説明

麺塊の成型方法

【課題】適切な均し手段を講じ、冷凍麺塊製品としての調理性を損なうことなく、コンパクトな麺塊の製造方法を提供する。
【解決手段】冷凍麺塊の製造方法であって:(1)加熱調理済みの一定量の麺で構成される麺塊を、水中の麺塊成型用トレーへ落下させることにより投入し;(2)トレー内の麺塊を、水中で、振動手段若しくは掻分手段、及び/又は水流を用いて均し;そして(3)均された、トレー入り麺塊を冷凍し、冷凍麺塊を得る工程を含む、製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷凍麺塊の製造方法に関する。より詳細には、調理済み麺からなる麺塊をトレーに入れて成型し、冷凍する際の、成型方法に関する。本発明は、食品製造分野で有用である。
【背景技術】
【0002】
食品の冷凍は、鮮度やおいしさを保ち、また腐敗を防いで長期間保存可能とすることを目的に行われる。うどんなどの麺帯からなる食品は、冷凍する際、目的に合わせて様々な形状とすることができるが、一の麺塊においては、麺の偏りや全体的に凹凸の少ない形状であることが好ましく、そのため工業的な生産においては、冷凍成型用の容器に入れた麺塊を均す操作が行われることが多い。
【0003】
特許文献1は、従来手作業で行っていた、トレー(成型容器)に投入された麺塊の中央盛り上がり部を平らにする作業を機械的に行うための、麺ならし装置を提案する。この装置は、麺製造機により混練・形成され、トレーに定量装入された麺分塊を均す麺ならし装置において、中央部からトレー周辺部に向って拡がる複数の爪を有する延伸手段と、麺分塊の上表面のほぼ全面にわたって押圧する圧延手段とから成り、前記延伸手段の爪を前記麺分塊中央部に装入した後、トレー周辺部に向けて拡開させて該麺分塊を延伸し、次に前記圧延手段により表面を押圧する事により、前記麺分塊の中央盛り上がり部を平らかにする事を特徴とする。また、特許文献2は、麺を成型容器の内部において自動的に均一化することにより、成形効率の向上や成形コストの低下を図るための、冷凍麺を所定形状に成形するための冷凍麺の成形方法を提案する。この方法は、茹で上げ麺を容器に投入する投入工程と、前記麺が投入された前記容器を振動させる振動工程と、前記容器に投入された状態で前記麺を冷凍する冷凍工程と、前記冷凍工程において冷凍された前記麺を前記容器から取り出す取り出し工程と、を含むことを特徴とする。
【0004】
しかしながら、麺の収納が偏りのない形状に定型化するには至っておらず、人が目視で形状を確認し、手作業で均し直しているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04-262729(特許第3030521号)
【特許文献2】特開2007-325557(特許第4643497号)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
充分に均されていない麺塊は、工業生産ラインにおいては、凍結後の搬送や包装の際に、麺の折れ、包装材の破損等のロスを生じうる。これを防ぐためには適切な均し手段を講じるべきであるが、均し操作は機械的に効率よく行われるべきである。一方、冷凍麺塊製品としての調理性を損なうことなく、麺塊をコンパクトにすることができれば、包装材の削減や、流通・保管時のためのスペースが削減でき、工業的には一層好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、自動化可能な麺塊の均し手段を種々検討した。その結果、特定の均し手段により均され、冷凍された冷凍麺塊がコンパクトな形状となり、かつ調理性にも優れていることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
本発明は以下を提供する:
[1]冷凍麺塊の製造方法であって:
(1)加熱調理済みの一定量の麺で構成される麺塊を、水中の麺塊成型用トレーへ落下させることにより投入し、又は水とともに麺塊成型用トレーへ落下させることにより投入し;
(2)トレー内の麺塊を、水中で、振動手段若しくは掻分手段、及び/又は水流を用いて均し;そして
(3)均された、トレー入り麺塊を冷凍し、冷凍麺塊を得る
工程を含む、製造方法。
[2]工程(2)において、圧縮手段により、均された麺塊をトレー内で圧縮する、[1]に記載の製造方法。
[3]麺塊密度が、0.65g/ cm3以下(好ましくは0.63g/ cm3以下)である冷凍麺塊が製造される、[1]又は[2]に記載の製造方法。
[4]麺塊が、うどん、そば、ラーメン及びパスタからなる群より選択される一の麺で構成され;麺塊密度が、
うどんの場合、0.40〜0.65g/cm3、好ましくは0.43〜0.63g/cm3であり、より好ましくは0.45〜0.63g/cm3であり
そばの場合、0.40〜0.66g/cm3、好ましくは0.43〜0.58g/cm3であり、より好ましくは0.45〜0.58g/cm3であり、
ラーメンの場合、0.40〜0.63g/cm3、好ましくは0.43〜0.59g/cm3であり、より好ましくは0.45〜0.59g/cm3であり、
