説明

魚類ワクチン

本発明は、動物の免疫学、すなわち、ウイルスに対する魚の免疫学的反応に関する。より具体的には、本発明は、エピトープが免疫反応を中和するウイルスを誘導できるサケ類アルファウイルス属のエピトープを提供する。特に、本発明は、特定のアミノ酸配列を含むポリペプチド、このようなポリペプチドを含むタンパク質、このようなタンパク質を含む担体、及び抗体を産生する方法に関する。更に、本発明は、このようなポリペプチド又はこのようなタンパク質をコードする核酸、及びこのような核酸を含む担体に関する。また、本発明は、このようなポリペプチド、タンパク質、担体、又は核酸を含むワクチン及び診断用キットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、獣医免疫学、すなわち、ウイルスに対する魚の免疫学的反応に関する。より具体的には、本発明は、免疫反応を中和するウイルスを誘導することができるサケ類アルファウイルス属のエピトープを提供する。
【0002】
特に、本発明は、特定のアミノ酸配列を含むポリペプチド、このようなポリペプチドを含むタンパク質、このようなタンパク質を含む担体及び抗体を産生する方法に関する。更に、本発明は、このようなポリペプチド又はこのようなタンパク質をコードする核酸、及びこのような核酸を含む担体に関する。また、本発明は、このようなポリペプチド、タンパク質、担体又は核酸を含むワクチン及び診断用キットに関する。
【背景技術】
【0003】
魚類ウイルスであるサケ膵臓病ウイルス(SPDV)及び睡眠病ウイルス(SDV)は、トガウイルス(Togaviridae)科のアルファウイルス属に属すると記載されている(Villoing et al.,2000,J.of Virol.,vol.74,p.173−183)。2つの水生ウイルスは近縁関係にあり、シンドビス(Sindbis)様及び脳炎型アルファウイルスに近い群から分離されることが見出された群を形成する(Powers et al.,2001,J.of Virol.,vol.75,p.10118−10131)。従って、前記ウイルスは、サケ類アルファウイルス(SAV)のバリアントとして分類されている(Weston et al.,2002,J.of Virol.,vol.76,p.6155−6163)。
【0004】
SDVは、フランス及び英国(UK)において、マスから単離され、SPDVは、アイルランド及びUKにおいて、サケから単離されている。ノルウェー産のマス及びサケにおいてもSPDV様ウイルスが単離されている。しかしながら、ゲノムの性質決定を通じて、これらのノルウェーの単離株は、別個のサブグループであることが明らかとなった。従って、SAV種の亜門が、ごく最近提唱されており(Weston et al.,2005,Dis.of Aq.Organ.,vol.66,p.105−111、Hodneland et al.,2005,Dis. of Aq.Organ.,vol.66,p.113−120)、そのうち、SAVサブタイプ1は、アイルランド及びUKからのSPDV単離株に類似したウイルスによって形成され、サブタイプ2は、SDV単離株によって形成され、サブタイプ3は、SPDVのノルウェーでの単離株によって形成される。
【0005】
3つのSAVサブタイプは、それらの基準株によって特徴付けられる。
【0006】
−サブタイプ1であるSPDV単離株F93ないし125の場合、ゲノム配列は、GenBank受託番号AJ316244として、前記株の外被タンパク質2(E2)は、CAC87722として入手可能である。
【0007】
−サブタイプ2であるSDV単離株S49Pの場合、ゲノム配列は、GenBank受託番号AJ316246として、前記株のE2タンパク質は、アミノ酸357ないし794のCAB59730として入手可能である。
【0008】
−サブタイプ3であるSPDV単離株N3の場合、ゲノム配列は、GenBank受託番号AY604237として、前記株のE2タンパク質は、アミノ酸353ないし790のAAU01400として入手可能である。
【0009】
前記3つのSAVサブタイプは全て、特異的な症状を通じて、サケ及びマスに重大な疾病を引き起こし、その重度は、サブタイプ及び魚の種によって変動し得る。様々な単離株は、ある程度交差保護的であり、サブタイプのうちの1つに対する抗体は、他のサブタイプと交差反応を示す。
【0010】
水産養殖用の魚類ワクチンの包括的な概説は、Sommerset et al.,(2005,Expert Rev.Vaccines,vol.4,p.89−101)による。サケ又はマスを生産する水産業は、成長の低下を引き起こし、動物の10ないし60%を死滅させるSAVの発生に大きな痛手を受けている。研究は、ワクチンの開発(欧州特許第712,926号)に結びつき、SPDVに対してサケを免疫化するために、現在では、不活化SAVサブタイプ1ウイルスワクチンであるNorvax(登録商標)Compact PDが市販されている。SAVウイルスタンパク質をベースとしたワクチンも記載されている(欧州特許第1,075,523号)。
【0011】
これらの記載されたSAVワクチンは、効果的ではあるが、ウイルスの免疫原性を低下させない、ウイルスの不活化プロセスを注意深く選択する必要がある。また、生ウイルスが確実に残存していないようにするために、ウイルス不活化工程を細かく品質管理する必要がある。ウイルス培養物から単離されたウイルス由来の完全なタンパク質をベースとするサブユニットワクチンについても、同じことが当てはまる。その結果、このようなワクチンの産生は、一定の価格が付けられる。
【0012】
改良としては、病原性ウイルスが全く使用されない組換え発現系でのサブユニットワクチンの産生がある。それにもかかわらず、しばしば大きなウイルスタンパク質の発現は、発現系の能力に対して負担が大きく、発現の有効性をより低下させる。また、発現したタンパク質のほとんどは、実際の免疫活性化に関与しないので、これは効率的ではない。これに対して、多くの抗原は免疫保護に関与しない免疫優性領域を有するが、免疫保護的である領域を遮蔽する場合さえあり得る。その結果、このような領域を含むタンパク質による免疫化は、効果的ではなくなる。生物体の液性及び/又は細胞性免疫系は、抗原のこれらの部分に対して活性化されるが、これは、病原体による感染若しくは複製を妨害せず、疾病の症状も妨害しない。
【0013】
その結果、小さいが、SAVウイルスタンパク質自体の関連性する免疫原性部分、すなわち保護的なエピトープを基礎としている点で、改善された、より効率的な代替的SAVワクチンに対する需要が存在する。
【0014】
周知のように、Tリンパ球及びBリンパ球を通じた生物の免疫系の刺激は、T細胞受容体又はB細胞受容体によるエピトープの分子認識を基礎としている。エピトープが直鎖であれば、エピトープは、連続的、順次的な構造として、抗原上に存在し、比較的小さく、例えばタンパク質の場合には、8ないし15個のアミノ酸の領域が、リンパ球受容体に提示するためのMHCI又はII分子によって結合され得る(例えば、Germain & Margulies,1993,Annu.Rev.Immunol.,vol.11,p.403−450により概説されている。)。しかしながら、エピトープは、抗原の3次元的折りたたみの結果としても形成され得、このようなエピトープは不連続的であり、例えば、タンパク質のアミノ酸配列において連続的ではないアミノ酸から重合される。その結果、不連続なエピトープを包含する抗原の領域は普通、通常エピトープのそれよりも大きい。
【0015】
感染又は疾病の程度又は進行を効果的に妨害できない免疫反応を誘導することができれば、エピトープは、保護的である。
【0016】
直鎖又は立体構造の何れかである、可能性のある全ての保護的エピトープのうち、ウイルス中和(VN)を引き起こすものが最も効果的であり、このようなエピトープは、ウイルス感染性を中和する液性免疫反応、及び/又はウイルスに感染した細胞の溶解を引き起こす細胞性免疫反応を誘導する。ウイルスの中和は、例えば、ウイルスの付着及び/又は宿主細胞中への侵入を防止することによって達成される。
【0017】
ウイルスのVNエピトープは、通常、宿主細胞の付着又は侵入等の、ウイルスの不可欠な工程に関与する分子上に位置する。従って、前記エピトープの存在は、ウイルスと関連しており、エピトープの保存をもたらす。このために、ワクチン及び診断用アッセイにおいてVNエピトープは極めて効果的である。
【0018】
現代の技術が抗原中のエピトープを予測できる場合があるとしても、抗原中のエピトープの同定は、複雑な工程である。コンピュータによる予測は、関連する領域を示唆することができる。このような予測は、Hopp & Woods(1981,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.78,p.3824−3828)及びChou & Fassman(1978,Advances in Enzymology,vol.47,p.45−148)によって開発されたものなど、タンパク質の形状及び電荷を記述するアルゴリズムを使用する。しかしながら、このような予測は、多くの場合、専ら、直鎖エピトープに対して使用される。あるレベルの正確性で不連続なエピトープをコンピュータにより推定することが記載されている(Kulkarni−Kale et al.,2005,Nucl.Acids Res.,vol.33,p.W168−W171)が、この技術は、3次元結晶構造がすでに決定されたタンパク質に対してのみ適用可能である。全ての推定方法に対して重要なことは、推定されたエピトープが全て免疫原性であるかどうか、及び保護能力を有するかどうかを確認することによって検証することである。
【0019】
同様に、いわゆるPepscan技術は、自動スクリーニングアッセイによって直鎖エピトープを同定するのに使用できる(Geysen et al.,1984,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.81,p.3998−4002)。さらに、これは、不連続なエピトープには使用されない。
【0020】
アルファウイルスの直鎖エピトープのマッピング及び性質決定は、既に記載されており、例えば、セムリキ(Semliki)森林熱ウイルスE2に関して、アミノ酸(aa)227ないし243、及び297ないし310由来の領域(Grosfeld et al.,1991,Vaccine,vol.9,p.451−456)、166ないし185及び286ないし305由来の領域(Ariel,et al.,1990,Arch.Virol.vol.113,p.99−106)、及び297ないし352由来の領域(Grosfeld,et al.,1992,J.of Virol.,vol.66,p.1084−1090)が記載されている。
【0021】
VN免疫反応を誘導することができるアルファウイルスタンパク質中のエピトープに関しても記載されており、シンドビスウイルスE2タンパク質のaa170ないし220(Strauss & Strauss,1997,Microbiol.Reviews,vol.58,p.491−562)が記載されている。Penceら(1990,Virology,vol.175,p.41−49)は、シンドビスウイルスE2タンパク質の不連続なVNエピトープに関して記載しており、E2cは、アミノ酸62ないし159の領域をカバーする。
【0022】
しかしながら、SAVと他のアルファウイルスとの配列相同性が低いために、これらのエピトープは何れも、SAVタンパク質上に存在することを確認できなかった。SAVと他のアルファウイルスの構造的タンパク質配列間の相同性は、31ないし33%のオーダーである(Weston,2002,上述)。
【0023】
SAV自体に関して、血清学的アッセイにおけるVN抗体及びそれらの使用は記載されている(Graham et al.,2003,J of Fish Dis.,vol.26,p.407−413)が、これらは、ポリクローナル抗体であった。動物血清中のこのような抗体が、幅広い種類のエピトープを保護するので、このような抗体は、記載されているアッセイにおいては効果的であるが、特異的VNエピトープの同定においては有用でなく、
