説明

麺線乾燥装置

【課題】麺帯から切り出した直後の麺線表面を十分にかつ短時間で乾燥処理することができ、付着防止の加工澱粉を不要とすることができる麺線乾燥装置を提供すること。
【解決手段】 麺帯W1から複数の麺線W2を切り出すと共に1本おきに下方の2方向に振り分けて2組に分けて送り出す麺線切り出し機構2と、前記2組の麺線W2の振り分け間隔をさらに広げる振り分け拡大部材3と、振り分け間隔が広がった前記2組の麺線W2に対して空気,水蒸気又は過熱水蒸気を吹き付けて前記麺線W2の少なくとも表面を乾燥させる吹き付け機構4とを備え、該吹き付け機構4が、振り分けた前記組毎に麺線W2に空気,水蒸気又は過熱水蒸気を吹き付け可能に配設された少なくとも一対の噴出ノズル7を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラーメン用麺などの麺類の少なくとも表面を乾燥させる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ラーメン、うどん、そば、やきそば及びスパゲッティ等の麺類は、生麺の場合、麺線上に加工澱粉(いわゆる打ち粉)を撤布して1食づつ包材の中に入れて封印して流通、販売されている。上記加工澱粉は、麺線が互いに密着して団子状にならないように撤布しており、例えばラーメンの場合、1食に対して加工澱粉を約7〜8g使用しているため、その分、コスト高となっている。
【0003】
また、このように処理されたラーメン用麺類などは、ラーメン店等で茹で上げる際に、加工澱粉が茹で湯に溶解して茹で湯がどろどろ状態になってラーメン等を茹で上げることが困難になってしまう。これを防止するために、さし湯を常時行うか、茹で湯を定期的に全部取り換える作業を行う必要があり、手間であると共に費用がかかる不都合がある。
一方、生麺に対して冷凍麺は、加工澱粉を付着させておらず、茹で湯に加工澱粉が溶け込む不都合がないため、大量に麺類を使用する高速道路のサービスエリアや工場給食で採用されている。
【0004】
このため、生麺でも加工澱粉を用いずに麺線同士の付着を防止させることが要望されている。この対策として、従来、生麺の麺線を乾燥室で乾燥させる方法がある。
また、例えば特許文献1には、麺類の腰や歯ごたえ等の食感を得るためであるが、過熱水蒸気により麺線表面を乾燥させる麺類の加熱蒸気乾燥装置が提案されている。この装置は、いわゆる半生麺製法に用いられるものであり、切断された麺類がスティック状の保持体に二つ折り状態に吊り下げられた一般に島田掛けと言われる状態で搬送されると共に乾燥される形態を採用している。
【0005】
さらに、特許文献2には、製麺用カッターロールの下方に、切り出された麺線を左右に振り分ける振り分け板を配設し、左右に振り分けた麺線に空気を当てて乾燥させると共に、この空気により加工澱粉を飛散させて麺線に適当量だけ付着するようにする澱粉飛散装置を配設した麺線切断面付着防止装置も提案されている。なお、この装置による方法では、完全に付着防止を行うことが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−310191号公報
【特許文献2】特開平7−184525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、乾燥室で麺線を乾燥させる方法では、乾燥処理に時間がかかり過ぎ、実用的でないという不都合があった。また、特許文献1の技術では、加熱蒸気を吹き付けることで麺線が乾燥されるため、麺線同士の付着を防止可能であるが、麺帯から麺線を切り出した後、所定長さに切断すると共にスティック状の保持体に吊り下げるまでの間に、麺線同士が付着してしまう問題があった。また、特許文献2の技術では、切り出された麺線を振り分けた状態で空気を当てて乾燥させているが、加工澱粉を散布した麺線に空気を当てており、適当量の加工澱粉の付着を目的にしていると共に、2つに振り分けた麺線の一方から吹き付けているため、アンバランスな乾燥方法であり、他方側の麺線の表面に対して十分な乾燥処理を施すことが困難であった。
