量を比較し、その結果を、対照群を100として測定した値との比較値で示した。
【0099】
【表7】

【0100】
前記表7に表すように、実施例1による高麗人参の実抽出物は、表皮細胞のヒアルロン酸生成を促進させ、このことから、本発明による実施例1の高麗人参の実抽出物が皮膚の保湿効果を奏することを確認することができた。
【0101】
2)経口投与による皮膚保湿効果
本発明の組成物が皮膚保湿効果を奏するか否かを研究するために無毛マウスをモデルとして選定した。実験群を、一般飼料群(対照群)と一般飼料+紅参抽出物群と一般飼料+高麗人参の実抽出物群(実施例1)とに群分けし、6〜7週齢の雌無毛マウスを各群当たり10匹を割り当てした。12週間経口投与した後、表皮と真皮のヒアルロン酸の含量をヒアルロン酸測定用キットを用いて比較し、その結果を下記表8に表した。
【0102】
【表8】

【0103】
表8に表すように、実施例1による高麗人参の実抽出物を摂取した実験群における表皮及び真皮のヒアルロン酸含量が増加しており、また一般飼料を摂取した実験群と一般飼料と紅参抽出物を摂取した実験群よりも優れた皮膚保湿効果を奏することを確認することができた。
【0104】
[試験例12]高麗人参の実抽出物の血管内皮細胞での一酸化窒素(NO)生成の増加効果
高麗人参の実抽出物を血管内皮細胞に処理したときに、陰茎勃起に重要な信号伝達物質であると知られている一酸化窒素(NO)の生成増加を観察した。L−アルギニンを一緒に処理したことを除いては、試験例2と同じ方法で実験を実施した。図14は、共焦点レーザー顕微鏡(Atto Bioscience、USA))で撮った写真でり、図15は、蛍光強度をImage-Pro Plus v4.5 software(Media Cybernetics, San Diego, CA, USA)で分析して示すグラフである。図14及び図15において、conは対照群、RGは比較例1の紅参抽出物処理群、GBは実施例1の高麗人参の実抽出物処理群を意味し、RG 50は紅参抽出物50μg/ml、RG 100は紅参抽出物100μg/ml、L−arginine 250はL−アルギニン250μM、L−arginine 500はL−アルギニン500μM、GB 50は高麗人参の実抽出物50μg/ml、GB 100は高麗人参の実抽出物100μg/mlを処理したことを意味する。
【0105】
図14及び図15に示すように、高麗人参の実抽出物を処理したときに、血管内皮細胞(HUVEC)単層培養システムにおいて対照群に比べて一酸化窒素(NO)を有意的に増加させる効果を奏し、この効果は濃度依存的であった。紅参対照群は、100μg/mlの濃度で対照群に比べて約1.5倍程度増加した一酸化窒素(NO)の生成を示し、一酸化窒素生成酵素の基質であるL−アルギニンは、250μM、500μMの濃度でそれぞれ約2.7倍、5.5倍程度増加した一酸化窒素(NO)の生成を示したのに対し、高麗人参の実抽出物は、50μg/ml、100μg/mlの濃度で対照群に比べてそれぞれ約4倍、12倍程度増加した一酸化窒素(NO)の生成を示した。すなわち、高麗人参の実抽出物の効能が最も良く、100μg/mlの濃度で紅参抽出物の効能に比べて約8倍程度の優れた効能を示した。
【0106】
前記結果から、高麗人参の実抽出物を摂取すれば、血管内皮細胞において一酸化窒素(NO)の生成が増加するため、陰茎海綿体の血管拡張による陰茎勃起を増進させることができることが分かる。
【0107】
[試験例13]高麗人参の実抽出物とL−アルギニンを併用した時の一酸化窒素生成の相乗効果
一酸化窒素生成酵素の基質であると知られたL−アルギニンと一酸化窒素(NO)の生成を促進させる高麗人参の実抽出物とを併用して処理したとき、一酸化窒素の生成が増加するか否かを観察した。
【0108】
臍帯から血管内皮細胞を分離し及び培養した。その培養された血管内皮細胞での一酸化窒素(NO)の生成を測定した。具体的な実験は、前記試験例12と同様に実施し、その結果を図16に示した。
【0109】
図16において、conは対照群を意味し、L−arginine 500はL−アルギニン500μM、GB 100は高麗人参の実抽出物100μg/ml、L−arginine+GBはL−アルギニン500μM+高麗人参の実抽出物100μg/mlを処理したことを意味する。
