説明

魚群探知機

【課題】デジタル方式の魚群探知機の測定精度を維持しながら、廉価にできる構成を実現する。
【解決手段】本発明の魚群探知機は、送信信号生成部、送受波器、周波数変換部、送受切替部、A/D変換部、信号処理部を備える。送受波器は、音波を水中に送信し、水中からの音波のエコーを受信する。周波数変換部は、エコーの周波数を低周波に変換して、低周波エコーを生成する。A/D変換部は、低周波エコーをデジタル信号に変換し、デジタルエコー信号を生成する。信号処理部は、デジタルエコー信号を信号処理することで、水中の状況を画面表示できる信号に変換する。周波数変換部は、第1変換手段と第2変換手段とを備える。第1変換手段は、所定の周波数での利得が大きくなるような周波数特性を持つアンプ機能と、エコーの周波数を高くするミキサー機能とを有する。第2変換手段は、第1変換手段の出力の周波数を所定の周波数よりも低くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波のエコーをデジタル信号へ変換して処理する魚群探知機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の魚群探知機は音波のエコーを、アナログ増幅回路を多段に重ねた構成であった(特許文献1)。最近は回路のデジタル化が進み、図1に示すような音波のエコーをデジタル信号に変換した上で処理する構成に変わってきた。図1の魚群探知機900は、送信信号生成部910、送受波器920、送受切替部930、A/D変換部950、信号処理部960を備える。送信信号生成部910は、所定の周波数の送信信号を生成する。所定の周波数とは、一般的には28kHzから200kHzの中から選択された1つから4つの周波数である。送受波器920(トランスデューサ)は、送信信号に対応した音波を水中に送信し、水中からの音波のエコーを受信する。送受切替部930は、送信信号を送信信号生成部910から受け取り、送受波器920に伝達する。また、エコーを送受波器920から受け取り、A/D変換部950に伝達する。A/D変換部950は、エコーをデジタル信号に変換し、デジタルエコー信号を生成する。魚群探知機に要求される受信レベルのダイナミックレンジの要求から、A/D変換部950は一般的に24bitである。信号処理部960は、デジタルエコー信号を信号処理することで、水中の状況を画面表示できる信号に変換する。デジタルでの信号処理には、例えばバンドパスフィルタ、検波処理、LOG圧縮処理などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−146123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、200kHzの信号を1周期に10回測定しようとすれば、2MHzでサンプリングする必要がある。しかし、24bitを2MHzでサンプリングしてデジタル信号に変換できるA/D変換器は非常に高価である。また、信号処理部として用いられるDSP(Digital Signal Processor)も高価になりやすい。
【0005】
そこで、本発明は、デジタル方式の魚群探知機の測定精度を維持しながら、廉価にできる構成を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の魚群探知機は、送信信号生成部、送受波器、周波数変換部、送受切替部、A/D変換部、信号処理部を備える。送信信号生成部は、所定の周波数の送信信号を生成する。所定の周波数は、25kHz〜250kHz程度の中から必要な数の周波数を選択すればよい。または、必要な幅の周波数帯を選択すればよい。送受波器は、送信信号に対応した音波を水中に送信し、水中からの音波のエコーを受信する。周波数変換部は、エコーの周波数を低周波に変換して、低周波エコーを生成する。送受切替部は、送信信号を送信信号生成部から受け取り、送受波器に伝達する。また、エコーを送受波器から受け取り周波数変換部に伝達する。A/D変換部は、低周波エコーをデジタル信号に変換し、デジタルエコー信号を生成する。信号処理部は、デジタルエコー信号を信号処理することで、水中の状況を画面表示できる信号に変換する。
【0007】
