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鱗片状粒子およびその製造方法
説明

鱗片状粒子およびその製造方法

【課題】チタンおよび鉄を含むことにより黄褐色ないし黄色を呈する鱗片状粒子の色相の安定化および彩度の向上を図る。
【解決手段】本発明の鱗片状粒子は、金属酸化物でできた母材と、チタンと、鉄とを含む。チタンを酸化チタン(TiO2)に、鉄を酸化鉄(Fe23)にそれぞれ換算したとき、酸化鉄に対する酸化チタンのモル比(TiO2/Fe23)が11以上である。鱗片状粒子における酸化チタンおよび酸化鉄の合計含有率(TiO2+Fe23)が20〜60質量%の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタンおよび鉄を含む鱗片状粒子並びにその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンおよび酸化鉄は、塗料、プラスチックフィルム、化粧料等に着色剤として利用されている。これらの酸化チタンおよび酸化鉄は、通常、粉末である。そのため、媒体に均一分散させることが難しい。また、一度分散させても、経時的に凝集したり、むらになったりする。特に、化粧料に多量に混ぜた場合には、化粧料の伸展性(のび)が悪くなる、可視光透過性が低下する、隠蔽性が高くなりすぎる等の問題が生ずる。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば、特開平7−330542号公報には、着色剤としてのチタン・鉄複合酸化物を含む鱗片状ガラスが開示されている。この鱗片状ガラスによると、チタン・鉄複合酸化物がガラスマトリクス中に均一に分散しているので、高い可視光透過性および均一な着色性を実現できる。鱗片状ガラスは媒体への分散性も良好である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−330542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開平7−330542号公報に開示された鱗片状ガラスは、酸化チタンおよび酸化鉄を出発原料としている。酸化鉄に対する酸化チタンの比率の僅かな違いが色相に影響を及ぼすので、色相の更なる安定化が求められていた。
【0006】
本発明は、チタンおよび鉄を含むことにより黄褐色ないし黄色を呈する鱗片状粒子の色相の安定化および彩度の向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、
金属酸化物でできた母材と、チタンと、鉄とを含む鱗片状粒子であって、
チタンを酸化チタン(TiO2)に、鉄を酸化鉄(Fe23)にそれぞれ換算したとき、酸化鉄に対する酸化チタンのモル比(TiO2/Fe23)が11以上であり、
前記鱗片状粒子における酸化チタンおよび酸化鉄の合計含有率(TiO2+Fe23)が20〜60質量%の範囲にある、鱗片状粒子を提供する。
【0008】
他の側面において、本発明は、
金属酸化物でできた母材と、チタンと、鉄とを含む鱗片状粒子を製造する方法であって、
加水分解および縮合可能な金属化合物と、チタン原料と、鉄原料と、を含む溶液を基材に塗布する工程と、
前記塗布工程を経て前記基材上に形成された薄膜を前記基材から剥離させる工程と、
前記薄膜を熱処理する工程と、を含み、
前記溶液に含まれたチタンを酸化チタン(TiO2)に、前記溶液に含まれた鉄を酸化鉄(Fe23)にそれぞれ換算したとき、酸化鉄に対する酸化チタンのモル比(TiO2/Fe23)が11以上であり、
前記鱗片状粒子における酸化チタンおよび酸化鉄の合計含有率(TiO2+Fe23)が20〜60質量%の範囲となるように、前記溶液中の前記金属化合物、前記チタン原料および前記鉄原料の各含有率を調節する、鱗片状粒子の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
