説明

魚抽出物、肌荒れ改善剤、セラミド産生促進剤、及びこれらを含有する皮膚外用剤、化粧料

【課題】天然資源の有効活用としての皮膚に適用するための新規な魚抽出物、並びにそれを利用した肌荒れ改善剤、セラミド産生促進剤、皮膚外用剤及び化粧料の提供。
【解決手段】乾燥した魚、中でもスズキ目サバ科の水性溶媒抽出物。乾燥した魚は、水分量が45質量%以下であること、干物類、ふし類、かれぶし類、煮干類、圧搾煮干類から選ばれる一種又は二種以上であることが好ましい。これらを皮膚に適用すると、高いセラミド産生促進作用や、肌荒れを改善する作用があり、化粧料や皮膚外用剤に応用することで潤いやつやのある健康で美しい皮膚を作ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は皮膚に適用するための新規な魚抽出物、並びにそれを利用した肌荒れ改善剤、セラミド産生促進剤、皮膚外用剤及び化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
魚は日本における重要な食料資源としてさまざまに活用され、例えばカツオブシや煮干を水で抽出した抽出液がだし汁として日本料理に広く用いられている。近年では、かつおだしを経口摂取すると、疲労回復や、乾燥肌、荒れ肌が改善される可能性が示されるなど、食品として摂取した場合の機能性が示されている(非特許文献1)。また、カタクチイワシ干し等を乾燥後、粉末化して得られる素材を含有することを特徴とする滋養強壮食品、養毛育毛食品も知られている(特許文献1)。
【0003】
一方、魚は古くより鱗を光輝性粉体として用いる、油を化粧料に配合することなどが知られている。しかし、これらは魚特有の臭いがあり、除去する技術が開発されているものの(特許文献2)、未だ完全には解決されていない上、有機溶媒で抽出すると水溶性の保湿成分を含有させることはできないという問題があった。最近では魚皮や軟骨などからコラーゲン・プロテオグリカンを抽出することが可能となっているが(特許文献3、4)魚を乾燥後、水性溶媒で抽出した抽出物を皮膚に適用すること、さらにはこの抽出物が肌に及ぼす効果については未だ全く知られていない。
【0004】
セラミドは、角層の細胞間に存在するスフィンゴ脂質であり、角質細胞間でセラミドの分子がラメラ構造を形成することで、角層が保湿機能及びバリア機能を発揮できることが知られている。セラミドの産生量の減少は、皮膚の乾燥を招き、美容上のみならず、皮膚の健康を害することになる。減少したセラミドを外部から補給する方法も試みられているが、長期的な効果が認められない、安定性が低い等の問題がある。従来より、セラミド産生促進剤が種々検討され、皮膚外用剤への配合が提案されている。(特許文献5、6)しかし、その効果は満足いくものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−100977号公報
【特許文献2】特開2009−91316号公報
【特許文献3】特開2006−152108号公報
【特許文献4】特開2003−299497号公報
【特許文献5】特開2002−370998号公報
【特許文献6】特開2000−169359号公報
【0006】
【非特許文献1】健康・栄養食品研究(VOL.9 NO.1 2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は天然資源の有効活用としての皮膚に適用するための新規な魚抽出物、並びにそれを利用した肌荒れ改善剤、セラミド産生促進剤、皮膚外用剤及び化粧料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明者が鋭意検討した結果、乾燥した魚の水性溶媒抽出物に、高いセラミド産生促進作用や、皮膚に潤いやつやを与え、肌荒れを改善する作用があることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、前記課題を解決するため、皮膚に適用するための抽出物であって、乾燥した魚を水性溶媒で抽出したことを特徴とする魚抽出物を提供するものである。