また、周波数変換部は、第1変換手段と第2変換手段とを備える。第1変換手段は、所定の周波数での利得が大きくなるような周波数特性を持つアンプ機能と、エコーの周波数を高くするミキサー機能とを有する。第2変換手段は、第1変換手段の出力の周波数を所定の周波数よりも低くする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の魚群探知機によれば、局部発振回路が出力してしまう高調波成分によって生じるノイズを、周波数特性を持つ第1変換手段によって除去する。その上で第2変換手段によってエコーを低周波エコーに変換する。したがって、エコーの周波数を低い周波数に変換するときにノイズの混入を防ぐことができる。また、A/D変換部のサンプリング周波数を低くすることができる。つまり、魚群探知機の測定精度を劣化させることなく、廉価な構成にできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来のデジタル方式の魚群探知機の機能構成例を示す図。
【図2】本発明の魚群探知機の機能構成例を示す図。
【図3】周波数変換部140の構成例を示す図。
【図4】第1変換手段141の構成例を示す図。
【図5】利得調整回路を省略したギルバート回路143の具体例を示す図。
【図6】インダクタンスを含む利得調整回路の例を示す図。
【図7】利得調整回路171をギルバート回路143の利得調整端子1434に接続した場合の、ギルバート回路143のアンプ機能部1438の利得の周波数特性の概要を示す図。
【図8】抵抗とインダクタとコンデンサの直列回路で構成された利得調整回路の例を示す図。
【図9】利得調整回路172をギルバート回路143の利得調整端子1434に接続した場合の、ギルバート回路143のアンプ機能部1438の利得の周波数特性の概要を示す図。
【図10】複数の利得のピークを設定するための利得調整回路の構成例を示す図。
【図11】利得調整回路173をギルバート回路143の利得調整端子1434に接続した場合の、ギルバート回路143のアンプ機能部1438の利得の周波数特性の概要を示す図。
【図12】、利得のピークに幅を持たせるための利得調整回路の構成例を示す図。
【図13】利得調整回路174をギルバート回路143の利得調整端子1434に接続した場合の、ギルバート回路143のアンプ機能部1438の利得の周波数特性の概要を示す図。
【図14】利得のピークに広い幅を持たせるための利得調整回路の構成例を示す図。
【図15】利得調整回路175をギルバート回路143の利得調整端子1434に接続した場合の、ギルバート回路143のアンプ機能部1438の利得の周波数特性の概要を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0011】
図2に本発明の魚群探知機の構成例を示す。魚群探知機100は、送信信号生成部910、送受波器920、周波数変換部140、送受切替部930、A/D変換部150、信号処理部960を備える。送信信号生成部910は、所定の周波数の送信信号を生成する。所定の周波数としては、一般的には28kHzから200kHzの中から選択された1つから4つの周波数が選択される。しかし、これに限定する必要はなく、25kHz〜250kHz程度の中から必要な数の周波数を決めればよい。具体的には、この周波数は音波の反射が大きい魚の部位の大きさ(例えば、魚の浮き袋の大きさなど)から適宜決めればよい。例えば、50kHzの音波は水中での波長は3cm程度なので、1.5cm程度(半波長)の大きさの対象を探すのに適している。また、所定の周波数として、必要な幅の周波数帯を選択してもよい。このように周波数帯を選択した場合には、送信信号の周波数を、周波数帯の範囲で連続的に変更しながら測定することも可能である。
【0012】
送受波器920は、送信信号に対応した音波を水中に送信し、水中からの音波のエコーを受信する。周波数変換部140は、エコーの周波数を低周波に変換して、低周波エコーを生成する。送受切替部930は、送信信号を送信信号生成部910から受け取り、送受波器920に伝達する。また、エコーを送受波器920から受け取り周波数変換部140に伝達する。A/D変換部150は、低周波エコーをデジタル信号に変換し、デジタルエコー信号を生成する。信号処理部960は、デジタルエコー信号を信号処理することで、水中の状況を画面表示できる信号に変換する。デジタルでの信号処理には、例えばバンドパスフィルタ、検波処理、LOG圧縮処理などがある。図示していないが、魚群探知機100は、各構成部を制御するための制御部、操作者の指示を入力する入力部、外部ディスプレイに画面データを出力する出力部なども備えても良いし、省略できる場合は省略しても良い。
