説明

鳥インフルエンザワクチン

【課題】ウイルス突然変異の影響を受けにくい、高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染を効果的に予防するためのワクチンを提供すること。
【解決手段】ペプチドが結合したリポソームを含む鳥インフルエンザウイルスワクチンであって、
該ペプチドが、(1)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列、或いは(2)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列において、1又は2個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含み、
9〜11アミノ酸の長さを有し、且つ
HLAに拘束された細胞傷害性Tリンパ球を誘導し得るものであり;
該リポソームが、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質、及びリポソームの安定化剤を含有し;且つ
該リポソームの表面に該ペプチドが結合している、
鳥インフルエンザウイルスワクチン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥インフルエンザワクチンとして有用なペプチド、ペプチド結合リポソーム、及びそれらの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
インフルエンザウイルスは、表面の抗原性を連続変異で変化させ、毎年流行を引き起こしている。加えて約10年から40年の周期で、それらとは不連続変異により全く異なる抗原性の新型のウイルスが出現し、その新型のウイルスに対する免疫を有しない人類に、世界的大流行(以下「パンデミック」という)を引き起こしてきた。
【0003】
過去のスペイン風邪、香港風邪等のパンデミックは鳥インフルエンザウイルスに由来するものであった可能性が高いといわれており、将来鳥インフルエンザによって500万〜1億5000万人の死者が出る可能性があるとの試算結果もある。現在致死率の高い高病原性鳥インフルエンザ(H5N1)の感染が世界各地で報告されてきており、有効な対策が急務となっている。
【0004】
鳥インフルエンザウイルスを含め、一般的に、インフルエンザウイルスは増殖の過程で突然変異を起こしやすい。更に、人間に感染したウイルスが体内でヒトインフルエンザウイルスと遺伝子再集合をした場合、高病原性を保持したまま人間同士での感染力の高いウイルスが生まれる可能性もある。こういったウイルス本体の頻繁な変化が、上記のような流行を繰り返す原因となっている。
【0005】
点突然変異(抗原連続変異)はウイルス表面糖タンパク質[ヘマグルチニン(赤血球凝集素;HA)及びノイラミニダーゼ(NA)]をコードする遺伝子に生じ、抗原の不連続変異では両遺伝子が免疫学的に異なった新規の株が生じることになる。
【0006】
従来のワクチンでは、インフルエンザウイルスの表面タンパク質に特異的に結合する抗体の産生を誘導し、この抗体の作用によってウイルスの感染能力を失わせる。しかしながら上記のように表面タンパク質は変異しやすく、このようなワクチンによって誘導される抗体が必ずしも常に有効なわけではなかった。現状では、流行するウイルスの型を予想してワクチンを準備しているが、その予想が外れ、被害が拡大することもあり得る。
【0007】
他方、インフルエンザウイルスの内部タンパク質は連続変異株及び不連続変異株内でも比較的高度に保存されるが、これにウイルス外部から抗体を結合させて失活させることは困難であり、従来のワクチンの標的として積極的には用いられてこなかった。
【0008】
ウイルスが感染した細胞はウイルス内部タンパク質のアミノ酸配列の一部を組み込んだ主要組織適合抗原複合体(MHC)を細胞表面に露出する。このような特徴を示すウイルス感染細胞を特異的に殺傷できる細胞傷害性Tリンパ球を調製できれば、それによって変異に影響されずにウイルスの複製、ひいては増殖及び拡散を効果的に防ぐことができる。
【0009】
特許文献1には、抗原が結合したリポソームを用いて、病原体感染細胞又は癌細胞を殺傷するための細胞傷害性Tリンパ細胞(CD8+T細胞、サイトトキシックリンホサイト:CTL)を効率よく特異的に増強することができ、感染症や癌の予防・治療に有用なT細胞活性化剤の調製法が開示されている。しかし、実際に鳥インフルエンザウイルスの感染防御に有効となり得るのか、更には有効な細胞傷害性Tリンパ球を調製するためには、どのような抗原を用いたらよいのかは、全く明らかではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008-37831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする課題は、ウイルス突然変異の影響を受けにくい、高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染を効果的に予防するためのワクチンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、高病原性鳥インフルエンザウイルスの、保存性の高い内部タンパク質配列中に、上記細胞傷害性Tリンパ球の調製に特別に有効な抗原エピトープを見出した。更に、このエピトープを含むペプチドが結合したリポソームによりワクチン接種を行うと、極めて強力に抗原特異的な細胞傷害性Tリンパ球を誘導し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0013】
即ち、本発明は以下に示すとおりである。
[1] ペプチドが結合したリポソームであって、
該ペプチドが、(1)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列、或いは(2)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列において、1又は2個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含み、
9〜11アミノ酸の長さを有し、且つ
HLAに拘束された細胞傷害性Tリンパ球を誘導し得るものであり;
該リポソームが、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質、及びリポソームの安定化剤を含有し;且つ
該リポソームの表面に該ペプチドが結合している、
ペプチド結合リポソーム。
[2] HLAがHLA−A*0201である、[1]記載のペプチド結合リポソーム。
[3] リン脂質が、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基を有するリン脂質である、[1]記載のペプチド結合リポソーム。
[4] アシル基がオレオイル基である、[1]記載のペプチド結合リポソーム。
[5] リン脂質が、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジン酸、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、サクシンイミジル−ジアシルホスファチジルエタノールアミン、及びマレイミド−ジアシルホスファチジルエタノールアミンから選ばれる少なくとも1つである、[1]記載のペプチド結合リポソーム。
[6] リポソームの安定化剤がコレステロールである、[1]記載のペプチド結合リポソーム。
[7] ペプチドが、リポソームを構成するリン脂質膜に含まれる不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質に結合している、[1]記載のペプチド結合リポソーム。
[8] リポソームが以下の組成を有する、[1]記載のペプチド結合リポソーム:
(A)不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質 1〜99.8モル%;
(B)リポソームの安定化剤 0.2〜75モル%。
[9] リポソームが以下の組成を有する、[1]記載のペプチド結合リポソーム:
(I)不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有する酸性リン脂質 1〜85モル%;
(II)不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有する中性リン脂質 0.01〜80モル%;
(III)ペプチドが結合した、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質 0.2〜80モル%;
(IV)リポソームの安定化剤 0.2〜75モル%。
[10] ペプチドを含む、細胞傷害性Tリンパ球活性化剤であって、
該ペプチドが、(1)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列、或いは(2)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列において、1又は2個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含み、
9〜11アミノ酸の長さを有し、且つ
HLAに拘束された細胞傷害性Tリンパ球を誘導し得るものである、
細胞傷害性Tリンパ球活性化剤。
[11] [1]記載のペプチド結合リポソームを含む、細胞傷害性Tリンパ球活性化剤。
[12] 更にCpG−DNAを含有することを特徴とする、[10]又は[11]記載の細胞傷害性Tリンパ球活性化剤。
[13] ペプチドを含む、鳥インフルエンザウイルスワクチンであって、
該ペプチドが、(1)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列、或いは(2)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列において、1又は2個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含み、