パスタの場合、0.40〜0.66g/cm3、好ましくは0.43〜0.63g/cm3であり、より好ましくは0.45〜0.63g/cm3である、[3]に記載の麺塊。
[5]麺が、うどんである、[1]〜[4]のいずれか一に記載の製造方法。
[6]最大厚みが、平均厚みの1.5倍以下、好ましくは1.4倍以下である、[1]〜[5]のいずれか一に記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[麺塊投入工程]
本発明の製造方法は、(1)加熱調理済みの一定量の麺で構成される麺塊を、水中の麺塊成型用トレーへ落下させることにより投入するか、又は水とともに麺塊成型用トレーへ落下させることにより投入する工程を含む。
【0010】
本発明で「麺で構成される麺塊」というときは、特に記載した場合を除き、麺(麺線ということもある。)の塊をいう。麺塊は、冷凍成型されている場合もある。麺塊は、通常、麺と麺との間に、ある程度の空隙を有し、そのため、冷凍されていない場合は、ある程度の圧縮が可能である。
【0011】
本発明で「加熱調理済み」というときは、特に記載した場合を除き、原料麺に、喫食可能なまでに加熱調理が施されていることをいう。加熱調理の例としては、茹でる、蒸すを掲げることができる。加熱調理の条件は、当業者であれば、麺の種類に応じ、通常の調理条件を参考に、適宜決定できる。加熱調理の後、必要に応じ、湯切り、水洗、冷却等を行うことができる。
【0012】
本発明で「トレー」というときは、特に記載した場合を除き、麺塊を冷凍成型するための容器を指す。トレーは、上側の開放口と、麺塊を収納するための壁面及び底面からなる収納部とを有し、トレー底面は、典型的には、長方形である。収納部には必要に応じ、水を排するためのスリットや穴が1又は複数個設けられている。収納部は網状材料からなる(ざる様)場合もある。
【0013】
本発明においては、トレーへの麺塊の収納は、水中に置かれたトレーに、麺塊を落下させることにより、又は水とともに麺塊成型用トレーへ落下させることにより行う。麺塊の状態は特に限定されているものではなく、麺塊のみを落下させても、麺塊を水ともに落下させてもよく、トレーは、麺塊を収納した時点で水中であればよい。トレーが投入前から水中にあってもよく、例えば、空のトレーに、水中に浮かんでいるか又は水中を流れる麺塊が、到達し、結果として、水中に投入されることになってもよく、さらには、水中にあるトレーに、水中にある麺塊を投入してもかまわない。麺塊は、水中を、少なくとも10mm以上、好ましくは30mm以上、より好ましくは50mm以上落下する。なお、本発明で麺塊の落下に関する長さ(距離)をいうときは、特に記載した場合を除き、麺塊が水中を移動する長さをいう。
【0014】
本発明者らの検討によると、麺塊を単にトレーへ落下させるよりも、水中でトレーへ落下させた方が、麺の広がりがよく、より均一にトレーの中に収納できた。水中の落下距離が上述の場合より短い場合は、このような効果が十分に得られない。落下距離の上限値は、取り扱いの容易さや、コストの面から設計することができる。
【0015】
[均し工程]
本発明の製造方法は、(2)トレー内の麺塊を、水中で、振動手段若しくは掻分手段、及び/又は水流を用いて均す工程を含む。
【0016】
本発明で「振動手段」というときは、特に記載した場合を除き、トレーを振動させるための機械的な手段をいう。振動は、トレー底面が長方形又は正方形である場合は、一方の辺方向に略沿って、往復運動をすることであってもよい。振動手段の例として、前掲特許文献2を参照することができる。
【0017】
本発明の「掻分手段」は、特に記載した場合を除き、麺塊の上面の中央辺りから、内部に挿入可能であって、それぞれ挿入後トレー周辺部に向けて機械的に移動することにより、麺塊を掻いて分けることが可能な複数の爪を有する。掻分手段の例として、前掲特許文献1を参照することができる。
【0018】
本発明で均し工程に関し、「水流を用いて」というときは、特に記載した場合を除き、麺が動く程度の水流をトレー内の麺塊にあて、麺塊を均すこという。
【0019】
水流は、均しを確実に行うとの観点からは、少なくとも1秒以上あてることが必要である。あてる時間が長いと均しは確実に行われるが、終点は、操作性、経済的な観点から決定することができる。
【0020】
水流は、麺塊の上方から、麺塊上面の中央部にあてるか、又は旋回するようにあてることができる。
【0021】
本発明者らの検討によると、水流は、約0.5L/min以上であれば均しのために一定の効果があるが、このように比較的少ない流量では、均しに必要な時間が1秒を超える場合がある。一方、水流が約4L/minを超えると、麺がトレーから飛び出してしまうことがある。
【0022】
一方、用いる水の量を、水流にかえて、圧力として表すこともできる。均しに有効といえる圧力、すなわち水中で麺が動くときの圧力は、以下のように測定・算出することができる。
(1)水槽に麺を入れたザル様容器を入れ、天秤に乗せる。
(2)20mm径の円柱を上から麺に当て、麺が動いたときの質量を測定する。
(3)以下の式より、圧力を求める。
【0023】
【数1】

