説明

魚の真菌症の治療のための殺真菌剤の使用

本発明は、2−[[[[1−[3−(1−フルオロ−2−フェニルエチル)オキシ]フェニル]エチリデン]アミノ]オキシ]メチル]α−(メトキシイミノ)−N−メチル−αE−ベンゼンアセトアミド、アミスルブロム、シアゾファミド、エネストロビン、ファモキサドン、フェンアミドン、フルオキサストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビンおよびピリベンカルブの群から選択される少なくとも1種の殺真菌剤を使用することによる、魚および無脊椎動物ならびにこれらの全ての発育の段階を保護するための、およびサプロレグニア属、アクリャ属、アファノミセス属および水産養殖において重要な他の属種の真菌によって引き起こされる真菌症の治療のための方法に関する。前記用途は、病原性真菌の抑制または殺菌をもたらす。養魚および飼育における使用のための上記の群から選択される少なくとも1種の殺真菌剤を含む薬剤は、水産養殖における、飼育池、飼育槽、水族館、自然のスポーツフィッシュの水、池、および海水魚養殖場における魚の疾患の予防および治療に適している。関係した施用形態は、水および飼料への添加、ならびに直接施用である。水への本発明による薬剤の添加は、卵および魚の真菌感染症を減少させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以下の群、2−[[[[1−[3−(1−フルオロ−2−フェニルエチル)オキシ]フェニル]エチリデン]アミノ]オキシ]メチル]α−(メトキシイミノ)−N−メチル−αE−ベンゼンアセトアミド、アミスルブロム、シアゾファミド、エネストロビン、ファモキサドン、フェンアミドン、フルオキサストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビンおよびピリベンカルブから選択される少なくとも1種の殺真菌剤の使用による、サプロレグニア(Saprolegnia)属、アクリャ(Achlya)属、アファノミセス(Aphanomyces)属および水産養殖において重要なその他の種(下記で病原性真菌と呼ばれる)の真菌によって引き起こされる、魚および無脊椎動物ならびにこれらの全ての発育の段階における真菌症の予防および治療のための方法に関する。
【0002】
本発明は、同様に、サプロレグニア属、アクリャ属、アファノミセス属および水産養殖において重要なその他の種の真菌(以下、病原性真菌と呼ぶ)によって引き起こされる、魚および無脊椎動物ならびにこれらの全ての発育の段階における真菌症の予防および治療のための、以下の群、2−[[[[1−[3−(1−フルオロ−2−フェニルエチル)オキシ]フェニル]エチリデン]アミノ]オキシ]メチル]α−(メトキシイミノ)−N−メチル−αE−ベンゼンアセトアミド、アミスルブロム、シアゾファミド、エネストロビン、ファモキサドン、フェンアミドン、フルオキサストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビンおよびピリベンカルブから選択される少なくとも1種の殺真菌剤を含む組成物に関する。上記組成物は、特に病気の魚およびストレスを受けた魚における予防および治療上の使用のために、全ての発育の段階における養魚および魚の飼育において使用されている。
【0003】
本発明は、さらに、魚卵の抗真菌処置のための組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0004】
世界的に増加している魚の需要のために、魚は、ますます、水産養殖において飼育されている。一例として、しかし制限的にではなく、以下の魚種、ナマズ、マス、サケ、パンガシウスおよびスズキに水産養殖に関連があると言及することができる。魚が互いに近接しているために、このタイプの水産養殖は、病原体、特に病原性真菌に極めて影響されやすい。魚および魚卵の両方ならびに他の発育の段階を攻撃する病原性真菌は、以下の属、サプロレグニア・ヒポジナ(Saprolegnia hypogyna)、サプロレグニア・フェラックス(S.ferax)、サプロレグニア・アウストラリス(S.australis)、サプロレグニア・デクリナ(S.declina)、サプロレグニア・ロンギカウリス(S.longicaulis)、サプロレグニア・ミクスタ(S.mixta)、サプロレグニア・パラシチカ(S.parasitica)、サプロレグニア・スポランギウム(S.sporangium)、サプロレグニア・ヴァリアビリス(S.variabilis)、アファノミセス・インヴァダンス(Aphanomyces invadans)およびアクリャ・フラゲラタ属種(Achlyaflagellata sp.)に属する。
【0005】
