説明

麺類の復元、茹で上がり改良剤、麺類及びその製造方法

【課題】麺類の製造に用いて、麺厚が厚くても、麺類の短時間での熱水復元又は茹で上がりを可能とし、麺類に良好な食感を付与する麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤、該麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を用いて製造した良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】アセチル化酸化澱粉を有効成分とする麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤、該麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を用いた麺類の製造方法、及び、該麺類の製造方法により製造された良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類からなる。本発明のアセチル化酸化澱粉を有効成分とする麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤は、麺類の製造において、原料粉に配合することにより、麺厚が厚い麺類であっても従来の麺類と同じ時間で復元又は茹で上がりが可能で、かつ良好な食感を付与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類の製造に用いて、麺厚が厚くても、麺類の短時間での熱水復元又は茹で上がりを可能とし、麺類に良好な食感を付与する麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤、該復元又は茹で上がり時間改良剤を用いて製造した、良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
麺類には、従来、小麦粉を主原料として製造されているうどん、そば、中華麺、ワンタン等が知られている。また、麺類の形態には、基本的には小麦粉に食塩水又はかんすいを加えて混捏、圧延して麺帯とし、これを麺線に裁断した形態(生麺)、裁断した麺線を更に乾燥した形態(乾麺)、裁断後茹で上げた形態(茹で麺)、茹で麺を酸処理して保存性を高めたLL麺、そして裁断→蒸煮→乾燥(又はフライ)の形態(即席麺)が知られている。
【0003】
乾麺を含む麺類の湯戻り時間又は茹で上がり時間の短縮方法については、例えば、原料粉にα化澱粉を添加することにより熱湯復元性が優れ、滑らかで良好な食感を有する麺類を製造する方法(特許文献1)、卵黄又は全卵のホスホリパーゼ処理物を用いる方法(特許文献2)、ポリデキストロース等を添加する方法(特許文献3)、タンパク質脱アミド酵素を添加する方法(特許文献4)等を挙げることができる。しかし、これらの方法は復元性又は茹で上がり時間短縮という点で十分満足できる効果ではなく、湯戻り時間又は茹で上がり時間短縮という重要な機能をさらに向上させる方法の確立が望まれている。
【0004】
生麺や茹で麺の場合にも茹で上がり時間の短縮という課題が存在する。例えば、つけ麺(太中華麺)は通常の中華麺よりも麺厚が厚いので、茹で上がり時間が長くなるという問題がある。即席麺は油揚げ麺とノンフライ麺に大別され、小麦粉や澱粉を主体とする穀粉原料に加水をして麺生地とし、蒸し工程後に乾燥工程として油揚げ処理を施したものが油揚げ麺であり、一方、蒸し工程後に乾燥工程として熱風乾燥を施したものがノンフライ麺である。通常、うどん、中華麺、そば等の即席麺は上記のいずれかの方法で製造される。これらの食品は熱水を加えて、短時間で戻して喫食するものである。
【0005】
従来、即席麺の復元性を改善するために、即席麺の原料粉に各種の配合成分を配合することが提案されている。該即席麺の復元性を改善するために、澱粉或いは加工処理されたアセチル澱粉、エーテル澱粉、酸化澱粉、α化澱粉を原料に数%添加する方法が行われている。また、即席麺の復元性を改善するために、乳化剤や増粘剤、澱粉分解物なども使われている。しかし、これらの方法では麺厚が厚くなるに従って効果が薄れることや食感が良好でない事が問題点として挙げられる。
【0006】
例えば、特許文献5には、即席麺の製造において、小麦粉、そば粉等の主原料に馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉、コーンスターチ、小麦澱粉、米澱粉、α化澱粉、アセチル澱粉(酢酸澱粉ともいう)、エーテル化及びエステル化澱粉を単独又は併用して2〜50重量%添加配合し、蒸し麺を60℃以上〜100℃未満の熱風で乾燥する一次乾燥と、不活性ガスからなる100〜160℃の高温熱風を噴射して乾燥する二次膨化乾燥を組み合わせることで、復元性がよく、生麺的な優れた食感食味を有する即席麺が得られることが記載されている。しかしながら、これらの方法では従来よりも麺厚が厚い即席麺のような場合には、復元性が悪くなることや澱粉添加量を増やすと製麺適性や食感の悪化を招くという問題がある。