ウイルスタンパク質上でVNエピトープを同定するというこの目的のために、モノクローナル抗体が必要である。SAVタンパク質に対するモノクローナル抗体に関して記載されている(例、Graham et al.,2003,上述)が、これらはウイルスを中和していなかった。
【0024】
その結果、SAVウイルスタンパク質のVNエピトープは今までのところ記載されていない。それにもかかわらず、SAVに関するワクチン接種及び診断の分野での使用のために、SAVウイルスタンパク質のVNエピトープを有することは非常に有利である。
【0025】
従って、これまでに公知のワクチン及び診断薬の有効性及び特異性を改良するワクチン及び診断薬の開発を可能にするサケ類アルファウイルスタンパク質由来のウイルス中和エピトープを初めて提供することが、本発明の目的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
驚くべきことに、SAVE2タンパク質のaa158と252の間のアミノ酸領域をカバーするポリペプチドが、SAVE2タンパク質の立体構造のウイルス中和エピトープを組み込むことがここに発見された。
【0027】
このVNエピトープは、効果的なワクチンの産生及び診断用アッセイに使用することができる。主な利点は、VNエピトープが完全なSAVE2タンパク質に比べて非常に小さく、438aaの大きさであるにもかかわらず、SAVE2タンパク質の不可欠な免疫原性部分をなお組み込んでいることである。
【0028】
これは、幾つかの有利な効果を有する。不可欠な免疫反応を提供することと直接関連していないタンパク質の大量を発現するための能力及び資源を不必要に圧迫しないことによって、組換え発現系中でのSAVE2VNエピトープの発現は、完全なSAVE2の発現より非常に効率的である。定量的な点において、E2全体にわたるVNエピトープの発現の効率性は、4.6倍ほど改良され(95アミノ酸対438アミノ酸)、更に、発現及び翻訳後プロセッシングのための発現系の能力に過剰な負荷をかけないことによって、定性的な改良が達成され、従って、成熟前細胞溶解及びその後のタンパク質分解を誘導しないために、産生されるVNエピトープタンパク質は、E2タンパク質よりも品質が優れている。
【0029】
換言すると、SAVE2 VNエピトープタンパク質と同量の完全長SAVE2タンパク質の試料とを比較した場合、VNエピトープタンパク質の試料の免疫原性効力は、E2タンパク質の効力の5倍超高い。これは、SAVE2サブユニットの発現の効率性の驚くべきかつ極めて適切な改良である。
【0030】
本発明のSAVE2 VNエピトープの小さなサイズから得られる別の重要な利点は、組換え生担体(LRC)によって発現される可能性が改善されることであり、このようなLRCは、予防接種された宿主中で複製し、しばしば、それらのゲノム中に外来核酸の限定された量を組み込むことができるに過ぎない。有利なことに、300未満のヌクレオチドを測定する本発明のVNエピトープをコードする核酸は、このようなほとんどの組換え生担体中に組み込めるのに対し、1300超のヌクレオチドを測定する、完全長のE2タンパク質をコードする核酸は、複製、転写及び重合において問題を生じ、例えば、LRCの複製能を低減させる。
【0031】
あるいは、LRCが、より大きな外来挿入物を許容する場合には、SAVE2VNエピトープの小さなサイズが、多くの挿入物の挿入を可能とする。このような複数の挿入物は、融合して(すなわち、全て1つのプロモーターの後ろに存在する。)挿入することが可能であり、又は、各挿入物は独自のプロモーターを有する。
【0032】
このようなLRCの改良された効率性は、水産養殖における予防接種に対して極めて妥当である。使用される動物飼育法及び予防接種されるべき動物が極めて多いので、動物を個々に取り扱うことは実用的ではなく、非常に困難である。従って、効率的な集団予防接種手法が可能となるLRC等の自己複製免疫原の使用は、重要な効率上の改良である。
【0033】
従って、第一の態様において、本発明は、ポリペプチドの大きさが少なくとも95個及び多くとも166個のアミノ酸であることを特徴とする、配列番号1ないし3に相当する領域中の前記配列番号の何れか1つと少なくとも90%アミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドに関する。
【0034】
配列番号1ないし3は、それぞれ、基準菌株F93ないし125、S49P、及びN3のSAVE2タンパク質の158ないし252のaa領域を表す。
【0035】
本発明において、158ないし252のようにSAVE2タンパク質のアミノ酸配列領域を示す表現は、aa158で始まりaa252までを意味するものと解釈されるべきである。
【0036】
配列番号1ないし3の配列のうちの1つを組み込むことによって、本発明のポリペプチドは、SAVE2タンパク質のアミノ酸158ないし252の領域を含み、前記領域は、SAVE2タンパク質の不連続なVNエピトープを組み込む。
【0037】
完全長のSAVE2に対して、本明細書に記載されている配列番号の長さ及び位置が、図1に図示されている。
【0038】
本発明において、「ポリペプチド」という語は、参照を明確にするためにのみ使用され、「タンパク質」と等しい。「タンパク質」は、アミノ酸の分子鎖を取り込むものとする。タンパク質それ自体は、特定の長さ、構造又は形状を有するものではなく、必要であれば、インビボ又はインビトロで、例えばグリコシル化、アミド化、カルボキシル化、リン酸化又は空間的折りたたみの変化によって修飾することができる。また、タンパク質−塩、−アミド、及び−エステル(特にC末端エステル)及びN−アシル誘導体は、本発明の範囲に属する。とりわけ、ペプチド、オリゴペプチド及びポリペプチドは、タンパク質、並びにタンパク質の前駆体型、プレプロ型及び成熟型の定義内に含まれる。タンパク質は、2つ又はそれ以上のタンパク質断片の生物学的、物理的又は化学的工程による融合から作製されるキメラタンパク質又は融合タンパク質であり得る。タンパク質は、2つ又はそれ以上のタンパク質断片の生物学的、物理的又は化学的工程による融合から作製されるキメラタンパク質又は融合タンパク質であり得る。
【0039】
「アミノ酸同一性」という語は、2つ又はそれ以上のタンパク質のアミノ酸配列間の同一性の程度を指す。本発明のタンパク質とのタンパク質の%アミノ酸同一性は、配列番号1ないし3の何れか1つのアミノ酸配列に相当するタンパク質の領域のアミノ酸配列比較によって決定されなければならない。
【0040】
本発明において、このようなアミノ酸配列比較は、インターネットアドレスwww.ncbi.nlm.nih.gov/blast/bl2seq/bl2.htmlを介して得られることのできるサブプログラム「BlastP」(Tatusova & Madden,1999,FEMS Microbiol.Letters,vol.174,p.247−250)を選択することによって、コンピュータプログラム「BLAST 2 SEQUENCES」により決定されなければならない。使用されるべき比較−マトリクスは、「Blosum62」であり、初期設定パラメータは、オープンギャップペナルティ11、伸長ギャップペナルティ1、及びギャップx ドロップオフ50である。このコンピュータプログラムは、、正確な一致のみを計数して、同一であるアミノ酸の割合を「同一性」として報告する。
【0041】
SAVE2のaa158ないし252の本領域を含有するSAVE2断片は、本発明のVNエピトープを含有することが明らかとなった。これは、得られた実験結果から明白であり、正のVNスコアが、図1にも示されており、これら及び他の結果は、実験の部において概説されている。
【0042】
3つの各SAVサブタイプから得られる単離株を含む多くのSAVE2タンパク質由来のアミノ酸領域158ないし252の複数の配列比較において、見出されたアミノ酸同一性のレベルは、90%と100%との間で変動することがここに明らかとなった。これは、以下の表1及び図2に表されている。この保存の非常に高いレベルは、90%のアミノ酸配列同一性における変動が、SAVのE2タンパク質の本領域に見出されるアミノ酸配列の自然な変動内であることを示している。従って、本発明のポリペプチドと90ないし100%のこの範囲内でアミノ酸同一性を有するタンパク質は、おそらく天然のバリアントであり、従って、本発明の範囲に属する。
【0043】
【表1】

【0044】
結果は、正確な一致、スコアリングマトリクス=Blosum62、及び既定値に設定される他のパラメータを用いて、「基準配列に対する包括的な配列比較」に設定し、Align+(登録商標)プログラム(SE Central)を使用して測定された。基準配列は、SAV単離株N3(受託番号:AAU01400.1)の配列であった。
【0045】
好ましい実施形態において、本発明の本態様に記載のポリペプチドは、配列番号1ないし3の何れか1つと少なくとも91%アミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。より好ましいのは、好ましい順に、配列番号1ないし3の何れか1つと92、93、94、95、96、97、98、99又は100%のアミノ酸配列同一性を有するポリペプチドである。
【0046】
好ましくは、本発明の本態様に係るポリペプチドの大きさは、アミノ酸166個を超過しない。これは、SAVE2タンパク質のaa139ないし304由来の領域の長さに相当する。
【0047】
その結果、本発明の本態様に係るポリペプチドは、アミノ酸166個の最大長を有すれば、SAVE2タンパク質の(252−166の位置である)aa87と(158+166の位置である)aa323の間の何れの場所からも得られ得る。このようなポリペプチドは、更に、本発明のVNエピトープを含有するaa158ないし252のSAVE2領域に相当するアミノ酸配列領域を組み込み、前記領域中のSAVE2配列内に存在する自然な変動のために、配列番号1ないし3とのアミノ酸同一性の割合は、90%と100%との間である。
【0048】
本発明のポリペプチドを得るための技術は、本分野で周知である。好ましくは、遺伝子工学技術及び組換えDNA発現系が、望ましい断片を実際に発現させるために使用される。
【0049】
本発明のポリペプチドをコードするのに使用できる核酸配列は、本明細書に記載されており、及び/又は公に入手可能である。このような配列は、当業者に周知であり、Molecular cloning: a laboratory manual(Sambrook & Russell:2000,Cold Spring Harbor Laboratory Press;ISBN:0879695773)及びCurrent protocols in molecular biology(Ausubel et al.,1988+更新版,Greene Publishing Assoc.,New York;ISBN:0471625949)等の標準的な教科書に非常に詳細に説明されている分子生物学の標準的な技術によって取得し、操作し、及び発現することができる。
【0050】
本発明のポリペプチドをコードする核酸を構築するために、好ましくはプラスミドの形態のDNA断片が使用される。このようなプラスミドは、例えば、プローブとして及び更なる操作のためのツールとして使用するために、DNA挿入物の量を増大させるのに有用である。クローニングのためのこのようなプラスミドの例は、pET、pBR、pUC、pGEM及びpcDNAプラスミドシリーズのプラスミドであり、これらは全て、幾つもの商業的供給源から容易に入手可能である。
【0051】
