麻薬保管装置
【課題】麻薬保管庫20内の収納空間27を上から撮像装置13で撮影しうるよう天板26を扉にしても開閉時の上げ下げが不要で開閉が楽な麻薬保管装置10を実現する。
【解決手段】麻薬保管庫20に対し縦軸のヒンジ21を介して連結された揺動可能な縦板部22に天板部26を連結して、縦板部22の揺動に伴い天板部26が横移動して収納空間27の麻薬出入口の直上へ進退することにより、収納空間27の麻薬出入口が開閉されるようにする。また、天板部26の上面まで撮像装置13で撮る。さらに、情報処理装置30は、収納予定の各麻薬(44)またはそれを収容しうる箱(40)に割り振られた識別コード(43,45,46)を撮像装置13の撮影画像31から読み取ってコード読取の可否に応じて箱(40)の開閉や箱内の麻薬収容状態を検知して在庫データ36を更新する。
【解決手段】麻薬保管庫20に対し縦軸のヒンジ21を介して連結された揺動可能な縦板部22に天板部26を連結して、縦板部22の揺動に伴い天板部26が横移動して収納空間27の麻薬出入口の直上へ進退することにより、収納空間27の麻薬出入口が開閉されるようにする。また、天板部26の上面まで撮像装置13で撮る。さらに、情報処理装置30は、収納予定の各麻薬(44)またはそれを収容しうる箱(40)に割り振られた識別コード(43,45,46)を撮像装置13の撮影画像31から読み取ってコード読取の可否に応じて箱(40)の開閉や箱内の麻薬収容状態を検知して在庫データ36を更新する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、麻薬保管庫に撮像装置を加えた麻薬保管装置に関し、詳しくは、撮像にて保管中の麻薬の在庫を把握する麻薬保管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
麻薬や覚醒剤の保管については、他の医薬品と区別して、鍵をかけた堅固な設備内に貯蔵して行わなければならないと法定されており(麻薬等取締法第34条第2項)、鍵をかけた堅固な設備は、麻薬専用の固定した金庫又は容易に移動できない金庫(重量金庫)で、施錠設備のあるものとされ(病院・診療所における麻薬管理マニュアル、平成18年12月、厚生労働省医薬食品局 監視指導・麻薬対策課)、二カ所以上で鍵がかかる構造(シリンダー錠とダイアル錠の組み合わせ)のものが望ましいとされている。さらに、麻薬の使用や廃棄に際しては帳簿や施用票といった帳票に記録することとされている。
【0003】
これほどに保管条件の厳しい麻薬類は別として、それより保管条件の緩い他の薬剤については、使い易い態様で収納するとともに収納状況や使用状況を自動把握するようになった薬品収納装置が実用化されている(例えば特許文献1参照)。この薬品収納装置は、薬品類を整列収納する多数のカセットにおける薬品類の収納数を求める計数手段を備えている。さらに(特許文献1第4実施例)、カセット保持部に箱形筐体を採用したうえで、その前面に薬品類を出し入れする大きな開口を形成するとともに、その開口を覆う幕も付加して、不使用時には幕を降ろしてカセット保持部内を暗くしておくようになっている。
【0004】
また、キャスタ付き庫部ユニットを具備しており庫内に医薬品を収納して手押しで運搬することができるばかりか保冷機能や走行駆動機能まで発揮できる医薬品運搬用手押車も薬品カートとして実用化されている(例えば特許文献2参照)。この医薬品運搬用手押車に装備された薬品情報管理装置は、マイクロプロセッサシステム等からなり、カードリーダやLCDパネルを具備している。そして、ICカード等から処方箋情報や,手術情報,患者情報,セット情報,運搬先情報,運搬経路情報などを読み取って、収納した医薬品を識別管理するとともに、運搬先を示す病室・手術室等の案内表示,施用対象患者の確認を促すための表示などをLCDパネルに行わせるようになっている。
【0005】
さらに、幾つかの薬品類を予めトレーにセットしておいて医療現場で使用された薬品類の使用状況を管理する薬品管理システムとして、トレーの薬品類セット面を撮影して画像データから薬品類の個数を求めるシステムが実用化されている(例えば特許文献3参照)。このシステムでは、使用前のセット情報を保存しておき、使用後にトレー単位での計測作業を行って、薬品類の数量変化を検知することで、医療現場等で薬品類の使用数量を簡便かつ的確に把握することができるようにもなっている。
【0006】
また、トレーにセットして医療現場で使用される薬品類の使用状況を管理するために、トレーを仕切って各区画に薬品類を収容するとともに薬品類の使用の有無を区画毎に把握するようになった薬品管理システムも実用化されている(例えば特許文献4参照)。具体的には、トレーにセットすべき薬品類の配置を調剤指示に応じて決定する配置決定手段と、トレーの内底に敷ける印刷用紙に薬品類の識別コードを配置に対応させて印刷する印刷手段と、トレーと共に印刷用紙を上から撮る撮像手段と、その画像から識別コードを読み取って薬品類の使用の有無を判別する判定手段とを備えている。トレーの内部空間を仕切って多数の区画に分ける着脱式の仕切であって区画の異なるものを幾種類か備えていて、その仕切データと剤形データを参照して、仕切の自動選択まで行うようになっている。
【0007】
この薬品管理システムは、医療現場で使用される薬品類の使用状況を管理するために薬品類の有無を検出するに際して、個別検出方式では感応部・検出部(センサ)の個数が多くて製造や保守の負担が大きいことから、撮像方式を採用したものである。撮像方式であれば、感応部・検出部(センサ)が単一か少数個で済むので、製造も保守も遣りやすい。しかも、センサの少ない撮像方式を踏襲したうえで、トレーを仕切って区画分けするようにもしたことにより、区画単位で確実な検出を行える画像が得られるようになっているので、薬品類の使用状況を迅速かつ的確に把握することができる。
【0008】
なお、識別コードとしてはバーコードが馴染み深く、それを拡張した二次元コードも広まっているが、そのようなバーコード等は一般に平坦なシート表面に印刷されて光学的に読み取られる。また、多様な物品の表面への印刷にも読取にも適う識別コードとして、色の配列で符号化情報を表すカラービットコード(1Dや1.5Dのカラービットコードと呼ばれたりリフレクティブカラーコードと呼ばれることもある)が開発されている(例えば特許文献5,6参照)。その読取は、カラービットコードを含んだ画像データをエリアセンサ等の撮像装置で取り込んで複数の色領域あるいは色領域群に区分けし、区分けした各領域色や各領域群を境界条件や個数条件等を用いて絞り込んでから実際にデコードを行うことで、二次元バーコードのような切り出しマーク等を用いなくても、シンプルにデコードできるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−198190号公報
【特許文献2】特開2005−040371号公報
【特許文献3】特開2001−198191号公報
【特許文献4】特開2011−024663号公報
【特許文献5】特開2008−287414号公報
【特許文献6】特開2009−003721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように薬品を区分収納するとともに一括撮影画像からコードを読み取って薬品の在庫管理や調剤作業の支援を行う装置が開発・提供されるようになってきたが、麻薬の保管については、上述したように保管庫の仕様や帳票の記録などに厳しい規制が課せられていて、厳格な保管が必要なため、在庫管理や作業支援の自動化・実用化が遅れている。
とはいえ、保管に厳格さが求められる所ほど、紛失等の不所望な事態の発生を迅速かつ的確に把握するとともに不所望な事態の発生を未然に防止するには、管理等を自動化することが有用であり効益が大きいことも否めない。
そのため、麻薬の保管についても、庫内の麻薬収納状態の一括撮影とコード読取にて在庫管理や作業支援を行う上記技術を適用することで、簡便かつ安価に、自動化してほしいという要請が高まっている。
【0011】
しかしながら、上記技術の適用には、麻薬保管庫内の収納空間が上面解放になっているとともに、その収納空間の上面を上方の撮像装置が下向き又は斜め下向きで撮ることが、前提条件になっていることから、麻薬保管庫の扉を前面でなく上面に配置替えしなければならないので、天板が扉にされるが、規則により堅固な設備でなければならない麻薬保管庫の扉は重厚であり、開閉時に上げ下げする天扉は、例え大きく上げ下げするが揺動端側だけであるとしても、人手で開閉するのが楽でない。
【0012】
だからといって、自動開閉装置や介助装置を付加するのは、機構が複雑化して原価も上がるうえ、故障時や停電時には扉開閉が却って困難になってしまって緊急手術等で急に麻薬が必要になったようなときには緊急手術等を妨げてしまうことにもなりかねないので、好ましくない。このため、麻薬保管庫には上記技術を安直に適用することができない。
そこで、麻薬保管庫内の麻薬収納状態を上から撮影しうるよう天板を扉にしても開閉時の上げ下げが不要で開閉が楽な麻薬保管装置を実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の麻薬保管装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、庫内の収納空間の麻薬出入口が上面に形成された麻薬保管庫と、上方から下向きで又は斜め下向きで前記収納空間を撮る一台の又は複数の撮像装置と、収納予定の各麻薬またはそれを収容しうる箱に割り振られた識別コードを前記撮像装置の撮影画像から読み取ってコード読取の可否に応じて在庫データを更新する情報処理装置とを備えた麻薬保管装置であって、前記麻薬保管庫に付設されていて前記収納空間の麻薬出入口を開閉する扉体が、前記麻薬保管庫に対し縦軸のヒンジを介して連結された揺動可能な縦板部と、前記縦板部と一体化して又は閉状態では連結解除部が隠れる態様で前記縦板部に連結されていて前記縦板部の揺動に伴って横移動することにより前記収納空間の麻薬出入口の直上へ進退する天板部とを具備したものであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の麻薬保管装置は(解決手段2)、上記解決手段1の麻薬保管装置であって、前記撮像装置が、前記収納空間の麻薬出入口の直上から退出したときの前記天板部の上面も撮るようになっていることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の麻薬保管装置は(解決手段3)、上記解決手段1,2の麻薬保管装置であって、前記情報処理装置が、前記箱の内外に割り振られた箱識別コードの読取可否に応じて前記箱の開閉を判別するようになっていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の麻薬保管装置は(解決手段4)、上記解決手段3の麻薬保管装置であって、前記情報処理装置が、前記箱の中の麻薬収容部位に割り振られた薬識別コードの読取可否に応じて前記箱の麻薬収容状態を検知するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このような本発明の麻薬保管装置にあっては(解決手段1)、麻薬保管庫内の収納空間を上面解放にするとともに、その収納空間の上面を上方の撮像装置にて撮るようにしたことにより、扉を開ければ、庫内の麻薬収納状態が一括撮影されるとともに、その撮影画像からのコード読取とその読取結果に応じた在庫管理データの更新が情報処理装置によって遂行されるので、麻薬の管理が簡便かつ安価に自動化される。しかも、扉については、一般的な扉のようにヒンジを介して直ちに麻薬保管庫に取り付けるのでなく、開閉を担う天板部とヒンジとの間に縦板部を介在させるとともに、ヒンジの軸方向を縦向きにしたことにより、縦板部が一般的な前扉や側扉のように縦軸周りで揺動するものとなっている。
【0018】
また、縦板部に連結された天板部は、縦板部の揺動に伴って横移動するものとなっており、その横移動によって収納空間の麻薬出入口(麻薬の出し入れ口)の直上へ進退することで、麻薬保管庫の収納空間の麻薬出入口を開閉する。そのため、縦板部の揺動側部分を横に引いたり押したりすれば、ヒンジを中心にして縦板部が揺動するとともに、天板部がドアの動きよりも引き戸の動きに近い横滑り様に移動するので、天板部を持ち上げたり下げたりする必要がなくて、楽に、麻薬出入口を開閉することができる。
【0019】
しかも、麻薬出入口を開けるためにそこから退出した天板部は、収納空間の脇の作業台としても活用される。
さらに、天板部と縦板部とを一体化かそれに準じた態様で連結したことにより、両部の何れに錠を設けても、施錠すれば解錠しない限り簡単に扉が開くことはない。
したがって、この発明によれば、麻薬保管庫内の麻薬収納状態を上から撮影しうるよう天板を扉にしても開閉時の上げ下げが不要で開閉が楽な麻薬保管装置を実現できる。
【0020】
また、本発明の麻薬保管装置にあっては(解決手段2)、麻薬保管庫から麻薬を出し入れする際に薬品名の確認や箱の開閉など一寸した作業を行うときには、収納空間の上から横に退出した天板部の上で作業するのが自然なところ、その作業場も撮影範囲に含められるため、麻薬保管庫から出し入れ途中の麻薬も麻薬保管装置の管理下に置かれる。
【0021】
また、本発明の麻薬保管装置にあっては(解決手段3)、箱に識別コードが割り振られていればそれを箱識別コードとして判別できるように情報処理装置がなっていることを前提としている。そして、箱の内外に割り振られた箱識別コードを箱の内外に付しておけば、情報処理装置により、それらの箱識別コードの読取可否に応じて箱の開閉が自動判別される。さらに、(解決手段4)、箱の中の麻薬収容部位に割り振られた薬識別コードを箱の中の麻薬収容部位に付しておけば、その箱を開けたとき、情報処理装置により、その薬識別コードの読取可否に応じて箱の麻薬収容状態までも自動検知される。
そのため、麻薬の保管に際し、一個または複数の麻薬を箱に収容してから庫内へ収納するという遣り方で保管した場合でも、的確に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1について、麻薬保管装置の構造を示し、(a)が閉状態の機械系の外観斜視図、(b)が開状態の機械系の外観斜視図、(c)が情報処理系のブロック図である。
【図2】(a)が空の庫内の収納空間の平面図、(b)が区画室に箱を収納しているところの外観斜視図、(c)が区画室に箱を収納し終えたところの外観斜視図、(d)が満杯の庫内の収納空間の平面図、(e)が区画室から箱を取り出しているところの外観斜視図、(f)が取り出した箱を天板部の上で開けたところの外観斜視図である。
【図3】(a)が少しだけ開けた箱の正面図と右側面図と背面図、(b)が閉じた箱の正面図と右側面図と背面図と底面図、(c)が完全に開けた箱の外観斜視図、(d)が麻薬を満杯に収容した完全開状態の箱の平面図、(e)が空になった完全開状態の箱の平面図である。
【図4】在庫データのレコードの構造図である。
【図5】(a),(b)何れも表示装置の画面例である。
【図6】情報処理装置の作業支援プログラムのフローチャートである。
【図7】情報処理装置の作業支援プログラムのフローチャートである。
【図8】情報処理装置の作業支援プログラムのフローチャートである。
【図9】情報処理装置の作業支援プログラムのフローチャートである。
【図10】情報処理装置の作業支援プログラムのフローチャートである。
【図11】情報処理装置の作業支援プログラムのフローチャートである。
【図12】本発明の実施例2について、(a),(b)何れも開状態の機械系の外観斜視図である。
【図13】本発明の実施例3について、(a)が閉状態の機械系の外観斜視図、(b)が開状態の機械系の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
このような本発明の麻薬保管装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜3により説明する。
図1〜11に示した実施例1は、上述した解決手段1〜4(出願当初の請求項1〜4)を総て具現化したものであり、図12に示した実施例2や、図13に示した実施例3は、その変形例である。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,電子回路の詳細などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0024】
本発明の麻薬保管装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が麻薬保管庫20の扉を閉めた麻薬保管装置10の機械系の外観斜視図、(b)が麻薬保管庫20の扉を開けた麻薬保管装置10の機械系の外観斜視図、(c)が情報処理装置30を主体とした情報処理系のブロック図である。
【0025】
また、図2は、(a)が空の庫内の収納空間27の平面図、(b)が収納空間27の区画室28に上から箱40を収納しているところの外観斜視図、(c)が区画室28に箱40を収納し終えたところの外観斜視図、(d)が箱40で満杯になった庫内の収納空間27の平面図、(e)が区画室28から箱40を上へ取り出しているところの外観斜視図、(f)が取り出した箱40を天板部26の上面上で開けたところの外観斜視図である。
【0026】
さらに、図3は、(a)が少しだけ開けた箱40の正面図と右側面図と背面図、(b)が閉じた箱40の正面図と右側面図と背面図と底面図、(c)が完全に開けた箱40の外観斜視図、(d)が麻薬44を満杯に収容した完全開状態の箱40の平面図、(e)が空になった完全開状態の箱40の平面図である。
