説明

鳥軟骨の水解物並びにその調製方法及び使用

本発明は、鳥軟骨の水解物に関する。該水解物は、45〜70重量%の加水分解されたII型コラーゲンと、9〜15重量%のコンドロイチン硫酸と、0.5〜2重量%のヒアルロン酸とを含み、アミノ酸の組成が、バリン2.7〜3.3%、イソロイシン2.0〜2.4%、フェニルアラニン2.2〜2.6%、リシン3.8〜4.2%、トリプトファン0.4〜0.6%、ヒドロキシプロリン5.5〜8.7%、ヒドロキシリシン0.7〜1.8%であり、ヒドロキシプロリンとヒドロキシリシンとのモル比が5.0〜8.0であり、ペプチド画分の平均分子量が500〜1000ダルトンである。本発明はまた、該水解物を調製する方法、並びに、特に関節痛の治療又は予防を用途とする該水解物の食品補助剤及び/又は薬剤としての使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鳥軟骨の水解物であって、45〜70重量%の加水分解されたII型コラーゲンと、9〜15重量%のコンドロイチン硫酸と、0.5〜2重量%のヒアルロン酸と、アミノ酸組成物とを含む水解物であって、アミノ酸組成物が2.7%〜3.3%のバリンと、2.0〜2.4%のイソロイシンと、2.2〜2.6%のフェニルアラニンと、3.8〜4.2%のリシンと、0.4〜0.6%のトリプトファンと、5.5〜8.7%のヒドロキシプロリンと、0.7〜1.8%のヒドロキシリシンとを含んでおり、ヒドロキシプロリンとヒドロキシリシンとのモル比が5.0〜8.0であり、ペプチド画分の平均分子量が500〜1000ダルトンであることを特徴とする、鳥軟骨の水解物に関する。また、本発明は、上記水解物の調整方法、並びに、特に関節痛の治療又は防止を目的とした食品補助剤及び/又は薬剤としての上記水解物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
軟骨は、ヒト及び動物の器官内に存在する非常に複雑な組織である。軟骨は、例えば、鼻中隔、喉頭、動脈気管(arterial trachea)、気管支、関節面、長骨の骨端軟骨、胸骨の剣状突起などから採取可能である。
【0003】
軟骨は、ヒト及び動物向けの特別食、ヒト及び家畜向けの薬物、又は化粧品に含まれる有効成分として使用される多くの分子を含んでいる。最もよく知られた分子の例として、コラーゲン、ヘキソサミン類、グリコサミノグリカン類(コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸)が挙げられる。
【0004】
具体的には、従来、関節を構成する成分の一部である加水分解されたII型コラーゲン、コンドロイチン硫酸及びヒアルロン酸を、関節痛の治療に用いることが提案されている。従来、関節痛は非ステロイド抗炎症薬(NSAID)又は鎮痛剤により治療されているが、これらの対症治療は副作用を伴うことがある。したがって、関節における作用期間を長くすることにより、二次的に痛みを軽減し、可動性を改善するような治療を行うことが有効である。
【0005】
これらの分子の大多数は、過去何年にもわたって、ウシの軟骨から抽出されている。しかし、ウシ海綿状脳症(BSE)の出現以来、食品産業、医薬品産業、及び化粧品産業の業界は、BSEの原因であるプリオン(熱により不活化されず、検出が困難)によりこれらの抽出物が汚染される可能性を懸念してきた。
【0006】
軟骨魚綱の魚の骨格を使用することは、ウシ由来の生成物の代わりの解決策となり得る。しかし、海洋資源は、量、経済性、環境の点で限界がある。したがって、プリオンの病気に罹らないと認識されている一般的な動物の中から軟骨供給源を見つけるのが有効である。家禽類(ニワトリ、七面鳥、アヒル、ホロホロチョウ、ウズラ、ハト)は、これらの衛生安全基準を満たしている。
【0007】
米国特許第6,025,327号は、平均分子量が約1500〜約2500ダルトンの加水分解されたII型コラーゲンを含む、ニワトリの胸肋軟骨から得た材料を開示している。米国特許第6,323,319号は、米国特許第6,025,327号に記載された材料を得る方法を開示している。
【0008】
米国特許第6,780,841号は、個体内に軟骨の形成を誘導することができるII型コラーゲン水解物を開示している。この文献に記載のコラーゲン水解物は、少なくとも20%の解重合されたコンドロイチン硫酸及び少なくとも10%のヒアルロン酸を含み、平均分子量が約5500〜約10000ダルトンである。
【特許文献1】米国特許第6,025,327号
【特許文献2】米国特許第6,323,319号
【特許文献3】米国特許第6,780,841号
【非特許文献1】Eggersgluss, B. (1999). "Gelatine hydrolyste and its health aspects." The European Food & Drink Review (Autumn 1999): 45-49.
【非特許文献2】Yamato, R. and Y. Sakai (2005). Beneficial effects of Tripeptide collagen (HACP) on bones and tendons [translation of a Japanese article]." Foods and Foods Ingredients Journal of Japan 210 (9): 854-858.
【非特許文献3】Blumenkrantz, N. and G. Asboe-Hansen (1978). "Hydroxyproline to hydroxylysine molar ratio indicates collagen type." Acta Dermatovener (Stockolm) 58:111-115.
