説明

鱗片状薄膜微粉末分散液

【課題】 鱗片状薄膜微粉末が容易に沈降しない処理を鱗片状薄膜微粉末に施すことにより、これを用いたメタリック顔料では鱗片状薄膜微粉末がインク中に分散されたものとなり、その結果ノズル詰まりを防止し、得られた印刷物は豊かな金属光沢を得られることができる鱗片状薄膜微粉末分散液を提供する。
【解決手段】 金属単体、合金、又は金属化合物が微粉砕されてなる鱗片状薄膜微粉末が溶媒中に含有されてなる鱗片状薄膜微粉末分散液であって、前記鱗片状薄膜微粉末の平均長径が0.5μm以上5.0μm以下であり、最大長径が10μm以下であり、平均厚みが5nm以上100nm以下であり、アスペクト比が20以上、とした鱗片状薄膜微粉末分散液とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鱗片状薄膜微粉末分散液に関する発明であり、具体的には、例えば、金属光沢を呈する印刷物をインクジェットプリンタにて実現することを可能としたインクジェットプリンタ用のメタリック顔料インク、の原材料として用いられる、アルミニウムなどの金属を鱗片状であってかつ薄膜状にした微粉末を溶媒に含有してなる分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、商品や商店の宣伝などに屋外広告は広く用いられてきた手法であり、中でも印刷物を用いた宣伝を展開する手法は広く実施されているところである。この印刷物を用いた屋外広告としてはポスターを色々なところに貼ることが最も行われているものであり、現在でも街中で普遍的に見かける手法である。また最近では印刷技術の向上に伴い、従来手書きで描かれていた看板のような巨大なサイズのものであっても特殊な用紙等に印刷を施し、それを看板として貼り付けて屋外に展示する、ということも行われている。
【0003】
このような印刷物、即ちポスター、屋外広告、看板、サインディスプレイ、POP広告(Point of purchase advertising)等の製作は、各種印刷会社の他にも看板やサインディスプレイを製作する会社などにおいて作成され、さらにはフォトラボや商業印刷会社等においても行われているが、近年は小ロット化、納期の短縮化、グラフィカルデザインの多様化・複雑化、といった状況の変化に応じるべく上記印刷物作成のデジタル化が一気に進行し、それと同時に当該市場の急速な拡大が見られるようになってきている。
【0004】
そのような状況の変化に伴い印刷物の差別化が強く求められるようになってきた。例えば印刷により表現される内容もより高細密なもの、細部にわたるまでできるだけ滑らかな表現ができる、また写真印刷の場合であれば細部においても従来の銀塩写真による写真印刷と同等の精密さが再現できる、そのような表現が可能な印刷が求められるようになってきた。そして上述した種々の要望に応じるべく、昨今では業務用インクジェットプリンタ(以下、単に「インクジェットプリンタ」とも言う。)が用いられることが多くなってきている。
【0005】
そして高細密な印刷への要求と同時に、高級感を呈する印刷に関する要望も高まってきている。その最たる例として金属光沢の利用が求められるようになってきた。
【0006】
この印刷物における金属光沢としては、従来はいわゆる金箔や銀箔と呼ばれる転写箔を用いることが広く行われていたが、上述したような高細密が要求される状況にあっては転写だけでは充分に対処できなくなってきており、そのため金属光沢を有するインク、即ちメタリック顔料を用いたインク(以下、単に「メタリック顔料インク」とも言う。)を印刷に用いることが求められるようになってきた。中でも高細密印刷を可能としたインクジェットプリンタにおいてメタリック顔料インクを用いることに関する要望が高まってきている。
【0007】
このような金箔や銀箔のような金属光沢を呈する印刷を得るためには、金色や銀色を呈する金属による微細片を用いたメタリック顔料インクを用いることが最も簡単であり、また得られる効果も大きいものとなる。
【0008】
そしてそのようなメタリック顔料インクとして、例えば特許文献1及び特許文献2にはインクジェットプリンタに用いることを想定したインクジェットプリンタ用インクが、より具体的には、厚さが0.2μm以下のアルミニウムや金、銀などの偏平片を含有するインクが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−323223号公報
【特許文献2】特開平11−343436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、この特許文献1に記載されたインクジェットインクであれば、結局のところただ単純に金属による非定型偏平片(以下単に「偏平片」とも言う。)をインクに混入させただけであるだけであり、これを業務用インクジェットプリンタに用いようとしても偏平片の形状の理由により高光沢を得られない。また特許文献2に記載されたインクジェットインクを構成する偏平片であれば、特許文献1に記載されたインクジェットインクを構成する偏平片にさらに樹脂層が積層されている構成であるので、このインクで印刷しても偏平片の厚みがあるため高光沢を得ることができない。
【0011】
この点に関し説明する。
まず偏平片を単純にインクに混入させてメタリック顔料インクとしようとしても、何らの対策を施されていない限り、時間がさほど経過せずとも偏平片がインクタンクの下方に沈降してしまう。偏平片が沈降した状態のメタリック顔料インクをインクジェットプリンタに用いるならば、インクタンクからは偏平片が混在していない、いわば上澄み状態のインクのみがインクジェットプリンタのインクノズル(以下単に「ノズル」とも言う。)部分から射出されてしまい、金属光沢を所望する印刷箇所であっても何ら金属光沢のない、メタリック顔料インクを用いた意味のない、単純な普通の印刷となってしまう。そしてそのまま使用を継続すると、やがて偏平片が沈降している部分のメタリック顔料インクが用いられるようになるが、今度は一度に大量の偏平片を含有したメタリック顔料インクがノズル部分に集中して導かれてしまい、またそこから射出しようとするため、偏平片がノズル部分を簡単に塞いでしまい、結局印刷トラブルが生じて印刷できなくなってしまう。
【0012】
このような現象が生じる理由は次の通りである。実際の一粒一粒の偏平片の大きさがノズルを塞がない大きさであったとしても、実際には偏平片同士が種々の理由で凝集する現象が生じることがあり、また実際にそうなりやすいため、である。よって単純に偏平片をインクに含有する、というだけでは実用に供することのできないメタリック顔料インクとなってしまうのである。実際に利用可能なメタリック顔料インクとするのであれば、例えば偏平片に何らかの処理を施すこと、等のような工夫を施したことを明確にしたメタリック顔料インクでなければ、実際には効果を発揮しないものとなってしまうのである。
【0013】
つまり単純に偏平片を含有させるだけではインクジェットプリンタ用インクとして作用させることは困難であり、さらには偏平片をより細かくしてメタリック顔料インクに含有させても実際の使用時にインクタンク内にて偏平片が沈降又は凝集してしまえば結局のところメタリック顔料インクとして用いることはできなくなってしまうのである。
【0014】
そこでこのような現象を防ぐために、実際の使用前に偏平片を含有したメタリック顔料インクを充分にかきまぜてメタリック顔料インク中に普遍的に偏平片が存在するようにすることが考えられるが、これは装置に何らかの工夫を別途施す必要が生じることとなり、かかるメタリック顔料インクを利用できる装置に制限が生じてしまう、などの問題が生じてしまうことが予想される。
