説明

麺皮及び小龍包

【課題】製麺性、成形性及び調理性が高く、食感に優れ、且つ、該麺皮によって中具を包んで成形し、加熱した際にも麺皮外へのスープの漏出が少ない麺皮、並びに該麺皮を用いて具材を包み成形した後、加熱してなる小龍包の提供。
【解決手段】穀物粉と、水と、前記穀物粉100質量部に対して0.45〜1.1質量部のマンナンと、前記マンナンに対して質量比で2倍量以上のグルテン分解物とを含むことを特徴とする麺皮;前記麺皮で具材を包み成形した後、加熱してなる小龍包。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製麺性、成形性及び調理性が高く、食感に優れ、且つ、該麺皮によって中具を包んで成形し、加熱した際にも麺皮外へのスープの漏出が少ない麺皮、並びに該麺皮を用いて具材を包み成形した後、加熱してなる小龍包に関する。
【背景技術】
【0002】
野菜、肉、調味料等からなる種々の具材を、穀物粉を主成分とする麺皮で包み、加熱することにより製造される麺皮食品は、子供から大人まで多くの人々に好まれる食品である。従来、麺皮食品としては餃子、春巻、シュウマイ、ワンタン等が主流であったが、近年では小龍包も広く知られるようになり、外食時のみならず、惣菜や半調理済み冷凍食品として家庭内においても広く喫食されている。
【0003】
一般に小龍包は、比較的薄い麺皮に具材を包んで半球状等に成形し、蒸篭等を用いて蒸す等の加熱調理を施すことにより製造される。麺皮としては、穀物粉、油脂、食塩等からなるものが用いられる。小龍包の特徴は、蒸し調理時に中具の肉から出る肉汁等のスープを麺皮内に包含する点にあるとされ、麺皮及び具材と共に該スープも好んで喫食されている。
しかしながら、通常小龍包の皮は中華まん等よりも薄いものであるため、加熱調理中に皮が柔化して破れ、スープが麺皮外へ漏出するリスクが高い。このリスクは工業生産の場においては歩留の低下に直結するため、大きな問題となっている。
最近では、肉汁部を多量に含み、皮を損傷することのない包子として、乳化剤としてポリグリセリン縮合リシノール酸エステル、不飽和脂肪酸モノグリセライド及びソルビタン不飽和脂肪酸エステルを含有し、乳化安定剤としてデキストリンを含有する低脂肪油中水型乳化油脂組成物が、肉あん部に添加されなる包子が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−227255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小龍包等を工業的に大量に生産する場合には、上記のような加熱調理時のスープ漏出の抑制のみならず、麺皮の製麺性の高さや、麺皮で具材を包む際の成形性の高さも同時に要求される。
また、一般的に小龍包は、円形の麺皮の中央に具材を載せ、麺皮の円周部をヒダ状にまとめて具材の上でひねることにより、具材を麺皮に包埋し、半球状とする。そのため、ひねられた上端部の麺皮は他の部位に比して厚いものとなる結果、加熱調理後に該上端部(トップ部)が硬くなりすぎ、食感が損なわれる場合もあった。
【0006】
特許文献1に記載の発明は、包子の具材に添加して肉汁感を増加させる添加物の点からスープ漏出を改善した発明であるが、この発明では、上記のような麺皮自体に由来する課題の解決は困難である。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、製麺性、成形性及び調理性が高く、食感に優れ、且つ、該麺皮によって中具を包んで成形し、加熱した際にも麺皮外へのスープの漏出が少ない麺皮、並びに、該麺皮を用いて具材を包み成形した後、加熱してなる小龍包を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、マンナンとグルテン分解物とを麺皮に配合することにより、製麺性、成形性及び調理性が高く、食感に優れ、且つ、該麺皮によって中具を包んで成形し、加熱した際にも麺皮外へのスープの漏出が少ない麺皮が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の特徴を有する麺皮及び小龍包を提供するものである。
(1)穀物粉と、水と、前記穀物粉100質量部に対して0.45〜1.1質量部のマンナンと、前記マンナンに対して質量比で2倍量以上のグルテン分解物とを含むことを特徴とする麺皮。
(2)前記穀物粉100質量部に対して、0.6〜0.8質量部の前記マンナンを含む81)の麺皮。
(3)(1)又は(2)の麺皮で具材を包み成形した後、加熱してなる小龍包。
【発明の効果】
【0009】
本発明の麺皮は、柔らかく伸びやすいため、製麺性、成形性及び調理性が高い。さらに、該麺皮によって中具を包んで成形し、加熱した際にも麺皮外へのスープの漏出が少ない麺皮が得られる。そのため、工業生産において安定的に高い歩留で、良好な麺皮や麺皮食品を製造することができる。
