説明

麺類の電子レンジ調理方法

【課題】喫食時の麺のほぐれ性に優れる電子レンジ加熱調理麺類の提供。
【解決手段】通気性及び透水性を有する電子レンジ耐性包装袋に麺類を収納して包装麺を得、次いで得られた包装麺を電子レンジ対応容器に収容した後、当該電子レンジ対応容器内に0℃以上40℃未満の水を注加して包装麺を浸漬せしめた状態で、電子レンジ加熱することを特徴とする麺類の電子レンジ調理方法及び当該電子レンジ調理方法により得られた加熱調理麺類。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、麺類の電子レンジ調理方法及び当該電子レンジ調理方法を用いて加熱調理された加熱調理麺類に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子レンジ装置の普及及びこのマイクロ波出力の増大により、麺類と水又は熱湯とを電子レンジ対応容器に入れ、電子レンジ加熱で麺類を加熱調理することが行われている。
しかしながら、斯かる方法で実際に電子レンジで加熱すると、容器に注加した水の量の多少に関わらず、加熱中に突沸や吹き零れが起こって作業性が悪化すると共に、注加した水が少なくなるという問題があった。また、その結果麺類が浮くなどして加熱ムラが起こったり、麺線同士がくっつき易く、喫食の際の麺のほぐれ性が非常に悪くなると云う問題があった。
【0003】
他方、特許文献1には、透水性包装体に収納した麺類を容器に入れ、熱湯を注いで電子レンジで加熱すると云う麺類の電子レンジ調理方法が開示されている。
しかしながら、この電子レンジ調理方法でも、後述の比較例5(63℃の湯を注入してレンジ調理)の結果から明らかなように、実際には麺線同士がくっついて塊状態となるため、麺のほぐれ性の悪化が避けられないのが実状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−63566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の如き従来の問題と実状に鑑みてなされたものであり、電子レンジ加熱中に突沸や吹き零れが生じず、さらに喫食時の麺のほぐれ性に優れる電子レンジ加熱調理麺類を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、当該課題を解決すべく、種々研究を重ねた結果、通気性及び透水性を有する電子レンジ耐性包装袋を用い、これに麺類を収納した後、電子レンジ対応容器内に収容し、40℃未満の水に浸漬せしめた状態で、電子レンジ加熱すれば、突沸や吹き零れが生じず、また麺線同士がくっつかないため、喫食時の麺のほぐれ性に優れる電子レンジ加熱調理麺類を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、通気性及び透水性を有する電子レンジ耐性包装袋に麺類を収納して包装麺を得、次いで得られた包装麺を電子レンジ対応容器に収容した後、当該電子レンジ対応容器内に40℃未満の水を注加して包装麺を浸漬せしめた状態で、電子レンジ加熱することを特徴とする麺類の電子レンジ調理方法及び当該電子レンジ調理方法を用いて加熱調理された加熱調理麺類により上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、従来の電子レンジ調理方法にて得られた加熱調理麺類よりも、喫食時の麺のほぐれ性に優れた電子レンジ加熱調理麺類を得ることができ、しかも当該加熱調理麺類は生麺を茹で上げた状態に近い優れた食感を有している。また、本発明によれば、突沸や吹き零れが殆ど認められないので、電子レンジ加熱調理の作業性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、本発明においては、通気性及び透水性を有する電子レンジ耐性包装袋に麺類を収納して包装麺を得る。
【0010】
本発明に用いる通気性及び透水性を有する電子レンジ耐性包装袋は、食品に使用できる電子レンジ耐性材質を用いた通気性及び透水性を有する包装袋であれば特に限定されない。
電子レンジ耐性材質としては、例えば、綿、麻、絹、パルプ、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、レーヨン等から選ばれる1種以上のものが挙げられ、このうち、ポリエステルが、入手および取り扱いが容易であるので、好ましい。