【0008】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、麺帯から切り出した直後の麺線の少なくとも表面を十分にかつ短時間で乾燥処理することができ、付着防止の加工澱粉を不要とすることができる麺線乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、本発明の麺線乾燥装置は、麺帯から複数の麺線を切り出すと共に1本おきに下方の2方向に振り分けて2組に分けて送り出す麺線切り出し機構と、前記2組の麺線の振り分け間隔をさらに広げる振り分け拡大部材と、振り分け間隔が広がった前記2組の麺線に対して空気,水蒸気又は過熱水蒸気を吹き付けて前記麺線の少なくとも表面を乾燥させる吹き付け機構とを備え、該吹き付け機構が、振り分けた前記組毎に前記麺線に空気,水蒸気又は過熱水蒸気を吹き付け可能に配設された少なくとも一対の噴出ノズルを有していることを特徴とする。
【0010】
この麺線乾燥装置では、吹き付け機構が、振り分け拡大部材によって振り分け間隔が広がった前記組毎に麺線に空気,水蒸気又は過熱水蒸気を吹き付け可能に配設された少なくとも一対の噴出ノズルを有しているので、振り分けられた2組の麺線毎に別々の噴出ノズルから空気,水蒸気又は過熱水蒸気が吹き付けられ、それぞれ十分にかつ瞬時に表面乾燥することができる。特に、切り出された麺線が2つに振り分けられるため、麺線間が広がり麺線周囲に効果的に空気,水蒸気又は過熱水蒸気が吹き付け可能になると共に、麺帯からの切り出し直後の麺線の表面を十分に乾燥させることができるため、その後の工程で麺線が互いに付着してしまうことを防ぐことができ、麺線を所定長さに切断する工程や搬送作業時の取り扱い等も容易となる。
【0011】
なお、吹き付け機構により麺線に吹き付ける気体としては、空気,水蒸気又は過熱水蒸気が選択可能である。例えば、麺類の種別の中で、一般的に日本そば、ラーメンのように細物と言われているものについては、空気を吹き付けることで表面乾燥させることが可能であるが、うどんのように日本そば、ラーメン等に対比して2〜4倍の断面積のある太物麺類または多加水麺については、空気よりも熱量の多い気体である過熱水蒸気を吹き付けることが好ましい。
【0012】
また、スパゲッティ用の麺又はスパゲッティ風の食感を有する麺などを製造する際には、吹き付け機構により空気,水蒸気又は過熱水蒸気の吹き付け程度(温度や流速)を調整することで、麺類の表面だけでなく内部(深部)までの全体を乾燥させる又は小麦粉の澱粉のα化を図ること(以下、全体乾燥と称す)も可能である。
【0013】
また、本発明の麺線乾燥装置は、前記噴出ノズルが、前記麺線の延在方向に間隔を空けて複数対設置されていることを特徴とする。
すなわち、この麺線乾燥装置では、噴出ノズルが、麺線の延在方向に間隔を空けて複数対設置されているので、一対の噴出ノズルだけでは麺線の表面乾燥又は全体乾燥が不十分である場合でも、複数段に設置された複数対の噴出ノズルで十分に表面乾燥又は全体乾燥させることができる。また、麺線の太さや切り出し速度等に応じて、空気,水蒸気又は過熱水蒸気を吹き出させる噴出ノズルの数を変更することができ、麺線の種類や製造速度に柔軟に対応することができる。
【0014】
また、本発明の麺線乾燥装置は、前記噴出ノズルが、前記麺線の並ぶ方向に延びて扁平な空気,水蒸気又は過熱水蒸気の吹き出し口を有していることを特徴とする。
すなわち、この麺線乾燥装置では、噴出ノズルが、前記麺線の並ぶ方向に延びて扁平な空気,水蒸気又は過熱水蒸気の吹き出し口を有しているので、幅広に並んだ複数の麺線の全体に扁平な吹き出し口により効率的に空気,水蒸気又は過熱水蒸気を吹き付けることができる。
【0015】
さらに、本発明の麺線乾燥装置は、前記噴出ノズルが、基端部に設けられ前記吹き出し口よりも流路幅の狭い空気,水蒸気又は過熱水蒸気の流入部と、該流入部から前記吹き出し口まで延在して内部を複数の個別流路に仕切ると共に前記流入部に供給された空気,水蒸気又は過熱水蒸気を前記吹き出し口全体に誘導する複数のガイド壁とを有していることを特徴とする。
すなわち、この麺線乾燥装置では、流入部から吹き出し口まで延在して内部を複数の個別流路に仕切ると共に流入部に供給された空気,水蒸気又は過熱水蒸気を吹き出し口全体に誘導する複数のガイド壁を有しているので、扁平な吹き出し口全体に空気,水蒸気又は過熱水蒸気が広がるようにガイド壁で誘導して幅広に並んだ麺線に一様に空気,水蒸気又は過熱水蒸気を吹き付けることが可能になる。
