説明

魚箱用ドリップ吸収シート

【課題】発泡樹脂製の魚箱の汚染や腐敗臭の付着が防止され、魚箱の繰り返し使用ができコストダウンが可能で、また、繰り返し使用後も、原料樹脂として再生し、再度発泡成形して魚箱等にリサイクルすることも可能で、資源の節約と環境の保全に大きく貢献することができる魚箱用ドリップ吸収シートを提供する。
【解決手段】発泡樹脂製の蓋体5aと容器本体5bとからなる魚箱5内に設置されるドリップ吸収シート1であって、前記ドリップ吸収シート1が梅の種の炭化粉末を含有した紙からなることを特徴とする魚箱用ドリップ吸収シート1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚箱用ドリップ吸収シートに関し、更に詳しくは、魚から滲み出たドリップや臭気を吸収することにより魚箱の汚染を防止するとともに、カビや菌類の繁殖を防ぎ魚介類の鮮度を長持ちさせることができ、魚箱の繰り返し使用を可能とする魚箱用ドリップ吸収シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚箱はトロ箱と云われ、臭いの移らないナラ、ブナ等の木製が用いられたが、今日では、軽量で断熱性に優れるとともに耐水性にも優れた発泡スチロール製のものが広く用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3010241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、発泡スチロール製の魚箱は、多数の発泡セルが融着して形成されているため、発泡セル間には微小の隙間が存在し、この隙間に魚介類から滲み出たドリップ(液汁)が侵入することが避けられない。この発泡セルの隙間に侵入したドリップは洗剤によっても洗浄除去できず、従って、時間の経過とともに腐敗するため、極めて非衛生的であるばかりでなく、不快な腐敗臭を放つため、通常、1回限りの使用で廃棄処分されているのが実情で極めて不経済である。
【0005】
また、廃棄処分される魚箱は、上記のようにドリップで汚染されたり、不快な腐敗臭が付着しているため、加熱して減容させ、粉砕機にかけて粒状又は粉末状としたり、これらを押出機にかけてペレット化して再び魚箱に発泡成形する所謂リサイクルが困難であり、そのため、焼却処理や埋立処理されているのが実情である。
【0006】
しかしながら、焼却処理は高温により焼却炉を損傷したり、また、有害ガスを放出して環境を悪化させる原因となり、また、埋立処理の場合も、発泡スチロールは土中で長時間分解しないため、やはり環境を悪化させる原因となる。
【0007】
本発明は、かかる実情に鑑み、上記の如き従来技術の問題点を解消し、ドリップの侵入等による魚箱の汚染や悪臭の発生を防止し、衛生的な状態で繰り返し使用を可能として魚箱のコストダウンを図るとともに、繰り返し使用した後においても、焼却や埋立処理することなく、原料樹脂として再生し、再度発泡成形して魚箱等にリサイクルでき、資源の節約と環境への負荷の軽減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するためになされたもので、本発明の請求項1に係る発明は、発泡樹脂製の蓋体と容器本体とからなる魚箱内に設置されるドリップ吸収シートであって、前記ドリップ吸収シートが梅の種の炭化粉末を含有した紙からなることを特徴とする魚箱用ドリップ吸収シートを内容とする。
【0009】
本発明の請求項2に係る発明は、片面が樹脂フィルムでラミネートされていることを特徴とする請求項1に記載の魚箱用ドリップ吸収シートを内容とする。
【0010】
本発明の請求項3に係る発明は、方形の底面部の各辺に4つの側面部を延設した形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚箱用ドリップ吸収シートを内容とする。
【0011】
本発明の請求項4に係る発明は、側面部の少なくとも一つに蓋用のフラップが延設されていることを特徴とする請求項3に記載の魚箱用ドリップ吸収シートを内容とする。
【0012】
本発明の請求項5に係る発明は、容器本体の内側に沿って設置されるよう容器形状に成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚箱用ドリップ吸収シートを内容とする。
【0013】
本発明の請求項6に係る発明は、容器形状の上部に非接合部を有することを特徴とする請求項5に記載の魚箱用ドリップ吸収シートを内容とする。
