説明

鶏唐揚げの製造方法

【課題】冷凍した状態でも硬くならず、温めなくてもそのまま食べることができる鶏唐揚げを製造できる鶏唐揚げの製造方法を提供する。
【解決手段】手羽中1に、乾燥した第1の衣材料2をまぶして、第1の衣材料2を手羽中1に付着させる。次に、第1の衣材料2と、サラダ油と、水とを混ぜ合わせて得られた液状の第2の衣材料3と、第1の衣材料2が付着した手羽中1を混ぜて、第1の衣材料2が付着した手羽中1に、液状の第2の衣材料3を付着させる。そして、第1の衣材料2と第2の衣材料3が付着した手羽中1を、180℃の大豆油で揚げる。さらに、得られた手羽中の唐揚げ4に、液状の味付け材料5と、ごま油6と、白ゴマ7とを混ぜて、味付け材料を付着させる。混ぜ終わって味付け材料付着が終了した後、1分以内に、味付けされた手羽中の唐揚げ4を、冷凍庫内に入れて、−27℃で冷凍する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鶏唐揚げの製造方法に関する。詳しくは、冷凍した鶏唐揚げの製造方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
唐揚げは、揚げ油を使用した調理方法、若しくはその方法で調理された料理であり、食材例えば鶏肉に下味を付け、小麦粉や片栗粉などを薄くまぶして、油で揚げたものである。
また、長期保存を可能にするために、鶏唐揚げを冷凍することが行なわれている。
【0003】
鶏唐揚げの製造方法としては、様々な方法が提案されており、例えば特許文献1には、図2に示すような手順の冷凍鶏唐揚げの製造方法が記載されている。特許文献1に記載された冷凍鶏唐揚げの製造方法は、以下のとおりである。
【0004】
鶏肉Aをタンブリング処理するための下処理液Bを作る。
即ち、下処理液(マリネ液)Bの原料である下処理液原料(マリネ原料)Cは、醤油、水、サラダ油などが配合されたものであり、混合工程111で下処理液原料Cに対してアスコルビン酸Dを添加混合し、加熱減圧工程112で35〜60℃、0.5〜120分加熱すると共に、70kPa以下に減圧することによって、タンブリング処理用の下処理液Bを作る。
【0005】
次に、鶏肉Aは、タンブリング工程113で下処理液Bを使用してタンブリング処理された後、衣付け工程114で、小麦粉、香辛料、調味料等を混合した衣材料Eがまぶされる。
そして、フライ工程115で油ちょうされて鶏唐揚げとなり、冷凍工程116で急速冷凍されることによって冷凍鶏唐揚げとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−95323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、通常、鶏唐揚げは、ご飯のおかずとして温かい状態で食されるものであり、特許文献1に記載の方法で製造された鶏唐揚げも、冷凍した状態では硬いため、食べるときには温めて軟らかくしなければならなかった。
【0008】
しかしながら、本発明者は、鶏唐揚げの新しい食べ方として、冷たい状態でも食べることができる鶏唐揚げを提供したいと考えていた。
【0009】
本発明は、以上の点に鑑みて創案されたものであり、冷凍した状態でも硬くならず、温めなくてもそのまま食べることができる鶏唐揚げを製造できる鶏唐揚げの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明の鶏唐揚げの製造方法は、調味料未添加の鶏肉に、乾燥した第1の衣材料を付着させる第1の衣材料付着工程と、該第1の衣材料が付着した前記鶏肉に、液状の第2の衣材料を付着させる第2の衣材料付着工程と、前記第1の衣材料及び該第2の衣材料が付着した前記鶏肉を、揚げ油で揚げるフライ工程と、該フライ工程で得られた鶏唐揚げに、液状の味付け材料を付着させる味付け材料付着工程と、前記味付け材料が付着した前記鶏唐揚げを冷凍する冷凍工程とを備える。
【0011】
ここで、「鶏肉」には、鶏皮肉も含まれる。
調味料未添加の鶏肉を用いているので、揚げても鶏肉が黒くなりにくい(焦げにくい)。
また、乾燥した第1の衣材料を付着させるので、第1の衣材料が鶏肉の表面に膜を形成し、揚げても鶏肉が黒くなりにくい。
また、液状の第2の衣材料を付着させるので、鶏肉に適度の粘りと硬さを与えることができる。
【0012】
また、フライ工程で得られた鶏唐揚げに、液状の味付け材料を付着させ、味付け材料が付着した鶏唐揚げを冷凍するので、味付け材料中の液体成分が、揚げ油によって飛ばされることなく鶏唐揚げに浸透し、その状態で冷凍することができる。
【0013】