9〜11アミノ酸の長さを有し、且つ
HLAに拘束された細胞傷害性Tリンパ球を誘導し得るものである、
鳥インフルエンザウイルスワクチン。
[14] [1]記載のペプチド結合リポソームを含む、鳥インフルエンザウイルスワクチン。
[15] 更にCpG−DNAを含有することを特徴とする、[13]又は[14]記載の鳥インフルエンザウイルスワクチン。
【発明の効果】
【0014】
本発明のペプチド結合リポソームを用いることにより、保存性が高い鳥インフルエンザウイルスの内部タンパク質由来の抗原から鳥インフルエンザワクチンを調製できる。本発明により、従来の鳥インフルエンザワクチンとは異なる、ウイルス表面タンパク質変異の影響を受けにくく、流行ウイルス株(型・亜型)の正確な予測を要しない、汎用性の高い鳥インフルエンザワクチンを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1Aは、グラフ群の左側に示した本発明のペプチドが結合したリポソームを、グラフ群の最上部に示した各条件に従って免疫したマウス由来の脾臓細胞について、横軸に抗CD8抗体による蛍光染色レベルを、縦軸に抗IFN-γ抗体による蛍光染色レベルを示した図である。グラフ中に表示した数値は、細胞内IFN-γがポジティブなCD8+細胞のパーセンテージを示す。図1Bは、グラフ群の左側に示した本発明のペプチドが結合したリポソームを、グラフ群の最上部に示した各条件に従って免疫したマウス由来の脾臓細胞について、横軸にCFSEによる蛍光染色レベルを、縦軸に細胞数を示した図である。グラフ中に表示した数値は、溶解した総細胞数を示す。データは3回の独立した実験の代表例である。
【図2】図2Aは、横軸にウイルス(A/PR/8/34(H1N1))経鼻投与後の日数、縦軸に肺中のウイルスタイターを示した図である。図2Bは、横軸にウイルス(A/Aichi/2/68(H2N3))経鼻投与後の日数、縦軸に肺中のウイルスタイターを示した図である。データは各グループごとに5匹のマウスの平均及び標準誤差を示す。*, p<0.05、**, p<0,01である。
【図3】図3Aは、免疫なし(左)の、又は本発明のペプチド(M1_58-56)結合リポソームによって免疫(右)したマウス由来の脾臓細胞について、横軸に抗CD8抗体による蛍光染色レベルを、縦軸に抗IFN-γ抗体による蛍光染色レベルを示した図である。グラフ中に表示した数値は、細胞内IFN-γがポジティブなCD8+細胞のパーセンテージを示す。図3Bは、本発明のペプチド(M1_58-56)結合リポソームによって免疫したマウスに、免疫から90日後にウイルス(A/PR/8/34(H1N1))(左)又は(A/Aichi/2/68(H2N3))(右)を経鼻感染させた際の、肺におけるウイルスタイターを示す図である。データは各グループごとに5匹のマウスの平均及び標準誤差を示す。*, p<0.05、**, p<0,01である。
【図4】図4Aは、横軸に免疫なし(黒丸)の、又は本発明のペプチド(M1_58-56)結合リポソームによって免疫(右)したマウスに、致死量のウイルス(A/PR/8/34(H1N1))を経鼻投与してからの日数、縦軸にマウスの体重を示した図である。データは各グループごとに6匹のマウスの体重の平均及び標準誤差を示す。*, p<0.05、**, p<0,01である(免疫なしのコントロールとの比較)。図4Bは、横軸に免疫なし(黒丸)の、又は本発明のペプチド(M1_58-56)結合リポソームによって免疫(白丸)したマウスに、致死量のウイルス(A/PR/8/34(H1N1))を経鼻投与してからの日数、縦軸にマウスの生存率を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、ペプチドが結合したリポソームであって、該ペプチドが、(1)配列番号1又は2で表される、或いは(2)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列において、1又は2個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含み、
9〜11アミノ酸の長さを有し、且つ
HLAに拘束された細胞傷害性Tリンパ球を誘導し得るものであり;
該リポソームが、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質、及びリポソームの安定化剤を含有し;且つ
該リポソームの表面に上記本発明のペプチドが結合している、
ペプチド結合リポソーム(本発明のペプチド結合リポソーム)を提供する。
【0017】
本発明は、高病原性鳥インフルエンザウイルス抗原中に、上記ペプチド結合リポソームの製造に用いる、以下の優れたエピトープ配列(本発明のエピトープ配列)を見出したことに基づき完成されたものである:
・ 配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列
・ 配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列において、1又は2個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列(ここで、該アミノ酸配列からなるペプチドがHLAに拘束された細胞傷害性Tリンパ球を誘導し得る)。
【0018】
配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列は、高病原性鳥インフルエンザウイルスA/Hong_Kong/483/97(H5N1)の内部タンパク質、M1(配列番号1)及びNS1(配列番号2)のアミノ酸配列中に存在する部分配列に相当する。
【0019】
(2)における置換の態様は、該アミノ酸配列からなるペプチドがHLAに拘束された細胞傷害性Tリンパ球を誘導し得る限り特に限定されないが、異なる鳥インフルエンザウイルス株(型・亜型)の同一抗原における対応するエピトープ配列中に生じた既知のアミノ酸変異を反映したものが好適な態様として挙げられる。そのような例としては、例えば、以下を挙げることができる。
IILKANFSV(配列番号2)→VMLKANFSV(配列番号4) Aichi2(H3N2)
IILKANFSV(配列番号2)→IVLKANFSV(配列番号5) New_York4290(H1N1)
【0020】
本発明のペプチド結合リポソームに用いるエピトープ配列、及び該配列からなるペプチド(本発明のエピトープペプチド)は、以下の優れた特性を有する:
(A)本発明のエピトープ配列は、鳥インフルエンザウイルスの連続変異株及び不連続変異株において高度に保存されている。
(B)本発明のエピトープペプチドは、ヒト主要組織適合性抗原(HLA)上に安定に提示される。HLAの型は特に限定されないが、本発明のエピトープペプチドは特に世界的に最もポピュラーなHLAの型であるHLA-A*0201への結合性に優れている。
(C)本発明のエピトープペプチドは、上記(B)の特性を有するため、HLA(好ましくはHLA-A*0201)に拘束された細胞傷害性Tリンパ球を強力に誘導することができる。「抗原がHLAに拘束された細胞傷害性Tリンパ球を誘導する」とは、特定のHLA(例えばHLA-A*0201)を発現している哺乳動物(例えばヒト、トランスジェニックマウス等)を抗原で免疫した場合に、該哺乳動物の生体内において、当該HLAに拘束され、且つ当該抗原を特異的に認識する細胞傷害性Tリンパ球の数及び/又は活性(例えば細胞傷害活性)が上昇することを意味する。上述のように、HLA-A*0201は世界的に最もポピュラーであることから、本発明のエピトープペプチドは、人種差に関わらず、世界中のヒトの細胞傷害性Tリンパ球を誘導し、細胞性免疫を活性化することができる。以上のような観点から、HLA-A*0201拘束性のM1_58-66:GILGFVFTL(配列番号1)及びNS1_128-136:IILKANFSV(配列番号2)がとりわけ好ましい。
【0021】
本発明のペプチド結合リポソームに用いるペプチド(本発明のペプチド)は、上記本発明のエピトープペプチド自体であるか、或いは細胞内でプロテアソーム等の作用により切断され、上記本発明のエピトープペプチドを生じる。従って、本発明のペプチドは、本発明のエピトープペプチドと実質的に同一の優れた特性を有し、下記に記したような本発明の細胞傷害性Tリンパ球活性化剤及び鳥インフルエンザウイルスワクチンの製造に供した場合、鳥インフルエンザウイルスが感染した細胞の殺傷や鳥インフルエンザウイルスの感染防御に優れた効果を発揮する。
【0022】
本発明のペプチドの長さは、特に限定されないが通常9〜11アミノ酸、好ましくは9〜10アミノ酸、より好ましくは9アミノ酸である。本発明のペプチドの長さが10アミノ酸以上である場合には、本発明のペプチドは、本発明のエピトープ配列のN末端側及び/又はC末端側に付加配列を有する。付加配列の長さやアミノ酸配列は、本発明のペプチドの上記特性を損なわない限り特に限定されない。例えば、該付加配列は、鳥インフルエンザウイルス(例えば高病原性鳥インフルエンザウイルスA/Hong_Kong/483/97(H5N1))のM1、NS1及びPB1タンパク質のアミノ酸配列中で、配列番号1〜2のいずれかに相当する部分配列に隣接して実際に存在するアミノ酸配列であり得る。また上記ペプチドが、細胞内で主要組織適合抗原複合体(MHC)を形成する際に、MHCの個人差(多型性)による提示抗原の選別を克服できるような残基であればとりわけ好ましい。
【0023】
一つの好ましい態様において、本発明のペプチドは、複数種(例えば1〜2種類、好ましくは1〜3種類)の上記本発明のエピトープ配列を含む。エピトープ配列の種類の数や組み合わせは任意に設定することができる。このように本発明のペプチド中に複数の本発明のエピトープ配列が含まれることにより、本発明のペプチドの細胞傷害性Tリンパ球誘導能が上昇し、鳥インフルエンザウイルスワクチンの製造に供した場合に、鳥インフルエンザウイルスの感染防御効果が飛躍的に向上し得る。
【0024】
