説明

鮮度保持液

【課題】生鮮食品の鮮度を保持し、安全に使用できる工業的有利な液体組成物、及び食品の鮮度保持方法を提供する。
【解決手段】以下の(A)と(B)と(C)と(D)とを質量比(A)/(B)/(C)/(D)=100/250〜300/10〜20/200〜250で含む組成物を自然発酵させることにより得られる液体組成物。
(A)水と貝殻類の焼成粉末との混合液
(B)非胞子植物
(C)胞子植物
(D)塩

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品の鮮度保持に用られる液体組成物および食品の鮮度保持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品、特に生鮮食品は、収穫量が多いときは価格や出荷量を調整するために廃棄処分される事も少なくない。そして、収穫量の少ないときは価格が高騰する。このため、生鮮食品を安定に供給するために、生鮮食品の鮮度を保持したまま長期保存する方法が考えられている。長期保存する方法としては、冷凍の他、例えば、食品や食材を保存する冷蔵庫の筐体内に、遠赤外線を放射させる物質及び発熱素材を、単体または複合配合して塗布すると共に、前記冷蔵庫の筐体内に導体となる電極を取付け、前記発熱素材を発熱させて遠赤外線を放射して前記冷蔵庫の筐体内を遠赤外線加熱保温すると共に、該加熱保温温度を所定値に設定することにより、食品や食材の鮮度を維持する方法(特許文献1参照)、水56.9重量%、グリセリン40重量%、乳酸ナトリウム8重量%、塩化カリウム0.1重量%、リン酸二水素ナトリウム2重量%及びカテキン1重量%を含有する液をミョウバン処理が施された生ウニ、あるいは生エビ、鯖などの生鮮食料品に含浸させた後、これらの生鮮食品を冷蔵状態あるいは冷凍状態まで冷却して保存する方法(特許文献2参照)、および円筒状の容器内に生鮮食料品を入れ、噴射後に発泡、固化して発泡樹脂材となる発泡固化液を噴射し、発泡樹脂材中に生鮮食料品を埋め込む事を特徴とする生鮮食料品の保存方法(特許文献3参照)などが知られている。
しかし、以上に述べた従来の生鮮食品の鮮度保持による方法は、鮮度保持効果が充分でなかったり、高価で複雑な装置を必要としたりするため、実用し難しかった。また、合成添加物や化学薬品の使用は人体及び環境に害を及ぼす可能性がある。また、冷凍保存は、タンパク質や脂質の劣化など、冷凍変性を生じることがあり、さらに冷凍保管中や解凍中におけるドリップが問題となる。
【特許文献1】特開2004−41047号公報
【特許文献2】特開2004−65053号公報
【特許文献3】特開2002−262765号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、生鮮食品の鮮度を保持し、安全に使用できる工業的有利な液体組成物、及び食品の鮮度保持方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の課題を解決するため、本発明者らは、鋭意研究し、水と貝殻類の焼成粉末との混合液と非胞子植物と胞子植物と、塩、または穀物酢と糖とを一定の質量比で含む組成物を自然発酵させて得られる液体組成物に食品を接触させたのち、食品を冷凍させると、食品の鮮度が保持されることを見出した。本発明者らは、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
〔1〕以下の(A)と(B)と(C)と(D)とを質量比(A)/(B)/(C)/(D)=100/250〜300/10〜20/200〜250で含む組成物を自然発酵させることにより得られることを特徴とする液体組成物;
(A)水と貝殻類の焼成粉末との混合液
(B)非胞子植物
(C)胞子植物
(D)塩、
〔2〕食品鮮度保持用である前記〔1〕に記載の液体組成物、
〔3〕以下の(A)と(B)と(C)と(E)と(F)とを質量比(E)/(A)/(B)/(C)/(F)=100/20〜40/250〜300/0.2〜0.4/30〜50で含む組成物を自然発酵させることにより得られることを特徴とする液体組成物;
(A)水と貝殻類の焼成粉末との混合液
(B)非胞子植物
(C)胞子植物
(E)穀物酢
(F)砂糖、
