説明

魚礁用ブロック及び人工魚礁

【課題】稚魚や幼魚を中心とする魚類が生息するのに好適な穴や隙間から魚体の大きな魚類が生息するのに適した空間を有する人工魚礁を簡単に形成することができる構造とした魚礁用ブロック及び人工魚礁を提供する。
【解決手段】適宜な長さを有する棒状体として形成され、横にする状態で順に上方向に積み重ねて立方体の人工魚礁を形成する魚礁用ブロックであって、上底11と下底12が平行な概略台形断面を有してなる構造とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚礁用ブロック及び人工魚礁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、魚介類の生息・繁殖に適するように、湖や河川、海等の中(以下、これらを総称して「海中」という)の環境を改善する試みが各地で行われており、その一つとして魚介類の生息場となる人工魚礁を海底に沈設している(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1で知られる従来の人工魚礁は、正方形、長方形または円形等の断面を有したコンクリート材料で形成された棒状部材を、井桁状の中空立方体に組み上げて、その四隅を固定してなる構造を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−142603号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1記載の発明は、正方形、長方形または円形等の断面を有したコンクリート材料で形成された棒状部材を、井桁状の中空立方体に組み上げ、その四隅を固定してなる構造にしているが、魚介類が生息するのに好適な穴や隙間、特に稚魚や幼魚を中心とする魚類の大きさに合った空間が少ないという問題点があった。
【0006】
そこで、稚魚や幼魚を中心とする魚類が生息するのに好適な穴や隙間から魚体の大きな魚類が生息するのに適した空間を有する人工魚礁を簡単に形成することができる構造とした魚礁用ブロック及び人工魚礁を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、適宜な長さを有する棒状体として形成され、横にする状態で順に上方向に積み重ねて立方体の人工魚礁を形成する魚礁用ブロックにおいて、上底と下底が平行な概略台形断面を有してなる魚礁用ブロックを提供する。
【0008】
この構成によれば、台形断面を有しているので、魚礁用ブロックを横方向に並べて設置しても、隣同士の側面間には隙間が形成される。したがって、その側面同士の隙間は、小魚や稚魚が大形魚から逃げて隠れる絶好の生息場所となり、他の立方体空間は魚体の大きな魚類等の生息場所となるように、微小な小魚や稚魚から大形魚までの、多様な魚体に対応することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、上記積み重ねの際、互いに重なり合う位置に固定用取付孔を設けてなる魚礁用ブロックを提供する。
【0010】
この構成によれば、複数の魚礁用ブロックを積み重ねた後、固定部材を各固定用取付孔共通に挿入させて固定すると、各魚礁用ブロック間を一つに簡単に固定することができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の構成において、生物誘引物質を混練してなる多孔質のコンクリート材料で形成してなる魚礁用ブロックを提供する。
【0012】
この構成によれば、内部の生物誘引物質が表面から徐々ににじみ出て、長期間に亘って魚介類の蝟集・育成効果及び藻の付着・育成効果を維持できる。また、多孔質のコンクリート材料により形成されているので水と接触している表面積が多く確保され、さらにコンクリートブロックの内部に水が染み込みやすく、この染み込んだ水を通して内部の生物誘引物質が表面から徐々ににじみ出ることになるので、コンクリート全体から水中ににじみ出る生物誘引物質の量を多くすることができる。
【0013】
請求項4記載の発明は、上底と下底が平行な概略台形断面を有する棒状ブロックを、横にする状態で順に上方向に積み重ねて立方体に形成してなる人工魚礁を提供する。