【0007】
また、別の改良方法として、特許文献6に開示の方法が挙げられる。この方法は、原料粉を製麺、蒸煮後、油揚げ或いは非油揚げ乾燥し、即席麺を製造するに際して、澱粉スラリーを油脂の共存下で加熱してなる、油脂分離度が50%以下及び付着度が5%以下である油脂α化澱粉質を原料粉に配合することによって、短時間の湯戻しが可能となり、復元させた麺が滑らかさに富む良好な口当たり、及び弾力に富む良好な食感を有する即席麺を製造する方法である。しかしながら、この方法は油脂でコーティングした澱粉を使用するので、蒸し工程の際に澱粉のα化が抑制されてしまい、油揚げのムラや戻りムラができてしまう。このため製造時の麺帯の水分をあげて蒸し効率を上げるなどの改良が必要となる。
【0008】
更に、別の改良方法としては、特許文献7に開示の方法が挙げられる。この方法では、小麦粉と共に酸化澱粉を、麺原料全体重量中、好ましくは3〜30%、より好ましくは5〜20%用いることによって、麺厚が厚く、高圧で押出し形成された麺類であっても、熱水復元性が飛躍的に向上することが示されている。しかしながら、この方法では、従来よりも麺の厚さが厚いものでは、復元性が悪くなること、酸化澱粉を使用しているために、喫食した際にボリューム感が出ないという欠点がある。
【0009】
上記のように、従来より、麺類の復元又は茹で上がり時間改良素材として澱粉類を用いることが行われており、麺類の製造において、麺類の喫食時の復元又は茹で上がり時間の改良のために、澱粉類からなる麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を用いることは、麺類の味覚への影響等を考慮すれば、好ましいものであるが、従来のものは、麺類の良好な復元又は茹で上がり時間と優れた食感という観点から必ずしも満足のいけるものではない。特に、麺厚が厚い麺類の場合に対して、良好な復元又は茹で上がり時間と優れた食感を得ることが難しい。したがって、麺厚の厚い麺類に対しても、良好な復元又は茹で上がり時間と優れた食感を付与する麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤の更なる開発が望まれるところである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭59−74961号公報。
【特許文献2】特開2003−210125号公報。
【特許文献3】特開2008−22790号公報。
【特許文献4】特開2009−219419号公報。
【特許文献5】特開2000−210041号公報。
【特許文献6】特開2005−34104号公報。
【特許文献7】特開平6−237719号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、喫食時の復元又は製造時の茹で上がり時間において、麺厚の厚い麺類の場合に対しても、復元又は茹で上がり時間を延長することなく、かつ良好な食感を付与する、麺類用復元又は茹で上がり時間改良素材、すなわち、復元又は茹で上がり時間改良剤(湯戻り又は茹で上がり時間改善剤)を提供することにある。すなわち、本発明の課題は、麺類の製造に用いて、麺厚が厚くても短時間での熱水復元又は茹で上がりを可能とし、麺類に良好な食感を付与する麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤、該麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を用いて製造した、良好な熱水復元又は茹で上がり時間短縮と優れた食感とを有する麺類及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、澱粉類を主体とする麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤について鋭意検討する中で、アセチル化酸化澱粉を、麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤として用い、該麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を原料粉に配合することにより、麺厚が厚い油揚げ麺又はノンフライ麺であっても従来の麺類と同じ時間で復元でき、かつ良好な食感を付与することができることを見出し、又、即席麺以外の麺類においても茹で上がり時間の短縮が可能であることを見出した。本発明はこれらの知見に基いて達成された。すなわち、本発明は、アセチル化酸化澱粉を有効成分とする麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤、該麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を用いた麺類の製造方法、及び、該麺類の製造方法により製造された良好な熱水復元又は茹で上がり時間性と優れた食感とを有する麺類からなる。