【0015】
また仮に何らかの手法により偏平片をインクジェットプリンタのノズルから射出することが可能であったとしても、特許文献1に記載のインクであれば美麗な金属光沢を得ることは困難である。これはかかるインクに含有される偏平片が殆ど粒形状と言っても良いような形状であることが想像されるからであり、即ち実質粒状の偏平片を平坦に並べたところに光線が照射されても、かかる光線は乱反射されることになり、結果として所望の金属光沢が得られない、と考えられるのである。
【0016】
つまり偏平片が実質的には略粒状であるならば、それを平面に塗布することにより得られる印刷面を微細に観察すると無数の凹凸を有したような状態となるので、この面に光が入射しても乱反射し、その結果光沢感を充分に得ることができないので、偏平片を用いて光沢感を得るためには偏平片ができるだけアスペクト比の高い偏平状であることが好ましいものである。尚ここで言うアスペクト比とは、偏平片の平均長径/平均厚みにより得られる値である。そして偏平片の平均長径とは1個の偏平片の略平面視における端から端の長さのうち最も長い長さの偏平片全体の値の平均値を示し、平均厚みとは1個の偏平片の略側面視における厚みの平均値を示すものとし、以下これは同様であるものとする。そしてこのアスペクト比が高いものほどより偏平な形状を有しているものである、と言える。
【0017】
そして特許文献1及び特許文献2に記載された非定型偏平片であれば、これを平面に塗布した印刷面における金属光沢感は、略粒状の場合に比べて凹凸が少なくなり金属光沢感を増大させることができると思われるものの、アスペクト比が20に届かないようなものである場合、即ち偏平の度合いが不十分であり、また実際にそのようなものを用いたメタリック顔料インクを印刷しても充分な金属光沢を得られないのである。
【0018】
そして特許文献1及び特許文献2に記載された非定型偏平片は実際にはアスペクト比が20に届くものであるかどうかがわからず、また届いているとしても前述した理由により表面に微細な凹凸が生じるため、何れにせよこれらを用いて印刷をしてもさほど金属光沢感を得られず、問題であった。
【0019】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、鱗片状薄膜微粉末がメタリック顔料インク中において容易に沈降しない処理を鱗片状薄膜微粉末に施すことにより、これを用いてメタリック顔料とすると、従来に比べてより一層略均等に鱗片状薄膜微粉末がインク中に分散されたものとなり、その結果これを用いたメタリック顔料インクであるとノズル詰まりを防止し、得られた印刷物は豊かな金属光沢を得られることができるものとなせる、メタリック顔料インクに用いることができる、鱗片状薄膜微粉末分散液を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
以上の課題を解決するために、本願発明の請求項1に記載の発明は、金属単体、合金、又は金属化合物が微粉砕されてなる鱗片状薄膜微粉末が溶媒中に含有されてなる、インクジェットプリンタ用メタリック顔料インクに用いるための鱗片状薄膜微粉末分散液であって、前記鱗片状薄膜微粉末の、1個の前記鱗片状薄膜微粉末の略平面視における端から端の長さのうち最も長い長さ、の前記鱗片状薄膜微粉末全体の値の平均値である平均長径が0.5μm以上5.0μm以下であり、前記長さの最大のものである最大長径が10μm以下であり、1個の前記鱗片状薄膜微粉末の略側面視における厚み、の前記鱗片状薄膜微粉末全体の値の平均値である平均厚みが5nm以上100nm以下であり、前記鱗片状薄膜微粉末の前記平均長径と前記平均厚みとの比、即ち平均長径/平均厚みで示されるアスペクト比が40以上であり、当該鱗片状薄膜微粉末分散液を用いてなるインクジェットプリンタ用メタリック顔料インクを光沢塩化ビニルシートに印刷して得られる印刷面の金属光沢が、JIS_Z_8741規格により測定した結果、20°鏡面光沢度が200以上、60°鏡面光沢度が330以上、となること、を特徴とする。
【0021】
本願発明の請求項2に記載の発明は、基材フィルムである高分子樹脂フィルムの表面に、樹脂による剥離層と、金属単体、合金又は金属化合物の何れか若しくは複数を蒸着又はスパッタリングしてなる薄膜層と、をこの順に積層して積層体を得る積層体製造工程と、前記樹脂を溶解させることが可能な溶媒を用いつつ前記積層体から前記薄膜層を剥離して薄膜を得る薄膜層剥離工程と、前記溶媒中に存在する薄膜を微粉砕する微粉砕工程と、前記微粉砕工程後に、前記微粉砕された前記薄膜の前記溶媒中における固形分濃度を調整する濃度調整工程と、を経て得られてなる、インクジェットプリンタ用メタリック顔料インクに用いるための鱗片状薄膜微粉末分散液であり、前記鱗片状薄膜微粉末の、1個の前記鱗片状薄膜微粉末の略平面視における端から端の長さのうち最も長い長さ、の前記鱗片状薄膜微粉末全体の値の平均値である平均長径が0.5μm以上5.0μm以下であり、前記長さの最大のものである最大長径が10μm以下であり、1個の前記鱗片状薄膜微粉末の略側面視における厚み、の前記鱗片状薄膜微粉末全体の値の平均値である平均厚みが5nm以上100nm以下であり、前記鱗片状薄膜微粉末の前記平均長径と前記平均厚みとの比、即ち平均長径/平均厚みで示されるアスペクト比が40以上であり、当該鱗片状薄膜微粉末分散液を用いてなるインクジェットプリンタ用メタリック顔料インクを光沢塩化ビニルシートに印刷して得られる印刷面の金属光沢が、JIS_Z_8741規格により測定した結果、20°鏡面光沢度が200以上、60°鏡面光沢度が330以上、となること、を特徴とする。
【0022】
本願発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の鱗片状薄膜微粉末分散液であって、前記金属単体、合金又は金属化合物が、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタン、シリコン、銅、又はプラチナよりなる一群の金属の何れか若しくは複数、若しくはこれらの一群の金属を用いた合金、若しくはこれらの一群の金属又はその合金の酸化物、窒化物、硫化物、又は炭化物の何れか若しくは複数、であること、を特徴とする。
【0023】
本願発明の請求項4に記載の発明は、請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の鱗片状薄膜微粉末分散液であって、前記溶媒が有機溶媒であること、を特徴とする。
【0024】
本願発明の請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の鱗片状薄膜微粉末分散液であって、前記有機溶媒が、グリコールエーテル系又はラクトン系の何れか、又はこれらの混合物であること、を特徴とする。
【0025】
本願発明の請求項6に記載の発明は、請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の鱗片状薄膜微粉末分散液であって、前記樹脂の前記鱗片状薄膜微粉末分散液における含有量が、前記鱗片状薄膜微粉末分散液の5重量%以下であること、を特徴とする。
【0026】
本願発明の請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の鱗片状薄膜微粉末分散液であって、前記樹脂が、前記溶媒に可溶であること、を特徴とする。
