説明

鮮明性を呈する超ソフト特殊混繊糸の製造方法

【発明の詳細な説明】
(発明の分野)
本発明は、特殊な微細孔を有し、着色した際に改善された色の深みと鮮明性を呈し、且つ、極めて高い柔軟性とユニークな風合を有する超ソフト特殊混繊糸の製造方法に関する。
(従来技術)
合成繊維糸には一般ガラス転移点温度(二次転移温度ともいう)が存在し、この温度以下では分子が凍結されていて動き難いので、これを延伸するに当っては延伸点をガラス転移点温度以上とし分子を動き易くして引き伸ばすのが常識である。もっともこのガラス転移温度以下の分子が凍結した状態で無理矢理にこれを引き伸ばすと分子が配向せず、今迄の延伸糸とは全く異なる特異な風合を呈する糸ができる(但し、分子が凍結された状態で無理に引き伸ばすので、必ず斑延伸となり均一な外観のものは出来ない)。即ち、ガラス転移温度以下の低温で延伸することは、特開昭58−44762号公報にも示されるように、所謂Thick & Thin糸の製造方法そのものとなり、斑を発生させずその特異風合のみを求めるといったことは不可能である。加えて、凍結状態の分子を無理矢理に引き伸ばすので、それに要する力は物凄く大きくなり、糸がローラーとスリップしたり、毛羽立ってラップが発生したりするなどの問題点が多く、延伸フィラメントヤーンの生産性が低くなるという問題もある。
更に、従来のポリエステル繊維は羊毛や絹の如き天然繊維、レーヨンやアセテートの如き繊維素系繊維、アクリル系繊維等に比較して、着色した際に色に深みがないため発色性、鮮明性に劣る欠点がある。
従来より、この欠点を解消せんとして、染料の改善やポリエステルの化学改質等が試みられてきたが、いずれも充分な効果は得られていない。また、ポリエステル繊維表面に透明薄膜を形成させる方法や織編物表面に80〜500mA・sec/cm2のプラズマ照射を施して繊維表面に微細な凹凸を形成させる方法等が提案されている。しかしながら、これらの方法によっても、色の深みを改善する効果は不充分であり、その上繊維表面に形成された透明薄膜は洗濯等によって容易に脱落し、その耐久性も不十分であり、プラズマ照射を施す方法では、照射面の影になる繊維部分の繊維の表面に凹凸が生じないため、着用中に生じる繊維組織内での糸の転び等によって平滑繊維面が表面に出て色斑になる欠点がある。
他方、ポリエステル繊維の表面に凹凸を付与する方法として、ポリオキシエチレングリコール又はポリオキシエチレングリコールとスルホン酸化合物を配合したポリエステルよりなる繊維をアルカリ水溶液で処理することにより繊維軸方向に配列した皺状の微細孔を繊維表面に形成させる吸湿性繊維の製造法、又は酸化亜鉛、リン酸カルシウム等の如き不活性無機物質の微粒子をポリエステル反応系内に添加配合せしめてなるポリエステル繊維を、アルカリ水溶液で処理して無機微粒子を溶出することにより微細孔を形成させる吸湿性繊維の製造方法等が提案されている。しかしながら、これらの方法によって得られる繊維には、色の深みを改善する効果は認められず、かえって視感濃度の低下が認められる。
即ち、これらの方法において、アルカリ水溶液による処理が充分でないときは、色の深みを改善する効果は全く認められず、また、アルカリ水溶液による処理が充分なときは、色の深みを改善するどころか、微細孔にある光の乱反射によるためか、視感濃度が低下し、濃色に着色しても白っぽく見えるようになり、その上得られる繊維の強度が著しく低下し、容易にフィブリル化するようになり、実用に耐えない。
また、粒子径80mμ以下のシリカの如き無機微粒子を配合したポリエステルよりなる繊維をアルカリ減量処理して、繊維表面に0.2〜0.7μの不規則な凹凸を付与すると共にこの凹凸内に50〜200mμの微細な凹凸を存在せしめることによって色の深みを改善する方法が提案されている。しかしながら、この方法によっても、色の深みを改善する効果は不充分であり、その上かかる極めて複雑な凹凸形態によるためか、摩擦等の外部からの物理作用により凹凸が破壊され、破壊された部分が他の破壊されていない部分と比べて大きく変色したり光沢の差を生じたり、更には容易にフィブリル化するという欠点がある。
本発明者は、ポリエステル繊維に微細孔を付与することによって、上記欠点がなく、色の深みと鮮明性に優れたポリエステル繊維を提供せんとして鋭意検討を行った結果、特定量の5価のリン化合物とこの5価のリン化合物に対して特定量比のカルシウム化合物を予め反応させることなく、ポリエステル反応系に添加して合成したポリエステルを溶融紡糸して得たポリエステル繊維をアルカリ処理することによって、特殊な微細孔を多数形成することができ、こうすることによって着色した時の色の深みと鮮明性に優れ、且つ摩擦による変色が充分に小さく、耐フィブリル性にも優れたポリエステル繊維が得られることを見出し、先に提案した。
しかしながら、このようにして得られるポリエステル繊維は、ときによって充分な鮮明化効果が得られないときが生じることが判明した。本発明者はかかる欠点を改善せんとして更に検討を重ねた結果、上記方法において使用するリン化合物の一部を予めカルシウム化合物と反応せしめることによって、再現性よく確実にその効果が得られることを知った。この知見に基いて続けて検討し、本発明を完成した。
