説明

髪質状態表示具及び提示方法

【課題】毛髪用化粧料の使用感を触感で感知可能であって、均一に提示することが可能な髪質状態表示具を提供する。
【解決手段】髪質状態表示具1を、触感で感知可能な髪質状態を示す人工毛髪見本2と、この人工毛髪見本2を保持する見本保持部材3と、人工毛髪見本2に対応して人工毛髪見本2の髪質状態の程度を文字で示す表示部4とを備えたものとする。この際、髪質状態表示具1は、人工毛髪見本2に対応させて、適用することによって人工毛髪見本2の髪質状態を実現する毛髪用化粧料5が配置されている態様とすることが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触感で感知可能な髪質状態を表示するための髪質状態表示具及び触感で感知可能な髪質状態を提示する提示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
店頭で毛髪染毛剤や毛髪脱色剤などが販売されるときには、販売されている毛髪染毛剤等を実際に使用した場合に、毛髪の色彩が実際にどのように仕上がるかを示すために、毛束見本が使用されている(例えば特許文献1)。また、美容院等においてもこれから使用する毛髪染毛剤や毛髪脱色剤を使用した場合には、毛髪がどのような色彩に仕上がるかを示すために、毛束見本が使用されている。
【0003】
一方、理髪店や美容院等においては、顧客の頭髪の癖、太さ又は、色等の程度に応じてパーマや髪質改善等の施術をとる際に、その髪質に適した処置を行うために、顧客の髪質の程度を客観的に示すツールとして髪質見当具なるものが提案されている(特許文献2)。これは段階的なくせ毛のサンプルを顧客に提示することによって、現在の顧客の髪質の程度と、これから行う施術によって実現される髪質を、顧客により理解してもらうためのものである。
【0004】
ところで、シャンプー、リンス、コンディショナー等の毛髪用化粧料については、その製品に、例えばさらさらな仕上がり、しっとりした仕上がりといった仕上がり感の記載はあるものの、購入して実際に使用してみなければどのような仕上がりになるかを知る方法がこれまでなかった。また、さらさらな仕上がり、しっとりした仕上がり等という表現は、各個人によってその認識が異なる場合があり、購入者において客観的に認識してもらうことが困難であった。とりわけ、洗い流し商品の場合には商品選択の際に実際に使用した際の判断材料が商品に記載されている効能や効果のみであり、商品の認知度や香り等に依拠して商品を選択することが多かった。そのため、販売者、製造者等は商品認知率向上のために大量のマーケティングコストを強いられ、購入者のトライアルによるリピートに期待した売り上げに頼らざるを得ないという非効率的な販売戦略となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−33340号公報
【特許文献2】実用新案登録第3108529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1には色調の他に毛髪染毛剤や毛髪脱色剤を使用した際の手触り感も提示することができる旨が記載されているが、人毛を用いているために毛髪固体差やその毛髪のダメージ度合いの違いから、均一な仕上がり感を提示することはできない。また、上記特許文献1の仕上がり感は実際にその毛髪染毛剤や毛髪脱色剤を使用した際の人毛を提示しているため、長期間の安定的な手触りを実現することは難しく耐久性に問題があった。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みなされたものであり、毛髪用化粧料の使用感を触感で感知可能であって、均一かつ恒久的に提示することが可能な髪質状態表示具及び提示方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の髪質状態表示具は、触感で感知可能な髪質を有する人工毛髪見本と、該人工毛髪見本を保持する見本保持部材と、前記人工毛髪見本の前記髪質を表示する表示部とを備えていることを特徴とするものである。