【0014】
この構成によれば、棒状ブロックが台形断面を有しているので、該魚礁用ブロックを横方向に並べて設置しても、隣同士の側面間には隙間が形成される。したがって、その側面同士の隙間は、小魚や稚魚が大形魚から逃げて隠れる絶好の生息場所となり、他の立方体空間は魚体の大きな魚類等の生息場所となる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の構成において、上記台形の上底と下底を順に当接させ、かつ井桁状または格子状に積み重ねてなる人工魚礁を提供する。
【0016】
この構成によれば、台形の上底と下底を順に当接させて積み重ねることにより、この積み重ねられた上底と下底との間に隙間が形成され、その隙間を通して立方体空間の内側と外側との流通が図れる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項4記載の構成において、上記台形の上底と下底を交互に当接させて順に積み重ねるようにして、横方向に配列してなる人工魚礁を提供する。
【0018】
この構成によれば、台形の上底と下底を交互に当接させて順に積み重ねるようにして、横方向に配列することにより、横方向における棒状ブロック間に概略三角形断面の空間が形成され、その空間を魚介類の蝟集・育成場所として使用できる。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項4記載の構成において、上記台形の上底同士と下底同士を交互に当接させて順に積み重ねるようにして、横方向に配列してなる人工魚礁を提供する。
【0020】
この構成によれば、台形の上底同士と下底同士を交互に当接させて順に積み重ねるようにして、横方向に配列することにより、横方向における棒状ブロック間に概略菱形断面の空間が形成され、その空間を魚介類の蝟集・育成場所として使用できる。
【0021】
請求項8記載の発明は、請求項4,5,6または7記載の構成において、上記積み重ねの際、互いに重なり合う位置に固定用取付孔を設けてなる人工魚礁を提供する。
【0022】
この構成によれば、複数の魚礁用ブロックを積み重ねた後、固定部材を各固定用取付孔共通に挿入させて固定すると、各魚礁用ブロック間を一つに簡単に固定することができる。
【発明の効果】
【0023】
請求項1記載の発明は、微小な小魚や稚魚が隠れる生息場所と大形魚が生息する場所を簡単に形成することができるので、魚が住みやすい絶好の場所を簡単に形成することができる。また、微小な小魚や稚魚が隠れる生息場所を作ることにより、稚魚の生存率を向上させることができる。これにより、水産資源全体の拡大を図ることができる。
【0024】
請求項2記載の発明は、複数の魚礁用ブロックを積み重ねた後、固定部材により各魚礁用ブロック間を一つに簡単に固定することができるので、人工魚礁を長期にわたって使用することができる。
【0025】
請求項3記載の発明は、水と接触しているコンクリート表面積を多く確保し、該コンクリートに混練された生物誘引物質が該コンクリート表面から適量ずつ徐々ににじみ出るようにしているので、該生物誘引物が長期間に亘って効率良く徐々に流出し、魚介類の蝟集・育成効果、及び、藻の付着・育成の効果を長期間に亘って維持することができる。
【0026】
請求項4記載の発明は、微小な小魚や稚魚が隠れる生息場所と大形魚が生息する場所を有する人工魚礁を簡単に形成することができる。また、微小な小魚や稚魚が隠れる生息場所を作ることにより、稚魚の生存率を向上させて漁業資源の底上げを図り、水産資源全体の拡大が可能となる。
【0027】
請求項5記載の発明は、積み重ねられた棒状ブロックの上底と下底との間に形成された隙間を通して立方体の内側と外側との流通を図ることにより、立方体内における水の活性化が図れ、多様な魚が好んで住み着く好適な環境を作ることができる。
【0028】
請求項6記載の発明は、積み重ねられた棒状ブロック間に概略三角形断面の空間が形成されるようにしているので、その空間が魚介類の蝟集・育成場所となり、多様な魚が好んで住み着く好適な環境を作ることができる。