(発明の効果)
本発明の目的は、ポリエステル繊維のかかる欠点を改良し、着色した際に、改善された色の深みと、優れた鮮明性を呈し、且つ、極めて柔軟性が高く、ユニークな風合を有する超ソフト・フラットマルチフィラメントヤーンを、その重合体分子が凍結した状態で、マルチフィラメントの断面形状を変化させることなく、またそれに捲縮を付与することなく製造する方法を提供し、それによって、均一に延伸されたマルチフィラメントからなる、均一な外観と性能を有する超ソフトフラットマルチフィラメントヤーンと、およびそれから得られる超ソフト・フラットマルチフィラメントヤーン布帛を提供しようとするものである。
(発明の構成)
即ち、本発明は、切断伸度差が少くとも70%以上である2種またはそれ以上のポリエステルマルチフィラメント糸を引揃えて、仮撚加工するに際して、少なくとも1種のマルチフィラメント糸として、下記の微細孔形成剤を配合したポリエステルからなるマルチフィラメント糸を用いて仮撚し、仮撚中のセット条件を常温若しくは高々78℃迄としてセットしてから解撚し、解撚直後、又はその後の工程において130℃以上の温度で熱処理することを特徴とする鮮明性を呈する超ソフト特殊混繊糸の製造方法である。
微細孔形成剤を配合したポリエステル

本発明を具体例により詳細に説明する。
第1図(a)は合成繊維の所謂未延伸糸の模式図である。これをそのガラス転移点温度以上に加熱して、構成分子の凍結を解いた状態で引張ると(b)のように均一に延伸される。しかしながら、これをガラス転移温度以下で引張ると、構成分子は凍結された状態のままで無理に引き伸ばされるので分子はスムースに揃わず、(c)のように不均一な斑々の糸になってしまう。
これに対し、第2図は本発明の方法による延伸の態様を示すもので、(d)図の如く未延伸糸(1)と、これにより配向度の高い、従って伸び難い添え糸(2)とを引揃えて、(e)図の如くこれをねじっていくとき、未延伸糸(1)は伸び易く他方添え糸(2)は伸び難いので、結局未延伸糸(1)は添え糸(2)の周囲に(f)図の如く捲き付けられる格好となり、その結果未延伸糸(1)は捲き付けに要する長さだけ均一に引き伸ばされる。
即ち、第1図のように糸を両端で引張って延伸するとき、特にガラス転移点(二次転移点)以下で分子が凍結されているような状態では糸は伸び難いため、これを無理矢理引き伸ばした場合、糸は伸び易い所が伸びて伸び難い所はあまり伸びないといったように太さ斑が生じる。しかし、前記のように添え糸(2)と一緒にねじり、これを蔓巻き状にする過程において伸ばすと、糸の各部分で少しずつ伸ばされるので、糸の両端を引張ったような選択的な伸びは起らず、糸の各部分で均一かつ平等に伸びることになる。従って、このようにガラス転移温度以下でも均一に伸ばすことができるし、また斑になり易い中途半端な低い倍率でも均一に引き伸ばすことが可能になる。
但し、この方法では糸をねじって捲き付かせる解きに自然に伸ばされる程度以上には伸ばし得ないので、自ら延伸できる倍率の上限は決まってくる。しかし、ここで注目すべきことは、添え糸(2)を少し引き伸ばしながらこの未延伸糸(1)の捲き付けを行うと、未延伸糸(1)には捲き付けの伸びにこの添え糸(1)の伸びが加わるが、その場合でも極めて均一に伸ばされるという事実が在ることである。これはやはり未延伸糸(1)が添え糸(2)にしっかり捲き付いて拘束されながら伸ばされるためと推察される。従って、この添え糸(1)の伸長も加えることによって、ある程度この伸長率は加減できる。また、これに更に、未延伸糸(1)と添え糸(2)とを予め欠絡させておいた上で、前記のようなねじり操作を加えると両者の拘束関係が一層密になり、より均一性が増す。
第3図は、本発明の具体的な実施工程の一例であって、(1)は素材のポリエステル未延伸糸、(2)はこれより伸び難い添え糸のポリエステル中間配向糸であり、両糸は一対の供給ローラー(3)より供給され、空気ノズル(4)で相互に絡められた後、中間ローラー(5)を経て仮撚具(6)で相互にねじられる。その結果、仮撚具(6)の前では未延伸糸(1)は添え糸(2)の周囲に捲き付くことによって伸ばされながら、仮撚具(6)を通過し、再び捲き付きは解かれ、両者がまとわりついたままデリベリローラー(7)を経てヒーター(3)で熱セットされ、引取ローラー(9)を経てワインダー(10)に捲き取られる。得られた加工糸を製織し染色仕上すると、分子を凍結したまま延伸されたことによって、今迄のポリエステル織物とは全く異なる、極めて超ソフトでマシュマロのような特殊な風合を有し、かつ太さ斑や染色斑等も全くない汎用性ある織物が得られる。