望ましいポリペプチドを得るために、適切な核酸配列が、例えば制限酵素消化を使用することによって、部位特異的変異によって、又は好ましくはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技術によって構築される。PCRを実施するための標準的な技術及びプロトコールは、例えば、PCR primers: a laboratory manual(Dieffenbach & Dveksler,1995,CSHL Press,ISBN 879694473)に広範に記載されている。例えば、SAVE2をコードする遺伝子上の特定の場所でハイブリダイズするPCRプライマーを選択することによって、SAVE2の望ましいアミノ酸で開始又は終結するポリペプチドをコードする組換えDNA断片が得られる。
【0052】
クローニング、タンパク質精製、検出又は発現レベルの改良のために、更なる配列が付加され得、好ましくは使用されるPCRプライマー中に既に組み込まれ得る。
【0053】
本発明のポリペプチドをコードするDNAは、例えば、PCR産物から発現ベクター中にクローニングできる。このような発現ベクター中で、SAVE2の望ましい断片をコードする核酸は、転写調節配列へと作用可能に連結され、これにより、核酸配列の転写を調節することができる。複製及び発現に必要な調節領域を含む適切な発現ベクターは、とりわけ、プラスミド、コスミド、ウイルス及びYAC(酵母人工染色体)である。
【0054】
転写調節配列は、本分野で周知であり、とりわけ、プロモーター及びエンハンサーを含む。当業者は、使用されるべき発現系においてプロモーターが機能的である場合、プロモーターの選択が、遺伝子転写を誘導できる全ての真核生物プロモーター、原核生物プロモーター又はウイルスプロモーターにまで及ぶことを十分理解している。
【0055】
発現DNAプラスミドにおいて使用するのに適している転写調節配列は、(ヒト)サイトメガロウイルス最初期プロモーター及びラウス肉腫ウイルスLTRプロモーター(Ulmer et al.,1993,Science,vol.259,p.1745−1748)等のプロモーター、並びにアデノウイルス2の主要な後期プロモーター及びβ−アクチンプロモーター(Tang et al.,1992,Nature,vol.356,p.152−154)を含む。調節配列は、周知のウシ成長ホルモンポリアデニル化配列、SV40ポリアデニル化配列、並びにヒトサイトメガロウイルスターミネーター及びポリアデニル化配列等の、ターミネーター及びポリアデニル化配列も含み得る。
【0056】
細菌細胞、酵母細胞、真菌細胞、昆虫細胞及び脊椎動物細胞の発現系は、極めて頻繁に使用される。このような発現系は、本分野で周知であり、例えばInvitrogen(オランダ)を通じて一般的に入手可能である。
【0057】
本発明の(以下に概略されるような)ポリペプチド又はタンパク質の発現に使用される宿主細胞は、細菌由来の、例えばエシェリキア・コリ(Escherichia coli)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、ラクトバチルス(Lactobacillus)種、又はカウロバクター・クレセンタス(Caulobacter crescentus)、又は水生細菌であるエルシニア・ルッカー(Yersinia rucker)及びビブリオ・アンギラルム(Vibrio anguillarum)由来の細胞であり得、全て、本発明の(以下に概説されるような)ポリペプチド又はタンパク質をコードする配列を発現させるための細菌由来のプラスミド又はバクテリオファージの使用と組み合わせられ得る。宿主細胞は、真核細胞由来、例えば酵母特異的ベクター分子と組み合わせた酵母細胞(例えば、サッカロミセス(Saccharomyces)又はピキア(Pichia))、組換えバキュロウイルスベクター、例えばSf9及びpVL1393と組み合わせた昆虫細胞(Luckow et al.,1988,Bio−technology,vol.6,p.47−55)、例えばTiプラスミドベースのベクター又は植物ウイルスベクターと組み合わせた植物細胞(Barton,et al.,1983,Cell,vol.32,p.1033−1043)、又は適切なベクター若しくは組換えウイルスも有するHela細胞、CHO、CRFK、又はBHK細胞等の哺乳動物細胞、又はマスノスケ胚(CHSE−214)細胞、タイセイヨウサケ細胞系及びニジマス細胞系等の魚類細胞でもあり得る。
【0058】
これらの発現系の次に、藻類又は植物等の生物体における発現は、これらが、飼料中に組み込め、経口ワクチンとして使用できるために、興味のある発現系である。予防接種されるべき魚へこのような材料を供給することによって、効率的な集団予防接種が達成される。
【0059】
本分野で周知のインビボでの相同的組換えの技術は、好適な細菌、ウイルス、又は生物体のゲノム中へ組換え核酸配列を導入するのに使用できる。
【0060】
発現は、いわゆる無細胞発現系においても実施され得る。このような系は、特定の系において発現できるプロモーターへ作用可能に連結された適切な組換え核酸の発現のために不可欠な全ての因子を含む。例は、イー・コリ溶解系(Roche,Basel,Switzerland)、又はウサギ網状赤血球溶解系(Promega corp.,Madison,USA)である。
【0061】
他の実施形態において、本発明は、本発明のポリペプチドを含むタンパク質に関し、これにより該タンパク質は、該ポリペプチドを含み、アミノ酸166個長の大きさである、SAVE2タンパク質の一部を含まない。
【0062】
本発明に係るこのようなタンパク質は、本発明のポリペプチドを含む融合タンパク質及び担体タンパク質である。
【0063】
融合タンパク質又は担体タンパク質は、アミノ酸の2つ又はそれ以上の鎖の重合を通じて形成され、自然発生しない組み合わせを付与する。前記鎖は、等しいか又は異なる長さであり得る。前記鎖の組み合わせは、幾つもの手段、例えば
−化学的に、共役、抱合又は架橋結合によって、直接的に又は中間的な構造を通じて、アミノ酸配列の脱水、エステル化等を通じて、
−物理的に、巨大分子構造中又は前記構造上の捕捉を通じた共役によって、
−分子生物学的融合によって、2つの各々をコードできる核酸の断片を含む組換え核酸分子の組み合わせを通じ、これにより単一の連続的な発現産物が最終的に産生されることによって
達成することができる。
【0064】
これらの共役及び融合を適用するための技術は、本分野で周知であり、例えばSambrook & Russelの、及び上述のAusubelの手引書に記載される。
【0065】
このような融合タンパク質又は担体タンパク質の使用は、幾つもの利点、例えば
−精製及び検出におけるより容易な取り扱い
−例えばアジュバントと同等の一般的免疫刺激により、又は(より高い又はより低い)反応の一定レベルへの一定方向(例、Th1又はTh2)での免疫系の特異的操作により、又は免疫反応の特定のタイミングを得るための増加した免疫原性
−例えば発現自体のレベルを増強させることによる、例えば特定の発現系での転写又は翻訳レベルを増強させることによる、又は産生されたmRNA若しくはタンパク質の安定性を細胞内若しくは細胞外の何れかで改善することによる増加された発現レベル
−更に別の融合タンパク質又は担体タンパク質等へ、リンカー領域又はスペーサー領域を提供すること等
を有する。
【0066】
このような担体タンパク質又は融合タンパク質の例は周知であり、例えば、
−精製又は検出に関しては、Hisタグ、v−Mycタグ、β−ガラクトシダーゼ(β−gal)、マルトース結合タンパク質、緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、ストレプトアビジン、ビオチン、免疫グロブリン由来のドメイン(例、Fab断片)等がある。
−改良又は適応された免疫反応に関しては、ウシ又はヒツジ血清アルブミン、キーホールリンペットヘモシアニン、hsp70、破傷風トキソイド、並びにインターロイキン、サイトカイン及びサケ類の魚類において生物活性のあるホルモン
である。
【0067】
これらの例の幾つかは、例えばGFPを結合することによって、単一の効果より多い効果を有し、検出及び発現の両者が改良される。
【0068】
別の態様において、本発明は、SAVE2タンパク質の一部が、少なくとも配列番号4のアミノ酸配列及び多くとも配列番号6のアミノ酸配列を有することを特徴とする、前記一部を含むポリペプチドに関する。
【0069】
配列番号4は、SAVE2タンパク質由来のaa158ないし252断片の複数の配列比較に由来した共通配列であり、上述の表1に既に記載されている。配列比較及び共通配列を図2に示す。
【0070】
配列番号5及び6は、それぞれaa139ないし290、及び111ないし304をカバーするSAVE2タンパク質から同様の方法で誘導される共通配列である。基礎を成す複数の配列比較が、それぞれ図3、及び4に示されている。
【0071】
本発明のこのようなポリペプチドは、長さが配列番号4と等しく、又は配列番号4より長く、配列番号6以下であるSAVE2タンパク質の一部を含む。このようなポリペプチドは、配列番号4の組み込みを通じて、SAVE2タンパク質の不連続なVNエピトープを更に含む。
【0072】
本発明のポリペプチドは、アミノ酸が95個と194個の間の大きさ(それぞれ配列番号4及び6の長さ)を有し、SAVE2のこの領域の配列から選択される。
【0073】
配列番号4及び6は、それぞれaa139ないし290及び111ないし304をカバーするSAVE2タンパク質から同様の方法で誘導される共通配列である。これらの共通配列は、3つのSAVサブタイプの何れかのaa158ないし252の領域と少なくとも85%アミノ酸同一性を有する。
【0074】
本発明のこの態様に係るタンパク質の一例は、配列番号5であり、SAVE2の配列に対して、aa139ないし290が存在しない。
【0075】
好ましい実施形態において、本発明の本態様に係るポリペプチドは、アミノ酸配列同一性の増大したレベルを有し、表2中の位置に対して示されたアミノ酸のうちの1つによって、SAVE2中のある位置に相当する配列番号4の特定の位置で(任意のアミノ酸を表す記号X又はXaaによって示される)変動可能なアミノ酸の1つ又はそれ以上を置換することによって取得される配列番号4を含む。
【0076】
【表2】

【0077】
図3又は4の複数の配列比較から好ましいアミノ酸をそれぞれ誘導することによって、配列番号5又は6の各々に対して、同様の表を作製することが可能である。
【0078】
本発明のポリペプチドの両代替物に対して、SAVE2のVNエピトープの正確な境界が、周知の技術を使用することによって、本明細書に記載されている情報に基づいて、当業者によってさらに定義することができることが当てはまる。本発明に従って示された現在の境界は、aa158ないし252に設定されるのに対し、aa139ないし242由来(配列番号7、SAVサブタイプ3由来、単離株N3)、及びaa170ないし252由来(配列番号8、SAVサブタイプ3由来、単離株N3)の断片は何れも、機能的VNエピトープを有しないことが明らかとなった。その結果、VNエピトープを含む最も厳密な領域の境界は、N末端側のaa158とaa170との間、及びC末端側のaa242とaa252との間にある。
【0079】
本発明の本態様のポリペプチドの実施形態において、本発明は、本発明のポリペプチドを含むタンパク質であり、該ポリペプチドを含みかつ該ポリペプチドよりも大きなSAVE2タンパク質の一部を含まない前記タンパク質に関する。
【0080】
本発明の別の態様のタンパク質の有利な使用と同様に、これらのタンパク質は、例えば、より簡単な取り扱い、増大した免疫原性、又は本発明のVNエピトープの増大した発現レベルを可能にするSAVE2タンパク質のVNエピトープを含む融合タンパク質若しくは担体タンパク質を与える。
【0081】
上述のような融合タンパク質又は担体タンパク質を産生するための技術は、本分野で周知である。
【0082】
別の態様において、本発明は、本発明のタンパク質を含む担体に関する。
【0083】