【0029】
請求項7記載の発明は、積み重ねられた棒状ブロック間に概略菱形断面の空間が形成されるようにしているので、その空間が魚介類の蝟集・育成場所となり、多様な魚が好んで住み着く好適な環境を作ることができる。
【0030】
請求項8記載の発明は、複数の魚礁用ブロックを積み重ねた後、固定部材により各魚礁用ブロック間を一つに簡単に固定することができるので、人工魚礁を長期にわたって使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態に係る魚礁用ブロックの基本形状を示す斜視図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】同上第1実施形態における魚礁用ブロックの基本使用例を説明する断面図で、(a)は積み重ね前の状態の説明図、(b)は積み重ね後の状態の説明図。
【図4】同上魚礁用ブロックの上底と下底を順に当接させて格子状に積み重ねてなる人工魚礁の基本形状を示す斜視図。
【図5】同上魚礁用ブロックの上底と下底を当接させて積み重ね、かつ横方向に配列してなる人工魚礁の基本形状を示す斜視図。
【図6】同上魚礁用ブロックの上底同士と下底同士を交互に当接させて順に積み重ね、かつ横方向に配列してなる人工魚礁の基本形状を示す斜視図。
【図7】本発明の第2実施形態に係る魚礁用ブロックの基本形状を示す平面図。
【図8】図7のB−B方向より見た側面図。
【図9】図7のC−C方向より見た側面図。
【図10】同上第2実施形態における魚礁用ブロックの基本使用例を説明する図。
【図11】図10のD−D断面図。
【図12】同上第2実施形態における魚礁用ブロックの他の基本使用例を説明する図で、(a)は1段目の魚礁ブロックを並置した状態図、(b)は1段目の魚礁ブロックの上に2段目の魚礁ブロックを並置した状態図。
【図13】同上第2実施形態における魚礁用ブロックの固定例を説明する図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明は稚魚や幼魚を中心とする魚類が生息するのに好適な穴や隙間から魚体の大きな魚類が生息するのに適した空間を有する人工魚礁を簡単に形成することができる構造とした魚礁用ブロック及び人工魚礁を提供するという目的を達成するために、適宜な長さを有する棒状体として形成され、横にする状態で順に上方向に積み重ねて立方体の人工魚礁を形成する魚礁用ブロックにおいて、上底と下底が平行な概略台形断面を有してなる魚礁用ブロックとしたことにより実現した。
【0033】
以下、本発明の実施形態による魚礁用ブロックについて図面を参照して詳細に説明する。
【実施例】
【0034】
図1及び図2は本発明に係る魚礁用ブロックの第1実施形態を示すもので、図1はその外観斜視図、図2は図1のA−A断面図である。
【0035】
同図において、魚礁ブロック10は、適宜な長さを有する棒状体であり、また断面は上底11と下底12が互いに平行をなす概略台形として形成されている。該魚礁ブロック10は、例えば型枠(図示せず)にコンクリート材を流し込んで成形される。さらに、その成形時、上下に貫通してなる固定用取付孔13が、適宜の間隔を有して複数の位置(本例では3つの位置)に設けられる。
【0036】
なお、前記魚礁ブロック10の成形に際しては、砂利、セメント、水からなる基準混練物(以下、「生コンクリート」という)を混練する時、生コンクリート内に例えば生物誘引物質としてアミノ酸が該生コンクリートの対セメント重量比で1〜10%添加される。そして、該アミノ酸が混練された生コンクリートを前記型枠に流し込んで固化させることにより、前記所定の形状に成形する。
【0037】
さらに、アミノ酸が混練された生コンクリートでは、該生コンクリートが固まるまでの少しの間、該アミノ酸が生コンクリートの粘り気を緩くする。これにより該生コンクリートが型枠の隅々まで入り易くなり、成形を容易にする。一方、固まった後はコンクリート表面及び内部に多孔状の透きが形成されて多孔質のコンクリートとなり、水に触れる表面積が多くなる。また、水の浸透を容易にし、コンクリート全体からアミノ酸が水中ににじみ出る量を適量にするとともに、水がコンクリートブロックの奥深い内部に染み込んで、該コンクリートブックの奥深い箇所に前記混練により配置されているアミノ酸を外表面側に誘引して水中に流出するようにし、コンクリートブロックの中に残って無駄になるアミノ酸の量を少なくする。
