説明

鱗片状意匠材加飾方法

【課題】建築用仕上塗材塗付面に下地塗布面が透ける加飾方法で、鱗片状意匠材料を下地凹凸に関係無く、均一性が高く鱗片状意匠材を加飾方法を提供する。
【解決手段】建築用仕上塗材塗布面に透ける状態で鱗片状意匠材料を加飾する方法であって鱗片状意匠材料を配合した塗料を吸い上げ式のスプレーガンで塗装する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鱗片状意匠材料の加飾方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多彩塗料、塗膜等は雲母等鱗片状の骨材の混合組成物を吹き付ける、複数回に分けてそれぞれ別個の塗料組成物を吹き付ける、或いは多頭ガンによる吹き付け塗装がなされている。これらの多彩塗膜は岩石の割り肌面を模したもので、多彩な色変化の塗料にきらめき感を有する雲母等を吹き付けることで割り肌面を模すことがなされている。
【0003】
一方、雲母或いは鱗片状物質の素材感或いはきらめき感をそのまま壁等の表面に付与することがなされ、その壁全体に不自然なく鏤めるため、下塗りに凹凸を付与したり、下塗組成物に骨材を配合する等、鱗片状物質を鏤める条件環境を作りゴム鏝で行っていた。この鏝塗作業は不自然なく、鏤めたり、鏝あとを生じることなく施工するには、塗布作業速度が律され、また、作業者の熟練度も関係していた。
【0004】
粘度が2〜25Pa・s、TI値が2.2〜2.7である結合用塗料と鱗片状物質或いは金属箔片物質からなる意匠用塗料で、鱗片状物質或いは金属箔片物質が撹拌により分散された意匠用塗料をゴム鏝で塗布する意匠性賦与方法で、壁面すなわち垂直面に、意匠材料(鱗片状物質或いは金属箔片物質)を、部分的にも、壁全体に均質に点在させる或いは局所的には大小錯雑であるが壁全体に均質にまた意匠材料の占める比率も任意に変えらことが開示されている。(特許文献1)
【0005】
結合樹脂と光透過性干渉顔料と扁平薄片とを含み、扁平薄片が雲母である建築用仕上塗材用仕上げ塗料組成物、また建築用仕上塗材を塗布乾燥後、前記塗料組成物を塗布乾燥し、仕上げられる建築仕上げ方法でパール顔料や雲母の様な単一なきらきら感でなく、扁平薄片の塗布された環境と視野角との関係で扁平薄片が様々な色の反射光を持ちながら局部的には面反射をしているため視認性が高く、壁全体でも扁平薄片が様々な条件で構成されるため、従来にない意匠性が得られることを提案している。(特許文献2)
【0006】
分散媒および該分散媒に溶解しない状態で分散せしめた着色分散粒子とからなる多彩模様塗料であって、該着色分散粒子の他に、透明性を損なわない合成樹脂皮膜で表面被覆されてなる板上方向の平均直径が1〜10mmの鱗片状顔料を含有せしめてなることを特徴とする御影石調模様形成塗料で建築や土木関連の内外壁を塗装仕上げをするに際し、天然石である御影石特有のキラメキ感のある割り肌状の御影石調模様を形成することが開示されている。(特許文献3)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−262294号公報
【特許文献2】特願2009−047569号
【特許文献3】特開平8−151541号公報
【0008】
天然石調や御影石調等の多彩色塗料は雲母等の鱗片状物質を使って模様、意匠等が形成されるが、これは鱗片状物質を塗料に配合する方法、多頭ガンスプレーによる複数のスプレーを同時に吹き付ける方法、複数の塗料を別個に複数回塗装を重ねる方法がある。しかし、これらの多彩色塗膜は模様として多彩となり、コントラストを有する模様となり、鱗片状物質は迷彩服と同様に多少の塗膜のばらつき、偏りも不自然なものにならない。また、鱗片状物質の素材をそのまま模様にする必要もなく、塗膜の透明性、或いは塗膜中へのボイドも他の塗膜で塗膜物性が確保できれば、外観や意匠も塗膜として問題視されないものである。