【0110】
図16に示すように、高麗人参の実抽出物100μg/mlとL−アルギニン500μMを併用して血管内皮細胞を処理したとき、一酸化窒素(NO)の生成が、いずれか一方で処理されたときの一酸化窒素(NO)の生成よりも遥かに増加したことが分かる。つまり、相乗効果が確認された。
【0111】
前記結果から一酸化窒素生成酵素の基質であるL−アルギニンと高麗人参の実抽出物の併用処方は一酸化窒素の生成を急激に増加させ、したがって、高麗人参の実抽出物とL−アルギニンの併用処方は、陰茎海綿体を弛緩させて勃起を誘導及び持続させることにより男性性機能を改善するのに有効である。
【0112】
以下、前記組成物の剤形例を説明するが、これは発明を限定するためのものではなく、単に本発明を具体的に説明するためのものに過ぎない。
【0113】
[剤形例1]注射剤
実施例1の高麗人参の実抽出物50mg、注射用滅菌蒸留水適量、pH調節剤適量を混合し、その混合物を通常の注射剤の製法によってアンプル(2ml)に入れて注射剤を得た。
【0114】
[剤形例2]液剤
実施例2の高麗人参の実抽出物100mg、異性化糖10g、マンニトール5gを適量の精製水に溶解させた。これにレモン香を適量加えてから前記成分を混合し、さらに精製水を加えて総量を100mlにした。この結果物を茶色のボトルに充填し滅菌して液剤を得た。
【0115】
[剤形例3]軟カプセル剤
実施例1の高麗人参の実抽出物50mg、L−カルニチン80〜140mg、大豆油180mg、ヤシ油2mg、植物性硬化油8mg、黄ロウ4mg及びレシチン6mgを混合し、通常の方法によって1カプセル当たり400mgずつ充填して軟カプセル剤を得た。
【0116】
[剤形例4]錠剤
実施例2の高麗人参の実抽出物50mg、ガラクトオリゴ糖200mg、乳糖60mg及び麦芽糖140mgを混合し、流動層乾燥機を用いて顆粒化した後、糖エステル6mgを添加して打錠機で打錠して錠剤を得た。
【0117】
[剤形例5]顆粒剤
実施例2の高麗人参の実抽出物50mg、無水結晶ぶどう糖250mg及び澱粉550mgを混合し、流動層顆粒機を用いて顆粒化して顆粒剤を得た。
【0118】
[剤形例6]ドリンク剤
実施例1の高麗人参の実抽出物50mg、ぶどう糖10g、クエン酸0.6g、及びオリゴ糖シロップ25gを混合し、これに精製水300mLを加えてからボトルに200mLずつ充填する。その後、130℃で4〜5秒間滅菌してドリンク剤を得た。
【0119】
[剤形例7]高麗人参の実100%エキス
実施例1の高麗人参の実抽出物の調製の際に固形分60%以上になるように濃縮し、低温で熟成して100%エキス製品を得た。
【0120】
[剤形例8]丸剤
実施例1の高麗人参の実抽出物0.9g、糖0.3g、澱粉1.91g及びグリセリン0.56gを混合し、製丸機を用いて丸剤を得た。
【0121】
本発明の好ましい実施形態は説明のために開示されているが、当業者であれば、特許請求の範囲に開示されているような発明の範囲及び理念から逸脱することなく各種の改良、追加及び変換が可能であることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高麗人参の実抽出物を有効成分として含有する血行促進用組成物。
【請求項2】
前記高麗人参の実抽出物が、
乾燥された高麗人参の実にエタノールを加えて還流抽出し、ろ過し、濃縮し、
油溶性構成物を除去した後にブタノールを加えて抽出し、濃縮して得られることを特徴とする請求項1に記載の血行促進用組成物。
【請求項3】
高麗人参の実抽出物を有効成分として含有する血管老化防止用組成物。
【請求項4】
前記高麗人参の実抽出物が、
乾燥された高麗人参の実にエタノールを加えて還流抽出し、ろ過し、濃縮し、
脂溶性成分を除去した後にブタノールを加えて抽出し、濃縮して得られることを特徴とする請求項3に記載の血管老化防止用組成物。
【請求項5】
高麗人参の実抽出物を有効成分として含有する血管炎症治療用組成物。
【請求項6】
前記高麗人参の実抽出物が、