【0013】
図3は、周波数変換部140の構成例を示す図である。周波数変換部140は、第1変換手段141と第2変換手段149とを備える。第1変換手段141は、所定の周波数での利得が大きくなるような周波数特性を持つアンプ機能と、エコーの周波数を高くするミキサー機能とを有する。第2変換手段149は、第1変換手段の出力の周波数を所定の周波数よりも低くする。第2変換手段149は周波数特性を持つ必要はなく、後述するギルバート回路の周波数特性のないものを用いても良いし、その他の回路によって周波数を変更してもよい。
【0014】
図4は第1変換手段141の構成例を示す図である。第1変換手段141は、局部発振回路142とギルバート回路143で構成される。局部発振回路142は、あらかじめ定めた周波数flocalの信号を出力する。ギルバート回路143には、送受切替部930からエコー(この周波数をfinとする。)と、局部発振回路142の出力が入力される。そして、ギルバート回路143は、エコーの周波数を高い周波数に変換して出力する。
【0015】
図5はギルバート回路143の具体例を示す図であって、この図では利得調整回路は省略されている。ギルバート回路143は、トランジスタ181〜189、抵抗191〜193などを組み合わせることで構成されており、定電流回路部1437、アンプ機能部1438、ミキサー機能部1439のように機能ごとに分けて考えることもできる。定電流回路部1437はトランジスタ185、186のエミッタ電流を調節する機能を有しており、バイアス端子1435に加える電圧によって調整される。アンプ機能部1438は、エコー入力端子1431に入力された信号を振り分ける機能と増幅する機能を備えている。利得調整端子1434の間を短絡させると、利得は最大となる。また、利得調整端子1434の間に抵抗を挿入すると理論的には周波数特性を持たない増幅器となり、抵抗の値によって利得が調整できる。本発明では、後述するように利得調整端子1434の間に周波数特性を有する回路を挿入することで、アンプ機能部1438に積極的に周波数特性を与えている。ミキサー機能部1439は増幅されたエコーと局部発振回路142の出力とをミキシング(乗算)し、周波数fout=flocal−finに変換されたエコーが出力端子1433から出力される。例えば、finを200kHz、flocalを655kHzとすれば、foutは455kHzとなる。このように、周波数flocalを十分高い周波数(少なくとも2finよりも高い周波数)にすることで、周波数foutを周波数finよりも高い周波数に変換できる。具体的には、局部発振回路142の周波数flocalを500kHz〜700kHzとすればよい。このような周波数であればラジオ用の発振器なども使えるため、安価な部品を利用できる。なお、周波数fout=flocal+finに変換された信号も出力されるが、この信号はフィルタ(図示していない)などによって除去すればよい。
【0016】
次に、なぜ高い周波数に変換した上で低い周波数に変換するかについて説明する。周波数変換部140の出力の周波数は、入力されたエコーの周波数よりも低い。したがって、第1変換手段141と第2変換手段149の2つの変換手段を用いるのではなく、第1変換手段141によって周波数を下げ、第2変換手段149を省略することも考えられる。このように直接周波数を下げるのであれば、局部発振回路142の出力の周波数flocalを、周波数finに近い周波数に設定してミキシングすることで、周波数fout=fin−flocal(または、flocal−fin)に変換されたエコーを取り出すことになる。ところが、局部発振回路142の出力に高調波成分が含まれていることがある。例えば、局部発振回路142の出力が矩形波の場合には、3次高調波(周波数3flocal)、5次高調波(周波数5flocal)なども局部発振回路142の出力に含まれている。このような高調波が含まれた場合、高調波との周波数の差がfoutのノイズも周波数foutに変換されてしまうので、エコーに含まれている周波数3flocal±foutのノイズや周波数5flocal±foutのノイズも周波数foutに変換されてしまうので、低周波エコーに含まれるノイズが増加することになる。