また、図4は、在庫データ36の各レコードの構造図であり、図5は、(a),(b)が何れも表示装置12の画面表示例であり、図6〜図11は、情報処理装置30の作業支援プログラム37のフローチャートである。
【0027】
麻薬保管装置10は(図1(a),(b)参照)、機械系の主要部である麻薬保管庫20と、麻薬保管庫20の後縁部の上に立設されたタッチパネルに組み込まれた入力装置11及び表示装置12と、更にその上に設けられた撮像装置13を具えている。また、配設状態の図示は割愛してブロック図で示したが(図1(c)参照)、麻薬保管装置10は、上記のタッチパネルに組み付けたり或いは麻薬保管庫20に添えて設けられた情報処理装置30と、麻薬保管庫20の錠23,24に付設されてそれが施錠されているのか解錠されているのかを検出する錠センサ14と、法律等に基づいて義務付けられた帳票を印刷するプリンタ16も具えている。撮像装置13と錠センサ14と入力装置11と表示装置12とプリンタ16は情報処理装置30と信号ケーブル等で接続されている。情報処理装置30はLAN等の通信回線を介して外部の処方管理装置15と交信可能にもなっている。
【0028】
麻薬保管庫20は(図1(a),(b)参照)、収納空間27,29を囲う堅固な本体部と、その収納空間の開口を開閉する扉体22+26とを具えたものであり、本体部には、庫内の収納空間として、本体部の上側部分に配された上面解放で固定の収納空間27と、本体部の下側部分に配された前方引出可能な引出29とが設けられている。収納空間27,29は何れも麻薬を収納するためのものであるが、そのうち、収納空間27は、庫内の麻薬収納状態の一括撮影とコード読取にて在庫管理や作業支援を行う対象となっているが、引出29は、そのような対象となっておらず、例えばコード割り振り前や一時保管等のため、従来通り人手で管理する麻薬を収納するようになっている。
【0029】
扉体22+26は、麻薬保管庫20に付設されていて収納空間27,29の麻薬出入口すなわち収納空間27の上面開口および引出29の前面引出口を開閉するものであるが、庫内の収納空間27の麻薬出入口が上面に形成されていることに対応してその麻薬出入口を開閉する横置き姿勢の天板部26と、その天板部26を移動可能に支持するとともに引出29の前面引出口を開放/閉塞する縦置き姿勢の縦板部22とを具備したものとなっている。縦板部22と天板部26は、縦板部22の上端と天板部26の前端とが溶接等で連結されて一体化している。あるいは、フックやネジ止め等で堅く連結されている。後者の場合は、フックを外したりネジを緩めるといった連結解除部が、扉体22+26を閉めたときには、扉体22+26の内側に隠れて露出しない部位に配置されている。
【0030】
縦板部22は、天板部26が連結されていることを除けば、通常の扉にそっくりで、麻薬保管庫20の前面を覆う長方形状の平板体からなり、左右の両辺のうち何れか一方(図示の例では右辺)が、軸方向をほぼ鉛直の縦向きにしたヒンジ21を介して麻薬保管庫20の縦の一辺(図示の例では右前辺)に連結されており、その縦軸のヒンジ21を揺動中心としてドアのように約270゜(図示の例では麻薬保管庫20の前面から右側面まで)揺動しうるものとなっている。この例では、把手25に加えて、二つの錠23,24も、縦板部22に装備されている。
【0031】
天板部26も正方形状・長方形状の平板体からなるが、天板部26のサイズは、麻薬保管庫20の上面に対応しており、収納空間27の麻薬出入口を完全に覆う大きさで足りる。扉の部材として開閉対象の開口を塞ぐとき(図1(a)参照)、縦板部22は通常の扉と同様用に麻薬保管庫20の前面に密着しても良いが、それと異なり、天板部26は、麻薬保管庫20の上面に密着するのでなく、麻薬を通過させない僅かな隙間で麻薬保管庫20の上面(より具体的には麻薬保管庫20の本体部の上面において収納空間27を囲む上縁部分)と上から向き合って対峙することで、麻薬保管庫20の上面と平行な方向へ移動しうる余地を確保していて、横滑りのような横移動を行えるものとなっている。
【0032】
天板部26の四辺のうち何れか一辺(図示の例では手前の辺)が縦板部22の上辺に連結されているので、天板部26と縦板部22はヒンジ21を中心にして一緒に揺動するが、連結状態がΓ字状で、ヒンジ21の軸が天板部26に対して垂直になっているので、天板部26は、縦板部22の揺動に伴って横移動することにより収納空間27の麻薬出入口の直上へ進退するものとなっている。そして、扉体22+26として開閉対象の収納空間27を全開させたときには(図1(b)参照)、縦板部22が麻薬保管庫20の本体部の左右両側面のうち揺動方向の側面(図示の例では右側面)にピッタリ添い、天板部26が同じ揺動方向から添えられた傍机のように収納空間27の横に来るようになっている。
【0033】
収納空間27は(図1(b),図2参照)、高さの低い直方体状の庫内空間であって上面だけが解放されていて他の五面が閉塞されているが(図1(b)参照)、この例では(図2(a)参照)、縦横に仕切られて、10行4列のマトリクス状に配置された多数の区画室28に区分けされている。各区画室28は、個々の麻薬をそのまま区分収納することも可能であるが、ここでは、麻薬を箱40に収容しておき、箱40を一つずつ区画室28に収納することとする(図2(b)参照)。区画室28が40室なので最大40個の箱40を収納することができる(図2(c),(d)参照)。閉じると外形が直方体状になる箱40の6面のうち面積最大の面が側面に来て縦になり、それより面積の小さい面が上下に来て横になる状態で、箱40を区画室28に収納することで、収納空間27は上面解放であっても収納力の高いものとなっている。
【0034】
また、このような収納空間27と上述の扉体22+26とを具備した麻薬保管庫20は、庫内の収納空間27の麻薬出入口が本体部の上面に来ていて収納空間27の区画室28に対する箱40の出し入れ作業が立ち姿勢で遣りやすくなっている。しかも、上面解放のの代償として本体部の上に物を置き難くなっているにも関わらず、扉体22+26を開けた状態では、収納空間27の傍らに天板部26が横たわっているため、区画室28から箱40を取り出したときや区画室28に箱40を入れる前に(図2(e),(b)参照)、その箱40を直ぐ側の天板部26の上面上に置いて作業することができるので(図2(f)参照)、麻薬保管庫20は箱40の出し入れや開け閉め更には箱内の麻薬の確認等も楽に行えるものとなっている。
【0035】
箱40は(図3参照)、麻薬44を収容して閉じた状態で区画室28に入るように区画室28より一回りほど外形の小さい直方体状に形成された角箱であり、収納空間27に収納予定の麻薬44を一個以上(図示の例ではアンプル入り麻薬を最大10本まで)深めの収容部42の内底に収容することができるようになっている。箱40を区画室28に収納したとき上側に来て麻薬出入口で露出状態になる箱40の外面(図示の例では蓋部41と収容部42との連結部に当たる面)には、箱40の内外に割り振られた箱識別コードのうち外側の方の箱識別コード43が付されている(図3(a),(b)参照)。このような箱識別コード43は、それが読み取れたときには箱40が撮像装置13の撮影範囲内に入っていることに加えて箱40が閉まっていることも示すものとなっている。
【0036】
また(図3(c)〜(e)参照)、箱40を開けたときに露出する部位の典型例である蓋部41の内側には、箱40の内外に割り振られた箱識別コードのうち内側の方の箱識別コード45が付されている。麻薬44の確認や出し入れは、蓋部41を反転させて、収容部42が大きく開いた状態で行うが、その状態で露出する箱識別コード45は、それが読み取れたときには箱40が撮像装置13の撮影範囲内に入っていることに加えて箱40が開いていることも示すものとなっている。なお、図示の例では、箱識別コード43が箱40の外面に一つだけ付されるとともに箱識別コード45も箱40の内面に一つだけ付されているが、箱識別コード43も箱識別コード45も一つの箱40に複数あっても良い。
【0037】
さらに(図3(d),(e)参照)、箱40を開けた状態で麻薬44を収める収容部42の中の麻薬収容部位(図示の例では収容部42の内底において仕切や窪み等で形成された各区画)には、それらの麻薬収容部位に割り振られた薬識別コード46が付されている。何れの麻薬収容部位についても、薬識別コード46を付する所は、麻薬44を収容部42に収容すると隠れるが(図4(d)参照)、麻薬44を収容部42から出すと露呈する所から選出されている(図4(e)参照)。このような薬識別コード46は、付記先の箱40が開いていてその箱識別コード45が読み取れていることを前提として、それ即ち薬識別コード46の読取可否に応じて箱40の麻薬収容状態を示すものとなっている。
【0038】
この薬識別コード46も、上述した条件を満たせば、収容部42の内底の各麻薬収容部位に一つずつしか付されなくても良く複数あっても良い。また、箱40における麻薬44の収容状態を検知して把握するに際して個数だけ把握する場合は、各麻薬収容部位に割り振る薬識別コード46のコード値を同じにしても良い。個数だけでなく個々の位置まで把握する場合は、麻薬収容部位それぞれに異なるコード値を割り振れば良い。
これらの箱識別コード43,45や薬識別コード46には何れもカラービットコードが採用されており、カラービットコードの箱40への付け方は、直接印刷によるものでも良く、カラービットコードを印刷したシールを貼り付けるといった間接的手法でも良い。
【0039】
撮像装置13は(図1(a),(b)参照)、例えばCCDカメラが採用され、撮像方向を真下から少しだけ手前へ傾けた斜め下向きにして麻薬保管装置10の上方に固定支持されており、麻薬保管庫20の扉体を閉めた状態では天板部26の上面を撮り(図1(a)参照)、麻薬保管庫20の扉体を開けた状態では(図1(b)参照)、天板部26が退出して露出した麻薬保管庫20の収納空間27の麻薬出入口(麻薬の出し入れ口)の全域を撮るのに加えて、収納空間27の麻薬出入口の横に退出した天板部26の上面のほぼ全域も撮り続けるようになっている。撮像装置13の撮影範囲は、収納空間27から麻薬を出し入れする調剤者の様子に加えて、引出29を開け閉めする調剤者の様子も撮影できるのが望ましい。箱識別コード43,45や薬識別コード46がカラービットコードで印刷されているので、撮像装置13には、カラー撮影の可能なものが採用されている。
【0040】
情報処理装置30は(図1(c)参照)、十分な容量のメモリと十分な処理速度のプロセッサとを具備していればコンピュータでもデジタルシグナルプロセッサでも単一プロセッサでも複合形でも分散形でも良く、上述したように麻薬保管庫20の適宜部位等に付設されている。そして、画像記録プログラム32とコード読取プログラム34と在庫管理プログラム35と作業支援プログラム37とがプログラムメモリ等にインストールされるとともに、画像データ31と画像ログ33と在庫データ36と作業ログ38と持出ログ39とを記憶保持するための各データ領域がランダムアクセスメモリやハードディスクといった書き換え可能なメモリに確保されている。
【0041】
画像データ31は、収納空間27の麻薬出入口や天板部26の上面を撮像装置13で上から撮った撮影画像のデータであり、例えば数十〜数百msの一定周期で又は不定周期で更新されるようになっている。また、画像データ31は、撮影領域の全範囲におけるカラービットコード像を読取に適う分解能で含むことができるデータ量のものとなっている。具体的には、収納空間27の各区画室28に収納された箱40の上面に付されている箱識別コード43も、天板部26の上に置かれた箱40が開いていればその蓋部41の内側に付されている箱識別コード45も、さらには開状態の収容部42の麻薬収容部位それぞれに付されている薬識別コード46も、カラービットコードを読み取れる分解能で記憶保持されるようになっている。
【0042】
画像記録プログラム32は、記録モードの初期設定等に応じて画像データ31の全部または適宜抽出した部分を画像ログ33にタイムスタンプと共に時系列で記録して蓄積するものであり、常時記録する場合は画像ログ33が満杯になると旧いデータから順に消去して再利用するようになっており、適宜抽出する場合は、詳細は割愛するが他のプログラムからトリガを受けたときだけ静止画や短時間の動画を記録するようになっている。
画像ログ33は、後の目視確認等のため、再生できるようになっている。
【0043】
コード読取プログラム34は、画像データ31からカラービットコード像を切り出してそのカラービットコードを読み取るものであり、コードの読み取り方は従来手法で良いが(例えば特許文献5,6参照)、読み取って得るコード情報として、コード値だけでなくコード位置も求めるようになっている。識別コードには、上述したように収納予定の各麻薬44を収容しうる箱40の内外に割り振られた箱識別コード43,45と箱40の中の各麻薬収容部位に割り振られた薬識別コード46とが含まれており、それらのコード値は、識別のために固有な値となっている。また、コード位置は、画像データ31のデータ領域におけるカラービットコード像の位置、又はそれを撮像装置13の撮影領域における位置ひいては各区画室28の位置や収納空間27の外の位置などに変換したものである。
【0044】
さらに、コード読取プログラム34は、上述した箱40や麻薬44に係る識別コード43,45,46に加えて、調剤者IDや処方IDのコード情報も画像データ31に含まれていれば読み取るようになっている。調剤者IDは、各調剤者に支給された社員カード等にカラービットコードで印刷されており、処方IDは、処方箋番号や調剤指示箋番号が典型例であり、処方箋や調剤指示箋にやはりカラービットコードで印刷されている。
画像データ31から読み取られたコード情報のうち、識別コード43,45,46の情報はコード読取プログラム34から在庫管理プログラム35に送出され、調剤者IDや処方箋番号などのコード情報は作業支援プログラム37に送出されるようになっている。
【0045】
在庫管理プログラム35は、上述したコードの読取の可否に応じて在庫データ36を更新することにより、麻薬保管庫20に保管されている麻薬44に係る在庫管理機能を担うものであり、具体的には、箱の内外に割り振られた箱識別コード43,45の読取可否に応じて箱40の開閉を判別するとともに、箱40の中の麻薬収容部位に割り振られた薬識別コード46の読取可否に応じて箱40における麻薬44の収容状態を検知して、随時、在庫データ36の該当項目を書き換えるとともに、箱40や麻薬44に状況変化あったときなど節目々々で検知作業支援プログラム37に通知するようになっている。
【0046】
識別コード43,45,46は、識別可能であれば無作為に割り振って対応テーブル等に登録しておくことで箱とその内外と麻薬収容部位との対応関係が分かるようにしても良いが、この例では、繰り返し使用される箱40に識別コードを割り振るとともに付することにより、対応テーブル等が無くても対応関係が分かるようになっている。さらに、識別コード43,45,46を総て主番号と枝番との組み合わせにしたうえで、主番号については箱40毎に異なる一連番号を割り振るとともに同じ箱40に係る識別コード43,45,46の主番号には共通する同じ番号を採用し、枝番については同じ箱40に係る箱識別コード43と箱識別コード45と各薬識別コード46とに異なる番号を割り振るとともにその枝番の割り振り方を総ての箱40に対して同じく採用したものとなっている。
【0047】
在庫データ36は(図4参照)、そのような識別コードの割り振りに基づいて箱40毎に一レコードずつデータを保持するとともに、それぞれのレコードには、対応する箱40に付された箱識別コード43,45,46の主番号に係るコード値と、その箱40に収容される麻薬の薬品名と、その箱40が撮像装置13の撮影範囲に入っているか否かを示す箱有無と、その箱40が区画室28や天板部26等の何処に存在しているのかを示す箱位置と、箱識別コード45の読取可否に応じて判明した箱40の開閉状態を示す箱開閉と、各麻薬収容部位における薬の有無を示す薬有無(図示の例では一番目から十番目まで)といったデータ項目を保持するようになっている。それらのデータ項目のうち箱識別コードの値と薬品名は初期設定や追加登録にて予めセットされているが、他のデータ項目は在庫管理プログラム35によって書き込まれるものである。
【0048】
在庫管理プログラム35は、このような在庫データ36の該当レコードの該当項目を上述した識別コード43,45,46の割り振り及び箱40への付記に基づいて更新するものであり、具体的には、読み取れた箱識別コード43,45に該当するレコードについては箱有無を「有り」にするが読み取れなかった箱識別コード43,45に該当するレコードについては箱有無を「無し」にする。しかも、箱有無「有り」のレコードについては、箱識別コード43,45のコード位置が取得できていれば、その位置情報を箱位置に書き込む。この情報の示す位置が収納空間27の領域に入っていれば、該当する箱40が区画室28の何れかに収納されていると判定して、その区画室28の番号も箱位置に追記したり、箱位置の位置情報の示す位置が収納空間27から外れていれば、該当する箱40が収納空間27から出ていると判定して、その旨を箱位置に追記するようにもなっている。
【0049】
また、在庫管理プログラム35は、箱識別コード43,45のうち箱識別コード43が読み取れているときには該当レコードのデータ項目のうち箱開閉を「閉状態」にし、箱識別コード43,45のうち箱識別コード45が読み取れているときには該当レコードのデータ項目のうち箱開閉を「開状態」にするようになっている。しかも、箱開閉「開状態」のレコードについては、データ項目のうち複数存在する麻薬収容部位それぞれに対して、薬識別コード46が読み取れた所には「無し」を書き込み、薬識別コード46が読み取れなかった所には「有り」を書き込む。このような麻薬収容部位「有り」のデータ項目を数え上げることで、該当する箱40における麻薬44の収容数が判るのであるが、蓋部41が開いていない箱40は麻薬44を出し入れできないので、データ項目のうち箱開閉が「開状態」でないレコードについては、麻薬収容部位を更新しないようになっている。
