説明

鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の製造方法

【課題】
鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂を、ホットエアー取入口及び水切りメッシュを具備する乾燥機で乾燥する際に、熱風取り入れメッシュや水切りメッシュのメッシュ部の洗浄方法を改良して、この洗浄による乾燥の中断時間を短縮して生産能力を増強すると共に、乾燥後の水分含有量を低減して、品質の向上を図る。
【解決手段】
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂のペレットをメタノール中において苛性ソーダと反応させた後、中和、洗浄、乾燥する鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の製造方法であって、鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂を、熱風取り入れ口及び水切りメッシュを具備する乾燥機で乾燥する際に、熱風取り入れ口に具備されたメッシュ及び水切りメッシュのメッシュ部を高圧洗浄機により洗浄し、洗浄終点を乾燥機下部から排出される洗浄液中に不純物がないことを目視確認する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の製造方法及び乾燥後の水分含有量を0.25wt%以下にして鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の品質改善法に関する。
【背景技術】
【0002】
鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂は、耐候性が高く、気密性に優れている為、フェンスやポールの粉体塗装や、衣料用接着芯地、合わせ硝子中間層、無菌米飯トレーや冷凍食品包材の様なガスバリアー性容器などの広範な用途に使用されている。
【0003】
鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(以降、鹸化EVAと略記する)の製造方法は、エチレン酢酸ビニル共重合樹脂(以降、EVAと略記する)のペレットをメタノール中で苛性ソーダと反応させて鹸化EVAを製造し、その後、中和・洗浄し、乾燥する工程を経て、鹸化EVAの最終製品が製造される。
【0004】
その最後の乾燥については、図1に示される様な、乾燥機を使用する。
【0005】
空気取り入れ口(1)から、ブロワー(2)により、加熱機(3)を通して、熱風を各バルブ(4)を通して、熱風吹き出し口(5)から熱風取り入れメッシュ(6)を通して、乾燥機(7)に熱風を供給する。
【0006】
熱風は鹸化EVAを乾燥してから、水切りメッシュ(8)を通して系外に排出される。
【0007】
しかしながら、熱風取り入れメッシュ(6)及び水切りメッシュ(8)に、EVAのペレットの削れ粉(以降、ファインと称する)が熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)のメッシュ部を閉塞させ、熱風の流路が乾燥機内で偏り、鹸化EVAの乾燥が均一とならず、乾燥ムラや鹸化EVAの水分量が増加し、その度に、熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)のメッシュ部の目詰まりを解消する為の洗浄や乾燥機全体の洗浄を実施しなければならず、乾燥時間が長時間となり、生産効率が低下すると言う問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明の目的は、鹸化EVAを乾燥機で乾燥する際に、熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)のメッシュ部洗浄方法において、種々の改良点を実施して、この乾燥時間を短縮すると同時に鹸化EVA中の水分量を低下させて、鹸化EVAの品質向上を図る事である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、EVAのペレットをメタノール中において苛性ソーダと70〜90℃で反応させた後、塩酸メタノール液を使用して40〜50℃で中和洗浄してから40℃で水洗浄し、乾燥する鹸化EVAの製造方法であって、鹸化EVAを、熱風取り入れ口及び水切りメッシュを具備する乾燥機で乾燥する際に、熱風取り入れ口に具備されたメッシュ及び水切りメッシュのメッシュ部を高圧洗浄機により洗浄し、洗浄終点を乾燥機下部から排出される洗浄液中に鹸化EVAの不純物がないことを目視確認することを特徴とするものである。
【0010】