一方、特許文献1や特許文献2では、鱗片状物質そのものを外観や意匠に反映させなければ意匠価値が生じないものであった。しかし、これらは塗材の工夫と鏝作業で、大面積では施工性が劣るものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする課題は、建築用仕上塗材塗付面に下地塗布面が透けて見える様に加飾する方法で、鱗片状意匠材料を下地凹凸に関係無く、均一性が高く鱗片状意匠材の加飾方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、建築用仕上塗材塗布面に下地が透ける状態で鱗片状意匠材料を加飾する方法であって鱗片状意匠材料を配合した塗料を吸い上げ式のスプレーガンで塗装することを特徴とする鱗片状意匠材料加飾方法で、大面積でも、作業性が高く、下地に関係せず、意匠材の均一性が高い。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加飾方法は大面積でも作業性が高く、意匠材料の均一性が高くなる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は実施例1の代用写真である。
【図2】図2は実施例2の代用写真である。
【図3】図3は比較例1の代用写真である。
【図4】図4は比較例2の代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明はJIS A6909に規定される建築用仕上塗材か塗布された面上に鱗片状物質をそのものを意匠とし、前記仕上塗材の色調や凹凸模様を活かすこともできる建築仕上方法である。
【0014】
JIS A6909に規定される建築用仕上塗材は適用範囲として「この規格は、セメント、合成樹脂などの結合材、顔料、骨材などを主原料とし、主として建築物の内外壁又は天井を,吹付け、ローラー塗り、こて塗りなどによって立体的な造形性をもつ模様に仕上げる建築用仕上塗材について規定する。」とされる。この建築用仕上塗材の施工面を本願の施工対象とする。この塗材は顔料等で着色され、これを下地とし、下地色を生かすまたはほぼ全面に鱗片状物質の意匠材料で構成しても良く、また下地として鏝で平滑仕上としても、吹き付け、ローラー等で造形性を持つ模様に仕上げたものでも良い。
【0015】
鱗片状物質配合塗料の吹き付け塗装は、鱗片状物質が、特に大きいもの、また塗料粘度が高いものは鱗片状物質の周辺に気泡が残りやすく、下地の形状への追従性は劣る傾向にある。また、結合樹脂が溶剤型でなく、エマルジョン型のものでは表面のみが乾燥し、透明成膜が劣り、難しいものとなっていた。
透明或いは半透明である鱗片状物質配合塗料は、特許文献1や特許文献2の様に下地面の制約を受け、また施工性が悪い鏝作業とする以外良い方法が見出されてなかった。本発明は前記の透明或いは半透明である鱗片状物質配合塗料でもJIS A6909の建築用仕上塗材施工面上で鱗片状物質の意匠材料として効果を奏する方法である。
【0016】
本発明の鱗片状物質配合塗料は鱗片状物質の形状が明確に見ることができる透明或いは半透明で、着色されていても良い。また、塗料に使用する結合樹脂は成膜後透明であれば良く、使用目的に合わせて、樹脂を選定する。屋外に用いられる場合は耐候性が良いアクリル樹脂系で、溶剤型が好ましい。
【0017】
本発明は建築用仕上塗材の上に施工し、現場施工であり、施工環境で成膜する必要があるため、溶剤組成は現場環境に合う溶剤組成とする。エマルジョン型の場合は特に樹脂成分が多いと表面が成膜し、内部の水分が閉じこめられ透明成膜しないため、成膜助剤や固形分を適宜選定し、使用する。
【0018】
本発明で使用する鱗片状物質は粒径1〜5mmで、意匠効果を発現し易いものが好ましい。鱗片状物質としては雲母、ガラスの鱗片状物等で、これらの粉砕物の大小を組み合わせたもの或いは意匠塗料中で撹拌により、粉砕できるものを言う。雲母には白雲母、黒雲母、金雲母などが挙げられ、また着色コーティングしたもの、酸化チタンなどの金属酸化物薄膜を結晶成長ものなどが挙げられる。ガラスの鱗片状物質は、平均厚みは5μm、大きさは10〜4000μm(4mm)のもので、これらに金属コート品、金属酸化物コート品である日本板硝子でメタシャイン(登録商標)で金、銀、ニッケルシルバー、ニッケルブラック干渉色等の製品がある。鱗片状物質の本来の形状を活かしたものには雲母が堅牢で好ましい。
【0019】