真菌症の結果、生産魚および観賞魚さらに甲殻類および他の無脊椎動物の養殖および飼育は高い経済的損失が生じている(Bruno,D.W,Wood,B.P.,1999:Saprolegnia and other Oomycetes.In:Woo,P.T.K.,Bruno,D.W.(Ed):Fish Diseases and Disorder.Vol.3 Viral,Bacterial and fungal infections.CAB International,Wallingford)。
【0006】
現在までのところ、しかしながら、魚の真菌症の抑制に適したわずかな物質しか知られていない。
【0007】
過去、マラカイトグリーンは、真菌症の予防および治療のための活性物質としてしばしば使用された。しかし、この物質は、発癌性、突然変異誘発性および催奇形性のために、魚卵の処理用にドイツにおいてのみ許容されているが、魚の処理用には許可されていない(Meyer,F.P.;Jorgenson.T.A.,1983:Teratological and other effects of malachite green on development of rainbow trout and rabbits.Trans.Am.Fish.Soc.112,818−824,(Bundesinstitut fur gesundheitlichen Verbraucherschutz and Veterinaermedizin[Federal Institute for Consumer Protection of Health and Veterinary Medicine],2002)。マラカイトグリーンは染料であり、水の変色および処理した魚の変色をもたらすことがある。さらに、マラカイトグリーンは、長い半減期を有しているので、後に消費されることになる魚に残留物をもたらすことがある(D.J.Alderman in Journal of Fish Diseases 8.(1985)289−298)。
【0008】
さらに、今日、ホルマリンは使用されているが、これは、病原性真菌に対して一定の殺真菌作用を有するが、実用において満足のいくものではなく、その上、特にクローズドシステムにおいて職業上の安全問題を引き起こしている。
【0009】
ドイツ特許第10237740号明細書において、養魚における天然および合成腐植物質の使用が記載されている。
【0010】
特定のベンジルイミダゾールは、サプロレグニア・パラシチカに対してインビトロで作用することが、ドイツ特許第2037610号明細書から既に知られている。しかし、養魚における潜在的な用途については何も言及されていない。
【0011】
中国特許第1472448号明細書において、殺真菌活性なハーブ配合物が、魚、エビおよびカニにおけるサプロレグニアに対する薬剤としての使用のために記載されている。この配合物は、ガラ・チャイネンシス(Galla Chinensis)40−70、コルテックス・フェロデンドリ(Cortex Phellodendri)(フェロデンドロン・チャイネンス(Phellodendron chinense)および/またはフェロデンドロン・アムレンス(Phellodendron amurense))10−30、パエオニア・スッフルティコサ(Paeonia suffruticosa)の皮10−30、およびホウトトゥイニア・コルダタ(Houttuynia cordata)10−30wt%を含む。
【0012】
様々なポリフェノールを含む茶抽出物も使用することができる(特許3698745号公報)。
【0013】
国際公開第04/002574号パンフレットにおいて、グルカナーゼを含む酵素混合物が、魚およびこれらの発育段階(卵)における真菌症の予防および治療のために記載されている。
【0014】
国際公開第98/05311号パンフレットにおいて、ブロモポール(bromopol)(ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール)が、水生生物、特にサケおよびこの卵の様々な疾患の抑制のために使用されている。
【0015】
さらに、サプロレグニア疾患に対する二酸化塩素(国際公開第95/18534号パンフレット)、3−フェノキシカルボニルメトキシ−1,1,2−トリヨード−1−プロペン(特開昭57116012号公報)および2−ピリジンチオール1−オキシド(特公昭47019191号公報)の使用が知られている。
【0016】
魚の真菌症の抑制のためのクレソキシム−メチルの使用が、国際公開第97/006690号パンフレットから知られている。
【0017】