【0013】
本発明者らは、前記課題を解決するために、澱粉類を素材とし、麺厚が厚い油揚げ麺又はノンフライ麺のような即席麺であっても、従来の麺類と同じ時間で復元でき、また、即席麺以外の麺類においても茹で上がり時間の短縮が可能であり、かつ食感が良好となる方法について検討を行った。その結果、まず澱粉の種類や加工度の高い酸化澱粉を使用して試験を行ったが、復元又は茹で上がり時間は比較的良好なものの食感にボリューム感が出ないことがわかった。そこで、更に検討した結果、酸化澱粉にアセチル化処理を行ったアセチル化酸化澱粉が、復元又は茹で上がり時間短縮と食感(粘り感)の双方に有効であることが判明し、本発明を完成するに至った。
【0014】
本発明において、麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤として用いるアセチル化酸化澱粉は、20%溶液を30℃においてBM型粘度計で測定した粘度が10〜1000cpsであるように調製されていることが望ましい。該アセチル化酸化澱粉の粘度の調整は、酸化剤濃度によって調整することができる。本発明の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を用いた麺類の製造方法は、麺類の製造において、原料粉に本発明の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を配合することを特徴とする。本発明の麺類の製造方法により、良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類を製造することができる。
【0015】
本発明の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を用いた麺類の製造方法において、麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤の原料粉への配合割合は、うどん、中華麺及びそば等の和風及び中華即席麺、パスタ、マカロニ等の洋風即席麺のような復元時間を改良した即席麺の場合は、原料粉中、アセチル化酸化澱粉として1〜8質量%であることが望ましい。また、即席麺以外の麺類において、茹で上がり時間を改良した麺類の場合は、原料粉中、アセチル化酸化澱粉として1〜40質量%であることが望ましい。本発明は、本発明の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を用いた麺類の製造方法によって製造された、良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類を包含する。
【0016】
すなわち具体的には本発明は、(1)アセチル化酸化澱粉を有効成分とする麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤や、(2)アセチル化酸化澱粉が、20%溶液を30℃においてBM型粘度計で測定した粘度が10〜1000cpsであるように調整されていることを特徴とする上記(1)記載の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤や、(3)アセチル化酸化澱粉の粘度の調整が、酸化剤濃度によって調整されていることを特徴とする上記(2)に記載の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤や、(4)麺類の復元時間が、即席麺の湯戻しの時間であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤や、(5)麺類の茹で上がり時間が、麺類の茹で上げのための時間であることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤からなる。
【0017】
