説明

魚介類及び藻類の成長を促進するためのケルプ調製物

本発明は固体又は液体ケルプ調製物、特にKelpak(登録商標)(Compo(ドイツ)より入手)の魚介類、特に甲殻類、特にシュリンプ及びプローンの成長を促進するための使用及び魚介類の生息地を固体又は液体ケルプ調製物で処理する工程を含む、魚介類の成長を促進するための方法に関する。さらに、本発明は定量的に及び/又は定性的に藻類の成長を増進するための固体又は液体ケルプ調製物の使用並びに藻類及び/又はその生息地を固体又は液体ケルプ調製物で処理する工程を含む、定量的に及び/又は定性的に藻類の成長を増進する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚介類、特に甲殻類、特にシュリンプ(shrimp)及びプローン(prawn)等のエビの成長を促進するための固体又は液体ケルプ調製物、好ましくは液体ケルプ調製物、特にKelpak(登録商標)(Compo(ドイツ))の使用並びに魚介類の生息地を固体又は液体ケルプ調製物で、好ましくは液体ケルプ調製物で、特にKelpak(登録商標)で処理する工程を含む、魚介類の成長を促進するための方法に関する。さらに、本発明は定量的に及び/又は定性的に藻類の成長を増進するための固体又は液体ケルプ調製物、好ましくは液体ケルプ調製物、特にKelpak(登録商標)の使用並びに藻類及び/又はその生息地を固体又は液体ケルプ調製物、好ましくは液体ケルプ調製物、特にKelpak(登録商標)で処理する工程を含む、定量的に及び/又は定性的に藻類の成長を増進するための方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
世界的に増加している魚介類、特にシュリンプ及びプローンの需要は天然物では満たすことができない。従って、産業規模の養殖が主な魚介類の供給源になって来ている。一般に、集約的に及び半集約的に管理される養殖場は、養殖池(pond)に天然に存在する生物に対する主たる飼料又はサプリメント(supplement)として人工シュリンプ飼料(多くの場合、穀物又はダイズに基づく)を使用している。一般に、人工飼料は、すぐに崩壊する特別に製剤化された顆粒状ペレットの形態で使用される。シュリンプがそれらを摂取する前に腐敗するので、70%までのかかるペレットは無駄になる。しかし、人工飼料ペレットのくず及びシュリンプの排泄物は養殖池の富栄養化をもたらし得、疾病率を増加させ得る。人工飼料が養殖池に天然に存在する生物へのサプリメントとしてのみ使用される場合、植物プランクトンの成長によって養殖池で食物連鎖が確立される。多くの場合、肥料及びミネラル添加物(mineral conditioner)が植物プランクトンの成長を促進してシュリンプの成長を速めるために使用される。しかし、特に、要求に応じて行われない場合、この施肥も養殖池の富栄養化をもたらし得、疾病率を増加させ得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、先行技術の成長を促進する方法の悪影響を回避するか、又は少なくとも減少させる魚介類(特に甲殻類、特にシュリンプ及びプローン)の成長を促進するための方法を提供することであった。さらに、魚介類(特に甲殻類、特にシュリンプ及びプローン)のための食物としての役割を果たす藻類の成長を定量的に及び/又は定性的に増進することにより魚介類の成長を促進するための方法を提供することも本発明の目的であった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記の目的は固体又は液体ケルプ調製物の使用により達成される。
【発明を実施するための形態】
【0005】
第1の態様において、本発明は魚介類、特に甲殻類、特にシュリンプ及びプローンの成長を促進するための固体又は液体ケルプ調製物の使用に関する。さらに、本発明は、魚介類の生息地を固体又は液体ケルプ調製物で処理する工程を含む、魚介類(特に甲殻類、特にシュリンプ及びプローン)の成長を促進するための方法にも関する。
【0006】