【非特許文献4】Barnet M. L., Combitchi D., Trentham D. E. A pilot trial of oral type II collagen in the treatment of juvenile rheumatoid arthritis. Arthritis & Rheumatism. 1996; 39 [4]: 623 - 628.
【非特許文献5】Barnet, Kremer J.M., St. Clair E. W., Clegg D. O. and al. Treatment of rheumatoid arthritis with oral type II collagen. Arthritis & Rheumatism, 1998 ; 41 [2] : 290-297.
【非特許文献6】Sieper J. and al. Oral type II collagen treatment in early rheumatoid arthritis. Arthritis & Rheumatism. 1996; 39 [1]: 41 - 51.
【非特許文献7】Trentham DE, Dynesius-Trentham RA, Orav EJ, Combitchi D, Lorenzo C, Sewell KL, Hafier DA, Weiner HL. Effects of Oral Administration of Type II Collagen on Rheumatoid Arthritis. Science. 1993; 261: 1727-1930.
【非特許文献8】Gres, M. C, B. Julian, and al. (1998). "Correlation between oral drug absorption in humans, and apparent drug permeability in TC-7 cells, a human epithelial intestinal cell line: comparison with the parental Caco-2 cell line." Pharmaceutical research 15: 726-733.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そのような個体における軟骨形成作用、関節痛緩和又は可動性の向上を示す結果は提示されていない。さらに、米国特許第6,780,841号は、脱重合されたコンドロイチン硫酸及びヒアルロン酸の割合が重要であり、最も可能性の高い割合がきわめて好ましいことを具体的に説明しており、つまり、少量の脱重合されたコンドロイチン硫酸及びヒアルロン酸を含む生成物は、インビボでは、個体内で軟骨形成を誘導し、関節痛を低減し、可動性を向上するのに不十分であることを示唆している。
【0010】
さらに、上記3つの特許(米国特許第6,025,327号、第6,323,319号、第6,780,841号)は、ニワトリの胸肋軟骨のみから調製された水解物を開示している。調製においては、骨が混入しないように特に入念な予防策を取り、全ての関節軟骨を一方の側に残して骨の破片が混入する可能性を排除した。上記3つの特許には、I型又はIII型のコラーゲンの混入を防止して、考え得る最高の歩留まりでプロテオグリカンを得ることができるように、使用する非常に特異な原材料に対して予防策を講じることが最終製品の純度のために極めて重要であると明記されている。
【0011】
胸肋軟骨以外の軟骨を使用していないので、他の部位の軟骨を使用した場合と比較して、必然的に水解物の全体の効率が大幅に低下する。さらに、特別な予防策を講じることにより、原材料を準備するプロセスが極めて複雑になり、具体的には、工業規模での使用が不可能である。
【0012】
したがって、個体において軟骨の形成を誘導し、関節痛を緩和し、関節の可動性を向上することができ、工業用途に適した調製方法により生成できる家禽の軟骨水解物、特にニワトリの軟骨水解物を用いるのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、米国特許第6,025,327号、第6,323,319号、第6,780,841号が示唆する内容とは異なり、脱重合されたコンドロイチン硫酸及びヒアルロン酸の含有率が従来と比べて極めて低く、平均分子量が従来と比べてかなり低く且つアミノ酸の組成が従来とは大きく異なるニワトリの軟骨水解物を用いて、インビトロでの生体利用効率及び関節痛の患者におけるインビボでの有効性の両方が十分に得られることを示した。さらに、改良された製造方法を用いて、そのような良好なインビボでの有効性を有する水解物を生成することにより、効率、コスト及び時間の点で特に顕著な利益が得られる。
【0014】
特に、本発明者らにより開発された水解物は、胸骨からだけでなく、ニワトリの屠体から採取可能な全ての軟骨を原材料として得られる。使用される原材料は、70〜100重量%の骨(胸骨を含む)及び関節軟骨と0〜30重量%の胸肋軟骨との混合物である。この原材料は、米国特許第6,025,327号、第6,323,319号、第6,780,841号に記載されている必須の予防策を用いずに得ることが可能であり、したがって工業的に製造可能である。ニワトリ1屠体あたりの総効率は、従来と比べてかなり高い。
【0015】