本発明において、このような風合を得るためには、未延伸糸(1)が伸ばされる時に構成分子が凍結状態にある温度即ちガラス転移点温度(二次転移点温度)未満にする必要がある。そのためには通常の仮撚加工に使う160〜240℃といった合成繊維の所謂熱可塑化温度で加熱しては勿論駄目であって、高々78℃以下、好ましくは60℃以下(熱処理時間にして0.6秒以下)にする必要があり、一般には、前記の例のように熱を加えない常温で行うとき最もよい結果が得られる。特にガラス転移温度の低い素材では強制冷却することもよい。
また、供給する未延伸糸(1)と添え糸(2)とは予め交絡しておくことは必ずしも必須ではないが、交絡することによって前述の如く未延伸糸(1)がより均整に引き伸ばされ、その外仮燃を経て解撚された後の糸がバラバラになるのを防ぐ効果もある。後者については、場合によっては仮撚解撚後の交絡でもよいが、一般的には仮撚前交絡の方がバラけが少い。
また、未延伸糸(1)の引き伸ばし量が少い場合には前述の如く添え糸(2)も引き伸ばしてこれに加算するのがよく、この例で言えばローラー(5)と(7)間の速度関係を引き伸ばし状態、所謂延伸仮撚の状態で行うのがよい。このようにしても未延伸糸(1)は前述の如く斑糸にはならず均一に伸ばすことが可能である。特に仮撚を摩擦仮撚具で与える時は糸がスリップするので延伸仮撚が必須となる。一方、スピンドル仮撚であれば必ずしも延伸仮撚にする必要はないが、一般に摩擦仮撚の方が糸の引掛りがなくスムースに走行し易い。
また、仮撚でねじられた時に蔓巻き状となって専ら未延伸糸(1)のみが伸ばされる為には、添え糸(2)は未延伸糸(1)よりも伸び難いことが必要であることから、複屈折率にして0.03以上の中間配向糸、高配向糸が好ましい。そして、延伸性については、未延伸糸(1)よりも自然延伸比(伸度%表示)で70%以上小さいことが望ましい。
本発明は凍結状態の分子を無理に延伸して特異な超ソフト風合を出すわけであるが、その中でも延伸前の分子が繊維軸方向に並んでいないほど、即ち配向度が低いほど延伸が更に難しくなるので、風合の特異性は増す。従って未延伸糸の配向度は高くても複屈折率にて0.02以下、更に好ましくは0.01以下の殆んど配向していないものを用いることが望ましい。
このようにして無理に延伸された糸は一般に内部歪が大きく、沸水中の収縮率が高いので、使用に際してはこれを熱処理してその収縮率を落とす必要がある。第3図(8)のヒーターはその目的のためのものであり、その加熱温度としては少くとも130℃以上が必要で、好ましくは160℃以上で少くとも0.1秒以上加熱するのがよい。この加熱は前記延伸工程に引き続いて連続的に行っておけば、出来た糸をどのような分野にでも使えるので安心であるが、用途によってはこれを織編物等の布帛にしてから行うことも可能である。
本発明の混繊糸を得る工程は、特公昭61−19733号公報、特公昭56−25529号公報などにみられる所謂仮撚捲付二層構造加工糸の製造方法の工程と一見似ているが、その作用効果や、それにより製造される加工糸の構造は互いに全く異なるものである。
即ち、従来の仮撚捲付二層構造加工糸の場合には、仮撚工程で一種のマルチフィラメントを、他のマルチフィラメントに捲き付けた状態にして、これを高温に加熱し、そのねじれた形でマルチフィラメントの重合体分子を再配向結晶化させるので、両マルチフィラメントは、仮撚で捲き付けられたフィラメントの捲きつき形状や撚り形状が残留し、このため、第4図(g)に示されているように「捲付」二層構造加工糸となる。このような従来の仮撚捲付二層構造加工糸は、紡績糸的な風合を有することに特徴がある。これに対し、本発明では、仮撚で高延伸性マルチフィラメントを低延伸性マルチフィラメントに捲き付けても、この状態で加熱セットされることがないので、その捲き付けぐせやねじりぐせは全く残留せず、得られる加工糸は第4図(h)に示されているように各フィラメントはストレートであって(捲縮がなく)、紡績糸様な構造にはならない。即ち、加工糸中のフィラメントはストレートなものであり、したがってフラットマルチフィラメントヤーンを形成する。本発明において、高延伸性マルチフィラメントを低温で強制的に伸長しながら仮撚されるので、得られる加工糸は、従来の仮撚延伸加工糸とは全く異なる極めてソフトなタッチと、ユニークな風合を有するフラットマルチフィラメントヤーンとなる。
本発明において、未延伸糸(1)と添え糸(2)の複合比率については、元々本発明による特異風合は分子凍結状態で無理矢理伸ばされる側[未延伸糸(1)]、即ち低配向側(=自然延伸比の大きい側)で発生するので、一般的には半分以上は占めた方がよい。但し、特に伸ばし難い分子配向を有する繊維の場合においては、風合をある程度犠牲にしても延伸性を優先させることもあり得るが、その場合でも少くとも3割は占めるべきである。
一方、あまり低配向側が増えると高配向側[添え糸(2)]が細くなりすぎて蔓巻き状を形成させることが困難になり、糸切れ等が発生するので、多くとも8割以下にとどめておくことが望ましい。
また、仮撚数について言えば、本発明の場合、仮撚捲縮を施すのが目的ではないので必ずしも従来の仮撚加工ほどの撚数でなくても効果が得られる。例えば、仮撚加工であると