【0038】
図3は、このように形成された魚礁ブロック10の基本使用の一例を示すものである。この使用例では、例えば複数個の魚礁用ブロック10,10…と複数個の固定部材14が用意される。
【0039】
なお、前記固定部材14は、緊締部材15とナット16と連結部材17と連結桿18で構成されている。そして、前記魚礁ブロック10の積み上げ段数に応じて、連結部材17及び連結桿18の使用個数を変えるようになっている。
【0040】
さらに詳述すると、前記緊締部材15は、水平方向に延びる止片15aと該止片15aの中央位置から上方に向かって延びる円柱棒状をした連結桿15bを一体に有して概略T字形に形成されている。また、該連結桿15bの先端部には雄ネジ(図示せず)が刻設されている。前記連結部材17は、環状の部材であり、内面には前記連結桿15bの雄ネジと螺合可能な雌ネジ(図示せず)が刻設されている。前記連結桿18は、円柱棒状の部材であり、上下の端部には前記連結部材17の雌ネジと螺合可能な雄ネジ(図示せず)が刻設されている。前記ナット16は、前記連結桿18の雄ネジと螺合可能な雌ネジ(図示せず)が内面に刻設されている。
【0041】
そして、前記魚礁ブロック10を所定段数積み上げて人工魚礁を形成し、かつ前記固定部材14で固定する場合は、図3の(a)に示すように、まず一段目の魚礁ブロック10の固定用取付孔13に、該魚礁ブロック10の下底12側から、緊締部材15の連結桿15bを前記止片15aが該下底12に当接するまで差し込む。そして、一段目の魚礁ブロック10の上底11から突出した連結桿15bの上方に、連結部材17を介して連結桿18を継ぎ足し、その第1段目の魚礁ブロック10の上に、それぞれ連結桿18に固定用取付孔13を合わせて第2段目の魚礁ブロック10、第3段目の魚礁ブロック10を順に重ねる。また、図3の(b)に示すように必要個数(本例では3段)の魚礁ブロック10が積み重ねられたら、連結桿18の上端側の雄ネジにナット16を締め付けて固定する。この作業を、必要箇所において各々行うと、積み上げられた複数段の魚礁ブロック10,10…を1つに固定して人工魚礁を構築することができる。
【0042】
また、前記魚礁ブロック10の積み上げ形式としては、例えば図4に示すように井桁式に積み重ねて内部に立方体空間を有する立方体の人工魚礁を作る形式、或いは図5及び図6に示すように複数の魚礁ブロック10を横方向に配列して立方体の人工魚礁を作る形式等が可能である。
【0043】
すなわち、図4に示す人工魚礁21は、井桁式で、かつ各部では1段目の魚礁ブロック10の上底11の上に2段目の魚礁ブロック10の下底12を当接させて積み重ね、さらに該2段目の魚礁ブロック10の上底11の上に3段目の魚礁ブロック10の下底12を当接させて積み重ね、また、該3段目の魚礁ブロック10の上底11の上に4段目の魚礁ブロック10の下底12を当接させて積み重ねるようにして順に上方向に積み重ね、内部に立方体空間22を有する人工魚礁としたものである。そして、この人工魚礁の場合も、図示しないが各魚礁ブロック10の間は上記固定部材14により固定して一体化される。
【0044】
この人工魚礁21では、1段目の魚礁ブロック10と3段目の魚礁ブロック10の間、及び2段目の魚礁ブロック10と4段目の魚礁ブロック10の間にそれぞれ前記立方体空間22へ通じる隙間23が形成される。この隙間23は、該人工魚礁21を海底に沈設した際、該立方体空間22の内側と外側との流通を図って該立方体空間22内における水を活性化し、多様な魚が好んで住み着く好適な環境を作ることができる。なお、この人工魚礁21は井桁状に限ることなく、格子状に形成するようにしてもよい。
【0045】