乾燥された高麗人参の実にエタノールを加えて還流抽出し、ろ過し、濃縮し、
脂溶性成分を除去した後にブタノールを加えて抽出し、濃縮して得ることを特徴とする請求項5に記載の血管炎症治療用組成物。
【請求項7】
高麗人参の実抽出物を有効成分として含有する血管生成促進用組成物。
【請求項8】
前記高麗人参の実抽出物が、
乾燥された高麗人参の実にエタノールを加えて還流抽出し、ろ過し、濃縮し、
脂溶性成分を除去した後にブタノールを加えて抽出し、濃縮して得られることを特徴とする請求項7に記載の血管生成促進用組成物。
【請求項9】
高麗人参の実抽出物を有効成分として含有する虚血性心疾患治療用組成物。
【請求項10】
前記虚血性心疾患は、動脈硬化、狭心症、または心筋梗塞であることを特徴とする請求項9に記載の虚血性心疾患治療用組成物。
【請求項11】
前記高麗人参の実抽出物が、
乾燥された高麗人参の実にエタノールを加えて還流抽出し、ろ過し、濃縮し、
脂溶性成分を除去した後にブタノールを加えて抽出し、濃縮して得られることを特徴とする請求項9または10に記載の虚血性心疾患治療用組成物。
【請求項12】
高麗人参の実抽出物を有効成分として含有する局所の血流不足治療用組成物。
【請求項13】
前記高麗人参の実抽出物が、
乾燥された高麗人参の実にエタノールを加えて還流抽出し、ろ過し、濃縮し、
脂溶性成分を除去した後にブタノールを加えて抽出し、濃縮して得られることを特徴とする請求項12に記載の局所の血流不足治療用組成物。
【請求項14】
高麗人参の実抽出物を有効成分として含有する皮膚美容増進用組成物。
【請求項15】
皮膚老化抑制用であることを特徴とする請求項14に記載の皮膚美容増進用組成物。
【請求項16】
皮膚しわ改善用であることを特徴とする請求項14に記載の皮膚美容改善用組成物。
【請求項17】
皮膚美白用であることを特徴とする請求項14に記載の皮膚美容増進用組成物。
【請求項18】
皮膚保湿用であることを特徴とする請求項14に記載の皮膚美容増進用組成物。
【請求項19】
高麗人参の実抽出物を、前記組成物の総重量に対して0.01〜100重量%の範囲で含有することを特徴とする請求項14ないし18のいずれか1項に記載の皮膚美容増進用組成物。
【請求項20】
高麗人参の実抽出物を有効成分として含有する男性性機能改善用組成物。
【請求項21】
L−アルギニンをさらに含有することを特徴とする請求項20に記載の男性性機能改善用組成物。
【請求項22】
高麗人参の実抽出物を、前記組成物の総重量に対して0.01〜100重量%の範囲で含有することを特徴とする請求項20に記載の男性性機能改善用組成物。
【請求項23】
L−アルギニンを、前記組成物の総重量に対して0.01〜99.9重量%の範囲で含有することを特徴とする請求項21に記載の男性性機能改善用組成物。
【請求項24】
血管細胞において一酸化窒素(NO)の生成を増加させることを特徴とする請求項20に記載の男性性機能改善用組成物。
【請求項25】
陰茎の勃起を増進させることを特徴とする請求項20に記載の男性性機能改善用組成物。
【請求項26】
錠剤、丸剤、丹剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、軟膏剤、ドリンク剤、または注射剤の剤形を有することを特徴とする請求項20に記載の男性性機能改善用組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2010−528108(P2010−528108A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510210(P2010−510210)
【出願日】平成20年5月28日(2008.5.28)
【国際出願番号】PCT/KR2008/002996
【国際公開番号】WO2008/147111
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(505118718)アモーレパシフィック コーポレイション (21)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【Fターム(参考)】