【0016】
また、本発明の麺線乾燥装置は、前記噴出ノズルが、前記個別流路毎に設けられ空気,水蒸気又は過熱水蒸気の流量を前記個別流路毎に調整する複数の開閉弁を備えていることが好ましい。
すなわち、この麺線乾燥装置では、噴出ノズルが、個別流路毎に設けられ空気,水蒸気又は過熱水蒸気の流量を個別流路毎に調整する複数の開閉弁を備えているので、例えば中央部分の個別流路と両端部分の個別流路とで空気,水蒸気又は過熱水蒸気の流量差が生じることを各開閉弁による調整で抑制でき、全体として流量のばらつきを抑えて、並んだ麺線全体の均一な表面乾燥又は全体乾燥が可能になる。
【0017】
また、本発明の麺線乾燥装置は、前記噴出ノズルが、複数の個別ノズルで構成され、これら個別ノズルが、前記麺線の並ぶ方向に並んだ空気,水蒸気又は過熱水蒸気の吹き出し口を有していることを特徴とする。
すなわち、この麺線乾燥装置では、噴出ノズルが、複数の個別ノズルで構成され、これら個別ノズルが、麺線の並ぶ方向に並んだ空気,水蒸気又は過熱水蒸気の吹き出し口を有しているので、幅広に並んだ複数の麺線に対して同様に並んで配された複数の個別ノズルの吹き出し口から空気,水蒸気又は過熱水蒸気を吹き付けて麺線全体を効率的に表面乾燥又は全体乾燥させることができる。
【0018】
さらに、本発明の麺線乾燥装置は、前記噴出ノズルが、前記個別ノズル毎に設けられ空気,水蒸気又は過熱水蒸気の流量を前記個別ノズル毎に調整する複数の流量調整バルブを備えていることが好ましい。
すなわち、この麺線乾燥装置では、噴出ノズルが、個別ノズル毎に設けられ空気,水蒸気又は過熱水蒸気の流量を個別ノズル毎に調整する複数の流量調整バルブを備えているので、各個別ノズルにおける空気,水蒸気又は過熱水蒸気の流量ばらつきを流量調整バルブによる調整で抑制でき、並んだ麺線全体の均一な表面乾燥又は全体乾燥が可能になる。
【0019】
また、本発明の麺線乾燥装置は、前記噴出ノズル内に設置された温度センサと、前記噴出ノズルへ空気,水蒸気又は過熱水蒸気を供給する供給管と、該供給管に取り付けられた電気ヒータと、前記温度センサおよび前記電気ヒータに電気的に接続され前記温度センサからの電気信号に基づいて前記噴射ノズル内の空気,水蒸気又は過熱水蒸気の温度を算出すると共に前記電気ヒータを制御して供給する空気,水蒸気又は過熱水蒸気の温度を調整する制御部とを備えていることを特徴とする。
すなわち、この麺線乾燥装置では、制御部が、温度センサからの電気信号に基づいて噴射ノズル内の空気,水蒸気又は過熱水蒸気の温度を算出すると共に電気ヒータを制御して供給する空気,水蒸気又は過熱水蒸気の温度を調整するので、麺線の表面乾燥又は全体乾燥に適した温度の空気,水蒸気又は過熱水蒸気を常に安定して供給することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る麺線乾燥装置によれば、吹き付け機構が、振り分け拡大部材によって振り分け間隔が広がった前記組毎に麺線に空気,水蒸気又は過熱水蒸気を吹き付け可能に配設された少なくとも一対の噴出ノズルを有しているので、麺帯からの切り出し直後であって2方向に振り分けられた2組の麺線毎に別々の噴出ノズルで十分にかつ瞬時に表面乾燥させることができる。したがって、麺線の付着防止用に加工澱粉が不要になり、茹で湯の良好な状態を維持できると共に、低コスト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る第1実施形態の麺線乾燥装置において、全体の構成を概略的に示す正面図である。
【図2】第1実施形態において、麺線乾燥装置の全体の構成を概略的に示す斜視図である。
【図3】第1実施形態において、麺線に対する一対の噴出ノズルを示す平面図である。
【図4】本発明に係る第2実施形態の麺線乾燥装置において、麺線に対する一対の噴出ノズルを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る麺線乾燥装置の第1実施形態を、図1から図3を参照しながら説明する。