尚、高圧洗浄機の水圧としては、例えば、5MPa以上の水圧を採用すれば効率よく洗浄することが可能となる。
【0011】
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂のペレットをメタノール中で苛性ソーダとの反応、中和、洗浄は、従来公知の方法を用いることができる。
【0012】
鹸化EVAを乾燥機で乾燥する際に、熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)のメッシュ部の洗浄方法において、以下の(I)〜(III)を実施して、鹸化EVAの乾燥間を減少するだけでなく、鹸化EVA中の水分量を低減して鹸化EVAの品質の向上が可能となる。乾燥後の鹸化EVA中の水分量は、用途により異なるが総じて1.0wt%以下であることが必要である。
【0013】
鹸化EVAの乾燥時間は、乾燥温度が高くなるほど短くなるが、乾燥温度を高くした場合、ペレット間の溶着トラブルが発生するため、乾燥初期温度を低く保ち2段階で、乾燥処理が行われる。例えば、1段目の乾燥は80℃前後で5〜7時間行われ、2段目の乾燥は1段目より5〜10℃高い温度で5〜7時間行われる。
【0014】
メッシュの目の細かさは、ペレットが通らない大きさであれば特に限定されないが、例えば10メッシュ程度の大きさであれば十分である。
(I)熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)のメッシュ部の洗浄を従来のホース散水による洗浄から高圧洗浄機による洗浄へ変更する。
(II)熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)のメッシュ部を鹸化EVAの水分値がメッシュ部の洗浄直後から0.04〜0.06wt%増加した時点で洗浄する。
(III)洗浄終点の決定方法を熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)のメッシュ部の目視によるファイン等が存在しないことの確認に加え、乾燥機下部から排出される洗浄液中にファイン等の不純物がないことを目視確認する。
【0015】
以下に、各々の改良点について詳細に説明する。
【0016】
(I)のメッシュ部の洗浄方法の変更については、従来のホース散水による洗浄では、水圧が低く、メッシュ部に堆積しているファインを始めとする種々不純物を十分に除去できず、メッシュ部の一部を閉塞する状態が洗浄後も残り、そのメッシュの閉塞部を通して熱風が流れず、その熱風が流れない鹸化EVAの部分では、乾燥が十分に達成されず、乾燥を一時停止して、乾燥機中の鹸化EVAを取り出してから、熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)を初め、乾燥機全体を洗浄しなければならない。
【0017】
そこで、本願発明では、水圧が高い高圧洗浄機に変更して、メッシュ部に堆積している種々の不純物を十分に除去して、メッシュ部の閉塞部分を完全に除去することによりし、乾燥機内の乾燥むらがなくなり、乾燥時間が短縮されるだけでなく、鹸化EVA中の水分量を低減して鹸化EVAの品質向上が可能となる。
【0018】
(II)の乾燥の運転中止による乾燥機全体の洗浄を鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の水分値がメッシュ部の洗浄直後から0.04〜0.06wt%増加した時点で洗浄することにより、メッシュ部に堆積している種々の不純物を十分に除去して、メッシュ部の閉塞部分を完全に除去することによりし、洗浄機内の乾燥むらがなくなり、乾燥時間が短縮されるだけでなく、鹸化EVA中の水分量を低減して鹸化EVAの品質向上が可能となる。
【0019】
この0.04〜0.06wt%増加した時点は、現行プラントでは7日毎の洗浄に相当し、洗浄頻度は7日毎となる。
【0020】
(III)の洗浄終点の決定方法を熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)のメッシュ部の目視によるファイン等の不純物が存在しないことの確認に加え、乾燥機下部から排出される洗浄液中にファイン等の不純物が存在しないことの確認を追加することにより、更に、洗浄機内の乾燥むらがなくなり、乾燥時間が短縮されるだけでなく、鹸化EVA中の水分量を低減して鹸化EVAの品質向上が可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本願発明の鹸化EVAの乾燥方法により、乾燥時間が短縮されるだけでなく、鹸化EVA中の水分量を低減して鹸化EVAの品質向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本願発明の鹸化EVAの乾燥方法プロセスフローを示す図である。
