説明

魚腥草と徳利苺の実の抽出物とそれらのアレルギー疾患予防及び治療用組成物(ExtractsofHouttuyniacordataandRubuscoreanusandtheircompositionforpreventingandtreatingallergicdiseases)

本発明は、魚腥草と徳利苺の実の抽出物及びそれらを含む組成物のアレルギー疾患の予防及び治療に対する用途に関する。本発明の抽出物及びそれらを含む組成物は、肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離を抑制してアレルギー疾患を予防及び治療する効果があり、細胞毒性を示さないので、生体に安全に使用できる効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚腥草と徳利苺の実の抽出物とそれらのアレルギー疾患予防及び治療用組成と用途に関し、より詳しくは魚腥草と徳利苺の実の水又は有機溶媒抽出物及びこれらを含むアレルギー疾患の予防及び治療用組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、産業の発達によって、環境汚染が増加するとともに、住居環境が変化し、アレルギー疾患が日々増加している。
【0003】
アレルギー(Allergy)とは、大部分の人には何等の反応も示さない外部物質に対して、人体の免疫機構が普通より過敏反応を示す時誘発される症状の総称である。アレルギー反応過程の中で発生する臨床症状等は、反応初期の特異的免疫反応と反応後期の炎症反応等がある。反応初期の特異的免疫反応は殆どが肥満細胞(mast cell)を媒介として起こり、肥満細胞の細胞膜に存在する高親化性のイムノグロブリンE(IgE)が受容体(FcεRI)を介して活性化する。
【0004】
前記肥満細胞は皮膚、呼吸器、胃腸管粘膜、脳、リンパ管周囲、及び血管周囲等全身の臓器に広く分布する。前記肥満細胞は細胞膜に存在するIgE受容体に結合されているIgE抗体が外部より流入された、抗原又はアラゲンにより架橋(bridge)を形成すれば活性化され、肥満細胞を脱顆粒させることにより、肥満細胞内顆粒に貯蔵されていたヒスタミン、ヘパリン及び蛋白質分解酵素等の化学物質等を遊離させる。この中でヒスタミンは最も速く遊離され、末梢血管拡張作用、気管支平滑筋収縮作用、腺細胞の分泌促進作用等を示すことにより直ちにアレルギー反応及び炎症反応を起こす。
【0005】
肥満細胞の脱顆粒現象を活性化させる因子等としては抗原、compound 48/80 (Panton, British Journal of Pharmacology, 1951)、IgE 抗体、IgE 受容体に対する抗体、IgEダイマ(dimmer)、Con A、抗生剤ポリミキシンB(topical antibiotics polymyxin B)、ポリライシンポリペプチド(polylysine polypeptides)、アルファ-キモトリプシン(alpha-chymotrypsin)、豚の膵臓ホスホリパーゼ A2(porcine pancreatic phospholipase A2)等の酵素等の刺戟及びカルシウムイオン連関刺戟分泌(Ca2+ coupled stimulation secretion)機構による刺戟(Ischizaka T et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 77, 1903, 1980)、環状ヌクレオチド水準(cyclic nucleotide level)変化、蛋白質キナーゼ(protein kinase)の活性化に伴うリン酸化(phosphorylation)増加(Dagmar B et al., Cancer Research, 35, 2056, 1975)、肥満細胞の細胞骨格であるアクチン繊維(actin filament)、中間繊維(intermediate filament)及び微細小管の変形(Lagunoff D and Chi EY, J. Cell Biol. 71, 182, 1976)等が知られている。
【0006】
一方、前記肥満細胞より遊離された化学的媒介物質等は種々のアレルギー疾患、たとえば、喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性中耳炎、アナフィラクチックショック(anaphylatic shock)、アレルギー性皮膚疾患等を誘発する。この中でアレルギー性皮膚疾患はありふれた皮膚疾患であり、慢性的な経過と掻痒感の為、患者らの情緒的発達、熟睡、日常生活等に支障をもたらして甚だしい精神的、肉体的苦痛を招くこともある。前記アレルギー性皮膚疾患としてはアトピ性皮膚炎、接触性皮膚炎、蕁麻疹及び乾癬等が代表的である。アトピ性皮膚炎は、その病因について未だ正確には知られておらず、生後2〜6ヵ月の乳児に発生する慢性湿疹である。アトピ性皮膚炎に対する治療はアレルギーを起こす物質を究明し、その原因物質を生活より除去することが最も重要である。症状が甚だしい場合は全身的薬物として抗ヒスタミン製剤を投与するか又は局所的に副腎皮質ホルモンを外用するようにしている。湿疹の一種である接触性皮膚炎は、外部物質が皮膚に接触して起こす皮膚の過敏反応である。接触性皮膚炎は接触物質によって日光接触性皮膚炎、水銀接触性皮膚炎又は金属接触性皮膚炎等に区分している。蕁麻疹は炎症により皮膚の上層部に浮腫が発生して皮膚が一時的に腫れ上がる現象であり、掻痒を伴う皮膚過敏反応である。また、蕁麻疹は種々の原因と機構により肥満細胞及び好塩基性細胞(basophil)より種々の化学媒介体等が遊離され、この媒介体等が皮膚の微細血管等に作用して微細血管を拡張し、血管の透過性を増加させ血管から蛋白質が豊富な液体が真皮組織に滲み出て発生するものと知られている。乾癬(psoriasis)は銀白色の鱗屑で覆われており、境界が鮮明で大きさが多様な紅斑性丘疹及び斑(plaque)を形成し、組織学的に上皮の増殖を特徴とする慢性炎症性皮膚疾患である。また、乾癬は好転と悪化とを繰返す原因未詳の疾患である。症状の軽重度により多様な治療方法が開発され用いられているものの、根本的な治療は難しい疾患である。
【0007】
現在、アレルギー疾患の治療には抗ヒスタミン剤や、ステロイド剤等が多く用いられている。しかしながら、このような薬物はその効果が一時的な場合が殆どで副作用が甚だしい場合も多い。従って、アレルギー疾患の予防及び治療効果を有しながら、副作用が少なく効果が持続的な新な治療剤の開発が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここに本発明者等はアレルギー疾患を効果的に予防又は治療が可能な組成物を開発中、生薬材抽出物の中で抗アレルギー活性が優れた素材を選別して、前記生薬材の混合抽出物がアレルギー疾患を予防又は治療する効果があることを確認することにより本発明を完成した。
【0009】
本発明の目的は、魚腥草と徳利苺の実を水又は有機溶媒で抽出して肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離抑制活性のある生薬材抽出物を提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、薬剤として用いる為の前記生薬材抽出物の用途、及びアレルギー疾患の治療剤又は肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離抑制剤製造の為の前記生薬材抽出物の用途を提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、前記生薬材抽出物を有効成分として含むアレルギー疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供することである。
【0010】
さらに、本発明の他の目的は、前記生薬材抽出物を有効成分として含むアレルギー疾患の予防又は改善用食品組成物を提供することである。
さらに、本発明の他の目的は、前記生薬材抽出物の有効量を必要な個体に投与することを含むアレルギー疾患の予防又は治療方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、前記生薬材抽出物の有効量を必要な個体に投与することを含む肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離を抑制する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記のような目的を達成する為に、本発明は魚腥草と徳利苺の実を水又は有機溶媒で抽出して肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離抑制活性のある生薬材抽出物を提供する。
本発明の他の目的を達成する為に、本発明は薬剤として用いる為の前記生薬材抽出物の用途、及びアレルギー疾患の治療剤又は肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離抑制剤製造の為の前記生薬材抽出物の用途を提供する。
本発明のさらに他の目的を達成する為に、本発明は前記生薬材抽出物を有効成分として含むアレルギー疾患の予防又は治療用薬学的組成物を提供する。
【0012】
本発明のさらに他の目的を達成する為に、本発明は前記生薬材抽出物を有効成分として含むアレルギー疾患の予防又は改善用食品組成物を提供する。
本発明のさらに他の目的を達成する為に、本発明は前記生薬材抽出物の有効量を必要な個体に投与することを含むアレルギー疾患の予防又は治療方法を提供する。
本発明のさらに他の目的を達成する為に、本発明は前記生薬材抽出物の有効量を必要な個体に投与することを含む肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離を抑制する方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明において“アレルギー疾患”とは、人体の或る物質に対する過敏症、つまり、外部より入ってきた物質に対する身体免疫系の過度な反応を起こして誘発される疾患を言う。好ましくは、外部から入ってきた物質によりヒスタミンのような媒介物質が遊離され、疾病が誘発される過敏症を言う。前記アレルギー疾患の例としてはアレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性中耳炎、アナフィラクチックショック(anaphylactic shock)及びアレルギー性皮膚疾患等が含まれる。特に、前記アレルギー性皮膚疾患としては、アトピ性皮膚炎、乾癬、接触性アレルギー性皮膚炎及び蕁麻疹等が含まれる。
【0014】
本発明者等はアレルギー疾患を予防又は治療できる組成物を開発する為に、桑の葉、牛蒡の種、五味子、枸杞、桂皮、山茱萸、山査、幼根皮、黒胡麻、魚腥草及び徳利苺の実の抽出物からなる11種の生薬材抽出物に対して抗アレルギー活性を分析した。抗アレルギー活性は肥満細胞の強力な脱顆粒誘導物質として知られたcompound 48/80を白鼠の腹腔肥満細胞に処理した後、前記生薬材抽出物がcompound 48/80による肥満細胞の脱顆粒を抑制するか否かを測定した。試験の結果、魚腥草、徳利苺の実、山茱萸、山査及び桑の葉抽出物の5種の生薬材抽出物がcompound 48/80による白鼠の腹腔肥満細胞の脱顆粒を抑制する活性のあることが分かった(試験例1参照)。
【0015】
さらに、本発明者等は前記にて抗アレルギー活性を有しているものと選別された魚腥草抽出物、徳利苺の実抽出物、山茱萸抽出物、山査抽出物及び桑の葉抽出物が細胞毒性があるか否かを調査した。その結果、前記生薬材抽出物は全て細胞毒性を示さないことから生体に安全に使用できることが確認できた(試験例2参照)。
【0016】
さらには、本発明者等は前記5種の生薬材抽出物の中で抗アレルギー活性が最も優れた魚腥草と徳利苺の実を選択してこれらの混合抽出物を製造し、前記混合抽出物の抗アレルギー活性を分析した。
本発明の一試験例で前記魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物を白鼠の腹腔肥満細胞に前処理した後、compound 48/80を処理した結果、前記混合抽出物には、肥満細胞からヒスタミンの遊離を抑制する効果があることが確認できた。さらに、前記混合物のヒスタミン遊離抑制効果は魚腥草抽出物又は徳利苺の実抽出物を単独で使用する場合に比べて著しく優れたものとして示された(試験例3参照)。このような効果から、前記混合抽出物は、肥満細胞において、細胞内サイクリックAMP水準を増加させ、細胞内にカルシウムの流入を減少させ、肥満細胞の脱顆粒とヒスタミン遊離を抑制するものと思われる。
【0017】
さらに、本発明の他の試験例では魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物をアナフィラクチックショックマウスモデルに前処理した結果、アナフィラクチックショックによるマウスの斃死を抑制して、マウスが100%生存する極めて優れた効果のあることが確認できた。さらに、魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物はアナフィラクチックショックマウスモデルの腸間膜肥満細胞の脱顆粒を効果的に抑制することが示された(試験例4参照)。
さらに、本発明の他の試験例では魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物を皮膚反応誘発白鼠モデルに前処理した結果、compound 48/80による白鼠の皮膚反応を減少させ、血管透過性の増加を効果的に抑制することが確認できた(試験例5参照)。
さらに、本発明者等は前記魚腥草抽出物と徳利苺の実の抽出物以外に抗アレルギー活性があるものとして選別された山茱萸、山査及び桑の葉を追加して混合した混合抽出物の抗アレルギー活性を調査した。その結果、前記混合物が白鼠の腹腔肥満細胞においてcompound 48/80によるヒスタミンの遊離を抑制する活性のあることを確認した(試験例6参照)。
【0018】
さらには、本発明の一試験例では前記魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物を含むカプセル製剤又は魚腥草、徳利苺の実、山茱萸、山査及び桑の葉の混合抽出物を含むカプセル製剤をアトピ性皮膚炎に罹病している患者に投与した後、その患者の血清内のIgE及びヒスタミンの濃度を測定し、病変を臨床的に観察した。その結果、本発明の製剤が従来用いられているステロイド剤及び抗ヒスタミン剤と同一な治療効果のあることが確認できた(試験例7参照)。
【0019】
従って、本発明の魚腥草と徳利苺の実の抽出物は肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離を効果的に抑制する活性があり、アナフィラクチックショックによる斃死を抑制し、compound 48/80による皮膚反応を減少させ、血管透過性の増加を効果的に抑制する活性のあることを特徴とする。
従って、本発明のアレルギー疾患の予防又は治療用薬学的組成物は前記魚腥草と徳利苺の実の抽出物を有効成分として含むことを特徴とする。
【0020】
さらには、本発明のアレルギー疾患の予防又は治療用薬学的組成物は前記魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物の他に山茱萸、山査及び桑の葉の混合抽出物からなるグループの中で選ばれたいずれか一つ以上を追加して含むことを特徴とする。
好ましくは、本発明の薬学的組成物は前記魚腥草と徳利苺の実を1:4〜4:1の重量比で混合した抽出物を含むことを特徴とする。より好ましくは、前記本発明の薬学的組成物は魚腥草と徳利苺の実を1:1の重量比で混合した抽出物を含むことができる。さらに、前記山茱萸抽出物、山査抽出物、桑の葉抽出物又はこれらの混合抽出物を本発明の組成物に追加して含む場合に本発明の組成物総重量に対して1乃至20重量%、好ましくは 5乃至10重量%含むことができる。
【0021】
前記魚腥草(Houttuynia Cordata)は、ドクダミ科に属する多年生草本であり、亜細亜東南部に多く分布する多年生の薬草である。魚腥草は解熱、出来物、脱肛を治療する効果があり、毒を消し重金属を解毒する作用のあることが知られている。
前記徳利苺の実(Rubus coreanus Miq.)は、バラ科に属する落葉活葉性灌木として、中国が原産地であり、韓国の済州島及び南部地方、中部地方と日本、米国、ヨーロッパ等に分布している。漢方では徳利苺の実の未成熟果実が用いられる。徳利苺の実の薬理効果としては、疲労による肝臓の損傷を保護することで、視力の低下を防止するばかりでなく、利尿剤の効能があって、スタミナ不足による遺精、精液不足、勃起不全、及び性機能を改善し、体内を暖め、スタミナを増強し、発毛を促進すると共に白髪を防ぐことが知られている。
【0022】
前記山茱萸(Cornus officinalis Sieb. Et Zucc)は、水木科に属する落葉喬木である山茱萸の実である。それは、腎臓系統、糖尿病、高血圧、関節炎及び婦人病等の各種成人病に効果があり、滋養作用、収斂作用、抗菌作用及び抗真菌作用がある。山茱萸にはモロニサイド、ロガニン、ソルサイド、コルニン、ガーリック酸、酒石酸及びリンゴ酸等が含まれている。
前記山査(Crataegi Fructus)は、バラ科に属する植物の果実を言い、アミグダリン、ウルソル酸、グロロゲン酸、レモン酸、ブドウ酒酸、フラボノイド及びビタミンC等が含まれている。山査の薬理作用としては心臓、血管等の緊張度を抑え、強心作用がある。また、血液循環を改善する効果があり、消化を促進し、コレステロール含量を抑える効能がある。