位の甘い撚数では効果的な捲縮を施すことはできないが、本発明においてはそれに応じた糸の冷延伸は起き、それなりの効果は発生する。但し、特にねじり難い素材でない限り、目一ぱいの仮撚数、即ち糸の破断が起き易くなる

以下の仮撚数で、安定加工できる限り、高くした方が糸がよく伸ばされて効果的である。仮撚を摩擦仮撚で行う場合には、仮撚数を測定し難いが、D/Yを1.3〜2.8位の値にすればよい。
ここにおいて De=仮撚中の糸Total De D/Y=仮撚ディスク表面速度/仮撚加工中の糸速である。
更に、本発明方法にあっては、前記の伸度差を有する2糸条のうち、少くとも、一方のマルチフィラメントとして微細孔形成剤配合のポリエステル繊維を用いる必要がある。
本発明でいうポリエステルは、テレフタル酸を主たる酸成分とし、少くとも1種のグリコール、好ましくはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールから選ばれた少なくとも1種のアルキレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルを主たる対象とする。
また、テレフタル酸成分の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置換えたポリエステルであってもよく、及び/又はグリコール成分の一部を主成分以外の上記グリコール、若しくは他のジオール成分で置換えたポリエステルであってもよい。
ここで使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えばイソフタル酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、β−ヒドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の如き芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸をあげることができる。また、上記グリコール以外のイゾール化合物としては例えばシクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールSの如き脂肪族、脂環族、芳香族のジオール化合物およびポリオキシアルキレングリコール等をあげることができる。
かかるポリエステルは任意の方法によって合成したものでよい。例えば、ポリエチレンテレフタレートについて説明すれば、通常、テレフタル酸とエチレングリコールとを直接エステルか反応させるか、テレフタル酸ジメチルの如きテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか又はテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかしてテレフタル酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる第1段階の反応と、第1段階の反応生成物を減圧下加圧して所望の重合度になるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造される。
本発明で使用する含金属リン化合物は下記一般式

で表わされるリン化合物であり、式中、R1及びR2は一価の有機基である。この一価の有機基は具体的にはアルキル基、アリール基、アラルキル基又は■(CH2lO]kR3(但し、R3は水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基、lは2以上の整数、kは1以上の整数)等が好ましく、R1とR2とは同一でも異なっていてもよい。Mはアルカリ金属又はアルカリ土類金属であり、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Baが好ましく、特にCa、Sr、Baが好ましい。mはMがアルカリ金属のとき1であり、Mがアルカリ土類金属のとき1/2である。
上記含金属リン化合物に代えてR1及び/又はR2が金属(特にアルカリ金属、アルカリ土類金属)で置換えたリン化合物を使用したのでは、得られるポリエステル繊維に生成する微細孔が大きくなって、目的とする鮮明化効果が得られず、また耐フィブリル性にも劣るようになる。
上記含金属リン化合物を製造するには、通常対応する正リン酸エステル(モノ、ジ又はトリ)と所定量の対応する金属の化合物とを溶媒の存在下加熱反応させることによって容易に得られる。なお、この際溶媒として、対象ポリエステルの原料として使用するグリコールを使用するのが最も好ましい。
上記含金属リン化合物と併用するアルカリ土類金属化合物としては、上記含金属リン化合物と反応してポリエステルに不溶性の塩を形成するものであれば特に制限はなく、アルカリ土類金属の酢酸塩、蓚酸塩、安息香酸塩、フタル酸塩、ステアリン酸塩のような有機カルボン酸塩、硼酸塩、硫酸塩、珪酸塩、炭酸塩、重炭酸塩の如き無機酸塩、塩化物のようなハロゲン化物、エチレンジアミン4酢酸錯塩のようなキレート化合物、水酸化物、酸化物、メチラート、エチラート、グリコレート等のアルコラート類、フェノラート等をあげることができる。特にエチレングリコールに可溶性である有機カルボン酸塩、ハロゲン化物、キレート化合物、アルコラートが好ましく、なかでも有機カルボン酸塩が特に好ましい。上記のアルカリ土類金属化合物は1種のみ単独で使用しても、また2種以上併用してもよい。