【0027】
本願発明の請求項8に記載の発明は、請求項6又は請求項7に記載の鱗片状薄膜微粉末分散液であって、前記樹脂が、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、ポリビニルブチラール、アクリル酸共重合体又は変性ナイロン樹脂、の何れかによるものであること、を特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
以上のように、本願発明にかかる鱗片状薄膜微粉末分散液であれば、特にそこに含有されている鱗片状薄膜微粉末の平均長径、最大長径、厚み、アスペクト比を所定の範囲内としたことで、分散液中における鱗片状薄膜微粉末が容易に溶媒中に沈降することなく好適に分散して存在させることが従来に比して容易となり、またこの鱗片状薄膜微粉末の形状を鱗片状としているので、これをインクジェットプリンタ用メタリック顔料インクの材料として用いると、従来のメタリック顔料インクを塗布した場合に比して印刷面の金属光沢感が高いものとなる。また本願発明にかかる鱗片状薄膜微粉末分散液を用いて得られるメタリック顔料インクは鱗片状薄膜微粉末の存在故にノズル詰まりを起こすことが無くなり、従来の業務用インクジェットプリンタに用いることができるので、印刷表現の幅を劇的に広げることができるようになる。
【0029】
またかかる鱗片状薄膜微粉末分散液を得る手法として、基材フィルム/剥離層/薄膜層という構成の積層体に対し、剥離層が溶解可能な溶剤を用いつつ積層体から薄膜層を剥離することにより、溶剤中に剥離された薄膜層が箔として含有されてなる分散液を得てなり、さらに溶剤中に存在する箔を微粉砕した後に微粉砕された鱗片状薄膜微粉末の割合を調整しやすい。即ち鱗片状薄膜微粉末の濃度を自在に調整しやすくなり、インクジェットインクに適した濃度としやすくなるので好適である。そして溶媒中の鱗片状薄膜微粉末は容易に溶媒中において分散させやすくなっており、これをメタリック顔料インクの原材料として用いると、得られるメタリック顔料インクに含有される鱗片状薄膜微粉末は容易に沈降したり互いが凝縮したりすることがないので、これをインクジェットプリンタに用いればメタリック印刷を美麗に行うことが容易に可能となる。
【0030】
そしてかかる鱗片状薄膜微粉末分散液を得る手法として、剥離層として例えばセルロースアセテートブチレートを用い、溶媒としてグリコールエーテル系又はラクトン系の何れか若しくは混合物を用いることで、鱗片状薄膜微粉末が凝集しにくい、つまり分散させやすい分散液を得ることができる。そしてさらにこのようにして得られた分散液をメタリック顔料インクの原材料として用いれば、得られるメタリック顔料インクを例えばインクジェットプリンタに用いても、従来よりもより一層滑らかな、かつ均一な金属光沢を呈する印刷を実行することが容易に可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本願発明の実施の形態について説明する。尚、ここで示す実施の形態はあくまでも一例であって、必ずもこの実施の形態に限定されるものではない。
【0032】
(実施の形態1)
本願発明にかかる鱗片状薄膜微粉末分散液(以下単に「分散液」とも言う。)につき、第1の実施の形態として説明する。
【0033】
本実施の形態にかかる分散液は、要すれば溶媒の中に微粉砕された薄膜が薄膜微粉として存在している液である。またかかる薄膜微粉は薄膜を微粉することで鱗片状となっている。そして特に鱗片状薄膜微粉が溶媒中にあって容易に沈降したり凝集したりすることのないように処理されてなる点にも特徴があると言える。そして本実施の形態にかかる分散液はインクジェットプリンタ用のメタリック顔料インクに用いられることを想定している点にも特徴があることを予め述べておく。
【0034】
まず本実施の形態にかかる分散液につき説明する。
本実施の形態にかかる分散液は、金属単体、合金、又は金属化合物が微粉砕されてなる鱗片状薄膜微粉末が溶媒中に含有されてなる、インクジェットプリンタ用メタリック顔料インクに用いるための鱗片状薄膜微粉末分散液であって、鱗片状薄膜微粉末の、1個の鱗片状薄膜微粉末の略平面視における端から端の長さのうち最も長い長さ、の鱗片状薄膜微粉末全体の値の平均値である平均長径が0.5μm以上5.0μm以下であり、長さの最大のものである最大長径が10μm以下であり、1個の鱗片状薄膜微粉末の略側面視における厚み、の鱗片状薄膜微粉末全体の値の平均値である平均厚みが5nm以上100nm以下であり、鱗片状薄膜微粉末の平均長径と平均厚みとの比、即ち平均長径/平均厚みで示されるアスペクト比が40以上であり、当該鱗片状薄膜微粉末分散液を用いてなるインクジェットプリンタ用メタリック顔料インクを光沢塩化ビニルシートに印刷して得られる印刷面の金属光沢が、JIS_Z_8741規格により測定した結果、20°鏡面光沢度が200以上、60°鏡面光沢度が330以上、となるものである、という構成を有する。

【0035】
以下、順番に説明をしていく。
まず鱗片状薄膜微粉末につき説明する。
この鱗片状薄膜微粉末は本実施の形態においては金属単体、合金、又は金属化合物が微粉砕されたものであるが、より具体的には、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタン、シリコン、銅、又はプラチナよりなる一群の金属単体の何れか1種類若しくは複数よりなるものであって良く、又はこれらの一群の金属を組み合わせて得られる合金であって良く、又はこれらの一群の金属単体若しくは合金の酸化物、窒化物、硫化物、又は炭化物の何れか1種類若しくは複数、を微粉砕して得られるものである。
【0036】
例えば、アルミニウム単体を微粉砕したものであっても良いし、アルミニウム単体と銀単体とをそれぞれ微粉砕したものを混合したものであっても良いし、さらにはアルミニウムを用いた合金を微粉砕したものであっても良いし、酸化アルミニウムを微粉砕したものであっても良い。ともあれ本実施の形態において金属光沢を得るために上述の鱗片状薄膜微粉末を用いるのであり、かかる金属光沢としてどのような光沢を求めるのか、に応じてその素材を選択すれば良い。そして本実施の形態ではアルミニウムを用いることとし、以下の説明で鱗片状微粉末とは鱗片状アルミニウム微粉末を想定したものであって、また分散液はアルミニウムによる鱗片状微粉末が溶媒中に分散して含有、存在している状態を指すものとし、以下の説明を続ける。(以下、本実施の形態において鱗片状アルミニウム微粉末を単に「アルミニウム微粉末」とも言う。)
【0037】
鱗片状薄膜微粉末の形状の平均厚みと平均長径とは、これを用いたメタリック顔料インクを塗布した場合の金属光沢に関し重要である。
【0038】
本実施の形態にかかる鱗片状薄膜微粉末は、文字通り鱗片状の外観を有している。つまり個々は非常に微細な粉状となっているが、その個々を取り上げて観察すると鱗片状の外観を有している。そして個々の鱗片状微粉末につき観察すると、略平面視において、その端から端の長さは当然個々にあっては全く異なるが、その個々の有する長さのうち最長のものを定め、個の有する最大長の鱗片状微粉末における平均値、即ち端から端の長さの平均値である平均長径は本実施の形態にかかる鱗片状薄膜微粉末では0.5μm以上5.0μm以下であり、またその長さは最大のもの、即ち最大長径が10μm以下であることが好ましい。
【0039】