当該包装袋の通気性の程度は、電子レンジ加熱の際に、突沸することなく内容物に生じる蒸気を包装袋外に排出できる程度のものが好ましい。また、当該包装袋の透水性の程度は、調理にあたって、水を注加した後、電子レンジ加熱までに包装袋内容物が水に浸漬できる程度のものが好ましい。
【0011】
而して、当該電子レンジ耐性包装袋としては、例えば、当該電子レンジ耐性材質からなる不織布、織布或いは多孔質フィルム等の如き通気性及び透水性を有する素材を単独で又は2種以上組み合わせて作製された包装袋が挙げられるが、突沸を防止すると共に加熱ムラを少なくすることができる点から、不織布製包装袋及び織布製包装袋が好ましく、特に不織布製包装袋が好ましい。
尚、当該電子レンジ耐性包装袋の形態としては、麺類を収納できるものであれば特に限定されないが、例えば、袋の開口部から麺類を収納し、開口部をシールできるもの;対向させたシート同士の間に麺類を配置し、この周辺部をシールして麺類を収納できるもの等が、好適に使用される。
【0012】
本発明で前記電子レンジ耐性包装袋に収納される麺類の状態としては、特に限定されず、例えば、乾麺類、半生麺類、生麺類、α化即席麺類、冷凍麺類等が挙げられる。また、麺類の種類も、特に限定されず、例えば、パスタ(スパゲッティ、フェットチーネ等のロングパスタ/マカロニ、ペンネ等のショートパスタ等)、うどん、ひやむぎ、そうめん、蕎麦、中華麺等が挙げられる。
また、麺線の厚みは、0.6〜1.5mm、就中0.6〜1.4mm、特に0.8〜1.2mmとするのが、包装袋中での加熱ムラを少なくし、突沸を防止し易いので、好ましい。さらに加熱ムラが少ない事から、電子レンジ加熱中に麺線同士がくっつきにくくなる結果、喫食時の麺のほぐれ性に優れ、しかも麺の食感も優れた電子レンジ加熱調理麺を得ることができる。
【0013】
当該電子レンジ耐性包装袋に収納する麺類の容量は、乾麺、生麺等収容する麺の形態や状態によっても異なるが、電子レンジ耐性包装袋の容量に対して、電子レンジ加熱した後の麺の容量が、1〜90%、好ましくは10〜70%となるように決定するのが、加熱ムラを防止すると共に調理の作業効率を高める点で、有利である。
例えば、電子レンジ耐性包装袋に収納する調理前の麺類の容量は、電子レンジ耐性包装袋の容量に対して、生麺類の場合には20〜80%;α化即席麺類の場合には20〜90%;乾麺類の場合には10〜80%とするのが好ましい。
このとき収納する麺類の重さは、後述の電子レンジ対応容器の容量100mlに対して、1〜55g、特に3〜30gとするのが好ましい。
【0014】
尚、得られた包装麺は、流通のため不透水性袋等に封入してもよいが、この場合、当該不透水性袋等は電子レンジ加熱に際し除去し得るものとする。また、包装麺を予め後述する電子レンジ対応容器に収容した形態として流通させてもよい。
【0015】
次いで、本発明においては、上記包装麺を電子レンジ対応容器に収容する。
本発明に用いる電子レンジ対応容器としては、電子レンジ調理に使用できる容器であれば特に限定されず、例えば、電子レンジ耐性樹脂容器、セラミック容器、陶器、耐熱ガラス容器等が挙げられる。この容器の形状としては、カップ状、トレー状等が挙げられ、適宜押し蓋、かぶせ蓋、ピラード蓋等があるものでもよい。
当該電子レンジ対応容器の容量は、100ml以上、就中180〜1000ml、特に325〜880mlとするのが、一般家庭用電子レンジ装置に収納し易い点で、好ましい。
尚、流通のため、包装麺収容後、電子レンジ対応容器に蓋をしてもよい。
【0016】
次いで、本発明においては、上記包装麺が収容された電子レンジ対応容器内に、0℃以上40℃未満の水を注加して、包装麺を浸漬せしめた状態で、電子レンジ加熱する。
ここに注加する水の温度は、0℃以上40℃未満、好ましくは2〜39℃、より好ましくは5〜36℃、特に好ましくは9〜36℃とするのが、電子レンジ加熱中に突沸や吹き零れを防止し、麺線同士がくっつきにくくなる結果、喫食時の麺のほぐれ性に優れ、しかも麺の食感も優れた電子レンジ加熱調理麺を得ることができる点で、有利である。
【0017】
因みに、注加する水の温度を40℃以上とした場合、この熱水の注加時に麺線同士がくっつく結果、電子レンジ加熱中に麺線が塊状となり易くなるので、喫食時のほぐれ性が非常に悪く、本発明の課題を解決し得ない。しかも、注加する水の温度を40℃以上とした場合には、この熱水の注加時に麺の表面のみが加熱された状態で更に電子レンジ加熱される結果、この表面が糊っぽくなり、麺線の内部にくちゃつき感が生じ、喫食時の麺の食感も非常に悪くなる。一方、注加する水の温度を氷点(0℃未満)下とした場合、麺が部分的又は全体に凍結して加熱ムラが生じ易く、調理後の食感が低下し易くなるほか、加熱時間が長くなることで喫食時の麺のほぐれ性が悪くなり易く、または加熱が不十分となり喫食できない場合もある。