上記含金属リン化合物及びアルカリ土類金属化合物を添加するに当って、最終的に得られるポリエステル繊維に優れた色の深みとその摩擦耐久性を与えるためには、含金属リン化合物の使用量及び該リン化合物の使用量に対するアルカリ土類金属化合物の使用量の比を特定する必要がある。即ち、本発明で使用する含金属リン化合物の添加量はありに少ないと最終的に得られるポリエステル繊維の色の深みが不充分になり、この量を多くするに従って色の深みは増加するが、あまりに多くなると最早色の深みは著しい向上を示さず、かえって耐摩擦耐久性が悪化し、その上充分な重合度と軟化点を有するポリエステルを得ることが困難となり、更に紡糸時に糸切れが多発するというトラブルを発生する。このため、含金属リン化合物の添加量はポリエステルを構成する酸成分に対して0.5〜3モル%の範囲にすべきであり、特に0.6〜2モル%の範囲が好ましい。またアルカリ土類金属化合物の添加量が含金属リン化合物の添加量に対して0.5倍モルより少ない量では、得られるポリエステル繊維の色の深みが不充分であり、その上重縮合速度が低下し高重合度のポリエステルを得ることが困難となり、また、生成ポリエステルの軟化点が大幅に低下するようになる。逆に含金属リン化合物に対して1.2倍モルを越える量のアルカリ土類金属化合物を使用すると、粗大粒子が生成し、色の深みは改善されるどころか、かえって視感濃度が低下するようになる。このため、含金属リン化合物に対するアルカリ土類金属化合物の添加量は、0.5〜1.2倍モルの範囲にすべきであり、特に0.5〜1.0倍モルの範囲が好ましい。
上記含金属リン化合物とアルカリ土類金属化合物とは予め反応させることなくポリエステル反応系に添加する必要がある。こうすることによって、不溶性粒子をポリエステル中に均一な超微粒子状態で生成せしめることができるようになる。予め外部で上記含金属リン化合物とアルカリ土類金属化合物とを反応させて不溶性粒子とした後にポリエステル反応系に添加したのでは、ポリエステル中での不溶性粒子の分散性が悪くなり、且つ粗大凝集粒子が含有されるようになるため、最終的に得られるポリエステル繊維の色の深みを改善する効果は認められなくなれので好ましい。
上記の含金属リン化合物及びアルカ土類金属化合物の添加は、それぞれポリエステルの合成が完了するまでの任意の段階において、任意の順序で行うことができる。しかし、含金属リン化合物のみを第1段階の反応が未終了の段階で添加したのでは、第1段階の反応の完結が阻害されることがあり、またアルカリ土類金属化合物のみを第1段階の反応終了前に添加すると、この反応がエステルか反応のときは、この反応中粗大粒子が発生したり、エステル交換反応のときは、その反応が異常に早く進行し突沸現象を引起すことがあるので、この場合、その20重量%程度以下にするのが好ましい。アルカリ土類金属化合物の少なくとも80重量%及び含金属リン化合物全量の添加時期は、ポリエステルの合成第1段階の反応が実質的に収量した段階以降であることが好ましい。また、含金属リン化合物及びアルカリ土類金属化合物の添加時期が、第2段階の反応があまりに進行した段階では、粒子の凝集、粗大化が生じ難く最終的に得られるポリエステル繊維の色の深みが不充分となる傾向があるので、第2段階の反応における反応混合物の極限粘度が0.3に到達する以前であることが好ましい。
本発明においては、第1段階の反応に任意の触媒を使用することができるが、上記アルカリ土類金属化合物の中で第1段階の反応、特にエステル交換反応の触媒能を有するものがあり、かかる化合物を使用する場合は別に触媒を使用することを要さず、このアルカリ土類金属化合物を第1段階の反応開始前又は反応中に添加して、触媒としても兼用することができるが、前述した如く突沸現象を引起すことがあるので、その使用量は添加するアルカリ土類金属化合物の全量の20重量%未満にとどめるのが好ましい。
以上説明したように、上記の含金属リン化合物の特定量と該リン化合物に対して特定量比のアルカリ土類金属化合物とを予め反応させることなくポリエステル反応系に添加し、しかる後ポリエステルの合成を完了することによって、高重合度、高軟化点及び良好な製糸化工程通過性を有し、且つ最終的に色の深みとの摩擦耐久性に共に優れた繊維を与えることのできるポリエステルを得ることができる。
このようにして得られたポリエスエルを溶融紡糸して繊維とする際には、格別な方法を採用する必要はなく、通常のポリエステル繊維の溶融紡糸方法が任意に採用される。ここで紡出する繊維は中実繊維であっても、中空繊維であってもよい。また、紡出する繊維の横断面における外形や中空部の形状は、円形であっても異形であってもよい。更に紡糸するに際して、上記の含金属リン化合物とアルカリ土類金属化合物とを添加した変性ポリエステルと添加しない未変性ポリエステルとを使用し、変性ポリエステルを鞘成分とし、未変性ポリエステルを芯成分とする芯鞘型複合繊維にしても、変性ポリエステルと未変性ポリエステルとを用いて二層又はそれ以上の多層のサイド・バイ・サイド型複合繊維にしてもよい。