しかし、一方では、これらの物質の有効性は、特に低用量において、しばしば十分ではない。他方では、魚毒(piscotoxic)性のために、処理の適合性の制限が生じることがあるので、有効な用量を十分に使用できない。さらに、特にハーブまたは茶抽出物または酵素混合物の正確な用量は、これらの様々な活性物質含有量のために困難である。さらに、これらの配合物の使用は、個別の魚種および疾患にのみ適する。さらに、上記配合物の使用は、使用および魚の消費の間に長い待機時間を必要とするので、これらの毒性のために漁獲(取り入れ)前の長期間しばしば制限される。
【0018】
最新の抗真菌剤に対する環境上および経済的な要求は、例えば、作用、毒性、選択性、施用量、残留物形成および好都合な生産可能性の範囲に関するかぎり、継続的に増加しているので、少なくとも小地域において、既知の抗真菌剤に比べて利点を有する新規の抗真菌剤を開発するという継続的な課題がある。
【0019】
さらに、これらの物質は、有毒な副作用を有する。例えば、ホルマリン、クロラミンTおよびマラカイトグリーンシュウ酸塩の使用は、いくつかの副作用およびリスクをしばしば伴い、例えば、これは、発癌可能性、突然変異誘発可能性、染色体損傷可能性および催奇形可能性を有し、呼吸毒として作用し、さらに、組織病理学的後遺症および多臓器損傷および生化学的血液パラメータの著しい変化が起こる(Sanchez et al.1998;Srivastava et al.2004;from St.Heidrich dissertation,2005)。
【0020】
純粋な消毒剤に加えて、他の物質も使用されている。これらには、酢酸(浸漬処理用)、塩化ナトリウムおよび塩化カルシウム(浸透圧調節処理)、炭酸ナトリウムおよび二酸化炭素(魚の麻酔用)および亜硫酸ナトリウム(産卵の改善用)およびポビドンヨード(魚卵の表面の消毒用)が含まれる。
【0021】
従来の予防および療法が不利である理由は、例えば、抗生物質、化学療法剤およびトリフェニル染料、とりわけ、細菌性疾患、寄生虫疾患および環境関連疾患の排除のためおよび収量増加のための活性物質の長期の大量の、また場合によって無分別な使用に起因する。この使用から、ある場合には、好ましくない耐性状況が、動物およびヒトにおける疾患の治療について発生した。さらに、従来の組成物の使用は、重症な副作用、リスクおよび環境損害をしばしば伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】ドイツ特許第10237740号明細書
【特許文献2】ドイツ特許第2037610号明細書
【特許文献3】中国特許第1472448号明細書
【特許文献4】特許3698745号公報
【特許文献5】国際公開第04/002574号パンフレット
【特許文献6】国際公開第98/05311号パンフレット
【特許文献7】国際公開第95/18534号パンフレット
【特許文献8】特開昭57116012号公報
【特許文献9】特公昭47019191号公報
【特許文献10】国際公開第97/006690号パンフレット
【非特許文献】
【0023】
【非特許文献1】Bruno,D.W,Wood,B.P.,1999:Saprolegnia and other Oomycetes.In:Woo,P.T.K.,Bruno,D.W.(Ed):Fish Diseases and Disorder.Vol.3 Viral,Bacterial and fungal infections.CAB International,Wallingford
【非特許文献2】Meyer,F.P.;Jorgenson.T.A.,1983:Teratological and other effects of malachite green on development of rainbow trout and rabbits.Trans.Am.Fish.Soc.112,818−824,(Bundesinstitut fur gesundheitlichen Verbraucherschutz and Veterinaermedizin[Federal Institute for Consumer Protection of Health and Veterinary Medicine]),2002
【非特許文献3】D.J.Alderman in Journal of Fish Diseases 8.(1985)289−298
【非特許文献4】Sanchez et al.1998;Srivastava et al.2004;from St.Heidrich dissertation,2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