【実施例】
【0023】
以下の実施例により、本願発明をより具体的に説明するが、本願発明は、これらの実施例により、何等限定されるものではない。
【0024】
実施例1
EVAのペレットをメタノール中で苛性ソーダと反応し、中和・洗浄を実施して、乾燥前の鹸化EVA(鹸化度95%)を得た。
【0025】
その後、以下の乾燥を実施した。
【0026】
図1の(7)の乾燥機に、1200kgの鹸化EVAを供給して、図1の(1)の空気取り入れ口から、ブロワー(2)により、加熱機(3)を通して、80℃の熱風を各バルブ(4)を通して、熱風吹き出し口(5)から熱風取り入れメッシュ(6)を通して、乾燥機(7)に59m/minの風量で供給して、6時間、第一回目の乾燥を実施し、その後で、熱風の温度を88℃に上げて、5時間、第二回目の乾燥を実施した。その乾燥後の鹸化EVA中の水分量は0.10wt%であった。
【0027】
その後の乾燥のバッチ数の増加により水分量が増加し、7日後の乾燥後における鹸化EVA中の水分量は0.15wt%まで増加した。
【0028】
この7日目の乾燥後に、乾燥機の熱風取り入れメッシュ(6)(10メッシュ)や水切りメッシュ(8)(10メッシュ)に堆積している不純物を、水圧が8MPaと高い高圧洗浄機(ケルヒャージャパン社製、HD4/8C型)を使用して、十分に除去して、乾燥機下部から洗浄液中に不純物が含まれないことを目視で確認できるまで洗浄を実施した。
【0029】
その洗浄後に、鹸化EVAを同様に乾燥機で乾燥すると、乾燥後における鹸化EVA中の水分量が0.10wt%に戻った。
【0030】
その7日毎の洗浄を更に3回実施したところ、その都度、鹸化EVA中の水分量が0.10wt%に戻り、全バッチにおいて、鹸化EVA中の水分量は0.15wt%以下に維持された。
【0031】
また、全バッチでの乾燥も、80℃の熱風を供給して、6時間、第一回目の乾燥を実施し、その後で、熱風の温度を88℃に上げて、5時間、第二回目の乾燥を実施した。
【0032】
比較例1
鹸化EVAとして実施例1と同じ鹸化EVAを使用し、従来の乾燥法、ホース散水で、洗浄の頻度を15日毎とし、洗浄終点の決定方法を乾燥機内部の確認のみとした従来の乾燥方法を実施した。
【0033】
図1の(7)の乾燥機に、1200kgの鹸化EVAを供給して、図1の(1)の空気取り入れ口から、ブロワー(2)により、加熱機(3)を通して、80℃の熱風を各バルブ(4)を通して、熱風吹き出し口(5)から熱風取り入れメッシュ(6)を通して、乾燥機(7)に供給して、6時間、第一回目の乾燥を実施し、その後で、熱風の温度を88℃に上げて、9時間、第二回目の乾燥を実施した。その乾燥後の鹸化EVA中の水分量は0.10wt%であった。
【0034】
その後の乾燥のバッチ数の増加により水分量が増加し、15日目の乾燥後における鹸化EVA中の水分量は0.28wt%まで増加した。
【0035】
この15日目の乾燥後に、乾燥機の熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)に堆積している不純物を、ホース散水のみで洗浄し、乾燥機の熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)にファインを始めとする種々不純物が目視上、堆積していないことを確認するのみで洗浄を終了した。
【0036】
その結果、乾燥後の鹸化EVA中の水分量を規格内(0.3wt%以下)に収める為には、80℃の温風による第一回目の乾燥を6時間実施してから、その後で、熱風の温度を88℃に上げて、9時間という長い時間、第二回目の乾燥を実施しなければならなかった。
【0037】
その洗浄後に、鹸化EVAを同様に乾燥機で乾燥すると、乾燥後における鹸化EVA中の水分量が0.09wt%に戻ったが、15日目の乾燥後には、0.28wt%まで増加してしまい、また、全バッチでの乾燥も、80℃の熱風第一回目の乾燥を6時間実施してから、その後で、熱風の温度を88℃に上げて、9時間という長い時間の乾燥を実施しなければ、乾燥後の鹸化EVA中の水分量を規格内(0.3wt%以下)に収める事が出来なかった。
【0038】
実施例2
実施例1と同じ手法にて得られた乾燥前の鹸化EVA(鹸化度30%)を使用して以下の方法で乾燥した。
【0039】
図1の(7)の乾燥機に、1200kgの鹸化EVAを供給して、図1の(1)の空気取り入れ口から、ブロワー(2)により、加熱機(3)を通して、55℃の熱風を各バルブ(4)を通して、熱風吹き出し口(5)から熱風取り入れメッシュ(6)を通して、乾燥機(7)に供給して、5時間、第一回目の乾燥を実施し、その後で、熱風の温度を60℃に上げて、7時間、第二回目の乾燥を実施した。その乾燥後の鹸化EVA中の水分量は0.06wt%であった。