(発明の作用・効果)
本発明の混繊糸は、特公昭61−19733号公報、特公昭56−25529号公報に見られる所謂仮撚捲付二層構造加工糸とその製造工程においては一見似ているが、その作用効果や糸の構造は全く異なる。
即ち、仮撚捲付二層構造加工糸の場合には、仮撚で糸を捲き付き状態にして高温に加熱し、そのねじれた形で繊維の分子を再配向結晶化させるので、その形が熱固定される。従って、これを解撚しても捲き付きや撚りぐせ(ねじりぐせ)が残って、第4図(g)のような「捲付」二層構造加工糸となり、このものはスパンライク的な風合に特徴がある。これに反し、本発明では仮撚で糸を捲き付き状態にしてもこれは加熱セットはしないので、その捲き付けぐせやねじりぐせは全く残らず、糸は(h)のようなあくまでもストレートな糸となり、スパンライクな構造にはならない。即ちその構造はフィラメント的なストレートなものである、凍結された分子を無理矢理引き伸ばすことによる。今迄の繊維とは全く異なった極めてソフトなタッチを有する繊維の集合したフィラメント糸となる。
また、このようにガラス転移温度以下の常温等で無理矢理延伸すると、分子は凍結状態にあるのでその延伸張力は非常に大きくなり、特に紡糸速度が2000m/min以下の未延伸糸のように分子が殆んど配向していないようなものでは、その力は極めて大きい。従って、通常は延伸ラップや糸切れ、毛羽立ちが発生したりスリップしたりして生産性が困難である。しかしながら、本発明のようにねじる力でこれを伸ばすとスムースに延伸が行われ、また伸びる力はねじり力で主に与えられるので、延伸機のようなローラーに何回もターンできる設備は勿論、仮撚加工機のようなワンニップの簡単なローラー装置でも生産上のトラブルもなく簡単に延伸できるという特長も有する。
また、本発明により得られた混繊糸は従来の合成繊維の概念を破る極めて柔軟な風合特徴を有する。特に比較的モジュラスが高く、従って風合が硬くて腰の強いポリエステル繊維に応用すると、今迄のポリエステルの特徴的な硬さはなくなり、非常にソフトな風合、強いて言えばマシュマロかさくら紙のような柔らかいタッチのフィラメントになるので、肌に直接触れるランジェリーなどのインナー衣料やベビー衣料及び高級ブラウスや高級ドレスにどにその用途を拡大することができ、そのメリットは大きい。
また、本発明に用いる素材としては、延伸可能な合成繊維であれば制限はないが、特にポリエステル繊維に応用すると、その本質的に硬い風合を大幅に軟らかく改良できる点で、或いはガラス転移温度が高く、本発明の低温凍結延伸の効果が一層発揮できる点で適用の効果は甚大である。
かくして得られる特殊混繊ポリエステル繊維から、その一部を除去するには必要に応じて延伸熱処理又は仮撚加工等を施した後、又は更に布帛にした後、アルカリ化合物の水溶液で処理することにより容易に行うことができる。
ここで用いるアルカリ化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等をあげることができる。なかでも、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが特に好ましい。
かかるアルカリ化合物の水溶液の濃度は、アルカリ化合物の種類、処理条件等によって異なるが、通常0.01〜40重量%の範囲が好ましく、特に0.1〜30重量%の範囲が好ましい。処理温度は常温〜100℃の範囲が好ましく、処理時間は1分〜4時間の範囲で通常行われる。また、このアルカリ化合物の水溶液の処理によって溶出除去する量は、繊維重量に対して2重量%以上の範囲にすべきである。このようにアルカリ化合物の水溶液で処理することによって、繊維軸方向に配列し、且つ度数分布の最大値が繊維軸の直角方向の幅が0.1〜0.3μの範囲であって、繊維軸方向の長さが0.1〜5μの範囲になる大きさを有する微細孔を繊維表面及びその近傍に多数形成せしめることができ、染色した際に優れた色の深みを呈するようになる。
なお、本発明の方法により得られるポリエステル繊維には、必要に応じて任意の添加剤、例えば触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、着色剤等が含まれていてもよい。
かくして得られるポリエステル混繊糸は、その少くとも外層部には、微細孔を有するポリエステル繊維が分布するものであるから、着色した際に、色の深みと鮮明性に優れる性質に加えて、非常にソフトな風合、柔らかいタッチを示すので、肌に直接触れるランジェリーなどのインナー衣料又はベビー衣料に好適である。
また、前記の微細孔を有するポリエステル繊維が使用される結果、得られるポリエステル織編物は、好ましいドライ感が付与される。これは、該微細孔により、前記ポリエステル繊維の摩擦特性が、動摩擦抵抗と静摩擦抵抗との差を大きくするように作用することにもよるものと考えられる。