前記桑の葉は、マルベリーの木の葉であり、補血強壮の効果があることが知られている(神農本草經)。また、糖尿、神経痛、高血圧に効果があり、中風を緩和し、熱を低下させ、耳鳴、頭痛に効果があるものとしても知られている(中薬大辞典)。最近日本の研究によれば、桑の葉には血糖値の上昇を抑え、糖尿を予防する効果のあることが明らかになった。
【0023】
本発明において魚腥草、徳利苺の実、山茱萸、山査及び桑の葉は自然界で採集するか又は商業的に購入して用いられる。さらに、本発明の組成物は、前記の生薬材を混合した後、一緒にして抽出するか、又は前記生薬材をそれぞれその薬効成分の物理化学的性質により抽出した後、それぞれの抽出物を混合した混合物を含むことができる。前記本発明の生薬材抽出物は当業界に公知された溶媒抽出法により製造することができる。例えば、水、エタノール及びメタノールのようなアルコール、アセトン、エチルアセテート、n-核酸、ジエチルエーテル、ベンゼンのような有機溶媒の中で選ばれたいずれか一つ又はこれらの混合溶媒を利用して抽出できる。前記溶媒抽出法により抽出物を製造する場合には、熱水抽出、超音波抽出及び還流抽出方法を利用できる。本発明の一実施例では前記生薬材に浄製水を投与して一定時間加熱抽出後濾過することにより、熱水抽出物を製造した(実施例1参照)。本発明の他の実施例では前記生薬材に70%メタノールを投与して一定時間抽出した後、濾過することによりメタノール抽出物を製造した(実施例2参照)。前記熱水抽出物及びメタノール抽出物のcompound 48/80による白鼠の腹腔肥満細胞の脱顆粒抑制程度を調べた結果、大差のないことと示された(試験例1参照)。
【0024】
一方、アレルギー疾患の予防及び治療効果を有する本発明の薬学的組成物は、前記生薬材抽出物を単独で含めるか又は一つ以上の薬学的に許容された担体、賦形剤又は希釈剤を追加して一般的な方法で製形化できる。前記にて“薬学的に許容される”とは、生理学的に許容され、人間に投与される時、胃腸障害、目眩のようなアレルギー反応又はこれと類似した反応を起こさない組成物を言う。さらに、前記のように製形化された本発明の薬学的組成物は、適切な投与経路を通じてアレルギー疾患の予防又は治療の為の目的で投与することができる。適切な投与経路には経口、点眼、経皮、皮下、静脈又は筋肉を含む多様な経路が含まれる。
【0025】
本発明の薬学的組成物は、選ばれた投与経路により、経口投与用又は非経口投与用製剤に製形化することができる。経口投与用製剤の場合に本発明の薬学的組成物は粉末、顆粒、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリ剤、懸濁液等として、当業界に公知された方法を利用して製形化できる。例えば、経口用製剤は活性成分を固体賦形剤と配合し、これを粉砕して適切な補助剤を添加して顆粒混合物として加工することにより、錠剤又は糖衣錠剤を収得できる。適切な賦形剤の例としてはラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マニトール、キシリートル、エリスリトール及びマルチトール等を含む糖類とトウモロコシ澱粉、小麦澱粉、米澱粉及び馬鈴薯澱粉等を含む澱粉類、セルロース、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピールメチル-セルロース等を含むセルロース類、ゼラチン、ポリビニルピロリドン等のような充填剤が含まれる。必要であれば、架橋結合ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸又はナトリウムアルギネート等を崩解剤として添加できる。さらには、本発明の薬学的組成物は、抗凝集剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤及び/又は防腐剤等を追加して含められる。非経口投与用製剤の場合には、本発明の薬学的組成物は、注射剤、クリーム剤、ローション剤、外用軟膏剤、オイル剤、保湿剤及び鼻腔吸込み剤の形態で当業界に公知された方法を利用して製形化できる。例えば、注射剤の場合、本発明の生薬材抽出物をヘンクス溶液、リンゲル溶液又は生理学的塩水緩衝液のような生理学的に適切な緩衝液に溶解させることにより製形化できる。
【0026】
本発明で“有効量”とは、患者に投与した時、予防又は治療効果を表す薬学的組成物の量を言う。本発明による薬学的組成物の有効量は、好ましくは魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物の量を基準にして約1mg/体重 kg/day〜100mg/体重 kg/dayであり、より好ましくは約10mg/体重 kg/day〜30mg/体重 kg/dayである。しかしながら、本発明の薬学的組成物の投与量は、投与経路、患者の年齢、性別、体重及び患者の重症度等の種々の要因にもとづき適切に選ばれる。
【0027】
さらに、前記薬学的組成物は、好ましい有効量範囲内で1回又は数回に分割投与できる。しかしながら、本発明による抽出物の投与量は投与経路、投与対象、患者の年齢、性別、体重、及び疾病状態により適宜選ぶことができる。本発明の抽出物を含む組成物は、本発明の効果を見せる限りその剤型、投与経路及び投与方法に特に制限はされない。
【0028】
本発明において、“個体”とは、哺乳動物、特に人間を含む動物を意味する。前記個体は、治療が必要な患者の場合もあり得る。
本発明の薬学的組成物は、アレルギー疾患の予防又は治療する効果を有する免疫調節剤又は抗ヒスタミン剤のような公知の化合物、又は桑白皮抽出物等のような生薬材抽出物と併行して投与することができる。
【0029】
さらに、前記魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物はアレルギー疾患の予防又は改善の目的で食品組成物の形態で提供することもできる。さらに、前記食品組成物は、山茱萸、山査及び桑の葉抽出物からなるグループの中で選ばれたいずれか一つ以上を追加して含み得る。さらに、前記食品組成物は、既にアレルギー疾患を予防又は改善するものとして知られた桑白皮抽出物のような生薬材抽出物を追加して含み得る。本発明で食品組成物には機能性食品(functional food)、栄養補助剤(nutritional supplement)、健康食品(health food)及び食品添加剤(food additives)等の全ての形態を含む。前記類型の食品組成物は、当業界で公知の一般的な方法により多様な形態で製造することができる。
【0030】
例えば、健康食品としては、本発明の生薬材抽出物そのものを、お茶、ジュース、若しくはドリンクの形態で製造して飲用に供するか、顆粒化、カプセル化、又は粉末化して摂取することができる。
さらに、機能性食品は、飲料(アルコール性飲料を含む)、果実及びその加工食品(例:果実缶詰、瓶詰、ジャム、ママレード等)、魚類、肉類及びその加工食品(例:ハム、ソセージ、コーンビーフ等)、パン類及び麺類(例:うどん、そば、ラーメン、スパゲッティー、マカロニー等)、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品(例:バター、チーズ等)、食用植物油脂、マーガリン、植物性蛋白質、レトルト食品、冷凍食品、各種調味料(例:味噌、醤油、ソース等)等に本発明の生薬材抽出物を添加して製造することができる。
【0031】
さらに、本発明の生薬材抽出物を食品添加剤の形態で使用する為には粉末又は濃縮液状に製造して用いることができる。
本発明の食品組成物の中で本発明の生薬材抽出物の好ましい含有量としては組成物総重量を基準に1〜90重量%である。より好ましくは、組成物総重量を基準に10〜50重量%を含むことができる。さらに、本発明の食品組成物に有効成分として含まれる生薬材抽出物は魚腥草と徳利苺の実が1:4〜4:1の重量比で混合されたものが好ましい。
【0032】
さらには、本発明の魚腥草と徳利苺の実の抽出物の治療学的用途を提供する。具体的には、本発明は、前記有効量の魚腥草と徳利苺の実の抽出物を必要な個体に投与することを含むアレルギー疾患の予防又は治療方法を提供する。さらに、本発明は前記有効量の魚腥草と徳利苺の実の抽出物を必要な個体に投与することを含む肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離を抑制する方法を提供する。
【0033】
本発明は薬剤として使用する為の前記生薬材抽出物の用途、及びアレルギー疾患の治療剤又は肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離抑制剤の製造の為の前記生薬材抽出物の用途を提供する。
前記アレルギー疾患の治療剤又は肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離抑制剤は魚腥草と徳利苺の実の抽出物に薬学的に許容される担体を追加して含み得る。薬学的に許容される担体の例は前記の通りである。さらに、本発明に伴うアレルギー疾患の治療剤は経口又は非経口投与されることができ、経口投与又は非経口投与の例は前記の通りである。
【実施例】
【0034】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
ただし、下記実施例は本発明を例示するものとして、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。さらに、下記実施例において固体と固体混合物、液体と液体、及び液体と固体に対する下記百分率はそれぞれ重量/重量、体積/体積及び重量/体積に基づくものであり、特別な言及がない限り全ての反応は室温で行った。
【0035】
<実施例1> 生薬材の熱水抽出物製造
抗アレルギー活性を有する生薬材抽出物を選別する為に、桑の葉、牛蒡の種、五味子、枸杞、桂皮、山茱萸、山査、幼根皮、黒胡麻、魚腥草及び徳利苺の実の熱水抽出物をそれぞれ製造した。前記生薬材は、全て乾燥された形態のものを韓国内の農協で購入して上述の製造で使用した。
まず、前記生薬材を綺麗に洗浄して一定の大きさ(1×1×1cm以下)に切断した後、 前記各々の生薬材300gに精製水3lを入れ、100℃で4時間加圧抽出した。抽出完了後100meshの濾過膜を利用して各抽出物を濾過して濾過液を収得し、これを回転濃縮器(rotary vacuum evaporator; EYELA, Tokyo Rikakikai Co. Ltd.)を用いて25brixに濃縮した。前記濃縮物を真空乾燥した後、80meshに粉砕した。前記乾燥粉末を生理食塩水(saline)に多様な濃度に希釈して試験に供した。
【0036】
<実施例2> 生薬材のメタノール抽出物製造
桑の葉、牛蒡の種、五味子、枸杞、桂皮、山茱萸、山査、幼根皮、黒胡麻、魚腥草及び徳利苺の実を綺麗に洗浄して一定の大きさ(1×1×1cm以下)に切断した後、各々の生薬材500gに70%メタノール5lを投与し、50℃で72時間抽出した。抽出完了後に前記実施例1と同様な方法で濾過及び真空乾燥してメタノール抽出物を収得した。
【0037】
<試験例1> 抗アレルギー活性を有する生薬材抽出物の選別
前記実施例1及び実施例2で製造した桑の葉、牛蒡の種、五味子、枸杞、桂皮、山茱萸、山査、幼根皮、黒胡麻、魚腥草及び徳利苺の実の熱水抽出物及びメタノール抽出物の抗アレルギー活性を調査した。
この為に、白鼠の腹腔より肥満細胞を収穫した。この肥満細胞を前記生薬材抽出物及びヒスタミン遊離誘導物質であるcompound 48/80で処理した後、肥満細胞の形態を観察し、肥満細胞から遊離されるヒスタミン量を測定した。
【0038】
1-1) 白鼠の腹腔より肥満細胞の収穫
当業界における公知の方法を修正及び補完し、下記のような方法で肥満細胞を収穫した(Cochrane DE and Douglas WW, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 71, 408, 1974)。体重250〜300g内外の健康で成熟したSD系(Sprague-Dawley)雄白鼠をエーテルで麻酔させ、後頭部を強打して致死させた。そして、約10mlのHEPES-Tyrode緩衝液を白鼠の腹腔 内に注入して、90秒間腹壁を軽くマッサージした。腹壁中央線を切開し、腹腔洗浄液をスポイドで採集し、200×gで10分間遠心分離後に浸漬し、上層浮遊液を取除き、同一のHEPES-Tyrode緩衝液で肥満細胞数が1×106cell/mlになるように、残留物を再浮遊させた。肥満細胞の形態観察はこの肥満細胞浮遊液を用いた。腹腔肥満細胞浮遊液から肥満細胞の純粋分離は公知の方法を利用して下記の通り分離した(Hachisuka et al., Arch. Dermatol. Res., 280:358, 1988)。l5ml遠心分離用試験管にイソトニックパコール溶液(isotonic percoll, 10×Hank′s溶液1ml+パコール9ml) 3.5mlを添加後、再浮遊された肥満細胞浮遊液0.75mlをイソトニックパコール溶液に用心深く載せ、HEPES-Tyrode緩衝液0.5mlを試験管の上層に満たした。その後、試験管の内容物を10分間程静置し、125×gで15分間遠心分離後浸漬した。遠心分離浸漬後、上層液2mlをピペットで除去し、4℃のHEPES-Tyrode緩衝液で2回洗浄して純粋肥満細胞浮遊液を製造した。トリパン青(Trypan blue)とキムラ染色(Kimura stain)溶液を利用して肥満細胞の生存率と純粋度を確認し、生存率と純粋度が90%以上の場合にのみ試験に用いた。
【0039】
1-2) 生薬材抽出物の処理に伴う白鼠の腹腔内肥満細胞の形態観察
前記試験例1-1)より収得した腹腔肥満細胞浮遊液200μlにHEPES-Tyrode緩衝液25μlと共に前記実施例1及び実施例2の桑の葉、牛蒡の種、五味子、枸杞、桂皮、山 茱萸、山査、幼根皮、黒胡麻、魚腥草及び徳利苺の実の熱水抽出物又はメタノール抽出物25μlをそれぞれ処理して、37℃の恒温槽で30分間反応させた。さらに、前記生薬材抽出物がcompound 48/80による肥満細胞の脱顆粒を抑制する活性があるか否かを確認する為に、前記各生薬材の熱水抽出物又はメタノール抽出物25μlを肥満細胞浮遊液に添加して37℃の恒温槽で10分間反応させ、compound 48/80 25μlを添加後に37℃の恒温槽で20分間反応させた。
前記試験群との比較の為、陽性対照群として前記肥満細胞浮遊液200μlにHEPES- Tyrode緩衝液25μlとヒスタミン遊離誘導物質であるcompound 48/80(5μg/ml)25μlを処理し、37℃の恒温槽で30分間反応させ、陰性対照群として、何の処理も施していない前記肥満細胞浮遊液を用いた。
【0040】
前記反応が完了した後、肥満細胞培養液200μlを倒立顕微鏡載物台の上に置かれた スライドガラス(slide glass, 22×60mm)の上に落した後、肥満細胞等が沈澱するように室温で10分間静置させた。その後、1,000倍の倍率下で肥満細胞を観察した。
一般的に正常肥満細胞の形態は大部分が円形又は卵円形で細胞輪郭がはっきりしていて、細胞質内には多くの顆粒等が満たされている。肥満細胞の直径は10〜20μm程度であり、他の細胞(リンパ球又は好中性白血球)に比べて2倍以上大きい。従って、肥満細胞の形態が円形又は卵円形で細胞輪郭がはっきりしていて、細胞質内に光屈折率が高い顆粒等で満たされた状態を正常型肥満細胞に区分した。反面、細胞の輪郭が不分明で、細胞質内の顆粒等が細胞表面に突出したり、細胞周囲に散らばっている場合を脱顆粒型に区分した。
【0041】
試験の結果、何の処理も施していない陰性対照群の場合には、肥満細胞の大きさが浮遊液内のリンパ球の2倍程度であり、球形又は卵円形であることが確認できた。さらに、前記肥満細胞の細胞膜がはっきりしていて、細胞質には光屈折率が強力な顆粒等で満たされていて、核がはっきりと観察されない正常肥満細胞の所見を見せてくれた(図1のA)。
【0042】
Compound 48/80溶液を処理した陽性対照群の場合には、数分内に細胞質内顆粒等の光屈折率が弱まり、細胞が漸次膨大して細胞膜が不規則になると共に、光屈折率が弱化された顆粒等が細胞表面に突出される脱顆粒現象を観察することができた(図1のB)。
各生薬材の熱水抽出物のみで処理した肥満細胞培養液の場合には、肥満細胞の形態、大きさ、表面輪郭等が正常肥満細胞と変わった所見を示さず、熱水抽出物の添加後30分間異なった変化は観察できなかった(図1のC)。
【0043】
一方、肥満細胞培養液に魚腥草、徳利苺の実、山査、山茱萸及び桑の葉の熱水抽出物を処理した後、compound 48/80溶液を添加した場合には、肥満細胞の脱顆粒が抑制され、形態、大きさ、表面輪郭等は、正常細胞と同様なものであった(図1のD)。さらに、前記魚腥草、徳利苺の実、山査、山茱萸及び桑の葉のメタノール抽出物を処理した場合にも、肥満細胞の脱顆粒が抑制されることが確認できた(図示せず)。一方、牛蒡の種、五味子、枸杞、桂皮、幼根皮、黒胡麻の熱水抽出物を処理してcompound 48/80溶液を添加した場合には、肥満細胞の脱顆粒が抑制されなかった(表1参照)。
【0044】
前記試験結果から魚腥草、徳利苺の実、山査、山茱萸及び桑の葉の熱水抽出物又はメタノール抽出物は肥満細胞の形態に影響を及ぼさないものの、compound 48/80による肥満細胞の脱顆粒を抑制し、肥満細胞の形態を正常肥満細胞の形態に維持させることが分かった。
【0045】
【表1】

