説明

高齢者等移動補助装置

【課題】高齢者や身体障害者などが廊下や浴室内等で移行時に使用する移動補助装置に関する。
【解決手段】従来型の手摺の多くが水平方向に設置されており、かつ壁面側に固定されて
いるため多くの制約があることに対して、縦軸方向の伸縮自在式手摺と上方空間を走行
するレールとを使用することで、どの位置にでも簡単に移動ができ、かつ、不使用時に
おいて手摺が邪魔にならないようにした移動補助装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身体障害者などが廊下や浴室内等で移行時に使用する移動補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住戸内における廊下の壁面や浴室内等に取り付けてある高齢者や障害者用の手摺の多くは、壁面に沿って水平方向に設置されている。ところが、設置箇所に障害物や出入口等の開口部があれば、その区間の工事は中断されており、利用者は途切れた手摺の前で立ち往生を強いられている。さらに、利用者の多くは片麻痺者であることから、廊下を往復するためには左右両側に手摺を設けていなければ対応ができない。また、特別養護老人ホームや老健施設などにおいては、入所定員が50〜150人であり、その多くの施設では半数以上人々が歩行器や車椅子の利用者である実態から、それらの人が食事時間に一斉に食堂へ押し寄せれば、食堂前の廊下では毎回のように交通混乱が発生するため、管理者にとっては大きな悩みが続いているのが福祉現場の実態である。
特に、家庭や施設の浴室内における手摺の多くは、浴室の壁面に取り付けられているため入浴者の動線は壁面に沿った動きに限られている。従って、入浴者は浴室の中央に移動したり、浴室の中央付近を経由して他の場所に移行できないという制約があった。また、上記の手摺は、浴室内の壁面から突出した状態で複数箇所に取り付けなければならないために、浴室内が狭くなり外観が損なわれるという問題点もあった。これらの課題に対応する技術として、特開平10−25874号公報によれば、入浴者が浴室内のどの位置にでも簡単に移動ができ、しかも手摺によって浴室内を狭くすることのない浴室用手摺装置が開示されている。その技術は、浴室の天井面に設けられた走行レールと、走行レールに支持されつつ、この走行レールに沿って移動可能な走行用手段と、走行手段に下向きに取り付けられた入浴補助用の手摺とから構成されており、手摺につかまって移動すれば、走行手段が走行レールに沿って移動するため、入浴者は浴室内のどの位置にも簡単に移動できる装置とされている。
【0003】
また、移動式手摺装置として特開平10−080452号公報では、必要に応じ手摺を軽快な移動操作により所定箇所で自動的に仮止めでき、これを簡潔な操作で強固に固定可能となし、不使用時に手摺が邪魔にならないようにした移動式手摺装置が開示されている。具体的には、移動ブロックと走行体とからなる移動体に手摺の先端を揺動自在に枢着し、手摺はパイプとバスリムなどに設けた手摺固定用受け座の孔へ嵌脱自在な基端のダボと、パイプの基端に摺動自在なるよう嵌合した取っ手と、パイプ内に挿通して取っ手と連結した連結ロッドとにより伸縮自在に形成する。手摺をその手摺固定用受け座と対応する位置に停止させる仮止め機構と、この仮止め位置に手摺を固定するための手摺ロック機構とを夫々移動体の走行体とガイドレール及び連結ロッドとガイドレールとにわたって装備した技術である。
【特許文献1】特開平10−25874号公報
【特許文献2】特開平10−080452号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来型の手摺の多くは水平方向に設置されており、かつ壁面側に固定されているため多くの制約条件が生じている。このため、前記特開平10−25874号公報によれば、手摺の固定手段としては、下端部が浴槽リムや洗い場の床面の所定箇所に位置決めされた凹部に嵌脱する技術から構成されている。従って新設のユニットバスであれば、予め位置決めされた仕様で製造することは容易であるが、利用者の身体状態や障害者の症状は多様であるため事前に規格を統一することは難しい。又、既設の浴室にあっては新たな工事が発生することや、特に手摺の長さについても、浴槽リムの高さと洗い場の床面とでは長さが大きく異なることや、浴槽の底面であれば洗い場よりもさらに深くなるため、長さ調節が可能な手摺でなければ使用場所が限定されるという問題点があった。
【0005】