本発明のペプチドは、例えば、液相合成又は固相ペプチド合成等の公知のペプチド合成技術によって調製できる。或いは、本発明のペプチドを発現し得る発現ベクターを導入した形質変換体(大腸菌等)を培養し、その培養物からアフィニティカラム等の周知の精製技術により本発明のペプチドを単離することにより、本発明のペプチドを製造することができる。本発明のペプチドを発現し得る発現ベクターは、周知の遺伝子工学的技術を用いて、本発明のペプチドをコードするポリヌクレオチドを適切な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより構築することができる。
【0025】
本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜は、両親媒性界面活性剤であるリン脂質が、極性基を水相側に向けて界面を形成し、疎水基が界面の反対側に向く構造を有する。ここで、リポソームとは閉鎖空間を有するリン脂質二重膜のことを指す。
【0026】
本発明のペプチドは、それが有する官能基を介してリポソームの表面に結合することができる。リポソーム表面への結合に用いられる本発明のペプチド中の官能基としては、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、水酸基、ジスルフィド基又はメチレン鎖を有する炭化水素基(アルキル基等)からなる疎水基等が挙げられる。これらの内、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、水酸基及びジスルフィド基は共有結合により、アミノ基及びカルボキシル基はイオン結合により、疎水基は疎水基同士で疎水結合により、本発明のペプチドをリポソームの表面に結合することができる。本発明のペプチドは、好ましくはアミノ基、カルボキシル基又はチオール基を介してリポソームの表面に結合する。
【0027】
本発明のペプチドが有する官能基を介して、本発明のペプチドが安定にリポソームに結合するため、リポソームを構成するリン脂質膜は、アミノ基、サクシンイミド基、マレイミド基、チオール基、カルボキシル基、水酸基、ジスルフィド基、メチレン鎖を有する炭化水素基(アルキル基等)からなる疎水基等の官能基を有することが望ましい。リポソームを構成するリン脂質膜が有する官能基は、好ましくは、アミノ基、サクシンイミド基又はマレイミド基である。本発明のペプチドのリポソームへの結合に関与する、本発明のペプチドの有する官能基とリポソームを構成するリン脂質膜が有する官能基の組み合わせは、本発明の効果に影響しない範囲において自由に選択することができるが、好ましい組み合わせとしては、それぞれ、アミノ基とアルデヒド基、アミノ基とアミノ基、アミノ基とサクシンイミド基、チオール基とマレイミド基等が挙げられる。イオン結合及び疎水結合は、リポソームへのペプチドの結合手順が簡便であり、ペプチド結合リポソームの調製容易性の点から好ましく、また、共有結合は、リポソーム表面の本発明のペプチドの結合安定性の点又はペプチド結合リポソームを実用する際の保存安定性の点から好ましい。本発明のペプチド結合リポソームは、その構成成分であるリポソームの表面に本発明のペプチドが結合していることを1つの特徴としており、これにより優れた細胞傷害性Tリンパ球活性化効果を達成している。従って、実用段階で、例えば注射行為によって生体内に投与された後にも、本発明のペプチドがリポソームの表面に安定に結合していることが、本発明の効果をより高める点で好ましい。このような観点から、本発明のペプチドとリポソームとの結合としては、共有結合が好ましい。
【0028】
本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜は、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質、及びリポソームの安定化剤を含有してなる。
【0029】
不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基を有するリン脂質における、該アシル基の炭素数は、好ましくは16〜22であり、更に好ましくは18〜22であり、最も好ましくは18である。該アシル基としては、具体的には、パルミトオレオイル基、オレオイル基、エルコイル基等が挙げられ、最も好ましくはオレオイル基である。
不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質における、該炭化水素基の炭素数は、好ましくは16〜22であリ、更に好ましくは18〜22であり、最も好ましくは18である。該炭化水素基としては、具体的には、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、C20モノエン基、C22モノエン基、C24モノエン基等が挙げられる。
リン脂質が有するグリセリン残基の1-位、及び2-位に結合する不飽和のアシル基又は不飽和炭化水素基は、同一でも異なっていてもよい。工業的な生産性の観点から、1-位及び2-位の基が同一であることが好ましい。
リン脂質としては、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基を有するリン脂質が好ましく用いられる。
【0030】
本発明の課題の一つは、鳥インフルエンザウイルス感染細胞を殺傷するための細胞傷害性Tリンパ細胞(CD8+T細胞、CTL)を効率よく特異的に増強することである。実用上十分なレベルにCTL活性を増強させる点から、リン脂質は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基を有することが好ましい。アシル基の炭素数が13未満であると、リポソームの安定性が悪くなったり、またCTL活性増強効果が不十分になる場合がある。また、アシル基の炭素数が24を超えると、リポソームの安定性が悪くなる場合がある。
【0031】
不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質としては、酸性リン脂質、中性リン脂質、ペプチドを結合することのできる官能基を有する反応性リン脂質等の種類が挙げられる。これらは、種々の要求に応じて、その種類、割合を適宜選択することができる。
【0032】
酸性リン脂質としては、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール等を用いることができる。CTL活性を実用上十分なレベルに増強する点、及び工業的な供給性、医薬品として用いるための品質等の点から、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基を有するジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジン酸、及びジアシルホスファチジルイノシトールが好ましく用いられる。酸性リン脂質は、リポソームの表面にアニオン性電離基を与えるので、リポソーム表面にマイナスのゼータ電位を付与する。このためリポソームは、電荷的な反発力を得、水性溶媒中で安定な製剤として存在できる。このように、酸性リン脂質は、本発明のペプチド結合リポソームが水性溶媒中にある際のリポソームの安定性を確保する点で重要である。
【0033】
中性リン脂質としては、例えば、ホスファチジルコリン等を用いることができる。本発明で用いることができる中性リン脂質は、本発明が課題として取り組むCTL活性増強を達成する範囲において、その種類・量を適宜選択して用いることができる。中性リン脂質は、酸性リン脂質及び本発明のペプチドを結合したリン脂質に比べ、リポソームを安定化する機能が高く、膜の安定性を向上させ得る。かかる観点から、本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜は、中性リン脂質を含有することが好ましい。CTL活性増強効果を達成するために用いる酸性リン脂質、ペプチド結合のための反応
性リン脂質及びリポソームの安定化剤の含有量を確保した上で、中性リン脂質の使用量を決定できる。
【0034】
本発明のペプチド結合リポソームにおいては、本発明のペプチドがリポソームを構成するリン脂質膜に含まれる不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質に結合することにより、リポソームの表面に結合する。
このペプチドの結合のためのリン脂質として、本発明のペプチドが結合することのできる官能基を有する反応性リン脂質が用いられる。不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有する反応性リン脂質は、種々の要求に応じて、その種類、割合が適宜選択される。前記リン脂質と同様に、反応性リン脂質においても、リン脂質に含まれる不飽和アシル基又は不飽和炭化水素基の炭素数が24を超えるか、14未満である場合は好ましくない。
【0035】
反応性リン脂質としては、ホスファチジルエタノールアミン又はその末端変性体が挙げられる。また、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルセリン、ホスファチジン酸、ホスファチジルイノシトール及びこれらの末端変性体も反応性リン脂質として用いることができる。工業的な入手性、本発明のペプチドとの結合工程の簡便性、収率等の点から、ホスファチジルエタノールアミン又はその末端変性体が好ましく用いられる。ホスファチジルエタノールアミンはその末端に本発明のペプチドを結合することのできるアミノ基を有する。更に、CTL活性を実用上十分なレベルに増強する点、リポソームでの安定性、及び工業的な供給性、医薬品として用いるための品質等の点から、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基を有するジアシルホスファチジルエタノールアミン又はその末端変性体が最も好ましく用いられる。
【0036】
ジアシルホスファチジルエタノールアミンは、例えば、ジアシルホスファチジルコリンを原料に、ホスホリパーゼDを用いてコリンとエタノールアミンを塩基交換反応させることで得ることができる。具体的には、ジアシルホスファチジルコリンを溶解したクロロホルム溶液と、ホスホリパーゼD及びエタノールアミンを溶解した水を適宜比率において混合し粗反応物を得ることができる。粗反応物を、クロロホルム/メタノール/水系溶媒を用いてシリカゲルカラムで精製し目的のジアシルホスファチジルエタノールアミンを得ることができる。当業者であれば、溶媒組成比等のカラム精製条件を適宜選択して実施することが可能である。