上記本発明のように、酸化鉄(Fe23)の含有率に対する酸化チタン(TiO2)の含有率をモル比で11倍以上に調節することで、鱗片状粒子の色相が安定化する。さらに、鱗片状粒子における酸化チタンおよび酸化鉄の合計含有率を20〜60質量%に調節することで、鱗片状粒子の彩度を十分に高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態の鱗片状粒子は、いわゆるゾルゲル法によって製造できる。ゾルゲル法を採用した製造方法は、典型的には下記(1)〜(5)の工程を含む。以下、各工程について説明する。
(1)ゾル溶液の調製
(2)基材へのゾル溶液の塗布
(3)薄膜の乾燥
(4)薄膜の剥離・粉砕
(5)薄膜の熱処理
【0011】
(1)ゾル溶液の調製
まず、加水分解および縮合可能な金属化合物と、チタン原料と、鉄原料と、を含むゾル溶液を調製する。
【0012】
加水分解および縮合可能な金属化合物は、鱗片状粒子の母材を形成するべき材料である。ゾルゲル法で使用できる金属化合物として、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネートおよび金属カルボキシレートが代表的である。中でも、金属アルコキシドが好適である。金属アルコキシドは、入手が容易、常温常圧で安定、毒性がないといった利点を有する。
【0013】
金属アルコキシドとして、シリコン、アルミニウム、ジルコニウムおよび亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種の金属を含むものを使用できる。これらの金属アルコキシドにより、例えば屈折率1.3〜1.8の透明な母材を形成できる。
【0014】
例えば、シリコンアルコキシドとして、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランおよびメチルトリメトキシシランが挙げられる。アルミニウムアルコキシドとして、アルミニウムイソプロポキシドおよびアルミニウムエトキシドが挙げられる。単一の金属アルコキシドを使用してもよいし、2種類以上の金属アルコキシドを併用してもよい。
【0015】
なお、本明細書では、ゾルゲル法の分野の慣例に従い、非金属元素として分類すべきシリコンのような元素についても金属として取り扱う。
【0016】
ゾル溶液には、さらに、金属化合物を加水分解および縮合させるために必要な溶媒と触媒とが含まれる。溶媒として、典型的には、適当な有機溶媒および水が用いられる。有機溶媒の例は、アルコール、ケトンおよびエステルである。触媒として、酸触媒、典型的にはプロトン酸が用いられる。プロトン酸の具体例として、硝酸、塩酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、クエン酸、硫酸、リン酸およびパラトルエンスルホン酸が挙げられる。酸触媒は、金属化合物の加水分解のために使用する水に溶解させておくとよい。なお、酸触媒に代えて、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウム等の塩基触媒を用いることもある。
【0017】
なお、鱗片状粒子の母材を形成するべき金属化合物として、金属アルコキシド等に代えて、または金属アルコキシド等とともに、金属酸化物コロイドを使用してもよい。
【0018】
チタン原料として、酢酸塩、硝酸塩、塩酸塩、アセチルアセトン化合物、酸化物およびアルコキシドからなる群より選ばれる少なくとも1つのチタン化合物を使用できる。ゾル溶液に均一に分散させやすく、鉄と反応してチタン・鉄複合酸化物を生成しやすいという理由で、チタンアルコキシドの使用が推奨される。チタンアルコキシドの加水分解物(ゾル溶液)は、チタニアゾルと呼ばれる。チタニアの平均粒径は、例えば1〜100nmである。
【0019】
チタン原料として酸化チタン微粒子も使用できる。この場合、酸化チタン微粒子は1〜100nmの平均粒径を有していることが好ましい。粒径の小さい酸化チタン微粒子を使用すると、可視光の散乱を十分に抑制でき、それにより色相の白ボケを抑制できる。
【0020】
鉄原料として、鉄イオン、鉄化合物、鉄含有コロイドおよび酸化鉄微粒子からなる群より選ばれる少なくとも1つを使用できる。鉄イオンとして、硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩等の鉄塩を使用できる。鉄化合物として、アセチルアセトン化合物およびアルコキシドを使用できる。鉄含有コロイドとして、酸化鉄コロイドおよび/または水酸化鉄コロイドを使用できる。鉄イオン、鉄化合物(微粒子の形態のものを除く)および鉄含有コロイドは、チタンと反応してチタン・鉄複合酸化物を生成しやすい。