前記のように、魚介類は好ましくは甲殻類から、さらに好ましくはシュリンプ及びプローンから選択される。「シュリンプ」は、コエビ(Caridea)亜目に分類され、泳ぐことができる十脚甲殻類であり、淡水及び塩水の両方において世界中で広く見られる。「プローン」は、同様に十脚甲殻類であるが、クルマエビ(Dendrobranchiata)亜目に属する。プローンは外観はシュリンプに似ているが、エラの構造により区別でき、プローンはエラが分岐しているが、シュリンプはエラが層状である。生物学的には、シュリンプ及びプローンは十脚目(Decapoda)の異なる亜目に属するが、それらは外観が非常に似ている。商業的な養殖及び漁業において、シュリンプ及びプローンの語はしばしば同じ意味で使用される。しかし、最近の水産養殖の文献では次第に「プローン」の語をテナガエビ科(palaemonids)の淡水生物のみに、「シュリンプ」の語を海生のクルマエビ科(penaeid)について使用するようになっている。本発明においては、これらの用語を厳格には区別しない。
【0007】
好ましくは、シュリンプ及びプローンは水産養殖に典型的に使用される種から選択される。水産養殖されるシュリンプ/プローンの多くはクルマエビ(Penaeidae)科のものである。例は、Penaeus vannamei(太平洋ホワイトシュリンプ(Pacific white shrimp))、Penaeus monodon(ウシエビ(giant tiger prawn))、P.stylirostris(西洋ブルーシュリンプ(Western blue shrimp))、P.chinensis(中国ホワイトシュリンプ(Chinese white shrimp)、タイショウエビとしても知られる)、P.japonicus(クルマエビ)、P.indicus(インドホワイトシュリンプ(Indian white shrimp・ショウナンエビ)及びP.merguiensis(バナナエビ(Banana shrimp))である。
【0008】
ケルプは褐藻類(ファエオフィセアエ(Phaeophyceae)綱)に属している大型の海藻であり、ラミナリアレス(Laminariales)目に分類される。約300の異なる属がある。数種のケルプは非常に長いことがあり得、ケルプの森(kelp forest)を形成し得る。
【0009】
本発明により使用される好適なケルプ種は、例えば、ネレオキスチス・ルエトケアーナ(Nereocystis luetkeana)、ジャイアントケルプ(Macrocystis pyrifera)、コンブ(Laminaria japonica又はSaccharina japonica)、ラミナリア・ディギタータ(Laminaria digitata)、ラミナリア・ヒペルボレア(Laminaria hyperborea)、ラミナリア・オクロリカ(Laminaria ochroleuca)、ラミナリア・サッカリナ(Laminaria saccharina)、ラミナリア・アガーディ(Laminaria agardhii)、ラミナリア・アングスタータ(Laminaria angustata)、ラミナリア・ボンガルディナ(Laminaria bongardina)、ラミナリア・クネイフォリア(Laminaria cuneifolia)、ラミナリア・デンティゲラ(Laminaria dentigera)、ラミナリア・ディギタータ(Laminaria digitata)、ラミナリア・エフェメラ(Laminaria ephemera)、ラミナリア・ファルロウィ(Laminaria farlowii)、ラミナリア・グロエンランディカ(Laminaria groenlandica)、ラミナリア・ロンギクルリス(Laminaria longicruris)、ラミナリア・ニグリプス(Laminaria nigripes)、ラミナリア・オンテルメディア(Laminaria ontermedia)、ラミナリア・パリダ(Laminaria pallida)、ラミナリア・プラチメリス(Laminaria platymeris)、ラミナリア・セトケリ(Laminaria setchellii)、ラミナリア・シンクライリ(Laminaria sinclairii)、ラミナリア・ソリダングラ(Laminaria solidungula)、ラミナリア・ステノフィラ(Laminaria stenophylla)、アラリア・マルギナータ(Alaria marginata)、コスタリア・コスタータ(Costaria costata)、ダービリア・アンタークティカ(Durvillea antarctica)、ダービリア・ウィラナ(Durvillea willana)、ダービリア・ポタトルヌ(Durvillea potatorum)、エクロニア・ブレビプス(Ecklonia brevipes)、エクロニア・マキシマ(Ecklonia maxima)、エクロニア・ラジアタ(Ecklonia radiata)、アイセニア・アルボレア(Eisena arborea)、エグレギア・メンジージー(Egregia menziesii)、ヘドフィラム・セシル(Hedophyllum sessile)、マクロシスティス・アングスチフォリア(Macrocystis angustifolia)、プレウロフィクス・ガルドネリ(Pleurophycus gardneri)又はプテリゴフォラ・カリフォルニカ(Pterygophora californica)である。これらの中で、エクロニア・マキシマが好ましい。