したがって、周波数3flocal±foutのノイズや周波数5flocal±foutのノイズを除去した上でミキシングしなければならない。ところが、上述のように、周波数flocalを、周波数finに近い周波数に設定しなければならないので、周波数3flocal±foutと周波数finとの周波数の差が小さい。つまり、周波数finでの利得を高め、かつ周波数3flocal±foutなどの高調波近傍の利得を低くすること(もしくは、周波数finの信号を透過させ、かつ周波数3flocal±foutなどの高調波近傍の信号を減衰させること)が難しくなる。一方、本発明の構成のように、第1変換手段141で一度周波数を高くするのであれば、周波数flocalが十分に周波数finよりも高いので、周波数3flocal±foutなどの高調波近傍の周波数と周波数finの差は非常に大きくなる。したがって、ミキシングする前に高調波近傍の周波数のノイズを小さくすることが容易になる。そこで、本発明では、第1変換手段141が、周波数finでの利得が大きくなるような周波数特性を持つアンプ機能と、エコーの周波数を高くするミキサー機能とを有する。そして、第2変換手段149は、第1変換手段の出力を周波数finよりも低くしている。
【0017】
また、実際に周波数変換部140を製造するときの観点から、なぜ高い周波数に変換した上で低い周波数に変換するかについて説明する。安価な魚群探知機100を製造するためには、市場に流通している超音波送受波器の中から適当な周波数を選択することになる。送受波器920の周波数近傍で手に入りやすい送受波器は、28,40,50,60,68,75,100,120,140,180,200kHzである。仮に、送受波器920の周波数が40kHzとすると、第1変換手段によって周波数を10kHzまで下げようとすれば、50kHzの局部発振回路を使うことになる。ところが、50kHzと周波数が10kHz異なるもう一つの周波数である60kHzの送受波器も、入手しやすい送受波器である。したがって、他の船が60kHzの送受波器を使用している可能性があり、混信した場合に2つの信号を分離できない。これは、上述したように周波数を下げる場合には、近い周波数の局部発振回路を使用しなければならないために生じる問題である。そこで、本発明では、送受波器920の周波数帯の外の周波数を使って低い周波数に変換するため、第1変換手段141がエコーの周波数を数100kHzまで高くし、第2変換手段149が第1変換手段の出力を10kHzまで低くしている。
【0018】
第1変換手段141のアンプ機能部1438の利得の周波数特性を、周波数finで大きくし、周波数3flocal±foutなどの高調波近傍の周波数で小さくするための利得調整回路の例を以下に示す。
【0019】
利得調整回路の例1
図6は、インダクタンスを含む利得調整回路の例を示す図である。図7に、利得調整回路171をギルバート回路143の利得調整端子1434に接続した場合の、ギルバート回路143のアンプ機能部1438の利得の周波数特性の概要を示す。利得調整回路171は、抵抗1711とインダクタ1712が直列に配置されている。このような回路を用いれば、アンプ機能部1438の利得の周波数特性は高周波領域で小さくなる。そして、抵抗1711とインダクタ1712の値を適宜設計することにより、エコーの周波数finでの利得を大きくし、周波数3flocal±foutなどの高調波近傍の周波数での利得を小さくできる。
【0020】
利得調整回路の例2
図8は、抵抗とインダクタとコンデンサの直列回路で構成された利得調整回路の例を示す図である。図9に、利得調整回路172をギルバート回路143の利得調整端子1434に接続した場合の、ギルバート回路143のアンプ機能部1438の利得の周波数特性の概要を示す。利得調整回路172は、抵抗1721、インダクタ1722、コンデンサ1723が直列に配置されている。このような回路を用いれば、利得のピークを作ることができる。そして、抵抗1721、インダクタ1722、コンデンサ1723の値を適宜設計することにより、利得のピークをエコーの周波数finに設定できる。そして、周波数3flocal±foutなどの高調波近傍の周波数での利得を小さくできる。
【0021】
例えば、抵抗1721を22Ω、インダクタ(チョークコイル)1722を330μH、コンデンサ1723を0.0277μFとすれば、エコーの周波数fin(音波の周波数)が50kHzの場合に適している。また、抵抗1721を10Ω、インダクタ1722を100μH、コンデンサ1723を6600pFとすれば、エコーの周波数finが200kHzの場合に適している。