前記見本保持部材には、前記人工毛髪見本に対応させて、前記人工毛髪見本の髪質状態を実現する毛髪用化粧料が表示または配置されていることが好ましい。ここで表示としては毛髪用化粧料の名称、型番、容器の写真等が好ましく挙げられ、配置としては毛髪用化粧料の容器やサンプルの配置が好ましく挙げられる。
【0009】
前記人工毛髪見本は、前記毛髪用化粧料で処理される前の髪質を有する人工毛髪見本と、前記毛髪用化粧料で処理された後の髪質を有する人工毛髪見本とを表示するものであることが好ましい。
【0010】
別の態様として、本発明の髪質状態表示具は、触感で感知可能な髪質状態が異なる複数の人工毛髪見本と、該人工毛髪見本を個別に並べて保持する見本保持部材と、前記人工毛髪見本に対応して各人工毛髪見本の前記髪質状態を表示する表示部とを備えていることを特徴とするものである。
この表示部においては、各人工毛髪見本の髪質状態のグレードを示すことが好ましい。
【0011】
前記見本保持部材には、前記人工毛髪見本に対応させて、前記人工毛髪見本の髪質状態を実現する毛髪用化粧料が表示または配置されていることが好ましい。
前記表示部は前記毛髪用化粧料に設けられていることが好ましい。
前記人工毛髪見本の髪質は、人工毛髪見本の素材、断面形状、繊度または表面コーティング剤の少なくとも1種を変化させたものであることが好ましい。
【0012】
本発明の提示方法は、毛髪用化粧料と、該毛髪用化粧料で処理された後の髪質を有する人工毛髪見本とをセットにして提示することを特徴とするものである。
別の態様として、本発明の提示方法は、毛髪用化粧料と、該毛髪用化粧料で処理される前の髪質を有する人工毛髪見本と、該毛髪用化粧料で処理された後の髪質を有する人工毛髪見本とセットにして提示することを特徴とするものである。
さらに別の態様として、本発明の提示方法は、複数種類の毛髪用化粧料と、各毛髪用化粧料で処理された髪質を有する人工毛髪見本とを、個々に対応させて配置することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の髪質状態表示具は、触感で感知可能な髪質を有する人工毛髪見本と、人工毛髪見本を保持する見本保持部材と、人工毛髪見本の前記髪質を表示する表示部とを備えているので、店頭で試すことができない洗い流し前後の触感、仕上がり感を客観的に提示することができる。
とりわけ、見本保持部材に人工毛髪見本の髪質状態を実現する毛髪用化粧料が表示または配置されている場合、例えば、毛髪用化粧料がシャンプーの場合、店頭で試すことができない洗い流し前後の触感、仕上がり感を客観的に提示することができ、毛髪用化粧料が整髪料の場合には整髪料で処理された前後の触感、仕上がり感を客観的に提示することが可能である。
【0014】
また、本発明の髪質状態表示具は触感で感知可能な髪質状態を示す人工毛髪見本が、人工毛髪であるため、人毛を用いた見本に比べて、毛髪(見本)の個体差が少なく、均一性のある人工毛髪見本とすることが可能である。
さらに、人工毛髪見本を複数個備え、人工毛髪の素材、断面形状、繊度又は表面コーティング剤の少なくとも一種を変化させて複数の人工毛髪見本によって異なる触感を表現した場合には、様々な触感を各グレードで表現でき、毛髪用化粧料のグレードを提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の髪質状態表示具の一実施の態様を示す概略模式図である。
【図2】本発明の髪質状態表示具の別の実施の態様を示す概略模式図である。
【図3】本発明の髪質状態表示具のさらに別の実施の態様を示す概略模式図である。
【図4】本発明の髪質状態表示具のさらに別の実施の形態を示す概略模式図である。
【図5】人工毛髪の断面形状と曲げ応力との関係を示したグラフである。