またこの鱗片状の金属微粉の略側面視における厚みは、これも当然個々により厚みが違い、また単一の金属微粉であっても拡大して観察すれば完全に均一な厚みを有するものではないが、個々の厚みを平均した平均厚みは本実施の形態においては5nm以上100nm以下であることが好ましい。
【0040】
そして鱗片状薄膜微粉末のアスペクト比、即ち平均長径/平均厚みが20以上、より好ましくは40以上となるような鱗片状薄膜微粉末としておけば、その鱗片状薄膜微粉末の形状は本実施の形態において好ましい偏平形状を有したものであることを意味する。この点については別途後述する。
【0041】
ここで平均長径について述べると、平均長径が5.0μmを超えて大きくなると、後述のインクジェットプリンタ用のメタリック顔料インクの原料として用いる場合に、有機溶媒中において短時間で鱗片状アルミニウム微粉末が沈殿してしまい、塗工の際、均一な鱗片状アルミニウム微粉末を含有するメタリック顔料インクを得ることが困難となる。この観点から、より一層好適に分散させた状態を維持するためであれば、上限を1.5μmとすることがより好ましい。また0.5μmを下回るような長さとなると、今度はあまりにも微細すぎて後述の印刷時の光沢を明確に得ることが困難となるので、その平均長径は0.5μm以上であることが望ましい。またその際、最大長径としては10μm以下であることが望ましい。これは例え平均長径が5.0μmを下回っていたとしても長径が10μmを超えたものが混在すると、印刷時にトラブルが発生する可能性があることを発明者が見いだしたからである。そしてより好ましくは最大長径が5.0μm以下とすることであり、最大長径が5.0μmを下回るならば印刷時においてまずトラブルが発生することがないことを発明者が見いだしたからである。当然、最大長径が5.0μm以下であるならばそのときの平均長径は5.0μを下回る。尚、この平均長径や最大長径は、一般的な測定器、例えば光散乱式粒度分布測定器等を用いて測定されるものであって良い。
【0042】
平均厚みについて述べると、鱗片状薄膜微粉末の平均厚みが100nmより大きいと、上述したように鱗片状薄膜微粉末を用いた塗料を塗布したときにこれが重なり合った場合において、無用な空間が大きく生じてしまい、その結果塗布面を見ると凹凸が生じてしまい滑らかな表面とはならず、そのため効果的な金属光沢を得られず、換言するならば本実施の形態にかかる鱗片状薄膜微粉末の平均厚みが100nm以下で効果的な金属光沢を得られることを発明者は見いだしたのである。またより一層表面を滑らかな状態とするには、平均厚みが30nm以下とすることが好適であることも同時に発明者は見いだしたのである。しかし厚みが5nmを下回ると、鱗片状薄膜微粉末そのものが大変薄いことを意味し、その結果あまりにも薄すぎて本来得られる金属光沢が得られなくなってしまうため、本実施の形態において5nm以上としているのである。
【0043】
以上、本実施の形態においては、鱗片状薄膜微粉末の平均長径、最大長径、平均厚み、アスペクト比に関する数値範囲をこのように定めることにより、必要以上に小さすぎず、また必要以上に大きすぎない、適性なサイズの鱗片状薄膜微粉末としている。つまり、あまりにも小さすぎると、鱗片状薄膜微粉末同が凝集してしまい、その結果大きな固まりがメタリック顔料インク中に発生し、そのために凝集してしまった鱗片状薄膜微粉末が沈殿する、などのように肝心の鱗片状薄膜微粉末が偏在してしまい実際の利用に適さない、また大きくなってしまうとノズル詰まりを生じてしまう、という現象が生じる。よって、凝集して沈殿しない、かつノズル詰まりを起こさない、という意味で、必要以上に小さすぎず、また大きすぎないサイズとするために発明者が鋭意研究した結果、上述のような範囲を定めたのである。
【0044】
尚、上記で述べた金属微粉の平均長径と平均厚みは、次の方法にて求めた。
まず平均長径はレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置を用いて測定し、その結果得られた50%平均粒子径(メディアン径)を平均長径とした。尚、本願発明における平均粒子径は株式会社セイシン企業製「LMS−30」を用いて測定したものを想定していることを付言しておく。
【0045】
また平均厚みは、後述の本実施の形態にかかる分散液を製造する際に用いる積層の手法において、鱗片状薄膜微粉末のもととなる積層箇所の厚みがそのまま鱗片状薄膜微粉末の厚みとなるものであって、その厚み測定として蛍光X線分析装置により積層箇所を複数箇所測定し、その平均値として得られた値を平均厚みとした。
【0046】
以上、まとめると本実施の形態における鱗片状アルミニウム微粉末の形状、及び様々な数値範囲を上記の通りとすることで、これを用いたメタリック顔料インクをインクジェットプリンタを用いて印刷すると次のような利点を得られる。
【0047】
まず印刷面における金属光沢が良好なものとなるが、これは鱗片状薄膜微粉末を用いたが故である。前述したように、従来のメタリック顔料インクに含まれる金属光沢を呈するための微粉は略粒形状であるが、これを平面状に並べた状態で側面から観察するとその表面はランダムな凹凸状となってしまう。つまり表面がランダムな凹凸である以上、そこに光線が入射しても乱反射してしまい、結局所望の金属光沢を得ることが困難である。しかし本実施の形態においては鱗片状薄膜微粉末を用いているので、これを平面状に並べた状態で側面から観察するとその表面は従来の略粒形状微粉の場合に比べより平面的な状態となっている。つまり表面が比較的滑らかであるので、ここに光線が入射すると入射光はほぼ同一方向に反射する状態となり、その結果印刷面における金属光沢を良好なものとすることができるのである。
【0048】
また平均長径、最大長径、平均厚み、アスペクト比をそれぞれの数値範囲を上記の通りとすることで、本実施の形態にかかる分散液をメタリック顔料インクの原料とし、かかるインクをインクジェットプリンタに用いた場合、ノズル詰まりの発生を抑制できるようになる。つまり業務用インクジェットプリンタでは高細密な描画も可能とした機種も提供されているが、高細密描画を行えるプリンタのインク射出部分であるノズルの大きさは大変小さいものとなっており、つまり小さいノズル孔から鱗片状薄膜微粉末を射出するためには当然ノズルの孔の大きさよりも鱗片状薄膜微粉末が小さいものでなければならないことは自明であるところ、平均長径、最大長径、平均厚み、アスペクト比を上記の通りとすることでそのような条件をクリアできることを発明者は見いだしたのである。
【0049】
またあまりにも小さすぎると今度は逆に鱗片状アルミニウム微粉末が凝集してしまう可能性もあり、凝集を防止するためにはある程度の大きさが必要ということがわかり、種々検討した結果、上記数値範囲とすることが好適であることを見いだしたのである。
【0050】
さて、このように鱗片状アルミニウム微粉末を含有した分散液をメタリック顔料インクに用いるのであるが、本実施の形態にかかる分散液を用いることで、このメタリック顔料インクを印刷した印刷面における金属光沢は従来のものに比して優れたものとなる。ここでこの点に関し説明をする。
【0051】
まず本実施の形態における金属光沢につき述べておく。
メタリック顔料インクを光沢塩化ビニルシートに印刷して得られる印刷面の金属光沢は、JIS_Z_8741規格により測定することで得られる。ちなみに、通常の従来流通しているメタリック色を呈する顔料インクを用いて測定すると、20°鏡面光沢度は80程度、60°鏡面光沢度は100程度、であり、この値が高いほど金属光沢が高いとされる。