一般に塗料を霧化し、塗布する手段にスプレーガンによる方法がある。この方法は合成樹脂溶液のみの塗料や、充填剤を配合した塗料でも容易に実施できる技術となっている。粒径が大きい骨材を含む塗材でも、所謂 リシンガン等で、ガンのノズル口径等物理的に許す範囲で実施することができる。
【0020】
鱗片状物質を含む塗料をスプレーガンで塗布する場合、塗料を高粘度とすることにより、塗布は可能となるが、その粘度による鱗片形状の付着状態或いは乾燥状態で透明性の確保が難しくなる。これらの不具合は多彩塗料や天然石調のものでは外観、意匠上の欠点とはならない。本発明が対象とするものは非多彩色塗料であって、塗料が透明或いは半透明であるもので、鱗片状物質の下地の形状に倣う必要があるか、その透明性が要求される条件では高粘度では意匠上の欠点が発生する。鋭意、検討した結果発明に至った。
【0021】
高粘度とした場合、鱗片状物質が下地面に対して倣わず、角度がでて、意匠上好ましくないほか、鱗片状物質同士が迫り立ち凸面を生じたり、エマルジョン系では表面乾燥が進み内部の乾燥がてきずに白化する不具合となる。低粘度とすると重力式のスプレーガンで塗装すると均一な塗布ができない不具合が生じる。
【0022】
前記不具合を解消を吸い上げ式のスプーレーガンで塗布することで解決した。
【0023】
建築塗材の現場塗装の環境ではスプレーガンとしては塗料を蓄える容器が吐出口より上にある自重式と容器が下にある吸い上げ式が専ら使用されるが、本発明は後者の吸い上げ式スフレーガンを使用する。市販品としてW77シリーズ(アネスト岩田(株)、商品名)の吸上式を一例として挙げることができる。ノズル口径は鱗片状物質の大きさと塗布量により選択する。ノズル口径は鱗片状物質粒径の約200%以上のもの用いるのが好ましい。環境が許せば加圧タンクによる圧送を行っても良い。
【0024】
以下 実施例・比較例で説明する。
【0025】
代用写真にて、効果の差を表すため、被塗下地はジョリパットJP−100BK(アイカ工業(株)、商品名、黒色の建築用仕上塗材)をゆず肌仕上げのものに実施例・比較例の方法で塗布した。
【実施例1】
【0026】
ジョリパット トップコート JC−100(アイカ工業(株)、商品名、固形分25重量%溶剤型アクリル樹脂クリアートップコート)100重量部にJF−53C4(アイカ工業(株)、商品名、直径約1mm、マイカ)を10重量部混合し、JT−100(アイカ工業(株)、商品名、シンナー)100重量部を加えて、撹拌し、口径2mmの吸い上げ式スプレーガンW77シリーズ(アネスト岩田(株)、商品名)で、塗装し実施例1の方法とした。
【実施例2】
【0027】
ジョリパット トップコート JC−50(アイカ工業(株)、商品名、固形分15重量%水系アクリル樹脂クリアートップコート)150重量部にJF−53C4(アイカ工業(株)、商品名、直径約1mm、マイカ)を10重量部混合撹拌し、口径2mmの吸い上げ式スプレーガンW77シリーズで、塗装し実施例2の方法とした。
【0028】
比較例1
実施例1と同じ塗料組成で、中毛ローラーで塗装し、比較例1の方法とした。
【0029】
比較例2
実施例2と同じ塗料組成で、4mm口径の重力式ガンのジュラクガン(大塚刷毛製造(株)、商品名)で塗装し、比較例2の方法とした。
【0030】
【表1】

【0031】
施工作業性:塗布時に作業性が問題ないものを○、著しい不具合を生じるものを×とした。
*1は著しい糸曳きがある。
外観:意匠材料が均一に塗布されているものを○、それ以外を×とした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築用仕上塗材塗布面に下地が透ける状態で鱗片状意匠材料を加飾する方法であって鱗片状意匠材料を配合した塗料を吸い上げ式のスプレーガンで塗装することを特徴とする鱗片状意匠材料加飾方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−76049(P2012−76049A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225375(P2010−225375)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】