また、特開平10−080452号公報による技術では、手摺の固定手段としてパイプの基端に設けた凸部であるダボをバスリムなどに設けた手摺固定用受け座の孔へ嵌脱する内容である。また、パイプの基端に摺動自在なるよう嵌合した取っ手と、パイプ内に挿通して取っ手と、連結した連結ロッドとにより伸縮自在に形成され、基端に設けられた取っ手の伸縮範囲は連結ロッドの摺動範囲とされている。ところが、前記のように浴槽リムと洗い場面との高低差は大きく、前記ロックの伸縮摺動作用程度では対応ができない。また、凹部を床面などに設けるための工事や、浴槽の底に凹部を設けることは前記と同様に問題点がある。
【0006】
本発明は、上述の各種問題点について精査し、これに検討を加えた結果、建物の上方空間を走行するレールと、この走行レールに支持される縦軸方向の伸縮自在式手摺との組み合わせによる走行システムを使用することで、通行途中に開口部があっても歩行が中断されることもなく、また、対向者との交差や追い越し行為も可能となり、特に、浴室内においては、最も困難な動きである浴槽内への出入の動作を補助し、浴室内のどの位置にでも自由に移動と停止ができる高齢者等の歩行補助装置の提供を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による実施例1における高齢者等移動補助装置は、天井面又は天井側空間であって少なく
とも人の通行に支障がない位置に取り付けられた走行レールと、該走行レールに支持されつつ該走行レールに沿って移動可能な走行手段と、該走行手段に下向きに持設された連結棒と、該連結棒の長手方向外周面に沿って嵌脱し伸縮自在に垂設された長尺のパイプ状の手摺から構成されている。
これにより、実施例1によれば、ア、走行レールが、壁面より離れた位置に設置されることで、開口部に関係なく手摺の連続性が確保できる。イ、利用者が片麻痺者であっても、左右どちらかの手で手摺を握ることができるので、従来のように両側に固定式手摺を設置する必要性がなくなる。ウ、伸縮式の手摺をつかんで移動することにより、歩行面に勾配や段差があっても手摺の寸法は自動的に調節される。エ、浴室内で使用すれば壁面側の凹凸部に拘束されることなく所望位置に走行レールを設置することができる。オ、手摺を浴槽内に配設すれば出入りと立ち上がりの動作に際して最も効果的となる。カ、使用後には手摺部分を外して壁側に片寄せすれば室内や浴室内はすっきりとし、通行や入浴の邪魔にならず、外観を損なうこともない。
【0008】
ここで、廊下から部屋への移動、部屋から部屋への移動手段は、間仕切り上段の鴨居部分を走行レールの幅分だけ一部切削し、走行レールを連設状態としてもよい。これにより、レールの連続性が確保され、あらゆる場所への移動が可能となる。
【0009】
本発明による実施の態様2における高齢者等歩行補助装置は、前記走行手段が、円盤状のランナー体と、該ランナー体に接続して設けられた支軸と、から形成され、かつ、該走行手段を前記走行レールの凹部に遊嵌させて摺動自在に構成されている。
【0010】
これにより、実施の態様2によれば走行手段がT字型状に構成されたことで、軸を中心に回動自在となり、方向転換や分岐動作も可能であって、さらに、所望箇所にT型などの分岐箇所を設けることで対向者との交差行為や追い越し行動も容易となる。
【0011】
本発明による実施の態様3における高齢者等歩行補助装置は、請求項1又は2の場合において前記手摺の端末部が、少なくとも二股以上に形成された多点脚仕様とされ、かつ夫々の先端部には滑り止め手段及び又は、移動用走行輪を備えた構成とされている。
【0012】
これにより、本実施の態様3によれば、多点杖が滑り止め手段を有すことにより、停止した場合の安定感が増し安全性が確保される。さらに、先端部を移動用走行輪仕様とすれば、手摺が水平方向に走行するため、歩行の都度手摺を持ち上げる動作が不要となり、重度の使用者の多様な症状にも対応ができる。
【0013】
本発明による実施の態様4における高齢者等歩行補助装置は、請求項1又は2及び3の場合において、前記手摺が、前記連結棒との伸縮部において、夫々上下方向側へ押圧して加圧する弾性手段を備えた構成とされている。
これにより、本実施の態様4によれば、とくに浴室で浴槽を跨ぐ動作などに際して使用した場合には手摺が固定し、安心感を一層高めることができる。
【0014】
本発明による実施の態様5における高齢者等歩行補助装置は、請求項1乃至3.及び4の場合において、前記連結棒が、前記ランナー体の支軸との間に関節手段を備えた構成とされている。
【0015】
これにより、連結棒の上端に設けた関節機構の作用により、歩行中の手摺が揺動する動きに順応できることで、移行時における抵抗感は一層軽減され、歩行が滑らかにできる。
【0016】