また、本発明は、前記抽出物を有効成分とするセラミド産生促進剤や肌荒れ改善剤を提供するものであり、当該抽出物を含有する皮膚外用剤及び化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、皮膚に適用するとことにより、高いセラミド産生促進作用や、皮膚に潤いやつやを与え、肌荒れを改善することが可能となり、これらを配合した皮膚外用剤や化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
本発明は、乾燥した魚を水性溶媒で抽出して得られる抽出物に関するものである。乾燥は魚の水分を除去することが目的であり、方法は特に限定されない。例えば天日にさらしたり、天然又は人工的な冷風・温風を用いて乾燥することが可能である。魚を乾燥させる前に圧搾・煮熟・蒸煮などを行っても良く、木材などを熱したときに出る煙を用いて乾燥しても良い。また、魚を減圧下に置くことで水分を除去する、いわゆるフリーズドライ製法を用いたり、水分のみを除去する特定の穴径を持つ樹脂膜等に包んで水分を除去しても良い。抽出する際に用いる部位は特に限定されないが、魚胴部の魚肉部分が好ましい。魚は効率よく乾燥するために適切な大きさに切断しても良く、その際、魚肉部分以外の頭、内臓、皮、骨などを除去しても良い。乾燥後の水分量は魚の種類によって異なるが45質量%以下が好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。(以下単に「%」で示す)
【0012】
魚は一般的な魚類であれば、何れの魚でも用いることができるが、スズキ目Perciformesが好ましく、スズキ亜目又はサバ亜目より選ばれることがより好ましい。中でもサバ亜目サバ科の魚を用いることが最も好ましい。サバ科Scombridaeには、サワラ属Scomberomorus、サバ属Scomber、ソウダガツオ属Auxis、スマ属Euthynnus、カツオ属Katsuwonus、マグロ属Thunnusなどが属し、これらの1種又は2種以上の魚を自由に組み合わせて使用することが可能である。
【0013】
魚は安全性や入手の容易さ等の観点から乾燥状態で市販されているものを用いても良い。市販品の例としては、各種の干物類、ふし類、かれぶし類、煮干類、圧搾煮干類などを意味する。中でもふし類及び煮干類については日本農林規格に適合した製品を用いることで安定した品質を得ることができる。日本農林規格削りぶし類の規定によれば、ふしとはかつお、さば、まぐろ等の魚類について、その頭、内臓等を除去し、煮熟によってたん白質を凝固させた後冷却し、水分が26%以下になるようにくん乾したものをいう。かれぶしとは、ふし(かつおにあっては、表面を削ったもの)に2番かび以上のかび付けをしたものをいう。日本農林規格煮干魚類の規定によれば煮干とは、いわし、あじ等の魚類を煮熟によってたん白質を凝固させた後、乾燥したものをいう。圧搾煮干とは、これらの魚類を煮熟によってたん白質を凝固させた後圧搾して魚油を除去し乾燥したものをいう。
【0014】
本発明の抽出に用いる水性溶媒としては、水又は水と水溶性有機溶媒との混合物が用いられる。水溶性有機溶媒としては通常抽出に用いることができる溶媒を1種又は2種以上自由に選択して用いることができる。例えば、アルコール類、グリコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭素類などを挙げることができる。アルコール類としては、エタノール、メタノール及びプロパノールなどが挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、ギ酸エチルなどが挙げられる。水と水溶性有機溶媒との混合物における、水の含有量は、10%以上、好ましくは50〜90%である。また水性溶媒のpHは1〜12、好ましくは4〜10の範囲に規定するのが好ましく、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸及びその塩、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、コハク酸等の有機酸及びその塩や、アルカリ金属あるいはアルカリ土類金属などの水酸化物あるいはアンモニア、アミンなどの塩基性物質でpHを調整することができる。また、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム等の塩類、砂糖、ブドウ糖等の糖類を含有してもよい。