〔4〕食品鮮度保持用である前記〔3〕に記載の液体組成物、
〔5〕食品に前記〔1〕〜〔4〕のいずれかの液体組成物を接触させる工程と、前記工程後に液体組成物を接触させた食品を冷凍させる工程とを含むことを特徴とする食品の鮮度保持方法、および
〔6〕前記〔1〕〜〔4〕のいずれかの液体組成物を接触させて得られることを特徴とする食品、
に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る液体組成物は、食品、とりわけ生鮮食品などの鮮度保持用組成物として有用である。本発明に係る食品の鮮度保持方法を施された食品の素材(以下、食材ともいう。)は、長期にわたり品質劣化が抑制され、食材の保存期間を延長できる。また、食材の劣化が抑制されるとその後の腐敗も抑制されるので、腐敗による臭気も抑制できる。さらに、食材を解凍するとき食材の表面と内部の温度差で細胞が破壊されて起こるドリップや、味の低下を軽減できる。このため本発明にかかる食品の鮮度保持方法を施され、冷凍保存された食材は、解凍しても、冷凍前の食材の風味を損ねることなく再現できる。また、ドリップが起こらないため食材から水分がにじみ出ることなども抑制できるので、食材の保湿、鮮度、色または質感などを最適な状態に維持する事が可能である。本発明に係る食品の鮮度保持方法は、冷凍による乾燥や冷凍やけを抑える効果も期待できる。
さらに、本発明に係る食品の鮮度保持方法を施された食品は、解凍後に再冷凍しても、再冷凍する前の凍結状態とほぼ同等になる。このため、再冷凍されても食品の鮮度は保持される。従って、食材の大量収穫時期に、本発明の鮮度保持方法を用いて食材を処理する事により食材の加工作業を即座に行わなくてすみ、計画的生産活動を行う事ができる。
また、本発明に係る液体組成物は、人体に無害な天然物質を用いるので、安全に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
まず、本発明に係る液体組成物について説明する。本発明に係る液体組成物に用いられる(A)の混合液は、水と貝殻類の焼成粉末とを混合して調製できる。この場合、水に貝殻類の焼成粉末を加えて混合してもよく、また貝殻類の焼成粉末に水を加えて混合してもよい。水と貝殻類の焼成粉末との比率は、水1Lに対して貝殻類の焼成粉末が、通常0.05mg〜1g程度とすればよく、好ましくは0.08〜0.12mg程度とすればよい。
混合は、例えば、攪拌など公知の方法により行うことができる。混合液に用いられる水は、食品に使用され得る水であれば特に限定されない。水としては、例えば、精製水、水道水、井戸水、酸素水、水素水、ミネラルウォーター、温泉水、湧き水などが挙げられる。貝殻類としては、例えば、ホッキ、ホタテ、カキ、アサリ、ハマグリ、アコヤガイ、アカガイなどが挙げられる。また、貝殻類には、サンゴ、真珠の真珠層などが含まれる。焼成粉末は、貝殻類をそのまま焼成した後に粉末にしてもよく、また予め粉末にした貝殻類を焼成してもよい。焼成温度は、通常約800〜2000℃、好ましくは約1000〜1500℃である。粉末方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、ミキサー、ミル、ロールクラッシャーまたはピンミルなどで粉砕する方法、例えば、回転式可傾型バレル研磨機などの研磨機を用いる方法などが挙げられる。また、焼成粉末は、市販の貝殻焼成カルシウムなどを使用することもできる。市販の貝殻焼成カルシウムとしては、例えば、サーフクラムCa(水元株式会社製)またはサーフセラ(サーフセラ株式会社製)などが好ましく挙げられる。水と貝殻類の焼成粉末との混合液はそのまま用いることもできるが、混合溶液のpHをアルカリ性、好ましくはpH約7.5〜9.9に調整して用いるのがよい。pHの調整は、pH調整剤で行うことができる。pH調整剤としては、食品添加物として使用できるものが好ましく、例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、乳酸、L−酒石酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウム、酢酸などが挙げられる。
【0008】