【0037】
末端変性体としては、ジアシルホスファチジルエタノールアミンのアミノ基に2価反応性化合物の一方の末端を結合させたジアシルホスファチジルエタノールアミン末端変性体が挙げられる。2価反応性化合物としては、ジアシルホスファチジルエタノールアミンのアミノ基と反応することができるアルデヒド基又はコハク酸イミド基を少なくとも片方の末端に有する化合物が利用できる。アルデヒド基を有する2価反応性化合物として、グリオキサール、グルタルアルデヒド、サクシンジアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。好ましくは、グルタルアルデヒドが挙げられる。コハク酸イミド基を有する2価反応性化合物として、ジチオビス(サクシンイミジルプロピオネート)、エチレングリコール−ビス(サクシンイミジルサクシネート)、ジサクシンイミジルサクシネート、ジサクシンイミジルスベレート、又はジサクシンイミジルグルタレート等が挙げられる。
【0038】
また、一方の末端にサクシンイミド基、他方の片末端にマレイミド基を有する2価反応性化合物として、N-サクシンイミジル4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート、スルホサクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート、N-サクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)アセテート、N-サクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)プロピオネート、サクシンイミジル-4-(N-マレイミドエチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート、スルホサクシンイミジル-4-(N-マレイミドエチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート、N-(γ-マレイミドブチリルオキシ)サクシンイミド、N-(ε-マレイミドカプロイルオキシ)サクシンイミド等が挙げられる。このような2価反応性化合物を用いると、官能基としてマレイミド基を有するジアシルホスファチジルエタノールアミン末端変性体が得られる。以上のような2価反応性化合物の一方の末端の官能基をジアシルホスファチジルエタノールアミンのアミノ基に結合し、ジアシルホスファチジルエタノールアミン末端変性体を得ることができる。
【0039】
リポソームの表面に本発明のペプチドを結合する方法としては、例えば、上記の反応性リン脂質を含有するリポソームを調製し、次に本発明のペプチドを加えてリポソームの反応性リン脂質にペプチドを結合する方法を挙げることができる。また、予め本発明のペプチドを反応性リン脂質に結合しておき、次に、得られた本発明のペプチドが結合した反応性リン脂質を、反応性リン脂質以外のリン脂質及びリポソームの安定化剤と混合することによっても、本発明のペプチドを表面に結合したリポソームを得ることができる。反応性リン脂質への本発明のペプチドの結合方法は、当該技術分野において周知である。
【0040】
本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜は、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質を少なくとも1種、例えば2種以上、好ましくは3種以上含有する。
例えば、本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜は、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジン酸、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、サクシンイミジル−ジアシルホスファチジルエタノールアミン、及びマレイミド−ジアシルホスファチジルエタノールアミンから選ばれる少なくとも1種、例えば2種以上、好ましくは3種以上の、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質を含有する。
【0041】
また、本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜は、
不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有する酸性リン脂質、
不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有する中性リン脂質、及び
不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有する反応性リン脂質
を、それぞれ、少なくとも1種含有することが好ましい。
【0042】
本発明において、リポソームの安定化剤としては、ステロール類やトコフェロール類を用いることができる。前記のステロール類としては、一般にステロール類として知られるものであればよく、例えば、コレステロール、シトステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール等が挙げられ、入手性等の点から、特に好ましくは、コレステロールが用いられる。前記のトコフェロール類としては、一般にトコフェロールとして知られるものであればよく、例えば、入手性等の点から、市販のα-トコフェロールが好ましく挙げられる。
【0043】
さらに、本発明の効果を損なわない限り、本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜は、リポソームを構成することのできる、公知の構成成分を含んでいてもよい。
【0044】
本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜の組成としては、例えば以下を挙げることができる:
(A)不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質 1〜99.8モル%;
(B)リポソームの安定化剤 0.2〜75モル%
【0045】
尚、各成分の含有量は、ペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜の全構成成分に対するモル%として表示する。
【0046】
上記成分(A)の含有量は、リポソームの安定性の観点から、好ましくは10〜90モル%、より好ましくは30〜80モル%、更に好ましくは50〜70モル%である。
【0047】
上記成分(B)の含有量は、リポソームの安定性の観点から、好ましくは5〜70モル%、より好ましくは10〜60モル%、更に好ましくは20〜50モル%である。安定化剤の含有量が75モル%を超えるとリポソームの安定性が損なわれ好ましくない。
【0048】
上記成分(A)には、以下が含まれる:
(a)本発明のペプチドが結合していない、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質、及び
(b)本発明のペプチドが結合した、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質。
【0049】
上記成分(a)の含有量は、通常0.01〜85モル%、好ましくは0.1〜80モル%、より好ましくは0.1〜60モル%、更に好ましくは0.1〜50モル%である。
【0050】
上記成分(b)の含有量は、通常0.2〜80モル%、好ましくは0.3〜60モル%、より好ましくは0.4〜50モル%、更に好ましくは0.5〜25モル%である。含有量が0.2モル%未満であると、本発明のペプチドの量が低下するため、実用上十分なレベルに細胞傷害性Tリンパ球を活性化することが困難となり、80モル%を超えると、リポソームの安定性が低下する。
【0051】
上記成分(a)のリン脂質には、通常、上述の酸性リン脂質及び中性リン脂質が含まれる。また、上記成分(b)のリン脂質には、上述の反応性リン脂質が含まれる。
【0052】
酸性リン脂質の含有量は、通常1〜85モル%、好ましくは2〜80モル%、より好ましくは4〜60モル%、更に好ましくは5〜40モル%である。含有量が1モル%未満であると、ゼータ電位が小さくなりリポソームの安定性が低くなり、また、実用上十分なレベルに細胞傷害性Tリンパ球を活性化することが困難となる。一方、含有量が85モル%を超えると、結果として、リポソームの本発明のペプチドが結合したリン脂質の含有量が低下し、実用上十分なレベルに細胞傷害性Tリンパ球を活性化することが困難となる。
【0053】
中性リン脂質の含有量は、通常0.01〜80モル%、好ましくは0.1〜70モル%、より好ましくは0.1〜60モル%、更に好ましくは0.1〜50モル%である。含有量が80.0モル%を超えると、リポソームに含まれる酸性リン脂質、本発明のペプチドが結合したリン脂質及びリポソームの安定化剤の含有量が低下し、実用上十分なレベルに細胞傷害性Tリンパ球を活性化することが困難となる。
【0054】
本発明のペプチドが結合したリン脂質は、前記の反応性リン脂質に本発明のペプチドが結合して得られるもので、反応性リン脂質が本発明のペプチドと結合する割合は、本発明の効果を妨げない範囲において、結合に用いる官能基の種類、結合処理条件等を適宜考慮して選択することができる。
例えば、ジアシルホスファチジルエタノールアミンの末端アミノ基に2価反応性化合物であるジサクシンイミジルサクシネートの片末端を結合して得たジアシルホスファチジルエタノールアミンの末端変性体を反応性リン脂質として用いる場合、結合処理諸条件の選択によって反応性リン脂質の10〜99%を本発明のペプチドと結合することができる。この場合、本発明のペプチドと結合していない反応性リン脂質は、酸性リン脂質となってリポソームに含有される。
【0055】