【0015】
抽出方法も特に限定されず、通常、だし汁を抽出するのに用いる抽出方法や、植物抽出液を抽出するのに用いる抽出方法を自由に選択して用いることができる。例えば、前記水性溶媒に乾燥した魚を浸漬後、抽出ろ過する方法や、乾燥した魚を粉砕し、溶媒とともに高温高圧状態にしながら抽出する方法等が挙げられる。
【0016】
本発明の抽出物は、皮膚外用剤及び化粧料の成分として利用することができる。本発明に係る乾燥した魚抽出物の乾燥固形分濃度は、本発明の効果を損なわなければ、用いる抽出溶媒の種類、抽出方法などに応じて自由に設定することが可能であるが、本発明においては特に、0.0001〜5%が好ましく、0.001〜3%がより好ましい。0.0001%未満であると、セラミド産生促進効果や、皮膚に潤いを与える効果が弱い場合があり、逆に5%を超えると、好ましくない色や匂いがでたり、沈殿を生じる場合があるからである。
【0017】
本発明の抽出物を含有する皮膚外用剤及び化粧料は、乾燥した魚からの抽出物によるセラミド産生作用と潤いを与える効果によって、セラミドの産生量が正常な量に維持され、高い保湿効果及びバリア効果を奏する。皮膚外用剤中の前記抽出物の含有量は、固形分として、好ましくは、0.00001〜0.1%であり、より好ましくは0.0001〜0.001%である。この範囲内であれば、安定に配合することができ、且つ高い肌あれ防止効果や皮膚を滑らかにする効果を発揮することができる。
【0018】
以上説明した本発明に係る抽出物を用いた化粧料及び皮膚外用剤は、その有効成分が天然由来成分であるため、種々の疾患を罹患した患者に対しても安心して投与できる可能性も高い。また、長期間、連続的に投与しても副作用を心配する必要性も少ない。
【0019】
なお、セラミドは、スフィンゴシン又はその類似塩基のN−アシル誘導体であり、アシル基の鎖長(人体内に存在するセラミドでは、アシル鎖長の分布はC16〜C24程度といわれている)が異なる複数種が存在する。本発明のセラミド産生促進剤は、アシル鎖長によらず、いずれに対しても効果を奏し、C16〜C24の鎖長のN−アシル基を有するセラミドに対して高い促進効果があり、特にC22〜C24の鎖長のN−アシル基を有するセラミドに対しては、低濃度でも高い促進効果を奏する。
【0020】
前記乾燥した魚の抽出物は、他の薬効剤の一種又は二種以上と組み合わせて配合することによって、セラミド産生促進効果をより高めた、もしくはセラミド産生促進効果とともに他の薬効も奏する皮膚外用剤及び化粧料を調製することができる。他の薬効剤の例には、ビタミン類、抗菌剤、抗炎症剤、抗アクネ剤、美白剤、紫外線防御剤、育毛剤、細胞賦活剤、活性酸素除去剤、及び保湿剤などが含まれるが、これらに限定されることはない。
【0021】
ビタミン類としては例えばビタミンB(チアミン)、ビタミンB(リボフラビン)、ビタミンB(ナイアシン)、ビタミンB(パントテン酸)、ビタミンB(ピリドキサール、ピキドキサミン、ピリドキシン)、ビタミンB(ビオチン)、ビタミンB(葉酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン)などのビタミンB群及びその誘導体、ビタミンC(アスコルビン酸)及びその誘導体、ビタミンA(レチノール、レチナール、レチノイン酸、βカロチンなどのカロチノイドの一部)及びその誘導体、ビタミンD(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール)及びその誘導体、ビタミンE(トコフェロール、トコトリエノール)及びその誘導体、ビタミンK(フィロキノン、メナキノン)及びその誘導体、さらにエルガデニル酸(アデニル酸)、オロト酸、リポ酸、リノール酸、イノシトール、コリン、カルニチン、アデニルチオメチルペントース、カルニチン、クエルセチン、ヘスペリジン、ルチン、ユビキノン、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド、塩化メチルメチオニンスルホニウム等のビタミン様物質があげられる。