【0046】
<試験例2> 魚腥草抽出物、徳利苺の実抽出物、山茱萸抽出物、山査抽出物及び桑の葉抽出物の細胞毒性
前記試験例1-2)で抗アレルギー活性があるものとして選ばれた魚腥草抽出物、徳利苺の実抽出物、山茱萸抽出物、山査抽出物及び桑の葉抽出物の細胞の毒性を調査した。
前記試験例1-1)で収得した肥満細胞及び他の細胞等が含まれている白鼠の腹腔浮遊液225μl(細胞数;7×105cells/0.225ml)にそれぞれの濃度が 100mg/mlの魚腥草、徳利苺の実、山茱萸、山査、桑の葉抽出物を各々25μlずつ添加した後、その肥満細胞浮遊液を37℃で2時間反応させ、細胞生存率(viability)を調査した。対照群は抽出物の代わりに緩衝溶液を処理した。前記反応液を遠心分離器を利用して4℃で400×gで遠心分離沈澱させ、上層液を除去して残った細胞等にMTT(1mg/ml, 3-(4,5-dimethyl thiaazol-2-yl)-2,5-diphenyl-tetrazolium bromide, Sigma-Aldrich)を50μl添加して37℃で1時間反応させた。反応後DMSO(Dimethyl Sulfoxide, C2H6SO, Sigma-Aldrich)100μlを添加した後、分光測光器(spectrophotometer)を用いて570nmで混合物の光学密度(optical density;O.D.)を測定し、以下のように細胞生存率を算出した。
【0047】
細胞生存率(Viability;%)=(抽出物試験群の光学密度/対照群の光学密度)×100
【0048】
試験の結果、魚腥草抽出物、徳利苺の実抽出物、山茱萸抽出物、山査抽出物及び桑の葉抽出物は細胞の毒性を全く示さなかった(図2参照)。
【0049】
<実施例3> 魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物の製造
前記試験例1で選ばれた魚腥草及び徳利苺の実を1:1の重量比で混合し、混合抽出物を下記の通り製造した。乾燥された魚腥草と徳利苺の実を綺麗に洗浄して一定の大きさ(1×1×1cm以下)に切断した後、それぞれ150gずつ混合した。混合した生薬材300gに精製水3lを入れて、100℃で4時間加圧抽出した。
【0050】
<試験例3> 魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物の白鼠の腹腔肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制効果の調査
前記実施例3で製造した魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物がcompound 48/80 により、腹腔肥満細胞より遊離されるヒスタミンを抑制する効果があるか否かを調査するため、以下の試験を行った。ヒスタミン抑制効果は、前記試験例1-1)で収得した白鼠の腹腔肥満細胞を用いて測定した。まず、正常肥満細胞から遊離されるヒスタミンの量を測定するために、前記腹腔肥満細胞200μlに生理食塩水50μlを処理した。さらに、compound 48/80により遊離されるヒスタミン量を測定する為に、前記腹腔肥満細胞に生理食塩水25μlを添加し、10分経過後、compound 48/80溶液 (5μg/ml)25μlを添加した。前記魚腥草抽出物、徳利苺の実抽出物及び魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物自体が肥満細胞からヒスタミンを遊離させるか否かを調査する為に、肥満細胞に各々1mg/ml濃度の前記抽出物を25μlずつ添加し、10分経過後、生理食塩水25μlを添加した(最終処理濃度0.1mg/mlになるようにする)。さらに、前記生薬材抽出物がcompound 48/80による肥満細胞からヒスタミンの遊離を抑制するか否かを調査する為に、前記生薬材抽出物を前記と同様な方法でそれぞれ肥満細胞に処理し、10分経過後にcompound 48/80溶液(5μg/ml)25μlを添加した。
【0051】
前記反応が完了した後に、その反応液を遠心分離器で4℃で400×gで遠心分離沈澱させ、上層液を収得後に公知の方法(Harvima et al., Clinica Chimica Acta. 171:247, 1988)を修正した方法により肥満細胞から遊離されたヒスタミンの量を測定した。すなわち、前記収得した上層液10μlとS−アデノシル (メチル-14C) メチオニン(S-adenosyl (methyl-14C) methionine, 2μCi/ml)1.5μl, 300mM トリス-グリシン緩衝液(Tris-glycin buffer, pH 8.3) 40μl、ヒスタミンN-メチルトランスフェラーゼ(histamine N-methyl transferase)5μlを37℃恒温槽で90分間反応させた後、3N過塩素酸 (perchloric acid) 20μlを添加して反応を中止させた。前記過塩素酸を中和させる為、ION NaOH20μlを添加し、トルエンーイソアミルアルコール(tolune-isoamyl alcohol)1mlを添加して、その混合物の抽出を行うことにより、上層液700μlを収得した。前記上層液にカクテル溶液(Cocktail solution; ULTIMA GOLDTM, Packard Bioscience Company, USA) 3mlを添加した。次に、β-カウンター(β-counter, Liquid scintillation Analyzer, Acanberra company, Australia)を用いてcpm(count per minute)値を測定した後、ヒスタミン標準曲線に準じてヒスタミン量を算出した。ヒスタミン量は、ヒスタミン総量に対する百分率で表示した。ヒスタミン総量は、前記腹腔肥満細胞 200μlに生理食塩水50μlを処理した肥満細胞浮遊液250μlを100℃で10分間加熱後、遠心分離沈澱させた後、上層液から測定されたヒスタミン量を100とすることで決定された。ヒスタミン遊離率は下記の式により計算した。
【0052】
ヒスタミン遊離率(histamine release %)=(試験群ヒスタミン遊離量/総ヒスタミン遊離量)×100
【0053】
前記のように算出したヒスタミンの量から、生薬材抽出物を処理して得られた肥満細胞から遊離したヒスタミンの遊離抑制率を下記式により算出した。
【0054】
ヒスタミンの遊離抑制率(inhibition of histamine release %)=[1-(生薬材抽出物とcompound 48/80の混合処理によるヒスタミン遊離量-生薬材抽出物処理によるヒスタミン遊離量)/(compound 48/80処理によるヒスタミン遊離量-生理食塩水処理によるヒスタミン遊離量)]×100
【0055】
試験の結果、純粋な肥満細胞浮遊液に生理食塩水のみを添加した場合のヒスタミン遊離率は、2.7%であった。前記肥満細胞に魚腥草抽出物、徳利苺の実の抽出物、魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物のみを処理した場合のヒスタミン遊離率は、生理食塩水のみを処理した場合と類似していた。一方、肥満細胞にcompound 48/80のみを処理した場合のヒスタミン遊離率は60.2%で極めて高かった。さらに、前記生薬材熱水抽出物を処理した後、compound 48/80を処理した場合には、compound 48/80による肥満細胞からヒスタミンの遊離程度が抑制されることが確認できた。
【0056】
すなわち、肥満細胞に魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物を処理した後、compound 48/80を処理した場合のヒスタミン遊離率は、9.4±1.6%であり、ヒスタミン遊離抑制率は、88%であった。一方、肥満細胞に魚腥草抽出物を単独で処理した後、compound 48/80を処理した場合のヒスタミン遊離率は、41.0±2.1%であり、ヒスタミン遊離抑制率は、33%であった。肥満細胞に徳利苺の実の抽出物を単独で処理した後、compound 48/80を処理した場合のヒスタミン遊離率は、37.4±3.2%であり、ヒスタミン遊離抑制率は、39%であった(表2参照)。
【0057】
前記試験結果から、魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物が、魚腥草抽出物又は徳利苺の実の抽出物を単独で処理した場合に比べてcompound 48/80による肥満細胞のヒスタミン遊離を抑制する効果が優れているという事実が確認できた。
【0058】
【表2】