【図6】人工毛髪の断面形状と髪質状態の関係を示す図である。
【図7】実施例1で使用した紡糸金型の断面形状を示す模式図である。
【図8】実施例4で使用した紡糸金型の断面形状を示す模式図である。
【図9】実施例5で使用した紡糸金型の断面形状を示す模式図である。
【図10】実施例6で使用した紡糸金型の断面形状を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の髪質状態表示具を図面を用いて詳細に説明する。図1は本発明の髪質状態表示具の一実施の形態を示す概略模式図である。図1に示す髪質状態表示具1は、触感で感知可能な髪質状態を示す人工毛髪見本2と、この人工毛髪見本2を保持する見本保持部材3と、人工毛髪見本2に対応してこの人工毛髪見本2の髪質状態の程度を文字で示す表示部4とを有するものである。
【0017】
人工毛髪見本2で示される触感で感知可能な髪質状態としては、触って感知できる感触であって、例えば、べたつき、しっとり、ひっかかり、つるつる、油っぽさ、なめらか、ごわつき、さらさら、しなやか、ハリ、腰のある、硬い、柔らかいが挙げられる。人工毛髪見本2で示される髪質状態は、人工毛髪見本2を保持する見本保持部材3に設けられている表示部4によって表示される。表示部4は見本保持部材3の髪質を文字で示しているが、毛髪用化粧料5の製品説明で代用することもできる。
見本保持部材3は、図1のプレート状の他、毛髪用化粧料5自体を上に載置可能な箱状のものであってもよい。
【0018】
毛髪用化粧料としては、例えば、シャンプー、リンス、コンディショナー、トリートメント、ヘアマスク、ヘアクリーム、ヘアエッセンス、あるいはヘアスプレー、ヘアムース、ヘアミスト、へアワックスなどが挙げられる。
【0019】
図1に示すように、本発明の髪質状態表示具は、毛髪用化粧料5で処理された人毛の状態を示す人工毛髪見本2を表示するため、店頭で試すことができない洗い流し前後の触感、仕上がり感を客観的に提示することができ、毛髪用化粧料が整髪料の場合には整髪料で処理された前後の触感、仕上がり感を客観的に提示することができる。
【0020】
図2は本発明の髪質状態表示具の別の実施の形態を示す概略模式図である。図2において、図1中の構成要素と同等の構成要素には同番号を付し、それらについての説明は特に必要のない限り省略する(以下、同様)。図2に示す髪質状態表示具は、見本保持部材3に2つの人工毛髪見本2a、2bが並べて設けられており、その人工毛髪見本2a、2bの位置に対応させて2つの表示部4a、4bが設けられているものである。本実施の形態においては、毛髪用化粧料5で処理された前後の人毛の髪質状態を示す人工毛髪見本2a、2bで提示し、人工毛髪見本2a、2bに対応した表示部4a、4bに使用前後である旨を表示するので、これにより毛髪用化粧料5での処理具合を提示することができる。なお、表示部4に示される人工毛髪見本2の髪質状態の程度とは、人工毛髪見本2から感知される触感の直接表記のみではなく、使用前、使用後、あるいは後述するように数字のような間接表記も含まれる。
【0021】
図2では、見本保持部材3に毛髪用化粧料5で処理された前後の人毛の髪質状態を示す人工毛髪見本2a、2bを並べて設け、その人工毛髪見本2a、2bの位置に対応させて2つの表示部4a、4bが設けられている態様を示したが、例えば、複数段階のランクの人工毛髪見本(例えばA〜Eのランクの人工毛髪見本)を毛髪化粧料とは別に並べておき、毛髪化粧料には個人の髪質に応じ2ランクアップするといった表示方法や、使用前の髪質がランクAの人は使用後の髪質がランクBになるといった表示方法をとってもよい。
【0022】
本発明の髪質状態表示具のさらに別の実施の形態を図3に示す。図3に示す髪質状態表示具1は、髪質状態が異なる16種の人工毛髪見本2と、人工毛髪見本2を個別に並べて保持する見本保持部材3と、人工毛髪見本2の髪質状態の程度を示す表示部4で形成されている。この人工毛髪見本2は、表示部4にあるように、しっとり感の程度を8段階、すべり感の程度を2段階の16種類の人工毛髪見本によって構成したものである。図3の髪質状態表示具1は、しっとり感、滑り感の2つの指標であるが、他の組合せ、例えばごわつき、しなやかの2つの指標で人工毛髪見本2を構成することもできる。
