説明

魚鱗粉末含有コーティング錠剤

【課題】魚鱗粉末を含有し、且つ高温条件下に長期間保管することによる崩壊時間の遅延化傾向を抑制した錠剤を提供する。
【解決手段】ヒドロキシプロピルメチルセルロースを75〜100質量%含有するフィルム層で被覆されていることを特徴とする、魚鱗粉末含有錠剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚鱗粉末を高濃度に含有するフィルムコーティング錠剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的には食用に供しない魚の鱗も、食資源の有効利用を図るべく、これを微粉化した食用魚鱗粉末が、健康食品等の原料として提供されている。また、この魚鱗粉末が骨粗鬆症に有効であるという報告もある(非特許文献1参照)。そして、魚鱗粉末を配合した錠剤タイプの健康食品が市販されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】永田勝太郎ほか,『魚鱗粉末の安全性ならびに腰痛・骨粗鬆症に対する効果』,臨床医薬,23巻8号(2007),773−782
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
魚鱗粉末を含有する錠剤を冷暗所で保存する場合には問題ないが、これを高温下に長期間保存すると、崩壊時間が大きく遅延することが明らかとなった。
【0005】
よって、本発明は、魚鱗粉末含有錠剤を高温下に長期間保存することにより生じる崩壊時間の遅延化傾向を可及的に抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、魚鱗粉末を50質量%以上含有する錠剤にコーティング基剤としてヒドロキシプロピルメチルセルロースを配合したフィルムコーティングを施すことにより、魚鱗粉末含有錠剤を高温下に長期間保存することにより生じる崩壊時間の遅延化傾向が顕著に改善されることを見出した。
【0007】
かかる知見により得られた本発明の態様は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを75〜100質量%含有するフィルム層で被覆されていることを特徴とする、魚鱗粉末含有錠剤である。
【0008】
本発明の他の態様は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを75〜100質量%含有するフィルム層で被覆されていることを特徴とする、円形の魚鱗粉末含有錠剤である。
【0009】
本発明の他の態様は、魚鱗粉末を50〜85質量%含有し、1錠質量310〜350mgである前記魚鱗粉末含有錠剤である。
【0010】
本発明の他の態様は、魚鱗粉末を50〜85質量%含有し、錠径8.5〜9.0mm、錠厚4.7〜5.4mm及び1錠質量310〜350mgである前記円形の魚鱗粉末含有錠剤である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、経時的な崩壊時間の遅延化傾向が抑制された魚鱗粉末含有錠剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0012】
「魚鱗粉末」とは、魚の鱗を粉砕機で粉砕し、微粉化したもので、健康食品等の原材料等として市販されており、魚の鱗としては、イワシやサンマ等の鱗が用いられている。なお、健康食品として供される魚鱗粉末の1回あたりの服用量は1.875gとされている。
【0013】
魚鱗粉末1.875gをできるだけ少ない錠数で服用するために「錠剤」は、魚鱗粉末を高濃度に含有することが好ましく、通常、魚鱗粉末を50〜85質量%、好ましくは60〜67質量%含有し、1錠質量は310〜350mgであることが好ましく、この錠剤には、通常の円形錠剤の他、三角形や楕円形等の変形錠剤も含まれる。そして、特に好ましいのは、魚鱗粉末を50〜85質量%、好ましくは60〜67質量%含有し、錠径8.5〜9.0mm、錠厚4.7〜5.4mm及び1錠質量310〜350mgの円形の錠剤である。
【0014】
ここで、円形の錠剤における錠径とは、円形錠剤の横方向の長さであり、錠厚は、円形錠剤の縦方向の長さであり、何れもマイクロメ−タ−やノギス等によって測定される。
【0015】
錠剤は、例えば、魚鱗粉末を50質量%以上配合した顆粒を調製し、ロータリー式打錠機を用いて圧縮成形することによって得られる。この際、微結晶セルロースやステアリン酸カルシウム等を適宜に配合することができる。
【0016】
魚鱗粉末を60〜67質量%含有(配合)する1錠質量310〜350mgの錠剤とすることにより、魚鱗粉末1.875gを少ない錠数で服用することができる。また、錠径8.5〜9.0mmかつ錠厚4.7〜5.4mmの小型の錠剤として大変服用し易いサイズで提供することができる。
【0017】
「フィルム層」は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが主成分で、その割合は75〜100質量%である。前記魚鱗粉末含有錠剤(素錠)1錠あたり10〜20mg、割合にして3〜6質量%被覆されていればよい。