さらに、本発明者らにより開発された水解物を生成する方法は、米国特許第6,025,327号、第6,323,319号、第6,780,841号に開示されているものよりもかなり速い。本発明の方法は、原材料を水中で培養する工程を含まず、加水分解工程の時間が短い。
【0016】
最後に、米国特許第6,025,327号、第6,323,319号、第6,780,841号に記載の製造方法とは異なり、本発明者らにより開発された水解物の生成方法では、殺菌工程がプロトコルの最後に行われるので、衛生安全性が向上する。
【0017】
したがって、本発明は、鳥軟骨の水解物であって、
a)上記水解物は、
45〜70重量%の加水分解されたII型コラーゲンと、
9〜15重量%のコンドロイチン硫酸と、
0.5〜2重量%のヒアルロン酸とを含み、
b)上記水解物は、全アミノ酸のうち、
2.7%〜3.3%のバリンと、
2.0〜2.4%のイソロイシンと、
2.2〜2.6%のフェニルアラニンと、
3.8〜4.2%のリシンと、
0.4〜0.6%のトリプトファンと、
5.5〜8.7%のヒドロキシプロリンと、
0.7〜1.8%のヒドロキシリシンとを含んでおり、
ヒドロキシプロリンとヒドロキシリシンとのモル比が5.0〜8.0であり、
c)ペプチド画分の平均分子量が500〜1000ダルトンである
ことを特徴とする水解物に関する。
【0018】
したがって、本発明による鳥軟骨水解物の組成は、米国特許第6,780,841号に記載された水解物とは大きく異なる。まず、コンドロイチン硫酸の割合(9%〜15%;米国特許第6,780,841号では20%)及びヒアルロン酸の割合(0.5%〜2%;米国特許第6,780,841号では10%)が、米国特許第6,780,841号に記載のものよりもかなり低い。
【0019】
そのようにコンドロイチン硫酸及びヒアルロン酸の割合が低いことは、米国特許第6,780,841号の示唆に反する。つまり、米国特許第6,780,841号は、コンドロイチン硫酸及びヒアルロン酸の最小の割合がそれぞれ20%及び10%であることだけでなく、考え得る最も高い濃度が好ましいということを具体的に記載している(米国特許第6,780,841号の第6コラム、49〜57行を参照)。
【0020】
米国特許第6,780,841号の記載事項から予想されることとは異なり、本発明の水解物は、従来の一般的な投与量よりも大幅に少ないコンドロイチン硫酸の投与量で、関節痛患者に有益なインビボでの効果を提供する。関節痛患者について得られた詳細な結果は、実施例2において説明する。
【0021】
さらに、本発明の水解物におけるアミノ酸含有量は、米国特許第6,780,841号に記載の水解物におけるアミノ酸含有量とは大きく異なる。以下の表1は、本発明の水解物に含まれるアミノ酸の平均パーセンテージと、米国特許第6,780,841号に記載の水解物に含まれるアミノ酸の平均パーセンテージとの比較を示す。
【0022】
【表1】

【0023】
特に、バリン(+22.4%)、イソロイシン(+15.8%)、フェニルアラニン(+12.5%)、リシン(+17.5%)、トリプトファン(+36%)、ヒドロキシプロリン(+50%)及びヒドロキシリシン(米国特許第6,025,327号、第6,323,319号、第6,780,841号の水解物中には含まれない)の割合の差が非常に大きい。
【0024】
バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、リシン及びトリプトファンは、必須アミノ酸である。つまり、これらのアミノ酸は、生物が合成できないものであり、したがって、食物を介して摂取する必要がある。本発明の水解物は、9種類の必須アミノ酸のうちヒスチジンを除く全てを、少なくとも均等な割合で含んでいる。さらに、本発明の水解物は、これら必須アミノ酸のうち5種類(バリン、イソロイシン、フェニルアラニン、リシン及びトリプトファン)を、非常に大きな割合で含んでいる。この水解物は特に食品補助剤として用いるので、このことは、本発明のさらなる利点であると言える。
【0025】
ヒドロキシプロリン及びヒドロキシリシンは、特にコラーゲン中に含まれる修飾アミノ酸である。これらの修飾アミノ酸は、コラーゲン中にて、隣接する異なるポリペプチド鎖の間の共役結合の形成において重要な役割を果たし、コラーゲンの3次元構造の強化に寄与している。
【0026】
したがって、コラーゲンを含む生成物の経口投与は、コラーゲン形成に寄与する上記アミノ酸の有用な供給源である(非特許文献1)。さらに、非特許文献2に記載の研究は、Gly-Pro-Hypコラーゲントリペプチド(ヒドロキシプロリンを含む)の、動物モデルにおける骨及び腱の修復プロセスに対する有益な効果を示している。また、この研究は、「処置した群」におけるヒドロキシプロリンの含有量が、2週間後、コラーゲン水解物を投与しなかった群よりも、正常値に近かったことに言及している。
【0027】
さらに、本発明の水解物におけるヒドロキシプロリンとヒドロキシリシンとのモル比は5.0〜8.0である。ヒドロキシプロリンとヒドロキシリシンとのモル比は、II型コラーゲンをI 型及びIII型のコラーゲンと区別する指標となる(非特許文献3)。このモル比は、II型コラーゲンの場合は約5であり、I型及びIII型のコラーゲンの場合は10よりも大きい。この場合、このモル比の平均値は、加水分解されたII型コラーゲンの存在が明らかに優勢であることを示している。米国特許第6,025,327号、第6,323,319号、第6,780,841号の水解物中にヒドロキシリシンが検出されなかったという事実は、ヒドロキシプロリンとヒドロキシリシンとのモル比が疑いの余地無くかなり高く、いずれの場合にも本発明の水解物におけるモル比よりも高く、さもなければこのアミノ酸が検出されているはずである、ということを示している。