図3に示すような髪質状態表示具によって、理髪店や美容院等において、毛髪化粧料の処理前に顧客に処理後の仕上がり感を伝えることができる。
【0023】
本発明の髪質状態表示具の別の実施の形態を図4に示す。図4の髪質状態表示具は、触感で感知可能な髪質状態が異なる複数の人工毛髪見本2と、この人工毛髪見本2を個別に並べて保持する見本保持部材3と、人工毛髪見本2に対応して各人工毛髪見本におけるそれぞれの髪質状態の程度を文字(図示省略)で示す表示部4とを有するものである。
表示部4に加えて、図4において点線で表示したような毛髪用化粧料5自体を配置させる態様として、該当する毛髪用化粧料5を提示することもできる。
【0024】
この提示にあっては、毛髪用化粧料5がシャンプーであれば、通常の髪用、痛んだ髪用、柔らかい髪用、硬い髪用のように、対応する毛髪の種類毎にシャンプーを並べることによって、購入者は自分により適した又は希望する毛髪用化粧料5を自己の毛髪と比較して選択することができる。
【0025】
人工毛髪見本は、人工毛髪の素材、断面形状、繊度又は表面コーティング剤の少なくとも一種を変化させることによって異なる触感を提示することができる。人工毛髪の断面形状と曲げ応力との関係を示したグラフを図5に示す。図5に示す曲げ応力は人工毛髪1本に対する曲げ応力であり、人工毛髪5本について3回測定した平均値である。このグラフから明らかなように、人工毛髪の単位面積あたりの断面形状の外周長が大きく、その断面形状が非対称なものほど曲げ応力が高く、髪質として硬い傾向になることがわかる。
【0026】
図6は人工毛髪の断面形状と髪質状態の関係を示す図である。図6から明らかなように人工毛髪の断面形状が円形に近いほどしっとり重い傾向の髪質に、人工毛髪の単位面積あたりの断面形状の外周長が大きくなるほど軽く、ぱさつく傾向の髪質に、また、人工毛髪の断面形状が非対称であるほど、クセのある髪質になることがわかる。
【0027】
これらの特性を持った数種の人工毛髪を混合することで感触を変化させることもできる。例えば、図6の重い感触(円形に近い形状)の人工毛髪と軽い感触(外周長さが長い)の人工毛髪を用い、次の5段階を作製することができる。
【0028】
(1)重い感触の人工毛髪100%、軽い感触の人工毛髪0%
(2)重い感触の人工毛髪75%、軽い感触の人工毛髪25%
(3)重い感触の人工毛髪50%、軽い感触の人工毛髪50%
(4)重い感触の人工毛髪25%、軽い感触の人工毛髪75%
(5)重い感触の人工毛髪0%、軽い感触の人工毛髪100%
【0029】
人工毛髪に使用される合成繊維としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル系繊維、ポリアミド6、ポリアミド12、ポリアミド46、ポリアミド66等のポリアミド系繊維、アクリル系繊維、塩化ビニル系繊維等の合成繊維を用いることができ、必要な感触に合わせて適宜これらの樹脂を選択することができる。
【0030】
人工毛髪における触感の他の変化要素としては、人工毛髪自体の太さ、合成樹脂組成物に予め繊維表面処理剤、柔軟剤、可塑剤など従来公知の添加剤を配合することが挙げられる。
以下、実施例により本発明の髪質状態表示具をさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0031】
(実施例1)