【0021】
鉄原料として酸化鉄微粒子を使用すると、酸化鉄微粒子の粒径にもよるが、その一部のみがチタンと反応してチタン・鉄複合酸化物を形成する。酸化鉄微粒子の残部は、十分な熱処理を行った後もチタンと反応せずに酸化鉄の状態で母材中に存在しうる。したがって、鉄原料として酸化鉄微粒子を使用すると、母材中に酸化チタン、酸化鉄およびチタン・鉄複合酸化物が分散した鱗片状粒子が得られる。母材中の酸化チタン、酸化鉄およびチタン・鉄複合酸化物の存在は、X線回折法によって知ることができる。
【0022】
本明細書において、酸化鉄コロイドまたは水酸化鉄コロイドとは、100nm未満の平均粒径を有するコロイド粒子が溶媒に均一に分散している状態のものを指す。酸化鉄コロイドまたは水酸化鉄コロイドの平均粒径は、例えば1nm以上100nm未満である。
【0023】
鉄原料として使用できる酸化鉄微粒子の主成分はFe23でありうる。「主成分」とは、質量比にて最も多く含まれた成分を意味する。酸化鉄微粒子の平均粒径は、例えば100〜300nmである。
【0024】
なお、チタン原料および鉄原料の「平均粒径」は、レーザー散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering)によって測定された粒度分布の体積累積50%での粒径を意味する。
【0025】
ゾル溶液に含まれたチタンを酸化チタン(TiO2)に、ゾル溶液に含まれた鉄を酸化鉄(Fe23)にそれぞれ換算したとき、酸化鉄に対する酸化チタンのモル比(TiO2/Fe23)が11以上である。このような比率でゾル溶液にチタンおよび鉄が含まれていると、黄褐色から黄色の安定した色相を呈する鱗片状粒子を容易に製造できる。モル比の上限に特に限定はないが、例えば20以下である。なお、ゾルゲル法によると、チタンおよび鉄のほぼ全量が鱗片状粒子に残存するため、鱗片状粒子においても上記モル比が維持される。
【0026】
鉄塩のように、チタンとの反応性が相対的に高い材料を鉄の原料として用いると、鉄のほぼ全量がチタンと反応する。したがって、鱗片状粒子の色相の安定化が図られる。酸化鉄微粒子のように、チタンとの反応性が相対的に低い材料を鉄の原料として用いた場合にも、モル比(TiO2/Fe23)を11以上とすることによって、鱗片状粒子の色相の安定化を図ることができる。必要に応じて、2種以上の鉄の原料を使用できる。特に、反応性の低い酸化鉄微粒子を使用すると、色相が赤色側に移行した鱗片状粒子を製造できる。
【0027】
また、鱗片状粒子における酸化チタンおよび酸化鉄の合計含有率(TiO2+Fe23)が20〜60質量%の範囲となるように、ゾル溶液における金属化合物、チタン原料および鉄原料の各含有率を調節する。チタンおよび鉄の合計含有率が、酸化チタンおよび酸化鉄に換算して20〜60質量%の範囲にあると、良好な彩度および均一な粒径を有する鱗片状粒子が得られる。酸化チタンおよび酸化鉄の合計含有率が20%未満の場合、鱗片状粒子の彩度が不足する。このような鱗片状粒子の着色剤としての利用価値は低い。他方、酸化チタンおよび酸化鉄の合計含有率が60%を超えると、金属酸化物の含有率が少なくなりすぎることに起因して、鱗片状粒子が脆くなり、その形状を維持しにくくなる。この場合、鱗片状粒子の平均粒径が小さくなりすぎたり、均一性が失われたりする。このような鱗片状粒子は、樹脂等に混ぜたときの鮮やかさに劣るので好ましくない。
【0028】
(2)基材へのゾル溶液の塗布
チタンおよび鉄を含むゾル溶液を基材に塗布し、薄膜を形成する。基材として、ガラス板、金属板および樹脂板を使用できる。平板状で厚みが揃った鱗片状粒子を得る観点から、基材が平滑な表面を有していることが好ましい。また、鱗片状粒子の剥離性に優れている基材として、大きい熱膨張係数を有するステンレス板が挙げられる。
【0029】