【0052】
本実施の形態における分散液を得る目的は、この鏡面光沢度を高いものとすることである。一般的に金属光沢を向上させるには、メタリック色を呈する顔料インクを印刷した印刷面の表面を拡大して観察すると滑らかであればあるほど良い。つまり表面が凹凸により乱雑なものとなっている場合、かかる乱雑な表面に入射した光線は乱反射を生じてしまいその結果その表面から反射される光線を見るものにはまとまった反射光を視認することができず、即ち光沢度が低い印刷面である、と視認してしまう。一方、表面が非常に滑らかな状態であれば、そこに入射した光線は乱反射を起こさず、入射した光線はまとまって同じ方向に反射するので、それを見るものにはまとまった反射光を視認することができ、即ち光沢度が高い印刷面である、と視認するのである。
【0053】
そこで本実施の形態における分散液を検討するに、これに含有されるアルミニウム微粉の形状いかんによっては上述の表面状態に大きな差が出ることが想像される。即ち、メタリック顔料インクを塗布することで、あたかもインクに含有されるアルミニウム微粉末が塗布され微粉が積層される状態が現出する。ここでアルミニウム微粉末の個々の形状が例えば粒状であれば、粒状物を多数積層すると最終的にその表面は凹凸の激しいものとなるが、一方アルミニウム微粉末の形状が偏平な鱗片状であれば、これを積層してもあたかも板状の物質を積み重ねていくだけであるので、粒状物を積層した場合に比してその表面は比較的凹凸を減らした状態を現出できる。
【0054】
そして発明者が鋭意研究した結果、平均長径/平均厚みで示される本実施の形態におけるアスペクト比において、平均長径が0.5μm以上5.0μm以下であり、かつ平均厚みが5nm以上100nm以下とした場合におけるアスペクト比が20以上、より好ましくは40以上、とした場合に上述した表面の凹凸が許容範囲に収まることを見いだしたのである。そしてより細かく述べるならば、平均長径が0.5μm以上1.5μm以下であり、かつ平均厚みが5nm以上30nm以下とした場合におけるアスペクト比が40以上であること、が好適であることを見いだしたのである。
【0055】
つまり高アスペクト比とすることでより一層偏平の度合いが大きくなることを意味し、それは薄い鱗片状薄膜微粉末となるので、これを用いたメタリック顔料インクを塗布したときに、メタリック顔料インクに含まれる鱗片状薄膜微粉末が比較的整然と平面状に配列されやすくなり、即ち表面の凹凸が比較的少ない、滑らかな状態となり、その結果入射光の乱反射が減少し、豊かな金属光沢を呈することが可能となると考えられるのである。また偏平であるために鱗片状薄膜微粉末同士が重なり合っても無用に広大な空間が生じることがなく、つまり密な状態で鱗片状金属粉同士が重なり合っていきやすくなると考えられる。
【0056】
このように実際にアスペクト比が20以上のアルミニウム微粉末を含む分散液を用いたメタリック顔料インクによる印刷面を測定した結果、20°鏡面光沢度が150を超え、60°鏡面光沢度は250を超えた。またアスペクト比を40以上とした場合、同じく20°鏡面光沢度は200を超え、60°鏡面光沢度は330を超えたのである。
【0057】
本実施の形態にかかる分散液は以上説明した鱗片状薄膜微粉末、本実施の形態においては鱗片状アルミニウム微粉末を溶媒中に含有してなる構成である。引き続き分散液につき説明をする。
【0058】
本実施の形態において用いられる分散液を構成する溶媒は、メタリック顔料インクの溶媒と同一とすることで、分散液のメタリック顔料インクへの適用を容易なものとできる利点がある。
【0059】
メタリック顔料インクが主として有機溶媒を用いることにより、良好な耐候性が得られ、屋外用途での大サイズの広告、看板、サイン等にも良好に用いることができるからである。ただし例えばトルエンやキシレン等の従来の有機溶媒であると、それらを用いると人体や環境に対する負荷が非常に大きいものとなってしまうため、そのようなことを回避するために、即ち人体や環境への負荷をできるだけ軽減できるようにした有機溶剤を利用することが重要となっており、本実施の形態におけるインク組成物ではグリコールエーテル系及びラクトン系の単体若しくは混合物を利用することとしているのである。
【0060】
このように人体や環境への負荷を軽減することを目的とした有機溶媒を用いれば、溶剤臭は通常気にならないレベルまで低減され、また本実施の形態にかかる分散液を用いる人間や用いる周囲の環境に対し従来の有機溶媒に比して優しいものとすることができる。
【0061】
さらにアルミニウム微粉末には微量の剥離層に用いた樹脂(以下「剥離樹脂」とも言う)が付着していることが好ましく、剥離樹脂が付着することで、より一層分散液中にアルミニウム微粉末が分散して存在しやすくなるのである。つまり剥離樹脂と有機溶媒であるグリコールエーテル系及びラクトン系の単体若しくは混合物とが共存する環境にあって剥離樹脂が分散しやすい性質を有することより、剥離樹脂が付着したアルミニウム微粉末も上記有機溶媒、即ちグリコールエーテル系及びラクトン系の単体若しくは混合物中において分散しやすいことになるのである。
【0062】
本実施の形態にかかる分散液は以上の通りであるが、次にこの分散液の製造方法につき説明する。
【0063】
本実施の形態にかかる分散液は、基材フィルムである高分子樹脂フィルムの表面に、樹脂による剥離層と、金属単体、合金又は金属化合物の何れか若しくは複数を蒸着又はスパッタリングしてなる薄膜層と、をこの順に積層して積層体を得る積層体製造工程と、前記樹脂を溶解させることが可能な溶媒を用いつつ前記積層体から前記薄膜層を剥離して薄膜を得る薄膜層剥離工程と、前記溶媒中に存在する薄膜を微粉砕する微粉砕工程と、前記微粉砕工程後に、前記微粉砕された前記薄膜の前記溶媒中における固形分濃度を調整する濃度調整工程と、を経て得られてなる。
【0064】
ここで本実施の形態ではアルミニウムを用いているので、以下、薄膜層はアルミニウム層として、薄膜はアルミニウム箔として、説明をする。
【0065】
まず積層体製造工程につき説明する。
基材として用いる高分子樹脂フィルムであるが、これは特に制限のあるものではなく、従来公知の高分子樹脂フィルムであって、広く積層体を製造するに際して用いられる高分子樹脂フィルムであれば良い。例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであったり、ポリプロピレンフィルム、又はポリアミドフィルム等であることが考えられるが、本実施の形態では特に従来から広く用いられていることで色々な意味においても扱いやすいフィルムであると言えるPETフィルムを用いることとする。
【0066】
尚、本実施の形態において基材フィルムをPETフィルムに限定するものではなく、例えば後述する剥離層を溶解させることができる溶媒に対しても耐性を有する高分子樹脂フィルムを基材フィルムとして用いるならば、後述のアルミニウム層剥離工程を経ても基材フィルムが溶媒により溶解したり損傷したりすることがないので、それを再び基材フィルムとして利用することが可能となり、即ち再利用可能な基材フィルムとして用いることができるので好適なものとすることも可能であることを述べておく。
【0067】
このPETフィルムの表面に剥離層を積層する。この剥離層は、後述のアルミニウム層剥離工程において特定の溶媒により容易に溶解するものでなければならず、その厚みとしては後述のように特定の溶媒に溶解するレベルの厚みであれば特段これを制限するものではないが、最終的に剥離層を構成する樹脂の鱗片状薄膜微粉末分散液における含有量が、鱗片状薄膜微粉末分散液の5重量%以下であること、となっていれば良い。