【0010】
従って、好ましくは、エクロニア・マキシマ(シーバンブー(sea bamboo)とも呼ばれる)の液体又は固体調製物が使用される。
【0011】
本発明に使用するケルプ調製物は好ましくは液体である。さらに好ましくは、本発明に使用されるケルプ調製物はエクロニア・マキシマの液体調製物である。液体調製物は好ましくはケルプ抽出物であり、特にエクロニア・マキシマの抽出物である。
【0012】
本発明により使用されるケルプ調製物は好ましくは植物ホルモン、特に成長促進ホルモンを含む。植物ホルモンは好ましくはオーキシン、サイトカイニン及び/又はジベレリンを含む。さらに好ましくは、植物ホルモンはオーキシン、及び場合によってサイトカイニン及び/又はジベレリンを含む。さらに好ましくは、植物ホルモンはオーキシン、サイトカイニン、及び場合によってジベレリンを含む。好ましくは、オーキシンの含有量はサイトカイニンの含有量よりも多く(重量に基づく)、好ましくは少なくとも2の比(例えば2〜2000の比、好ましくは2〜1000の比、さらに好ましくは2〜500の比)、さらに好ましくは少なくとも10の比(例えば、10〜2000の比、好ましくは10〜1000の比、さらに好ましくは10〜500の比)(すなわち、調製物中のオーキシン対サイトカイニンの重量比は、好ましくは少なくとも2:1、例えば、2:1〜2000:1、好ましくは2:1〜1000:1、さらに好ましくは2:1〜500:1であり、さらに好ましくは少なくとも10:1、例えば、10:1〜2000:1、好ましくは10:1〜1000:1、さらに好ましくは10:1〜500:1である)である。
【0013】
さらに、本発明により使用されるケルプ調製物は、好ましくはアミノ酸、ビタミン及び/又は無機化合物も含有する。アミノ酸は、好ましくはグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、チロシン、リシン、アスパラギン酸及び/又はプロリンを含む。ビタミンは好ましくはビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC及び/又はビタミンEを含む。無機化合物は好ましくは以下の元素:K、N、P、Mg、S、Ca、Fe、Mn、Cu、Zn及び/又はMoを含む。理論に束縛されることなく、前記植物ホルモン、及び場合によってさらに前記アミノ酸、ビタミン及び/又は無機化合物は、本発明による使用及び方法により達成されるプラスの効果(すなわち、魚介類の成長の促進並びに/又は藻類の成長の定量的及び/若しくは定性的増進)に関与すると考えられる。
【0014】
本発明により使用されるケルプ調製物は、水と接触すると、魚介類の成長を促進し、並びに/又は定量的に及び/若しくは定性的に藻類の成長を増進する組成物の成分(例えば、前記植物ホルモン並びにアミノ酸、ビタミン及び無機化合物)を即座に、徐々に又は遅延して放出するような組成物である。
【0015】
ケルプ調製物は活性化合物(例えば、前記植物ホルモン、アミノ酸、ビタミン及び/又は無機化合物)を藻類及び植物から抽出する公知の方法により調製できる。例えば、収穫されたケルプ又はその一部は、通常、塩水及び不純物を除去するための精製工程後に抽出することができる。
【0016】
抽出は好ましくはケルプの細胞が破壊されるような条件下で行う。抽出は圧力をかけることにより又は蒸気抽出、アルコール抽出、浸透、超音波又は他の公知の方法を使用することにより行うことができる。細胞破壊をもたらす圧力法が好ましい。好適な圧力法はミル(例えば、ビーズミル若しくはボールミル)又はホモジナイザー(例えば、ローターステーターホモジナイザー若しくは高圧ホモジナイザー)の使用を含む。好ましくは、抽出は、低温で高圧を利用する方法である「細胞破壊法」(「低温細胞破壊プロセス」とも呼ばれる)を使用することにより行う。
【0017】
得られた抽出物はそのままで使用することができ、又は、例えば、濾過によりさらに精製することもできる。
【0018】
特に、本発明に使用するケルプ調製物はKelpak(登録商標)(Compo(ドイツ)から市販されている海藻抽出物)である。エクロニア・マキシマから調製されるこの藻類抽出物は、特に、オーキシン、サイトカイニン、アミノ酸、ビタミン及び無機化合物を含有する。その組成は下記の通りである:
−窒素:約3.6g/L
−リン:約17g/L
−カリウム:約7.2g/L
−オーキシン:約11mg/L
−サイトカイニン:約0.031mg/L
−アミノ酸:約2.478mg/L
−炭水化物:約16.9g/L
−タンパク質:約3g/L
−ビタミン:約21.7g/L
Kelpak(登録商標)は最初に、収穫したてのケルプ、エクロニア・マキシマから塩水及び不純物を除去した後、その葉状体(frond)及び茎(stipe)に低温で高圧を利用する方法である「細胞破壊法」(「低温細胞破壊プロセス」とも呼ばれる)(D.V.Robertson-Andersson et al.,J.Appl.Phycol.2006,18,315-321;W.A.Stirk et al.,J.Appl.Phycol.2004,16,31-39;W.A.Stirk et al.,J.Appl.Phycol.1996,8,503-508;W.A.Stirk et al.,S.Afr.J.Bot,2004,70,145-151;F.N.Verkleij,Biol.Ag.Hort.1992,8,309-324を参照されたい)を実施することにより製造されると言われている。その後、濾過した純粋な細胞液のみをKelpak(登録商標)に使用する。
【0019】
一般に、魚介類の生息地、例えば、魚介類が成長している又は生きている養殖池を、例えば、ケルプ調製物を養殖池の水に添加することによりケルプ調製物で処理する。調製物はそのままで又は(通常水で)希釈して添加することができ、又は養殖池で成長している魚介類のための補助的な栄養として使用される飼料と混合することができる。
【0020】
ケルプ調製物は、ケルプ調製物によって添加される植物ホルモンの量が好ましくは生息地1ヘクタール当り1mg〜50mg、さらに好ましくは3mg〜20mg、特に3mg〜15mgの範囲であるような量で魚介類の生息地に添加する。Kelpak(登録商標)を使用する場合、Kelpak(登録商標)は1ヘクタール当り、好ましくは100mL〜2L、さらに好ましくは200mL〜1.5L、特に0.5L〜1Lの市販の製剤の量で添加する。
【0021】
添加は、好ましくは、魚介類の生活環の間に、1〜20回、さらに好ましくは3〜15回、特に5〜12回行って、処理される藻類に栄養を与える。
【0022】
魚介類の成長の促進は、ケルプ調製物による養殖池の処理により引き起される、魚介類が生きている養殖池で成長している藻類の成長の増進に部分的に起因し得ると考えられる。従って、本発明は、さらに、定量的に及び/又は定性的に藻類の成長を増進するための固体又は液体ケルプ調製物の使用にも関する。
【0023】
好適な及び好ましいケルプ調製物については前記の記載を参照されたい。
【0024】
「定量的に成長を増進する」とは、ケルプ調製物で処理されていないか、又はケルプ調製物で処理される/処理された生息地で成長していない藻類と比較して、藻類の乾燥バイオマスが増進されることを意味する。バイオマスの増加は数値の増加(すなわち、藻類が成長する/生きている生息地の比体積における藻類の数が増加する)によるか、又は重量の増加(すなわち、単独の生物の乾燥バイオマスが増加する)によるか、又は2つの態様の組み合わせによる。さらに多くの場合、数値の増加による(すなわち、藻類が成長する/生きている生息地の比体積における藻類の数が増加する)バイオマスの増加が優位である。
【0025】
「定性的に成長を増進する」とは、ケルプ調製物で処理されていないか、又はケルプ調製物で処理される/処理された生息地で成長していない藻類と比較して、藻類がその栄養価及び/又はそのビタミン、ミネラル及び/又は他の栄養要因の含有量についてより高い品質を有するので、より健康であり、及び/又は藻類が魚介類のための食物としての役割を果たす際に魚介類についてより栄養価が高いことを意味する。「より健康である」とは、処理された藻類により栄養を与えられる魚介類が疾病レベルの減少及び/又は死亡率の減少を示すことを意味する。それに加えて、或いは、又は、「定性的に成長を増進する」とは、ケルプ調製物で処理された、及び/又はケルプ調製物で処理される/処理された生息地で成長している藻類の寿命が延びることも意味する。
【0026】