基材へのゾル溶液の塗布は、公知の技術を用いて行えばよい。具体的には、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、カーテンコーティング法、ディップコーティング法、フローコーティング法およびインクジェット法を採用できる。
【0030】
(3)薄膜の乾燥
次に、基材に形成した薄膜を基材上で乾燥させる。乾燥の方法に制限はないが、溶媒の除去を促進するために、基材を加熱して薄膜を乾燥させるとよい。乾燥温度は、例えば80〜250℃の範囲である。
【0031】
(4)薄膜の剥離・粉砕
乾燥工程により、基材上で薄膜のゲル化が進む。薄膜の収縮に伴って生ずる応力と、薄膜と基材との熱膨張係数の相違とに基づいてクラックが発生し、薄膜が基材から剥離する。自然剥離が難しい場合には、ブラシやスクレーパーのような剥離器具を用いて掻き取ってもよい。
【0032】
(5)薄膜の熱処理
次に、基材から剥離した薄膜を700〜1200℃で熱処理する。熱処理を行なうことにより、母材中において、チタンと鉄とが反応し、チタン・鉄複合酸化物が生成する。チタン・鉄複合酸化物には、シュードブルッカイト(偽板チタン石:Fe2TiO5)、ウルボスピネル(チタン磁鉄鉱:Fe2TiO4)およびイルメナイト(チタン・鉄鉱:FeTiO3)がある。中でも、シュードブルッカイトが安定して生成されうる。
【0033】
熱処理は、チタン・鉄複合酸化物が生成する条件であって、母材が確実にガラス化する条件で行なうとよい。シュードブルッカイトの生成を確実にするためには、例えば、700〜1200℃の雰囲気温度で10分間〜24時間の熱処理を行う。
【0034】
さらに、必要に応じて熱処理後の薄膜を粉砕および分級すれば、所望の平均粒径の鱗片状粒子が得られる。得られた鱗片状粒子には、酸化チタンおよびチタン・鉄複合酸化物の各微粒子が母材中に分散する形で含まれている。鉄塩を鉄の原料として用いた場合には、鉄の殆どがチタン・鉄複合酸化物を形成する。酸化鉄微粒子を鉄の原料として用いた場合には、鉄原料の一部のみがチタンと反応するので、母材中に十分な量の酸化鉄微粒子が残存する。酸化チタン、酸化鉄およびチタン・鉄複合酸化物が母材に内包されているので、鱗片状粒子を化粧料等のフィラーとして用いた場合においても、酸化チタン、酸化鉄およびチタン・鉄複合酸化物が鱗片状粒子から脱離または剥離しにくい。なお、鱗片状粒子に対して、疎水化処理または撥水撥油処理を施してもよい。
【0035】
鱗片状粒子は、例えば、1〜500μmの範囲の平均粒径と、0.1〜5μmの範囲の平均厚さと、10〜100の範囲の平均アスペクト比を有している。好ましい平均粒径の範囲は8〜200μmであり、好ましい平均厚さの範囲は0.5〜2.0μmであり、好ましい平均アスペクト比の範囲は16〜100である。このような寸法を有する鱗片状粒子は、フィラーとして幅広く利用できる。
【0036】
鱗片状粒子の「平均粒径」は、レーザー散乱法(DLS:Dynamic Light Scattering)によって測定された粒度分布の体積累積50%での粒径を意味する。鱗片状粒子の粒径は、鱗片状粒子を平面視したときの面積Sの平方根で表される値である。また、走査電子顕微鏡で50個の鱗片状粒子のそれぞれの厚さを測定し、測定値の平均を「平均厚さ」とする。平均アスペクト比は(平均粒径/平均厚さ)で表される値である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0038】
(実施例1および2、比較例1〜3)
表1に示す混合比でゾル溶液を調製し、そのゾル溶液を用いて鱗片状粒子を作製した。
【0039】
まず、市販のゾル溶液(日本化学工業社製 シリカドール30、平均粒径20nm、分散媒:水)に6%硝酸を添加し、pHを2〜3とした。pH調整後、そのゾル溶液にチタニアゾル(石原産業社製 CS−N、平均粒径30nm)を加え、十分に攪拌した。これにより、チタンを含むシリカゾル溶液を得た。
【0040】
一方、別の容器にイソプロピルアルコールと塩化第二鉄液(東亜合成社製 高品位過塩化鉄液)とを入れ、十分に攪拌した。攪拌を続けながら、正珪酸メチル(多摩化学工業社製)を容器に少しずつ加え、鉄−正珪酸メチル液を得た。
【0041】