また、本発明により得られる麺皮は、硬すぎず、表面の荒れも少ないため、麺皮自体、又は該麺皮を用いて製造した麺皮食品を喫食した際の食感に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明において麺皮とは、小龍包(包子)、餃子、春巻、シュウマイ、ワンタン等の具材を皮で包んでなる食品に用いられるものであって、主成分となる穀物粉に、水や副原料を添加した後混合して得られる生地を、適当なサイズに裁断したものをいう。なかでも、本発明の麺皮は、製麺性、成形性、調理性及び食感が良好であるのみならず、具材を包んで成形した後に、麺皮内部からのスープの漏出を防ぐことができるため、内部にスープを多く含み得る食品の皮として用いられることが好ましく、小龍包の皮として用いられることが特に好ましい。
本発明において製麺性とは、麺の製造のしやすさをいう。
本発明において成形性とは、成型機による成形のしやすさをいう。成形性がよいとは、成形機を使用し製造した場合に安定した成型が行えることをいう。
本発明において調理性とは、調理時又は調理後の皮の状態をいう。調理性がよいとは、調理時又は調理後の皮の状態が著しく劣化していないこと及びスープ漏出が無いことをいう。
【0011】
本発明の麺皮は、穀物粉と、水と、マンナンと、グルテン分解物とを含む。
本発明において穀物粉とは、小麦、大麦、ライ麦、燕麦、米、トウモロコシ、ソバ、大豆、小豆、緑豆、ヒエ、粟、きび等の穀物を粉砕して得られる粉をいい、澱粉、加工澱粉、デキストリンなどで上記穀物粉の一部の量又は全量を置き換えたものも含まれる。なかでも、本発明における穀物粉としては、小麦粉であることが好ましい。
【0012】
本発明において水は、冷水であっても温水(湯)であってもよい。
麺皮に用いる水の量は特に限定されるものではないが、穀物粉100質量部に対して、20〜60質量部であることが好ましく、30〜50質量部であることがより好ましく、35〜45質量部であることがさらに好ましい。
【0013】
本発明においてマンナンとは、マンノースが重合して生成する多糖をいい、マンノースのみが重合してなるホモ多糖であってもよく、グルコースとマンノースとが重合してなるヘテロ多糖であってもよい。
麺皮がマンナンを含むことにより、麺皮の製麺性、成形性、調理性及び食感を損なうことなく、中具を包んで成形し、加熱した際にも麺皮外へのスープの漏出が少ない麺皮とすることができる。
本発明で用いるマンナンは、一般的に食品添加剤として用いられるマンナンであれば特に限定されるものではなく、例えば蒟蒻芋から抽出されるグルコマンナンを用いることができる。また、グルコマンナン中のグルコースとマンノースとの結合の割合は特に限定されるものではなく、1:1〜1:2の割合でβ−1,4結合した一般的なグルコマンナンを用いることができる。
マンナンはどのような形態で用いてもよい。例えば、マンナンのみからなる粉体として用いてもよく、粉体マンナンを水によって膨潤させた膨潤液として用いてもよく、副原料と粉体のマンナンとを予め混合した混合粉体として用いてもよい。副原料とマンナンとを予め混合して得られる粉体としては例えば、粉体マンナンと、後述するグルテン分解物と、小麦デンプンとの混合粉体である「グルパール653」(商品名、株式会社片山化学工業研究所製)が好ましいものとして挙げられる。
麺皮に用いるマンナンの量は、穀物粉100質量部に対して0.5〜1.1質量部であって、0.5〜0.8質量部であることが好ましく、0.6〜0.8質量部であることがより好ましい。
【0014】
本発明においてグルテン分解物とは、グルテンを含む大豆等の豆類、小麦、トウモロコシ等の穀物を、酵素を用いて加水分解した分解物であって、例えば小麦を加水分解酵素により分解したタンパク分解物(ペプチド)が挙げられる。
本発明で用いるグルテン分解物は、一般に食品添加剤として用いられるグルテン分解物であれば特に限定されるものではない。
麺皮に用いるグルテン分解物の量は、マンナンに対して質量比で2倍以上であって、マンナンに対して2.0〜2.5倍であることが好ましい。
【0015】
本発明の麺皮は、穀物粉、水、マンナン及びグルテン分解物以外に、他の副原料を含んでもよい。他の副原料として具体的には例えば、食塩、砂糖等の調味料、焼成カルシウム、植物性タンパク質、デンプン類、増粘多糖類、品質改良剤、酸化防止剤、乳化剤等の添加剤、油脂等が挙げられる。
焼成カルシウムとしては、一般的に食品添加剤として用いられる焼成カルシウムであれば特に限定されるものではなく、貝、殻、動物の骨等を焼成して得られる焼成カルシウムを用いることができる。