また、本発明は、(6)麺類の製造において、原料粉に上記(1)〜(3)のいずれか記載の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を配合することを特徴とする良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類の製造方法や、(7)熱水復元時間が、即席麺の湯戻しの時間であることを特徴とする上記(6)記載の麺類の製造方法や、(8)茹で上がり時間が、麺類の茹で上げのための時間であることを特徴とする上記(6)記載の麺類の製造方法や、(9)麺類の復元時間を改良した即席麺の製造において、麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤の原料粉への配合割合が、原料粉中、アセチル化酸化澱粉として1〜8質量%であることを特徴とする上記(6)に記載の良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類の製造方法や、(10)茹で上がり時間を改良した麺類の製造において、麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤の原料粉への配合割合が、原料粉中、アセチル化酸化澱粉として1〜40質量%であることを特徴とする上記(6)に記載の良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類の製造方法や、(11)上記(6)〜(10)のいずれか1項に記載の麺類の製造方法によって製造された良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類からなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、麺類の製造に用いて、麺厚が厚くても、従来と同じ短時間での麺類の復元又は茹で上がりが可能で、しかも良好な食感を付与する麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤、該麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を用いて製造した良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類及びその製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、アセチル化酸化澱粉を有効成分とする麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤、該麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を用いた麺類の製造方法、及び、該麺類の製造方法により製造された良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類からなる。
【0020】
麺類とは、小麦粉又はその他の穀粉及びその他の原材料に加水混練して製麺したものを指し、麺類を特に限定するものではない。例えば、うどん、中華麺、皮類、和そば、素麺、冷麦、冷麺、ビーフン、きしめん、マカロニ、パスタ等が挙げられる。麺類の形態は特に限定されるものではないが、生麺、茹で麺、蒸し麺、生タイプ即席麺(LL麺)、即席麺、乾麺、冷凍麺、調理麺のいずれであってもよい。
【0021】
本発明における麺類は、うどん、そば、中華麺、パスタ、マカロニ等の和風、中華風及び洋風の麺類であり、小麦粉を主体とする麺原料を用いることを特徴とする。使用小麦粉はうどんでは中力小麦粉、そばでは強力小麦粉、中華麺では準強力小麦粉、パスタ、マカロニではデュラム小麦粉等が用いられる。またその配合は麺類の種類によって異なるが、通常70〜98%である。
【0022】
本発明において、復元又は茹で上がり時間改良剤(湯戻り又は茹で上がり時間改善剤)とは、即席麺にあっては、熱湯を加えて蒸らしたときに、喫食可能な程度に麺が復元又は茹で上がりに要する時間を、通常の麺厚の麺類であれば短縮し、通常よりも厚い麺厚の麺類であっても延長不要にする食品素材である。また、即席麺以外の麺類にあっては、製造時の麺線の茹で上がり時間を、通常の麺厚の麺類であれば短縮し、通常よりも厚い麺厚の麺類であっても延長不要にする食品素材である。
【0023】
本発明の復元又は茹で上がり時間改良剤は、アセチル化酸化澱粉を有効成分として含有することを特徴とする。有効成分とは、目的とする機能が発揮される程度にアセチル化酸化澱粉を含有することを示す。本発明の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤に使用するアセチル化酸化澱粉は、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の澱粉原料に、次亜塩素酸塩、過酸化水素、過マンガン酸カリウム、硝酸等の酸化剤を反応させ、澱粉分子のグリコシド結合の切断、グルコース残基のC6の水酸基のカルボニル化、C2、C3のカルボニル化やカルボキシル化等の化学変化を生じた酸化澱粉とし、次いで無水酢酸を作用させてアセチル基を導入したものである。
【0024】