【0059】
<試験例4> アナフィルラクチックショックマウスモデルを利用した魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物の抗アレルギー活性調査
本発明の魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物の抗アレルギー活性を過敏性ショックマウスモデルを利用して調査した。アナフィラクチックショックマウスモデルは、ICR系マウスにcompound 48/80を腹腔内に投与してアナフィラクチックショックを誘発させることにより得られたものである。本試験例では前記アナフィラクチックショックモデルにおいて、本発明の魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物の処理がマウスの斃死率及びマウスの腸間肥満細胞の脱顆粒現象に及ぼす影響を調査した。
【0060】
4-1)魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物がアナフィルラクチックショックによるマウスの斃死率に及ぼす影響調査
compound 48/80を利用して、公知の方法で、マウスにアナフィラクチックショックを誘発した(チョンビョンドク等、大韓BRM学会誌、2,169,1992)。体重20-30g程度の健康なICR系マウスを選別した後、compound 48/80の量がマウス体重g当たり15μgになるように腹腔内に1回投与した。対照群としてはcompound 48/80の代わりに生理食塩水を注射した。compound 48/80を投与する前の24時間、12時間及び1時間前にそれぞれ3回に亘り、前記マウスに10mg/ml又は1mg/ml濃度の魚腥草抽出物、徳利苺の実抽出物、魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物を300μlずつ腹腔内に投与した。さらに、前記抽出物を前処理せずに、compound 48/80のみを投与した後、マウスが斃死するまで最小3日間観察した。魚腥草抽出物、徳利苺の実抽出物、魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物及びcompound 48/80によるマウスの斃死率は、アナフィラクチックショックで斃死したマウスを試験に利用された総マウスの数で割って算出した。さらに、compound 48/80を注入後アナフィラクチックショックでマウスが斃死するまでの所要平均時間(分)を測定した。
【0061】
試験の結果、compound 48/80を投与せずに生理食塩水のみを投与した場合のマウスは全て生存した。また、compound 48/80と共に生理食塩水を投与した場合のマウスは全て斃死 (斃死率100%)し、斃死するまでの平均所要時間は17.8分であった。
マウスにcompound 48/80を投与する前に魚腥草抽出物を投与した場合、斃死率は、それぞれ30%(魚腥草抽出物濃度10mg/ml)又は70%(魚腥草抽出物濃度1mg/ml)であって、斃死までの所要時間は、それぞれ平均57.4分(魚腥草抽出物濃度10mg/ml)又は42.3分(魚腥草抽出物濃度1mg/ml)であった。
【0062】
さらに、マウスにcompound 48/80を投与する前に徳利苺の実の抽出物を投与した場合、マウスの斃死率は、それぞれ30%(徳利苺の実の抽出物濃度10mg/ml)又は80%(徳利苺の実の抽出物濃度1mg/ml)であり、斃死までの所要時間は、それぞれ平均53.4分(徳利苺の実の抽出物濃度10mg/ml)又は39.8分(徳利苺の実の抽出物濃度1mg/ml)であった。
【0063】
一方、マウスにcompound 48/80を投与する前に魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物を投与した場合のマウスの斃死率は、0%(全て生存した、混合抽出物の濃度10mg/ml)、10%(混合抽出物の濃度1mg/ml)、その斃死までの所要時間は、65.5分であった(表3参照)。
【0064】
前記試験結果から魚腥草抽出物又は徳利苺の実の抽出物を単独で使用したとしてもcompound 48/80により誘導されるアナフィラクチックショックによるマウスの斃死を抑制できるものの、魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物を使用する場合、マウスの斃死をより効果的に抑制できることが分かった。また、抽出物の処理濃度が高い程、compound 48/80により誘導されるアナフィラクチックショックによるマウスの斃死を抑制する効果がさらに優れていることが分かった。
【0065】
【表3】