【0022】
抗菌剤としては、殺菌剤、抗真菌剤、抗ウィルス剤などであり各種の抗生物質や安息香酸及びその塩、グルコン酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール等が挙げられる。
【0023】
抗炎症剤は、日焼け後の皮膚のほてりや紅斑等の炎症を抑制する目的や、皮膚炎の治療のために用いられ、ステロイドホルモン及びその誘導体、インドメタシン及びその誘導体、アズレン及びその誘導体、イオウ及びその誘導体、グリチルリチン酸及びその誘導体、グリチルレチン酸及びその誘導体、アロエ抽出物、アルテア抽出物、アシタバ抽出物、アルニカ抽出物、インチンコウ抽出物、イラクサ抽出物、オウバク抽出物、オトギリソウ抽出物、カミツレ抽出物、キンギンカ抽出物、クレソン抽出物、コンフリー抽出物、サルビア抽出物、シコン抽出物、シソ抽出物、シラカバ抽出物、ゲンチアナ抽出物等が挙げられる
【0024】
抗アクネ剤としては、各種抗生物質や、イオウ、サリチル酸、レゾルシン、ビタミンA及びその誘導体、ベンゾイルペルオキシドなどがあげられる。
【0025】
美白剤は日焼け等により生じる皮膚の黒化、色素沈着により生ずるシミ、ソバカス等の現象を防止する目的で用いられ、コウジ酸、アルブチン、ハイドロキノン、エラグ酸、リノール酸、ビタミンC及びその誘導体、AMP、ビタミンE及びその誘導体、4−メトキシサリチル酸カリウム塩、グリチルリチン酸及びその誘導体、トラネキサム酸、4−n−ブチルレゾルシノール、5,5’−ジオールジプロピル−ビフェニル−2,2’−ジオールなどのビフェニル誘導体、胎盤抽出物、カミツレ抽出物、カンゾウ抽出物、エイジツ抽出物、オウゴン抽出物、海藻抽出物、クジン抽出物、ケイケットウ抽出物、ゴカヒ抽出物、コメヌカ抽出物、小麦胚芽抽出物、サイシン抽出物、サンザシ抽出物、サンペンズ抽出物、シラユリ抽出物、シャクヤク抽出物、センプクカ抽出物、大豆抽出物、茶抽出物、糖蜜抽出物、ビャクレン抽出物、ブドウ抽出物、ホップ抽出物、マイカイカ抽出物、モッカ抽出物、ユキノシタ抽出物、ヨクイニン抽出物等が挙げられる。
【0026】
紫外線防御剤としては、パラメトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−硫酸ナトリウム、4−ブチル−4‘−メトキシジベンゾイルメタン、2−フェニル−ベンズイミダゾール−5−硫酸、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
【0027】
育毛剤としては、ウイチョウエキス、スエルチアニン、ミノキシジル、T-フラバノン、6−ベンジルアミノプリン、ペンタデカン酸グリセリド、ショウキョウチンキ、センブリ抽出液、ニンジン抽出液、塩化カルプロニウム、アデノシン、フィナステリド等があげられる。
【0028】
細胞賦活剤は、肌荒れの改善等の目的で用いられ、カフェイン、鶏冠抽出物、貝殻抽出物、貝肉抽出物、ローヤルゼリー、シルクプロテイン及びその分解物又はそれらの誘導体、ラクトフェリン又はその分解物、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸等のムコ多糖類又はそれらの塩、コラーゲン、酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物、醗酵代謝抽出物、イチョウ抽出物、オオムギ抽出物、センブリ抽出物、タイソウ抽出物、ニンジン抽出物、ローズマリー抽出物、カルニチン、塩化レボカルニチンなどのカルニチン誘導体、グリコール酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、コハク酸等の有機酸及びそれらの誘導体等が挙げられる。