【0028】
したがって、メカニズムは明確ではないが、II型コラーゲン及びその基本成分(ヒドロキシプロリン及びヒドロキシリシンを含む)が関節痛の処置に有用であったことを、複数の異なる研究が示している(非特許文献4〜7)。したがって、本発明の水解物の組成について上述の分析を見ると、II型コラーゲンを豊富に含む(ヒドロキシプロリンとヒドロキシリシンとのパーセント比が約5である)組成を有し、2つの基本成分、つまりヒドロキシプロリン及びヒドロキシリシンの割合が、米国特許第6,025,327号、第6,323,319号、第6,780,841号に記載の水解物と比べてかなり大きいことが明らかである。本発明の水解物がそのような組成を有することによる利点は、本発明者らが行った関節痛患者への二重盲検法により示されている(実施例2参照)。
【0029】
最後に、本発明の水解物におけるペプチド画分の平均分子量(約700ダルトン)は、米国特許第6,025,327号及び第6,323,319号に記載の水解物における対応するペプチド画分の平均分子量(1500〜2500ダルトン)並びに米国特許第6,780,841号に記載の水解物における対応するペプチド画分の平均分子量(5500〜10000ダルトン)と比べてかなり低い。米国特許第6,780,841号において、明細書には非常に広い範囲の平均分子量が記載されており(50〜10000ダルトン)、いわゆる好適な平均分子量はかなり低い(第3コラム、61〜65行)が、最適な平均分子量は5500ダルトンと指定されており、つまりこのことは、低分子量が好適であるが、分子量の値は約5500ダルトンを下回ってはならないということを示唆している。この好適な平均分子量は、本発明の水解物の平均分子量(約700ダルトン)よりもかなり高い。本発明の水解物では、このように分子量を低くすることが、特に腸壁における通過性を向上し、本発明の水解物の生体利用効率が上昇する要因と考えられる。本発明者らは、インビトロのモデルを用いて、本発明の水解物の生体利用効率が、加水分解されてない生成物の約3倍であることを示した(実施例1参照)。水解物中のタンパク質及びその他の食品生成物の分布を分子量(MW)で得る方法を用いて、本発明の水解物のペプチド画分の平均分子量を測定した。分子量(MW)による分布は、液相クロマトグラフィ分析(ゲル透過)により得た。この分析方法は、以下の基準を組み合わせて用いて較正されている:
ベータ・ラクトグロブリン(MW=18300Da)
アルファ・ラクトアルブミン(MW=14000Da)
インシュリン(MW=5730Da)
バシトラシン(MW=1450Da)
トリプトファン(MW=204Da)
分析対象の生成物は、溶離バッファ(elution buffer)中にて希釈され、フィルタ(0.45μm)通過後にカラム上に噴射される。分子量分布について特別に設計されたソフトウェア(CPG plus、TSP)を用いて、生成物の分子量分布を直接得る。
【0030】
さらに、本発明の水解物は、ニワトリの胸肋軟骨のみを用いる米国特許第6,025,327号、第6,323,319号及び第6,780,841号に記載の水解物(第5コラム、6〜7行)と比べて、非常に少量の特定原料から生成されるという非常に重要な利点を有する。それに対して、本発明の水解物は、ニワトリの骨(胸骨を含む)並びに関節軟骨(約70〜100重量%)と胸肋軟骨(約0〜30重量%)との混合物から生成可能である。このことにより、ニワトリの屠体全体を用いることができるので、製造効率が向上し、また、米国特許第6,780,841号(第4コラム、60〜66行)に記載のプロトコルにおいて必要である入念な予防策を省略し、屠体の工業的な処理が可能であり、したがって、コスト及び時間を節約することができる。
【0031】
したがって、好適な実施形態において、本発明の水解物は、骨及び関節軟骨(約70〜100重量%)と胸肋軟骨(約0〜30重量%)との混合物から生成される。本発明で用いる原材料の重量の70〜100重量%を占める骨及び関節軟骨の混合物は、筋肉組織を除去し、その後粉砕処理したニワトリの1屠体全体から得ることができる。最後に、胸肋軟骨の採取時に米国特許第6,025,327号、第6,323,319号、第6,780,841号に記載された入念な予防策を講じる必要なく、胸肋軟骨を総原材料の0〜30重量%の割合で加えて、原材料を得ることができる。胸肋軟骨に骨又は別の種類の軟骨が混入しても、大部分が骨及び関節軟骨の混合物であるので、得られる生成物に大きな影響は無い。例えば、骨及び関節軟骨の混合物を約75%、胸肋軟骨を約25%用いることができるが、これらの割合は合計が100%になるようにそれぞれ70%〜100%及び0%〜30%の範囲内で自由に調節可能であり、この場合、得られる生成物に著しい変化を来すことがない。
【0032】
原材料の話から離れるが、本発明者らは、米国特許第6,025,327号、第6,323,319号、第6,780,841号に記載の製造方法と比べて製造時間が短縮しつつ、本発明の全ての特徴的な性質(II型コラーゲン、コンドロイチン硫酸及びヒアルロン酸の割合、アミノ酸含有量、平均分子量)備えた水解物の製造方法を開発した。