【0066】
4-2)魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物がアナフィラクチックショックによるマウスの腸間膜肥満細胞の脱顆粒に及ぼす影響調査
前記試験例4-1)と同様な方法でcompound 48/80のみをマウスの腹腔内に注入するか又は、魚腥草抽出物、徳利苺の実の抽出物又は魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物をそれぞれ3回に亘り前処理した後、compound 48/80を投与した。その15分後に頸椎脱臼法によりマウスを致死させた。
【0067】
致死したマウスの腹壁中央線を小切開して、メタノールを直接腹腔内に注入して20分間固定した後、固定された腸間膜を得てスライドの上に載せた。その後、水で洗浄し、0.1%のトルジン青(toluidine blue, pH 4.0)で1分間染色して水洗した後、脱水して封入し、各個体毎に2個のスライドを作った。400倍の光学顕微鏡下で肥満細胞の脱顆粒現象を観察し、肥満細胞を正常型(normal)と硬度脱顆粒型(moderated degranulation)及び強度脱顆粒型(severe degranulation)に区分し、その数を数えて肥満細胞の脱顆粒指数を算出した。この時、脱顆粒されない肥満細胞を正常型肥満細胞、若干の顆粒等が肥満細胞の周囲にある程度を硬度脱顆粒型、多くの顆粒等が肥満細胞周囲に散在されたものを強度脱顆粒型に区分して、1個の切片当たり肥満細胞の数を任意に10視野ずつ2回数えて平均した。個人的誤差を減らす為に、同一標本に対して二人の観察所見を総合して平均を算出した。脱顆粒指数と脱顆粒の抑制率は下記の公式により算出された。
【0068】
脱顆粒指数(degranulation index, %)=[(正常肥満細胞の数×0)+(硬度脱顆粒型肥満細胞の数×50)+(強度脱顆粒型肥満細胞の数×100)]/肥満細胞の総数
【0069】
脱顆粒抑制率(inhibition of degranulation, %)=[1-(魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物及びcompound 48/80による脱顆粒指数 /compound 48/80による脱顆粒指数)]×100
【0070】
試験の結果、生理食塩水のみを投与した対照群の肥満細胞脱顆粒指数は6.3で、comp ound 48/80のみをマウスに投与した群の肥満細胞脱顆粒指数は92.7であった。
マウスにcompound 48/80を投与する前に魚腥草抽出物を投与した場合の肥満細胞脱顆粒指数は、42.0(魚腥草抽出物の濃度10mg/ml)、82.1(魚腥草抽出物の濃度1mg/ml)であり、この時、肥満細胞脱顆粒抑制率はそれぞれ54.6%(魚腥草抽出物の濃度10mg/ml)、11.4%(魚腥草抽出物の濃度1mg/ml)と示された。
【0071】
マウスにcompound 48/80を投与する前に徳利苺の実の抽出物を投与した場合の肥満細胞脱顆粒指数は、42.7(徳利苺の実の抽出物の濃度10mg/ml)、80.6(徳利苺の実の抽出物の濃度1mg/ml)であり、肥満細胞脱顆粒抑制率はそれぞれ53.9%(徳利苺の実の抽出物の濃度10mg/ml)、13%(徳利苺の実の抽出物の濃度1mg/ml)であった。
さらに、マウスにcompound 48/80を投与する前に魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物を投与した場合の肥満細胞脱顆粒指数は、9.1(混合抽出物の濃度10mg/ml)、27.2(混合抽出物の濃度1mg/ml)であり、この時、肥満細胞脱顆粒抑制率はそれぞれ90.1%、70.6%であった(表4参照)。
【0072】
前記試験結果から魚腥草抽出物又は徳利苺の実の抽出物を単独で使用してもcompound 48/80により誘導される肥満細胞の脱顆粒を抑制できるものの、魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物を使用する場合は、より効果的に肥満細胞の脱顆粒を抑制できることが分かった。
【0073】
【表4】