ここで、関節機構については、アームを用いたフリージョイント方式としてもよい。手摺の上部が走行手段周りの水平方向のいずれの方向にも向けることができるので、入浴者は手摺を傾斜させたり、横移動しながら、走行レールの設けられていない広角範囲にも移動することができる。
【0017】
本発明による実施の態様6における高齢者等歩行補助装置は、請求項1乃至.4及び5の場合において、前記連結棒が、略上半身部分に達する程度の長さであって、かつ該連結棒の端末部に身体拘持手段を備えた構成とされている。
これにより、連結棒に歩行器などの肘支え用の枠具部材を取り付ければ、足元側に移動用走行輪のないリフト装置となる。ここで、肘支え用の枠具は上方向側に曲折自在としてもよい。老健施設などにおいて混雑解消に効果的となる。
【発明の効果】
【0018】
実施例1における高齢者等歩行補助装置によれば、以下の優れた効果を実現できる。
走行レールが、壁面より離れた位置に設置されることで、開口部に関係なく手摺の連続性が確保できる。
利用者が片麻痺であっても、左右どちらかの手で手摺を握ることができるので、従来のように両側に固定式手摺を設置する必要性がない。
歩行面に勾配や段差があっても手摺の寸法は自動的に調節される。
浴室内で使用すれば、壁面側の凹凸部に拘束されることなく所望位置に走行レールを設置することができる。
手摺を浴槽内に配設すれば出入りと立ち上がりの動作に際して最も効果的な装置となる。
入浴者の動線はフリーとなり、浴槽内に移行した手摺の使用によって、入浴行為の困難性は画期的に改善される。
使用後に手摺をジョイントから外して片寄せすれば室内や浴室内はすっきりとし、家族の通行や家族の入浴に際して全く邪魔にならず、外観を損なうこともない。
【0019】
実施例2における高齢者等歩行補助装置によれば、走行手段の支軸がT型の構成であることにより、軸部を中心に回動自在となり、方向転換や分岐動作も可能で、走行レールの所望箇所にT型などの分岐装置を設ければ、対向者との交差行為や追い越しも可能となる。
【0020】
実施例3における高齢者等歩行補助装置によれば、多点杖の作用により歩行を停止した場合の安定性が確保されることにより、安心感が高まり、また、先端部を移動用走行輪仕様とすれば、手摺を持ち上げる動作が困難な症状の利用者にも対応ができる。
【0021】
実施例4における高齢者等歩行補助装置によれば、特に、入浴時において洗い場や浴槽の内側に立設した手摺の上下部分をロックすることで、浴槽リムを跨いだり立ち上がりの動作に際しての安全性が格段に高まる。
【0022】
実施例5における高齢者等歩行補助装置によれば、連結棒の上端に設けた関節機構の作用により、歩行中の手摺の揺動に対しての順応が可能となり、走行時の抵抗感は一層軽減され、滑らかな歩行が確保できる。
【0023】
実施例6における高齢者等歩行補助装置によれば、連結棒に歩行器などの肘支え用の枠具部材を取り付けリフト装置とすることで、老健施設などにおける歩行器や車椅子が大幅に整理されることで、交通混雑の解消に大きく貢献する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例1について図面を参考に説明する。図1は実施の形態1に係る廊下等における使用例を示す説明図であり、図2は浴室内における浴槽の中に手摺用パイプを移行した使用例を示す説明図であり、図3は壁側面に走行レールを取り付けた使用例を示す吊り金具の説明図であり、図4は天井面側に走行レールをを取り付けた使用例を示す吊り金具の説明図であり、図5はC型の走行レールの説明図である。
【0025】
図中、Aは走行手段であるランナー装置、1は高齢者等の利用者、2はC型形状の走行レール、3は走行レールを壁面側から所定の距離を隔てた位置に取り付けたトライアングル状の吊り金具、3aは走行レールが天井面への直付けか又は天井面側及び又は壁面側から所定の距離を隔てた位置に取り付けた三つ又仕様の吊り金具、4は走行レールに遊嵌された円盤状のランナー、5.5a.5b.5c.5d.5e.5f.5gは円盤の底面周縁に沿って取り付けられたボールキャスター、6.6a.6b.6c.6d.6e.6f.6gは円盤の周側縁に沿って取り付けられたボールキャスター、7は天板上に貼着されたゴムシート類からなる滑り止め手段、、8は円盤の裏側中心に設けられ内法面が螺合式に形成されたジョイント部、9は走行手段Aから下向きに持設された連結棒、10は連結棒の長手方向外周面に沿って嵌脱し伸縮自在になるよう垂設されたアルミパイプ手摺、11は滑り止め手段であるゴムチップ、12は天井面、13は壁面、14はドア面、15は浴槽、16は浴槽リム、17は浴室の洗い場、18は天井面側に取り付けたポール、19.19aは走行レールの所定場所に分岐機構として設置した型状がTなどの構造体である。