したがって、水産養殖の分野において、商業的養魚の生産性を低下させる病原体を抑制する有効手段の増加したニーズが存在する。魚の疾患の発生の場合、主として予防的な性格の早期介入および疾患を誘発する要因の回避および軽減は、ますます大きくなる役割を果たす。このため、別の処理の可能性をさがすことは、際だった重要性を有している。使用可能な手段は、広範な病原体範囲を抑制し、現存する安全指針に合致する必要がある。本発明は、これらの基準を満たし、さらなる利点を生ずる。
【課題を解決するための手段】
【0025】
今、驚くべきことに、以下の群、2−[[[[1−[3−(1−フルオロ−2−フェニルエチル)オキシ]フェニル]エチリデン]アミノ]オキシ]メチル]α−(メトキシイミノ)−N−メチル−αE−ベンゼンアセトアミド、アミスルブロム、シアゾファミド、エネストロビン、ファモキサドン、フェンアミドン、フルオキサストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビンおよびピリベンカルブから選択される少なくとも1種の殺真菌剤は、サプロレグニア属、アクリャ属、アファノミセス属の真菌によって引き起こされる、魚、エビ、カニおよび他の無脊椎動物ならびにこれらの全ての発育の段階における真菌症、とりわけサプロレグニア属種により引き起こされる真菌疾患の予防および治療の両方の目的に極めて適することが見出された。本発明による組成物は、サプロレグニアおよび/またはアクリャおよび/またはアファノミセス属種によって引き起こされる真菌症の抑制に適している。
【0026】
先行技術から知られる物質または治療方法に比較して、治療における前述の殺真菌剤の使用は、次の利点を有する。すなわち、これらは、良好な有効性を示し、魚の体に望ましくない程度には蓄積せず、これらは、好ましい環境上および他の毒物学上の性質を有し、生物群集に許容されない影響を示さない。
【0027】
したがって、本発明は、全ての魚の個体群およびこれらの発育の段階における魚の真菌症、とりわけ、サプロレグニア病原体によって引き起こされるものの抑制のための、以下の群、2−[[[[1−[3−(1−フルオロ−2−フェニルエチル)オキシ]フェニル]エチリデン]アミノ]オキシ]メチル]α−(メトキシイミノ)−N−メチル−αE−ベンゼンアセトアミド、アミスルブロム、シアゾファミド、エネストロビン、ファモキサドン、フェンアミドン、フルオキサストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビンおよびピリベンカルブから選択される少なくとも1種の殺真菌剤の使用に関する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明による方法に使用される殺真菌剤は、農薬活性物質として既に知られている(例えば、Pesticide Manual,13th edition参照)。
【0029】
魚の疾患は、魚飼育(aquaristics)および野生の魚の個体群における養魚および水産養殖に影響を及ぼす。疾患の様々なタイプを、ここで、遺伝性疾患、感染性および寄生虫疾患、外傷、水に関連した損傷および飼育状態におけるストレス要因による損傷などに分類することができる。複雑な相互関係が、防御能力、病原体および生活状態の間に広がっており、これが感染性疾患の発症を最終的に決定する。多数の広範囲の魚の疾患が、寄生虫の攻撃によって引き起こされる。寄生虫は、養殖における幼若動物の死の事例の約50パーセントに関与もする。病原体のタイプに応じて、寄生虫による攻撃は、じわじわとまたは爆発的に起こることがあり、プールの多くの動物または全ての動物が疾患に確実に感染することがある。真菌、細菌およびウイルスも魚に疾患を引き起こすことがある。
【0030】
真菌によって引き起こされる疾患は、真菌症と呼ばれる。これは、ここで、二次感染、すなわち、真菌症の前に、他の疾患が既に魚またはプールを攻撃していたことの問題であり得る。真菌は、初めは寄生的に生きることもある。真菌は、壁で囲まれた境界も有するので、皮膚を貫通する真菌症は、治療が非常に困難である。
【0031】
サプロレグニアは、卵菌類のクラスに属する。病気の魚は、以下の症状を示す。すなわち、これらは、表面に白色、綿毛様、灰白色の真菌感染を示す。これらの真菌は、保護粘膜層または表皮が損傷している場合、しばしば魚にコロニー形成することがある。このような真菌の増殖は、他の生物による刺し傷もしくは咬傷または機械的損傷の結果ばかりか、温度または廃水の影響にもよることもある。しかし、同様に危険にさらされるのは、魚卵である。真菌は、全ての範囲の淡水に自然に発生し、衰弱した魚を攻撃する。特に老齢の雄のマスは強く侵されるようにしばしば見える。サプロレグニアは、二次的に発生する弱い寄生、および直接的に魚およびこれらの卵を攻撃し得る一次寄生の両方である。これは、全てのタイプの魚を偶然に攻撃し得る。
【0032】