ポリ塩化ビニル樹脂(重合度1000)100質量部とハイドロタルサイト系安定剤3質量部、12ヒドロキシステアリン酸亜鉛0.6質量部、12ヒドロキシステアリン酸カルシウム0.4質量部、高級脂肪酸エステル系滑剤4.0質量部、ポリエチレンワックス0.2質量部をヘンシェルミキサーで混合し、図7に示す孔形状の紡糸金型(断面積0.06mm2、孔数120)を用いて、金型温度180℃及び押出量10kg/時間で溶融紡糸した。溶融紡糸したフィラメントを延伸した後、120℃の空気雰囲気下で75%まで熱弛緩処理して65デシテックスの人工毛髪用繊維iを得た。
【0032】
(実施例2)
実施例1で得た人工毛髪用繊維1にアミノ変性シリコーンを重量比で0.1%付着させ人工毛髪用繊維iiを得た。
【0033】
(実施例3)
実施例1においてドラフトを5倍に変更し、他は同様にして55デシテックスの人工毛髪用繊維を作製し、その後、さらに実施例2と同様の操作で、アミノ変性シリコーンを重量比で0.05%付着させて人工毛髪用繊維iiiを得た。
【0034】
(実施例4)
実施例1において、図8に示す孔形状の紡糸金型を用いて人工毛髪用繊維を作製し、その後、さらに実施例2と同様の操作でアミノ変性シリコーンを重量比で0.2%付着させて人工毛髪用繊維ivを得た。
【0035】
(実施例5)
実施例1において、図9に示す孔形状の紡糸金型を用い、3倍にドラフトして90デシテックスの人工毛髪用繊維を作製し、その後、さらに実施例2と同様の操作でアミノ変性シリコーンを0.05%付着させて人工毛髪用繊維vを得た。
【0036】
(実施例6)
実施例1において図10に示す孔形状の紡糸金型を用い、人工毛髪用繊維viを得た。
実施例1〜6で得られた人工毛髪の感触を評価した結果を表1に示す。表1の結果より、人工毛髪によって触感で感知可能な様々な人工毛髪見本を製造することが可能であることがわかる。
【0037】
【表1】

【0038】
なお、表1において、しっとり感、なめらか感、しなやか感、滑り感、ハリ感、ごわつき感は、専門美容師10人の判定による官能評価であり、人工毛髪束を長さ30cm、重さ60gに計量後、束ねた毛維束を、次の評価基準で評価したものである。
【0039】
(しっとり感)
○:しっとりさが強いもの
△:しっとりさがあるもの
×:しっとりさが弱いもの
(なめらか感)
○:なめらかさが強いもの
△:ややなめらかさがあるもの
×:なめらかさが弱いもの
(しなやか感)
○:しなやかさが強いもの
△:ややしなやかさがあるもの
×:しなやかさが弱いもの
【0040】
(滑り感)
○:表面がつるつるしており、滑り感が強いもの
△:やや滑り感があるもの
×:滑り感が弱いもの
(ハリ感)
○:ハリ感が強いもの
△:ややハリ感があるもの
×:ハリ感が弱いもの
(ごわつき感)
○:ごわつき感が強いもの
△:ややごわつき感があるもの
×:ごわつき感が弱いもの
【0041】
(比較例1)
ビューラックス社製健常毛髪(人毛)を5%グリセリン水溶液に30分浸浸させ、その後1時間乾燥させてしっとり感提示毛髪を作製した。
【0042】
(人工毛髪と健常毛髪の比較)
上記実施例1の人工毛髪と比較例1の健常毛髪について、しっとり感、耐久性、ばらつきについて以下のように評価した。結果を表2に示す。なお、表1において、しっとり感、耐久性、ばらつきは、次の評価基準で評価したものである。
【0043】
(しっとり感)
専門美容師の判定による官能評価であり、長さ5cm、幅3cmに1本1本が重ならないよう作製した人毛及び人工毛髪束を、指で挟み、次の評価基準で評価した。
○:しっとりさが強いもの
△:しっとりさがあるもの
×:しっとりさが弱いもの
【0044】
(耐久性)
長さ5cm、幅3cmの大きさに1本1本が重ならないように並べて作製した実施例1の人工毛髪束と比較例1の健常毛髪束を、専門美容師が指で挟んで30回評価し、1回目と30回目の評価におけるしっとり状態の変化を次の評価基準で評価した。
○:しっとりさが変化しないもの
△:しっとりさが弱くなるもの
×:しっとりさがなくなるもの
【0045】
(ばらつき)
長さ5cm、幅3cmの大きさに1本1本が重ならないように並べて作製した実施例1の人工毛髪束と比較例1の健常毛髪束を10個ずつ準備し、専門美容師が実施例1の人工毛髪束と比較例1の健常毛髪束のそれぞれのグループを評価し、グループ内でのしっとり状態のばらつきを次の評価基準で評価した。