植物性タンパク質としては、一般的に食品添加剤として用いられる植物性タンパク質であれば特に限定されるものではなく、大豆等の豆類、小麦、トウモロコシ等の穀物由来のタンパク質を用いることができる。
油脂は固形油であっても液体油であってもよい。
【0016】
上記のような原料を用いて本発明の麺皮を得る方法は特に限定されるものではないが、例えば以下のようにして麺皮を製造することができる。まず、穀物粉に、水、マンナン、グルテン分解物、必要に応じて副原料を添加して、ミキサー等により混捏し、麺皮の生地を得る。次いで、得られた生地を圧延し、適切な厚さのシート状とした後、適宜熟成し、所定の形状に細断又は打ち抜くことにより本発明の麺皮を得ることができる。
麺皮の形状、大きさは特に限定されるものではなく、麺皮を用いる食品の種類に応じて適宜決定することができる。
麺皮の厚さは0.2〜2mmであることが好ましく、0.5〜1.0mmであることがより好ましく、0.8〜0.9mmであることがさらに好ましい。
【0017】
本発明の小龍包は、上記本発明の麺皮で具材を包み成形した後、加熱してなるものである。
具材としては例えば、豚肉、牛肉、鶏肉、魚肉等の肉類、ニラ、タマネギ、キャベツ、ショウガ、ニンニク等の野菜類、塩、胡椒、砂糖、酒等の調味料、ラード、大豆油、菜種油、胡麻油等の油脂類等が挙げられる。また、適宜、植物性タンパク質、デンプン類、乳化剤等の添加剤や、ゼラチンで固めたスープ等を用いてもよい。
なお、具材は、混捏して混捏物とした後に本発明の麺皮に包むため、肉類は挽肉や細切れ肉であることが好ましく、野菜類はみじん切り等により細断したものであることが好ましい。
具材を包み成形する方法は特に限定されるものではないが、例えば、麺皮の中央部に適当量の具材を載せ、麺皮の縁部をヒダ状にまとめて成形することができる。成形後の小龍包の形状は特に限定されるものではないが、例えば麺皮が円形である場合、麺皮の円周部をヒダ状にまとめて具材の上でひねり、具材を包埋して形成する半球状が挙げられる。
【0018】
成形した生小龍包は、75〜98℃で5〜15分間蒸すことにより、喫食可能な小龍包となる。
また、加熱処理後の小龍包を凍結させることにより、冷凍小龍包を得ることもできる。蒸された小龍包は、常法により凍結させることができる。例えば、エアーブラスト式凍結法、セミエアーブラスト式凍結法、コンタクト式凍結法等の凍結法に基づくフリーザーに設置して凍結してもよく、液化窒素や液化炭酸を噴霧して凍結させてもよい。
このようにして製造された冷凍小龍包は、蒸し器や家庭用マイクロ波装置等を用いて再加熱することにより喫食することができる。
【実施例】
【0019】
次に実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以下の実施例では、官能試験の各項目について5段階で評価を行い、10人のパネラーの平均値を各試験の結果とした。
【0020】
[実施例1]
製麺性、成形性、スープ漏れ抑制能及び調理性に対する、添加物の影響について検討した。
具体的には、表1に示す原料を混合し、粗延べ、複合及び圧延した後、小籠包を包む大きさに整えられたカッターで型抜きして(皮の厚さ0.85mm)、小龍包の皮を製造した。その後、豚挽肉とみじん切りにした野菜類を、塩、調味料、香辛料、調製水を加え、よく混捏することで得られた小龍包具材を、上記小龍包の皮1枚あたり7〜10gとなるように載せ、包み、成形し、生小龍包を得た。これらの生小龍包を、88〜90℃で9〜10分間蒸した。その後、−36〜40℃で急速冷凍し、冷凍小龍包を得た。得られた冷凍小龍包を、蒸し調理し、小龍包を得た。
小龍包の皮を製造する際の製麺性、皮で具材を包む際の成形性、小龍包を蒸した際のスープ漏れ抑制能及び小龍包の調理性をそれぞれ◎、○、△、×の4段階で評価した結果を表1に併記する。また、総合評価として、上記製麺性、成形性、スープ漏れ及び調理性の4段階評価を以下の基準で点数に換算した場合の合計点を表1に示す。
◎:3点
○:2点
△:1点
×:0点
【0021】
表1中の商品名はそれぞれ以下のものである。また、1−1〜1−7における「グルパール653」に含まれる粉体マンナン、グルテン分解物及び小麦デンプンの量を表2に示す。
「グルパール653」(商品名、片山化学工業研究所製):粉体マンナンとグルテン分解物と小麦デンプンとの混合粉体。
「レオレックスRS」(商品名、清水化学社製):粉体マンナン。
「グルパール632」(商品名、片山化学工業研究所製):グルテン分解物。
貝カルシウム(エヌシーコーポレーション製):焼成カルシウム。
「卵白宣言」(商品名、理研ビタミン社製):乾燥卵白。
「フジプロAE」(商品名、不二製油社製):粉末状大豆タンパク質。
「イナゲルV4」(商品名、伊那食品社製):増粘多糖類。
【0022】
【表1】