【0074】
<試験例5> 皮膚反応誘発白鼠モデルを利用した魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物の抗アレルギー活性調査
体重250〜300g内外の健康で成熟したSD(Sprague-Dawley)系白鼠の真皮内にcompound 48/80を投与して皮膚反応を起こした後、本発明の魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物が前記皮膚反応を抑制し、皮膚の血管透過性を抑制するか否かを調査した。
【0075】
白鼠の皮膚反応誘発試験は、公知の方法を修正及び補完して、下記の通り実施した(チョンビョンドク等、大韓BRM学会誌、2, 169, 1992)。雄の白鼠の背中の毛を除去した後、エーテル麻酔下で背中の皮膚の真皮内に、0.9%生理食塩水、10mg/ml濃度の魚腥草抽出物、徳利苺の実の抽出物及び魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物の各々を50μlずつ注射し、10分経過後5μg/μl濃度のcompound 48/80 50μlを注射した。対照群としては、前記compound 48/80溶液の代わりに生理食塩水50μlを注射した。前記compound 48/80を注射して20分後、0.5%エバンスブルー(Evan′s blue)400μlを白鼠の陰茎背側の静脈内に注入した。皮膚反応誘発の可否と陽性反応判定は、エバンスブルー溶液を注入して30分経過後背中の皮膚を切開し、真皮側より青色の斑点が表れるか否かを観察することにより行った。さらに、青色の斑点が表れた部位の皮膚を切り取って、その重さを測定した。その後、その皮膚部分を縦横約3〜4mm程度の小さい片に細切して、2mlのホルムアミド(Formamide)溶液にいれて、80℃のオーブンで3時間反応させ、エバンスブルー溶液を流出させた。流出させたエバンスブルー溶液の密度(density)を分光光度計 (spectrophotometer, spectra MAX plus, Molecular Devices, USA)を利用して620nmで測定した後、エバンスブルー標準曲線に準じてエバンスブルーの濃度を算出した。さらに、前記算出されたエバンスブルーの濃度を基に血管透過性抑制率(%)を下記式により算出した。
【0076】
血管透過性抑制率(Inhibition of vascular permeability, %)=[1-{生薬材抽出物とcompound 48/80を投与した場合のエバンスブルーの濃度−生薬材抽出物を投与した場合のエバンスブルー濃度}/(compound 48/80のみを投与した場合のエバンスブルー濃度-生理食塩水のみを投与した場合のエバンスブルー濃度)]×100
【0077】
試験の結果、生理食塩水のみを投与した対照群では皮膚に青色の斑点が表れなかったものの、compound 48/80のみを投与した群では青色の斑点が表れて、皮膚反応が誘発されることが確認できた。また、魚腥草抽出物、徳利苺の実の抽出物及び魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物のみを投与した場合には、青色の斑点が表れなかった。従って、生理食塩水と前記抽出物自体では白鼠において、皮膚反応を誘発させないことが分かり、compound 48/80は白鼠の皮膚反応を誘発させることが分かった。一方、魚腥草抽出物、徳利苺の実の抽出物及び魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物をそれぞれ投与した後、compound 48/80を投与した場合には、同一の濃度のcompound 48/80のみを投与した場合に比べて皮膚の青色の斑点が減少したことが分かった。
【0078】
前記皮膚反応が誘発された部位において、皮膚の血管透過性程度を定量分析した結果、compound 48/80のみを投与した場合のエバンスブルー濃度は36.7±2.7μg/gを示した。魚腥草抽出物を投与した後、compound 48/80を投与した場合のエバンスブルー濃度は25.8±1.7μg/gを示し、compound 48/80による血管透過性は37%抑制された。徳利苺の実の抽出物を投与した後、compound 48/80を投与した場合のエバンスブルー濃度は23.3±1.5μg/gを示し、compound 48/80による血管透過性は45%抑制された。さらに、魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物を投与した後、compound 48/80を投与した場合のエバンスブルー濃度は8.7±0.8μg/gを示し、compound 48/80による血管透過性は93%抑制された(表5参照)。
【0079】
前記試験結果から魚腥草抽出物又は徳利苺の実の抽出物を単独で使用してもcompound 48/80による皮膚反応及び血管透過性の増加を抑制する効果のあることが分かった。また、魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物を使用する場合は、compound 48/80による皮膚反応及び血管透過性の増加をより著しく抑制する効果のあることが分かった。
【0080】
【表5】