【0023】
本実施形態の麺線乾燥装置1は、図1および図2に示すように、麺帯W1から複数の麺線W2を切り出すと共に1本おきに下方の2方向に振り分けて2組に分けて送り出す麺線切り出し機構2と、前記2組の麺線W2の振り分け間隔をさらに広げる振り分け拡大部材3と、振り分け間隔が広がった前記2組の麺線W2に対して過熱水蒸気を吹き付けて麺線W2の少なくとも表面を乾燥させる吹き付け機構4とを備えている。
【0024】
なお、本実施形態の吹き付け機構4では、過熱水蒸気を吹き付け可能としているが、細物用の麺線W2等の場合では、過熱水蒸気の代わりに空気又は通常の水蒸気を吹き付け可能にしても構わない。また、供給源およびバルブの切り替え等により過熱水蒸気と空気と水蒸気とを任意に切り替え可能とし、いずれかを選択して吹き付け可能な吹き付け機構としても構わない。
【0025】
上記麺線切り出し機構2は、麺生地を圧延して帯状に形成された麺帯W1を挟持して下方に送り出す一対のローラ5と、下方に送り出された麺帯W1を複数の麺線W2に切断する一対の製麺用カッターロール6とを備えている。これら一対の製麺用カッターロール6は、それぞれ外周に複数の冠状の溝と刃部とが交互に形成されており、互いに回転可能に噛み合うように平行に隣接配置されている。これら一対の製麺用カッターロール6が、回転しながら噛み合うことで、麺帯W1を複数の麺線W2に切断しつつ下方に切り出すことができる。また、一対の製麺用カッターロール6は、切断時に溝内の麺線W2が1本おきに図1の左右の2方向に振り分けられて下方に切り出されるように溝の形状や配置等が設定されている。
【0026】
上記振り分け拡大部材3は、一対の製麺用カッターロール6の直下に配されて軸線を水平配置させた三角柱状の部材である。すなわち、この振り分け拡大部材3は、左右に振り分けられた麺線W2の間に稜線部を配して、該稜線部の両側に2方向に傾いた2つの傾斜面を配した形状を有している。この振り分け拡大部材3により、左右に振り分けられた麺線W2が2つの傾斜面によってさらに振り分け間隔(2方向に振り分けられた一方の方向の麺線W2と他方の方向の麺線W2との間隔、すなわち振り分けられた2組の麺線W2の間隔)を広げられて下方に送り出されるようになっている。
【0027】
なお、本実施形態では、振り分け拡大部材3として三角柱状の部材を採用しているが、左右に振り分けられた麺線W2をさらに振り分け間隔を広げるようにそのまま左右に分けることができる形状であれば、断面山形状、断面逆V字状の部材などの他の形状でも構わない。
【0028】
上記吹き付け機構4は、振り分けた前記組毎に麺線W2に過熱水蒸気を吹き付け可能に配設された少なくとも一対の噴出ノズル7と、これら噴出ノズル7に過熱水蒸気供給管8aを介して接続されこれらに過熱水蒸気を供給する蒸気発生源8とを有している。なお、本実施形態では、噴出ノズル7が、振り分けられた麺線W2の延在方向、すなわち上下方向に間隔を空けて二対設置されている。すなわち、上段の一対の噴出ノズル7と、下段の一対の噴出ノズル7とが設置されている。
【0029】
噴出ノズル7から吹き出させる過熱水蒸気は、100℃〜1000℃以上の高温状態とされた過熱水蒸気であり、特に150〜200℃の温度の過熱水蒸気が好ましい。本実施形態では、例えば200℃で毎分50Lの流速で、並び幅215mmの麺線W2に吹き付けるように設定されている。なお、単なる空気、熱風または乾燥空気を麺線W2に吹き付ける場合では、麺線W2の表面を乾燥させるのに長い時間が必要であったり、逆に表面だけでなく必要以上に内部まで乾燥させてしまったりという不都合が生じる。これに対して、本実施形態の麺線W2に過熱水蒸気を吹き付けることにより、数秒の短時間で麺線W2の表面だけを良好に乾燥させることができる。
なお、噴出ノズル7から吹き出させる過熱水蒸気の温度や流速を調整することで、麺線W2を完全乾燥させてスパゲッティ又はスパゲッティ風の麺類などを作製することも可能である。
【0030】
上記蒸気発生源8は、水から水蒸気を発生させると共に所定の高温状態および圧力状態にして過熱水蒸気を供給するボイラー等の蒸気発生装置である。