【0026】
本発明による実施例1によれば、次の3つの主要部材から構成されている。
第一構成部材は、図5に示すように走行レール2はC型形状であり、取り付け場所が天井面側12の空間に設置される場合には三つ又仕様の吊り金具3aを使用し、壁面13より離れた位置に設置される場合にはトライアングル状の吊り金具3を使用し、走行レール2の所定場所には分岐機構としてT型状19.19aの構造体が取り付けてある。
第二構成部材は、図6・7に示す走行レール2に遊嵌される走行用手段Aは、円盤4と、円盤4の底面側周縁に沿って取り付けられた複数個のボールキャスター5.5a.5b.5c.5d.5e.5f.5g.と、円盤4の側縁に沿って取り付けられた複数個のボールキャスター6.6a.6b.6c.6d.6e.6f.6gと、円盤4の上部に貼着されたゴムシート類からなる滑り止め手段7と、円盤4の裏側中央に設けられた継ぎ手管であって内法面が螺合式であるジョイント8で構成されている。
第三構成部材は、図3に示す走行手段Aの下向きに持設された連結棒9と、連結棒9の長手方向外周面面に沿って嵌脱し伸縮自在になるよう垂設されたパイプ状の手摺10で構成される。
【0027】
上述のように、実施例1における高齢者等移動補助装置は構成されているので、以下の作用を有する。走行レール2が天井面12側への直付け又は壁面13側から所定の距離を隔てた上方の空間置に設置されているので、開口部14があっても関係なく利用者1は垂設されたパイプ状の手摺10を掴んで歩行し、途中に取り付けられている図8に示すTの分岐部19.19aで、方向変換や追い越しや退避行為を取りながら目的の場所へ自由に移動する。利用者1が片麻痺の障害者であれば、左右いずれか健康側の腕を肘関節で上方に折曲げて手摺10のやや上の位置を握って自分のペースに合わせながら歩行する。その際に歩行に合わせて上下動する手摺10のスライド動作は伸縮パイプの作用によつて吸収される。
【0028】
本発明の実施例2について図面を参考に説明する。図6は走行レール2と走行手段Aとの嵌合状態を示す側面図であり、図7は走行手段Aの底面図である。尚、実施例1と同様のものには同一符号を付して説明を省略する。
図6に示すように、走行手段Aが、円盤状に形成された頭部4と、該円盤4の底側周縁部に沿って取り付けられた複数個のボールキャスター5.5a.5b.5c.5d.5e.5f.5g.と、円盤4の側縁に沿って取り付けられた複数個のボールキャスター6.6a.6b.6c.6d.6e.6f.6gと、円盤の裏側中央部に設けた軸部8と、を有し、走行手段Aが走行レール2に遊嵌し摺動自在に構成されている。
【0029】
以上のように構成された実施例2によれば以下の作用を有する。走行手段Aが、円盤4と円盤の裏側の軸がT型の構成であり、走行レール2の所望箇所にT型などの分岐装置19を設けていることで、対向者との交差行為や追い越しも可能となる。また、この場合に走行手段Aの前後左右方向側への揺れは、円盤4の周縁部が水平面状態に形成されていることから、揺れの動作に対してはレール面2に対して天秤効果を発揮することで構造上ストッパー作用が生じ、利用者1の転倒事故は防止される。
【0030】
これにより、歩行中の利用者1の姿勢が足の縺れなどによって前後左右側へ傾き、転倒の危険性が生じた場合には、手摺10もその動きに連動して傾斜するため、連結棒9に連結された円盤4も天秤を打つ動作となり、天盤4の周縁部の一角はレール2の天井側に衝突してストッパー作用が生じる。それと同時に円盤4の上面に取り付けた滑り止め手段としてのゴムシート7によってストップが掛かる。さらに、手摺10の下端側の接地部にも滑り止め手段としてのゴムチップ11が取り付けてあるので、上下双方の機構により全方向側への転倒は抑制され、利用者の転倒事故は防止される。
【0031】
ここで、図6に示す円盤4と軸部を構成するジョイント8は、硬質の合成樹脂材で製作されたものであってもよい。走行レール2の走行接触面が平板状であれば摩擦係数は少なくなり、ボールキャスターなどの滑走補助具は不要となるからである。
【0032】
ここで、図示はしないが円盤の底面周縁に沿って取り付けられたボールキャスターと、及び又は、円盤の側縁に沿って取り付けられたボールキャスターは、手摺が大きく傾いた場合には、握力の加圧状態に反応して作動するストッパー機構としてもよい。利用者が転倒の危険性を感じた場合に手摺を強く握ればストップが掛り、安全が確保できるからである。
【0033】