藻類は、単純な、典型的には独立栄養(autotrophic)生物の広く、多様な一群であり、単細胞から多細胞生物にわたる。藻類は、水中で植物プランクトン及び底生植物の大部分を形成する。最も大きく、最も複雑な底生海洋生物は海藻と呼ばれる。藻類は植物と同様に光合成をするが、陸上植物を特徴付ける種々の構造、例えば、非維管束植物における葉状の構造(phyllid)及び仮根(rhizoid)又は維管束植物に見られる葉、根及び他の器官を欠いているので「単純」である。従って、藻類は、これまでのところ植物から除外されている。いくつかの群は、光合成及び浸透(osmotrophy)、吸引(myzotrophy)又は摂取(phagotrophy)による有機炭素の摂取の両方からエネルギーを得る混合栄養であるものを含有するが、多くは光独立栄養的である。いくつかの単細胞種は外部エネルギー源に完全に依存し、限られた光合成器官を有するか、又は光合成器官を有さない。現代では「藻類」の語は真核生物に限定されているが、本発明においては、古い教科書では伝統的に「藻類」に含まれていた原核生物のシアノバクテリア(Cyanobacteria)(通常、藍藻と呼ばれる)もこの語の中に含む。
【0027】
本発明によって成長が増進される藻類は水生であり、好ましくは海生であり、魚介類、特に甲殻類、特にシュリンプ及びプローンについての食物源を意味する。好適な藻類の例は、ハプトフィタ(haptophyta)、クリプチスタ(cryptista)、ディノゾア(dinozoa)、クロララクニオフィタ(chlorarachniophyta)、バシラーリオフィタ(bacillariophyta)(珪藻)、フェオフィタ(phaeophyta)(褐藻)、ロドフィタ(rhodophyta)(紅藻)、クロロフィタ(chlorophyta)(緑藻)、ピコビリフィタ(picobiliphyta)及びシアノバクテリア(藍藻)である。好ましくは、本発明によって成長が増進される藻類はバシラーリオフィタ(珪藻)及びシアノバクテリア(藍藻)から選択される。
【0028】
別の態様において、本発明は、藻類及び/又はその生息地を固体又は液体ケルプ調製物で処理する工程を含む、定量的に及び/又は定性的に藻類の成長を増進するための方法に関する。
【0029】
「定量的に及び/又は定性的に藻類の成長を増進する」の語、好適な及び好ましい藻類及びケルプの語については前記の記載を参照されたい。
【0030】
一般に、藻類の生息地(例えば、藻類が成長している又は生きている養殖池)は、例えば、ケルプ調製物を養殖池の水に添加することによりケルプ調製物で処理される。調製物はそのままで又は希釈して(通常水で)添加することができ、又は養殖池で成長している魚介類のための補助的な栄養として使用される飼料と混合することができる。
【0031】
ケルプ調製物は、ケルプ調製物によって添加される植物ホルモンの量が好ましくは生息地1ヘクタール当り1mg〜50mg、さらに好ましくは3mg〜20mg、特に3mg〜15mgの範囲であるような量で藻類の生息地に添加する。Kelpak(登録商標)を使用する場合、Kelpak(登録商標)は1ヘクタール当り、好ましくは100mL〜2L、さらに好ましくは200mL〜1.5L、特に0.5L〜1Lの市販の製剤の量で添加する。
【0032】
添加は、好ましくは、処理される藻類を栄養とする魚介類の生活環の間に、1〜20回、さらに好ましくは3〜15回、特に5〜12回行う。
【0033】
本発明による使用及び方法は、乾燥バイオマスの増進及び/又は藻類のより高い品質(例えば、より高い栄養価及び/又はビタミン、ミネラル及び他の栄養要因のより高い含有量)に示される、定量的な及び/又は定性的な藻類の成長の増進をもたらす。
【0034】
定量的な及び/又は定性的な藻類の成長の増進は、これらの藻類に栄養を与えられる魚介類、特に甲殻類、特にシュリンプ及びプローンの成長の促進をもたらし得る。しかし、藻類の成長の増進は魚介類の成長の促進の唯一の根拠ではないように思われる。
【0035】
魚介類の成長の促進は魚介類の幼生の死亡率の減少、より速い体重増加及び/又はより低い疾病レベルに反映される。より速い体重増加は、同じ又は同等の体重を有する魚介類を得るために必要な補助的な人工飼料がより少ないことを意味する。このことは、魚介類が成長する生息地(例えば、養殖池)の腐敗した無駄な人工飼料による汚染の減少を暗示する。補助的な飼料の量が減少しない場合であっても、魚介類の養殖業者は魚介類をより早く収穫でき、1年当りの魚介類の生活環がより多くなる可能性を有するので、魚介類養殖業者にとってこのことは有利である。
【0036】
本発明を以下の非限定的な実施例によりさらに例示する。
【実施例】
【0037】
1.シュリンプの成長に対するKelpak(登録商標)処理の効果