【0081】
<実施例4> 魚腥草、徳利苺の実、山茱萸、山査及び桑の葉の混合抽出物製造
魚腥草抽出物と徳利苺の実の抽出物に加えて、前記試験例1で肥満細胞の脱顆粒抑制効果があるものと選ばれた山茱萸、山査及び桑の葉を追加して、混合抽出物を製造した。前記実施例1の魚腥草、徳利苺の実、山茱萸、山査及び桑の葉を16:16:1:1:1の重量比で混合し、下記の通り混合抽出物を製造した。前記試験例1で選ばれた魚腥草、徳利苺の実、山茱萸、山査及び桑の葉を綺麗に洗浄して一定の大きさ(1×1×1cm以下)に切断し、魚腥草160g、徳利苺の実160g、山茱萸10g、山査10g、桑の葉10gを混合した生薬材350gを精製水3lに入れて、100℃で4時間加圧抽出した。
【0082】
<試験例6> 魚腥草、徳利苺の実、山茱萸、山査及び桑の葉の混合抽出物の肥満細胞からのヒスタミン遊離抑制効果の調査
前記実施例4で製造した魚腥草、徳利苺の実、山茱萸、山査及び桑の葉の混合抽出物が、compound 48/80による肥満細胞よりのヒスタミン遊離を抑制する効果があるか否かを調査した。ヒスタミン遊離抑制効果の調査は、前記試験例3と同様な方法で行った。この時、肥満細胞に処理する混合抽出物の最終処理濃度を、それぞれ0.01, 0.025, 0.05, 0.1, 1.0及び10.0mg/mlとなるようにした。
【0083】
試験の結果、純粋な肥満細胞浮遊液に生理食塩水のみを添加した場合のヒスタミン遊離率は3.1%であった。前記肥満細胞に魚腥草、徳利苺の実、山茱萸、山査及び桑の葉の混合抽出物のみを処理した場合のヒスタミン遊離率は、生理食塩水のみを処理した場合と類似していた。一方、肥満細胞にcompound 48/80のみを処理した場合のヒスタミン遊離率は、56.7%であり極めて高かった。また、前記混合物をそれぞれ前処理した後、compound 48/80を処理した場合には、compound 48/80による肥満細胞からヒスタミンの遊離が抑制されることが確認できた(表6参照)。
【0084】
【表6】

【0085】
<実施例5> 本発明による生薬材の混合抽出物を含むカプセル剤の製造
前記魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物を有効成分とするカプセル剤を製造した。さらに、魚腥草、徳利苺の実、山茱萸、山査及び桑の葉の混合抽出物を有効成分とするカプセル剤を製造した。
前記魚腥草と徳利苺の実の抽出物の混合物を含むカプセル剤は、以下のように製造した。前記実施例1で製造した粉末状の魚腥草抽出物100mg、徳利苺の実の抽出物100mg及びラクトース100mgを正確に秤量して混合器を利用して均一に混合し、自動カプセル充填器で硬質ゼラチンカプセル(ソフンカプセル(株))にカプセル当り300mgずつ含むように充填することにより製造した。
【0086】
前記魚腥草、徳利苺の実、山茱萸、山査及び桑の葉抽出物の混合物を含むカプセル剤の場合は、以下のように製造した。前記実施例1で製造した粉末状の魚腥草抽出物80mg、徳利苺の実の抽出物80mg、山茱萸抽出物10mg、山査抽出物10mg、桑の葉抽出物10mg、及びラクトース110mgを正確に秤量して混合器を利用して均一に混合し、自動カプセル充填器で硬質ゼラチンカプセル(ソフンカプセル(株))にカプセル当り300mgずつ含むように充填することにより製造した。
【0087】
<試験例7> 本発明の生薬材抽出物製剤の臨床試験による抗アレルギー効能検証
前記実施例5で製造した生薬材抽出物製剤の抗アレルギー効能をアレルギー疾患の患者を対象に検証した。
【0088】
7-1) 臨床試験群の分類
臨床試験群にはアトピ性皮膚炎を罹病している10〜70才の多様な年齢の男女患者20名を対象とした。まず、前記患者20名を5名ずつ四つのグループに分け、本発明の製剤投与群1(魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物を含む、表7参照)、本発明の製剤投与群2(魚腥草、徳利苺の実、山茱萸、山査及び桑の葉の混合抽出物を含む、表7参照)、既存の治療剤投与群(表8参照)及び本発明の製剤1(魚腥草と徳利苺の実抽出物の混合抽出物含み既存治療剤を併用、表9参照)に分類した。
【0089】
前記にて既存治療剤としては、次のステロイド剤を用いた。アドバンタン(advantan, スゥェリング製薬会社)、ラクチケア(lacticare, スチペル製薬会社)、エスパソンゲル(esperson gel, 韓独薬品)、オラデキソン(oradexion, 中外製薬)、デクスコシル(dexcosil, 永進薬品)などのステロイド剤、プラコン(plokon, 永進薬品)、プリマラン(primalan, 富光薬品)、アレグラ(allegra, 韓独薬品)、ジャディテン(zaditen, ノバチス製薬会社)、レミクト(remicut, コーロン製薬)などの抗ヒスタミン剤、及びアトピ性皮膚炎の補助治療剤として用いられる月見草の種子油であるエポガム(epogam, 韓独薬品)を用いた。
【0090】
【表7】