本発明の本態様に記載のこのような担体は、例えば本発明のタンパク質の安定性、免疫原性、送達、又は有用性を改良するために有利に使用できる有機的又は無機的な(多)分子構造である。予防接種及び免疫刺激のために使用する担体分子の例は、タンパク質、脂質、炭水化物、ミセル、リポソーム、イスコム、デンドリマー、ニオソーム(niosome)、バイオマイクロカプセル、微小アルギン酸塩、マクロソル(macrosol)等の小胞、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウム又は酸化アルミニウム、シリカ、カオリン(登録商標)及びベントナイト(登録商標)等の無機化合物、並びに宿主細胞及び組換え生担体である。
【0084】
診断目的のために使用する担体は、例えばシリカ、ラテックス又は金の粒子、ナイロン、PVDF、ニトロセルロース又は紙のメンブレン、及びシリコンチップ又は微量滴定デバイス等の物体を含む。
【0085】
このような担体へ本発明のタンパク質を組み込み、抱合させ、結合させるための技術は、本分野で周知である。このような実施形態は全て、以下で詳細に記載されている。
【0086】
担体タンパク質の実施形態は、上記とほぼ同じ例を含み、例えば、より簡単な取り扱い、増加した免疫原性又は本発明のポリペプチドを含むタンパク質の増大した発現レベルを提供する。
【0087】
本発明のタンパク質に対する担体としての炭水化物及び脂質は、例えば、レクチン、グルカン、グリカン及び脂質A等のリポ多糖である。本発明のタンパク質をこのような分子と抱合させるための技術は、本分野で周知である(例、Kubler et al.,2005,J.Org.Chem.,vol.70,p.6987−6990、Alving,1991,J.Immunol.Mothods,vol.140,p.1−13)。
【0088】
担体小胞は、複数の目的、例えば安定化剤として、送達媒体として及び免疫賦活薬として機能する。例えば、イスコムは、サポニン、リン脂質及びコレステロールの混合物からなる周知の免疫刺激粒子であり(WO96/11711)、その中に本発明のタンパク質等の抗原が組み込むことが可能である。あるいは、イスコム−マトリクス粒子が作製できる。これらは、サブユニット抗原が組み込まれているのではなく、吸着されているイスコム様粒子である。
【0089】
経口ワクチン接種で使用するための担体は、送達及び免疫刺激の両者を与える。例は、α−セルロース又は植物若しくは動物由来の様々な油等の代謝可能な物質である。また、魅力的な方法は、担体として生きた飼生物を使用することであり、このような生物が、本発明のタンパク質を摂取又は吸着すると、生物は、標的の魚へ餌として与えられ得る。本発明のタンパク質の経口送達のための特に好ましい飼料担体は、タンパク質を封入できる生きた飼生物である。適切な生きた飼生物は、プランクトン様の非選択的フィルターフィーダーを含み、好ましくは、輪虫類、アルテミア等のメンバーを含む。特に好ましいのは、ブラインシュリンプのアルテミア種である。
【0090】
飼料担体を調製する好ましい方法は、本発明のタンパク質を含む発現系から、プランクトン様の非選択的フィルター供給源、好ましくは輪虫類、アルテミア等のメンバーまで宿主細胞又は細胞を供給することである。前記タンパク質は、プランクトン様非選択的フィルターフィーダー等の生きた飼料担体によって取り込まれ、これらは、次に、SAV感染及び疾病に対して保護されるべき魚へ経口的に投与される。
【0091】
組換え生担体(LRC)は、更なる遺伝情報(この事例では、(以下に概略されるような)本発明のタンパク質をコードできる核酸、DNA断片、又は組換えDNA分子)がその中に挿入された、例えば細菌、寄生虫及びウイルス等の微生物である。LRCは、対象動物中にてインビボで複製するために、「古典的な」予防接種に対して必要とされる抗原性タンパク質の量と比較して、相対的にわずかな接種材料を適用のために必要とする。このようにして、LRCは、対象となる動物又はその細胞中で好適な抗原を直接発現する。これは、宿主の免疫系への好ましい提示を与える。あるいは、LRCは、望ましい抗原をコードする遺伝情報のための担体として機能し得る。換言すれば、核酸ワクチンを標的動物の細胞へ送達する媒体として機能し得る。
【0092】
このようなLRCが接種された標的生物は、担体の免疫原に対して、及び遺伝コードが、LRC中へ更にクローニングされている異種性タンパク質(例えば本発明のポリペプチド又はタンパク質中に含まれるSAVE2 VNエピトープをコードすることができる核酸)に対して免疫原性反応を生じる。担体微生物由来の抗原に対して誘導された免疫反応は、本発明のタンパク質に対する反応を強化する。
【0093】
また、挿入物を有するLRCは、1回の予防接種で複数の保護を提供する組み合わせワクチンを効果的に形成する。
【0094】
LRCがウイルスである場合には、このようなウイルスは、担体ウイルス又はベクターウイルスとも呼ばれる。本発明のためのLRCとして有利に使用することができるウイルスは、クローニング及び操作を可能にするのに十分な分子生物学的情報が入手可能であるサケ類の魚で複製可能なウイルスである。好ましいウイルスLRCは、アルファウイルス及びノビラブドウイルス属由来のウイルス、特にウイルス性出血性敗血症ウイルス種、及び感染性造血性壊死ウイルス(IHNV)である。例えば、IHNVは、弱毒化されたウイルス発現及びサケ類で使用するための送達系が記載されたマス病原体である。(WO03/097090、Biacchesi et al.,2000,J of Virol.,vol.74,p.11247−11253)。IHNVゲノムからのNVタンパク質の欠失は、ウイルスを弱毒化させ、外来遺伝子の挿入のための空間を作出する。好ましいLRCは、本発明のポリペプチド又はタンパク質をコードすることができる核酸コンストラクトを担持する組換えIHNVである。次に、このようなLRCは、例えば浸漬予防接種によって標的の魚へ投与される。
【0095】
本発明のポリペプチド、タンパク質、核酸又はLRCを含む宿主細胞は、担体としても使用することが可能である。例えば、本発明のポリペプチド又はタンパク質を作製するために使用される発現系の細胞、又は本発明のLRCを作製するのに使用される細胞は、ワクチン等の医薬組成物中へ製剤化され得、標的の魚へ投与され得る。LRCと同様に、宿主細胞由来の抗原は、アジュバント効果を有する幾らかの更なる免疫刺激を与える。
【0096】
無機担体は、周知の技術を使用して、本発明のペプチド又はタンパク質で被覆し又は本発明のペプチド若しくはタンパク質を吸着することが可能である。このような負荷された担体は、次いで、標的の魚への適用のために、又は診断用アッセイにおける適用のためにワクチン製剤中で使用される。例えば、水酸化アルミニウムは、周知のワクチンアジュバントである。同様に、シリカ(ガラスビーズ)又は金の粒子は、診断用アッセイにおいて広く使用される。
【0097】
本発明のポリペプチド又はタンパク質を含む担体も、診断用アッセイに使用することが可能である。例えば、ナイロン、PVDF、ニトロセルロース又は紙等の適切な材料の膜又は片は、本発明のポリペプチド又はタンパク質を吸着し、コーティングし、又はブロッティングすることによって作製できる。例えば、液体流又は電流を使用するブロッティングのための技術は、本分野において周知である。対象は、担体としても機能し得、例えば、BIAcore機器で使用するためのシリコンチップ、又は本発明のポリペプチド若しくはタンパク質でコーティングされたウェルを有する微量滴定デバイスは、有利に使用することが可能で有る。
【0098】
このような担体を使用する診断用アッセイは、SAVの特異的検出のために極めて好ましい。特に、本発明のポリペプチド、タンパク質又は担体中に含まれるSAVE2のVNエピトープは、SAVの3つのサブタイプ全ての特異的な検出を可能とするので、本明細書に記載されているように、SAVE2のVNエピトープは、90%と100%の間のアミノ酸同一性を有する3つのサブタイプ間でほぼ保存されている。
【0099】
このようなSAVの特異的同定は、例えば疾病の原因を特定する上で非常に有用であり、例えば水生ビルナウイルス(Birnavirus)感染性膵臓壊死ウイルス(IPNV)もサケ類の魚において疾病及び死滅を引き起こす。SPDV及びIPNVの症状は、識別が困難な場合があるので、SAVに対して感受性のある特異的な診断用検査を利用可能にすることは、畜産業及び健康管理に正確な指標を与える可能性を大幅に改善する。
【0100】
本発明のポリペプチド、タンパク質又は担体が、SAVE2VNエピトープに対する特異的抗体を産生するためにも使用可能であることは、本発明の利点の1つである。その結果、まず、ほとんど専らSAVE2 VNエピトープに対して誘導されたモノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を産生することが、ここに初めて可能となる。このような抗体は、SAVに対して極めて特異的であり、例えば受動的免疫化及び(以下に概略されるような)診断用アッセイにおいて非常に効果的である。次いで、このような抗体は、例えば治療法のために、診断のために、又は品質保証目的のために使用される。
【0101】
従って、ある実施形態において、本発明は、動物への本発明のポリペプチド、タンパク質又は担体の接種と、抗体の単離とを含むサケ類アルファウイルス中和抗体を産生する方法に関する。
【0102】
抗体、又は抗体を含む抗血清を作製する方法、及び抗体による「特異的結合」の概念は、本分野で周知である。例えば、本発明のポリペプチド、タンパク質又は担体に対する抗体又は抗血清は、例えば油中水乳剤中の本発明のポリペプチド、タンパク質又は担体による、例えばブタ、家禽又はウサギの予防接種から2ないし6週間後の採血、凝血の遠心分離及び容器を傾けて血清を採取することによって、迅速かつ簡単に取得され得る。
【0103】
抗体の別の源は、SAVに(自然に)感染したマス又はサケの血液又は血清である。
【0104】
ポリクローナル、単一特異的又はモノクローナルであり得る抗体(又はそれらの誘導体)を調製するための他の方法は、本分野において周知である。ポリクローナル抗体が望ましい場合、ポリクローナル血清を産生及び加工するための技術は、本分野で周知である(例、Mayer and Walter編,1987,Immunochemical Methods in Cell and Molecular Biology,Academic Press,London)。
【0105】
本発明のポリペプチド又はタンパク質に対して反応性を有するモノクローナル抗体は、同じく本分野で公知の技術によって、近交系マウスを免疫化することによって調製することが可能である(Kohler & Milstein,1975,Nature,vol.256,p.495−497)。
【0106】
更なる態様において、本発明は、本発明のポリペプチド又はタンパク質をコードする核酸に関する。
【0107】
「核酸」という語は、デスオキシ核酸又はリボ核酸の分子鎖を組み込むことを意味する。核酸は、特定の長さではなく、従って、DNA及び/又はRNAからなるポリヌクレオチド、遺伝子、翻訳領域(ORF)、プローブ、プライマー、リンカー、スペーサー及びアダプターが、核酸の定義内に含まれる。核酸は、生物源及び/又は合成源であり得る。核酸は、一本鎖又は二本鎖の形状であり得る。一本鎖は、センス又はアンチセンスの向きであり得る。核酸の塩基は修飾され得、イノシン等の塩基が組み込まれ得る。他の修飾は、例えば主鎖の修飾を包含し得る。
【0108】
「コードする」という語は、正しい状況に置かれた場合に、とりわけ転写及び/又は翻訳を通じて、タンパク質を発現する可能性を与えることを意味する。正しい状況とは、プロモーター、細胞、緩衝液、反応条件等を指す。
【0109】
本発明の核酸は、正しい状況に置かれたときに、本発明のポリペプチド又はタンパク質をコードすることができる。本発明の核酸の例は、すでに上述されている。
【0110】
本発明のポリペプチド又はタンパク質をコードすることができる核酸を単離するための方法は、既に上述されており、本分野で周知である。例えば、配列番号1ないし3に記載のポリペプチド中に含有されるSAVE2 VNエピトープは、プローブ又はプライマーを作製又は単離するために使用できる。次いで、これらは、PCR又はハイブリダイゼーション選択によってゲノム配列又はmRNA配列のライブラリをスクリーニングするために使用される。次に、陽性のクローン又はコロニーからVNエピトープ含有断片が単離され、サブクローニングされ、例えば発現系において使用される。