漁獲、輸送および飼育の場合に生ずる魚の損傷の回避および治療における適用の範囲を示して、魚の飼育および卵の処理における結果を改善することならびに水産養殖および養殖における施設の支障のない操業を保証することが、本発明の目的である。
【0033】
殺真菌剤は、純粋な形態で、ならびに様々な可能な異性体、特に、EおよびZ、トレオおよびエリトロなどの立体異性体、さらにRおよびS異性体またはアトロプ異性体などの光学異性体、さらに適切な場合には互変異性体の混合物としての両方で存在し得る。本発明は、純粋な異性体およびこれらの混合物の両方を含む。
【0034】
上記に定義された置換基のタイプに応じて、上記の殺真菌剤は、酸性または塩基性を有し、塩、場合によってさらに分子内塩を形成し得る。殺真菌剤が、ヒドロキシル、カルボキシルまたは酸性を誘導する他の基を所持している場合、これらの化合物は、塩基と反応させて塩を得ることができる。適切な塩基は、例えば、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の水酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、特に、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムのもの、さらにアンモニア、(C−C)−アルキル基を有する第一級、第二級および第三級アミン、(C−C)−アルカノールのモノ−、ジ−およびトリアルカノールアミン、コリンおよびクロロコリンである。殺真菌剤が、アミノ、アルキルアミノまたは塩基性を誘導する他の基を所持している場合、これらの化合物は、酸と反応させて塩を得ることができる。適切な酸は、例えば、塩酸、硫酸およびリン酸などの鉱酸、酢酸またはシュウ酸などの有機酸、およびNaHSOおよびKHSOなどの酸性塩である。このように得られる塩も殺真菌性を有する。
【0035】
本発明により使用される殺真菌剤は上記に記載されている。
【0036】
以下の群、アミスルブロム、シアゾファミド、エネストロビン、ファモキサドン、フェンアミドン、フルオキサストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビンおよびピリベンカルブから選択される殺真菌剤は好ましい。
【0037】
以下の群、エネストロビン、ファモキサドン、フェンアミドン、フルオキサストロビン、オリサストロビンおよびピコキシストロビンから選択される殺真菌剤は、特に好ましい。
【0038】
以下の群、フェンアミドンおよびファモキサドンから選択される殺真菌剤は、非常に特に好ましい。
【0039】
さらに、以下の群、エネストロビン、オリサストロビンおよびフルオキサストロビンから選択される殺真菌剤は、非常に特に好ましい。
【0040】
フェンアミドンおよびフルオキサストロビンから選択される殺真菌剤は特に好ましい。
【0041】
本発明による方法、使用および組成物において、単一の殺真菌剤および2種以上の殺真菌剤の組合せの両方が選択され得る。
【0042】
本発明によれば、殺真菌剤は、水産養殖施設の水、例えば、孵化施設、飼育池、飼育槽、丸い水泳プール、肥育プール、水族館、自然のスポーツフィッシュ水域および海水魚養殖場に添加され、これらの作用によって、病原性真菌の増殖の抑制または破壊が引き起こされる。この意味での水産養殖施設は、淡水、汽水または海水における魚または無脊椎動物の飼育に使用される施設である。殺真菌剤は水に添加される。用量は、水産養殖施設の水の状態(有機性汚濁)、殺真菌剤の活性および処理する魚の発育の段階に基づく。現存する真菌症を抑制し新しい感染症の発生を防止する活性レベルが、連続式またはバッチ式の添加により維持される。
【0043】
施用量は、魚のタイプおよび発育の段階ならびに殺真菌剤のタイプに応じて、0.1μg/lから1g/l、好ましくは1μg/lから100mg/l、特に好ましくは5μg/lから100mg/lの活性物質である。より高い濃度は、一般的に必要ではないが、化合物または施用のタイプに応じて、特に、例えば、飼育槽または水族館などの人工システムにおいて、卵、幼生期および幼若期の処理において有用であり得る。
【0044】
真菌症に対する作用は、殺真菌剤は、水産養殖施設の水性媒体中で、自由な形態で使用されるのみならず、保護すべき生物またはこれらの卵の表面(粘膜)に付着されることにおいてさらに達成される。この手法は、感染の高い危険によってより高い殺真菌剤含有量が必要となる場合、または水産養殖施設の高い水の処理量の場合、殺真菌剤混合物の連続式添加が可能でない場合に好ましい。付着は、使用されるのが好ましい殺真菌剤の付着性を増す殺真菌剤混合物質に加えての、高い殺真菌剤濃度における一時的プレインキュベーションによる動物またはこれらの卵の処理によって達成される。
【0045】