本発明者らの検討によると、水中でうどん(実施例の実験1及び2で使用したもの)が動く場合の圧力は、約312Pa(30g/cm2)と計算された。このような観点からは、本発明において水をあてて均す場合の水による圧力は、300Pa〜20kPa、好ましくは500Pa〜10kPa、より好ましくは1kPa〜8kPaである。
【0024】
本発明の製造方法においては、振動及び掻分、並びに水流を用いた均しを、水中で行ってもよい。
【0025】
本発明の製造方法においては、麺塊の水中への落下による投入と均し工程との組み合わせにより、相乗的に、それぞれの工程のみでは達成できなかった程度にまで麺塊上面を均すことができる。また麺塊が均されている以外に、驚くべきことに、麺塊密度が通常の均し工程を経たものに比較して、小さくなっており、麺塊がよりコンパクトになっている。
【0026】
均し工程を経た後、冷凍成型された麺塊の麺塊密度は、後述する圧縮工程を経ている・いないに関わらず、0.65g/cm3以下であり、好ましくは0.63g/cm3以下である。本発明で「麺塊密度」というときは、特に記載した場合を除き、加熱調理済みの一定量の麺で構成される麺塊の重量を麺塊体積で割ることにより求められる麺塊体積あたりの重量をいう。麺塊体積は、麺塊としての体積をいい、麺及び麺間の空隙を含む体積であり、麺そのものの体積とは異なる。麺塊体積は、具体的には、麺塊全体を包含する最小の立体(例えば、直方体、円柱)を想定し、その立体の体積として定義される。例えば、麺塊が100 mm×100mm×20mmにちょうど包含される麺塊の麺塊体積は、200cm3と計算される。麺塊密度は、通常、麺そのものの密度より小さい値となる。なお、本発明に関し、麺塊のサイズ(縦、横、厚)、体積、麺塊密度をいうときは、特に記載した場合を除き、冷凍麺塊についてのものを指す。冷凍麺塊のサイズとして、冷凍成型する際に用いるトレーのサイズで代替できる場合があるが、冷凍により、麺塊のサイズが〜数%縮む場合があるが、当業者であれば、必要に応じ、適宜補正・換算できる。
【0027】
本発明の製造方法においては、均しの程度又は麺塊密度の上限は、ゆで調理時の麺塊のほぐれ性、及び/又は食感により、決定することができる。均しすぎ、圧縮しすぎは、ほぐれが悪くなり、調理に時間を要することとなる。その結果、麺が茹で延びし、柔らかくなって食感を損なう。なお、ほぐれ性を無視した場合、圧縮は、理論的には、麺の間にまったく空隙が無くなった状態まで行うことができ、圧縮率は麺そのものの体積に基づいた値になる。またそのような場合の麺塊密度は、麺の密度そのものであり、実施例で用いたゆでうどんの場合は、約0.80 g/cm3である。
【0028】
好ましい麺塊密度を、麺の種類に応じて規定すると、うどんの場合、0.40〜0.65g/cm3、好ましくは0.45g/cm3〜0.63g/cm3であり、そばの場合、0.40〜0.66g/cm3、好ましくは0.45〜0.58g/cm3であり、ラーメンの場合、0.40〜0.63g/cm3、好ましくは0.45〜0.59g/cm3であり、パスタ(好ましくはスパゲッティ)の場合、0.40 〜0.66g/cm3、好ましくは0.45〜0.63g/cm3である。
【0029】
本発明の製造方法においては、均しの程度は、最大厚みを考慮して、決定してもよい。本発明においては、麺塊の最大厚みは、平均厚みの1.5倍以下であることが好ましく、1.3倍以下であることがより好ましい。本発明で「最大厚み」というときは、特に記載した場合を除き、冷凍麺塊のうち、最も厚みのある箇所の厚さをいう。本発明で「平均厚み」というときは、特に記載した場合を除き、麺塊の長辺方向の中心線において、両端(端から0.50〜2.0cmの範囲)と中央との3か所の厚みの平均値をいう。なお、理想的には、最大厚みは、平均厚みの1.0倍となる。
【0030】
最大厚みが小さいと、製品がコンパクトになる点で好ましく、特に複数の、例えば2〜10個の、麺塊を重ねた状態で二次包装したような製品において、製品全体の嵩をおさえることができる点で好ましい。最大厚みは、麺塊のトレーへの水中への落下による投入や均し工程により、小さくすることができるが、麺塊を圧縮することが有効である場合がある。
【0031】
本発明の製造方法においては、圧縮(プレス)工程を含んでいてもよい。
【0032】