【0111】
あるいは、他のSAV単離株由来の本発明のE2VNエピトープは、コンピュータ内での配列番号1ないし3を、コンピュータデータベース中に含まれ得る他のSAV配列とコンピュータで比較することによって、ここで都合よく同定することができる。この目的のために、多くのコンピュータプログラムが公に入手可能である。例えば、配列番号1ないし3を、発現配列タグ(EST)データベース及びゲノム配列データベースと比較するために、BLASTプログラム(Altschul et al.,1997,Nucleic Acids Res.,vol.25,p.3389−3402)のシリーズを使用することが可能である。
【0112】
本発明の核酸は、配列番号1ないし6と比較した場合にヌクレオチド配列中に変異を有する核酸も含む。「バリアント」核酸は、天然又は非天然のバリアントであり得る。天然のバリアントは、SAVの多様な単離株中に存在し、非天然に生じるバリアントは、組換えDNA技術によって作製され得る。
【0113】
多くの異なる核酸が1つの及び同一のタンパク質をコードできることが、本分野において周知である。これは、mRNAの幾つかの異なるコドン又はトリプレットが、翻訳の最中にリボソーム中で成長しているアミノ酸の鎖に同一のアミノ酸を付着させる「ゆらぎ」又は「遺伝コードの縮重」として、分子生物学において知られた現象の結果である。これは、アミノ酸をコードする各トリプレットの2番目及び特に3番目の塩基で最も一般的である。この現象は、なお同一のタンパク質をコードする2つの異なる核酸に対して、約30%の不均一性をもたらし得る。従って、約70%のヌクレオチド配列同一性を有する2つの核酸は、1つの及び同一のタンパク質をなおコードすることが可能である。
【0114】
本発明のポリペプチド又はタンパク質をコードする核酸は、上述のように、分子生物学における標準的な技術によって取得し、操作し、発現させることが可能である。このような操作及び発現のためのツールは、本発明の核酸のための担体である。
【0115】
従って、本発明の更なる態様は、本発明の核酸を含む担体であり、該担体が、DNA断片、組換えDNA分子、組換え生担体及び宿主細胞からなる群から選択される前記担体に関する。これらは、以下で、さらに詳しく記載されている。
【0116】
好ましい実施形態において、本発明は、本発明の核酸を含むDNA断片に関する。
【0117】
好ましい担体は、DNAプラスミドである。
【0118】
DNA断片を取得する好ましい方法は、RT−PCRを使用することによる、単離されたmRNAの逆転写による方法である。PCR技術は、上述のとおり一般的に知られている。
【0119】
単離されたcDNA配列は、対応するmRNAからの転写が不完全であるために、不完全であり得るか、又は完全なcDNAの断片を含有するクローンが取得され得る。RACE(cDNA末端の迅速な増幅)等の、このような部分的cDNA配列を完全にするための様々な技術が、本分野において公知である。
【0120】
別の好ましい実施形態において、本発明は、核酸又はDNA断片がプロモーターへ機能的に連結されている、本発明の核酸又はDNA断片を含む組換えDNA分子に関する。
【0121】
本発明の組換えDNA分子を構築するために、プロモーターを有するDNAプラスミドが、上述のとおり有利に使用できる。
【0122】
更に別の好ましい実施形態において、本発明は、本発明の核酸、DNA断片又は組換えDNA分子を含む組換え生担体(LRC)に関する。LRCは、上に詳細に記載されている。
【0123】
本発明のDNA断片、組換えDNA分子又はLRCは、メチル化されていないCpGジヌクレオチドを有する免疫刺激オリゴヌクレオチド等の他のヌクレオチド配列、又は他の抗原性タンパク質若しくはアジュバント性サイトカインをコードするヌクレオチド配列を更に含み得る。
【0124】
更に別の好ましい実施形態において、本発明は、本発明に係る核酸、DNA断片、組換えDNA分子、又はLRCを含む宿主細胞に関する。
【0125】
本発明の宿主細胞は、そのゲノム中に、又は自立的に複製する染色体外上に安定に組み込まれた、本発明のこのような核酸、DNA断片、組換えDNA分子又はLRCを含み得る。
【0126】
担体としての、又は本発明のポリペプチド又はタンパク質を発現させるための宿主細胞の例は、上に記載されている。ワクチンとして使用する場合には、望ましい効果に応じて、宿主細胞は生きた状態であり得るか又は不活化され得る。細胞の不活化に関する多くの物理的及び化学的方法が、本分野において公知であり、物理的な不活化の例は、加熱によるか又は例えば紫外線、X線若しくはγ照射を用いた照射によるものである。不活化化学物質の例は、β−プロピオラクトン、グルタルアルデヒド、β−エチレン−イミン及びホルムアルデヒドである。不活化の方法を適用すべき場合には、宿主細胞中に含まれる、標的動物へ送達されるべきポリペプチド、タンパク質、担体又は核酸の免疫原性を妨げないようにするために、これは最適化を要することを当業者は知悉している。
【0127】
本発明の核酸、DNA断片、組換えDNA分子、LRC又は宿主細胞の好ましい使用は、SAVE2 VNエピトープの発現及び送達における使用である。これを達成するための1つの方法は、DNA予防接種を通じた方法である。本発明の核酸、DNA断片、組換えDNA分子を担持するDNAプラスミドは、上述のとおり、サケ類の魚へ投与できる。このような方法は、本分野で周知である。
【0128】
核酸ワクチン(又は遺伝子ワクチン若しくは遺伝的ワクチンとも称される。)は、それを標的化若しくは保護するために、又は宿主(の細胞)によるその取り込みを補助するために、LRC以外の標的化媒体又は送達媒体を必要とし得る。このような媒体は、生物由来であるか又は合成由来であり得、例えばバクテリオファージ、ウイルス様粒子、リポソーム、又はミクロ粒子、粉末粒子又はナノ粒子であり得る。
【0129】
DNAワクチンは、例えばGeneGun(登録商標)等の無針注射器を使用する皮内投与を通じて簡単に投与することが可能である。この投与方法は、予防接種されるべき動物の細胞中へDNAを直接送達する。(以下に概説されるような)本発明の医薬組成物中に含まれる、本発明の核酸、DNA断片又は組換えDNA分子の好ましい量は、10pgと1000μgの間の範囲である。好ましくは、0.1μgと100μgの間の範囲の量が使用される。あるいは、魚は、投与されるべきDNAの例えば10pg/mLと1000μg/mLの間を含む溶液中に浸漬することが可能である。これらは全て、本分野において周知である。
【0130】
同様に、本発明の核酸、DNA断片又は組換えDNA分子を含む標的化媒体又は送達媒体は、本発明の担体の範囲に属する。
【0131】
これらの使用の結果、標的生物又はその細胞の内側に核酸が送達されるか又はタンパク質が発現する。
【0132】
本発明のポリペプチド、タンパク質、担体又は核酸の医学的使用は、上に記載されている。要するに、これは、SAV感染の確立及び/又はSAV感染の進行を妨害し、又はSAV誘発性疾患の臨床的症状の進行を妨害することによって、感染又は疾病を予防し又は寛解させるための、SAVに対する魚の予防接種である。
【0133】
これらの医学的使用は、例えばサケ類の魚へ、本発明のポリペプチド、タンパク質、担体又は核酸を投与することによって、水生動物の健康管理において実施される。
【0134】
従って、本発明の別の態様は、本発明のポリペプチド、タンパク質、担体、又は核酸と、医薬として許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0135】
ある実施形態において、本発明の医薬組成物は、本発明のポリペプチド、タンパク質、担体又は核酸と、医薬として許容される担体とを含むワクチンに関する。
【0136】
更なる態様において、本発明は、魚用の薬物の製造のための、本発明のポリペプチド、タンパク質、担体又は核酸の使用に関する。
【0137】
更なる態様において、本発明は、魚用の薬物の製造のための、本発明のポリペプチド、タンパク質、担体又は核酸の使用に関する。
【0138】
更なる態様において、本発明は、医薬として有効な量で、医薬として許容される担体中の、本発明のポリペプチド、タンパク質、担体、又は核酸を、魚へ投与することによって、このような生物を予防接種する方法に関する。
【0139】
「医薬として有効な量」は、以下に詳しく記載されている。
【0140】
更なる態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、タンパク質、担体、又は核酸を医薬として許容される担体と混合することによって、魚用のワクチンを製造する方法に関する。
【0141】
「医薬として許容される担体」は、例えば目的に適した水、塩類溶液又は緩衝液であり得る。より複雑な形態において、製剤は、それ自体が、サイトカイン、アジュバント、更なる抗原等の他の化合物を含む乳剤を含み得る。
【0142】
本発明のワクチンは、予防的処置及び治療的処置の両者のために使用できる。
【0143】
好ましい実施形態において、本発明のワクチンは、アジュバントを更に含む。
【0144】
アジュバントは、非特異的な様式で、宿主の免疫反応を惹起する免疫刺激物質である。多くの異なるアジュバントが本分野において公知である。魚の養殖において頻繁に使用されるアジュバントの例は、ムラミルジペプチド、リポ多糖、幾つかのグルカン及びグリカン及び(ホモポリマーである)カルボポール(Carbopol)(登録商標)である。魚のワクチンに適したアジュバントの広範な概説は、Jan Raa(1996,Reviews in Fisheries Science,vol.4,p.229−288)による概説中に記載されている。
【0145】
適切なアジュバントは、例えば油中水(w/o)乳剤、o/w乳剤及びw/o/w二重乳剤である。w/o乳剤での使用に適した油性アジュバントは、例えばミネラルオイル又は代謝可能な油である。ミネラルオイルは、例えばバイヨール(Bayol)(登録商標)、マルコール(Marcol)(登録商標)及びドラケオール(Drakeol)(登録商標)であり、代謝可能な油は、例えばピーナツ油及び大豆油等の植物油、又は魚油スクアラン及びスクアレン等の動物油である。あるいは、欧州特許第382,271号に記載のビタミンE(トコフェロール)可溶化物は、有利に使用され得る。
【0146】
極めて適切なo/w乳剤は、例えば5ないし50%(w/w)水相及び95ないし50%(w/w)油性アジュバントから出発して得られ、より好ましくは20ないし50%(w/w)水相及び80ないし50%(w/w)油性アジュバントが使用される。
【0147】
添加されるアジュバントの量は、アジュバント自体の性質、及び製造者によって提供されるこのような量に関する情報に依存する。
【0148】
好ましい実施形態において、本発明のワクチンは、安定化剤を更に含む。
【0149】
例えば本発明のワクチンそのものを分解から保護し、保存期間を延長し、又は凍結乾燥効率性を高めるために、安定化剤を前記ワクチンへ添加することができる。有用な安定化剤は、とりわけ、SPGA(Bovamik et al.,1950,J.Bacteriology,vol.59,p.509)、スキムミルク、ゼラチン、ウシ血清アルブミン、炭水化物、例えばソルビトール、マンニトール、トレハロース、デンプン、ショ糖、デキストラン若しくはグルコース、アルブミン若しくはカゼイン又はそれらの分解産物等のタンパク質、及びリン酸化アルカリ金属等の緩衝液である。
【0150】
更に、ワクチンは、1つ又はそれ以上の適切な界面活性化合物又は乳剤、例えばスパン(Span)(登録商標)若しくはトゥイーン(登録商標)を含み得る。
【0151】
ワクチンは、いわゆる「ビヒクル」も含み得る。ビヒクルは、前記ビヒクルへ共有結合することなく、本発明のポリペプチド又はタンパク質が接着する化合物である。このようなビヒクルは、とりわけ、生物マイクロカプセル、微小アルギナート、リポソーム及びマクロソールであり、全て本分野で公知である。このようなビヒクルの特殊な形態は、イスコムであり、上に記載される。
