説明

鮮度保持部材及びその製造方法

【課題】効果的な食品の鮮度保持効果を得ることができる鮮度保持部材及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸させた後に乾燥させることで竹エキス含浸ゼオライト粉末を製造する。次に、この竹エキス含浸ゼオライト粉末とドロマイト粉末(または竹粉末)とふすま粉末とコンスターチ粉末とポリプロピレンとを混合して加熱・成形することで所望の形状の鮮度保持発泡シート1−1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品などの鮮度の保持を効果的に行うことができるばかりか、自然環境の保全にも寄与することができる鮮度保持部材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、合成樹脂に植物自体又はその加工材(例えば「竹の粉末」や「おから」や「ふすま」など)を混合し、これによって合成樹脂成形品に生分解性を持たせ、同時に焼却時に有害ガスが発生しないようにした成形品が利用されている。
【0003】
特に竹には、エチレンガス吸収作用や、抗菌作用があるため、これを食品関連の商品(食品トレーなど)に用いれば、食品の鮮度を長く保つことができ、好適である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−148017号公報
【特許文献2】特開2001−2838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上述のように合成樹脂中に竹の粉末を混合しただけでは、エチレンガス吸収作用や抗菌作用が必ずしも大きいとは言えず、さらに大きなエチレンガス吸収作用や抗菌作用を有し、これによってさらに効果的な食品の鮮度保持効果が得られる部材が求められていた。
【0006】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、効果的な食品の鮮度保持効果を得ることができる鮮度保持部材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の発明は、粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸ゼオライト粉末と、ドロマイト粉末と、植物自体又はその加工材の粉末と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを、混合して成形したことを特徴とする鮮度保持部材にある。
【0008】
本願請求項2に記載の発明は、粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸ゼオライト粉末と、竹粉末と、植物自体又はその加工材の粉末と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを、混合して成形したことを特徴とする鮮度保持部材にある。
【0009】
本願請求項3に記載の発明は、粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸ゼオライト粉末と、植物自体又はその加工材の粉末と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを、混合して成形したことを特徴とする鮮度保持部材にある。
【0010】
本願請求項4に記載の発明は、粉末状のゼオライトと、竹エキスと、ドロマイト粉末と、植物自体又はその加工材の粉末と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを用意し、前記粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸させた後に乾燥させることで竹エキス含浸ゼオライト粉末を製造する工程と、前記竹エキス含浸ゼオライト粉末とドロマイト粉末と植物自体又はその加工材の粉末とポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを混合して加熱・成形することで所望の形状の鮮度保持部材を形成する工程と、を有することを特徴とする鮮度保持部材の製造方法にある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、濃縮することで竹自体よりもエチレンガス吸着効果及び抗菌効果の高くなった竹エキスを多数の微細孔を有する粉末状のゼオライトの前記微細孔に含浸させて乾燥しているので、ゼオライトに付着した竹エキスの表面積を非常に大きくすることができ、効果的に空気中のエチレンガスを吸着することができ、同時に効果的に抗菌作用を発揮させることができる。つまりエチレンガス吸着効果と抗菌作用の高い竹エキスを用いると同時に、この竹エキスをゼオライトに含浸・乾燥させることで竹エキスの付着表面積を非常に大きくしたので、非常に効果的なエチレンガス吸着効果と抗菌作用とを発揮させることができる。