【0040】
その後の乾燥のバッチ数の増加により水分量が増加し、7日目の乾燥後における鹸化EVA中の水分量は0.10wt%まで増加した。
【0041】
この7日目の乾燥後に、乾燥機の熱風取り入れメッシュ(6)(10メッシュ)や水切りメッシュ(8)(10メッシュ)に堆積しているファインを始めとする種々不純物を、水圧が8MPaと高い高圧洗浄機(ケルヒャージャパン社製、HD4/8C型)を使用して、十分に除去して、乾燥機下部から洗浄液中に不純物が含まれないまで洗浄を実施した。
【0042】
その洗浄後に、鹸化EVAを同様に乾燥機で乾燥すると、乾燥後における鹸化EVA中の水分量が0.06wt%に戻った。
【0043】
その7日毎の洗浄を更に3回実施したところ、その都度、鹸化EVA中の水分量が0.06wt%に戻り、全バッチにおいて、鹸化EVA中の水分量は0.10wt%以下に維持されました。
【0044】
また、全バッチでの乾燥も、55℃の熱風を送付して、5時間、第一回目の乾燥を実施し、その後で、熱風の温度を60℃に上げて、7時間、第二回目の乾燥を実施した。
【0045】
比較例2
鹸化EVAとして実施例2と同じ鹸化EVAを使用し、従来の乾燥法、ホース散水で、洗浄の頻度を15日毎とし、洗浄終点の決定方法を乾燥機内部の確認のみとした従来の乾燥方法を実施しました。
【0046】
図1の(7)の乾燥機に、1200kgの鹸化EVAを供給して、図1の(1)の空気取り入れ口から、ブロワー(2)により、加熱機(3)を通して、55℃の熱風を各バルブ(4)を通して、熱風吹き出し口(5)から熱風取り入れメッシュ(6)を通して、乾燥機(7)に供給して、5時間、第一回目の乾燥を実施し、その後で、熱風の温度を60℃に上げて、11時間、第二回目の乾燥を実施した。その乾燥後の鹸化EVA中の水分量は0.05wt%であった。
【0047】
その後の乾燥のバッチ数の増加により水分量が増加し、15日目の乾燥後における鹸化EVA中の水分量は0.15wt%まで増加した。
【0048】
この15日目の乾燥後に、乾燥機の熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)に堆積している不純物を、ホース散水のみで洗浄し、乾燥機の熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)に不純物が目視上、堆積していないことを確認するのみで洗浄を終了した。
【0049】
その結果、乾燥後の鹸化EVA中の水分量を規格内(0.3wt%以下)に収める為には、55℃の温風による第一回目の乾燥を5時間実施してから、その後で、熱風の温度を60℃に上げて、11時間という長い時間、第二回目の乾燥を実施しなければならなかった。
【0050】
その洗浄後に、鹸化EVAを同様に乾燥機で乾燥すると、乾燥後における鹸化EVA中の水分量が0.05wt%に戻ったが、30バッチの乾燥後には、0.15wt%まで増加してしまい、また、全バッチでの乾燥も、55℃の熱風第一回目の乾燥を5時間実施してから、その後で、熱風の温度を60℃に上げて、11時間という長い時間の乾燥を実施しなければ、乾燥後の鹸化EVA中の水分量を規格内(0.3wt%以下)に収める事が出来なかった。
【0051】
実施例3
実施例1と同じ手法で得られた乾燥前の鹸化EVA(鹸化度80%)を使用して以下の方法で乾燥した。
【0052】
図1の(7)の乾燥機に、1200kgの鹸化EVAを供給して、図1の(1)の空気取り入れ口から、ブロワー(2)により、加熱機(3)を通して、78℃の熱風を各バルブ(4)を通して、熱風吹き出し口(5)から熱風取り入れメッシュ(6)を通して、乾燥機(7)に供給して、5時間、第一回目の乾燥を実施し、その後で、熱風の温度を83℃に上げて、5時間、第二回目の乾燥を実施した。その乾燥後の鹸化EVA中の水分量は0.20wt%であった。
【0053】
その後の乾燥のバッチ数の増加により水分量が増加し、7日目の乾燥後における鹸化EVA中の水分量は0.24wt%まで増加した。
【0054】
この7日目の乾燥後に、乾燥機の熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)に堆積しているファインを始めとする種々不純物を、水圧が8MPaと高い高圧洗浄機(ケルヒャージャパン社製、HD4/8C型)を使用して、十分に除去して、乾燥機下部から洗浄液中に不純物が含まれないまで洗浄を実施した。
【0055】
その洗浄後に、鹸化EVAを同様に乾燥機で乾燥すると、乾燥後における鹸化EVA中の水分量が0.20wt%に戻った。
【0056】
その15バッチ毎の洗浄を更に3回実施したところ、その都度、鹸化EVA中の水分量が0.20wt%に戻り、全バッチにおいて、鹸化EVA中の水分量は0.24wt%以下に維持されました。