本発明で「圧縮」というときは、特に記載した場合を除き、麺間の空隙を少なくするように麺塊の上面を抑え、麺塊の体積を減じ、かつ麺塊正面をより平坦にすることをいう。圧縮には、板状体を用いることができ、また適切であれば、別のトレーの底面を利用することができる。
【0033】
板状体の形状は、麺塊の表面をさらに均しつつ、必要に応じ圧縮することができるのであれば、特に制限はないが、略板状の部分を有し、着脱が容易なように柄を設けてもよい。板状体を取り除く際の食品の付着を防止するために、食品との接着面積が少なくなるような形状としてもよい。このためには、例えば、波板状としたり、板状の部分にスリットを設けたりすることができる。
【0034】
本発明においては、麺塊の圧縮は、板状体で、枠内又は開口部を有する容器内に充填された加熱調理済みの麺塊の上面又は開口部面を均しつつ抑えることによりなされる。これにより、麺立ち(一部の麺が、周囲に比較して、5mm以上突出すること。)の発生が防止される。突出した麺は、冷凍固化すると、包装材料を損傷することがあり、また破損しやすいために端材(麺の破片)を生じさせることがあり、製造上好ましくない。麺塊の圧縮は、麺立ちを抑えるために、有効である。
【0035】
本発明の製造方法における圧縮は、少なくとも麺立ち抑制上有効な程度まで、行われる。
【0036】
一方、本発明の製造方法における均し及び圧縮は、調理性を損なう程度にまでは、実施されない。
【0037】
なお、ほぐれのよさは、麺の種類によって異なることがある。概して、パスタは高い圧縮率でも、解凍時ほぐれのよさを保持しており、うどんでは高い圧縮によりほぐれが悪くなる傾向がある。これは、麺の種類によりでん粉とそれを支持するタンパク質の状態が異なることに起因すると考えられる。うどんにおいては表面へのでん粉の溶出量が比較的多く、そのため麺の粘着性が高いためにほぐれが悪くなるに対し、表面へのでん粉の溶出が起こりにくいパスタは、麺の粘着力が少なく、より圧縮してもほぐれがよいと考えられる。
【0038】
[冷凍工程]
本発明の製造方法は、(3)工程(2)で均された、トレー入り麺塊を冷凍し、冷凍麺塊を得る工程を含む。
【0039】
冷凍のための装置及び条件は、従来技術を用いることができる。
【0040】
[その他]
本発明の製造方法において麺塊を構成する麺の種類に特に制限はないが、うどん(例えば、讃岐うどん、稲庭うどん)、そば(例えば、十割蕎麦、二八蕎麦)、中華麺(例えば、ラーメン)及びパスタ(例えば、スパゲッティ、スパゲッティーニ、タリアテッレ、リングイネ等のロングパスタ;マカロニ等のショートパスタ;ラザニア、ニョッキ)からなるものとすることができる。麺の太さについても、麺食品として通常の許容される太さであれば、特に制限はなく、例えば、厚みが6.0mm以下であれば、種々の麺幅のものについて本発明を適用できる。好適に適用できることが確認されている麺の例は、幅5.2mm×厚み4.0のうどん、幅2.0mm×厚み2.0のそば、幅2.0mm×厚み2.0のラーメン、幅2.4mm×厚み2.4のパスタである。なお、本発明に関し、麺のサイズ(幅、厚み、長さ)、重量、比重(密度)をいうときは、特に記載した場合を除き、茹で調理後のもののサイズ、重量を指す。
【0041】
うどんとは、一般に、小麦粉に食塩水を加えて混捏し、平板上に延ばしてから細長く切断するか、細長く引き伸ばして麺線としたものをいい、通常、茹で調理後に、つけ汁にひたすか、汁とともに似て喫食するものである。本発明において「うどん」は通常の意味で用いている。冷凍うどんとしては、200g〜250gの麺塊を冷凍したものが流通している。従来の冷凍うどん塊の大きさは、鍋に投入しやすいように、典型的には、縦130〜140mm、横90〜100mm、高さ25〜32mmであり、麺塊密度は0.55〜0.60(g/cm3)、重量あたりの麺塊表面積は1.8〜2.0(cm2/g)である。
【0042】
そばは、原料粉にそば粉を多く含む麺をいう。そばは、一般には、そば切りとも呼ばれる。本発明において「そば」は通常の意味で用いている。冷凍そばとしては、160g〜200gのものが流通している。従来の冷凍そば塊の大きさは、典型的には、縦130〜140mm、横90〜100mm、高さ25〜32mmである。
【0043】