本発明においては、上記アセチル化酸化澱粉の中でも、その20%溶液の粘度が、30℃において、BM型粘度計にて10〜1000cps、好ましくは10〜300cpsのアセチル化酸化澱粉を使用することが好適である。1000cpsを超えると、粘度が高くなりすぎ、麺類の復元が悪く、茹で上がり時間が長くなる傾向にある。また、10cps未満のものはカルボキシル基が過多となり、食品添加物の基準を満たさなくなるという問題が生じる。該アセチル化酸化澱粉の粘度の調整は、酸化剤濃度によって調整することができる。
【0025】
本発明の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤は、アセチル化酸化澱粉そのものであっても良く、必要に応じて酢酸澱粉、漂白澱粉、エーテル化澱粉、架橋澱粉等の加工澱粉を単独又は組み合わせて添加した組成物であっても良い。また、復元又は茹で上がり時間改良剤の好ましい形態は粉体であるが、それに限定されるものではない。
【0026】
本発明において、復元又は茹で上がり時間改良剤の配合量は、麺類の種類によって変動するが、和風、中華及び洋風即席麺類のような麺類の復元時間を改良した即席麺の場合は、原料粉中にアセチル化酸化澱粉として1〜8質量%、好ましくは2〜5質量%である。アセチル化酸化澱粉が1%未満では、熱水復元性が悪く、麺厚を厚くした場合、戻りが悪くなる。アセチル化酸化澱粉添加量が8%を超えると製麺適性が悪くなり、更に、熱水で復元したときの麺の硬さや腰が弱くなり、食感が低下する。
【0027】
即席麺以外の茹で上がり時間を改良した麺類の場合は、原料粉へのアセチル化酸化澱粉の配合量は、1〜40質量%である。1質量%未満では、茹で上がり時間の短縮が達成されない。また、40質量%を超えると食感が悪くなる。
【0028】
本発明の、麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を用いた麺類の製造方法において、上記小麦粉、復元又は茹で上がり時間改良剤の他に、麺原料中には、食塩、かんすい、着色料、香料、安定剤、乳化剤、未加工澱粉、調味料、加工澱粉、増粘剤、保湿剤等を目的に応じて添加してもよい。特に、乳化剤は0.5%程度の添加で麺のほぐれや復元又は茹で上がり時間性を改善し、食塩は0.5%〜5%添加すると、復元又は茹で上がり時間や風味の点でさらに好適である。
【0029】
麺類の常法による製造方法としては、小麦粉又は小麦粉にそば粉、澱粉等の原料を混合した粉末に、食塩又は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、リン酸塩等の塩類を溶解した水溶液を混合し、ミキサーにて数分間混捏して、そぼろ状の生地を得る。このそぼろ状の生地を複合機により麺帯とし、圧延段階を繰り返した後、切刃にて切り出し麺線を得る。この製麺の際の混捏や麺帯形成時に生地を真空状態にすることも出来る。また、加圧押し出し機により麺線上に成型することも出来る。以上の手順により得られた麺線をそのまま包装したり、沸騰水もしくは蒸気等にて加熱したのち、流水にて水洗冷却し包装したり、冷凍し包装したり、また加熱α化後熱風、油揚げにて乾燥を行ったりする。LL麺の様に長期保存を目的とする場合は、酸処理、包装後、蒸熱殺菌等を行う。
【0030】
次に、即席麺の製造方法についてさらに具体的に説明する。即席麺は、上記麺原料を用いて、例えば、次にように製造される。まず、上記麺原料に加水し、混練して、好ましくは水分30〜35%の混練物とする。混練物の水分が30%未満であると、麺線がひび割れを起こし、蒸した時に均一にα化されないことがある。逆に、水分が35%を超えると、製造時に自重で麺帯がだれて、麺線同士が付着しやすい傾向になる。次いで、上記混練物を麺線にするが、一般的な麺厚は、うどんでは0.9〜1.5mm、そばや中華麺では0.7〜1.1mmであるが、厚い麺厚とする場合は、例えばそばや中華麺では1.2mm程度にする。また、スパゲティは円形で直径が1.5〜2.0mmとするのが一般的である。
【0031】
上記のようにして得られた麺線を、20〜30cm程度に切断し、加水・加熱処理を行う。油揚げ麺を熱処理する場合は、飽和蒸気による蒸し工程の後に130〜160℃の油で高温乾燥する。130℃未満では麺が揚がらないし、160℃を超えると麺が焦げてしまう。一方、ノンフライ麺の場合は、(1)飽和蒸気で蒸す、(2)熱水を噴霧する、(3)90〜100℃の熱水中で2〜15分程度茹でる等の方法が挙げられ、これらは単独でも組み合わせてもよい。
【0032】
加水・加熱後の麺線の水分は、45〜75%、好ましくは55〜64%となるように調整する。水分が45%未満だと、熱水で麺を復元したときに粉感があり、生っぽい風味となる。逆に水分が75%を超えると、麺線表面の澱粉が溶解して乾燥時に麺線同士の結着を生じ、復元性が悪くなったり、復元ムラの原因となったりする。
【0033】