本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜の好ましい態様としては、以下の組成を挙げることができる:
(I) 不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有する酸性リン脂質1〜85モル%;
(II) 不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有する中性リン脂質0.01〜80モル%;
(III) 本発明のペプチドが結合した、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質0.2〜80モル%;
(IV) リポソームの安定化剤0.2〜75モル%。
(合計100モル%)
【0056】
本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜のより好ましい態様としては、以下の組成を挙げることができる:
上記成分(I) 2〜80モル%
上記成分(II) 0.1〜70モル%
上記成分(III) 0.3〜60モル%
上記成分(IV) 10〜70モル%
(合計100モル%)
【0057】
本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜の更に好ましい態様としては、以下の組成を挙げることができる:
上記成分(I) 4〜60モル%
上記成分(II) 0.1〜60モル%
上記成分(III) 0.4〜50モル%
上記成分(IV) 20〜60モル%
(合計100モル%)
【0058】
本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜のとりわけ好ましい態様としては、以下の組成を挙げることができる:
上記成分(I) 5〜40モル%
上記成分(II) 0.1〜50モル%
上記成分(III) 0.5〜25モル%
上記成分(IV) 25〜55モル%
(合計100モル%)
【0059】
本発明のペプチド結合リポソームは、リポソーム部分を構成するリン脂質膜中のリン脂質に含まれる不飽和アシル基又は不飽和炭化水素基の炭素数が14〜24であることを特徴とするが、本発明の効果を妨げない範囲で、炭素数が14未満又は24を超える不飽和アシル基又は不飽和炭化水素基を含むリン脂質を含んでいても差支えない。本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜中のリン脂質に含まれる全ての不飽和アシル基又は不飽和炭化水素基の合計数に対して、炭素数が14〜24である不飽和アシル基又は不飽和炭化水素基の数の割合は、例えば50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは75%以上、更に好ましくは90%以上、最も好ましくは97%以上(例えば実質的に100%)である。
【0060】
本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜は、本発明の効果を妨げない限り、炭素数が14〜24の範囲のアシル基又は炭化水素基を有する、リン脂質以外の脂質を含んでもよい。該脂質の含有量は、通常は40モル%以下であり、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5モル%以下(例えば実質的に0モル%)である。
【0061】
本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分は、構成成分であるリン脂質、反応性リン脂質、リポソームの安定化剤、本発明のペプチド等を用い、適宜配合や加工を行い、これを適当な溶媒に添加する等の方法で得ることができる。
例えば、エクスツルージョン法、ボルテックスミキサー法、超音波法、界面活性剤除去法、逆相蒸発法、エタノール注入法、プレベシクル法、フレンチプレス法、W/O/Wエマルジョン法、アニーリング法、凍結融解法等の製造方法が挙げられる。リポソームの形態は、特に限定されず、前記のリポソーム製造方法を適宜選択することにより、多重層リポソーム、小さな一枚膜リポソーム、大きな一枚膜リポソーム等、種々の大きさや形態を有するリポソームを製造することができる。
【0062】
リポソームの粒径は特に限定されるものではないが、保存安定性等の点から、粒径は20〜600nmが挙げられ、好ましくは30〜500nm、次に好ましくは40〜400nmであり、更に好ましくは、50〜300nmであり、最も好ましくは70〜230nmである。
【0063】
なお、本発明においては、リポソームの物理化学的安定性を向上させるために、リポソーム調製過程又は調製後に、リポソームの内水相及び/又は外水相に、糖類又は多価アルコール類を添加しても良い。特に、長期保存或いは製剤化途上での保管が必要な場合には、リポソームの保護剤として、糖或いは多価アルコールを添加・溶解し、凍結乾燥により水分を除いてリン脂質組成物の凍結乾燥物とすることが好ましい。
【0064】
糖類としては、例えばグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、イノシトール、リボース、キシロース等の単糖類;サッカロース、ラクトース、セロビオース、トレハロース、マルトース等の二糖類;ラフィノース、メレジトース等の三糖類;シクロデキストリン等のオリゴ糖;デキストリン等の多糖類;キシリトール、ソルビトール、マンニトール、マルチトール等の糖アルコール等が挙げられる。これらの糖類の中では単糖類又は二糖類が好ましく、中でもグルコース又はサッカロースが入手性等の点からより好ましく挙げられる。
【0065】
前記多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、ペンタグリセリン、ヘキサグリセリン、ヘプタグリセリン、オクタグリセリン、ノナグリセリン、デカグリセリン、ポリグリセリン等のグリセリン系化合物;ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール系化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ペンタエチレングリコール、ヘキサエチレングリコール、ヘプタエチレングリコール、オクタエチレングリコール、ノナエチレングリコール等が挙げられる。このうち、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、ソルビトール、マンニトール、分子量400〜10,000のポリエチレングリコールが入手性の点から好ましく挙げられる。
リポソームの内水相及び/又は外水相に含ませる、糖類或いは多価アルコール類の濃度は、リポソーム液に対する重量濃度で、例えば1〜20重量%が挙げられ、好ましくは2〜10重量%が挙げられる。
【0066】
本発明のペプチド結合リポソームを製造する場合、本発明のペプチドを結合させる前のリポソームを作製した後、本発明のペプチドを結合させることにより簡便に本発明のペプチド結合リポソームを得ることができる。
例えば、リン脂質、リポソームの安定化剤及び膜表面に本発明のペプチドを結合するための反応性リン脂質を含有したリポソームの懸濁液を調製し、その外水相に前記の糖類の一つであるスクロースを2〜10重量%程度加えて溶解する。この糖添加製剤を10mlガラス製バイヤルに移して棚段式凍結乾燥機内に置き、-40℃等に冷却して試料を凍結した後、常法により凍結乾燥物を得る。
ここで得たリポソームの凍結乾燥物は、水分が取り除かれているため長期の保存が可能であり、必要時に特定の本発明のペプチドを加えて後の工程を実施することにより、本発明の最終的なペプチド結合リポソームを簡便に迅速に得ることができる。本発明のペプチドとリポソームとの相互作用が強く不安定性が強い場合等は、このようにリポソームの凍結乾燥物の段階で保存し、必要な際に本発明のペプチドを結合して用いると非常に簡便である。
【0067】
本発明のペプチド結合リポソームのリポソーム部分を構成するリン脂質膜は、本発明のペプチドが結合したリン脂質を有し得る。本発明のペプチドが結合したリン脂質を含有するリポソームを得る方法としては、次の(A)及び(B)による方法が挙げられる。
(A)リン脂質、反応性脂質、リポソームの安定化剤を含有するリポソームを調製し、これに本発明のペプチド及び2価反応性化合物を添加し、リポソーム中に含有される反応性リン脂質の官能基と、本発明のペプチドの官能基とを、2価反応性化合物を介して連結する方法。ここで用いることができる2価反応性化合物は、反応性リン脂質の末端変性体調製において用いたものを同様に用いることができる。具体的には、アルデヒド基を有する2価反応性化合物として、グリオキサール、グルタルアルデヒド、サクシンジアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が挙げられる。好ましくは、グルタルアルデヒドが挙げられる。更に、コハク酸イミド基を有する2価反応性化合物として、ジチオビス(サクシンイミジルプロピオネート)、エチレングリコール−ビス(サクシンイミジルサクシネート)、ジサクシンイミジルサクシネート、ジサクシンイミジルスベレート、又はジサクシンイミジルグルタレート等が挙げられる。また、片末端にサクシンイミド基、もう一方の片末端にマレイミド基を有する2価反応性化合物として、N-サクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート、スルホサクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)ブチレート、N-サクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)アセテート、N-サクシンイミジル-4-(p-マレイミドフェニル)プロピオネート、サクシンイミジル-4-(N-マレイミドエチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート、スルホサクシンイミジル-4-(N-マレイミドエチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート、N-(γ-マレイミドブチリルオキシ)サクシンイミド、N-(ε-マレイミドカプロイルオキシ)サクシンイミド等を使用することができる。かかる2価反応性化合物を使用すると、官能基としてマレイミド基を有する反応性リン脂質(例えばホスファチジルエタノールアミン)の末端変性体が得られる。