「ラーメン」は、中華麺の一種であり、中華麺は、一般には、中華そばと称されることもある。中華麺は、タンパク質含量の高い強力粉や準強力粉を用い、かんすいを添加する点に特徴がある。本発明において「ラーメン」「中華麺」は通常の意味で用いている。本明細書の実施例においては、ゆで調理されるラーメンについて検討しているが、焼きそばや湯揚調理に用いられる蒸し用の中華麺においても同様に本発明を適用することができると考えられる。冷凍ラーメンとしては、160g〜200gのものが流通している。従来の冷凍ラーメン塊の大きさは、典型的には、縦130〜140mm、横90〜100mm、高さ25〜32mmである。
【0044】
そば及びラーメンのような比較的細い麺は、太麺のうどんの場合と比較して、冷凍麺塊に高さ(厚み)が出やすい。そのため、従来品においては、一般に、製品重量を少なくすることにより製品嵩が抑えられている。
【0045】
パスタは、一般に、デュラム小麦のセモリナ粉に、水を加えて混捏した生地を押し出し成形したものをいい、それを乾燥した物(乾麺)も多く流通している。本発明において「パスタ」は通常の意味で用いている。冷凍パスタの従来品は、家庭用には、具材の入った電子レンジ調理用のものが主流である。業務用においては、茹で調理対応の冷凍麺が流通している。
【0046】
本発明に用いる麺塊を構成する麺は、特に好ましい態様においては、うどん、特に讃岐うどん、稲庭うどんなどからなるものである。
【0047】
なお、本明細書の実施例では、調製した生麺から圧縮冷凍麺塊を調製しているが、本発明に用いられる原料麺は、性状(生麺であるか、乾麺であるか等)、製法(機械延であるか、押出成形であるか、手延であるか、等)に特に制限はない。特に、生麺のみならず、乾麺からも同様に調製することができる。
【0048】
本発明においては、麺塊を構成する加熱調理済み麺の量は、適宜設定することができる。麺量の下限は、特に制限はないが、例えば30g、50g、80gとすることができる。上限も様々とすることができるが、例えば1000g、500g、300gとすることができる。麺量の範囲は、例えば、100g〜300gである。圧縮するので、麺塊あたりの重量を従来の冷凍麺塊より増すことができる。典型的には、200g程度である。
【0049】
本発明の冷凍麺塊は、種々の形状でありうる。冷凍麺塊の解凍は沸騰水で茹でることによる場合が多く、その際の用具として、家庭では鍋を、外食産業の調理施設においては業務用の「てぼ」と呼ばれるすくいざるを用いることが多い。従って、冷凍麺塊は、これらのものの中へそのまま入れることができる大きさであることが好ましい。
【0050】
圧縮された冷凍麺塊の評価は、麺立ちの有無や程度、製造工程における端材発生の有無や程度、包装材料の破損によるロスの有無や程度、調理時のほぐれのよさ、解凍したものの食感等の観点から行うことができる。それぞれの評価の手法及び基準は、本明細書の実施例の記載を参照することができるが、ほぐれに関しては、本発明の投入・均し工程を経ない従来の冷凍麺塊を基準に、それと同じかどうかで判断することができる。
【0051】
本発明の製造方法には、さらに圧縮冷凍麺塊を一又は複数個ずつ包装する工程を組み込んでもよい。包装は、麺塊の包装形態としては、冷凍食品の製造のための種々の手段を適用することができる。
【実施例】
【0052】
[実験1:均し方法の検討]
どのような均し方法が効果的であるか、実験を行った。
【0053】
澱粉入り小麦粉1000gに、水423gに塩47gを予め溶解させたものを加え、製麺用の横型真空ミキサーで10分間ミキシングして、そぼろ状の生地を得、圧延、複合し、厚み約10mmで2時間25℃にて熟成させた。熟成後、常法にて圧延し、9番の麺線にて、厚み3.0mmの生うどんを得た。その後、十分な量の沸騰したお湯の中で、約12分茹で、直ちに水洗いして、冷水中で冷却して茹でうどんを得た。
【0054】
一食分(200g)の茹でうどん(幅約5.2mm×厚み約4.0mm×長さ約300mm)の麺塊を、トレー(スリット入り。トレーサイズは、外寸が、底面135mm×95mm、上面140mm×100mm、内寸が底面131mm×91mm、上面136mm×96mmであり;冷凍麺塊サイズは、底面130mm×90mm、上面135mm×95mmとなる。)を用いて成型するに際し、麺投入後、各種方法で均しを行い、投入直後及び均し後の麺の広がりを観察した。なお、水中のトレーへの麺塊落下は、水面から約1cm上方から、冶具を用いて行った(以下の実施例において、特に記載した場合を除き、同じ。)。冶具の落下口が水面に接している場合(空中の落下距離0cm)では、トレー内部での麺塊の広がりが悪かった(写真1)。空中での落下距離が1cmあればトレー内で麺塊が広がった(写真2)。
【0055】
【表1】