殺真菌剤の有効量は、約1μgから10mg/kg/日の魚のための例示的な供与量率を含み、これは、単一用量でまたは1日あたり1から4回などの単一の分割用量の形態で投与され得る。好ましくは、化合物は、単一用量でまたは2から4分割された用量で投与される10mg/kg/日未満の用量で投与される。
【0046】
活性物質は、直接的に投与または使用前に通例の不活性担体と混合して投与することができる。基本的に、水中または保護すべき生物またはこれらの卵の表面(粘膜)上の活性物質の均一な分配を促進または保証する物質が不活性担体として適している。
【0047】
これらのそれぞれの物理的性質および/または化学的性質に応じて、活性物質は、溶液、乳濁液、懸濁液、粉末、泡沫、ペースト、顆粒、エアロゾル、ポリマー材料中の微細なカプセル封入および種子のためのコーティング組成物、および極微量の冷および温ミスト配合物などの通例の配合物に変換することができる。
【0048】
これらの配合物は、既知の方法で、例えば、適切ならば(乳化剤および/または分散剤および/または泡沫生成剤である)界面活性剤を使用して、活性物質を(液体溶媒、圧力下の液化ガスおよび/または固体担体である)増量剤と混合することによって生産される。増量剤としての水の使用の場合、例えば、有機溶媒を補助溶媒として使用することも可能である。適切な液体溶媒は、一般的に、キシレン、トルエンまたはアルキルナフタレンなどの芳香族化合物、クロロベンゼン、クロロエチレンまたは塩化メチレンなどの塩素化芳香族化合物または塩素化脂肪族炭化水素、シクロヘキサンまたはパラフィン(例えば、石油留分)などの脂肪族炭化水素、ブタノールまたはグリコールなどのアルコール、およびこれらのエーテルおよびエステル、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンまたはシクロヘキサノンなどのケトン、ジメチルホルムアミドおよびジメチルスルホキシドなどの強い極性溶媒、および水である。液化ガス増量剤または担体は、常温において常圧下でガスである液体、例えば、ハロゲノ炭化水素およびブタン、プロパン、窒素および二酸化炭素などのエアロゾル噴射剤を意味する。適切な固体担体は、例えば、カオリン、クレイ、タルク、チョーク、石英、アタパルジャイト、モンモリロナイトまたは珪藻土などの天然粉砕鉱物ならびに高分散シリカ、アルミナおよびケイ酸塩などの粉砕合成鉱物を意味する。顆粒のために適切な固体担体は、例えば、方解石、軽石、大理石、セピオライト、ドロマイトなどの粉砕し分別した天然岩石ならびに無機および有機荒粉の合成顆粒、ならびにのこ屑、ヤシ殻、トウモロコシ穂軸およびタバコ茎などの有機物質の顆粒である。適切な乳化剤および/または泡沫生成剤は、例えば、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪アルコールエーテル、例えば、アルキルアリールポリグリコールエーテル、アルキルスルホネート、アルキルスルフェート、アリールスルホネートおよびタンパク質加水分解物などの非イオン性およびアニオン性乳化剤である。適切な分散剤は、例えば、リグニン亜硫酸塩廃液およびメチルセルロースである。
【0049】
カルボキシメチルセルロース、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテートなどの天然および合成の微粉の、粒状またはラテックス様のポリマー、ならびにケファリンおよびレシチンなどの天然リン脂質、および合成リン脂質などの接着剤を配合に使用することができる。さらなる添加剤は、鉱油および植物油であってよい。
【0050】
無機顔料、例えば、酸化鉄、酸化チタンおよびペルシアンブルー、ならびにアリザリン染料、アゾ染料および金属フタロシアニン染料などの有機染料などの着色剤、ならびに鉄、マンガン、ホウ素、銅、コバルト、モリブデンおよび亜鉛の塩などの微量栄養素を使用することができる。
【0051】
配合は、一般的に、0.1から95重量パーセントの間の活性物質を含み、好ましくは0.5から90重量%の間の活性物質を含む。
【0052】
本発明は、真菌症を患う魚およびこれらの全ての発育の段階の有効な殺真菌剤による治療の方法に関する。
【0053】
特定の用量および投与の頻度は、魚の特定のタイプについてまた発育段階に応じて変わり、使用される特定の化合物の効能、この化合物の代謝的安定性および作用の長さ、魚種、魚齢、体重、全般的な健康状態、性別および飼料、投与の性質および時間、排せつ率および特定の状態の重篤性を含めた多数の要因によって決まり得ることは明らかである。
【0054】