【0029】
活性酸素除去剤は、過酸化脂質生成抑制等の酸化障害抑制の目的で用いられ、スーパーオキサイドディスムターゼ、マンニトール、クエルセチン、カテキン及びその誘導体、ルチン及びその誘導体、ボタンピ抽出物、ヤシャジツ抽出物、メリッサ抽出物、羅漢果抽出物、レチノール及びその誘導体、カロチノイド等のビタミンA類、チアミン及びその誘導体、リボフラビン及びその誘導体、ピリドキシン及びその誘導体、ニコチン酸及びその誘導体等のビタミンB類、トコフェロール及びその誘導体等のビタミンE類、ジブチルヒドロキシトルエン及びブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。
【0030】
保湿剤としては、エラスチン、ケラチン等のタンパク質又はそれらの誘導体、加水分解物並びにそれらの塩、グリシン、セリン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、テアニン等のアミノ酸及びそれらの誘導体、ソルビトール、エリスリトール、トレハロース、イノシトール、グルコース、蔗糖及びその誘導体、デキストリン及びその誘導体、ハチミツ等の糖類、D−パンテノール及びその誘導体、尿素、リン脂質、セラミド、オウレン抽出物、ショウブ抽出物、ジオウ抽出物、センキュウ抽出物、ゼニアオイ抽出物、タチジャコウソウ抽出物、ドクダミ抽出物、ハマメリス抽出物、ボダイジュ抽出物、マロニエ抽出物、マルメロ抽出物等が挙げられる。
【0031】
本発明の皮膚外用剤及び化粧料への配合形態は特に限定されることはなく、例えば乳液、クリーム、化粧水、美容液、パック、洗浄料、メーキャップ化粧料、ローション剤、軟膏、懸濁剤、乳剤、エアゾール、貼付剤等のいずれの形態の化粧料であっても外用医薬品等であってもよい。
【0032】
本発明の皮膚外用剤には、必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で、通常、化粧料や医薬部外品、外用医薬品等の製剤に使用される成分、すなわち、水、高級アルコール類、低級アルコール類、多価アルコール類、ワックス類、脂肪酸類、油剤、界面活性剤、金属セッケン、ゲル化剤、粉体、水溶性高分子、皮膜形成剤、樹脂、包接化合物、防腐剤、香料、消臭剤、塩類、pH調整剤、清涼剤、動物・微生物由来抽出物、植物抽出物、血行促進剤、収斂剤、キレート剤、角質溶解剤、酵素、ホルモン類等を加えることができる。
【0033】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は下記の実施例に限定されることはない。
[抽出例1:カツオブシ抽出液の製造]
カツオブシ削りぶし(日本農林規格適合品)を使用した。カツオブシ削りぶし40gを水400mLに混合し、95℃で1時間加熱した。その後、サランろ過布(旭化成社製)にて粗ろ過し、遠心エバポレーターで濃縮した。エタノールの最終濃度が30%になるようにエタノールと水を添加して24mLのカツオブシ抽出液を得た。このカツオブシ抽出液を原液として、30%エタノールで1/3、1/10希釈系列を作成した。
【0034】
[抽出例2:カタクチイワシ抽出液の製造]
カタクチイワシを原材料とする煮干(日本農林規格適合品)を使用した。煮干20gを粉砕後、水200mLを加えて室温にて一晩浸漬した。さらにエタノール200mlを添加して室温で1時間抽出し、サランろ過布(旭化成社製)にて粗ろ過して、カタクチイワシ抽出液を得た。
【0035】
[抽出例3:アジ抽出液の製造]
真あじ開き干し84.9gを使用した。はさみで細かく切った後に、水200mLとエタノール200mLを加え、室温で1時間抽出した。サランろ過布(旭化成社製)にて粗ろ過したろ液を静置し、浮かんだ油状の不溶物を除去してアジ抽出液を得た。
【0036】