【0050】
作業支援プログラム37は(図5〜図11参照)、調剤者が選択しうる入庫・払出・返却・出庫・終了といった作業項目を表示装置12の作業項目表示領域51に表示するとともに(図5参照)、その選択や在庫管理プログラム35からの通知等に応じて作業内容を決定して、適宜な作業案内を表示装置12の作業案内表示領域52に表示して調剤者に作業を促したり、作業の進行状況や警報などを表示装置12の状態等表示領域53に表示して調剤者に状態を知らせたりするようになっている。その際、薬品名のリストを表示したり(図5(a)参照)、区画室28のうち該当するものを図示したり(図5(b)参照)、多くの情報を表示するときには表示装置12の一覧表示領域54を使用し、必要に応じてスクロール可能にしたり点滅や色で強調したりも、するようになっている。
【0051】
作業支援プログラム37の処理内容を、以下、フローチャートを参照しながら詳述するが、本願発明の理解と実施には正常処理を説明すれば足りるので、作業支援プログラム37の選択指示や案内表示を無視した無秩序な作業行為に起因する異常処理や、撮像装置13の撮影を邪魔するといった妨害行為に起因する警報出力と処理中断、故障等に起因する例外処理などの説明は割愛する。
作業支援プログラム37が担当する主な作業は、入庫・払出・返却・出庫の四項目であり、それらの作業項目に係る作業支援処理は、調剤者がタッチパネルの入力装置11を操作して行う作業項目の選択と、調剤者が二種類の鍵を操作して行う錠23,24双方の解錠とに応じて、開始されるようになっている。
【0052】
すなわち(図6参照)、作業支援プログラム37は、麻薬保管庫20の扉が閉められ施錠もされている初期状態・基本状態では(A)、錠センサ14の検出結果と入力装置11の入力結果とに基づいて錠23,24が解錠されたか或いは表示装置12の作業項目表示領域51の作業項目のうち何れかが選択されたかを調べ(ステップS61)、解錠も項目選択も行われていなければそれが行われるのを待つが(No)、解錠か項目選択が行われていれば(Yes)、表示装置12の作業案内表示領域52の表示等にて調剤者に調剤者IDの入力を求める(ステップS62)。それから、調剤者IDの入力を待つのであるが(ステップS63のNo)、調剤者IDは、入力装置11から入力されたものでも、撮像装置13及びコード読取プログラム34で読み取られたものでも、受け付けるようになっている。
【0053】
そして、調剤者IDが取得できると(ステップS63のYes)、未だ解錠済みでなかったときには(ステップS64のNo)、表示装置12の作業案内表示領域52の表示等にて調剤者に解錠を促し(ステップS65)、未だ作業項目の選択が済んでいなかったときには(ステップS66のNo)、表示装置12の作業案内表示領域52の表示等にて調剤者に作業項目の選択を促し(ステップS67)、作業項目の選択が済むと(ステップS68)、選択に応じて該当する作業項目の処理を行う。すなわち、作業支援プログラム37は、入庫・払出・返却・出庫の四項目うち何れが調剤者によって選択されたかに応じて作業支援の処理内容が分かれるものとなっている(B,C,D,E)。
【0054】
先ず(図7参照)、四つの作業項目のうち入庫が選択されたとき(B)、作業支援プログラム37は、選択可能な薬品名を表示して調剤者に選択を促す(ステップS71)。そのとき(図5(a)参照)、選択を促す案内は表示装置12の作業案内表示領域52に表示し、薬品名は表示装置12の一覧表示領域54にリスト表示して選択可能とし、一度に表示しきれなければスクロールも行うようになっている。入庫の対象となる薬品は在庫データ36に登録されている全薬品なので、作業支援プログラム37は在庫データ36の全レコードにアクセスして薬品名を収集して表示と選択の対象にするようになっている。
【0055】
それから(ステップS72)、表示装置12の作業項目表示領域51の作業項目のうち終了が入力装置11の操作にて選択されているか、あるいは錠23,24が鍵操作にて施錠されているか、それらの何れか一方又は双方が行われたときには、ここでの入庫作業支援処理を終えて、各作業支援に共通する作業支援終末処理に移行するが(ステップS72のYes,図8のF)、そうでなければ入庫作業支援処理が継続される(図7のステップS72のNo)。そして、入力装置11の操作によって薬品名が選択されるか入力されるのを待って(ステップS73のNo)、入庫対象の麻薬44の薬品名を取得することができると(ステップS73のYes)、表示装置12の一覧表示領域54に収納空間27の区画室28の配置図を表示するとともに、入庫先の候補となる区画室28を点滅や彩色などで強調して明示するようになっている(ステップS74)。
【0056】
入庫先の候補は、箱40が収納されていない空の区画室28と、麻薬44の薬品名が一致している箱40であって未だ満杯になっていない箱40が収納されている区画室28であり、作業支援プログラム37は両者を区別可能に表示するようになっている。
この案内表示後も(ステップS75)、終了選択か施錠が行われたときには入庫作業支援処理を終えて作業支援終末処理に移行するが(ステップS75のYes,図8のF)、そうでなければ入庫作業支援処理が継続され(図7のステップS75のNo)、該当薬品の在庫データが更新されるのを待ち(ステップS76のNo)、その更新が行われたときには(ステップS76のYes)、該当薬品の入庫作業支援処理を終えて、入庫作業支援処理を初めから繰り返すようになっている(B)。
【0057】
なお、上述したように在庫データ36の更新は在庫管理プログラム35によって調剤者の実作業に追随する態様で行われ、その更新時には在庫管理プログラム35から作業支援プログラム37に通知がなされるので、作業支援プログラム37は、在庫管理プログラム35から通知を受け取ったときに、該当薬品すなわち入庫対象として薬品名を取得していた作業支援対象の麻薬44について、在庫データ36を検索して、在庫数量に変化があったか否かを調べることで、該当薬品の在庫データ更新の有無を判別するようになっている。ここで異常処理に少し言及すると、入庫では在庫が増えるはずであるが、減った場合や、対象外だけ在庫更新された場合は、その異常内容を作業ログ38に記録するとともに、画像記録プログラム32に画像ログ33への画像記録を依頼するようになっている。
【0058】
次に(図9参照)、四つの作業項目のうち払出が選択されたとき(C)、作業支援プログラム37は、処方情報の取得を試行する(ステップS91)。具体的には、表示装置12の作業案内表示領域52を利用して処方箋か調剤指示箋の提示を調剤者に促しながら、薬品名や処方量といった処方情報そのもの或いは処方箋番号か調剤指示箋番号といった処方情報への手掛りが入力装置11の操作にて入力されるか或いはコード読取プログラム34からコード読取の結果として引き渡されるのを、終了選択か施錠で払出作業支援処理が打ち切られるかタイムアウトまで待ち、処方箋番号等が取得できたときには、該当する詳細な処方情報を処方管理装置15への問い合わせ等にて取得するようになっている。
【0059】
そして、処方情報が取得できなかったときには在庫データ36登録の全薬品を選択可能薬品に選出するが(ステップS92のNo)、処方情報が取得できたたときには(ステップS92のYes)、その処方情報に基づいて処方された麻薬44だけに選択可能薬品を限定するようになっている(ステップS93)。選択可能薬品が決まると、後は一点を除き上述した入庫作業支援処理と同じ処理を行うようになっている(図9のステップ(S71)〜(S76))。その相違点は、該当薬品の在庫データが更新されたときに(ステップ(S76)のYes)、直ちに払出作業支援処理を終えるのでなく、該当薬品の在庫数量の変化を持出情報として、それを後の返却に備えて持出ログ39に追記するようになっている点である(ステップS94)。持出ログ39に持出情報を追記してから、該当薬品の払出作業支援処理を終えて、払出作業支援処理を繰り返すようになっている(C)。
【0060】
また(図10参照)、四つの作業項目のうち返却が選択されたとき(D)、作業支援プログラム37は、払出のときと同様にして処方情報の取得を試行して(ステップS101)、処方情報が取得できたときには(ステップS102のYes)、その処方情報に基づいて処方対象になった薬品を把握するとともに、その薬品に係る持出情報を作業ログ38の検索にて探し(ステップS103)、持出情報が取得できたときには(ステップS104のYes)、その持出情報に基づいて選択可能薬品を持出済みの麻薬44に限定するようになっている(ステップS105)。これに対し、処方情報や持出情報が取得できなかったときには(ステップS102のNo,S104のNo)、在庫データ36に登録されている全薬品を選択可能薬品に選出するようになっている。
【0061】
選択可能薬品が決まると、後は一点を除き上述した入庫作業支援処理と同じ処理を行うようになっている(図10のステップ(S71)〜(S76))。その相違点は、該当薬品の在庫データが更新されたときに(ステップ(S76)のYes)、直ちに返却作業支援処理を終えるのでなく、該当薬品の在庫数量の変化となって現われる実際の返却数量と対応する持出情報とを照合して過不足等を確認するとともに、それを持出ログ39に追記するようになっている点である(ステップS106)。持出情報照合と持出ログ追記とを行ってから、該当薬品の返却作業支援処理を終えて、他の薬品に係る返却作業支援処理を繰り返すようになっている(D)。
【0062】
さらに(図11参照)、四つの作業項目のうち出庫が選択されたとき(E)、作業支援プログラム37は、出庫理由の取得を試行する(ステップS111〜S113)。具体的には、予め候補として設定されている幾つかの選択可能な出庫理由を表示装置12の一覧表示領域54に表示するとともに表示装置12の作業案内表示領域52を利用して調剤者に出庫理由の選択か入力を促す(ステップS111)。それから、終了選択か施錠が行われれば出庫作業支援処理を終えて作業支援終末処理に移行するが(ステップS112のYes)、そうでなければ(ステップS112のNo)、入力装置11の操作にて表示候補のうちから何れかが選択されるかそれ以外の出庫理由が文字入力等で入力されるのを待つようになっている(ステップS113のNo)。
【0063】
そして、作業支援プログラム37は、出庫理由を取得することができると(ステップS113のYes)、その出庫理由を持出ログ39に追記するとともに(ステップS114)、収納空間27に収納されている総ての麻薬44が出庫対象となりうるので、保管中の全薬品を選択可能薬品に選出する。選択可能薬品が決まると、後は上述した入庫作業支援処理と同じ処理を行うようになっている(図11のステップ(S71)〜(S76))。ただし、該当薬品の在庫データが更新されて出庫作業支援処理を終えた後は(ステップ(S76)のYes)、入庫作業支援処理でなく、他の薬品に係る返却作業支援処理を繰り返すようになっている(E)。
【0064】
最後に、作業支援プログラム37は、上述したように入庫作業支援処理の途中で終了選択か施錠が行われると入庫作業支援処理を終えて作業支援終末処理に移行するが(図7のステップS72,S75)、これは四つの作業項目のうち残りの払出と返却と出庫に係る作業支援処理にも共通している(図9,図10,図11のステップ(S72),(S75))。そして、作業支援プログラム37は(図8参照)、作業支援終末処理に移行すると(F)、表示装置12の作業案内表示領域52を利用して調剤者に調剤者IDの入力を求め(ステップS81)、入力装置11かコード読取プログラム34から調剤者IDが得られるのをタイムアウトするまで待って(ステップS82,S83)、調剤者IDが取得できたときにはそれが作業支援処理開始時に取得したのと同じか確認等も行い、作業結果等を作業ログ38に追記するとともに、規則等で定められた帳票をプリンタ16に印刷させて、選択された作業項目に係る作業支援処理を完全に終了するようになっている。
【0065】
この実施例1の麻薬保管装置10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が扉を閉めた麻薬保管庫20等の外観斜視図、(b)が扉を開けた麻薬保管庫2等の外観斜視図である。また、図2は、(e)が区画室28から箱40を取り出しているところの外観斜視図、(f)が取り出した箱40を天板部26の上で開けたところの外観斜視図である。さらに、図3は、(b)が閉じた箱40の正面図と右側面図と背面図と底面図、(c)が完全に開けた箱40の外観斜視図、(d)が麻薬44を満杯に収容した完全開状態の箱40の平面図である。
【0066】
この麻薬保管装置10では(図1(a)参照)、調剤者が麻薬44を麻薬保管庫20の収納空間27に収納してから、調剤者が扉体22+26を閉めれば麻薬保管装置10では麻薬保管庫20の収納空間27の麻薬出入口が天板部26によって覆われ、更に調剤者が鍵を操作して錠23,24に施錠しておけば、鍵を扱う権限の無い者は収納空間27に麻薬44を出し入れすることができなくなるため、麻薬44が安全に保管されるうえ、撮像装置13によって天板部26やその周りが撮影されているので、何らの痕跡も残すことなく麻薬44の在庫が変化することがない。しかも、この状態では、情報処理装置30による作業支援処理等も在庫データ36の更新も行われない。
【0067】
このような動きのない保管状態から、調剤者が麻薬保管庫20に対して麻薬44の出し入れを行うことになったときには、調剤者が鍵を操作して錠23,24を解錠してから把手25を操作して麻薬保管庫20の扉体22+26を開けるとともに(図1(b)参照)、表示装置12の作業項目表示領域51に表示されている四つの作業項目すなわち入庫・払出・返却・出庫のうち何れかを調剤者がタッチパネル操作にて選択する(図5(a)参照)。それらの解錠と作業項目選択は何れが先でも同時でも良いが、何れか一方でも行われと、表示装置12の表示等にて情報処理装置30から調剤者に対し調剤者IDの入力が求められるので、調剤者は、調剤者IDがカラービットコードで印刷されているカード等を印刷面上向き状態にして天板部26の上面などの撮像装置13の撮影範囲内に置く。
【0068】
そうすると、そのカードが撮像装置13によって撮られて、そのカラービットコードが情報処理装置30のコード読取プログラム34によって読み取られて、そのコード値で示される調剤者IDが作業支援プログラム37に引き渡されて、麻薬44を調剤する権限の有無等が確認される。そして、権限が確認されると、未だ解錠していなければ解錠を促す表示が情報処理装置30によって表示装置12に出され、未だ作業項目を選択していなければ作業項目の選択を促す表示がやはり情報処理装置30によって表示装置12に出されるので、その案内表示に促された調剤者は、両行為を済ませる。
以下、調剤者の行う作業の内容が入庫・払出・返却・出庫の何れであるかに応じて四つに場合分けして説明する。
【0069】
先ず、入庫の場合、調剤者は作業項目表示領域51の作業項目の選択時に入庫を選択する。そうすると、情報処理装置30によって表示装置12の一覧表示領域54に選択可能薬品名が一覧表示される。入庫の場合、総ての麻薬44が入庫対象の候補であり、在庫データ36に登録されている全薬品名が選択可能薬品名として表示されるので、調剤者は入庫しようとしている麻薬44の薬品名を選択する。すると、今度は、情報処理装置30によって表示装置12の一覧表示領域54に(図5(b)参照)、該当する麻薬44を追加収容しうる箱40が収納されている区画室28と、該当する麻薬44を新たに収容した現在未収納の箱40を追加収納しうる空の区画室28とについて、その位置が案内表示される。
【0070】
調剤者は、その案内表示を見て、既収納の箱40に麻薬44を追加収容するか或いは未収納の箱40に麻薬44を新規収容するかを決め、前者の場合は適宜な既収納の箱40を収納空間27から取り出し(図2(e)参照)、後者の場合は適宜な未収納の箱40を装置外のストックから取り出し(図示せず)、何れの場合も箱40を天板部26に置いてから箱40の蓋部41を開き(図2(f)参照)、その箱40の収容部42に入庫対象の麻薬44を収容し(図3(c),(d)参照)、収容し終えたら、その箱40の蓋部41を閉めてから(図3(b)参照)、その箱40を表示装置12の一覧表示領域54で案内表示されている区画室28の何れかに収納する。
【0071】
そうすると、その入庫作業の間、情報処理装置30の在庫管理プログラム35により、入庫対象の箱40に係る識別コード43,45,46の読取に基づいて、入庫対象の箱40に係る収納空間27からの取出と天板部26の上での開閉と開状態での麻薬44の収容とが自動検知されるとともに、その検知結果に応じて在庫データ36が自動更新される。そして、情報処理装置30では、在庫データ36の更新があると、その旨が在庫管理プログラム35から作業支援プログラム37に通知され、更に作業支援プログラム37によって、該当薬品の在庫更新であるかが自動チェックされる。
【0072】
こうして、調剤者が案内表示を見ながら容易かつ的確に入庫作業を遂行すると、それに応じて自動で在庫データ36が更新されるとともに、入念な確認のため、再び、表示装置12の表示等にて情報処理装置30から調剤者に対し調剤者IDの入力が求められるので、調剤者は、調剤者IDがカラービットコードで印刷されているカード等を印刷面上向き状態にして天板部26の上面などの撮像装置13の撮影範囲内に置く。なお、調剤者IDカード等を天板部26の上に置いたままであった場合は、そのままにしておく。