【0033】
本発明はまた、以下の工程を含む本発明の鳥軟骨の水解物を調製する方法に関する:
a)骨及び関節軟骨(胸骨軟骨を含む)を70〜100重量%並びに胸肋軟骨を0〜30重量%含む原材料を供給する工程;
b)上記原材料を、pH5.5〜7.5の水溶液と混合する工程;
c)上記原材料の水溶液混合物を、1〜2時間に亘り、好適には1時間30分〜2時間に亘り、65℃〜75℃で、好適には70℃〜72℃で、タンパク分解酵素を用いて加水分解する工程;
d)10〜20分に亘り、少なくとも85℃で、上記タンパク分解酵素を不活化する工程;
e)上記加水分解により得られた水解物を含む反応混合物を濾過する工程;
f)上記反応混合物を濃縮する工程;
g)約130℃で、少なくとも約30秒間に亘って、前記反応混合物の最終殺菌処理を行う工程;
h)上記反応混合物を乾燥させて、粉末状の水解物を得る工程。
【0034】
この方法は、米国特許第6,025,327号、第6,323,319号、第6,780,841号に記載の製造方法にはない複数の利点を有する。
【0035】
まず、合計製造時間が非常に短い。米国特許第6,780,841号に記載の製造方法では、原材料を水溶液と混合し、約1時間に亘って培養する(第5コラム、55〜56行)。一方、本発明の製造方法では、原材料をpH5.5〜7.5の水溶液(具体的には水又はブライン等)と混合するが、水溶液中での培養工程を経ずに加水分解工程が行われる。好適には、加水分解は即座に行われるか又は混合後15分経たない内に行われる。
【0036】
さらに、加水分解工程自体の時間は2時間未満である。それに対して、米国特許第6,780,841号に記載のプロトコルにおける加水分解は、2〜10時間必要であり、好適には約6時間行われる(第5コラム、59〜63行)。
【0037】
この加水分解工程は、本発明の製造方法において非常に重要である。この工程は、時間を短縮するだけでなく、本発明の水解物の格別な特徴を得るのに有用である。そのような効果(時間短縮及び格別な水解物の生成)は、タンパク分解酵素を65℃〜75℃、好適には70℃〜72℃で用いることにより得られる。好適には、タンパク分解酵素は、広範なスペクトルを有するプロテアーゼであり、その例としてパパイン、フィシン、ブロメライン、アルカラーゼ等が挙げられ、好適にはパパイン又はアルカラーゼである。そのような酵素は、米国特許第6,780,841号(第5コラム、63行)に記載のように、通常、35℃〜55℃の温度範囲内で使用され、原理上、その温度範囲内で酵素の活性が最大になる。したがって、この酵素を65℃〜75℃(好適には70℃〜72℃)で用いるということは、酵素の活性を低下させることを意味し、平均分子量が低い本発明の水解物を得るためには、米国特許第6,780,841号に記載の好適な6時間よりもかなり長い加水分解時間が必要である。それに対して、本発明者らは、パパインを70℃〜72℃で用いた場合、最大2時間の加水分解時間で本発明の水解物が得られることを発見して驚いた。本発明者らは、そのような反応条件下で(原材料及びpH5.5〜7.5の水溶液)、温度の上昇により酵素の変性が加速され、反応率も上昇することを発見した。使用した温度範囲(65℃〜75℃、好適には70℃〜72℃)は、これらの使用条件下において酵素の反応率と変性速度との比のうち最も確率が高いものに対応している。このことは、1時間という短い時間内に加水分解を行うことができるということを意味している。好適には、加水分解時間は、1時間30分〜2時間であり、好適には2時間である。
【0038】
さらに、加水分解が高温・短時間で行われる(65℃〜75℃で1時間〜2時間;ちなみに米国特許第6,025,327号、第6,323,319号及び第6,780,841号では、35℃〜55℃で2時間〜10時間(理想的には6時間))ということは、製造方法における時間短縮につながり、また、生成物が優れた微生物学的品質を有することを保証する。特に、このことにより、病原性微生物の繁殖に好都合な長時間に亘る臨界温度(<55℃)での作業が回避される。
【0039】
さらに別の差違として、本発明の製造方法における殺菌工程は、生成物を乾燥させる直前に行う。それに対して、米国特許第6,025,327号、第6,323,319号及び第6,780,841号に記載の製造方法では、濾過工程及び濃縮工程の前に殺菌工程が行われる。本発明によると、水解物の衛生安全性が大幅に向上する。
【0040】
コラーゲン類、ヘキソサミン類、及びグリコサミノグリカン類(コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、ヒアルロン酸)を、ヒト及び動物向けのダイエット食品、ヒト及び家畜向けの医薬品、並びに化粧品の有効成分として用いる。したがって、本発明の水解物は、これらの異なるアプリケーションにおいて使用可能である。
【0041】
詳細には、本発明は、食品補助剤として用いる、本発明の水解物及び本発明の製造方法によって生成された水解物に関する。本発明はまた、薬剤として用いる、本発明の水解物及び本発明の製造方法によって生成された水解物に関する。
【0042】