[実験例1:カツオブシ抽出液のセラミド産生促進試験]
クラボウ製の培地(HuMedia−KG2 Ca 0.03mM)を入れた10cmのシャーレに、正常ヒト表皮角化細胞を播種し、5日間培養後に抽出例1の希釈系列を23μL/mL mediumで添加した。更に3日間培養した後に、再びカツオブシ抽出液を23μL/mL mediumで添加しオーバーコンフルエント状態になるまで4日間培養した。培養後、PBSで2回洗浄し、スクレーパーを用いて細胞を回収した。
回収した細胞を溶解バッファー(20mM HEPES pH7.4,10μg/ml protease inhibitor,1mM dithiothreitol,1mM EDTA,1mM sodium orthovanadate,15mM sodium fluoride,and0.5mM 4−deoxypyridoxine)に溶解し、C17−S1Pを内部標準として加えてBligh&Dyer法で脂質を抽出した。脂質を0.1%のTFAを含む20%アセトニトリルに溶解し、LC−MS/MSでセラミドをアシル鎖長ごとに定量した。以下の表に、結果を示す。なお、下記表中のセラミド産生促進率は、セラミドIIの産生量を基に下記式により算出された値である。

セラミド産生促進率(%)=(カツオブシ抽出液添加時のセラミド量)/(30%エタノール添加時のセラミド量)×100
【0037】
【表1】

上記表に示す結果から、カツオブシ抽出液は、高いセラミド産生促進作用を示すことが理解できる。
【0038】
[実験例2:皮膚外用剤の肌荒れ改善試験]
表2に示す組成の皮膚外用剤を調製し使用テストを行なった。単回及び連続使用での肌荒れ改善効果について評価した結果を併せて表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
(製造方法)
A.成分(1)〜(5)を混合溶解する。
B.成分(6)〜(11)を混合溶解する。
C.AとBを混合して均一にし、皮膚外用剤を得た。
【0041】
(単回使用での肌荒れ改善効果の評価方法)
30代の女性専門パネル10名に使用してもらい各評価項目について5段階評価した結果を平均し、評価基準に基づいて評価した。
〔評価項目〕
直後のしっとり感
後肌のなめらかさ
しっとり感の持続
〔5段階評価〕
とても良い 5点
やや良い 4点
良い 3点
普通 2点
悪い 1点
[評価基準]
◎: 4.0点以上
○: 2.5点以上4.0点未満
△: 1.5点以上3.0点未満
× 1.5点未満
【0042】

(連続使用での肌荒れ改善効果の評価方法)
冬期間、20〜60代の乾燥肌に悩む男女70名を各サンプル10名になるよう無作為に割付け、朝晩1日2回使用で連続2週間使用してもらい各評価項目について5段階評価した結果を平均し、評価基準に基づいて評価した。
〔評価項目〕
乾燥感
キメのみだれ
ざらつき
〔5段階評価〕
明らかに改善 3点
やや改善 2点
わずかに改善 1点
変化なし 0点
悪化 −1点
[評価基準]
◎: 2.5点以上
○: 1点以上2.5点未満
△: 0点以上1点未満
×: 0点未満
【0043】
表2に示すように、実施例1〜6はしっとり感、しっとり感の持続に優れ、肌荒れの改善効果を有するものであった。それに対し、比較例は実施例に劣る結果となった。
【0044】
[実施例7:化粧水]
以下の製法によって、以下の組成の化粧水を調製した。
(組成) (%)
(1)パルミチン酸レチノール 0.005
(2)ポリオキシエチレン(60E.O.)硬化ヒマシ油 1.0
(3)エチルアルコール 15.0
(4)防腐剤 0.1
(5)香料 適量
(6)カツオブシ抽出液 *1 2.0
(7)D−パンテノール 0.1
(8)1,3−ブチレングリコール 4.0
(9)クエン酸 0.1
(10)クエン酸ナトリウム 0.25
(11)精製水 残量
*1 抽出例1で製造したもの
(製造方法)
A.成分(1)〜(6)を混合溶解する。
B.成分(7)〜(11)を混合溶解する。
C.AとBを混合して均一にし、化粧水を得た。
【0045】
[実施例8:美容液]