【0068】
本実施の形態において、この剥離層は例えばポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、ポリビニルブチラール、アクリル酸共重合体又は変性ナイロン樹脂、セルロースアセテートブチレート等の何れかによるものとすることが考えられ、ここではセルロースアセテートブチレート(CAB)によるものとする。前述したアルミニウム微粉に微量のCABが付着する理由はここでCABを用いているからである。ここでCABを用いる理由は後述する。このCABをグラビアコート法等の、いわゆる公知のウェットコーティング法によりPETフィルムの表面に積層する。さらに述べるならば、PETフィルムをロール・ツー・ロールで搬送しつつ、その途中でCABをグラビアコート法によりPETフィルムに積層していくことでCABが積層されたPETフィルムが得られることとなる。
【0069】
このようにして剥離層をPETフィルムの表面に積層をしたら、次にそのさらに表面にアルミニウムを蒸着してアルミニウム層を積層する。本実施の形態においてはアルミニウム層は従来公知の手法、即ち真空蒸着法、スパッタリング法、等の手法により積層されるものであれば良い。またその厚みについては5nm以上100nm以下であることが望ましいが、これについては前述した通りである。そしてこの厚みがそのまま本実施の形態における鱗片状アルミニウム微粉末の厚みとなるのであって、本実施の形態における厚みは20nmであるものとする。尚、この厚みを5nm以下としようとする場合、得られる蒸着膜は連続したものとはならず、そのため本実施の形態における特定の形状を有するアルミニウム微粉末を得ることができない。さらに5nm以下とすると、蒸着膜そのものに金属光沢が得られない。そのため本実施の形態において平均厚みを5nm以上としているのである。
【0070】
尚、この蒸着についても前述同様、長尺フィルム状態であるPETフィルム/CABという構成のCABの表面に、フィルムをロール・ツー・ロールで搬送しつつ蒸着を行うこと、とすることが考えられ、また本実施の形態でもそのようにして蒸着を実行する。
【0071】
以上のようにしてPETフィルム/CAB/アルミニウムという構成を有する積層体を得る。尚、本実施の形態においてはPETフィルムの片面に積層した状態で説明をしているが、両面に同等に積層することも構わず、また積層もくり返し片面に対し行っても、両面に対して行っても構わないことを付言しておく。即ちアルミニウム/CAB/PETフィルム/CAB/アルミニウム、であっても良いし、PETフィルム/CAB/アルミニウム/CAB/アルミニウム/(以下くり返し)・・・、であっても良いし、・・・/アルミニウム/CAB/PETフィルム/CAB/アルミニウム/CAB・・・、であっても良い。
【0072】
次にアルミニウム層剥離工程につき説明する。
積層体を製造し、次にこの積層体からアルミニウム層を剥離するのがこの工程であり、本実施の形態では剥離層を容易に溶解させることが可能な溶媒を用いてこの工程を実行する。
【0073】
この剥離層を溶媒で溶解させアルミニウム層を剥離する方法については種々公知の手法があるが、例えば次のような方法とすることが考えられる。
【0074】
まず、積層体がいわゆる長尺フィルムの状態となっていれば、引き続き長尺フィルム状となっている積層体をロール・ツー・ロールで搬送しつつ、積層体全体に対し溶媒を噴射する。そして溶媒が噴射された状態の積層体に対し、アルミニウム層側を掻き取り、これを基材フィルムから取り除いていく。そして掻き取られたアルミニウム層を集めるのであるが、この際噴射された溶媒はそのままアルミニウム層に付着した状態であって良い。また掻き取る前にすでに溶媒によって剥離層が溶解しアルミニウム層が剥離し基材フィルムから離脱する箇所も生じることが予想されることより、全体としては溶媒を噴射する作業を実行する段階から、いわば溶媒ごとアルミニウム層を回収することが最適であると言える。
【0075】
つまり、このアルミニウム層剥離工程を実行することにより、剥離されたアルミニウム層のみならず、剥離に用いた溶媒もアルミニウム層と一緒に回収されることとなるのである。
【0076】
さらに実際には剥離層は完全に溶解したものではなく、即ち一部の剥離層が貼着したままの状態のアルミニウム層も同時に回収されることとなるが、本実施の形態においてはその状態での回収であって構わない。即ち本実施の形態では微量のCABがアルミニウム層に付着した状態となる。その状態で構わない理由については後述する。
【0077】
以上説明した、剥離層を溶解する溶媒として、本実施の形態では例えばグリコールエーテル系又はラクトン系の何れか若しくは混合物を用いることが好ましい。
【0078】
さらに述べると、グリコールエーテルとしては、メチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、ヘキシル、そして2−エチルヘキシルの脂肪族、二重結合を有するアリル並びにフェニルの各基をベースとするエチレングリコール系エーテルとプロピレングリコール系エーテルが好ましい例として挙げられ、さらに具体的に述べると、例えばエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチエレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル等が好ましい例として挙げられる。ちなみにこれらは無色で臭いも少ないものであり、さらにはこれらは分子内にエーテル基と水酸基を有しているので、アルコール類とエーテル類の両方の特性を備えた、常温で液体のものである。
【0079】
またラクトンとしては、γ−ブチロラクトン、δ―バレロラクトン、ε―カプロラクトンなどが好ましい例として挙げられる。
【0080】
そして本実施の形態においてはジエチレングリコールジエチルエーテル(以下DEGdEE)又はγ−ブチロラクトンの何れかを用いることが好適であると言え、本実施の形態ではDEGdEEを溶媒として用いることとする。先述の通りDEGdEEは人体や環境への負荷が少ない有機溶媒として用いられるものであり、この点においても好適であると言える。
【0081】
以上の説明のようにしてアルミニウム層剥離工程を実行することにより、アルミニウム層がアルミニウム箔となってDEGdEEと一緒に回収される。即ちDEGdEEによる溶媒中に、一部にCABが付着したままの状態のアルミニウム箔が分散して存在した状態として回収される。
【0082】
このようにしてDEGdEE中にアルミニウム箔が含有された分散液を得ると、次に分散液中に存在するアルミニウム箔をできるだけ細かく、微粉砕する微粉砕工程を行い、ついで微粉砕されたアルミニウム微粉末のDEGdEE溶媒中における固形分、即ち濃度を調整する濃縮工程を行う。
【0083】
そこで次にこれらの工程につき説明する。
微粉砕工程で用いられる方法は特段限定はなく、従来周知の手法で行えば良い。