さらに本発明においては、竹エキスよりも大きな抗菌作用を有するドロマイトを混合しているので、竹の抗菌作用と相まって、大きな抗菌作用を発揮することができる。
これらのことから、効果的な食品等の鮮度保持効果を得ることができる。
またこの鮮度保持部材を廃棄したような場合でも、植物自体又はその加工材の粉末は微生物などによって分解して土中に親和し、また竹エキス含浸ゼオライト粉末とドロマイト粉末は元々土の一種であって土に帰り、樹脂として生分解性樹脂を用いた場合はこれも微生物によって分解し、ポリオレフィン系樹脂は残るがその量は少なくてしかもゼオライトの粉末やドロマイトの粉末が間に入り込んでいるので風雨、太陽光などの自然の物理化学的作用によって結局ポリオレフィン系樹脂も分散されて土のように小さな粒になってしまう。また焼却しても合成樹脂成分が少ないので発熱カロリーが低くて焼却炉を傷めることも少なく、焼却時に黒いすすや有害ガスが発生せず、自然環境の保全にも寄与できる。
【0012】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様に、多数の微細孔を有する粉末状のゼオライトの前記微細孔に、竹から抽出した濃縮液である竹エキスを含浸させたので、効果的に空気中のエチレンガスを吸着することができ、同時に効果的に抗菌作用を発揮させることができ、効果的な食品等の鮮度保持効果を得ることができる。
またこの鮮度保持部材を廃棄又は焼却したような場合でも、請求項1に記載の発明と同様に、自然環境を汚染する等の負荷が小さく、その保全を図ることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様に、多数の微細孔を有する粉末状のゼオライトの前記微細孔に、竹から抽出した濃縮液である竹エキスを含浸させたので、効果的に空気中のエチレンガスを吸着することができ、同時に効果的に抗菌作用を発揮させることができ、効果的な食品等の鮮度保持効果を得ることができる。
またこの鮮度保持部材を廃棄又は焼却したような場合でも、請求項1に記載の発明と同様に、自然環境を汚染する等の負荷が小さく、その保全を図ることができる。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1に記載の鮮度保持部材を、容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】鮮度保持発泡シート1−1の製造工程フロー図である。
【図2】鮮度保持発泡シート1−1の製造装置を示す概略構成図である。
【図3】鮮度保持発泡シート1−1の斜視図である。
【図4】トマトにおける鮮度保持比較の実験結果を示す図である。
【図5】イチゴにおける鮮度保持比較の実験結果を示す図である。
【図6】鮮度保持発泡シート1−2の製造工程フロー図である。
【図7】鮮度保持発泡シート1−3の製造工程フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る鮮度保持部材は、粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸ゼオライト粉末と、ドロマイト粉末と、植物自体又はその加工材の粉末と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを混合して成形することで構成される。
【0017】
ゼオライトは、主にアルミニウム(Al)とケイ素(Si)から構成される結晶(ケイ素とアルミニウムが酸素(O)を介して結合した構造)である。ゼオライトの結晶中には多数の極めて小さい穴(微細孔)があり、この微細孔によって分子を吸着したり、その内部で分子を化学反応させることができる。ゼオライトには天然ゼオライトと人工ゼオライトがあり、何れを用いても良いが、以下の各実施例では人工ゼオライトを用いている。
【0018】
竹エキスは、例えば孟宗竹等の竹をチップ化し、乾留抽出(加熱+減圧、例えば200℃で20mmHgの減圧下で抽出)する事で精製されたエキスである。竹エキスには、竹の中のエチレンガス吸着物質や抗菌物質が抽出されており、竹の粉末以上にこれら物質が濃縮されている。
【0019】
ドロマイトとは、別名、白雲石または苦灰石と呼ばれる、カルシウムとマグネシウムの複合炭酸塩CaMg(COまたはこれを主成分とする岩石をいう。またこのドロマイトを加熱すると700〜800℃でMgCO分が分解してCOを放出し、炭酸カルシウム(CaCO)と酸化マグネシウム(MgO)の焼成物(以下単に焼成ドロマイトAともいう)となり、さらに900〜950℃でCaCOが分解してCOを放出し、酸化カルシウム(CaO)と酸化マグネシウム(MgO)の焼成物(以下単に焼成ドロマイトBともいう)となる特性を有している。よって、この実施形態で用いられる焼成ドロマイトとは、酸化マグネシウムと炭酸カルシウムを主成分とする焼成ドロマイトAと、酸化マグネシウムと酸化カルシウムを主成分とする焼成ドロマイトBの少なくとも一方を含むものをいう。焼成ドロマイトは、高い抗菌性と、焼却した際のダイオキシン類の発生を抑制する機能を有している。