したがって、本発明は、それを用いてサプロレグニア疾患または他の魚の疾患を、この目的に有効な量で治療し得る少なくとも1種の殺真菌剤、および薬学的に許容される担体または薬学的に許容される希釈剤を含む獣医薬を入手可能にする。本発明による組成物は、以下に記載された他の治療薬を含むことができ、例えば、所望の投与に適するタイプの医薬品添加物(例えば、賦形剤、結合剤、保存料、安定剤、調味料など)などの通常の固体もしくは液体担体または希釈剤を用いて、製剤(pharmaceutical galenics)の分野で周知されたまたは許容される薬務により求められた技術に従って配合することができる。
【0055】
上記に記載された有効な殺真菌剤は、任意の所望の適切な手段、例えば、錠剤、カプセル、顆粒または粉末の形態などで経口的に、舌下で、頬側に、皮下、静脈内、筋内または胸骨内注射または注入技術(例えば、無菌の、注射用、水性または非水性溶液または懸濁液として)を用いるなどの非経口で、クリームまたは軟膏の形態などで局所にまたは無毒の薬学的に許容される担体または希釈剤を含む単位用量製剤によって投与することができる。殺真菌剤は、例えば、即時放出または持続放出に適した形態で投与することができる。即時放出または持続放出は、上記に記載された有効な殺真菌剤を含む適切な薬剤の使用または、特に持続放出の場合、皮下移植または浸透圧ポンプなどのデバイスの使用により達成することができる。化合物は、リポソームで投与することもできる。例えば、活性成分は、上記に記載された殺真菌剤のリストからの単位用量あたり約5から約500mgの化合物または化合物の混合物を含む錠剤、カプセル、溶液または懸濁液などの組成物に、または局所形態に(0.01から5%の殺真菌剤、1日あたり1から5回の処理)使用することができる。これは、生理学的に許容される担体、賦形剤、結合剤、保存料、安定剤、調味料などとまたは局所担体と通常の方法で混合することができる。化合物は、非経口投与のための無菌溶液または懸濁液などの組成物に製剤化することもできる。約0.1から500mgの殺真菌剤を、許容される薬務により求められるように、生理学的に許容される担体、賦形剤、結合剤、保存料、安定剤などと単位用量形態に混合することができる。これらの組成物または配合物における活性物質の量は、好ましくは、指示された範囲における適切な用量が得られる量である。
【0056】
経口投与のための例示的な組成物は、例えば、塊にするための微結晶性セルロース、懸濁化剤としてのアルギン酸またはアルギン酸ナトリウム、粘度増強剤としてのメチルセルロースおよび業界で知られているものなどの甘味料または調味料、ならびに例えば、微結晶セルロース、リン酸二カルシウム、デンプン、ステアリン酸マグネシウムおよび/またはラクトースを含むことができる即時放出性の錠剤ならびに/または業界で知られているものなどの他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤および潤滑剤を含むことができる懸濁液を含む。成形錠剤、圧縮錠剤または凍結乾燥錠剤は、使用することができる例示的な形態である。例示的な組成物は、殺真菌活性物質をマンニトール、ラクトース、スクロースおよび/またはシクロデキストリンなどの急速な溶解性の溶媒と配合したものを含む。このタイプの配合において、セルロース(アビセル)またはポリエチレングリコール(PEG)などの高分子量の賦形剤も存在し得る。このタイプの配合物は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(SCMC)、無水マレイン酸コポリマー(例えば、Gantrez)などの粘膜への接着を助けるための賦形剤およびポリアクリル酸コポリマー(例えば、Carbopol 934)などの放出の制御のための手段も含むことができる。潤滑剤、流動促進剤、調味料、着色剤および安定剤を、より容易な調製および使用のために添加することもできる。
【0057】
上記に記載された殺真菌剤は、単独でまたはさらなる他の殺真菌剤と組み合わせてのいずれかで投与することができる。魚の真菌症に対する作用を同様に有する殺真菌剤の併用は、この作用をしかるべく有効に保護して活性物質に対する真菌病原体の耐性の形成を防止するために特に有用である。
【0058】