以下の製法によって、以下の組成の美容液を調製した。
(組成) (%)
(1)ポリオキシエチレン(20E.O.)ソルビタン 1.2
モノラウリン酸エステル
(2)エチルアルコール 7.0
(3)アジ抽出液 *2 0.5
(4)ヨクイニン抽出物 0.2
(5)アスコルビン酸グルコシド*3 0.2
(6)グリセリン 5.0
(7)1,3−ブチレングリコール 7.5
(8)防腐剤 0.1
(9)アルギン酸ナトリウム 1.0
(10)香料 適量
(11)精製水 残量
*2 抽出例3で製造したもの
*3 林原生物化学研究所社製
(製造方法)
A.成分(1)〜(4)を混合溶解する。
B.成分(5)〜(11)を混合溶解する。
C.AとBを混合して均一にし、美容液を得た。
【0046】
[実施例9:乳液]
以下の製法により、以下の組成の乳液を調製した。
(組成) (%)
(1)ポリオキシエチレン(10E.O.)ソルビタン 1.0
モノステアレート
(2)ポリオキシエチレン(60E.O.)ソルビット 0.5
テトラオレエート
(3)グリセリルモノステアレート 1.0
(4)ステアリン酸 0.5
(5)ベヘニルアルコール 0.5
(6)スクワラン 8.0
(7)アスタキサンチン*4 0.01
(8)ビタミンEリノレート 0.05
(9)カルボキシビニルポリマー 0.1
(10)水酸化ナトリウム 0.05
(11)エチルアルコール 5.0
(12)カツオブシ抽出液*1 0.00035
(13)防腐剤 0.1
(14)香料 適量
(15)精製水 残量
*4 シグマ社製
(製造方法)
A.成分(1)〜(8)及び(13)を加熱混合し、70℃に保つ。
B.成分(9)〜(12)及び(15)を加熱混合し、70℃に保つ。
C.BにAを加えて混合し、均一に乳化する。
D.Cを冷却後(14)を加え、均一に混合して乳液を得た。
【0047】
[実施例10:クリーム]
以下の製法により、以下の組成のクリームを調製した。
(組成) (%)
(1)ポリオキシエチレン(40E.O.)モノステアレート 2.0
(2)グリセリンモノステアレート(自己乳化型) 5.0
(3)ステアリン酸 5.0
(4)ベヘニルアルコール 0.5
(5)スクワラン 15.0
(6)イソオクタン酸セチル 5.0
(7)酢酸トコフェロール 1.5
(8)カタクチイワシ抽出液*5 0.0003
(9)グリチルレチン酸ステアリル 0.2
(10)1,3−ブチレングリコール 5.0
(11)ワセリン 3.5
(12)香料 適量
(13)防腐剤 0.1
(14)精製水 残量
*5 抽出例2で製造したもの
(製造方法)
A.成分(1)〜(7)及び(9)、(11)、(13)を70℃にて加熱溶解する。
B.成分(8)、(10)、(14)を70℃に加熱する。
C.AをBに加え、冷却する。
D.Cに成分(12)を加え、クリームを得た。
【0048】
[実施例11:日焼け止め]
以下の製法によって、以下の組成の日焼け止めを調製した。
(組成) (%)
(1)ポリオキシエチレン(10E.O.)ソルビタン 1.0
モノステアレート
(2)ポリオキシエチレン(60E.O.)ソルビット 0.5
テトラオレエート
(3)グリセリルモノステアレート 1.0
(4)ステアリン酸 0.5
(5)ベヘニルアルコール 0.5
(6)スクワラン 3.0
(7)4−メトキシケイ皮酸−2−エチルヘキシル 5.0
(8)4−t−ブチル−4’−メトキシ−ジベンゾイルメタン 7.5
(9)アジ抽出液*2 0.0003
(10)グリチルリチン酸ジカリウム 0.1
(11)L−アスコルビン酸リン酸マグネシウム 2.0
(12)カルボキシビニルポリマー 0.1
(13)水酸化ナトリウム 0.05
(14)エチルアルコール 5.0
(15)防腐剤 0.1
(16)香料 適量
(17)精製水 残量
(製造方法)
A.成分(1)〜(8)及び(15)を加熱混合し、70℃に保つ。
B.成分(9)〜(14)及び(17)を加熱混合し、70℃に保つ。
C.BにAを加えて混合し、均一に乳化する。
D.Cを冷却後(16)を加え、均一に混合して日焼け止めを得た。