【0091】

【表8】

【0092】
【表9】

【0093】
7-2)アレルギー疾患患者の血清内IgE及びヒスタミンの測定
前記試験例7-1)の各試験群患者の治療前後の血液を採り血清を収得し、血清内IgE及びヒスタミンの量を測定した。IgEの測定はECLIA(electrochemiluminescence immunoassay)方法で実施した。ビオチンが結合されたIgE特異抗体(biotinylated monoclonal IgE-specific antibody)とルテニウムで表示されたIgE特異抗体(monoclonal IgE-specific antibody labeled with a ruthenium)複合体が入っている分析用キットを測定で使用した。患者の血清内ヒスタミンの量は前記試験例3と同様の方法で測定した。
【0094】
試験の結果、全ての試験群において、治療後の血清内IgE 及びヒスタミン量は、治療前に比べて減少することが示された(表10及び表11参照)。さらに、本発明製剤投与群と既存治療剤投与群及び本発明製剤と既存治療剤の併用投与群間に大差はなかった。
【0095】
【表10】

【0096】
【表11】

【0097】
7-3) アレルギー疾患患者病変の臨床的観察
前記試験例 7-1)の各試験群患者の病変を臨床的に観察した。アトピ性皮膚炎は、掻痒症が激しい紅斑性丘疹(erythematous papule)と水泡(vesicle)の発生、痒くことによる滲出性病変の発生、擦傷(excoriation)、紅斑性あるいは鱗屑に覆われた丘疹(papule)と斑(plaque)の発生、及び繰返し行われた掻爬による苔癬化(lichenification)の発生等を含む多様な病変により特徴付けられる。このような特徴や症状の増減を観察することでアトピ性皮膚炎の好転程度を決定した。
【0098】
試験の結果、本発明の製剤1又は2を投与したアトピ性皮膚炎患者の場合、手の平(palm)に亀裂(fissure)を伴う苔癬状の病変(皮膚が荒れた現象)が好転される様相を示し(図3のA及びB)、膝窩(popliteal fossae)の丸い紅斑性斑点(erythematous macule)が好転したことが確認できた(図3のC及びD)。また、既存の治療剤を投与した試験群では前注窩(antecubital fossae)の丸い紅斑性斑点(round erythematous plaque)の好転と顔面に鱗屑(scale)を伴った湿疹性病変が好転したことを観察することができた(図4のA及びB参照)。さらに、既存の治療剤と本発明製剤を併用投与した試験群の場合にも顔面に鱗屑を伴った湿疹性病変が好転したことを観察することができた。
従って、本発明の生薬材抽出物を含む組成物には、従来のステロイド性治療剤と殆ど同様にアレルギー疾患を治療する効果のあることが分かった。
【0099】
<実施例6> 本発明の生薬材の混合抽出物を含む飲料組成物の製造
前記実施例1の魚腥草抽出物20%、徳利苺の実の抽出物20%、ビタミンA0.15%、ビタミンD0.2%、ビタミンB2 0.15%、ビタミンC2.0%、タウリン3.0%、ポリデキストローズ2.5%、精製水残余量を混合して飲料組成物を製造した。
【産業上の利用可能性】
【0100】
上述した通り、本発明の魚腥草と徳利苺の実の抽出物及びそれらを含む組成物は、肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離を抑制してアレルギー疾患の予防及び治療効果があり、細胞毒性を表わさないので、生体に安全に使用できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、本発明の生薬材抽出物及びヒスタミン遊離誘導物質であるcompound 48/80を処理した白鼠の腹腔肥満細胞の形態変化を光学顕微鏡で観察した写真である(A:無処理群、B:compound 48/80処理群、C:魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物処理群、D:魚腥草と徳利苺の実の混合抽出物とcompound 48/80処理群)。
【図2】図2は、本発明の魚腥草抽出物、徳利苺の実の抽出物、山茱萸抽出物、山査抽出物及び桑の葉抽出物の細胞毒性試験結果を表したグラフである。
【図3】図3は、本発明の魚腥草と徳利苺の実の抽出物を含む製剤を投与したアレルギー性皮膚疾患患者の治療前と治療後の病変を表した写真である(A:アトピ性皮膚炎患者の治療前、B:アトピ性皮膚炎患者の治療後、C:アトピ性皮膚炎患者の治療前、D:アトピ性皮膚炎患者の治療後)。
【図4】図4は、既存治療剤を投与したアレルギー性皮膚疾患患者の治療前と治療後の病変を表した写真である(A:アトピ性皮膚炎患者の治療前、B:アトピ性皮膚炎患者の治療後)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚腥草と徳利苺の実を水又は有機溶媒により抽出した肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離抑制活性がある生薬材抽出物。
【請求項2】
前記魚腥草と徳利苺の実が1:4〜4:1の重量比で混合されていることを特徴とする第1項記載の生薬材抽出物。
【請求項3】
山茱萸、山査及び桑の葉の抽出物からなるグループより選ばれたいずれか一つ以上を追加して含むことを特徴とする第1項又は第2項記載の生薬材抽出物。
【請求項4】
薬剤として使用する為の第1項記載の生薬材抽出物。
【請求項5】
アレルギー疾患治療剤の製造の為の第1項記載の生薬材抽出物の用途。
【請求項6】
肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離抑制剤の製造の為の第1項記載の生薬材抽出物の用途。
【請求項7】
第1項記載の生薬材抽出物を有効成分として含むことを特徴とするアレルギー疾患の予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項8】
第1項記載の生薬材抽出物を有効成分として含むことを特徴とするアレルギー疾患の予防又は改善用食品組成物。
【請求項9】
山茱萸、山査及び桑の葉の抽出物からなるグループより選ばれたいずれか一つ以上を追加して含むことを特徴とする第7項又は第8項記載の組成物。
【請求項10】
前記アレルギー疾患が、アレルギー性喘息、アレルギー性鼻炎、アレルギー性中耳炎、アナフィラクチックショック(anaphylatic shock)及びアレルギー性皮膚疾患からなる群より選ばれたものであることを特徴とする第7項又は第8項記載の組成物。
【請求項11】
前記アレルギー性皮膚疾患が、アトピ性皮膚炎、乾癬、接触性アレルギー皮膚炎及び蕁麻疹からなる群より選ばれたものであることを特徴とする第10項記載の組成物。
【請求項12】
第1項記載の生薬材抽出物の有効量を必要な個体に投与することを含むことを特徴とするアレルギー疾患の予防又は治療方法。
【請求項13】
第1項記載の生薬材抽出物の有効量を必要な個体に投与することを含むことを特徴とする肥満細胞の脱顆粒及びヒスタミン遊離を抑制する方法。


【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−526914(P2007−526914A)
【公表日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−552053(P2006−552053)
【出願日】平成17年2月4日(2005.2.4)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000339
【国際公開番号】WO2005/074964
【国際公開日】平成17年8月18日(2005.8.18)
【出願人】(506263918)レジェン バイオテク インク (1)
【出願人】(506265004)
【Fターム(参考)】