【0022】
利得調整回路の例3
利得調整回路172の場合、利得のピークが1つであった。この例ではピークを複数にした利得調整回路について説明する。図10は、複数の利得のピークを設定するための利得調整回路の構成例を示す図である。図11に、利得調整回路173をギルバート回路143の利得調整端子1434に接続した場合の、ギルバート回路143のアンプ機能部1438の利得の周波数特性の概要を示す。利得調整回路173は、抵抗1721、インダクタ1722、コンデンサ1723の直列回路がN個存在し(Nは1以上の整数、nは1以上N以下の整数)、直列回路同士は並列に接続されている。このような回路を用いれば、複数の利得のピークを作ることができる。そして、抵抗1721、インダクタ1722、コンデンサ1723の値を適宜設計することにより、利得のピークをエコーの周波数finnに設定できる。そして、周波数3flocal±foutnなどの高調波近傍の周波数での利得を小さくできる。
【0023】
例えば、抵抗1721を22Ω、インダクタ1722を330μH、コンデンサ1723を0.0277μFとし、抵抗1721を10Ω、インダクタ1722を100μH、コンデンサ1723を6600pFして2つの直列回路を並列に接続すれば、エコーの周波数finが50kHzと200kHzの2つの周波数の場合に適している。
【0024】
利得調整回路の例4
この例ではピークに幅がある利得調整回路について説明する。図12は、利得のピークに幅を持たせるための利得調整回路の構成例を示す図である。図13に、利得調整回路174をギルバート回路143の利得調整端子1434に接続した場合の、ギルバート回路143のアンプ機能部1438の利得の周波数特性の概要を示す。利得調整回路174は、インダクタ1742、コンデンサ1743の直列回路と、インダクタ1742、コンデンサ1743の直列回路が並列に接続されている。そして、それぞれのインダクタとコンデンサとの接続点同士を抵抗1741で接続している。このような回路を用いれば、利得のピークに幅を作ることができる。そして、抵抗1741、インダクタ1742、1742、コンデンサ1743、1743の値を適宜設計することにより、利得のピークに幅を持たせることができ、すべてのエコーの周波数での利得を大きくできる。そして、高調波近傍の周波数での利得を小さくできる。例えば、インダクタ1742、コンデンサ1743の直列回路は、利得を高くしたい周波数帯の最低周波数で利得がピークとなるように設計する。そして、インダクタ1742、コンデンサ1743の直列回路は、利得を高くしたい周波数帯の最高周波数で利得がピークとなるように設計すればよい。
【0025】
利得調整回路の例5
この例では、さらにピークの幅を広げるための利得調整回路について説明する。図14は、利得のピークに広い幅を持たせるための利得調整回路の構成例を示す図である。図15に、利得調整回路175をギルバート回路143の利得調整端子1434に接続した場合の、ギルバート回路143のアンプ機能部1438の利得の周波数特性の概要を示す。利得調整回路175は、インダクタ1742、コンデンサ1743の直列回路と、インダクタ1742、コンデンサ1743の直列回路と、インダクタ1742、コンデンサ1743の直列回路が並列に接続されている。そして、それぞれのインダクタとコンデンサとの接続点同士を抵抗1741、1741、1741で接続している。
【0026】
このような回路を用いれば、幅の広い利得のピークを作ることができる。そして、抵抗1741、1741、1741、インダクタ1742、1742、コンデンサ1743、1743の値を適宜設計することにより、利得のピークの幅を広くできる。したがって、エコーの周波数が広い範囲で設定されている場合でも、すべてのエコーの周波数での利得を大きくできる。そして、高調波近傍の周波数での利得を小さくできる。例えば、インダクタ1742、コンデンサ1743の直列回路は、利得を高くしたい周波数帯の最低周波数で利得がピークとなるように設計する。また、インダクタ1742、コンデンサ1743の直列回路は、利得を高くしたい周波数帯の最高周波数で利得がピークとなるように設計する。そして、インダクタ1742、コンデンサ1743の直列回路は、利得を高くしたい周波数帯の中心周波数で利得がピークとなるように設計すればよい。なお、この例では直列回路が3つであったが、さらに周波数の幅を広げるのであれば直列回路をさらに増やせばよい。