治療剤の有効性の確認は、実験室試験によってまたは実験動物を用いる実験によって確認することができる。実験室試験によって、それらの作用の効能に応じた、化合物の有効性の正確な特徴付けが可能になる。このため、活性物質を人工培養媒体に添加し、インキュベーション期間後に真菌の増殖を測定する。動物実験において、例えば、飼育している魚からの卵を処理する。このため、治療剤を適切な濃度で魚卵が飼育されている水槽に添加する。これは、例えば、養魚の間、インキュベーション槽に連続式に添加される水の流れを用いて行われる。治療剤の供給後、水の置換を、一定の時間停止して治療剤が作用を開始できるようにする。この処理は、数分間から数時間、一度にまたは数日間連続して実施することができ、または1日または数日のリズムで実施することができる。この後、治療剤を、水の置換を用いてインキュベーション槽から除去する。処理の有効性および許容性を、生きている真菌に感染していない卵の数を用いて測定する。孵化魚、成熟魚または成獣における有効性および許容性を、魚が養殖されている水槽において試験する。このため、治療剤を魚槽に添加する。治療剤の供給後、水の置換を一定時間停止して治療剤が作用を開始できるようにする。この処理は、数分間から数時間、一度にまたは数日間連続して実施することができ、または1日または数日のリズムで実施することができる。治療の有効性および許容性を、生きている魚の数および真菌感染の程度を用いて測定する。
【0059】
本発明は、以下の実施例によってより詳細に例示される。
【実施例】
【0060】
(実施例1)
魚に寄生する真菌、例えばサプロレグニア属種に対する物質の有効性の測定
サプロレグニア・パラシチカの分離株(CBS 540.67,Centraalbureau voor Schimmelcultures,Baarn,Netherlands)を、暗所において20℃で、PD寒天培地(39g/lの最終濃度)上で培養し複製する。ED50値の測定のため、PD寒天培地のプレートを、0−0.03−0.1−0.3−1−3−10−30ppmの一連の濃度の試験対象の殺真菌剤で処理する。それぞれの場合において、サプロレグニア・パラシチカを含む接種片を、様々な濃度の殺真菌剤で処理したペトリ皿の中央に置く。
【0061】
プレートを、暗所において20℃で3日間インキュベートし、次いで、寒天プレート上の真菌の増殖を測定し、ED50値を、未処理対照との比較から算出する。
【0062】
この試験において、例えば、殺真菌剤のフルオキサストロビン、フェンアミドン、シアゾファミド、ファモキサドンおよびピリベンカルブは、5ppm以下のED50値を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の群、2−[[[[1−[3−(1−フルオロ−2−フェニルエチル)オキシ]フェニル]エチリデン]アミノ]オキシ]メチル]α−(メトキシイミノ)−N−メチル−αE−ベンゼンアセトアミド、アミスルブロム、シアゾファミド、エネストロビン、ファモキサドン、フェンアミドン、フルオキサストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビンおよびピリベンカルブから選択される少なくとも1種の殺真菌剤を含むことを特徴とする、サプロレグニア(Saprolegnia)属、アクリャ(Achlya)属、アファノミセス(Aphanomyces)属の真菌によって引き起こされる、魚および無脊椎動物ならびにこれらの全ての発育の段階における真菌症の治療のための組成物。
【請求項2】
以下の群、フェンアミドンおよびフルオキサストロビンから選択される少なくとも1種の殺真菌剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
サプロレグニア属、アクリャ属、アファノミセス属の真菌によって引き起こされる、魚および無脊椎動物ならびにこれらの全ての発育の段階における真菌症に対する組成物の製造のための、以下の群、2−[[[[1−[3−(1−フルオロ−2−フェニルエチル)オキシ]フェニル]エチリデン]アミノ]オキシ]メチル]α−(メトキシイミノ)−N−メチル−αE−ベンゼンアセトアミド、アミスルブロム、シアゾファミド、エネストロビン、ファモキサドン、フェンアミドン、フルオキサストロビン、オリサストロビン、ピコキシストロビンおよびピリベンカルブから選択される少なくとも1種の殺真菌剤の使用。
【請求項4】
サプロレグニア属、アクリャ属、アファノミセス属の真菌によって引き起こされる、魚および無脊椎動物ならびにこれらの全ての発育の段階における真菌症に対する組成物の製造のための、以下の群、フェンアミドンおよびフルオキサストロビンから選択される少なくとも1種の殺真菌剤の使用。

【公表番号】特表2010−526032(P2010−526032A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−503379(P2010−503379)
【出願日】平成20年4月8日(2008.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002758
【国際公開番号】WO2008/128640
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(302063961)バイエル・クロツプサイエンス・アクチエンゲゼルシヤフト (524)
【Fターム(参考)】