より詳細には、本発明の水解物及び本発明の製造方法によって生成された水解物は、好適には、関節痛の治療又は予防に用いる。関節痛にはさまざまな原因がある。例えば、加齢に起因する軟骨の劣化、スポーツの集中的な練習による関節の過度な疲労、肥満による関節の過度な疲労、リウマチ様関節炎等の変成関節疾患、関節欠陥、骨関節炎、関節障害、結合組織に対する抗体に関する自己免疫疾患などが挙げられる。本発明の水解物及び本発明の製造方法によって生成された水解物は、好適には、加齢に起因する軟骨の劣化、スポーツの集中的な練習による関節の過度な疲労、又は肥満による関節の過度な疲労が原因で起こる関節痛の治療又は予防のために使用する。
【0043】
また好適には、本発明の水解物は、食品補助剤、必須アミノ酸の供給源及びII型コラーゲンの成分として使用され、且つ、関節痛患者の治療及び/又は関節痛の予防、或いは、加齢、過去又は現在の集中的な運動の習慣若しくは肥満に起因する関節痛の進行のおそれを防止するために使用される。
【0044】
前述のアプリケーションの全てにおいて、水解物は異なる形態で存在し、異なる経路で投与される。医薬アプリケーション又は食品補助剤の場合、水解物は、好適には、カプセル内に封入されるか又は錠剤の形に圧縮された粉末であり、水溶液中で容易に溶け、いずれの剤形も経口投与に適している。
【0045】
以下の実施例において、図1を参照しつつ、本発明の利点をより詳細に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
[実施例1]:本発明のニワトリ軟骨水解物の生体利用効率の研究
腸壁に見立てたCaCo2細胞の層について、インビトロでの生体利用効率を調べた。この研究の目的は、本発明のニワトリ軟骨水解物の有効成分が腸壁を実際に通過することを示すことである。
【0047】
(1.1 使用したプロトコル)
実施したテストは、消化(プロテアーゼ及び/又はアミラーゼの作用)の過程において生成物に起こる加水分解に見立てたものである。このテストにおいて、本発明のニワトリ軟骨水解物を、加水分解していない軟骨(乾燥・粉砕したニワトリの胸骨:「未処理軟骨」とも呼ぶ)と比較した。
【0048】
実施にあたり、既知の量の生成物(本発明の水解物、加水分解されていない軟骨)を腸壁に見立てたCaCo2細胞のマットに隣接するように配置する。
【0049】
その後、セルマットの反対側へと通過した生成物の量を、配置の時点から複数回にわたって評価する。生成物の通過は、ヒドロキシプロリン(軟骨の主要成分の1つであるコラーゲントレーサー成分)の分析により評価する。
【0050】
その後、各抽出物について、見かけ上の透過度計算(apparent permeability calculation)(Papp)(cm/s)を実施し、それにより、生成物の生体利用効率が互いに比較可能になる。
【0051】
(1.2 結果)
得られた結果は、以下の表2及び図1が示すように、本発明の水解物のインビトロでの生体利用効率が、加水分解されていない軟骨と比べてほぼ3倍であることを明示している。
【0052】
【表2】

【0053】
Gresら(非特許文献8)は、CaCo2株の場合、2×10−6cm/s以上のPappにより100%までのヒト生体利用効率を生じ得ると考えているので、本発明の水解物におけるPappの値は、インビボで受容可能な生体利用効率を示唆しているといえる。
【0054】
[実施例2]:関節痛患者における本発明のニワトリ軟骨水解物のインビボでの治療効果の研究
6ヶ月以上関節痛を患っている志願者のグループに対して、本発明の水解物をコントロール生成物と比較する形で、二重盲検法による調査を行った。2つの生成物(本発明の水解物及びプラシーボのコントロール生成物)を3ヶ月間服用し、関節部の不快感を低減する効果を調べた。
【0055】
(2.1 装置及び方法)
(2.1.1 試験物質)
(2.1.1.1 被試験生成物)
被試験生成物は、本明細書に記載の本発明のニワトリ軟骨水解物である。水解物は、カプセル内に封入されている。
【0056】
(2.1.1.2 コントロール生成物)
被試験生成物と同じ形態の、任意の活性物質を含まない第2の生成物(微結晶セルロース、ライススターチ、ビタミンB2、ステアリン酸マグネシウムからなる生成物)をコントロール生成物として用いた。
【0057】
(2.1.1.3 1日の投与量)
試験において服用する生成物の1日の投与量を1500mgとした。それにより、本発明の水解物については、コンドロイチン硫酸180mg及びII型コラーゲン975mgが投与された。通常推奨されているコンドロイチン硫酸の1日の投与量は1200mgである。
【0058】
(2.1.2 志願者)
(2.1.2.1 募集にあたっての原則)
志願者を募集・選択する手続きは、志願者が試験についての明確且つ正確な情報を提供されることが確保されるようにして決定された。
【0059】
(2.1.2.2 選択基準)
リウマチ専門医が以下の基準に該当する志願者を選択した:
・書面で明確なインフォームドコンセントを行った人;
・検査の必要性及びその期間について全ての情報が与えられた協力的な人;
・50歳〜75歳の人;
・少なくとも6ヶ月に亘って関節の不快感を有する人。
【0060】
(2.1.2.3 排除基準)
排除基準は以下の通りである:
・関節炎治療を受けている人;
・関節の不快感の程度に影響を及ぼし得る別の全身的な医学的治療を現在受けているか又はそのような治療が過去1ヶ月以内に終了したばかりの人;
・関節の不快感の程度に影響を及ぼし得る食品補助剤を現在用いているか又はそのような食品補助剤の使用を過去1ヶ月以内に終了したばかりの人;