【0020】
植物自体又はその加工材の粉末は、以下の実施例では、小麦を精製する際に得られる固形物(粕)であるふすまとコンスターチの混合物を用いるが、その他にも、おから、大豆殻(脱脂大豆蛋白)、コーヒー粕、ビール粕、醤油の絞り粕、米ぬか等の植物残渣物、または紙、竹、木等の粉末を用いても良い。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレンなどのオレフィン類の単独重合体、または異種ポリオレフィンとの共重合体の総称であり、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどがその代表的なものである。以下の実施例ではポリプロピレンを用いる。
【0022】
生分解性樹脂は、微生物或いはその他の生物の代謝作用によって分解可能なポリマーのことであり、例えば天然高分子系、微生物生産ポリエステル、脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸等、又はこれらの混合物をいう。
【0023】
(第1実施例)
図1は、上記第1実施形態を用いて製造される第1実施例に係る鮮度保持発泡シート1−1の製造工程フロー図である。また図2は第1実施例に係る鮮度保持発泡シート1−1の製造装置を示す概略構成図である。
【0024】
鮮度保持発泡シート1−1を製造するには、まず粉末状のゼオライトを竹エキスに浸漬することでゼオライトに竹エキスを含浸した後、このゼオライトを竹エキスから取り出す(ステップ1)。次にこのゼオライトを乾燥することで竹エキス含浸ゼオライト粉末を得る(ステップ2)。
【0025】
次に前記竹エキス含浸ゼオライト粉末5重量%と、ドロマイト粉末7重量%と、ふすま粉末25重量%と、コンスターチ粉末38重量%と、ポリプロピレン25重量%とを図2に示す攪拌混合機10に投入し(ステップ3)、攪拌部材11によって混合攪拌する(ステップ4)。
【0026】
次に攪拌混合機10によって混合された混合物を加熱押出し機20に導入して螺旋状の突条23を設けたスクリュー25をシリンダ21内で回転することで混練しながらヒータ27で加熱溶融し、発泡機構30内に押し出し、さらに発泡機構30で加圧した後に外部に吐き出して発泡する。発泡機構30からはシート状の発泡シート40、即ち所望の成形品が押し出される。さらにこの実施例の場合、前記発泡シート40を加圧ローラ50−1,50−2の間に通し、上側の加圧ローラ50−1に形成した多数の凹部によって、発泡シート40の上面に多数の球面状に突出する緩衝用突部41を形成することで所望の成形品である鮮度保持発泡シート1−1を完成する。図3は鮮度保持発泡シート1−1を所定の大きさにカットした状態を示す斜視図である。
【0027】
鮮度保持発泡シート1−1は、弾性を有する発泡シートである上に弾性を増加させる緩衝用突部41を有しているので、この鮮度保持発泡シート1−1の上に各種農産物(野菜,果物等)等を載置したり、この鮮度保持発泡シート1−1によって各種農産物等を包んだりして保管等する際に各種農産物等が傷つけられることはない。
【0028】
同時に鮮度保持発泡シート1−1を構成する粉末状のゼオライトの微細孔に、竹から抽出した竹成分の濃縮液である竹エキスを含浸させているので、竹成分が有するエチレンガス吸着効果及び抗菌効果が発揮される。つまり、農産物(特に野菜,果物等)等は、発酵によってエチレンガスを発生し、放出されたエチレンガスによってさらに発酵が進むことが知られている。よって前記竹成分によってエチレンガスが吸着されることで、エチレンガスによる農産物等の腐敗速度を遅らせ、同時に竹成分による抗菌効果によって腐敗菌の活動を減少させ、これらのことから農産物等の新鮮さを長く保持することができる。
【0029】
特に本発明では、濃縮することで竹自体よりもエチレンガス吸着効果及び抗菌効果の高くなった竹エキスを多数の微細孔を有する粉末状のゼオライトの前記微細孔に含浸させて乾燥しているので、ゼオライトに付着した竹エキスの表面積を非常に大きくすることができ、効果的にエチレンガスの吸着と抗菌作用とを発揮させることができる。その上さらに本実施例の場合、成形品が発泡しているので、成形品の表面積が大きく、成形品の表面に露出しているゼオライトの表面積がさらに非常に大きく、さらにより効果的にエチレンガスの吸着と抗菌作用とを発揮させることができる。つまりエチレンガス吸着効果と抗菌作用の高い竹エキスを用いると同時に、この竹エキスをゼオライトに含浸・乾燥させ、さらに合成樹脂を発泡させることで竹エキスの付着表面積を非常に大きくしたので、非常に効果的なエチレンガス吸着効果と抗菌作用とを発揮させることができる。