【0152】
他の安定化剤、担体、希釈剤、乳剤等を本発明のワクチンと混合することも本発明の範囲内であることは言うまでもない。このような添加物は、例えば「Remington:the science and practice of pharmacy」(2000,Lippincot,USA,ISBN:683306472)及び「Veterinary vaccinology」(P.Pastoret et al.ed.,1997,Elsevier,Amsterdam,ISBN:0444819681)等の周知の手引書に記載される。
【0153】
例えば、安定性又は経済性の理由のために、本発明の組成物は、凍結乾燥され得る。一般的に、これによって、0℃を超える温度、例えば4℃での長期保存が可能となる。凍結乾燥のための手法は、当業者に公知であり、異なる規模での凍結乾燥のための装置が市販されている。
【0154】
従って、好ましい実施形態において、本発明のワクチンは、凍結乾燥された形態にある。
【0155】
凍結乾燥された組成物を再構成するために、前記組成物は、生理学的に許容される希釈剤中に懸濁される。このような希釈剤は、例えば滅菌水又は生理学的塩類溶液と同程度に単純であり得る。より複雑な形態において、凍結乾燥されたワクチンは、例えば欧州特許第1,140,152号に記載されている乳剤中に懸濁され得る。
【0156】
本発明のワクチンは、水産養殖の状況での投与に適しており、適用の望ましい経路及び望ましい効果と合致する何れかの形態を取り得る。本発明のワクチンの調製は、当業者にとって慣用の手段によって実施される。
【0157】
好ましくは、本発明のワクチンは、懸濁液、溶液、分散液、乳剤等の注射又は浸漬予防接種に適した形態で製剤される。通常、このようなワクチンは、滅菌調製される。
【0158】
本発明のワクチンに対する標的動物は、魚であり、好ましくはサケ類の魚であり、より好ましくはニジマス(オンコリンチュス・ミキス(Oncorhynchus mykiss))又はタイセイヨウサケ(サルモ・サラーL.(Salmo salar L.))である。
【0159】
本発明のワクチンを標的生物へ適用する投与スキームは、単回又は複数回の投与であり得、同時又は連続して、投薬量及び製剤と適合的な様式で、免疫学的に有効な量で付与され得る。
【0160】
予防接種された動物への実験的な曝露感染を投与し、次に、疾病に関する対象動物の臨床的兆候である血清学的パラメータを測定し、又は病原体の再単離を測定することによって、治療が「免疫学的に有効である」かどうかを決定することは、十分に当業者の能力の範囲に属する。
【0161】
本発明のポリペプチド、タンパク質、担体又は核酸をベースにした、本発明のワクチンに関して、どのような量が「医薬として有効な量」であるかは、所望の効果及び標的生物に依存する。有効な量の決定は、十分当業者の技術内である。
【0162】
本発明の医薬組成物中に含まれる、本発明のポリペプチド又はタンパク質の好ましい量は、動物用用量あたり1ngと1mg間にある。より好ましくは、前記量は、10ng/投与と100μg/投与の間にあり、より好ましくは100ng/投与と10μg/投与との間にある。免疫学的に非常に適切であるが、1mgを超過する用量は、商業的な理由で、あまり興味のあるものではない。
【0163】
本発明の医薬組成物中に含まれる、本発明の核酸、DNA断片又は組換えDNA分子の好ましい量は、上に記載されている。
【0164】
本発明のワクチン中に含まれる、本発明の組換え生担体の好ましい量は、使用される微生物担体の特徴に依存する。このような量は、例えばプラーク形成単位(pfu)、コロニー形成単位(cfu)又は組織培養感染用量50%(TCID50)として表され、LRC生物体を定量化する簡便な方法がどのような方法であるかに依存する。例えば、生ウイルスベクターの場合、動物用量あたり1プラーク形成単位(pfu)と1010プラーク形成単位(pfu)の間の用量範囲が有利に使用され得、好ましくは10pfu/用量と10pfu/用量の間の範囲であり得る。
【0165】
本発明のワクチン中に含まれる、本発明の宿主細胞の好ましい量は、動物への用量あたり1個と10個の間の宿主細胞である。より好ましくは、10個/用量と10個/用量の間が使用される。
【0166】
多くの投与方法を適用することが可能であり、全て本分野において公知である。本発明のワクチンは好ましくは、注射、浸漬、液浸又は経口を介して魚へ投与される。投与のためのプロトコールは、標準的な予防接種の慣行に従って最適化できる。Bowden et al.(Fisheries Research Service Marine Laboratory,Aberdeen,Scotland)による魚類の予防接種に関する総説は、www.intrafish.comから2003年3月27日発行の産業報告書として入手可能である。
【0167】
好ましくは、ワクチンは浸漬を介して又は経口で投与される。これは、商業用の水産養殖の環境においてこのようなワクチンを使用する場合、特に効率的である。
【0168】
経口予防接種における担体の使用に関する好ましい実施形態は、上記されている。
【0169】
従って、予防接種されるべき魚の年齢及び体重は重要ではないが、養殖場の感染を予防するために、できるだけ早くSAVに対する予防接種をすることが明らかに好ましい。若齢のサケ類は、すでに0.2gで予防接種できるが、体重5gに到達する前までなければならない。しかしながら、0.5g未満の体重の魚は、不十分な免疫形質転換受容性であると推測される。従って、実際には、0.5gと5gの間の体重を有する魚に予防接種を試みることになる。
【0170】
SAVの早期診断を実施することが可能となったことが、本発明の利点の1つであるので、魚が予防接種されるまで、地理的領域内での発生を延期又は低下させるために、衛生管理などの管理測定を開発することができる。
【0171】
組み合わせワクチンとして、すなわち、本発明のポリペプチド、タンパク質、担体又は核酸を、少なくとも1つの他の魚病原性微生物又はウイルス、このような微生物又はウイルスの抗原、又はこのような抗原をコードする核酸と組み合わせることによって、本発明のワクチンを製剤することは非常に効率的である。
【0172】
従って、好ましい実施形態において、本発明のワクチンは、組み合わせワクチンである。
【0173】
このような組み合わせワクチンの利点は、1回の予防接種操作しか必要とされないにもかかわらず、SAVに対してのみならず、他の疾病に対しても保護を提供することであり、これにより動物への無針ストレス並びに時間及び労働力の浪費が防止される。
【0174】
より好ましい実施形態において、本発明の組み合わせワクチンは、魚、好ましくはサケ類に対して病原性である少なくとも1つの他の微生物若しくはウイルス、又は魚に対して病原性であるウイルス若しくは微生物由来の1つの他の抗原、若しくは該他の抗原をコードする核酸を含む。
【0175】
従って、本発明の組み合わせワクチンの更により好ましい実施形態において、他の微生物又はウイルス、又は抗原、又は該他の抗原をコードする核酸は、エロモナス・サルモニシダ(Aeromonas salmonicida)亜種、サルモニシダ(salmonicida)、ビブリオ・アンギラルム(Vibrio anguillarum)、V.アンギラルム血清型O1及び血清型O2、V.サルモニシダ、モリテーラ・ビスコーサ(Moritella viscosa)(=V.ビスコサス(viscosus))、フォトバクテリウム・ダムセラエ(Photobacterium damselae)亜種ピスシシダエ(pisicicidae)、テナシバキュラム・マリチマム(Tenacibaculum maritimum)、エルシニア・ルッカー(Yersinia rucker)、ピスキリケッチア・サルモニス(Piscirickettsia salmonis)、レニバクテリウム・サルモニナルム(Renibacterium salmoninarum)、ラクトコッカス・ガルビアエ(Lactococcus garviae)、エドワードシエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)、E.イクタルリ(ictaluri)、感染性膵臓壊死ウイルス、感染性サケ貧血ウイルス、神経壊死ウイルス、並びに心筋及び骨格筋の炎症からなる群から選択される。
【0176】
心筋及び骨格筋の炎症(HSMI)の疾病は、ウイルス由来の最近記載されたサケ類の疾病である(Kongtorp et al.,2004,J of Fish diseases,vol.27,p.351−358)。
【0177】
上述の、本発明のワクチンは、活性型予防接種に寄与する。すなわち、前記ワクチンは、宿主の防御系を惹起する。あるいは、ウイルス中和抗体は、上に概説されているような、本発明のポリペプチド、タンパク質又は担体に対して生じ得る。次いで、このようなVN抗体は魚へ投与することができる。この予防接種法、いわゆる受動的予防接種は、動物が既に感染しており、自然の免疫反応を引き起こさせるための時間がない場合の好適な予防接種である。前記予防接種法は、突然、高い感染圧に曝される傾向がある動物を予防接種するための好ましい方法でもある。投与されたVN抗体はSAVを中和し、これは、魚の免疫状態とは無関係に、ほぼ即時にSAV感染の確立又は進行を低下又は停止させるという大きな利点を有する。
【0178】
従って、別の態様において、本発明は、サケ類アルファウイルス中和抗体を含むワクチンを提供する。
【0179】
ワクチンは、本発明のワクチンで予防接種されたニワトリの卵から調製された抗体(IgY抗体)を使用して調製することもできる。
【0180】
好ましくは、抗体が魚の飼料等の可食性担体と混合された、抗体の経口投与のためのワクチンが調製され、。
【0181】
別の態様において、本発明は、本発明のポリペプチド、タンパク質、担体、又は核酸を含む診断用検査キットに関する。
【0182】
上述のように、SAV感染後の死亡率は、最大60%にまで達し得る。従って、SAV及びこれにより誘発される疾病に対する効率的な保護及び管理測定のために、迅速で特異的なSAVの診断が重要である。
【0183】
従って、SAVの検出に適した診断用ツールを提供することが、本発明の別の目的である。
【0184】
本発明のSAVE2VNエピトープを含む抗原性材料を検出するための診断用検査キットは、あらゆるSAVサブタイプの検出に適しており、前記検出に特異的である。
【0185】
このような検査は、例えば、ELISAプレートのウェルが、SAVE2 VNエピトープに対して誘導された抗体でコーティングされた標準的な抗原ELISA検査を含み得る。このような抗体は、本発明のポリペプチド、タンパク質又は担体中に含まれるSAVE2VNエピトープとの反応性があり、上述のように取得し得る。検査されるべき材料との温置の後、SAVE2 VNエピトープとの反応性を有する標識された抗体が、前記ウェルへ添加される。次に、結合したSAVの抗原性材料の存在が、呈色反応によって明らかとなる。蛍光基を免疫グロブリン又は別のマーカーへ抱合させることによって抗体を標識するためのプロトコールは、本分野で周知である。例えば、http://www.ihcworld.com/protocol database.htmを参照されたい。
【0186】
また、本発明のSAVE2VNエピトープと反応性を有する抗体を試料中又は動物血清中で検出するための診断用検査キットは、サブタイプの何れかのSAVに対する免疫反応の検出に適しており、前記検出に特異的である。
【0187】
このような検査は、例えば、標準的な抗体ELISA検査を含み得る。このような検査において、ELISAプレートのウェルは、例えば本発明のポリペプチド、タンパク質又は担体中に含まれるSAVE2VNエピトープでコーティングできる。検査されるべき材料との温置の後、(存在する場合)検査試料の免疫グロブリンと反応性を有する標識された抗体が、前記ウェルへ添加される。次に、本発明のSAVE2 VNエピトープと反応性を有する抗体が検査試料中に存在することが、呈色反応によって明らかとされる。