次に、上記加水・加熱処理をした麺線を、乾燥する。乾燥方法は油揚げ麺では130〜160℃の油で高温乾燥する。また、ノンフライ麺では熱風乾燥、真空凍結乾燥、マイクロウェーブ乾燥等、従来知られている乾燥方法を、適宜一種もしくは組み合わせて行えばよいが、中でも、熱風乾燥は、復元時に腰の強い食感とする事ができること、生産効率がよいこと、エネルギーコストが低いこと等の点で好適である。なお、熱風乾燥は、麺原料の配合比、水分等によっても異なるが、40〜140℃で30分〜5時間乾燥するのが好ましい。
【0034】
乾燥後の麺線の水分は、好ましくは15%以下、より好ましくは13%以下にする事が常温で長期保存する点で望ましい。また、水分は10%以下にすると、経日に伴い、麺線表面に細かいランダムなひび割れが適度に発生し、麺線への水の浸透性が良好となり、復元性を向上させることができる。上記のようにして得られた即席麺は、95℃程度の熱水を注ぐと、5分程度で復元する。
【0035】
なお、上記製法では、麺原料の加水混練→麺線化→加水・加熱処理→乾燥としているが、麺原料の加水混練→麺線化→乾燥してから必要時に加水・加熱処理→乾燥を行うようにしてもよい。また、加水・加熱処理もしくは乾燥工程の前後に、乳化剤の水溶液や、乳化剤と油脂との乳化液を噴霧すると、麺線同士の結着の防止の点で更に好適である。
【0036】
以上のように、本発明の麺類類は、麺原料として小麦粉と共にアセチル化酸化澱粉を有効成分とする復元又は茹で上がり時間改良剤を用いるので、従来の麺類に比べて麺厚が厚いものでも飛躍的に熱水復元性又は茹で上がり時間短縮性が向上する。従来は、麺厚を薄くするか、厚い麺でも酸化澱粉を使用することで復元又は茹で上がり時間を調整していたが、食感が悪くなるので、この問題を解決するために活性グルテンや増粘剤を使用して食感調整していた。しかし本発明の復元又は茹で上がり時間改良剤を使用することで、麺厚が厚いものでも短時間で熱水復元又は茹で上がり時間が短縮し、食感が良好な製品を製造することができる。
【実施例】
【0037】
以下に、実施例により本発明を具体的に説明するが、これらの実施例によって本発明が限定されるものではない。なお、実施例において他に明記しない限り、「部」は「質量部」である。
【0038】
[実施例1]
本発明に使用するアセチル化酸化澱粉を次のようにして調製した:タピオカ澱粉10kgに13Lの水を加えて澱粉乳液を調製し、苛性ソーダでpHを11.0〜11.5に調整した。これに有効塩素濃度13%の次亜塩素酸ナトリウム溶液0.7Lを加えて、澱粉に対する有効塩素濃度を約9000ppmとし、30℃で一昼夜反応させた。次いで、反応液のpHを硫酸で7.0〜8.0に調整しつつ、前記次亜塩素酸ナトリウム溶液0.6Lを加えて5時間反応させた。次いで、0.5gの亜硫酸ソーダを加えて反応を停止し、pHを6.0に調整した。得られた酸化澱粉に0.5〜0.8kgの無水酢酸を加え、30℃で1〜2時間反応させてアセチル基を導入した。反応後、硫酸でpHを6.0とし、等量の水で希釈、脱水、乾燥してアセチル化酸化澱粉を得た。その20%溶液の30℃におけるBM型粘度計による粘度は300cpsであった。また。導入されたアセチル基の置換度(DS)は0.015〜0.09であった。
【0039】
[実施例2]
表1(油揚げ麺の配合:数値は質量部)に示す配合及び製造条件で、麺厚1.2mmの、厚い即席油揚げ麺を製造した。まず麺原料に加水し、混練した後、麺帯を形成して麺線とした。その後100℃の蒸気で蒸した後、130℃〜160℃の油で乾燥させ、麺線水分5%の即席油揚げ麺を得た。得られた即席油揚げ麺(70g)を熱水(350g)で3分間復元させて、ほぐれ具合を評価するとともに粘りと硬さから食感を評価し、総合的な評価を行った。
【0040】
【表1】

【0041】
表1の結果より、アセチル化酸化澱粉を配合した場合(配合2)、即席油揚げ麺は麺線同士の結着が少なく、復元したときのほぐれがよく、復元ムラがなかった。酸化澱粉を使用すると(配合3)、復元性は良くなるものの、食感にボリューム感がなかった。一方、酢酸澱粉(アセチル澱粉)を使用すると(配合1)、粘りが増して食感は良好となるが、復元性が他の加工澱粉に比べて劣っていた。また、デキストリンの配合(配合4)では復元性及び食感のいずれも好ましくなかった。
【0042】
[実施例3]
澱粉に対する次亜塩素酸ナトリウムの有効塩素濃度を変える以外は実施例1と同じ方法を用いて、粘度の異なるアセチル化酸化澱粉を調製した。このようにして調製した異なる粘度のアセチル化酸化澱粉を使用して、実施例2の表1の配合2と同じ配合及び製造条件で、麺厚1.2mmの、厚い即席油揚げ麺を製造した。得られた即席油揚げ麺(70g)を熱水(350g)で3分間復元させて、ほぐれ具合を評価するとともに粘りと硬さから食感を評価し、総合的な評価を行った(表2)。
【0043】
【表2】

【0044】
表2の結果より、本発明に使用するアセチル化酸化澱粉は、粘度が10〜1000cpsの範囲において使用できることがわかった。
【0045】
[実施例4]