この微粉砕工程においては、アルミニウム箔をDEGdEE溶媒から濾過して取り出す、という作業を行うことなく、アルミニウム箔を微粉砕し、これを微粉化する。その結果、微粉砕工程を終えた分散液は、DEGdEE溶媒はそのままで含有されているアルミニウム箔が所望の大きさのアルミニウム微粉末とされた状態となっている。この際のアルミニウム微粉末の大きさであるが、まず平面である基材フィルム上に積層されたアルミニウム箔を粉砕したものであるので、微粉個々の略形状は鱗片状であり、即ち平面を有した形状となっている。そして得られる微粉の面における最も長い端から端の長さの平均値である平均長径が0.5μm以上5.0μm以下であり、また微粉の面における最も長い端から端の長さの中で最大の長径が10μm以下であることが望ましい。尚、厚みに関しては前述の通り積層時の厚みがそのまま厚みとなるのであって、本実施の形態では剥離により得られるアルミニウム微粉末の平均厚みは5nm以上100nm以下である。
【0084】
そして微粉砕工程が完了すると、最後にDEGdEE溶媒中におけるアルミニウム微粉末の存在する割合、即ち固形分を調整する濃度調整工程を実行する。この濃度調整工程としては特段特殊な手法を用いるものではなく、本実施の形態においては結果として所望する濃度になるようにDEGdEE溶媒を調整すれば良いものとする。例えばDEGdEE溶媒を蒸発させて分散液を濃縮することも考えられ、又はDEGdEE溶媒を追加することにより濃度を下げる処理をすることも考えられる。
【0085】
尚、アルミニウム層剥離工程を行った後に微粉砕工程を行うことは上述した通りであるが、微粉砕工程をよりスムースに実行するために予備的に剥離されたアルミニウム箔を粉砕する工程である第1予備粉砕工程を実行することも考えられる。そこで、この工程につき説明する。
【0086】
アルミニウム層剥離工程を終えた状態のアルミニウム箔は一気に微粉砕するよりも、一段階間をおいて、即ち一定のある程度までの大きさに砕いておき、それをさらに別途細かく砕く、つまり2段階に分けて粉砕を行った方が効率的である場合も想定される。
【0087】
つまり実際の第1予備粉砕工程の手法については特段制限するものではなく、ともあれ最初のアルミニウム箔がある程度粉砕されれば良いもの、とも言える。
【0088】
また最終的に微粉砕工程を実施するにあたり、微粉砕の方法によってはある程度の分散液濃度を確保しておく方が好ましい場合が想定される。つまり、例えば1%程度の溶媒の状態で粉砕するのと、20%程度の溶媒の状態で粉砕するのと、では最終的に得られる分散液の品質に差異が生じる、等である。そして本実施の形態の場合では、最初にアルミニウム層剥離工程を終えて得られたアルミニウム箔は、剥離層であるCABを溶解させるために用いられたDEGdEEの溶媒中に存在しているが、通常このままの状態であると所望の濃度に達しない場合が多い。つまりDEGdEEを大量に使用してしまった場合、得られるアルミニウム箔を含有するDEGdEE溶媒の濃度が低すぎるため、かかる溶媒をそのまま微粉砕工程に用いても効率よく所望の微粉砕が実行できないことが考えられる。そこでこのような状況に対処すべく、第1予備粉砕工程を行った後、濃度調整する濃縮工程を実行することが好適であると言える。実際に、第1予備粉砕工程を実行することによりアルミニウム箔はある程度の大きさまで粉砕されるものの、濃度が低すぎるために最終的な微粉砕工程に用いるにはさほど適したものとは言えない分散液しか得られないため、濃縮工程において濃度を高めることは効果的であると言えるのである。
【0089】
そしてもしもこれら第1予備粉砕工程と濃縮工程を経て微粉砕工程に移行しようとしても、いまだ粉砕状態が万全でないならば、即ち微粉砕を行うにはまだ充分な状態ではないと判断されるならば、さらに第2予備粉砕工程を実行することが効果的である。
【0090】
ちなみに、個々で述べた第1予備粉砕工程、及び第2予備粉砕工程の方法は、微粉砕工程の場合と同様に従来公知の手法であって良く、さらには第1予備粉砕工程、第2予備粉砕工程、微粉砕工程の各工程における粉砕の手法は全て同一であっても良く、全て異なっていても良く、また何れか2つの工程が同一で残りの工程は違う、というようにしても構わない。要すれば、微粉砕工程で最終的に所望する大きさのアルミニウム微粉末を得られれば良いのであって、そのための前準備が必要であれば第1予備粉砕工程及び濃縮工程、さらには第2予備粉砕工程を実行すれば良い、ということである。
本実施の形態にかかる分散液はこのようにして得られる。
【0091】
得られた分散液に関しさらに説明を続ける。
前述した通り、本実施の形態にかかる分散液はDEGdEEを溶媒として用いているが、これを選択したのはCABを容易に溶解させることができるからである。即ち、CABを溶解する溶媒として用いる物質と分散液に用いる溶媒とを同一のものとしておけば、余計な処理を実施する必要が無くなり、作業性を好適なものとできるからである。しかしアルミニウム層剥離工程においてCABは完全に溶解されておらず、微量ではあるもののアルミニウム微粉末に付着した状態となっている。即ちアルミニウム微粉末の中には何も付着していないものもあればCABが付着したものも存在していることになる。
【0092】
そしてこのような状態のアルミニウム微粉末がDEGdEE溶媒中に存在すると、詳細なメカニズムは不明であるものの、DEGdEE溶媒中にて一部は沈降しやすいものとなる一方、一部は長期間にわたり溶媒中を漂うことが発明者によって確認された。
【0093】
つまり、DEGdEEとCABとの組み合わせによりCABの付着したアルミニウム微粉末は沈降しにくいものとなり、一方CABの付着していないアルミニウム微粉末は普通に沈降することにより、結果として分散液中においてアルミニウム微粉末は比較的溶媒中で分散し続けるものとなるものと思われる。尚、本実施の形態はDEGdEEを用いたものとしたが、γ−ブチロラクトンを用いた場合でも同様の現象が確認されたことを付言しておく。
【0094】
また、先に剥離層について説明をしたが、ここまで説明したような手法により分散液を得た場合の含有量が、分散液の5重量%以下となるように剥離層が用いられるならば、鱗片状薄膜微粉末の分散性が大変良好であることを発明者は見いだしたのである。
【0095】
同様にアルミニウム層の厚みについても5nm以上100nm以下であるとしたのは、100nm以上の厚みとすると例え一部の鱗片状アルミニウム微粉末にCABが付着していたとしても、鱗片状アルミニウム微粉末自体の重みにより上述した現象が生じない、又は生じにくいものとなってしまうことが確認されたからであり、また5nm以下とすると今度は得られる鱗片状アルミニウム微粉末それ自体が薄くなりすぎて凝集しやすくなる現象が確認されたからである。当然、金属光沢等他の理由についてはすでに述べた通りである。
【0096】
以上のようにして得られた分散液は種々の製品の原材料の一部として利用することが考えられる。具体的には、例えばメタリック顔料インクを所望する場合、従来であれば単純にインクに金属箔の微粉末を混入させていたものの金属箔の微粉末が偏在することにより充分なメタリック効果を得られなかったところ、インクに本実施の形態にかかる分散液を混合させることにより鱗片状薄膜微粉末が好適なバランスでインク中に分散させやすくなるので、結果として均等な金属光沢を得やすいメタリック顔料インクとすることができる。またかかるインクを例えばインクジェットプリンタ用インクとして用いるならば、前述の通り鱗片状薄膜微粉末がインク中に好適に分散しているので、プリンタにより印刷される印刷物も金属光沢が偏在することなく、均等にその効果を得られるし、さらには鱗片状薄膜微粉末がインク中で偏在、凝集することがないので、鱗片状薄膜微粉末それ自体が、又はそれが凝集したものがノズルの孔を塞いでしまう、といったトラブルが生じることもなく、好適なものとすることができる、と言えるのである。
【実施例】
【0097】