【0073】
そうすると、そのカードが撮像装置13によって撮られて、そのカラービットコードが情報処理装置30のコード読取プログラム34によって読み取られて、そのコード値で示される調剤者IDが作業支援プログラム37に引き渡されて、作業支援プログラム37により、麻薬44を調剤する権限の有無が再確認されるとともに、今回読み取った調剤者IDが入庫開始時に読み取った調剤者IDと一致するか否かといったこともチェックされる。それから、更に、作業内容の作業ログ38への追記や,プリンタ16での帳票印刷が、作業支援プログラム37によって自動で行われる。
【0074】
こうして一回の入庫作業が終わると、情報処理装置30によって表示装置12の作業案内表示領域52の表示等を利用して他の麻薬44の入庫案内が出されるので、調剤者は、入庫対象の麻薬44が他にも残っていれば、上述した入庫作業を繰り返す。そして、入庫対象の麻薬44について、入庫作業を総て終えたら調剤者はタッチパネル操作で終了を選択する。そうすると、その終了選択に応じて、情報処理装置30は、開錠の確認や作業項目の選択といった作業開始時の処理に戻って、一から自動処理を繰り返す。
【0075】
次に、払出の場合、調剤者は作業項目表示領域51の作業項目の選択時に払出を選択する。そうすると、情報処理装置30によって表示装置12の作業案内表示領域52の表示を利用して調剤者に対し処方箋か調剤指示箋の提示が求められるので、調剤者は、可能であれば、処方箋か調剤指示箋にカラービットコードで印刷されている識別番号を撮像装置13に撮らせるか、入力装置11を介して処方箋番号等か詳細な処方情報を入力する。
【0076】
それに応じて情報処理装置30が処方情報を取得できれば選択可能薬品が処方内に限定され、そうでなければ在庫データ36に登録されている全薬品名が選択可能薬品名とされ、何れの場合も情報処理装置30によって表示装置12に選択可能薬品名が表示されるので、後は、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、上述した入庫のときと同様に、調剤者は、情報処理装置30による案内表示をみながら払出作業を進める。払出作業が入庫作業と相違するのは、麻薬44を麻薬保管庫20の収納空間27に入れるのでなく、麻薬44を麻薬保管庫20の収納空間27さらには箱40から取り出すことである。
【0077】
そうすると、払出作業の間も、情報処理装置30の在庫管理プログラム35により、払出対象の麻薬44や箱40に係る識別コード43,45,46の読取に基づいて、払出対象の箱40に係る収納空間27からの取出と天板部26の上での開閉と開状態での麻薬44の取出とが自動検知されるとともに、その検知結果に応じて在庫データ36が自動更新される。そして、情報処理装置30では、在庫データ36の更新があると、その旨が在庫管理プログラム35から作業支援プログラム37に通知され、更に作業支援プログラム37によって、該当薬品の在庫更新であるかが自動チェックされる。
【0078】
こうして、調剤者が案内表示を見ながら容易かつ的確に払出作業を遂行すると、情報処理装置30では、それに応じて自動で在庫データ36が更新されるとともに、今回の払出作業で取り出された麻薬44に関するデータが自動で持出ログ39に追記される。さらに、上述した再度の調剤者IDの確認も行われ、作業内容の作業ログ38への追記や,プリンタ16での帳票印刷も、作業支援プログラム37によって自動で行われる。
そして、一回の払出作業が終わると、やはり他の麻薬44の払出案内が出されるので、調剤者は、必要なら上述の作業を繰り返し、払出を総て終えたらタッチパネルで終了を選択する。すると、この場合も、その終了選択に応じて、情報処理装置30は、開錠の確認や作業項目の選択といった作業開始時の処理に戻って、一から自動処理を繰り返す。
【0079】
また、返却の場合、調剤者は作業項目表示領域51の作業項目の選択時に返却を選択する。そうすると、払出時と同様に情報処理装置30によって表示装置12の作業案内表示領域52の表示を利用して調剤者に対し処方箋か調剤指示箋の提示が求められるので、調剤者は、可能であれば、払出時に使用した処方箋か調剤指示箋にカラービットコードで印刷されている識別番号を撮像装置13に撮らせるか、該当する処方箋番号等か詳細な処方情報を入力装置11の操作にて入力する。
【0080】
それに応じて情報処理装置30が処方情報を取得でき更に持出ログ39から対応する持出情報を探し出すことができれば選択可能薬品が持出済みの麻薬44に限定され、そうでなければ在庫データ36に登録されている全薬品名が選択可能薬品名とされ、何れの場合も情報処理装置30によって表示装置12に選択可能薬品名が表示されるので、後は、やはり繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、上述した入庫や払出のときと同様に、調剤者は、情報処理装置30による案内表示をみながら返却作業を進める。返却作業が払出作業と相違するのは、麻薬44を麻薬保管庫20の収納空間27や箱40から取り出すのでなく、先の払出時に一旦は取り出したが使用に至らなかったために戻して再保管することになった麻薬44を箱40に収容して収納空間27に収納することである。
【0081】
そうすると、やはり返却作業の間も、情報処理装置30の在庫管理プログラム35により、返却対象の麻薬44や箱40に係る識別コード43,45,46の読取に基づいて、返却対象の箱40に係る収納空間27からの出し入れと天板部26の上での箱開閉と開状態での麻薬44の収容とが自動検知されるとともに、その検知結果に応じて在庫データ36が自動更新される。そして、情報処理装置30では、在庫データ36の更新があると、その旨が在庫管理プログラム35から作業支援プログラム37に通知され、更に作業支援プログラム37によって、該当薬品の在庫更新であるかが自動チェックされる。
【0082】
こうして、調剤者が案内表示を見ながら容易かつ的確に返却作業を遂行すると、情報処理装置30では、それに応じて自動で在庫データ36が更新されるとともに、今回の返却作業で再保管に戻した麻薬44に関するデータが自動で持出ログ39に追記される。さらに、上述した再度の調剤者IDの確認も行われ、作業内容の作業ログ38への追記や,プリンタ16での帳票印刷も、作業支援プログラム37によって自動で行われる。
そして、一回の返却作業が終わると、やはり他の麻薬44の返却案内が出されるので、調剤者は、必要なら上述の作業を繰り返し、返却を総て終えたらタッチパネルで終了を選択する。すると、この場合も、その終了選択に応じて、情報処理装置30は、開錠の確認や作業項目の選択といった作業開始時の処理に戻って、一から自動処理を繰り返す。
【0083】
さらに、出庫の場合、調剤者は作業項目表示領域51の作業項目の選択時に出庫を選択する。そうすると、情報処理装置30によって表示装置12の作業案内表示領域52や一覧表示領域54の表示を利用して調剤者に対し出庫理由の選択か入力が求められるので、調剤者は、一覧表示領域54の表示リストの中に適切な理由があればタッチパネル操作でそれを選択し、そうでなければ入力装置11の操作にて出庫理由を入力する。自動で案内表示されて選択できる出庫理由としては、大項目では返品や破棄が挙げられ、返品の詳細理由としては、リコールや,不良品,不要になった良品などが挙げられ、破棄の詳細理由としては、期限切れや,破損,変色などが挙げられる。
【0084】
そして、その案内表示に応じて調剤者が出庫理由を指定し、情報処理装置30が出庫理由を取得できれば、その出庫理由が作業支援プログラム37によって持出ログ39に追記される。それから、情報処理装置30によって表示装置12に選択可能薬品名が表示されるが、出庫の場合は麻薬保管庫20で保管中の総ての44が選択可能薬品に選出される。後は、やはり繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、上述した払出のときと同様に、調剤者は、情報処理装置30による案内表示をみながら出庫作業を進める。出庫作業に伴う在庫管理も、個々の麻薬44単位であれ箱40単位であれ不都合なく自動処理される。
【0085】
こうして、調剤者が案内表示を見ながら容易かつ的確に出庫作業を遂行すると、それに応じて作業支援プログラム37によって自動で在庫データ36が更新され、それから作業支援プログラム37によってやはり自動で再度の調剤者IDの確認や,作業内容の作業ログ38への追記,プリンタ16での帳票印刷が行われる。
そして、一回の出庫作業が終わると、やはり他の麻薬44の出庫案内が出されるので、調剤者は、必要なら上述の作業を繰り返し、出庫を総て終えたらタッチパネルで終了を選択する。すると、この場合も、その終了選択に応じて、情報処理装置30は、開錠の確認や作業項目の選択といった作業開始時の処理に戻って、一から自動処理を繰り返す。
【0086】
こうして、入庫・払出・返却・出庫の何れの作業についても、調剤者は、情報処理装置30に対しては作業項目の選択やカード提示といった簡単な操作や必要なときだけ入力操作を行うだけで、麻薬44を出し入れする実作業に集中することができ、それも作業案内を見ながら楽に作業を進めることができるうえ、それだけで必要な在庫データの更新や帳票の印刷が情報処理装置30によって自動処理されるので、麻薬44の厳格な保管と管理を容易かつ的確に行うことができる。
【実施例2】
【0087】
図12(a),(b)に機械系の外観斜視図を示した本発明の麻薬保管装置が上述した実施例1の麻薬保管装置10と相違するのは、内戸61,62が追加された点と、錠24が移設されて内戸用になっている点である。
天板部26の内側で収納空間27の麻薬出入口を覆う内戸が、図12(a)に示したものではシャッター等の鎧戸61になっており、図12(b)に示したものでは折戸62になっている。
【実施例3】
【0088】
本発明の麻薬保管装置の実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図13は、(a)が閉状態の機械系の外観斜視図、(b)が開状態の機械系の外観斜視図である。
【0089】
この麻薬保管装置が上述した実施例1の麻薬保管装置10と相違するのは、撮像装置13が複数化されて収納空間27と天板部26とを分担するようになった点と、扉体が改造されている点である。
扉体は、既述した縦板部22と天板部26とに加え、両者22,26と直交状態で両者22,26に連結された縦板部63も具備している。縦板部63と縦板部22及び天板部26も、一体化して又は閉状態では連結解除部が隠れる態様で、相互連結されている。
【0090】
この場合、閉状態で(図13(a)参照)、天板部26が横置き姿勢で収納空間27の麻薬出入口を覆うようになっていることには変わりないが、縦板部22は縦置き姿勢のまま麻薬保管庫20の前面でなく右側面に移設され、麻薬保管庫20の前面には縦置き姿勢の縦板部63が新設されている。また、ヒンジ21は麻薬保管庫20の右前の角部から右後の角部に移設されている。そのため(図1(b)参照)、扉体を約90゜右方へ揺動させれば収納空間27の麻薬出入口を全開させることができる。
【0091】
しかも、麻薬保管庫20の本体部の前面を凹ませたりそれに合わせて縦板部22の端部を斜めに切り落としたりしないで、縦板部22も天板部26も縦板部63もほぼ厚さ一定の平板のまま使用しても、扉開閉に不都合のないものとなっている。
このように本願発明の麻薬保管庫20の扉体にあっては、この例の三面連結扉22,26,63であれ、上述した二面連結扉22,26であれ、一般的な玄関や部屋の出入口のドアのように縦軸周りで揺動するものとなっているので、金属等で堅固に作られていても、その重量の割には楽に開閉することができる。
【0092】
[その他]
なお、上記実施例では、カラービットコードの読取時にコード値に加えてコード位置まで取得するとともに、箱識別コード43の位置情報に基づいて箱40の収納された区画室28を自動特定することにより、収納区画を強制しなくても取出時の案内表示等ができるようになっていたが、例えば麻薬44の剤種毎に又は個々の箱40毎に収納先の区画室28を予め決めて情報処理装置30のデータメモリの対応テーブル等に設定しておき、その設定に基づいて箱40の収納先を表示装置12の案内表示等で指定するようにしても良い。調剤者が案内に適切に応じることを前提とした運用を行えば、コード位置の取得が必要でなくなる。コード位置が得られる場合は、収納先を違えたときには警報を発して訂正されるまで収納の遣り直しを促すようにしても良い。
【0093】
また、上記実施例では、麻薬44を複数個収容しうる箱40だけが区画室28に収納されていたが、大きめの麻薬などは箱40に入れないでそのまま単独で区画室28に収納しても良く、その場合は、各麻薬に割り振られた薬識別コードを粘着シール等に印刷してその印刷済みシール等を個々の麻薬(実際には個々の麻薬を収容したアンプル等の容器や包装材)に貼り付けておくとともに、在庫データ36(図4参照)の該当レコードにおける箱識別コード等の取り扱いに関して箱識別コードと薬識別コードとを同じと見なして、仮に最大収容数が一個の箱に一個だけ麻薬が収容されているかのようにデータを処理すれば良い。或いは、各レコードに箱使用の有無を示すフラグを設けるとともに、箱不使用のレコードは薬識別コードと薬品名と薬有無といった項目を持つものに変更するのも良い。
【0094】
さらに、上記実施例では、収納空間27を等サイズの区画室28に区分けしていたが、区画室28が総て同じである必要はなく、区画室28に大小があっても良く、区画室28の深さが異なっていても良い。そもそも、収納空間27の区画分けは必須でなく、箱識別コード43やそれに代わる識別コードが撮像装置13で撮影でき情報処理装置30で読み取れる状態で麻薬44を収納空間27に安定収納できれば、仕切が無くても良い。
また、上記実施例では、区画室28の案内表示に際して配置を示すとともに該当位置を強調表示するようになっていたが、区画室28に収納されている箱40に収容されている麻薬44の在庫数量を配置図に重畳表示するようにしても良い。
【0095】
また、上記実施例では、箱識別コード43,45や薬識別コード46にカラービットコードが採用されていたが、コード読取に不都合がなければ、カラービットコードに代えて又はカラービットコードと混在させてバーコードや二次元コードを採用しても良い。
また、上記実施例では、使用される箱識別コード43(主番号)が予め薬品名等と共に在庫データ36に登録されているものとしたが、未登録の識別コードを読み取ると自動的に追加登録処理を試行するように情報処理装置30の機能を拡張しても良い。
【0096】
また、上記実施例では、作業支援プログラム37が在庫データ36の更新に応じて該当薬品に係る作業支援処理を終了するようになっていたが(ステップS76)、同じ薬品を小分けして出し入れすることが比較的多い場合は、処理対象薬品を切り替えるか否かを調剤者に問い合わせるように作業支援プログラム37を改造しても良く、あるいは、例えばタッチパネル操作で選択しうる作業項目表示領域51の表示項目に処理対象薬品切替といった項目を追加しておいて、それが選択されるまでは同じ薬品に係る作業支援処理を継続し、処理対象薬品切替が選択されたら該当薬品に係る作業支援処理を終了するように、作業支援プログラム37を改造しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の麻薬保管装置は、法律等で規制される麻薬類の管理作業を支援するために開発されたものであるが、劇薬や毒薬といった自主規制対象薬剤を管理する作業の支援にも利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
10…麻薬保管装置、
11…入力装置(タッチパネル)、12…表示装置(タッチパネル)、
13…撮像装置、14…錠センサ、15…処方管理装置、16…プリンタ、
20…麻薬保管庫(本体部)、
21…ヒンジ(蝶番)、22…縦板部(扉体)、23,24…錠、25…把手、
26…天板部(扉体)、27…収納空間(庫内)、28…区画室、29…引出、
30…情報処理装置、
31…画像データ、32…画像記録プログラム、
33…画像ログ(蓄積データ)、34…コード読取プログラム、
35…在庫管理プログラム、36…在庫データ、37…作業支援プログラム、
38…作業ログ(蓄積データ)、39…持出ログ(蓄積データ)、
40…箱、
41…蓋部、42…収容部、43…箱識別コード(箱外面)、44…麻薬、
45…箱識別コード(蓋内面)、46…薬識別コード(内底面)、
51…作業項目表示領域、52…作業案内表示領域、
53…状態等表示領域、54…一覧表示領域、
61…鎧戸(シャッター)、62…折戸、63…縦板部(扉)
【技術分野】
【0001】
この発明は、麻薬保管庫に撮像装置を加えた麻薬保管装置に関し、詳しくは、撮像にて保管中の麻薬の在庫を把握する麻薬保管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
麻薬や覚醒剤の保管については、他の医薬品と区別して、鍵をかけた堅固な設備内に貯蔵して行わなければならないと法定されており(麻薬等取締法第34条第2項)、鍵をかけた堅固な設備は、麻薬専用の固定した金庫又は容易に移動できない金庫(重量金庫)で、施錠設備のあるものとされ(病院・診療所における麻薬管理マニュアル、平成18年12月、厚生労働省医薬食品局 監視指導・麻薬対策課)、二カ所以上で鍵がかかる構造(シリンダー錠とダイアル錠の組み合わせ)のものが望ましいとされている。さらに、麻薬の使用や廃棄に際しては帳簿や施用票といった帳票に記録することとされている。
【0003】