図5に示す人工魚礁24は、複数の魚礁ブロック10を横方向に配列して人工魚礁を作る形式で、かつ各部では1段目の魚礁ブロック10の下底12の上に2段目の魚礁ブロック10の上底11を当接させて積み重ね、さらに該2段目の魚礁ブロック10の下底12の上に3段目の魚礁ブロック10の上底11を当接させて積み重ね、また、該3段目の魚礁ブロック10の下底12の上に4段目の魚礁ブロック10の上底11を当接させて積み重ねるようにし、これを横方向にも繰り返し配列して人工魚礁としたものである。そして、この人工魚礁24の場合も、図示しないが上記固定部材14により固定して一体化される。
【0046】
この人工魚礁24では、各段間にそれぞれ概略三角形断面の空洞状をした空間25が複数個形成される。この空間25は、該人工魚礁24を海底に沈設した際、例えば稚魚や幼魚を中心とする魚類が生息するのに好適な魚介類の蝟集・育成場所として使用でき、多様な魚が好んで住み着く好適な環境を作ることができる。
【0047】
図6に示す人工魚礁26は、複数の魚礁ブロック10を横方向に配列して人工魚礁を作る形式で、かつ各部では1段目の魚礁ブロック10の上底11の上に2段目の魚礁ブロック10の上底11を当接させて積み重ね、さらに該2段目の魚礁ブロック10の下底12の上に3段目の魚礁ブロック10の下底12を当接させて積み重ね、また、該3段目の魚礁ブロック10の上底11の上に4段目の魚礁ブロック10の上底11を当接させて積み重ねるようにし、これを横方向にも繰り返し配列して人工魚礁としたものである。そして、この人工魚礁26の場合も、図示しないが上記固定部材14により固定して一体化される。
【0048】
この人工魚礁26では、1段目の魚礁ブロック10の横列と2段目の魚礁ブロック10の横列との間、及び3段目の魚礁ブロック10の横列と4段目の魚礁ブロック10の横列との間に、それぞれ概略菱形断面の空洞状をした空間27が複数個形成される。この空間27は、該人工魚礁26を海底に沈設した際、例えば稚魚や幼魚を中心とする魚類が生息するのに好適な魚介類の蝟集・育成場所として使用でき、多様な魚が好んで住み着く好適な環境を作ることができる。
【0049】
図7乃至図9は本発明に係る魚礁用ブロックの第2実施形態を示すもので、図7はその平面図、図8は図7のB−B方向より見た側面図、図9は図7のC−C方向より見た側面図であり、以下、第1実施形態の魚礁用ブロックと対応する部分には同じ符号を付して説明する。
【0050】
同図において、この第2実施形態の魚礁用ブロック30は、適宜な長さを有する棒状体であり、また断面は上底11と下底12が互いに平行をなし、かつ左右の側面にそれぞれ前記下底12からほぼ直角に立ち上がる互いに平行な垂壁31,31を設けた概略台形として形成されている。該魚礁ブロック30も、前記魚礁ブロック10と同様に、例えば型枠(図示せず)にコンクリート材を流し込んで成形されるもので、その成形時、上下に貫通してなる固定用取付孔13が適宜の間隔を有して複数の位置(本例では3つの位置)に設けられる。
【0051】
また、魚礁ブロック30の成形に際しても、砂利、セメント、水からなる基準混練物(以下、「生コンクリート」という)を混練する時、生コンクリート内に例えば生物誘引物質としてアミノ酸が該生コンクリートの対セメント重量比で1〜10%添加され、該アミノ酸が混練された生コンクリートを前記型枠に流し込んで固化させ、所定の形状に成形する。
【0052】
図10及び図11は、このように形成された魚礁ブロック30の基本使用の一例を示すものである。この使用例では、魚礁ブロック30を井桁式に積み重ねて内部に立方体空間32を有する人工魚礁33を形成した場合であり、複数個の魚礁ブロック30と固定部材34が用意される。
【0053】
なお、固定部材34は、連結桿35とナット36で構成されている。さらに詳述すると、連結桿35は、円柱棒状をなし、上下の端部外周にはそれぞれ雄ネジ(図示せず)が刻設されている。この連結桿35は、前記魚礁ブロック30の積み上げ段数に応じた長さのものが用意される。一方、前記ナット36は、前記連結桿35の雄ネジと螺合可能な雌ネジ(図示せず)が内面に刻設されている。
【0054】