【0014】
本発明の請求項7に係る発明は、使用済の魚箱用ドリップ吸収シートが水素イオン水で洗浄されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の魚箱用ドリップ吸収シートを内容とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の魚箱用ドリップ吸収シートは、梅の種の炭化粉末を含有した紙からなるため、ドリップや悪臭を吸収できるとともに、カビや菌の繁殖を抑え魚介類の鮮度を長持ちさせることができる。
【0016】
片面を樹脂フィルムでラミネートすれば、紙がドリップを吸収して軟化しても樹脂フィルムにより補強されているので破損する恐れがなく、また当該シートに吸収されたドリップが外面側に染み出して魚箱を汚染する恐れもない。
【0017】
魚箱用ドリップ吸収シートを、方形の底面部の各辺に4つの側面部を延設した形状にすれば、底面部を魚箱内に押し込む際に、側面部が自動的に立ち上がり、魚箱の内側面に当接するので、魚箱用ドリップ吸収シートをワンタッチで容易に魚箱内に設置することができる。
【0018】
側面部のうち、少なくとも一つに蓋用のフラップを延設すれば、収容した魚介類の表面を覆うことができ、ドリップ吸収効果や鮮度保持効果が高められるとともに、蓋の内面に悪臭等が染み付くのを防ぐことができる。
【0019】
魚箱用ドリップ吸収シートを容器形状に成形すれば、魚箱内への設置が容易になるとともに、当該シートの側面部の隙間からドリップ等が漏れ出すことがなくなる。
【0020】
容器形状の上部に非接合部を設けると、1種類の魚箱用ドリップ吸収シートで深さの異なる数種の魚箱に対応することができる。また深さの浅い魚箱に当該魚箱用ドリップ吸収シートを設置したとき、上方に余った部分は適宜内側に折り曲げて、蓋用のフラップとして用いることができる。
【0021】
使用済の魚箱用ドリップ吸収シートは、水素イオン水で洗浄することにより、吸収したドリップ等が洗い流され、臭いや汚れが除去され、繰り返し再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は魚箱用ドリップ吸収シートの一例を示す平面図である。
【図2】図2は容器本体に魚箱用ドリップ吸収シートを押し入れる状態を示す概略断面図である。
【図3】図3は魚箱用ドリップ吸収シートの他の例を示す平面図である。
【図4】図4はフラップを内側に折り曲げて蓋体の内面を魚箱用ドリップ吸収シートで被覆した状態を示す概略断面図である。
【図5】図5は魚箱用ドリップ吸収シートの更に他の例を示す平面図である。
【図6】図6は魚箱用ドリップ吸収シートの更に他の例を示す平面図である。
【図7】図7は容器形状に成形した魚箱用ドリップ吸収シートを示す斜視図である。
【図8】図8は上方に非接合部を設けた魚箱用ドリップ吸収シートを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の魚箱用ドリップ吸収シートは、発泡樹脂製の蓋体と容器本体とからなる魚箱内に設置されるドリップ吸収シートであって、前記ドリップ吸収シートが梅の種の炭化粉末を含有した紙からなることを特徴とする。
【0024】
本発明においては、梅の種の炭化粉末を含有する紙(以下、梅炭紙と記す場合がある)を用いて魚箱用ドリップ吸収シートを成形する。ここでいう梅の種の炭化粉末とは、梅の種を乾留して得られた炭を砕いて粉状にしたものであるが、この梅の種の炭化粉末を紙に含有させる方法は特に限定されず、例えば、梅の種の炭化粉末を添加したパルプを用いて抄紙する方法により作製することができる。
このような梅炭紙としては、例えば、山陽製紙(株)製の梅炭クレープ紙が挙げられる。
【0025】
このような魚箱用ドリップ吸収シートを用いると、ドリップは主として紙の部分で吸収されるとともに、魚介類やドリップから立ち上る悪臭は主として梅の種の炭化粉末により吸着される。
これに加え、梅の実は優れた防カビ、抗菌作用を有することで知られているが、梅の種を炭化させてもこの防カビ、抗菌作用は無くならないので、吸収したドリップが長時間腐敗せず、腐臭が発生しないばかりでなく、魚介類の鮮度も長時間保たれる。
【0026】
梅の種の炭化粉末を含有する紙の坪量は特に限定されず、魚から染み出すドリップを全て吸収できる程度であればよいが、通常、50〜300g/m2 程度である。