更に、本発明は、微細孔形成剤として前記に示したような特定の剤を使用するものであるから、アルカリ性溶液で処理することにより形成した微細孔に起因するフィブリルによる摩耗強度の低下の問題も殆んど発生しないものである。
このように本発明によれば、着色時の鮮明性に優れ、且つ極めて高い柔軟性に富み、且つドライ感も有する、ユニークな風合を有する超ソフト特殊混繊糸を得ることができる。
(実施例)
本発明を、更に下記実施例により説明する。
実施例中下記の測定が行われた。
マルチフィラメントヤーンの沸水収縮率(BWS)と乾熱収縮率(HS)
約3000デニールの綛を作り、これに荷重0.1g/deをかけて原長l0(cm)を読み取った。前記綛の荷重を2mg/deに変えて、これを沸騰水中で30分間熱処理し、室温で乾燥させた後、荷重を0.1g/deに変えてその長さl1(cm)を読み取った。次いで、荷重を再度2mg/deに変えて、180℃の加熱空気中で1分間熱処理した後、取出して荷重を0.1g/deに変えて、その長さl2(cm)を読み取った。




織物の柔軟度は曲げ硬さ(BS)により、また織物の反撥性は曲げ反発度(BR)により評価した。測定法はJIS L 1096の6.20.3C法(剛軟度ループ圧縮法)を用いた。
抗ピリング性はJIS L 1076の4.1に示されるICI形試験機を用いて、同試験法6.1に示されているA法(ICI形試験機を用いる方法)により測定評価した。
摩耗強さは、JIS L 1096のA−3法(折目法)に示されている方法により、研磨紙として#600を用いて測定した。
ポリエステル繊維を染色した際の色の深み、摩耗変色は以下の方法で測定した。
(i) 色の深み 色の深みを示す尺度としては、深色度(K/S)を用いた。この値はサンプル布の分光反射率(R)を島津RC−330型自記分光光度計にて測定し、次に示すクベルカームンク(KubelkaMunk)の式から求めた。この値が大きいほど深色効果が大きいことを示す。


なお、Kは吸収係数、Sは散乱係数を示す。
(ii) 耐摩擦変色性 摩擦堅牢度試験用の学振型平面摩耗機を使用して摩擦布としてポリエチレンテレフタレート100%からなるジョーゼットを用い、試験布を500gの加重下で所定回数平面摩耗して、変色の発生の程度を変褐色用グレースケールで判定した。耐摩耗性が極めて低い場合を1級とし、極めて高い場合を5級とした。
実用上4級以上が必要である。
実施例 テレフタル酸ジメチル100部、エチレングリコール60部、酢酸カルシウム1水塩0.06部(テレフタル酸ジメチルに対して0.066モル%)をエステル交換缶に仕込み、窒素ガス雰囲気下4時間かけて140℃から230℃まで昇温して生成するメタノールを系外に留去しながらエステル交換反応を行った。続いて、得られた反応生成物に、0.5部のリン酸トリメチル(テレフタル酸ジメチルに対して0.693モル%)と0.31部の酢酸カルシウム1水塩(リン酸トリメチルに対して1/2倍モル)とを8.5部のエチレングリコール中で120℃の温度において、全環流下60分間反応せしめて調製したリン酸ジエステルカルシウム塩の透明溶液9.31部に室温下0.57部の酢酸カルシウム1水塩(リン酸トリメチルに対して0.9倍モル)を溶解せしめて得たリン酸ジエステルカルシウム塩と酢酸カルシウムとの混合透明溶液9.88部を添加し、次いで三酸化アンチモン0.04部を添加して重合缶に移した。次いで1時間かけて760mmHgから1mmHgまで減圧し、同時に1時間30分かけて230℃から285℃まで昇温した。1mmHg以下の減圧下、重合温度285℃で更に3時間、合計4時間30分重合して極限粘度0.641、軟化点259℃のポリマーを得た。反応終了後ポリマーを常法に従いチップ化した。
このチップを常法により乾燥し、孔径0.3mmの円形紡糸孔を36個穿設した紡糸口金を使用して290℃で溶融紡糸した。この変性ポリエステルを速度1300m/分の紡糸によって得られたポリエステル低配向未延伸糸(UDY)[自然延伸比160%(倍率にして2.6倍)]、伸度:345%、ガラス転移点:67℃、繊度:90de′、フィラメント数:24本]と、複屈折率:0.043、自然延伸比:45%(倍率にして1.45倍)、伸度:140%、ガラス転移点:80℃、繊度:80de′、フィラメント数:36本、断面形状:円形、速度3200m/分の紡糸によって得られた普通のポリエステル高配向未延伸糸(POY)とを配合比率53:47で引揃え、これをオーバーフィード:1.0%、圧空圧:4Kg/cm2の条件で空気交絡ノズルに供して、フィラメントを互いに交絡させた。次に、630m/minの表面速度で回転している三軸式摩擦仮撚装置に、速度:350m/分、伸長率:55%、仮撚張力:32g、解撚張力:27gの延伸仮撚を室温(25℃)で施し(D/Y=1.8)、交絡されたマルチフィラメントヤーンを加撚した後これを解撚し、次にオーバーフィード率:0%で230℃のヒーター(熱処理時間0.2秒)に通して加熱して、各フィラメントの熱収縮率を低下させ、得られた加工糸をワインダーに巻き取り、110デニール/60フィラメントの糸条を得た。