また、本発明の鶏唐揚げの製造方法において、第1の衣材料は、小麦粉と、デンプンのみからなり、第2の衣材料は、第1の衣材料と、水と、食用油のみからなるものとすることができる。
【0014】
この場合、衣材料にも調味料を加えていないので、より一層、鶏肉を焦がしにくくできる。
また、第2の衣材料に食用油が含まれているので、鶏唐揚げの表面のカリカリ感を長期間維持できる。
【0015】
また、本発明の鶏唐揚げの製造方法において、フライ工程において、鶏肉を、170〜185℃の揚げ油で15〜30分間揚げるものとすることができる。
【0016】
この場合、170〜185℃の揚げ油で15〜30分間揚げるので、充分に鶏肉の水分を油で飛ばし、カリカリに仕上げることができる。
【0017】
また、本発明の鶏唐揚げの製造方法において、第2の衣材料付着工程において、第1の衣材料が付着した鶏肉と第2の衣材料を、1分30秒〜2分間混ぜる場合、鶏肉に最適の粘りと硬さを与えることができる。
【0018】
また、本発明の鶏唐揚げの製造方法において、味付け材料付着工程において、フライ工程で得られた鶏唐揚げに、ごま油を加える場合、鶏唐揚げに風味を与えることができる。
【0019】
また、本発明の鶏唐揚げの製造方法において、味付け材料付着工程の終了後、30分以内に冷凍工程を行なう場合、鶏唐揚げから水分が出ないうちに冷凍することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る鶏唐揚げの製造方法は、冷凍した状態でも硬くならず、温めなくてもそのまま食べることができる鶏唐揚げを製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る鶏唐揚げの製造方法の製造工程の一例を説明する概略フロー図である。
【図2】従来の鶏唐揚げの製造方法の製造工程を説明する概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の鶏唐揚げの製造方法は、醤油、みりん等の調味料で味付けされていない鶏肉を使用する。
【0023】
次に、このような調味料未添加の鶏肉に、乾燥した第1の衣材料をまぶして付着させる(第1の衣材料付着工程)。
このとき、第1の衣材料を15〜25秒間、好ましくは15〜20秒間まぶして付着させることができる。
【0024】
そして、第1の衣材料が付着した鶏肉と、液状の第2の衣材料を混ぜて、第1の衣材料が付着した鶏肉に、液状の第2の衣材料を付着させる(第2の衣材料付着工程)。
このとき、1分30秒〜2分間混ぜて、第1の衣材料が付着した鶏肉に、液状の第2の衣材料を付着させることができる。
【0025】
さらに、第1の衣材料と第2の衣材料が付着した鶏肉を、揚げ油(例えば、大豆油、菜種油、パーム(やし)油)で揚げる(フライ工程)。
このとき、第1の衣材料と第2の衣材料が付着した鶏肉を、170〜185℃の揚げ油で15〜30分間揚げることができる。
【0026】
次に、フライ工程で得られた鶏唐揚げに、液状の味付け材料を付着させる(味付け材料付着工程)。
このとき、鶏唐揚げに、ごま油を加えることが好ましい。
【0027】
そして、味付け材料が付着した鶏唐揚げを冷凍する(冷凍工程)。
このとき、味付け材料付着工程の終了後、30分以内に冷凍工程を行なうことが好ましい。
また、冷凍工程は、−15℃以下、好ましくは−15〜−27℃で30分以上行なうことができる。
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明し、本発明の理解に供する。
図1は、本発明に係る鶏唐揚げの製造方法の製造工程の一例を説明する概略フロー図である。
【0029】
(手羽中の唐揚げ)
スチーム加熱された16kgの手羽中(鶏肉の一例である。)1に、300gの乾燥した第1の衣材料2を20秒間まぶして、第1の衣材料2を手羽中1に付着させる(ステップS1)。
【0030】
ここで、第1の衣材料2は、小麦粉とデンプンのみからなり、小麦粉:デンプンの割合が1:1である。
【0031】
次に、1000gの第1の衣材料2と、100gのサラダ油(食用油の一例である。)と、1300ccの水とを混ぜ合わせて得られた液状の第2の衣材料3と、第1の衣材料2が付着した手羽中1を1分50秒間混ぜて、第1の衣材料2が付着した手羽中1に、液状の第2の衣材料3を付着させる(ステップS2)。
【0032】
そして、第1の衣材料2と第2の衣材料3が付着した16kgの手羽中1を、180℃の大豆油で満たされた自動フライヤーに投入し、22分間で揚げる(ステップS3)。
【0033】
さらに、得られた4kgの手羽中の唐揚げ4に、1050gの液状の味付け材料5と、50gのごま油6と、50gの白ゴマ7とを混ぜて、味付け材料を付着させる(ステップS4)。
【0034】