上記噴出ノズル7は、図2および図3に示すように、麺線W2の並ぶ方向に延びて扁平な過熱水蒸気の吹き出し口7aを有している。すなわち、噴出ノズル7の吹き出し口7aは、製麺用カッターロール6とほぼ同じ長さに設定されている。
【0031】
さらに、この噴出ノズル7は、基端部に設けられ吹き出し口7aよりも流路幅の狭い過熱水蒸気の流入部7bと、該流入部7bから吹き出し口7aまで延在して内部を複数の個別流路7dに仕切ると共に流入部7bに供給された過熱水蒸気を吹き出し口7a全体に誘導する複数のガイド壁7cとを有している。したがって、流入部7bに供給された過熱水蒸気は、複数のガイド壁7cで仕切られた複数の内部流路を介して吹き出し口7aまで誘導され、吹き出し口7a全体から吹き出すように設定されている。
【0032】
また、噴出ノズル7は、上記個別流路7d毎に設けられ過熱水蒸気の流量を個別流路7d毎に調整する複数の開閉弁7eを備えている。すなわち、複数のガイド壁7cで仕切られた複数の個別流路7dにおける各流路面積を開閉により調整可能な開閉弁7eが各個別流路7dの基端部に設けられている。
【0033】
例えば、過熱水蒸気の流量が比較的多い中央部の個別流路7dにおいては、開閉弁7eにより流路面積を小さく設定すると共に、過熱水蒸気の流量が比較的少ない両端部の個別流路7dにおいては、開閉弁7eにより流路面積を大きく設定することで、噴出ノズル7全体で過熱水蒸気の流量を均一化させて噴出させる。なお、各開閉弁7eは、直接手動で流路面積の開口量を調整可能であっても、CPU等で構成される制御部に電気的に接続されて遠隔操作により調整可能であっても構わない。
【0034】
また、本実施形態の麺線乾燥装置1は、各噴出ノズル7内に設置された温度センサSと、過熱水蒸気供給管8aに取り付けられた電気ヒータHと、温度センサSおよび電気ヒータHに電気的に接続され温度センサSからの電気信号に基づいて各噴出ノズル7内の過熱水蒸気の温度を算出すると共に電気ヒータHを制御して供給する過熱水蒸気の温度を調整する制御部Cとを備えている。
【0035】
次に、本実施形態の麺線乾燥装置による麺線の乾燥方法について説明する。
まず、一対のローラ5から下方に送り出された麺帯W1を、一対の製麺用カッターロール6によって複数の麺線W2に切断すると共に、これら麺線W2を下方に切り出す際に1本おきに左右に振り分ける。
【0036】
すなわち、一対の製麺用カッターロール6が麺帯W1を挟んで噛み合い、麺線W2に切断した際には、一対の製麺用カッターロール6の溝内に麺線W2が入っているが、製麺用カッターロール6の回転によって送り出される際に、一対の製麺用カッターロール6の一方側と他方側との左右に1本毎に振り分けられて一対の製麺用カッターロール6から垂れ下がるようにして下方に送り出される。さらに、1本おきに左右に振り分けられた麺線W2は、それぞれ振り分け拡大部材3の2つの傾斜面に沿ってその振り分け間隔が広げられて2組の麺線W2に分けられて下方に送られる。
【0037】
次に、2組に分けられた麺線W2に対して、上段および下段の二対の噴出ノズル7によって両側から過熱水蒸気が幅方向全体に吹き付けられる。このとき、麺線W2の両側に一対の噴出ノズル7が配されているので、麺線W2の外周を構成する4面のうち噴出ノズル7に対向する2面にそれぞれ過熱水蒸気が吹き付けられる。また、麺線W2は、1本おきに振り分けられているため、隣接する麺線W2の間に1本分の間隔があることから、麺線W2の切断面である2面にも過熱水蒸気が吹き付けられる。したがって、麺線W2の外周4面の全てに過熱水蒸気が吹き付けられるので、外周全体にわたって表面が乾燥される。
【0038】
なお、上記では、二対の噴出ノズル7から過熱水蒸気を吹き付けているが、麺線W2の太さや切り出し速度等に応じて、二対同時又はいずれか一対のみから過熱水蒸気を吹き付ける設定にしても構わない。例えば、麺線W2が細い場合は、1段目の一対の噴出ノズル7だけから過熱水蒸気を吹き出させて十分に表面乾燥又は全体乾燥可能であるが、麺線W2が太い場合で、1段目の一対の噴出ノズル7だけでは不十分な場合、1段目に加えて下流側の2段目の一対の噴出ノズル7からも過熱水蒸気を麺線W2に吹き付けることで、太い麺線W2の表面又は全体(表面から内部まで)を十分に乾燥又はα化させることができる。また、対毎に噴出ノズルから吹き出させる過熱水蒸気の温度や流速等の設定を変更することで、麺線W2の表面乾燥又は全体乾燥を効果的に行うことも可能になる。