実施例3について図面を参考に説明する。図9.10は多点杖を示す説明図である。 尚、実施例1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。図中Bは多点杖であり、25.25a.25b.25cは門型の脚構造であり、26.26a.26b.26c.は広角ゴムチップであり、27.27a.27b.27cはストッパー付きキャスターである。
【0034】
以上のように構成された実施例3によれば以下の作用を有する。手摺10の端末部が、多点杖仕様であり、図10に示す多点杖の端末部にはゴムチップや広角ゴムチップが使用されているので、一時停止した時の安定性が一層確保される。図11に示す多点杖の端末部にはゴムチップに変えてストッパー機構を有するキャスターを採用してあるので、高齢者等の移動に際しては手摺の重量感を覚えることなく歩行が出来る。
【0035】
実施例4について図面を参考に説明する。図11は加圧とロック機構を示す説明図であり、図12はレバーを締めた状態を示す説明図である。尚、実施例1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。図中27は上部摺動筒であり、28は下部固定筒であり、29は操作レバーであり、30は作動杆であり、31は支点であり、32は作用点であり、33は上下動摺動軸であり、34は長溝であり、35は掛止凸部であり、36は連結棒側面の縦方向に連なって設けられた複数の掛止用凹部である。
【0036】
以上のように構成された実施例4によれば以下の作用を有する。停止中の手摺10の安定性を確保するためのロック機構として、ア、操作レバー29を緩めることで上部摺動筒27と下部固定筒28は接合し、イ、反対に操作レバー29を締めることで摺動軸33が長溝34の上部に達し、ウ、同時に上部摺動筒27と下部固定筒28は離反し、エ、掛止凸部35が縦方向に連なって設けられた掛止用凹部に嵌入し、ロック機構が作用するものである。従って、手摺用パイプ10と連結棒9が、伸縮境界部において夫々上下方向側への加圧と、ロックを行う機構を設置していることにより、入浴時において手摺用パイプ10と連結棒9にロック機構が作用すれば、手摺全体が安定し浴槽内においての立ち上がり動作や、浴槽リム16を跨ぐ動作に際して利用者1の安全性が確保される。
【0037】
本発明の実施例5について図面を参考に説明する。図13は関節機構を示す説明図である。尚、実施例1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。図中Cは復帰ばねを利用した関節機構であり、37は上部接続部であり、38はロッドであり、39はコイル状の復帰ばねであり、40は回動ピンであり、41は浴槽リム16と位置的に直角に取り付けた浴室用のポールである。
【0038】
以上のように構成された実施例5によれば以下の作用を有する。走行手段Aと連結棒9との間に、該連結棒9の上端側を前後方向に屈曲させて揺動自在とすることができる関節機構Cを備えているので、図9で示すように前後方向への揺動は上部接続部37と、コイル状の復帰ばね39と回動ピン40との連携作用により、自在に前後方向に屈曲させて揺動自在とすることができる。
歩行中の利用者1にとっては、手摺10の上下の動きと前後の動きが同時に加わっても伸縮自在と揺動自在の機構により、抵抗感は吸収されてスムーズな歩行が確保される。
【0039】
ここで、図示はしないが連結棒9の上端にフリージョイント機構を設けてもよい。屈曲作用と揺動作用の関節機構により、手摺の下部側の動きを吸収できるとともに、利用の状態によってどの方向にも向けることが出来るので、斜め状に延びた手摺を伝いつつ、浴室内の所望の位置に移動が出来る。
【0040】
本発明の実施例6について図面を参考に説明する。図14は連結棒と身体拘持具を示す説明図である。尚、実施例1と同様のものには同一の符号を付して説明を省略する。図中42は馬蹄形状の身体拘持具であり、43は身体拘持具を倒立する回動自在機構である。
【0041】
以上のように構成された実施例6によれば以下の作用を有する。連結棒9が、略上半身部分に達する程度の長さであり、連結棒9の端末部に身体拘持手段42を備えたことで、走行輪のないリフト式移動補助装置となる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、廊下用の手摺として開口部があっても中断することなく手摺の連続性が確保でき、手摺使用中に対向者との交差行為や追い越しも可能となることや、床面に勾配やかなりの段差があっても支障なく移動ができるなど、従来において問題点を抱えてきた水平方向型の手摺装置に替わって、今後における福祉用具の主流としての歩行補助装置が誕生する。