次に、チタンを含むシリカゾル溶液に鉄−正珪酸メチル液をゆっくり注ぎ、十分に攪拌した。最後に、トレハロース(林原社製 平均分子量342)を加え、50℃で18時間反応させた。このゾル溶液に、当該ゾル溶液に対する質量比で0.1〜3%のポリプロピレングリコール(平均分子量200)を加え、攪拌した。このようにして、鱗片状粒子を作製するためのゾル溶液を調製した。
【0042】
上記の手順で調製したゾル溶液を、幅10cmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにバーコーターを用いて塗布した。次に、PETフィルムを雰囲気温度120℃の乾燥炉に1分間入れ、PETフィルム上に形成された薄膜を乾燥させた。乾燥後の薄膜の厚みは約1.0μmであった。
【0043】
次に、PETフィルムを乾燥炉から取り出し、室温まで冷却した。薄膜はPETフィルムの表面に均一に付着していた。次に、PETフィルムに室温の水を噴霧しながら、薄膜をフェルトまたはスクレーパーで軽く擦り、PETフィルムから剥離させた。薄膜を回収し、120℃で1時間乾燥させた後、さらに、1000℃で7時間焼成を行った。このようにして、実施例および比較例の鱗片状粒子を得た。
【0044】
【表1】

【0045】
得られた鱗片状粒子の色相角を測定した。結果を表2に示す。表2には、鱗片状粒子におけるシリコン、チタンおよび鉄の含有率が、酸化物(SiO2、TiO2およびFe23)に換算したときの質量比で示されている。比較例1〜3の色相角は互いに相違していたが、実施例1および2は塩化第二鉄液の使用量が相違しているにも拘らず同じ色相角を有していた。すなわち、酸化チタン/酸化鉄のモル比が11以上の場合に、色相が安定していた。
【0046】
【表2】

【0047】
(実施例3および4、比較例4〜6)
表3に示す混合比でゾル溶液を調製し、そのゾル溶液を用いて鱗片状粒子を作製した。
【0048】
まず、市販のゾル溶液(日本化学工業社製 シリカドール30、平均粒径20nm、分散媒:水)に6%硝酸を添加し、pHを2〜3とした。pH調整後、そのゾル溶液に酸化鉄微粒子(戸田工業社製 130ED、平均粒径200nm)を加え、ホモジナイザーで均一に分散させた。その後、ゾル溶液にチタニアゾル(石原産業社製 CS−N、平均粒径30nm)を加え、ホモジナイザーで分散させた。これにより、チタンおよび鉄を含むシリカゾル溶液を得た。なお、酸化鉄微粒子の添加順序に特に限定はなく、例えばシリカドール30に酸化鉄微粒子を予め分散させてもよい。
【0049】
一方、別の容器でイソプロピルアルコールと正珪酸メチル(多摩化学工業社製)とを含む正珪酸メチル液を調製した。
【0050】
次に、チタンおよび鉄を含むシリカゾル溶液に正珪酸メチル液をゆっくり注ぎ、十分に攪拌した。最後に、トレハロース(林原社製 平均分子量342)を加え、50℃で18時間反応させた。このゾル溶液に、当該ゾル溶液に対する質量比で0.1〜3%のポリプロピレングリコール(平均分子量200)を加え、攪拌した。このようにして、鱗片状粒子を作製するためのゾル溶液を調製した。
【0051】
調製したゾル溶液を用い、実施例1の場合と同じ手順で、鱗片状粒子を作製した。
【0052】
【表3】

【0053】
得られた鱗片状粒子の色相角を測定した。結果を表4に示す。比較例4〜6の色相角は相違していたが、実施例3および4は酸化鉄微粒子の使用量が相違しているにも拘らず同じ色相角を有していた。すなわち、酸化チタン/酸化鉄のモル比が11以上の場合に、色相が安定していた。
【0054】
【表4】

【0055】
(実施例5〜9、比較例7および8)
次に、酸化チタンおよび酸化鉄の合計含有率が10〜70質量%の範囲内の鱗片状粒子を作製した。酸化鉄に対する酸化チタンのモル比(TiO2/Fe23)は、色相安定領域である12に固定した。
【0056】
具体的には、表5に示す混合比でチタンおよび鉄を含むゾル溶液を調製し、そのゾル溶液を用いて実施例1と同じ方法で鱗片状粒子を作製した。得られた鱗片状粒子の彩度を測定した。結果を表6に示す。
【0057】
【表5】

【0058】
【表6】

【0059】