【0049】
[実施例12:パック]
以下の製法により、以下の組成のパックを調製した。
(組成) (%)
(1)ポリビニルアルコール 20.0
(2)エチルアルコール 20.0
(3)グリセリン 5.0
(4)カオリン 6.0
(5)カツオブシ抽出液*1 0.05
(6)塩酸ピリドキシン 0.05
(7)シソ抽出物 1.0
(8)防腐剤 0.2
(9)香料 0.1
(10)精製水 残量
(製造方法)
A.成分(1)、(3)、及び(10)を混合し、70℃に加熱し、撹拌する。
B.成分(2)、(4)、(5)及び(8)を混合する。
C.上記Bを先のAに加え、混合した後、冷却して(6)、(7)及び(9)を均一に分散してパックを得た。
【0050】
[実施例13:リキッドファンデーション]
以下の製法により、以下の組成のリキッドファンデーションを調製した。
(組成) (%)
(1)ラノリン 7.0
(2)流動パラフィン 5.0
(3)ステアリン酸 2.0
(4)セタノール 1.0
(5)グリセリン 5.0
(6)トリエタノールアミン 1.0
(7)カルボキシメチルセルロース 0.7
(8)精製水 残量
(9)マイカ 15.0
(10)タルク 6.0
(11)酸化チタン 3.0
(12)着色顔料 6.0
(13)カタクチイワシ抽出液*5 0.0003
(14)ユキノシタ抽出物 0.05
(15)香料 適量
(製法)
A.成分(1)〜(5)を混合し、加熱して70℃に保つ。
B.Aに成分(9)〜(12)を加え、均一に混合する。
C.成分(6)〜(8)を均一に溶解し、70℃に保つ。
D.BにCを添加して、均一に乳化する。
E.Dを冷却後、成分(13)〜(15)を添加してリキッドファンデーションを得た。
【0051】
これらはいずれも皮膚に適用することにより、セラミドの産生量が正常な量に維持され、高い保湿効果及びバリア効果を有する美しい肌にするものであった。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、新規な肌荒れ改善効果及びセラミド産生促進効果を持ち、安全性、安定性が良好な、皮膚外用剤及び化粧料提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に適用するための抽出物であって、乾燥した魚を水性溶媒で抽出したことを特徴とする魚抽出物。
【請求項2】
乾燥した魚の水分量が45質量%以下であることを特徴とする請求項1記載の魚抽出物。
【請求項3】
魚がスズキ目サバ科であることを特徴とする請求項1又は2記載の魚抽出物。
【請求項4】
乾燥した魚が、干物類、ふし類、かれぶし類、煮干類、圧搾煮干類から選ばれる一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1〜3の何れかの項記載の魚抽出物。
【請求項5】
請求項1〜4記載の何れかの項記載の魚抽出物を有効成分とすることを特徴とする肌荒れ改善剤。
【請求項6】
請求項1〜4記載の何れかの項記載の魚抽出物を有効成分とするセラミド産生促進剤。
【請求項7】
請求項1〜4記載の何れかの項記載の魚抽出物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項8】
請求項1〜4記載の何れかの項記載の魚抽出物を含有することを特徴とする化粧料。
【請求項9】
請求項5又6記載の剤を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項10】
請求項5又6記載の剤を含有することを特徴とする化粧料。

【公開番号】特開2011−121935(P2011−121935A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221760(P2010−221760)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000145862)株式会社コーセー (734)
【Fターム(参考)】