(B)リン脂質、反応性リン脂質、リポソームの安定化剤を含有するリポソームを調製し、これに本発明のペプチドを添加し、リポソームに含まれる反応性リン脂質の官能基と、本発明のペプチドの官能基を連結して結合させる方法。
【0068】
前記(A)及び(B)における結合の種類としては、例えば、イオン結合、疎水結合、共有結合等が挙げられるが、好ましくは共有結合である。更に共有結合の具体例としては、シッフ塩基結合、アミド結合、チオエーテル結合、エステル結合等が挙げられる。
以上の2つの方法いずれとも、リポソームを構成するリン脂質膜に含まれる反応性リン脂質に本発明のペプチドを結合することができ、リポソームに本発明のペプチドを結合したリン脂質が形成される。
【0069】
前記の(A)の方法において、原料となるリポソームと本発明のペプチドとを2価反応性化合物を介して結合させる方法の具体例としては、例えば、シッフ塩基結合を利用する方法が挙げられる。シッフ塩基結合を介してリポソームと本発明のペプチドとを結合する方法としては、アミノ基を表面に有するリポソームを調製し、本発明のペプチドを該リポソームの懸濁液に添加し、次に、2価反応性化合物としてジアルデヒドを加え、リポソーム表面のアミノ基と本発明のペプチド中のアミノ基とをシッフ塩基を解して結合する方法を挙げることができる。
【0070】
この結合手順の具体例としては、例えば、次の方法が挙げられる。
(A−1)アミノ基を表面に有するリポソームを得るために、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有する反応性リン脂質(例 ホスファチジルエタノールアミン)をリポソーム原料脂質(リン脂質、リポソームの安定化剤等)中に混合して、アミノ基がリポソーム表面に所定量存在するリポソームを作成する。
(A−2)前記リポソーム懸濁液に、本発明のペプチドを添加する。
(A−3)次に、2価反応性化合物としてグルタルアルデヒドを加えて、所定の時間反応させてリポソームと本発明のペプチドとの間にシッフ塩基結合を形成する。
(A−4)その後、余剰のグルタルアルデヒドの反応性を失活させるため、アミノ基含有水溶性化合物としてグリシンをリポソーム懸濁液に加えて反応させる。
(A−5)ゲルろ過、透析、限外ろ過、遠心分離等の方法により、リポソームに未結合の本発明のペプチド、グルタルアルデヒドとグリシンとの反応産物、及び余剰のグリシンを除去して、本発明のペプチド結合リポソーム懸濁液を得る。
【0071】
前記の(B)の方法の具体例としては、アミド結合、チオエーテル結合、シッフ塩基結合、エステル結合等を形成することのできる官能基を有する反応性リン脂質を、リポソームを構成するリン脂質膜に導入する方法が挙げられる。このような官能基の具体例としては、サクシンイミド基、マレイミド基、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、水酸基、チオール基等が挙げられる。
リポソームを構成するリン脂質膜に導入する反応性リン脂質の例としては、前記の不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有する反応性リン脂質(例 ホスファチジルエタノールアミン)のアミノ基末端の末端変性物を用いることができる。
【0072】
この結合手順の具体例として、ジアシルホスファチジルエタノールアミンを用いた場合を例にとって、以下説明する。
(B−1)不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基を有するジアシルホスファチジルエタノールアミンとジサクシンイミジルサクシネートを公知の方法で片末端のみ反応させて、官能基としてサクシンイミド基を末端に有するジサクシンイミジルサクシネート結合ジアシルホスファチジルエタノールアミンを得る。
(B−2)前記ジサクシンイミジルサクシネート結合ジアシルホスファチジルエタノールアミンと他のリポソーム構成成分(リン脂質、リポソームの安定化剤等)とを公知の方法で混合し、表面に官能基としてサクシンイミド基を有するリポソームを作成する。
(B−3)前記リポソーム懸濁液に、本発明のペプチドを加え、本発明のペプチド中のアミノ基と、リポソーム表面のサクシンイミド基とを反応させる。
(B−4)未反応の本発明のペプチド、反応副生物等を、ゲルろ過、透析、限外ろ過、遠心分離等の方法により除去して、本発明のペプチド結合リン脂質を含有するリポソームの懸濁液を得る。
【0073】
リポソームと本発明のペプチドとを結合する場合、官能基として含有されることが多いアミノ基又はチオール基を対象とすることが実用上好ましい。アミノ基を対象とする場合には、サクシンイミド基と反応させることによりシッフ塩基結合を形成させることができる。チオール基を対象とする場合には、マレイミド基と反応させることによりチオエーテル結合を形成させることができる。
【0074】
本発明のペプチドやペプチド結合リポソームを用いれば、HLA(好ましくはHLA-A*0201)拘束的且つ特異的に、本発明のペプチド(好ましくは本発明のエピトープペプチド)を認識する細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を強力に誘導することが可能となる。本発明のペプチドやペプチド結合リポソームにより誘導される細胞傷害性Tリンパ球は、鳥インフルエンザウイルスに感染した結果、HLA上に本発明のペプチドを提示した細胞を殺傷し、これらの細胞を除去する。従って、本発明のペプチドやペプチド結合リポソームは、細胞傷害性Tリンパ球活性化剤や鳥インフルエンザウイルスワクチンとしてとして有用である。
【0075】
上述のように、本発明のペプチドは、鳥インフルエンザウイルスの連続変異株及び不連続変異株において高度に保存されたエピトープを含む。従って、本発明のペプチドやペプチド結合リポソームは、多様な型[(H1〜H16)×(N1〜N9)]の鳥インフルエンザウイルスに対するワクチンとして有用であるが、とりわけ、H1N1、H3N2及び高病原性鳥インフルエンザウイルス(H5N1型)に対して有効である。また、本発明のペプチドやペプチド結合リポソームは、種々の変異株に対するワクチンとして有用である。
【0076】
本発明のペプチドやペプチド結合リポソームを細胞傷害性Tリンパ球活性化剤や鳥インフルエンザウイルスワクチンとして使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。本発明のペプチドやペプチド結合リポソームは低毒性であり、そのまま液剤として、又は適当な剤形の医薬組成物として、ヒト、非ヒト哺乳動物(例、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サル等)、鳥類(ニワトリ、ガチョウ、アヒル、ダチョウ、ウズラ等)等に対して経口的又は非経口的(例、血管内投与、皮下投与等)に投与することができる。本発明のペプチドやペプチド結合リポソームの投与対象である動物は、通常、標的とする鳥インフルエンザウイルスが感染し得る哺乳動物及び鳥類である。本発明のペプチドやペプチド結合リポソームは、通常、非経口的に投与される。
【0077】
本発明の細胞傷害性Tリンパ球活性化剤及び鳥インフルエンザウイルスワクチンは、その有効成分であるペプチド又はペプチド結合リポソーム自体を投与しても良いし、又は適当な医薬組成物として投与しても良い。投与に用いられる医薬組成物としては、上記ペプチド又はペプチド結合リポソームと薬理学的に許容され得る担体、希釈剤又は賦形剤とを含むものであっても良い。このような医薬組成物は、経口又は非経口投与に適する剤形として提供される。
【0078】
非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記ペプチド又はペプチド結合リポソームを通常注射剤に用いられる無菌の水性溶媒に溶解又は懸濁することによって調製できる。注射用の水性溶媒としては、例えば、蒸留水;生理的食塩水;リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液等の緩衝液等が使用できる。このような水系溶媒のpHは5〜10が挙げられ、好ましくは6〜8である。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。
【0079】
また、本発明のペプチドの溶解液又は本発明のペプチド結合リポソームの懸濁液を、真空乾燥、凍結乾燥等の処理に付すことにより、本発明のペプチド又は本発明のペプチド結合リポソームの粉末製剤を調製することもできる。本発明のペプチド又は本発明のペプチド結合リポソームを粉末状態で保存し、使用時に該粉末を注射用の水系溶媒で分散することにより、使用に供することができる。
【0080】
本発明の細胞傷害性Tリンパ球活性化剤及び鳥インフルエンザウイルスワクチンは、その効果を増強するため、アジュバントをさらに含有してもよい。アジュバントとしては、水酸化アルミニウムゲル、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、百日咳菌アジュバント、ポリ(I,C)、CpG-DNA等が挙げられるが、CpG-DNAがとりわけ好ましい。CpG-DNAは細菌の非メチル化CpGモチーフを含むDNAであり、特定の受容体(Toll-like receptor 9)のリガンドとしてはたらくことが知られている(詳細はBiochim. Biophys. Acta 1489, 107-116 (1999) 及び Curr. Opin. Microbiol. 6, 472-477 (2003)参照)。CpG-DNAは樹状細胞(DC)を活性化することにより、本発明のペプチド又はペプチド結合リポソームによる細胞傷害性Tリンパ球の誘導を増強することができる。
【0081】
医薬組成物中の有効成分(本発明のペプチド又はペプチド結合リポソーム)の含有量は、通常、医薬組成物全体の約0.1〜100重量%、好ましくは約1〜99重量%、さらに好ましくは約10〜90重量%程度である。