【0188】
従って、ある実施形態において、本発明は、SAVE2VNエピトープと反応性を有する抗体を検出するための診断用検査キットに関する。このような検査キットは、本発明のポリペプチド、タンパク質又は担体を含む。
【0189】
このような免疫アッセイの設計は変更し得る。例えば、イムノアッセイは、直接的な結合を基礎とする代わりに、競合を基礎とすることもできる。更に、このような検査は、装置の固体支持体の代わりに、微粒子の又は細胞性の材料も使用し得る。検査中に形成される抗体−抗原複合体の検出は、標識された抗体の使用を包含し得、ここで、標識は、例えば、酵素又は蛍光性分子、化学発光分子、放射活性分子又は染色剤分子であり得る。
【0190】
試料中の本発明のSAVE2VNエピトープと反応性を有する抗体の検出に適した方法には、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、免疫蛍光検査(IFT)及びウェスタンブロット分析が含まれる。
【0191】
SAVの存在又は不存在を診断するための迅速で簡単な診断用検査は、上述のようなPCR検査であり、本発明の核酸に類似する、検査試料中の核酸と特異的にハイブリダイズするプライマーを含む。このようなプライマーは例えば、本発明のSAVE2VNエピトープ内からの188個のヌクレオチドの産物を付与する以下の2つである。
【0192】
順方向:5’−TTGACGTGTACGACGCTCTG−3’(配列番号9)
逆方向:5’−AACCGGCTCCTCACACGTAAAC−3’(配列番号10)
本発明の核酸、DNA断片、組換えDNA分子又は担体は、このようなPCR検査において陽性標準として有利に使用することができる。
【0193】
あるいは、このような診断用検査は、増幅せずに、例えば膜又は装置とのハイブリダイゼーションを使用する設定において、本発明の核酸、DNA断片、組換えDNA分子又は担体を使用し得る。
【0194】
ここで、本発明は、以下の非限定的な実施例を参照しながら、更に記載される。
【0195】
実施例
【実施例1】
【0196】
クローニング
SAVサブタイプ3単離株からSPDV E3E2配列を得た。SPDVに感染したタイセイヨウサケを、ノルウェー(Molsvik)の水産養殖場からからサンプリングした。製造元の説明書に従って、「Absolutely RNA miniprep kit」(Stratagene)を使用して、前記サケの心臓組織から全RNAの抽出物を調製した。調製されたcDNAから、E3E2全体のコード領域をRT−PCRプライマーで増幅した。使用したプライマーは、次のとおりであった。
【0197】
逆方向転写のために、次のプライマーを使用した。
【0198】
RTE2: 5’−CCGCGCGAGCCCCTGGTATGCAACACAGTGC−3’(配列番号11)
次に、pfuターボポリメラーゼ(Stratagene)を使用する高い忠実度のPCR増幅を実施し、次のプライマーセットを使用した。
【0199】
RT−E2 Xhol:5’−ATACCAGGGGCTCGCGCCTCGAGACCCTACTTG−3’(配列番号12)
PCR−E3 HindIII: 5’−GATGCCATAAGCTTGACACGCGCTCCGGCCCTC−3’(配列番号13)
最後に、これら2つのPCRプライマー、及び次の2つの内部プライマーを使用して配列決定することによって、E3E2遺伝子の配列を決定した。
【0200】
PD5:5’−CGTCACTTTCACCAGCGACTCCCAGACG−3’(配列番号14)
PD3:5’−GGATCCATTCGGATGTGGCGTTGCTATGG−3’(配列番号15)
製造元の説明書に従って、Big Dye 3.1(登録商標)(Applied Biosystems)を使用して、配列決定を実施した。
【0201】
Molsvik SAV単離株のE2をコードする領域に関する完全なヌクレオチドは、受託番号DQ195447の下で公表されているが、本発明に関しては、関連する全ての配列が本明細書に示されている。
【0202】
一度、配列決定により確認されたら、制限酵素XhoI及びHindIIIで、E3E2 PCR産物を一晩消化し、pET30a(+)ベクター(Novagen)の相当する独特の部位中でクローニングし、pET30a/E3E2コンストラクトを作製した。
【0203】
SAVE2由来の領域のサブクローニング:
E2遺伝子上の多様な位置でハイブリダイズするプライマーの1セットのPCRが使用されるサブクローニング法を使用して、Molsvik SAVE2配列から、より短い多様な配列を得た。(pET30a/E3E2コンストラクトをテンプレートとして使用する)SAVE2コード領域の断片を増幅するために使用されたPCRプライマーが表3に列挙されており、次のとおり設計した。
【0204】
−順方向プライマーは、3ないし5個の無作為なA又はTヌクレオチドで始まり、Ndel制限部位が続く。次に、16ないし20個の合致するヌクレオチドが続き、長さは、特異的局所配列に応じて最適化され、望ましいヌクレオチドでPCR断片を開始するように選択される。プライマーは、合計24ないし30個のヌクレオチドである。
【0205】
−逆方向プライマーは、3ないし5個の無作為なヌクレオチドも含むが、NcoI制限部位がそれに続き、次に、16ないし20個の特異的なヌクレオチドが続く。
【0206】
【表3】

【0207】
PCR中で生じた断片をNdeI及びNcoIで一晩消化し、pET30a(+)細菌発現プラスミド(Novagen)中へクローニングした。
【0208】
NdeI制限部位がATG開始コドンを組み込むために、発現は、このメチオニンで始まる。
【0209】
クローニングされた配列全体をカバーする重複連続断片を得るために、標準的なpET−T7プロモータープライマー:5’−AATACGACTCACTATAGGG−3’(配列番号25)及び標準的なT7ターミネータープライマー:5’−GCTAGTTATTGCTCAGCGG−3’(配列番号26)を使用するDNA配列決定によって、クローニングされた配列を確認した。
【0210】
SAVE2のサブクローニングされた断片をイー・コリ中で発現させ、生じたタンパク質断片をインビボ及びインビトロでの実験に使用し、本発明のSAVE2 VNエピトープを検査した。
【0211】
pET30a(+)プラスミド中へ挿入される6×Hisタグ又はβ−gal遺伝子(LacZ)を使用して、フレーム中でpET30a(+)プラスミドをクローニングすることによって、pET30a(+)プラスミドを使用する融合タンパク質として、組換えタンパク質も発現させた。
【0212】
pET30a/LacZベクターを構築するために、次のプライマー、すなわち、
LacZ‘_NcoI:5’−GTATGCCCATGGAACGTCGTTTTACAACGTCGTG−3’(配列番号27)
LacZ’_XhoI:5’−GTCTCGCTCGAGTTATTTTTGACACCAGACCAACTGG−3’(配列番号28)
を使用して、pVAX1/LacZベクター(Invitrogen)中に含有されるlacZ遺伝子をPCRにより増幅した。
【0213】
NcoI及びXhoIで一晩消化した後、pET30a(+)プラスミドの相当する制限部位中へ、消化されたPCR産物をクローニングした。NdeI/NcoIによるこのpET30a/LacZコンストラクトの消化によって、NdeI/NcoIで消化した記載のE2の細断片をフレーム内に挿入できた。
【実施例2】
【0214】
発現
BL21ロゼッタ2イー・コリ細胞中で、多様なE2断片を発現させた。多様なE2遺伝子断片を含有するpET3aプラスミドを使用して、供給元の説明書に従って、ロゼッタ2細胞(Novagen)を形質転換した。形質転換したイー・コリの一晩の前培養物(20mL)を翌日使用して、800mLに培養物を5mLの前培養物を接種した。OD600が、約0.7である時点で、発現の誘導のために、IPTGを添加して1mMの最終濃度とした。これを更に2時間培養した。次に、培養物を7000rpmで5分間遠心分離し、使用するまで細菌細胞ペレットを−80℃で保存した。
【0215】
精製:
封入体を精製するために、次の2つの緩衝液を使用した。
【0216】
緩衝液A=50mMトリス/HClpH8.00+2mMEDTA
緩衝液B=緩衝液A+1%(終濃度)トリトンX−100
次に、800mL培養物の細胞ペレットに関し、細胞ペレットを緩衝液A50mL中に再懸濁し、(10mg/mLのストックから)新鮮に調製されたリゾチームを添加して、100μg/mLの最終濃度にした。DNAを除去するために、これを穏やかに振盪しながら、30℃で15分間温置した。
【0217】
次に、100mLの緩衝液Bを添加し、混合物を4×30秒間超音波処理した。超音波処理物を4℃、12,000×gで20分間遠心分離した。封入体ペレットを緩衝液B250mLで、及びPBS200mLで洗浄した。最後に、組換えE2タンパク質断片を含有するペレットをPBS40mL(4×10mL)中に再懸濁し、使用するまで−80℃で保存した。
【0218】
標準的な操作に従って、マーカータンパク質を有するレーンと関連して、クーマシーブリリアントブルーで染色されたSDS−ポリアクリルアミドゲル上に走行させた試料の走査及び分析によって、組み換えイー・コリタンパク質を定量した。
【実施例3】
【0219】
検査及び使用
モノクローナル抗体:
組換えSAVE2タンパク質断片を検査するために、SAV中和モノクローナル抗体を使用した。完全なフロイントアジュバント中の1010個のSAVウイルス系S49PでBalb/cマウスを免疫化することによって、前記モノクローナル抗体を作製した。標準的な技術を使用して、不完全なフロイントアジュバントを使用して、及びアジュバントを使用せずに、追加免疫注射を付与した。マウス脾臓細胞をSpO腫瘍細胞と融合させ、得られたハイブリドーマをHAT培地中で選択した。標準的な技術を使用する免疫蛍光によってSAV感染したCHSE−214細胞上でSAVウイルスへ結合することに関して、作製されたモノクローナル抗体(Mab)を選択した。陽性反応を示したものをウイルス中和アッセイで検査した。標準的な手法を使用して、マウスに腹水症を発症させることによって、VN陽性Mabを産生するハイブリドーマ細胞をスケールアップした。
【0220】
免疫蛍光アッセイ(IFA):
SAVに感染したCHSE−214細胞で、及び目的の標的組換えタンパク質を発現する、pETプラスミドを形質移入されたイー・コリ細胞で、適切な陽性対照及び陰性対照を使用して、IFAを実施した。96%エタノール:アセトン=1:1中で、−20℃で39分間、細胞を固定し、PBST(1×PBS+0.05%トゥイーン20)で3回すすいだ。PBST中で希釈した一次抗体を添加し、室温で1時間温置した。次に、プレートをPBSTですすぎ、二次抗体であるFITC抱合型抗マウス抗体を適用した。温置及び洗浄の後、適切な紫外線光フィルターを有する免疫蛍光顕微鏡による観察を通じて、各ウェルを点数化した。一次抗体で陽性に反応する感染した細胞は、蛍光を呈した。
【0221】
イムノブロッティング:
ウェスタンブロッティングのために、10%SDS/ポリアクリルアミドゲル(NuPAGE(登録商標)、Novex)上で試料を泳動し、製造元の説明書に従って、ニトロセルロース上へブロッティングした。ドットブロットのために、5μLの試料をピペットで膜上に直接滴下し、5ないし10分間乾燥させるために放置した。次に、トリス緩衝塩類溶液+0.05%トゥイーン20(TBST)+5%スキムミルクを使用して、メンブレンを4℃で一晩ブロッキングした。TBST+1%スキムミルク中の適切な濃度に希釈した一次抗体とともに、前記膜を室温で1時間温置した。次に、TBST中で3回洗浄した後、TBST中の二次抗体であるアルカリホスファターゼ抱合型ヤギ抗マウスIgGとともに前記メンブレンを温置した。TBSTによる洗浄後、製造元の説明書に従って、アルカリホスファターゼ抱合基質キット(BioRad)でアルカリホスファターゼ着色反応を実施した。蒸留水で反応を停止させ、メンブレンを乾燥させデジタル化した。