【0039】
また、各噴出ノズル7から吹き付ける過熱水蒸気の温度は、温度センサSにより測定され、測定された温度が所定温度範囲から外れている場合、制御部Cが電気ヒータHをコントロールして過熱水蒸気供給管8aを流通する過熱水蒸気の温度を調整することで、吹き付ける過熱水蒸気が所定温度に調整される。例えば、麺線W2の表面乾燥に適した160〜200℃の範囲内で、過熱水蒸気の温度が一定に調整される。
【0040】
このように本実施形態の麺線乾燥装置1では、吹き付け機構4が、振り分け拡大部材3によって振り分け間隔が広がった前記組毎に麺線W2に過熱水蒸気を吹き付け可能に配設された少なくとも一対の噴出ノズル7を有しているので、振り分けられた2組の麺線W2毎に別々の噴出ノズル7から過熱水蒸気が吹き付けられ、それぞれ十分にかつ瞬時に表面乾燥又は全体乾燥することができる。
【0041】
特に、切り出された麺線W2が2つに振り分けられるため、麺線W2間が広がり、麺線W2周囲に効果的に過熱水蒸気が吹き付け可能になると共に、麺帯W1からの切り出し直後の麺線W2の表面又は全体(表面から内部まで)を十分に乾燥又はα化させることができるため、その後の工程で麺線W2が互いに付着してしまうことを防ぐことができ、麺線W2を所定長さに切断する工程や搬送作業時の取り扱い等も容易となる。
【0042】
また、噴出ノズル7が、麺線W2の延在方向に間隔を空けて複数対設置されているので、一対の噴出ノズル7だけでは麺線W2の表面乾燥又は全体乾燥が不十分である場合でも、複数段に設置された複数対の噴出ノズル7で十分に表面乾燥又は全体乾燥させることができる。例えば、麺類の種別の中で日本そば、ラーメンのような細物用の麺線に対しては、一対の噴出ノズル7だけで十分に表面乾燥させることができるが、細物よりも大きな断面積を有するうどんのような太物麺類、特に多加水麺等に用いる麺線に対しては、二段、三段等の複数段に設置された複数対の噴出ノズル7で表面乾燥させる必要がある。
また、麺線W2の太さや切り出し速度等に応じて、過熱水蒸気を吹き出させる噴出ノズル7の数を変更することができ、麺線の種類や製造速度に柔軟に対応することができる。
【0043】
さらに、噴出ノズル7が、麺線W2の並ぶ方向に延びて扁平な過熱水蒸気の吹き出し口7aを有しているので、幅広に並んだ複数の麺線W2の全体に扁平な吹き出し口7aにより効率的に過熱水蒸気を吹き付けることができる。
また、噴出ノズル7が、流入部7bから吹き出し口7aまで延在して内部を複数に仕切ると共に流入部7bに供給された過熱水蒸気を吹き出し口7a全体に誘導する複数のガイド壁7cを有しているので、扁平な吹き出し口7a全体に過熱水蒸気が広がるようにガイド壁7cで誘導して幅広に並んだ麺線W2に一様に過熱水蒸気を吹き付けることが可能になる。
【0044】
また、噴出ノズル7が、個別流路7d毎に設けられ過熱水蒸気の流量を個別流路7d毎に調整する複数の開閉弁7eを備えているので、例えば中央部分の個別流路7dと両端部分の個別流路7dとで過熱水蒸気の流量差が生じることを各開閉弁7eによる調整で抑制でき、全体として流量のばらつきを抑えて、並んだ麺線W2全体の均一な表面乾燥又は全体乾燥が可能になる。
【0045】
また、制御部Cが、温度センサSからの電気信号に基づいて噴出ノズル7内の過熱水蒸気の温度を算出すると共に電気ヒータHを制御して供給する過熱水蒸気の温度を調整するので、麺線W2の表面乾燥又は全体乾燥に適した温度の過熱水蒸気を常に安定して供給することができる。
【0046】
次に、本発明に係る麺線乾燥装置の第2実施形態について、図4を参照して以下に説明する。なお、以下の実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0047】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、噴出ノズル7が麺線W2の並ぶ方向に延びて扁平な吹き出し口7aを有しているのに対し、第2実施形態の麺線乾燥装置では、図4に示すように、噴出ノズル27が、複数の個別ノズル27dで構成され、これら個別ノズル27dが、麺線W2の並ぶ方向に並んだ過熱水蒸気の吹き出し口27aを有している点である。