これほどに保管条件の厳しい麻薬類は別として、それより保管条件の緩い他の薬剤については、使い易い態様で収納するとともに収納状況や使用状況を自動把握するようになった薬品収納装置が実用化されている(例えば特許文献1参照)。この薬品収納装置は、薬品類を整列収納する多数のカセットにおける薬品類の収納数を求める計数手段を備えている。さらに(特許文献1第4実施例)、カセット保持部に箱形筐体を採用したうえで、その前面に薬品類を出し入れする大きな開口を形成するとともに、その開口を覆う幕も付加して、不使用時には幕を降ろしてカセット保持部内を暗くしておくようになっている。
【0004】
また、キャスタ付き庫部ユニットを具備しており庫内に医薬品を収納して手押しで運搬することができるばかりか保冷機能や走行駆動機能まで発揮できる医薬品運搬用手押車も薬品カートとして実用化されている(例えば特許文献2参照)。この医薬品運搬用手押車に装備された薬品情報管理装置は、マイクロプロセッサシステム等からなり、カードリーダやLCDパネルを具備している。そして、ICカード等から処方箋情報や,手術情報,患者情報,セット情報,運搬先情報,運搬経路情報などを読み取って、収納した医薬品を識別管理するとともに、運搬先を示す病室・手術室等の案内表示,施用対象患者の確認を促すための表示などをLCDパネルに行わせるようになっている。
【0005】
さらに、幾つかの薬品類を予めトレーにセットしておいて医療現場で使用された薬品類の使用状況を管理する薬品管理システムとして、トレーの薬品類セット面を撮影して画像データから薬品類の個数を求めるシステムが実用化されている(例えば特許文献3参照)。このシステムでは、使用前のセット情報を保存しておき、使用後にトレー単位での計測作業を行って、薬品類の数量変化を検知することで、医療現場等で薬品類の使用数量を簡便かつ的確に把握することができるようにもなっている。
【0006】
また、トレーにセットして医療現場で使用される薬品類の使用状況を管理するために、トレーを仕切って各区画に薬品類を収容するとともに薬品類の使用の有無を区画毎に把握するようになった薬品管理システムも実用化されている(例えば特許文献4参照)。具体的には、トレーにセットすべき薬品類の配置を調剤指示に応じて決定する配置決定手段と、トレーの内底に敷ける印刷用紙に薬品類の識別コードを配置に対応させて印刷する印刷手段と、トレーと共に印刷用紙を上から撮る撮像手段と、その画像から識別コードを読み取って薬品類の使用の有無を判別する判定手段とを備えている。トレーの内部空間を仕切って多数の区画に分ける着脱式の仕切であって区画の異なるものを幾種類か備えていて、その仕切データと剤形データを参照して、仕切の自動選択まで行うようになっている。
【0007】
この薬品管理システムは、医療現場で使用される薬品類の使用状況を管理するために薬品類の有無を検出するに際して、個別検出方式では感応部・検出部(センサ)の個数が多くて製造や保守の負担が大きいことから、撮像方式を採用したものである。撮像方式であれば、感応部・検出部(センサ)が単一か少数個で済むので、製造も保守も遣りやすい。しかも、センサの少ない撮像方式を踏襲したうえで、トレーを仕切って区画分けするようにもしたことにより、区画単位で確実な検出を行える画像が得られるようになっているので、薬品類の使用状況を迅速かつ的確に把握することができる。
【0008】
なお、識別コードとしてはバーコードが馴染み深く、それを拡張した二次元コードも広まっているが、そのようなバーコード等は一般に平坦なシート表面に印刷されて光学的に読み取られる。また、多様な物品の表面への印刷にも読取にも適う識別コードとして、色の配列で符号化情報を表すカラービットコード(1Dや1.5Dのカラービットコードと呼ばれたりリフレクティブカラーコードと呼ばれることもある)が開発されている(例えば特許文献5,6参照)。その読取は、カラービットコードを含んだ画像データをエリアセンサ等の撮像装置で取り込んで複数の色領域あるいは色領域群に区分けし、区分けした各領域色や各領域群を境界条件や個数条件等を用いて絞り込んでから実際にデコードを行うことで、二次元バーコードのような切り出しマーク等を用いなくても、シンプルにデコードできるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−198190号公報
【特許文献2】特開2005−040371号公報
【特許文献3】特開2001−198191号公報
【特許文献4】特開2011−024663号公報
【特許文献5】特開2008−287414号公報
【特許文献6】特開2009−003721号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように薬品を区分収納するとともに一括撮影画像からコードを読み取って薬品の在庫管理や調剤作業の支援を行う装置が開発・提供されるようになってきたが、麻薬の保管については、上述したように保管庫の仕様や帳票の記録などに厳しい規制が課せられていて、厳格な保管が必要なため、在庫管理や作業支援の自動化・実用化が遅れている。
とはいえ、保管に厳格さが求められる所ほど、紛失等の不所望な事態の発生を迅速かつ的確に把握するとともに不所望な事態の発生を未然に防止するには、管理等を自動化することが有用であり効益が大きいことも否めない。
そのため、麻薬の保管についても、庫内の麻薬収納状態の一括撮影とコード読取にて在庫管理や作業支援を行う上記技術を適用することで、簡便かつ安価に、自動化してほしいという要請が高まっている。
【0011】
しかしながら、上記技術の適用には、麻薬保管庫内の収納空間が上面解放になっているとともに、その収納空間の上面を上方の撮像装置が下向き又は斜め下向きで撮ることが、前提条件になっていることから、麻薬保管庫の扉を前面でなく上面に配置替えしなければならないので、天板が扉にされるが、規則により堅固な設備でなければならない麻薬保管庫の扉は重厚であり、開閉時に上げ下げする天扉は、例え大きく上げ下げするが揺動端側だけであるとしても、人手で開閉するのが楽でない。
【0012】
だからといって、自動開閉装置や介助装置を付加するのは、機構が複雑化して原価も上がるうえ、故障時や停電時には扉開閉が却って困難になってしまって緊急手術等で急に麻薬が必要になったようなときには緊急手術等を妨げてしまうことにもなりかねないので、好ましくない。このため、麻薬保管庫には上記技術を安直に適用することができない。
そこで、麻薬保管庫内の麻薬収納状態を上から撮影しうるよう天板を扉にしても開閉時の上げ下げが不要で開閉が楽な麻薬保管装置を実現することが技術的な課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の麻薬保管装置は(解決手段1)、このような課題を解決するために創案されたものであり、庫内の収納空間の麻薬出入口が上面に形成された麻薬保管庫と、上方から下向きで又は斜め下向きで前記収納空間を撮る一台の又は複数の撮像装置と、収納予定の各麻薬またはそれを収容しうる箱に割り振られた識別コードを前記撮像装置の撮影画像から読み取ってコード読取の可否に応じて在庫データを更新する情報処理装置とを備えた麻薬保管装置であって、前記麻薬保管庫に付設されていて前記収納空間の麻薬出入口を開閉する扉体が、前記麻薬保管庫に対し縦軸のヒンジを介して連結された揺動可能な縦板部と、前記縦板部と一体化して又は閉状態では連結解除部が隠れる態様で前記縦板部に連結されていて前記縦板部の揺動に伴って横移動することにより前記収納空間の麻薬出入口の直上へ進退する天板部とを具備したものであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の麻薬保管装置は(解決手段2)、上記解決手段1の麻薬保管装置であって、前記撮像装置が、前記収納空間の麻薬出入口の直上から退出したときの前記天板部の上面も撮るようになっていることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の麻薬保管装置は(解決手段3)、上記解決手段1,2の麻薬保管装置であって、前記情報処理装置が、前記箱の内外に割り振られた箱識別コードの読取可否に応じて前記箱の開閉を判別するようになっていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の麻薬保管装置は(解決手段4)、上記解決手段3の麻薬保管装置であって、前記情報処理装置が、前記箱の中の麻薬収容部位に割り振られた薬識別コードの読取可否に応じて前記箱の麻薬収容状態を検知するようになっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
このような本発明の麻薬保管装置にあっては(解決手段1)、麻薬保管庫内の収納空間を上面解放にするとともに、その収納空間の上面を上方の撮像装置にて撮るようにしたことにより、扉を開ければ、庫内の麻薬収納状態が一括撮影されるとともに、その撮影画像からのコード読取とその読取結果に応じた在庫管理データの更新が情報処理装置によって遂行されるので、麻薬の管理が簡便かつ安価に自動化される。しかも、扉については、一般的な扉のようにヒンジを介して直ちに麻薬保管庫に取り付けるのでなく、開閉を担う天板部とヒンジとの間に縦板部を介在させるとともに、ヒンジの軸方向を縦向きにしたことにより、縦板部が一般的な前扉や側扉のように縦軸周りで揺動するものとなっている。
【0018】
また、縦板部に連結された天板部は、縦板部の揺動に伴って横移動するものとなっており、その横移動によって収納空間の麻薬出入口(麻薬の出し入れ口)の直上へ進退することで、麻薬保管庫の収納空間の麻薬出入口を開閉する。そのため、縦板部の揺動側部分を横に引いたり押したりすれば、ヒンジを中心にして縦板部が揺動するとともに、天板部がドアの動きよりも引き戸の動きに近い横滑り様に移動するので、天板部を持ち上げたり下げたりする必要がなくて、楽に、麻薬出入口を開閉することができる。
【0019】
しかも、麻薬出入口を開けるためにそこから退出した天板部は、収納空間の脇の作業台としても活用される。
さらに、天板部と縦板部とを一体化かそれに準じた態様で連結したことにより、両部の何れに錠を設けても、施錠すれば解錠しない限り簡単に扉が開くことはない。
したがって、この発明によれば、麻薬保管庫内の麻薬収納状態を上から撮影しうるよう天板を扉にしても開閉時の上げ下げが不要で開閉が楽な麻薬保管装置を実現できる。
【0020】
また、本発明の麻薬保管装置にあっては(解決手段2)、麻薬保管庫から麻薬を出し入れする際に薬品名の確認や箱の開閉など一寸した作業を行うときには、収納空間の上から横に退出した天板部の上で作業するのが自然なところ、その作業場も撮影範囲に含められるため、麻薬保管庫から出し入れ途中の麻薬も麻薬保管装置の管理下に置かれる。
【0021】
また、本発明の麻薬保管装置にあっては(解決手段3)、箱に識別コードが割り振られていればそれを箱識別コードとして判別できるように情報処理装置がなっていることを前提としている。そして、箱の内外に割り振られた箱識別コードを箱の内外に付しておけば、情報処理装置により、それらの箱識別コードの読取可否に応じて箱の開閉が自動判別される。さらに、(解決手段4)、箱の中の麻薬収容部位に割り振られた薬識別コードを箱の中の麻薬収容部位に付しておけば、その箱を開けたとき、情報処理装置により、その薬識別コードの読取可否に応じて箱の麻薬収容状態までも自動検知される。
そのため、麻薬の保管に際し、一個または複数の麻薬を箱に収容してから庫内へ収納するという遣り方で保管した場合でも、的確に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施例1について、麻薬保管装置の構造を示し、(a)が閉状態の機械系の外観斜視図、(b)が開状態の機械系の外観斜視図、(c)が情報処理系のブロック図である。
【図2】(a)が空の庫内の収納空間の平面図、(b)が区画室に箱を収納しているところの外観斜視図、(c)が区画室に箱を収納し終えたところの外観斜視図、(d)が満杯の庫内の収納空間の平面図、(e)が区画室から箱を取り出しているところの外観斜視図、(f)が取り出した箱を天板部の上で開けたところの外観斜視図である。
【図3】(a)が少しだけ開けた箱の正面図と右側面図と背面図、(b)が閉じた箱の正面図と右側面図と背面図と底面図、(c)が完全に開けた箱の外観斜視図、(d)が麻薬を満杯に収容した完全開状態の箱の平面図、(e)が空になった完全開状態の箱の平面図である。
【図4】在庫データのレコードの構造図である。
【図5】(a),(b)何れも表示装置の画面例である。
【図6】情報処理装置の作業支援プログラムのフローチャートである。
【図7】情報処理装置の作業支援プログラムのフローチャートである。
【図8】情報処理装置の作業支援プログラムのフローチャートである。
【図9】情報処理装置の作業支援プログラムのフローチャートである。
【図10】情報処理装置の作業支援プログラムのフローチャートである。
【図11】情報処理装置の作業支援プログラムのフローチャートである。
【図12】本発明の実施例2について、(a),(b)何れも開状態の機械系の外観斜視図である。
【図13】本発明の実施例3について、(a)が閉状態の機械系の外観斜視図、(b)が開状態の機械系の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
このような本発明の麻薬保管装置について、これを実施するための具体的な形態を、以下の実施例1〜3により説明する。
図1〜11に示した実施例1は、上述した解決手段1〜4(出願当初の請求項1〜4)を総て具現化したものであり、図12に示した実施例2や、図13に示した実施例3は、その変形例である。
なお、それらの図示に際しては、簡明化等のため、ボルト等の締結具や,電子回路の詳細などは図示を割愛し、発明の説明に必要なものや関連するものを中心に図示した。
【実施例1】
【0024】
本発明の麻薬保管装置の実施例1について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が麻薬保管庫20の扉を閉めた麻薬保管装置10の機械系の外観斜視図、(b)が麻薬保管庫20の扉を開けた麻薬保管装置10の機械系の外観斜視図、(c)が情報処理装置30を主体とした情報処理系のブロック図である。
【0025】
また、図2は、(a)が空の庫内の収納空間27の平面図、(b)が収納空間27の区画室28に上から箱40を収納しているところの外観斜視図、(c)が区画室28に箱40を収納し終えたところの外観斜視図、(d)が箱40で満杯になった庫内の収納空間27の平面図、(e)が区画室28から箱40を上へ取り出しているところの外観斜視図、(f)が取り出した箱40を天板部26の上面上で開けたところの外観斜視図である。
【0026】
さらに、図3は、(a)が少しだけ開けた箱40の正面図と右側面図と背面図、(b)が閉じた箱40の正面図と右側面図と背面図と底面図、(c)が完全に開けた箱40の外観斜視図、(d)が麻薬44を満杯に収容した完全開状態の箱40の平面図、(e)が空になった完全開状態の箱40の平面図である。
また、図4は、在庫データ36の各レコードの構造図であり、図5は、(a),(b)が何れも表示装置12の画面表示例であり、図6〜図11は、情報処理装置30の作業支援プログラム37のフローチャートである。
【0027】
麻薬保管装置10は(図1(a),(b)参照)、機械系の主要部である麻薬保管庫20と、麻薬保管庫20の後縁部の上に立設されたタッチパネルに組み込まれた入力装置11及び表示装置12と、更にその上に設けられた撮像装置13を具えている。また、配設状態の図示は割愛してブロック図で示したが(図1(c)参照)、麻薬保管装置10は、上記のタッチパネルに組み付けたり或いは麻薬保管庫20に添えて設けられた情報処理装置30と、麻薬保管庫20の錠23,24に付設されてそれが施錠されているのか解錠されているのかを検出する錠センサ14と、法律等に基づいて義務付けられた帳票を印刷するプリンタ16も具えている。撮像装置13と錠センサ14と入力装置11と表示装置12とプリンタ16は情報処理装置30と信号ケーブル等で接続されている。情報処理装置30はLAN等の通信回線を介して外部の処方管理装置15と交信可能にもなっている。
【0028】
麻薬保管庫20は(図1(a),(b)参照)、収納空間27,29を囲う堅固な本体部と、その収納空間の開口を開閉する扉体22+26とを具えたものであり、本体部には、庫内の収納空間として、本体部の上側部分に配された上面解放で固定の収納空間27と、本体部の下側部分に配された前方引出可能な引出29とが設けられている。収納空間27,29は何れも麻薬を収納するためのものであるが、そのうち、収納空間27は、庫内の麻薬収納状態の一括撮影とコード読取にて在庫管理や作業支援を行う対象となっているが、引出29は、そのような対象となっておらず、例えばコード割り振り前や一時保管等のため、従来通り人手で管理する麻薬を収納するようになっている。
【0029】
扉体22+26は、麻薬保管庫20に付設されていて収納空間27,29の麻薬出入口すなわち収納空間27の上面開口および引出29の前面引出口を開閉するものであるが、庫内の収納空間27の麻薬出入口が上面に形成されていることに対応してその麻薬出入口を開閉する横置き姿勢の天板部26と、その天板部26を移動可能に支持するとともに引出29の前面引出口を開放/閉塞する縦置き姿勢の縦板部22とを具備したものとなっている。縦板部22と天板部26は、縦板部22の上端と天板部26の前端とが溶接等で連結されて一体化している。あるいは、フックやネジ止め等で堅く連結されている。後者の場合は、フックを外したりネジを緩めるといった連結解除部が、扉体22+26を閉めたときには、扉体22+26の内側に隠れて露出しない部位に配置されている。
【0030】