【0018】
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(以下、「HPMC」と適宜に略記する。)は、ヒプロメロースともいわれ、コーティング基剤として汎用される成分である。
【0019】
このフィルム層は、HPMC等を水又は水と有機溶媒の混液に溶解又は分散させて、固形分濃度10〜15質量%のフィルムコーティング液を調製し、通気式コーティング装置等に仕込んだ前記魚鱗粉末含有錠剤にスプレー噴霧することにより剤皮として形成される。フィルムコーティング液には、本発明の作用を損なわない範囲においてグリセリン、酸化チタン等を適宜に配合することができる。
【0020】
なお、「固形分」とは、フィルムコーティング液のうち、水等の液体部分を除いた、実際に錠剤等を覆うフィルム層を形成する成分をいう。
【実施例】
【0021】
以下に、製造例、実施例及び試験例を挙げ、本発明をさらに詳細に説明する。
【0022】
製造例1
魚鱗粉末(コラゲタイト(登録商標),信田缶詰株式会社製)1875g、カゼインホスホペプチド75g、直打用アスコルビン酸289.95g、ビタミンD3製剤(ビタミンD3としてコレカルシフェロールを0.5質量%含有し、他に食品素材等からなる顆粒,市販品)0.375g、微粒酸化ケイ素27g、ステアリン酸カルシウム31.5gを混合後、ロータリー式打錠機を用い、11mm径の隅丸平面の杵を使用して打錠圧12kNで圧縮成形(打錠)し、錠径11mm、1錠質量379〜405mgの錠剤を得た。該錠剤を粗砕機で粗砕し、これに直打用アスコルビン酸289.95g、微結晶セルロ−ス135g、カルメロ−スカルシウム54g、微粒酸化ケイ素27g及びステアリン酸カルシウム13.5gを添加、混合して魚鱗粉末含有粉粒体を得た。該魚鱗粉末含有粉粒体を、ロータリー式打錠機を用い、8.5mm径の2段R面の杵を使用して打錠圧16kNで圧縮成形(打錠)し、錠径8.5mm、錠厚5.0〜5.1mm、1錠質量316mgの素錠を得た。
【0023】
製造例2 フィルムコーティング液の調製
精製水720gに、HPMC72g、グリセリン7.2g、二酸化チタン12gを溶解又は分散させて、フィルムコーティング液を調製した。
【0024】
実施例1
製造例1で得られた素錠300錠を通気式コーティング機(商品名:ドリアコータ300,パウレック社製)に仕込み、錠剤と接する品温センサーが50〜55℃となるように温風制御しながら、製造例2で調製したフィルムコーティング液をスプレー噴霧し、固形分として1錠当たり15mgまでフィルムコーティングを施した。
【0025】
試験例1
製造例1及び実施例1で得られた錠剤を50錠ずつガラス瓶に充填し、ブリキ製のキャップを施し、50℃の恒温槽に入れて保存した。製造直後並びに1カ月又は2カ月経過時の各サンプルの崩壊時間を崩壊試験器(商品名:崩壊試験器NT−20H、富山産業社製)で測定した。各崩壊時間(分)を表1に、製造直後からの崩壊時間の遅延時間(分)を表2に示す。
【0026】
なお、崩壊時間の測定方法は、第15改正日本薬局方一般試験法崩壊試験法(1)即放性製剤に従った。試験液は精製水を使用した。
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
表1及び2より、製造例1で得られた素錠の直後崩壊時間は16.5分であったが、50℃2カ月保存後の崩壊時間は30.2分であり、崩壊時間の遅延時間は13.7分であった。一方、実施例1で得られたフィルム錠の直後崩壊時間は24.4分であったが、50℃2カ月保存後の崩壊時間は31.7分であり、崩壊時間の遅延時間は7.3分であった。よって、フィルムコーティングを施すことにより、崩壊時間の遅延化傾向は顕著に抑制された。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により、経時的な崩壊時間の遅延が抑制された魚鱗粉末配合錠剤を製造し、より商品価値の高められた健康食品等として市場に提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを75〜100質量%含有するフィルム層で被覆されていることを特徴とする、魚鱗粉末含有錠剤。
【請求項2】
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを75〜100質量%含有するフィルム層で被覆されていることを特徴とする、円形の魚鱗粉末含有錠剤。
【請求項3】
魚鱗粉末を50〜85質量%含有し、1錠質量310〜350mgである請求項1に記載の魚鱗粉末含有錠剤。
【請求項4】
魚鱗粉末を50〜85質量%含有し、錠径8.5〜9.0mm、錠厚4.7〜5.4mm及び1錠質量310〜350mgである請求項2に記載の魚鱗粉末含有錠剤。

【公開番号】特開2011−125331(P2011−125331A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−253883(P2010−253883)
【出願日】平成22年11月12日(2010.11.12)
【出願人】(000002819)大正製薬株式会社 (437)
【Fターム(参考)】