(B)の非胞子植物としては、胞子で繁殖しない食用の植物が好ましく、例えば、玉ネギ、生姜、シソ、ナス、人参、シソ、パセリなどが挙げられる。これらは、加熱されていない生のものを用いればよい。また、例えば3〜5mm角程度の大きさのものが好ましい。
【0009】
(C)の胞子植物は胞子で繁殖する植物であれば、陸生、水生に限定されないが、水生の胞子植物が好ましい。陸生の胞子植物としては、例えば、シイタケ、マイタケ、エノキタケ、シメジ、エリンギなどが挙げられる。水生の胞子植物としては、例えば、コンブ、ワカメ、ホンダワラ、カジメ、アラメ、カラスノオビ(ハバ)などが挙げられる。これらは、乾燥したものであることが好ましい。また、例えば3〜5mm角程度の大きさのものが好ましい。
【0010】
(D)の塩としては、食用塩であれば特に限定されないが、自然塩が好ましい。自然塩としては、自然海塩または岩塩などが挙げられ、塩化ナトリウムが約95質量%以上、好ましくは約98質量%以上含まれる自然海塩がより好ましい。このような塩としては、例えば、メキシコ地方のバハのカルフォルニア半島のゲレロネグロ塩田で、自然蒸発させて製造された塩などが挙げられる。自然塩は、例えば、減圧下で塩の結晶に含まれる水分などを除去してもよい。
【0011】
(E)の穀物酢としては、米酢または米以外の例えば、小麦、大麦、米、酒かす、コーンなどの穀類を主原料とする穀物酢などが挙げられる。
【0012】
(F)の砂糖としては、例えば、白糖、三温糖、黒砂糖、ザラメなどが挙げられる。
【0013】
本発明に係る液体組成物は、以下の工程により製造できる。
工程1:少なくとも上記(A)と(B)と(C)と(D)とを混合、または(A)と(B)と(C)と(E)と(F)とを混合して組成物を調製する工程。
工程2:上記工程1で調製した組成物を自然発酵させる工程。
【0014】
工程1において、(A)と(B)と(C)と(D)との割合(質量比)は、(A)/(B)/(C)/(D)=約100/260〜270/15〜18/230〜240が好ましい。また(A)と(B)と(C)と(E)と(F)との割合(質量比)は、(E)/(A)/(B)/(C)/(F)=約100/25〜35/260〜270/0.25〜0.35/35〜40が好ましい。前記質量比で調製される液体組成物が、食品の鮮度保持に好適である。混合は、例えば、ミキサーやホモミキサーなどの攪拌機を用い、公知の方法で行うことができる。
【0015】
工程2において、自然発酵は、自然の温度(通常約5〜30℃、好ましくは20〜25℃)で行われることが好ましい。発酵は、組成物に白い泡が出て透明感が認められるまで行われることが好ましい。発酵時間は、気温、湿度などにより異なるが、通常約5〜30日、好ましくは約10〜15日である。
自然発酵後の液体組成物は、そのまま用いてもよく、また、例えば、布やフィルターなどのろ材を用いてろ過してもよい。
【0016】
本発明に係る液体組成物はその効果を妨げない範囲で、必要に応じて有機酸や酸化防止剤、アルコール類、甘味料、保存料、乳化剤、増粘安定剤、ビタミン類などの強化剤、香辛料、酵素、pH調整剤、調味料、着色料または光沢剤など、食品分野で通常使用されている種々の添加物を併用することができる。また、本発明に係る液体組成物に、必要に応じて適宜これらの成分を添加することもできる。
【0017】
有機酸としては、例えば、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸ナトリウムまたはリンゴ酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0018】
酸化防止剤としては、例えば、リンゴエキス、ドクダミ抽出物、ブルーベリー葉抽出物、コメヌカ油抽出物、没食子酸、エラグ酸、カテキンもしくはプロアントシアニジンなどの天然抽出物、エリソルビン酸、クエン酸エステルもしくはエリソルビン酸ナトリウムなどの有機酸類、ビタミンCもしくはビタミンEなどのビタミン類またはエデト酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0019】
アルコール類としては、例えば、エタノール(合成アルコール、発酵アルコール)などが挙げられる。