縦板部22は、天板部26が連結されていることを除けば、通常の扉にそっくりで、麻薬保管庫20の前面を覆う長方形状の平板体からなり、左右の両辺のうち何れか一方(図示の例では右辺)が、軸方向をほぼ鉛直の縦向きにしたヒンジ21を介して麻薬保管庫20の縦の一辺(図示の例では右前辺)に連結されており、その縦軸のヒンジ21を揺動中心としてドアのように約270゜(図示の例では麻薬保管庫20の前面から右側面まで)揺動しうるものとなっている。この例では、把手25に加えて、二つの錠23,24も、縦板部22に装備されている。
【0031】
天板部26も正方形状・長方形状の平板体からなるが、天板部26のサイズは、麻薬保管庫20の上面に対応しており、収納空間27の麻薬出入口を完全に覆う大きさで足りる。扉の部材として開閉対象の開口を塞ぐとき(図1(a)参照)、縦板部22は通常の扉と同様用に麻薬保管庫20の前面に密着しても良いが、それと異なり、天板部26は、麻薬保管庫20の上面に密着するのでなく、麻薬を通過させない僅かな隙間で麻薬保管庫20の上面(より具体的には麻薬保管庫20の本体部の上面において収納空間27を囲む上縁部分)と上から向き合って対峙することで、麻薬保管庫20の上面と平行な方向へ移動しうる余地を確保していて、横滑りのような横移動を行えるものとなっている。
【0032】
天板部26の四辺のうち何れか一辺(図示の例では手前の辺)が縦板部22の上辺に連結されているので、天板部26と縦板部22はヒンジ21を中心にして一緒に揺動するが、連結状態がΓ字状で、ヒンジ21の軸が天板部26に対して垂直になっているので、天板部26は、縦板部22の揺動に伴って横移動することにより収納空間27の麻薬出入口の直上へ進退するものとなっている。そして、扉体22+26として開閉対象の収納空間27を全開させたときには(図1(b)参照)、縦板部22が麻薬保管庫20の本体部の左右両側面のうち揺動方向の側面(図示の例では右側面)にピッタリ添い、天板部26が同じ揺動方向から添えられた傍机のように収納空間27の横に来るようになっている。
【0033】
収納空間27は(図1(b),図2参照)、高さの低い直方体状の庫内空間であって上面だけが解放されていて他の五面が閉塞されているが(図1(b)参照)、この例では(図2(a)参照)、縦横に仕切られて、10行4列のマトリクス状に配置された多数の区画室28に区分けされている。各区画室28は、個々の麻薬をそのまま区分収納することも可能であるが、ここでは、麻薬を箱40に収容しておき、箱40を一つずつ区画室28に収納することとする(図2(b)参照)。区画室28が40室なので最大40個の箱40を収納することができる(図2(c),(d)参照)。閉じると外形が直方体状になる箱40の6面のうち面積最大の面が側面に来て縦になり、それより面積の小さい面が上下に来て横になる状態で、箱40を区画室28に収納することで、収納空間27は上面解放であっても収納力の高いものとなっている。
【0034】
また、このような収納空間27と上述の扉体22+26とを具備した麻薬保管庫20は、庫内の収納空間27の麻薬出入口が本体部の上面に来ていて収納空間27の区画室28に対する箱40の出し入れ作業が立ち姿勢で遣りやすくなっている。しかも、上面解放のの代償として本体部の上に物を置き難くなっているにも関わらず、扉体22+26を開けた状態では、収納空間27の傍らに天板部26が横たわっているため、区画室28から箱40を取り出したときや区画室28に箱40を入れる前に(図2(e),(b)参照)、その箱40を直ぐ側の天板部26の上面上に置いて作業することができるので(図2(f)参照)、麻薬保管庫20は箱40の出し入れや開け閉め更には箱内の麻薬の確認等も楽に行えるものとなっている。
【0035】
箱40は(図3参照)、麻薬44を収容して閉じた状態で区画室28に入るように区画室28より一回りほど外形の小さい直方体状に形成された角箱であり、収納空間27に収納予定の麻薬44を一個以上(図示の例ではアンプル入り麻薬を最大10本まで)深めの収容部42の内底に収容することができるようになっている。箱40を区画室28に収納したとき上側に来て麻薬出入口で露出状態になる箱40の外面(図示の例では蓋部41と収容部42との連結部に当たる面)には、箱40の内外に割り振られた箱識別コードのうち外側の方の箱識別コード43が付されている(図3(a),(b)参照)。このような箱識別コード43は、それが読み取れたときには箱40が撮像装置13の撮影範囲内に入っていることに加えて箱40が閉まっていることも示すものとなっている。
【0036】
また(図3(c)〜(e)参照)、箱40を開けたときに露出する部位の典型例である蓋部41の内側には、箱40の内外に割り振られた箱識別コードのうち内側の方の箱識別コード45が付されている。麻薬44の確認や出し入れは、蓋部41を反転させて、収容部42が大きく開いた状態で行うが、その状態で露出する箱識別コード45は、それが読み取れたときには箱40が撮像装置13の撮影範囲内に入っていることに加えて箱40が開いていることも示すものとなっている。なお、図示の例では、箱識別コード43が箱40の外面に一つだけ付されるとともに箱識別コード45も箱40の内面に一つだけ付されているが、箱識別コード43も箱識別コード45も一つの箱40に複数あっても良い。
【0037】
さらに(図3(d),(e)参照)、箱40を開けた状態で麻薬44を収める収容部42の中の麻薬収容部位(図示の例では収容部42の内底において仕切や窪み等で形成された各区画)には、それらの麻薬収容部位に割り振られた薬識別コード46が付されている。何れの麻薬収容部位についても、薬識別コード46を付する所は、麻薬44を収容部42に収容すると隠れるが(図4(d)参照)、麻薬44を収容部42から出すと露呈する所から選出されている(図4(e)参照)。このような薬識別コード46は、付記先の箱40が開いていてその箱識別コード45が読み取れていることを前提として、それ即ち薬識別コード46の読取可否に応じて箱40の麻薬収容状態を示すものとなっている。
【0038】
この薬識別コード46も、上述した条件を満たせば、収容部42の内底の各麻薬収容部位に一つずつしか付されなくても良く複数あっても良い。また、箱40における麻薬44の収容状態を検知して把握するに際して個数だけ把握する場合は、各麻薬収容部位に割り振る薬識別コード46のコード値を同じにしても良い。個数だけでなく個々の位置まで把握する場合は、麻薬収容部位それぞれに異なるコード値を割り振れば良い。
これらの箱識別コード43,45や薬識別コード46には何れもカラービットコードが採用されており、カラービットコードの箱40への付け方は、直接印刷によるものでも良く、カラービットコードを印刷したシールを貼り付けるといった間接的手法でも良い。
【0039】
撮像装置13は(図1(a),(b)参照)、例えばCCDカメラが採用され、撮像方向を真下から少しだけ手前へ傾けた斜め下向きにして麻薬保管装置10の上方に固定支持されており、麻薬保管庫20の扉体を閉めた状態では天板部26の上面を撮り(図1(a)参照)、麻薬保管庫20の扉体を開けた状態では(図1(b)参照)、天板部26が退出して露出した麻薬保管庫20の収納空間27の麻薬出入口(麻薬の出し入れ口)の全域を撮るのに加えて、収納空間27の麻薬出入口の横に退出した天板部26の上面のほぼ全域も撮り続けるようになっている。撮像装置13の撮影範囲は、収納空間27から麻薬を出し入れする調剤者の様子に加えて、引出29を開け閉めする調剤者の様子も撮影できるのが望ましい。箱識別コード43,45や薬識別コード46がカラービットコードで印刷されているので、撮像装置13には、カラー撮影の可能なものが採用されている。
【0040】
情報処理装置30は(図1(c)参照)、十分な容量のメモリと十分な処理速度のプロセッサとを具備していればコンピュータでもデジタルシグナルプロセッサでも単一プロセッサでも複合形でも分散形でも良く、上述したように麻薬保管庫20の適宜部位等に付設されている。そして、画像記録プログラム32とコード読取プログラム34と在庫管理プログラム35と作業支援プログラム37とがプログラムメモリ等にインストールされるとともに、画像データ31と画像ログ33と在庫データ36と作業ログ38と持出ログ39とを記憶保持するための各データ領域がランダムアクセスメモリやハードディスクといった書き換え可能なメモリに確保されている。
【0041】
画像データ31は、収納空間27の麻薬出入口や天板部26の上面を撮像装置13で上から撮った撮影画像のデータであり、例えば数十〜数百msの一定周期で又は不定周期で更新されるようになっている。また、画像データ31は、撮影領域の全範囲におけるカラービットコード像を読取に適う分解能で含むことができるデータ量のものとなっている。具体的には、収納空間27の各区画室28に収納された箱40の上面に付されている箱識別コード43も、天板部26の上に置かれた箱40が開いていればその蓋部41の内側に付されている箱識別コード45も、さらには開状態の収容部42の麻薬収容部位それぞれに付されている薬識別コード46も、カラービットコードを読み取れる分解能で記憶保持されるようになっている。
【0042】
画像記録プログラム32は、記録モードの初期設定等に応じて画像データ31の全部または適宜抽出した部分を画像ログ33にタイムスタンプと共に時系列で記録して蓄積するものであり、常時記録する場合は画像ログ33が満杯になると旧いデータから順に消去して再利用するようになっており、適宜抽出する場合は、詳細は割愛するが他のプログラムからトリガを受けたときだけ静止画や短時間の動画を記録するようになっている。
画像ログ33は、後の目視確認等のため、再生できるようになっている。
【0043】
コード読取プログラム34は、画像データ31からカラービットコード像を切り出してそのカラービットコードを読み取るものであり、コードの読み取り方は従来手法で良いが(例えば特許文献5,6参照)、読み取って得るコード情報として、コード値だけでなくコード位置も求めるようになっている。識別コードには、上述したように収納予定の各麻薬44を収容しうる箱40の内外に割り振られた箱識別コード43,45と箱40の中の各麻薬収容部位に割り振られた薬識別コード46とが含まれており、それらのコード値は、識別のために固有な値となっている。また、コード位置は、画像データ31のデータ領域におけるカラービットコード像の位置、又はそれを撮像装置13の撮影領域における位置ひいては各区画室28の位置や収納空間27の外の位置などに変換したものである。
【0044】
さらに、コード読取プログラム34は、上述した箱40や麻薬44に係る識別コード43,45,46に加えて、調剤者IDや処方IDのコード情報も画像データ31に含まれていれば読み取るようになっている。調剤者IDは、各調剤者に支給された社員カード等にカラービットコードで印刷されており、処方IDは、処方箋番号や調剤指示箋番号が典型例であり、処方箋や調剤指示箋にやはりカラービットコードで印刷されている。
画像データ31から読み取られたコード情報のうち、識別コード43,45,46の情報はコード読取プログラム34から在庫管理プログラム35に送出され、調剤者IDや処方箋番号などのコード情報は作業支援プログラム37に送出されるようになっている。
【0045】
在庫管理プログラム35は、上述したコードの読取の可否に応じて在庫データ36を更新することにより、麻薬保管庫20に保管されている麻薬44に係る在庫管理機能を担うものであり、具体的には、箱の内外に割り振られた箱識別コード43,45の読取可否に応じて箱40の開閉を判別するとともに、箱40の中の麻薬収容部位に割り振られた薬識別コード46の読取可否に応じて箱40における麻薬44の収容状態を検知して、随時、在庫データ36の該当項目を書き換えるとともに、箱40や麻薬44に状況変化あったときなど節目々々で検知作業支援プログラム37に通知するようになっている。
【0046】
識別コード43,45,46は、識別可能であれば無作為に割り振って対応テーブル等に登録しておくことで箱とその内外と麻薬収容部位との対応関係が分かるようにしても良いが、この例では、繰り返し使用される箱40に識別コードを割り振るとともに付することにより、対応テーブル等が無くても対応関係が分かるようになっている。さらに、識別コード43,45,46を総て主番号と枝番との組み合わせにしたうえで、主番号については箱40毎に異なる一連番号を割り振るとともに同じ箱40に係る識別コード43,45,46の主番号には共通する同じ番号を採用し、枝番については同じ箱40に係る箱識別コード43と箱識別コード45と各薬識別コード46とに異なる番号を割り振るとともにその枝番の割り振り方を総ての箱40に対して同じく採用したものとなっている。
【0047】
在庫データ36は(図4参照)、そのような識別コードの割り振りに基づいて箱40毎に一レコードずつデータを保持するとともに、それぞれのレコードには、対応する箱40に付された箱識別コード43,45,46の主番号に係るコード値と、その箱40に収容される麻薬の薬品名と、その箱40が撮像装置13の撮影範囲に入っているか否かを示す箱有無と、その箱40が区画室28や天板部26等の何処に存在しているのかを示す箱位置と、箱識別コード45の読取可否に応じて判明した箱40の開閉状態を示す箱開閉と、各麻薬収容部位における薬の有無を示す薬有無(図示の例では一番目から十番目まで)といったデータ項目を保持するようになっている。それらのデータ項目のうち箱識別コードの値と薬品名は初期設定や追加登録にて予めセットされているが、他のデータ項目は在庫管理プログラム35によって書き込まれるものである。
【0048】
在庫管理プログラム35は、このような在庫データ36の該当レコードの該当項目を上述した識別コード43,45,46の割り振り及び箱40への付記に基づいて更新するものであり、具体的には、読み取れた箱識別コード43,45に該当するレコードについては箱有無を「有り」にするが読み取れなかった箱識別コード43,45に該当するレコードについては箱有無を「無し」にする。しかも、箱有無「有り」のレコードについては、箱識別コード43,45のコード位置が取得できていれば、その位置情報を箱位置に書き込む。この情報の示す位置が収納空間27の領域に入っていれば、該当する箱40が区画室28の何れかに収納されていると判定して、その区画室28の番号も箱位置に追記したり、箱位置の位置情報の示す位置が収納空間27から外れていれば、該当する箱40が収納空間27から出ていると判定して、その旨を箱位置に追記するようにもなっている。
【0049】
また、在庫管理プログラム35は、箱識別コード43,45のうち箱識別コード43が読み取れているときには該当レコードのデータ項目のうち箱開閉を「閉状態」にし、箱識別コード43,45のうち箱識別コード45が読み取れているときには該当レコードのデータ項目のうち箱開閉を「開状態」にするようになっている。しかも、箱開閉「開状態」のレコードについては、データ項目のうち複数存在する麻薬収容部位それぞれに対して、薬識別コード46が読み取れた所には「無し」を書き込み、薬識別コード46が読み取れなかった所には「有り」を書き込む。このような麻薬収容部位「有り」のデータ項目を数え上げることで、該当する箱40における麻薬44の収容数が判るのであるが、蓋部41が開いていない箱40は麻薬44を出し入れできないので、データ項目のうち箱開閉が「開状態」でないレコードについては、麻薬収容部位を更新しないようになっている。
【0050】
作業支援プログラム37は(図5〜図11参照)、調剤者が選択しうる入庫・払出・返却・出庫・終了といった作業項目を表示装置12の作業項目表示領域51に表示するとともに(図5参照)、その選択や在庫管理プログラム35からの通知等に応じて作業内容を決定して、適宜な作業案内を表示装置12の作業案内表示領域52に表示して調剤者に作業を促したり、作業の進行状況や警報などを表示装置12の状態等表示領域53に表示して調剤者に状態を知らせたりするようになっている。その際、薬品名のリストを表示したり(図5(a)参照)、区画室28のうち該当するものを図示したり(図5(b)参照)、多くの情報を表示するときには表示装置12の一覧表示領域54を使用し、必要に応じてスクロール可能にしたり点滅や色で強調したりも、するようになっている。
【0051】
作業支援プログラム37の処理内容を、以下、フローチャートを参照しながら詳述するが、本願発明の理解と実施には正常処理を説明すれば足りるので、作業支援プログラム37の選択指示や案内表示を無視した無秩序な作業行為に起因する異常処理や、撮像装置13の撮影を邪魔するといった妨害行為に起因する警報出力と処理中断、故障等に起因する例外処理などの説明は割愛する。
作業支援プログラム37が担当する主な作業は、入庫・払出・返却・出庫の四項目であり、それらの作業項目に係る作業支援処理は、調剤者がタッチパネルの入力装置11を操作して行う作業項目の選択と、調剤者が二種類の鍵を操作して行う錠23,24双方の解錠とに応じて、開始されるようになっている。
【0052】
すなわち(図6参照)、作業支援プログラム37は、麻薬保管庫20の扉が閉められ施錠もされている初期状態・基本状態では(A)、錠センサ14の検出結果と入力装置11の入力結果とに基づいて錠23,24が解錠されたか或いは表示装置12の作業項目表示領域51の作業項目のうち何れかが選択されたかを調べ(ステップS61)、解錠も項目選択も行われていなければそれが行われるのを待つが(No)、解錠か項目選択が行われていれば(Yes)、表示装置12の作業案内表示領域52の表示等にて調剤者に調剤者IDの入力を求める(ステップS62)。それから、調剤者IDの入力を待つのであるが(ステップS63のNo)、調剤者IDは、入力装置11から入力されたものでも、撮像装置13及びコード読取プログラム34で読み取られたものでも、受け付けるようになっている。