表3(熱風乾燥麺)に示す配合で麺厚1.2mmの、厚い即席熱風乾燥麺を製造した。まず麺原料に加水し、混練した後、麺帯を形成して麺線とした。その後100℃の蒸気で蒸し煮をし、100℃の熱風で約一時間かけて乾燥させ、麺線水分7%の熱風乾燥麺を得た。得られた熱風乾燥麺を、実施例2と同様に熱水で復元させて、ほぐれ具合を評価するとともに実施例2と同様に喫食時の官能評価を行った。ただし、復元時間は4分とした。
【0046】
【表3】

【0047】
表3の結果より、アセチル化酸化澱粉を配合した熱風乾燥麺は、麺線同士の結着が少なく、復元したときにほぐれがよく、復元ムラがなかった。酸化澱粉を使用すると、復元性は良くなるものの、食感にボリューム感がなかった。一方、酢酸澱粉(アセチル澱粉)を使用すると、復元性が他の加工澱粉に比べて劣っていた。デキストリンを使用すると復元性及び食感のいずれも好ましくなかった。
【0048】
[実施例5]
表4の配合で、アセチル化酸化澱粉の配合量を変えて、実施例3と同様に麺厚1.2mmの即席熱風乾燥麺を調製し、実施例2と同様に復元性及び食感を評価した。ただし、復元時間時間は4分とした。
【0049】
【表4】

【0050】
表4の評価結果から、アセチル化酸化澱粉を原料粉に対して1〜10質量%の添加で用量に依存して復元性が向上したが、10質量%添加では復元後の麺質が柔らかくなりすぎる傾向にあり、食感が低下した。このことから、1〜8質量%程度の添加であれば復元及び食感の両方を満足できることがわかった。
【0051】
[実施例6]
表5(洋風即席麺)に示す配合で即席スパゲッティを製造した。すなわち、まず、麺原料に加水し、混練した後、押出機を用いて、押出成形した。次いで、100℃の熱水で5分間茹で揚げることにより、加水・加熱処理を施し、乳化剤溶液(HLB14ショ糖脂肪酸エステル2%)を噴霧した後、乾燥して麺線水分10%の即席スパゲッティを得た。得られた即席スパゲッティについて、100℃の熱水で5分間復元させ、喫食時の復元性、食感を官能評価した。
【0052】
【表5】

【0053】
表5の結果より、アセチル化酸化澱粉を原料粉に対して1〜10質量%添加した場合は、十分な復元が認められた。しかし、10質量%の添加では復元性は良くなるものの、食感が柔らかくなる傾向にあった。
【0054】
[実施例7]
表6に示す配合でつけ麺(太中華麺)を製造した。
【0055】
【表6】

【0056】
つけ麺は、麺厚が通常の中華麺(麺厚:1.2〜1.4mm)よりも厚く、茹で上がり時間がかかりすぎるという問題点が挙げられる。そこで茹で上がり時間の短縮を目的として、アセチル化酸化澱粉を配合したつけ麺(太中華麺)を製造して評価を行った。すなわち、原料と水を混合して、出来た生地を複合、圧延、切り出しの工程を経て麺線化し、麺厚1.8mmの麺線を得た。これを5分程茹で上げて、実施例2と同様に茹で上がりを評価した。
【0057】
表6の結果より、アセチル化酸化澱粉を添加した配合品(配合2)は、漂白澱粉のみを使用した配合品(配合1)に比べて茹で上がりが極めて改善されていることが確認できた。また、食感に関しても、同程度のレベルで維持できる事も確認できた。
【0058】
[実施例8]
表7に示す配合で生麺(うどん)を製造した。すなわち、原料と水を混合して、出来た生地を複合、圧延、切り出しの工程を経て麺厚3.2mmの麺線を得た。できた麺線を10分程度茹で上げて、実施例2と同様に茹で上がりを評価した。
【0059】
【表7】

【0060】
表7の結果より、アセチル化酸化澱粉を配合した生麺(配合2)は、酢酸澱粉のみを使用した配合品(配合1)に比べて茹で上がりが改善されていることが確認できた。また、食感に関しても、同程度のレベルで維持できる事も確認できた。生麺は、冷凍麺や茹でチルド麺、調理麺として流通し、店頭では加熱処理済みであるため調理時の茹で上がり時間が問題になることは少ないが、製造工程中の茹で上がり時間を短縮することができるので、結果的に作業効率の改善につながる。
【0061】
[実施例9]
表8の配合で乾麺(うどん)を製造した。すなわち、原料と水を混合して、出来た生地を複合、圧延、切り出しの工程を経て麺厚1.5mmの麺線を得た。できた麺線を通風乾燥して乾麺を製造した。これを10分程度茹で上げて、実施例2と同様に茹で上がりを評価した。
【0062】
【表8】

【0063】
表8の結果より、アセチル化酸化澱粉を配合した乾麺(配合2)は、酢酸澱粉のみを使用した配合品(配合1)に比べて茹で上がりが改善されていることが確認できた。また、食感に関しても、同程度のレベルで維持できる事も確認できた。
【0064】
[実施例10]
表9の配合で、生麺(そば)を製造した。すなわち、原料と水を混合して、出来た生地を複合、圧延、切り出しの工程を経て麺厚1.3mmの麺線を得た。できた麺線を2分程度茹で上げて、実施例2と同様に茹で上がりを評価した。
【0065】
【表9】

【0066】