【0020】
甘味料としては、例えば、ソルビット、ブドウ糖、サッカリン、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、キシリトール、グリチルリチン酸ナトリウム、ステビア、単糖類、二糖類またはオリゴ糖類などが挙げられる。
【0021】
保存料としては、例えば、しらこたん白、ポリリジンなどの天然抽出物、ソルビン酸またはソルビン酸カリウムなどが挙げられる。
【0022】
乳化剤としては、例えば、サポニン、ダイズサポニンもしくはレシチンなどの天然抽出物、グリセリンエステル、ショ糖エステル、ソルビタンエステルまたはプロピレングリコールエステルなどが挙げられる。
【0023】
増粘安定剤としては、例えば、グアーガム、タラガム、アラビアガム、カードランもしくはキサンタンガムなどの多糖類、カラギナンもしくはアルギン酸などの海藻抽出物、キチンもしくはキトサンなどの甲殻抽出物、ペクチンなどの植物抽出物またはデキストランなどが挙げられる。
【0024】
強化剤としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンB、ビタミンCもしくはビタミンEなどのビタミン類、クエン酸カルシウムもしくは炭酸カルシウムなどのカルシウム塩類、塩化鉄もしくはクエン酸鉄などの鉄塩類またはロイシン、テアニンもしくはグルタミン酸などのアミノ酸などが挙げられる。
【0025】
香辛料としては、例えば、コショウ、ゴマ、ハッカ、バジル、ニンニクまたはオレガノなどを基原物質とする香辛料などが挙げられる。
【0026】
酵素としては、例えば、アミラーゼ、カタラーゼ、タンナーゼ、パパイン、プロテアーゼ、乳酸菌、グルコースオキシダーゼまたはトランスフェラーゼなどが挙げられる。
【0027】
pH調整剤としては、例えば、クエン酸三ナトリウム、クエン酸、乳酸、L−酒石酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素カリウムまたは酢酸などが挙げられる。
【0028】
調味料としては、例えば、アスパラギンもしくはバリンなどのアミノ酸類、イノシン酸ナトリウムもしくはリボヌクレオチドカルシウムなどの核酸、みりん、酢、味噌、酵母エキスまたは昆布エキスなどが挙げられる。
【0029】
着色料としては、例えば、アナトー、クチナシ、カロチノイド、アントシアニンもしくはフラボノイドなどの天然抽出物、アルミ末、金もしくは銀などの金属類、赤色2号、赤色40号、黄色4号、黄色5号、緑色3号、青色1号または鉄葉緑素などが挙げられる。
【0030】
なお、上記のような種々の添加物成分の液体組成物中への好ましい添加量は、食品の鮮度保持を目的として液体組成物を食品に接触させる際に、各種添加物の有効量が鮮度保持在中に含有されているようにすればよい。
【0031】
本発明に係る液体組成物は、食品、とりわけ生鮮食品、例えば、魚介類(例えば、ホッケ、カツオ、キビナゴ、ママカリ、グルクン、サワラ、アジ、サバ、マグロ、カタクチイワシ、サンマ、タイ、ヒラメ、カレイ、トビウオ、イカ、ホタルイカ、エビ、貝柱、ノレソレ、カニ、シーラ、ウニ、クジラ、イルカ、サメなどの海水魚;コイ、フナ、ドジョウ、ウナギなどの淡水魚)、肉類(例えば、ウシ、ブタ、ニワトリ、ヒツジなど)、野菜(例えば、人参、パセリ、大葉、キュウリ、ジャガイモ、タマネギなど)または果物(例えば、サクランボ、プルーン、パイナップル、サンゴ、梨、桃など)などの鮮度保持用の組成物として使用できる。前記食品は、丸のままでもよく、切り身であってもよい。また、食品の部位は限定されず、例えば、肝、腸、胃、卵巣、心臓、または白子などの贓物などであってもよい。本発明に係る液体組成物は、前記食品の鮮度保持方法に使用できる。
【0032】
次に、本発明に係る食品の鮮度保持方法について説明する。食品の鮮度保持方法は、以下の工程を含む。
工程a:食品に本発明に係る液体組成物を接触させる工程
工程b:工程a後に液体組成物を接触させた食品を冷凍させる工程
【0033】