【0048】
すなわち、第2実施形態では、噴出ノズル27が、蒸気発生源8からの過熱水蒸気供給管8aに接続部27bを介して基端部が接続された複数の管状の個別ノズル27dを備えている。各個別ノズル27dは、麺線W2に対向状態にした吹き出し口27aを麺線W2の並ぶ方向に一列に並べて配管されている。なお、個別ノズル27dは、吹き出し口27aが麺線W2の並ぶ方向に扁平な開口部とされた平型水平ノズルである。また、温度センサSは、噴出ノズル27の接続部27d内に設置されている。
【0049】
また、この噴出ノズル27は、個別ノズル27d毎に設けられ過熱水蒸気の流量を個別ノズル27d毎に調整する複数の流量調整バルブ27eを備えている。これらの流量調整バルブ27eは、例えばボールバルブが採用される。
すなわち、複数の個別ノズル27dにおける流路面積をボールバルブ開閉により調整可能な流量調整バルブ27eが各個別ノズル27dの中間部に設けられている。
【0050】
例えば、各個別ノズル27dにおいて過熱水蒸気の流量(各吹き出し口27aからの風量)にばらつきが生じている場合、各流量調整バルブ27eによる各個別ノズル27dの風量調整を行い、噴出ノズル27全体で過熱水蒸気の流量を均一化させて噴出させる。なお、各個別ノズル27dは、直接手動で流量を調整可能であっても、CPU等で構成される制御部に電気的に接続されて遠隔操作により調整可能であっても構わない。
【0051】
このように第2実施形態の麺線乾燥装置では、噴出ノズル27が、複数の個別ノズル27dで構成され、これら個別ノズル27dが、麺線W2の並ぶ方向に並んだ過熱水蒸気の吹き出し口27aを有しているので、幅広に並んだ複数の麺線W2に対して同様に並んで配された複数の個別ノズル27dの吹き出し口27aから過熱水蒸気を吹き付けて麺線W2全体を効率的に表面乾燥又は全体乾燥させることができる。
【0052】
また、噴出ノズル27が、個別ノズル27d毎に設けられ過熱水蒸気の流量を個別ノズル27d毎に調整する複数の流量調整バルブ27eを備えているので、各個別ノズル27dにおける過熱水蒸気の流量ばらつきを流量調整バルブ27eによる調整で抑制でき、並んだ麺線W2全体の均一な表面乾燥又は全体乾燥が可能になる。
【0053】
なお、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。
【0054】
例えば、本発明では、特に麺線の表面だけを乾燥させる場合に好適であるが、上述したように麺線の表面だけでなく内部(深部)までの全体を乾燥させる又は小麦粉の澱粉のα化を図る場合にも適している。
また、麺線の表面乾燥を行う場合は、上述したように過熱水蒸気を麺線に吹き付けることが好ましいが、麺線をα化させる場合等では、上記過熱水蒸気ではなく、通常の水蒸気を麺線に噴出ノズルから吹き付けるようにしても構わない。
【0055】
本発明の麺線乾燥装置によってスパゲッティ風の麺を製造する場合には、麺用粉にて造った麺線に、吹き付け機構により120℃前後の過熱水蒸気で数秒間吹き付ける。この際、3段又は4段の噴出ノズルを設置して吹き付けを行う。例えば、麺線幅1.5mm、厚さ1.5mmのラーメン生地を、対向する噴出ノズルの間隔約3cmの中間に2〜3秒通過させると、小麦粉の澱粉が内部までα化され、スパゲッティ風の食感を有する麺が得られる。なお、麺線の太さにより、噴出ノズルの段数通過の秒数は、適宜変更されて設定される。
【0056】
また、本発明の麺線乾燥装置によって焼きそば用の麺を製造する場合には、上記スパゲッティ風の麺を製造する場合と同様に、過熱水蒸気の吹き付けを行うが、噴出ノズルから吹き出される過熱水蒸気の温度と吹き出し蒸気量とを上記よりも弱くするか、対向する噴出ノズルの間隔を広げて静かに過熱水蒸気を当てて蒸すようにすることで、焼きそば用の麺が得られる。
【0057】