【0018】
このとき、注加する水の量は、容器の容量、包装袋の大きさ、麺類の量(重さや容量)によっても異なるが、突沸や吹き零れを防止するためには、容器容量の45〜10%、就中40〜15%、特に40〜23%とするのが好ましい。本発明によれば、突沸や吹き零れが殆ど認められないので、通常のレンジ加熱に比べて、麺類や水の量が多くなっても安全に調理を行う事ができ、作業効率もよいので、好ましい。
【0019】
また、電子レンジ加熱におけるマイクロ波の出力及び照射時間は、200〜2000Wで1〜20分間、特に500〜1400Wで1〜10分間とするのが好ましく、特に、突沸や吹き零れを少なくする点で、500〜800Wの場合で3〜6分間とするのが好ましい。
【0020】
上述のようにして、電子レンジ加熱された加熱調理麺類を得ることができ、当該電子レンジ加熱調理麺類は、従来の電子レンジ調理方法で得られた加熱調理麺類に比し、喫食の際、良好な麺のほぐれ性を有し、しかも優れた麺の食感を有する。
【0021】
次に、本発明を更に具体的に説明するために、実施例及び比較例を挙げて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
製造例1:うどん
麺用粉「薫風」(日清製粉株式会社製)500gと食塩1g、水160mlを加え、回転数60rpmで撹拌混合を10分間行なって生地を得、次いで圧延の工程を経て麺帯を得た。その麺帯に対し番手10番の切刃を用いて長さ15cmの麺線を得て、蒸し器で100℃、20分間加熱後、それを50gに小分けし、50℃で2時間乾燥させて、試験に供する各α化即席麺(うどん:麺線の厚み0.6mm)をそれぞれ40g得た。
同様にして、麺線厚みの異なるα化即席麺をそれぞれ製造した(うどん:麺線の厚み1.4mm、1.5mm)。
【0023】
実施例1〜3
製造例1で得た、各麺線厚みのα化即席麺を、それぞれ40gずつ、ポリエステルを主要繊維素材とした不織布製袋(縦14.0cm、横15.0cm:容量 600cm3:株式会社トキワ工業製)に収納して包装麺を得た。
この包装麺を、全容量840mlの電子レンジ対応容器(底面直径118mm、高さ79mm、上面直径132mm)に収容し、当該包装麺を収容した電子レンジ対応容器内に200mlの水(容器の容量の24%:水の温度20℃)を注ぎ、包装麺を浸漬せしめた状態で、出力500Wの電子レンジにて5分間加熱を行なった。加熱後、速やかに袋から取り出して、表1の評価基準に従い官能検査を行なった。この結果を表2に示した。
尚、調理後の麺の容量(cm3)は、十分な湯切りをして重量を精秤した麺をメスシリンダーに入れ、さらに満水の目盛りまで水を注ぎ、満水目盛りから注いだ水の量を減算することにより算出した。この結果から〔調理後の麺の容量(cm3)/電子レンジ耐性袋の容量(cm3)〕×100にて、包装袋中の調理後の麺の容量(%)を算出した。
調理後の麺の容量は、実施例1〜3でそれぞれ、74.2、74.6及び74.3cm3であり、電子レンジ耐性包装袋の容量(600cm3)に対して、調理後の麺の容量(%)は、いずれも12.4%であった。
【0024】
比較例1〜2
製造例1のα化即席麺を不織布袋に収納しなかった以外は、上記実施例1及び3と同様にして、それぞれ電子レンジ調理麺を得、官能検査を行なった。この結果を表2に示した。
【0025】
【表1】

【0026】
【表2】

【0027】
麺を包装袋に入れることによって、吹き零れがほとんどなくなり、麺のほぐれ性、食感共に向上することがわかる。
【0028】
実施例4
製造例1で得たα化即席麺(麺線の厚み0.6mm、麺の質量40g)を、ポリエステルを主要繊維素材とした不織布製袋(縦14.0cm、横15.0cm:株式会社トキワ工業製)に収納して包装麺を得た。
この包装麺を、全容量880mlの電子レンジ対応容器(底面直径132mm、高さ77mm)に収容し、当該包装麺を収容した電子レンジ対応容器内に200mlの水(容器の容量の23%:水の温度20℃)を注ぎ、包装麺を浸漬せしめた状態で、出力1400Wの電子レンジにて2分間加熱を行なった。加熱後、速やかに袋から取り出して、表1の評価基準に従い官能検査を行なった。この結果を表3に示した。
【0029】