【符号の説明】
【0027】
100、900 魚群探知機 140 周波数変換部
141 第1変換手段 142 局部発振回路
143 ギルバート回路 149 第2変換手段
150、950 A/D変換部
171、172、173、174、175 利得調整回路
910 送信信号生成部 920 送受波器
930 送受切替部 960 信号処理部
1431 エコー入力端子 1433 出力端子
1434 利得調整端子 1435 バイアス端子
1437 定電流回路部 1438 アンプ機能部
1439 ミキサー機能部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の周波数の送信信号を生成する送信信号生成部と、
前記送信信号に対応した音波を水中に送信し、水中からの前記音波のエコーを受信する送受波器と、
前記エコーの周波数を低周波に変換して、低周波エコーを生成する周波数変換部と、
前記送信信号を前記送信信号生成部から受け取り前記送受波器に伝達するとともに、前記エコーを前記送受波器から受け取り前記周波数変換部に伝達する送受切替部と、
前記低周波エコーをデジタル信号に変換し、デジタルエコー信号を生成するA/D変換部と、
前記デジタルエコー信号を信号処理することで、水中の状況を画面表示できる信号に変換する信号処理部と
を備え、
前記周波数変換部は、
前記所定の周波数での利得が大きくなるような周波数特性を持つアンプ機能と、前記エコーの周波数を高くするミキサー機能とを有する第1変換手段と、
前記第1変換手段の出力の周波数を前記所定の周波数よりも低くする第2変換手段を有する
ことを特徴とする魚群探知機。
【請求項2】
請求項1記載の魚群探知機であって、
前記第1変換手段は、
局部発振回路と、
インダクタンスを含む利得調整回路によって利得に周波数特性が与えられたギルバート回路により構成されている
ことを特徴とする魚群探知機。
【請求項3】
請求項2記載の魚群探知機であって、
前記利得調整回路は、抵抗とインダクタの直列回路である
ことを特徴とする魚群探知機。
【請求項4】
請求項2記載の魚群探知機であって、
前記所定の周波数が、1または複数あり、
前記利得調整回路は、
前記所定の周波数ごとに利得がピークとなるように構成された抵抗とインダクタとコンデンサの直列回路が、前記所定の周波数の数だけ並列に接続された回路である
ことを特徴とする魚群探知機。
【請求項5】
請求項2記載の魚群探知機であって、
前記所定の周波数が、幅を有する周波数帯であり、
前記利得調整回路は、
前記周波数帯の最大周波数で利得がピークとなるように構成されたインダクタとコンデンサの直列回路と前記周波数帯の最低周波数で利得がピークとなるように構成されたインダクタとコンデンサの直列回路とが並列に接続され、
前記直列回路のインダクタとコンデンサとの接続箇所同士を抵抗で接続した回路である
ことを特徴とする魚群探知機。
【請求項6】
請求項2記載の魚群探知機であって、
前記所定の周波数が、幅を有する周波数帯であり、
前記利得調整回路は、
前記周波数帯の最大周波数で利得がピークとなるように構成されたインダクタとコンデンサの直列回路と、前記周波数帯の最低周波数で利得がピークとなるように構成されたインダクタとコンデンサの直列回路と、前記周波数帯の中心付近の周波数で利得がピークとなるように構成されたインダクタとコンデンサの直列回路とが並列に接続され、
前記直列回路のインダクタとコンデンサとの接続箇所同士をそれぞれ抵抗で接続した回路である
ことを特徴とする魚群探知機。
【請求項7】
請求項2から6記載のいずれかに記載の魚群探知機であって、
前記所定の周波数は、25kHz〜250kHzであり、
前記局部発振回路の発振周波数は、500kHz〜700kHzである
ことを特徴とする魚群探知機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−281718(P2010−281718A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135976(P2009−135976)
【出願日】平成21年6月5日(2009.6.5)
【出願人】(000001177)株式会社光電製作所 (32)
【Fターム(参考)】