【0082】
本発明の細胞傷害性Tリンパ球活性化剤又は鳥インフルエンザウイルスワクチンがアジュバントを含む場合、該アジュバント(例えばCpG-DNA)の含有量は、細胞傷害性Tリンパ球の誘導を増強し得る範囲で適宜設定することができるが、通常、医薬組成物全体の約0.01〜10重量%、好ましくは約0.1〜5重量%程度である。
【0083】
本発明のペプチド又は本発明のペプチド結合リポソームの投与量は、投与する対象、投与方法、投与形態等によって異なるが、例えば、皮下投与或いは経鼻投与により生体内の細胞傷害性Tリンパ球を活性化する場合には、通常成人1人(体重60kg)あたり本発明のペプチドとして一回当たり1μg〜1000μgの範囲、好ましくは20μg〜100μgの範囲で、通常4週間から18ヶ月に亘って、2回から3回投与する。また、皮下投与により鳥インフルエンザウイルス感染に対して予防する場合には、本発明のペプチドとして一回当たり1μg〜1000μgの範囲、好ましくは20μg〜100μgの範囲で、通常4週間から18ヶ月に亘って、2回から3回投与する。
【実施例】
【0084】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0085】
[実施例1]
ペプチドの合成
高病原性鳥インフルエンザウイルスA/Hong_Kong/483/97(H5N1)株のウイルス内部タンパク質(M1、NS1、PB1)のアミノ酸配列に基づき、以下のペプチドをOperon Biotechnologies社(東京、日本)により合成した。
M1_58-66:GILGFVFTL(配列番号1)
NS1_128-136:IILKANFSV(配列番号2)
PB1_410-418:GMFNMLSTV(配列番号3)
【0086】
M1_58-66は、M1の第58-66残基に、NS1_128-136はNS1(nonstructural protein 1)の第128-136残基に、PB1_410-418は、polymerase PB1の第410-418残基に、それぞれ相当する。
【0087】
[実施例2]
ペプチド結合リポソームの調製
インフルエンザウイルスの内部抗原由来のペプチド(M1_58-66(配列番号1)、NS1_128-136(配列番号2)、PB1_410(配列番号3))と結合したリポソームはJ Immunol 177, 2324-2330(2006)に記載の方法と同様に、ジスクシンイミジルスベレート(DSS)を用いて調製した。具体的には、10mlの0.136mMのジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)及び24mlのトリエチルアミン(TEA)の混合物を、0.681mM DSSを含む26.6mlの無水クロロホルム溶液中に滴下して加え、40℃で5時間撹拌した。減圧下で溶媒を蒸発させ、酢酸エチル及びテトラヒドロフランの2:1混合物18mlを加えて残渣を溶解した。この溶液に36mlの100mMリン酸ナトリウム(pH 5.5)及び90mlの飽和NaCl水溶液を加えた。この混合物を1分間震盪して分離させた。不要な物質を除去するために同一の緩衝液で上層を洗浄した。溶媒を蒸発させた後、3mlのアセトンを加えて残渣を溶解した。次いで、100mlの氷冷アセトンを滴下して加え、氷上に30分間保持して沈殿させた。結晶を回収して5mlのクロロホルム中に溶解した。蒸発後、34.4mgのDOPE-DSSを得、次いで0.18mMのジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、0.03mMのDOPE-DSS、0.21mMのコレステロール及び0.06mMのジオレオイルホスファチジルグリセロールを10mlのクロロホルム/メタノール中に溶解した。減圧下で溶媒を蒸発させ、5.8mlのリン酸緩衝液(pH 7.2)を加えて4.8%の脂質懸濁液を作成した。ベシクルの分散液を0.2μmのポリカーボネート膜を通して押し出し、リポソームサイズを調整した。DSSを導入したリポソームの懸濁液2ml及び10mg/mlのペプチド溶液0.5mlを混合して4℃で3日間撹拌した。CL-4Bカラムクロマトグラフィーを用いてリポソームとカップリングしたペプチドとしていないペプチドを分離した。その結果おおよそ0.7μgペプチド/mlを含有する、ペプチド結合リポソームのPBS溶液が生じ、それを濾過滅菌して使用時まで4℃で保持した。
【0088】
[実施例3]
細胞内サイトカイン染色を、J Virol 78, 9093-9104(2004)に記載された通りに行った。マウス本来のMHCクラスI分子(H2-D及びH2-K)を持たず、HLA-A*0201分子を発現する遺伝子導入マウス(HHDマウス)(J.Exp.Med. 185 (1997) 2043-2051)を使用した。実施例2で製造した、下記の各ペプチド(M1_58-66、NS1_128-136、PB1_410-418)が結合したリポソーム50μlを5μg CpG存在下でHHDマウスへfp投与し、1週間後、安楽殺した後に脾臓を回収して、脾臓細胞2×106個をbrefeldin A(GolgiPlugTM, BD Biosciences, San Jose, CA)存在下、37℃で5時間、10μMの各ペプチド(M1_58-56、NS1_128-136、PB1_410-418)それぞれとインキュベートした。ラット抗マウスCD16/CD32モノクローナル抗体(Fc BlockTM, BD Biosciences)によりFc受容体をブロッキングした後、細胞をFITC結合ラット抗マウスCD8αモノクローナル抗体(BD Biosciences)により4℃で30分間染色した。次いで細胞を固定し、透過性を高め、フィコエリトリン(PE)結合ラット抗マウスインターフェロンγ(IFN-γ)モノクローナル抗体(BD Biosciences)により染色した。細胞を洗浄後、サイトメトリ解析を行った(図1A)。
【0089】
結果
各ペプチドを、リポソームに結合させた状態でマウスに免疫することにより、高い効率で、抗原特異的CD8+細胞が誘導された(図1A;グラフ中に表示した数値は、細胞内IFN-γがポジティブなCD8+細胞のパーセンテージを示す)。リポソームに結合せずに同量のペプチドで免疫しても、殆ど抗原特異的CD8+細胞は誘導されなかったが、リポソームと結合することにより抗原特異的CD8+細胞が極めて強く誘導された。上記結果により、本発明のペプチド結合リポソームの優れた抗原特異的CD8+細胞誘導効果が確認できた。
【0090】
[実施例4]
CTL活性の検出
ペプチド結合リポソームの活性の検出は、J Exp Med 198, 889-901(2003)に記載された方法で行った。まずマウス本来のMHCクラスI分子(H2-D及びH2-K)を持たず、HLA-A*0201分子を発現する遺伝子導入マウス(HHDマウス)を、リポソームに結合したそれぞれの候補ペプチド(0.7μg/μlを100μl/匹)及びCpG5002(5’-TCCATGACGTTCTGATGTT-3’(配列番号6);Hokkaido System Science, Sapporo, Japan;詳細はVaccine 25, 4914-4921 (2007)参照)(5μg/匹)で1回免疫した。免疫から2週間後、免疫したペプチドと蛍光色素(CFDA-SE)で標識した標的細胞(A24Tgマウス脾細胞1×107個/匹)を対照とともに静脈内投与し、12時間後、脾臓細胞を調製して、その中の標的細胞の特異的溶解をフローサイトメーターにより解析した。
【0091】
脾臓接着細胞(SAC)、CD4+及びCD8+T細胞の調製
脾臓細胞懸濁液を10%FCSを含有するRPMI-1640を用いて調製した。5mlの10%FCSを含有する培地中の細胞(5×107個)を50mmプラスチック組織培養ディッシュ(No.#3002; BectonDickinson Labware, Franklin Lakes, NJ)中に播種し、加湿5%CO2雰囲気下、37℃にて2時間インキュベートした。培養後、非接着細胞を、暖かい培地中での穏やかな洗浄(washing)により除去し、次に接着細胞をセルスクレーパーにより回収した。各ペプチド−アラムで免疫されたマウスの脾臓細胞(SC)からのCD4+及びCD8+T細胞精製は、磁気セルソーターシステムMACSにより、製造者のプロトコールに従って、抗CD4及び抗CD8抗体被覆マイクロビーズ(Miltenyi Biotec GmbH)を用いて行った。T細胞は、10%FCSを含むRPMI-1640中に、2×106mlの細胞密度で懸濁された。
【0092】
インビボ細胞障害性アッセイ(CTL活性の測定)
上記マウスの脾細胞を0.25又は2.5μM CFDA-SE(Molecular probes, Eugene, OR, USA)により室温で15分間標識し、2回洗浄した。次に、CFDA-SEが明るい細胞を、10μM各ペプチドによりパルスした。CFDA-SEが暗い細胞はパルスせず、対照として用いた。細胞を1:1の比で混合し、全部で2×107個の細胞を、2週間前に5μgのCpG5002及びそれぞれの各ペプチド結合リポソームが注入されたマウスへ静注した。8時間後にそれぞれのマウスから回収された脾細胞をフローサイトメトリーにより解析した。各ペプチドでパルスされた画分の蛍光標識脾細胞の減少の程度をCTL活性の指標とした。各ペプチド結合リポソームにより免疫されたマウスにCTLが誘導されていれば、各ペプチドでパルスされた画分の蛍光標識脾細胞のみが消滅することとなる。結果を図1Bに示す。
【0093】
結果
M1_58-66:GILGFVFTL(配列番号1)、NS1_128-136:IILKANFSV(配列番号2)及びPB1_410-418:GMFNMLSTV(配列番号3)それぞれについて調製したペプチド結合リポソームのいずれもが、免疫を行わなかったコントロールに比べて非常に高いCTL誘導活性を示した(図1B)。このことは、各ペプチドがMHCクラスIにロードされ、CTLにより認識されたことを示す。
【0094】
[実施例5]