・深刻な病気を患っているか又は病気が進行しつつある人;
・アルコールの消費量又はタバコの喫煙量が多い人。
【0061】
(2.1.2.4 関連する治療)
試験期間中、非ステロイド抗炎症治療薬及び抗炎症剤(antalgics)を許可し、それらの正確な使用頻度を観察簿に記録した。
【0062】
局所用の皮膚治療薬を短期間許可し、その使用頻度を観察簿に記録した。
【0063】
局所的な浸潤物は許可しなかった。
【0064】
(2.1.3 評価基準)
(2.1.3.1 非ステロイド抗炎症薬の使用頻度)
志願者は、非ステロイド抗炎症薬及び抗炎症剤を自由に使用することを許可されたので、痛みを許容可能なレベルに常時維持するように、それら薬剤の使用頻度を自分で調節した。
【0065】
したがって、抗炎症薬の使用頻度の減少は、治療すべき痛みが減少したことを示している。その他の治療を許可しなかったので、抗炎症薬の使用頻度の減少は、軟骨について試験している生成物の効果に帰するものであり、その生成物が炎症及び関節痛を低減したと考えることができる。
【0066】
このように、本発明のニワトリ軟骨水解物の効果は、この種の治療薬の使用頻度を監視することにより評価した。
【0067】
(2.1.3.2 全体的な健康状態及び通常の日常的な活動)
志願者は、各試験期間の終了時に、アナログの視覚的なスケール(その後0〜10のスケールに変換)に基づき、全体的な健康状態及び通常の日常的な活動の容易さについて説明する。
【0068】
(2.1.4 実験計画)
上記試験を合計9ヶ月に亘って行った。具体的には、それぞれ3ヶ月に亘る試験を2回行い、それら試験期間の間に3ヶ月の休止期間を設けた。
【0069】
上記調査は、クロスオーバーする方法で行った。つまり、第1グループの志願者に対して、第1の試験期間にコントロール生成物を投与し、第2の試験期間に本発明のニワトリ軟骨水解物を投与した。それに対して、第2グループの志願者には、第1の試験期間に本発明のニワトリ軟骨水解物を投与し、第2の試験期間にコントロール生成物を投与した。調査は二重盲検法により行った。つまり、実験者及び志願者の双方共に、投与する生成物がいずれの生成物なのかが分からない形で調査した。
【0070】
(2.2 結果)
(2.2.1 サンプルの説明)
医学的検査(遺伝子の特定及び複数の点における強度測定)を行った後、37人の被験者を調査対象として選択した。
【0071】
5人の志願者を調査対象から外した(プロトコルを開始しなかったか又は禁止薬物を摂取した)。
【0072】
32人の志願者がプロトコル全体に正確に従った。32人の志願者のうち、25名が女性で、7名が男性であり、平均年齢は60±6歳であった。
【0073】
(2.2.2 非ステロイド治療薬の使用頻度)
観察簿を分析したところ、非ステロイド抗炎症生成物の使用頻度は、本発明のニワトリ軟骨水解物の摂取期間(平均使用頻度=4.9日(±8.3))と比べて、コントロール生成物摂取期間(平均使用頻度=18.1日(±21.7))において著しく高かった。
【0074】
各試験生成物について、志願者1人あたりの治療日数の分布を、ノンパラメトリックなウィルコクソン順位検定を用いて判定した。得られた重要な閾値は、p=0.006<<0.05(結果的に差違が生じる可能性があるが実際には差違が生じない最大許容限界に従来用いた値は5%)である。
【0075】
したがって、そのような統計的分析によると、本発明のニワトリ軟骨水解物の摂取期間における志願者1人あたりのNSAIDの使用頻度は、コントロール生成物の摂取期間における使用頻度と比べて非常に少ないことがわかった。
【0076】
(2.2.3 全体的な健康状態及び通常の日常的な活動)
平均的に見て、志願者は、本発明のニワトリ軟骨水解物を使用した後に、通常の日常的な活動及び全体的な健康状態が比較的良くなったと考えた。
【0077】
志願者の21%が、本発明のニワトリ軟骨水解物の摂取後に全体的な健康状態が著しく改善したことを示した。それに対して、コントロール生成物を摂取した志願者のうち、同様の改善を示したのは9%に過ぎなかった。
【0078】
(2.2.4 本発明の軟骨水解物のアクセプタビリティ及び耐性)
志願者は、生成物が非常に実用的であると気付き(平均点は5点中4.3点(±0.8))、生成物の剤形(カプセル)が「食品補助剤」タイプの用途に適していると感じた(平均点は5点中3.8点(±1.0))。
【0079】
本発明のニワトリ軟骨水解物の摂取期間において、軽度の副作用を訴えた志願者は7人のみであった。
【0080】
(2.3 まとめ)
この調査の目的は、関節の不快感を訴えている人に対する、本発明のニワトリ軟骨水解物の効果を評価することであった。
【0081】
32人の志願者のグループに対して、在宅での試験を9ヶ月に亘って実施した。調査は、二重盲検法を用いて、コントロール生成物と比較して行った。9ヶ月のうち、それぞれ3ヶ月に亘る試験を2回行い、それら試験期間の間に3ヶ月の休止期間を設けた。本発明のニワトリ軟骨水解物の1日の投与量は1500mgとした。志願者は、各試験期間の開始時及び終了時にリウマチ専門医との面談を行うことが義務づけられた。
【0082】
本発明のニワトリ軟骨水解物の効力は、非ステロイド抗炎症治療薬の使用頻度を監視することにより評価した。各試験期間の終了時に、問診により、アクセプタビリティ及び耐性を判定した。
【0083】