振動幅は5〜10cmとした。5cm未満では麺塊が動かず、15cm以上では麺塊がトレーから飛び出すので、5〜10cmが適していた。
【0056】
結果を下表にまとめた。
【0057】
【表2】

麺をトレーへ単に落下させるよりも水中のトレーへ落下させるほうが、麺が広がった。また、均し方法としては、水中の麺へ、上から、麺が動く程度の水流の水を全体へ当てる方法がよいことが分かった。
【0058】
次に、各種方法にて均した麺を凍結し、トレーから取り外した麺塊の中心部、並びに中心部に対応する端1及び端2の厚みを測定した。厚みを測定した部位を、下図に示す。
【0059】
【表3】

端1と端2のうち、高さ(厚み)は、低いほうを低層、高いほうを高層としし、低層、中心及び高層それぞれの平均値を算出した。なお、厚みの測定には、厚み測定計(RE2-33005B、(株)山電製)を用いた。プランジャーは直径5mm円柱状のものを用い、プランジャー速度1mm/sec、厚み測定感度0.02N荷重で測定した。
【0060】
結果を下図に示した。
【0061】
【表4】

厚み測定結果を見ると、(1)のトレーへ麺を落下させただけの場合は、中心部に麺が偏っていることが分かる。(2)、(3)、(4)の順に、麺の中心への偏りは改善されていることが分かる。また、(5)では中心へのみ水を当てており、中心の麺が周囲へ移動して穴が開いたようになることもあったために中心厚みが薄くなっており、またバラつきが大きい。(6)の全体に水を当てた場合には、3点の厚みがほぼ均等であり、バラつきも少なく、よく均されていることが分かった。
【0062】
今回の実験から、ゆで麺をトレー内全体へ均一に均す手段として、単にトレーへ落下させるよりも、水中のトレーへ麺を落下させ、さらに水流を利用してトレー全体へ麺を広げる方法が効果的であった。
【0063】
以上の結果より、ゆでうどんのトレーへの収納には、投入時や均し時に水を利用することが、均すという観点から有効であるといえる。
【0064】
[実験2:水均しによるコンパクト化と調理性の検証]
麺を水中へ落下させ、次いで水中の麺へ、全体にわたり水を当てて均す方式(「水均し」と呼ぶこととする。)は、麺塊上面を均すのに有効であることが分かった。しかし、麺塊が上面が良好に均されていたとしても、サイズが大きくなったり、調理性が低下(喫食時のゆでほぐれ時間の延長)したりすることは避けたい。また、水均しによる麺塊のコンパクト化の可能性も検証したい。そこで、この実験では、各種方法で均し操作を行い、サイズと調理性の評価を行った。
【0065】
1)予備実験
均し方の違いでトレーへの麺の収納の形状が異なることが実験1で分かったので、収納の仕方の違いで、サイズや調理性にどの程度差が出るか、予備的に実験を行った。
【0066】
麺は、サイズや調理性に与える影響が明らかになるように、以下のように収納した。