シリカの含有率が90質量%で、酸化チタンおよび酸化鉄の合計含有率(TiO2+Fe23)が10質量%である比較例7は、彩度が11と小さく、鮮やかさに劣っていた。シリカの含有率が30質量%で、酸化チタンおよび酸化鉄の合計含有率(TiO2+Fe23)が70質量%の比較例8は、他の実施例および比較例よりも平均粒径が小さかった。このことは、母材としてのシリカが少なすぎることにより、鱗片状粒子が崩壊しやすくなっていることを表している。このように、シリカが40〜80質量%の範囲にあり、酸化チタンおよび酸化鉄の合計含有率(TiO2+Fe23)が20〜60質量%の範囲にある場合に、良好な彩度および平均粒径を有する鱗片状粒子が安定して得られた。
【0060】
(色相角および彩度の測定方法)
なお、鱗片状粒子の色相角および彩度は、次の方法で測定した。鱗片状粒子を専用のセルに入れ、色差計(ミノルタ社製 CR−300)でa値およびb値を測定した。得られたa値およびb値を用い、色相(色相角)および彩度を下記式に基づいて算出した。色相角が90度に近づけば近づくほど色相が黄色であることを示す。色相角が0度に近づけば近づくほど色相が赤色であることを示す。
【0061】
色相角(h)=tan-1(b/a)
彩度(C)=(a2+b21/2
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の鱗片状粒子は、黄褐色から黄色の鮮やかな発色を呈するので、化粧料、塗料、樹脂組成物、インキ組成物、フィルム等のフィラーとして好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物でできた母材と、チタンと、鉄とを含む鱗片状粒子であって、
チタンを酸化チタン(TiO2)に、鉄を酸化鉄(Fe23)にそれぞれ換算したとき、酸化鉄に対する酸化チタンのモル比(TiO2/Fe23)が11以上であり、
前記鱗片状粒子における酸化チタンおよび酸化鉄の合計含有率(TiO2+Fe23)が20〜60質量%の範囲にある、鱗片状粒子。
【請求項2】
前記金属酸化物が、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウムおよび酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1に記載の鱗片状粒子。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鱗片状粒子を含有する塗料。
【請求項4】
請求項1または2に記載の鱗片状粒子を含有するインキ組成物。
【請求項5】
請求項1または2に記載の鱗片状粒子を含有する樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1または2に記載の鱗片状粒子を含有するフィルム。
【請求項7】
金属酸化物でできた母材と、チタンと、鉄とを含む鱗片状粒子を製造する方法であって、
加水分解および縮合可能な金属化合物と、チタン原料と、鉄原料と、を含む溶液を基材に塗布する工程と、
前記塗布工程を経て前記基材上に形成された薄膜を前記基材から剥離させる工程と、
前記薄膜を熱処理する工程と、を含み、
前記溶液に含まれたチタンを酸化チタン(TiO2)に、前記溶液に含まれた鉄を酸化鉄(Fe23)にそれぞれ換算したとき、酸化鉄に対する酸化チタンのモル比(TiO2/Fe23)が11以上であり、
前記鱗片状粒子における酸化チタンおよび酸化鉄の合計含有率(TiO2+Fe23)が20〜60質量%の範囲となるように、前記溶液中の前記金属化合物、前記チタン原料および前記鉄原料の各含有率を調節する、鱗片状粒子の製造方法。
【請求項8】
前記チタン原料がチタニアゾルであり、前記鉄原料が鉄塩または酸化鉄微粒子である、請求項7に記載の鱗片状粒子の製造方法。
【請求項9】
チタンと鉄との反応によってシュードブルッカイトが生成する温度で前記熱処理を実施する、請求項7または8に記載の鱗片状粒子の製造方法。


【公開番号】特開2012−121739(P2012−121739A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−271336(P2010−271336)
【出願日】平成22年12月6日(2010.12.6)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】