試験期間中、非ステロイド抗炎症生成物の使用頻度を確認したところ、本発明のニワトリ軟骨水解物の摂取期間における使用頻度は、コントロール生成物の摂取期間と比べてかなり少なかった。つまりこのことは、本発明のニワトリ軟骨水解物が軟骨に対して作用し、炎症及び関節痛を低減したことを示している。
【0084】
さらに、本発明のニワトリ軟骨水解物により与えられるコンドロイチン硫酸の1日の投与量が少ない(通常の推奨摂取量が1200mgであるのに対して180mg)ことを考慮すると、得られた試験結果は、本明細書中に記載した特徴(平均分子量及びアミノ酸の組成)を有する加水分解されたII型コラーゲンとコンドロイチン硫酸との相乗効果を示唆している。
【0085】
志願者は、各試験期間の終了時に、アナログの視覚的なスケールを用いて、通常の日常的な活動及び全体的な健康状態を評価した。それによると、これら両方の項目について、コントロール生成物の摂取時よりも本発明のニワトリ軟骨水解物の摂取時のほうが評価が高かった。
【0086】
志願者は、本発明のニワトリ軟骨水解物が実用的であると判断した(5点中4.3点)。また、重度の副作用を感じなかった。
【0087】
上記の通り、本発明のニワトリ軟骨水解物は、非ステロイド抗炎症生成物によって起こるような深刻な副作用を生じることなく、慢性的な関節痛の患者の関節の不快感を低減し、関節の可動性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明の水解物の生体利用効率を、加水分解していない軟骨(乾燥・粉砕したニワトリの胸骨:「未処理軟骨」とも呼ぶ)と比較して示す図である。本発明の水解物及び加水分解されていない軟骨について、セルマットの生成物が配置される隔室とは反対側の隔室内に検出されたヒドロキシプロリンの量(μg)を時間(hours)の関数として示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥軟骨の水解物であって、
a)前記水解物は、
45〜70重量%の加水分解されたII型コラーゲンと、
9〜15重量%のコンドロイチン硫酸と、
0.5〜2重量%のヒアルロン酸とを含み、
b)前記水解物は、
全アミノ酸のうち、
2.7%〜3.3%のバリンと、
2.0〜2.4%のイソロイシンと、
2.2〜2.6%のフェニルアラニンと、
3.8〜4.2%のリシンと、
0.4〜0.6%のトリプトファンと、
5.5〜8.7%のヒドロキシプロリンと、
0.7〜1.8%のヒドロキシリシンとを含んでおり、
ヒドロキシプロリンとヒドロキシリシンとのモル比が5.0〜8.0であり、
c)そのペプチド画分の平均分子量が500〜1000ダルトンである
ことを特徴とする水解物。
【請求項2】
請求項1に記載の水解物において、
前記水解物は、骨及び関節軟骨(70〜100重量%)並びに胸肋軟骨(0〜30重量%)の混合物から調製される
ことを特徴とする水解物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鳥軟骨水解物の調製方法であって、
a)70〜100重量%の骨及び関節軟骨(胸骨を含む)と、0〜30重量%の胸肋軟骨とを含む原材料を供給する工程と、
b)前記原材料をpH5.5〜7.5の水溶液と混合する工程と、
c)前記原材料の混合物を、タンパク分解酵素を含む水中にて、1〜2時間に亘り、好適には1.5〜2時間に亘り、65℃〜75℃で加水分解する工程と、
d)前記タンパク分解酵素を、10〜20分間、少なくとも85℃で不活化する工程と、
e)前記水解物を含む反応混合物を濾過する工程と、
f)前記反応混合物を濃縮する工程と、
g)前記反応混合物を約130℃で少なくとも30秒間殺菌する最終殺菌工程と、
h)前記反応混合物を乾燥して、粉末状の水解物を得る工程と
を含むことを特徴とする調製方法。
【請求項4】
請求項1若しくは2に記載の水解物又は請求項3に記載の調製方法により調製された水解物であって、
前記水解物は食品補助剤として使用される
ことを特徴とする水解物。
【請求項5】
請求項1若しくは2に記載の水解物又は請求項3に記載の調製方法により調製された水解物であって、
前記水解物は薬剤として使用される
ことを特徴とする水解物。
【請求項6】
請求項1若しくは2に記載の水解物又は請求項3に記載の調製方法により調製された水解物であって、
前記水解物は、関節痛の治療又は予防に用いる薬剤として使用される
ことを特徴とする水解物。
【請求項7】
請求項6に記載の水解物において、
関節痛の原因は、加齢、スポーツの集中的な練習による関節の過度な疲労、
又は肥満による関節の過度な疲労である
ことを特徴とする水解物。

【図1】
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【公表番号】特表2009−536923(P2009−536923A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505896(P2009−505896)
【出願日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際出願番号】PCT/EP2007/053850
【国際公開番号】WO2007/122179
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(508315279)
【Fターム(参考)】