i:整列…麺同士が並列してくっつき合うよう、手作業でトレーへ収納した。
ii:網状…麺同士の接点が十字になるよう網状に手作業でトレーへ収納した。
iii:網状プレス…麺同士の接点が十字になるよう網状に手作業でトレーへ収納した後、上面を平板で約1kgの荷重で約1秒間、3回プレスした。
【0067】
各麺の収納方法を模式図で表わした。
【0068】
【表5】

評価は、それぞれの方法でトレーへ収納された麺塊をトレーごと冷凍することにより冷凍麺塊を得て、これについて、厚み測定とほぐれ時間測定を行った。厚み測定は、実験1と同様の方法で3点の厚みを測り、その平均値を算出し、平均厚みとした。ほぐれ時間は、1玉の冷凍麺塊をゆで、麺同士のくっつきがすべてなくなってほぐれるまでの時間を測定した。
【0069】
結果を下図に示した。
【0070】
【表6】

135x95 mmのトレーを用いたところ、各平均厚みは、i(整列)は21〜22mm、ii(網状)は26〜27mm、iii(網状プレス)は24〜25mmであった。結果より、i(整列)では厚みを薄くすることはできたが、ほぐれ時間が他のものと比較して極端に長かった。ii(網状)では、ある程度の厚みがあるが、ほぐれ時間は最も短かった。iii(網状プレス)では、iとiiの中間のような結果となり、これが理想的な成型状態と考えられた。
【0071】
そこで、網状プレス程度の圧縮率とすることを目標として、次の実験を行った。
【0072】
2)試験区
下記の10種の方法により、均し操作を行った。
【0073】
【表7】

3)評価方法
平均厚み測定
冷凍麺塊として、実験1と同様に、中心及び両端の計3点の厚みを測定し、3点の平均値を平均厚みとした。
【0074】
最大厚みの測定
冷凍麺塊について、厚みが最大である箇所の厚みを測定した。トレーから取り出した冷凍麺塊を逆さにし、定規で厚みを測った。
【0075】
ほぐれ時間の測定
それぞれの方法でトレーへ収納された麺塊をトレ―ごと冷凍して得た、一食分の冷凍麺塊をゆで、麺同士のくっつきが無くなり、すべてがほぐれるまでの時間(ほぐれ時間)を測定した。
【0076】
4)平均厚み測定結果
結果を下表に示した。
【0077】
【表8】

平均厚みのグラフを次に示した。
【0078】
【表9】

現行品と比較すると、すべてで厚みが薄くなった。また、水均しにより、かなり厚みが減じられる傾向がみられた。予備実験で得られた理想的な成型状態(厚み24〜25mm)に近いか又はそれよりコンパクトに成型されているのは、D振動、E、G、B'、C'、D'、F'及びG'であった。
【0079】
以上より、水中で均すことにより、またプレスすることにより、現行品よりもコンパクト化できる可能性が見出せた。
【0080】
5)最大厚み測定結果
結果を下表に示した。
【0081】
【表10】