本願発明にかかる分散液を実際にインクジェットプリンタ用メタリック顔料インクの原料として用いた場合につき、以下検討する。
【0098】
利用するインクジェットプリンタ:ローランドD.G.社製 SP−300V
利用する印刷メディア:ローランドD.G.社製 SV−G−610G
鱗片状薄膜微粉末に用いる金属:アルミニウム 1.5wt%
分散液に用いる溶媒:ジエチレングリコールジエチルエーテル 61wt%
γ−ブチロラクトン 15wt%
テトラエチレングリコールジメチルエーテル 18wt%
バインダー樹脂:セルロースアセテートブチレート 4wt%
分散剤:非イオン性界面活性剤 0.5wt%
インクジェットプリンタ用メタリック顔料インクの作り方:鱗片状薄膜微粉分散液、溶媒、バインダー樹脂、分散剤を上記の通りに調整し、ミルや撹拌機等でインク特性を有するように調整した。
【0099】
分散液を用いてメタリック顔料インクとし、それをインクジェットプリンタで10cm×10cmの面積となるようにテスト印刷した。
テスト印刷はA4の光沢塩化ビニルシートに行った。
そして印刷面における20°鏡面光沢度、及び60°鏡面光沢度をJIS_Z_8741規格により測定した。
7種類の実施例と4種類の比較例を製造し、比較検討した。
その結果を表に示す。
【0100】
【表1】

【0101】
このように、実施例である本願発明にかかる分散液を用いた場合は所望の光沢度を呈する印刷を実行することが可能であったが、比較例の場合ではそもそも印刷ができなくなる場合があり、また光沢度の面でも充分なものを得るには至らなかった。また、特にアスペクト比が40を超えるものはおしなべて光沢度も高いものとなった。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本願発明にかかる鱗片状薄膜微粉末分散液をもとにメタリック顔料インクを製造し、これをインクジェットプリンタに用いて印刷することで、金属光沢が良好であり印象的な印刷物を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属単体、合金、又は金属化合物が微粉砕されてなる鱗片状薄膜微粉末が溶媒中に含有されてなる、インクジェットプリンタ用メタリック顔料インクに用いるための鱗片状薄膜微粉末分散液であって、
前記鱗片状薄膜微粉末の、
1個の前記鱗片状薄膜微粉末の略平面視における端から端の長さのうち最も長い長さ、の前記鱗片状薄膜微粉末全体の値の平均値である平均長径が0.5μm以上5.0μm以下であり、
前記長さの最大のものである最大長径が10μm以下であり、
1個の前記鱗片状薄膜微粉末の略側面視における厚み、の前記鱗片状薄膜微粉末全体の値の平均値である平均厚みが5nm以上100nm以下であり、
前記鱗片状薄膜微粉末の前記平均長径と前記平均厚みとの比、即ち平均長径/平均厚みで示されるアスペクト比が40以上であり、
当該鱗片状薄膜微粉末分散液を用いてなるインクジェットプリンタ用メタリック顔料インクを光沢塩化ビニルシートに印刷して得られる印刷面の金属光沢が、JIS_Z_8741規格により測定した結果、20°鏡面光沢度が200以上、60°鏡面光沢度が330以上、となること、
を特徴とする、鱗片状薄膜微粉末分散液。
【請求項2】
基材フィルムである高分子樹脂フィルムの表面に、
樹脂による剥離層と、
金属単体、合金又は金属化合物の何れか若しくは複数を蒸着又はスパッタリングしてなる薄膜層と、
をこの順に積層して積層体を得る積層体製造工程と、
前記樹脂を溶解させることが可能な溶媒を用いつつ前記積層体から前記薄膜層を剥離して薄膜を得る薄膜層剥離工程と、
前記溶媒中に存在する薄膜を微粉砕する微粉砕工程と、
前記微粉砕工程後に、前記微粉砕された前記薄膜の前記溶媒中における固形分濃度を調整する濃度調整工程と、
を経て得られてなる、インクジェットプリンタ用メタリック顔料インクに用いるための鱗片状薄膜微粉末分散液であり、
前記鱗片状薄膜微粉末の、
1個の前記鱗片状薄膜微粉末の略平面視における端から端の長さのうち最も長い長さ、の前記鱗片状薄膜微粉末全体の値の平均値である平均長径が0.5μm以上5.0μm以下であり、
前記長さの最大のものである最大長径が10μm以下であり、
1個の前記鱗片状薄膜微粉末の略側面視における厚み、の前記鱗片状薄膜微粉末全体の値の平均値である平均厚みが5nm以上100nm以下であり、
前記鱗片状薄膜微粉末の前記平均長径と前記平均厚みとの比、即ち平均長径/平均厚みで示されるアスペクト比が40以上であり、
当該鱗片状薄膜微粉末分散液を用いてなるインクジェットプリンタ用メタリック顔料インクを光沢塩化ビニルシートに印刷して得られる印刷面の金属光沢が、JIS_Z_8741規格により測定した結果、20°鏡面光沢度が200以上、60°鏡面光沢度が330以上、となること、
を特徴とする、鱗片状薄膜微粉末分散液。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の鱗片状薄膜微粉末分散液であって、
前記金属単体、合金又は金属化合物が、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、スズ、亜鉛、インジウム、チタン、シリコン、銅、又はプラチナよりなる一群の金属の何れか若しくは複数、若しくはこれらの一群の金属を用いた合金、若しくはこれらの一群の金属又はその合金の酸化物、窒化物、硫化物、又は炭化物の何れか若しくは複数、であること、
を特徴とする、鱗片状薄膜微粉末分散液。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の鱗片状薄膜微粉末分散液であって、
前記溶媒が有機溶媒であること、
を特徴とする、鱗片状薄膜微粉末分散液。
【請求項5】
請求項4に記載の鱗片状薄膜微粉末分散液であって、
前記有機溶媒が、グリコールエーテル系又はラクトン系の何れか、又はこれらの混合物であること、
を特徴とする、鱗片状薄膜微粉末分散液。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載の鱗片状薄膜微粉末分散液であって、
前記樹脂の前記鱗片状薄膜微粉末分散液における含有量が、前記鱗片状薄膜微粉末分散液の5重量%以下であること、
を特徴とする、鱗片状薄膜微粉末分散液。
【請求項7】
請求項6に記載の鱗片状薄膜微粉末分散液であって、
前記樹脂が、前記溶媒に可溶であること、
を特徴とする、鱗片状薄膜微粉末分散液。
【請求項8】
請求項6又は請求項7に記載の鱗片状薄膜微粉末分散液であって、
前記樹脂が、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、セルロース誘導体、ポリビニルブチラール、アクリル酸共重合体又は変性ナイロン樹脂、の何れかによるものであること、
を特徴とする、鱗片状薄膜微粉末分散液。

【公開番号】特開2011−246718(P2011−246718A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143275(P2011−143275)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【分割の表示】特願2009−199457(P2009−199457)の分割
【原出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000235783)尾池工業株式会社 (97)
【Fターム(参考)】