ここで、味付け材料5は、醤油、みりん、酒、酢、グルタミン酸、アミノ酸、香辛料、グラニュー糖、グリスター、加工デンプン、水などを含む。
【0035】
混ぜ終わって味付け材料付着が終了した後、1分以内に、味付けされた手羽中の唐揚げ4を、冷凍庫内に入れて、−27℃で30分以上冷凍する(ステップS5)。
【0036】
(鶏の首皮肉の唐揚げ)
図1で示した手羽中の唐揚げと同様に、本発明の方法によって、鶏の首皮肉の唐揚げも製造できる。
即ち、ボイルされた12kgの鶏の首皮肉(鶏肉の一例である。)に、300gの乾燥した第1の衣材料を20秒間まぶして、第1の衣材料を鶏の首皮肉に付着させる。
【0037】
ここで、第1の衣材料は、小麦粉とデンプンのみからなり、小麦粉:デンプンの割合が1:1である。
【0038】
次に、1200gの第1の衣材料と、1300ccの水とを混ぜ合わせて得られた液状の第2の衣材料と、第1の衣材料が付着した鶏の首皮肉を1分50秒間混ぜて、第1の衣材料が付着した鶏の首皮肉に、液状の第2の衣材料を付着させる。
【0039】
そして、第1の衣材料と第2の衣材料が付着した12kgの鶏の首皮肉を、180℃の菜種油で満たされた自動フライヤーに投入し、16分間で揚げる。
【0040】
さらに、得られた2500gの鶏の首皮肉の唐揚げに、1150gの液状の味付け材料と、50gのごま油と、50gの白ゴマとを混ぜて、味付け材料を付着させる。
【0041】
ここで、味付け材料は、醤油、みりん、酒、酢、グルタミン酸、アミノ酸、香辛料、グラニュー糖、グリスター、加工デンプン、水などを含む。
【0042】
混ぜ終わって味付け材料付着が終了した後、1分以内に、味付けされた鶏の首皮肉の唐揚げを、冷凍庫内に入れて、−27℃で30分以上冷凍する。
【0043】
以上のように、本発明の鶏唐揚げの製造方法は、フライ工程で得られた鶏唐揚げに、液状の味付け材料を付着させ、味付け材料が付着した鶏唐揚げを冷凍するので、味付け材料中の液体成分が、揚げ油によって飛ばされることなく鶏唐揚げに浸透し、その状態で冷凍することができる。
【0044】
よって、冷凍した状態でも硬くならず、温めなくてもそのまま食べることができる鶏唐揚げを製造できる。
その結果、本発明の方法で製造された鶏唐揚げは、冷凍庫で1ヶ月保存でき、食べたい時にすぐ食べることができる便利で美味しい鶏唐揚げである。
【0045】
また、調味料未添加の鶏肉を用いたり、調味料を加えていない乾燥した第1の衣材料を鶏肉に付着させたりしているので、揚げても鶏肉が焦げにくい。
【0046】
また、手羽中の唐揚げを作るときは、第2の衣材料に食用油(サラダ油)が含まれているので、冷凍しても、鶏唐揚げ(手羽中の唐揚げ)の表面のカリカリ感を長期間(1ヶ月ほど)維持できる。
【符号の説明】
【0047】
1 手羽中
2 第1の衣材料
3 第2の衣材料
4 手羽中の唐揚げ
5 味付け材料
6 ごま油
7 白ゴマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調味料未添加の鶏肉に、乾燥した第1の衣材料を付着させる第1の衣材料付着工程と、
該第1の衣材料が付着した前記鶏肉に、液状の第2の衣材料を付着させる第2の衣材料付着工程と、
前記第1の衣材料及び該第2の衣材料が付着した前記鶏肉を、揚げ油で揚げるフライ工程と、
該フライ工程で得られた鶏唐揚げに、液状の味付け材料を付着させる味付け材料付着工程と、
前記味付け材料が付着した前記鶏唐揚げを冷凍する冷凍工程とを備える
鶏唐揚げの製造方法。
【請求項2】
前記第1の衣材料は、小麦粉と、デンプンのみからなり、
前記第2の衣材料は、前記第1の衣材料と、水と、食用油のみからなる
請求項1に記載の鶏唐揚げの製造方法。
【請求項3】
前記フライ工程において、前記鶏肉を、170〜185℃の揚げ油で15〜30分間揚げる
請求項1または請求項2に記載の鶏唐揚げの製造方法。
【請求項4】
前記第2の衣材料付着工程において、前記第1の衣材料が付着した前記鶏肉と前記第2の衣材料を、1分30秒〜2分間混ぜる
請求項1〜3のいずれか1つに記載の鶏唐揚げの製造方法。
【請求項5】
前記味付け材料付着工程において、前記フライ工程で得られた前記鶏唐揚げに、ごま油を加える
請求項1〜4のいずれか1つに記載の鶏唐揚げの製造方法。
【請求項6】
前記味付け材料付着工程の終了後、30分以内に前記冷凍工程を行なう
請求項1〜5のいずれか1つに記載の鶏唐揚げの製造方法。

【図1】
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【図2】
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