○:10個中9個以上が同じしっとり状態と判断されるもの
△:10個中5個以上9個未満が同じしっとり状態と判断されるもの
×:10個中4個未満が同じしっとり状態と判断されるもの
【0046】
【表2】

【0047】
表2の結果より、人工毛髪見本による感触は、人毛を用いた感触に対してばらつきがなく、恒常的に触感を提示できることがわかった。
以上のように、本発明の髪質状態表示具によれば、毛髪用化粧料、とりわけ店頭で試すことができない洗い流し商品の使用感、仕上がり感を客観的に提示することが可能であるとともに、均一に提示することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 髪質状態表示具
2,2a,2b 人工毛髪見本
3 見本保持部材
4,4a,4b 表示部
5 毛髪用化粧料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触感で感知可能な髪質を有する人工毛髪見本と、該人工毛髪見本を保持する見本保持部材と、前記人工毛髪見本の前記髪質を表示する表示部とを備えていることを特徴とする髪質状態表示具。
【請求項2】
前記人工毛髪見本に対応させて、前記人工毛髪見本の髪質状態を実現する毛髪用化粧料が、前記見本保持部材に表示または配置されていることを特徴とする請求項1記載の髪質状態表示具。
【請求項3】
前記人工毛髪見本が、前記毛髪用化粧料で処理される前の髪質を有する人工毛髪見本と、前記毛髪用化粧料で処理された後の髪質を有する人工毛髪見本とを表示するものであることを特徴とする請求項1または2記載の髪質状態表示具。
【請求項4】
触感で感知可能な髪質状態が異なる複数の人工毛髪見本と、該人工毛髪見本を個別に並べて保持する見本保持部材と、前記人工毛髪見本に対応して各人工毛髪見本の前記髪質状態を表示する表示部とを備えていることを特徴とする髪質状態表示具。
【請求項5】
前記人工毛髪見本に対応させて、前記人工毛髪見本の髪質状態を実現する毛髪用化粧料が、前記見本保持部材に表示または配置されていることを特徴とする請求項4記載の髪質状態表示具。
【請求項6】
前記表示部が前記毛髪用化粧料に設けられていることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の髪質状態表示具。
【請求項7】
前記人工毛髪見本の髪質が、人工毛髪見本の素材、断面形状、繊度または表面コーティング剤の少なくとも1種を変化させたものであることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の髪質状態表示具。
【請求項8】
毛髪用化粧料と、該毛髪用化粧料で処理された後の髪質を有する人工毛髪見本とをセットにして提示することを特徴とする提示方法。
【請求項9】
毛髪用化粧料と、該毛髪用化粧料で処理される前の髪質を有する人工毛髪見本と、前記毛髪用化粧料で処理された後の髪質を有する人工毛髪見本とをセットにして提示することを特徴とする提示方法。
【請求項10】
複数種類の毛髪用化粧料と、該複数種類の毛髪用化粧料で処理された髪質を有する人工毛髪見本とを、個々に対応させて配置することを特徴とする提示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−240335(P2010−240335A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95567(P2009−95567)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【出願人】(000003296)電気化学工業株式会社 (1,539)
【復代理人】
【識別番号】100111040
【弁理士】
【氏名又は名称】渋谷 淑子