【0030】
一方、ドロマイトは前述のように高い抗菌性を有するので、竹の抗菌作用と相まって、本発明においてはさらに大きな抗菌作用を発揮することができ、この点からもより効果的に腐敗菌の活動を減少させ、農産物等の新鮮さを長く保持することができる。
【0031】
一方この鮮度保持発泡シート1−1を廃棄したような場合は、ふすまとコンスターチの粉末は微生物などによって分解して土中に親和し、また竹エキス含浸ゼオライト粉末とドロマイト粉末は元々土の一種であって土に帰り、結局ポリプロピレンが残るがその量は少なくてしかもゼオライトの粉末やドロマイトの粉末が間に入り込んでいるので風雨、太陽光などの自然の物理化学的作用によって結局ポリプロピレンも分散されて土のような小さな粒になってしまう。また焼却しても合成樹脂成分が少ないので発熱カロリーが低くて焼却炉を傷めることも少なく、ドロマイトによるダイオキシン類の発生抑制機能も寄与することで焼却時に黒いすすや有害ガスが発生せず、自然環境の保全に寄与できる。
【0032】
図4はトマトにおける鮮度保持比較の実験結果を示す図であり、容器のシートを敷かない底面上に直接トマトを載置して密閉し常温にて放置した場合と、前記と同じ形状・寸法の容器の底面に比較例1に係る発泡シートを敷いてその上にトマトを載置して密閉し常温にて放置した場合と、前記と同じ形状・寸法の容器の底面に上記第1実施例に係る鮮度保持発泡シート1−1を敷いてその上にトマトを載置して密閉し常温にて放置した場合のそれぞれについて、経時的に腐敗の状態を測定したものである。ここで比較例1に係る発泡シートは、前記第1実施例と同じ加熱押出し機20を用いてポリプロピレンのみにて発泡シートを製造し、この製造した発泡シートを上記竹エキスに浸漬することでその表面に竹エキスを塗布し、乾燥させた発泡シートである。つまり上記第1実施例との違いは、粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸ゼオライト粉末を用いずに、単に発泡シートの表面に竹エキスを塗布・乾燥させた発泡シートである点、及びドロマイト粉末とふすま粉末とコンスターチ粉末を混合していない発泡シートである点である。
【0033】
図4からわかるように、シートなし、即ち通常の密閉容器内での自然放置の場合は10日後にはトマトが傷み始める。また比較例1の場合は10日後当りまでは新鮮さを保っているが、15日後当りから傷み始める。一方第1実施例の場合は20日後当りまで新鮮さを保ち、25日後当りから傷み始める。
【0034】
図5はイチゴにおける鮮度保持比較の実験結果を示す図であり、上記トマトの場合と同じように、容器のシートを敷かない底面上に直接イチゴを載置して密閉し常温にて放置した場合と、前記と同じ形状・寸法の容器の底面に比較例1に係る発泡シートを敷いてその上にイチゴを載置して密閉し常温にて放置した場合と、前記と同じ形状・寸法の容器の底面に上記第1実施例に係る鮮度保持発泡シート1−1を敷いてその上にイチゴを載置して密閉し常温にて放置した場合のそれぞれについて、経時的に腐敗の状態を測定したものである。
【0035】
図5からわかるように、シートなし、即ち通常の密閉容器内での自然放置の場合は3日後にはイチゴの傷みが激しくなる。また比較例1の場合も3日後にはイチゴの傷みが激しくなる。一方第1実施例の場合は5日後当りから傷み始める。
【0036】
以上の実験結果からわかるように、第1実施例に係る鮮度保持発泡シート1−1を用いれば、効果的に食品の鮮度保持効果を得ることができた。
【0037】
これに対して比較例1の場合、竹エキスを発泡シートの表面に塗布しているので、竹エキスのエチレンガス吸着効果及び抗菌効果によって、シートなしの場合に比べて、上記のように食品の鮮度を長く保つことができる。しかしながら第1実施例のように、竹エキスをゼオライトの微細孔に含浸させて乾燥しているものではなく、竹エキスが付着している表面積が第1実施例に比べて格段に小さい。また竹エキスはこれを塗布する発泡シートの表面によってはじかれ、表面全体にまんべんなく付着できない。また抗菌作用を有するドロマイトを混合していない。これらのことから、比較例1の発泡シートを用いた場合、第1実施例の鮮度保持発泡シート1−1に比べて食品等の腐敗の進行が早い。
【0038】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る鮮度保持部材は、粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸ゼオライト粉末と、竹粉末と、植物自体又はその加工材の粉末と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを混合して成形することで構成される。即ち上記第1実施形態と相違する点は、ドロマイトの粉末の代りに竹の粉末を配合した点である。
【0039】
(第2実施例)