表9の結果より、アセチル化酸化澱粉を配合した生麺(そば)(配合2)は、澱粉を使用しない配合(配合1)に比べて茹で上がりが改善されていることが確認できた。また、食感に関しても、同程度のレベルで維持できる事も確認できた。
【0067】
[実施例11]
表10の配合及び実施例7と同様の方法でアセチル化酸化澱粉の配合量を変化させて、麺厚1.8mmのつけ麺(太中華麺)を製造し、麺線の茹で上がり時間及び食感を評価した。
【0068】
【表10】

【0069】
表10の結果より、アセチル化酸化澱粉を1〜40質量%添加することで、食感を損なうことなく、つけ麺の茹で上がり時間を短縮することが可能であることが分かった。
【0070】
[実施例12]
表11の配合及び実施例8の方法により、アセチル化酸化澱粉の配合量を変化させて生麺(うどん)を製造し、麺線の茹で上がり時間及び食感を評価した。
【0071】
【表11】

【0072】
表11の結果より、アセチル化酸化澱粉を1〜50質量%添加することで、食感を損なうことなく、生麺の茹で上がり時間を短縮することが可能であることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、麺類の製造に用いて、麺厚が厚くても従来と同じ復元又は茹で上がり時間を可能とし、良好な食感を麺類に付与する麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を提供する。更に、本発明は、該麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を用いて製造した良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類及びその製造方法を提供する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセチル化酸化澱粉を有効成分とする麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤。
【請求項2】
アセチル化酸化澱粉が、20%溶液を30℃においてBM型粘度計で測定した粘度が10〜1000cpsであるように調整されていることを特徴とする請求項1記載の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤。
【請求項3】
アセチル化酸化澱粉の粘度の調整が、酸化剤濃度によって調整されていることを特徴とする請求項2に記載の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤。
【請求項4】
麺類の復元時間が、即席麺の湯戻しの時間であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤。
【請求項5】
麺類の茹で上がり時間が、麺類の茹で上げのための時間であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤。
【請求項6】
麺類の製造において、原料粉に請求項1〜3のいずれか記載の麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤を配合することを特徴とする良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類の製造方法。
【請求項7】
熱水復元時間が、即席麺の湯戻しの時間であることを特徴とする請求項6に記載の良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類の製造方法。
【請求項8】
茹で上がり時間が、麺類の茹で上げのための時間であることを特徴とする請求項6に記載の良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類の製造方法。
【請求項9】
麺類の復元時間を改良した即席麺の製造において、麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤の原料粉への配合割合が、原料粉中、アセチル化酸化澱粉として1〜8質量%であることを特徴とする請求項6に記載の良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類の製造方法。
【請求項10】
茹で上がり時間を改良した麺類の製造において、麺類用復元又は茹で上がり時間改良剤の原料粉への配合割合が、原料粉中、アセチル化酸化澱粉として1〜40質量%であることを特徴とする請求項6に記載の良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類の製造方法。
【請求項11】
請求項6〜10のいずれか1項に記載の麺類の製造方法によって製造された良好な熱水復元又は茹で上がり時間と優れた食感とを有する麺類。