【0053】
そして、調剤者IDが取得できると(ステップS63のYes)、未だ解錠済みでなかったときには(ステップS64のNo)、表示装置12の作業案内表示領域52の表示等にて調剤者に解錠を促し(ステップS65)、未だ作業項目の選択が済んでいなかったときには(ステップS66のNo)、表示装置12の作業案内表示領域52の表示等にて調剤者に作業項目の選択を促し(ステップS67)、作業項目の選択が済むと(ステップS68)、選択に応じて該当する作業項目の処理を行う。すなわち、作業支援プログラム37は、入庫・払出・返却・出庫の四項目うち何れが調剤者によって選択されたかに応じて作業支援の処理内容が分かれるものとなっている(B,C,D,E)。
【0054】
先ず(図7参照)、四つの作業項目のうち入庫が選択されたとき(B)、作業支援プログラム37は、選択可能な薬品名を表示して調剤者に選択を促す(ステップS71)。そのとき(図5(a)参照)、選択を促す案内は表示装置12の作業案内表示領域52に表示し、薬品名は表示装置12の一覧表示領域54にリスト表示して選択可能とし、一度に表示しきれなければスクロールも行うようになっている。入庫の対象となる薬品は在庫データ36に登録されている全薬品なので、作業支援プログラム37は在庫データ36の全レコードにアクセスして薬品名を収集して表示と選択の対象にするようになっている。
【0055】
それから(ステップS72)、表示装置12の作業項目表示領域51の作業項目のうち終了が入力装置11の操作にて選択されているか、あるいは錠23,24が鍵操作にて施錠されているか、それらの何れか一方又は双方が行われたときには、ここでの入庫作業支援処理を終えて、各作業支援に共通する作業支援終末処理に移行するが(ステップS72のYes,図8のF)、そうでなければ入庫作業支援処理が継続される(図7のステップS72のNo)。そして、入力装置11の操作によって薬品名が選択されるか入力されるのを待って(ステップS73のNo)、入庫対象の麻薬44の薬品名を取得することができると(ステップS73のYes)、表示装置12の一覧表示領域54に収納空間27の区画室28の配置図を表示するとともに、入庫先の候補となる区画室28を点滅や彩色などで強調して明示するようになっている(ステップS74)。
【0056】
入庫先の候補は、箱40が収納されていない空の区画室28と、麻薬44の薬品名が一致している箱40であって未だ満杯になっていない箱40が収納されている区画室28であり、作業支援プログラム37は両者を区別可能に表示するようになっている。
この案内表示後も(ステップS75)、終了選択か施錠が行われたときには入庫作業支援処理を終えて作業支援終末処理に移行するが(ステップS75のYes,図8のF)、そうでなければ入庫作業支援処理が継続され(図7のステップS75のNo)、該当薬品の在庫データが更新されるのを待ち(ステップS76のNo)、その更新が行われたときには(ステップS76のYes)、該当薬品の入庫作業支援処理を終えて、入庫作業支援処理を初めから繰り返すようになっている(B)。
【0057】
なお、上述したように在庫データ36の更新は在庫管理プログラム35によって調剤者の実作業に追随する態様で行われ、その更新時には在庫管理プログラム35から作業支援プログラム37に通知がなされるので、作業支援プログラム37は、在庫管理プログラム35から通知を受け取ったときに、該当薬品すなわち入庫対象として薬品名を取得していた作業支援対象の麻薬44について、在庫データ36を検索して、在庫数量に変化があったか否かを調べることで、該当薬品の在庫データ更新の有無を判別するようになっている。ここで異常処理に少し言及すると、入庫では在庫が増えるはずであるが、減った場合や、対象外だけ在庫更新された場合は、その異常内容を作業ログ38に記録するとともに、画像記録プログラム32に画像ログ33への画像記録を依頼するようになっている。
【0058】
次に(図9参照)、四つの作業項目のうち払出が選択されたとき(C)、作業支援プログラム37は、処方情報の取得を試行する(ステップS91)。具体的には、表示装置12の作業案内表示領域52を利用して処方箋か調剤指示箋の提示を調剤者に促しながら、薬品名や処方量といった処方情報そのもの或いは処方箋番号か調剤指示箋番号といった処方情報への手掛りが入力装置11の操作にて入力されるか或いはコード読取プログラム34からコード読取の結果として引き渡されるのを、終了選択か施錠で払出作業支援処理が打ち切られるかタイムアウトまで待ち、処方箋番号等が取得できたときには、該当する詳細な処方情報を処方管理装置15への問い合わせ等にて取得するようになっている。
【0059】
そして、処方情報が取得できなかったときには在庫データ36登録の全薬品を選択可能薬品に選出するが(ステップS92のNo)、処方情報が取得できたたときには(ステップS92のYes)、その処方情報に基づいて処方された麻薬44だけに選択可能薬品を限定するようになっている(ステップS93)。選択可能薬品が決まると、後は一点を除き上述した入庫作業支援処理と同じ処理を行うようになっている(図9のステップ(S71)〜(S76))。その相違点は、該当薬品の在庫データが更新されたときに(ステップ(S76)のYes)、直ちに払出作業支援処理を終えるのでなく、該当薬品の在庫数量の変化を持出情報として、それを後の返却に備えて持出ログ39に追記するようになっている点である(ステップS94)。持出ログ39に持出情報を追記してから、該当薬品の払出作業支援処理を終えて、払出作業支援処理を繰り返すようになっている(C)。
【0060】
また(図10参照)、四つの作業項目のうち返却が選択されたとき(D)、作業支援プログラム37は、払出のときと同様にして処方情報の取得を試行して(ステップS101)、処方情報が取得できたときには(ステップS102のYes)、その処方情報に基づいて処方対象になった薬品を把握するとともに、その薬品に係る持出情報を作業ログ38の検索にて探し(ステップS103)、持出情報が取得できたときには(ステップS104のYes)、その持出情報に基づいて選択可能薬品を持出済みの麻薬44に限定するようになっている(ステップS105)。これに対し、処方情報や持出情報が取得できなかったときには(ステップS102のNo,S104のNo)、在庫データ36に登録されている全薬品を選択可能薬品に選出するようになっている。
【0061】
選択可能薬品が決まると、後は一点を除き上述した入庫作業支援処理と同じ処理を行うようになっている(図10のステップ(S71)〜(S76))。その相違点は、該当薬品の在庫データが更新されたときに(ステップ(S76)のYes)、直ちに返却作業支援処理を終えるのでなく、該当薬品の在庫数量の変化となって現われる実際の返却数量と対応する持出情報とを照合して過不足等を確認するとともに、それを持出ログ39に追記するようになっている点である(ステップS106)。持出情報照合と持出ログ追記とを行ってから、該当薬品の返却作業支援処理を終えて、他の薬品に係る返却作業支援処理を繰り返すようになっている(D)。
【0062】
さらに(図11参照)、四つの作業項目のうち出庫が選択されたとき(E)、作業支援プログラム37は、出庫理由の取得を試行する(ステップS111〜S113)。具体的には、予め候補として設定されている幾つかの選択可能な出庫理由を表示装置12の一覧表示領域54に表示するとともに表示装置12の作業案内表示領域52を利用して調剤者に出庫理由の選択か入力を促す(ステップS111)。それから、終了選択か施錠が行われれば出庫作業支援処理を終えて作業支援終末処理に移行するが(ステップS112のYes)、そうでなければ(ステップS112のNo)、入力装置11の操作にて表示候補のうちから何れかが選択されるかそれ以外の出庫理由が文字入力等で入力されるのを待つようになっている(ステップS113のNo)。
【0063】
そして、作業支援プログラム37は、出庫理由を取得することができると(ステップS113のYes)、その出庫理由を持出ログ39に追記するとともに(ステップS114)、収納空間27に収納されている総ての麻薬44が出庫対象となりうるので、保管中の全薬品を選択可能薬品に選出する。選択可能薬品が決まると、後は上述した入庫作業支援処理と同じ処理を行うようになっている(図11のステップ(S71)〜(S76))。ただし、該当薬品の在庫データが更新されて出庫作業支援処理を終えた後は(ステップ(S76)のYes)、入庫作業支援処理でなく、他の薬品に係る返却作業支援処理を繰り返すようになっている(E)。
【0064】
最後に、作業支援プログラム37は、上述したように入庫作業支援処理の途中で終了選択か施錠が行われると入庫作業支援処理を終えて作業支援終末処理に移行するが(図7のステップS72,S75)、これは四つの作業項目のうち残りの払出と返却と出庫に係る作業支援処理にも共通している(図9,図10,図11のステップ(S72),(S75))。そして、作業支援プログラム37は(図8参照)、作業支援終末処理に移行すると(F)、表示装置12の作業案内表示領域52を利用して調剤者に調剤者IDの入力を求め(ステップS81)、入力装置11かコード読取プログラム34から調剤者IDが得られるのをタイムアウトするまで待って(ステップS82,S83)、調剤者IDが取得できたときにはそれが作業支援処理開始時に取得したのと同じか確認等も行い、作業結果等を作業ログ38に追記するとともに、規則等で定められた帳票をプリンタ16に印刷させて、選択された作業項目に係る作業支援処理を完全に終了するようになっている。
【0065】
この実施例1の麻薬保管装置10について、その使用態様及び動作を、図面を引用して説明する。図1は、(a)が扉を閉めた麻薬保管庫20等の外観斜視図、(b)が扉を開けた麻薬保管庫2等の外観斜視図である。また、図2は、(e)が区画室28から箱40を取り出しているところの外観斜視図、(f)が取り出した箱40を天板部26の上で開けたところの外観斜視図である。さらに、図3は、(b)が閉じた箱40の正面図と右側面図と背面図と底面図、(c)が完全に開けた箱40の外観斜視図、(d)が麻薬44を満杯に収容した完全開状態の箱40の平面図である。
【0066】
この麻薬保管装置10では(図1(a)参照)、調剤者が麻薬44を麻薬保管庫20の収納空間27に収納してから、調剤者が扉体22+26を閉めれば麻薬保管装置10では麻薬保管庫20の収納空間27の麻薬出入口が天板部26によって覆われ、更に調剤者が鍵を操作して錠23,24に施錠しておけば、鍵を扱う権限の無い者は収納空間27に麻薬44を出し入れすることができなくなるため、麻薬44が安全に保管されるうえ、撮像装置13によって天板部26やその周りが撮影されているので、何らの痕跡も残すことなく麻薬44の在庫が変化することがない。しかも、この状態では、情報処理装置30による作業支援処理等も在庫データ36の更新も行われない。
【0067】
このような動きのない保管状態から、調剤者が麻薬保管庫20に対して麻薬44の出し入れを行うことになったときには、調剤者が鍵を操作して錠23,24を解錠してから把手25を操作して麻薬保管庫20の扉体22+26を開けるとともに(図1(b)参照)、表示装置12の作業項目表示領域51に表示されている四つの作業項目すなわち入庫・払出・返却・出庫のうち何れかを調剤者がタッチパネル操作にて選択する(図5(a)参照)。それらの解錠と作業項目選択は何れが先でも同時でも良いが、何れか一方でも行われと、表示装置12の表示等にて情報処理装置30から調剤者に対し調剤者IDの入力が求められるので、調剤者は、調剤者IDがカラービットコードで印刷されているカード等を印刷面上向き状態にして天板部26の上面などの撮像装置13の撮影範囲内に置く。
【0068】
そうすると、そのカードが撮像装置13によって撮られて、そのカラービットコードが情報処理装置30のコード読取プログラム34によって読み取られて、そのコード値で示される調剤者IDが作業支援プログラム37に引き渡されて、麻薬44を調剤する権限の有無等が確認される。そして、権限が確認されると、未だ解錠していなければ解錠を促す表示が情報処理装置30によって表示装置12に出され、未だ作業項目を選択していなければ作業項目の選択を促す表示がやはり情報処理装置30によって表示装置12に出されるので、その案内表示に促された調剤者は、両行為を済ませる。
以下、調剤者の行う作業の内容が入庫・払出・返却・出庫の何れであるかに応じて四つに場合分けして説明する。
【0069】
先ず、入庫の場合、調剤者は作業項目表示領域51の作業項目の選択時に入庫を選択する。そうすると、情報処理装置30によって表示装置12の一覧表示領域54に選択可能薬品名が一覧表示される。入庫の場合、総ての麻薬44が入庫対象の候補であり、在庫データ36に登録されている全薬品名が選択可能薬品名として表示されるので、調剤者は入庫しようとしている麻薬44の薬品名を選択する。すると、今度は、情報処理装置30によって表示装置12の一覧表示領域54に(図5(b)参照)、該当する麻薬44を追加収容しうる箱40が収納されている区画室28と、該当する麻薬44を新たに収容した現在未収納の箱40を追加収納しうる空の区画室28とについて、その位置が案内表示される。
【0070】
調剤者は、その案内表示を見て、既収納の箱40に麻薬44を追加収容するか或いは未収納の箱40に麻薬44を新規収容するかを決め、前者の場合は適宜な既収納の箱40を収納空間27から取り出し(図2(e)参照)、後者の場合は適宜な未収納の箱40を装置外のストックから取り出し(図示せず)、何れの場合も箱40を天板部26に置いてから箱40の蓋部41を開き(図2(f)参照)、その箱40の収容部42に入庫対象の麻薬44を収容し(図3(c),(d)参照)、収容し終えたら、その箱40の蓋部41を閉めてから(図3(b)参照)、その箱40を表示装置12の一覧表示領域54で案内表示されている区画室28の何れかに収納する。
【0071】
そうすると、その入庫作業の間、情報処理装置30の在庫管理プログラム35により、入庫対象の箱40に係る識別コード43,45,46の読取に基づいて、入庫対象の箱40に係る収納空間27からの取出と天板部26の上での開閉と開状態での麻薬44の収容とが自動検知されるとともに、その検知結果に応じて在庫データ36が自動更新される。そして、情報処理装置30では、在庫データ36の更新があると、その旨が在庫管理プログラム35から作業支援プログラム37に通知され、更に作業支援プログラム37によって、該当薬品の在庫更新であるかが自動チェックされる。
【0072】
こうして、調剤者が案内表示を見ながら容易かつ的確に入庫作業を遂行すると、それに応じて自動で在庫データ36が更新されるとともに、入念な確認のため、再び、表示装置12の表示等にて情報処理装置30から調剤者に対し調剤者IDの入力が求められるので、調剤者は、調剤者IDがカラービットコードで印刷されているカード等を印刷面上向き状態にして天板部26の上面などの撮像装置13の撮影範囲内に置く。なお、調剤者IDカード等を天板部26の上に置いたままであった場合は、そのままにしておく。
【0073】
そうすると、そのカードが撮像装置13によって撮られて、そのカラービットコードが情報処理装置30のコード読取プログラム34によって読み取られて、そのコード値で示される調剤者IDが作業支援プログラム37に引き渡されて、作業支援プログラム37により、麻薬44を調剤する権限の有無が再確認されるとともに、今回読み取った調剤者IDが入庫開始時に読み取った調剤者IDと一致するか否かといったこともチェックされる。それから、更に、作業内容の作業ログ38への追記や,プリンタ16での帳票印刷が、作業支援プログラム37によって自動で行われる。
【0074】
こうして一回の入庫作業が終わると、情報処理装置30によって表示装置12の作業案内表示領域52の表示等を利用して他の麻薬44の入庫案内が出されるので、調剤者は、入庫対象の麻薬44が他にも残っていれば、上述した入庫作業を繰り返す。そして、入庫対象の麻薬44について、入庫作業を総て終えたら調剤者はタッチパネル操作で終了を選択する。そうすると、その終了選択に応じて、情報処理装置30は、開錠の確認や作業項目の選択といった作業開始時の処理に戻って、一から自動処理を繰り返す。
【0075】
次に、払出の場合、調剤者は作業項目表示領域51の作業項目の選択時に払出を選択する。そうすると、情報処理装置30によって表示装置12の作業案内表示領域52の表示を利用して調剤者に対し処方箋か調剤指示箋の提示が求められるので、調剤者は、可能であれば、処方箋か調剤指示箋にカラービットコードで印刷されている識別番号を撮像装置13に撮らせるか、入力装置11を介して処方箋番号等か詳細な処方情報を入力する。
【0076】
それに応じて情報処理装置30が処方情報を取得できれば選択可能薬品が処方内に限定され、そうでなければ在庫データ36に登録されている全薬品名が選択可能薬品名とされ、何れの場合も情報処理装置30によって表示装置12に選択可能薬品名が表示されるので、後は、繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、上述した入庫のときと同様に、調剤者は、情報処理装置30による案内表示をみながら払出作業を進める。払出作業が入庫作業と相違するのは、麻薬44を麻薬保管庫20の収納空間27に入れるのでなく、麻薬44を麻薬保管庫20の収納空間27さらには箱40から取り出すことである。
【0077】
そうすると、払出作業の間も、情報処理装置30の在庫管理プログラム35により、払出対象の麻薬44や箱40に係る識別コード43,45,46の読取に基づいて、払出対象の箱40に係る収納空間27からの取出と天板部26の上での開閉と開状態での麻薬44の取出とが自動検知されるとともに、その検知結果に応じて在庫データ36が自動更新される。そして、情報処理装置30では、在庫データ36の更新があると、その旨が在庫管理プログラム35から作業支援プログラム37に通知され、更に作業支援プログラム37によって、該当薬品の在庫更新であるかが自動チェックされる。