また、浴室においては、壁面に捉われずに中央位置に走行レールを設置することが簡単に
でき、しかも浴槽リムを挟んで内側と外側に自由に配設ができる手摺手段によって浴槽への出入り動作は画期的に改善される。
特に、老健施設などにおいてこの装置を使用すれば、歩行器や車椅子などが整理されることで、混雑解消と施設内の美観維持に極めて効果的となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】廊下等における使用例を示す説明図
【図2】浴室内における浴槽の中に手摺用パイプを移行した使用例を示す説明図
【図3】壁側面に走行レールを取り付けた使用例を示す吊り金具の説明図
【図4】天井面側に走行レールを取り付けた使用例を示す吊り金具の説明図
【図5】C型の走行レールの説明図
【図6】走行レールと走行手段との嵌合状態を示す側面図
【図7】走行手段の底面図
【図8】走行レールの分岐の型状がT構造であることを示す説明図
【図9】多点杖を示す説明図
【図10】多点杖を示す説明図
【図11】加圧とロック機構を示す説明図
【図12】レバーを締めた状態を示す説明図
【図13】関節機構を示す説明図
【図14】連結棒と身体拘持具を示す説明図
【符号の説明】
【0044】
1 高齢者等の利用者
2 C型形状の走行レール
3 吊り金具
3a 吊り金具
4 円盤状の天板
5.5a ボールキャスター
6.6a ボールキャスター
7 滑り止め手段
8 ジョイント部
9 連結棒
10 手摺
11 ゴムチップ
12 天井面
13 壁面
14 ドア面
15 浴槽
16 浴槽リム
17 洗い場
18 ポール
19 Tの構造体
25.25a ゴムチップ
26.26a キャスター
27 上部摺動筒
28 下部固定筒
29 操作レバー
30 作動杆
31 支点
32 作用点
33 上下動摺動軸
34 長溝
35 掛止凸部
36 掛止用凹部
37 上部接続部
38 ロッド
39 復帰ばね
40 回動ピン
41 ポール
42 身体拘持具
43 曲折機構




【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面又は天井側空間であつて、少なくとも人の通行に支障がない位置に取り付けられた走行レールと、該走行レールに支持されつつ該走行レールに沿って移動可能な走行手段と、該走行手段に下向きに持設された連結棒と、該連結棒の長手方向外周面に沿って嵌脱し、伸縮自在に垂設された長尺のパイプ状の手摺と、を備えていることを特徴とする高齢者等移動補助装置。
【請求項2】
前記走行手段が、円盤状のランナー体と、該ランナー体に接続して設けられた支軸と、から形成され、かつ、該走行手段を前記走行レールの凹部に遊嵌させて摺動自在に構成されていることを特徴とする請求項1記載の高齢者等移動補助装置。
【請求項3】
前記手摺の端末部が、少なくとも二股以上に形成された多点脚仕様とされ、かつ夫々の先端部には滑り止め手段及び又は、移動用走行輪を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の高齢者等移動補助装置。
【請求項4】
前記手摺が、前記連結棒との伸縮部において、夫々上下方向側へ押圧して加圧す
る弾性手段を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載
の高齢者等移動補助装置。
【請求項5】
前記連結棒が、前記ランナー体の支軸との間に関節手段を備えていることを特徴と
する請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の高齢者等移動補助装置。
【請求項6】
前記連結棒が、略上半身部分に垂下する長さであって、かつ該連結棒の端末部に、
別体からなる身体拘持手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2乃び4又
は5記載の高齢者等歩行補助装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2006−26254(P2006−26254A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212544(P2004−212544)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(301009232)株式会社楽々サービス (5)
【Fターム(参考)】