【0222】
本発明のポリペプチド及びタンパク質によるイムノブロッティングの結果が、図5及び6に示されている。
【0223】
図5は、SAV中和モノクローナルで染色した、本発明の多様なポリペプチド及びタンパク質のドットブロットを示す。
【0224】
正の認識は、
−陽性対照、完全長のSAVE2タンパク質、
−F1R1、F1R2、F1R3、及びF2R3ポリペプチド
に関して見られた。
【0225】
負の反応は、
−陰性対照であるSAVE1タンパク質
−F1R4ポリペプチド及びF3R3ポリペプチド
に関して検出された。
【0226】
陽性対照及び陰性対照のこの割合は、試料が、β−メルカプトエタノール及びジチオスレイトールを含有する試料緩衝液中で変性され、斑状滴下前に煮沸された場合(上部パネル)、及び、試料が非変性試料緩衝液中に採取され、煮沸されなかった場合(下部パネル)の両者で観察された。
【0227】
図6は、aa139ないし290由来のSAVE2の一部をカバーするF1プライマー及びR3プライマーを使用する、本発明のポリペプチドのウェスタンブロット、及びβ−galタンパク質との融合コンストラクト中でaa158ないし252に及ぶF2プライマー及びR3プライマーを使用して作製されたSAVE2断片である、本発明のタンパク質のウェスタンブロットを示す。ブロットをSAV中和Mabとともに温置し、幾つもの特異的なバンドを検出した。
【0228】
F1R3レーン中で検出されたバンドは、22kDa及び44kDaに存在し、おそらく、前記ポリペプチドの単量体及び二量体と思われる。NB:前記ポリペプチドの算出された重量は、僅か15kDaであるが、ゲル上で、このバンドは遅めに泳動し、試料調製中に完全に変性しなかったジスルフィド架橋が存在ためである可能性が最も高い。
【0229】
F2R3−βgalレーンは、約126kDaのバンドを示し、F2R3(10kDa)とβ−gal(116kDa)との融合タンパク質を示す。
【0230】
VNアッセイ:
2%血清を有するEMEM培地中にSAV中和Mabの希釈したものと、前記培地中にSAV試料の100TCID50を希釈したものとの等しい容積を微量滴定プレート中で混合し、20℃で2時間温置した。全てのサブタイプ由来のSAV単離株をVNアッセイにおいて使用した(F93ないし125[サブタイプ1]、S49P[サブタイプ2]、及びPD03ないし08[サブタイプ3])。次に、5%血清を有するEMEM培地中のCHSE−214細胞を添加して、2.5×10個/mLの密度にした。前記プレートをCO温置中で、15℃で5ないし7日間温置した。
【0231】
5ないし7日後、プレートを光学顕微鏡によって読み取り、細胞変性効果(cpe)を有する細胞を同定し、Mabの希釈が検査ウイルスを完全に中和できないことを示した。丸くなり、より屈折的になった細胞の塊が観察された場合には、cpeは正であった。
【0232】
あるいは、細胞をエタノール/アセトン中で固定し、PBSTですすぎ、記載されるとおりIFA中で染色し、その間、一次抗血清として、SPDV E1タンパク質に対して生じたポリクローナルウサギ抗血清(AB06血清)を使用した。
【0233】
典型的な実験において、cpeによって読み取られるF93ないし195及びPD03ないし08に関するVN検査の結果は、32,000倍希釈以下のSAV中和Mab腹水症によるウイルスの完全な中和を示す。これは、IFAによって確認された。
【0234】
動物試験:
動物試験では、若齢のタイセイヨウサケに、本発明のタンパク質を予防接種した。使用されるタンパク質は、β−galへ融合したF2R3、及び6×ヒスチジンタグへ融合したF1R3であった。
【0235】
簡潔にいうと、タンパク質をイー・コリ中で発現させ、記載されているとおり精製した。モンタニド(Montanide)ISAを有する30%油中水乳剤へタンパク質を製剤した。動物に150μg/用量を予防接種し、100μg/用量で追加免疫した。陽性対照は、市販の不活性型SPDVワクチンNorvax(登録商標)Compact PDであった。陰性対照は、塩類溶液、タンパク質を含有しない乳剤、及び融合物を含有しないβ−galであった。
【0236】
検査動物は、約40gのタイセイヨウサケ2年齢であり、検査設備に1週間順化させた後、標準的な手法を使用して、腹腔内予防接種をした。規則的な採血を適用した。5週間後、魚は追加免疫を受け、更に3週間後、PD03ないし08(SAVサブタイプ3)の10TCID50/動物の用量を使用して、前記魚を曝露した。保護能力は、疾病の臨床的徴候、血清学、肉眼による病理学及び組織学を分析することによって点数化される。
【0237】
抗体のELISA:
サケ血清中の抗SAV抗体を検出するために、ELISA検査を設定した。一般的な手法は、上述のとおりであり、簡潔には、SAV中和Mabを微量滴定ウェルへコーティングし、標準的なSPDV試料とともに温置し、洗浄した。サケ血清をPBST+1%スキムミルク中に適用し、二つ組で連続希釈した。適切な陽性対照及び陰性対照を適用した。4℃で一晩温置した後、プレートを洗浄し、ウサギポリクローナル抗サケ血清とともに温置した。最後に、第三抗体であるHRP抱合型ヤギ抗ウサギ抗体を温置した。最後に、製造元の説明書に従って、HRP基質及びHを使用することによって、比色分析検出を実施した。
【0238】
典型的には、SAV抗体は、SPDV感染したサケ由来の血清中で良好な特異性及び感受性で検出できた。
【図面の簡単な説明】
【0239】
【図1】完全長のSAVE2タンパク質の相当する領域に対する、本発明の多様なタンパク質配列の長さ及び位置のグラフ表示。
【図2】幾つものSAVE2タンパク質のそれぞれaa158ないし252、139ないし290、又は111ないし304の領域の複数の配列比較。記入事項は受託番号によって同定され、表1に記載される。参照の系は、SPDV単離株N3(受託番号:AAU01400.1)である。これらの領域の複数の配列比較由来の共通配列は、配列番号4、5、又は6に等しい。 配列の上の番号は、SAVE2に相当するアミノ酸の数を示し、共通配列の下の番号は、ポリペプチドの全体の長さを示す。
【図3】幾つものSAVE2タンパク質のそれぞれaa158ないし252、139ないし290、又は111ないし304の領域の複数の配列比較。記入事項は受託番号によって同定され、表1に記載される。参照の系は、SPDV単離株N3(受託番号:AAU01400.1)である。これらの領域の複数の配列比較由来の共通配列は、配列番号4、5、又は6に等しい。 配列の上の番号は、SAVE2に相当するアミノ酸の数を示し、共通配列の下の番号は、ポリペプチドの全体の長さを示す。
【図3−2】幾つものSAVE2タンパク質のそれぞれaa158ないし252、139ないし290、又は111ないし304の領域の複数の配列比較。記入事項は受託番号によって同定され、表1に記載される。参照の系は、SPDV単離株N3(受託番号:AAU01400.1)である。これらの領域の複数の配列比較由来の共通配列は、配列番号4、5、又は6に等しい。 配列の上の番号は、SAVE2に相当するアミノ酸の数を示し、共通配列の下の番号は、ポリペプチドの全体の長さを示す。
【図4】幾つものSAVE2タンパク質のそれぞれaa158ないし252、139ないし290、又は111ないし304の領域の複数の配列比較。記入事項は受託番号によって同定され、表1に記載される。参照の系は、SPDV単離株N3(受託番号:AAU01400.1)である。これらの領域の複数の配列比較由来の共通配列は、配列番号4、5、又は6に等しい。 配列の上の番号は、SAVE2に相当するアミノ酸の数を示し、共通配列の下の番号は、ポリペプチドの全体の長さを示す。
【図4−2】幾つものSAVE2タンパク質のそれぞれaa158ないし252、139ないし290、又は111ないし304の領域の複数の配列比較。記入事項は受託番号によって同定され、表1に記載される。参照の系は、SPDV単離株N3(受託番号:AAU01400.1)である。これらの領域の複数の配列比較由来の共通配列は、配列番号4、5、又は6に等しい。 配列の上の番号は、SAVE2に相当するアミノ酸の数を示し、共通配列の下の番号は、ポリペプチドの全体の長さを示す。
【図5】SAV中和モノクローナル抗体で染色した幾つものポリペプチド及びタンパク質のドットブロット。上部パネル:変性した試料、下部パネル:変性していない試料。
【図6】SAV中和モノクローナル抗体で染色したF1R3ポリペプチド及びF2R3−βgalタンパク質のウェスタンブロット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリペプチドが少なくとも95個及び多くとも166個のアミノ酸のサイズであることを特徴とする、配列番号1ないし3に相当する領域中で配列番号1ないし3の何れか1つと少なくとも90%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項2】
請求項1に記載のポリペプチドを含むタンパク質であり、前記タンパク質が、前記ポリペプチドを含み、及び166個超のアミノ酸のサイズであるサケ類アルファウイルス属(SAV)E2タンパク質の一部を含まない、前記タンパク質。
【請求項3】
SAVE2タンパク質の一部が、少なくとも配列番号4のアミノ酸配列及び多くとも配列番号6のアミノ酸配列を有することを特徴とする、SAVE2タンパク質の一部を含むポリペプチド。
【請求項4】
請求項3に記載のポリペプチドを含むタンパク質であり、該タンパク質が、前記ポリペプチドを含み、及び前記ポリペプチドよりサイズが大きなSAVE2タンパク質の一部を含まない、前記タンパク質。
【請求項5】
請求項2又は4の何れか一項に記載のタンパク質を含む担体。
【請求項6】
a)請求項1又は3の何れか一項に記載のポリペプチド、請求項2又は4の何れか一項に記載のタンパク質、又は請求項5に記載の担体を動物中に接種する工程、及び
b)抗体を単離する工程
を含む、サケ類アルファウイルス属中和抗体を産生する方法。
【請求項7】
請求項1若しくは3の何れか一項に記載のポリペプチド又は請求項2若しくは4の何れか一項に記載のタンパク質をコードする核酸。
【請求項8】
請求項7に記載の核酸を含む担体であり、該担体が、DNA断片、組換えDNA分子、組換え生担体及び宿主細胞からなる群から選択される、前記担体。
【請求項9】
請求項1若しくは3の何れか一項に記載のポリペプチド、請求項2若しくは4の何れかに記載のタンパク質、請求項5若しくは8の何れか一項に記載の担体、又は請求項7に記載の核酸と、医薬として許容される担体とを含むワクチン。
【請求項10】
請求項1若しくは3の何れか一項に記載のポリペプチド、請求項2若しくは4の何れかに記載のタンパク質、請求項5若しくは8の何れか一項に記載の担体又は請求項7に記載の核酸を含む、診断用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図3−2】
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【図4】
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【図4−2】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−507509(P2009−507509A)
【公表日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−530541(P2008−530541)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【国際出願番号】PCT/EP2006/066401
【国際公開番号】WO2007/031572
【国際公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(506196247)インターベツト・インターナシヨナル・ベー・ベー (85)
【Fターム(参考)】