【0078】
こうして、調剤者が案内表示を見ながら容易かつ的確に払出作業を遂行すると、情報処理装置30では、それに応じて自動で在庫データ36が更新されるとともに、今回の払出作業で取り出された麻薬44に関するデータが自動で持出ログ39に追記される。さらに、上述した再度の調剤者IDの確認も行われ、作業内容の作業ログ38への追記や,プリンタ16での帳票印刷も、作業支援プログラム37によって自動で行われる。
そして、一回の払出作業が終わると、やはり他の麻薬44の払出案内が出されるので、調剤者は、必要なら上述の作業を繰り返し、払出を総て終えたらタッチパネルで終了を選択する。すると、この場合も、その終了選択に応じて、情報処理装置30は、開錠の確認や作業項目の選択といった作業開始時の処理に戻って、一から自動処理を繰り返す。
【0079】
また、返却の場合、調剤者は作業項目表示領域51の作業項目の選択時に返却を選択する。そうすると、払出時と同様に情報処理装置30によって表示装置12の作業案内表示領域52の表示を利用して調剤者に対し処方箋か調剤指示箋の提示が求められるので、調剤者は、可能であれば、払出時に使用した処方箋か調剤指示箋にカラービットコードで印刷されている識別番号を撮像装置13に撮らせるか、該当する処方箋番号等か詳細な処方情報を入力装置11の操作にて入力する。
【0080】
それに応じて情報処理装置30が処方情報を取得でき更に持出ログ39から対応する持出情報を探し出すことができれば選択可能薬品が持出済みの麻薬44に限定され、そうでなければ在庫データ36に登録されている全薬品名が選択可能薬品名とされ、何れの場合も情報処理装置30によって表示装置12に選択可能薬品名が表示されるので、後は、やはり繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、上述した入庫や払出のときと同様に、調剤者は、情報処理装置30による案内表示をみながら返却作業を進める。返却作業が払出作業と相違するのは、麻薬44を麻薬保管庫20の収納空間27や箱40から取り出すのでなく、先の払出時に一旦は取り出したが使用に至らなかったために戻して再保管することになった麻薬44を箱40に収容して収納空間27に収納することである。
【0081】
そうすると、やはり返却作業の間も、情報処理装置30の在庫管理プログラム35により、返却対象の麻薬44や箱40に係る識別コード43,45,46の読取に基づいて、返却対象の箱40に係る収納空間27からの出し入れと天板部26の上での箱開閉と開状態での麻薬44の収容とが自動検知されるとともに、その検知結果に応じて在庫データ36が自動更新される。そして、情報処理装置30では、在庫データ36の更新があると、その旨が在庫管理プログラム35から作業支援プログラム37に通知され、更に作業支援プログラム37によって、該当薬品の在庫更新であるかが自動チェックされる。
【0082】
こうして、調剤者が案内表示を見ながら容易かつ的確に返却作業を遂行すると、情報処理装置30では、それに応じて自動で在庫データ36が更新されるとともに、今回の返却作業で再保管に戻した麻薬44に関するデータが自動で持出ログ39に追記される。さらに、上述した再度の調剤者IDの確認も行われ、作業内容の作業ログ38への追記や,プリンタ16での帳票印刷も、作業支援プログラム37によって自動で行われる。
そして、一回の返却作業が終わると、やはり他の麻薬44の返却案内が出されるので、調剤者は、必要なら上述の作業を繰り返し、返却を総て終えたらタッチパネルで終了を選択する。すると、この場合も、その終了選択に応じて、情報処理装置30は、開錠の確認や作業項目の選択といった作業開始時の処理に戻って、一から自動処理を繰り返す。
【0083】
さらに、出庫の場合、調剤者は作業項目表示領域51の作業項目の選択時に出庫を選択する。そうすると、情報処理装置30によって表示装置12の作業案内表示領域52や一覧表示領域54の表示を利用して調剤者に対し出庫理由の選択か入力が求められるので、調剤者は、一覧表示領域54の表示リストの中に適切な理由があればタッチパネル操作でそれを選択し、そうでなければ入力装置11の操作にて出庫理由を入力する。自動で案内表示されて選択できる出庫理由としては、大項目では返品や破棄が挙げられ、返品の詳細理由としては、リコールや,不良品,不要になった良品などが挙げられ、破棄の詳細理由としては、期限切れや,破損,変色などが挙げられる。
【0084】
そして、その案内表示に応じて調剤者が出庫理由を指定し、情報処理装置30が出庫理由を取得できれば、その出庫理由が作業支援プログラム37によって持出ログ39に追記される。それから、情報処理装置30によって表示装置12に選択可能薬品名が表示されるが、出庫の場合は麻薬保管庫20で保管中の総ての44が選択可能薬品に選出される。後は、やはり繰り返しとなる詳細な説明は割愛するが、上述した払出のときと同様に、調剤者は、情報処理装置30による案内表示をみながら出庫作業を進める。出庫作業に伴う在庫管理も、個々の麻薬44単位であれ箱40単位であれ不都合なく自動処理される。
【0085】
こうして、調剤者が案内表示を見ながら容易かつ的確に出庫作業を遂行すると、それに応じて作業支援プログラム37によって自動で在庫データ36が更新され、それから作業支援プログラム37によってやはり自動で再度の調剤者IDの確認や,作業内容の作業ログ38への追記,プリンタ16での帳票印刷が行われる。
そして、一回の出庫作業が終わると、やはり他の麻薬44の出庫案内が出されるので、調剤者は、必要なら上述の作業を繰り返し、出庫を総て終えたらタッチパネルで終了を選択する。すると、この場合も、その終了選択に応じて、情報処理装置30は、開錠の確認や作業項目の選択といった作業開始時の処理に戻って、一から自動処理を繰り返す。
【0086】
こうして、入庫・払出・返却・出庫の何れの作業についても、調剤者は、情報処理装置30に対しては作業項目の選択やカード提示といった簡単な操作や必要なときだけ入力操作を行うだけで、麻薬44を出し入れする実作業に集中することができ、それも作業案内を見ながら楽に作業を進めることができるうえ、それだけで必要な在庫データの更新や帳票の印刷が情報処理装置30によって自動処理されるので、麻薬44の厳格な保管と管理を容易かつ的確に行うことができる。
【実施例2】
【0087】
図12(a),(b)に機械系の外観斜視図を示した本発明の麻薬保管装置が上述した実施例1の麻薬保管装置10と相違するのは、内戸61,62が追加された点と、錠24が移設されて内戸用になっている点である。
天板部26の内側で収納空間27の麻薬出入口を覆う内戸が、図12(a)に示したものではシャッター等の鎧戸61になっており、図12(b)に示したものでは折戸62になっている。
【実施例3】
【0088】
本発明の麻薬保管装置の実施例3について、その具体的な構成を、図面を引用して説明する。図13は、(a)が閉状態の機械系の外観斜視図、(b)が開状態の機械系の外観斜視図である。
【0089】
この麻薬保管装置が上述した実施例1の麻薬保管装置10と相違するのは、撮像装置13が複数化されて収納空間27と天板部26とを分担するようになった点と、扉体が改造されている点である。
扉体は、既述した縦板部22と天板部26とに加え、両者22,26と直交状態で両者22,26に連結された縦板部63も具備している。縦板部63と縦板部22及び天板部26も、一体化して又は閉状態では連結解除部が隠れる態様で、相互連結されている。
【0090】
この場合、閉状態で(図13(a)参照)、天板部26が横置き姿勢で収納空間27の麻薬出入口を覆うようになっていることには変わりないが、縦板部22は縦置き姿勢のまま麻薬保管庫20の前面でなく右側面に移設され、麻薬保管庫20の前面には縦置き姿勢の縦板部63が新設されている。また、ヒンジ21は麻薬保管庫20の右前の角部から右後の角部に移設されている。そのため(図1(b)参照)、扉体を約90゜右方へ揺動させれば収納空間27の麻薬出入口を全開させることができる。
【0091】
しかも、麻薬保管庫20の本体部の前面を凹ませたりそれに合わせて縦板部22の端部を斜めに切り落としたりしないで、縦板部22も天板部26も縦板部63もほぼ厚さ一定の平板のまま使用しても、扉開閉に不都合のないものとなっている。
このように本願発明の麻薬保管庫20の扉体にあっては、この例の三面連結扉22,26,63であれ、上述した二面連結扉22,26であれ、一般的な玄関や部屋の出入口のドアのように縦軸周りで揺動するものとなっているので、金属等で堅固に作られていても、その重量の割には楽に開閉することができる。
【0092】
[その他]
なお、上記実施例では、カラービットコードの読取時にコード値に加えてコード位置まで取得するとともに、箱識別コード43の位置情報に基づいて箱40の収納された区画室28を自動特定することにより、収納区画を強制しなくても取出時の案内表示等ができるようになっていたが、例えば麻薬44の剤種毎に又は個々の箱40毎に収納先の区画室28を予め決めて情報処理装置30のデータメモリの対応テーブル等に設定しておき、その設定に基づいて箱40の収納先を表示装置12の案内表示等で指定するようにしても良い。調剤者が案内に適切に応じることを前提とした運用を行えば、コード位置の取得が必要でなくなる。コード位置が得られる場合は、収納先を違えたときには警報を発して訂正されるまで収納の遣り直しを促すようにしても良い。
【0093】
また、上記実施例では、麻薬44を複数個収容しうる箱40だけが区画室28に収納されていたが、大きめの麻薬などは箱40に入れないでそのまま単独で区画室28に収納しても良く、その場合は、各麻薬に割り振られた薬識別コードを粘着シール等に印刷してその印刷済みシール等を個々の麻薬(実際には個々の麻薬を収容したアンプル等の容器や包装材)に貼り付けておくとともに、在庫データ36(図4参照)の該当レコードにおける箱識別コード等の取り扱いに関して箱識別コードと薬識別コードとを同じと見なして、仮に最大収容数が一個の箱に一個だけ麻薬が収容されているかのようにデータを処理すれば良い。或いは、各レコードに箱使用の有無を示すフラグを設けるとともに、箱不使用のレコードは薬識別コードと薬品名と薬有無といった項目を持つものに変更するのも良い。
【0094】
さらに、上記実施例では、収納空間27を等サイズの区画室28に区分けしていたが、区画室28が総て同じである必要はなく、区画室28に大小があっても良く、区画室28の深さが異なっていても良い。そもそも、収納空間27の区画分けは必須でなく、箱識別コード43やそれに代わる識別コードが撮像装置13で撮影でき情報処理装置30で読み取れる状態で麻薬44を収納空間27に安定収納できれば、仕切が無くても良い。
また、上記実施例では、区画室28の案内表示に際して配置を示すとともに該当位置を強調表示するようになっていたが、区画室28に収納されている箱40に収容されている麻薬44の在庫数量を配置図に重畳表示するようにしても良い。
【0095】
また、上記実施例では、箱識別コード43,45や薬識別コード46にカラービットコードが採用されていたが、コード読取に不都合がなければ、カラービットコードに代えて又はカラービットコードと混在させてバーコードや二次元コードを採用しても良い。
また、上記実施例では、使用される箱識別コード43(主番号)が予め薬品名等と共に在庫データ36に登録されているものとしたが、未登録の識別コードを読み取ると自動的に追加登録処理を試行するように情報処理装置30の機能を拡張しても良い。
【0096】
また、上記実施例では、作業支援プログラム37が在庫データ36の更新に応じて該当薬品に係る作業支援処理を終了するようになっていたが(ステップS76)、同じ薬品を小分けして出し入れすることが比較的多い場合は、処理対象薬品を切り替えるか否かを調剤者に問い合わせるように作業支援プログラム37を改造しても良く、あるいは、例えばタッチパネル操作で選択しうる作業項目表示領域51の表示項目に処理対象薬品切替といった項目を追加しておいて、それが選択されるまでは同じ薬品に係る作業支援処理を継続し、処理対象薬品切替が選択されたら該当薬品に係る作業支援処理を終了するように、作業支援プログラム37を改造しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の麻薬保管装置は、法律等で規制される麻薬類の管理作業を支援するために開発されたものであるが、劇薬や毒薬といった自主規制対象薬剤を管理する作業の支援にも利用することができる。
【符号の説明】
【0098】
10…麻薬保管装置、
11…入力装置(タッチパネル)、12…表示装置(タッチパネル)、
13…撮像装置、14…錠センサ、15…処方管理装置、16…プリンタ、
20…麻薬保管庫(本体部)、
21…ヒンジ(蝶番)、22…縦板部(扉体)、23,24…錠、25…把手、
26…天板部(扉体)、27…収納空間(庫内)、28…区画室、29…引出、
30…情報処理装置、
31…画像データ、32…画像記録プログラム、
33…画像ログ(蓄積データ)、34…コード読取プログラム、
35…在庫管理プログラム、36…在庫データ、37…作業支援プログラム、
38…作業ログ(蓄積データ)、39…持出ログ(蓄積データ)、
40…箱、
41…蓋部、42…収容部、43…箱識別コード(箱外面)、44…麻薬、
45…箱識別コード(蓋内面)、46…薬識別コード(内底面)、
51…作業項目表示領域、52…作業案内表示領域、
53…状態等表示領域、54…一覧表示領域、
61…鎧戸(シャッター)、62…折戸、63…縦板部(扉)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
庫内の収納空間の麻薬出入口が上面に形成された麻薬保管庫と、上方から下向きで又は斜め下向きで前記収納空間を撮る一台の又は複数の撮像装置と、収納予定の各麻薬またはそれを収容しうる箱に割り振られた識別コードを前記撮像装置の撮影画像から読み取ってコード読取の可否に応じて在庫データを更新する情報処理装置とを備えた麻薬保管装置であって、前記麻薬保管庫に付設されていて前記収納空間の麻薬出入口を開閉する扉体が、前記麻薬保管庫に対し縦軸のヒンジを介して連結された揺動可能な縦板部と、前記縦板部と一体化して又は閉状態では連結解除部が隠れる態様で前記縦板部に連結されていて前記縦板部の揺動に伴って横移動することにより前記収納空間の麻薬出入口の直上へ進退する天板部とを具備したものであることを特徴とする麻薬保管装置。
【請求項2】
前記撮像装置が、前記収納空間の麻薬出入口の直上から退出したときの前記天板部の上面も撮るようになっていることを特徴とする請求項1記載の麻薬保管装置。
【請求項3】
前記情報処理装置が、前記箱の内外に割り振られた箱識別コードの読取可否に応じて前記箱の開閉を判別するようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された麻薬保管装置。
【請求項4】
前記情報処理装置が、前記箱の中の麻薬収容部位に割り振られた薬識別コードの読取可否に応じて前記箱の麻薬収容状態を検知するようになっていることを特徴とする請求項3記載の麻薬保管装置。
【請求項1】
庫内の収納空間の麻薬出入口が上面に形成された麻薬保管庫と、上方から下向きで又は斜め下向きで前記収納空間を撮る一台の又は複数の撮像装置と、収納予定の各麻薬またはそれを収容しうる箱に割り振られた識別コードを前記撮像装置の撮影画像から読み取ってコード読取の可否に応じて在庫データを更新する情報処理装置とを備えた麻薬保管装置であって、前記麻薬保管庫に付設されていて前記収納空間の麻薬出入口を開閉する扉体が、前記麻薬保管庫に対し縦軸のヒンジを介して連結された揺動可能な縦板部と、前記縦板部と一体化して又は閉状態では連結解除部が隠れる態様で前記縦板部に連結されていて前記縦板部の揺動に伴って横移動することにより前記収納空間の麻薬出入口の直上へ進退する天板部とを具備したものであることを特徴とする麻薬保管装置。
【請求項2】
前記撮像装置が、前記収納空間の麻薬出入口の直上から退出したときの前記天板部の上面も撮るようになっていることを特徴とする請求項1記載の麻薬保管装置。
【請求項3】
前記情報処理装置が、前記箱の内外に割り振られた箱識別コードの読取可否に応じて前記箱の開閉を判別するようになっていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載された麻薬保管装置。
【請求項4】
前記情報処理装置が、前記箱の中の麻薬収容部位に割り振られた薬識別コードの読取可否に応じて前記箱の麻薬収容状態を検知するようになっていることを特徴とする請求項3記載の麻薬保管装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−59567(P2013−59567A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−201203(P2011−201203)
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000151472)株式会社トーショー (156)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月14日(2011.9.14)
【出願人】(000151472)株式会社トーショー (156)
【Fターム(参考)】
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