さらに、上記のスパゲッティ風の麺を製造する場合や焼きそば用の麺を製造する場合、最下段の噴出ノズルから、水蒸気又は過熱水蒸気と、サラダ油等の油とを混合して麺線に噴霧することが好ましい。この場合、例えばこの麺線乾燥装置によって作製された焼きそば用の麺では、予め麺線に油が付着しているので、鉄板上で加熱しながら粉末ソース等をふりかけて麺線をほぐす際に、麺が絡み難く、ほぐれ易くなる。これにより、従来、寸胴などに麺線を入れ油を加えてかき回していた事前の手間が省略される。
【符号の説明】
【0058】
1…麺線乾燥装置、2…麺線切り出し機構、3…振り分け拡大部材、4…吹き付け機構、7,27…噴出ノズル、7a,27a…吹き出し口、7b…流入部、7c…ガイド壁、7d…個別流路、7e…開閉弁、27d…個別ノズル、27e…流量調整バルブ、C…制御部、H…電気ヒータ、S…温度センサ、W1…麺帯、W2…麺線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺帯から複数の麺線を切り出すと共に1本おきに下方の2方向に振り分けて2組に分けて送り出す麺線切り出し機構と、
前記2組の麺線の振り分け間隔をさらに広げる振り分け拡大部材と、
振り分け間隔が広がった前記2組の麺線に対して空気,水蒸気又は過熱水蒸気を吹き付けて前記麺線の少なくとも表面を乾燥させる吹き付け機構とを備え、
該吹き付け機構が、振り分けた前記組毎に前記麺線に空気,水蒸気又は過熱水蒸気を吹き付け可能に配設された少なくとも一対の噴出ノズルを有していることを特徴とする麺線乾燥装置。
【請求項2】
請求項1に記載の麺線乾燥装置において、
前記噴出ノズルが、前記麺線の延在方向に間隔を空けて複数対設置されていることを特徴とする麺線乾燥装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の麺線乾燥装置において、
前記噴出ノズルが、前記麺線の並ぶ方向に延びて扁平な空気,水蒸気又は過熱水蒸気の吹き出し口を有していることを特徴とする麺線乾燥装置。
【請求項4】
請求項3に記載の麺線乾燥装置において、
前記噴出ノズルが、基端部に設けられ前記吹き出し口よりも流路幅の狭い空気,水蒸気又は過熱水蒸気の流入部と、
該流入部から前記吹き出し口まで延在して内部を複数の個別流路に仕切ると共に前記流入部に供給された空気,水蒸気又は過熱水蒸気を前記吹き出し口全体に誘導する複数のガイド壁とを有していることを特徴とする麺線乾燥装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の麺線乾燥装置において、
前記噴出ノズルが、複数の個別ノズルで構成され、
これら個別ノズルが、前記麺線の並ぶ方向に並んだ空気,水蒸気又は過熱水蒸気の吹き出し口を有していることを特徴とする麺線乾燥装置。
【請求項6】
請求項4に記載の麺線乾燥装置において、
前記噴出ノズルが、前記個別流路毎に設けられ空気,水蒸気又は過熱水蒸気の流量を前記個別流路毎に調整する複数の開閉弁を備えていることを特徴とする麺線乾燥装置。
【請求項7】
請求項5に記載の麺線乾燥装置において、
前記噴出ノズルが、前記個別ノズル毎に設けられ空気,水蒸気又は過熱水蒸気の流量を前記個別ノズル毎に調整する複数の流量調整バルブを備えていることを特徴とする麺線乾燥装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の麺線乾燥装置において、
前記噴出ノズル内に設置された温度センサと、
前記噴出ノズルへ空気,水蒸気又は過熱水蒸気を供給する供給管と、
該供給管に取り付けられた電気ヒータと、
前記温度センサおよび前記電気ヒータに電気的に接続され前記温度センサからの電気信号に基づいて前記噴射ノズル内の空気,水蒸気又は過熱水蒸気の温度を算出すると共に前記電気ヒータを制御して供給する空気,水蒸気又は過熱水蒸気の温度を調整する制御部とを備えていることを特徴とする麺線乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−106521(P2013−106521A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240755(P2011−240755)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000181479)
【Fターム(参考)】