比較例3
製造例1のα化即席麺を不織布袋に収納しなかった以外は、上記実施例4と同様にして、電子レンジ調理麺を得、官能検査を行なった。この結果を表3に示した。
尚、実施例4の調理後の麺の容量は、76.0cm3であり、電子レンジ耐性包装袋の容量(600cm3)に対して、調理後の麺の容量(%)は、12.7%であった。
【0030】
【表3】

【0031】
麺を包装袋に入れることによって、出力1400Wの電子レンジ加熱でも、吹き零れがほとんどなくなり、麺のほぐれ性、食感共に向上することがわかった。
【0032】
製造例2:パスタ
パスタ用粉「DF」(日清製粉株式会社製)500gとショートニング10g、水160mlを加え、回転数60rpmで撹拌混合を10分間行ってパスタ生地を得、次いで圧延の工程を経て麺帯を得た。その麺帯に対し番手4番の切刃を用いて、長さ10cm、麺線の厚み0.9mmの生パスタ(フェットチーネタイプ:平めん型)を得た。
【0033】
実施例5〜11、比較例4〜6
製造例2で得た生パスタをそれぞれ80gずつ、ポリエステルを主要繊維素材とした不織布製袋(縦14.0cm、横15.0cm:容量 600cm3:株式会社トキワ工業製)に収納して包装麺を得た。
この包装麺を、全容量880mlの電子レンジ対応容器(直径132mm、高さ77mm)に収容し、当該包装麺を収容した電子レンジ対応容器内に350mlの各温度の水(容器の容量の40%)を注ぎ、包装麺を浸漬せしめた状態で、出力500Wの電子レンジにて加熱を行なった。加熱後、速やかに袋から取り出して、表1の評価基準に従い官能検査を行なった。この結果を表4に示した。
尚、2℃及び39℃の水を注水して調理した後の麺の容量は、それぞれ144.3cm3及び173.6cm3であり、電子レンジ耐性包装袋の容量(600cm3)に対して、調理後の麺の容量(%)は、それぞれ24.1%及び28.9%であった。
【0034】
【表4】

【0035】
注水温度が40℃を超えると、ほぐれ性が低下し、食感が極端に低下することがわかった。尚、吹き零れ量は全て0mlであった。
【0036】
実施例12〜14
製造例2で得た生パスタをポリエステルを主要繊維素材とした不織布製袋(縦14.0cm、横15.0cm:株式会社トキワ工業製)に各所定量を収納して包装麺を得た。
この包装麺を、電子レンジ対応容器に収容し、20℃の水を注水して、包装麺を浸漬せしめた状態で、出力500Wの電子レンジにて5分間加熱を行なった。加熱後、速やかに袋から取り出して、表1の評価基準に従い官能検査を行なった。この結果を表5に示した。
尚、実施例12及び14の調理後の麺の容量は、それぞれ、96.0cm3及び160.8cm3であり、電子レンジ耐性包装袋の容量(600cm3)に対して、調理後の麺の容量(%)は、それぞれ、16.0%及び26.8%であった。
【0037】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性及び透水性を有する電子レンジ耐性包装袋に麺類を収納して包装麺を得、次いで得られた包装麺を電子レンジ対応容器に収容した後、当該電子レンジ対応容器内に0℃以上40℃未満の水を注加して包装麺を浸漬せしめた状態で、電子レンジ加熱することを特徴とする麺類の電子レンジ調理方法。
【請求項2】
前記電子レンジ耐性包装袋が、不織布製又は織布製であることを特徴とする請求項1記載の電子レンジ調理方法。
【請求項3】
前記注加する水の温度が、2〜39℃であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子レンジ調理方法。
【請求項4】
前記包装袋に収納する麺類の麺線の厚みが、0.6〜1.5mmであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の電子レンジ調理方法。
【請求項5】
前記注加する水の量が、前記電子レンジ対応容器の容量の45〜10%であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の電子レンジ調理方法。
【請求項6】
前記麺類が、生麺類、半生麺類、乾麺類又はα化即席麺類であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の電子レンジ調理方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか1項記載の電子レンジ調理方法を用いて加熱調理された加熱調理麺類。