図6は、上記第2実施形態を用いて製造される第2実施例に係る鮮度保持発泡シート1−2の製造工程フロー図である。なお鮮度保持発泡シート1−2の製造装置としては上記図2に示す製造装置を使用する。
【0040】
鮮度保持発泡シート1−2を製造するには、粉末状のゼオライトを竹エキスに浸漬することでゼオライトに竹エキスを含浸した後、このゼオライトを竹エキスから取り出す(ステップ1)。次にこのゼオライトを乾燥することで竹エキス含浸ゼオライト粉末を得る(ステップ2)。
【0041】
次に前記竹エキス含浸ゼオライト粉末7重量%と、竹粉末7重量%と、ふすま粉末25重量%と、コンスターチ粉末36重量%と、ポリプロピレン25重量%とを図2に示す攪拌混合機10に投入し(ステップ3)、攪拌部材11によって混合攪拌する(ステップ4)。次に攪拌混合機10を用いて図3に示すと同様の形状の鮮度保持発泡シート1−2を得る(ステップ5,6)。
【0042】
鮮度保持発泡シート1−2も、その上に各種農産物(野菜,果物等)等を載置したり、この鮮度保持発泡シート1−2によって各種農産物等を包んだりして保管等する際、各種農産物等を傷つけることはない。
【0043】
同時に鮮度保持発泡シート1−2を構成する粉末状のゼオライトの微細孔に、竹から抽出した竹成分の濃縮液である竹エキスを含浸させているので、竹成分が有するエチレンガス吸着効果及び抗菌効果が発揮され、農産物等の新鮮さを長く保持することができる。
【0044】
特に本発明では、濃縮することで竹自体よりもエチレンガス吸着効果及び抗菌効果の高くなった竹エキスを多数の微細孔を有する粉末状のゼオライトの前記微細孔に含浸させて乾燥しているので、ゼオライトに付着した竹エキスの表面積を非常に大きくすることができ、効果的にエチレンガスの吸着と抗菌作用とを発揮させることができる。その上さらに本実施例の場合、成形品が発泡しているので、成形品の表面積が大きく、成形品の表面に露出しているゼオライトの表面積がさらに非常に大きく、さらにより効果的にエチレンガスの吸着と抗菌作用とを発揮させることができる。
【0045】
一方、竹粉末も抗菌性を有するので、この点からもより効果的に腐敗菌の活動を減少させ、農産物等の新鮮さを長く保持することができる。
【0046】
一方この鮮度保持発泡シート1−2を廃棄したような場合でも、ふすまとコンスターチの粉末及び竹粉末は微生物などによって分解して土中に親和し、また竹エキス含浸ゼオライト粉末は元々土の一種であって土に帰り、結局ポリプロピレンが残るがその量は少なくてしかもゼオライトの粉末が間に入り込んでいるので風雨、太陽光などの自然の物理化学的作用によって結局ポリプロピレンも分散されて土のような小さな粒になってしまう。また焼却しても合成樹脂成分が少ないので発熱カロリーが低くて焼却炉を傷めることも少なく、自然環境の保全に寄与できる。
【0047】
上記鮮度保持発泡シート1−2を用いて、イチゴについて上記と同じ鮮度保持比較の実験を行ったが、前記図5に示すように、シートなしや比較例1よりもイチゴの鮮度保持期間を長くすることができた。
【0048】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係る鮮度保持部材は、粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸ゼオライト粉末と、植物自体又はその加工材の粉末と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを混合して成形することで構成される。即ち上記第1実施形態と相違する点は、ドロマイトの粉末を配合しない点である。
【0049】
(第3実施例)
図7は、上記第3実施形態を用いて製造される第3実施例に係る鮮度保持発泡シート1−3の製造工程フロー図である。なお鮮度保持発泡シート1−3の製造装置としては上記図2に示す製造装置を使用する。
【0050】
鮮度保持発泡シート1−3を製造するには、粉末状のゼオライトを竹エキスに浸漬することでゼオライトに竹エキスを含浸した後、このゼオライトを竹エキスから取り出す(ステップ1)。次にこのゼオライトを乾燥することで竹エキス含浸ゼオライト粉末を得る(ステップ2)。次に前記竹エキス含浸ゼオライト粉末15重量%と、ふすま粉末25重量%と、コンスターチ粉末35重量%と、ポリプロピレン25重量%とを図2に示す攪拌混合機10に投入し(ステップ3)、攪拌部材11によって混合攪拌する(ステップ4)。次に攪拌混合機10を用いて図3に示すと同様の形状の鮮度保持発泡シート1−3を得る(ステップ5,6)。
【0051】
鮮度保持発泡シート1−3も、その上に各種農産物(野菜,果物等)等を載置したり、この鮮度保持発泡シート1−3によって各種農産物等を包んだりして保管等する際、各種農産物等を傷つけることはない。
【0052】
同時に鮮度保持発泡シート1−3を構成する粉末状のゼオライトの微細孔に、竹から抽出した竹成分の濃縮液である竹エキスを含浸させているので、竹成分が有するエチレンガス吸着効果及び抗菌効果が発揮され、農産物等の新鮮さを長く保持することができる。