また、梅の種の炭化粉末の量も特に限定されず、目的とする消臭、防カビや抗菌効果により適宜決定すればよい。
【0027】
本発明の魚箱用ドリップ吸収シートは、片面を樹脂フィルムでラミネートするほうが好ましい。片面を樹脂フィルムでラミネートした魚箱用ドリップ吸収シートは、樹脂フィルムでラミネートされた側が魚箱の底面や側面と接するようにして、魚箱内に設置されるが、この場合、当該シートに吸収されたドリップが魚箱側に染み出すことが無いため、魚箱にドリップや臭気が染み付く恐れがなく、当該魚箱の繰り返し使用回数を増大させることができる。
【0028】
ラミネートする樹脂フィルムの素材は特に制限されず、例えば、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。フィルムの厚さは、魚箱のサイズや収納される魚介の種類により適宜選定すればよいが、通常、15〜 100μm程度である。
【0029】
本発明の魚箱用ドリップ吸収シートの形状、大きさは特に限定されず、最低限、魚箱の容器本体内に収容した魚介類を載置できる程度、好ましくは魚介類を被包できる程度の形状、大きさであれば足りるが、容器本体の内面を被覆できる大きさ、形状とすれば、ドリップが容器本体に付着することがなく、また魚介類やドリップから立ち上る悪臭がドリップ吸収シートに吸収され容器本体に染み付くこともないので好ましい。
【0030】
容器本体の内面を被覆できる魚箱用ドリップ吸収シートの好ましい形状としては、例えば、容器本体及び蓋体の内面形状と略等しい直方体の展開図の形状を例示できる。
本発明では、特に、図1に示したような、方形の底面部2の各辺に、4つの側面部3を延設した形状が好ましいが、このような底面部2の各辺に側面部3を延設した形状であると、図2に示したように、底面部2を魚箱の中に押し入れた時に、側面部3が自動的に立ち上がり、ワンタッチで簡単に容器本体5bの内面を被覆することができる。
【0031】
また、図3に示したように、4つの側面部のうち、少なくとも1つに蓋用のフラップ4を設ければ、図4に示したように、当該フラップ4を内側に折り曲げることにより、蓋体5aの内面も当該魚箱用ドリップ吸収シート1で被覆して悪臭等が染み付くのを防ぐことができる。
なお、蓋用のフラップ4は、図3のように1つの側面部3に延設しても良いし、図5のように対向する2つの側面部3に延設してもよく、図6のように全ての側面部3に延設してもよい。
【0032】
本発明においては、図7に示すように、魚箱用ドリップ吸収シート1を容器本体5bの内側に沿って配置されるよう、予め容器形状に成形してもよい。このように魚箱用ドリップ吸収シート1を容器形状に成形すれば、単に容器本体5b内に当該シート1を設置しやすくなるだけでなく、隣接する側面部3の間からドリップや悪臭が漏れ出す恐れがなくなり、魚箱5に汚れや悪臭が染み付かないので、魚箱5の寿命を大きく伸ばすことができる。
成形方法は特に限定されないが、当該シートを、図1、図3、図5、図6のような、方形の底面部2の4辺にそれぞれ側面部3を延設し、必要に応じて側面部3からフラップ4を延設した形状に成形し、隣接する側面部3の間を接着剤や粘着テープ等で接合する方法が簡便である。また、樹脂フィルムでラミネートされているドリップ吸収シートの場合は、この樹脂フィルムを熱溶融させて接着することができる。
【0033】
上記のように、隣接する側壁の間を接合する場合、上から下まで全部を接合するのではなく、図8に示すように、上方に非接合部3aを設けることもできる。このようにすると、浅い魚箱にこの魚箱用ドリップ吸収シートを設置する場合は、上側に余った部分を折り曲げることにより側面部3の高さを調節できるので、1種類の魚箱用ドリップ吸収シート1で深さの異なる数種類の魚箱5に対応することができる。
なお、上側に余った側面部3は、図4に示した状態と同様に、内側に折り曲げることにより蓋用のフラップ4として使用でき、蓋体5aにドリップや悪臭が染み付かないように、蓋体5aの内面を被覆することができ、また、魚介類の上面もドリップ吸収シートが覆うことができるので、消臭や防カビ、抗菌効果が一層高められる。
【0034】
本発明の魚箱用ドリップ吸収シートは、水素イオン水を用いて洗浄すると、ドリップ吸収シートからドリップ等を洗い落とし、臭気や汚れを除去することができるので、ドリップ吸収シートを再使用することができる。このような水素イオン水としては、例えば、(株)オクト社製の飲料水である水素イオン水(商品名:HYDRO ION WATER、OCT水素イオンWATER)が挙げられる。