【0023】
【表2】

【0024】
上記実施例1の結果、マンナンを小麦粉100質量部に対して0.45〜1.1質量部含み、且つ、マンナンに対して質量比で2倍量以上のグルテン分解物を含む1−1〜1−6、1−8〜10の麺皮は、1−11及び1−12の粉末状大豆タンパク質や増粘多糖類を用いた麺皮に比してスープ漏れ抑制能及び調理性に優れ、1−7のマンナン含有割合の少ない麺皮に比して製麺性、成形性及び調理性のバランスに優れていることが確認できた。
【0025】
[実施例2]
製麺性、成形性、スープ漏れ、調理性及び食感に対する、皮の厚さの影響について、ラインスケールで小龍包を製造して検討した。
具体的には、実施例1の1−2と同様の配合比において、小麦粉を80kgベースのラインスケールで用い、成型機械を使用して麺皮を延ばしカッターで型抜きした皮に豚挽肉とみじん切りにした野菜類を、塩、調味料、香辛料、調整水等を加えて、混捏することで得られた具材を包み、10〜20分間成型を行うことによって小龍包を得、製麺性、成形性、調理性及び食感を上記同様に評価した。結果を表3に記載する。
【0026】
【表3】

【0027】
上記実施例2の結果、ラインスケールで小龍包を製造した際にも、マンナンを含むことで、スープ漏れ抑制等の効果が得られることが確認できた。
また、皮の厚みは現行と同じ0.85mmのものが食感に優れることが分かった。
【0028】
[実施例3]
スープ漏れ、皮表面の荒れ及びトップ部の硬さに対する、蒸し調理の時間の影響について、小龍包を製造して検討した。
具体的には、表4に示す時間で蒸し調理を行った以外は、上記実施例1の1−2と同様にして小龍包を得、スープ漏れ、皮表面の荒れ及びトップ部の硬さを4段階で評価した。トップ部の硬さは、半球状の小龍包の平坦部を底にして置いた際の、最上部(具材を包埋する際、ひねって閉じた部分)の硬さを評価したものである。結果を表4に併記する。
【0029】
【表4】

【0030】
上記実施例3の結果、マンナンを含む本発明の麺皮は、蒸し調理時間の長さに関わらずスープ漏れを効果的に抑止できることが確認できた。また、100℃で8分以上蒸し調理することにより、トップ部が柔らかくなり食感が向上することが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の麺皮は、麺皮を用いた食品の製造分野で好適に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀物粉と、水と、前記穀物粉100質量部に対して0.45〜1.1質量部のマンナンと、前記マンナンに対して質量比で2倍量以上のグルテン分解物とを含むことを特徴とする麺皮。
【請求項2】
前記穀物粉100質量部に対して、0.6〜0.8質量部の前記マンナンを含む請求項1に記載の麺皮。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の麺皮で具材を包み成形した後、加熱してなる小龍包。

【公開番号】特開2012−196151(P2012−196151A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61116(P2011−61116)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000140650)テーブルマーク株式会社 (55)
【Fターム(参考)】