2008年1月から6月の間、珪藻及び藍藻を含有する海水のシュリンプの養殖池をKelpak(登録商標)、Fitobloom(登録商標)(微細藻類ベースの肥料)及びCal P−24で処理した。
【0038】
各処理は表1にまとめた日付及び量で実施した。
【表1】

【0039】
並行して、珪藻及び藍藻の同等の初期数を含有する同数の養殖池をKelpak(登録商標)は使用せずに同様に処理した。
【0040】
Kelpak(登録商標)で処理した養殖池で成長しているシュリンプは149日(実際には、149日後にシュリンプは平均体重27.3gだった)で成熟期(maturity)(=シュリンプ1匹当り少なくとも25g)に達し、Kelpak(登録商標)で処理していない養殖池で成長しているシュリンプは170日後に成熟期に達した(平均体重25.9g)。生存率はKelpak(登録商標)で処理した養殖池では40%であり、Kelpak(登録商標)で処理していない養殖池では39%であった。Kelpak(登録商標)で処理していない養殖池の22,191ポンドと比較して、Kelpak(登録商標)で処理した養殖池では24,052ポンドのシュリンプが得られた。Kelpak(登録商標)で処理していない養殖池で消費された22,191ポンドの人工飼料と比較して、Kelpak(登録商標)で処理した養殖池のシュリンプは16,700ポンドの人工飼料を消費した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚介類の成長を促進するための固体又は液体ケルプ調製物の使用。
【請求項2】
シュリンプ及びプローンの成長を促進するための請求項1に記載の使用。
【請求項3】
液体ケルプ抽出物が使用される、請求項1又は2に記載の使用。
【請求項4】
ケルプがエクロニア・マキシマである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の使用。
【請求項5】
ケルプ調製物が植物ホルモン、及び場合によってアミノ酸、ビタミン及び/又は無機化合物を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
植物ホルモンがオーキシン、及び場合によってサイトカイニン及び/又はジベレリンを含む、請求項5に記載の使用。
【請求項7】
定量的に及び/又は定性的に藻類の成長を増進するための固体又は液体ケルプ調製物の使用。
【請求項8】
藻類の乾燥バイオマスを増進するための及び/又は藻類の寿命を延ばすための請求項7に記載の使用。
【請求項9】
藻類が珪藻及び藍藻から選択される、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
魚介類の成長を促進するための方法であって、魚介類の生息地を固体又は液体ケルプ調製物で処理することを含む前記方法。
【請求項11】
シュリンプ及びプローンの成長を促進するための請求項10に記載の方法。
【請求項12】
液体ケルプ抽出物が使用される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
ケルプがエクロニア・マキシマである、請求項10〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
ケルプ調製物が植物ホルモン、及び場合によってアミノ酸、ビタミン及び/又は無機化合物を含む、請求項10〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
植物ホルモンがオーキシン、及び場合によってサイトカイニン及び/又はジベレリンを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
定量的に及び/又は定性的に藻類の成長を増進するための方法であって、藻類及び/又はその生息地を固体又は液体ケルプ調製物で処理することを含む前記方法。
【請求項17】
藻類の乾燥バイオマスを増進するための及び/又は藻類の寿命を延ばすための請求項16に記載の方法。
【請求項18】
藻類が珪藻及び藍藻から選択される、請求項16又は17に記載の方法。

【公表番号】特表2013−519387(P2013−519387A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553329(P2012−553329)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052412
【国際公開番号】WO2011/101434
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】