【0035】
このような水素イオン水(H+ 2 O)が高い洗浄力を有する理由は水素イオンは有機物を分解する能力があり、(株)オクトのウェブページ(http://www.octinc./sub3.html)によれば、当該水素イオン水は「自然界の水と比べ、15%水構造が小さく、水の繋がりは2.5倍強い。」「独自の方法で水素イオンを添加」しているという特徴があるので、これが高い洗浄効果に繋がってると考えられる。
【0036】
本発明の魚箱用ドリップシートは魚箱の容器本体内での形状保持性、自立性を高めるために外側に固定具を設けてもよい。このような固定具としては、例えば、粘着層と離型層とからなるものが挙げられ、容器本体内に設置した後、離型層を剥離除去して粘着層により容器本体の内壁面に固定する。
【0037】
本発明の魚箱用ドリップ吸収シートが使用される魚箱の発泡樹脂としては特に制限はなく、ポリスチロールや、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン等が挙げられる。
本発明の魚箱用ドリップ吸収シートは紙製であり、魚箱内壁に沿って殆ど隙間なくフィットした状態で設置されるので、魚箱の収納容積を実質的に低下させることがなく、また、形状保持性、自立性を有し、必要に応じ、固定具等で魚箱内壁面に固定することができるので、魚介類の収納や取り出しも容易である。
【0038】
また、魚箱用ドリップ吸収シートがクレープ紙からなる場合は、クレープにより適度な弾力性が付与され、魚介類を振動や衝撃から保護するとともに、ドリップがクレープとクレープの凹部に貯留されるので、魚介類がドリップに漬かることが防止され、鮮度が長時間に亘って保持される。
【産業上の利用可能性】
【0039】
叙上のとおり、本発明の魚箱用ドリップ吸収シートによれば、発泡樹脂製の魚箱の汚染や悪臭の付着が防止され、従って、魚箱の繰り返し使用が可能となり、大巾なコストダウンが可能である。さらに、魚箱用ドリップ吸収シートの優れた防カビ、抗菌効果により、魚介類の鮮度も長時間維持される。また、魚箱を繰り返し使用した後も、汚染や悪臭の付着がないので、原料樹脂として再生し、再度発泡成形して魚箱等にリサイクルすることも可能で、資源の節約と環境の保全に大きく貢献することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 魚箱用ドリップ吸収シート
2 底面部
3 側面部
3a 非接合部
4 蓋用のフラップ
5 魚箱
5a 蓋体
5b 容器本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡樹脂製の蓋体と容器本体とからなる魚箱内に設置されるドリップ吸収シートであって、前記ドリップ吸収シートが梅の種の炭化粉末を含有した紙からなることを特徴とする魚箱用ドリップ吸収シート。
【請求項2】
片面が樹脂フィルムでラミネートされていることを特徴とする請求項1に記載の魚箱用ドリップ吸収シート。
【請求項3】
方形の底面部の各辺に4つの側面部を延設した形状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚箱用ドリップ吸収シート。
【請求項4】
側面部の少なくとも一つに蓋用のフラップが延設されていることを特徴とする請求項3に記載の魚箱用ドリップ吸収シート。
【請求項5】
容器本体の内側に沿って設置されるよう容器形状に成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の魚箱用ドリップ吸収シート。
【請求項6】
容器形状の上部に非接合部を有することを特徴とする請求項5に記載の魚箱用ドリップ吸収シート。
【請求項7】
使用済の魚箱用ドリップ吸収シートが水素イオン水で洗浄されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の魚箱用ドリップ吸収シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−12369(P2011−12369A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−159664(P2009−159664)
【出願日】平成21年7月6日(2009.7.6)
【出願人】(509190705)
【出願人】(301012586)
【出願人】(503394936)
【Fターム(参考)】