プレスしたほうが、またB掻分よりもF水均しのほうが、さらにC振動よりもD水中掻分及びF水均しのほうが、最大厚みが小さいことが分かった。水中で均すことが効果的であることが分かった。なお、冷凍麺塊は、5個組製品として包装される場合も想定されているので、最大厚みは、製品コンパクト化の指標となる。
【0082】
最大厚みのデータから、麺塊密度を算出した。
【0083】
【表11】

水中で均した場合(E、F、G、E'、F'、G')、麺塊密度は0.43〜0.56g/cm3となった。
【0084】
6)ほぐれ時間測定結果
ほぐれ時間の測定データを下表に示した。
【0085】
【表12】

ほぐれ時間に関するグラフを、次に示した。
【0086】
【表13】

水中で均した場合(EFG、E’F’G’)とそうでない場合(CD、C’D’)とを比較すると、水中で均した方が、ほぐれ時間が速かった。
【0087】
また、現行品と比較すると、均しが水中で行われていないものはほぐれ時間が長くなっているが、水中で均した場合は現行品とほぐれ時間に差がなかった(AとC・D・C’・D’に有意差あり。AとE・F・G・E’・G’に有意差なし。)。
【0088】
以上の結果より、水中で均すことにより、調理性に影響を与えないことが分かった。
【0089】
[実験3:細うどん]
実験2と同様に、細うどん(幅約3.0mm×厚み約3.5mm×長さ約300mm)について、掻分(実験2のCに該当)、振動(実験2のDに該当)、水均し(実験2のGに該当)を評価した。
【0090】
結果を下表に示した。
【0091】
【表14】

うどんの場合と同様に、水均ししたものが、厚みが小さく、かつ調理性にも優れていた。
【0092】
[まとめ]
実験1により、ゆでうどんの成型に際しては、トレー投入時や均し時に水を利用することが有効であることが分かった。
【0093】
実験2では、水を利用した均し方法で試作した凍結うどんのサイズと調理性を確認した。サイズは、厚みが現行品と同等かそれ以下のもの、調理性はゆで調理時のほぐれ時間が同等か短縮できることが望まれた。結果、厚みについては、水中で均した方が薄くなる傾向があり、現行よりもコンパクトにできる可能性が見出せた。調理性については、水を用いない場合は現行よりほぐれが悪くなるが、水を利用して均した場合は現行と同等の調理性であった。
【0094】
以上より、ゆで麺をトレー内全体へ均一に均すとの観点、全体をコンパクトにする観点、及び調理性の観点のいずれにおいても、水を利用して均す方式が有効であるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍麺塊の製造方法であって:
(1)加熱調理済みの一定量の麺で構成される麺塊を、水中の麺塊成型用トレーへ落下させることにより投入し、又は水とともに麺塊成型用トレーへ落下させることにより投入し;
(2)トレー内の麺塊を、水中で、振動手段若しくは掻分手段、及び/又は水流を用いて均し;そして
(3)均された、トレー入り麺塊を冷凍し、冷凍麺塊を得る
工程を含む、製造方法。
【請求項2】
工程(2)において、圧縮手段により、均された麺塊をトレー内で圧縮する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
麺塊密度が、0.65g/ cm3以下(好ましくは0.63g/ cm3以下)である冷凍麺塊が製造される、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
麺塊が、うどん、そば、ラーメン及びパスタからなる群より選択される一の麺で構成され;麺塊密度が、
うどんの場合、0.40〜0.65g/cm3、好ましくは0.43〜0.63g/cm3であり、より好ましくは0.45〜0.63g/cm3であり
そばの場合、0.40〜0.66g/cm3、好ましくは0.43〜0.58g/cm3であり、より好ましくは0.45〜0.58g/cm3であり、
ラーメンの場合、0.40〜0.63g/cm3、好ましくは0.43〜0.59g/cm3であり、より好ましくは0.45〜0.59g/cm3であり、
パスタの場合、0.40〜0.66g/cm3、好ましくは0.43〜0.63g/cm3であり、より好ましくは0.45〜0.63g/cm3である、請求項3に記載の麺塊。
【請求項5】
麺が、うどんである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
最大厚みが、平均厚みの1.5倍以下、好ましくは1.3倍以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2013−34406(P2013−34406A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−171360(P2011−171360)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 日本食品工学会 第12回(2011年度)年次大会講演要旨集にて発表
【出願人】(000140650)テーブルマーク株式会社 (55)
【Fターム(参考)】