ウイルス感染抵抗性試験を以下の通り行った。DDW中のM1_58-66 (配列番号1)5mgをジサクシンイミジルスベレート-ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DSS-Ole)用いて実施例2と同様にリポソームにカップリングした。マウス当たり100μlのペプチド結合リポソームを5μg CpG存在下でfp投与し、1週間後、ketamine(175 mg/g weight)(Sigma-Aldrich)及びxylazine(3.5 mg/g weight)(Bayer Holding Ltd., Tokyo, Japan)を腹膜内注射してマウスを麻酔し、40μl PBS中に再懸濁した5×LD50(1×104TCID50)のH1N1(A/PR/8/34)ウイルス又は1×104TCID50のH3N2(A/Aichi/2/68)ウイルスをマウスに鼻腔内投与した。マウスの体重を毎日測定し、2週間にわたって死亡率をモニターした。ウイルスのタイターについては、マウスをウイルス接種から2、4又は6日後に安楽殺してその肺中のウイルスタイターを、Cottey R, Rowe CA, Bender BS (2001) Influenza virus. In Current Protocols in Immunology. John Wiley & Sons, Inc. 19.11.1-19.11.32に記載された通りにMDCK細胞を用いてTCID50を測定することにより決定した。即ち、肺を1ml PBS中でホモジェナイズし、ホモジェネートを2,000rpmで10分間遠心して破砕片を沈殿させた。次いで当該ホモジェネートの10倍希釈系列を、U字形底の96ウェルプレートに希釈1回につき5ウェルずつ調製した。希釈系列は5% FCSを含むDMEMで10-1から10-7まで調製した。D-5中のMDCK細胞を全ウェルに添加(2.5×104細胞/ウェル)し、5%C02の下、35℃でインキュベートした。1日後、各ウェル中の培養培地を2μg/mlのアセチル化トリプシン(Sigma-Aldrich)含有DMEMと交換し、プレートをC02インキュベーター中35℃で4日間更にインキュベートした。PBS中0.5%ニワトリ赤血球懸濁液50μlを各ウェルに添加後、各試料について凝集パターンを観察し、TCID50(詳細はCottey R, Rowe CA, Bender BS (2001) Influenza virus. In Current Protocols in Immunology. John Wiley & Sons, Inc. 19.11.1-19.11.32を参照)を算出することによりウイルスタイターを決定した。各実験群にはマウスを5匹ずつ用いた。本アッセイの検出限界は103 TCID50/マウスであった。図2中に感染抵抗性試験結果を、図3中にCD8+細胞誘導のメモリーに関する結果を、図4中に致死量のインフルエンザ感染に対する長時間の持続的防御の誘導に関する結果を示す。
【0095】
M1_58-66:GILGFVFTL(配列番号1)を結合させたリポソームによって免疫したマウスにおいては、ウイルス感染後2〜6日間の肺におけるウイルス増殖が有意に抑制されることが確認できた(図2)。また免疫から90日後であっても、M1_58-66(配列番号1)特異的なCD+8細胞が検出され(図3A)、肺におけるウイルス増殖の有意な抑制も観察された(図3B)。更に、M1_58-66:GILGFVFTL(配列番号1)のペプチド結合リポソームでマウスを免疫してから6ヶ月後に致死量のウイルスを感染させた場合でも、死亡率は劇的に抑制され(図4B)生存したマウスの体重は回復した(図4A)。用いたペプチドは高病原性鳥インフルエンザウイルスA/Hong_Kong/483/97(H5N1)由来のものであるが、亜型の異なるH1N1ウイルスやH3N2ウイルスに対しても上記のような優れた効果が示されたことから、本発明のペプチド結合リポソームのプレパンデミックワクチンとしての有効性が証明された。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明によれば、パンデミックを引き起こす可能性が高い高病原性鳥インフルエンザウイルスに対し、その表面タンパク質の変異の影響を受けにくく、効果が高いワクチンを提供できる。また、本発明の鳥インフルエンザワクチンによれば、実際の流行株(型・亜型)が予測と異なった場合、効果が限定的となるであろう現在のプレパンデミックワクチンの弱点を克服できる、新規のプレパンデミックワクチンを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペプチドが結合したリポソームであって、
該ペプチドが、(1)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列、或いは(2)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列において、1又は2個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含み、
9〜11アミノ酸の長さを有し、且つ
HLAに拘束された細胞傷害性Tリンパ球を誘導し得るものであり;
該リポソームが、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質、及びリポソームの安定化剤を含有し;且つ
該リポソームの表面に該ペプチドが結合している、
ペプチド結合リポソーム。
【請求項2】
HLAがHLA−A*0201である、請求項1記載のペプチド結合リポソーム。
【請求項3】
リン脂質が、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基を有するリン脂質である、請求項1記載のペプチド結合リポソーム。
【請求項4】
アシル基がオレオイル基である、請求項1記載のペプチド結合リポソーム。
【請求項5】
リン脂質が、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジルグリセロール、ジアシルホスファチジン酸、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、サクシンイミジル−ジアシルホスファチジルエタノールアミン、及びマレイミド−ジアシルホスファチジルエタノールアミンから選ばれる少なくとも1つである、請求項1記載のペプチド結合リポソーム。
【請求項6】
リポソームの安定化剤がコレステロールである、請求項1記載のペプチド結合リポソーム。
【請求項7】
ペプチドが、リポソームを構成するリン脂質膜に含まれる不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質に結合している、請求項1記載のペプチド結合リポソーム。
【請求項8】
リポソームが以下の組成を有する、請求項1記載のペプチド結合リポソーム:
(A)不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質 1〜99.8モル%;
(B)リポソームの安定化剤 0.2〜75モル%。
【請求項9】
リポソームが以下の組成を有する、請求項1記載のペプチド結合リポソーム:
(I)不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有する酸性リン脂質 1〜85モル%;
(II)不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有する中性リン脂質 0.01〜80モル%;
(III)ペプチドが結合した、不飽和結合を1個有する炭素数14〜24のアシル基又は不飽和結合を1個有する炭素数14〜24の炭化水素基を有するリン脂質 0.2〜80モル%;
(IV)リポソームの安定化剤 0.2〜75モル%。
【請求項10】
ペプチドを含む、細胞傷害性Tリンパ球活性化剤であって、
該ペプチドが、(1)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列、或いは(2)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列において、1又は2個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含み、
9〜11アミノ酸の長さを有し、且つ
HLAに拘束された細胞傷害性Tリンパ球を誘導し得るものである、
細胞傷害性Tリンパ球活性化剤。
【請求項11】
請求項1記載のペプチド結合リポソームを含む、細胞傷害性Tリンパ球活性化剤。
【請求項12】
更にCpG−DNAを含有することを特徴とする、請求項10又は11記載の細胞傷害性Tリンパ球活性化剤。
【請求項13】
ペプチドを含む、鳥インフルエンザウイルスワクチンであって、
該ペプチドが、(1)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列、或いは(2)配列番号1又は2で表されるアミノ酸配列において、1又は2個のアミノ酸が置換されたアミノ酸配列を含み、
9〜11アミノ酸の長さを有し、且つ
HLAに拘束された細胞傷害性Tリンパ球を誘導し得るものである、
鳥インフルエンザウイルスワクチン。
【請求項14】
請求項1記載のペプチド結合リポソームを含む、鳥インフルエンザウイルスワクチン。
【請求項15】
更にCpG−DNAを含有することを特徴とする、請求項13又は14記載の鳥インフルエンザウイルスワクチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−126853(P2011−126853A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−289848(P2009−289848)
【出願日】平成21年12月21日(2009.12.21)
【出願人】(591222245)国立感染症研究所長 (48)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(504013775)学校法人 埼玉医科大学 (39)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】