工程aにおいて、食品と本発明に係る液体組成物との接触方法としては、例えば、食品を液体組成物に浸漬させる方法、あるいは液体組成物を食品に塗布、噴霧または注入する方法などが挙げられる。接触時間は、食品の種類、大きさ、接触方法などにより異なるが、例えば、鮮魚の冊(約150〜250g)を浸漬する場合、浸漬時間は、通常約3秒〜10分間、好ましくは約3秒〜4分間である。上記範囲であれば、鮮度保持効果が十分に得られるとともに、塩辛くなりすぎることがない。食品を液体組成物に浸漬後、該食品をそのまま次の工程に付してもよく、また、水や塩水などで洗浄してもよい。
工程bにおいて、食品を冷凍させる温度は通常約−50〜−10℃、好ましくは−45〜−30℃である。本発明では、−10℃程度の比較的高い温度で冷凍しても、食品の鮮度が保持される。冷凍時間は、約12〜24時間が好ましい。その後は−50℃以下の温度で冷凍保存すればよい。また、魚介類を生食用とする場合には、−10℃程度の比較的高い温度で冷凍することもできるが、約−30℃以下で約24時間以上冷凍保存することが好ましい。その後は−50℃以下の温度で冷凍保存すればよい。冷凍にあたり、食品に付着した水分は、例えば布や紙などで除去されることが好ましい。また、食品を公知の方法で包装(例えば、真空包装など)した後に冷凍してもよい。
【0034】
冷凍後の食品は、そのまま冷凍下で保存でき、冷凍保存することが好ましい。冷凍された食品の解凍は、約20〜26℃の水または塩水に浸漬させるなど、公知の方法で自然解凍すればよい。解凍後の食品は、再冷凍することもできる。再冷凍は、前記冷凍における記載の方法により行うことができる。
【0035】
また、食品に本発明に係る液体組成物を接触させた後、食品をそのまま冷蔵保存してもよく、また、乾燥保存してもよい。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥や、加熱、送風または減圧などによる人工乾燥が挙げられる。
【実施例】
【0036】
以下の実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0037】
実施例1,2(液体組成物1,2)および比較例1〜4(比較組成物1〜4)において水と貝殻類の焼成粉末との混合溶液は、水1Lにサーフセラ(サーフセラ株式会社製)0.1mgを混合した溶液を用いた。塩は、メキシコ地方のバハのカルフォルニア半島のゲレロネグロ塩田で、自然蒸発させてできた塩の結晶を輸入し、減圧バッキして微粉末にしたものを用いた。非胞子植物として、玉葱、生姜、大葉(玉葱:生姜:大葉の重量比は100:10:1)の混合物を用いた。胞子植物として、昆布を用いた。これらを後掲の表1に示す組成で混合し、約20℃で2週間自然発酵させた。
また、実施例3,4(液体組成物3,4)および比較例5〜8(比較組成物5〜8)において、水と貝殻類の焼成粉末との混合溶液および塩は、実施例1,2および比較例1〜4と同じものを用いた。また、穀物酢としてミツカン社製の銀洗(商品名)を用い、砂糖として波動法社製の上白糖を用いた。これらを後掲の表2に示す組成で混合し、約20℃で2週間自然発酵させた。
【0038】
組成物の評価(1)
銚子港で早朝水揚げされたばち鮪32kgを約200gの冊に切り分けた。次いで、冊を各液体組成物または比較組成物1Lに3分間それぞれ浸漬した。浸漬後、冊を水で洗浄し、表面の水分をペーパータオルで拭き取った。次いで、冊を真空包装し、−30℃下で冷凍し、−30℃で10日間保存した。10日後、冷凍保存した冊を室温(約20℃)で自然解凍した。解凍した冊を肉眼で観察し、冊表面の保湿状態およびドリップを以下の基準で判定した。
ドリップ:Aほとんど出ない ・ B少量出ている ・ C出ている
保湿状態:Aほとんど乾燥無し ・ Bやや乾燥している ・ C乾燥している
また、臭気を匂嗅で判定(Aほとんど匂わない ・ B少し匂う ・ C生臭い)した。さらに解凍した冊の約15gを切り出し、水を加えてすり潰した。このすり潰した魚液の全量中の好気性細菌および大腸菌数をそれぞれ、W55000ペトリフィルム(生菌数測定用ACプレート;株式会社サンプラテック製)およびW55001ペトリフィルム(大腸菌群数測定用CCプレート;株式会社サンプラテック製)を用いて測定した。測定はそれぞれ製品説明書に従った。48時間培養後のW55000ペトリフィルムおよび24時間培養後のW55001ペトリフィルムに現れるコロニーを観察し、培養後の両ペトリフィルムにコロニーが現われなかったものを細菌陰性とし、いずれか一方または両方のペトリフィルムにコロニーが1個以上現われたものを細菌陽性とした。