この糸条を顕微鏡で観察したところ、各フィラメントの断面形状に変形はまったく認められなかった。更に、糸条自体はノントルクであって、フィラメントに捲縮が実質的に認められず、通常の混繊フラットマルチフィラメントヤーンと同じ外観を示していた。
尚、上記加工において、仮撚装置を除いて、延伸のみを行ったところ、所要延伸張力は130g/dであった。
次に得られたフラットマルチフィラメントヤーンの特性は第1表(1)の通りであった。
次いで、これに800T/mの撚を施してから綾組織にて製織した。
得られた生機をロータリーワッシャーにて沸騰温度で20分間リラックス処理を施し、シボ立てを行い、常法によりプリセット後、3.5%の水酸化ナトリウム水溶液で沸騰温度にて処理し、減量率が10%、20%及び30%の布帛を得た。
これらのアルカリ処理後の布帛(織物特性は第2表に示す通り)をDianix Black HG−FS(三菱化成工業(株)製品)15%wfで130℃で60分間染色後、水酸化ナトリウム1g/■及びハイドロサルファイト1g/■を含む水溶液にて70℃で20分間還元洗浄して黒染布を得た。これらの黒色布の色の深みおよび摩耗200回後の耐摩擦変色性は第3表の通りであった。
この結果、深色性の優れた、しかも、従来ポリエステルのタッチとは全く異なる、滑らで極めて柔軟性があり、軽やかで皺にならない全く新しい感性のポリエステル織物となり、インナーウェアーなど、従来ポリエステル織物の苦手とする超ソフト分野への商品的進出が可能となった。






比較例1 高速撹拌分散機(撹拌翼外径28mm、外筒環内径29mm、英国シルバーソンマシーン社製ラボラトリー・ミキサー・エマルシファイヤー)を用い、5000rpmの回転速度下でリン酸モノメチル100部と酢酸カルシウム1水塩の4%エチレングリコール溶液3933部(リン酸モノメチルに対して等モルの酢酸カルシウムを含有)とを120℃にて60分間高速撹拌下反応させてリン酸モノエステルカルシウム塩の白濁スラリーを得た。
実施例1においてエステル交換反応後に添加したリン酸ジエステルカルシウム塩と酢酸カルシウム1水塩との混合透明溶液の代りに、このスラリーと酢酸カルシウム1水塩の相当量を添加する以外は、実施例1と同様に行った。結果は第4表に示した通りであり、色の深さは改善されるどころか、視感濃度の低下が認められた。また、200回の摩耗で著しく白っぽくなった。
(発明の効果)
本発明の方法は、極めてソフトでユニークな風合を有する超ソフト・フラットマルチフィラメントヤーンからなる混繊糸を、仮撚加工装置を利用して、容易な操作で極めて高効率で製造することができる。また、本発明の方法により得られる超ソフト・フラットマルチフィラメントヤーンおよびその布帛は、そのユニークな風合と、優れた物理的特徴を有し、ランジェリーなどのインナー衣料用、ベビー衣料用および、紳士・婦人用高反撥性ソフト衣料(例えばスーツ等)に広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は従来の延伸原理を説明する模式図、第2図は本発明の延伸原理を説明する模式図、第3図は本発明の一実施態様を示す工程図、第4図は本発明の糸と従来のスパンライク糸との違いを示す模式図である。
第3図において、(1)……未延伸糸、(2)……未延伸糸(1)よりも配向度の高い添え糸、(3)……供給ローラー、(4)……空気交絡ノズル、(5)……中間ローラー、(6)……仮撚具、(7)……デリベリローラー、(8)……熱処理ヒーター、(9)……引取ローラー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】切断伸度差が少くとも70%以上である2種又はそれ以上のポリエステルマルチフィラメント糸を引揃えて、仮撚加工するに際して、少くとも1種のマルチフィラメント糸として、下記の微細孔形成剤を配合したポリエステルからなるマルチフィラメント糸を用いて仮撚し、仮撚中のセット条件を常温若しくは高々78℃迄としてセットしてから解撚し、解撚直後又はその後の工程において、130℃以上の温度で熱処理することを特徴とする鮮明性を呈する超ソフト特殊混繊糸の製造方法。
微細孔形成剤を配合したポリエステル

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【特許番号】第2771248号
【登録日】平成10年(1998)4月17日
【発行日】平成10年(1998)7月2日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平1−112142
【出願日】平成1年(1989)5月2日
【公開番号】特開平2−293411
【公開日】平成2年(1990)12月4日
【審査請求日】平成8年(1996)4月26日
【出願人】(999999999)帝人株式会社