そして、前記魚礁ブロック30を所定段数積み上げて人工魚礁37を形成し、かつ前記固定部材34で固定する場合は、図10に示すように、1段目の魚礁ブロック30の上底11の上に2段目の魚礁ブロック30の下底12を当接させて井桁状に積み重ねる。また、該2段目の魚礁ブロック30の上底11の上に3段目の魚礁ブロック30の下底12を当接させて積み重ね、さらに該3段目の魚礁ブロック30の上底11の上に4段目の魚礁ブロック30の下底12を当接させて積み重ねる。これにより、内部に立方体空間32を有する人工魚礁37が形成される。
【0055】
また、この魚礁ブロック30は、その後、図11に示すように前記固定部材31により固定されて一体化される。すなわち、この固定では、1段目〜4段目までの魚礁ブロック30の固定用取付孔13を上下方向で対応配置させ、この固定用取付孔13,13…共通に連結桿35を差し込む。その後、一段目の魚礁ブロック30の下底12及び四段目の魚礁ブロック30の上底11からそれぞれ突出されている連結桿35の雄ネジにナット36を螺合させる。この作業を、必要箇所において各々行うと積み上げられた複数段の魚礁ブロック30,30…を1つに固定してなる人工魚礁37が構築される。
【0056】
図12は魚礁ブロック30を使用して他の人工魚礁38を形成した他の使用例を示すものである。この人工魚礁38は、同図(a),(b)の順に交互に積み重ねて、複数の魚礁ブロック30,30…を格子状に積み重ねてなるものである。また、固定を必要とする箇所において、該積み重ねられた複数段の魚礁ブロック30,30…を図13に示すように固定部材14で固定すると、1つに固定された人工魚礁38を構築することができる。
【0057】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は人工魚礁を構築する以外に、擁壁を構築する場合等にも応用できる。
【符号の説明】
【0059】
10 魚礁ブロック
11 上底
12 下底
13 固定用取付孔
14 固定部材
15 緊締部材
15a 止片
15b 連結桿
16 ナット
17 連結部材
18 連結桿
21 人工魚礁
22 立方体空間
23 隙間
24 人工魚礁
25 空間
26 人工魚礁
27 空間
30 魚礁ブロック
31 垂壁
32 立方体空間
33 人工魚礁
34 固定部材
35 連結桿
36 ナット
37 人工魚礁
38 人工魚礁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
適宜な長さを有する棒状体として形成され、横にする状態で順に上方向に積み重ねて立方体の人工礁を形成する魚礁用ブロックにおいて、
上底と下底が平行な概略台形断面を有してなることを特徴といる魚礁用ブロック。
【請求項2】
上記積み重ねの際、互いに重なり合う位置に固定用取付孔を設けてなることを特徴とする請求項1記載の魚礁用ブロック。
【請求項3】
生物誘引物質を混練してなる多孔質のコンクリート材料で形成してなることを特徴とする請求項1または2記載の魚礁用ブロック。
【請求項4】
上底と下底が平行な概略台形断面を有する棒状ブロックを、横にする状態で順に上方向に積み重ねて立方体に形成してなることを特徴とする人工魚礁。
【請求項5】
上記台形の上底と下底を順に当接させ、かつ井桁状または格子状に積み重ねてなることを特徴とする請求項4記載の人工魚礁。
【請求項6】
上記台形の上底と下底を交互に当接させて順に積み重ねるようにして、横方向に配列してなることを特徴とする請求項4記載の人工魚礁。
【請求項7】
上記台形の上底同士と下底同士を交互に当接させて順に積み重ねるようにして、横方向に配列してなることを特徴とする請求項4記載の人工魚礁。
【請求項8】
上記積み重ねの際、互いに重なり合う位置に固定用取付孔を設けてなることを特徴とする請求項4,5,6または7記載の人工魚礁。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2013−13357(P2013−13357A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147717(P2011−147717)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(000226356)日建工学株式会社 (24)
【Fターム(参考)】