その結果を表1および表2に示した。
実施例1乃至4で得られた液体組成物1乃至4に浸漬したばち鮪の総合評価は、○か◎で、細菌の繁殖もなく、ドリップ、保湿状態とも良好で、鮮度が保持されていることが分かった。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【0041】
組成物の評価(2)
評価(1)と同様に、ばち鮪の冊を実施例1乃至4で得られた各液体組成物で処理し、−30℃下で冷凍した。−30℃で10日間保存後、冷凍保存した冊を室温(約20℃)で自然解凍した。洗浄して水気を拭き取り真空包装して、再度−30℃以下で冷凍保存した。10日後にそれを全解凍して実施例5と同じ検分をした。その結果、実施例1乃至4で得られた液体組成物1乃至4に浸漬したばち鮪は、細菌の繁殖もなく、ドリップ、保湿状態とも良好で、鮮度が保持されていた。
【0042】
組成物の評価(3)
八丈島で水揚げされたムロアジおよびキメジ(キハダマグロ幼魚)をそれぞれ三枚におろし、それぞれの身を実施例1の液体組成物1(MR:ミラクルーノ)に5分間浸漬後、冷凍庫(−15℃)に保存した。対照として、おろしたムロアジおよびキメジの身をそのまま、冷凍庫に保存した。保存1日後、各魚身を解凍し、外観を観察した。実施例1の液体組成物1(MR)で処理したムロアジの身は対照のムロアジの身に比べ、全体的に光沢があり、背側の皮が青く、腹部側の皮は白く輝いていた。また、対照のキメジの血合いは茶色く変色していたのに対し、MRで処理したキメジの血合いは赤く、水揚げ直後のキメジの血合いの色と変わりなかった。さらに、切り身とした場合、対照のキメジは身にツヤがなかったのに対し、MRで処理したキメジは身に弾力とツヤがあり、切り口が鮮やかで、かつ身が締まっていた。
以上のことから、MRで処理したムロアジおよびキメジの身は、鮮度が保持されていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の液体組成物は、食品、特に生鮮食品の鮮度保持用として安全に利用できる。また、本発明の食品の鮮度保持方法を使用すると、食品を新鮮な状態で長期保存ができるため、収穫量に左右される事無く、出荷時期をコントロールする事が出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)と(B)と(C)と(D)とを質量比(A)/(B)/(C)/(D)=100/250〜300/10〜20/200〜250で含む組成物を自然発酵させることにより得られることを特徴とする液体組成物。
(A)水と貝殻類の焼成粉末との混合液
(B)非胞子植物
(C)胞子植物
(D)塩
【請求項2】
食品鮮度保持用である請求項1に記載の液体組成物。
【請求項3】
以下の(A)と(B)と(C)と(E)と(F)とを質量比(E)/(A)/(B)/(C)/(F)=100/20〜40/250〜300/0.2〜0.4/30〜50で含む組成物を自然発酵させることにより得られることを特徴とする液体組成物。
(A)水と貝殻類の焼成粉末との混合液
(B)非胞子植物
(C)胞子植物
(E)穀物酢
(F)砂糖
【請求項4】
食品鮮度保持用である請求項3に記載の液体組成物。
【請求項5】
食品に請求項1〜4のいずれかの液体組成物を接触させる工程と、前記工程後に液体組成物を接触させた食品を冷凍させる工程とを含むことを特徴とする食品の鮮度保持方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかの液体組成物を接触させて得られることを特徴とする食品。

【公開番号】特開2009−39053(P2009−39053A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208718(P2007−208718)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(501375375)
【Fターム(参考)】