【0057】
また、全バッチでの乾燥も、78℃の熱風を送付して、5時間、第一回目の乾燥を実施し、その後で、熱風の温度を83℃に上げて、5時間、第二回目の乾燥を実施した。
【0058】
比較例3
鹸化EVAとして実施例3と同じ鹸化EVAを使用し、従来の乾燥法、ホース散水で、洗浄の頻度を15日毎とし、洗浄終点の決定方法を乾燥機内部の確認のみとした従来の乾燥方法を実施しました。
【0059】
図1の(7)の乾燥機に、1200kgの鹸化EVAを供給して、図1の(1)の空気取り入れ口から、ブロワー(2)により、加熱機(3)を通して、78℃の熱風を各バルブ(4)を通して、熱風吹き出し口(5)から熱風取り入れメッシュ(6)を通して、乾燥機(7)に供給して、6時間、第一回目の乾燥を実施し、その後で、熱風の温度を83℃に上げて、8時間、第二回目の乾燥を実施した。その乾燥後の鹸化EVA中の水分量は0.14wt%であった。
【0060】
その後の乾燥のバッチ数の増加により水分量が増加し、15日目の乾燥後における鹸化EVA中の水分量は0.34wt%まで増加した。
【0061】
この15日目の乾燥後に、乾燥機の熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)に堆積しているファインを始めとする種々不純物を、ホース散水のみで洗浄し、乾燥機の熱風取り入れメッシュ(6)や水切りメッシュ(8)に不純物が目視上、堆積していないことを確認するのみで洗浄を終了した。
【0062】
その結果、乾燥後の鹸化EVA中の水分量を規格内(1.0wt%以下)に収める為には、78℃の温風による第一回目の乾燥を5時間実施してから、その後で、熱風の温度を83℃に上げて、8時間という長い時間、第二回目の乾燥を実施しなければならなかった。
【0063】
その洗浄後に、鹸化EVAを同様に乾燥機で乾燥すると、乾燥後における鹸化EVA中の水分量が0.14wt%に戻ったが、30バッチの乾燥後には、0.34wt%まで増加してしまい、また、全バッチでの乾燥も、78℃の熱風第一回目の乾燥を5時間実施してから、その後で、熱風の温度を83℃に上げて、8時間という長い時間の乾燥を実施しなければ、乾燥後の鹸化EVA中の水分量を規格内(1.0wt%以下)に収める事が出来なかった。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本願の鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の製造方法は、乾燥時間を短縮することが可能となり、又、乾燥後の鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂中の水分量を少なく制御でき、工業的な鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の製造方法に利用できる。
【符号の説明】
【0065】
1:空気取り入れ口
2:ブロワー
3:加熱機
4:各バルブ
5:熱風吹き出し口
6:熱風取り入れメッシュ
7:乾燥機
8:水切りメッシュ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂のペレットをメタノール中において苛性ソーダと反応させた後、中和、洗浄、乾燥する鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の製造方法であって、鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂を、熱風取り入れ口及び水切りメッシュを具備する乾燥機で乾燥する際に、熱風取り入れ口に具備されたメッシュ及び水切りメッシュのメッシュ部を5MPa以上の水圧での高圧洗浄機により洗浄し、洗浄終点を乾燥機下部から排出される洗浄液中に不純物がないことを目視確認するという特徴を有する鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の製造方法。
【請求項2】
メッシュ部の洗浄を、鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の水分値がメッシュ部の洗浄直後から0.04〜0.06wt%増加した時点で洗浄する請求項1に記載の鹸化エチレン酢酸ビニル共重合樹脂の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−219677(P2011−219677A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92256(P2010−92256)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】