【0053】
特に本発明では、濃縮することで竹自体よりもエチレンガス吸着効果及び抗菌効果の高くなった竹エキスを多数の微細孔を有する粉末状のゼオライトの前記微細孔に含浸させて乾燥しているので、ゼオライトに付着した竹エキスの表面積を非常に大きくすることができ、効果的にエチレンガスの吸着と抗菌作用とを発揮させることができる。その上さらに本実施例の場合、成形品が発泡しているので、成形品の表面積が大きく、成形品の表面に露出しているゼオライトの表面積がさらに非常に大きく、さらにより効果的にエチレンガスの吸着と抗菌作用とを発揮させることができる。
【0054】
一方この鮮度保持発泡シート1−3を廃棄したような場合でも、ふすまとコンスターチの粉末は微生物などによって分解して土中に親和し、また竹エキス含浸ゼオライト粉末は元々土の一種であって土に帰り、結局ポリプロピレンが残るがその量は少なくてしかもゼオライトの粉末が間に入り込んでいるので風雨、太陽光などの自然の物理化学的作用によって結局ポリプロピレンも分散されて土のような小さな粒になってしまう。また焼却しても合成樹脂成分が少ないので発熱カロリーが低くて焼却炉を傷めることも少なく、自然環境の保全に寄与できる。
【0055】
上記鮮度保持発泡シート1−3を用いて、イチゴについて上記と同じ鮮度保持比較の実験を行ったが、前記図5に示すように、シートなしや比較例1よりもイチゴの鮮度保持期間を長くすることができた。
【0056】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。例えば、上記各実施形態では各部材を混合・溶融した後にこれを発泡させシート状に成形した例を示したが、必ずしもシート状に成形しなくても良く、直方体状やその他の各種形状に成形しても良い。また必ずしも発泡させない成形品としても良い(もちろん発泡させた方が竹エキスの付着したゼオライトの露出表面積を非常に広くできるので、竹成分による効果は大きい)。
【0057】
また上記実施例では加熱押出し機20から押し出した混合溶融物を直接発泡・成形したが、前記加熱押出し機20から押し出した混合溶融物を例えば一旦ペレット状の成形品とし、その後別の成形機にこのペレットを投入して所望の成形品を成形しても良い。
【符号の説明】
【0058】
1−1,1−2,1−3 鮮度保持発泡シート
10 攪拌混合機
11 攪拌部材
20 加熱押出し機
30 発泡機構
40 発泡シート
41 緩衝用突部
50−1,50−2 加圧ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸ゼオライト粉末と、
ドロマイト粉末と、
植物自体又はその加工材の粉末と、
ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを、混合して成形したことを特徴とする鮮度保持部材。
【請求項2】
粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸ゼオライト粉末と、
竹粉末と、
植物自体又はその加工材の粉末と、
ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを、混合して成形したことを特徴とする鮮度保持部材。
【請求項3】
粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸して乾燥させた竹エキス含浸ゼオライト粉末と、
植物自体又はその加工材の粉末と、
ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを、混合して成形したことを特徴とする鮮度保持部材。
【請求項4】
粉末状のゼオライトと、竹エキスと、ドロマイト粉末と、植物自体又はその加工材の粉末と、ポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを用意し、
前記粉末状のゼオライトに竹エキスを含浸させた後に乾燥させることで竹エキス含浸ゼオライト粉末を製造する工程と、
前記竹エキス含浸ゼオライト粉末とドロマイト粉末と植物自体又はその加工材の粉末とポリオレフィン系樹脂及び/又は生分解性樹脂とを混合して加熱・成形することで所望の形状の鮮度保持部材を形成する工程と、を有することを特徴とする鮮度保持部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−19740(P2012−19740A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−160528(P2010−160528)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(597114041)株式会社ユニオン産業 (4)
【Fターム(参考)】